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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097597
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】容器入り温泉卵
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240711BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001157
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】399027004
【氏名又は名称】イセデリカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 三省
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC09
4B042AC10
4B042AD29
4B042AH09
4B042AP02
4B042AP30
4B042AW10
(57)【要約】
【課題】容器に封入されて流通される取り扱い性能の高い温泉卵であって、殻付きで調理したものと同様の食感及び見た目を呈するものを提供すること、またそのような温泉卵の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、温泉卵1と、温泉卵1を収容する収容容器2を備える容器入り温泉卵Xであって、収容容器2は、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きい容積の収容部21を有し、卵一個分の液卵が収容された状態において、収容部21の底面213から液卵の卵黄上端の高さまでの容積は、液卵の体積よりも小さい容器入り温泉卵である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉卵と、前記温泉卵を収容する収容容器を備える容器入り温泉卵であって、
前記収容容器は、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きい容積の収容部を有し、
卵一個分の前記液卵が収容された状態において、前記収容部の底面から前記液卵の卵黄上端の高さまでの容積は、前記液卵の体積よりも小さい容器入り温泉卵。
【請求項2】
前記収容容器は、開口部と、前記開口部を密閉する蓋部を有する請求項1に記載の容器入り温泉卵。
【請求項3】
前記収容容器は、水平断面が略円形状である請求項1に記載の容器入り温泉卵。
【請求項4】
前記収容容器は、耐熱性を有する請求項1~3の何れかに記載の容器入り温泉卵。
【請求項5】
収容容器に液卵を収容する収容工程と、
前記液卵を収容した収容容器を加熱する加熱工程と、を含む温泉卵の製造方法であって、
前記収容容器は、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きい容積の収容部を有し、
卵一個分の前記液卵が収容された状態において、前記収容部の底面から前記液卵の卵黄上端の高さまでの容積は、前記液卵の体積よりも小さい温泉卵の製造方法。
【請求項6】
前記収容工程は、前記液卵が収容された前記収容容器の開口部を蓋部で密閉する密閉工程を含む請求項5に記載の温泉卵の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程は、温水と前記収容容器とを接触させて行う請求項6に記載の温泉卵の製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程は、レトルト機による加圧加熱殺菌を行う請求項5~7の何れかに記載の温泉卵の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場で流通する温泉卵であって、容器に封入されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
温泉卵とは、ゆで卵の一種であって、卵黄はある程度凝固しているが、卵白は完全に凝固していない状態のものをいい、液卵を70℃程度で所定時間加熱することにより得られる。
ところで、一般的な温泉卵は、特許文献1に記載のように殻付きの状態で調理され、殻付きのまま流通することが多い。このような温泉卵は見た目も美しく美味であるが、卵殻に固化した卵白が付着していて食べづらく、また殻の処理が難儀である。これに対して、予め卵を割卵して容器に封入し、その後加熱処理を施すことで温泉卵を製造する方法が例えば特許文献2、3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-268726号公報
【特許文献2】特開平9-75037号公報
【特許文献3】特公昭59-3188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、特許文献2に記載の温泉卵は、卵黄と卵白をそれぞれ処理して密封容器に入れるものであるため、食感や見た目が殻付きで調理した温泉卵と大きく異なる。また、特許文献3においては、容器が卵1個分の液卵でほぼ満たされるように充填され、また耐熱容器の取り出し口が狭いため、このまま温泉卵を製造した場合であると、温泉卵をきれいに取り出すことが難しい。
【0005】
本願発明は、上述の課題に鑑み、容器に封入されて流通される取り扱い性能の高い温泉卵であって、殻付きで調理したものと同様の食感及び見た目を呈するものを提供すること、またそのような温泉卵の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、温泉卵と、前記温泉卵を収容する収容容器を備える容器入り温泉卵であって、前記収容容器は、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きい容積の収容部を有し、卵一個分の前記液卵が収容された状態において、前記収容部の底面から前記液卵の卵黄上端の高さまでの容積は、前記液卵の体積よりも小さい容器入り温泉卵である。
容器の容積を上記のようにすることによって、卵白に卵黄が包埋され、殻付きで調理されたものと同様の食感及び見た目を呈する卵1個分の温泉卵を提供することができる。また、収容部の容積を卵一個分の体積よりも大きくすることによって、温泉卵を滑り落とすように落下させることが可能となり卵黄を破壊しないで容器から取り出すことが容易になる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記収容容器は、開口部と、前記開口部を密閉する蓋部を有する。
このような構成によって、内部に収容された温泉卵の保存性を高めることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記収容容器の水平断面は略円形状である。
このような構成によって、収容容器内に保持される卵黄と、容器内周面との距離を略一定にすることができるため、卵黄を卵白に保持しやすくすることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記収容容器は耐熱性を有する。
このような構成によって、収容容器に入った卵をそのまま加熱することができるようになり、取り扱いを容易にすることができる。
【0010】
本発明は、収容容器に液卵を収容する収容工程と、前記液卵を収容した収容容器を加熱する加熱工程と、を含む温泉卵の製造方法であって、前記収容容器は、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きい容積の収容部を有し、卵一個分の前記液卵が収容された状態において、前記収容部の底面から前記液卵の卵黄上端の高さまでの容積は、前記液卵の体積よりも小さい温泉卵の製造方法である。
このような構成によって、簡単な取り扱いによって、殻付きで調理したものと同様の食感、見た目を呈するゆで卵を製造することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記収容工程は、液卵が収容された前記収容容器の天面を蓋部で密閉する密閉工程を含む。
このような構成によって、容器内の水分を一定に保つことができるため、温泉卵を殻付きで調理したものと同様の食感を呈させることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記加熱工程は、温水と収容容器とを接触させて行う。
このような構成によって、製法を殻付きで調理したものに近づけ、より殻付きで調理した温泉卵に近い食感の温泉卵を得られる。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、容器に封入されて流通される取り扱い性能の高い温泉卵であって、殻付きで調理したものと同様の食感及び見た目を呈するものを提供すること、あるいはそのような温泉卵の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る、容器入り温泉卵の正面図及び平面図を表す図である。
図2】本発明の実施形態に係る、容器に液卵が入っている様子を表す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る、収容容器に収容された温泉卵を取り出す際の断面模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る、取り出された温泉卵の断面模式図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る、容器入り温泉卵の断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る、収容容器に収容された液卵及び本発明によって得られる温泉卵の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る容器入り温泉卵について説明する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0016】
本実施形態において、温泉卵1は収容容器2の収容部21の中に格納されている。収容部21の容積は、少なくとも温泉卵1のもととなる液卵3の1個分の体積よりも大きくなるように設けられている。
【0017】
ここで、図1には、本実施形態に係る容器入り温泉卵Xの正面図及び平面図を表す。ここにおいて、右側面図、左側面図、背面図は、後述する手持ち端222を除いて正面図と同一の形状である。図2、3、4はそれぞれ温泉卵1及び収容容器2のA―A’断面における断面図を表しており、図2は温泉卵1が収容容器2に格納されている容器入り温泉卵Xを、図3は温泉卵1を収容容器2から皿へ取り出しているときの模式断面図を表しており、さらに図4は皿に乗せ置かれている状態にある温泉卵1を表している。
【0018】
まず、本発明の卵について好ましい形態を説明する。
本明細書において、「原卵0」とは、主に鳥類から採取される卵であって、殻付きで加熱処理がされていないものを言い、特に鶏卵、ウズラ卵、ダチョウ卵、アヒル卵等が想定される。
また、本明細書における「温泉卵1」とは、原卵0に湿式加熱調理がなされた結果、卵黄は一部に白濁が発生して変質しているが、卵白が完全に凝固せず変質していない状態のものをいう。なお、ここでいう湿式加熱調理は、茹でる、煮る、蒸す等が含まれる、液体を媒体とした加熱処理をいう。
また、本明細書における「液卵3」とは、原卵0を割卵して得られる液状の原卵の中身のことをいい、卵黄31と、卵白32が含まれる。
【0019】
温泉卵1は、収容部21の中に格納されている。詳述すると、温泉卵1は、卵黄及び卵白の一部が変質した状態において、底面213の略中心において卵黄が載置されるようにしてあり、また格納された卵黄の周囲及び上部の全体に卵白が覆いかぶさるように配置されている。
【0020】
温泉卵1の重量は、40g以上、好ましくは50g以上、より好ましくは55g以上である。また、本実施形態に用いるゆで卵の重量は、80g以下、好ましくは70g以下、より好ましくは65g以下を目安とすることができ、原卵0として上記条件を満たしやすい鶏卵を使用することが好ましい。
また、本実施形態の温泉卵1の体積は、44mL以上、好ましくは55mL以上、より好ましくは60mL以上である。また、温泉卵1の体積は、88mL以下、好ましくは77mL以下、より好ましくは72mL以下である。
【0021】
収容容器2は、卵を格納する収容部21と、収容部21の上端に設けられて収容部21を密閉する蓋部22と、を備える。収容容器2は、ポリプロピレンやポリスチレンなどの耐熱性を有する容器であり、手で握ってもつぶれない程度の剛性を有することが好ましい。また、エチレンビニルアルコール等の気密性が高い部材を中間層とした多層構造としてもよい。
【0022】
収容部21において、温泉卵1個分の液卵3が格納された状態における、底面213から卵黄31上端の高さまでの容積は、前記液卵の体積よりも小さくなるように設けられている。これにより、一個分の液卵3が収容された状態において、卵白32よりも密度の高い卵黄31を、卵白32の下に確実に沈みこませることができる。
なお、一般的に変性した卵は体積が収縮するため、1個分の液卵3が温泉卵1となった場合でも、温泉卵が収容容器2から溢れる恐れはない。
【0023】
収容部21は、卵を格納するために液密に設けられた容器部分であって、収容部21の天面に設けられるリング状の部分である開口部211と、開口部211から下方に伸びて周面を形成する側面部212と、側面部212の下端において面張りされて設けられる底面213と、を一体に備えている。
【0024】
収容部21の容積は、少なくとも卵1個分の液卵3の体積よりも大きくなるように構成されている。好ましくは、該容積は液卵3の体積の1.2倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは1.8倍以上である。また、該容積は液卵3の体積の3倍以下とすることが好ましく、好ましくは2.7倍以下であり、さらに好ましくは2.4倍以下である。
例えばMサイズ(液卵の重量が58g~64g)の鶏卵を用いる場合、収容部21の容積は、少なくとも70mL以上、好ましくは90mL以上、さらに好ましくは110mL以上とする。また、該容積は多くとも190mL以下、好ましくは160mL以下、より好ましくは140mL以下とする。
【0025】
収容部21の高さは、少なくとも卵黄31の直径よりも大きくなるように設けられている。詳述すると、卵黄31の高さの1.5倍以上であり、好ましくは1.8倍以上である。例えばMサイズ鶏卵を用いる場合、収容部21の高さを5cm以上、好ましくは6cm以上とする。
【0026】
また、収容部21において、底面213から卵黄31の直径分までの高さの容積は、卵黄31の体積よりも大きく、液卵1個分の卵黄と卵白の合計体積よりも小さくなるように設けられている。これにより、卵黄31を卵白32の下に確実に沈みこませて所望の温泉卵を得ることができる。
例えば、卵黄直径3cm、卵黄30mL、卵白30mLのMサイズ鶏卵を用いる場合、底面213から3cmの高さまでの収容部21の容積は、30mL~60mLの範囲内に収まるように設けられる。
【0027】
開口部211は、収容容器2を地面に載置した際に、地面に水平になるように設けられる部位であって、直下にある側面部212よりも径方向外側に延在して設けられている。開口部211の上面は、後述する接着部が接着できるように平坦に設けられている。
開口部211の外径は、50mm~100mmとし、好ましくは60mm~80mmである。開口部211の内径は、少なくとも卵を楕円球と仮定したときの短軸方向の径よりも長くなることが好ましい。
【0028】
側面部212は、図2に示すように、温泉卵1の周囲を側面から覆うように設けられている部分であって、透明な部材である。側面部212の水平方向の断面は、円形(楕円を含む)となっており、底面213から卵黄31の直径分高い位置における側面部212の水平断面の径は、少なくとも内部に収容された卵黄の径の1.5倍よりも小さく、好ましくは1.3倍よりも小さく、さらに好ましくは1.2倍よりも小さい。
これにより、卵黄31の側面方向における移動を抑制し、外部からの衝撃に伴う卵黄の破壊を防ぐとともに、卵黄31を収容部21の平面視中心付近に誘導しやすくなる。
【0029】
側面部212の水平断面の面積は、下端において最小となり、ある一断面の面積はその下方にある断面の面積よりも大きくなるように設けられている。また、側面部212の内周面は、底面213から開口部211にかけて滑らかな曲面となるように設けられている。
これによって、開口部211を大きくとることができるため収容部21に液卵3を収容することが容易になり、また内周面がなめらかな曲面となるため、収容部21から温泉卵1のスムーズな取り出しが可能になる。
【0030】
実施形態では、図2に示すように、側面部212の下方から上方に向けての径の拡幅度合は、底面213の近傍よりも、開口部211の近傍の方が大きくなるように設けられている。
詳述すると、底面213から一定の傾斜角に従って拡幅する第一側壁部212aと、第一側壁部212aの上に設けられ開口部211に向けて加速度的に拡幅する第二側壁部212bと、開口部211と接続する第三側壁部212cが一体となって設けられている。
【0031】
第一側壁部212aは、側面部212における直線的な傾斜部分であって、底面213に対して75°~88°、好ましくは79°~84°の傾斜角で設けられる。側面部212において、第一側壁部212aが占める領域は、底面213から卵黄31の直径分までの高さよりも高く、好ましくは底面213から卵一個分の液卵3の液面の高さよりも高くなるように設けられている。
【0032】
第二側壁部212bは、側面部212における曲面部分であって、上方に向けて加速度的に拡幅して設けられる。側面部212において第二側壁部212bが占める領域は、第一側壁部212aの上部から開口部211に至るまでの領域である。
【0033】
第三側壁部212cは、側面部212における直線的な部分であって、開口部211に略垂直に設けられる。第三側壁部212cは、第一側壁部212a及び第二側壁部212bよりも、肉厚を大きくして開口部211の堅牢性を高めていることが好ましい。第三側壁部212cは、内側方向に向けて若干傾斜していてもよい。
【0034】
底面213は、側面部212の下端において面張して設けられる部分であって、温泉卵1の卵黄の一部及び卵白を下面から支持する。底面213は円盤状になるように設けられており、平面視したときの面積は卵黄を平面視したときの面積と略同一か少し大きく、またその内径は卵黄31の直径と略同一か少し大きくなるように設けられている。Mサイズの鶏卵を想定した場合の内径は、少なくとも2.5cm以上、好ましくは3.0cm以上、より好ましくは3.5cm以上である。また、内径は大きくとも5.0cm以下、好ましくは4.5cm以下であることが好ましい。また、堅牢性の向上のために、開口部211に向かう凹部が設けられていてもよい。
【0035】
蓋部22は、可撓性を有する薄板部材であって、収容部21の開口部211をシールすることで密閉する蓋本体221と、蓋本体221の端部から外側に突出して設けられる手持ち端222とを備えている。
【0036】
温泉卵1の液面と蓋部22は離間するように設けられており、離間の幅は少なくとも5mm以上、好ましくは1cm以上となっているとよい。これにより、喫食する際に調味料を収容部21に入れて味付けすることが容易になる。
【0037】
蓋本体221は、開口部211よりも少し径が大きい円盤状の部材であって、好ましくは透明なプラスチックフィルムで設けられる。また、蓋本体221の周縁には、開口部211の上面に沿うように貼り付け部223を有し、ここにおいて蓋本体221が開口部211に密着して貼り付けされる。貼り付けの方法はヒートシールによる方法が好ましいが、接着剤を利用してもよい。
【0038】
手持ち端222は、蓋本体221の側面の一部から突出する薄板部分であって、ここを持ち手として開口部211と蓋本体221との貼り付けを剥がすことができるようにしてある。
【0039】
他の実施形態として、図5に示すように、収容容器2は側面部212から底面213の中心に向かって傾斜する凹部である傾斜部4が設けられていても良い。これにより液卵3よりも密度の高い卵黄31が底面213の中心に保持されやすくなり、卵黄周辺に均一に卵白が配置される温泉卵を作成することができる。
【0040】
また、底面213の縁辺から突出するリング状の立設部5が収容容器2を底上げするように設けられている。これにより地面と底面213が直接接触してある。
立設部5が設けられていることによって、収容容器2に均等に熱を伝わりやすくして、より見栄えのいい温泉卵1を得ることができる。
【0041】
変更例として、側面部212は、底面から卵黄31の半径よりも高い位置において、収容容器2の水平断面の径を卵黄31の径よりも小さくするようにする突起部品が設けられていてもよい。これにより、卵黄31を収容容器2の中で浮き上がらせて卵黄31の位置を固定するとともに、卵白32が卵黄31の上下を覆うようにして、より見栄えの良い温泉卵1の製造を容易にすることができる。
なお、上述の水平断面の径が小さくなる部分は、側面部212にくびれを付けることによって設けられていてもよい。
【0042】
以下、図面を用いて、本発明の製造方法について詳述する。本発明は、卵黄を製造する製造者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、製造方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
工程は、収容容器2に液卵3を収容する収容工程M1と、液卵3を収容した収容容器を加熱する加熱工程M2が含まれる。
【0043】
収容工程M1を行う前に、製造者は、原卵0の重量を計測する。これにより、液卵3のおよその重量または体積を計算し、収容部21の容積を、少なくとも卵一個分の液卵よりも大きくなるようにし、さらに卵一個分の液卵3が収容された状態において、収容部21の底面から前記液卵の卵黄上端の高さまでの容積を、前記液卵の体積よりも小さくするようにする。
具体的には、製造者は原卵0の重量が40g以上80g以下、好ましくは50g以上70g以下、より好ましくは55g以上65g以下となるように原卵0を選択する。
【0044】
製造者は、収容工程M1として、前述の原卵0を割卵し、収容部21に1個分の液卵3を収容する。
その後、密閉工程M11として、液卵3が収容された収容部21の上面に、開口部211と貼り付け部223の位置が合うようにして蓋部22を乗せ、ヒートシールによって接着する。
【0045】
次に、製造者は、二次加熱工程M21として、収容容器2の加熱を行う。加熱は温水または水蒸気と収容容器を接触することによって行う。加熱様式としては、収容容器2に温水シャワーをかける方式、槽に貯めた温水に漬ける方式、水蒸気によって蒸す方式が想定される。好ましくは、温水シャワーを収容容器2の様々な方向(少なくとも上面・側面を含む)からかけ流すことによって行う。温水シャワーの温度条件は、60℃~80℃であり、好ましくは62℃~75℃、より好ましくは63~68℃の範囲内である。
また、加熱の条件は、15分以上60分以内であることが好ましく、より好ましくは30分以上45分以内である。
さらに、二次加熱工程M21は加圧操作を含み、殺菌を同時に行ってもよい。
【0046】
これにより、収容部21の中に液卵3を入れた状態のまま調理することができるため、容器に封入されて流通される取り扱い性能の高い温泉卵であって、殻付きで調理したものと同様の食感及び見た目を呈するものを提供することができる。
【0047】
<実施例>
まず、56.8gのいわゆるMSサイズの原卵0及び61.6gのいわゆるMサイズの原卵0を用意した。
液卵の卵黄の直径はいずれも約3cmであり、体積はそれぞれ、52.5mL、56.5mLであった。
併せて、所定の大きさの容積を持つ収容容器2を用意した。収容容器2の高さは7cmであって、収容部21全体の容積は130mLである。また、収容部21において、底面からの高さ3cmまでの容量は約40mLであり、底面から高さ4cmまでの容量は約60mLである。
【0048】
次に、原卵0を割卵し、収容容器2の収容部21に落とし込んだ。すると、図6(a)のように卵黄31が卵白32の下に沈み込むように配置された。
【0049】
次に、開口部211に蓋部22をヒートシールによって取付け、収容部21を密閉した。そして、レトルト機の温水シャワーによって底面213を下面に載置した状態で加熱することで、収容部21の内部の液卵3を変質させ、容器入り温泉卵Xを得た。加熱の条件は、常圧下、65℃で40分である。
【0050】
最後に、得られた容器入り温泉卵Xを開封し、皿に盛り付けたところ、図6(b)、(c)に示すように、殻付きのまま調理したものと同様の見た目の、卵黄が卵白によって包み込まれた温泉卵が得られた。
なお、図6(b)は56.8gの原卵を使用したもの、図6(c)は61.6gの原卵を使用したものを表している。
【符号の説明】
【0051】
X 容器入り温泉卵
0 原卵
1 温泉卵
2 収容容器
21 収容部
211 開口部
212 側面部
213 底面
22 蓋部
221 蓋本体
222 手持ち端
3 液卵
31 卵黄
32 卵白
4 傾斜部
5 立設部

図1
図2
図3
図4
図5
図6