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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097583
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ラッシュリフト方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 7/00 20060101AFI20240711BHJP
   A45D 2/48 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A45D7/00 Z
A45D2/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001130
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】511021055
【氏名又は名称】株式会社ビュプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】戸原 涼子
(57)【要約】
【課題】ラッシュリフトによって上睫毛に与えられた上向きの癖を長持ちさせるための技術を提供する。
【解決手段】ラッシュリフト方法では、リフト過程で、上睫毛10に上向きの癖を付ける(図4(A))。リフト過程では、上睫毛10にパーマをかけ或いはカールさせることにより、上睫毛10に上向きの癖を与える。その状態で、上睫毛10に光硬化型接着剤70を塗布する(同(B))。光硬化型接着剤70は、上睫毛10の根本から1~3mmの範囲を除き、上睫毛10の全長にわたって塗布される。その後、上睫毛10に光を照射することにより光硬化型接着剤70を硬化させる(同(C))。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の上睫毛のそれぞれに、上向きの癖を与えるリフト過程と、
前記リフト過程で上向きの癖を与えられた前記上睫毛のそれぞれに光に反応して硬化する光硬化型接着剤を、前記上睫毛それぞれの長さ方向の少なくとも70%の範囲を覆うようにして塗布する塗布過程と、
前記塗布過程で前記上睫毛に塗布された前記光硬化型接着剤に光を照射することにより前記上睫毛に塗布された前記光硬化型接着剤を硬化させる硬化過程と、
を含むラッシュリフト方法。
【請求項2】
前記塗布過程で、前記上睫毛それぞれの基端に、前記光硬化型接着剤が塗布されない範囲を1mmから3mmの長さで設ける、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【請求項3】
前記塗布過程で、前記上睫毛それぞれの先端までを、前記光硬化型接着剤で覆う、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【請求項4】
前記硬化過程で照射される光は近紫外線或いは可視光、又はそれらの双方であり、前記光硬化型接着剤は近紫外線又は可視光に反応して硬化するものである、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【請求項5】
前記光硬化型接着剤として、その粘性が、常温で100~840mPa・sのものを用いる、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【請求項6】
前記光硬化型接着剤として、その粘性が、常温で110~250mPa・sのものを用いる、
請求項5記載のラッシュリフト方法。
【請求項7】
前記リフト過程を実行する前に、前記上睫毛を洗浄する洗浄過程を実行する、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【請求項8】
前記硬化過程を実施する場合に、前記上睫毛の下側に、前記光を反射する鏡を差し込んだ状態で前記光を前記上睫毛に照射する、
請求項1記載のラッシュリフト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睫毛に上向きの癖を与えるための方法である、ラッシュリフト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容の分野では、睫毛を長く見せる目的で、上睫毛に上向きの癖を与える技術が汎用されている。睫毛が長く見えると目元が美しく見えるからである。
そのために最も汎用されているのがアイラッシュカーラーである。
アイラッシュカーラーは、上睫毛を上下から挟み込む、目の上側の縁に沿った弓形の曲線を持つ開閉自在な2枚の板を含む器具である。アイラッシュカーラーは、その2枚の板の間に上睫毛を挟み込んだ状態で上睫毛を根本付近で上向きに折り曲げ、上睫毛に、一時的にではあるが上向きの癖を与える。アイラッシュカーラーを用いることにより上睫毛は上向きになり、正面から見た場合に長く見えるようになりその存在感を増す。
アイラッシュカーラーは、マスカラと組合せて用いられることも良くある。マスカラは、睫毛に塗ることにより睫毛のボリュームを増すための液体、固形、又は半固体(クリーム)であり、棒状のアプリケータ(ブラシ)やマスカラコームと呼ばれる専用の櫛を用いて睫毛に塗布して用いられる。アイラッシュカーラーで上向きの癖を付けた睫毛に更にマスカラを塗布することによって、睫毛のボリュームが増し、目元がより華やかに見えるようになる。
【0003】
アイラッシュカーラー、或いはアイラッシュカーラーとマスカラとの組合せは上述のように目元を美しく見せることに関して一定の効果を生じる。
しかしながら、アイラッシュカーラーで睫毛に与えることのできる上向きの癖は、せいぜい一日しか持たない。したがって、アイラッシュカーラーによって上睫毛に上向きの癖を与える作業は毎日必要となる。マスカラも同様である。マスカラは、毎日行う化粧落としの際に睫毛から除去されるので、マスカラの塗布の作業も毎日必要となる。
したがって、アイラッシュカーラーとマスカラは、目元を美しく見せることに関して一定の効果を生じるものの、それらを利用する者に一定の手間を強いる。
しかも、アイラッシュカーラーは、上睫毛を根本付近で上向きに折り曲げることにより上睫毛に上向きの癖を与えるものであるところ、上睫毛を折り曲げる位置を調節する作業や、上睫毛を上向きに折り曲げる作業は手作業であるため、その作業は簡単であるとはいえない。例えば、上睫毛を折り曲げる位置を誤ってしまうと上睫毛が十分に上に向かないこともあるし、また上瞼をアイラッシュカーラーで挟みこんでしまった場合には当然に痛みを伴う。またアイラッシュカーラーで上睫毛を上向きに折り曲げる力加減を誤ると、上睫毛が折れてしまうこともある。したがって、アイラッシュカーラーを使いこなすにはある程度の練度が必要であり、その利用はそれほど簡単ではない。
【0004】
そのような点を考慮してラッシュリフトの技術が提案され、ある程度普及している。ラッシュリフトは、頭髪にパーマをかけるのと同様にいわゆるパーマ液を用いる等して上睫毛に対して上向きのカーブを描くような癖を付ける技術である。ラッシュリフトによって上睫毛に与えられる上向きの癖は、2-4週間程度保つ。また、ラッシュリフトは基本的に、被験者本人ではなく、ラッシュリフトのサービスを業として提供する専門家が施術するものであるため、被験者に練度が求められることもない。
したがって、ラッシュリフトによれば、比較的簡単なマスカラの塗布を毎日行うことは必要となるかもしれないが、練度の必要なアイラッシュカーラーを用いての作業を被験者が毎日行う必要がなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラッシュリフトの技術にも改良すべき点がある。
ラッシュリフトは上述のように専門家による施術というサービスによって被験者に提供されるのが基本である。被験者がそのようなサービスを受けるには当然に対価が発生する。したがって、ラッシュリフトによって上睫毛に与えられる上向きの癖は、被験者から見れば、2-4週間程度とは言わずより長く保たれるのが好ましい。
ラッシュリフトにより上向きとされた上睫毛に毎日マスカラを塗布すれば、ラッシュリフトによって上睫毛に与えられた上向きの癖が保たれる期間はある程度延びるかもしれないが、実のところマスカラによる上睫毛に与えられた上向きの癖を長持ちさせる効果は極めて限定的である。
【0006】
本願発明は、ラッシュリフトによって上睫毛に与えられた上向きの癖を長持ちさせるための技術を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本願発明者は、以下のラッシュリフト方法を提案する。
本願発明によるラッシュリフト方法は、被験者の上睫毛のそれぞれに、上向きの癖を与えるリフト過程と、前記リフト過程で上向きの癖を与えられた前記上睫毛のそれぞれに光に反応して硬化する光硬化型接着剤を、前記上睫毛それぞれの長さ方向の少なくとも70%の範囲を覆うようにして塗布する塗布過程と、前記塗布過程で前記上睫毛に塗布された前記光硬化型接着剤に光を照射することにより前記上睫毛に塗布された前記光硬化型接着剤を硬化させる硬化過程と、を含む。
このラッシュリフト方法は、上述の各過程を含む。これら各過程、或いは本願のラッシュリフト方法は、専門家によって施術される。
本願発明によるラッシュリフト方法は、被験者の上睫毛のそれぞれに、上向きの癖を与えるリフト過程を含む。このリフト過程は、頭髪にパーマをかけるのと同様にいわゆるパーマ液を用いる等して上睫毛に対して、上睫毛が上向きのカーブを描くようなパーマをかけるという過程である。このリフト過程で施術される技術は、従来のラッシュリフト方法において上睫毛に対して上向きの癖を与えるために用いられている技術と同じもので十分である。
また、本願発明によるラッシュリフト方法は、リフト過程で上向きの癖を与えられた上睫毛のそれぞれに光に反応して硬化する光硬化型接着剤を、上睫毛それぞれの長さ方向の少なくとも70%の範囲を覆うようにして塗布する塗布過程と、塗布過程で上睫毛に塗布された光硬化型接着剤に光を照射することにより上睫毛に塗布された光硬化型接着剤を硬化させる硬化過程とを含む。
つまり、本願発明では、例えば従来の方法により上向きの癖を与えられた上睫毛に対して光硬化型接着剤を塗布し、そしてその光硬化型接着剤に対して光を照射することにより光硬化型接着剤を硬化させる。それにより、上睫毛のそれぞれは、それらのある程度の長さ範囲を、硬化した光硬化型接着剤で被覆された状態となる。
なお、前記硬化過程を実施する場合には、前記上睫毛の下側に、前記光を反射する鏡を差し込んだ状態で前記光を前記上睫毛に照射するのが好ましい。こうすることにより、硬化過程を実施する際に、光を照射するための光源の位置する上睫毛の前側から直接光を上睫毛に照射すると同時に、その反対側である上睫毛の後側から鏡で反射した光を上睫毛に照射することが可能となるので、上睫毛に対する光の照射むらの発生を抑制することができ、ひいては光硬化型接着剤全体の硬化むらの発生を抑制することができるようになる。
本願発明者は、本願発明の効果を確認するための試験を行った。具体的には、上睫毛に従来どおりの方法でラッシュリフトを行った場合(つまり、本願発明で言うリフト過程のみを行った場合)と、上睫毛に本願発明の方法を実施した場合(つまり、本願発明で言うリフト過程に加えて、塗布過程と、硬化過程を実施した場合)とで、施術直後に上向きとなっている同じ本数の上睫毛のうち、3週間経過時点で上向きを維持している上睫毛の本数を調べた。その結果、本願発明の方法を実施した上睫毛の方が、目を開けたときの毛先が一定以上上向きを保っている上睫毛の本数が、従来どおりの方法でラッシュリフトを行っただけの上睫毛よりも有意に多かった。これにより、塗布過程と硬化過程を含まない方法が適用された場合よりも、塗布過程と硬化過程を含む本願発明の方法を適用されることによって上睫毛に与えられた上向きの癖は、有意に長く保たれることがわかった。この結果は、毎日の化粧落としや洗顔を行っても変わらなかった。
硬化させた光硬化型接着剤で上睫毛を被覆することにより、上睫毛に与えられた上向きの癖が持続する理由は、上向きの癖をつけられた上睫毛に沿って存在する状態で硬化した光硬化型接着剤が、その形状を維持しようとするからであると考えられる。つまり、リフト過程で上向きの癖が与えられた上睫毛は、その形状を維持しようとする光硬化型接着剤により外側から形状を維持されることで、上向きの癖が与えられた状態をより長く保つと考えられる。
塗布過程で光硬化型接着剤を上睫毛の長さの70%以上の範囲を覆うようにして塗布するのは、上睫毛の長さ方向の少なくとも70%以上の範囲を光硬化型接着剤で覆わないと、上睫毛に与えられた上向きの癖が十分に維持されないからである。
また、塗布過程で塗布する接着剤を光硬化型接着剤とするのは、光硬化型接着剤であれば、光を照射するまで硬化が始まらないため、光硬化型接着剤を上睫毛に塗布した後においても、光が照射されるまで、上睫毛の形を整えたり、隣接した上睫毛同士が束にならないように隣接した上睫毛を例えば櫛やブラシを用いて引き離したりすることが可能だからである。接着剤が他の接着剤、例えば、美容の分野でグルーと称されることのある瞬間接着剤を用いるとすれば、瞬間接着剤を塗布した後そのような調整を行うことが不可能となる。つまり、塗布過程で塗布する接着剤として光硬化型接着剤を用いることにより、本願発明によるラッシュリフト方法によって仕上げられた被験者の上睫毛は、その見栄えが良いものとなる。
【0008】
上述したように、本願発明における塗布過程では、光硬化型接着剤を上睫毛の長さの70%以上の範囲を覆うようにして塗布する。
ここで、前記塗布過程では、前記上睫毛それぞれの基端に、前記光硬化型接着剤が塗布されない範囲を1mmから3mmの長さで設けることが好ましい。これは、このようにすることにより、光硬化型接着剤が上瞼に触れることを避けることができるためである。光硬化型接着剤が上瞼或いは肌に触れると、硬化過程で光を照射された光硬化型接着剤が硬化する際に硬化熱を生じ、被験者が熱さを感じるおそれがある。上睫毛の基端に光硬化型接着剤が塗布されない範囲が存在すれば、そのような不具合の発生を抑制することが可能となる。
上睫毛の基端側における光硬化型接着剤が塗布されない範囲の長さは上述のように1mmから3mmとするのが好ましい。その長さを1mm以下とするのは、本願発明のラッシュリフト方法の施術を行うのが専門家であるにしても難しいし、その長さを3mm以上とすると光硬化型接着剤によって生じる、上睫毛に与えられた上向きの癖を維持するという効果が減じられる可能性があるからである。これらの点を考慮するのであれば、光硬化型接着剤が塗布されない上睫毛の基端側における長さは2mm±0.5mmとするのが好ましい。
もっとも上睫毛の基端側における光硬化型接着剤が塗布されない範囲の長さは、すべての上睫毛について同じである必要はない。
【0009】
上述したように、本願発明における塗布過程では、光硬化型接着剤を上睫毛の長さの70%以上の範囲を覆うようにして塗布する。
ここで、前記塗布過程で、前記上睫毛それぞれの先端までを、前記光硬化型接着剤で覆うのが好ましい。こうすることで、光硬化型接着剤で覆われる上睫毛の長さをより長くすることができるからである。上睫毛の先端側まで光硬化型接着剤を塗布したとしても、光硬化型接着剤が被験者の肌に触れることがないため特段の不具合も生じない。他方、上睫毛の先端までを光硬化型接着剤で覆えば光硬化型接着剤が覆う上睫毛の範囲を最大化することができるので、上睫毛に与えられた上向きの癖を長期間維持するために有利である。
【0010】
本願において、光硬化型接着剤は、光によって硬化する接着剤一般を含む。光硬化型接着剤を硬化させるための光は、例えば紫外線であるが、近紫外線でも、可視光でも構わない。光硬化型接着剤は近紫外線又は可視光に反応して硬化するものとすることができ、硬化過程で照射される光は近紫外線或いは可視光、又はそれらの双方とすることができる。もちろん、照射される光は、光硬化型接着剤を硬化させる波長の光とされる。照射される光はその条件が満たされるのであれば、複数の波長の光を含むものであっても構わないし、連続するある範囲の波長の光を含むものであっても良い。
硬化過程で、光硬化型接着剤を硬化させるために照射される光は、目の近辺に光が照射されることを考慮すると、目に対する刺激の小さい光であることが好ましい。とすれば、硬化過程で照射される光は近紫外線か、可視光、或いはそれらの双方を含む光であるのが好ましい。具体的には、硬化過程で照射される光の波長は350nm以上であるのが好ましく、370nm以上であるのがより好ましい。そして、光硬化型接着剤はもちろん、硬化過程で照射される光によって硬化するようなものである必要がある。
【0011】
硬化過程で照射するのが好ましい上述のごとき光によって硬化する光硬化型接着剤は、公知或いは周知であり、また、例えばジェルネイルの用途での使用を目的として市販もされている。そのような、公知或いは周知であり、場合によっては市販されている光硬化型接着剤のうち適当なものを、本願の光硬化型接着剤として利用することができる。もちろん、光硬化型接着剤は、本願のラッシュリフト方法における光硬化型接着剤の用途に用いることが意図された専用品であってもよい。
光硬化型接着剤は、光を当てる事によって硬化する樹脂(モノマー又はオリゴマー)である光硬化樹脂と、光が照射されたときに励起され、光硬化樹脂の官能基同士での重合反応を促進させることにより、モノマー又はオリゴマーのポリマー化を促進させる光硬化開始剤とが少なくとも含まれている。本願の光硬化型接着剤としては、例えば、多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性モノマー及び光重合開始剤を含むものを用いることができる。
また、光硬化型接着剤としては、その粘性が、常温で100~840mPa・sのものを用いるのが好ましい。この範囲よりも粘度が低いと、塗布過程で光硬化型接着剤を塗布する際に、光硬化型接着剤が睫毛を伝って被験者の上瞼に至ってしまったり、場合によっては被験者の目に入ってしまったりするおそれがあるからである。また、この範囲よりも粘度が高いと、塗布過程で光硬化型接着剤を塗布するときに表面が均一にならないおそれがあり、場合によっては、隣り合う上睫毛同士を接着してしまうおそれがあるからである。粘度が低いときと高いときとに生じる上述の不具合をより良く避けるためには、光硬化型接着剤の粘度を例えば、常温で110~250mPa・sとしたものを用いるのがより好ましい。
【0012】
本願発明のラッシュリフト方法は以上のようなものであるが、本願発明のラッシュリフト方法では、前記リフト過程を実行する前に、前記上睫毛を洗浄する洗浄過程を実行するのが好ましい。
洗浄過程では、これからリフト過程を実行される上睫毛を洗浄することで、上睫毛に付着している汚れを落とす。上睫毛に汚れが付着していると、追って行われるリフト過程において用いられるパーマ液の上睫毛に対する浸透が不十分になることがあり、そのようなことが生じるとリフト過程で上睫毛に上向きの癖を適切に与えられなくなることがあるからである。
また、洗浄過程では、その後行われるリフト過程で使用されるパーマ液や、塗布過程で使用される光硬化型接着剤から下睫毛を保護するために必要な処理を併せて行っても良い。
洗浄過程(下睫毛を保護するための処理も含む。)は、従来のラッシュリフト方法でも行われることがあるので、公知或いは周知の上睫毛の洗浄方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態で説明するラッシュリフト方法が実施される目の正面図。
図2】ラッシュリフト方法における洗浄過程を終えた状態の目を示す正面図。
図3】ラッシュリフト方法におけるリフト過程で実施される処理を説明するための正面図。
図4】ラッシュリフト方法における、リフト過程が終了した状態(A)、塗布過程が終了した状態(B)、硬化過程が終了した状態(C)をそれぞれ示す側面図。
図5】光硬化型接着剤の成分表。
図6】鏡を用いて硬化過程を実施している状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
この実施形態で説明するのは、被験者の片目の上睫毛に対して本願発明によるラッシュリフト方法を実施する場合についてである。一般的には、施術者が被験者に対してラッシュリフト方法を実施或いは施術する。
以下に説明するラッシュリフト方法と同様にして、他方の目の上睫毛に対しても、ラッシュリフト方法を実施することが可能であり、通常は当然にそうする。
【0015】
図1に、被験者の、睫毛のラッシュリフト方法が実施される側の目を示す。この状態では、目は開いている。よく知られているように、上瞼1の下側の縁に沿って上睫毛10が複数存在し、下瞼2の上側の縁に沿って下睫毛20が複数存在する。
【0016】
本願のラッシュリフト方法を実行する場合、まず、洗浄過程を実行する。
洗浄過程では、これから後述するリフト過程を実行される上睫毛10を洗浄することで、上睫毛10に付着している汚れを落とす。上睫毛10に汚れが付着していると、後述するリフト過程において用いられるパーマ液の上睫毛10に対する浸透が不十分になることがあり、そのようなことが生じるとリフト過程で上睫毛10に上向きの癖を適切に与えられなくなることがあるからである。
ただし、この実施形態の洗浄過程では、必須ではないが、上睫毛10の洗浄を行うに先立って、下睫毛20を保護するための処理を行う。後述するように上睫毛10にはこの後、リフト過程、塗布過程が実行され、リフト過程ではパーマ液が、塗布過程では光硬化型接着剤がそれぞれ上睫毛10に適用される。それらパーマ液や、光硬化型接着剤が下睫毛20に付着するのを防止して、それらから下睫毛20を保護するための処理を予め行う。
かかる下睫毛20の処理は例えば以下のように行う。ラッシュリフト方法を実施する場合、被験者は、ラッシュリフト方法を実施される側の目を閉じる。そして、必要に応じて、上睫毛10と下睫毛20の間に、シート30を配する(図2)。シート30は、後述するパーマ液や光硬化型接着剤が、被験者の下瞼2部分の皮膚や、下睫毛20に付着しないようにするためのものである。シート30は、その目的が果たせる限りどのようなものでも構わず、素材や、形状も自由に選択可能である。この実施形態では、シート30はパラフィン紙であり、矩形に成形されたシート30を2枚、目の下側に配することで下睫毛20を保護することとしている。
このようにして下睫毛20を保護するための処理が終わった後に、上睫毛10の洗浄が行われる。洗浄過程における上睫毛10の洗浄は、上睫毛10の汚れを落とすことができるのであればどのような方法によって行われても良く、例えば、従来のラッシュリフト方法で用いられていたのと同じ方法で行うことができる。
具体的には、この実施形態では、上睫毛10の洗浄は、例えば、公知或いは周知の洗浄剤を2本の綿棒に含ませ、それら綿棒の先端で上睫毛10を上下から挟み込み、上睫毛10の汚れをその根本から拭うことにより行う。洗浄剤として用いることができるのは、例えば、株式会社ビュプロが製造・販売する高アルカリ性電解水(商品名:BPピュアケイ、品番:5001)である。
【0017】
次いで、リフト過程を実行する。
リフト過程は、上睫毛10のそれぞれに、上向きの癖を与えるというものである。つまり、リフト過程では、上睫毛10のそれぞれにパーマをかける、或いはカールさせることにより、上睫毛10のそれぞれに上向きの癖をつける。
リフト過程は、従来から行われている公知或いは周知の手法を実行することにより、上睫毛10のそれぞれに、上向きの癖を与えるというものとすることができる。
リフト過程で実施される方法は、例えば、以下の如きである。以下の例では、ロッド、綿棒、水溶性グルー、1剤、2剤、ラップフィルムが登場する。これらのうち、ロッドとしては、株式会社ビュプロが製造・販売するラッシュリフト用具セット(商品名:ラッシュリフト スターターキット(商標)、品番:1978s,1979s,1980s)に含まれる睫毛巻き付け用の棒である「カールスタイルロッド(商標)」を用いることができ、水溶性グルーとしては、同セットに含まれる水溶性の接着剤である「AQUAグルー(商標)」を用いることができ、1剤及び2剤としては、同セットにおける「コスメナチュラ セットシステム(商標)」に含まれる薬剤である1剤、2剤を用いることができる。また、綿棒とラップフィルムは汎用のものを用いれば良いが、綿棒については、株式会社ビュプロが製造・販売する小型のブラシ(商品名:ラッシュリフト マイクロブラシ<ロング>(商標)、型番1999)を用いるのが便利である。
【0018】
リフト過程を実行する場合、まず、ロッドを選択する。ロッドの周辺に上睫毛10が巻き付けられる。ロッドは断面が略半円形、略涙形等の適宜の形状とされた樹脂製の棒状体であり、曲折可能な程度の柔軟性が与えられており、これには限られないがこの実施形態では、断面形状が異なる幾つかのバリエーションが準備されている。被験者の上瞼1からの上睫毛10の生え方や、上睫毛10の長さに対応したロッドを準備されたバリエーションの中から選択する。また、ロッドの長さを、被験者の目の横幅に略対応した長さとする。ロッドは長めに作られており、簡単に切断可能であるので、選択したロッドを適宜の長さに切断することで、被験者の目の幅にその長さを合わせることが可能である。また、ロッドは、手で力を加えてそれを曲折させることにより、上瞼1の縁のカーブに沿わせることが可能なカーブを与えることが可能とされている。
次いで、ロッドを上瞼1の縁に沿わせ、ロッドの両端を目頭と目尻に対応する位置に軽く押し付けて固定する。その状態で、上睫毛10に綿棒で水溶性グルーを適宜塗布しながら、上睫毛10をロッドに巻き付ける。水溶性グルーが硬化することにより、上睫毛10はロッドに巻き付けられた状態でロッドに固定されることになる(図3)。
なお、図3に示したロッド40は、上述したロッドに相当する棒状体であるロッド本体41と、ロッド本体41から図3における上側に伸びる板状のリブ42とを備えている。リブ42は、目を閉じた状態の上瞼1の縁に当接させることにより、ロッド本体41を安定させるためのものである。リブ42の長さ方向の中程には、板状の摘み43が設けられているが、これは施術者が摘むことでロッド40の扱いを容易にするためのものである。リブ42と摘み43はロッド40において必須ではない。このロッド40を用いる場合、上睫毛10はロッド40のロッド本体41に対して巻き付けて固定される。図3では、図中右側から数本の上睫毛10のみがロッド本体41に対して固定された状態とされているが、この後すべての上睫毛10がロッド本体41に巻き付けられることになる。
【0019】
その状態で、ロッド40に巻き付けられて固定された上睫毛10に対して、1剤を塗布する。1剤は、後述する2剤とともに例えば液体であり、後述する2剤と併せて上述したパーマ液を構成する。1剤の塗布は、綿棒を用いて行うことができる。すべての上睫毛10の全長に1剤を塗布するのが基本である。すべての上睫毛10の太い根本から1剤を塗布し、その後若干の時間を置いた上で、すべての上睫毛10の中程、細い先端に向けて1剤を塗布するのが好ましい。そうすることで、上睫毛10の太い根本に、細い先端よりも長時間、1剤が作用するようにすることができる。その後、1剤の上睫毛10に対する浸透を促進させるために、目幅に合わせたラップフィルムを用意し、ラップフィルムで上睫毛10全体をロッド40ごと覆って数分、例えば3分程放置する。
放置後、ラップフィルムを除去し、1剤が毛先に広がらないようにするために綿棒で余った1剤を必要に応じて除去する。
続けて、上述したのと同様の方法で上睫毛10に再び1剤を塗布し、除去する。ただし、2回目は、1回目の1剤の塗布の場合では3分とした放置の時間を、1回目よりも長くする。目安としての時間は、上睫毛10が軟毛である場合には6-8分、普通である場合には8-10分、硬毛である場合には10-12分である。
【0020】
1剤の塗布を上述のように2回行ったら、1剤を除去する。
1剤の除去は例えば、水を含ませた綿棒で上睫毛10から1剤を拭き取ることにより行う。なお、綿棒に水を含ませすぎると、水溶性グルーが溶けて上睫毛10がロッド40から離れてしまうのでその点には注意を要する。
1剤には、上睫毛10のキューティクルを開かせるとともに、上睫毛10に含まれているアミノ酸であるシスチンにおけるシスチン結合を切断する機能がある。1剤はそのような機能を有する公知或いは周知の薬剤である。したがって、十分に1剤が浸透した上睫毛10は、そのキューティクルが十分に開き、またシスチン結合が切れた状態になっている。
【0021】
次に、上睫毛10に2剤を塗布する。上睫毛10への2剤の塗布は、上睫毛10への1剤の塗布を行う場合と同様に、綿棒を用いて行うことができる。ただし、2剤は、すべての上睫毛10の全長に対して塗布して構わない。上睫毛10では未だにキューティクルが開いた状態となっているので、2剤は上睫毛10に良く浸透していく。1剤を塗布した場合と同様に、ラップフィルムで上睫毛10全体をロッド40ごと覆って数分、例えば3分程放置することで、2剤の上睫毛10への浸透を促す。
【0022】
時間が経過したら、余分な2剤を除去する。2剤の除去は、乾いた綿棒を用いて行う。綿棒で上睫毛10を拭うことにより、余分な2剤を除去することができる。
余分な2剤を除去したら、同様の方法で再び上睫毛10に2剤を塗布する。2剤の2度目の塗布の場合には、ラップフィルムをした状態での放置の時間は、長めに例えば、6-8分とする。
時間が経過したら2剤を除去する。2剤の除去は例えば、まず乾いた綿棒で上睫毛10を拭うことによって余分な2剤を拭き取り、次いで、水を含ませた綿棒で上睫毛10を拭うことによって完全な拭き取りを行う。
2剤は、1剤によって切断されたシスチン結合を再び結びつけることにより、2剤が浸透した状態のときの形状に上睫毛10を固定する(癖をつける)機能を有している。2剤は、そのような機能を有する公知、或いは周知の薬液である。
【0023】
以上のような処理を行うことにより、リフト過程が終了する。
リフト過程が終了すると、上睫毛10は上向きの癖が与えられた状態となる。つまり、上睫毛10はそれぞれ、パーマをかけられた、或いはカールさせられた状態となる。上睫毛10の上方へのカーブは、それが巻き付けられたロッド40(正確には、ロッド本体41)の断面形状に即したものとなる。
リフト過程が終了した状態の上睫毛10の側面図を図4(A)に示す。
【0024】
なお、以上で説明したリフト過程での処理は、先にも述べたが例示である。
また、その称呼はともかく、上述した1剤、2剤と同様の機能を有する2種類の薬液を用いて上睫毛に上向きの癖を与える方法は公知、或いは周知である。上述したものとは異なる、そのような2種類の薬液を用いて、上睫毛に上向きの癖を与えることができるのは当然であり、塗布の手順、放置時間等がそれら薬液の種類に応じて変わることがあるのも当然である。
上睫毛に上向きの癖を与えるために用いることのできる2種類の薬液は通常セット販売されている。その例としては、株式会社BE STYLEが製造・販売を行う「ケラチンまつ毛パーマ 1液2液セット」、株式会社 FLAP EYELASHESが製造・販売を行う「FF Curl Cosme(商標)」がある。
【0025】
ラッシュリフト方法では、リフト過程が終了したら、次に塗布過程を実行する。
塗布過程では、リフト過程で上向きの癖を与えられた上睫毛10のそれぞれに光に反応して硬化する光硬化型接着剤70を、上睫毛10それぞれの長さ方向の少なくとも70%の範囲を覆うようにして塗布する(図4(B))。
光硬化型接着剤70は、上述したように、光に反応して硬化する接着剤である。したがって、光硬化型接着剤70は、後述する硬化過程で光を照射されるまでは、液状或いは液体に近いゲル状であり続ける。光硬化型接着剤70は、例えば、適当な紙片や小皿の上に適宜広げておき、それを図示を省略の刷毛で取り、刷毛に取った光硬化型接着剤70を、上睫毛10のまとまった範囲に塗布することにより上睫毛10に対して塗布することができる。刷毛としては、例えば、株式会社ビュプロが製造、販売するブラシ(製品名:マイクロブラシ<ロング>、型番1999)を用いることができる。
光硬化型接着剤70は、上睫毛10の長さ方向の少なくとも70%以上の範囲を覆うようにする。これは、後述するようにして硬化させられた後の光硬化型接着剤70はリフト過程で上睫毛10に付けられた上向きの癖を維持する機能を有するところ、上睫毛10の長さ方向の少なくとも70%の範囲を光硬化型接着剤70で覆わないと、その機能が十分に発揮されないおそれがあるからである。
光硬化型接着剤70は、上睫毛10のそれぞれの基端に、光硬化型接着剤70が塗布されない範囲が1mmから3mmの範囲で設けられるようにして、上睫毛10のそれぞれに塗布されるようにするのが良く、この実施形態では必ずしもそうする必要はないがそのようにしている。このようにすることにより光硬化型接着剤70が、被験者の上瞼1に触れることを避けられるようになる。なお、上睫毛10の基端付近における光硬化型接着剤70が塗布されない範囲の長さは、光硬化型接着剤70の上睫毛10に対する塗布が手作業によって行われるため精度を保つのがそれ程簡単ではない。例えば、上睫毛10それぞれの基端付近における光硬化型接着剤70が塗布されない範囲の長さが、上述の範囲で異なっていても構わない。可能なのであれば、上睫毛10それぞれの基端付近における光硬化型接着剤70が塗布されない範囲の長さは、2mm±0.5mmとするのが好ましい。
また、光硬化型接着剤70は、上睫毛10それぞれの先端を覆うようにして上睫毛10の先端のそれぞれに塗布することが好ましく、これには限られないがこの実施形態ではそうしている。上睫毛10の先端まで光硬化型接着剤70で覆うと、上睫毛10における光硬化型接着剤70で覆われる範囲が増えるため、光硬化型接着剤70による、リフト過程で上睫毛10に付けられた上向きの癖を維持する機能がよく発揮されることになる。
都合、各上睫毛10は、その先端から基端付近の2mm±0.5mmを除くすべての部分が連続して光硬化型接着剤70に覆われるようにするのが好ましい。
【0026】
光硬化型接着剤70は、光によって硬化する接着剤である。そのような接着剤である光硬化型接着剤70は、公知或いは周知であり、また、例えばジェルネイルの用途での使用を目的として市販もされている。そのような、公知或いは周知であり、場合によっては市販されている光硬化型接着剤のうち適当なものを、本願の光硬化型接着剤として利用することができる。もちろん、光硬化型接着剤は、本願のラッシュリフト方法における光硬化型接着剤の用途に用いることが意図された専用品であってもよい。
光硬化型接着剤70は、光を当てる事によって硬化する樹脂(モノマー又はオリゴマー)である光硬化樹脂と、光が照射されたときに励起され、光硬化樹脂の官能基同士での重合反応を促進させることにより、モノマー又はオリゴマーのポリマー化を促進させる光硬化開始剤とが少なくとも含まれている。光硬化型接着剤70としては、例えば、多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性モノマー及び光重合開始剤を含むものを用いることができる。例えば、これには限られないが、株式会社ビュプロが製造・販売する光硬化型接着剤(製品名:LCOATフィックスコーティング)を、光硬化型接着剤70として用いることができる。
より具体的には、この実施形態における光硬化型接着剤70の成分は、例えば、図5に示したようなものとすることができる。
光硬化型接着剤70としては、その粘性が、常温で100~840mPa・sのものを用いるのが好ましい。この範囲よりも粘度が低いと、塗布過程で上睫毛10に光硬化型接着剤70を塗布する際に、光硬化型接着剤70が上睫毛10を伝って被験者の上瞼1に至ったり、場合によっては被験者の目に入ってしまったりするおそれがあるからである。また、この範囲よりも粘度が高いと、塗布過程で光硬化型接着剤70を上睫毛10に塗布するときに表面が均一にならないおそれがあり、更には、隣り合う上睫毛10同士を接着してしまうおそれがあるからである。粘度が低いときと高いときとに生じる上述の不具合をより良く避けるためには、光硬化型接着剤70を、その粘度が、例えば、常温で110~250mPa・sのものとするのがより好ましい。
光硬化型接着剤70は上述したように光を受けることにより硬化する。光硬化型接着剤70を硬化させるための光は、例えば紫外線であるが、近紫外線でも、可視光でも構わない。光硬化型接着剤70は近紫外線又は可視光に反応して硬化するものとすることができ、硬化過程で照射される光は近紫外線或いは可視光、又はそれらの双方とすることができる。もちろん、後述する硬化過程で光硬化型接着剤70に照射される光は、光硬化型接着剤70を硬化させる波長の光とされる。照射される光はその条件が満たされるのであれば、複数の波長の光を含むものであっても構わないし、連続するある範囲の波長の光を含むものであっても良い。
硬化過程で、光硬化型接着剤70を硬化させるために照射される光は、目の近辺に光が照射されることを考慮すると、目に対する刺激の小さい光であることが好ましい。とすれば、硬化過程で照射される光は近紫外線か、可視光、或いはそれらの双方を含む光であるのが好ましい。具体的には、硬化過程で照射される光の波長は350nm以上であるのが好ましく、370nm以上であるのがより好ましい。そして、光硬化型接着剤70はもちろん、硬化過程で照射される光によって硬化するようなものである必要がある。後述するように、これには限られないが、この実施形態における後述の硬化過程では、波長405nmの光が照射されるため、光硬化型接着剤70はその波長の光の照射を受けた場合に硬化するようなものとされている。
光硬化型接着剤70の粘度と、照射を受けたときに硬化する光の波長とは、図5に示した光硬化型接着剤の成分表における「ウレタンアクリレートオリゴマー」の組成によって調整することができる。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ウレタン結合とアクリル基を有する樹脂であり、それぞれが種類の豊富な3つの原料、つまり、ポリオール、イソシアネート、アクリレートを任意に組み合わせ、合成することが可能であり、原料の選択により粘度、硬化させるための光の波長等を様々に調整することが可能である。この実施形態では、ウレタンアクリレートオリゴマーとして適宜のものを選択する(或いは、ウレタンアクリレートオリゴマーの原料として適宜のものを選択する)ことにより、光硬化型接着剤70の粘度と硬化させるための光の波長とを上述の範囲に収めることとし、またその他の物性も調整している。
【0027】
上述のようにして上睫毛10に対して光硬化型接着剤70を塗布する。この状態では光硬化型接着剤70はまだ硬化していない。
したがって、例えば、隣接する上睫毛10同士が接触しているときなど、隣接する上睫毛10を離間させる作業を行うこともできる。その作業には、例えば、上睫毛10に光硬化型接着剤70を塗布するために使用していたブラシ(製品名:マイクロブラシ<ロング>、型番1999)を使うことができる。
【0028】
上睫毛10が所望の状態に整えられたら、硬化過程を実施する。
硬化過程は、光硬化型接着剤70が塗布されている上睫毛10に対して、光硬化型接着剤70を硬化させる波長の光を照射することにより光硬化型接着剤70を硬化させるというものである(図4(C))。
光を照射するための光源としては例えば、LEDライトを用いることができる。この実施形態で用いることのできるLEDライトの例として、LEDライト(製造・販売者:株式会社ビュプロ、製品名:タッチハンディライト)を挙げることができる。
上睫毛10への光の照射は上睫毛10の全体に対して一度に行っても良いし、光源をずらしながら一部ずつ行っても良い。いずれにせよ、すべての上睫毛10に対して、光を照射する。
このとき睫毛の裏側も硬化させるため鏡(製造・販売者:株式会社ビュプロ、製品名:リフレクションミラー)を睫毛の下に置き、照射してもよい。図6に鏡を用いて上睫毛10に光を照射している状態を示す。Fが被験者の顔であり、200が鏡である。鏡200は鏡本体210と持ち手220と鏡本体210と持ち手とを繋ぐ接続棒230とを含んで構成されている。鏡本体210の手前側の面が、光を反射する鏡面となっている。施術者は持ち手220を持って操作を行うことで、鏡本体210を上睫毛10の下側に差し込む。鏡本体210の下側の辺は鏡本体210の中心に向かって凹む曲線状になっており、上睫毛10の下側に差し込まれた鏡本体210の下側の辺は眼球の膨らみに自然に沿うようになっている。なお、図6中500の符号が付されているのは、被験者の眉毛を保護するためのシート、600の符号が付されているのはシート500同士或いはシート500を被験者の顔Fに接着するための接着テープであるが、いずれも必須ではない。
この実施形態では、すべての上睫毛10に対して一度に光を照射する。これには限られないが光硬化型接着剤70を硬化させるために照射される光の波長は、405nmである。これには限られないが、光の照射時間は、15秒程度である。
光を照射することにより、上睫毛10のそれぞれを覆っている、光の照射前には液体状、又は液体に近いゲル状であった光硬化型接着剤70は硬化する。図6に示されたLEDライトである光源300から光を照射すると、上睫毛10の図6における手前側には光源300からの光が直接当たり、上睫毛10の図6における奥側には光源300から出て鏡200の鏡本体210に当って反射された光が当たることになる。これにより、上睫毛10、或いはそれに付着した光硬化型接着剤70には、図6における手前側と奥側から満遍なく光が照射されることになるから、光硬化型接着剤70の全体に硬化のむらが生じにくい。なお、図4(C)において、鏡200における鏡本体210と光の挙動について簡単に図示している。
【0029】
以上のようにして硬化過程が終了する。
なお、上睫毛10に塗布された後に硬化される光硬化型接着剤70の量を増やして上睫毛10に与えられた上向きの癖をより長期にわたって持続させるために、上述した塗布過程と、硬化過程をもう1回繰り返しても良い。これには限られないがこの実施形態ではそうすることとしている。
【0030】
その結果、従前のラッシュリフト方法によって上向きの癖が付けられた上睫毛10における当該癖は、2週間程度しか保たなかったが、この実施形態で説明したラッシュリフト方法によって上向きの癖が付けられた上睫毛10における当該癖は、3週間以上保つようになった。
【0031】
<試験例>
試験開始日に、被験者の右目の上睫毛に対して上述の実施形態で説明した通りの洗浄過程、リフト過程、塗布過程、硬化過程(ただし、塗布過程と、硬化過程は2度ずつ)行うとともに、その直後に被験者の左目の上睫毛に対して、上述の実施形態で説明した通りの洗浄過程、リフト過程を行った。
右目と左目の上睫毛に対して行うリフト過程ではともに、ロッドとして株式会社ビュプロが製造・販売するラッシュリフト用具セット(商品名:ラッシュリフト スターターキット(商標)、品番:1978s,1979s,1980s)に含まれる睫毛巻き付け用の棒である「カールスタイルロッド(商標)」を用い、綿棒として株式会社ビュプロが製造・販売する小型のブラシ(商品名:ラッシュリフト マイクロブラシ<ロング>(商標)、型番1999)を用い、水溶性グルーとしては、株式会社ビュプロが製造・販売する上述のラッシュリフト用具セットに含まれる水溶性の接着剤である「AQUAグルー(商標)」を用い、1剤及び2剤としては、株式会社ビュプロが製造・販売する上述のラッシュリフト用具セットにおける「コスメナチュラ セットシステム(商標)」に含まれる薬剤である1剤、2剤を、ラップフィルムとしては汎用のものを、それぞれ用いた。
また、右目の上睫毛に対する塗布過程では、刷毛として株式会社ビュプロが製造、販売するブラシ(製品名:マイクロブラシ<ロング>、型番1999)を用い、光硬化型接着剤として株式会社ビュプロが製造・販売する光硬化型接着剤(製品名:LCOATフィックスコーティング)を用いた。
また、右目の上睫毛に対して行う硬化過程では、光源としてLEDライト(製造・販売者:株式会社ビュプロ、製品名:タッチハンディライト)を用いるとともに、鏡(製造・販売者:株式会社ビュプロ、製品名:リフレクションミラー)を用いた。
【0032】
まず、被験者の右目の上睫毛に対して、洗浄過程、リフト過程を行った後、塗布過程と硬化過程とを、2回繰り返して行った。その後、リフトされた状態にある上睫毛の本数を数えた。上睫毛が「リフトされた状態にある」か否かの判定は、目を開いた状態で上睫毛の毛先が上瞼の下端の縁よりも上にあるか否かにより行った。つまり、目を開いた状態で上瞼の下端の縁よりもその先端が上に位置している上睫毛を、「リフトされた状態にある」上睫毛として計数した。
その結果、上述の過程を実行した直後にリフトされた状態にあった右目の上睫毛の本数は86本であった。
続けて、洗浄過程、リフト過程を行った後の被験者の左目の上睫毛において、リフトされた状態にある上睫毛の本数を数えた。上睫毛が「リフトされた状態にある」か否かの判定は、右目の場合と同じ基準により行った。
その結果、上述の過程を実行した直後にリフトされた状態にあった左目の上睫毛の本数は82本であった。
【0033】
その後被験者は、日常生活を行った。
そして、試験開始日から日数が経過した後、被験者の右の上睫毛と左の上睫毛において、リフトされた状態にある上睫毛の本数を確認した。
試験開始日から23日、つまり3週間以上経過した時点で、右目と左目の上睫毛のうちリフトされた状態にあるものの本数はそれぞれ45本と27本であった。
つまり、試験開始日から23日、つまり3週間以上経過した時点で、洗浄過程、リフト過程、塗布過程、硬化過程を含む本願発明のラッシュリフト方法を実施した右目の上睫毛の上を向いている本数の割合は試験開始日と比較して52.3%、塗布過程と硬化過程を含まない従前のラッシュリフト方法を実施した左目の上睫毛の上を向いている本数の割合は試験開始日と比較して32.9%であり、両者の間には上を向いている上睫毛の本数の残存割合に有意な差があり、具体的には、3週間経過時点で癖が維持された上睫毛の割合が20%程度向上した。
リフトされた状態にある上睫毛の本数がラッシュリフトの施術時と比較して半数以下になったということは、再度のラッシュリフトを行うべきであると判断する1つの目安となる。したがって、この試験例で実施された従前のラッシュリフト方法では、上述の目安に従うなら、施術から3週間を経過するとラッシュリフトをやり直さないといけなくなる。それに対して、この試験例で実施された、従前のラッシュリフト方法に塗布過程と硬化過程とを追加するラッシュリフト方法、つまり本願発明の一態様であるラッシュリフト方法を実施した場合には、リフトされた状態にある上睫毛が施術日から3週間経過した後でも50%以上存在しているため、上述の目安にしたがっても再度のラッシュリフトが不要であった。
つまり、従前からの睫毛のラッシュリフト方法よりも、本願発明によるラッシュリフト方法を用いた場合の方が、上睫毛を上向きに保てる時間を長く持続させられること、また再度のラッシュリフトを必要とする時期を先延ばしにできることがわかった。
【符号の説明】
【0034】
1 上瞼
2 下瞼
10 上睫毛
20 下睫毛
30 シート
70 光硬化型接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6