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特開2024-97593転がり軸受の回転速度の算出装置、算出方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097593
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】転がり軸受の回転速度の算出装置、算出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20240711BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240711BHJP
   G01P 3/48 20060101ALI20240711BHJP
   F03D 17/00 20160101ALN20240711BHJP
   F03D 80/70 20160101ALN20240711BHJP
【FI】
G01M13/045
G01M99/00 A
G01P3/48 Z
F03D17/00
F03D80/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001148
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松屋 優介
(72)【発明者】
【氏名】湯川 謹次
【テーマコード(参考)】
2G024
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD04
2G024AD23
2G024BA19
2G024BA21
2G024BA27
2G024CA09
2G024CA13
2G024DA09
2G024EA11
2G024FA04
2G024FA06
3H178AA03
3H178AA40
3H178BB56
3H178DD08X
3H178DD52Z
(57)【要約】
【課題】回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いることなく、転がり軸受の回転速度を精度良く検出する。
【解決手段】転がり軸受の回転速度の算出装置は、回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得手段と、前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定手段と、前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出手段と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得手段と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定手段と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする転がり軸受の回転速度の算出装置。
【請求項2】
前記歯打ちの振動は、前記転がり軸受に連動して回転する歯車の回転に起因して発生することを特徴とする請求項1に記載の算出装置。
【請求項3】
前記算出手段は更に、
前記振動情報にて示される固有振動数に基づいて前記転がり軸受の転動体の公転数を算出し、
前記算出された回転速度に基づいて前記転がり軸受の転動体の理論公転数を算出し、
前記公転数と、前記理論公転数とに基づいて、前記転がり軸受における公転すべり率を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の算出装置。
【請求項4】
前記回転速度を算出するために用いられる振動情報と、前記転がり軸受の転動体の公転数を算出するために用いられる振動情報とは、異なる振動センサにて検出される、ことを特徴とする請求項3に記載の算出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の算出装置と、
前記転がり軸受の1回転当たりのサンプリング数が所定の値となるように、前記算出装置にて算出した回転速度に応じて前記振動情報からデータをサンプリングするタイミングを導出する導出手段と、
前記導出手段にて導出されたタイミングに基づいて、前記振動情報からデータをサンプリングして監視用のデータを生成する生成手段と、
を有することを特徴とする状態監視装置。
【請求項6】
前記生成手段にて生成された監視用のデータを用いて、前記転がり軸受の状態を診断する診断手段を更に有することを特徴とする請求項5に記載の状態監視装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の状態監視装置と、
転がり軸受と
を備える風力発電装置。
【請求項8】
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程と、
を有することを特徴とする転がり軸受の回転速度の算出方法。
【請求項9】
コンピュータに、
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、転がり軸受の回転速度の算出装置、算出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電装置などの機械装置は転がり軸受を備える。転がり軸受の状態を監視し、その状態に応じた制御を行うことで、機械装置の不具合などを防止し、より適切に動作させることが行われている。転がり軸受の状態監視に用いられる情報としては、振動、音、もしくは回転速度などが用いられている。
【0003】
特許文献1では、軸受劣化診断装置において、回転速度の上昇または下降変化に伴って、着目する次数成分の振動騒音の大きさがどのように変化するかを分析する「回転-トラッキング分析」が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/145222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、風力発電装置では、外部からの風の影響により、断続的な回転速度の変化が生じ得る。特に、風力発電装置では、比較的低速の回転により動作するため、転がり軸受が1回転する間にも回転速度の変化が生じ得る。回転速度が変動した場合には、転がり軸受の部位ごとの振動の周波数が変動してしまうため、転がり軸受が1回転する間のデータを一律に用いて状態監視を行った場合にはその変動に起因して精度が低下してしまう。また、風力発電装置など回転速度が比較的低速である場合には、低周波成分の解析が必要である。このとき、一定数のデータを取得するためには、データのサンプリング時間を長く設定する必要がある。サンプリング時間が長くなるほど回転速度の変動が生じる可能性が高くなり、その影響を受けやすくなる。
【0006】
また、上記のような状態監視を行う際には、1回転する間での転がり軸受の回転速度を正確に測定する必要がある。例えば、周波数解析の際に、特定周波数のピークを特定する際に、正確な回転速度情報を用いていない場合(例えば、回転数が一定でない場合)、そのピークを明確に特定することが困難となる。このような状況を踏まえ、公知の手法として、次数比分析を用いることが考えられるが、そのためには、リアルタイムの回転速度情報が必要となる。その一方、転がり軸受の回転速度の取得に際し、軸の回転速度を測定するための設備(例えば、回転速度センサ)が無い、測定した結果から回転速度データを抽出できない、得られた測定データが不正確である、などの状況が想定され得る。
【0007】
更には、回転速度を検出するために回転速度センサを設ける場合において、軸受装置の構造上、センサを設置するスペースの確保ができなかったり、センサ自体を設置できてもそのデータの送受信のための配線や部材の加工などが必要となったりする。
【0008】
上記課題を鑑み、本願発明は、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いずに、転がり軸受の回転速度を適切に取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の回転速度の算出装置は、
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得手段と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定手段と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出手段と、
を有する。
【0010】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の回転速度の算出方法は、
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程と、
を有する。
【0011】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムは、
コンピュータに、
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いずに、転がり軸受の回転速度を適切に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の一実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図2】本願発明の一実施形態に係る機能構成の例を示す概略図。
図3】本願発明に係る回転速度と周波数の関係を説明するためのグラフ図。
図4】本願発明に係る振動情報と回転速度の関係を説明するためのグラフ図。
図5】本願発明の一実施形態に係る状態監視処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0016】
[装置構成]
以下、本願発明に係る状態監視方法を適用可能な装置の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、適用例として、転がり軸受を含む風力発電装置を例にとって説明するが、風力発電装置に限定されず、それ以外の機械装置であっても同様に適用可能である。本願発明を適用可能な装置としては、例えば、工作機械用軸受などの転がり軸受を備え、その回転速度が比較的遅い装置や、回転数の変動が大きい装置などが該当する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る状態監視方法を適用される風力発電装置の概略構成図である。図1に示すように、風力発電装置10は、地上に立設されたタワー11と、タワー11の上端に支持されたナセル12と、ナセル12の端部に設けられたローター13とを備えている。また、タワー11とナセル12の間には、ナセル12の向きを調整(ヨー制御)するための回動機構14が備えられる。
【0018】
ナセル12には、ドライブトレイン部21が格納されている。ドライブトレイン部21は、主軸22、増速機23、発電機24、および転がり軸受25を備える。主軸22は、増速機23を介して発電機24に接続されている。主軸22は、転がり軸受25によってナセル12内に回転可能に支持されている。この主軸22を支持する転がり軸受25には、振動センサ26が設けられ、転がり軸受25にて生じる振動を測定する。同様に、増速機23にも振動センサ27が設けられ、増速機23にて生じる振動を測定する。発電機24には、発電量を測定する発電量測定装置28が配設されている。
【0019】
ローター13は、ハブ31と、複数のブレード32とを有している。複数のブレード32それぞれは、ハブ31から放射状に延在されている。ローター13は、ドライブトレイン部21の主軸22の端部に設けられている。ハブ31は、複数のブレード32それぞれの向きを調整(ピッチ制御)する。
【0020】
なお、風力発電装置10は、増速機23や発電機24の回転軸も、転がり軸受25とは別個に設けられた転がり軸受(不図示)によって支持されている。また、ドライブトレイン部21には、主軸22の回転を必要に応じて停止または減速させるためのブレーキ装置(不図示)が設けられている。
【0021】
上記構造の風力発電装置10では、ローター13のブレード32が風を受けることで主軸22が回転する。すると、その主軸22の回転が増速機23によって増速されて発電機24に伝達され、発電機24によって発電される。また、ローター13のブレード32が風を受けることで、主軸22を介して転がり軸受25に対して、荷重(ラジアル荷重およびアキシアル荷重)が負荷される。本実施形態では、主軸22の回転速度に着目して説明する。なお、図1では、説明を簡略化するために1の風力発電装置10に対して、1の転がり軸受25が設けられた構成を示しているが、この構成に限定するものではなく、1の風力発電装置10において主軸22を支持するために転がり軸受25が複数設けられてもよい。
【0022】
[機能構成]
図2は、本実施形態に係る機能構成の一例を示す概略構成図である。図2には、本実施形態に係る監視対象の転がり軸受25と、監視動作を行う監視装置50の構成が示される。転がり軸受25は、主軸22を回転自在に支持する。なお、本実施形態において、転がり軸受25として、例えば、円すいころ軸受、円筒ころ軸受などに適用可能であるが、これらに限定するものではない。転がり軸受25に主軸22を介して連結される増速機23内には、後述する歯打ち振動が発生する歯車45、46を含むギアボックスが設けられる。歯車45と歯車46はそれぞれの歯が噛み合い、連動して回転を行う。歯車45は、主軸22の回転に一致して回転するように設置される。また、歯車46は、増速機23と発電機24を連結するための回転軸47側に設けられる。したがって、振動センサ27は、少なくとも歯車45と歯車46との回転に起因する歯打ち振動を含む振動情報を検出するように構成される。
【0023】
なお、本実施形態では、増速機23内の歯車45、46による歯打ち振動に着目し、増速機23およびその振動情報を取得する振動センサ27からの検出結果を用いた構成を説明するが、転がり軸受25近傍に設けられた振動センサ26において、後述する歯打ち振動の情報を精度良く検出できるのであれば、振動センサ26の情報を用いてもよい。また、振動センサ27と振動センサ26の両方の情報を用いてもよい。
【0024】
監視装置50は、図1に示した風力発電装置10内に設けられてもよいし、風力発電装置10の外部に設けられてもよい。また、図2では、説明を簡略化するために1の転がり軸受25に対して、1の監視装置50により監視する構成を示している。しかし、この構成に限定するものではなく、1の監視装置50が、複数の転がり軸受25の状態監視を行うような構成であってもよい。
【0025】
転がり軸受25は、主軸22に外嵌される回転輪である内輪40、ハウジング(不図示)に内嵌される固定輪である外輪42、内輪40及び外輪42との間に配置された複数の転動体41である複数の玉(ころ)、および転動体41を転動自在に保持する保持器43を備える。また、転がり軸受25において、所定の潤滑方式により、内輪40と転動体41の間、および、外輪42と転動体41の間の摩擦が軽減される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられる。また、潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。
【0026】
主軸22の回転中に転がり軸受25から発生する振動を検出する振動センサ26が備えられる。振動センサ26は、ボルト固定、接着、ボルト固定と接着、或いはモールド材による埋め込み等によってハウジングの外輪近傍に固定されている。なお、ボルト固定の場合には、回り止め機能を備えるようにしてもよい。なお、振動センサ26は、検出位置に固定して設置される構成に限定するものではなく、状態監視時に転がり軸受25による振動を検出するための位置に設置されればよい。そのため、振動センサ26は、着脱可能もしくは移動可能な構成であってもよい。
【0027】
また、振動センサ26は、振動を検出可能なものであればよく、加速度センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、超音波センサ、及びショックパルスセンサ等、検出される加速度、速度、歪み、応力、変位型等、振動を電気信号化できるものであればよい。また、ノイズが多いような環境に位置する風力発電装置10に取り付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることが少ないためより好ましい。さらに、振動センサ26が、圧電素子等の振動検出素子を使用する場合には、この素子をプラスチック等にモールドして構成してもよい。
【0028】
振動センサ27は、増速機23周辺に設置され、増速機23にて発生する振動情報を検出する。振動センサ27の構成は、振動センサ26と同様であってよい。
【0029】
本実施形態において、回転輪である内輪40と主軸22の回転速度および回転数は一致している。主軸22の回転速度は、風力発電装置10が受ける風の向きや風量、風圧により変動し得る。更には、ブレーキ装置(不図示)により、回転速度は調整され得る。本実施形態に係る風力発電装置10などは、比較的低速の回転速度にて回転が行われる。なお、振動センサ26は、指定されたタイミング(例えば、監視時間帯)のみ検出動作を行うような構成であってもよいし、常時検出動作を行うような構成であってもよい。
【0030】
増幅器44は、振動センサ26や振動センサ27にて検出された電気信号を増幅して監視装置50へ入力する。ここでの増幅の程度は特に限定されるものではないが、予め規定される。
【0031】
監視装置50は、例えば、不図示の制御装置、記憶装置、および入出力装置を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御装置からの指示により各種情報の入出力が可能である。入出力装置は、制御装置からの指示により、外部装置や作業者への通知を行う。入出力装置による出力方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な通知であってもよいし、画面出力による視覚的な通知であってもよい。また、入出力装置は、通信機能を備えたネットワークインターフェースであってもよく、ネットワーク(不図示)を介した外部装置(不図示)とのデータの送受信により各種入出力動作を行ってもよい。
【0032】
監視装置50は、A/D変換部51、回転速度算出部52、サンプリング処理部53、振動信号処理部54、および監視処理部55を含んで構成される。各部位は、上述した制御装置が対応するプログラムを記憶装置から読み出して実行することで実現してもよい。更には、制御装置が入出力装置を制御することで各種機能を実現してよい。
【0033】
A/D変換部51は、振動センサ26や振動センサ27にて検出された電気信号を振動情報として、増幅器44を介して取得し、その電気信号の内容に応じて、A/D(Analog/Digital)変換を行う。
【0034】
回転速度算出部52は、A/D変換部51にて処理された振動信号と、転がり軸受25の構成に基づいて、主軸22の回転速度を算出する。ここでの算出方法については、後述する。
【0035】
サンプリング処理部53は、A/D変換部51にて処理された振動信号から後段の振動信号処理部54、および監視処理部55の処理に用いられるデータを、回転速度算出部52にて算出された回転速度に基づいてサンプリングする。ここでのサンプリングの方法については後述する。サンプリングしたデータは、振動信号処理部54へ出力される。
【0036】
振動信号処理部54は、サンプリング処理部53にてサンプリングされたデータを用いて、信号解析処理を行う。信号解析処理においてはFFT(Fast Fourier Transform)解析した上で、次数比分析を行う。エンベロープ処理、あるいはローパスフィルタやバンドパスフィルタなどを用いたフィルタ処理を行ってから信号解析処理を行ってもよい。監視処理部55は、振動信号処理部54にて処理されたデータを用いて、転がり軸受25の状態を診断し、その診断結果を出力する。例えば、振動信号処理部54にて処理されたデータの一部を抽出し、そのデータを用いて状態の診断を行ってもよい。監視処理部55にて行われる状態監視の診断項目は特に限定するものでは無いが、例えば、転がり軸受25を構成する各部位の異常接触、スキッディング、潤滑不良、部位の損傷や劣化など任意の診断項目が対象となってよい。
【0037】
なお、監視処理部55の監視結果は、ネットワーク(不図示)を介して外部に報知されてもよいし、風力発電装置10の動作を制御してもよい。ここでの風力発電装置10の動作の制御としては、例えば、回動機構14を制御してナセル12の向きを調整(ヨー制御)してもよいし、ハブ31を制御して複数のブレード32それぞれの向きを調整(ピッチ制御)してもよい。また、ブレーキ機構(不図示)により、主軸22の回転速度が所定の速度となるように制御してよい。
【0038】
[振動情報の変換]
まず、本実施形態に係る振動情報の変換の例について説明する。図3は、振動情報の変換を説明するための図である。図3(a)は、計測対象から振動センサ等を介して得られた振動情報Aの例を示す。図3(a)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は振幅を示す。実際の軸受の振動情報は多くの異なった周波数の異なる振動が重ね合わされたデータとなるが、ここでの振動情報Aは2つの振動情報B、Cしか含まれていない例を用いて説明する。図3(a)に示す例では、時間の経過に伴って転がり軸受の角速度が上昇しそれに比例して回転数が高くなっている。その結果、2つの振動情報B、Cのうち、振動情報Cの周波数が時間の経過と共に徐々に高くなり、図3(a)に示す振動情報A全体の波形も変化している。図3(a)中において、振動情報の上側に示される包絡線は、エンベロープ処理の結果を示す波形に相当する。なお、回転数は、図3(a)に示すような変動に限定されるものではなく、時間の経過に伴って低くなるように変化する場合もあれば、一定期間内に増減するような場合もある。
【0039】
図3(b)は、図3(a)に示す波形にエンベロープ処理を適用し、FFT(Fast Fourier Transform)処理を適用した結果を示す。図3(b)において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。このとき、振動情報Cにおいて回転数が変動していることに起因して、図3(b)の領域301に示すように、周波数のピークが検出できない。そのため、振動情報Cがどのような周波数特性を有するかを特定できず、周波数特性に基づいた分析が困難となる。
【0040】
上述したように、例えば、風力発電装置用の転がり軸受は、状態監視などの際に周波数解析を用いる。転がり軸受の振動の固有周波数は回転時の角速度と比例しており、周波数解析では一定速で転がり軸受が回転している状態のデータを使用する必要がある。そのため、従来の手法では、診断時に用いるデータを検出する際には、回転数が安定していることを前提とし、時間的に一定間隔でサンプリングを行っている。しかしながら、転がり軸受が1回転する間に角速度に変動があり、振動の振動数が変わってしまうような場合には、上記のような手法では、状態監視の精度が低下してしまう。
【0041】
角速度の変動がある状態で、時間的に等間隔にサンプリングした振動情報を、角速度が一定である、すなわち、等速にて回転している状態に相当する振動情報に変換する。
【0042】
図3(c)は、図3(a)に示す振動情報Aに対し、回転数の変動の影響を除去する処理を適用して得られる振動情報Dの例を示す。図3(c)において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は振幅を示す。図3(c)では、図3(a)の振動情報Aを、角速度が一定、すなわち、等速回転している状態に相当するように変換している。
【0043】
まず、元の振動情報と所定の角速度を用いて、以下の式(1)を満たすtを求める。ここでの所定の角速度は、振動情報における初期の角速度ωとして説明するが、これに限定するものではない。例えば、振動情報の所定範囲における角速度の平均値であってもよいし、最大値であってもよい。また、振動情報の所定のタイミングにおける角速度であってもよい。
【0044】
【数1】
【0045】
さらに、変換前の振動情報Aと、変換後の振動情報Dとを、以下の式(2)により変換する。
【0046】
D(t)=A(t) ・・・(2)
A(t):時間tにおける変換前の振動情報
D(t):時間tにおける変換後の振動情報
【0047】
上記の式(1)および式(2)を用いた変換により、図3(c)に示す振動情報Dが得られる。つまり、振動情報Dは、一定の角速度(ここでは、初期角速度ω)となった状態の波形データに相当する。図3(c)において、振動情報Dの上側に示される包絡線は、エンベロープ処理の結果を示す波形に相当する。
【0048】
図3(d)は、図3(c)に示す波形にエンベロープ処理を適用し、FFT処理を適用した結果を示す。図3(d)において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。このとき、回転数が一定であるものとした波形のため、図3(d)の領域302に示すように、周波数のピークを検出でき、その周波数特性に基づく分析が可能となる。
【0049】
なお、上記の流れでは、振動情報に対して、データ変換処理、エンベロープ処理、FFT処理の順で行う例を示したが、これに限定するものではない。例えば、エンベロープ処理、データ変換処理、FFT処理の順で行われてもよい。あるいはエンベロープ処理を行わずにデータ変換処理、FFT処理だけの場合もあり得る。
【0050】
なお、振動情報Aを取得する際のサンプリング数は有限であるため、上記の式(1)にて特定される時間tに対応する振動情報A(t)が振動センサ等にて得られた振動情報Aに存在しない場合がある。そのような場合には、所定の範囲aを予め設定しておき、以下の式(3)のように、tを基準として所定の範囲に含まれるt’に対応する振動情報A(t’)を用いて、振動情報Dを求めてもよい。
【0051】
D(t)=A(t’) (t-a<t’<t+a) ・・・(3)
【0052】
または、以下の式(4)のような、tの前後のt(便宜上、t-1、t+1とする)に対応する振動情報A(t)に基づく補間式を規定しておき、振動情報Dを求めてもよい。
【0053】
D(t)={A(t-1)+A(t+1)}/2 ・・・(4)
【0054】
データ変換の際のデータの補間方法は、上記以外の方法を用いてもよく、目的に応じて適用する補間方法を切り替えてもよい。
【0055】
[回転速度の算出]
上述したような振動情報の変換のためには、転がり軸受25の回転速度を精度良く検出する必要がある。そこで、本実施形態では、回転速度センサを設ける代わりに、転がり軸受25の構成に依存して発生する歯打ちの振動に着目して回転速度を算出する。本実施形態において、本実施形態に係る増速機23内部には、図2に示すように、主軸22の回転に伴って部品間の接触が生じ、その接触の際に一定の振動が発生する。ここでの部品としては、増速機23内の歯車45、46(ギア、より具体的には増速ギア)が挙げられ、歯車45、46の歯が噛み合って接触することで特有の振動が発生する。つまり、歯打ちは、転がり軸受25が1回転する間に、転がり軸受25の回転に連動して回転する増速機23内の歯車45の歯の数の分だけ発生するため、歯打ち振動の回数や周期を特定することで、転がり軸受25の回転速度を特定することができる。
【0056】
図4は、振動情報から回転速度の算出方法の概念を説明するためのグラフ図である。図4は、縦軸は振動加速度を示し、横軸は周波数[Hz]を示す。以下の説明では、歯打ちの振動周波数を例に挙げる。しかし、転がり軸受25が、例えば、円錐ころ軸受であって、これに対して一定の荷重がかかった状態により公転すべりが発生しない条件下での固有振動数(Z×Fc=(転動体の数)×(転動体の公転周波数))を用いてもよい。
【0057】
図4(a)は、回転速度がX[rpm]の場合の周波数の例を示す。一方、図4(b)は、回転速度がXのA倍の場合の周波数の例を示す。ここで、図4(a)の波形401、402、403に着目すると、回転速度の変化に伴って、図4(b)の波形411、412、413のように振動周波数のピークの位置が変化している。それ以外の波形については変化していない。つまり、主軸の回転速度が変化することに伴って、歯車の歯打ちに対応する振動周波数のピーク位置も変動する。このように、歯打ちに対応する振動情報(振動数)の変化を特定することで、回転速度の変化を捉えることができる。例えば、図4(a)に示すように、基準となる回転速度と周波数との対応関係を予め特定しておき、周波数のピーク位置の変動割合に応じて、実際の回転速度を特定してよい。
【0058】
また、振動情報には、転がり軸受25を構成する転動体の固有振動数(例えば、ZFc)の情報が含まれる。これを特定することで、転動体の公転数を特定することができる。一方、上述した方法により歯車の歯打ちの振動から回転速度を求め、それを用いて理論公転数を導出することができる。理論公転数の算出式は、公知の手法を用いて算出されてよく、例えば、以下の式(5)を用いることができる。
【0059】
【数2】
【0060】
式(5)の各パラメータは、転がり軸受の諸元に基づいて特定することができる。また、本実施形態において、外輪回転速度nは、0[min-1]として扱うことができ、内輪回転速度nは、回転速度算出部52にて算出することができる。そして、振動情報から特定した転動体の公転数と、歯打ちの振動から特定した回転速度に基づく理論公転数とを比較することで公転すべり率を導出することができる。本実施形態では、上記の公転数の比に基づいて公転すべり率も併せて特定する。なお、本実施形態では、歯打ち音に基づく振動情報により、回転速度を用いた例として公転すべり率を監視する構成例を示しているが、これに限定するものではない。
【0061】
[処理フロー]
図5は、本実施形態に係るサンプリング処理のフローチャートである。本処理は、監視装置50により実行され、例えば、監視装置50が備える制御装置(不図示)が図1に示した各部位を実現するためのプログラムを記憶装置から読み出して実行することにより実現されてよい。本処理フローが開始した際には、転がり軸受25の回転が開始されているものとする。
【0062】
S501にて、監視装置50は、振動センサ27にて検出された振動情報を取得する。
【0063】
S502にて、監視装置50は、S501にて取得した振動情報から歯車の歯打ちの振動数(振動周波数)を推定する。より具体的には、図4に示したように、歯打ちに対応する振動周波数のピークを特定する。このとき、振動情報に対して、FFT処理やエンベロープ処理を適用することで、歯打ちの振動周波数を推定してよい。また、監視装置50は、転がり軸受25の歯車等の諸元情報(歯車の歯の数など)を予め保持し、これらの情報を用いて、歯打ちの振動周波数を推定する。また、監視装置50は、振動情報から転動体の公転数を推定する。そして、監視装置50は、推定した公転数と、歯打ち振動から推定した回転速度に基づいて導出された理論公転数との比から公転すべり率を推定する。
【0064】
S503にて、監視装置50は、S502にて推定したギアの歯打ちの振動数から転がり軸受25の回転速度を算出する。ここでの回転速度は、一定の時間間隔ごとに算出してもよいし、歯打ちの振動を検出した回数に応じて規定されてもよい。また、監視装置50は、転がり軸受25の回転数を算出する。
【0065】
S504にて、監視装置50は、S503の処理にて算出された回転速度に基づいて、サンプリングのタイミングを導出する。上述したように、転がり軸受25の1回転当たりのサンプリングの回数は規定されており、回転速度に応じてデータをサンプリングするタイミングが変動する。ここでは、そのサンプリングのタイミングを導出する。より具体的には、回転速度に同期したサンプリングクロックを用いて、1回転当たりのサンプリング数が一定となるように導出される。導出方法は、予め規定された計算式を用いて導出してもよいし、回転速度とサンプリングのタイミング(時間間隔など)が対応付けられたテーブルなどを用いて導出してもよい。
【0066】
S505にて、監視装置50は、S504にて導出したタイミングに応じて、S501にて振動センサ27により検出された電気信号を増幅器44にて増幅して監視装置50へ入力することにより取得した振動情報からデータをサンプリングする。
【0067】
S506にて、監視装置50は、S505にてサンプリングされたデータに対して信号解析処理を行う。ここでの解析処理は、例えば、振動情報をFFT(Fast Fourier Transform)解析した上で、次数比分析を行ってよい。サンプリングデータにエンベロープ解析処理やフィルタ処理を施してもよく、後段の監視処理に応じてその内容は変更されてよい。
【0068】
S507にて、監視装置50は、S506による解析処理の結果を用いて、転がり軸受25の状態の監視を行う。ここでの監視項目は特に限定するものでは無いが、例えば、転がり軸受25を構成する各部位の異常接触、潤滑不良、部位の損傷や劣化など任意の診断項目が対象となってよい。また、S502にて推定した転がり軸受25の公転すべり率を併せて診断対象としてよい。
【0069】
S508にて、監視装置50は、S507による状態監視処理の結果に基づき、報知処理を行う。ここでは、異常が生じたと判定した場合に報知を行ってもよいし、異常がないと判定した場合でも報知を行うような構成であってもよい。また、報知方法は特に限定するものでは無く、異常の有無に応じて報知方法を切り替えてもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0070】
以上、本実施形態により、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、転がり軸受の回転速度を適切に取得することが可能となる。また、本実施形態の手法では、過去の検出結果を利用しないため、データ量を削減することができる。また、回転速度センサが不要になるため、省コスト化、省サイズ化を実現することができる。また、過去の回転速度情報の蓄積も不要であり、データ削減も実現することができる。また、振動センサを後付けで設置することで実現できるため、予め振動センサを設けておく必要もない。
【0071】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、例えば、転がり軸受25の周辺に設置される増速機23に対して、1つの振動センサ27を設ける例を示した。そして、1つの振動センサ27から得られた振動情報から、転がり軸受25を構成する転動体の固有振動数と、回転速度を求める構成を示した。これに対し、図2に示すように、転がり軸受25と、増速機23それぞれに対して設置された振動センサ(すなわち、転動体の固有振動数を求めるための振動情報を取得するための振動センサと、回転速度を求めるための振動情報を取得するための振動センサ)から得られる振動情報に基づいて、状態監視を行うような構成であってもよい。例えば、転がり軸受25側の振動センサ26にて得られた振動情報から得られる公転数と、増速機23側の振動センサ27にて得られた振動情報から得られる回転速度を用いて算出される理論公転数の比から公転すべり率を算出するような構成であってもよい。
【0072】
上記の実施形態では、振動センサ27を用いて増速機23の振動を検出する構成を示したが、これに限定するものではない。振動センサ26に代えてマイクを含む音センサを用いて音情報を検出してもよい。この場合、音情報を対象として上述したデータのサンプリング処理を行う。
【0073】
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0074】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0075】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0076】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 回転中の転がり軸受(例えば、25)の振動情報を取得する取得手段(例えば、27、44、51)と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定手段(例えば、52)と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出手段(例えば、52)と、
を有することを特徴とする転がり軸受の回転速度の算出装置(例えば、50)。
この構成によれば、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いずに、転がり軸受の回転速度を適切に取得することが可能となる。特に、回転速度センサが不要になるため、省コスト化、省スペース化を実現することが可能となる。また、回転速度センサの設置位置や精度などを考慮する必要がなくなる。また、過去の回転速度情報の蓄積も不要であり、データ削減も実現することができる。
【0077】
(2) 前記歯打ちの振動は、前記転がり軸受に連動して回転する歯車の回転に起因して発生することを特徴とする(1)に記載の算出装置。
この構成によれば、転がり軸受が備える歯車の構成に対応して、歯打ちの振動を特定することが可能となる。
【0078】
(3) 前記算出手段は更に、
前記振動情報にて示される固有振動数に基づいて前記転がり軸受の転動体の公転数を算出し、
前記算出された回転速度に基づいて前記転がり軸受の転動体の理論公転数を算出し、
前記公転数と、前記理論公転数とに基づいて、前記転がり軸受における公転すべり率を算出する、
ことを特徴とする(1)に記載の算出装置。
この構成によれば、振動情報のみから、転がり軸受の公転すべり率を特定することが可能となる。
【0079】
(4) 前記回転速度を算出するために用いられる振動情報と、前記転がり軸受の転動体の公転数を算出するために用いられる振動情報とは、異なる振動センサにて検出される、ことを特徴とする(3)に記載の算出装置。
この構成によれば、異なる振動センサにて得られた振動情報を用いて、公転すべり率を特定することが可能となる。
【0080】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の算出装置と、
前記転がり軸受の1回転当たりのサンプリング数が所定の値となるように、前記算出装置にて算出した回転速度に応じて前記振動情報からデータをサンプリングするタイミングを導出する導出手段(例えば、53)と、
前記導出手段にて導出されたタイミングに基づいて、前記振動情報からデータをサンプリングして監視用のデータを生成する生成手段(例えば、53、54)と、
を有することを特徴とする状態監視装置(例えば、50)。
この構成によれば、振動情報のみを用いて回転速度を算出し、これにより、転がり軸受の状態監視のためのデータを生成することが可能となる。
【0081】
(6) 前記生成手段にて生成された監視用のデータを用いて、前記転がり軸受の状態を診断する診断手段(例えば、55)を更に有することを特徴とする(5)に記載の状態監視装置。
この構成によれば、振動情報のみを用いて回転速度を算出し、これにより、転がり軸受の状態監視を行うことが可能となる。
【0082】
(7) (5)または(6)に記載の状態監視装置(例えば、50)と、
転がり軸受(例えば、25)と
を備える風力発電装置(例えば、10)。
この構成によれば、振動情報のみを用いて回転速度を算出し、これにより、風力発電装置が備える転がり軸受の状態監視を行うことが可能となる。
【0083】
(8) 回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程(例えば、S501)と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程(例えば、S502)と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程(例えば、S503)と、
を有することを特徴とする転がり軸受の回転速度の算出方法。
この構成によれば、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いずに、転がり軸受の回転速度を適切に取得することが可能となる。特に、回転速度センサが不要になるため、省コスト化、省スペース化を実現することが可能となる。また、回転速度センサの設置位置や精度などを考慮する必要がなくなる。また、過去の回転速度情報の蓄積も不要であり、データ削減も実現することができる。
【0084】
(9) コンピュータに、
回転中の転がり軸受の振動情報を取得する取得工程(例えば、S501)と、
前記振動情報から歯打ちの振動を特定する特定工程(例えば、S502)と、
前記歯打ちの振動の周波数のピーク位置の変化に基づいて前記転がり軸受の回転速度を算出する算出工程(例えば、S503)と、
を実行させるためのプログラム。
この構成によれば、回転速度が断続的に変化し得る環境下において、回転速度センサを用いずに、転がり軸受の回転速度を適切に取得することが可能となる。特に、回転速度センサが不要になるため、省コスト化、省スペース化を実現することが可能となる。また、回転速度センサの設置位置や精度などを考慮する必要がなくなる。また、過去の回転速度情報の蓄積も不要であり、データ削減も実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…風力発電装置
11…タワー
12…ナセル
13…ローター
14…回動機構
21…ドライブトレイン部
22…主軸
23…増速機
24…発電機
25…転がり軸受
26、27…振動センサ
28…発電量測定装置
31…ハブ
32…ブレード
40…内輪
41…転動体
42…外輪
43…保持器
44…増幅器
50…監視装置
51…A/D変換部
52…回転速度算出部
53…サンプリング処理部
54…振動信号処理部
55…監視処理部
図1
図2
図3
図4
図5