(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097608
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】グラフ生成装置、グラフ生成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240711BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20240711BHJP
【FI】
A61B5/02 A
G06F3/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001184
(22)【出願日】2023-01-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業/説明できるAIの基盤技術開発/進化的機械知能に基づくXAIの基盤技術と産業応用基盤の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 智晴
(72)【発明者】
【氏名】荒井 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋生
【テーマコード(参考)】
4C017
5E555
【Fターム(参考)】
4C017AA07
4C017BC11
4C017CC03
5E555AA26
5E555AA76
5E555BA22
5E555BB22
5E555BC08
5E555DB53
5E555DB56
5E555DD06
5E555EA19
5E555EA20
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】データの解析を補助できるようにする。
【解決手段】グラフ生成装置が、データを取得するデータ取得部と、前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する変化速度取得部と、前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するグラフ生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを取得するデータ取得部と、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する変化速度取得部と、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するグラフ生成部と、
を備えるグラフ生成装置。
【請求項2】
前記グラフ生成部は、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の分布を示すヒートマップを生成する、
請求項1に記載のグラフ生成装置。
【請求項3】
前記グラフ生成部は、前記グラフの複数の点のそれぞれについて、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する、
請求項1に記載のグラフ生成装置。
【請求項4】
前記グラフ生成部は、前記グラフの複数の点のそれぞれに示される前記データ点の時間変化の軌跡に基づいて推定される、前記グラフのある点を始点として、その始点からのデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する、
請求項3に記載のグラフ生成装置。
【請求項5】
前記グラフ生成部は、前記データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの前記軌跡を示すグラフを生成する、
請求項3に記載のグラフ生成装置。
【請求項6】
前記グラフ生成部は、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示すグラフを生成する、
請求項1に記載のグラフ生成装置。
【請求項7】
前記データ取得部は、複数次元のデータを取得して、1次元のデータに変換する、
請求項1に記載のグラフ生成装置。
【請求項8】
前記グラフに基づいて、前記データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定を行う判定部、
をさらに備える、請求項1に記載のグラフ生成装置。
【請求項9】
コンピュータが、
データを取得し、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出し、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する、
ことを含むグラフ生成方法。
【請求項10】
コンピュータに、
データを取得することと、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出することと、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフ生成装置、グラフ生成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
時系列データなどのデータの解析が行われる場合がある。例えば、特許文献1には、加工機における加工への振動の影響を測定する加工環境測定装置が示されている。この加工環境測定装置は、予め理想的な加工環境で測定された振動の時系列データに基づいて算出された基準加工データを記憶しておく。そして、この加工環境測定装置は、加工機の主軸に取り付けられたホルダの振動を測定し、検出されたホルダの振動の時系列データを解析して特徴データを算出し、算出した特徴データと、基準加工データとを比較して、加工機の加工環境を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データの解析が行われる際、解析を補助できることが好ましい。
【0005】
本発明の目的の一例は、データの解析を補助することができる、グラフ生成装置、グラフ生成方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、グラフ生成装置は、データを取得するデータ取得部と、前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する変化速度取得部と、前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するグラフ生成部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、グラフ生成方法は、コンピュータが、データを取得し、前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出し、前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する、ことを含む。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、データを取得することと、前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出することと、前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成することと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
上記したグラフ生成装置、グラフ生成方法およびプログラムによれば、データの解析を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態に係るグラフ生成装置の構成の例を示す図である。
【
図2】第一実施形態における、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第1の例を示す図である。
【
図3】第一実施形態における、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第2の例を示す図である。
【
図4】第一実施形態における、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第3の例を示す図である。
【
図5】第一実施形態に係るグラフ生成部が生成するヒートマップの例を示す図である。
【
図6】第一実施形態における、グラフの複数の点のそれぞれについてデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフの例を示す図である。
【
図7】第一実施形態における、データ値の取得対象に対する作用ごとの、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフの例を示す図である。
【
図8】第一実施形態における、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の履歴を示すグラフの例を示す図である。
【
図9】第一実施形態における、複数の指標によるグラフのイメージの例を示す図である。
【
図10】第一実施形態における、次元圧縮グラフのイメージの例を示す図である。
【
図11】第一実施形態に係るグラフ生成装置が行う処理の手順の例を示す図である。
【
図12】第二実施形態に係るグラフ生成装置の構成の例を示す図である。
【
図13】第二実施形態に係るグラフ生成装置が行う処理の手順の例を示す図である。
【
図14】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係るグラフ生成装置の構成の例を示す図である。
図1に示す構成で、グラフ生成装置100は、通信部110と、表示部120と、操作入力部130と、記憶部180と、制御部190とを備える。制御部190は、データ取得部191と、変化速度取得部192と、グラフ生成部193とを備える。
【0013】
グラフ生成装置100は、データを取得し、取得したデータに示されるデータ値(サンプリング値)の変化速度を算出する。そして、グラフ生成装置100は、データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成し、提示する。データに示されるデータ値を、データの値、または、サンプリング値とも称する。例えば、グラフ生成装置100が時系列データを取得する場合、その時系列データに示されるデータ値を時系列データの値とも称する。
【0014】
ここでいうサンプリングは、データ値を取得可能な処理であればよく、特定の処理に限定されない。例えば、ここでいうサンプリングは、センサを用いてデータ値を測定することであってもよいし、シミュレーションによってデータ値を算出することであってもよい。あるいは、ここでいうサンプリングは、センサを用いた測定またはシミュレーションなど何らかの方法で値を取得し、得られた値を用いて計算を行うことであってもよく、サンプリングで得られるデータ値は、この計算で算出された値(計算値)であってもよい。
【0015】
サンプリングを、データ値の観測とも称する。
また、データ値の取得の対象を観測対象とも称する。例えば、センサが、ある人に関するデータ値を取得する場合、その人が観測対象に該当する。また、シミュレータが、ある装置の動作のシミュレーションをおこなってデータ値を算出する場合、その装置が観測対象に該当する。
【0016】
このように、グラフ生成装置100が、データに示されるデータ値を表す軸と、そのデータ値の変化速度を表す軸とを持つグラフを提示することで、単にデータの値のみを提示する場合よりも、各サンプリング点についてより多くの情報を提供することができる。例えば、データの解析者は、グラフを参照してサンプリング値の変化速度を読み取り、読み取った変化速度をサンプリング値の変化の予測に利用することができる。グラフ生成装置100によれば、この点で、データの解析を補助することができる。
【0017】
以下では、グラフ生成装置100が、時系列データを取得する場合を例に説明する。ただし、グラフ生成装置100が取得するデータは、時系列データに限定されず、グラフ生成装置100がデータ値の変化速度を算出可能ないろいろなデータとすることができる。
【0018】
通信部110は、他の装置と通信を行う。例えば、時系列データを記憶しているデータベースから、時系列データを受信するようにしてもよい。あるいは、通信部110が、時系列データの基となる値を測定するセンサからセンサ測定値を受信するようにしてもよい。そして、グラフ生成装置100が、センサ測定値を蓄積して時系列データを生成するようにしてもよい。
【0019】
表示部120は、例えば液晶パネルまたはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)パネルなどの表示画面を有し、各種画像を表示する。例えば、表示部120が、グラフ生成装置100が生成したグラフを表示するようにしてもよい。
ただし、グラフ生成装置100がグラフを提示する方法は、表示部120がそのグラフを表示する方法に限定されない。例えば、通信部110が、グラフ生成装置100が生成したグラフを他の装置へ送信するようにしてもよい。
以下では、表示部120が、グラフ生成装置100が生成したグラフを表示する場合を例に説明する。
【0020】
操作入力部130は、例えば、キーボードおよびマウスなどの入力デバイスを含んで構成され、ユーザ操作を受け付ける。例えば、操作入力部130が、時系列データの取得を指示するユーザ操作、および、グラフの生成を指示するユーザ操作を受け付けるようにしてもよい。
【0021】
記憶部180は、各種データを記憶する。例えば、記憶部180は、グラフの生成の対象となる時系列データ、および、その時系列データの値の変化速度を記憶する。記憶部180は、グラフ生成装置100が備える記憶デバイスを用いて構成される。
【0022】
制御部190は、グラフ生成装置100の各部を制御して各種処理を行う。制御部190の機能は、例えば、グラフ生成装置100が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部180からプログラムを読み出して実行することで実行される。
【0023】
データ取得部191は、グラフの生成の対象となるデータを取得する。
データ取得部191が取得するデータは、そのデータの値の変化速度を算出可能なものであればよい。例えば、データ取得部191が時系列データを取得する場合、取得する時系列データは、2つ以上のサンプリング時刻のそれぞれにおけるサンプリング値を含むものであればよい。あるいは、データ取得部191が、データ値と、そのデータ値の変化速度との関係を機械学習により予め学習しておくようにしてもよい。そして、データ取得部191が、機械学習で得られた学習済みモデルにデータ値を入力して、そのデータ値の変化速度の推定値を算出するようにしてもよい。
【0024】
また、データ取得部191が時系列データを取得する場合、取得する時系列データにおけるサンプリング時間間隔は、特定の時間間隔に限定されない。例えば、データ取得部191が、秒単位のサンプリング時間間隔でサンプリングされた時系列データを取得するようにしてもよいし、年単位のサンプリング時間間隔でサンプリングされた時系列データを取得するようにしてもよい。
【0025】
また、データ取得部191が時系列データを取得し、かつ、取得する時系列データに3つ以上のサンプリング時刻のそれぞれにおけるサンプリング値が含まれる場合、一定のサンプリング時間間隔でデータ値がサンプリングされていてもよいし、時間的に隣接するサンプリング時刻の組み合わせごとにサンプリング時間間隔が異なっていてもよい。
【0026】
また、データ取得部191が取得するデータは、特定の分野におけるデータに限定されない。例えば、データ取得部191が、ある機械の振動の大きさなど、機械の状態に関する指標値のデータを取得するようにしてもよい。そして、グラフ生成装置100が、その指標値の座標軸と、その指標値の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成するようにしてもよい。
【0027】
あるいは、データ取得部191が、CAVI(Cardio Ankle Vascular Index、心臓足首血管指数)など、体の状態に関する指標値のデータを取得するようにしてもよい。そして、グラフ生成装置100が、その指標値の座標軸と、その指標値の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成するようにしてもよい。
以下では、データ取得部191が、CAVIの時系列データを取得する場合を例に説明する。CAVIの値が小さいほど、動脈硬化に関して血管の状態が良いと解釈することができる。
【0028】
変化速度取得部192は、データ取得部191が取得した時系列データに基づいて、その時系列データに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する。例えば、変化速度取得部192は、時系列データに示される2つのデータ値の差を、それら2つのデータ値のサンプリング時間間隔で除算して、データ値の変化速度を算出する。
【0029】
グラフ生成部193は、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する。グラフの生成において、グラフ生成部193は、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値と、変化速度取得部192が算出した変化速度との組み合わせによるデータ点をグラフにプロットする。
【0030】
変化速度取得部192、または、グラフ生成部193が、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値と、変化速度取得部192が算出した変化速度との組み合わせによるデータ点の時系列データを生成するようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、時系列データに含まれるデータ値と変化速度との組み合わせによる座標に点をグラフにプロットするようにしてもよい。
【0031】
あるいは、グラフ生成部193が、データ取得部191が取得した時系列データからサンプリング値を読み出し、変化速度取得部192が算出した変化速度のうち、そのサンプリング値に紐付けられている変化速度を取得するようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、グラフの、サンプリング値と変化速度との組み合わせによる座標に点をグラフにプロットするようにしてもよい。
【0032】
ここで、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係は、特定のものに限定されない。
図2は、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第1の例を示す図である。
【0033】
図2の例で、データ取得部191は、t
1からt
mまでの各サンプリング時刻におけるサンプリング値d
1からd
mまでを含む時系列データを取得している。
図2の例では、mは、m≧2の整数であり、mは、時系列データに含まれるサンプリング値の個数を示す。また、
図2の例では、iは、1≦i≦m-1の整数である。
【0034】
図2の例で、変化速度取得部192は、時刻t
iからt
i+1までの時間におけるデータ値の変化速度を(d
i+1-d
i)/(t
i+1-t
i)と算出する。そして、グラフ生成部193は、サンプリング値d
iと、変化速度(d
i+1-d
i)/(t
i+1-t
i)とが組み合わせられたデータ点(d
i,(d
i+1-d
i)/(t
i+1-t
i))をグラフにプロットする。
この場合、時刻t
iにおけるサンプリング値d
iと、時刻t
iからt
i+1までの時間における変化速度(d
i+1-d
i)/(t
i+1-t
i)とが対応付けられている。
【0035】
図3は、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第2の例を示す図である。
図3の例で、データ取得部191は、t
1からt
mまでの各サンプリング時刻におけるサンプリング値d
1からd
mまでを含む時系列データを取得している。
図3の例では、mは、m≧2の整数であり、mは、時系列データに含まれるサンプリング値の個数を示す。また、
図3の例では、iは、2≦i≦mの整数である。
【0036】
図3の例で、変化速度取得部192は、時刻t
i-1からt
iまでの時間におけるデータ値の変化速度を(d
i-d
i-1)/(t
i-t
i-1)と算出する。そして、グラフ生成部193は、サンプリング値d
iと、変化速度(d
i-d
i-1)/(t
i-t
i-1)とが組み合わせられたデータ点(d
i,(d
i-d
i-1)/(t
i-t
i-1))をグラフにプロットする。
この場合、時刻t
iにおけるサンプリング値d
iと、時刻t
i-1からt
iまでの時間における変化速度(d
i-d
i-1)/(t
i-t
i-1)とが対応付けられている。
【0037】
図4は、データ点として組み合わせられるサンプリング値と変化速度との対応関係の第3の例を示す図である。
図4の例で、データ取得部191は、t
1からt
mまでの各サンプリング時刻におけるサンプリング値d
1からd
mまでを含む時系列データを取得している。
図4の例では、mは、m≧3の整数であり、mは、時系列データに含まれるサンプリング値の個数を示す。また、
図4の例では、iは、2≦i≦m-1の整数である。
【0038】
図4の例で、変化速度取得部192は、時刻t
i-1からt
i+1までの時間におけるデータ値の変化速度を(d
i+1-d
i-1)/(t
i+1-t
i-1)と算出する。そして、グラフ生成部193は、サンプリング値d
iと、変化速度(d
i+1-d
i-1)/(t
i+1-t
i-1)とが組み合わせられたデータ点(d
i,(d
i+1-d
i-1)/(t
i+1-t
i-1))をグラフにプロットする。
この場合、時刻t
iにおけるサンプリング値d
iと、時刻t
i-1からt
i+1までの時間における変化速度(d
i+1-d
i-1)/(t
i+1-t
i-1)とが対応付けられている。
【0039】
グラフ生成部193が、時系列データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の分布を示すヒートマップを生成するようにしてもよい。
図5は、グラフ生成部193が生成するヒートマップの例を示す図である。具体的には、
図5では、データ点の分布密度のある範囲内ごとに、ハッチングによる明るさを変えて表現されている。
図5のグラフの横軸はCAVIを示す。縦軸は、CAVIの変化速度を示す。CAVIの変化速度を、dCAVI/dtとも表記する。
【0040】
線L111は、グラフの横軸に該当する。線L111では、CAVIの変化速度は0である。
線L111よりも上の領域では、CAVIの変化速度は正の値をとる。したがって、線L111よりも上の領域は、CAVIの値が大きくなっている領域である。
線L111よりも下の領域では、CAVIの変化速度は負の値をとる。したがって、線L111よりも下の領域は、CAVIの値が小さくなっている領域である。
【0041】
線L121、L122、L123、L124は、何れもデータ点の分布密度の等高線に該当する。
図5の例では、線L121からL124までにより、グラフが、線L121よりも外側の領域、線L121から内側、かつ、線L122よりも外側の領域、線L122から内側、かつ、線L123よりも外側の領域、線L123から内側、かつ、線L124よりも外側の領域、および、線L124から内側の領域の、5つの領域に分割されている。
【0042】
データ点の密度は、線L121よりも外側の領域が最も小さく、線L121から内側、かつ、線L122よりも外側の領域がその次に小さく、線L122から内側、かつ、線L123よりも外側の領域がその次に小さく、線L123から内側、かつ、線L124よりも外側の領域がその次に小さく、線L124から内側の領域が最も大きい。
上記のように、
図5の例では、領域ごとにハッチングによる明るさを変えて表されている。明るい領域(白に近い領域)ほど、データ点の分布密度が小さいことを表す。暗い領域(黒に近い領域)ほど、データ点の分布密度が大きいことを表す。
【0043】
表示部120が、データ点の分布密度のヒートマップを表示することで、ヒートマップを参照したユーザは、データ点の統計的な傾向を把握することができる。
図5の例の場合、ヒートマップを参照した医師は、CAVIの変化速度が0である線L111の付近に位置している線L124から内側の領域にデータ点の分布密度のピークがあり、ピークからその周囲に向かって、分布密度が小さくなっていく傾向があることを把握できる。
【0044】
また、表示部120は、グラフが線L131からL134まで、および、線L141で分割された領域A111からA116までを表示している。
線L131、線L132は、それぞれ、線L111の付近に位置し、線L111に平行な線である。線L131は、線L111よりも下側に位置し、線L132は、線L111よりも上側に位置している。
【0045】
線L131よりも下側の領域である領域A111は、CAVIが示す状態の改善がみられる領域と解釈することができる。線L131から線L132までの領域である領域A112は、CAVIが示す状態が変化していないか、あるいは、変化が小さい領域と解釈することができる。
線L141は、線L131およびL132と直交している。領域A112のうち、線L141から左側の領域である領域A113は、CAVIが示す状態が良好かつ安定している領域と解釈することができる。
【0046】
線L132よりも上側の領域である領域A114からA116までは、CAVIが示す状態が悪化する傾向がみられる領域と解釈することができる。
線L132よりも上側、かつ、線L133から下側の領域である領域A114は、CAVIが示す状態は良好だが、状態が悪化する傾向が見られ、注意が必要な領域と解釈することができる。
【0047】
線L132および線L133よりも上側、かつ、線L134から下側の領域である領域A115は、CAVIの値がやや大きいか、または、変化速度がやや大きく、注意が必要な領域と解釈することができる。
線L132および線L134の何れよりも上側の領域である領域A116は、CAVIの値が大きいか、または、変化速度が大きく、注意が必要な領域と解釈することができる。
【0048】
点P111は、ある時刻における1人の患者についてのデータ点である。
表示部120は、グラフ中の領域を表示することで、ユーザが、データ点で示される状態を評価することを補助することができる。
図5の例では、点P111が領域A115に含まれていることを把握した医師は、患者の状態について、CAVIの値がやや大きいか、または、CAVIの変化速度がやや大きく、注意が必要であると評価することができる。
【0049】
また、線L151およびL152は、患者の状態のステージの区分の目安を示す線である。ここでは、CAVI<8.0である正常範囲をステージ1と称する。8.0≦CAVI<9.0である境界域をステージ2と称する。9.0≦CAVIである動脈硬化の疑いのある領域をステージ3と称する。
【0050】
CAVIの値が、線L151における値よりも小さい領域(
図5に向かって線L151よりも左側の領域)は、ステージ1の状態を表す。CAVIの値が、線L151における値以上、かつ、線L152における値よりも小さい領域(
図5に向かって線L151から右側、かつ、線L152よりも左側の領域)は、ステージ2の状態を表す。CAVIの値が、線L152における値以上の領域(
図5に向かって線L152から右側の領域)は、ステージ3の状態を表す。
【0051】
表示部120は、これら各ステージの領域を表示することで、ユーザが、データ点で示される状態を評価することを補助することができる。
図5の例では、点P111がステージ1の領域に含まれていることを把握した医師は、患者の状態のステージがステージ1であると推定することができる。
【0052】
グラフ生成部193が、グラフの複数の点のそれぞれについて、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。
さらに、グラフ生成部193が、グラフの複数の点のそれぞれに示されるデータ点の時間変化の軌跡に基づいて推定される、グラフのある点を始点として、その始点からのデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。
【0053】
図6は、グラフの複数の点のそれぞれについてデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフの例を示す図である。
図6のグラフの横軸はCAVIを示す。縦軸は、CAVIの変化速度を示す。
また、
図6でも、データ点の分布密度のある範囲内ごとに、ハッチングによる明るさを変えて表現されている。
【0054】
図6の例で、破線の矢印の各々は、所定の単位時間での、CAVIの値とその変化速度との変化の例を示す。これら破線の矢印は、グラフの複数の点のそれぞれについて、所定の単位時間でのデータ点の時間変化の軌跡の表示の例に該当する。
また、点P211は、ある時刻における1人の患者についてのデータ点である。線L211は、点P211からのデータ点の時間変化について推定される軌跡の例を示す。
【0055】
グラフ生成部193が、複数の観測対象のそれぞれから得られた時系列データに基づいて、
図6にて破線の矢印で例示される、グラフの複数の点のそれぞれにおけるデータ点の時間変化の軌跡を算出し、グラフに表示するようにしてもよい。
【0056】
例えば、グラフ生成部193が、CAVIの値の座標軸と、その値の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成する場合、データ取得部191が、複数の患者それぞれについて、CAVIの時系列データを取得するようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、複数の患者それぞれについて、CAVIの値と、その変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を算出し、グラフに表示するようにしてもよい。
【0057】
この場合、グラフ生成部193が、複数の患者のデータ点の時間変化の軌跡を1つのグラフに表示するようにしてもよい。あるいは、グラフ生成部193が、例えば年代別など所定の分類ごとにグラフを生成するようにしてもよい。あるいは、グラフ生成部193が、患者ごとにグラフを生成するようにしてもよい。
【0058】
あるいは、グラフ生成部193が、ある型番の機械の振動の大きさの座標軸と、その振動の大きさの時間変化の座標軸とを有するグラフを生成する場合、データ取得部191が、同じ型番の複数の機械それぞれの振動の大きさの時系列データを取得するようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、複数の機械それぞれについて、振動の大きさと、振動の大きさの変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を算出し、1つのグラフに表示するようにしてもよい。
【0059】
グラフ生成部193が、グラフ内の任意の点について、その点を始点とする単位時間あたりのデータ点の時間変化の軌跡を一意に取得できる場合、そのグラフ内の領域をベクトル場として捉えることができる。
図6のグラフに示される破線は、単位時間あたりのデータ点の軌跡のベクトル場の表示の例と捉えることができる。
グラフ生成部193が、このベクトル場に基づいて、点P211および線L211に例示されるように、ある点からのデータ点の時間変化の軌跡を推定するようにしてもよい。例えば、グラフ生成部193が、ある観測対象の現在の状態を示すデータ点に基づいて、そのデータ点の時間変化の軌跡を予測するようにしてもよい。この軌跡で示されるデータ点(例えば、軌跡の先端の点)は、グラフ生成部193がその観測対象について予測する未来の状態を示しているといえる。
【0060】
同一の点を始点とする複数の軌跡がある場合、グラフ生成部193が、その点を始点とする軌跡として、それら複数の軌跡に基づく1つの軌跡を取得するようにしてもよい。例えば、グラフ生成部193が、それら複数の軌跡の平均(ベクトルとしての平均)を算出するようにしてもよい。あるいは、グラフ生成部193が、複数の軌跡のうち何れか1つの軌跡を選択するようにしてもよい。
【0061】
グラフ生成部193が、データ点の軌跡を補間するようにしてもよい。例えば、グラフ生成部193が、データ点の軌跡が示されていない点について、その点から所定の距離以内の近傍に始点が含まれる軌跡の平均を算出し、算出した軌跡の平均を、その点を始点とする軌跡として用いるようにしてもよい。
【0062】
グラフ生成部193が、データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。
図7は、データ値の取得対象に対する作用ごとの、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフの例を示す図である。
図7のグラフの横軸はCAVIを示す。縦軸は、CAVIの変化速度を示す。
また、
図7でも、データ点の分布密度のある範囲内ごとに、ハッチングによる明るさを変えて表現されている。
【0063】
図7のグラフは、患者に薬剤を投薬したときの、CAVIとその変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の例を示す。
領域A311に示される矢印は、患者に薬剤1を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L311は、患者に薬剤1を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の平均の例を示す。
領域A321に示される矢印は、患者に薬剤2を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L321は、患者に薬剤2を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の平均の例を示す。
【0064】
領域A331に示される矢印は、患者に薬剤3を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L331は、患者に薬剤3を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の平均の例を示す。
領域A341に示される矢印は、患者に薬剤4を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L341は、患者に薬剤4を投薬したときの、データ点の時間変化の軌跡の平均の例を示す。
【0065】
図7の例で、矢印で示される軌跡の横方向の向きが横軸の正の向きであることは、CAVIが増加しており、したがって、患者の状態が悪化していることを表していると捉えることができる。軌跡の横方向の向きが横軸の負の向きであることは、CAVIが減少しており、したがって、患者の状態が改善されていることを表していると捉えることができる。
【0066】
また、軌跡の縦軸の向きが縦軸の正の向きであることは、CAVIの増加速度が増加またはCAVIの減少速度が減少しており、したがって、患者の状態の悪化速度が増加している、または、患者の状態の改善速度が減少していると捉えることができる。軌跡の縦軸の向きが縦軸の負の向きであることは、CAVIの減少速度が増加またはCAVIの増加速度が減少しており、したがって、患者の状態の改善速度が増加している、または、患者の状態の悪化速度が減少していると捉えることができる。
【0067】
軌跡の縦方向の向きおよび横方向の向きにより、以下の4つのケースを設定することができる。
ケース1:軌跡の横方向の向きが横軸の正の向きで、縦方向の向きが縦軸の正の向きである場合、患者の状態が悪化しており、かつ、悪化速度が増加していると捉えることができる。
ケース2:軌跡の横方向の向きが横軸の負の向きで、縦方向の向きが縦軸の正の向きである場合、患者の状態が改善されているが、改善速度は減少していると捉えることができる。
【0068】
ケース3:軌跡の横方向の向きが横軸の正の向きで、縦方向の向きが縦軸の負の向きである場合、患者の状態が悪化しているが、悪化速度は減少していると捉えることができる。
ケース4:軌跡の横方向の向きが横軸の負の向きで、縦方向の向きが縦軸の負の向きである場合、患者の状態が改善されており、かつ、改善速度が増加していると捉えることができる。
【0069】
さらに、軌跡の縦方向の向きがあまり変化していない場合、および、軌跡の横方向の向きがあまり変化していない場合は、これら4つのケースの中間的なケースと捉えることができる。
薬剤の投与による患者の状態の改善効果の評価について、ケース4が、改善効果が最も良いと評価し、ケース1が、改善効果が最も悪いと評価し、ケース2、3および中間的なケースは、改善効果の評価について中間的な評価とすることが考えられる。
【0070】
図7の例では、薬剤1の投薬を受けた患者の状態は悪化しており、悪化速度も増加している。薬剤1の投薬を受けた患者の状態の変化は、ケース1の例に該当する。
また、薬剤2の投薬を受けた患者の状態は悪化しており、一方、状態の変化速度はおおよそ0である。薬剤2の投薬を受けた患者の状態の変化は、ケース1とケース3との中間的なケースの例に該当する。
【0071】
また、薬剤3の投薬を受けた患者の状態は改善されており、改善速度も増加している。薬剤3の投薬を受けた患者の状態の変化は、ケース4の例に該当する。
また、薬剤4の投薬を受けた患者の状態は改善されており、改善速度も増加している。薬剤4の投薬を受けた患者の状態の変化も、ケース4の例に該当する。
【0072】
同じケースに分類される薬剤について、軌跡の縦方向の向きが上向きの場合は、軌跡の傾きが大きいほど、患者の状態の悪化が顕著であると捉えて、より悪い評価とすることが考えられる。一方、軌跡の縦方向の向きが下向きの場合は、軌跡の傾きが大きいほど、患者の状態の改善が顕著であると捉えて、より良い評価とすることが考えられる。
図7の例でケース4に分類される薬剤3と薬剤4との比較では、薬剤4の方が軌跡の傾きが大きい。このことから、薬剤4の方が、薬剤3よりも、患者の状態の改善効果が良いと評価することが考えられる。
【0073】
したがって、
図7の例における薬剤1から4までのうち、薬剤4の評価が最も良く、次に薬剤3の評価が良く、次に薬剤2の評価が良く、薬剤1の評価が最も悪い、と評価することが考えられる。
このように、ユーザは、
図7に例示されるグラフを参照して、観測対象に対する作用を評価することができる。
【0074】
グラフ生成部193が、観測対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフを生成する場合の観測対象は、特定のものに限定されない。
例えば、グラフ生成部193が、ある装置のパラメータの設定など、ある装置に対する複数通りの設定方法のそれぞれについて、例えばその装置の振動の大きさ、または、その装置の平均故障間隔など、その装置に対する評価指標値と、その変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。ユーザは、その装置に対する設定方法を決定する際に、このグラフを参考にすることができる。
【0075】
なお、
図7では、同じ作用に関する軌跡がグラフ内で近い位置に示される場合の例を示しているが、これに限定されない。例えば、患者の状態が薬剤ごとに偏らないように、1つの薬剤について、軌跡の始点がグラフ内のいろいろな位置に分散していてもよい。
この場合、グラフ生成部193が、複数の作用のうち一部の作用についてのみ、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。
【0076】
例えば、操作入力部130が、3つ以上の作用のうち2つの作用を選択するユーザ操作を受け付けるようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、選択された作用が行われたときの軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。
あるいは、グラフ生成部193が、作用ごとに、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフを生成するようにしてもよい。そして、表示部120が、作用ごとのグラフを並べて表示するようにしてもよい。
【0077】
グラフ生成部193が、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示すグラフを生成するようにしてもよい。
図8は、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示すグラフの例を示す図である。
図8のグラフの横軸はCAVIを示す。縦軸は、CAVIの変化速度を示す。
また、
図8でも、データ点の分布密度のある範囲内ごとに、ハッチングによる明るさを変えて表現されている。
【0078】
線L411からL421までの各々は、1人の患者についてのデータ点の時間変化の軌跡を矢印で示す。線L411からL421までの組み合わせは、1人の患者のCAVIの時系列データに基づくデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示している。医師は、
図8のグラフを参照して、患者の状態の履歴、および、治療の効果を確認することができる。
【0079】
例えば、医師は、
図8のグラフから各サンプリング時刻におけるCAVIの値を読み取ることで、この患者のCAVIの推移を把握することができる。
また、線L411および線L415などのように、矢印で示される軌跡が真横よりも下側に向いていることは、この患者のCAVIが改善されていることを示していると捉えることができる。医師は、真横よりも下側に向いている軌跡について、治療の効果が表れていると評価することができる。
【0080】
一方、線L412および線L413などのように、矢印で示される軌跡が真横よりも上側に向いていることは、この患者のCAVIが悪化していることを示していると捉えることができる。医師は、真横より上側に向いている軌跡を参照してCAVIが悪化している時期を把握し、CAVIが悪化する原因および対策を検討するための参考にすることができる。
【0081】
データ取得部191が、複数次元の時系列データを取得するようにしてもよい。例えば、データ取得部191が、サンプリング時刻ごとに、複数のサンプリング値を、それら複数のサンプリング値を纏めたベクトルで表す時系列データを取得するようにしてもよい。サンプリング時刻ごとに、複数のサンプリング値を、それら複数のサンプリング値を纏めたベクトルで表す時系列データを、サンプリング値のベクトルの時系列データとも称する。
この場合、グラフ生成部193が、複数次元のそれぞれについて、その次元のデータ値の座標軸と、そのデータ値の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成するようにしてもよい。例えば、データ取得部191が、サンプリング値のベクトルの時系列データを取得する場合、グラフ生成部193が、ベクトルの要素ごとに、その要素の座標軸と、その要素の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成するようにしてもよい。
複数次元のそれぞれについて、その次元のデータ値の座標軸と、そのデータ値の変化速度の座標軸とを有するグラフを、複数の指標によるグラフとも称する。
【0082】
図9は、複数の指標によるグラフのイメージの例を示す図である。
図9のグラフは、データ値の取得対象に関する3つのデータ値x1、x2およびx3それぞれの座標軸と、これらのデータ値の変化速度dx1/dt、dx2/dtおよびdx3/dtそれぞれの座標軸とを含む。ここでは、x1、x2、x3は、それぞれ、データ値を示す変数である。
【0083】
線L511は、3つのデータ値x1、x2およびx3と、これらのデータ値の変化速度dx1/dt、dx2/dtおよびdx3/dtとの組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L511は、
図8を参照して説明した、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の、複数の指標によるグラフでの表示の例と捉えることができる。
【0084】
ただし、グラフ生成部193が、複数の指標によるグラフで表示するものは、特定のものに限定されない。
例えば、グラフ生成部193が、
図5を参照して説明したような、データ点の密度分布のヒートマップを、複数の指標によるグラフで表示するようにしてもよい。
【0085】
また、グラフ生成部193が、
図5を参照して説明したような、グラフの領域の区分を、複数の指標によるグラフに表示するようにしてもよい。
また、グラフ生成部193が、
図6を参照して説明したような、単位時間あたりのデータ点の軌跡のベクトル場を、複数の指標によるグラフで表示するようにしてもよい。
【0086】
また、グラフ生成部193が、
図6を参照して説明したような、ベクトル場に基づいて推定されるデータ点の時間変化の軌跡を、複数の指標によるグラフで表示するようにしてもよい。
また、グラフ生成部193が、
図7を参照して説明したような、データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの軌跡を、複数の指標によるグラフで表示するようにしてもよい。
【0087】
グラフ生成部193が、複数次元のうち一部の次元について、その次元のデータ値の座標軸と、そのデータ値の変化速度の座標軸とを有するグラフを生成するようにしてもよい。
例えば
図6の例で、操作入力部130が、3次元のデータ値x1、x2およびx3のうち何れか1つの座標軸を指定するユーザ操作を受け付けるようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、指定されたデータ値の座標軸と、そのデータ値の変化速度の座標軸との2軸のグラフを生成するようにしてもよい。表示部120が、3つのデータ値x1、x2およびx3それぞれの座標軸と、これらのデータ値の変化速度dx1/dt、dx2/dtおよびdx3/dtそれぞれの座標軸との6軸のグラフと、指定されたデータ値の座標軸と、そのデータ値の変化速度の座標軸との2軸のグラフとを並べて、あるいは切り替えて表示するようにしてもよい。
ユーザは、6軸のグラフを参照して、グラフのうち注目すべきポイントを決定し、2軸のグラフを参照して、注目すべきポイントにおけるデータ値およびその変化速度の時間変化を把握することができる。
【0088】
データ取得部191が、複数次元の時系列データを取得して、1次元の時系列データに変換するようにしてもよい。具体的には、データ取得部191が、複数次元の時系列データに示される、サンプリング時刻ごとの複数次元のデータ値(ベクトル値)を、1次元のデータ値(スカラ値)に変換するようにしてもよい。
【0089】
この場合、データ取得部191が、複数次元のデータ値を1次元のデータ値に変換する方法は、特定の方法に限定されない。例えば、データ取得部191が、PCA(Principal Component Analysis)、KPCA(Kernel Principal Component Analysis)、AE(AutoEncoder)、CAE(Convolutional AutoEncoder)、VAE(Variational AutoEncoder)、t-SNE(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)、または、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)などの公知の次元圧縮手法、あるいは、複数の次元圧縮手法の組み合わせを用いて、複数次元のデータ値を1次元のデータ値に変換するようにしてもよい。
【0090】
変化速度取得部192が、データ取得部191による変換で得られた1次元の時系列データに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出するようにしてもよい。そして、グラフ生成部193が、得られた1次元の時系列データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻(変換前のデータ値のサンプリング時刻)におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するようにしてもよい。
【0091】
あるいは、データ取得部191が、複数次元の時系列データを取得して、次元ごとに、個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出するようにしてもよい。そして、データ取得部191が、サンプリング時刻ごとの複数次元のデータ値(ベクトル値)を、サンプリング時刻ごとの1次元のデータ値(スカラ値)に変換するようにしてもよい。さらに、データ取得部191が、サンプリング時刻ごとの複数次元のデータ値の変化速度(ベクトル値)を、サンプリング時刻ごとの1次元のデータ値の変化速度(スカラ値)に変換するようにしてもよい。
そして、グラフ生成部193が、データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元のデータ値を第1軸にとり、データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するようにしてもよい。
【0092】
データ取得部191による変換で得られた1次元の時系列データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを、次元圧縮グラフとも称する。データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元のデータ値を第1軸にとり、データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元の変化速度を第2軸にとったグラフも、次元圧縮グラフとも称する。
【0093】
図10は、次元圧縮グラフのイメージの例を示す図である。
図10は、データ取得部191が、
図9の例におけるデータ値x1、x2およびx3の3次元の時系列データを、1次元の時系列データに変換した場合の例を示している。「z」軸は、3次元のデータ値(x1,x2,x3)を1次元に変換したデータ値zの座標軸を表す。「dz/dt」軸は、データ値zの変化速度dz/dtの座標軸を表す。ここでは、zは、データ値を示す変数である。
【0094】
線L611は、データ値zと、そのデータ値zが観測された時刻におけるデータ値zの変化速度dz/dtとの組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の例を示す。線L611は、
図8の線L511で示される6次元のデータ点の時間変化の軌跡を、データ取得部191による変換によって次元圧縮して得られる2次元のデータ点の時間変化の軌跡を表していると捉えることができる。また、線L611は、
図8を参照して説明した、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の、次元圧縮グラフでの表示の例と捉えることができる。
【0095】
データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元のデータ値を第1軸にとり、データ取得部191による変換で得られたサンプリング時刻ごとの1次元の変化速度を第2軸にとった次元圧縮グラフも、2次元のグラフとなる。
例えば、
図9におけるデータ値x1、x2およびx3の3次元のデータ値を、1次元のデータ値に変換し、変化速度dx1/dt、dx2/dt、および、dx3/dtの3次元の変化速度を、1次元の変化速度に変換して、
図10の例のようなグラフを得られた場合について考える。この場合、「z」軸は、3次元のデータ値(x1,x2,x3)を1次元に変換したデータ値zの座標軸を表す。「dz/dt」軸は、3次元の変化速度(dx1/dt,dx2/dt,dx3/dt)を1次元に変換した変化速度dz/dtの座標軸を表す。
【0096】
ただし、グラフ生成部193が、次元圧縮グラフで表示するものは、特定のものに限定されない。
例えば、グラフ生成部193が、
図5を参照して説明したような、データ点の密度分布のヒートマップを、次元圧縮グラフで表示するようにしてもよい。
【0097】
また、グラフ生成部193が、
図5を参照して説明したような、グラフの領域の区分を、次元圧縮グラフに表示するようにしてもよい。
また、グラフ生成部193が、
図6を参照して説明したような、単位時間あたりのデータ点の軌跡のベクトル場を、次元圧縮グラフで表示するようにしてもよい。
【0098】
また、グラフ生成部193が、
図6を参照して説明したような、ベクトル場に基づいて推定されるデータ点の時間変化の軌跡を、次元圧縮グラフで表示するようにしてもよい。
また、グラフ生成部193が、
図7を参照して説明したような、データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの軌跡を、次元圧縮グラフで表示するようにしてもよい。
【0099】
図11は、グラフ生成装置100が行う処理の手順の例を示す図である。
図11の例で、データ取得部191は、時系列データを取得する(ステップS11)。
次に、変化速度取得部192は、データ取得部191が取得した時系列データに基づいて、その時系列データに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する(ステップS12)。
【0100】
そして、グラフ生成部193は、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する(ステップS13)。
表示部120は、制御部190の制御に従って、グラフ生成部193が生成したグラフを表示する(ステップS14)。
ステップS14の後、グラフ生成装置100は、
図11の処理を終了する。
【0101】
以上のように、データ取得部191は、データを取得する。変化速度取得部192は、データ取得部191が取得したデータに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する。グラフ生成部193は、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する。
【0102】
グラフ生成装置100は、データに示されるデータ値を表す軸と、そのデータ値の変化速度を表す軸とを持つグラフを提示することで、単にデータ値のみを提示する場合よりも、各サンプリング点についてより多くの情報を提供することができる。例えば、データの解析者は、グラフを参照してサンプリング値の変化速度を読み取り、読み取った変化速度をサンプリング値の変化の予測に利用することができる。グラフ生成装置100によれば、この点で、データの解析を補助することができる。
【0103】
また、グラフ生成部193は、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の分布を示すヒートマップを生成する。
グラフ生成装置100が、データ点の分布密度のヒートマップを提示することで、ヒートマップを参照したユーザは、データ点の統計的な傾向を把握することができる。例えばユーザは、ヒートマップを参照して、データ点の分布を把握することができる。また、ユーザは、評価の対象となっているデータ点がヒートマップにおいてどの位置に示されるかを把握することで、評価の対象となっているデータ点が示すデータ値およびその変化速度が、どの程度出現し易いかを把握することができる。
【0104】
また、グラフ生成部193は、グラフの複数の点のそれぞれについて、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する。
ユーザは、グラフ生成装置100が生成したグラフを参照することで、データ値とその変化速度とのいろいろな組み合わせについて、そのデータ値および変化速度からの、データ値および変化速度の時間変化の傾向を把握することができる。例えばユーザは、グラフ生成装置100が生成したグラフを、グラフ内のある点からのデータ点の時間変化の予測に用いることができる。
【0105】
また、グラフ生成部193は、グラフの複数の点のそれぞれに示されるデータ点の時間変化の軌跡に基づいて推定される、グラフのある点を始点として、その始点からのデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する。
このように、グラフ生成装置100は、グラフの複数の点のそれぞれに示されるデータ点の時間変化の軌跡に基づいて、グラフのある点を始点として、その始点からのデータ点の時間変化の軌跡を推定し、グラフに示すことができる。例えば、グラフ生成装置100は、グラフのある点からのデータ点の時間変化を予測し、予測した時間変化の軌跡をグラフに示すことができる。
【0106】
また、グラフ生成部193は、データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときのデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する。
ユーザは、グラフ生成装置100が生成するグラフを、作用の評価に用いることができる。
【0107】
また、グラフ生成部193は、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示すグラフを生成する。
ユーザは、グラフ生成装置100が生成したグラフを参照して、観測対象の状態の履歴、および、観測対象に対する作用の効果を確認することができる。
【0108】
例えば、ユーザは、グラフ生成装置100が生成したグラフから各サンプリング時刻におけるデータ値を読み取ることで、データ値が示す観測対象の状態の推移を把握することができる。
また、ユーザは、データ点の時間変化の軌跡を示す矢印の傾きに基づいて、観測対象に対する作用の効果を確認することができる。
【0109】
例えば、グラフの横軸が第1軸(データ値の座標軸)であり、データ値が大きいほど観測対象の状態が良好であることを示す場合について考える。この場合、観測対象に対する作用が行われた後のデータ点の時間変化の軌跡を示す矢印が真横よりも上側を向いているときは、ユーザは、作用の効果によって観測対象の状態が改善されたと評価することができる。一方、観測対象が行われた後のデータ点の時間変化の軌跡を示す矢印が真横よりも下側を向いているときは、ユーザは、その作用では、観測対象の状態の改善効果は得られなかったと評価することができる。
【0110】
また、データ取得部191は、複数次元のデータを取得して、1次元のデータに変換する。
これにより、グラフ生成装置100は、データ取得部191による変換で得られた1次元のデータに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとった2軸(2次元)のグラフを提示することができ、この点で、比較的見易いグラフを提示することができる。
【0111】
<第二実施形態>
図12は、第二実施形態に係るグラフ生成装置の構成の例を示す図である。
図12に示す構成で、グラフ生成装置200は、通信部110と、表示部120と、操作入力部130と、記憶部180と、制御部290とを備える。制御部290は、データ取得部191と、変化速度取得部192と、グラフ生成部193と、判定部294とを備える。
【0112】
図12の各部のうち、
図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には、同一の符号(110、120、130、180、191、192、193)を付し、ここでは詳細な説明を省略する。
グラフ生成装置200は、制御部290が、
図1の制御部190の各部に加えてさらに判定部294を備える点で、グラフ生成装置100と異なる。それ以外の点では、グラフ生成装置200は、グラフ生成装置100と同様である。
【0113】
判定部294は、グラフ生成部193が生成したグラフに基づいて、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定を行う。
判定部294が行う判定は、特定の種類の判定に限定されない。
【0114】
例えば、判定部294が、特定の時刻における特定の観測対象についてのデータ点が、
図5に例示されるようなグラフ内の領域のうち何れの領域に含まれるかを判定するようにしてもよい。この場合、判定部294は、例えば観測対象の状態を評価することができる。
この場合の、特定の時刻における特定の観測対象についてのデータ点は、
図6を参照して説明したように、グラフ生成部193がその観測対象について予測する未来の状態を示すデータ点であってもよい。この場合、判定部294は、例えば観測対象の未来の状態を評価することができる。
【0115】
また、判定部294が、
図7を参照して説明したような、データ値の取得対象に対する作用ごとの、その作用が行われたときの軌跡を示すグラフに基づいて、各作用に対する評価の順位を判定し、何れかの作用を選択するようにしてもよい。
さらに、グラフ生成装置100が、観測対象に対する作用を実行する機構を備え、選択した作用を実行するようにしてもよい。例えば、観測対象が装置である場合、グラフ生成装置100が、その装置に対する作用を実行することで、その装置を制御するようにしてもよい。
【0116】
また、判定部294が、
図8を参照した説明したような、データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の履歴を示すグラフに基づいて、観測対象の状態の履歴を判定するようにしてもよい。例えば、判定部294が、データ点の履歴を構成するベクトルの傾きに基づいて、各時間区間における観測対象の状態を判定するようにしてもよい。
さらに、判定部294が、観測対象に対する作用が行われた後のデータ点の時間変化を示すベクトルの傾きに基づいて、その作用の効果を判定するようにしてもよい。
【0117】
グラフ生成部193が、複数の指標によるグラフを生成し、判定部294が、複数の指標によるグラフに基づいて上記の判定の何れか、または、それらの判定の組み合わせを行うようにしてもよい。
また、グラフ生成部193が、次元圧縮グラフを生成し、判定部294が、次元圧縮グラフに基づいて上記の判定の何れか、または、それらの判定の組み合わせを行うようにしてもよい。
【0118】
図13は、グラフ生成装置200が行う処理の手順の例を示す図である。
図13のステップS21からS23までは、
図11のステップS11からS13までと同様である。
ステップS23の後、判定部294は、グラフ生成部193が生成したグラフに基づいて、データ取得部191が取得した時系列データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定を行う(ステップS24)。
図11のステップS14と同様、
図13の処理でも、表示部120が、制御部290の制御に従って、グラフ生成部193が生成したグラフを表示するようにしてもよい。
ステップS24の後、グラフ生成装置200は、
図13の処理を終了する。
【0119】
以上のように、判定部294は、グラフ生成部193が生成したグラフに基づいて、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定を行う。
これにより、グラフ生成装置200は、観測対象の状態、または、観測対象に対する作用を評価することができる。さらには、グラフ生成装置200は、観測対象に対する評価に基づいて、複数の作用のうち何れかを選択することができる。さらには、グラフ生成装置200は、選択した作用を観測対象に行うことで、観測対象を制御することができる。
【0120】
第二実施形態では、判定部294は、データ取得部191が取得したデータを、グラフ生成部193が生成したデータを用いて解析して、データ取得部191が取得したデータに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定をおこなっていると捉えることができる。グラフ生成部193は、判定部294によるデータの解析を補助していると捉えることができる。
【0121】
図14は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図14に示す構成で、コンピュータ700は、CPU710と、主記憶装置720と、補助記憶装置730と、インタフェース740とを備える。
【0122】
上記のグラフ生成装置100、および、グラフ生成装置200のうち何れか1つ以上が、コンピュータ700に実装されてもよい。その場合、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU710は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0123】
グラフ生成装置100がコンピュータ700に実装される場合、制御部190およびそれらの各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0124】
また、CPU710は、プログラムに従って、記憶部180に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
通信部110による他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
表示部120による表示は、インタフェース740が表示装置を有し、CPU710の制御に従って各種画像を表示することで実行される。
操作入力部130によるユーザ操作の受け付けは、インタフェース740が例えばキーボードおよびマウスなどの入力デバイスを有してユーザ操作を受け付け、受け付けたユーザ操作を示す情報をCPU710へ出力することで実行される。
【0125】
グラフ生成装置200がコンピュータ700に実装される場合、制御部290およびそれらの各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0126】
また、CPU710は、プログラムに従って、記憶部180に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
通信部110による他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
表示部120による表示は、インタフェース740が表示装置を有し、CPU710の制御に従って各種画像を表示することで実行される。
操作入力部130によるユーザ操作の受け付けは、インタフェース740が例えばキーボードおよびマウスなどの入力デバイスを有してユーザ操作を受け付け、受け付けたユーザ操作を示す情報をCPU710へ出力することで実行される。
【0127】
なお、グラフ生成装置100、および、グラフ生成装置200の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0128】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0129】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0130】
(付記1)
データを取得するデータ取得部と、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出する変化速度取得部と、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成するグラフ生成部と、
を備えるグラフ生成装置。
【0131】
(付記2)
前記グラフ生成部は、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の分布を示すヒートマップを生成する、
付記1に記載のグラフ生成装置。
【0132】
(付記3)
前記グラフ生成部は、前記グラフの複数の点のそれぞれについて、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する、
付記1または付記2に記載のグラフ生成装置。
【0133】
(付記4)
前記グラフ生成部は、前記グラフの複数の点のそれぞれに示される前記データ点の時間変化の軌跡に基づいて推定される、前記グラフのある点を始点として、その始点からのデータ点の時間変化の軌跡を示すグラフを生成する、
付記3に記載のグラフ生成装置。
【0134】
(付記5)
前記グラフ生成部は、前記データ値の取得対象に対する複数通りの作用のそれぞれについて、その作用が行われたときの前記軌跡を示すグラフを生成する、
付記3に記載のグラフ生成装置。
【0135】
(付記6)
前記グラフ生成部は、前記データ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度との組み合わせによるデータ点の時間変化の軌跡の時系列を示すグラフを生成する、
付記1から5の何れか一つに記載のグラフ生成装置。
【0136】
(付記7)
前記データ取得部は、複数次元のデータを取得して、1次元のデータに変換する、
付記1から6の何れか一つに記載のグラフ生成装置。
【0137】
(付記8)
前記グラフに基づいて、前記データに示されるデータ値と、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度とが組み合わせられたデータに関する判定を行う判定部、
をさらに備える、付記1から7の何れか一つに記載のグラフ生成装置。
【0138】
(付記9)
コンピュータが、
データを取得し、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出し、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成する、
ことを含むグラフ生成方法。
【0139】
(付記10)
コンピュータに、
データを取得することと、
前記データに基づいて、そのデータに示される個々のデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を算出することと、
前記データに示されるデータ値を第1軸にとり、そのデータ値が観測された時刻におけるデータ値の変化速度を第2軸にとったグラフを生成することと、
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0140】
100、200 グラフ生成装置
110 通信部
120 表示部
130 操作入力部
180 記憶部
190、290 制御部
191 データ取得部
192 変化速度取得部
193 グラフ生成部
294 判定部