(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097576
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E03C1/042 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001122
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 弘輝
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC02
2D060BC11
2D060BE07
2D060BF03
(57)【要約】
【課題】構造が簡潔で外観見栄えの良い水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓を提供する。
【解決手段】本体部2に対して吐水管3が首振り可能に取付けられた水栓1である。本体部2に設けられた円筒状の第2小径部15と、吐水管3に設けられた円筒状の本体連結部20と、を有し、第2小径部15が本体連結部20に挿入されて相対回転可能とされている。第2小径部15と本体連結部20の間には略円筒状の第2リング部材50が配設されている。第2リング部材50には、内径面部52に凸部53が形成され、凸部53には中心軸Aに向かって延びる貫通孔54が形成されている。第2小径部15には、凸部53を周方向の所定範囲だけ回動可能に保持する円弧状のスリット19bが設けられている。本体連結部20には、貫通孔54に挿入されて第2リング部材50を周方向及び中心軸方向に移動不能とする棒先止めねじ60が配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓であって、
前記水栓本体と前記吐水管とのうちの一方に設けられた円筒状の第1接続部と、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの他方に設けられた円筒状の第2接続部と、を有し、前記第1接続部が前記第2接続部に挿入されて中心軸を中心に相対回転可能とされており、
前記第1接続部と前記第2接続部の間には回転摺動抵抗を下げるための略円筒状のリング部材が配設されており、
該リング部材には、内径面部に前記中心軸に向かう径方向に突出する凸部が形成されるとともに、該凸部には前記中心軸に向かう径方向に延びる貫通孔が形成されており、
前記第1接続部には前記凸部を周方向の所定範囲だけ回動可能に保持する円弧状のスリットが設けられており、
前記第2接続部には前記貫通孔の中に先端部分が挿入されて前記リング部材を周方向及び前記中心軸の延びる方向に移動不能とするビスが配設されている水栓。
【請求項2】
請求項1において、
前記リング部材には、前記凸部における前記中心軸の延びる方向の両端部に前記第1接続部の外周面に摺接する摺動面部が設けられており、
前記リング部材の外径面部における前記貫通孔の外周部分には、前記貫通孔の延びる方向に対し垂直な平坦面部が形成されており、
前記ビスを締め込むほど前記ビスの一部が前記平坦面部に当接して押圧し前記摺動面部が前記外周面に当接する圧力が高まるように構成されている水栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記ビスは、頭部を有さない止めねじである水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓に関する。詳しくは、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓において、吐水管の首振り角度を規制する構造が提案されている。特許文献1に開示された水栓においては、吐水管と、吐水管が嵌装される水栓本体部と、水栓本体部の吐出口の内周面に接するように配置される環状の回動規制部材と、吐水管を水栓本体部に回転自在に接続するための固定ナットと、を有する。さらに、吐水管の吐水口と反対側端部に吐水管の側面部の一部が軸方向に延びて設けられた吐水管側規制部が配置され、回動規制部材の内周面から突出して形成された本体側規制部を有する。吐水管の回転運動に伴って吐水管側規制部が本体側規制部に当接することにより吐水管の回転運動が規制されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された水栓においては、回動規制部材に別部品の本体側規制部が取付けられており、構造が複雑であるという問題があった。また、固定ナットが水栓本体の外径より大きい外径を有する大型のもので全体が外部に露出している。これによって、水栓の外観品質の悪化を招くおそれがあるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、構造が簡潔で外観見栄えの良い水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水栓本体に対して吐水管が首振り可能に取付けられた水栓であって、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの一方に設けられた円筒状の第1接続部と、前記水栓本体と前記吐水管とのうちの他方に設けられた円筒状の第2接続部と、を有し、前記第1接続部が前記第2接続部に挿入されて中心軸を中心に相対回転可能とされており、前記第1接続部と前記第2接続部の間には回転摺動抵抗を下げるための略円筒状のリング部材が配設されており、該リング部材には、内径面部に前記中心軸に向かう径方向に突出する凸部が形成されるとともに、該凸部には前記中心軸に向かう径方向に延びる貫通孔が形成されており、前記第1接続部には前記凸部を周方向の所定範囲だけ回動可能に保持する円弧状のスリットが設けられており、前記第2接続部には前記貫通孔の中に先端部分が挿入されて前記リング部材を周方向及び前記中心軸の延びる方向に移動不能とするビスが配設されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、第1接続部に対し第2接続部を周方向の所定範囲だけ回動可能とする凸部が、回転摺動抵抗を下げるためのリング部材と一体に形成されているので構造が簡潔で組立作業も容易であるとともに、外観に現れるのがビスの頭部だけなので見栄えが良い。また、凸部の貫通孔には、先端部分が挿入されてリング部材を周方向及び中心軸の延びる方向に移動不能とするビスが配設されているので、凸部がスリットの端部に当接したときの凸部の強度を高められる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記リング部材には、前記凸部における前記中心軸の延びる方向の両端部に前記第1接続部の外周面に摺接する摺動面部が設けられており、前記リング部材の外径面部における前記貫通孔の外周部分には、前記貫通孔の延びる方向に対し垂直な平坦面部が形成されており、前記ビスを締め込むほど前記ビスの一部が前記平坦面部に当接して押圧し前記摺動面部が前記外周面に当接する圧力が高まるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、ビスの締付量を変更することによって水栓本体に対する吐水管の回転摺動抵抗を調整することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記ビスは、頭部を有さない止めねじであることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、ビスの頭部が第2接続部の外径面から径方向に突出して外部に現れないので外観見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である水栓の上部を斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】上記実施形態における水栓の分解斜視図である。
【
図3】
図1におけるIII-III矢視線断面図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV矢視線断面図である。
【
図7】他の実施形態を示す
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る水栓1について、
図1~
図6を用いて説明する。水栓1は、キッチンのカウンターの上面に配設される湯水混合水栓で、
図1はその上部である本体部2の上部と吐水管3とを示している。各図において、水栓1の使用者を基準とした前後左右上下の各方向を矢印で示し、方向に関する記述はこの矢印で示す方向に基づいて行う。
【0014】
図1~
図3に示すように、水栓1は、本体部2と吐水管3を有する。本体部2は、図示しない湯水を混合して調温する湯水混合部の上端部側に配設された吐水管連結部10を備えている。吐水管連結部10は、下側の大径の円筒部である大径部11と、大径部11の上部に配置された小径の円筒部である小径部12と、を有する。大径部11と小径部12は、中心軸Aを共通軸として同軸で配置されるとともに、大径部11の上端部と小径部12の下端部とが径方向に延びる平板状の連結部13で連結された形状とされている。大径部11における外径部11aと内径部11bは、それぞれ同軸で上下に延びている。小径部12は、下側である連結部13の側の第1小径部14と、上側である連結部13と反対側の第2小径部15と、を有する。第2小径部15における外径部15aの直径は、第1小径部14における外径部14aの直径より小さく設定されている。第1小径部14における外径部14aの直径は、後述する吐水管3の本体連結部20の外径部21の直径と同一に設定されている。また、第2小径部15における外径部15aの直径は、吐水管3の本体連結部20の内径部22の直径よりわずかに小さく設定されている。第1小径部14の内径部14bと第2小径部15の内径部15bとの間は、上方に向かうにつれて徐々に直径が小さくなる縮径部14cによって連結されている。内径部11b、内径部14b、縮径部14c、内径部15bは、水密状態を保って連結されている。ここで、本体部2が、特許請求の範囲の「水栓本体」に相当する。また、第2小径部15が、特許請求の範囲の「第1接続部」に相当する。
【0015】
図2~
図5に示すように、第2小径部15の外径部15aには、下側の第1小径部14の側から上方に向かって順に、第1環状溝16、第2環状溝17、第3環状溝18、第4環状溝19が形成されている。第1環状溝16、第2環状溝17、第3環状溝18は、周方向の断面がほぼ同一の矩形状をしている。第1環状溝16には、樹脂製の第1リング部材30が嵌め込まれる。第2環状溝17と第3環状溝18には、オーリング40が嵌め込まれる。第4環状溝19は、周方向の断面が矩形状で、長軸方向である上下方向の寸法が第1環状溝16、第2環状溝17、第3環状溝18の上下方向の寸法の3倍程度に設定され、短軸方向である径方向の寸法が第1環状溝16、第2環状溝17、第3環状溝18の径方向の寸法の1.5倍程度に設定されている。第4環状溝19の断面における短軸方向である径方向の寸法、すなわち第4環状溝19の径方向の深さは、第2小径部15の径方向の厚みの1/2程度とされている。なお、第2小径部15の径方向の厚みとは、外径部15aと内径部15bとの間の径方向の寸法である。第4環状溝19の底面部19aの後側には径方向に貫通する円弧状のスリット19bが形成されている。スリット19bは、底面部19aの上下方向中央部に形成され、その周方向の寸法は、内径部15bの全周の寸法の約2/12~約5/12程度で有り得るが、本例示では4/12程度とされている。スリット19bの上下の底面部19aは、当接部19cとされている。また、スリット19bの周方向の両端面は、本体側規制部19dとされている。第4環状溝19には、樹脂製の第2リング部材50が嵌め込まれる。ここで、第2リング部材50が、特許請求の範囲の「リング部材」に相当する。また、当接部19cが、特許請求の範囲の「外周面」に相当する。
【0016】
図3~
図6に示すように、第2リング部材50は、周方向の断面が略矩形状である略円筒状の樹脂製部材で、外径面部51と、内径面部52と、を有する。第2リング部材50の径方向の厚み、すなわち外径面部51と内径面部52との間の径方向の寸法は、本体部2の第2小径部15における第4環状溝19の径方向の深さより若干大きく設定されている。第2リング部材50の上下方向の寸法、すなわち中心軸Aの延びる方向の寸法は、第2小径部15の第4環状溝19の上下方向寸法よりわずかに小さく設定されている。内径面部52の一部には、径方向内側に向かって突出する凸部53が形成されている。凸部53の径方向内側に向かう突出寸法は、第2小径部15の径方向の厚みの1/2程度とされ、凸部53の先端側の面である先端面53aは、第2リング部材50を第4環状溝19に嵌め込んだとき、第2小径部15の内径部15bと同一面となるように形成されている。凸部53の周方向の寸法は、第2小径部15の内径部15bの全周の寸法の1/12程度とされている。凸部53の上下方向の寸法、すなわち中心軸Aの延びる方向の寸法は、第2リング部材50の上下方向の寸法の1/2程度とされている。凸部53の周方向の両端部は、吐水管側規制部53bとされている。凸部53の上下の内径面部52は、摺動面部52aとされている。第2リング部材50における、凸部53の上下方向及び周方向の中央部には、径方向内側に向かって延びる円柱状の貫通孔54が形成されている。貫通孔54の内径は、後述する棒先止めねじ60における先端の円柱状の棒状部分61の外径よりわずかに大きく設定されている。貫通孔54の周りの外径面部51は、棒先止めねじ60におけるねじ部分62の棒状部分61側の面が当接する貫通孔54の軸線に対して垂直な平坦面部56として形成されている。第2リング部材50における、凸部53の径方向反対側には第2リング部材50を上下方向に貫き周方向に分割する分割スリット55が形成されている。ここで、棒先止めねじ60が、特許請求の範囲の「ビス、止めねじ」に相当する。また、棒状部分61が、特許請求の範囲の「先端部分」に相当する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、第1リング部材30は、周方向の断面が略L字形をした樹脂製の略円筒状の樹脂製部材で、外径面部31と、内径面部32と、を有する。外径面部31の直径は、吐水管3における本体連結部20の先端薄肉部23の内径よりわずかに小さく設定されている。内径面部32は下側の直径が大きい下内径面部32aと、上側の下内径面部32aより直径が小さい上内径面部32bと、を有する。下内径面部32aの直径は、第2小径部15の外径部15aの直径とほぼ同じで、上内径面部32bの直径は、第2小径部15における第1環状溝16の底面部16aの直径とほぼ同じである。第1リング部材30にも、上下方向に貫き周方向に分割する分割スリット33が形成されている。
【0018】
図1~
図3に示すように、吐水管3は、グースネック状に湾曲した円管で一端に吐水口3aが設けられ、他端に上下方向に中心軸Aが延びる本体連結部20が設けられている。吐水口3aには、図示しない引出吐出管が脱着可能に取付けられており、引出吐出管から延びる図示しないフレキシブルパイプが吐水管3の中を通って本体連結部20から下方に延ばされている。本体連結部20は、本体部2の第1小径部14と同外径の外径部21と、本体部2の第2小径部15の外径部15aの外径よりわずかに大きい内径の内径部22と、を有している。内径部22の下端部には内径を大きくされた先端薄肉部23が形成されている。先端薄肉部23の上下方向の寸法は、第1リング部材30の上下方向寸法とほぼ等しい。本体連結部20の上部には、径方向に延びる雌ねじが切られたねじ孔24が設けられている。ねじ孔24は、棒先止めねじ60のねじ部分62が螺合可能とされている。ねじ孔24の上下方向の位置は、本体部2の第2小径部15に吐水管3の本体連結部20を嵌合させたとき、第2小径部15に取付けられた第2リング部材50の貫通孔54に棒先止めねじ60の棒状部分61が侵入可能となる位置とされている。ここで、本体連結部20が、特許請求の範囲の「第2接続部」に相当する。
【0019】
本体部2に対する吐水管3の組付け方について説明する。まず、
図2及び
図3に示すように、本体部2の第2小径部15に第1リング部材30と2つのオーリング40と第2リング部材50を取付ける。具体的には、第1環状溝16に第1リング部材30を分割スリット33から周方向に拡げながら上内径面部32bを嵌め込む。第2環状溝17と第3環状溝18にそれぞれオーリング40を上方から拡げながら押し下げて嵌め込む。続いて、第4環状溝19に第2リング部材50を分割スリット55から周方向に拡げながら嵌め込む。このとき、凸部53がスリット19bに入って周方向に摺動可能となるようにする。第1リング部材30と2つのオーリング40と第2リング部材50が取付けられた状態の第2小径部15に対して、吐水管3の本体連結部20を被せるように嵌め込み、先端薄肉部23が第1リング部材30の外径面部31に当接するようにする。そして、本体部2に対して中心軸Aを中心に吐水管3を回転させて第2リング部材50の貫通孔54と吐水管3のねじ孔24を双方の軸が一致するように調整して棒先止めねじ60をねじ込む。このとき、第2リング部材50の平坦面部56に棒先止めねじ60におけるねじ部分62の棒状部分61側の面が当接してからねじ込み量を調整することによって摺動面部52aが第2小径部15の当接部19cに当接して押圧する力を変えられるようになっている。これによって、棒先止めねじ60のねじ込み量を調整することによって本体部2に対する吐水管3の回転摺動抵抗を調整できる。
図1、
図3及び
図4に示すように、吐水管3の吐水口3aを前方向(使用者の方向)に向けたとき、凸部53の位置は、後方向でスリット19bの周方向の中間位置にある。ここから吐水管3は、凸部53の各吐水管側規制部53bのいずれかが、スリット19bの各本体側規制部19dのいずれかに当接するまで左右に約30度ずつ回転が可能となる。このとき、第1リング部材30と第2リング部材50は、本体部2に対する吐水管3の回転摺動を円滑にする働きをし、オーリング40は、本体部2と吐水管3の水密を保つ働きをする。最後に引出吐出管に取付けられたフレキシブルパイプを吐水管3の吐水口3aの側から挿入して本体部2の内径部11bまで通す。
【0020】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。吐水管3に対し上下方向及び周方向に不動に取付けられた第2リング部材50の凸部53が、本体部2のスリット19b内に挿入された状態で周方向に移動可能に取付けられている。これによって、吐水管3は、凸部53の各吐水管側規制部53bのいずれかが、スリット19bの各本体側規制部19dのいずれかに当接するまで本体部2に対して左右に首振りが可能となる。このように、本体部2と吐水管3との間に第2リング部材50を介在させて配置するだけでよいので、構造が簡潔であるとともに組立作業も容易であるとともに、外観に現れるのは、棒先止めねじ60の頭部だけなので見栄えが良い。また、凸部53の貫通孔54には、棒先止めねじ60の棒状部分61が挿入されて第2リング部材50を周方向及び中心軸Aの延びる方向に移動不能とされているので、凸部53がスリット19bの各本体側規制部19dに当接したときの凸部53の強度を高められる。
【0021】
また、第2リング部材50の凸部53の上下の内径面部52には、摺動面部52aが設けられており、摺動面部52aは棒先止めねじ60の締め込み量を増すほど第2小径部15の当接部19cに当接する圧力が高まるように構成されている。これによって、棒先止めねじ60の締め込み量を変更することによって本体部2に対する吐水管3の回転摺動抵抗を調整することができる。
【0022】
さらに、棒先止めねじ60は、ねじの頭部を有さないので、ねじの頭部が吐水管3の外径部21から径方向に突出することがなく外観見栄えがさらに良い。
【0023】
図7に本発明の他の実施形態に係る水栓1Aを示す。
図7に示す断面は、上記一実施形態の水栓1における
図3に示す断面に対応するものである。上記一実施形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。上記一実施形態の水栓1との違いは、概略、本体部2Aの第2小径部15Aにおける第1リング部材30Aと第2リング部材50の配設位置が、水栓1の本体部2の第2小径部15における第1リング部材30と第2リング部材50配設位置に対して上下逆になっている点である。ここで、本体部2Aが、特許請求の範囲の「水栓本体」に相当する。
【0024】
第2小径部15Aの外径部15aAには、下側の第1小径部14の側から上方に向かって順に、第4環状溝19A、第2環状溝17、第3環状溝18、第1環状溝16Aが形成されている。第1環状溝16Aは、周方向の断面がほぼ同一の矩形状をしており、長軸方向である上下方向の寸法が第2環状溝17、第3環状溝18の上下方向の寸法の2倍程度に設定され、短軸方向である径方向の寸法が第2環状溝17、第3環状溝18の径方向の寸法より若干長く設定されている。第1環状溝16Aには、樹脂製の第1リング部材30Aが嵌め込まれる。第4環状溝19Aは、周方向の断面が略矩形状で、長軸方向である上下方向の寸法が第2環状溝17、第3環状溝18の上下方向の寸法の3倍程度に設定され、短軸方向である径方向の寸法が第1環状溝16Aの径方向の寸法と同程度に設定されている。第4環状溝19Aの断面における短軸方向である径方向の寸法、すなわち第4環状溝19Aの径方向の深さは、第2小径部15Aの径方向の厚みの1/2程度とされている。なお、第2小径部15Aの径方向の厚みとは、外径部15aAと内径部15bとの間の径方向の寸法である。第4環状溝19Aの底面部19aAの後側には径方向に貫通する円弧状のスリット19bAが形成されている。スリット19bAは、底面部19aAの上下方向中央部に形成され、その周方向の寸法は、内径部15bの全周の寸法の5/12程度とされている。スリット19bAの上下の底面部19aAは、当接部19cAとされている。また、スリット19bAの周方向の両端面は、本体側規制部19dAとされている。第4環状溝19Aには、樹脂製の第2リング部材50が嵌め込まれる。ここで、第2小径部15Aと当接部19cAが、それぞれ特許請求の範囲の「第1接続部」と「外周面」に相当する。
【0025】
第1リング部材30Aは、周方向の断面が矩形状をした樹脂製の円筒状の樹脂製部材で、外径面部31Aと、内径面部32Aと、を有する。外径面部31Aの直径は、吐水管3Aにおける本体連結部20の内径部22の直径よりわずかに小さく設定されている。内径面部32Aの直径は、第2小径部15Aにおける第1環状溝16Aの底面部16aAの直径とほぼ同じに設定されている。第1リング部材30Aにも、上下方向に貫き周方向に分割する分割スリットが形成されている。吐水管3Aは、水栓1に対して、先端薄肉部23がない点と、ねじ孔24の上下方向の位置が異なる点で相違する。
【0026】
本体部2Aに対する吐水管3Aの組付け方について説明する。まず、本体部2Aの第2小径部15Aに第2リング部材50と2つのオーリング40と第1リング部材30Aを取付ける。具体的には、第4環状溝19Aに第2リング部材50を分割スリット55から周方向に拡げながら嵌め込む。このとき、凸部53がスリット19bAに入って周方向に摺動可能となるようにする。第2環状溝17と第3環状溝18にそれぞれオーリング40を上方から拡げながら押し下げて嵌め込む。続いて、第1環状溝16Aに第1リング部材30Aを分割スリットから周方向に拡げながら嵌め込む。第1リング部材30Aと2つのオーリング40と第2リング部材50が取付けられた状態の第2小径部15Aに対して、吐水管3Aの本体連結部20を被せるように嵌め込む。そして、本体部2Aに対して中心軸Aを中心に吐水管3Aを回転させて第2リング部材50の貫通孔54と吐水管3のねじ孔24を双方の軸が一致するように調整して棒先止めねじ60をねじ込む。このとき、第2リング部材50の平坦面部56に棒先止めねじ60におけるねじ部分62の棒状部分61側の面が当接してからねじ込み量を調整することによって摺動面部52aが第2小径部15の当接部19cAに当接して押圧する力を変えられるようになっている。これによって、棒先止めねじ60のねじ込み量を調整することによって本体部2Aに対する吐水管3Aの回転摺動抵抗を調整できる。吐水管3Aの吐水口3aを前方向(使用者の方向)に向けたとき、凸部53の位置は、後方向でスリット19bAの周方向の中間位置にある。ここから吐水管3Aは、凸部53の各吐水管側規制部53bのいずれかが、スリット19bAの各本体側規制部19dAのいずれかに当接するまで左右に約30度ずつ回転が可能となる。このとき、第1リング部材30Aと第2リング部材50は、本体部2Aに対する吐水管3Aの回転摺動を円滑にする働きをし、オーリング40は、本体部2Aと吐水管3Aの水密を保つ働きをする。
【0027】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。吐水管3Aに対し上下方向及び周方向に不動に取付けられた第2リング部材50の凸部53が、本体部2Aのスリット19bA内に挿入された状態で周方向に移動可能に取付けられている。これによって、吐水管3Aは、凸部53の各吐水管側規制部53bのいずれかが、スリット19bAの各本体側規制部19dAのいずれかに当接するまで本体部2Aに対して左右に首振りが可能となる。このように、本体部2Aと吐水管3Aとの間に第2リング部材50を介在させて配置するだけでよいので、構造が簡潔であるとともに組立作業も容易であるとともに、外観に現れるのは、棒先止めねじ60の頭部だけなので見栄えが良い。また、凸部53の貫通孔54には、棒先止めねじ60の棒状部分61が挿入されて第2リング部材50を周方向及び中心軸Aの延びる方向に移動不能とされているので、凸部53がスリット19bAの各本体側規制部19dAに当接したときの凸部53の強度を高められる。
【0028】
また、第2リング部材50の凸部53の上下の内径面部52には、摺動面部52aが設けられており、摺動面部52aは棒先止めねじ60の締め込み量を増すほど第2小径部15Aの当接部19cAに当接する圧力が高まるように構成されている。これによって、棒先止めねじ60の締め込み量を変更することによって本体部2Aに対する吐水管3Aの回転摺動抵抗を調整することができる。
【0029】
さらに、棒先止めねじ60は、ねじの頭部を有さないので、ねじの頭部が吐水管3Aの外径部21から径方向に突出することがなく外観見栄えがさらに良い。
【0030】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0031】
1.上記実施形態においては、本体部2の第2小径部15に吐水管3の本体連結部20が径方向外側からかぶさるように嵌合されるように構成した。しかし、これに限らず、吐水管3の本体連結部20を小径として本体部2の吐水管連結部10が径方向外側からかぶさるように嵌合されるように構成してもよい。
【0032】
2.上記実施形態においては、第2リング部材50を吐水管3の本体連結部20に対して周方向及び中心軸方向に移動不能とするビスとして頭部のない棒先止めねじ60を使用した。しかし、これに限らず、多少の外観見栄えの悪化を許容するならば頭部を有するねじを用いることもできる。
【0033】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 水栓、 2,2A 本体部(水栓本体)、 3,3A 吐水管、 10 吐水管連結部、 12 小径部、 15,15A 第2小径部、 15a,15aA 外径部、 15b 内径部、 19,19A 第4環状溝、 19b,19bA スリット、 19c,19cA 当接部(外周面)、 19d,19dA 本体側規制部、 20 本体連結部、 21 外径部、 22 内径部、 24 ねじ孔、 50 第2リング部材(リング部材)、 51 外径面部、 52 内径面部、 52a 摺動面部、 53 凸部、 53b 吐水管側規制部、 54 貫通孔、 60 棒先止めねじ(ビス、止めねじ)、 61 棒状部分(先端部分)、 A 中心軸