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特開2024-97565無人搬送車の運行管理システム、無人搬送車の運行管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097565
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】無人搬送車の運行管理システム、無人搬送車の運行管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240711BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001104
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】井阪 智大
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】下津 久明
(72)【発明者】
【氏名】植木 毅
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF01
5H301FF11
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301HH11
5H301HH13
5H301KK03
5H301KK04
5H301KK08
(57)【要約】
【課題】位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する状況下における無人走行車の運行を適切に管理することができる無人搬送車の運行管理システム、無人搬送車の運行管理方法を提供する。
【解決手段】実施形態による無人搬送車の運行管理システム1は、自車両の位置を取得できず、走行路に設けられている検出器5の検出結果に基づいて間接的に位置が推定される推定型AGV3と、自車両の位置を取得でき、直接的に位置が特定される特定型AGV4とが混在する環境下において、無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可するための通行権を設定し、通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する環境下における無人搬送車の運行を管理する運行管理システムであって、
管理装置と、
自車両の位置を取得できず、走行路に設けられている検出器の検出結果に基づいて前記管理装置側で間接的に位置が推定される第1の無人搬送車と、
自車両の位置を取得でき、取得した位置を前記管理装置に通知することによって前記管理装置側で直接的に位置が特定される第2の無人搬送車と、を備え、
前記管理装置は、
各無人搬送車の走行路を記憶している記憶部と、
前記検出器の検出結果に基づいて第1の無人搬送車の位置を推定する推定部と、
第2の無人搬送車からの通知に基づいて第2の無人搬送車の位置を特定する特定部と、
前記記憶部に記憶されている走行路、前記推定部による推定結果、前記特定部による特定結果に基づいて、各無人搬送車の位置を含む運行情報を取得する取得部と、
無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可するための通行権を設定する設定部と、
前記取得部で取得された各無人搬送車の情報に基づいて各無人搬送車の走行の開始および停止を指示するとともに、通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする運行指示部と、を備える無人搬送車の運行管理システム。
【請求項2】
前記設定部は、無人搬送車の移動方向において重複場所よりも手前側に予め設定されている進入待機位置への到着順に基づいて、無人搬送車に対して通行権を設定する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項3】
前記設定部は、無人搬送車の経路、無人搬送車の位置関係、無人搬送の種別、および、無人搬送車が搬送する物品の種類のうち少なくとも1つの情報に基づく優先順位に従って、無人搬送車に対して通行権を設定する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項4】
前記設定部は、1台の無人搬送車の走行が可能な単線区間、複数の無人搬送車の移動経路が交差する交差点、進入可能な無人搬送車の総数が制限されている制限エリアを重複場所として、通行権を設定する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項5】
前記設定部は、作業者が立ち入る可能性があって少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている立入区域をさらに重複場所として、無人搬送車に対して立入区域への進入を許可する通行権を設定する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項6】
前記運行指示部は、通行権が設定されている無人搬送車が存在している状況において、通行権が設定されていない無人搬送車が重複場所から予め設定されている安全距離よりも離れている場合には、当該通行権が設定されていない無人搬送車の走行を継続する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項7】
前記記憶部は、無人搬送車の運行パターンを複数記憶しており、
前記運行指示部は、無人搬送車の運行状況に基づいて運行パターンを動的に変更する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項8】
作業者が立ち入る可能性があって少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている立入区域への立ち入りを申請するために作業者が操作する操作部と、
立入区域への立ち入りの可否を作業者に報知する報知部と、をさらに備え、
前記運行指示部は、申請された立入区域の位置と無人搬送車の位置とに基づいて立ち入りの可否を判定し、判定結果を前記報知部により作業者に報知するとともに、判定結果に基づいて各無人搬送車の走行を指示する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム。
【請求項9】
位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する環境下における無人搬送車の運行を管理する運行管理方法であって、
自車両の位置を取得できない第1の無人搬送車の位置を、走行路に設けられている検出器の検出結果に基づいて推定する工程と、
自車両の位置を取得できる第2の無人搬送車の位置を、当該第2の無人搬送車からの通知によって特定する工程と、
無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可する通行権を設定する工程と、
通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする指示を与える工程と、
を含む無人搬送車の運行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無人搬送車の運行管理システム、無人搬送車の運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等において、部品の搬送などの作業の効率化や自動化を目的として無人搬送車を導入することがある。その場合、複数の無人搬送車が工場内を走行することが想定されるため、例えば特許文献1では、各無人搬送台車の将来的な位置を予測して無人搬送台車間の干渉の発生の有無を予測することにより、全ての無人搬送車の作業効率を低下させることなく干渉によるデッドロックを防止できるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-259131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場等に設置される産業用のシステムは、一般的に長期間の運用を想定していることが多い。そのため、実際の現場では、既に無人搬送車を運用している環境に、新たに無人搬送車が導入されることがある。その場合、同一作業を行う場合には同一仕様の無人搬送車が導入されると考えられるものの、例えば異なる作業を行うために仕様が異なる無人搬送車が導入されることがある。
【0005】
具体的には、例えば走行路に設置された検出器などによって管理装置側で間接的に位置が推定される無人搬送車を運用している環境に、自車両の位置を取得して管理装置に通知することによって管理装置側で直接的に位置を特定できる無人搬送車が導入されることが想定される。つまり、位置の取得態様が異なる無人搬送車が混在する環境下において、各無人搬送車の運行を管理することが必要になることが想定される。
【0006】
しかしながら、位置の取得態様が異なる無人搬送車が混在する環境下では、より厳密に言えば、位置の取得態様が異なる無人搬送車の走行路が少なくとも一部で重なる環境下では、必ずしも全ての無人搬送車の正確な現在位置をリアルタイムに特定できるとは限らないことから、現在位置を基準にした無人搬送車の制御が困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する状況下における無人走行車の運行を適切に管理することができる無人搬送車の運行管理システム、無人搬送車の運行管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による運行管理システムは、位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する環境下における無人搬送車の運行を管理するものであって、管理装置と、自車両の位置を取得できず、走行路に設けられている検出器の検出結果に基づいて管理装置側で間接的に位置が推定される第1の無人搬送車と、自車両の位置を取得でき、取得した位置を管理装置に通知することによって管理装置側で直接的に位置が特定される第2の無人搬送車と、を備えている。
【0009】
そして、管理装置は、各無人搬送車の走行路を記憶している記憶部と、検出器の検出結果に基づいて第1の無人搬送車の位置を推定する推定部と、第2の無人搬送車からの通知に基づいて第2の無人搬送車の位置を特定する特定部と、記憶部に記憶されている走行路、推定部による推定結果、特定部による特定結果に基づいて、各無人搬送車の位置を含む運行情報を取得する取得部と、無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可するための通行権を設定する設定部と、取得部で取得された各無人搬送車の情報に基づいて各無人搬送車の走行の開始および停止を指示するとともに、通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする運行指示部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による運行管理システムの構成例を模式的に示す図
図2】無人搬送車の走行路と移動経路の一例を模式的に示す図
図3】単線区間の一例を模式的に示す図
図4】交差点の一例を模式的に示す図
図5】制限エリアの一例を模式的に示す図
図6】立入区域の一例を模式的に示す図
図7】管理装置が実行する処理の流れを示す図その1
図8】管理装置が実行する処理の流れを示す図その2
図9】監視画面の表示態様の一例を模式的に示す図
図10】運行パターンの変更例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、運行管理システム1は、管理装置2と、複数台の無人搬送車とを備えている。本実施形態の場合、無人搬送車として、位置の取得態様が異なる1台以上の推定型AGV3と1台以上の特定型AGV4とが混在している。なお、AGVはAuto Guided Vehicleの略である。
【0012】
具体的には、推定型AGV3は、自車両の位置を取得できず、走行路に設けられている検出器5の検出結果に基づいて、管理装置2側で間接的に位置が推定される無人搬送車である。推定型AGV3は、無線通信部3aを備えており、無線端末6を介して管理装置2から走行の開始および停止が指示される。この推定型AGV3は、第1の無人搬送車に相当する。ただし、「第1」および後述する「第2」は、無人搬送車の種別を示すために付したものであり、無人搬送車の数を限定するものではない。
【0013】
検出器5は、例えばレーザ距離計やカメラあるいは近距離無線通信タグなどによって構成されており、無人搬送車の走行路に沿って複数設置されている。また、検出器5は、管理装置2と直接的に、または、無線端末6を介して間接的に通信可能に接続されており、検出結果を管理装置2に通知する。この検出器5は、無人搬送車を検出できる状態であれば、走行路上に設置してもよいし、走行路に埋め込まれていてもよいし、走行路の脇に設置されていてもよい。なお、検出器5をレーザ距離計やカメラで構成した場合には、推定型AGV3に限らず、特定型AGV4も検出可能である。
【0014】
特定型AGV4は、無線通信部4aに加えて、自車両の現在位置を取得する位置取得部4bを備えており、取得した自車両の位置を管理装置2に通知する。つまり、特定型AGV4は、自車両の位置を取得でき、管理装置2側で直接的に位置が特定される無人搬送車である。位置取得部4bは、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)、カメラ、それらの組み合わせによるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、GPS(Global Positioning System)などで構成することができる。この特定型AGV4は、第2の無人搬送車に相当する。
【0015】
これらの無人搬送車は、例えば図2に一例として示す走行路(G)を、所定の移動経路(K)に沿って移動する。なお、図2では異なる建物(A1)、建物(A2)および建物(A3)間を跨いで設置されていて、途中に幾つかの分岐が設けられている走行路(G)を例示しているが、走行路の形状や分岐状態、移動経路(K)の数やルートなどは、実際の現場に合わせて適宜設定すればよく、図2に示したものに限定されない。
【0016】
走行路(G)は、1台の無人搬送車の走行が可能な単線区間(G1)、2台の無人搬送車がいわゆる対面走行可能な複線区間(G2)、複数の無人搬送車の移動経路が交差する交差点(G3)などが存在する。また、走行路(G)には、進入可能な無人搬送車の総数が制限されている制限エリア(R)への進入路および退出路として利用される入退出区間(G4)、ならびに、作業者(M)が立ち入る可能性があって少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている立入区域(G5)が存在する。なお、図2では、一部の単線区間、複線区間および交差点にG1、G2、G3の符号を付している。
【0017】
また、走行路(G)には、無人搬送車の移動経路(K)として、例えば地点(P1a)と地点(P1b)との間を往復移動する移動経路(K1)、地点(P2a)と地点(P2b)との間を往復移動する移動経路(K2)、地点(P3a)と地点(P3b)との間を往復移動する移動経路(K3)、地点(P4a)と地点(P4b)との間を往復移動する移動経路(K4)、地点(P5)を起点として巡回する移動経路(K5)が設定されている。なお、図2では、説明のために複線区間(G)に4つの経路を示しているが、本実施形態では移動方向が定められた2つの経路が設けられている状況を想定している。
【0018】
図1に戻り、管理装置2は、有線通信方式、無線通信方式あるいはそれらの組み合わせによって構成された通信部11を介して、検出器5、無線端末6、申請端末7、監視装置8、生産管理サーバ9などとの間で各種の通信を行う。監視装置8は、運行状況を監視するために運行を管理する主体である管理装置2とは別に設けられているコンピュータであり、運行状況を表示するディスプレイや警告灯などの表示装置8a、管理者が操作を入力する入力装置8bなどを備えている。生産管理サーバ9は、生産状況を管理するコンピュータであり、無人搬送車が搬送すべき部品等の数や位置や、無人搬送車が搬送した部品等の数や位置などの生産に関するデータを管理している。
【0019】
この管理装置2は、いわゆるコンピュータとして構成されており、制御部10、通信部11、記憶部12などを備えている。制御部10は、図示しないCPUなどで構成されており、記憶部12に記憶されているプログラムを実行することにより運行管理システム1を制御する。この記憶部12には、詳細は後述するが、無人搬送車の走行路、無人搬送車の移動経路、無人搬送車の移動パターンなどの運行を管理するための各種のデータが、図1にDB13として示すデータベースに記憶されている。
【0020】
管理装置2の制御部10には、推定部20、特定部21、取得部22、運行指示部23および設定部24などの各種の機能部が設けられている。なお、各機能部は本実施形態では制御部10でプログラムを実行することによってソフトウェアで実現されているが、ハードウェアで実現することもできる。また、管理装置2は、例示した以外の機能部を備えていてもよい。
【0021】
推定部20は、検出器5の検出結果に基づいて推定型AGV3の位置を推定する。特定部21は、特定型AGV4からの通知によって特定型AGV4の位置を特定する。取得部22は、DB13に記憶されている走行路、推定部20による推定結果、および特定部21による特定結果に基づいて、無人搬送車の位置や走行状態を含む運行情報を取得する。
【0022】
運行指示部23は、取得部22で取得された各無人搬送車の情報に基づいて各無人搬送車の走行の開始および停止を指示する。また、運行指示部23は、以下に説明するように、設定部24によって通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については、重複場所への進入を不許可とする。
【0023】
この設定部24は、無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可する通行権を設定する。重複場所としては、上記した単線区間(G1)、交差点(G3)、入退出区間(G4)などが考えられる。また、設定部24は、安全性の観点から進入を許可制にする方がよいと考えられる上記した立入区域(G5)を重複場所として通行権を設定する。これは、以下の理由による。
【0024】
例えば、単線区間(G1)は、図3に一例として示すように、白抜きの矢印にて示すように図示下方から上方への移動が許可されている移動経路(K10)と、黒塗りの矢印にて示すように図示上方から下方への移動が許可されている移動経路(K11)とによって経路が共有される場所である。この単線区間(G1)には無人搬送車(V10)と無人搬送車(V11)とが同時に進入することはできないことから、設定部24は、単線区間(G1)を通行権の設定対象としている。この単線区間(G1)への進入側および単線区間(G1)からの退出側には検出器5a、検出器5b、検出器5c、検出器5dが設けられている。
【0025】
交差点(G3)は、例えば図4に一例として示すように、白抜きの矢印にて示すように図示下方から上方への移動が許可されている移動経路(K30)と、黒塗りの矢印にて示すように図示上方から下方への移動が許可されている移動経路(K31)に対して、図示左方から別の移動経路(K32)が交差するような場所である。例えば交差点(G3a)に無人搬送車(V30)と無人搬送車(V32)とが同時に進入することはできず、また、交差点(G3b)にも無人搬送車(V31)と無人搬送車(V32)とが同時に進入することができないことから、設定部24は、交差点(G3)を通行権の設定対象としている。この交差点(G3)への進入側および交差点(G3)からの退出側には検出器5e、検出器5f、検出器5g、検出器5h、検出器5iが設けられている。
【0026】
入退出区間(G4)は、図5に一例として示すように、例えば部品の集積場所などから退出する移動経路(K40)と進入する移動経路(K41)とが設定されている。なお、図5では、部品の違いを便宜的にハッチングの違いによって示しているが、部品の種類や集積される位置などは一例であり、これに限定されない。
【0027】
このような制限エリア(R)では、複数の無人搬送車(V40、V41、V42)が進入することがあるが、経路や大きさ等の観点から無人搬送車の総数が例えば3台に設定されていることがある。その場合、4台目となる無人搬送車(V43)の入退出区間(G4)への進入、つまりは、制限エリア(R)への進入はできないことから、設定部24は、入退出区間(G4)を通行権の設定対象としている。この入退出区間(G4)への進入側および入退出区間(G4)からの退出側には検出器5j、検出器5kが設けられている。また、制限エリア(R)内には、単線区間(G1)や交差点(G3)が存在することもある。ただし、図6に示す制限エリア(R)は一例であり、許容される無人搬送車の総数などは適宜設定すればよい。
【0028】
立入区域(G5)は、図6に一例として示すように、作業者が立ち入る可能性があって、少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている区域である。図6の場合、立入区域(G5)は、作業者(M)やフォークリフトなどの有人搬送車30の通路(L)が、無人搬送車の移動経路(K50)を例えば図示左右方向に横断する態様で設けられている。この場合、無人搬送車(V50)と作業者や有人搬送車30とが立入区域(G5)の近傍に同時に存在する可能性がある。
そのため、設定部24は、安全性を考慮して立入区域(G5)を通行権の設定対象とする。以下、重複場所には立入区域(G5)も含まれるものとする。また、通路(L)は作業者や有人搬送車30が移動するために設けられているものであるが、例えば図1に示したように建物(A1)の外部の部品集積場所(X1)と建物(A1)内の部品集積場所(X2)との間で部品を搬送したり、建物(A1)内から製品を搬出したりするために利用されることもある。この立入区域(G5)への進入側および立入区域(G5)からの退出側には検出器5m、検出器5nが設けられている。また、通路(L)側には、立入区域(G5)への進入側および立入区域(G5)からの退出側にそれぞれ申請端末7が設置されている。なお、図6に示す立入区域(G5)の態様は一例である。
【0029】
さて、設定部24は、通行権を、重複場所への進入を待機する進入待機位置に到達する無人搬送車や作業者に対して設定する。なお、進入待機位置とは、必ずしも無人搬送車が待機つまりは停止する位置という訳ではなく、その位置で停止すれば重複場所に進入しないという意味である。また、進入待機位置は、運用対象となる無人搬送車に想定される移動速度に基づいて、進入待機位置に到達した時点で停止指示を与えればいわゆる急ブレーキを掛けたり荷崩れを起こしたりすることなく余裕をもって停止できる位置に予め設定することができる。
【0030】
本実施形態の場合、重複場所に進入する手前側の所定の位置、および、重複場所から退出した後の所定の位置には、それぞれ検出器5が設けられている。そして、重複場所の手前側において検出器5が設置されている位置が進入待機位置に相当し、重複場所から退出した後において検出器5が設置されている位置が重複場所からの退出が完了したことを確認する退出確認位置に相当する。
【0031】
具体的には、図3の場合であれば、移動経路(K10)において検出器5aが設けられている位置が単線区間(G1)への進入待機位置となり、検出器5bが設けられている位置が単線区間(G1)からの退出確認位置となる。同様に、移動経路(K11)において検出器5cが設けられている位置が進入待機位置となり、検出器5dが設けられている位置が退出確認位置となる。なお、図4に示す交差点(G3)や図5に示す入退出区間(G4)についても同様である。
【0032】
このとき、設定部24は、基本的には、進入待機位置への到達順に基づいて通行権を設定する。例えば図3の例であれば、無人搬送車(V11)が先に進入待機位置である検出器5cの設置位置に到達しており、通行権が設定されて単線区間(G11)に進入していることになる。ただし、設定部24は、例えば複数の無人搬送車が同じ重複場所に向かって移動しており、概ね同時期に重複場所に進入することになる場合には、無人搬送車の経路、無人搬送車の位置関係、無人搬送の種別、および、無人搬送車が搬送する物品の種類のうち少なくとも1つの情報に基づく優先順位に従って通行権を設定する。
【0033】
例えば図4の例示において、無人搬送車(V30)と無人搬送車(V32)とが交差点(G3a)に向かって移動しており、無人搬送車(V30)が移動経路(K32)に進入する経路で運用されているとする。その場合、無人搬送車(V30)が先に進入待機位置である検出器5eの設置位置に到達したとしても、無人搬送車(V32)が存在することから進入することができなくなる。そのため、設定部24は、無人搬送車の経路や位置関係に基づいて、まず無人搬送車(V32)に対して通行権を設定して交差点(G3a)を通過させ、その後、無人搬送車(V30)に対して通行権を設定して交差点(G3a)への進入を許可することができる。
【0034】
あるいは、図4の例示において、無人搬送車(V30)が例えば交差点(G3a)を直進する経路で運用されており、部品を搬送している無人搬送車(V30)と、空荷の無人搬送車(V32)とが交差点(G3a)に同時期に進入しようとしているとする。その場合、設定部24は、例えば荷物を搬送している無人搬送車を優先するという設定がされている場合には、無人搬送車(V30)の移動を優先して通行権を設定する。なお、ここで説明した優先順位付けは一例であり、例えば空荷の無人搬送車を優先する設定がされている場合には無人搬送車(V32)に対して優先的に通行権が設定される。また、双方の無人搬送車が部品を搬送している場合には部品の種類によって予め定められている優先順位に従って通行権が設定される。つまり、優先順位は、作業内容等に応じて適宜設定することができる。
【0035】
また、設定部24は、立入区域(G5)については、作業者からの申請に基づいて通行権を設定する。図1に示すように、管理装置2は申請端末7と接続されており、この申請端末7には、作業者が立ち入りを申請するために操作する操作部としてのスイッチ7aと、立ち入りの可否を作業者に報知する報知部としてのランプ7bとが設けられている。スイッチ7aは、管理装置2や、管理装置2に接続されている図示しないデジタルIO機器などに接続されており、スイッチ7aがオンされると管理装置2側でそれを把握することができる。また、ランプ7bは、赤と緑の2種類の表示が可能であり、赤が点灯している場合には進入禁止、緑が点灯している場合には進入許可を報知する。
【0036】
そして、設定部24は、先に立入区域に到達する側に通行権を設定したり、所定の優先順位に従って通行権を設定したりするなど、上記した無人搬送車の場合と同様に立入区域への進入に対して通行権を設定する。なお、図1に示す申請端末7の構成は一例であり、例えばスピーカやブザーなどを設けて音声により報知したり、異なる報知態様を組み合わせた構成としたりすることができる。また、例えばフォークリフトのような有人搬送車30を運転する作業者が携帯していて、無線端末6あるいは管理装置2と通信可能な携帯端末31を操作部および報知部として用いる構成とすることもできる。
【0037】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
産業用のシステムは一般的に長期間の運用が想定されているため、実際の現場では、例えば推定型AGV3を運用している環境に新たに特定型AGV4が導入されることがある。そして、位置の取得態様が異なる無人搬送車が混在する場合において、無人搬送車の走行路が少なくとも一部で重なる環境下では、とくに推定型AGV3についてはその正確な位置を必ずしもリアルタイムに取得できる訳ではないことから、現在位置を基準にした無人搬送車の制御が困難であるという問題がある。換言すると、推定が含まれている現在位置を単純に基準にしてしまうと、無人搬送車の運行に支障が出るおそれがある。
【0038】
そこで、管理装置2は、図7および図8に示す処理を実行することにより、位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する状況下における無人走行車の運行を適切に管理している。これらの処理は、個別には上記した推定部20、特定部21、取得部22、運行指示部23および設定部24によって行われるものであるが、以下では管理装置2を主体にして説明する。
【0039】
管理装置2は、まず、各無人搬送車の運行情報を取得する(S1)。この運行情報には、各無人搬送車の位置や速度、記憶部12に記憶されている移動経路、物品の搬送状況などが含まれている。また、管理装置2は、例えば生産管理サーバ9から無人搬送車が搬送すべき物品の集積場所の位置や集積状況などを取得して運行情報として管理する。そして、管理装置2は、それらの運行情報に基づいて、各無人搬送車の運行を開始する(S2)。
【0040】
運行を開始すると、管理装置2は、運行状況を表示する(S3)。本実施形態の場合、管理装置2は、監視装置8に対して運行情報を送信することにより、表示装置8aに運行状況を表示する。例えば、図9に運行状況を表示する表示態様の一例を示すように、表示装置8aには、運行管理システム1の全体的な状態を表示する表示エリア(M1)、無人搬送車の移動方向、位置および移動経路を模式的に表示する表示エリア(M2)、各無人搬送車の状態を表示する表示エリア(M3)、異常などの発生履歴を時刻と共に表示する表示エリア(M4)などが設けられている。この表示は、随時更新されていく。なお、図9に示す表示態様は一例であり、他の情報を表示することができる。
【0041】
そして、管理装置2は、運行を管理しつつ、進入待機位置への到達車両があるか否かを判定する(S4)。この到達車両は、進入待機位置に到達した無人搬送車を意味する。管理装置2は、到達車両がある場合(S4:YES)、優先車両があるかをさらに判定する(S5)。この優先車両は、重複場所への進入を優先すべき無人搬送車を意味しており、上記した優先順位付けに従って判定される。
【0042】
管理装置2は、例えば到達車両が1台の場合には優先車両が存在しないことから(S5:NO)、進入待機位置に到達した到達順に従って通行権を設定する(S6)。つまり、管理装置2は、ある無人搬送車が重複場所に進入しようとしている状況において、他の無人搬送車が進入待機位置に到達していなければ、つまりは、他の無人搬送車が重複場所からある程度離れている場合には、重複場所に進入しようとしている無人搬送車を停止させることなく重複場所への進入を許可する。これにより、効率化を図ることができる。この場合、無人搬送車を停止させる必要がない範囲を、非停止ゾーンとして別途設定することができる。なお、図示は省略するが、通行権を設定された無人搬送車が重複場所を通過して退出確認位置に到達した時点で通行権が解除される。
【0043】
これに対して、管理装置2は、複数の無人搬送車が同時期にそれぞれの進入待機位置に到達した場合には(S5:YES)、つまりは、複数の無人搬送車が重複場所の近傍を移動している場合には、上記した優先順位付けに従って優先車両を特定し、特定した優先車両に通行権を設定する(S7)。これにより重複場所における接触等の回避と運行の効率化とを図ることができる。
【0044】
この場合、優先車両でない無人搬送車は、通行権が設定されていないことから移動を停止して、通行権が発行されるのを待機することになる。そして、図示は省略するが、通行権が設定された優先車両が重複場所を通過して退出確認位置に到達したことが確認されると、優先車両に対する通行権が解除され、待機中の無人搬送車に対して新たに通行権が設定される。なお、通行権の設定が必要ない場合には(S4:NO)、これらの処理は省略される。
【0045】
続いて、管理装置2は、運行パターンの変更が必要であるか否かを判定する(S8)。例えば図10にパターン変更例その1として示すように、制限エリア(R)内に位置する無人搬送車(V60)が退出経路(K60)に移動する状況を想定する。また、無人搬送車(V60)は、破線にて示す移動パターン(P1)と移動パターン(P2)の何れかの経路で退出することができるが、退出までに要する時間は移動パターン(P1)のほうが短いものとする。なお、図10では検出器5および入退出区間(G4)の図示を省略している。
【0046】
この場合、通常であれば、作業効率に鑑みて移動時間が短くなる移動パターン(P1)で運行されると想定される。ただし、パターン変更例その2として示すように、移動パターン(P1)上で他の無人搬送車(V61)が作業中である場合、無人搬送車(V61)の作業が完了して移動するのを待機するよりも、移動時間が多少増えたとしても移動パターン(P2)で退出するほうが効率的である場合が想定される。また、図示は省略するが、移動経路が同じであっても搬送する部品の重量や形状などによっては、移動速度を制限する必要がある状況や、部品不足により作業が遅れたり滞っていたりする場所への搬送を優先したい状況なども想定される。つまり、無人搬送車の位置や生産計画、各エリアでの作業の進捗度などの無人搬送車の運行状況によって、運行パターンを変更する必要がある状況が発生し得る。
【0047】
そのため、管理装置2は、運行パターンの変更が必要であると判定した場合には(S8:YES)、運行パターンを変更する(S9)。一方、管理装置2は、運行パターンの変更が必要でないと判定した場合には(S8:NO)、ステップS9の処理を省略する。
続いて、管理装置2は、稼動終了の指示があったか否かを判定する(S10)。稼動終了の指示は、監視装置8を監視している例えば管理者によって行われる。管理装置2は、稼動終了の指示があった場合には(S10:YES)、各無人搬送車を所定の退避位置に移動させ、運行を終了する(S11)。
【0048】
これに対して、管理装置2は、稼動終了の指示がなければ(S10:NO)、立入申請があったか否かを判定する(S12)。管理装置2は、立入申請がない場合には(S12:NO)、ステップS1に移行して上記した各処理を繰り返す。一方、管理装置2は、立入申請があった場合には(S12:YES)、立入処理を実行する(S13)。なお、本実施形態では説明の簡略化のためにフローチャート形式で示しているが、立入申請の有無の判定は、いわゆる割り込み処理として作業者が申請したタイミングで実施される。
【0049】
この立入処理では、管理装置2は、図6に示すように、通路(L)に設けられている申請端末7の位置に基づいて申請された立入区域の位置を特定し(S20)、立入区域の近傍を移動する無人搬送車があるか否かを判定する(S21)。このとき、管理装置2は、立入区域に向かって移動する無人搬送車があるか否か、および、立入区域内を移動する無人搬送車がある否かを判定している。そして、管理装置2は、立入区域の近傍を移動する無人搬送車がない場合には(S21:NO)、作業者側に通行権を設定し(S24)、ランプ7bや音声などによって立ち入りが許可されたこを作業者に報知する(S25)。このように作業者側に通行権を設定することによって、無人搬送車に通行権が設定されることが禁止される。つまり、管理装置2は、立入区域に無人搬送車が進入しない状況にした後、立入区域に作業者が立ち入ることを許可する。
【0050】
一方、管理装置2は、立入区域の近傍を移動する無人搬送車がある場合には(S21:YES)、立入区域への進入前であれば該当する無人搬送車を停止させ、立入区域内を移動中であれば立入区域から速やかに退出させる(S22)。そして、管理装置2は、無人搬送車の停止または退出を確認し(S23)、停止または退出が確認できていない場合には(S23:NO)、確認できるまで待機する。
【0051】
この場合、近傍の無人搬送車の現在位置が立入区域への進入前であったならば、現在位置で停止するように指示を与えた後、所定時間内に進入待機位置に到達していないことが確認できれば、推定型AGV3であっても停止指示を出した位置で停止していると判断することができるし、進入待機位置まで到達していれば、一定時間検出され続けていれば停止していると判断できる。また、特定型AGV4であれば、通知される現在位置が変化していないことを確認すれば停止したことを確認できる。また、現在位置で停止させる構成としたことにより、例えば進入待機位置まで移動した後に停止させる構成と比べると、進入待機位置で停止するはずであると分かっていても自身に向かってくる無人搬送車があると作業者が不安に感じるおそれがあるが、そのようなおそれを抑制することができる。
【0052】
また、無人搬送車が立入区域内を移動中であった場合には、退出確認位置に到達したことが確認された時点で、推定型AGV3であっても立入区域から退出したことを確認できる。つまり、運行管理システム1では、進入待機位置および退出確認位置に設けた検出器5により、単に無人搬送車の位置を確認するだけでなく、無人搬送車の停止や退出という作業者の安全に関わる情報の取得をも可能にしている。
【0053】
無人搬送車の停止を確認すると、管理装置2は、上記したように作業者側に通行権を設定し(S24)、立ち入りが許可されたこを作業者に報知する(S25)。そして、管理装置2は、作業者の退出を確認できたか否かを判定し(S26)、退出が確認できていない場合には(S26:NO)、退出が確認できるまで待機する。一方、管理装置2は、退出が確認できた場合には(S26:YES)、作業者側に設定した通行権を解除し(S27)、立ち入り許可の報知を解除する(S28)。
【0054】
このとき、管理装置2は、申請された立入区域から退出する側に設置されている申請端末7が操作されると、作業者が退出したと判定する。つまり、作業者の移動方向において立入区域よりも手前に設置されている申請端末7は立入区域への立ち入りを申請するために利用され、移動方向において立入区域よりも奥側に設置されている申請端末7は立入区域からの退出を申請するために利用される。なお、所定の時間が経過しても退出を確認できていない場合には、管理装置2は、ランプ7bを点滅させたり携帯端末31に通知したりすることにより、作業者に対して退出確認を促す構成とすることができる。
【0055】
続いて、管理装置2は、作業者の立ち入りに伴って停止させた無人搬送車があるか否かを判定し(S29)、停止させた無人搬送車がある場合には(S29:YES)、その無人搬送車の走行を再開した後に(S30)、あるいは、停止させた無人搬送車がない場合には(S29:NO)そのままリターンする。
【0056】
このように、管理装置2は、重複場所への進入を許可する通行権を設定することにより、位置の取得態様が異なる無人搬送車が混在する環境下において、重複場所や立入区域での無人搬送車の運行を管理している。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
無人搬送車の運行管理システム1は、位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する環境下における無人搬送車の運行を管理するものであって、管理装置2と、自車両の位置を取得できず、走行路に設けられている検出器5の検出結果に基づいて管理装置2側で間接的に位置が推定される第1の無人搬送車としての推定型AGV3と、自車両の位置を取得でき、取得した位置を管理装置2に通知することによって管理装置2側で直接的に位置が特定される第2の無人搬送車としての特定型AGV4と、を備えている。
【0058】
そして、管理装置2は、無人搬送車の走行路を記憶している記憶部12と、検出器5の検出結果に基づいて推定型AGV3の位置を推定する推定部20と、特定型AGV4からの通知に基づいて特定型AGV4の位置を特定する特定部21と、記憶部12に記憶されている走行路、推定部20による推定結果、特定部21による特定結果に基づいて各無人搬送車の位置を含む運行情報を取得する取得部22と、無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可するための通行権を設定する設定部24と、取得部22で取得された各無人搬送車の情報に基づいて各無人搬送車の走行の開始および停止を指示するとともに、通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする運行指示部23と、を備えている。
【0059】
これにより、従来のシステムに新たに無人搬送車が導入された場合などのように推定型AGV3と特定型AGV4とが混在する環境下において、無人搬送車の走行路が重なる重複場所が存在する場合であっても、無人搬送車の接触等を抑制することができ、各無人走行車の運行を適切に管理することができる。
【0060】
また、無人搬送車の運行管理方法は、位置の取得態様が異なる無人走行車が混在する環境下における無人搬送車の運行を管理するものであって、自車両の位置を取得できない第1の無人搬送車の位置を、走行路に設けられている検出器5の検出結果に基づいて推定する工程と、自車両の位置を取得できる第2の無人搬送車の位置を、当該第2の無人搬送車からの通知によって特定する工程と、無人搬送車に対して、他の無人搬送車と移動経路が重なる重複場所への進入を許可する通行権を設定する工程と、通行権が設定されている無人搬送車については重複場所への進入を許可する一方、通行権が設定されていない無人搬送車については重複場所への進入を不許可とする指示を与える工程と、を含んでいる。
【0061】
これにより、従来のシステムに新たに無人搬送車が導入された場合などのように推定型AGV3と特定型AGV4とが混在する環境下において、無人搬送車の走行路が重なる重複場所が存在する場合であっても、無人搬送車の接触等を抑制することができ、各無人走行車の運行を適切に管理することができるなど、上記した運行管理システム1と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、運行管理システム1では、設定部24は、無人搬送車の移動方向において重複場所よりも手前側に予め設定されている進入待機位置への到着順に基づいて、無人搬送車に対して通行権を設定する。これにより、進入待機位置において無人搬送車を必ずしも停止させる必要が無くなり、無人搬送車を効率的に運行させることができる。
【0063】
また、運行管理システム1では、設定部24は、無人搬送車の経路、無人搬送車の位置関係、無人搬送の種別、および、無人搬送車が搬送する物品の種類のうち少なくとも1つの情報に基づく優先順位に従って、無人搬送車に対して通行権を設定する。これにより、作業効率の改善を図ることができる。
【0064】
また、運行管理システム1では、設定部24は、1台の無人搬送車の走行が可能な単線区間、複数の無人搬送車の移動経路が交差する交差点、進入可能な無人搬送車の総数が制限されている制限エリアを重複場所として、通行権を設定する。これにより、他の無人搬送車と接触する可能性を抑制することができる。
【0065】
また、運行管理システム1では、設定部24は、作業者が立ち入る可能性があって少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている立入区域をさらに重複場所として、無人搬送車に対して立入区域への進入を許可する通行権を設定する。これにより、作業者の安全性を確保することができる。
【0066】
また、運行管理システム1では、運行指示部23は、通行権が設定されている無人搬送車が存在している状況において、通行権が設定されていない無人搬送車が重複場所から予め設定されている安全距離よりも離れている場合には、当該通行権が設定されていない無人搬送車の走行を継続する。これにより、移動方向に重複場所があるものの、安全な距離だけ離間している無人搬送車の移動を停止する必要が無くなるため、無人搬送車を効率的に運行させることができる。
【0067】
また、運行管理システム1では、記憶部12は、無人搬送車の運行パターンを複数記憶しており、運行指示部23は、無人搬送車の運行状況に基づいて運行パターンを動的に変更する。これにより、無人搬送車の位置や生産計画あるいは作業の進捗度などに基づいて無人搬送車の運行パターンを変更することができ、各無人搬送車を効率的に運行させることができる。
【0068】
また、運行管理システム1は、作業者が立ち入る可能性があって少なくとも一部が無人搬送車の走行路と重なっている立入区域への立ち入りを申請するために作業者が操作する操作部と、立入区域への立ち入りの可否を作業者に報知する報知部と、をさらに備えている。そして、運行指示部23は、申請された立入区域の位置と無人搬送車の位置とに基づいて立ち入りの可否を判定し、判定結果を報知部により作業者に報知するとともに、判定結果に基づいて各無人搬送車の走行を指示する。これにより、立入区域における作業者の安全性を確保することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
例えば、設定部24は、第1の無人搬送車が走行する走行路において、直近で第1の無人搬送車が検出された位置から、走行方向において次に第1の無人搬送車が検出されると想定される位置までの区間を重複場所として、通行権を設定する請求項1に記載の無人搬送車の運行管理システム1。これにより、不具合などによって第1の無人搬送車が計画にない停止状態になってしまい、その現在位置を取得できない場合などにおいて、安全性を確保することができる。なお、この場合には異常を報知する構成とし、放置された異常を管理者が確認し、またあ、現場の安全を確認した時点で、管理者の操作により当該場所の通行権を解除すればよい。
【符号の説明】
【0071】
図面中、1は運行管理システム、2は管理装置、3は推定型AGV(第1の無人搬送車)、4は特定型AGV(第2の無人搬送車)、5は検出器、7は申請端末(操作部、報知部)、7aはスイッチ(操作部)、7bはランプ(報知部)、12は記憶部、20は推定部、21は特定部、22は取得部、23は運行指示部、24は設定部、31は携帯端末(操作部、報知部)を示す。
図1
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図10