(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097574
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240711BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001113
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡部 陽介
(72)【発明者】
【氏名】横田 樹広
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる情報処理装置を提供すること。
【解決手段】対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記領域内の水みちを示す水みち情報と、前記領域内の緑被を示す緑被情報とに基づいて、前記評価値を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記水みち情報が示す水みちと、前記緑被情報が示す緑被の輪郭との1つ以上の交点を1つ以上の相乗効果点として特定し、特定した前記1つ以上の相乗効果点に前記評価値を算出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記1つ以上の相乗効果点毎に、表流水の流れ易さを示す第1ポテンシャルと、生物の棲み易さを示す第2ポテンシャルとのそれぞれを算出し、前記1つ以上の相乗効果点毎に算出した前記第1ポテンシャル及び前記第2ポテンシャルに基づく前記評価値を算出する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記1つ以上の相乗効果点毎に、集水性スコアと近接性スコアとに応じた統計値に基づいて前記第1ポテンシャルを算出する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記1つ以上の相乗効果点と、前記1つ以上の相乗効果点毎に算出した前記評価値と、指標生物が活動する範囲を示す範囲情報とに基づいて、前記領域内の各位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す相乗効果多寡情報を生成する、
請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記相乗効果多寡情報を含む相乗効果多寡画像を生成し、生成した前記相乗効果多寡画像を表示する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記相乗効果多寡画像は、前記領域内の地図画像上に、前記相乗効果多寡情報が重畳された画像である、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する、
情報処理方法。
【請求項10】
コンピューターに、
対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
グリーンインフラに関する技術についての研究、開発が行われている。ここで、グリーンインフラは、自然環境の多様な機能を生かした持続可能なまちづくり、地域づくり等のことである。
【0003】
グリーンインフラに関する提案を行う場合、生物多様性、水循環、景観、暑熱等それぞれの向上についての複合的な効果を発現させることが必須要件となる。このため、グリーンインフラに関する提案では、生物多様性、水循環、景観、暑熱等の個々を向上させる効果を最大化させるよりも、生物多様性、水循環、景観、暑熱等それぞれの向上についての複合的な効果を発現させることが可能な緑地計画を立案する必要がある。
【0004】
ここで、近年、生物多様性、水循環、景観、暑熱等のうちの生物多様性及び水循環の損失は、大きな社会課題として取り上げられることが多い。このため、緑地計画の立案には、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果を評価するための手法の確立が求められている。これは、このような手法が、SDGs(Sustainable Development Goals)の基盤分野として重要視される生物多様性及び水循環それぞれの回復に同時貢献可能な立案を可能にするからである。
【0005】
これに関し、生物多様性の向上についての評価値を算出する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、特許文献1に記載された方法以外にも、水循環の向上についての評価値を算出する方法も知られている。しかしながら、これらの方法は、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての評価値を算出しているに過ぎない。すなわち、これらの方法は、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての効果を評価する方法に過ぎず、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果を評価することができるわけではない。また、これらの評価値の算出方法は、評価の単位、指標、データセット、可視化の単位等が互いに異なるため、単純に組み合わせることが困難である。その結果、これらの方法は、対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定することが困難な場合があった。これは、前述したような生物多様性及び水循環それぞれの回復に同時貢献可能な立案を行う上で、望ましくないことである。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、前記領域内の水みちを示す水みち情報と、前記領域内の緑被を示す緑被情報とに基づいて、前記評価値を算出する、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、前記水みち情報が示す水みちと、前記緑被情報が示す緑被の輪郭との1つ以上の交点を1つ以上の相乗効果点として特定し、特定した前記1つ以上の相乗効果点に前記評価値を算出する、という手段を採用する。
【0012】
また、本発明では、前記1つ以上の相乗効果点毎に、表流水の流れやすさを示す第1ポテンシャルと、生物の棲み易さを示す第2ポテンシャルとのそれぞれを算出し、前記1つ以上の相乗効果点毎に算出した前記第1ポテンシャル及び前記第2ポテンシャルに基づく前記評価値を算出する、という手段を採用する。
【0013】
また、本発明では、前記1つ以上の相乗効果点毎に、集水性スコアと近接性スコアとに応じた統計値に基づいて前記第1ポテンシャルを算出する、という手段を採用する。
【0014】
また、本発明では、前記1つ以上の相乗効果点と、前記1つ以上の相乗効果点毎に算出した前記評価値と、指標生物が活動する範囲を示す範囲情報とに基づいて、前記領域内の各位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す相乗効果多寡情報を生成する、という手段を採用する。
【0015】
また、本発明では、前記相乗効果多寡情報を含む相乗効果多寡画像を生成し、生成した前記相乗効果多寡画像を表示する、という手段を採用する。
【0016】
また、本発明では、前記相乗効果多寡画像は、前記領域の地図画像上に、前記相乗効果多寡情報が重畳された画像である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】情報処理装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】情報処理装置1が評価値を算出する処理の流れの一例を示す図である。
【
図3】
図2に示したステップS120の相乗効果点特定処理の流れの一例を示す図である。
【
図4】対象領域内において特定された第1流路ライン及び第2流路ラインと、対象領域内の緑被とのそれぞれを例示する図である。
【
図5】
図4に示した対象領域内において特定された相乗効果点を例示する図である。
【
図6】
図2に示したステップS130の評価値算出処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】
図2に示したステップS140の相乗効果多寡画像生成処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<情報処理装置の概要>
まず、実施形態に係る情報処理装置の概要について説明する。
【0021】
実施形態に係る情報処理装置は、対象となる領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。これにより、情報処理装置は、対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。
【0022】
以下では、実施形態に係る情報処理装置の構成と、当該情報処理装置が行う処理とについて詳しく説明する。
【0023】
<情報処理装置の構成>
以下、実施形態に係る情報処理装置の構成について、情報処理装置1を例に挙げて説明する。
【0024】
図1は、情報処理装置1の構成の一例を示す図である。
【0025】
情報処理装置1は、例えば、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、ワークステーション、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。
【0026】
情報処理装置1は、受け付けた操作に応じて、地図上の領域のうち、分析の対象となる領域を特定する。以下では、説明の便宜上、当該分析の対象となる領域を、対象領域と称して説明する。情報処理装置1は、対象領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。
【0027】
ここで、この評価値は、対象領域内における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す値である。すなわち、対象領域内のある位置における評価値が高いほど、当該位置における生物多様性と水循環との相乗効果は、高いと推定される。一方、対象領域内のある位置における評価値が低いほど、当該位置における生物多様性と水循環との相乗効果は、低いと推定される。このため、情報処理装置1は、このような評価値を算出することにより、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。その結果、情報処理装置1は、生物多様性及び水循環それぞれの回復に同時貢献可能な立案を促進することができる。なお、この評価値は、シナジーポテンシャルと称されることもある。
【0028】
より具体的には、情報処理装置1は、ネットワークNWを介して、地理空間情報システム(Geographic Information System;GIS)のサーバー2と通信可能に接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、移動体通信網等であるが、これらに限られるわけではない。
【0029】
サーバー2は、例えば、デスクトップPC、ワークステーション等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。
【0030】
サーバー2には、緑地・オープンスペースの三次元構造を解析可能なリモートセンシング・オープンデータが記憶されている。サーバー2は、情報処理装置1からの要求に応じて、リモートセンシング・オープンデータに含まれるデータのうち、水涯線データ、地形データ、緑被データ、水域データ、地物高データ、植物活性指標データのそれぞれを、ネットワークNWを介して情報処理装置1に出力する。
【0031】
情報処理装置1は、受け付けた操作に応じて対象領域を特定した後、特定した対象領域についての水涯線データ、地形データ、緑被データ、水域データ、地物高データ、植物活性指標データの6つのデータをサーバー2から取得する。情報処理装置1は、取得したこれら6つのデータに基づいて、前述の評価値を算出する。
【0032】
情報処理装置1は、例えば、制御部11、記憶部12、入力受付部13、通信部14、表示部15を備える。これらの構成部は、図示しないバスを介して相互に通信可能に接続されている。また、情報処理装置1は、通信部14を介して他の装置と通信を行う。なお、情報処理装置1は、制御部11、記憶部12、入力受付部13、通信部14、表示部15に加えて、他の機能部を備える構成であってもよい。
【0033】
制御部11は、情報処理装置1の全体を制御する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含んで構成される。なお、制御部11は、CPUに代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサーを含んで構成されてもよい。また、制御部11は、記憶部12に記憶された各種のプログラムをプロセッサーが実行することにより実現される複数の機能部を備える。制御部11は、これら複数の機能部として、例えば、取得部111と、算出部112と、表示制御部113を備える。なお、制御部11は、記憶部12に格納された各種のプログラムをプロセッサーが実行することにより、取得部111、算出部112、表示制御部113に加えて、他の機能部を備える構成であってもよい。また、制御部11が備える取得部111、算出部112、表示制御部113のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現されるハードウェア機能部であってもよい。
【0034】
取得部111は、各種の情報を取得する。例えば、取得部111は、前述の6つのデータをサーバー2から取得する。
【0035】
算出部112は、各種の値を算出する。例えば、算出部112は、取得部111により取得された6つのデータに基づいて、評価値を算出する。
【0036】
表示制御部113は、各種の画像を生成する。表示制御部113は、生成した画像を表示部15に表示させる。
【0037】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む記憶装置である。なお、記憶部12は、情報処理装置1に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部12は、情報処理装置1が処理する各種の情報、各種の画像、各種のプログラムを記憶する。
【0038】
入力受付部13は、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置である。なお、入力受付部13は、表示部15とともにタッチパネルとして構成されてもよい。
【0039】
通信部14は、例えば、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される通信装置である。
【0040】
表示部15は、情報処理装置1が備えるディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネル等を含む表示装置である。
【0041】
<情報処理装置が評価値を算出する処理>
以下、
図2を参照し、情報処理装置1が評価値を算出する処理について説明する。
図2は、情報処理装置1が評価値を算出する処理の流れの一例を示す図である。なお、以下では、一例として、
図2に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、評価値を算出する処理を情報処理装置1に開始させる処理開始操作を受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、対象領域を指定する対象領域指定操作を受け付けている場合について説明する。対象領域指定操作は、対象領域を指定することが可能な操作であれば、如何なる層であってもよい。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、ユーザーが所望する指標生物が活動する範囲を示す範囲情報を受け付けており、且つ、範囲情報が記憶部12に記憶されている場合について説明する。指標生物が活動する範囲は、指標生物の行動圏、指標生物の飛翔圏等のことであるが、これらに限られるわけではない。また、指標生物の行動圏、指標生物の飛翔圏は、指標生物の日常的な(平均的な)移動距離によって表される。ここで、範囲情報は、例えば、指標生物の特性に応じて既往知見を参考にユーザーによって記憶部12に記憶されてもよく、他の方法により記憶部12に記憶されてもよい。例えば、水と草地がある環境を好む止水性のトンボ類を指標生物とした場合、指標生物が活動する範囲は、当該トンボ類の日常的な行動圏とされている400mとなる。従って、この場合、範囲情報は、この400mを示す情報である。
【0042】
処理開始走査及び対象領域指定操作を受け付けた後、取得部111は、対象領域指定操作により指定された領域を対象領域として特定する(ステップS110)。
【0043】
次に、算出部112は、ステップS110において特定された対象領域に基づいて、相乗効果点特定処理を行う(ステップS120)。ここで、相乗効果点特定処理は、対象領域の地図画像上における位置のうち、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が得られると推定される位置を示す点を相乗効果点として特定する処理のことである。情報処理装置1は、後述するステップS130の処理によって、ステップS120の相乗効果点特定処理において特定される相乗効果点毎に、前述の評価値を算出する。相乗効果点特定処理の詳細については、後述する。なお、相乗効果点は、シナジースポットと称されることもある。また、対象領域の地図画像上の各位置は、対象領域の各位置と対応付けられている。このため、相乗効果点特定処理は、対象領域における位置のうち、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が得られると推定される位置を示す点を相乗効果点として特定する処理のことであると換言することもできる。
【0044】
次に、算出部112は、ステップS120の相乗効果点特定処理において特定された相乗効果点毎の評価値を算出する評価値算出処理を行う(ステップS130)。評価値算出処理の詳細については、後述する。
【0045】
次に、表示制御部113は、ステップS130において算出された相乗効果点毎の評価値に基づいて、相乗効果多寡画像を生成する相乗効果多寡画像生成処理を行う(ステップS140)。ここで、相乗効果多寡画像は、対象領域内の各位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す相乗効果多寡情報を含む画像のことである。このため、情報処理装置1のユーザーは、ステップS140において生成された相乗効果多寡画像に基づいて、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定することができる。相乗効果多寡画像及び相乗効果多寡画像生成処理の詳細については、後述する。
【0046】
次に、表示制御部113は、ステップS140において生成した相乗効果多寡画像を表示部15に表示させ(ステップS150)、
図2に示したフローチャートの処理を終了する。
【0047】
以上のような処理により、情報処理装置1は、対象領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。これにより、情報処理装置1は、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。
【0048】
<相乗効果点特定処理>
以下、
図3を参照し、
図2に示したステップS120の相乗効果点特定処理について説明する。
図3は、
図2に示したステップS120の相乗効果点特定処理の流れの一例を示す図である。
【0049】
図2に示したステップS110の処理が行われた後、取得部111は、
図2に示したステップS110の処理において特定した対象領域についての水涯線データ、地形データ、緑被データ(緑被ポリゴンデータ)、水域データ(水域ポリゴンデータ)の6つのデータをサーバー2から取得する(ステップS210)。なお、以下では、一例として、地形データが、数値標高モデル(Digital Elevation Model;DEM)である場合について説明する。なお、地形データは、数値標高モデルに代えて、地形を表すことが可能な他の種類のデータであってもよい。
【0050】
次に、算出部112は、ステップS210において取得された6つのデータのうちの水涯線データに基づいて、対象領域内における定常型の水みちを示す流路ラインを第1流路ラインとして特定する(ステップS220)。
図3では、ステップS220の処理を「定常型の水みち特定」によって示している。ここで、本実施形態において、定常型の水みちは、表流水が流れやすい経路のうち、河川、池沼、湖沼等の常に水が存在する経路のことである。なお、水涯線データに基づいて第1流路ラインを特定する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0051】
次に、算出部112は、ステップS210において取得された6つのデータのうちの地形データに基づいて、対象領域内における非定常型の水みちを示す流路ラインを第2流路ラインとして特定する(ステップS230)。
図3では、ステップS230の処理を「非定常型の水みち特定」によって示している。なお、ステップS230の処理は、ステップS220の処理と並列に行われてもよく、ステップS220の処理と逆の順で行われてもよい。ここで、本実施形態において、非定常型の水みちは、表流水が流れやすい経路のうち、降雨、降雪等による増水に応じて水が流れる経路のことである。例えば、算出部112は、ステップS120において、地形データに基づいて、対象領域内の集水解析を行うことにより、第2流路ラインを特定する。より具体的には、算出部112は、地形データに基づく対象領域内の集水解析の結果に、土地被覆別の流出係数を乗じることによって対象領域内の各位置(各セル)の累積流量ラスタを算出し、各位置のそれぞれにおいて算出した累積流量ラスタのうち予め決められた閾値以上の累積流量ラスタの連なりを、第2流路ラインとして特定する。なお、第2流路ラインの特定方法は、これに代えて、他の方法であってもよい。
【0052】
次に、算出部112は、ステップS220において特定された第1流路ラインと、ステップS230において特定された第2流路ラインとのそれぞれと、ステップS210において取得された6つのデータのうち緑被データが示す緑被の輪郭との交点を、相乗効果点として特定する(ステップS240)。より具体的には、算出部112は、ステップS240において、第1流路ラインと第2流路ラインとのそれぞれをポイントデータに変換する。その後、算出部112は、ポイントデータに変換された後の第1流路ライン及び第2流路ラインのそれぞれと、当該緑被データが示す緑被の輪郭との交点を、相乗効果点として特定する。このようなステップS240の処理が行われた後、算出部112は、
図2に示したステップS120の処理、すなわち、
図3に示したフローチャートの処理を終了する。
【0053】
ここで、
図4は、対象領域内において特定された第1流路ライン及び第2流路ラインと、対象領域内の緑被とのそれぞれを例示する図である。
図4に示し地図画像は、対象領域の地図画像の一例である。そして、
図4に示した点線は、
図4に示した対象領域内において特定された第1流路ライン及び第2流路ラインそれぞれの一例を示す。また、
図4においてハッチングされた領域は、
図4に示した対象領域内の緑被の一例を示す。すなわち、情報処理装置1は、ステップS240において、例えば、当該点線と当該領域の輪郭との交点を、相乗効果点として特定する。
【0054】
図5は、
図4に示した対象領域内において特定された相乗効果点を例示する図である。
図5に示した地図画像上にプロットされた複数の黒丸のそれぞれは、
図4に示した点線と、
図4においてハッチングされた領域の輪郭との交点であり、
図3に示したフローチャートの処理によって対象領域内において特定された相乗効果点の一例である。すなわち、
図5に示した地図画像の対象領域内では、複数の黒丸のそれぞれによって示された相乗効果点が示す位置において、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が得られると推定される。なお、
図5に示した複数の黒丸には、
図4に示した点線と、
図4においてハッチングされた領域の輪郭との交点以外の点も含まれている。それらの当該交点以外の点は、
図4において微細過ぎて見えていない緑被と、
図4において微細過ぎて見えていない水みちとの交点等である。
【0055】
以上のような処理により、情報処理装置1は、対象領域内における1つ以上の相乗効果点を特定することができる。これにより、情報処理装置1は、対象領域内の位置のうち、1つ以上の相乗効果点のそれぞれが示す位置を、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が得られると推定される位置として、ユーザーに提供することができる。これは、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定するためにユーザーが行う作業量を少なくすることに繋がり、有用である。
【0056】
<評価値算出処理>
以下、
図6を参照し、
図2に示したステップS130の評価値算出処理について説明する。
図6は、
図2に示したステップS130の評価値算出処理の流れの一例を示す図である。
【0057】
図2に示したステップS110の処理が行われた後、算出部112は、ステップS120において特定された1つ以上の相乗効果点を1つずつ対象相乗効果点として選択し、選択した対象相乗効果点毎に、ステップS320~ステップS330の処理を繰り返し行う(ステップS310)。なお、当該1つ以上の相乗効果点のそれぞれについて繰り返し行われるステップS320~ステップS330の処理は、1つずつ順に行われてもよく、並列に行われてもよい。以下では、一例として、当該処理が1つずつ順に行われる場合について説明する。
【0058】
ステップS310において対象相乗効果点が選択された後、算出部112は、
図3に示したステップS230において算出された累積流量ラスタに基づいて、対象相乗効果点が示す位置の累積流量を集水性スコアとして算出する(ステップS320)。なお、算出部112は、ステップS320において、新たに累積流量ラスタを算出する構成であってもよい。
【0059】
次に、算出部112は、ステップS210において取得された6つのデータのうちの水域データに基づいて、対象領域内において対象相乗効果点から最も近い水域までのラスタ距離を、近接性スコアとして算出する(ステップS330)。なお、このラスタ距離の算出方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。また、ステップS330の処理は、ステップS320の処理と並列に行われてもよく、ステップS320の処理と逆の順で行われてもよい。
【0060】
次に、算出部112は、ステップS320において算出された集水性スコアと、ステップS330において算出された近接性スコアとの相加平均値を、対象相乗効果点の第1ポテンシャルとして算出する(ステップS340)。当該第1ポテンシャルは、対象相乗効果点における表流水の流れ易さを示す値である。なお、当該第1ポテンシャルは、対象相乗効果点の水みちポテンシャルと称されてもよい。また、当該第1ポテンシャルは、当該集水性スコアと当該近接性スコアとに基づく他の値であってもよく、例えば、当該集水性スコアと当該近接性スコアとの相乗平均値等であってもよい。
【0061】
次に、算出部112は、対象相乗効果点の第2ポテンシャルを算出する(ステップS350)。具体的には、ステップS350における算出部112は、ステップS210において取得された6つのデータのうちの地物高データ及び地形データに基づいて、植生高を算出する。植生高を算出した後、当該算出部112は、算出した植生高と、当該6つのデータのうちの植物活性指標データとに基づいて、草地ポリゴンを抽出する。草地ポリゴンを抽出した後、当該算出部112は、抽出した草地ポリゴンに基づいて、対象相乗効果点を含む周辺領域内の草地の面積を、草地の連続性スコアとして算出する。ここで、当該算出部112は、対象相乗効果点を中心とし、記憶部12に予め記憶された範囲情報が示す範囲を半径とする円形状の領域を、対象相乗効果点を含む周辺領域として利用する。また、当該算出部112は、当該6つのデータのうちの水域データに基づいて、対象領域内において常時存在する水面であり、且つ、対象相乗効果点を含む周辺領域内の水面の面積を、水辺の連続性スコアとして算出する。そして、当該算出部112は、算出した草地の連続性スコアと、算出した水辺の連続性スコアとの相加平均値を、当該第2ポテンシャルとして算出する。当該第2ポテンシャルは、対象相乗効果点における生物の棲み易さを示す値である。なお、ステップS350の処理は、ステップS320~ステップS340の処理のうちの一部又は全部と並列に行われてもよく、ステップS320~ステップS340の処理と逆の順で行われてもよく、ステップS320とステップS330との間において行われてもよく、ステップS330とステップS340との間に行われてもよい。また、対象相乗効果点を含む周辺領域の形状は、円形状に代えて、楕円形状、矩形状等の他の形状であってもよい。
【0062】
次に、算出部112は、ステップS340において算出された第1ポテンシャルと、ステップS350において算出された第2ポテンシャルとの相加平均値を、対象相乗効果点の絶対評価値として算出する(ステップS360)。この絶対評価値は、後述するステップS370において前述の評価値を算出するために用いる値である。なお、絶対評価値は、当該第1ポテンシャルと当該第2ポテンシャルとに基づく他の値であってもよく、例えば、当該第1ポテンシャルと当該第2ポテンシャルとの相乗平均値等であってもよい。
【0063】
ステップS360の処理が行われた後、算出部112は、ステップS310に遷移し、次の対象相乗効果点を選択する。なお、ステップS310において、算出部112は、対象相乗効果点として未選択の相乗効果点が存在しない場合、ステップS310~ステップS360の繰り返し処理を終了し、ステップS370に遷移する。
【0064】
ステップS310~ステップS360の繰り返し処理が終了した後、算出部112は、当該繰り返し処理において1つ以上の相乗効果点毎に算出された絶対評価値に基づいて、1つ以上の相乗効果点毎の評価値を算出する(ステップS370)。具体的には、ステップS370において、算出部112は、当該繰り返し処理において1つ以上の相乗効果点毎に算出された絶対評価値のうちの最大の絶対評価値によって、当該繰り返し処理において1つ以上の相乗効果点毎に算出された絶対評価値を規格化することにより、規格化された後の絶対評価値、すなわち、相対化された後の絶対評価値を、評価値として算出する。これにより、情報処理装置1は、1つ以上の相乗効果点それぞれの評価値を、0~1の範囲内の値として算出することができる。その結果、情報処理装置1は、1つ以上の相乗効果点それぞれの評価値を、互いに比較可能な値として得ることができる。この場合、ある評価値の相乗効果点が示す位置は、当該評価値が高いほど、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が高い位置であると推定することができる。一方、この場合、ある評価値の相乗効果点が示す位置は、当該評価値が低いほど、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が低い位置であると推定することができる。このようなステップS370の処理が行われた後、算出部112は、
図2に示したステップS130の処理、すなわち、
図6に示したフローチャートの処理を終了する。
【0065】
以上のような処理により、情報処理装置1は、対象領域内における1つ以上の相乗効果点それぞれの評価値を、互いに相対化された値として算出することができる。これにより、情報処理装置1は、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が得られると推定される位置を定量的に示すことができる。これは、生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果を得るために、人の主観を排除し、客観的な判断を促すことを可能にするため、有用である。
【0066】
<相乗効果多寡画像生成処理>
以下、
図7を参照し、
図2に示したステップS140の相乗効果多寡画像生成処理について説明する。
図7は、
図2に示したステップS140の相乗効果多寡画像生成処理の流れの一例を示す図である。
【0067】
図2に示したステップS130の処理が行われた後、表示制御部113は、ステップS130において算出された1つ以上の相乗効果点を1つずつ対象相乗効果点として選択し、選択した対象相乗効果点毎に、ステップS420の処理を繰り返し行う(ステップS410)。なお、当該1つ以上の相乗効果点のそれぞれについて繰り返し行われるステップS420の処理は、1つずつ順に行われてもよく、並列に行われてもよい。以下では、一例として、当該処理が1つずつ順に行われる場合について説明する。
【0068】
ステップS410において対象相乗効果点が選択された後、表示制御部113は、記憶部12に予め記憶された範囲情報が示す範囲と、対象相乗効果点の評価値との積を、対象相乗効果点のバッファ距離として算出する(ステップS420)。本実施形態において、バッファ距離は、対象相乗効果点における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が及ぶと推定される距離のことである。ここで、ある相乗効果点の評価値が高いほど、当該相乗効果点において指標生物が活動する範囲は、広くなると推定することができる。何故なら、当該相乗効果点の評価値が高いことは、当該相乗効果点における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が高いことを意味するからである。このため、バッファ距離は、記憶部12に予め記憶された範囲情報が示す範囲と、対象相乗効果点の評価値との積として定義される。このように定義されるバッファ距離を算出することにより、情報処理装置1は、各相乗効果点における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が及ぶ範囲を、視覚的に示すことができる。このため、バッファ距離は、対象領域内において、対象相乗効果点が示す位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す情報であると捉えることができる。
【0069】
ステップS420の処理が行われた後、表示制御部113は、ステップS410に遷移し、次の対象相乗効果点を選択する。なお、ステップS410において、表示制御部113は、対象相乗効果点として未選択の相乗効果点が存在しない場合、ステップS410~ステップS420の繰り返し処理を終了し、ステップS430に遷移する。
【0070】
ステップS410~ステップS420の繰り返し処理を終了した後、表示制御部113は、当該繰り返し処理において1つ以上の相乗効果点毎に算出されたバッファ距離に基づいて、相乗効果多寡画像を生成する(ステップS430)。相乗効果多寡画像は、前述した通り、相乗効果多寡情報を含む画像のことである。
図8は、相乗効果多寡画像の一例を示す図である。
図8には、
図4及び
図5に示した対象領域の地図画像が示されている。ただし、
図8では、図が煩雑になるのを防ぐため、緑被を示すハッチングされた領域が省略されている。そして、
図8に示したハッチングされた領域は、
図7に示した黒点、すなわち、相乗効果点それぞれのバッファ領域の一例を示す。すなわち、
図8に示した相乗効果多寡画像は、当該地図画像上に、各相乗効果点のバッファ領域が重畳された画像である。ここで、ある相乗効果点のバッファ領域は、当該相乗効果点を中心とし、当該相乗効果点のバッファ距離を半径とする円形状の領域のことである。すなわち、当該相乗効果点のバッファ領域は、当該相乗効果点における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が及ぶと推定される領域のことである。従って、
図8に示したバッファ領域は、各相乗効果点が示す位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す相乗効果多寡情報の一例である。このため、
図8に示した相乗効果多寡画像は、当該地図画像上に、相乗効果多寡情報が重畳された画像であると換言することができる。なお、相乗効果多寡情報は、このようなバッファ領域に変えて、各相乗効果点が示す位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す他の種類の情報であってもよい。このように生成される相乗効果多寡画像は、
図2に示したステップS150において、情報処理装置1により表示部15に表示される。これにより、情報処理装置1は、対象領域内における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果が及ぶと推定される領域を、視覚的に示すこと(又は、提供すること)ができる。その結果、情報処理装置1は、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。このようなステップS430の処理が行われた後、表示制御部113は、
図2に示したステップS140の処理、すなわち、
図7に示したフローチャートの処理を終了する。なお、バッファ領域の形状は、円形状に代えて、楕円形状、矩形状等の他の形状であってもよい。
【0071】
以上のように、情報処理装置1は、対象領域内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。これにより、情報処理装置1は、対象領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。その結果、情報処理装置1は、例えば、グリーンインフラの構想・計画段階において、定量的・空間的(視覚的)に示された評価値に基づき、生物多様性及び水循環それぞれの向上について効果的な緑地の配置計画を行わせることができる。また、情報処理装置1は、例えば、グリーンインフラの設計段階において、生物多様性及び水循環それぞれの向上について効果的な緑地の構成計画を立案させることができる。更には、情報処理装置1は、例えば、算出した評価値、表示した相乗効果多寡画像等を、環境認証(LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)等)のエビデンスとして活用させることができる。また、情報処理装置1により表示される相乗効果多寡画像は、例えば、地図画像の空間スケール、データセットの解像度等を代えることにより、広域レベルの立地ポテンシャルの評価、サイトレベルの緑地の配置・構造の検討に活用することができる。また、情報処理装置1は、緑化計画プランのデータを受け付けることにより、緑化前後の評価値の向上効果の評価・可視化を行うように構成されてもよい。
【0072】
<実施形態の変形例>
情報処理装置1に表示される相乗効果多寡画像は、例えば、
図9に示すような相乗効果多寡情報が含まれる構成であってもよい。
図9は、相乗効果多寡画像の他の例を示す図である。
図9では、
図8に示したバッファ領域と同様に、バッファ領域をハッチングされた領域によって示している。しかしながら、
図9に示した相乗効果多寡画像では、各相乗効果点の評価値に応じて、バッファ領域の色が異なっている。なお、
図9では、バッファ領域の色の違いを、バッファ領域を示すハッチングの違いによって表している。
【0073】
例えば、表示制御部113は、ステップS430において、ある相乗効果点のバッファ領域を地図画像上に重畳する場合、当該相乗効果点の評価値に応じた色のバッファ領域を、当該相乗効果点のバッファ領域として地図画像上に重畳する。表示制御部113は、このようなバッファ領域の地図画像上への重畳を、1つ以上の相乗効果点のそれぞれについて行う。ここで、表示制御部113は、ある相乗効果点のバッファ領域の色を、例えば、当該相乗効果点の評価値が0以上0.3未満の場合に赤色、当該相乗効果点の評価値が0.3以上0.6未満の場合に黄色、当該相乗効果点の評価値が0.6以上1以下の場合に青色に決定する。なお、表示制御部113は、他の方法により、バッファ領域の色を決定してもよい。例えば、表示制御部113は、各相乗効果点のバッファ領域の色を、各相乗効果点の評価値に応じて、4段階以上のグラデーションで変化させてもよい。これにより、情報処理装置1は、対象領域内における生物多様性及び水循環それぞれの向上についての複合的な効果の違いを、視覚的に示すことができる。
【0074】
以上説明したように、実施形態に係る情報処理装置(上記において説明した例では、情報処理装置1)は、対象となる領域(上記において説明した例では、対象領域)内における生物多様性と水循環との組み合わせに関する評価値を算出する。これにより、情報処理装置は、対象となる領域内において、生物多様性と水循環とのそれぞれが互いに向上し合う範囲を特定させることができる。
【0075】
また、情報処理装置は、対象となる領域内の水みちを示す水みち情報(上記において説明した例では、第1流路ライン及び第2流路ライン)と、当該領域内の緑被を示す緑被情報(上記において説明した例では、緑被データ)とに基づいて、評価値を算出する、構成が用いられてもよい。
【0076】
また、情報処理装置は、水みち情報が示す水みちと、緑被情報が示す緑被の輪郭との1つ以上の交点を1つ以上の相乗効果点として特定し、特定した1つ以上の相乗効果点に評価値を算出する、構成が用いられてもよい。
【0077】
また、情報処理装置は、1つ以上の相乗効果点毎に、表流水の流れ易さを示す第1ポテンシャルと、生物の棲み易さを示す第2ポテンシャルとのそれぞれを算出し、1つ以上の相乗効果点毎に算出した第1ポテンシャル及び第2ポテンシャルに基づく評価値を算出する、構成が用いられてもよい。
【0078】
また、情報処理装置は、1つ以上の相乗効果点毎に、集水性スコアと近接性スコアとに応じた統計値に基づいて第1ポテンシャルを算出する、構成が用いられてもよい。
【0079】
また、情報処理装置は、1つ以上の相乗効果点と、1つ以上の相乗効果点毎に算出した評価値と、指標生物が活動する範囲を示す範囲情報とに基づいて、対象となる領域内の各位置における生物多様性と水循環との相乗効果の多寡を示す相乗効果多寡情報を生成する、構成が用いられてもよい。
【0080】
また、情報処理装置は、相乗効果多寡情報を含む相乗効果多寡画像を生成し、生成した相乗効果多寡画像を表示する、構成が用いられてもよい。
【0081】
また、情報処理装置は、相乗効果多寡画像は、対象となる領域内の地図画像上に、相乗効果多寡情報が重畳された画像である、構成が用いられてもよい。
【0082】
以上、この開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0083】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、情報処理装置1、サーバー2等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0084】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…情報処理装置、2…サーバー、11…制御部、12…記憶部、13…入力受付部、14…通信部、15…表示部、111…取得部、112…算出部、113…表示制御部、NW…ネットワーク