(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097617
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】物標検知装置、物標検知プログラム及び物標検知システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/86 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01S13/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001199
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】宮地 倖平
(72)【発明者】
【氏名】星 将広
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC13
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK13
5J070BB02
5J070BD08
5J070BE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合し、人間等の物標を検知することを目的とする。
【解決手段】本開示は、カメラ物標を属性情報とともに検知し、カメラ物標の画素座標に基づいて、カメラ物標の各時刻での方位及び所定期間内での方位の時間変化を算出するカメラ物標検知部31と、レーダ物標をクラスタとして検知し、レーダ物標のレーダ反射方位に基づいて、レーダ物標の各時刻での方位及び所定期間内での方位の時間変化を算出するレーダ物標検知部32と、カメラ物標の各時刻での方位及び方位の時間変化と、レーダ物標の各時刻での方位及び方位の時間変化と、の一致に基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合する物標統合部33と、を備える物標検知装置3である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ画像とレーダ情報とを統合し、物標を検知する物標検知装置であって、
前記カメラ画像において、カメラ物標を属性情報とともに検知し、前記カメラ物標の画素座標に基づいて、前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の各時刻を含む所定期間内での方位の時間変化を算出するカメラ物標検知部と、
前記レーダ情報において、レーダ物標をクラスタとして検知し、前記レーダ物標のレーダ反射方位に基づいて、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の各時刻を含む前記所定期間内での方位の時間変化を算出するレーダ物標検知部と、
前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の方位の時間変化と、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の方位の時間変化と、の一致に基づいて、前記カメラ物標と前記レーダ物標とを同一物標に統合する物標統合部と、
を備えることを特徴とする物標検知装置。
【請求項2】
前記カメラ物標検知部は、前記カメラ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い前記所定期間内において、前記カメラ物標の方位の時間変化を算出し、
前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い前記所定期間内において、前記レーダ物標の方位の時間変化を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検知装置。
【請求項3】
前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される前記所定期間内において、前記レーダ物標の方位の時間変化を算出し、
前記カメラ物標検知部は、前記レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される前記所定期間内において、前記カメラ物標の方位の時間変化を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検知装置。
【請求項4】
前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の各時刻での方位について、ノイズを低減可能であるとともに、時間変化を追従可能であるように、平滑化処理を実行する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標検知装置。
【請求項5】
前記カメラ物標検知部は、前記カメラ物標の各時刻での方位に加えて、前記カメラ物標の深度推定に基づいて、前記カメラ物標の各時刻での概算距離を算出し、
前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の各時刻での方位に加えて、前記レーダ物標のレーダ反射時間に基づいて、前記レーダ物標の各時刻での距離を算出し、
前記物標統合部は、前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の各時刻での概算距離と、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の各時刻での距離と、の一致に基づいて、前記カメラ物標と前記レーダ物標とを同一物標に統合する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標検知装置。
【請求項6】
請求項1に記載の物標検知装置が備える前記カメラ物標検知部、前記レーダ物標検知部及び前記物標統合部が行なう各処理を、コンピュータに実行させる物標検知プログラム。
【請求項7】
請求項1に記載の物標検知装置と、前記カメラ画像を生成するカメラ装置と、前記レーダ情報を生成するレーダ装置と、を備えることを特徴とする物標検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラ画像とレーダ情報とを統合し、物標を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、農機、建機又はロボット等では、周辺の人間又は障害物等を監視したうえで、周辺の人間又は障害物等と衝突しないような、人間又は障害物等の物標を検知する技術が要望されている。そして、周辺の人間等を特別に警告するために、周辺の障害物等をあえて注意しないような、人間又は障害物等の物標を識別する技術も要望されている。
【0003】
特許文献1では、カメラ画像とレーダ情報とを統合し、物標を検知する技術が開示されている。ここで、カメラ画像では、カメラ物標の属性情報を識別することに優位性がある。一方で、レーダ情報では、レーダ物標の距離及び方位を検知することに優位性がある。そこで、カメラ画像とレーダ情報とを統合し、物標を検知及び識別することができる。
【0004】
なお、物標検知システムの高性能化を図るために、カメラ装置としてステレオカメラ又はTOFカメラ等を使ってもよく、レーダ装置としてLiDAR等を使ってもよい。また、物標検知システムの低価格化を図るために、カメラ装置として単眼カメラ又は赤外線カメラ等を使ってもよく、レーダ装置としてミリ波レーダ等を使ってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を
図1に示す。
図1の上段では、人間Pが存在している。
図1の下段では、人間P及び手前の障害物Oが存在している。
【0007】
不図示のカメラ物標検知部は、カメラ画像Cにおいて、カメラ物標CTを属性情報とともに検知し、カメラ物標CTの底部座標Gに基づいて、カメラ物標CTの概算距離を算出し、カメラ物標CTの画素座標に基づいて、カメラ物標CTの方位を算出する。
【0008】
不図示のレーダ物標検知部は、レーダ情報において、レーダ物標RTをクラスタとして検知し、レーダ物標RTのレーダ反射時間に基づいて、レーダ物標RTの距離を算出し、レーダ物標RTのレーダ反射方位に基づいて、レーダ物標RTの方位を算出する。
【0009】
不図示の物標統合部は、統合結果Iにおいて、カメラ物標CTの概算距離及び方位と、レーダ物標RTの距離及び方位と、の一致に基づいて、カメラ物標CTとレーダ物標RTとを同一物標に統合し、物標検知システムの周辺の監視領域Mとの位置関係を表示する。
【0010】
ここで、不図示のカメラ物標検知部は、以下の数式に基づいて、カメラ物標CTの概算距離を算出する:カメラ物標CTの概算距離=(カメラ装置の焦点距離×カメラ画像Cの画像サイズ×カメラ装置の設置高さ)/{(カメラ物標CTの矩形領域Bの底部座標G-カメラ画像Cの消失点座標)×カメラ装置のセンササイズ×100}。
【0011】
図1の上段では、人間Pの足元が手前の障害物Оに隠れておらず、かつ、人間Pの足元が地面に接触しており、かつ、地面が水平面である。よって、不図示のカメラ物標検知部は、カメラ物標CTの矩形領域Bを高精度に算出でき、カメラ物標CTの矩形領域Bの底部座標Gを高さ0の地面に一致させ、カメラ物標CTの概算距離を高精度に算出することができる。そして、不図示の物標統合部は、カメラ物標CTとレーダ物標RTとを高精度に同一物標に統合でき、物標の未検知又は誤検知を防止することができる。
【0012】
図1の下段では、人間Pの足元が手前の障害物Оに隠れており、又は、人間Pの足元が地面に接触しておらず、又は、地面が傾斜面である。よって、不図示のカメラ物標検知部は、カメラ物標CTの矩形領域Bを高精度に算出できず、カメラ物標CTの矩形領域Bの底部座標Gを高さ0の地面に一致させず、カメラ物標CTの概算距離を高精度に算出することができない。そして、不図示の物標統合部は、カメラ物標CTとレーダ物標RTとを高精度に同一物標に統合できず、物標の未検知又は誤検知を防止することができない。
【0013】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合し、人間等の物標を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、カメラ物標の各時刻での概算距離及びレーダ物標の各時刻での距離に基づかず、カメラ物標の各時刻での方位及びレーダ物標の各時刻での方位に基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合することとした。ここで、複数物標の各時刻での方位が同一である可能性があるが、複数物標の方位の時間変化が相違する可能性が高い。そこで、カメラ物標の方位の時間変化及びレーダ物標の方位の時間変化にさらに基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合することとした。
【0015】
具体的には、本開示は、カメラ画像とレーダ情報とを統合し、物標を検知する物標検知装置であって、前記カメラ画像において、カメラ物標を属性情報とともに検知し、前記カメラ物標の画素座標に基づいて、前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の各時刻を含む所定期間内での方位の時間変化を算出するカメラ物標検知部と、前記レーダ情報において、レーダ物標をクラスタとして検知し、前記レーダ物標のレーダ反射方位に基づいて、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の各時刻を含む前記所定期間内での方位の時間変化を算出するレーダ物標検知部と、前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の方位の時間変化と、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の方位の時間変化と、の一致に基づいて、前記カメラ物標と前記レーダ物標とを同一物標に統合する物標統合部と、を備えることを特徴とする物標検知装置である。
【0016】
この構成によれば、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ物標の概算距離を算出することなく、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0017】
また、本開示は、前記カメラ物標検知部は、前記カメラ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い前記所定期間内において、前記カメラ物標の方位の時間変化を算出し、前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い前記所定期間内において、前記レーダ物標の方位の時間変化を算出することを特徴とする物標検知装置である。
【0018】
この構成によれば、複数物標の各時刻での方位が同一である期間が長くても、複数物標の方位の時間変化が相違する可能性が高くなり、複数物標を異なる物標として分離できるため、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0019】
また、本開示は、前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される前記所定期間内において、前記レーダ物標の方位の時間変化を算出し、前記カメラ物標検知部は、前記レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される前記所定期間内において、前記カメラ物標の方位の時間変化を算出することを特徴とする物標検知装置である。
【0020】
この構成によれば、検知対象距離が遠いために方位時間変化が小さくても、複数物標の方位の時間変化が相違する可能性が高くなり、複数物標を異なる物標として分離できるため、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0021】
また、本開示は、前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の各時刻での方位について、ノイズを低減可能であるとともに、時間変化を追従可能であるように、平滑化処理を実行することを特徴とする物標検知装置である。
【0022】
この構成によれば、レーダ物標の代表座標がノイズを含んでも、レーダ物標の各時刻での方位を平滑化でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0023】
前記課題を解決するために、カメラ物標の底部座標ではなく、カメラ物標の深度推定に基づいて、カメラ物標の概算距離を算出することとした。ここで、カメラ物標の深度推定では、カメラ物標の底部座標を考慮するのみならず、カメラ物標を構成する全ての画素情報(画素座標又は画素輝度等)を考慮するため、カメラ物標の概算距離を算出するための情報量が増加する。
【0024】
また、本開示は、前記カメラ物標検知部は、前記カメラ物標の各時刻での方位に加えて、前記カメラ物標の深度推定に基づいて、前記カメラ物標の各時刻での概算距離を算出し、前記レーダ物標検知部は、前記レーダ物標の各時刻での方位に加えて、前記レーダ物標のレーダ反射時間に基づいて、前記レーダ物標の各時刻での距離を算出し、前記物標統合部は、前記カメラ物標の各時刻での方位及び前記カメラ物標の各時刻での概算距離と、前記レーダ物標の各時刻での方位及び前記レーダ物標の各時刻での距離と、の一致に基づいて、前記カメラ物標と前記レーダ物標とを同一物標に統合することを特徴とする物標検知装置である。
【0025】
この構成によれば、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ物標の概算距離を高精度に算出でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。そして、カメラ装置が障害物等に隠されていても、カメラ装置及びレーダ装置が設置中心位置を揃えていれば、カメラ物標の概算距離を高精度に算出でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0026】
また、本開示は、以上に記載の物標検知装置が備える前記カメラ物標検知部、前記レーダ物標検知部及び前記物標統合部が行なう各処理を、コンピュータに実行させる物標検知プログラムである。
【0027】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0028】
また、本開示は、以上に記載の物標検知装置と、前記カメラ画像を生成するカメラ装置と、前記レーダ情報を生成するレーダ装置と、を備えることを特徴とする物標検知システムである。
【0029】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するシステムを提供することができる。
【0030】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本開示は、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合し、人間等の物標を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】従来技術のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を示す図である。
【
図2】本開示の物標検知システムの構成を示す図である。
【
図3】本開示の物標検知処理の手順を示す図である。
【
図4】本開示のカメラ物標の検知処理を示す図である。
【
図5】本開示のレーダ物標の検知処理を示す図である。
【
図6】本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を示す図である。
【
図7】本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を示す図である。
【
図8】本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合結果を示す図である。
【
図9】本開示の変形例のカメラ物標の検知処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0034】
(本開示の物標検知システムの概要)
本開示の物標検知システムの構成を
図2に示す。本開示の物標検知処理の手順を
図3に示す。物標検知システムSは、カメラ装置1、レーダ装置2及び物標検知装置3を備える。物標検知装置3は、カメラ物標検知部31、レーダ物標検知部32及び物標統合部33を備え、
図3に示した物標検知プログラムをコンピュータにインストールしている。
【0035】
本開示では、物標検知システムSの低価格化を図るために、カメラ装置1として単眼カメラを使っており(赤外線カメラ等を使ってもよい。)、レーダ装置2としてミリ波レーダを使っている(MIMOレーダ等を使ってもよい。)。変形例として、物標検知システムSの高性能化を図るために、カメラ装置1としてステレオカメラ又はTOFカメラ等を使ってもよく、レーダ装置2としてLiDAR等を使ってもよい。
【0036】
本開示では、カメラ物標の各時刻での概算距離及びレーダ物標の各時刻での距離に基づかず、カメラ物標の各時刻での方位及びレーダ物標の各時刻での方位に基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合することとした。ここで、複数物標の各時刻での方位が同一である可能性があるが、複数物標の方位の時間変化が相違する可能性が高い。そこで、カメラ物標の方位の時間変化及びレーダ物標の方位の時間変化にさらに基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合することとした。
【0037】
よって、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ物標の概算距離を算出することなく、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。以下に、カメラ物標検知部31、レーダ物標検知部32及び物標統合部33の処理を具体的に説明する。
【0038】
(本開示のカメラ物標及びレーダ物標の検知処理)
まず、本開示のカメラ物標の検知処理について説明する。本開示のカメラ物標の検知処理を
図4に示す。
図4では、人間P1、P2が存在しており、人間P1の手前に障害物Oが存在しているが、人間P2の手前に障害物Oが存在していない。
【0039】
カメラ物標検知部31は、カメラ画像Cにおいて、カメラ物標を属性情報とともに検知する(ステップS1)。
図4では、カメラ物標検知部31は、人間P1、P2の矩形領域B1、B2を算出し、矩形領域B1、B2の属性情報確度を算出する。
【0040】
カメラ物標検知部31は、カメラ画像Cにおいて、カメラ物標の画素座標に基づいて、カメラ物標の各時刻での方位を算出する(ステップS2)。
図4では、カメラ物標検知部31は、以下の数式に基づいて、矩形領域B1、B2の方位θ
1、θ
2を算出する:矩形領域B1、B2の方位θ
1、θ
2=(矩形領域B1、B2の中心画素座標-カメラ画像Cの中心画素座標)×カメラ装置1の全画角範囲/カメラ画像Cの全画素個数。
【0041】
カメラ物標検知部31は、カメラ画像Cにおいて、カメラ物標の各時刻での方位に基づいて、カメラ物標の各時刻を含む所定期間内での方位の時間変化を算出する(ステップS3)。各時刻を含む所定期間については、
図6、7を用いて説明する。
【0042】
次に、本開示のレーダ物標の検知処理について説明する。本開示のレーダ物標の検知処理を
図5に示す。
図5では、人間又は障害物等として、レーダ物標RT1、RT2、RT3、RT4が存在している。
【0043】
レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標をクラスタとして検知する(ステップS4)。
図5では、レーダ物標検知部32は、レーダ物標RT1、RT2、RT3、RT4を検知し、物標検知システムSの周辺の監視領域Mとの位置関係を検知する。
【0044】
レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標のレーダ反射方位に基づいて、レーダ物標の各時刻での方位(位相モノパルス方式等)を算出する(ステップS5)。レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標のレーダ反射時間に基づいて、レーダ物標の各時刻での距離(=レーダ反射時間×光速/2)を算出してもよい。
【0045】
レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標の各時刻での方位に基づいて、レーダ物標の各時刻を含む所定期間内での方位の時間変化を算出する(ステップS6)。各時刻を含む所定期間については、
図6、7を用いて説明する。
【0046】
レーダ物標検知部32は、レーダ物標の各時刻での方位について、時間変化のデータ欠損をなくすように、複数フレームのレーダ情報Rの重畳処理を実行する。レーダ物標検知部32は、レーダ物標の各時刻での方位について、ノイズを低減可能であるとともに、時間変化を追従可能であるように、複数フレームのレーダ情報Rの平滑化処理を実行する。
【0047】
よって、レーダ物標の代表座標がノイズを含んでも、レーダ物標の各時刻での方位を平滑化でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。ただし、カメラ物標の代表画素座標がノイズを含んでも、カメラ物標が近距離物標であり、座標ノイズが1画素程度であれば、カメラ物標の各時刻での方位を平滑化する必要はない。
【0048】
(本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合処理)
本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を
図6に示す。
図6では、検知対象である人間が1人横切っており、非検知対象である障害物が1個手前に存在している。
【0049】
物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ物標の各時刻での方位及びカメラ物標の方位の時間変化と、レーダ物標の各時刻での方位及びレーダ物標の方位の時間変化と、の一致に基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合し、物標検知システムSの周辺の監視領域Mとの位置関係を表示する(ステップS7)。
【0050】
ここで、カメラ物標検知部31は、カメラ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い所定期間内において、カメラ物標の方位の時間変化を算出する(ステップS3)。そして、レーダ物標検知部32は、レーダ物標同士が同一方位に位置すると想定される期間より長い所定期間内において、レーダ物標の方位の時間変化を算出する(ステップS6)。具体的には、所定期間は、人間が障害物を横切る期間より長めの期間である。
【0051】
図6では、カメラ物標検知部31は、カメラ検知結果Cにおいて、カメラ方位情報CD1(時刻t
1での人間)、CD2(時刻t
2での人間及び時刻t
1~t
3での障害物)、CD3(時刻t
3での人間)を検知する。そして、レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標RT1(時刻t
1での人間)、RT2(時刻t
2での人間)、RT3(時刻t
3での人間)、RT4(時刻t
1~t
3での障害物)の方位を検知する。
【0052】
しかし、
図6の上段の比較例では、カメラ物標検知部31は、カメラ検知結果Cにおいて、カメラ方位情報CD1~CD3(時刻t
1~t
3での人間)の時間変化Δθ
1≠0を算出せず、カメラ方位情報CD2(時刻t
1~t
3での障害物)の時間変化Δθ
2=0を算出しない。そして、レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標RT1~RT3(時刻t
1~t
3での人間)の方位の時間変化Δθ
1≠0を算出せず、レーダ物標RT4(時刻t
1~t
3での障害物)の方位の時間変化Δθ
2=0を算出しない。
【0053】
すると、
図6の上段の比較例では、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD1~CD3と、レーダ物標RT1、RT4、RT3の方位と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT1、RT4、RT3とを同一の統合物標IT1、IT4、IT3(人間)に誤って統合する。そして、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD2と、レーダ物標RT2の方位と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT2とを同一の統合物標IT2(障害物)に誤って統合する。
【0054】
一方で、
図6の下段の本開示では、カメラ物標検知部31は、カメラ検知結果Cにおいて、カメラ方位情報CD1~CD3(時刻t
1~t
3での人間)の時間変化Δθ
1≠0を算出し、カメラ方位情報CD2(時刻t
1~t
3での障害物)の時間変化Δθ
2=0を算出する。そして、レーダ物標検知部32は、レーダ情報Rにおいて、レーダ物標RT1~RT3(時刻t
1~t
3での人間)の方位の時間変化Δθ
1≠0を算出し、レーダ物標RT4(時刻t
1~t
3での障害物)の方位の時間変化Δθ
2=0を算出する。
【0055】
すると、
図6の下段の本開示では、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD1~CD3及びその時間変化Δθ
1≠0と、レーダ物標RT1~RT3の方位及びその時間変化Δθ
1≠0と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT1~RT3とを同一の統合物標IT1~IT3(人間)に正しく統合する。そして、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD2及びその時間変化Δθ
2=0と、レーダ物標RT4及びその時間変化Δθ
2=0の方位と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT4とを同一の統合物標IT4(障害物)に正しく統合する。
【0056】
よって、複数物標の各時刻での方位が同一である期間(時刻t2)が長くても、複数物標の方位の時間変化(時刻t1~t3)が相違する可能性が高くなり、複数物標を異なる物標として分離できるため、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0057】
本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合処理を
図7にも示す。
図7では、検知対象である人間が1人横切っており、非検知対象である障害物が1個手前に存在している。
図7の上段/下段では、検知対象である人間が近い/遠い距離に存在している。
【0058】
そこで、レーダ物標検知部32は、レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される所定期間内において、レーダ物標の方位の時間変化を算出する(ステップS6)。そして、カメラ物標検知部31は、レーダ物標の距離が遠い/近いほど長く/短く設定される所定期間内において、カメラ物標の方位の時間変化を算出する(ステップS3)。
【0059】
つまり、検知対象である人間が近い/遠い距離に存在しているときには、人間の歩行速度を一定速度として、人間の方位の時間変化が大きく/小さくなり、人間が障害物を横切る期間が短めの/長めの時間となり、所定期間が短めに/長めに設定される。
【0060】
すると、
図7の上段では、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD1~CD3及びその時間変化Δθ
1≠0と、レーダ物標RT1~RT3の方位及びその時間変化Δθ
1≠0と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT1~RT3とを同一の統合物標IT1~IT3(人間)に正しく統合する。そして、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD2及びその時間変化Δθ
2=0と、レーダ物標RT4及びその時間変化Δθ
2=0の方位と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT4とを同一の統合物標IT4(障害物)に正しく統合する。
【0061】
一方で、
図7の下段では、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD1~CD5及びその時間変化Δθ
1≠0と、レーダ物標RT1~RT5の方位及びその時間変化Δθ
1≠0と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT1~RT5とを同一の統合物標IT1~IT5(人間)に正しく統合する。そして、物標統合部33は、統合結果Iにおいて、カメラ方位情報CD3及びその時間変化Δθ
2=0と、レーダ物標RT6及びその時間変化Δθ
2=0の方位と、の一致に基づいて、当該カメラ物標とレーダ物標RT6とを同一の統合物標IT6(障害物)に正しく統合する。
【0062】
よって、検知対象距離が遠いために方位時間変化が小さくても(歩行速度一定)、複数物標の方位の時間変化(時刻t1~t5)が相違する可能性が高くなり、複数物標を異なる物標として分離できるため、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0063】
本開示のカメラ画像とレーダ情報との統合結果を
図8に示す。
図8では、検知対象である人間が、方位を周期的に変動させ、方位をときどき停止させる。
【0064】
図8の上段では、カメラ物標の各時刻での推定方位と、レーダ物標の各時刻での推定方位(平滑化処理後)と、を示す。
図8の下段では、カメラ物標の各時刻フレームの前後フレーム間での、最小方位と最大方位との間の差分絶対値と、レーダ物標の各時刻フレームの前後フレーム間での、最小方位と最大方位との間の差分絶対値と、を示す。
【0065】
すると、カメラ物標の各時刻での推定方位と、レーダ物標の各時刻での推定方位(平滑化処理後)とは、ほぼ一致している。そして、カメラ物標の最小方位と最大方位との間の差分絶対値と、レーダ物標の最小方位と最大方位との間の差分絶対値とは、ほぼ一致している。よって、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【0066】
ただし、検知対象である人間が、非検知対象である障害物と比べて、大きさや反射強度が小さいことがあり、或いは、同一方向に長時間もあることもある。すると、人間(レーダ物標又はカメラ物標)の方位の時間変化のデータ欠損が生じることがあり、よって、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができないこともある。
【0067】
(本開示の変形例のカメラ物標の検知処理)
本開示の変形例のカメラ物標の検知処理を
図9に示す。
図9では、人間P1、P2が存在しており、人間P1の手前に障害物Oが存在しているが、人間P2の手前に障害物Oが存在していない。そして、カメラ物標の底部座標ではなく、カメラ物標の深度推定に基づいて、カメラ物標の概算距離を算出することとした。ここで、カメラ物標の深度推定では、カメラ物標の底部座標を考慮するのみならず、カメラ物標を構成する全ての画素情報(画素座標又は画素輝度等)を考慮するため、カメラ物標の概算距離を算出するための情報量が増加する。
【0068】
カメラ物標検知部31は、カメラ物標の各時刻での方位に加えて、カメラ物標の深度推定に基づいて、カメラ物標の各時刻での概算距離を算出する(ステップS2)。
【0069】
レーダ物標検知部32は、レーダ物標の各時刻での方位に加えて、レーダ物標のレーダ反射時間に基づいて、レーダ物標の各時刻での距離を算出する(ステップS5)。
【0070】
物標統合部33は、カメラ物標の各時刻での方位及びカメラ物標の各時刻での概算距離と、レーダ物標の各時刻での方位及びレーダ物標の各時刻での距離と、の一致に基づいて、カメラ物標とレーダ物標とを同一物標に統合する(ステップS7)。
【0071】
図9では、カメラ物標検知部31は、カメラ画像Cを入力し、カメラ物標の概算距離を出力する深度推定AIを用いて、カメラ物標の概算距離を算出する(ステップS2)。
【0072】
図9に示していないが、カメラ物標検知部31は、カメラ装置1の焦点距離、カメラ装置1の絞り値、カメラ画像Cの領域毎のボケ程度、カメラ物標の大きさ及びカメラ物標の周辺環境に基づいて、第一原理計算を用いて、カメラ物標の概算距離を算出してもよい。
【0073】
図9に示したように、人間等の物標が障害物等に隠れており、又は、人間等の物標が地面等に接触しておらず、又は、地面等が傾斜面であっても、カメラ物標の概算距離を高精度に算出でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。そして、人間等の物標と障害物等との間の位置関係が時間変化しても、カメラ物標の概算距離を高精度に算出でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。さらに、カメラ装置1が障害物等に隠されていても、カメラ装置1及びレーダ装置2が設置中心位置を揃えていれば、カメラ物標の概算距離を高精度に算出でき、カメラ画像とレーダ情報とを高精度に統合することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の物標検知装置、物標検知プログラム及び物標検知システムは、自動車、農機、建機又はロボット等において、(1)周辺の人間又は障害物等を監視したうえで、周辺の人間又は障害物等と衝突しないような、人間又は障害物等の物標を検知する技術と、(2)周辺の人間等を特別に警告するために、周辺の障害物等をあえて注意しないような、人間又は障害物等の物標を識別する技術と、を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
C:カメラ画像、カメラ検知結果
P、P1、P2:人間
O:障害物
B、B1、B2:矩形領域
G:底部座標
CT:カメラ物標
CD1~CD5:カメラ方位情報
D:深度推定結果
R:レーダ情報
RT、RT1~RT6:レーダ物標
I:統合結果
IT1~IT6:統合物標
M:監視領域
S:物標検知システム
1:カメラ装置
2:レーダ装置
3:物標検知装置
31:カメラ物標検知部
32:レーダ物標検知部
33:物標統合部