(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097624
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】三相交流電線路における事故点標定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20240711BHJP
【FI】
G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001210
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】木村 紀暁
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA02
2G033AB01
2G033AD21
2G033AF02
2G033AG14
(57)【要約】
【課題】 三相交流電線路に生じる事故が簡単かつ確実に検出され、事故点の標定が簡単かつ正確に行える事故点標定方法を提供する。
【解決手段】 事故検出ステップで、三相交流電線路12における零相電流i
10,i
20が用いられて、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故が検出される。電線路12cの事故点Xに事故が生じた場合、事故が生じたc相における事故点Xを挟む電線路12cの2箇所A,Bに相電流i
1c,i
2cとして到達する各事故電流から、各2箇所A,Bに各相電流i
1c,i
2cが到達する各到達時刻t
1,t
2を算出する到達時刻算出ステップが行われる。次に、相電流i
1c,i
2cが電線路12cを伝搬する既定値の伝搬速度v
1と、算出された各到達時刻t
1,t
2と、2箇所A,B間の距離Lとから、事故点Xを算出する事故点算出ステップが行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故を前記三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップと、
前記事故検出ステップで事故が検出された場合、事故が生じた前記相における事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流または前記2箇所に相電圧として到達する各事故電圧から、各前記2箇所に各前記事故電流または各前記事故電圧が到達する各到達時刻を算出する到達時刻算出ステップと、
前記事故電流または前記事故電圧が前記電線路を伝搬する既定値の伝搬速度と前記到達時刻算出ステップにおいて算出された各前記到達時刻と前記2箇所間の距離とから前記電線路における前記事故点を算出する事故点算出ステップと
を備える三相交流電線路における事故点標定方法。
【請求項2】
三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故を前記三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップと、
前記事故検出ステップで事故が検出された場合、事故が生じた前記相における事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流と各零相電流との各到達時間差、または、前記2箇所に相電圧として到達する各事故電圧と零相電圧との各到達時間差を前記2箇所のそれぞれについて算出する到達時間差算出ステップと、
前記到達時間差算出ステップにおいて算出された各前記到達時間差と前記2箇所間の距離とから前記電線路における前記事故点を算出する事故点算出ステップと
を備える三相交流電線路における事故点標定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電線路における事故が生じた箇所を標定する事故点標定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の三相交流電線路における事故点標定方法としては複数あるが、その中には、地絡サージ到達時間差解析方式(以下、サージ方式と記す)と呼ばれる事故点標定方法がある。このサージ方式による事故点標定方法では、送電線の事故発生箇所に生じる事故サージ波が、送電線の事故点を挟む2箇所に到達する到達時間差が使用される。このような事故サージ波は、樹木・鳥獣等の送電線への接触による地絡や送電線への落雷などによって発生する。
【0003】
このサージ方式による事故点標定方法では、例えば、
図1に示すように、送電線の電線路1における事故点Xに地絡や落雷等の事故が発生した場合、その事故点Xを挟む電線路1の2箇所A,Bに事故サージ波がそれぞれ到達する時間が、観測されたその事故サージ波形から算出される。そして、次の(1)式から、箇所Aから事故点Xまでの距離Lxが算出されて、送電線路1における事故箇所が標定される。なお、
図1は、サージ方式が、相電流または零相電流の各箇所A,Bへの到達時刻と、それらの伝搬速度とで算出できることを説明する概念図である。
【数1】
【0004】
ここで、t1,t2は事故サージ波が各箇所A,Bに到達する時刻、Lは箇所A,B間の距離、vは事故サージ波の伝搬速度とする。
【0005】
従来、配電線(送電線)に事故が発生した際、このような事故点標定方法により、事故時のサージ波形から事故箇所が推定される。事故箇所が特定できれば、事故の除去から復旧までの時間を短縮できる。
【0006】
また、特許文献1には、三相送電線路に落雷等によって伝搬する大地波のみを加算器の出力として得、落雷等により送電線路を伝搬する線間波の到達時刻と、加算器の出力によって線間波に遅れて到達する大地波の到達時刻とを求め、両者の到達時間差により事故点を標定する事故点標定方法が開示されている。この事故点標定方法では、その到達時間差と、大地波の単位時間当たりの伝搬速度とから、故障点が標定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の特許文献1に開示された事故点標定方法では、加算器の出力として得られる大地波のみを零相電流として検出して、事故発生の判断を行うことで、事故発生の判断を行うことが容易である。しかしながら、事故点の標定に、送電線路下の地形や地上からの送電線路の高さといった大地の影響により、周波数によって変化する、大地波の伝搬速度を利用する。事故発生の要因や事故検出する箇所等により、大地波に含まれる周波数成分は異なる。このため、大地波の伝搬速度に既定値を使えず、その伝搬速度の測定が必要になるが、運用中の配電系統では、その伝搬速度を測定することが困難である。
【0009】
また、上記従来の
図1を用いて説明した相電流を用いたサージ方式による事故点標定方法では、事故サージ波の伝搬速度は大地の影響を大きく受けないが、事故の発生を、相電流として到達する事故サージ波によって検出している。このため、事故サージ波の判別が難しく、事故発生の判断が困難である。また、事故サージ波が各箇所A,Bに到達する時刻の差(t
1-t
2)には正確な値が要求されるため、各箇所A,BでGNSS(Global Navigation Satellite System)等による時刻同期が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故を三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップと、
事故検出ステップで事故が検出された場合、事故が生じた相における事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流または2箇所に相電圧として到達する各事故電圧から、各2箇所に各事故電流または各事故電圧が到達する各到達時刻を算出する到達時刻算出ステップと、
事故電流または事故電圧が電線路を伝搬する既定値の伝搬速度と到達時刻算出ステップにおいて算出された各到達時刻と2箇所間の距離とから電線路における事故点を算出する事故点算出ステップと
を備える三相交流電線路における事故点標定方法を構成した。
【0011】
本構成によれば、三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故は、事故検出ステップにおいて、三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出される。また、電線路における事故点は、事故電流または事故電圧が電線路を伝搬する既定値の伝搬速度と、事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流または相電圧として到達する各事故電圧から到達時刻算出ステップにおいて算出された各到達時刻と、2箇所間の距離とから、事故点算出ステップにおいて算出される。
【0012】
このため、三相交流電線路に生じる事故は、事故発生の判断が容易な零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出され、事故点の標定は、零相電流のように伝搬速度測定の必要がない、事故電流または事故電圧の既定値の伝搬速度と、伝搬速度が大地から受ける影響の低い相電流または相電圧である各事故電流または各事故電圧の2箇所への到達時刻とを用いて、行われる。よって、三相交流電線路に生じる事故の発生は、零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて簡単かつ確実に検出され、事故点の標定は、伝搬速度測定の必要のない事故電流または事故電圧の伝搬速度と、伝搬速度が大地から受ける影響の低い各事故電流または各事故電圧の2箇所への到達時刻とを基にして、簡単かつ正確に行える。
【0013】
また、本発明は、
三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故を三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップと、
事故検出ステップで事故が検出された場合、事故が生じた相における事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流と各零相電流との各到達時間差、または、2箇所に相電圧として到達する各事故電圧と零相電圧との各到達時間差を2箇所のそれぞれについて算出する到達時間差算出ステップと、
到達時間差算出ステップにおいて算出された各到達時間差と2箇所間の距離とから電線路における事故点を算出する事故点算出ステップと
を備える三相交流電線路における事故点標定方法を構成した。
【0014】
本構成によれば、三相交流電線路のいずれかの相に生じる事故は、事故検出ステップにおいて、三相交流電線路における零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出される。また、電線路における事故点は、事故点を挟む電線路の2箇所に相電流として到達する各事故電流と各零相電流との、または、相電圧として到達する各事故電圧と各零相電圧との、到達時間差算出ステップにおいて算出される各到達時間差と、2箇所間の距離とから、事故点算出ステップにおいて算出される。
【0015】
このため、三相交流電線路に生じる事故は、事故発生の判断が容易な零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出され、事故点の標定は、各事故電流と各零相電流、または各事故電圧と各零相電圧との各到達時間差を用いて、行われる。よって、三相交流電線路に生じる事故の発生は、零相電流または零相電圧の少なくとも一方を用いて簡単かつ確実に検出され、事故点の標定は、各電流または各電圧のいずれの伝搬速度の測定を行うことなく、しかも、時刻同期を行うことなく、各事故電流と各零相電流、または各事故電圧と各零相電圧との2箇所への各到達時間差を基にして、簡単かつ正確に行える。
【発明の効果】
【0016】
この結果、本発明によれば、三相交流電線路に生じる事故が簡単かつ確実に検出され、事故点の標定が簡単かつ正確に行える、三相交流電線路における事故点標定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の三相交流電線路における事故点標定方法を模式的に表す図である。
【
図2】本発明の第1および第2の各実施の形態による三相交流電線路における事故点標定方法が適用される三相交流回路を示す回路図である。
【
図3】第1の実施の形態による三相交流電線路における事故点標定方法において、事故が生じた相の電線路を模式的に表す図である。
【
図4】第2の実施の形態による三相交流電線路における事故点標定方法において、事故が生じた相の電線路を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明による三相交流電線路における事故点標定方法を実施するための形態について説明する。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施の形態による三相交流電線路における事故点標定方法が適用される三相交流回路を示す回路図である。
【0020】
三相交流回路は、対称三相交流電源11に三相交流電線路12が接続されて構成される。対称三相交流電源11は、a相電源11a、b相電源11bおよびc相電源11cから構成される。三相交流電線路12は、a相の相電流iaが線電流として流れる電線路12a、b相の相電流ibが線電流として流れる電線路12b、および、c相の相電流icが線電流として流れる電線路12cから構成される。
【0021】
本実施の形態では、一例として、三相交流電線路12の電線路12cにおける事故点Xに地絡や落雷等の事故が発生したものと、仮定する。事故点Xを挟む三相交流電線路12の2箇所A,Bには、各相電流ia,ib,icを測定する電流センサ13、および、各相に流れる電流の和である零相電流を測定する零相変流器14が設けられている。ここで、箇所Aにおいて各電流センサ13によって測定される各相電流ia,ib,icを相電流i1a,i1b,i1c、箇所Bにおいて各電流センサ13によって測定される各相電流ia,ib,icを相電流i2a,i2b,i2cと表すことにする。また、箇所Aにおいて零相変流器14によって測定される零相電流i0を零相電流i10、箇所Bにおいて零相変流器14によって測定される零相電流i0を零相電流i20と表すことにする。
【0022】
この第1の実施の形態による三相交流電線路12における事故点標定方法は、次のように行われる。
【0023】
最初に、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故を、三相交流電線路12における零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップが行われる。本実施形態では、2箇所A,Bのそれぞれにおいて事故波形を観測し、各相電流i1a,i1b,i1cおよび各相電流i2a,i2b,i2cの各電流センサ13による測定値の記録、並びに、零相電流i10および零相電流i20の各零相変流器14による測定値の記録が行われている。そして、本実施形態では、この事故検出ステップで、三相交流電線路12における零相電流i10および零相電流i20が用いられて、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故が検出される。この事故検出は、零相電流i0を用いて行う構成に限らず、零相電圧を用いて行ってもよく、さらに、零相電流i0と零相電圧との双方を用いて行うようにしてもよい。
【0024】
上記の事故検出ステップで事故が検出された場合、例えば、
図2に示すようにc相の電線路12cの事故点Xに事故が生じた場合、事故が生じたc相における事故点Xを挟む電線路12cの2箇所A,Bに相電流i
1c,i
2cとして到達する各事故電流から、各2箇所A,Bに各相電流i
1c,i
2cが到達する各到達時刻t
1,t
2を算出する到達時刻算出ステップが行われる。
【0025】
次に、相電流i1c,i2cが電線路12cを伝搬する既定値の伝搬速度v1と、上記の到達時刻算出ステップにおいて算出された各到達時刻t1,t2と、2箇所A,B間の距離Lとから、電線路12cにおける事故点Xを算出する事故点算出ステップが行われる。
【0026】
ここで、事故が生じた相の電線路12cは、模式的に
図3に示すように表すことができる。事故点Xは、箇所Aから距離Lxの位置にあり、2箇所A,B間の距離はLとする。事故点Xからは各箇所A,Bへ向けて事故電流である相電流i
1c,i
2cが伝搬速度v
1で伝搬する。各2箇所A,Bに各相電流i
1c,i
2cが到達する各到達時刻は、図示するようにt
1,t
2である。
【0027】
この際、次の(2)式が成立し、この(2)式から次の(3)式が導かれる。(3)式では伝搬速度が相電流i
1c,i
2cの伝搬速度v
1に限定されている。
【数2】
【0028】
事故点算出ステップにおける事故点Xの算出は、上記の(3)式によって距離Lxを算出することで行われる。
【0029】
従来、三相交流電線路における事故の発生を零相電流の事故波形から解析して、零相電流を基に判断した場合、零相電流が大地の影響を受けて変化することから、零相電流の伝搬速度を測定することが必要であった。また、三相交流電線路における事故の発生を相電流の事故波形から解析して、相電流を基に判断した場合、事故発生の判断が困難であった。そこで、本実施形態では、事故検出と事故点標定とに使用する事故波形を、伝搬速度が大地の影響を受け難くて事故点標定に有利な相電流の事故波形と、事故発生の判断が容易で有利な零相電流の事故波形とを区別して用いることで、上記の課題を解決した。
【0030】
すなわち、第1の実施形態による三相交流電線路12における事故点標定方法によれば、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故は、事故検出ステップにおいて、三相交流電線路12における零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出される。また、電線路12における事故点Xは、事故電流である例えば相電流i1c,i2cが電線路12cを伝搬する既定値の伝搬速度v1と、事故点Xを挟む電線路12cの2箇所に到達する各相電流i1c,i2cから到達時刻算出ステップにおいて算出された各到達時刻t1,t2と、2箇所A,B間の距離Lとから、事故点算出ステップにおいて算出される。
【0031】
このため、三相交流電線路12に生じる事故は、事故発生の判断が容易な零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出され、事故点Xの標定は、零相電流i0のように伝搬速度測定の必要がない、例えば相電流i1c,i2cの既定値の伝搬速度v1と、伝搬速度v1が大地から受ける影響の低い各相電流i1c,i2cの2箇所A,Bへの到達時刻t1,t2とを用いて、行われる。零相電流i0の伝搬速度は三相交流電線路12の下方における大地の影響を受けて変化するが、相電流i1c,i2cの伝搬速度v1は光速に近い既定値になる。
【0032】
よって、三相交流電線路12に生じる事故の発生は、零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて簡単かつ確実に検出され、事故点Xの標定は、伝搬速度測定の必要のない相電流i1c,i2cの伝搬速度v1と、伝搬速度v1が大地から受ける影響の低い各相電流i1c,i2cの2箇所A,Bへの到達時刻t1,t2とを基にして、簡単かつ正確に行える。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態による三相交流電線路における事故点標定方法について、説明する。この第2の実施の形態による事故点標定方法も、
図2の回路図に示される三相交流回路に適用される場合について、説明する。
【0034】
第2の実施の形態による事故点標定方法においても、最初に、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故を、三相交流電線路12における零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出する事故検出ステップが行われる。本実施形態でも、2箇所A,Bのそれぞれにおいて、各相電流i1a,i1b,i1cおよび各相電流i2a,i2b,i2cの各電流センサ13による測定値の記録、並びに、零相電流i10および零相電流i20の各零相変流器14による測定値の記録が行われている。そして、第2の実施形態でも、この事故検出ステップで、三相交流電線路12における零相電流i10および零相電流i20が用いられて、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故が検出される。この事故検出も、零相電流i0を用いて行う構成に限らず、零相電圧を用いて行ってもよく、さらに、零相電流i0と零相電圧との双方を用いて行うようにしてもよい。
【0035】
上記の事故検出ステップで事故が検出された場合、例えば、
図2に示すようにc相の電線路12cの事故点Xに事故が生じた場合、事故が生じたc相における事故点Xを挟む電線路12cの2箇所A,Bに事故電流として到達する各相電流i
1c,i
2cと、2箇所A,Bに到達する各零相電流i
10,i
20との各到達時間差Δt
1,Δt
2を、2箇所A,Bのそれぞれについて算出する到達時間差算出ステップが行われる。各相電流ia,ib,icと各零相電流i
0とは、各電線路12a,12b,12cにおける伝搬速度がv
1とv
0と異なるため、観測点である各箇所A,Bに両者が到達する時間に差が生じる。
【0036】
到達時間差算出ステップが行われると、次に、上記の到達時間差算出ステップにおいて算出された各到達時間差Δt1,Δt2と2箇所A,B間の距離Lとから、電線路12cにおける事故点Xを算出する事故点算出ステップが行われる。
【0037】
ここで、事故が生じた相の電線路12cは、模式的に
図4に示すように表すことができる。本例でも、事故点Xは、箇所Aから距離Lxの位置にあり、2箇所A,B間の距離はLとする。事故点Xからは各箇所A,Bへ向けて事故電流である相電流i
1c,i
2cが伝搬速度v
1でc相の電線路12cを伝搬し、零相電流i
10,i
20が伝搬速度v
0で各相の電線路12a,12b,12cを伝搬する。2箇所A,Bに到達する各相電流i
1c,i
2cと各零相電流i
10,i
20との各到達時間差は、図示するようにΔt
1,Δt
2と表す。
【0038】
この際、次の(4)式が成立し、この(4)式から次の(5)式が導かれる。
【数3】
【0039】
事故点算出ステップにおける事故点Xの算出は、上記の(5)式によって距離Lxを算出することで行われる。
【0040】
このような第2の実施形態による三相交流電線路12における事故点標定方法によれば、事故電流である相電流ia,ib,icと零相電流i0との2種類の事故波形の、各箇所A,Bへの到達時間差Δt1,Δt2を用いて、測定する事故波形を増やすことで、事故点Xの計算に必要なパラメータが(5)式に示されるように少なくなる。
【0041】
すなわち、第2の実施形態による三相交流電線路12における事故点標定方法によれば、三相交流電線路12のいずれかの相に生じる事故は、事故検出ステップにおいて、三相交流電線路12における零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出される。また、電線路12における事故点Xは、例えば、事故点Xを挟む電線路12cの2箇所A,Bに到達する各相電流i1c,i2cと各零相電流i10,i20との、到達時間差算出ステップにおいて算出される各到達時間差Δt1,Δt2と、2箇所A,B間の距離Lとから、事故点算出ステップにおいて算出される。
【0042】
このため、三相交流電線路12cに生じる事故は、事故発生の判断が容易な零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて検出され、事故点Xの標定は、各相電流i1c,i2cと各零相電流i10,i20との各到達時間差Δt1,Δt2を用いて、行われる。よって、三相交流電線路12cに生じる事故の発生は、零相電流i0または零相電圧の少なくとも一方を用いて簡単かつ確実に検出され、事故点Xの標定は、事故電流である相電流ia,ib,icおよび零相電流i0のいずれの伝搬速度v1およびv0の測定を行うことなく、しかも、時刻同期を行うことなく、事故電流である相電流ia,ib,icと零相電流i0との2箇所A,Bへの各到達時間差Δt1,Δt2を基にして、簡単かつ正確に行える。
【0043】
なお、上記の各実施形態では、事故点標定における事故波形として、相電流ia,ib,icおよび零相電流i0を使用した場合について説明したが、相電圧および零相電圧を事故波形として用いる場合においても、上記の各実施形態と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0044】
11…対称三相交流電源、11a…a相電源、11b…b相電源、11c…c相電源、12…三相交流電線路、12a…a相の電線路、12b…b相の電線路、12c…c相の電線路、13…電流センサ、14…零相変流器、A,B…電線路12の各箇所、X…事故点