(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097607
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】歯科用デモンストレーションキット
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20240711BHJP
A61K 6/80 20200101ALI20240711BHJP
A61K 6/20 20200101ALI20240711BHJP
A61C 5/30 20170101ALI20240711BHJP
【FI】
G09B23/28
A61K6/80
A61K6/20
A61C5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001183
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】市川 聖也
(72)【発明者】
【氏名】井上 将史
(72)【発明者】
【氏名】堀口 広敬
(72)【発明者】
【氏名】松浦 亮
【テーマコード(参考)】
2C032
4C089
4C159
【Fターム(参考)】
2C032CA10
4C089AA05
4C089AA06
4C159DD08
4C159GG14
4C159SS04
(57)【要約】
【課題】歯科用修復材料の色調適合性を容易に評価できる、歯科用デモンストレーションキットを提供すること。
【解決手段】欠損部を有する修復用人工歯を2個以上、歯科用修復材料からなる補綴物を1個以上含み、2個以上の前記修復用人工歯が有する欠損部が、いずれも前記補綴物を着脱可能な着脱部(W)であり、前記補綴物が、前記着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有し、前記補綴物が、前記着脱部(Z)において前記着脱部(W)に嵌合可能な形状を有し、前記補綴物と前記修復用人工歯とを嵌合してなる複数の修復サンプルが互いに異なる、歯科用デモンストレーションキット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠損部を有する修復用人工歯を2個以上、及び歯科用修復材料からなる補綴物を1個以上含み、
2個以上の前記修復用人工歯が有する欠損部が、いずれも前記補綴物を着脱可能な着脱部(W)であり、
前記補綴物が、前記着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有し、
前記補綴物が、前記着脱部(Z)において前記着脱部(W)に嵌合可能な形状を有し、
前記補綴物と前記修復用人工歯とを嵌合してなる複数の修復サンプルが互いに異なる、歯科用デモンストレーションキット。
【請求項2】
前記複数の修復サンプルが以下の(i)、(ii)又は(iii)のいずれかで構成される、請求項1に記載の歯科用デモンストレーションキット。
(i) 2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する;又は
(ii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、異なる色調を有する補綴物を2個以上含む;又は
(iii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、同一の色調を有する補綴物を2個以上含む。
【請求項3】
前記条件(i)又は(ii)を満たし、前記2個以上の修復用人工歯が有する欠損部の形状が、同一又は実質的に同一である、請求項2に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項4】
前記条件(i)又は(iii)を満たし、前記2個以上の修復用人工歯が有する欠損部の形状が、異なる、請求項2に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項5】
前記条件(i)を満たし、前記修復用人工歯のシェードが、A1、A2、A3、A3.5、A4、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4、D2、D3、及びD4からなる群より選ばれる2種以上である、請求項2~4のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項6】
塗布剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項7】
前記塗布剤が、重合開始剤を含み、当該重合開始剤の含有量が1000質量ppm以下である、請求項6に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項8】
前記塗布剤が、重合性単量体を含み、当該重合性単量体の含有量が10000質量ppm以下である、請求項6又は7に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項9】
前記塗布剤の透明度がΔL10以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項10】
前記塗布剤が、歯科用色調適合確認材料又は水である、請求項6に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項11】
前記歯科用色調適合確認材料のL*a*b*表色系が以下の範囲にある請求項10に記載の歯科用デモンストレーションキット。
L*/w=70.0~110.0、a*/w=-5.0~15.0、及びb*/w=-5.0~40.0
【請求項12】
前記着脱部(W)を有する修復用人工歯、及び前記着脱部(Z)を有する補綴物のみからなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項13】
前記歯科用修復材料が、歯科用ミルブランク又は歯科用コンポジットレジンである、請求項1~12のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項14】
前記修復用人工歯の欠損部が、II級窩洞である、請求項1~13のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキット。
【請求項15】
歯科用修復材料の色の評価方法であって、
請求項1~14のいずれか1項に記載の歯科用デモンストレーションキットにおいて、
第1修復用人工歯が有する着脱部(W-1)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第1修復サンプルを作製する工程、
第1修復サンプルから、前記補綴物を取り外す工程、
第2修復用人工歯が有する着脱部(W-2)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第2修復サンプルを作製する工程、及び
第1修復サンプルの色と、第2修復サンプルの色とを比較する工程を含み、
歯科用修復材料の色の評価方法。
【請求項16】
歯科用デモンストレーションキットにおいて、2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する、請求項15に記載の評価方法。
【請求項17】
着脱部(W-1)と着脱部(Z)とを、及び/又は、着脱部(W-2)と着脱部(Z)とを、塗布剤を介して嵌合させる、請求項15又は16に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用デモンストレーションキットに関する。
【背景技術】
【0002】
重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤から構成される歯科用硬化性組成物は、歯の欠損部、又は虫歯を修復するための材料として多用されている。
歯科用コンポジットレジンが登場する以前は、歯科用硬化性組成物として齲蝕の充填治療にはアマルガムや金合金等が使われていたが、近年においては歯科用修復材料の機械的強度の向上と歯牙との接着力の向上により、前歯ばかりではなく高い咬合圧のかかる臼歯部等にも使用され、現在、充填治療では大部分が歯科用修復材料により行われている。歯科用修復材料としては、歯科用コンポジットレジン、又は歯科用ミルブランクが使用されている。
【0003】
歯科用コンポジットレジンとは、歯科の治療において齲蝕部分が少ない場合に、齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復をするための材料の一種であり、安価でかつ天然歯に近い色調が比較的容易に達成できることから急速に普及してきた。
歯科用コンポジットレジンを用いた修復は直接修復と呼ばれ、歯質の切削量を少なくでき、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや操作が容易なことから、急速に普及している。
また、近年においては、機械的強度の向上や、歯牙との接着力の向上から、前歯部の修復のみならず、高い咬合圧が加わる臼歯部に対しても歯科用コンポジットレジンが使用されている。
【0004】
一方、齲蝕部分が多いと歯質切削量が多くなり、歯科治療時に形成される欠損部への歯科用コンポジットレジンの築盛が困難かつ煩雑であるために、セラミックスインレー/アンレー、メタルインレー/アンレー、CAD/CAMインレー/アンレーなどによる間接修復が選択される。
間接修復の中でも近年では、インレー/アンレー等の補綴物をコンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムが普及しており、該CAD/CAMシステムに用いられる被切削材料として、歯科用ミルブランクが使われている。
歯科用ミルブランクから製造された歯科用修復材料は、天然歯と置換可能な十分な機械的強度を有する。
【0005】
近年、歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランクを含む歯科用修復材料は、天然歯に見えるような審美性の高い修復への要求がより高まっている。
審美性の高い修復治療を行うためには、修復する歯牙(被修復歯牙)の色(色相及び色調)を判別し(「シェードテイキング」と呼ばれることもある)、判別された色に適合する色の歯科用修復材料を選択して修復を行う必要がある。この場合、1色の歯科用修復材料を用いて修復が行われることが多いが、歯牙の部位による色の変化を忠実に再現するような高い審美修復を行う場合には、色の異なる複数の歯科用修復材料を積層して修復することもある。
【0006】
上記シェードテイキングは、シェードガイドと呼ばれる色調見本を用いて行われるのが一般的である。シェードガイドには、色見本の数や色見本を保持する保持用器具の構成等が色の判定作業をしやすいように工夫された様々なものがある。
シェードガイドは、全16種の色(色相と、明度及び彩度の混合指標との組み合わせからなる指標、又は色相、明度及び彩度を考慮した指標である。以下このような指標で特定される色を「シェード」ともいう)の見本からなる。該シェードガイドと、口腔内の歯牙の修復部位及び周囲の歯の色とを照らし合わせることで修復部位の色を決定することができるVITA社製の「ビタ クラシカル シェードガイド(商品名)」が、最も広く普及している(特許文献1)。
歯科用修復材料についても、上記16種のシェードのものが取り揃えられることが多い。
【0007】
また、歯科用修復材料のシェードを確認する方法としても上記シェードガイドが用いられる。歯科用修復材料は同一のシェードであっても種類、メーカー、ロットによって微妙に色が異なっているため、正確なシェードテイキングを行うためには、歯科用修復材料ごとにシェードガイドを用いて歯科用修復材料のシェードを判別する方法が採用されている。
【0008】
一方で近年、煩雑なシェードテイキングやコンポジットレジンのシェードの選択を行うことなく、1種類の歯科用コンポジットレジンで広範な色の被修復歯牙に対して天然歯に近い外観の修復を行うことができる歯科用コンポジットレジンが開発されている。例えば、分光色差計を用いて白背景で歯科用コンポジットレジンの硬化物及び歯科用ミルブランクからなる補綴物を測定した際、ある一定の範囲の波長領域において分光反射率がほぼ一定であることによって、その歯科用コンポジットレジンの硬化物及び歯科用ミルブランクからなる補綴物が幅広い色調の天然歯に対して良好な色調の適合性(以下、単に「色調適合性」と称することがある。)を示すことを見出している(特許文献2)。
これにより、天然歯と見分けがつかないほどに周囲の歯質と適合する審美性の高い直接修復が可能であり、特にI/II/V級など窩底部が存在する症例に対して、1種の色調の歯科用修復材料で幅広い色調の天然歯に対して良好な色調適合性を示している。
【0009】
そして、色調適合性を示す歯科用コンポジットレジンの特性を理解するためのデモンストレーション用器具が開発されている(特許文献3)。
これにより、広範な色調に対して良好な色調適合性を有するという歯科用コンポジットレジンの優れた特徴が理解できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6004769号
【特許文献2】国際公開第2022/092193号
【特許文献3】特許第6840394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に示すように、近年、従来よりも高い色調適合性を示すような歯科用修復材料が開発されているものの、シェードガイドを用いる場合では、シェードガイドは平面状であるため、歯科用修復材料を加工して得られる補綴物を欠損部に適用する臨床的使用を想定すると、周囲に適用対象である欠損部を有する歯質がないことに起因して、歯科用修復材料が周囲の色を透過し反映させる色調適合性の特徴が発現させることができない。そのため、色調適合性を示す歯科用コンポジットレジンの特性を視覚的に理解できない。
【0012】
また、特許文献3に開示されている、直接修復におけるデモンストレーション用器具では、硬化前のコンポジットレジン(硬化性組成物)を欠損部に充填し、重合硬化させて補綴物と修復用人工歯を一体化するため、充填後の硬化によって得られた補綴物は、欠損部の壁面にも接着し、補綴物を取り外すことが簡単ではない。そのため、当該デモンストレーション用器具で確認できる色調適合性は、1回のみに限定されていた。
【0013】
この場合、修復用人工歯を複数用意することで、色調適合性を有しない歯科用コンポジットレジンと、色調適合性を有する歯科用コンポジットレジンとを比較して、色調適合性を示す歯科用コンポジットレジンの色調適合性を理解することはできる。
しかしながら、当該デモンストレーション用器具では、歯科用コンポジットレジンの組成物を修復用人工歯が有する欠損部に充填した後に硬化させるため、欠損部に充填する前の時点で所望の形状を有する重合硬化である補綴物を使用する間接修復法においては、使用できないことがわかった。
そのため、歯科用修復材料が周囲の色を透過し反映させ幅広い色調に適合できるという色調適合性を有する歯科用コンポジットレジンに関して、欠損部への適用前と、適用後によって色調が変化することを視覚的に理解させるものではなかった。
以上のような事情から、間接修復法において、歯科用修復材料の色調適合性の有無を容易に評価できる、デモンストレーション用器具は、特許文献3には全く示唆されていなかった。
【0014】
そこで、本発明は、歯科用修復材料の色調を容易に評価できる、歯科用デモンストレーションキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、欠損部が形成された2個以上の修復用人工歯と、歯科用修復材料から作製された1個以上の補綴物から構成される歯科用デモンストレーションキットであって、前記補綴物及び前記修復用人工歯に着脱部を有する、歯科用デモンストレーションキットを用いることによって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]欠損部を有する修復用人工歯を2個以上、及び歯科用修復材料からなる補綴物を1個以上含み、
2個以上の前記修復用人工歯が有する欠損部が、いずれも前記補綴物を着脱可能な着脱部(W)であり、
前記補綴物が、前記着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有し、
前記補綴物が、前記着脱部(Z)において前記着脱部(W)に嵌合可能な形状を有し、
前記補綴物と前記修復用人工歯とを嵌合してなる複数の修復サンプルが互いに異なる、歯科用デモンストレーションキット。
[2]前記複数の修復サンプルが以下の(i)、(ii)又は(iii)のいずれかで構成される、[1]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
(i) 2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する;又は
(ii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、異なる色調を有する補綴物を2個以上含む;又は
(iii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、同一の色調を有する補綴物を2個以上含む。
[3]前記条件(i)又は(ii)を満たし、前記2個以上の修復用人工歯が有する欠損部の形状が、同一又は実質的に同一である、[2]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
[4]前記条件(i)又は(iii)を満たし、前記2個以上の修復用人工歯が有する欠損部の形状が、異なる、[2]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
[5]前記条件(i)を満たし、前記修復用人工歯のシェードが、A1、A2、A3、A3.5、A4、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4、D2、D3、及びD4からなる群より選ばれる2種以上である、[2]~[4]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[6]塗布剤をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[7]前記塗布剤が、重合開始剤を含み、当該重合開始剤の含有量が1000質量ppm以下である、[6]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
[8]前記塗布剤が、重合性単量体を含み、当該重合性単量体の含有量が10000質量ppm以下である、[6]又は[7]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
[9]前記塗布剤の透明度がΔL10以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[10]前記塗布剤が、歯科用色調適合確認材料又は水である、[6]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
[11]前記歯科用色調適合確認材料のL*a*b*表色系が以下の範囲にある[10]に記載の歯科用デモンストレーションキット。
L*/w=70.0~110.0、a*/w=-5.0~15.0、及びb*/w=-5.0~40.0
[12]前記着脱部(W)を有する修復用人工歯、及び前記着脱部(Z)を有する補綴物のみからなる、[1]~[11]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[13]前記歯科用修復材料が、歯科用ミルブランク又は歯科用コンポジットレジンである、[1]~[12]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[14]前記修復用人工歯の欠損部が、II級窩洞である、[1]~[13]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキット。
[15]歯科用修復材料の色の評価方法であって、
[1]~[14]のいずれかに記載の歯科用デモンストレーションキットにおいて、
第1修復用人工歯が有する着脱部(W-1)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第1修復サンプルを作製する工程、
第1修復サンプルから、前記補綴物を取り外す工程、
第2修復用人工歯が有する着脱部(W-2)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第2修復サンプルを作製する工程、及び
第1修復サンプルの色と、第2修復サンプルの色とを比較する工程を含み、
歯科用修復材料の色の評価方法。
[16]歯科用デモンストレーションキットにおいて、2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する、[15]に記載の評価方法。
[17]着脱部(W-1)と着脱部(Z)とを、及び/又は、着脱部(W-2)と着脱部(Z)とを、塗布剤を介して嵌合させる、[15]又は[16]に記載の評価方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、歯科用修復材料の色調を容易に評価できる、歯科用デモンストレーションキットを提供することができる。
また、本発明によれば、歯科用修復材料の色調適合性を容易に評価できる、歯科用デモンストレーションキットを提供することができる。
さらに、本発明によれば、歯科用修復材料からなる補綴物の取り付けと取り外しを繰り返すことで、修復用人工歯が有する欠損部に該補綴物を適用する前と、欠損部への適用後における補綴物の色の確認を繰り返しできるため、間接修復法において、歯科用修復材料が周囲の色を透過し反映させ幅広い色調に適合できるという色調適合性を、視覚的に容易に繰り返し確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明に係る歯科用デモンストレーションキットの一実施形態を表す。
【
図3】本発明に係る歯科用デモンストレーションキットに用いる1個の補綴物と、対応する1個の修復用人工歯の写真である。
【
図4】本発明に係る歯科用デモンストレーションキットを使用した際に得られる修復サンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細を説明する。
なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
本明細書において、「色調適合性」とは、修復用人工歯、歯質等の補綴物の適用対象に歯科用修復材料からなる補綴物を装着した際には、当該適用対象が有する色調を該補綴物が徐々に取り込んで吸収し、取り込んだ色調が観察者の視覚から知覚されることによって、補綴物の色調が当該適用対象と補綴物との境界部分で移行的に変化したように見え、当該適用対象が有する幅広い色調に適合できる性質を意味する。すなわち、「色調適合性」は、補綴物を適用対象に嵌合した際に、当該適用対象の色調に応じて、当該色調に適合したように補綴物の色が変化する、又は視覚を通じて変化したように見える性質を表す。
本明細書において、「欠損部」は、
図1A~
図1Eの各種窩洞(I級~V級窩洞)に示されるG.V.Blackの分類に含まれる窩洞;G. V. Blackの分類に含まれない窩洞、又はその他の形状の欠損を含んでいてもよい。また、「欠損部」は、補綴物を着脱可能な着脱部(W)に相当する。
本明細書において、「修復サンプル」は、例えば、
図4に示されるように、歯科用修復材料から作製された補綴物の着脱部(Z)を、欠損部を有する修復用人工歯の欠損部(着脱部(W))に装着して得られるものを意味する。
また、本明細書において、「シェード」は、色相と、明度及び彩度の混合指標との組み合わせからなる指標で特定される色、又は色相、明度及び彩度を考慮した指標で特定される色を意味し、VITA社製の「ビタ クラシカル シェードガイド」の記号を意味する。
【0020】
本発明の歯科用デモンストレーションキットは、欠損部を有する修復用人工歯を2個以上、及び歯科用修復材料からなる補綴物を1個以上含み、
2個以上の前記修復用人工歯が、いずれも前記補綴物を着脱可能な着脱部(W)を有し、
前記補綴物が、前記着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有し、
前記補綴物が、前記着脱部(Z)において前記着脱部(W)に嵌合可能な形状を有し、
前記補綴物と前記修復用人工歯とを嵌合してなる複数の修復サンプルが互いに異なる。
「複数の修復サンプルが互いに異なる」とは、2個以上の修復サンプルの色調を含めて外観が異なることを意味する。
【0021】
本発明のデモンストレーションキットでは、修復用人工歯に補綴物を装着する際には、修復用人工歯の色調を徐々に補綴物が取り込んで吸収し、観察者の視覚では修復用人工歯と補綴物との境界部分の色調が移行的に変化するように色調を反映できるため、前記した色の変化を観察者が視覚を通じて知覚できないものについては、歯科用修復材料からなる補綴物が色調適合性を有しないということができる。また、色調適合性を有する補綴物を使用した場合、補綴物を取り外す際には、修復用人工歯の色調の吸収等が徐々に消失し、室内光を取り込むようになり、取り外して机の上に置くと、机上での補綴物の色調を呈するようになる。
このような補綴物の着脱によって、装着前、装着時、取り外し時、取り外し後の色が変化することにより、補綴物と修復用人工歯の色調(好適には、色調適合性)が理解しやすくなると考えられる。
また、歯科用修復材料からなる補綴物が色調適合性を有さない場合、前記した色の変化を観察者が視覚を通じて知覚できないため、歯科用修復材料からなる補綴物が色調適合性を有する場合の色の変化と比較することで、歯科用修復材料が色調適合性を有さないものであることを簡便に評価、認識できる。
そのため、本発明のデモンストレーションキットでは、歯科用修復材料からなる補綴物が色調適合性を有するか否かを簡便に評価することができる。
【0022】
本発明の歯科用デモンストレーションキットにおいて、複数の修復サンプルが互いに異なるように、複数の修復サンプルが以下の(i)、(ii)又は(iii)のいずれかで構成されることが好ましい。
(i) 2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する;
(ii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、異なる色調を有する2個以上の補綴物を含む;又は
(iii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、同一の色調を有する補綴物を2個以上含む。
本発明の歯科用デモンストレーションキットとして、条件(i)2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有する場合を「第1実施形態」と称する。
また、本発明の歯科用デモンストレーションキットとして、条件(ii) 2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、異なる色調を有する2個以上の補綴物を含む場合を「第2実施形態」と称する。
さらに、条件(ii)2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、同一の色調を有する補綴物を2個以上含む場合を「第3実施形態」と称する。
本発明の歯科用デモンストレーションキットにおいて、「第1実施形態」、「第2実施形態」又は「第3実施形態」とを区別して記載した場合を除いて、すべての実施形態に共通するものとする。
【0023】
<歯科用修復材料>
本発明の歯科用デモンストレーションキットに含まれる、歯科用修復材料に特に制限はなく、各種歯科材料を用いることができる。
具体的には、各種レジン材料(齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、歯冠用コンポジットレジン等の歯科用コンポジットレジン;義歯床用レジン)、義歯床用裏装材、印象材、レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント等の合着用材料、歯牙裂溝封鎖材、歯科用ミルブランク、テンポラリークラウン、人工歯材料などを用いることができる。
これらの中でも、本発明の歯科用修復材料は、審美性が高く、機械的強度も優れることから、レジン材料が好ましく、無機充填材の含有量が50質量%以上であるレジン材料がより好ましく、歯科用ミルブランク又は歯科用コンポジットレジンであることがさらに好ましい。
【0024】
[歯科用ミルブランク]
本発明に係る歯科用ミルブランクは特に制限はなく、市販されているものを用いてもよく、公知の組成からなるものを用いてよい。例えば、歯科用ミルブランクの組成は重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、無機充填材(C)、及び着色剤(D)を含むことができる。
【0025】
本発明の歯科用ミルブランクに用いられる重合性単量体(A)としては特に制限はなく、歯科用硬化性組成物に使用される重合性単量体として公知のものを用いることができ、特にラジカル重合性単量体を好ましく用いることができる。
当該ラジカル重合性単量体としては、不飽和カルボン酸のエステル、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。
重合性単量体(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。また、「(メタ)アクリル系単量体」は、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリルアミド誘導体の両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
【0026】
・一官能性の(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリルアミド誘導体
例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(o-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(m-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(p-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
・二官能性の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、芳香族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0028】
芳香族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称:Bis-GMA)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス〔4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、9,9-ビス〔4-(2-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル〕フルオレン、ジフェニルビス[3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル]シラン、メチルフェニルビス[3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル]シランなどが挙げられる。
【0029】
脂肪族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称:3G)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)エタン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジアクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称:UDMA)、ジシクロヘキシルビス[3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル]シランなどが挙げられる。
【0030】
上記の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルの中でも、得られる硬化物の機械的強度が向上するなどの観点から、2,2-ビス〔4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis-GMA)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均付加モル数:1~30)、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)エタン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジアクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)がより好ましく、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis-GMA)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均付加モル数:1~30)、トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)エタン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)がさらに好ましく、2,2-ビス〔4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis-GMA)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エチレンオキシ基の平均付加モル数:2.6)、トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)が特に好ましい。
【0031】
・三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキサヘプタンなどが挙げられる。
【0032】
また、重合性単量体(A)としては、(メタ)アクリル酸エステル基などのラジカル重合性基を有するオリゴマーやポリマーも好適に使用でき、例えば、特開昭50-42696号に記載の重合性プレポリマーや、特開2011-144121号に記載の不飽和ウレタン系オリゴマー、特表2006-510583号に記載の多官能アクリレート化合物、WO2020/122192号に記載のプレポリマーなどが使用できる。
【0033】
本発明の歯科用ミルブランクに用いられる重合開始剤(B)としては特に制限はなく、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましい。
重合開始剤(B)としては、光重合開始剤及び化学重合開始剤が特に好ましい。重合開始剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の歯科用ミルブランクに用いられる無機充填材(C)としては特に制限はなく、各種ガラス類、シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウムなどの酸化物を含有することができる。無機充填材(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、「主成分」とは、一番含有量が多い成分を意味する。
主成分の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上であってもよい。
【0035】
本発明の歯科用ミルブランクに用いられる着色剤(D)としては特に制限はなく、目的とする歯科用ミルブランクの色調に応じて無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでも制限なく用いることができる。着色剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の歯科用ミルブランクに用いられる無機充填材(C)は、シランカップリング剤等の公知のシラン化合物で予め表面処理してから用いると、重合性単量体との親和性を調整できるために、歯科材料としての取り扱い性に優れた組成物を得ることができる。
シラン化合物としては、公知のシラン化合物を制限なく使用できる。
【0037】
本発明に係る歯科用ミルブランクの製造方法には特に制限はなく、公知の製造方法で作製してよい。具体的には、所望の物性を有する歯科用ミルブランクをより効率的に得られることなどから、無機充填材をプレス成形してなる無機充填材成形体と重合性単量体含有組成物とを接触させて、重合性単量体を重合硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
また、各成分を所定の含有量で配合し、混合することにより得ることができる。この際の配合順序に特に制限はなく、各成分を一括して配合してもよく、2回以上に分けて配合してもよい。また、必要に応じて混合ないし練合してもよく、又は、真空脱泡処理等の脱泡処理を施したりしてもよい。得られた歯科用硬化性組成物は、単一の容器に充填し、重合硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【0038】
[歯科用コンポジットレジン]
本発明に係る歯科用コンポジットレジンは特に制限はなく、市販されているものを用いてもよく、公知の組成からなるものを用いてよい。例えば、歯科用コンポジットレジンの組成は重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、無機充填材(C)、及び着色剤(D)を含むことができる。
【0039】
本発明の歯科用コンポジットレジンに用いられる重合性単量体(A)としては、特に制限はなく、歯科用硬化性組成物に使用される重合性単量体として公知のものを用いることができ、ラジカル重合性単量体が特に好ましい。
歯科用コンポジットレジンに用いられる重合性単量体(A)としては、歯科用ミルブランクに用いられる重合性単量体(A)として上記した例示したものを使用してもよい。
【0040】
本発明の歯科用コンポジットレジンに用いられる重合開始剤(B)としては特に制限はなく、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましい。
重合開始剤(B)としては、光重合開始剤及び化学重合開始剤が特に好ましい。重合開始剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0041】
本発明の歯科用コンポジットレジンに用いられる無機充填材(C)としては特に制限はなく、各種ガラス類、シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウムなどの酸化物を含有することができる。無機充填材(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の歯科用コンポジットレジンに用いられる着色剤(D)としては特に制限はなく、目的とする歯科用コンポジットレジンの色調に応じて無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでも制限なく用いることができる。
【0043】
本発明の歯科用コンポジットレジンの無機充填材(C)は、シランカップリング剤等の公知のシラン化合物で予め表面処理してから用いると、重合性単量体との親和性を調整でき、歯科材料としての取り扱い性に優れた組成物を得ることができる。シラン化合物としては、公知のシラン化合物を制限なく使用できる。
【0044】
本発明に係る歯科用コンポジットレジンの製造方法には特に制限はなく、公知の製造方法で作製できる。具体的には、各成分を所定の含有量で配合し、混合することにより製造できる。この際の配合順序に特に制限はなく、各成分を一括して配合してもよく、2回以上に分けて配合してもよい。
また、必要に応じて混合ないし練合してもよく、あるいは、真空脱泡処理等の脱泡処理を施したりしてもよい。得られた歯科用コンポジットレジンの組成物は、単一の容器(シリンジ等)に充填するなどして、1材型(1ペースト型)の歯科用コンポジットレジンとすることができる。
【0045】
ある実施形態においては、本発明の歯科用デモンストレーションキットは、色調適合性を有するか否かが不明である場合に、色調適合性の有無を評価することに使用できる。色調適合性の有無の評価には、第1実施形態、又は第3実施形態を使用できる。
また、他の実施形態においては、本発明の歯科用デモンストレーションキットは、補綴物が色調適合性を有することが既知である場合、当該色調適合性を強調するために使用することにできる。色調適合性の強調には、第1実施形態、第2実施形態、又は第3実施形態を使用できる。
補綴物が色調適合性を有することが既知であり、当該色調適合性を視覚的に強調することを目的とする場合、例えば、補綴物の材料に用いる歯科用修復材料が色調適合性を有する歯科用硬化性組成物である、歯科用デモンストレーションキットが好適に挙げられる。
以上のように、本発明の歯科用デモンストレーションキットに使用する補綴物の材料となる歯科用硬化性組成物は、色調適合性が不明である場合にも使用でき、使用目的に応じて選択できるため、特に限定されない。
【0046】
補綴物が有する色調適合性を強調するために使用する実施形態に使用できる補綴物の材料となる歯科用硬化性組成物について、以下に例示する。
色調適合性を有する歯科用硬化性組成物としては、色調適合性を有する限り特に限定されないが、例えば、国際公開第2022-092193号に記載の組成物等が挙げられる。
具体的には、色調適合性を有する歯科用硬化性組成物としては、重合性単量体(A)、充填材(B)、重合開始剤(C)、及び着色剤(D)を含む歯科用硬化性組成物であって、
前記歯科用硬化性組成物の厚さ1.0mmの硬化物を、分光色差計を用いて白背景で測定した際の、600nmの波長における分光反射率に対する、650nm、700nm、及び750nmの波長における分光反射率の比R650/600、R700/600、及びR750/600がいずれも、97%~103%の範囲内である、歯科用硬化性組成物が挙げられる。
【0047】
前記分光反射率の比は、厚さ1mmの歯科用硬化性組成物の硬化物の背後に構成された標準白色板を置いた状態で、380~780nmの波長に対する分光反射率を、分光色差計(SE6000、日本電色工業株式会社製、光源:D65/2、測定窓:φ6mm)を用いて評価できる。
また、前記色調適合性を有する歯科用硬化性組成物において、厚さ1.0mmの硬化物における以下の式(1)で定義されるコントラスト比は0.35~0.65を満たすことが好ましい。
コントラスト比=Yb/Yw (1)
(ここで、Ybは黒背景において測定したXYZ表色系のY値を表し、Ywは白背景において測定したXYZ表色系のY値を表す。)
前記コントラスト比は、厚さ1mmの歯科用硬化性組成物の硬化物の三刺激値のY値を黒背景色及び白背景において分光色差計で測定して算出できる。
さらに、前記色調適合性を有する歯科用硬化性組成物において、厚さ0.25mmの硬化物における以下の式(2)で定義される光拡散度LDは0.0001~0.99を満たすことが好ましい。
LD=(I5/cos5°)/I0 (2)
前記光拡散度LDは、φ30mm×厚さ0.25mmの歯科用硬化性組成物の硬化物を作製し、ゴニオフォトメーター(株式会社村上色彩技術研究所、GP-200)を用いて入射光角度0°にて、前記硬化物の-90°~+90°における透過光の光度分布を測定し、式(2)に従って光拡散度LDを算出できる。
【0048】
色調適合性を有する歯科用硬化性組成物に用いられる重合性単量体(A)としては、歯科用ミルブランクに用いられる重合性単量体(A)として上記した例示したものを使用してもよい。
色調適合性を有する歯科用硬化性組成物に用いられる無機充填材(C)としては、平均粒子径が0.05~1μmである無機微粒子(無機一次粒子)を含むことが好ましく、0.08~0.9μmである無機微粒子を含むことがより好ましく、0.1~0.8μmである無機微粒子を含むことがさらに好ましい。
また、色調適合性を有する歯科用硬化性組成物に用いられる無機充填材(C)としては、前記無機一次粒子が凝集してなる無機凝集粒子を含むことが好ましい。
無機充填材(C)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD-2300」等)により、エタノール、又は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて体積基準で測定できる。特に0.1μm以上の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が簡便である。電子顕微鏡観察には、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU3500、SU3800、S-4000等)を使用できる。電子顕微鏡観察は具体的に、例えば、粒子の電子顕微鏡写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View(株式会社マウンテック製))を用いて測定することにより算出できる。
さらに、前記無機凝集粒子の比表面積は、10m2/g以上であることが好ましく、15m2/g以上であることがより好ましく、18m2/g以上であることがさらに好ましく、20m2/g以上であることが特に好ましい。また、前記無機凝集粒子の比表面積は、300m2/g以下であることが好ましく、250m2/g以下であることがより好ましく、200m2/g以下であることがさらに好ましく、190m2/g以下であることが特に好ましく、170m2/g以下であってもよく、さらには150m2/g以下であってもよい。
前記無機凝集粒子の比表面積は、BET法により求めることができる。具体的には、例えば、比表面積測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「BELSORP-mini」シリーズ等)を用いて測定できる。
前記色調適合性を有する歯科用硬化性組成物の製造方法には特に制限はなく、前記歯科用コンポジットレジンの製造方法と同様に、公知の製造方法で作製でき、国際公開第2022-092193号に記載の製造方法も使用できる。
【0049】
<補綴物>
本発明の補綴物に特に制限はなく、各種歯科用修復材料から作製することができる。
本発明の補綴物としては、具体的には、各種レジン材料(齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、歯冠用コンポジットレジン等の歯科用コンポジットレジン;義歯床用レジン)の硬化物、義歯床用裏装材の硬化物、印象材の硬化物、レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント等の合着用材料の硬化物、歯牙裂溝封鎖材の硬化物、歯科用ミルブランクのCAD/CAMシステムによる切削加工物、テンポラリークラウンの切削加工物、人工歯材料の切削加工物などから作製されたものを用いることができる。
これらの中でも本発明の補綴物は、審美性が高く、機械的強度も優れることから、レジン材料から作製されることが好ましく、無機充填材の含有量が50質量%であるレジン材料から作製されることがより好ましく、歯科用ミルブランクのCAD/CAMシステムによる切削加工物、又は歯科用コンポジットレジンの硬化物であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の歯科用デモンストレーションキットは、1個以上の前記補綴物を含む。
修復用人工歯の欠損部(着脱部(W))に嵌合可能な形状を有する補綴物を1個以上含むことで、修復用人工歯の欠損部に補綴物を装着して修復サンプルを形成して前記補綴物の色調適合性が容易に評価できる。
本発明の歯科用デモンストレーションキットに含まれる前記補綴物の数は1個以上10個以下であることが好ましく、1個以上8個以下であることがより好ましく、さらに観察時の操作性が良い点及びそれぞれの補綴物の色の比較がしやすく、取り扱いが容易になる観点から、1個以上5個以下であることがさらに好ましい。
第1実施形態においては、互いに異なるシェードを有する修復用人工歯に装着することで、いずれの修復用人工歯の色調にも適合し、色調適合性を有することを簡便に確認できる。
【0051】
前記補綴物の形状は、修復用人工歯の欠損部に嵌合可能な形状を有する限り特に限定されない。
前記補綴物は、具体的には、修復用人工歯の欠損部(着脱部(W))に補綴物を嵌合する際に、着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有する。
【0052】
前記補綴物の着脱部(Z)は、修復用人工歯の欠損部に嵌合できるように、機械加工(切削加工、及び/又は研削加工等)することで作製できる。
機械加工の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。
機械加工には、市販の歯科用CAD/CAMマシン、研磨器材等を使用できる。
補綴物は、例えば、凹凸嵌合する対象である修復用人工歯の欠損部の構造情報をスキャナーで取得し、得られたスキャンデータに基づいて、当該欠損部に嵌合可能なようにCAD/CAMマシンで切削加工し、必要に応じて研磨を行うことで作製できる。
また、補綴物は、修復用人工歯の欠損部(着脱部(W))に補綴物を嵌合した後に、取り外しやすいように、修復用人工歯が有する着脱部(W)と、補綴物が有する着脱部(Z)の間に、隙間を設けてもよい。
前記隙間に、後記する塗布剤を存在させることで、修復用人工歯と、補綴物との境界部分で色調が移行的に変化したように見えやすくなり、補綴物が色調適合性を有することを強調しやすくなる。
例えば、
図1A~
図1Eにおいて、修復用人工歯10が有する欠損部20において、隙間10(又は欠損部の壁面10)に塗布剤を塗布してもよい。
前記隙間は、塗布剤の厚さとして測定できる。
【0053】
前記補綴物の形状は、上記したように、着脱部(W)に対向する面で前記修復用人工歯に着脱可能な着脱部(Z)を有していればよく、前記補綴物の咬合面(修復用人工歯の着脱部(W)に対向する面とは反対の面)の形状及び大きさには、特に制限はないが、咬合面を元の形状に修復し観察することができるという観点から、欠損部が形成される前の修復用人工歯の元の咬合面の形状及び大きさと同一であることが好ましい。
【0054】
前記補綴物の咬合面の表面性状には特に制限がないが、一般的な歯科の治療におけるインレー/アンレーによる間接修復を模擬する観点から、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による表面性状であることが好ましい。必要に応じて、カーバイドバーやダイヤモンドバー、研磨ブラシ・バフを用いて、所望の表面性状への切削、表面研磨を施してもよい。
【0055】
前記補綴物のシェードには特に制限はないが、歯科用修復材料から作製されるため、歯科用修復材料のシェードに起因したシェードとなる。
より現実に近い模擬間接修復を再現できる点から、一般的な歯科用修復材料で用いられるシェードであることが好ましい。
【0056】
前記補綴物の個数が2個以上である際の補綴物の形状及び大きさには特に制限はないが、対比に適しているという観点から、それぞれの補綴物の大きさは補綴物間で体積比として90~100%同一の範囲内にあることが好ましい。
相互に対比される補綴物を観察する際には同じ体積である方が正確な色調を観察しやすいことから、体積比として93~100%同一の範囲内にあることがより好ましく、95~100%同一の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0057】
補綴物の個数が2個以上である際の補綴物の色には特に制限はないが、色調適合性の有無の評価(判別)、又は既知の色調適合性の強調という目的に応じて、視覚的に対比しやすいように実施形態毎に適宜決定できる。
例えば、歯科用修復材料からなる2個以上の補綴物を用い、2個以上の修復用人工歯のシェードがそれぞれ異なる場合は、異なるシェードにおいて同時に嵌合した状態で並べて比較ができ、補綴物の付け替え作業が不要になり、色調適合性を強調しやすくなる点から、補綴物の色及び種類は同一である方が好ましい。
また、歯科用修復材料からなる2個以上の補綴物を用い、2個以上の修復用人工歯のシェードがそれぞれ異なる場合、色調適合性の有無を評価する点からは補綴物の種類が異なる方が好ましい。
第1実施形態において、色調適合性を強調する効果が得られる点から、歯科用修復材料からなる補綴物を2個以上含み、2個以上の前記修復用人工歯のシェードが異なり、かつ欠損部の形状が異なるものであってもよい。
【0058】
<修復用人工歯>
本発明の歯科用デモンストレーションキットに含まれる、修復用人工歯の材質や内部構造等は特に限定されないが、天然歯牙に近い内部構造を有しており、より精密な色調適合性の評価を実現できるという観点から、象牙質層とエナメル層等の多層構造を有するものを使用するのが好ましい。
また、色調適合性を有する歯科用修復材料の使用経験がない歯科医等に模擬間接修復を行ってもらい、その出来栄えを確認する場合などには、コストの観点からアクリル系レジン歯を使用することがより好ましい。
【0059】
修復用人工歯は、前歯、臼歯又はそれ以外でも構わないが、対比に適しているという観点から形状及び大きさは、相互に対比される修復用人工歯同士で統一されていることが好ましい。
修復用人工歯のサイズ(厚さ、高さ、及び幅)は、より精密な色調適合性の評価を実現できるという観点から、天然歯牙と同一又は実質的に同一のサイズであることが好ましい。
天然歯牙と実質的に同一のサイズとは、天然歯牙における厚さ、高さ、及び幅に対して±3.0mm以内であることを意味する。
修復用人工歯の大きさ(厚さ、高さ、及び幅)は、必要に応じて、天然歯牙における厚さ、高さ、及び幅に対して±2.0mm以内、±1.5m以内、±1.0mm以内、±1.0mm以内、±0.5m以内等に設定することができる。
修復用人工歯における厚さ、高さ、及び幅が、天然歯牙における厚さ、高さ、及び幅と実質的に同一であるとは、天然歯牙における厚さ、高さ、及び幅と、修復用人工歯における厚さ、高さ、及び幅との差が、10%未満であり、5%未満であることが好ましく、3%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。
2個以上の修復用人工歯が有する欠損部が「異なる」とは、前記した「実質的に同一」の範囲を超えて異なるものであり、厚さ、高さ、又は幅において、異なっているものであれば、特に限定されない。また、厚さ、高さ、及び幅が同一であっても、欠損部が形成される位置及び/又は個数が異なる場合も、2個以上の修復用人工歯が有する欠損部が異なるものといえる。
【0060】
修復用人工歯の欠損部の形状及び大きさは、特に制限が無く、対比に適しているという観点から相互に対比される修復用人工歯の欠損部間で体積比として90~100%同一の範囲内にあることが好ましい。
相互に対比される修復用人工歯を観察する際には同じ体積である方が正確な色調を観察しやすいことから、体積比として93~100%同一の範囲内にあることがより好ましく、95~100%同一の範囲内にあることがさらに好ましい。
ある好適な実施形態としては、複数の修復用人工歯同士の欠損部の形状が、同一又は実質的に同一である、歯科用デモンストレーションキットが挙げられる。
複数の修復用人工歯同士の欠損部の形状が実質的に同一であるとは、前記したように、欠損部の形状及び大きさが体積比として、90~100%同一の範囲内であることを意味する。
修復用人工歯の欠損部の数は、補綴物が修復用人工歯の着脱部(W)対向する面で着脱部(Z)を介して凹凸嵌合できる限り限定されず、1個であってもよく、2個以上であってもよい。ある好適な実施形態においては、修復用人工歯の欠損部の数は1個である。
修復用人工歯の欠損部の数は、歯科用デモンストレーションキットに含まれる補綴物の数に応じて変更できる。
【0061】
修復用人工歯の欠損部の形状は目的に応じて適宜選択できるが、一般的な欠損部形態の分類であるI級~V級窩洞より選択されるものが好ましい。
図1に窩洞形態の分類を示す。
図1Aは、I級窩洞を有する修復用人工歯30を表す。
図1Bは、II級窩洞を有する修復用人工歯30を表す。
図1Cは、III級窩洞を有する修復用人工歯30を表す。
図1Dは、IV級窩洞を有する修復用人工歯30を表す。
図1Eは、V級窩洞を有する修復用人工歯30を表す。
ある好適な実施形態においては、欠損部は一般的な歯科の治療における治療を模擬する観点から、小窩裂溝に限局した欠損部若しくは歯の隣接面を含む欠損部であることが好ましく、前歯若しくは臼歯の隣接面を含む欠損部であることがより好ましく、II級窩洞であることがさらに好ましい。
【0062】
修復用人工歯における欠損部の形成位置、大きさ等は、目的に応じて適宜決定できる。
例えば、II級OD窩洞(Occlusal Distal cavity)においては、本発明の歯科用デモンストレーションキットの修復用人工歯を、底面(歯頚部側)を下にして水平面に上に置いた場合、修復用人工歯の咬合面を真上から見たときに、その中央又は略中央となる位置から、縦1~10mm、横1~10mm、及び深さ1~5mmの凹状になるように窩洞を形成することが好ましく、縦2~6mm、横2~6mm、及び深さ2~4mmの凹状になるように形成することがより好ましい。
また、II級MOD窩洞においては、本発明のデモンストレーションキットの修復用人工歯を、底面を下にして水平面に上に置いたときに、修復用人工歯の咬合面を真上から見たときに、辺縁部の側面から、その反対側の辺縁部の側面にかけて、縦10~15mm、横1~10mm、及び深さ1~5mmの凹状になるように形成することが好ましく、縦10~13mm、横2~6mm、及び深さ2~4mmの凹状になるように形成することがより好ましい。
【0063】
本発明の歯科用デモンストレーションキットに含まれる修復用人工歯の数は2個以上10個以下であることが好ましく、2個以上8個以下であることがより好ましく、さらに観察時の操作性が良い点及びそれぞれの補綴物の色の比較がしやすく、取り扱いが容易になる観点から、2個以上5個以下であることがさらに好ましい。
【0064】
修復用人工歯は、材料に特に制限はなく、各種歯科材料を用いることができる。
修復用人工歯の材料は、具体的には、各種レジン材料(齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、歯冠用コンポジットレジン等の歯科用コンポジットレジン;義歯床用レジン)、義歯床用裏装材、印象材、レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント等の合着用材料、歯牙裂溝封鎖材、歯科用ミルブランク、テンポラリークラウン、人工歯材料(例えば、長石、硅石、及び/又は粘土を原料とする陶歯(例えば、長石及び硅石を含む陶材からなる陶歯);合成樹脂を原料とするレジン歯(例えば、アクリル系レジン歯等);硬質合成樹脂を原料とする硬質レジン歯等)などを用いることができる。
修復用人工歯は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、硬質レジン歯(商品名「ジーシー ゼンオパール」、株式会社ジーシー製)等が挙げられる。
修復用人工歯が有する欠損部は、加工前の欠損部を有しない修復用人工歯を機械加工(切削加工、及び/又は研削加工等)することで作製できる。
機械加工の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。
機械加工には、市販の歯科用CAD/CAMマシン、研磨器材等を使用できる。
【0065】
<第1実施形態>
第1実施形態においては、効率の良い歯科用修復材料の色調の判断を可能とする点及び補綴物が色調適合性を有するか否かを判別できる点から、本発明のデモンストレーションキットに含まれる修復用人工歯のシェードは互いに異なる。
【0066】
本発明のデモンストレーションキットの第1実施形態において、1色の歯科用修復材料からなる補綴物1個と、2個以上の異なるシェードの修復用人工歯を含むことが好ましい。
これにより、1個の同じ補綴物を2個以上の異なるシェード(例えば、B1と、A3.5等)に嵌合することで、当該補綴物が色調適合性を有する場合は、いずれの修復用人工歯の着脱部(W)に嵌合した場合であっても補綴物の色調が修復用人工歯との境界部分で移行的に変化したように見え、色調適合性の有無を判断しやすいため、色調適合性の性能を視覚的により理解しやすくなる。
本発明のデモンストレーションキットにおいて、修復用人工歯における欠損部の形成位置、形状及び大きさ等は、修復用人工歯同士で同一であることが好ましい。
【0067】
第1実施形態においては、前記複数の修復用人工歯のシェードは、実際の歯科治療に用いられるVITA社製の「ビタ クラシカル シェードガイド」の色調を再現できる観点から、前記条件(i)を満たし、A1、A2、A3、A3.5、A4、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4、D2、D3、及びD4からなる群より選ばれる2種以上のシェードであることが好ましい。
【0068】
前記複数の修復用人工歯の観察時における配置の仕方には特に制限はなく、バラバラに配置してもよく、観察者の任意の並べ方で並べてもよく、一列に並べてもよい。
本発明のデモンストレーションキットは、陳列用プレート(平板)を含み、当該陳列用プレートの上に、上記のように修復用人工歯を配置することができる。
観察が容易になるという観点から、明度を高い方から低い方へ向かって並べた明度順列がB1→A1→B2→D2→A2→C1→C2→D4→A3→D3→B3→A3.5→B4→C3→A4→C4の順で選ばれ、一列に並べることが好ましい。
【0069】
<着脱部>
着脱部は、前記補綴物及び修復用人工歯がそれぞれ有する構造部である。
修復用人工歯の着脱部(W)は修復用人工歯の欠損部の表面であり、補綴物を着脱可能な部分である。着脱部(W)は、補綴物と凹凸嵌合できる限り特に限定されず、
図1Bの欠損部の壁面10を含むものであってもよい。
補綴物の着脱部(Z)は前記修復用人工歯に装着する際に、前記欠損部の表面と対向する面である。
【0070】
前記修復用人工歯の着脱部の形状には特に制限が無く、必要に応じて、所望の形状への切削、表面研磨を施してもよい。一般的な歯科の治療における齲蝕部分の切削を模擬できる観点から、カーバイドバーやダイヤモンドバーを用いた切削加工による形状であることが好ましい。
【0071】
前記補綴物の着脱部(Z)の形状及び大きさには特に制限が無く、修復用人工歯の欠損部に装着できるいう観点から、修復用人工歯の欠損部の形状及び大きさに対し、90~100%同一の範囲内にあることが好ましく、93~100%同一の範囲内にあることがより好ましく、95~100%同一の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0072】
前記補綴物と修復用人工歯の着脱は、着脱部同士が物理的嵌合、被接着性液体による表面張力、各種ワンタッチコネクター又はワンタッチジョイントで接着していることが好ましい。中でも、操作性が良く、補綴物の色の観察を妨げないことから、物理的嵌合、被接着性液体による表面張力による保持手段が特に好ましい。
【0073】
<修復サンプル>
修復サンプルは、修復用人工歯の欠損部(着脱部(W))に、前記着脱部(W)に対向する面において着脱部(Z)を介して補綴物を装着することで着脱可能な状態で作製される。
修復サンプル内部の補綴物の着脱部(Z)と修復用人工歯の着脱部(W)の隙間には、特に制限はないが、欠損部の底面の歯質色調を反映させ、色調適合性の観察により適していることから、塗布剤が存在することが好ましい。
【0074】
修復サンプル内部の補綴物の着脱部(Z)と修復用人工歯の着脱部(W)の隙間の形状及び厚さは、補綴物の着脱部(Z)の形状及び大きさと修復用人工歯の着脱部(W)の形状及び大きさに影響する因子である。
補綴物と修復用人工歯の準備の際に、予め補綴物と修復用人工歯の着脱部同士を装着させた際の隙間の形状及び厚さを測定しておくことで、後の間接修復における修復サンプル内の塗布剤の形状及び厚さとすることができる。
【0075】
修復サンプル内部の補綴物の着脱部と修復用人工歯の着脱部の隙間の形状及び厚さを測定するための手段として特に制限はなく、一般的な測定方法を用いてよい。中でも非侵襲的に内部構造を判断できることから、X線投影、光干渉断層影像法(OCT)、超音波検査、石膏などによる型取りなどが挙げられる。
【0076】
中でも本発明の塗布剤の形状及び厚さを正確に測定することができることから、石膏などによる型取りが好ましい。具体的には、補綴物と修復用人工歯の着脱部同士を装着させた際の隙間を石膏で十分に満たし、その石膏を取出し形状及び厚さを測定することで、この石膏の形状及び厚さを塗布剤の形状及び厚さとする。
本研究の修復サンプル内の塗布剤の平均厚さは、補綴物と修復用人工歯の着脱部同士を装着させた際の隙間の空間厚さに影響する因子であり、前記隙間の空間厚さとみなすことができる。
修復サンプル内の塗布剤の平均厚さは特に限定されるものではないが、修復用人工歯の欠損部の深さより厚くなることは無く、また、補綴物そのものの色調を確認するという観点から、0.001mm以上2mm以下であることが好ましく、0.005mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.01mm以上0.8mm以下であることがさらに好ましい。
修復サンプル内の塗布剤の平均厚さが2mmを超える場合、補綴物の色調よりも修復用人工歯の欠損部の底面の色調及び塗布剤の色調が優勢的に顕現してしまために、補綴物の色調の確認の観点から適さない。
修復サンプル内の塗布剤の平均厚さを、修復サンプル内部の補綴物の着脱部と修復用人工歯の着脱部の隙間の厚さとみなすことができる。
修復サンプル内の塗布剤の平均厚さの測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0077】
本発明のデモンストレーションキットは、前記着脱部(W)を有する修復用人工歯、及び前記着脱部(Z)を有する補綴物のみからなることが好ましいが、本発明の効果を妨げない限り塗布剤などを含んでいてもよい。
【0078】
<塗布剤>
ある実施形態においては、本発明の歯科用デモンストレーションキットは、修復用人工歯の色の反映が良くなることから、塗布剤が含むことが好ましい。
歯科用デモンストレーションキットが塗布剤を含む場合、補綴物の着脱部と塗布剤との間、かつ塗布剤と修復用人工歯の着脱部に空気を含まないように密着させることを目的とし、上記塗布剤を修復用人工歯の着脱部(W)及び/又は補綴物の着脱部(Z)に十分に塗布して、着脱部同士を装着させ、余剰の塗布剤の除去等を行った後、補綴物を観察するのが好ましい。
【0079】
前記塗布剤として特に制限はなく、一般的な材料を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
前記塗布剤は、欠損部の底面の歯質色調を反映させ観察に適していることから、透明度が高いことが好ましい。
前記塗布剤としては、具体的には水、色水、グリセリン、グリース、フッ素/シリコーンオイル離型剤、ノンシリコーンオイル離型剤、歯科用色調適合確認材料などを好ましく、審美性が高く、操作性も優れることから、不揮発性の溶剤であることがより好ましく、歯科用色調適合確認材料又は水であることがさらに好ましい。
【0080】
前記塗布剤として特に制限はなく、ある実施形態においては、重合性単量体、重合開始剤、及び充填材、さらに必要に応じて着色剤を含む歯科用硬化性組成物であってもよい。
塗布剤が重合性単量体を含む場合、前記塗布剤における重合開始剤の含有量は、1000質量ppm以下であることが好ましい。特に、補綴物と修復用人工歯を接着させてしまうと、取り外すことができず、色調適合性を評価できなくなることから、500質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
前記重合開始剤としては、有機過酸化物及び/又は無機過酸化物が挙げられる。
有機過酸化物としては、特に制限されることなく公知のものが挙げられる。代表的な有機過酸化物としては、ハイドロペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシド、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0082】
無機過酸化物としては、特に制限されることなく公知のものが挙げられる。代表的な無機過酸化物としてペルオキソ二硫酸塩及びペルオキソ二リン酸塩などが挙げられる。具体例としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アルミニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが挙げられる
【0083】
前記塗布剤として特に制限はないが、塗布剤が重合性単量体を含む場合、塗布剤における重合性単量体の含有量は、10000質量ppm以下であることが好ましい。特に、補綴物と修復用人工歯の着脱部を接着させてしまうと、取り外すことができず、色調適合性を評価できなくなることから、1000質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることがさらに好ましい。
【0084】
前記重合性単量体としては、特に制限されることなく公知のものが挙げられる。歯科用硬化性組成物に使用される重合性単量体として公知のものが挙げられ、特にラジカル重合性単量体が挙げられる。
【0085】
前記塗布剤として特に制限はないが、塗布剤が重合性単量体及び重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量が1000質量ppm以下であり、かつ重合性単量体の含有量が10000質量ppm以下であることが好ましい。
特に、補綴物と修復用人工歯の着脱部を接着させてしまうと、取り外すことができず、色調適合性を評価できなくなることから、重合開始剤の含有量が500質量ppm以下であり、かつ重合性単量体の含有量が1000質量ppm以下であることがより好ましく、重合開始剤の含有量が100質量ppm以下であり、かつ重合性単量体の含有量が100質量ppm以下であることがさらに好ましい。
【0086】
前記塗布剤の厚さ1.0mmにおける透明度ΔLには特に制限はないが、修復用人工歯の欠損部の底面を反映しやすくなることから、10以上60以下であることが好ましく、11以上58以下であることがより好ましく、12以上55以下であることがさらに好ましい。
透明度ΔLは、厚さ1.0mmの塗布剤層を形成し、当該塗布剤層の後ろ(下)に標準白色板を置いて測定したL*a*b*表色系における明度(L*/w)と、前記塗布剤層の後ろ(下)に標準黒色板を置いて測定したL*a*b*表色系における明度(L*/b)との差(絶対値)として算出できる。
透明度ΔLの測定方法は、具体的には、後記する実施例に記載のとおりである。
【0087】
本発明のデモンストレーションキットにおいて、塗布剤は任意成分である。
ある実施形態としては、塗布剤を含まないデモンストレーションキットが挙げられる。
本発明のデモンストレーションキットが塗布剤を含まないことによって、塗布剤を塗布する操作が不要になり、より簡便に色の評価を行うことができる。
【0088】
前記塗布剤である歯科用色調適合確認材料は、特に制限はなく、公知の組成からなるものを用いてもよく、公知の製造方法で作製してもよく、市販品を用いてもよい。
公知の歯科用色調適合確認材料としては、例えば、特開2007-137851号公報、特開2010-143851号公報、特開2011-132185号公報等に記載の組成のものが利用できる。
市販品としては、「パナビア(登録商標)V5 トライインペースト」シリーズ(クラレノリタケデンタル株式会社製)等が挙げられる。
歯科用色調適合確認材料としては、例えば、歯科用色調適合確認材料の組成は主成分である多価アルコール(例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等)と、充填材、及び着色剤を含むものが挙げられる。
これらの成分の含有量は、歯科用色調適合確認材料としての効果が得られる範囲内であれば特に限定されない。
【0089】
歯科用色調適合確認材料の充填材の種類は特に限定されず、公知の無機充填材及び/又は有機充填材を用いることができる。
【0090】
歯科用色調適合確認材料の無機充填材としては、二酸化ケイ素(石英、ガラス、シリカなど)、アルミナ、セラミックス類、珪藻土、カオリン、モンモリロナイト等の粘土鉱物、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウムが挙げられる。中でも、コロイドシリカ、アルミナが好ましい。
コロイドシリカとしては、特に日本アエロジル株式会社の商品名「アエロジル(登録商標)」に代表される、噴霧熱分解法によって得られた粒子径の小さいシリカ;湿式法によって得られたシリカゾル;及びゾルゲル法で得られた単分散シリカが好ましい。
なお、前記充填材の少なくとも一部として、酸化チタン、ベンガラ等の無機顔料を用いてもよい。
【0091】
歯科用色調適合確認材料の有機充填材としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムが挙げられる。
【0092】
歯科用色調適合確認材料の無機充填材は、シランカップリング剤等の公知のシラン化合物で予め表面処理してから用いた場合、グリセリンとの親和性を調整でき、歯科材料としての取り扱い性に優れた組成物を得ることができる。
シラン化合物としては、公知のシラン化合物を制限なく使用できる。
【0093】
歯科用色調適合確認材料の着色剤としては特に制限はなく、目的とする歯科用色調適合確認材料の色調に応じて無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでも制限なく用いることができる。
【0094】
本発明に係る歯科用色調適合確認材料の製造方法には特に制限はなく、公知の製造方法で作製してよい。具体的には、各成分を所定の含有量で配合し、混合することにより得ることができる。この際の配合順序に特に制限はなく、各成分を一括して配合してもよく、2回以上に分けて配合してもよい。
また、必要に応じて混合ないし練合してもよく、又は真空脱泡処理等の脱泡処理を施したりしてもよい。得られた歯科用硬化性組成物は、単一の容器(シリンジ等)に充填するなどして、1材型(1ペースト型)の歯科用色調適合確認材料とすることができる。
【0095】
歯科用色調適合確認材料の厚さ1.0mmのL*a*b*表色系には特に制限はなく、いずれの値でもよい。
観察時において、より天然歯の色調を再現でき、色調適合性の評価をよりしやすくできることから、L*/w=70.0~110.0、a*/w=-5.0~15.0、及びb*/w=-5.0~40.0の範囲内にあることが好ましく、L*/w=73.0~100.0、a*/w=-4.5~14.0、及びb*/w=0.0~37.0の範囲内にあることがより好ましく、より天然歯の色調を高度に再現できることから、L*/w=75.0~90.0、a*/w=-4.0~13.0、及びb*/w=5.0~35.0の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0096】
本発明の他の実施形態としては、歯科用修復材料の色の評価方法であって、
前記したいずれかの歯科用デモンストレーションキットにおいて、
第1修復用人工歯が有する着脱部(W-1)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第1修復サンプルを作製する工程、
第1修復サンプルから、前記補綴物を取り外す工程、
第2修復用人工歯が有する着脱部(W-2)と、前記補綴物が有する着脱部(Z)とを嵌合して第2修復サンプルを作製する工程、及び
第1修復サンプルの色と、第2修復サンプルの色とを比較する工程を含み、
歯科用修復材料の色の評価方法が挙げられる。
【0097】
前記歯科用修復材料の色の評価方法において、歯科用修復材料の色調適合性の有無を評価する点からは、2個以上の前記修復用人工歯が、互いに異なるシェードを有することが好ましい。
前記歯科用修復材料の色の評価方法によって、歯科用修復材料が色調適合性を有するか否かを簡便に評価することができる。
【0098】
前記歯科用修復材料の色の評価方法において、着脱部(W-1)と着脱部(Z)とを、及び/又は、着脱部(W-2)と着脱部(Z)とを塗布剤を介して嵌合させてもよい。塗布剤の塗布方法は特に限定されない。
前記歯科用修復材料の色の評価方法において、修復用人工歯の数は2個以上10個以下であることが好ましく、2個以上8個以下であることがより好ましく、さらに観察時の操作性が良い点及びそれぞれの補綴物の色の比較がしやすく、取り扱いが容易になる観点から、2個以上5個以下であることがさらに好ましい。
また、前記歯科用修復材料の色の評価方法において、補綴物の数は1個以上10個以下であることが好ましく、1個以上8個以下であることがより好ましく、さらに観察時の操作性が良い点及びそれぞれの補綴物の色の比較がしやすく、色調適合性の有無の評価が容易になる観点から、1個以上5個以下であることがさらに好ましい。
ある好適な実施形態において、歯科用デモンストレーションキットが1個の補綴物を含む、歯科用修復材料の色の評価方法が挙げられる。
【0099】
第1修復サンプルの色と、第2修復サンプルの色とを比較する工程において、色の比較の方法は、特に限定されず、目視で行ってもよく、第1修復サンプルと第2修復サンプルの色を測色計で測定して比較してもよい。
色の測定には、公知の測定装置(例えば、分光色彩計、分光色差計等)を用いて測定してもよい。
また、色の比較の方法は、第1修復サンプルと第2修復サンプルを同じ基準で比較できる限り特に限定されず、分光測色方法、刺激値直読方法のいずれであってもよい。
例えば、歯科用測色装置(商品名「Crystaleye(クリスタルアイ)」、オリンパス株式会社製)にて、L*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013 測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間)による(L*,a*,b*)として、欠損部を形成する前の元の修復用人工歯の色味(明度、彩度等)と、欠損部を形成した修復用人工歯に色調適合性を有する補綴物を嵌合させた色味(明度、彩度等)とを測定し、測定結果から色差(ΔE)を算出することができる。当該差から、補綴物の色調適合性の有無を評価することもできる。
【0100】
<第2実施形態>
第2実施形態において、本発明のデモンストレーションキットは、シェードが同一である修復用人工歯を2個以上含み、かつ異なる色調を有する補綴物を2個以上含む。
第2実施形態において、色調適合性を強調しやすくなる点から、補綴物は、色調適合性を有する歯科用修復材料からなる補綴物と、色調適合性を有さない歯科用修復材料からなる補綴物を、それぞれ1個以上含むことが好ましい。
第2実施形態によって、色調適合性を有さない歯科用修復材料からなる補綴物を用いて色調適合性がないことを示すことで、色調適合性を有する歯科用修復材料の色調適合性をより強調しやすくなる。
色調適合性を有する歯科用修復材料からなる補綴物と、色調適合性を有さない歯科用修復材料からなる補綴物を、シェードが同一である修復用人工歯にそれぞれ嵌合して修復サンプルを作製することによって、見え方が全く異なり、色調が移行的になっている物が色調適合性を有するものとわかり、色調適合性の有無による相違を強調しやすくなる。
第2実施形態において、前記したように、修復サンプルを作製した際に、視覚的に、色調適合性の有無による相違を理解しやすくなるため、2個以上の修復用人工歯が有する欠損部は、形成位置、形状及び大きさ等において同一であるものが好ましい。
一方、第2実施形態において、色調適合性は欠損部の形状に依存するものではないことを示す点から、修復用人工歯が有する欠損部の形状は異なっていてもよい。
その他、特に記載される場合を除いて、第1実施形態に説明したものと同様である。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態において、本発明のデモンストレーションキットは、2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ前記キットが、同一の色調を有する補綴物を2個以上含む。
本発明のデモンストレーションキットの第3実施形態において、1色の歯科用修復材料からなる補綴物を2個以上と、同一のシェードを有する2個以上の修復用人工歯が異なる欠損部の形状を有することが好ましい。
同一のシェードを有する歯科修復用材料から、それぞれ異なる欠損部に対応した補綴物を作製する。例えば、同一のシェードを有し、欠損部が異なる2個の修復用人工歯を用いる場合、それぞれの修復用人工歯の欠損部に嵌合可能な形状を有するように対応した補綴物を2種類作製する。得られた補綴物をそれぞれ修復用人工歯の欠損部に嵌合させることができ、色調適合性は欠損部の形状に依存するものではないこと、すなわち、欠損部の形状が異なる場合にも色が変化したように見えることを視覚的に説明できる。
第3実施形態において、色調適合性を強調する効果が得られる点から、2個以上の修復用人工歯が有する欠損部の形状は異なっていてもよい。
その他、特に記載される場合を除いて、第1実施形態に説明したものと同様である。
【0102】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成の一部又は全部を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例0103】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0104】
(重合性単量体(A))
UDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)
【0105】
(重合開始剤(B))
THP:1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロペルオキシド(日油株式会社製)
【0106】
(無機充填材(C))
無機充填材(C)としては、下記の製造例で得られたものを用いた。
【0107】
[無機充填材(c-1)の製造]
市販のバリウムガラス(GM27884 UF2.0、ショット社製、平均粒子径:2.0μm、屈折率:1.53)100質量部、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)1.2質量部、酢酸0.15質量部、蒸留水5質量部、及びエタノール170質量部を三口フラスコに入れ、1時間、室温下で撹拌した。エタノールを減圧下で留去した後、40℃で16時間真空乾燥を行い、さらに90℃で3時間加熱し、表面処理層が設けられた無機充填材(c-1)を得た。
【0108】
(着色剤(D))
酸化チタン、鉄黒(黒酸化鉄)、黄酸化鉄、ベンガラ
【0109】
(モノマー組成物)
〔モノマー組成物(m-1)の製造〕
重合性単量体(A)として60質量部のUMDA及び40質量部の3Gと、重合開始剤(B)としてTHP1質量部を準備し、UMDAと3Gとの混合物にTHPを溶解させて、モノマー組成物(m-1)を調製した。
【0110】
(歯科用修復材料)
歯科用修復材料として、下記製造例で得られた歯科用ミルブランク(U-1)を用いた。また、歯科用修復材料として、市販品のレジンブロック、又は歯科用コンポジットレジンをそのまま用いた。
【0111】
[歯科用ミルブランク(U-1)の製造例]
歯科用ミルブランクは、表1に記載された材料及び割合にて、これらを常温(23℃)及び暗所で混合練和し、均一にしたものを真空脱泡することにより、歯科用硬化性組成物を調製した。
歯科用硬化性組成物を内寸が15mm×15mm、深さが20mmの直方体状の凹型容器に充填し、オートクレーブが有するチャンバー内に固定し、濃度99.9%の窒素ガスを0.15MPaで12回置換し、次いで窒素ガスで0.4MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時にチャンバー内を130℃まで昇温させた。その後、130℃で60分間保持して重合硬化させることで歯科用ミルブランク(U-1)を得た。
【0112】
【0113】
[市販品]
・歯科用ミルブランク(商品名「カタナ(登録商標)アベンシア(登録商標)ブロック2」、A2LT、14Lサイズ、クラレノリタケデンタル株式会社製、L*/w=79.72、a*/w=1.67、b*/w=26.64、ΔL=14.11)
・歯科用コンポジットレジン1(商品名「クリアフィル(登録商標) マジェスティ(登録商標) ES-2 Universal」、L*/w=84.36、a*/w=2.21、b*/w=22.76、ΔL=18.34、クラレノリタケデンタル株式会社製)
・歯科用コンポジットレジン2(商品名「クリアフィル(登録商標) マジェスティ(登録商標) ES-2 A2」、L*/w=85.15、a*/w=1.93、b*/w=24.40、ΔL=16.37、クラレノリタケデンタル株式会社製)
これらの測定結果は、後記する[明度(L*/w)、色度指数(a*/w、b*/w)、透明度(ΔL*)の算出]に記載の方法で測定した値である。
【0114】
(塗布剤)
塗布剤としては、下記製造例で得られた歯科用色調適合確認材料(t-1)を用いた。また、市販品の歯科用色調適合確認材料をそのまま用いた。
【0115】
[歯科用色調適合確認材料(t-1)の製造例]
歯科用色調適合確認材料(商品名「パナビア(登録商標)V5 トライインペースト(クリア)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)と、日本薬局方濃グリセリン(花王株式会社製)を1:2の割合で混合練和し、均一にしたものを真空脱泡することにより、歯科用色調適合確認材料(t-1)を得た。
【0116】
[市販品の歯科用色調適合確認材料]
t-CL:(商品名「パナビア(登録商標) V5 トライインペースト(クリア)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)
t-UN:(商品名「パナビア(登録商標) V5 トライインペースト(ユニバーサル)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)
t-BR:(商品名「パナビア(登録商標) V5 トライインペースト(ブラウン)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)
t-BL:(商品名「パナビア(登録商標) V5 トライインペースト(ブリーチ)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)
【0117】
[明度(L*/w)、色度指数(a*/w、b*/w)、透明度(ΔL*)の算出]
塗布剤及び歯科用修復材料の明度及び色度は、分光反射率の比で使用した上記の分光色差計(SE6000、日本電色工業株式会社製、光源:D65/2、測定窓:φ6mm)を用いて評価した。
(1)塗布剤
塗布剤については、以下のように評価した。
具体的には、丸型カバーガラスの上に厚さ1.0mmの丸型スペーサーを置き、塗布剤を適量のせ、塗布剤の上に丸型カバーガラスを置き、押さえた。塗布剤をはさんだ丸型カバーガラスの背後に標準白色板を置いた。その状態で中心の、L*a*b*表色系における明度(L*/w)、及び色度指数(a*/w、b*/w)を測定した(n=1)。
次に、塗布剤をはさんだ丸型カバーガラスの背後に標準黒色板を置いた状態で、L*a*b*表色系における明度(L*/b)を測定した(n=1)。
得られたL*/wとL*/bの差から透明度(ΔL*)を算出した。
(2)歯科用ミルブランク
歯科用ミルブランクは、厚さが1mmになるように削り出し、両面を鏡面仕上げで研磨し、この硬化物を上記と同様に明度、色度指数と透明度を測定した。測定結果を表1の諸物性に示す。
(3)歯科用コンポジットレジン
歯科用コンポジットレジンは、ステンレス製の金型(φ10mm×厚さ1mm)に充填し、上下をカバーガラスで挟み、圧接した状態で、LED光重合器(αライトV、株式会社モリタ製作所製、ピーク波長:(紫)400~408nm、(青)465~475nm)で片面を45秒ずつ、両面に光を照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出し、硬化物を上記と同様に明度、色度指数と透明度を測定した。歯科用コンポジットレジン1及び歯科用コンポジットレジン1の測定結果は、上記したとおりである。
【0118】
[補綴物と修復用人工歯との間の塗布剤の平均厚さの測定]
補綴物と修復用人工歯との間の塗布剤の平均厚さは、修復用人工歯の着脱部と補綴物の着脱部の空間に石膏を流し込み、その石膏の型の大きさを測定することで求めた。
具体的には、修復用人工歯の着脱部に、歯科用超硬質石膏(商品名「Mロック ピーチ」、株式会社モリタ製)を塗布し、補綴物を装着させ、余剰の石膏は拭き取り、1時間静置させた。
その後、補綴物を脱着し、固まった石膏を取り出した。この石膏の厚さをマイクロメーター(商品名「デジマチックポイントマイクロメーター」、先端角:15°、ミツトヨ株式会社)で無作為に10箇所を測定し、その平均値を補綴物と修復用人工歯との間の塗布剤の平均厚さとした。前記塗布剤の平均厚さは、補綴物と修復用人工歯の着脱部同士を装着させた際の隙間の空間厚さ(補綴物と修復用人工歯との最短距離)とみなすことができる。
【0119】
各実施例及び比較例で得られたキットを用いて、下記の試験X及び試験Yを行った。結果を表2~4に示す。
[試験X]
修復用人工歯の欠損部に装着された補綴物の色調と、修復用人工歯の色調との違い(色差)を目視にて確認した。
歯科医療従事者10人にこの色差を確認してもらい、「補綴物とそれぞれの修復用人工歯の境界部の色調が移行的に変化していたか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[X-1:色調が移行的に変化していたもしくは変化していなかったことを判断できた。]
[X-2:色調が移行的に変化しているかどうか判断ができなかった。]
【0120】
上記評価項目について、色調の移行的変化の有無が判断できた[X-1]と回答した人が、6/10以上であることが好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
【0121】
[試験Y]
修復用人工歯に補綴物を取り付けた状態(修復サンプルの状態)での補綴物の色調と、取り外したときの黒色机上での補綴物の色調とを比較したときの色調の違い(色差)を目視にて確認した。
歯科医療従事者10人にこのときの色差を確認してもらい、「補綴物がそれぞれの修復用人工歯内での色と机上での色が変化し、幅広い色調に親和する色調であるか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[Y-1:幅広い色調に親和する色調であったもしくは親和する色調ではなかったことが判断できた。]
[Y-2:幅広い色調に親和する色調であるかどうか判断ができなかった。]
上記評価項目について、幅広い色調に親和する色調の有無が判断できた[Y-1]と回答した人が、6/10以上であることが好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
【0122】
[デモンストレーションキットとしての評価]
上記[試験X]及び[試験Y]の評価結果から、X-2、Y-2を選択する人数に応じて下記の指標で判断した。
A:X-2及びY-2を選択した人数がいずれも2以下である。
B:A及びC以外
C:X-2及びY-2を選択したいずれかの人数が5以上である;又は、各修復用人工歯の着脱部に嵌合不可或いは各修復用人工歯の着脱部から取り外し不可のため、評価不可能である。
上記判断結果について、デモンストレーションキットとしては、効率の良い歯科用修復材料の色調の判断(既知の色調適合性の強調、及び/又は色調適合性の有無の評価を含む)を可能とする点から、「A」もしくは「B」であることが好ましく、「A」であることがより好ましい。
【0123】
[実施例1]
修復用人工歯としてシェードB1及びA3.5の硬質レジン歯(商品名「ジーシー ゼンオパール」、6番臼歯(サイズ:下顎1形態・4サイズ、PL16)、株式会社ジーシー製)を用いて、それぞれ欠損部の大きさ及び形成位置が同一の縦4.0mm×横6.0mm×深さ3.0mmのII級OD窩洞を形成し、着脱部を作製した。
前記窩洞が形成されたB1及びA3.5の修復用人工歯の着脱部に対し嵌め込めるように、歯科用CAD/CAMマシン(商品名「DWX―51D」、ローランド ディー.ジー.株式会社製)を用いて歯科用ミルブランク(U-1)から、シェードB1及びA3.5の着脱部に嵌合可能な着脱部を有するB1用補綴物(B1-U1-1)及びA3.5用補綴物(A3.5-U1-1)をそれぞれ作製した。
これらの補綴物を歯科技工用電動式ハンドピース(商品名「マキシマ80」、アルゴファイルジャパン株式会社製)を使用し、歯科用研削器材(商品名「松風カーボランダムポイント HP」、型:11、株式会社松風製)を用いてスプルーを切断し、歯科用研削器材(商品名「松風カーボランダムポイント HP」、型:13、株式会社松風製)を用いてスプルー痕をならした。
さらに補綴物の着脱部の形態を修正し、次いで、咬合面を研磨した。咬合面の研磨は、以下の方法で行った。
歯科用ゴム製研磨材(商品名「EVE ユニバーサル ホワイト」、品番:H4、サンデンタル株式会社製)を用いて咬合面を研磨し、当該歯科用ゴム製研磨材から、歯科用研磨器材(商品名「アボットロビンソン ブリストルブラシ No.11ソフト」、バッファローデンタルマニュファクチュアリング社(US)製)に付け替えて、ブラシの先に歯科用研磨材(商品名「ポーセニイハイドン」、株式会社東京歯材社製)の研磨粒子を塗布し、当該研磨粒子が付いたブラシで研磨し、艶出しを行った。
以上のようにして、歯科用デモンストレーションキットを製造した。
次に、シェードB1の修復用人工歯の着脱部に歯科用色調適合確認材料(商品名「パナビア(登録商標)V5 トライインペースト(クリア)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を塗布し、B1用補綴物を取り付けて第1修復サンプルを作製した。着脱部から溢れた余剰の歯科用色調適合確認材料は拭き取った。
第1修復サンプルについて、B1用補綴物を修復用人工歯に取り付ける前のII級OD窩洞を有する修復用人工歯の写真と、B1用補綴物の写真とを、それぞれ
図3Aと、
図3Bに示す。
図4は、B1用補綴物を修復用人工歯に取り付けた後の第1修復サンプルの写真を表す。
続いて、A3.5の修復用人工歯の着脱部に歯科用色調適合確認材料(商品名「パナビア(登録商標)V5 トライインペースト(ユニバーサル)」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を塗布し、A3.5用補綴物を取り付けて第2修復サンプルを作製した。
そして、作製した各補綴物及び修復用人工歯を用いて上記試験X及びYを行った。
【0124】
[実施例2]
歯科用修復材料として実施例1と同様の方法で、歯科用ミルブランク(U-1)からB1用補綴物兼A3.5用補綴物(B1兼A3.5)として、補綴物を作製した。
補綴物をB1用補綴物兼A3.5用補綴物(B1兼A3.5)に変更した以外は実施例1と同様の方法で歯科用デモンストレーションキットの作製を行い、試験X及びYを実施した。
具体的には、シェードB1の修復用人工歯の着脱部に表1に記載の歯科用色調適合確認材料を塗布し、B1用補綴物兼A3.5用補綴物を取り付けて第1修復サンプルを作製した。着脱部から溢れた余剰の歯科用色調適合確認材料は拭き取った。
続いて、B1用補綴物兼A3.5用補綴物を取り外し、当該補綴物を水洗し、A3.5の修復用人工歯の着脱部に表1に記載の歯科用色調適合確認材料を塗布し、B1用補綴物兼A3.5用補綴物を取り付けて第2修復サンプルを作製した。
作製した各補綴物及び修復用人工歯を用いて上記試験X及びYを行った。
【0125】
[実施例3]
修復用人工歯の欠損部をそれぞれII級OD窩洞からI級窩洞(位置:中央、直径:4mm、深さ:3mm)に変更し、補綴物を前記窩洞が形成されたB1及びA3.5の修復用人工歯の着脱部に対し嵌め込めるように作製した、シェードB1及びA3.5の着脱部に嵌合可能な着脱部を有するB1用補綴物(B1-U1-2)及びA3.5用補綴物(A3.5-U1-2)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0126】
[実施例4]
歯科用色調適合確認材料を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0127】
[実施例5]
歯科用色調適合確認材料を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0128】
[実施例6]
実施例1で用いたB1用補綴物である(B1-U1-1)を下記補綴物(B1-U1-3)に変更し、A3.5用補綴物である(A3.5-U1-1)を下記補綴物(A3.5-U1-3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。
補綴物(B1-U-3)は、補綴物(B1-U1-1)の着脱面を歯科技工用電動式ハンドピース(商品名「マキシマ80」、アルゴファイルジャパン株式会社製)を使用し、歯科用研削器材(商品名「松風カーボランダムポイント HP」、型:11、株式会社松風製)を用いて切削範囲を目視で厚さ方向に約0.5~1.0mmの範囲で切削することで作製した。
補綴物(A3.5-U1-3)も同様に補綴物(A3.5-U1-1)の着脱面を切削することで作製した。
得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを行った。
【0129】
[実施例7]
修復サンプルにおける塗布剤層の厚さを変える目的で、補綴物の着脱部(修復用人工歯の欠損部に対向する面)の全面について切削範囲を目視で厚さ方向に約1.0~1.5mmで切削したこと以外は実施例6と同様の方法で、B1用補綴物(B1-U1-4)及びA3.5用補綴物(A3.5-U1-4)を作製した。
補綴物をこれらに変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを行った。
【0130】
[実施例8]
歯科用色調適合確認材料を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0131】
[実施例9]
歯科用色調適合確認材料を水に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0132】
[実施例10]
歯科用色調適合確認材料を用いなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0133】
[実施例11]
歯科用修復材料について、歯科用ミルブランク(U-1)を表3に記載の歯科用修復材料に変更し、かつ補綴物を補綴物(B1-Ave-A2)及び補綴物(A3.5-Ave-A2)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
補綴物(B1-Ave-A2)及び補綴物(A3.5-Ave-A2)は、歯科用ミルブランク(U-1)を表3に記載の歯科用修復材料に変更する以外は、実施例と同様の方法で作製した。
【0134】
[実施例12]
歯科用修復材料を歯科用コンポジットレジン1に変更し、補綴物をB1用補綴物(B1-ES2-1)及びA3.5用補綴物(A3.5-ES2-1)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットの作製を行い、試験X及びYを実施した。
具体的には欠損部が形成されたシェードB1及びA3.5の修復用人工歯の欠損部に高真空用グリース(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製)を塗り、歯科用コンポジットレジン1をそれぞれ築盛し、事前にシリコーン印象材(メモジル(登録商標)2、クルツァージャパン製)で作製した修復用人工歯の鋳型で押さえつけることにより、修復用人工歯の表面形状を賦形し、歯科用可視光線照射器(商品名「ペンキュアー2000」、株式会社モリタ製作所製)で10秒照射し、さらに鋳型を外して10秒照射した。その後充填した歯科用コンポジットレジン1を取り出し、修復用人工歯と硬化物を水洗し、硬化物を実施例1と同様に研磨し、艶出しを行い、歯科用デモンストレーションキットを作製した。
実施例1と同様の方法で歯科用デモンストレーションキットの作製を行い、上記試験X及びYを実施した。
【0135】
[実施例13]
歯科用修復材料を表4に記載のものに変更し、補綴物をB1用補綴物(B1-ES2-A2)及びA3.5用補綴物(A3.5-ES2-A2)に変更した以外は、実施例12と同様の方法で歯科用デモンストレーションキットの作製を行い、上記試験X及びYを実施した。
【0136】
[実施例14]
歯科用色調適合確認材料を用いなかったこと以外は、実施例12と同様の方法で歯科用デモンストレーションキットの作製を行い、上記試験X及びYを実施した。
【0137】
[実施例15]
シェードA3.5の修復用人工歯について、欠損部としてOD窩洞からII級MOD窩洞(位置:中央、縦4.0mm×横11.0mm×深さ3.0mm)を有するものに変更し、1個の補綴物を当該修復用人工歯に対応するA3.5用補綴物(A3.5-U1-3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。
前記A3.5用補綴物(A3.5-U1-3)は、前記II級MOD窩洞が形成されたA3.5の修復用人工歯の着脱部に対し嵌め込めるように作製した。
得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0138】
[実施例16]
シェードA3.5の修復用人工歯を、シェードB1の修復用人工歯に変更し、当該シェードB1の修復用人工歯の欠損部をII級MOD窩洞(位置:中央、縦4.0mm×横11.0mm×深さ3.0mm)に変更し、1個の補綴物を当該修復用人工歯に対応するB1用補綴物(B1-U1-3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。
前記B1用補綴物(B1-U1-3)は、前記II級MOD窩洞が形成されたB1の修復用人工歯の着脱部に対し嵌め込めるように作製した。
得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0139】
[実施例17]
シェードA3.5の修復用人工歯を、シェードB1の修復用人工歯に変更し、A3.5用補綴物(A3.5-U1-1)を実施例11で用いたB1用補綴物(B1-Ave-A2)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、歯科用デモンストレーションキットを作製した。
得られた歯科用デモンストレーションキットを用いて、上記試験X及びYを実施した。
【0140】
[比較例1]
歯科用デモンストレーションキットにおいて、修復用人工歯の代わりにシェードガイド(商品名「ビタ クラシカル シェードガイド」、シェード:B1/A3.5、VITA社製)を用いた以外は、実施例1と同様の補綴物を準備し、以下の試験を行った。
まず、B1シェードガイドの歯面の上にB1用補綴物(B1-U1-1)を静置させ、それぞれの色を見比べ補綴物の色調とシェードガイドの色調の違い(色差)を目視にて確認した。その後、A3.5シェードガイドとA3.5用補綴物(A3.5-U1-1)についても同様に色調の違い(色差)を目視にて確認した。
歯科医療従事者10人にこの色差を確認してもらい、「補綴物とそれぞれのシェードガイドの境界部の色調が移行的に変化していたか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[X-1:色調が移行的に変化していたもしくは変化していなかったことを判断できた。]
[X-2:色調が移行的に変化しているかどうか判断ができなかった。]
【0141】
上記評価項目について、色調の移行的変化の有無が判断できた[X-1]と回答した人が、6/10以上であることが好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
比較例1では、修復用人工歯を用いていないため、上記評価を実施例における試験X相当の評価とした。
次に、B1シェードガイドの咬合面の上にB1用補綴物(B1-U-1)を静置させ、それぞれの色を見比べた。その後、B1シェードガイドとB1用補綴物(B1-U-1)を黒色机上に並べ、それぞれの色を見比べた。そして、シェードガイドの咬合面の上に補綴物を静置させた状態での補綴物の色調と、黒色机上で並べた際の補綴物の色調を比較したときの違い(色差)を確認した。その後、A3.5シェードガイドとA3.5用補綴物(A3.5-U-1)についても同様に色調の違い(色差)を目視にて確認した。
歯科医療従事者10人にこのときの色差を確認してもらい、「補綴物がそれぞれのシェードガイドに隣接した状態の色と机上での色とで色が変化し、幅広い色調に親和する色調であるか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[Y-1:幅広い色調に親和する色調であったもしくは親和する色調ではなかったことが判断できた。]
[Y-2:幅広い色調に親和する色調であるかどうか判断ができなかった。]
【0142】
上記評価項目について、幅広い色調に親和する色調の有無が判断できた[Y-1]と回答した人が、6/10以上であることが好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
比較例1では、着脱部を有していないために、修復用人工歯と補綴物を着脱することができないために、上記評価を実施例における試験Y相当の評価とした。デモンストレーションキットとしての評価は実施例1と同様に行った。
【0143】
[比較例2]
実施例1と同様に、シェードB1及びA3.5の修復用人工歯をそれぞれ作製した。
歯科用エッチング材(商品名「K エッチャント GEL」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を用い、事業者推奨の方法にて修復用人工歯の欠損部にエッチング処理を行った。
続いて歯科用接着材(商品名「クリアフィル(登録商標)ユニバーサルボンド Quick ER」、クラレノリタケデンタル株式会社製)を用いて、事業者推奨の方法にてそれぞれの欠損部にボンディング処理を行い、歯科用可視光線照射器(商品名「ペンキュアー2000」、株式会社モリタ製)を用いて、ノーマルモードで10秒照射した。その後、欠損部に歯科用コンポジットレジン1をそれぞれ築盛し、事前にシリコーン印象材(メモジル(登録商標)2、クルツァージャパン製)で作製した修復用人工歯の鋳型で押さえつけることにより、修復用人工歯の表面形状を賦形し、歯科用可視光線照射器(商品名「ペンキュアー2000」、株式会社モリタ製作所製)で10秒照射し、さらに鋳型を外して10秒照射し、硬化物を得た。
得られた硬化物を実施例1と同様に研磨し、艶出しを行い、修復用人工歯と補綴物が一体化したB1用修復サンプルとA3.5用修復サンプルを作製した。
そして、実施例1と同様に、試験Xを実施した。その後、B1用サンプル内の補綴物と同一形状の補綴物を作製し、それを黒色机上で並べた際の補綴物の色調を確認し、その色調とB1用サンプル内の補綴物の色調を比較したときの違い(色差)を確認した。
歯科医療従事者10人にこのときの色差を確認してもらい、試験Yに対する項目「補綴物がそれぞれの修復用人工歯内での色と机上での色が変化し、幅広い色調に親和する色調であるか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[Y-1:幅広い色調に親和する色調であったもしくは親和する色調ではなかったことが判断できた。]
[Y-2:幅広い色調に親和する色調であるかどうか判断ができなかった。]
【0144】
上記評価項目について、幅広い色調に親和する色調の有無が判断できた[Y-1]と回答した人が6/10以上であることが好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
特許文献1に相当する比較例2では、修復用人工歯と補綴物を着脱することができず、試験Yの評価ができないため、上記評価を実施例1における試験Y相当の評価として実施例と比較した。デモンストレーションキットとしての評価は実施例1と同様に行った。
【0145】
[比較例3]
修復用人工歯としてシェードB1及びA3.5の硬質レジン歯(商品名「ジーシー ゼンオパール」、6番臼歯(サイズ:下顎1形態・4サイズ、PL16)、株式会社ジーシー製)をそのまま用いた。
歯科用CAD/CAMマシン(商品名「DWX―51D」、ローランド ディー.ジー.株式会社製)を用いて歯科用ミルブランク(U-1)から、縦4.0mm×横6.0mm×深さ3.0mmの直方体の形をしたB1用補綴物(B1-U-r)及びA3.5用補綴物(A3.5-U-r)をそれぞれ作製した。
まず、B1修復用人工歯の咬合面の上にB1用補綴物を静置させ、それぞれの色を見比べ、補綴物の色調と修復用人工歯の色調の違い(色差)を目視にて確認した。その後、A3.5修復用人工歯とA3.5用補綴物についても同様に色調の違い(色差)を目視にて確認した。
歯科医療従事者10人にこの色差を確認してもらい、「補綴物とそれぞれの修復用人工歯の境界部の色調が移行的に変化していたか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[X-1:色調が移行的に変化していたもしくは変化していなかったことを判断できた。]
[X-2:色調が移行的に変化しているかどうか判断ができなかった。]
【0146】
上記評価項目について、色調の移行的変化の有無が判断できた[X-1]と回答した人が6/10以上であることが色調を判断するキットとして好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
比較例3では、修復用人工歯と補綴物が着脱部を有していないため、上記評価を実施例1における試験X相当の評価とした。
【0147】
次に、B1修復用人工歯の咬合面の上にB1用補綴物を静置させ、それぞれの色調の違い(色差)を目視にて確認した。その後B1修復用人工歯とB1用補綴物を黒色机上に並べ、それぞれの色調の違い(色差)を目視にて確認した。
これを繰り返し、B1修復用人工歯の咬合面の上にB1用補綴物を静置させた状態でのB1用補綴物の色調と、黒色机上で並べた際のB1用補綴物の色調を比較したときの違い(色差)を確認した。その後、A3.5修復用人工歯とA3.5用補綴物についても同様に色差を確認した。
歯科医療従事者10人にこのときの色差を確認してもらい、「補綴物がそれぞれの修復用人工歯に隣接した状態の色と机上での色とで色が変化し、幅広い色調に親和する色調であるか」という設問に対し、以下の2つの回答を設け、いずれかを選択してもらった。
[Y-1:幅広い色調に親和する色調であったもしくは親和する色調ではなかったことが判断できた。]
[Y-2:幅広い色調に親和する色調であるかどうか判断ができなかった。]
【0148】
上記評価項目について、幅広い色調に親和する色調の有無が判断できた[Y-1]と回答した人が6/10以上であることが色調を判断するキットとして好ましく、8/10以上であることがより好ましく、10/10であることがさらに好ましい。
比較例3では、修復用人工歯と補綴物が着脱部を有しておらず、試験Yの評価ができないため、上記評価を実施例1における試験Y相当の評価として実施例と比較した。デモンストレーションキットとしての評価は実施例1と同様に行った。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
表2~4より、本発明のデモンストレーションキットを用いて、それぞれの評価項目で多くの歯科医療従事者がよく理解できたことが確認された。これらのことから、本発明は、効率の良い歯科用修復材料の色調の判断を可能とするデモンストレーションキットであることが分かった。
また、本発明のデモンストレーションキットは、歯科用修復材料が色調適合性を有するか否かの判断に有用であることが確認できた。
また、表4に示すように、比較例1は試験X及びYについて、補綴物とシェードガイドのキットでは、補綴物を嵌め込み模擬間接修復をすることができず、色調適合性を判断できなかった。
表4に示すように、比較例2は試験Yについて、補綴物と修復用人工歯を取り外すことが不可能であり、補綴物と取り外した際の色調を想像しなければ、色を比較することができなかったため、色調適合性を判断できなかった。
表4に示すように、比較例3は試験X及びYについて、補綴物と修復用人工歯は着脱部を有していないために、補綴物を嵌め込み模擬間接修復をすることができず、装着した際の色の変化を比較することができなかったため、色調適合性を判断できなかった。
【0153】
上記のように、実施例では、本発明のデモンストレーションキットを用いることで、色調適合性を有する場合と有しない場合を区別することができた。
そのため、実施例の変形例として、本発明のデモンストレーションキットが、2個以上の前記修復用人工歯が、同一のシェードを有し、かつ色調が異なる(例えば、色調適合性の有無で異なる)2個以上の補綴物を含む実施形態においても、いずれか一方の補綴物が色調適合性を有し、他方が色調適合性有しないことを評価できるものとも推察される。