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特開2024-97563作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097563
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001102
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】久保井 秋音
(72)【発明者】
【氏名】藤田 義一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝基
(72)【発明者】
【氏名】小松 知滉
(57)【要約】
【課題】植物の生育状況を精度良く推定することができる。
【解決手段】圃場を撮影することで得られる取得画像データから第1植生指数と当該第1植生指数とは異なる第2植生指数とを求める植生指数算出部と、前記取得画像データが測定された時期に応じた時期において、前記圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査をした結果である生育指標値を取得する実地調査データ取得部と、前記取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数と、前記生育指標値との圃場における対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場を測定した推定対象取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数に応じた推定生育指標値を推定する推定部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を撮影することで得られる取得画像データから第1植生指数と当該第1植生指数とは異なる第2植生指数とを求める植生指数算出部と、
前記取得画像データが測定された時期に応じた時期において、前記圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査をした結果である生育指標値を取得する実地調査データ取得部と、
前記取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数と、前記生育指標値との圃場における対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場を測定した推定対象取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数に応じた推定生育指標値を推定する推定部と、
を有する作物栽培管理支援システム。
【請求項2】
前記圃場の位置毎に、前記評価項目における生育指標値と、取得画像データから得られた第1植生指数及び第2植生指数との関係から前記評価項目における生育指標値の確率分布を推定する推定モデルを作成する作成部を有し、
前記推定部は、前記推定モデルに前記推定対象取得画像データを入力することで、前記評価項目における生育指標値の確率分布を推定する
請求項1に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項3】
前記推定部によって推定された推定結果に基づいて、複数の基準範囲のうち、前記推定結果である推定生育指標値がいずれの範囲に該当する確率が最も高いかについて、推定対象の領域の位置毎に判定する判定部と、
前記位置毎の判定結果に基づいて、当該位置毎に、該当する範囲に応じた表示態様に応じた出力画像を生成する出力データ生成部と
を有する請求項1に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項4】
前記取得画像データが測定される時期と、前記実地調査が行われる時期は、前記評価項目における生育指標値を推定する対象の生育段階に応じた時期である
請求項3に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項5】
前記推定部は、所定期間分の前記実地調査をした結果を基に前記推定モデルが作成された場合には、追加の実地調査を用いた推定モデルの更新をすることなく、当該推定モデルを用いて前記推定をする
請求項2に記載の作物栽培管理支援システム。
【請求項6】
植生指数算出部が、圃場を撮影することで得られる取得画像データから第1植生指数と当該第1植生指数とは異なる第2植生指数とを求め、
実地調査データ取得部が、前記取得画像データが測定された時期に応じた時期において、前記圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査した結果である生育指標値を取得し、
推定部が、前記取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数と、前記生育指標値との圃場における対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場を測定した推定対象取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数に応じた推定生育指標値を推定する
作物栽培管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場における生育状況を把握する方法の一つとして、茎数、上位茎数、草丈、葉色等の評価項目を用いる場合がある。
特許文献1には、植物の画像を用いて植物の茎数を取得するための画像診断装置が開示されている。この画像診断装置では、植物を撮像した画像から、植物の葉先を検出し、検出結果に基づいて葉の数を計数し、計数された葉の数を基に、茎数を求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-112129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、植物の生育段階によっては、ある株から伸びる葉先が、隣接して植えられた株から伸びる葉先と重なるため、葉先を検出する精度が低下する。そのため、茎数を算出する精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、植物の生育状況を精度良く推定することができる作物栽培管理支援システム、作物栽培管理支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、圃場を撮影することで得られる取得画像データから第1植生指数と当該第1植生指数とは異なる第2植生指数とを求める植生指数算出部と、前記取得画像データが測定された時期に応じた時期において、前記圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査をした結果である生育指標値を取得する実地調査データ取得部と、前記取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数と、前記生育指標値との圃場における対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場を測定した推定対象取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数に応じた推定生育指標値を推定する推定部と、を有する作物栽培管理支援システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、植生指数算出部が、圃場を撮影することで得られる取得画像データから第1植生指数と当該第1植生指数とは異なる第2植生指数とを求め、実地調査データ取得部が、前記取得画像データが測定された時期に応じた時期において、前記圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査をした結果である生育指標値を取得し、推定部が、前記取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数と、前記生育指標値との圃場における対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場を測定した推定対象取得画像データに基づく第1植生指数及び第2植生指数に応じた推定生育指標値を推定する作物栽培管理支援方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、植物の生育状況を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による作物栽培管理支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
図2】実地調査データの一例を示す図である。
図3】取得画像データから算出された植生指数に基づく植生指数画像データである。
図4】推定モデル生成部15に入力される入力データの一例を示す図である。
図5】基準データの一例を示す図である。
図6】出力データ生成部19によって生成された出力画像の一例を示す。
図7】作物栽培管理支援システム1が推定モデルを生成する処理の流れを説明するフローチャートである。
図8】作物栽培管理支援システム1が茎数を推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による作物栽培管理支援システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による作物栽培管理支援システム1の構成を示す概略ブロック図である。
作物栽培管理支援システム1は、実地調査データ取得部11、植生指数算出部12、実地調査地点データ抽出部13、フィルタ処理部14、推定モデル生成部15、フィルタ処理部16、推定部17、判定部18、出力データ生成部19を有する。
【0011】
実地調査データ取得部11は、圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目に応じて実地調査をした結果である生育指標値を取得する。例えば、実地調査データ取得部11は、圃場において生育させた植物の1mあたりの茎数について実地調査で数えられた数を示す生育指標値含む実地調査データを取得する。
圃場において生育させる植物は、例えば小麦である。植物の生育状態を示す評価項目は、例えば、茎数、上位茎数、草丈、葉色などがあり、生育指標値として、茎数、上位茎数、草丈、葉色などを用いることができる。ここでは生育指標値が茎数である場合を一例として説明する。
茎数について実地調査する場合、調査を担当する担当者が実際に圃場に出向き、その圃場において複数箇所の茎数をそれぞれ調査することで、異なる複数箇所においてそれぞれ、1mあたりの茎数(生育指標値)が得られる。
上位茎数、草丈、葉色等についても同様に、調査を担当する担当者が圃場に出向き、上位茎数、草丈、葉色等を調査することで、それぞれの生育指標値を得ることができる。
実地調査データ取得部11は、第1取得画像データが測定された時期と第2取得画像データが測定された時期とに応じた時期において、圃場において生育させた植物の生育状態を示す評価項目(例えば、茎数、上位茎数、草丈、葉色等のうち少なくともいずれか1つ)に応じて実地調査した結果である生育指標値を取得する。第1取得画像データと第2取得画像データは、調査用の取得画像データの一例である。
実地調査データ取得部11は、生育段階を確認したい時期の実地調査データを取得できた方が、茎数の推定精度を高める観点においては好ましい。
【0012】
図2は、実地調査データの一例を示す図である。
実地調査データは、識別子(Identifier:ID、以下ID)、茎数、緯度、経度が対応付けられたデータである。
IDは、圃場における位置を識別する。ここでいう位置は、圃場内が複数の領域に分割された分割領域のうち、いずれの分割領域であるかを示す。
茎数は、IDが示す位置(分割領域)における植物の茎数を示す。
緯度は、圃場において茎数が数えられた対象の分割領域の所定の位置の緯度を示す。
経度は、圃場において茎数が数えられた対象の分割領域の所定の位置の経度を示す。
ここでいう所定の位置は、分割領域の中央(例えば重心)の位置であってもよいし、分割領域の周縁のうち予め決められた位置であってもよい。予め決められた位置は、分割領域が矩形である場合には、例えば、左上の頂部、右下の頂部等のいずれかの頂部であってもよいし、四辺のうちのいずれか1つの辺の中央の位置であってもよい。
この図2では、例えば、IDが「111」の位置における茎数が567(本/m)であり、緯度が35.7度、経度が139.8度であることを示す。
実地調査データは、茎数yについて、
y(lat’,lon’)
として表すことができる。
【0013】
図1に戻り、植生指数算出部12は、圃場を撮影することで得られる第1取得画像データから第1植生指数を求め、当該第1取得画像データとは異なる第2取得画像データから第1植生指数とは異なる第2植生指数を求める。ここでは、第2取得画像データから求める植生指数が1つである場合について説明するが、第3植生指数として第1取得画像データまたは第2取得画像データから複数の植生指数を求め、用いるようにしてもよい。例えば、第1植生指数が第1取得画像データから求めたNDVI(正規化植生指数)である場合、第2植生指数が第2取得画像データから求めたNDRE(正規化レッドエッジ指数)であってもよいし、第3植生指数が、第2取得画像データから求めたNDWI(正規化水指数)であってもよい。このような植生指数は4つ以上であってもよい。
第1取得画像データと、第2取得画像データは、圃場を上方からセンサによって測定されたデータである。例えば第1取得画像データ及び第2取得画像データは、それぞれ、上空から少なくとも圃場を含む領域を撮像した取得画像データである。この撮像は、例えば、人がセンサで撮像してもよいし、圃場内、あるいは圃場の近くの鉄塔などの建造物や、ドローン、飛行機、衛星に設置、あるいは搭載されたセンサによって撮像されてもよい。
ここで撮像される圃場は、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場であり、同じ植物が植生されている。
【0014】
第1取得画像データと第2取得画像データは、例えば、互いに異なる波長を測定したデータである。
第1取得画像データは、例えば、画素毎の輝度値をRGB値(Red,Green,Blueの値)、近赤外光値(Near InfraRed:NIR値)によって表したデータである。より具体的に、第1取得画像データは、緯度及び経度と、赤色光の輝度値、青色光の輝度値、緑色光の輝度値、および近赤外光の輝度値が含まれるデータである。
第1取得画像は、
r1(lat,lon)=[Red(lat,lon),Blue(lat,lon),Green(lat,lon),… NIR(lat,lon)]
のように表すことができる。
【0015】
第2取得画像データは、例えば、圃場について近赤外光(Near InfraRed:NIR)、および短波長赤外光(Short-wavelength infrared:SWIR)を測定することで得られたデータである。より具体的に、第2取得画像データは、緯度及び経度と、近赤外光、および短波長赤外光(SWIR)光の輝度値が含まれるデータである。
第2取得画像データは、
r2(lat,lon)=[NIR(lat,lon),… SWIR(lat,lon)]
のように表すことができる。
また、第2取得画像データは、例えば、圃場について近赤外(Near InfraRed:NIR)、および赤色の端の波長帯(Red Edge)を測定することで得られたデータである。より具体的に、第2取得画像データは、緯度及び経度と、近赤外光、および赤色の端の波長帯(Red Edge)光の輝度値が含まれるデータである。
第2取得画像データは、
r2(lat,lon)=[NIR(lat,lon),… RedEdge(lat,lon)]
のように表すことができる。
【0016】
ここで、本実施形態において取得画像データについては、複数の波長のセンシングデータを使ってよい。また、取得画像データは、実地調査データと相関が取れるものであればよいため、第1取得画像データと第2取得画像データは、解像度が異なっていてもよい。また、第1取得画像データと第2取得画像データは、一方がある日のデータであり、もう一方が、その少し前または少し後の日に測定されたデータであってもよい。また、取得画像データが測定された日と、実地調査データを得るために実地調査が行われた日とが異なっていてもよい。ここでは、取得画像データと実地調査データとの相関が取れればよく、日が異なっていても、茎数の推定において影響が生じ得るほどに、圃場内の植物の生育状態のばらつきの傾向が大きく変わることが少ないためである。
また、第1取得画像データと第2取得画像データは、時間変化を考慮するために撮影日時が異なるデータであってもよい。
【0017】
植生指数算出部12は、取得画像データから、植生指数を求める処理を行い、その処理結果を出力する。植生指数は、NDVI、NDRE、NDWI等の種々の種類がある。
NDVIは、近赤外光と赤色光の反射率の差に基づいて正規化した値である。植物は近赤外線の波長を反射するが、赤色の波長は光合成に必要なため吸収する性質がある。そのため、植物を撮像したことで得られる近赤外光と赤色光の反射率の差に基づいてNDVIを得ることで、この値が大きいほど植物の葉や茎の面積やそれらに含まれる葉緑素量が多いことがいえる。
NDREは、赤色の端(Red Edge)の波長光と近赤外光の相対的な強度の違いを強調するようにして得られる値である。NDREもNDVIと同様葉の葉緑素量と相関のある植生指数であるが、NDVIと比較して生育の後期において健康状態を示す指標として、あるいはNDVIよりも早期に植物の生育の問題を発見するために用いられる等している。
NDWIは、植生に含まれる水分量について定義するNDWIと、地表面に含まれる水分量について定義するNDWIの2種類存在する。このうち、植生に含まれる水分量について定義するNDWIは、近赤外光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値であり、植物に含まれる水分量に関する指数である。また、植生に含まれる水分量について定義するNDWIは、緑色光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値を用いる場合もある。
地表面に含まれる水分量について定義するNDWIは、赤色光、および短波長赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値であり、土壌に含まれる水分量に関する指数である。また、地表面に含まれる水分量について定義するNDWIは、緑色光、および近赤外光の反射率の差に基づいて正規化した値を用いる場合もある。
【0018】
ここで、植物の生育期間における、ある時期においては、いくつかの植生指数のうち例えばNDVIが実地調査データと特に強い相関があり、別の時期においては、NDREが実地調査データと特に強い相関があり、また、別の時期においては、NDVI及びNDREの両方と実地調査データとの間に強い相関がある、等のように、時期によって実地調査データとの相関がある植生指数が異なるという知見が見出された。そのため、本実施形態において、植生指数算出部12は、取得画像データから異なる複数の植生指数を求める。このように、複数の波長のセンシングデータとそれを加工して得られる植生指数を用い、その時期や生育段階に応じて、異なる植生指数に対して重み付けされた値を基にした推定モデル(後述する)を生成し、この推定モデルを用いて茎数を推定することで、広範な生育段階であっても、その推定する対象の時期において実地調査データに対する相関関係に応じた植生指数を少なくとも1つを用いることで、精度良く茎数を推定することができる。
【0019】
例えば、植生指数算出部12は、第1取得画像データの緯度経度毎に、NDVIと、NDREとを算出し、第2取得画像データの緯度経度毎に、NDWIを算出する。
例えば、ni,j:riから算出した植生指数jについて、
n1,1:r1から算出したNDVI
n1,2:r1から算出したNDRE
n2,1:r2から算出したNDWI
などのように表し、その緯度経度毎の植生指数については、
n1,1(lat,lon),n1,2(lat,lon),…,n2,2(lat,lon)
のように表すことができる。
【0020】
なお、取得画像データを得るために撮像される圃場は、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場である場合について説明したが、実地調査データと相関を求める場合には、撮像される圃場と実地調査データを取得する対象の圃場とが同じ圃場である。一方、求められた相関を利用して茎数を推定する場合には、実地調査データを取得する対象の圃場と同じ圃場であってもよいし、異なる圃場であってもよい。異なる圃場である場合には、実地調査データが取得された圃場と類似の作物管理が行われている類似品種が植えられた圃場であればよい。また、異なる圃場である場合には、実地調査データが取得された圃場と同じ植物であって、実地調査データが取得された圃場の近隣の地域である場合には、茎数を推定する精度をより高められる。近隣の地域である方が、圃場が異なっていても、植物の生育状況が類似する度合いが高いといえるためである。
【0021】
また、第1取得画像データ及び第2取得画像データが測定される時期と、実地調査が行われる時期は、茎数を推定する対象の生育段階に応じた時期であると、茎数を推定する対象の時期に応じた取得画像データと実地調査データとを得て、後述する推定モデルを生成することができる。これにより茎数の推定精度を高めることができる。
【0022】
ここで、図3は、取得画像データから算出された植生指数に基づく植生指数画像データである。この植生指数画像データは、測定対象の圃場を表しており、縦方向が緯度、横方向が経度である。
この植生指数画像データは、取得画像データに基づいて植生指数が得られると、得られた植生指数値に応じた色によって、各位置について表された植生指数画像データである。ここでは、位置111、112、113、114は、圃場の右側に位置する畝に沿って配列され、概ね同じ色によって表されている。この色は、植生指数の値が小さいことを表している。そのため、この畝については、概ね同じ植生指数であることが把握できる。位置141、142、143、144は、位置111が属する畝の近傍の畝であるが、その色は、位置111等の色とは異なっている。そして位置141、142、143、144の植生指数は、位置111の植生指数よりも大きな値となっている。また、位置171、172、173、174は、圃場において左側に位置する畝であり、その色は、位置111等の色、及び位置141等の色とは異なっている。そして位置171、172、173、174の植生指数は、位置111、位置141等の植生指数よりも大きな値となっている。
【0023】
また、植生指数算出部12は、第1取得画像データと第2取得画像データのように複数種類の取得画像データを入力する場合について説明したが、1つの取得画像データを入力し、その取得画像データから異なる複数種類の植生指数を求めるようにしてもよい。ここでは、複数の植生指数と実地調査データとの相関を把握することができればよい。
【0024】
実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって得られた、圃場の位置毎の植生指数のうち、実地調査データ取得部11によって得られた実地調査データに含まれる位置(分割領域)に対応する植生指数を抽出する。例えば、実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって植生指数が求められた分割領域のうち、圃場のうち実地調査が行われた分割領域を切り取る。
これにより、植生指数算出部12によって得られた圃場の各位置における植生指数のうち、実地調査データが得られた位置に対応する位置における植生指数が抽出される。
【0025】
フィルタ処理部14は、実地調査地点データ抽出部13によって抽出された位置(分割領域)の植生指数について、フィルタ処理を施す。ここで、フィルタ処理をする目的としては、例えば、茎数を推定するために不要な情報を取り除くことであり、より具体的には、切り取られた分割領域のうち、植物が生えていない部分について不要であるため、植物が生えていない領域が不必要に強調されないようにする、解像度が高すぎる取得画像データの分割領域について解像度を下げるなどである。
用いられるフィルタは、予め決められたフィルタであっても良いし、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、帯域除去フィルタ等のうち少なくともいずれか一方を用いて良く、最適フィルタと推定モデルを同時に推定する畳み込みニューラルネットワークなどで適応的に決めても良い。
【0026】
例えば、メディアンフィルタを用いる場合、分割領域の中に少しだけ土が見える部分がある場合には、メディアンフィルタによって除去することができる。メディアンフィルタとしては、例えば、縦6画素、横6画素の合計36画素の画素値についての中央値を求めるフィルタ関数がある。
畳み込みニューラルネットワークを用いる場合、縦3画素、横3画素の9画素を処理する任意の係数を用いたフィルタ関数がある。
また、圃場において植物は一般に、直線状に並び、かつ、平行に隣接するように並んで植えられることから、撮像された画像では、周期的な間隔で植物が現れることになる。そのため、このような場合には、分割領域の中で不要な周期性を選択的に除去し植生指数が平均的になるようにぼかす帯域除去フィルタを用いることができる。
このようなフィルタ処理が施されることによって、緯度経度毎にni,jにフィルタkを適用することで、緯度経度毎の特徴量としてxi,j,k(lat’,lon’)が得られる。
【0027】
推定モデル生成部15は、圃場の位置毎に、茎数と、第1取得画像データの測定結果と、第2取得画像データの測定結果との関係から茎数の確率分布を推定する推定モデルを生成する。
図4は、推定モデル生成部15に入力される入力データの一例を示す図である。
この入力データは、ID、茎数、実地調査データが得られた位置における異なる植生指数を含むデータセットである。
実地調査データが得られた位置における異なる植生指数としては、例えば、第1取得画像データから得られた第1植生指数(例えばNDVI)に対して第1フィルタ(例えばメディアンフィルタ)を用いてフィルタ処理された値(x1,1,1)、第1取得画像データから得られた第1植生指数(例えばNDVI)に対して第2フィルタ(例えば帯域除去フィルタ)を用いてフィルタ処理された値(x1,1,2)、・・・、第2取得画像データから得られた第2植生指数(例えばNDRE)に対して第2フィルタ(例えばメディアンフィルタ)を用いてフィルタ処理された値(x2,2,2)等がある。
例えば、IDが171の位置では、茎数yが1017本であり、x1,1,1が0.7であり、x1,1,2が0.65であり、x2,2,2が0.62である。ここでは、植生指数に対してフィルタ処理がなされることで、フィルタに設定された関数に応じた重みが乗算された後の植生指数が得られる。
【0028】
推定モデル生成部15は、フィルタ処理部14から得られる入力データを用いて、ベイズ線形回帰やベイズニューラルネットワーク等により、xi,j,kからyの推定値であるy^の確率分布を推定するモデルを生成する。推定モデルとしては、p(y^|x)として表される確率分布である。
このような入力データをXの入力として、yを推定する、ことができ、かつ、確率分布の形式で得られるものであれば、ベイズ線形回帰やベイズニューラルネットワーク等以外を用いて推定モデルを生成するようにしてもよい。
また、ここでは、推定モデル生成部15が、推定モデルを生成する場合について説明したが、位置毎の、茎数と複数種類の植生指数との関係を学習することで学習モデルを生成するようにしてもよい。
【0029】
フィルタ処理部16は、植生指数算出部12から出力されるデータであって、茎数を推定する対象の圃場を測定することで得られた取得画像データに対して、フィルタ処理部14と同様のフィルタ関数を用いてフィルタ処理を施す。
ここでは、フィルタ処理部14において用いられたフィルタ関数が、フィルタ処理部16に対して受け渡されており、これによりフィルタ処理部16は、推定モデルを生成するために用いられたフィルタ関数と同様のフィルタ関数を用いて、茎数を推定するための取得画像に基づく植生指数に対してフィルタ処理を行う。
フィルタ処理部16は、このようなフィルタ処理を施すことによって、緯度経度毎にni,jにフィルタkを適用することで、緯度経度毎の特徴量としてxi,j,k(lat,lon)が得られる。
【0030】
推定部17は、推定モデル生成部15で生成された、実地調査データと、フィルタ処理部14によってフィルタ処理された後の各分割領域の植生指数との関係から、植物の生育状態を示す評価項目における生育指標値の推定値である確率分布を推定する推定モデルに基づいて得た、第1取得画像データ及び第2取得画像データと、生育指標値との圃場において対応する位置における関係に基づいて、推定対象の圃場において植物の生育段階に応じて適切に得た茎数と植生指数値との関係を対応付けた推定対象の圃場を測定した第3取得画像データに応じた推定生育指標値を推定する。第3取得画像データは、推定対象取得画像データの一例である。推定生育指標値は、茎数、上位茎数、草丈、葉色のいずれであってもよい。この実施形態では推定生育指標値として、茎数を求める場合について説明する。
推定部17は、前記推定モデルに第3取得画像データを入力することで、茎数の確率分布を推定する。
推定部17は、フィルタ処理部16から得られるデータに対して、推定モデル生成部15から得られる確率分布モデルを通すことで、ある緯度経度における生育指標(ここでは茎数)の確率分布p(y^|lat,lon)を推定する。
【0031】
判定部18は、推定部17によって推定された結果に基づいて、複数の基準範囲のうち、推定結果である茎数がいずれの範囲に該当する確率が最も高いかについて、推定対象の領域の位置毎に判定する。
図5は、基準データの一例を示す図である。
基準データは、複数の基準範囲を含む。基準範囲は、茎数の範囲である。この図5では、第1基準、第2基準、第3基準、第4基準がある。
第1基準は、茎数が650(本/m)以下の範囲を示す。
第2基準は、茎数が650(本/m)を超え、750(本/m)以下の範囲を示す。
第3基準は、茎数が750(本/m)を超え、850(本/m)以下の範囲を示す。
第4基準は、茎数が850(本/m)を超える範囲を示す。
このような基準範囲は、例えば、平年値や目標値等に基づいて予め設定される。これにより、平年値や目標値に対して現在の生育状況が、適正であるか、茎数が少なすぎる、茎数が多すぎる等のように、どのような関係があるかを把握することが可能である。
【0032】
例えば、判定部18は、推定部17によって推定された結果である、生育指標の確率分布p(y^|lat,lon)を用いて、判定処理をする。ここでは判定処理としては2つの方法があげられる。
(判定方法1)
確率分布の関数の形が解っている場合には、茎数が例えば第2基準(茎数が650本を超え、750本以下)の範囲について確率分布を積分することで、この範囲に入る確率を求める。
(判定方法2)
確率分布に従って、擬似的なデータを数千から数万程度生成し、生成された疑似データが。それぞれの基準に何個程度の茎数が入る疑似データが生成されたかに基づいて、確率を求める。
【0033】
判定部18は、このようにして、ある緯度経度においては、茎数がどの基準に該当する確率が高いかを判定する。
判定部18は、判定された結果において、最も高いとして判定された確率が一定の基準値よりも低い場合や、いずれの基準にも同じ程度の確率であるとされた場合には、いずれの基準に該当するかを判定できないことを示す結果を出力してもよい。
【0034】
出力データ生成部19は、判定部18の判定結果に基づいて、位置毎に、該当する範囲に対応する表示態様に応じた出力画像を生成する。
図6は、出力データ生成部19によって生成された出力画像の一例を示す。この出力画像は、取得画像データの測定が行われた圃場を示す外周形状の内周において、判定部18の判定結果に基づく茎数の範囲について、位置毎にその茎数の範囲に応じて異なる色によって表されたデータである。この図6では、圃場の右側については、茎数が650(本/m)以下であり、圃場の中央側では右側よりも茎数が多くなり750(本/m)以下であり、圃場の左側においては、茎数が750(本/m)を超えることを示す。
ここでは、植生指数を位置毎に表す植生指数画像データを出力した場合には、植生指数と茎数の関係を理解している人でなければ、茎数を把握することが難しい。そのため出力データ生成部19は、茎数に応じて異なる色によって表す生育指標画像を生成するようにしたので、利用者に直感的に茎数を把握することができる。例えば、農業者は、このように茎数に応じた色によって出力された方が、茎数の推定結果を把握しやすいメリットがある。
【0035】
上述した実地調査データ取得部11、植生指数算出部12、実地調査地点データ抽出部13、フィルタ処理部14、推定モデル生成部15、フィルタ処理部16、推定部17、判定部18、出力データ生成部19は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。また、作物栽培管理支援システム1の各機能が、1台のコンピュータに搭載されることで、1つの装置として実現されてもよいし、インターネットなどのネットワークに接続されたサーバ装置に搭載されることで、例えばクラウド上において利用可能なシステムとして構成されてもよい。
また、外部から取得されたデータ、各部において算出された値、予め準備されたデータ(例えば基準データ)等については、記憶部に記憶されてもよい。この場合の記憶部は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。また、この記憶部は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0036】
次に上述した実施形態における作物栽培管理支援システム1の動作について説明する。
図7は、作物栽培管理支援システム1が推定モデルを生成する処理の流れを説明するフローチャートである。
推定モデルを生成するにあたり、圃場の実地調査とセンサによる圃場の測定が行われる。実地調査データ取得部11は、実地調査された結果である実地調査データを取得する。これは実地調査が行われた結果が、入力担当者によってキーボード、マウス、パネル等の入力装置を介して操作入力される内容に基づいて取得される(ステップS101)。
植生指数算出部12は、複数種類の取得画像データを取得し(ステップS102)、取得画像データから複数の異なる植生指数を算出する(ステップS103)。なお、ステップS101とステップS102の順番はお互いに入れ換えても良い。
【0037】
植生指数が算出されると、実地調査地点データ抽出部13は、植生指数算出部12によって算出された植生指数のうち、実地調査が行われた各位置(分割領域)に対応する植生指数をそれぞれ抽出する(ステップS104)。実地調査地点データ抽出部13によって植生指数が抽出されると、フィルタ処理部14は、各分割領域の植生指数に対してそれぞれフィルタ処理を行う(ステップS105)。
推定モデル生成部15は、実地調査データと、フィルタ処理部14によってフィルタ処理された後の各分割領域の植生指数との関係から、茎数の推定値であるy^の確率分布を推定する推定モデルを生成する(ステップS106)。
このようにして推定モデルが生成される。
【0038】
次に、図8は、作物栽培管理支援システム1が茎数を推定する処理の流れを説明するフローチャートである。
植生指数算出部12は、茎数を推定する対象の圃場を測定した取得画像データを複数種類取得し、取得した取得画像データの各分割領域について異なる植生指数を生成する(ステップS201)。フィルタ処理部16は、取得画像データの各分割領域の植生指数を取得するとともに、フィルタ処理部14において推定モデルを生成する際に用いられたフィルタ関数を取得する(ステップS202)。そしてフィルタ処理部16は、取得した各分割領域の植生指数に対してフィルタ関数を用いたフィルタ処理を行う(ステップS203)。
推定部17は、フィルタ処理された後の植生指数に対して、推定モデル生成部15によって生成された推定モデル(確率分布モデル)を適用することで、ある緯度経度における生育指標の確率分布を推定する(ステップS204)。生育指標の確率分布が生成されると、判定部18は、生育指標の確率分布に基づいて、複数の基準範囲のうち推定結果である茎数がいずれの基準範囲に該当する確率が最も高いかの判定を、圃場の各位置について行う(ステップS205)。
【0039】
判定結果が得られると、出力データ生成部19は、圃場における各位置について、該当する基準範囲に対応する表示態様に応じた出力画像を生成する(ステップS206)。そして出力データ生成部19は、生成した出力画像を外部に出力する。出力先としては、茎数の推定対象である圃場を管理する管理者の端末装置や、圃場を運営する農業者の端末装置等である。これにより、圃場の管理者や農業者は、出力された画像に基づいて茎数を把握することができる。例えば、茎数が推定された時期と推定結果である茎数との関係から、植物の生育状況を把握することができる。また、圃場のうち茎数が多めの領域や茎数が少なめの領域があれば、その領域に応じて、茎数に応じて施肥量を少なめ又は多めにするなどの対応や、生育を調整するための農薬を散布する等の対応を容易に検討することができる。
【0040】
また、小麦の栽培では、起生期、幼穂形成期、止葉期等のように、さまざまな生育の段階があり、その段階に応じて管理すべき生育指標が異なる。このような複数の生育段階を含む幅の広い期間を対象とする場合であっても、その時期や生育段階において、実地調査データと取得画像データとを取得し、取得画像データに基づく異なる植生指数を基にした生育指標の推定モデルを生成するようにしたので、複数種類の植生指数に対して重み付けされた値を基に確率分布を得ることができ、様々な生育段階にも最適な状態で対応可能な推定モデルとして得ることができる。これにより、様々は生育段階においても、その時期に適応した1つまたは複数の植生指数を考慮して茎数を推定することができる。また、植物の葉が繁っており、隣接する株から伸びる葉先と重なる場合であっても、精度よく茎数を推定することができる。例えば、生育段階や時期を考慮することなく1種類の植生指数のみを単独で用いて茎数を推定する場合に比べ、本実施形態における作物栽培管理支援システム1では、生育段階や時期に応じて最適な植生指数を選択、あるいは複数の植生指数を選択するような推定モデルを用いるようにしたので、精度良く茎数を推定することができる。
【0041】
ここで、小麦においては、生育段階によって土壌が見える比率や、葉の面積、草丈、葉色等が変化する。そのため、時期によって生育状況との相関が高い植生指数が変化する。
ここで下記の参考文献には、小麦と同じイネ科の水稲について、タンパク含有率と植生指数(この文献ではNDVI、NDRE、GNDVI(緑正規化植生指数))の相関係数の経時変化について記載されている。そのため、時期によって、タンパク含有量と相関が高い植生指数がNDVIである時期と、タンパク含有量と相関が高い植生指数がNDREである時期とがあり、時期によって相関が高い植生指数が異なることがいえる。
【0042】
[参考文献]
UAVを用いた水稲のタンパク含有率の推定に関する研究,金子大輝,他4名,2020年度(第69回)農業農村工学会大会講演会講演要旨集,p675-p676
【0043】
また、実地調査データと取得画像データを取得して推定モデルを生成した場合、その実地調査データが得られた圃場の近傍の地域であれば、概ね生育状況が同じであるといえるため、同じ推定モデルを用いて茎数を推定することができる。すなわち、地域に応じた推定モデルを、地域毎に準備しておくことで、その地域の生育状況を踏まえて茎数を推定することができる。
【0044】
以上説明した実施形態においては、作物栽培管理支援システム1は、小麦を対象として茎数を推定する場合について説明したが、他の植物を対象として茎数等を推定するようにしてもよい。他の植物としては、例えば、稲、大麦、ライ麦等のうちいずれであってもよい。
【0045】
また、本実施形態によれば、生育指標値を求めるために,近赤外線波長および可視光線波長を用いて測定された取得画像データだけでなく、赤色の端(Red Edge)の波長、短波長赤外光波長等を基に植生指数を求めるようにした。これにより、近赤外線波長および可視光線波長に基づくNDVIだけでなく近赤外線波長および赤色の端(Red Edge)の波長に基づくNDREなど、より多くの波長を併用するようにしたため、幅広い生育段階(異なる生育段階)であっても、茎数等を精度よく推定することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、推定モデル生成部15は、緯度経度の全ての位置について確率分布を求める場合について説明したが、隣接する緯度経度において取得画像データが一定値以内の差である場合には、その隣接する緯度経度を1つのグループとしてグルーピングし、そのグループ内で1つの確率分布を生成するようにしてもよい。これにより、計算量を削減することができる。このグルーピングは、隣接する緯度経度のグルーピングに限らず、取得画像データに対して一般のベクトル量子化手法を広く使ってグルーピングを行うことができる。
【0047】
また、例えば、図3に示すように、圃場の位置によって異なる色によって表された取得画像データから算出された植生指数に基づく植生指数画像データが得られている場合、この植生指数画像データに存在する色に基づいてn(例えば10)段階に分ける。これにより、植生指数画像データに含まれる色を10種類にすることができる。そして、各色のそれぞれについて確率分布を求めることで、推定するモデルを10個に絞ることもできる。これにより、計算量を低減することができる。
【0048】
また、上述した実施形態においては、実地調査データと取得画像データとの関係に基づく推定モデルが生成され、その推定モデルの推定精度がある程度高まるまで、実地調査データと取得画像データを準備することができれば、新たに実地調査データを追加で取得しなくても、生成された推定モデルを用いて、茎数を推定することができる。例えば、実地調査データと取得画像データとについて数年分蓄積され、推定モデルが生成された場合には、追加で実地調査データを取得しなくても(実地調査を行わなくても)、取得画像データを追加で得ることによって、一定の精度を保って、茎数を推定することができる。すなわち、推定部17は、所定期間分(例えば数年分)の実地調査をした結果を基に推定モデルが作成された場合には、追加の実地調査を用いた推定モデルの更新をすることなく、当該推定モデルを用いて生育指標値の確率分布を推定するようにしてもよい。
【0049】
上述した実施形態において、第1植生指数がNDVIであり、第2植生指数がNDREである場合について説明したが、第1植生指数がNDVIであり、第2植生指数がNDREであり、第3植生指数がNDWIであってもよい。このような場合、推定モデル生成部15が、生育状況を評価する評価項目(例えば茎数)と、NDVI、NDRE、NDWIとの関係を学習することで学習モデルを生成するようにすればよい。
また、上述の実施形態において、評価項目として茎数を用いる場合について説明したが、上位茎数、草丈、葉色を用いてもよく、この場合、上位茎数と、複数の植生指数との関係を学習することで学習済みモデルを生成してもよく、草丈と、複数の植生指数との関係を学習することで学習済みモデルを生成してもよく、葉色と、複数の植生指数との関係を学習することで学習済みモデルを生成してもよい。
【0050】
上述した実施形態における作物栽培管理支援システムにおける各部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0051】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…作物栽培管理支援システム,11…実地調査データ取得部,12…植生指数算出部,13…実地調査地点データ抽出部,14…フィルタ処理部,15…推定モデル生成部,16…フィルタ処理部,17…推定部,18…判定部,19…出力データ生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8