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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097633
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】負荷駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/06 20060101AFI20240711BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240711BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H03K17/06 063
H03K17/687 A
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001223
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】田部 一久
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX07
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX03
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY13
5J055EY17
5J055EZ18
(57)【要約】
【課題】少ない制御信号線で、かつ一般的な回路部品で簡単に構成され、負荷をより高電圧で駆動可能な負荷駆動回路を提供すること。
【解決手段】本発明では、制御信号線CL1が接地電位GNDにある第1期間T1には、電源電位VccからダイオードD1を通してコンデンサC1が充電されて、接続点Aおよび負荷の第1端子BZ1aが、電源電位VccからダイオードD1の順方向電圧Vfを差し引いたのに等しい正の充電電位(Vcc-Vf)になるとともに、第1端子BZ1aから第1抵抗素子R1を介して、負荷の第2端子BZ1bが充電電位になる。制御信号線CL1が制御電位Hにある第2期間T2には、第2端子BZ1bが、オンしたスイッチング素子Q1を介する放電によって、接地電位GNDになる一方、接続点Aおよび第1端子BZ1aが、充電電位から、コンデンサC1を介して制御電位H分だけ昇圧された昇圧電位(Vcc-Vf+H)に一旦達する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する制御信号供給部と、
電源電位と上記制御信号線との間に直列に順に接続されたダイオードとコンデンサとを含むチャージポンプ回路を備え、
上記ダイオードは上記電源電位から上記コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記ダイオードと上記コンデンサとの間の接続点が上記第1端子に接続され、
上記第2端子と上記接地電位との間に接続されたスイッチング素子を備え、
上記スイッチング素子は、上記制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1端子と上記第2端子との間に接続された第1抵抗素子を備え、
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点および上記第1端子が、上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になるとともに、上記第1端子から上記第1抵抗素子を介して、上記第2端子が上記充電電位になり、
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記第2端子が、オンした上記スイッチング素子を介する放電によって、上記接地電位になる一方、上記接続点および上記第1端子が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位に一旦達する
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項2】
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
上記負荷の上記第2端子は接地電位に接続されており、
上記接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する制御信号供給部と、
電源電位と上記制御信号線との間に直列に順に接続されたダイオードとコンデンサとを含むチャージポンプ回路を備え、
上記ダイオードは上記電源電位から上記コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記ダイオードと上記コンデンサとの間の接続点と上記第1端子との間に設けられたPNP型バイポーラトランジスタまたはPチャネル型電界効果トランジスタと、
上記PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられたスイッチング素子とを備え、
上記PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記接続点、上記第1端子に接続されるとともに、上記PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、ベース抵抗を介して、上記スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記接続点、上記第1端子、上記スイッチング素子に接続されるとともに、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記スイッチング素子は、上記制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1端子と上記第2端子との間に接続された第1抵抗素子を備え、
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点が上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になるとともに、上記スイッチング素子がオフすることによって、上記PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって上記PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、上記第1抵抗素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になり、
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記接続点が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位になるとともに、上記スイッチング素子がオンして上記ベース抵抗または上記ゲートソース間抵抗の上記スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて上記PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第1端子が上記昇圧電位に一旦達する
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の負荷駆動回路において、
上記制御電位は上記電源電位に等しい
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載の負荷駆動回路において、
上記ダイオードはショットキーバリアダイオードである
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項5】
請求項1または2に記載の負荷駆動回路において、さらに、
上記コンデンサと上記制御信号線との間に介挿された第2抵抗素子を備える
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項6】
請求項1または2に記載の負荷駆動回路において、
上記スイッチング素子は、NPN型バイポーラトランジスタまたはNチャネル型電界効果トランジスタであり、
上記スイッチング素子が上記NPN型バイポーラトランジスタである場合は、上記制御信号線と上記NPN型バイポーラトランジスタのベース端子との間にベース抵抗が介挿される一方、
上記スイッチング素子が上記Nチャネル型電界効果トランジスタである場合は、上記Nチャネル型電界効果トランジスタのソース端子とゲート端子との間にゲートソース間抵抗が接続されている
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項7】
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す第1制御信号を、第1制御信号線を通して供給する第1制御信号供給部と、
上記第1制御信号とは逆の位相で、上記接地電位と上記制御電位とを上記期間毎に交互に繰り返す第2制御信号を、第2制御信号線を通して供給する第2制御信号供給部と、
電源電位と上記第1制御信号線との間に直列に順に接続された第1ダイオードと第1コンデンサとを含む第1チャージポンプ回路と、
上記電源電位と上記第2制御信号線との間に直列に順に接続された第2ダイオードと第2コンデンサとを含む第2チャージポンプ回路とを備え、
上記第1ダイオード、上記第2ダイオードは、上記電源電位からそれぞれ上記第1コンデンサ、第2コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記第1ダイオードと上記第1コンデンサとの間の第1接続点と上記第1端子との間に設けられた第1PNP型バイポーラトランジスタまたは第1Pチャネル型電界効果トランジスタと、
上記第1PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられた第1スイッチング素子とを備え、
上記第1PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記第1PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記第1接続点、上記第1端子に接続されるとともに、上記第1PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、第1ベース抵抗を介して、上記第1スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記第1接続点、上記第1端子、上記第1スイッチング素子に接続されるとともに、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、第1ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記第2ダイオードと上記第2コンデンサとの間の第2接続点と上記第2端子との間に設けられた第2PNP型バイポーラトランジスタまたは第2Pチャネル型電界効果トランジスタと、
上記第2PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられた第2スイッチング素子とを備え、
上記第2PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記第2PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記第2接続点、上記第2端子に接続されるとともに、上記第2PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、第2ベース抵抗を介して、上記第2スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記第2接続点、上記第2端子、上記第2スイッチング素子に接続されるとともに、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、第2ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記第1端子と上記接地電位との間に接続された第3スイッチング素子と、
上記第2端子と上記接地電位との間に接続された第4スイッチング素子とを備え、
上記第1スイッチング素子および上記第4スイッチング素子は、上記第1制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記第1制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第2スイッチング素子および上記第3スイッチング素子は、上記第2制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記第2制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1制御信号線が上記接地電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記制御電位にある第1期間には、
上記第1チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第1ダイオードを通して上記第1コンデンサが充電されて、上記第1接続点が上記電源電位から上記第1ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の第1充電電位になるとともに、上記第1スイッチング素子がオフすることによって、上記第1PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第1ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、オンした上記第3スイッチング素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になり、
上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の電位を第2充電電位としたとき、上記第2接続点は、上記第2充電電位から、上記第2コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第2昇圧電位になるとともに、上記第2スイッチング素子がオンして上記第2ベース抵抗または上記第2ゲートソース間抵抗の上記第2スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記第2PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れて上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第2端子が上記第2昇圧電位になり、
上記第1制御信号線が上記制御電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記接地電位にある第2期間には、
上記第1チャージポンプ回路で、上記第1接続点が、上記第1充電電位から、上記第1コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第1昇圧電位になるとともに、上記第1スイッチング素子がオンして上記第1ベース抵抗または上記第1ゲートソース間抵抗の上記第1スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記第1PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第1端子が上記第1昇圧電位になり、
上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードを通して上記第2コンデンサが充電されて、上記第2接続点が上記第2充電電位になるとともに、上記第2スイッチング素子がオフすることによって、上記第2PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れなくなって上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第2ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、オンした上記第4スイッチング素子を介する放電によって、上記第2端子が接地電位になる
ことを特徴とする負荷駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は負荷駆動回路に関し、より詳しくは、負荷が有する2つの端子の間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動する負荷駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の負荷駆動回路としては、例えば特許文献1(特許第2931594号明細書)に開示されているように、シングルエンド駆動方式のものが知られている。同文献の例では、電源電位と接地電位との間に、負荷である圧電ブザーとスイッチング素子であるエミッタ接地トランジスタとを直列に接続して、上記エミッタ接地トランジスタのオン、オフをパルス信号(低レベルと高レベルとを交互に繰り返す制御信号)によって制御している。これにより、上記圧電ブザーの両端子の間にパルス状の駆動電圧を印加して、上記圧電ブザーを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2931594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今では、電子機器の電源として、例えば、乾電池を2本だけ直列接続にして用いる場合や、リチウムイオンボタン電池1個を電源とする場合などが増加しており、電源電圧が低電圧化する傾向にある。このため、上記シングルエンド駆動方式では、負荷である圧電ブザーを駆動する駆動電圧(より詳しくは、駆動電圧の振幅)が低下して、音量が不足することがある。
【0005】
ここで、上記シングルエンド駆動方式に代えて、公知のフルブリッジ駆動方式(Hブリッジ駆動方式とも呼ばれる。)によれば、上記負荷である圧電ブザーの両端子の間に、電源電圧の約2倍の振幅をもつ駆動電圧を印加できる。しかしながら、フルブリッジ駆動方式では、Hブリッジのオン、オフを制御する制御信号として、低レベルと高レベルとを互いに逆位相で(つまり、相補に)繰り返す2つの制御信号を必要とする。このため、それら2つの制御信号を伝えるために、制御信号線を、シングルエンド駆動方式の場合に比して1本多く、2本設ける必要がある。限られた回路資源の中で制御信号線を1本多く設けることは、難しいことがある。
【0006】
また、上記シングルエンド駆動方式において、負荷である圧電ブザーに対して並列に昇圧コイルを接続して、駆動電圧の振幅を増大させる方式も考えられる。しかしながら、昇圧コイルは、他の一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)に比べて高価で、製造メーカが少なく、また、メーカによって形状が様々である。このため、互換性ある代替品を調達しづらい、代替品に対応するためにプリント配線板(PWB)の設計変更を余儀なくされる等の様々な不便が生ずる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、少ない制御信号線で、かつ一般的な回路部品で簡単に構成され、負荷をより高電圧で駆動可能な負荷駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の局面では、この開示の負荷駆動回路は、
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する制御信号供給部と、
電源電位と上記制御信号線との間に直列に順に接続されたダイオードとコンデンサとを含むチャージポンプ回路を備え、
上記ダイオードは上記電源電位から上記コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記ダイオードと上記コンデンサとの間の接続点が上記第1端子に接続され、
上記第2端子と上記接地電位との間に接続されたスイッチング素子を備え、
上記スイッチング素子は、上記制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1端子と上記第2端子との間に接続された第1抵抗素子を備え、
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点および上記第1端子が、上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になるとともに、上記第1端子から上記第1抵抗素子を介して、上記第2端子が上記充電電位になり、
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記第2端子が、オンした上記スイッチング素子を介する放電によって、上記接地電位になる一方、上記接続点および上記第1端子が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位に一旦達する
ことを特徴とする。
【0009】
本明細書で、「負荷」とは、典型的には、圧電ブザー、超音波スピーカなどの、容量リアクタンスを含み、比較的インピーダンスの高い負荷を対象とする。
【0010】
「制御信号供給部」は、この負荷駆動回路の外部から「制御信号」を受ける入力端子を含み、この入力端子に受けた「制御信号」を「制御信号線を通して供給する」態様をとり得る。それに代えて、「制御信号供給部」は、「制御信号」を作成(発生)する回路などを含み、自身が作成した「制御信号」を「制御信号線を通して供給する」態様をとり得る。
【0011】
「接地電位」とは、電位ゼロに相当する。「制御電位」は、電位ゼロよりも高い電源電位までの電位をとることができ、典型的には、電源電位である。
【0012】
「接続され」とは、物理的に直接接続されている態様に限られず、例えば導電物を介して間接的に導通するように接続されている態様を含む。
【0013】
上記接続点、上記第1端子、上記第2端子等が「~電位になる」とは、上記接続点、上記第1端子、上記第2端子等の電位が、特に「実質的に」と明示した場合および明示しない場合を含めて、実質的に~電位になることを意味する。本明細書で、「実質的に」とは、この負荷駆動回路が負荷を駆動する手順(仕方)に影響を与えない微差を含む意味である。例えば、上記スイッチング素子がNPN型バイポーラトランジスタなどで構成される場合に、オンしたNPN型バイポーラトランジスタが示すコレクタ・エミッタ間電圧(飽和電圧)などは、この負荷駆動回路が負荷を駆動する手順に影響を与えない微差とされ得る。
【0014】
この開示の負荷駆動回路では、制御信号供給部が、接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する。
【0015】
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点および上記第1端子が、上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になる。さらに、上記第1端子から上記第1抵抗素子を介して、上記第2端子が上記充電電位になる。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、実質的にゼロになる。
【0016】
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記第2端子が、オンした上記スイッチング素子を介する放電によって、上記接地電位になる。一方、上記チャージポンプ回路で、上記接続点および上記第1端子が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位に一旦達する。この後、上記接続点および上記第1端子の電位は、上記第1抵抗素子とオン状態の上記スイッチング素子とを介する上記接地電位への放電によって、低下してゆく。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、最大で上記昇圧電位になる。
【0017】
このように、この負荷駆動回路によれば、上記第1期間には、上記駆動電圧が実質的にゼロになり、上記第2期間には、上記駆動電圧が最大で上記昇圧電位になる。つまり、上記昇圧電位が、上記負荷に対する駆動電圧のピーク・ツゥ・ピークの振幅となる。この結果、この負荷駆動回路によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷をより高電圧で駆動できる。
【0018】
また、この負荷駆動回路は、上記制御信号線が1本で済み、したがって、公知のフルブリッジ駆動方式(Hブリッジ駆動方式)に比して少ない制御信号線で構成され得る。また、この負荷駆動回路は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。
【0019】
第2の局面では、この開示の負荷駆動回路は、
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
上記負荷の上記第2端子は接地電位に接続されており、
上記接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する制御信号供給部と、
電源電位と上記制御信号線との間に直列に順に接続されたダイオードとコンデンサとを含むチャージポンプ回路を備え、
上記ダイオードは上記電源電位から上記コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記ダイオードと上記コンデンサとの間の接続点と上記第1端子との間に設けられたPNP型バイポーラトランジスタまたはPチャネル型電界効果トランジスタと、
上記PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられたスイッチング素子とを備え、
上記PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記接続点、上記第1端子に接続されるとともに、上記PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、ベース抵抗を介して、上記スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記接続点、上記第1端子、上記スイッチング素子に接続されるとともに、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記スイッチング素子は、上記制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1端子と上記第2端子との間に接続された第1抵抗素子を備え、
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点が上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になるとともに、上記スイッチング素子がオフすることによって、上記PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって上記PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、上記第1抵抗素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になり、
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記接続点が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位になるとともに、上記スイッチング素子がオンして上記ベース抵抗または上記ゲートソース間抵抗の上記スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて上記PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第1端子が上記昇圧電位に一旦達する
ことを特徴とする。
【0020】
この開示の負荷駆動回路では、制御信号供給部が、接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す制御信号を、制御信号線を通して供給する。
【0021】
上記制御信号線が上記接地電位にある第1期間には、上記チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記ダイオードを通して上記コンデンサが充電されて、上記接続点が上記電源電位から上記ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の充電電位になる。これとともに、上記スイッチング素子がオフすることによって、上記PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって、上記PNP型バイポーラトランジスタがオフする。または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって、上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオフする。さらに、上記第1抵抗素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になる。上記第2端子は常に接地電位にある。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、実質的にゼロになる。
【0022】
上記制御信号線が上記制御電位にある第2期間には、上記チャージポンプ回路で、上記接続点が、上記充電電位から、上記コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された昇圧電位になる。これとともに、上記スイッチング素子がオンして、上記ベース抵抗または上記ゲートソース間抵抗の上記スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる。この結果、上記PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて、上記PNP型バイポーラトランジスタがオンする。または、上記Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオンする。これによって、上記第1端子が上記昇圧電位に一旦達する。この後、上記第1端子の電位は、上記第1抵抗素子を介する上記接地電位への放電によって、低下してゆく。上記第2端子は常に接地電位にある。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、最大で上記昇圧電位になる。
【0023】
このように、この負荷駆動回路によれば、上記第1期間には、上記駆動電圧が実質的にゼロになり、上記第2期間には、上記駆動電圧が最大で上記昇圧電位になる。つまり、上記昇圧電位が、上記負荷に対する駆動電圧のピーク・ツゥ・ピークの振幅となる。この結果、この負荷駆動回路によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷をより高電圧で駆動できる。
【0024】
また、この負荷駆動回路は、上記制御信号線が1本で済み、したがって、公知のフルブリッジ駆動方式(Hブリッジ駆動方式)に比して少ない制御信号線で構成され得る。また、この負荷駆動回路は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。この負荷駆動回路は、第1の局面の負荷駆動回路に対して、上記PNP型バイポーラトランジスタまたは上記Pチャネル型電界効果トランジスタを余分に要するが、上記負荷の第2端子を接地できる利点がある。
【0025】
一実施形態の負荷駆動回路では、
上記制御電位は上記電源電位に等しい
ことを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の負荷駆動回路では、上記制御電位が上記電源電位と上記接地電位との間にある場合に比して、上記昇圧電位をさらに高めることができる。この結果、上記負荷をより高電圧で駆動できる。具体的には、上記接地電位をゼロ、上記電源電位をVcc、上記ダイオードの順方向電圧をVfとしたとき、上記昇圧電位を実質的に(2Vcc-Vf)にすることができる。ここで、通常は、Vcc≧3Vであり、Vf≒0.3~0.6Vであるから、2Vcc≫Vfである。この結果、上記負荷を、従来例のシングルエンド駆動方式に比して約2倍の電圧で駆動できる。
【0027】
一実施形態の負荷駆動回路では、
上記ダイオードはショットキーバリアダイオードである
ことを特徴とする。
【0028】
一般に、ショットキーバリアダイオードは、PN接合ダイオードに比して、順方向電圧が小さい。通常は、PN接合ダイオードの順方向電圧は0.5~0.6Vであるのに対して、ショットキーバリアダイオードの順方向電圧は約0.3Vである。したがって、この一実施形態の負荷駆動回路では、上記昇圧電位を高めることができる。
【0029】
一実施形態の負荷駆動回路では、さらに、
上記コンデンサと上記制御信号線との間に介挿された第2抵抗素子を備える
ことを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の負荷駆動回路では、上記制御信号が上記接地電位と上記制御電位との間で遷移するのに伴って上記制御信号線と上記コンデンサとの間で流れる突入電流が、上記第2抵抗素子によって制限される。この負荷駆動回路の設計段階で、上記第2抵抗素子の抵抗値は、その突入電流の値が上記制御信号供給部(例えば、集積回路によって構成される)の出力電流定格(上限値)を超えないように、設定され得る。それにより、上記制御信号供給部が保護される。
【0031】
一実施形態の負荷駆動回路では、
上記スイッチング素子は、NPN型バイポーラトランジスタまたはNチャネル型電界効果トランジスタであり、
上記スイッチング素子が上記NPN型バイポーラトランジスタである場合は、上記制御信号線と上記NPN型バイポーラトランジスタのベース端子との間にベース抵抗が介挿される一方、
上記スイッチング素子が上記Nチャネル型電界効果トランジスタである場合は、上記Nチャネル型電界効果トランジスタのソース端子とゲート端子との間にゲートソース間抵抗が接続されている
ことを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の負荷駆動回路では、上記制御信号線が上記接地電位にあるとき、上記スイッチング素子としての上記NPN型バイポーラトランジスタまたは上記Nチャネル型電界効果トランジスタが安定してオフする。一方、上記制御信号線が上記制御電位にあるとき、上記スイッチング素子としての上記NPN型バイポーラトランジスタまたは上記Nチャネル型電界効果トランジスタが安定してオンする。しかも、上記スイッチング素子は、NPN型バイポーラトランジスタまたはNチャネル型電界効果トランジスタであるから、簡単に構成され得る。したがって、この負荷駆動回路は、さらに簡単に構成され得る。
【0033】
第3の局面では、この開示の負荷駆動回路は、
負荷が有する第1端子と第2端子との間に交番電圧を印加して上記負荷を駆動するように構成された負荷駆動回路であって、
接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す第1制御信号を、第1制御信号線を通して供給する第1制御信号供給部と、
上記第1制御信号とは逆の位相で、上記接地電位と上記制御電位とを上記期間毎に交互に繰り返す第2制御信号を、第2制御信号線を通して供給する第2制御信号供給部と、
電源電位と上記第1制御信号線との間に直列に順に接続された第1ダイオードと第1コンデンサとを含む第1チャージポンプ回路と、
上記電源電位と上記第2制御信号線との間に直列に順に接続された第2ダイオードと第2コンデンサとを含む第2チャージポンプ回路とを備え、
上記第1ダイオード、上記第2ダイオードは、上記電源電位からそれぞれ上記第1コンデンサ、第2コンデンサへ向かって順方向に電流を流す一方、逆方向の電流を遮断するようになっており、
上記第1ダイオードと上記第1コンデンサとの間の第1接続点と上記第1端子との間に設けられた第1PNP型バイポーラトランジスタまたは第1Pチャネル型電界効果トランジスタと、
上記第1PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられた第1スイッチング素子とを備え、
上記第1PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記第1PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記第1接続点、上記第1端子に接続されるとともに、上記第1PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、第1ベース抵抗を介して、上記第1スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記第1接続点、上記第1端子、上記第1スイッチング素子に接続されるとともに、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、第1ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記第2ダイオードと上記第2コンデンサとの間の第2接続点と上記第2端子との間に設けられた第2PNP型バイポーラトランジスタまたは第2Pチャネル型電界効果トランジスタと、
上記第2PNP型バイポーラトランジスタのベース端子または上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタのゲート端子と上記接地電位との間に設けられた第2スイッチング素子とを備え、
上記第2PNP型バイポーラトランジスタが設けられている場合は、上記第2PNP型バイポーラトランジスタのエミッタ端子、コレクタ端子が、それぞれ上記第2接続点、上記第2端子に接続されるとともに、上記第2PNP型バイポーラトランジスタの上記ベース端子が、第2ベース抵抗を介して、上記第2スイッチング素子に接続された態様にある一方、
上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられている場合は、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、上記ゲート端子が、それぞれ上記第2接続点、上記第2端子、上記第2スイッチング素子に接続されるとともに、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ソース端子と上記ゲート端子との間に、第2ゲートソース間抵抗が接続された態様にあり、
上記第1端子と上記接地電位との間に接続された第3スイッチング素子と、
上記第2端子と上記接地電位との間に接続された第4スイッチング素子とを備え、
上記第1スイッチング素子および上記第4スイッチング素子は、上記第1制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記第1制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第2スイッチング素子および上記第3スイッチング素子は、上記第2制御信号線が上記接地電位にあるときオフし、上記第2制御信号線が上記制御電位にあるときオンするようになっており、
上記第1制御信号線が上記接地電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記制御電位にある第1期間には、
上記第1チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第1ダイオードを通して上記第1コンデンサが充電されて、上記第1接続点が上記電源電位から上記第1ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の第1充電電位になるとともに、上記第1スイッチング素子がオフすることによって、上記第1PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第1ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、オンした上記第3スイッチング素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になり、
上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の電位を第2充電電位としたとき、上記第2接続点は、上記第2充電電位から、上記第2コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第2昇圧電位になるとともに、上記第2スイッチング素子がオンして上記第2ベース抵抗または上記第2ゲートソース間抵抗の上記第2スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記第2PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れて上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第2端子が上記第2昇圧電位になり、
上記第1制御信号線が上記制御電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記接地電位にある第2期間には、
上記第1チャージポンプ回路で、上記第1接続点が、上記第1充電電位から、上記第1コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第1昇圧電位になるとともに、上記第1スイッチング素子がオンして上記第1ベース抵抗または上記第1ゲートソース間抵抗の上記第1スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる結果、上記第1PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオンし、または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオンすることによって、上記第1端子が上記第1昇圧電位になり、
上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードを通して上記第2コンデンサが充電されて、上記第2接続点が上記第2充電電位になるとともに、上記第2スイッチング素子がオフすることによって、上記第2PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れなくなって上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオフし、または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第2ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオフし、さらに、オンした上記第4スイッチング素子を介する放電によって、上記第2端子が接地電位になる
ことを特徴とする。
【0034】
この開示の負荷駆動回路では、第1制御信号供給部が、接地電位とこの接地電位よりも高い制御電位とを予め定められた期間毎に交互に繰り返す第1制御信号を、第1制御信号線を通して供給する。これとともに、第2制御信号供給部が、上記第1制御信号とは逆の位相で、上記接地電位と上記制御電位とを上記期間毎に交互に繰り返す第2制御信号を、第2制御信号線を通して供給する。
【0035】
上記第1制御信号線が上記接地電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記制御電位にある第1期間には、上記第1チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第1ダイオードを通して上記第1コンデンサが充電されて、上記第1接続点が上記電源電位から上記第1ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の第1充電電位になる。これとともに、上記第1スイッチング素子がオフすることによって、上記第1PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れなくなって、上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオフする。または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第1ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオフする。さらに、オンした上記第3スイッチング素子を介する放電によって、上記第1端子が接地電位になる。一方、上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードの順方向電圧を差し引いたのに等しい正の電位を第2充電電位としたとき、上記第2接続点が、上記第2充電電位から、上記第2コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第2昇圧電位になる。これとともに、上記第2スイッチング素子がオンして、上記第2ベース抵抗または上記第2ゲートソース間抵抗の上記第2スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる。この結果、上記第2PNP型バイポーラトランジスタでエミッタからベースへベース電流が流れて、上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオンする。または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオンする。これによって、上記第2端子が上記第2昇圧電位になる。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、例えば上記第2端子を基準としたとき、上記第2昇圧電位分だけ負になる。
【0036】
上記第1制御信号線が上記制御電位にあり、かつ上記第2制御信号線が上記接地電位にある第2期間には、上記第1チャージポンプ回路で、上記第1接続点が、上記第1充電電位から、上記第1コンデンサを介して上記制御電位分だけ昇圧された第1昇圧電位になる。これとともに、上記第1スイッチング素子がオンして、上記第1ベース抵抗または上記第1ゲートソース間抵抗の上記第1スイッチング素子側の端子が上記接地電位になる。この結果、上記第1PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れて、上記第1PNP型バイポーラトランジスタがオンする。または、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、上記第1Pチャネル型電界効果トランジスタがオンする。これによって、上記第1端子が上記第1昇圧電位になる。一方、上記第2チャージポンプ回路で、上記電源電位から上記第2ダイオードを通して上記第2コンデンサが充電されて、上記第2接続点が上記第2充電電位になる。これとともに、上記第2スイッチング素子がオフすることによって、上記第2PNP型バイポーラトランジスタで上記エミッタから上記ベースへベース電流が流れなくなって、上記第2PNP型バイポーラトランジスタがオフする。または、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタで上記ゲート端子の電位が上記第2ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって、上記第2Pチャネル型電界効果トランジスタがオフする。さらに、オンした上記第4スイッチング素子を介する放電によって、上記第2端子が接地電位になる。したがって、上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)は、例えば上記第2端子を基準としたとき、上記第1昇圧電位分だけ正になる。
【0037】
このように、この負荷駆動回路によれば、例えば上記第2端子を基準としたとき、上記第1期間には、上記駆動電圧が上記第2昇圧電位分だけ負になり、上記第2期間には、上記駆動電圧が上記第1昇圧電位分だけ正になる。つまり、上記第2昇圧電位と上記第1昇圧電位との和が、上記負荷に対する駆動電圧のピーク・ツゥ・ピークの振幅となる。この結果、この負荷駆動回路によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷をより高電圧で駆動できる。例えば、上記制御電位が上記電源電位に等しければ、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、約4倍の電圧で駆動できる。
【0038】
また、この負荷駆動回路は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。ただし、制御信号線については、公知のフルブリッジ駆動方式におけるのと同様に、2本設ける必要がある。
【発明の効果】
【0039】
以上より明らかなように、この開示の負荷駆動回路は、少ない制御信号線で、かつ一般的な回路部品で簡単に構成され、負荷をより高電圧で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1(A)は、この発明の第1実施形態の、チャージポンプ回路を含む負荷駆動回路の構成を示す図である。図1(B)は、その負荷駆動回路における制御信号の電位の時間経過に伴う変化(以下「電位波形」と呼ぶ。)を示す図である。
図2図1(A)の負荷駆動回路の、制御信号線が接地電位にある第1期間における動作を説明する図である。
図3図1(A)の負荷駆動回路の、制御信号線が制御電位にある第2期間における動作を説明する図である。
図4】その負荷駆動回路における制御信号の電位波形に併せて、その負荷駆動回路のチャージポンプ回路に含まれたダイオードとコンデンサとの間の接続点Aの電位波形(すなわち、負荷の第1端子の電位波形)を示す図である。
図5図4に対応して、上記負荷の第2端子の電位波形を示す図である。
図6図4図5に対応して、上記負荷の上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)の波形を示す図である。
図7図7(A)は、この発明の第2実施形態の、チャージポンプ回路を含む負荷駆動回路の構成を示す図である。図7(B)は、その負荷駆動回路における制御信号の電位波形を示す図である。
図8図7(A)の負荷駆動回路の、制御信号線が接地電位にある第1期間における動作を説明する図である。
図9図7(A)の負荷駆動回路の、制御信号線が制御電位にある第2期間における動作を説明する図である。
図10】その負荷駆動回路における制御信号の電位波形に併せて、その負荷駆動回路のチャージポンプ回路に含まれたダイオードとコンデンサとの間の接続点Aの電位波形を示す図である。
図11図10に対応して、その負荷駆動回路のPNP型バイポーラトランジスタのベース抵抗とNPN型バイポーラトランジスタのコレクタ端子との間の接続点Bの電位波形を示す図である。
図12図10図11に対応して、負荷の第1端子の電位(すなわち、駆動電圧)の波形を示す図である。
図13】この発明の第3実施形態の、2つのチャージポンプ回路を含む負荷駆動回路の構成を示す図である。
図14図14(A)は、その負荷駆動回路における第1制御信号の電位波形を示す図である。図14(B)は、その負荷駆動回路における第2制御信号の電位波形を、図14(A)の第1制御信号の電位波形と対比して示す図である。
図15図13の負荷駆動回路の、第1制御信号線が接地電位にあり、かつ第2制御信号線が制御電位にある第1期間における動作を説明する図である。
図16図13の負荷駆動回路の、第1制御信号線が制御電位にあり、かつ第2制御信号線が接地電位にある第2期間における動作を説明する図である。
図17図17(A)は、その負荷駆動回路における第1制御信号の電位波形に併せて、その負荷駆動回路の第1チャージポンプ回路に含まれた第1ダイオードと第1コンデンサとの間の第1接続点A1の電位波形を示す図である。図17(B)は、図17(A)に対応して、その負荷駆動回路によって駆動される負荷の第1端子の電位波形を示す図である。
図18図18(A)は、その負荷駆動回路における第2制御信号の電位波形に併せて、その負荷駆動回路の第2チャージポンプ回路に含まれた第2ダイオードと第2コンデンサとの間の第2接続点A2の電位波形を示す図である。図18(B)は、図18(A)に対応して、上記負荷の第2端子の電位波形を示す図である。
図19図17(B)と図18(B)に対応して、上記負荷の上記第1端子と上記第2端子との間の電位差(すなわち、駆動電圧)の波形を示す図である。
図20】上記第3実施形態の負荷駆動回路を変形した変形例の負荷駆動回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
(第1実施形態)
(回路の構成)
図1(A)は、この発明の第1実施形態の負荷駆動回路100の構成を示している。この負荷駆動回路100は、負荷BZ1が有する第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に交番電圧を印加して負荷BZ1を駆動するための回路である。負荷BZ1は、この例では、圧電ブザーであり、容量リアクタンスを含んでいる。
【0043】
この負荷駆動回路100は、制御信号供給部10と、チャージポンプ回路20とを備えている。
【0044】
制御信号供給部10は、この例では、この負荷駆動回路100の外部から制御信号BZOUT1を受ける入力端子であり、この入力端子に受けた制御信号BZOUT1を、制御信号線CL1を通して供給するようになっている。この例では、制御信号BZOUT1は、図1(B)に示すように、時間tの経過に伴って、接地電位GND(電位ゼロに相当する)とこの接地電位GNDよりも高い制御電位Hとを予め定められた第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す矩形波の信号である。制御電位Hは、この例では電源電位Vccに設定されている。
【0045】
チャージポンプ回路20は、電源電位Vccと制御信号線CL1との間に直列に順に接続されたダイオードD1と、コンデンサC1と、第2抵抗素子としての電流制限用の抵抗素子RL1とを含んでいる。ダイオードD1は、電源電位VccからコンデンサC1へ向かって順方向にバイアスされたとき電流を流す一方、逆方向にバイアスされたとき電流を遮断するようになっている。この例では、ダイオードD1はショットキーバリアダイオードである。したがって、ダイオードD1は、PN接合ダイオードに比して、順方向電圧Vfが小さい。通常は、Vf≒0.3Vである。
【0046】
この例では、ダイオードD1とコンデンサC1との間の接続点Aが、負荷BZ1の第1端子BZ1aに接続されている。
【0047】
第2端子BZ1bと接地電位GNDとの間に、スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ1(以下、適宜「トランジスタQ1」と呼ぶ。)が設けられている。この例では、トランジスタQ1のコレクタ端子Q1c、エミッタ端子Q1e、ベース端子Q1bが、それぞれ負荷BZ1の第2端子BZ1b、接地電位GND、制御信号線CL1に接続された態様にある。これにより、トランジスタQ1は、制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0048】
この例では、トランジスタQ1は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q1eとベース端子Q1bとの間にベースエミッタ間抵抗Q1rbeが接続され、また、ベース端子Q1bと制御信号線CL1との間にベース抵抗Q1rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ1のスイッチング動作を安定させることができる。また、スイッチング素子を簡単に構成することができる。
【0049】
負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に、すなわち、負荷BZ1に対して並列に、第1抵抗素子としての放電調節用の抵抗素子R1が接続されている。
【0050】
(回路の動作)
負荷駆動回路100の動作時には、まず図1(B)に示したように、制御信号供給部10が、接地電位GND(=0)と制御電位H(=Vcc)とを第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す制御信号BZOUT1を、制御信号線CL1を通して供給する。
【0051】
図2は、負荷駆動回路100の、制御信号線CL1が接地電位GND(=0)にある第1期間T1における動作を示している。第1期間T1には、チャージポンプ回路20で、矢印CH1で示すように電源電位VccからダイオードD1を通してコンデンサC1が充電されて、接続点Aおよび第1端子BZ1aが、電源電位VccからダイオードD1の順方向電圧Vfを差し引いたのに等しい正の充電電位(Vcc-Vf)になる。さらに、トランジスタQ1がオフすることによって、第1端子BZ1aから抵抗素子R1を介して、第2端子BZ1bが充電電位(Vcc-Vf)になる。後述の第2期間T2に負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に充電された電荷は、図2中に矢印DH5で示すように、抵抗素子R1を介して放電される。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、実質的にゼロになる。
【0052】
図3は、負荷駆動回路100の、制御信号線CL1が制御電位H(=Vcc)にある第2期間T2における動作を示している。第2期間T2には、第2端子BZ1bが、オンしたトランジスタQ1を介する放電(図3中に矢印DH1で示す)によって、実質的に接地電位GND(=0)になる。一方、チャージポンプ回路20で、接続点Aおよび第1端子BZ1aが、充電電位(Vcc-Vf)から、抵抗素子RL1とコンデンサC1を介して制御電位H分だけ昇圧された昇圧電位(Vcc-Vf+H)=(2Vcc-Vf)に一旦達する。この後、接続点Aおよび第1端子BZ1aの電位は、抵抗素子R1とオン状態のトランジスタQ1とを介する接地電位GNDへの放電(図3中に矢印DH3で示す)によって、低下してゆく。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、最大で昇圧電位(2Vcc-Vf)になる。
【0053】
このように、この負荷駆動回路100によれば、第1期間T1には、駆動電圧VBZ1が実質的にゼロになり、第2期間T2には、駆動電圧VBZ1が最大で昇圧電位(2Vcc-Vf)になる。つまり、昇圧電位(2Vcc-Vf)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅となる。ここで、通常は、Vcc≧3Vであり、Vf≒0.3Vであるから、2Vcc≫Vfである。この結果、この負荷駆動回路100によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約2倍の電圧)で駆動できる。
【0054】
また、この負荷駆動回路100は、制御信号線CL1が1本で済み、したがって、公知のフルブリッジ駆動方式(Hブリッジ駆動方式)に比して少ない制御信号線CL1で構成され得る。また、この負荷駆動回路100は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。
【0055】
(具体例)
負荷駆動回路100を具体的に実現するための数値パラメータは、次のように設定される。まず、負荷BZ1として、この例では、音量不足が問題となりがちな比較的小サイズの圧電ブザー(発音周波数2kHz~4kHz)を想定する。これに応じて、負荷BZ1の容量値Cbz1については、例えばCbz1=8000pFとする。また、電源電位Vccについては、Vcc=3.3Vとする。
【0056】
第1期間T1、第2期間T2の期間長については、例えば125μsec~250μsec程度の範囲内で、この例では、負荷BZ1である圧電ブザーの発音周波数の周期の1/2として、T1=T2=250μsecとする。なお、圧電ブザーの発音周波数としては、圧電ブザーの共振周波数(小型の圧電ブザーであれば、共振周波数は4kHz~10kHz程度である。)に合わせることが効率的には良い。一方、人間の耳の感度は周波数が高いと聞き取りにくいという周波数特性(特に、高齢者で顕著)になっている。そこで、人間の耳に聴感上大きくように、上述のように、圧電ブザーの発音周波数を圧電ブザーの共振周波数よりも低く設定している。
【0057】
チャージポンプ回路20のダイオードD1の順方向電圧Vfについては、通電電流に依存するけれども、Vf≒0.3Vとする。コンデンサC1の容量値については、負荷BZ1の容量値Cbz1の100倍以上を想定して、C1=1μF~4.7μF程度とする。
【0058】
抵抗素子RL1の抵抗値については、制御信号BZOUT1が接地電位GND(=0)と制御電位H(=Vcc)との間で遷移するのに伴って制御信号線CL1とコンデンサC1との間で流れる突入電流が、制御信号供給部10の出力電流定格(上限値)を超えないように、設定される。例えば、制御信号供給部10の出力電流定格が20mAである場合、突入電流が最大10mA程度に抑えられるのが望ましい。電源電位Vcc=3Vの場合、計算上、3V/10mA=300Ωとなる。したがって、抵抗素子RL1の抵抗値については、E12系列から270Ωまたは330Ωが候補となる。この例では、安全を考慮して、RL1=330Ωとする。それにより、制御信号供給部10が保護される。
【0059】
抵抗素子R1の抵抗値については、第2期間T2に負荷BZ1(容量値Cbz1)に充電された電荷が、それに続く第1期間T1中に放電し切るように、設定される。したがって、次式(EQ.1)で表されるように、時定数(Cbz1×R1)が第1期間T1の期間長よりも十分小さくなるように設定される。
(Cbz1×R1) ≪ T1 …(EQ.1)
この式(EQ.1)を変形すると、次式(EQ.2)
R1 ≪ T1/Cbz1 …(EQ.2)
が得られる。この式(EQ.2)の右辺は、
T1/Cbz1 = 250μsec/8000pF = 32.15kΩ
と計算される。この例では、この右辺の値よりも、抵抗素子R1の抵抗値を約1桁小さく設定して、R1=3.3kΩとする。
【0060】
図4図6は、上述のように数値パラメータが設定された負荷駆動回路100における各部の電位波形(電位の時間経過に伴う変化)を示している。詳しくは、第1期間T1と第2期間T2とを併せて1サイクルとしたとき、負荷駆動回路100の動作開始から電位波形が安定した後の2サイクル分の電位波形を示している。図4は、負荷駆動回路100における制御信号BZOUT1の電位波形(図4中に破線で示す)に併せて、負荷駆動回路100のチャージポンプ回路20に含まれたダイオードD1とコンデンサC1との間の接続点Aの電位VA(すなわち、負荷BZ1の第1端子BZ1aの電位VBZ1a)の波形を示している。図4中には、コンデンサC1の容量値が0.47μF、1μF、4.7μFに可変して設定されたときの電位波形が、それぞれ2点鎖線、1点鎖線、実線で表されている(この点、図5図6でも同様である。)。図4から分かるように、接続点Aの電位VA(=VBZ1a)は、第1期間T1に充電電位(Vcc-Vf)になり、第2期間T2に昇圧電位(2Vcc-Vf)に一旦達し、徐々に低下してゆく。図5は、図4に対応して、負荷BZ1の第2端子BZ1bの電位VBZ1bの波形を示している。図5から分かるように、第2端子BZ1bの電位VBZ1bは、第1期間T1に充電電位(Vcc-Vf)になり、第2期間T2に実質的にゼロになる。図6は、図4図5に対応して、この例では第2端子BZ1bを基準としたときの、負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)の波形を示している。図6から分かるように、駆動電圧VBZ1は、第1期間T1に実質的にゼロになり、第2期間T2に昇圧電位(2Vcc-Vf)に一旦達し、徐々に低下してゆく。
【0061】
このように、この負荷駆動回路100によれば、昇圧電位(2Vcc-Vf)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅Vp-pとなる。ここで、Vcc=3.3V、Vf≒0.3Vとすると、Vp-p≒6.3Vとなる。この結果、この負荷駆動回路100によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約2倍の電圧)で駆動できる。
【0062】
上の例では、第2端子BZ1bと接地電位GNDとの間に接続されたスイッチング素子として、NPN型バイポーラトランジスタQ1を備えたが、これに限られるものではない。上記スイッチング素子としては、NPN型バイポーラトランジスタQ1に代えて、Nチャネル型電界効果トランジスタを備えてもよい。その場合、そのNチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、ゲート端子が、それぞれ接地電位GND、第2端子BZ1b、制御信号線CL1に接続された態様とする。これとともに、そのNチャネル型電界効果トランジスタのソース端子とゲート端子との間に、ゲートソース間抵抗が接続された態様とする。これにより、そのNチャネル型電界効果トランジスタが、NPN型バイポーラトランジスタQ1におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンする。この場合も、上記スイッチング素子が簡単に構成され得る。したがって、この負荷駆動回路100は、簡単に構成され得る。
【0063】
(第2実施形態)
(回路の構成)
図7(A)は、この発明の第2実施形態の負荷駆動回路200の構成を示している。この負荷駆動回路200は、負荷BZ1が有する第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に交番電圧を印加して負荷BZ1を駆動するための回路である。負荷BZ1は、先の例(負荷駆動回路100)におけるのと同様に、圧電ブザーであり、容量リアクタンスを含んでいる。なお、図7(A)では、理解の容易のために、図1(A)中の構成要素と対応する構成要素に同じ符号を付している。
【0064】
この負荷駆動回路200は、先の例におけるのと同様に、制御信号供給部10と、チャージポンプ回路20とを備えている。これらの制御信号供給部10、チャージポンプ回路20は、先の例におけるのと同様に構成され、同様に動作する。すなわち、図7(B)に示す制御信号BZOUT1は、時間tの経過に伴って、接地電位GND(電位ゼロに相当する)とこの接地電位GNDよりも高い制御電位Hとを予め定められた第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す矩形波の信号である。制御電位Hは、この例では電源電位Vccに設定されている。また、チャージポンプ回路20のダイオードD1は、電源電位VccからコンデンサC1へ向かって順方向にバイアスされたとき電流を流す一方、逆方向にバイアスされたとき電流を遮断するようになっている。この例でも、ダイオードD1はショットキーバリアダイオードである。したがって、ダイオードD1は、PN接合ダイオードに比して、順方向電圧Vfが小さい。通常は、Vf≒0.3Vである。
【0065】
この例では、負荷BZ1の第2端子BZ1bは接地電位GNDに接続されている。
【0066】
また、この例では、ダイオードD1とコンデンサC1との間の接続点Aと負荷BZ1の第1端子BZ1aとの間に、デジタルトランジスタであるPNP型バイポーラトランジスタQ2(以下、適宜「トランジスタQ2」と呼ぶ。)が設けられている。トランジスタQ2のエミッタ端子Q2e、コレクタ端子Q2cが、それぞれ接続点A、第1端子BZ1aに接続された態様にある。また、トランジスタQ2は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q2eとベース端子Q2bとの間にベースエミッタ間抵抗Q2rbeが接続され、また、トランジスタQ2のベース端子Q2bは、ベース抵抗Q2rbを介して、後述のNPN型バイポーラトランジスタQ1に接続されている。なお、符号Bは、トランジスタQ2のベース抵抗Q2rbとトランジスタQ1のコレクタ端子Q1cとの間の接続点を示している。この接続点Bは、トランジスタQ2のベース抵抗Q2rbの、トランジスタQ1側の端子に相当する。ここで、トランジスタQ2がオンするか、オフするかは、このトランジスタQ2の仕様として、次のように定められている。エミッタ端子Q2eの電位(すなわち、接続点Aの電位VA)を基準として、接続点Bの電位VBが予め定められたオフ閾値電圧Vi(off)(この例では、Vi(off)=-0.8V)よりも高ければ、トランジスタQ2はオフする。一方、エミッタ端子Q2eの電位(=VA)を基準として、接続点Bの電位VBが予め定められたオン閾値電圧Vi(on)(この例では、Vi(on)=-2.6V)よりも低ければ、すなわち、オン閾値電圧Vi(on)をマイナス側へ超えていれば、トランジスタQ2はオンする。なお、この点は、デジタルトランジスタである後述のPNP型バイポーラトランジスタQ5でも同様であり、詳細には繰り返して説明しない。
【0067】
また、この例では、トランジスタQ2のベース端子Q2bと接地電位GNDとの間に、スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ1が設けられている。この例では、トランジスタQ1のコレクタ端子Q1c、エミッタ端子Q1e、ベース端子Q1bが、それぞれトランジスタQ2のベース抵抗Q2rb、接地電位GND、制御信号線CL1に接続された態様にある。トランジスタQ1は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q1eとベース端子Q1bとの間にベースエミッタ間抵抗Q1rbeが接続され、また、トランジスタQ1のベース端子Q1bと制御信号線CL1との間にベース抵抗Q1rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ1は、安定したスイッチング動作で、制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0068】
また、この例では、先の例と同様に、負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に、すなわち、負荷BZ1に対して並列に、第1抵抗素子としての放電調節用の抵抗素子R1が接続されている。
【0069】
(回路の動作)
負荷駆動回路200の動作時には、まず図7(B)に示したように、制御信号供給部10が、接地電位GND(=0)と制御電位H(=Vcc)とを第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す制御信号BZOUT1を、制御信号線CL1を通して供給する。
【0070】
図8は、負荷駆動回路200の、制御信号線CL1が接地電位GND(=0)にある第1期間T1における動作を示している。第1期間T1には、チャージポンプ回路20で、矢印CH1で示すように電源電位VccからダイオードD1を通してコンデンサC1が充電されて、接続点Aが電源電位VccからダイオードD1の順方向電圧Vfを差し引いたのに等しい正の充電電位(Vcc-Vf)になる。これとともに、トランジスタQ1がオフすることによって、トランジスタQ2でエミッタからベースへベース電流が流れなくなって、トランジスタQ2がオフする。さらに、抵抗素子R1を介する放電(図8中に矢印DH1で示す)によって、第1端子BZ1aが実質的に接地電位GND(=0)になる。第2端子BZ1bは常に接地電位GNDにある。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、実質的にゼロになる。
【0071】
図9は、負荷駆動回路200の、制御信号線CL1が制御電位H(=Vcc)にある第2期間T2における動作を示している。第2期間T2には、チャージポンプ回路20で、接続点Aが、充電電位(Vcc-Vf)から、抵抗素子RL1とコンデンサC1を介して制御電位H分だけ昇圧された昇圧電位(Vcc-Vf+H)=(2Vcc-Vf)になる。これとともに、トランジスタQ1がオンして接続点Bが実質的に接地電位GND(=0)になる。この結果、トランジスタQ2でエミッタからベースへベース電流が流れて、トランジスタQ2がオンする。これによって、オンしたトランジスタQ2を通して負荷BZ1へ電荷(図9中に矢印DH3で示す)が流れて、第1端子BZ1aが昇圧電位(2Vcc-Vf)に一旦達する。この後、第1端子BZ1aの電位は、抵抗素子R1を介する接地電位GNDへの放電(図9中に矢印DH4で示す)によって、低下してゆく。第2端子BZ1bは常に接地電位GND(=0)にある。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、最大で昇圧電位(2Vcc-Vf)になる。
【0072】
このように、この負荷駆動回路200によれば、第1期間T1には、駆動電圧VBZ1が実質的にゼロになり、第2期間T2には、駆動電圧VBZ1が最大で昇圧電位(2Vcc-Vf)になる。つまり、昇圧電位(2Vcc-Vf)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅となる。ここで、通常は、Vcc≧3Vであり、Vf≒0.3Vであるから、2Vcc≫Vfである。この結果、この負荷駆動回路200によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約2倍の電圧)で駆動できる。
【0073】
また、この負荷駆動回路200は、制御信号線CL1が1本で済み、したがって、公知のフルブリッジ駆動方式(Hブリッジ駆動方式)に比して少ない制御信号線CL1で構成され得る。また、この負荷駆動回路200は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。この負荷駆動回路200は、先の負荷駆動回路100に対して、PNP型バイポーラトランジスタQ2を余分に要するが、負荷BZ1の第2端子BZ1bを接地できる利点がある。
【0074】
(具体例)
負荷駆動回路200を具体的に実現するための数値パラメータは、先の例(負荷駆動回路100)におけるのと全く同じに設定される。ここでは、重複する説明を省略する。
【0075】
図10図12は、上述のように数値パラメータが設定された負荷駆動回路200における各部の電位波形(電位の時間経過に伴う変化)を示している。詳しくは、第1期間T1と第2期間T2とを併せて1サイクルとしたとき、負荷駆動回路200の動作開始から電位波形が安定した後の2サイクル分の電位波形を示している。図10は、負荷駆動回路200における制御信号BZOUT1の電位波形(図10中に破線で示す)に併せて、負荷駆動回路200のチャージポンプ回路20に含まれたダイオードD1とコンデンサC1との間の接続点Aの電位VAの波形を示している。図10中には、コンデンサC1の容量値が0.47μF、1μF、4.7μFに可変して設定されたときの電位波形が、それぞれ2点鎖線、1点鎖線、実線で表されている(この点、図11図12でも同様である。)。図10から分かるように、接続点Aの電位VAは、第1期間T1に充電電位(Vcc-Vf)になり、第2期間T2に昇圧電位(2Vcc-Vf)に一旦達し、徐々に低下してゆく。図11は、図10に対応して、トランジスタQ2のベース抵抗Q2rbとトランジスタQ1のコレクタ端子Q1cとの間の接続点Bの電位VBの波形を示している。図11から分かるように、接続点Bの電位VBは、第1期間T1に充電電位(Vcc-Vf)になり、第2期間T2に実質的にゼロになる。なお、コンデンサC1の容量値が0.47μF、1μF、4.7μFに可変して設定されても、電位VBは、ほとんど影響を受けない。第2端子BZ1bの電位は、この例では常に接地電位GNDにあるので、図示が省略されている。図12は、図10図11に対応して、この例では第2端子BZ1bを基準としたときの、負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)の波形を示している。図12から分かるように、駆動電圧VBZ1は、第1期間T1に実質的にゼロになり、第2期間T2に昇圧電位(2Vcc-Vf)に一旦達し、徐々に低下してゆく。
【0076】
このように、この負荷駆動回路200によれば、先の例におけるのと同様に、昇圧電位(2Vcc-Vf)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅Vp-pとなる。ここで、Vcc=3.3V、Vf≒0.3Vとすると、Vp-p≒6.3Vとなる。この結果、この負荷駆動回路200によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約2倍の電圧)で駆動できる。
【0077】
上の例では、トランジスタQ2のベース端子Q2bと接地電位GNDとの間に設けられたスイッチング素子として、NPN型バイポーラトランジスタQ1を備えたが、これに限られるものではない。上記スイッチング素子としては、NPN型バイポーラトランジスタQ1に代えて、Nチャネル型電界効果トランジスタを備えてもよい。その場合、そのNチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、ゲート端子が、それぞれ接地電位GND、トランジスタQ2のベース端子Q2b、制御信号線CL1に接続された態様とする。これとともに、そのNチャネル型電界効果トランジスタのソース端子とゲート端子との間に、ゲートソース間抵抗が接続された態様とする。これにより、そのNチャネル型電界効果トランジスタが、NPN型バイポーラトランジスタQ1におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンする。この場合も、上記スイッチング素子が簡単に構成され得る。したがって、この負荷駆動回路200は、簡単に構成され得る。
【0078】
また、上の例では、接続点Aと負荷BZ1の第1端子BZ1aとの間にPNP型バイポーラトランジスタQ2が設けられたが、これに限られるものではない。PNP型バイポーラトランジスタQ2に代えて、Pチャネル型電界効果トランジスタが設けられてもよい。その場合、そのPチャネル型電界効果トランジスタのソース端子、ドレイン端子、ゲート端子が、それぞれ接続点A、第1端子BZ1a、トランジスタQ1のコレクタ端子Q1cに接続された態様とする。これとともに、そのPチャネル型電界効果トランジスタのソース端子とゲート端子との間に、ゲートソース間抵抗が接続された態様とする。そのようにした場合、そのPチャネル型電界効果トランジスタが、PNP型バイポーラトランジスタQ2におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオフし、また、第2期間T2にオンする。つまり、第1期間T1には、トランジスタQ1がオフすることによって、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ゲートソース間抵抗を介して上記ソース端子の電位と等しくなって、上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオフする。第2期間T2には、トランジスタQ1がオンすることによって、上記Pチャネル型電界効果トランジスタの上記ゲート端子の電位が上記ソース端子の電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、上記Pチャネル型電界効果トランジスタがオンする。この場合も、この負荷駆動回路200は、簡単に構成され得る。
【0079】
(第3実施形態)
(回路の構成)
図13は、この発明の第3実施形態の負荷駆動回路300の構成を示している。この負荷駆動回路300は、負荷BZ1が有する第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に交番電圧を印加して負荷BZ1を駆動するための回路である。負荷BZ1は、先の2つの例(負荷駆動回路100,200)におけるのと同様に、圧電ブザーであり、容量リアクタンスを含んでいる。なお、図13では、理解の容易のために、図7(A)中の構成要素と対応する構成要素に同じ符号を付している。
【0080】
この負荷駆動回路300は、第1制御信号供給部11と、第2制御信号供給部12と、第1チャージポンプ回路21と、第2チャージポンプ回路22とを備えている。
【0081】
第1制御信号供給部11は、この例では、この負荷駆動回路300の外部から第1制御信号BZOUT1を受ける入力端子であり、この入力端子に受けた第1制御信号BZOUT1を、第1制御信号線CL1を通して供給するようになっている。この例では、第1制御信号BZOUT1は、図14(A)に示すように、時間tの経過に伴って、接地電位GND(電位ゼロに相当する)とこの接地電位GNDよりも高い制御電位Hとを予め定められた第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す矩形波の信号である。制御電位Hは、この例では電源電位Vccに設定されている。
【0082】
第2制御信号供給部12は、この例では、この負荷駆動回路300の外部から第2制御信号BZOUT2を受ける入力端子であり、この入力端子に受けた第2制御信号BZOUT1を、第2制御信号線CL2を通して供給するようになっている。第2制御信号BZOUT2は、図14(B)に示すように、図14(A)の第1制御信号BZOUT1とは逆の位相で、接地電位GNDと制御電位Hとを交互に繰り返す矩形波の信号である。
【0083】
第1チャージポンプ回路21は、この例では、電源電位Vccと第1制御信号線CL1との間に直列に順に接続された第1ダイオードD1と、第1コンデンサC1と、電流制限用の抵抗素子RL1とを含んでいる。第1ダイオードD1は、電源電位Vccから第1コンデンサC1へ向かって順方向にバイアスされたとき電流を流す一方、逆方向にバイアスされたとき電流を遮断するようになっている。この例では、第1ダイオードD1はショットキーバリアダイオードである。したがって、第1ダイオードD1は、PN接合ダイオードに比して、順方向電圧Vf1が小さい。通常は、Vf1≒0.3Vである。
【0084】
第2チャージポンプ回路22は、この例では、電源電位Vccと第2制御信号線CL2との間に直列に順に接続された第2ダイオードD2と、第2コンデンサC2と、電流制限用の抵抗素子RL2とを含んでいる。第2ダイオードD2は、電源電位Vccから第2コンデンサC2へ向かって順方向にバイアスされたとき電流を流す一方、逆方向にバイアスされたとき電流を遮断するようになっている。この例では、第2ダイオードD2は、第1ダイオードD1と同様に、ショットキーバリアダイオードである。したがって、第2ダイオードD2は、PN接合ダイオードに比して、順方向電圧Vf2が小さい。通常は、Vf2≒0.3Vである。
【0085】
この例では、第1ダイオードD1と第1コンデンサC1との間の第1接続点A1と負荷BZ1の第1端子BZ1aとの間に、第1PNP型バイポーラトランジスタQ2が設けられている。トランジスタQ2のエミッタ端子Q2e、コレクタ端子Q2cが、それぞれ第1接続点A1、第1端子BZ1aに接続された態様にある。トランジスタQ2は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q2eとベース端子Q2bとの間にベースエミッタ間抵抗Q2rbeが接続され、また、トランジスタQ2のベース端子Q2bは、第1ベース抵抗Q2rbを介して、後述のNPN型バイポーラトランジスタQ1に接続されている。なお、符号B1は、トランジスタQ2の第1ベース抵抗Q2rbとトランジスタQ1のコレクタ端子Q1cとの間の接続点を示している。この接続点B1は、トランジスタQ2の第1ベース抵抗Q2rbの、トランジスタQ1側の端子に相当する。
【0086】
また、この例では、第2ダイオードD2と第2コンデンサC2との間の第2接続点A2と負荷BZ1の第2端子BZ1bとの間に、第2PNP型バイポーラトランジスタQ5(以下、適宜「トランジスタQ5」と呼ぶ。)が設けられている。トランジスタQ5のエミッタ端子Q5e、コレクタ端子Q5cが、それぞれ第2接続点A2、第2端子BZ1bに接続された態様にある。トランジスタQ5は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q5eとベース端子Q5bとの間にベースエミッタ間抵抗Q5rbeが接続され、また、トランジスタQ5のベース端子Q5bは、第2ベース抵抗Q5rbを介して、後述のNPN型バイポーラトランジスタQ4(以下、適宜「トランジスタQ4」と呼ぶ。)に接続されている。なお、符号B2は、トランジスタQ5の第2ベース抵抗Q5rbとトランジスタQ4のコレクタ端子Q4cとの間の接続点を示している。この接続点B2は、トランジスタQ5の第2ベース抵抗Q5rbの、トランジスタQ4側の端子に相当する。
【0087】
また、この例では、トランジスタQ2のベース端子Q2bと接地電位GNDとの間に、第1スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ1が設けられている。この例では、トランジスタQ1のコレクタ端子Q1c、エミッタ端子Q1e、ベース端子Q1bが、それぞれトランジスタQ2の第1ベース抵抗Q2rb、接地電位GND、制御信号線CL1に接続された態様にある。トランジスタQ1は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q1eとベース端子Q1bとの間にベースエミッタ間抵抗Q1rbeが接続され、また、トランジスタQ1のベース端子Q1bと第1制御信号線CL1との間にベース抵抗Q1rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ1は、安定したスイッチング動作で、第1制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、第1制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0088】
また、この例では、トランジスタQ2のベース端子Q2bと接地電位GNDとの間に、第2スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ4が設けられている。この例では、トランジスタQ4のコレクタ端子Q4c、エミッタ端子Q4e、ベース端子Q4bが、それぞれトランジスタQ5の第2ベース抵抗Q5rb、接地電位GND、制御信号線CL2に接続された態様にある。トランジスタQ4は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q4eとベース端子Q4bとの間にベースエミッタ間抵抗Q4rbeが接続され、また、トランジスタQ4のベース端子Q4bと第2制御信号線CL2との間にベース抵抗Q4rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ4は、安定したスイッチング動作で、制御信号線CL2が接地電位GNDにあるときオフし、制御信号線CL2が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0089】
また、この例では、負荷BZ1の第1端子BZ1aと接地電位GNDとの間に、第3スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ3(以下、適宜「トランジスタQ3」と呼ぶ。)が設けられている。この例では、トランジスタQ3のコレクタ端子Q3c、エミッタ端子Q3e、ベース端子Q3bが、それぞれ第1端子BZ1a、接地電位GND、制御信号線CL2に接続された態様にある。トランジスタQ3は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q3eとベース端子Q3bとの間にベースエミッタ間抵抗Q3rbeが接続され、また、トランジスタQ3のベース端子Q3bと第2制御信号線CL2との間にベース抵抗Q3rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ3は、安定したスイッチング動作で、第2制御信号線CL2が接地電位GNDにあるときオフし、第2制御信号線CL2が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0090】
また、この例では、負荷BZ1の第2端子BZ1bと接地電位GNDとの間に、第4スイッチング素子としてのNPN型バイポーラトランジスタQ6(以下、適宜「トランジスタQ6」と呼ぶ。)が設けられている。この例では、トランジスタQ6のコレクタ端子Q6c、エミッタ端子Q6e、ベース端子Q6bが、それぞれ第2端子BZ1b、接地電位GND、制御信号線CL1に接続された態様にある。トランジスタQ6は、デジタルトランジスタとして、エミッタ端子Q6eとベース端子Q6bとの間にベースエミッタ間抵抗Q6rbeが接続され、また、トランジスタQ6のベース端子Q6bと第1制御信号線CL1との間にベース抵抗Q6rbが介挿されている。これにより、トランジスタQ6は、安定したスイッチング動作で、第1制御信号線CL1が接地電位GNDにあるときオフし、第1制御信号線CL1が制御電位Hにあるときオンするようになっている。
【0091】
(回路の動作)
負荷駆動回路300の動作時には、まず図14(A)に示したように、第1制御信号供給部11が、接地電位GND(=0)と制御電位H(=Vcc)とを第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す第1制御信号BZOUT1を、第1制御信号線CL1を通して供給する。これとともに、図14(B)に示したように、第2制御信号供給部12が、第1制御信号BZOUT1とは逆の位相で、接地電位GND(=0)と制御電位H(=Vcc)とを第1期間T1、第2期間T2毎に交互に繰り返す第2制御信号BZOUT2を、第2制御信号線CL2を通して供給する。
【0092】
図15は、負荷駆動回路300の、第1制御信号線CL1が接地電位GND(=0)にあり、かつ第2制御信号線CL2が制御電位H(=Vcc)にある第1期間T1における動作を示している。第1期間T1には、第1チャージポンプ回路21で、矢印CH1で示すように電源電位Vccから第1ダイオードD1を通して第1コンデンサC1が充電されて、第1接続点A1が電源電位Vccから第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1を差し引いたのに等しい正の第1充電電位(Vcc-Vf1)になる。これとともに、トランジスタQ1がオフすることによって、トランジスタQ2でエミッタからベースへベース電流が流れなくなって、トランジスタQ2がオフする。さらに、オンしたトランジスタQ3を介する放電(図15中に矢印DH1で示す)によって、第1端子BZ1aが実質的に接地電位GND(=0)になる。一方、第2チャージポンプ回路22で、電源電位Vccから第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2を差し引いたのに等しい正の電位を第2充電電位(Vcc-Vf2)としたとき、第2接続点A2が、第2充電電位(Vcc-Vf2)から、抵抗素子RL2と第2コンデンサC2を介して制御電位H分だけ昇圧された第2昇圧電位(Vcc-Vf2+H)=(2Vcc-Vf2)になる。これとともに、トランジスタQ4がオンして接続点B2が実質的に接地電位GND(=0)になる。この結果、トランジスタQ5でエミッタからベースへベース電流が流れて、トランジスタQ5がオンする。これによって、オンしたトランジスタQ5を通して負荷BZ1へ電荷(図15中に矢印DH6で示す)が流れて、第2端子BZ1bが第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)になる。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、例えば第2端子BZ1bを基準としたとき、第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)分だけ負になる。
【0093】
図16は、負荷駆動回路300の、第1制御信号線CL1が制御電位H(=Vcc)にあり、かつ第2制御信号線CL2が接地電位GND(=0)にある第2期間T2における動作を示している。第2期間T2には、第1チャージポンプ回路21で、第1接続点A1が、第1充電電位(Vcc-Vf1)から、抵抗素子RL1と第1コンデンサC1を介して制御電位H分だけ昇圧された第1昇圧電位(Vcc-Vf1+H)=(2Vcc-Vf1)になる。これとともに、トランジスタQ1がオンして接続点B1が実質的に接地電位GND(=0)になる。この結果、トランジスタQ2でエミッタからベースへベース電流が流れて、トランジスタQ2がオンする。これによって、オンしたトランジスタQ2を通して負荷BZ1へ電荷(図16中に矢印DH7で示す)が流れて、第1端子BZ1aが第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)になる。一方、第2チャージポンプ回路22で、矢印CH2で示すように電源電位Vccから第2ダイオードD2を通して第2コンデンサC2が充電されて、第2接続点A2が第2充電電位(Vcc-Vf2)になる。これとともに、トランジスタQ4がオフすることによって、トランジスタQ5でエミッタからベースへベース電流が流れなくなって、トランジスタQ5がオフする。さらに、オンしたトランジスタQ6を介する放電(図16中に矢印DH2で示す)によって、第2端子BZ1bが実質的に接地電位GND(=0)になる。したがって、第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)は、例えば第2端子BZ1bを基準としたとき、第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)分だけ正になる。
【0094】
このように、この負荷駆動回路300によれば、例えば第2端子BZ1bを基準としたとき、第1期間T1には、駆動電圧VBZ1が第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)分だけ負になり、第2期間T2には、駆動電圧VBZ1が第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)分だけ正になる。つまり、第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)と第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)との和(4Vcc-Vf1-Vf2)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅Vp-pとなる。ここで、通常は、Vcc≧3Vであり、Vf1≒0.3V、Vf2≒0.3Vであるから、4Vcc≫(Vf1+Vf2)である。この結果、この負荷駆動回路300によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約4倍の電圧)で駆動できる。
【0095】
また、この負荷駆動回路300は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。ただし、制御信号線CL1,CL2については、公知のフルブリッジ駆動方式におけるのと同様に、2本設ける必要がある。
【0096】
(具体例)
負荷駆動回路300を具体的に実現するための数値パラメータは、次のように設定される。まず、先の例におけるのと同様に、負荷BZ1の容量値Cbz1については、例えばCbz1=8000pFとする。また、電源電位Vccについては、Vcc=3.3Vとする。第1期間T1、第2期間T2の期間長については、T1=T2=250μsecとする。
【0097】
また、第2チャージポンプ回路22に含まれる第2ダイオードD2、第2コンデンサC2、抵抗素子RL2については、それぞれ第1チャージポンプ回路21に含まれる第1ダイオードD1、第1コンデンサC1、抵抗素子RL1と同じ特性を有するものを用いるものとする。具体的には、先の例にならって、第1ダイオードD1の順方向電圧Vf1、第2ダイオードD2の順方向電圧Vf2については、Vf1=Vf2≒0.3Vとする。第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の容量値については、C1=C2=1μF~4.7μF程度とする。抵抗素子RL1、抵抗素子RL2の抵抗値については、RL1=RL2=330Ωとする。
【0098】
図17図19は、上述のように数値パラメータが設定された負荷駆動回路300における各部の電位波形(電位の時間経過に伴う変化)を示している。詳しくは、第1期間T1と第2期間T2とを併せて1サイクルとしたとき、負荷駆動回路300の動作開始から電位波形が安定した後の2サイクル分の電位波形を示している。図17(A)は、負荷駆動回路300における第1制御信号BZOUT1の電位波形(図17(A)中に破線で示す)に併せて、第1チャージポンプ回路21に含まれたダイオードD1とコンデンサC1との間の第1接続点A1の電位VA1の波形を示している。図17(A)中には、コンデンサC1の容量値がそれぞれ0.47μF、1μF、4.7μFに可変して設定されたときの電位波形が、それぞれ2点鎖線、1点鎖線、実線で表されている(この点、図17(B)、図18(A)、図18(B)、図19でも同様である。)。図17(A)から分かるように、第1接続点A1の電位VA1は、第1期間T1に第1充電電位(Vcc-Vf1)になり、第2期間T2に第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)になる。図17(B)は、図17(A)に対応して、負荷BZ1の第1端子BZ1aの電位VBZ1aの波形を示している。図17(B)から分かるように、第1端子BZ1aの電位VBZ1aは、第1期間T1に実質的にゼロになり、第2期間T2に第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)になる。図18(A)は、負荷駆動回路300における第2制御信号BZOUT2の電位波形(図18(A)中に破線で示す)に併せて、第2チャージポンプ回路22に含まれたダイオードD2とコンデンサC2との間の接続点A2の電位VA2の波形を示している。図18(A)から分かるように、接続点A2の電位VA2は、第1期間T1に第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)になり、第2期間T2に第2充電電位(Vcc-Vf2)になる。図18(B)は、図18(A)に対応して、負荷BZ1の第2端子BZ1bの電位VBZ1bの波形を示している。図18(B)から分かるように、第2端子BZ1bの電位VBZ1bは、第1期間T1に第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)になり、第2期間T2に実質的にゼロになる。図19は、図17(B)、図18(B)に対応して、この例では第2端子BZ1bを基準としたときの、負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間の電位差(すなわち、駆動電圧VBZ1)の波形を示している。図19から分かるように、駆動電圧VBZ1は、第1期間T1に第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)分だけ負になり、第2期間T2に第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)分だけ正になる。
【0099】
このように、この負荷駆動回路300によれば、第2昇圧電位(2Vcc-Vf2)と第1昇圧電位(2Vcc-Vf1)との和(4Vcc-Vf1-Vf2)が、負荷BZ1に対する駆動電圧VBZ1のピーク・ツゥ・ピークの振幅Vp-pとなる。ここで、Vcc=3.3V、Vf1=Vf2≒0.3Vすると、Vp-p≒12.6Vとなる。この結果、この負荷駆動回路300によれば、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約4倍の電圧)で駆動できる。
【0100】
なお、この負荷駆動回路300では、先の2つの例(負荷駆動回路100,200)におけるのとは異なり、第2期間T2(または第1期間T1)内での駆動電圧VBZ1の低下は、ほとんど無い。この理由は、この負荷駆動回路300では、負荷BZ1の第1端子BZ1aと第2端子BZ1bとの間に、すなわち、負荷BZ1に対して並列に、放電調節用の抵抗素子R1が設けられていないからである。
【0101】
(変形例)
上の例(第3実施形態の負荷駆動回路300)では、第1接続点A1と負荷BZ1の第1端子BZ1aとの間に第1PNP型バイポーラトランジスタQ2が設けられ、また、第2接続点A2と負荷BZ1の第2端子BZ1bとの間に、第2PNP型バイポーラトランジスタQ5が設けられたが、これに限られるものではない。第1PNP型バイポーラトランジスタQ2、第2PNP型バイポーラトランジスタQ5に代えて、それぞれPチャネル型電界効果トランジスタが設けられてもよい。さらに、上の例では、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子として、それぞれNPN型バイポーラトランジスタQ1、NPN型バイポーラトランジスタQ4、NPN型バイポーラトランジスタQ3、NPN型バイポーラトランジスタQ6が設けられたが、これに限られるものではない。第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子としては、それぞれNPN型バイポーラトランジスタに代えて、Nチャネル型電界効果トランジスタが設けられてもよい。つまり、トランジスタとしては、電界効果トランジスタのみを含む構成としてもよい。
【0102】
図20は、第3実施形態の負荷駆動回路300をそのように変形した変形例の負荷駆動回路300′の構成を示している。なお、図20では、理解の容易のために、図13中の構成要素と対応する構成要素に同じ符号を付している。
【0103】
この負荷駆動回路300′は、負荷駆動回路300におけるのと同様に、第1制御信号供給部11′と、第2制御信号供給部12′と、第1チャージポンプ回路21と、第2チャージポンプ回路22とを備えている。
【0104】
この例では、この負荷駆動回路300′をなす第1チャージポンプ回路21と第2チャージポンプ回路22は、負荷BZ1と同様に、半導体基板であるCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor;相補型金属酸化膜半導体)基板90の外部に配置されている。一方、この負荷駆動回路300′では、第1チャージポンプ回路21と第2チャージポンプ回路22をなす部品以外の残りの部品は、CMOS基板90の内部に、IC(Integrated Circuit;集積回路)として一体に組み込まれている。
【0105】
第1制御信号供給部11′は、この例では、第1制御信号BZOUT1を作成(発生)する回路を含み、自身が作成した第1制御信号BZOUT1を、インバータ81を介して、第1制御信号線CL1を通して供給するようになっている。同様に、第2制御信号供給部12′は、この例では、第2制御信号BZOUT2を作成(発生)する回路を含み、自身が作成した第2制御信号BZOUT2を、インバータ82を介して、第2制御信号線CL2を通して供給するようになっている。第1制御信号BZOUT1、第2制御信号BZOUT2は、それぞれ図14(A)、図14(B)に示した信号と同じものである。
【0106】
また、第1チャージポンプ回路21、第2チャージポンプ回路22も、上の例(第3実施形態の負荷駆動回路300)におけるのと同じものである。この例では、第1制御信号線CL1と第1チャージポンプ回路21(の抵抗素子RL1)とが、接続ポートPORT1を介して接続された態様にある。また、第2制御信号線CL2と第2チャージポンプ回路22(の抵抗素子RL2)とが、接続ポートPORT2を介して接続された態様にある。
【0107】
この例では、第1ダイオードD1と第1コンデンサC1との間の第1接続点A1と負荷BZ1の第1端子BZ1aとの間に、第1PNP型バイポーラトランジスタQ2に代えて、第1Pチャネル型電界効果トランジスタQ2′(以下、適宜「トランジスタQ2′」と呼ぶ。)が設けられている。トランジスタQ2′のソース端子Q2s、ドレイン端子Q2dが、それぞれ接続ポートPORT2、PORT3を介して、それぞれ第1接続点A1、第1端子BZ1aに接続された態様にある。
【0108】
また、この例では、第2ダイオードD2と第2コンデンサC2との間の第2接続点A2と負荷BZ1の第2端子BZ1bとの間に、第2PNP型バイポーラトランジスタQ5に代えて、第2Pチャネル型電界効果トランジスタQ5′(以下、適宜「トランジスタQ5′」と呼ぶ。)が設けられている。トランジスタQ5′のソース端子Q5s、ドレイン端子Q5dが、それぞれ接続ポートPORT5、PORT6を介して、それぞれ第2接続点A2、第2端子BZ1bに接続された態様にある。
【0109】
また、この例では、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子として、それぞれNPN型バイポーラトランジスタに代えて、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1′(以下、適宜「トランジスタQ1′」と呼ぶ。)、Nチャネル型電界効果トランジスタQ4′(以下、適宜「トランジスタQ4′」と呼ぶ。)、Nチャネル型電界効果トランジスタQ3′(以下、適宜「トランジスタQ3′」と呼ぶ。)、Nチャネル型電界効果トランジスタQ6′(以下、適宜「トランジスタQ6′」と呼ぶ。)が設けられている。トランジスタQ1′のソース端子Q1s、ドレイン端子Q1d、ゲート端子Q1gが、それぞれ接地電位GND、トランジスタQ2′のゲート端子Q2g、第1制御信号線CL1に接続された態様にある。トランジスタQ4′のソース端子Q4s、ドレイン端子Q4d、ゲート端子Q4gが、それぞれ接地電位GND、トランジスタQ5′のゲート端子Q5g、第2制御信号線CL2に接続された態様にある。トランジスタQ3′のソース端子Q3s、ドレイン端子Q3d、ゲート端子Q3gが、それぞれ接地電位GND、(接続ポートPORT3を介して)第1端子BZ1a、第2制御信号線CL2に接続された態様にある。トランジスタQ6′のソース端子Q6s、ドレイン端子Q6d、ゲート端子Q6gが、それぞれ接地電位GND、(接続ポートPORT6を介して)第2端子BZ1b、第1制御信号線CL1に接続された態様にある。
【0110】
さらに、この例では、トランジスタQ2′のソース端子Q2sとゲート端子Q2gとの間に、第1ゲートソース間抵抗Q2rが接続されている。トランジスタQ5′のソース端子Q5sとゲート端子Q5gとの間に、第2ゲートソース間抵抗Q5rが接続されている。また、トランジスタQ1′のゲート端子Q1gと接地電位GND(したがって、ソース端子Q1s)との間に、ゲートソース間抵抗Q1rが接続されている。トランジスタQ4′のゲート端子Q4gと接地電位GND(したがって、ソース端子Q4s)との間に、ゲートソース間抵抗Q4rが接続されている。トランジスタQ3′のゲート端子Q3gと接地電位GND(したがって、ソース端子Q3s)との間に、ゲートソース間抵抗Q3rが接続されている。トランジスタQ6′のゲート端子Q6gと接地電位GND(したがって、ソース端子Q6s)との間に、ゲートソース間抵抗Q6rが接続されている。そのようにした場合、第1Pチャネル型電界効果トランジスタQ2′は、第1PNP型バイポーラトランジスタQ2におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオフし、第2期間T2にオンする。つまり、第1期間T1には、トランジスタQ1′がオフすることによって、トランジスタQ2′のゲート端子Q2gの電位が第1ゲートソース間抵抗Q2rを介してソース端子Q2sの電位と等しくなって、トランジスタQ2′がオフする。第2期間T2には、トランジスタQ1′がオンすることによって、トランジスタQ2′のゲート端子Q2gの電位がソース端子Q2sの電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、トランジスタQ2′がオンする。第2Pチャネル型電界効果トランジスタQ5′は、第2PNP型バイポーラトランジスタQ5におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオンし、第2期間T2にオフする。つまり、第1期間T1には、トランジスタQ4′がオンすることによって、トランジスタQ5′のゲート端子Q5gの電位がソース端子Q5sの電位よりも低くなって(具体的には、オン閾値電圧をマイナス側へ超えて)、トランジスタQ5′がオンする。第2期間T2には、トランジスタQ4′がオフすることによって、トランジスタQ5′のゲート端子Q5gの電位が第2ゲートソース間抵抗Q5rを介してソース端子Q5sの電位と等しくなって、トランジスタQ5′がオフする。また、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1′は、NPN型バイポーラトランジスタQ1におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオフし、第2期間T2にオンする。Nチャネル型電界効果トランジスタQ4′は、NPN型バイポーラトランジスタQ4におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオンし、第2期間T2にオフする。Nチャネル型電界効果トランジスタQ3′は、NPN型バイポーラトランジスタQ3におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオンし、第2期間T2にオフする。Nチャネル型電界効果トランジスタQ6′は、NPN型バイポーラトランジスタQ6におけるのと同様に、安定したスイッチング動作で、第1期間T1にオフし、第2期間T2にオンする。
【0111】
したがって、この負荷駆動回路300′は、負荷駆動回路300におけるのと同様に、従来例のシングルエンド駆動方式に比して、負荷BZ1をより高電圧(約4倍の電圧)で駆動できる。
【0112】
また、この負荷駆動回路300′は、昇圧コイルのような不便な部品を含む必要がなく、一般的な回路部品(抵抗素子、コンデンサ、トランジスタなど)で簡単に構成され得る。しかも、この負荷駆動回路300′では、第1チャージポンプ回路21と第2チャージポンプ回路22をなす部品以外の残りの部品がCMOS基板90の内部に一体に組み込まれているので、外付け部品の点数を大幅に削減できる。
【0113】
さらに、第1チャージポンプ回路21に含まれた第1ダイオードD1と、第2チャージポンプ回路22に含まれた第2ダイオードD2とを、CMOS基板90の内部に一体に組み込んでもよい。それにより、外付け部品の点数をさらに削減できる。
【0114】
なお、この負荷駆動回路300′では、接続ポートPORT2、PORT3、PORT5、PORT6(図20中に「HV」として示す)に接続されたトランジスタQ2′、トランジスタQ3′、トランジスタQ5′、トランジスタQ6′は、第1チャージポンプ回路21、第2チャージポンプ回路22で発生する電圧に十分耐えられるように、例えばトランジスタQ1′、トランジスタQ4′に比して、高耐圧仕様になっている。
【0115】
上述の各実施形態では、負荷BZ1として圧電ブザーを駆動する例について説明したが、これに限られるものではない。この負荷駆動回路は、例えば、圧電式の超音波スピーカを駆動可能であるし、また、圧電体に限られず、比較的インピーダンスの高い負荷であれば、駆動可能である。
【0116】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0117】
10 制御信号供給部
11 第1制御信号供給部
12 第2制御信号供給部
20 チャージポンプ回路
21 第1チャージポンプ回路
22 第2チャージポンプ回路
100,200,300,300′ 負荷駆動回路
BZ1 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20