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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097641
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】増粘剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/38 20060101AFI20240711BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240711BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20240711BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C04B24/38 B
C04B24/22 A
C04B24/04
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001234
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB16
4G112PB25
4G112PB40
(57)【要約】
【課題】粘度発現性に優れる増粘剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩と、を含む、増粘剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩〔以下、(C)成分という〕と、を含む、増粘剤組成物。
【請求項2】
20℃における(A)成分の2質量%水溶液の粘度が、100mPa・s以上200,000mPa・s以下である、請求項1に記載の増粘剤組成物。
【請求項3】
(B)成分の重量平均分子量が、1,000以上200,000以下である、請求項1又は2に記載の増粘剤組成物。
【請求項4】
(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)が、0.03以上2.5以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(C)/(B)が、0.02以上50以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項6】
更に(D)水を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項7】
無機粉体の水分散体用である、請求項1~6の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項8】
前記無機粉体は、水硬性粉体である、請求項7に記載の増粘剤組成物。
【請求項9】
(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩と、を含む、増粘剤組成物用添加剤。
【請求項10】
水硬性粉体と、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩と、を含む、粉末混合物。
【請求項11】
水硬性粉体と、水と、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩と、を含む、水硬性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
増粘剤は、食品、化粧品、その他の工業製品に広く用いられ、溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束することにより系の粘度を高め(増粘)、各々の用途に求められる適切なテクスチャの実現や、系の安定性の向上に貢献している。
【0003】
溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束する増粘剤の思想から、その分子設計は、溶媒、分散媒や分散質に対して相互作用力を示す構成単位を有することが考慮される。代表的な増粘剤としては、セルロースエーテル系増粘剤、アクリル系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤、ポリオキシエチレン系増粘剤、粘土系増粘剤等が挙げられる。
【0004】
特に、土木・建築分野に代表される産業製品用途では、その増粘性はさることながら、安全性等の観点から、パルプや綿花といった天然原料から得られるセルロースのエーテル変性物である、セルロースエーテル系増粘剤の利用が主であり、代表的なセルロースエーテル系増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0005】
また、斯様な増粘剤は、溶媒、分散媒に分散、溶解して増粘性を発現するため、その多くが、ハンドリングや輸送の観点から、溶媒、分散媒を極力取り除いた、粉末状の製品として流通することが多い。
【0006】
一方、界面活性剤は、同一分子内中に水と親和性が高い親水基と油と親和性が高い疎水基を有する両親媒性分子であり、乳化・分散・起泡・ぬれ等を制御する、産業製品には不可欠な薬剤であり、上記セルロースエーテル系増粘剤と併用されることも少なくない。
【0007】
特許文献1には、(1)農薬活性成分、(2)カルボキシメチルセルロース塩、(3)モンモリロナイト鉱物系無機増粘剤、(4)界面活性剤、及び(5)水を含有する水性懸濁状農薬組成物が開示されている。
また、特許文献2には、農薬活性成分、イオン性界面活性剤、IOB値が3.5以下の水溶性高分子及び水を含有する農薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-51871号公報
【特許文献2】特開2018-197209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、セルロースエーテル系増粘剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロースと、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などの芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩を併用した際に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが顕著に増粘した結果、継粉(ダマ)を生じて増粘性能が十分に発現しないおそれがあった。
本発明は、粘度発現性に優れる増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩〔以下、(C)成分という〕と、を含む、増粘剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(A)成分を含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)成分と、(C)成分と、を含む、増粘剤組成物用添加剤に関する。
【0012】
また、本発明は、水硬性粉体と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、を含む、粉末混合物に関する。
【0013】
また、本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、を含む、水硬性組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘度発現性に優れる増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
近年、持続的な社会実現のためにSDGsが提唱されている。本発明は、増粘剤組成物における継粉の形成抑制により、系を増粘させるためのヒドロキシアルキルアルキルセルロースの必要量を削減し、例えば、SDGsのNo.9、11、12、13、15などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【0016】
本発明者らは、本発明の増粘剤組成物の水分散液又は水溶液を調製した際に、混合から例えば10秒~10分といった短い時間でその水分散液又は水溶液の粘度が著しく上昇することを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
(B)成分である芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩は、界面活性剤であり親水部と疎水部を有し、水中では疎水部を起点として、(A)成分であるヒドロキシアルキルアルキルセルロースを橋かけしたネットワーク構造を形成し、顕著な増粘性を示すと考えられる。しかしながら、(A)成分と(B)成分を含む増粘剤組成物は、増粘性に優れるが故に、水と接触すると瞬時に“糊化”し、水の移動を妨げることで空気を閉じ込めた継粉を形成すると考察される。(C)成分であるジ分岐アルキルスルホコハク酸及びその塩は、界面活性剤の中でも界面張力低下能に優れ、その親水的なスルホ基構造で水の表面張力を効果的に低下させることにより、継粉への水の浸潤を促進するとともに、その分岐アルキル鎖構造により界面での安定性が低いことで、(B)成分と(A)成分とにより形成されるネットワーク構造中に留まり続けることがなく、このネットワーク構造の形成及び増粘を妨げないことにより、特に混練初期の粘度発現性に優れると考察される。
なお、本発明の増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物は、上記の作用機構に限定されるものではない。
【0017】
<増粘剤組成物>
本発明の増粘剤組成物は、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩〔以下、(C)成分という〕と、を含む。
【0018】
<(A)成分>
(A)成分は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。(A)成分は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであってよい。(A)成分は、好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種類以上、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
(A)成分は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、B型粘度計によって測定される(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度が、好ましくは100mPa・s以上200,000mPa・s以下である。
【0019】
(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは1,000mPa・s以上、より更に好ましくは1,500mPa・s以上、より更に好ましくは2,000mPa・s以上、そして、水分散性又は水溶性の観点から、好ましくは200,000mPa・s以下、より好ましくは150,000mPa・s以下、更に好ましくは100,000mPa・s以下、より更に好ましくは50,000mPa・s以下である。
【0020】
<粘度の測定方法>
(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度は、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpm、10秒後の条件で測定する。ただし、この条件におけるNo.2ローターでの測定(以下、No.2ローターでの測定という)で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpm、10秒後の条件で測定し、No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpm、10秒後の条件で測定し、20℃、No.4ローター、60rpmでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpm、10秒後の条件で測定する。
【0021】
(A)成分のヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、ヒドロキシアルコキシ基置換モル数、更にはヒドロキシエトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の合計置換モル数、更にはヒドロキシプロポキシ基置換モル数が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.15以上、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。
ここで、「ヒドロキシアルコキシ基置換モル数」とは、セルロースのグルコース単位(3つの水酸基を持つ)1モル当りに導入されたヒドロキシアルコキシ基の平均モル数である。「ヒドロキシエトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の合計置換モル数」及び「ヒドロキシプロポキシ基置換モル数」についても同様である。
【0022】
また、(A)成分のヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、アルコキシ基置換度、更にはメトキシ基置換度が、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.7以上、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下である。
ここで、「アルコキシ置換度」とは、セルロースのグルコース単位(3つの水酸基を持つ)当りに導入されたアルコキシ基の平均個数である。「メトキシ基置換度」についても同様である。
【0023】
(A)成分の重量平均分子量は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、更に好ましくは500,000以上、そして、水分散性又は水溶性の観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、更に好ましくは2,000,000以下である。
(A)成分の重量平均分子量は、以下の測定条件に基づいたゲル浸透クロマトグラフィーによって、分子量が既知であるポリエチレングリコールを標準試料として測定された値である。
<(A)成分の重量平均分子量の測定方法>
カラム:α-M+α-M(カチオン)
溶出液:50mmоl/L LiCl、エタノール/水=3:7質量%混合液
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0024】
なお、(A)成分のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、例えば特開平10-158302号公報等に記載の公知の方法により製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のメトローズシリーズ、三晶株式会社製のネオビスコ(NEOVISCO)-MCシリーズ、巴工業株式会社製のメセロースシリーズ、松本油脂製薬株式会社製のマーポローズシリーズ、ダウ・ケミカル・カンパニー製のMETHOCELシリーズなどがある。また、これら市販品の中で、2質量%粘度が100mPa・s以上200,000mPa・s以下であるものとして、信越化学工業株式会社製 メトローズ60SH-4000(4,000、1.9)、60SH-10000(10,000、1.9)、65SH-4000(4,000、1.8)、65SH-15000(15,000、1.8)、90SH-4000(4,000、1.4)、90SH-15000(15,000、1.4)、90SH-30000(30,000、1.4)、90SH-100000(100,000、1.4)、三晶株式会社製 NEOVISCO MC HM-4000(4,000、1.8)、HM-15000(15,000、1.8)、RM-4000(4,000、1.4)、RM-8000(8,000、1.4)、RM-15000(15,000、1.4)、RM-30000(30,000、1.4)、松本油脂製薬株式会社製 マーポローズ 60MP-4000(4,000、1.9)、65MP-4000(4,000、1.8)、90MP-4000(4,000、1.4)、90MP-15000(15,000、1.4)、90MP-30000(30,000、1.4)、ダウ・ケミカル・カンパニー社製 METHOCEL K4M(4,300、1.4)、K15M(16,000、1.4)、E4M(4,300、1.9)、E10M(10,800、1.9)などが挙げられる。その中で、更にメトキシ基の置換度が1.7~1.9のものとして、信越化学工業株式会社製 メトローズ60SH-4000、60SH-10000、65SH-4000、65SH-15000、三晶株式会社製 NEOVISCO MC HM-4000、HM-15000、松本油脂製薬株式会社製 マーポローズ 60MP-4000、65MP-4000、ダウ・ケミカル・カンパニー社製 METHOCEL E4M、E10Mなどが挙げられる。なお、前記市販品の括弧内はそれぞれ、2質量%粘度(mPa・s)、メトキシ基置換度を表す。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩である。(B)成分は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであってよい。(B)成分は、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩であり、当該芳香族スルホン酸としては、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、等の単環芳香族スルホン酸;α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、α-ナフトールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸及びブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸が好ましい。
【0026】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の塩としては、例えば、α-又はβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(以下、α-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、又はβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を総称して単に「ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物」ともいう)又はその塩が挙げられる。これらの中でも、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩が好ましい。
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸等の共重合可能な化合物由来の構成単位が挙げられる。
【0027】
(B)成分の塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
(B)成分の重量平均分子量は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上、そして、水分散性又は水溶性の観点から、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下である。
【0029】
<(B)成分の重量平均分子量の測定方法>
(B)成分の重量平均分子量は、下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定する。
[GPC条件]
装置:東ソー株式会社 HLC-8320GPC
カラム:東ソー株式会社 G4000SWXL+G2000SWXL
溶離液:30mMCHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7mL/min
検出器:UV 280nm
サンプルサイズ:3.33mg/mL
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算 SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS,INC.製 SODIUMPOLYSTYRENE SULFONATE-narrow distribution-:MW=1,690、7,540、16,000、68,300、126,700、587,600
【0030】
芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド(ホルマリン)縮合物の製造方法は、例えば、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得て、塩基性物質により中和する方法が挙げられる。なお、中和後に系中に存在する水不溶解物を除去してもよい。
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の塩の市販品としては、花王株式会社製「マイテイ」シリーズの150、HS、150R、150RX、150V、150HB-2、100、「デモール」シリーズのAS、MS、N、NL、RN、RN-L、SC-30、SC-B、SN-B、SS-L、T、T-45等が挙げられる。
【0031】
<(C)成分>
(C)成分は、ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩である。(C)成分は、ジ分岐アルキルスルホコハク酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
(C)成分は、炭素数4以上16以下の分岐鎖アルキル基を2つ有するスルホコハク酸ジエステル又はその塩が好ましい。
【0032】
(C)成分としては、下記一般式(C1)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
〔式中、R、Rは、それぞれ、炭素数4以上16以下の分岐鎖アルキル基であり、AO、AOは、それぞれ、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、x1、x2は、平均付加モル数であり、それぞれ、0以上10以下の数であり、Mは陽イオンである。〕
【0035】
一般式(C1)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数4以上16以下の分岐鎖アルキル基である。
及びRの分岐鎖アルキル基の炭素数は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、それぞれ、4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、そして、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
【0036】
一般式(C1)中、R及びRの合計炭素数は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上、そして、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは20以下である。ここで、(C)成分として、R及びRの合計炭素数の異なる2種以上の化合物を含有する場合、(C)成分全体としてのR及びRの合計炭素数は、それぞれの化合物のR及びRの合計炭素数のモル平均を表す。
【0037】
一般式(C1)中、R及びRの分岐鎖アルキル基は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、炭素数1以上の側鎖を有することが好ましく、炭素数2以上の側鎖を有することがより好ましい。側鎖の炭素数は6以下、更に4以下であってよい。なお、R及びRの分岐鎖アルキル基のうち、式中の酸素原子(O)と結合している炭素を1番目の炭素として最も長い炭素の並びを主鎖と呼び、主鎖の炭素数をX(R及びRの炭素数4以上なのでXは2以上となる)とするときに、主鎖の1番目からX-1番目の何れかの炭素に結合している炭化水素基のことを、それぞれ、側鎖という。
なお、R及びRは、ゲルベアルコール由来の基であってよい。
【0038】
一般式(C1)中のR及びRは、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、それぞれ独立して、好ましくは炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基、より好ましくは炭素数8以上10以下の分岐鎖アルキル基、更に好ましくは炭素数10の分岐鎖アルキル基である。
【0039】
本発明においては、第2級アルコールから水酸基を除去した炭化水素残基を、分岐鎖アルキル基に含める。
及びRが、それぞれ、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基である場合、側鎖を構成する炭素数の合計は、同一あるいは異なっていてもよく、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは3である。
本発明において、側鎖を構成する炭素数の合計とは、一つの分岐鎖アルキル基において、主鎖以外の全側鎖の炭素数を合計したものであり、側鎖が複数ある場合は、それら全側鎖の炭素数の合計である。
【0040】
及びRの側鎖の数は、同一あるいは異なっていてもよく、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。R及びRの側鎖の数は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、それぞれ、1であることが好ましい。
本発明において、側鎖の数とは、主鎖から分岐する側鎖の数であり、側鎖が、更に当該側鎖から分岐する側鎖を有していても側鎖の数としては変わらない。ただし、側鎖が更に当該側鎖から分岐する側鎖を有していてもよいが、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、側鎖は直鎖であることが好ましい。
【0041】
及びRが、それぞれ独立して、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基である場合、R、Rの分岐炭素の数は、同一あるいは異なっていてもよく、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、1以上、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。R及びRの分岐炭素の数は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、それぞれ、1であることが好ましい。本発明において、分岐炭素の数とは、分岐鎖アルキル基中の第3級炭素原子と第4級炭素原子の数の合計である。
【0042】
、Rのより好ましい態様は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基であって、主鎖の炭素数が、それぞれ独立して、6以上8以下であり、側鎖を構成する炭素数が、それぞれ独立して、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは3であり、側鎖の数が、それぞれ独立して、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である分岐鎖アルキル基である。
、Rは、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、それぞれ、分岐鎖オクチル基、分岐鎖デシル基及び分岐鎖ドデシル基から選ばれる分岐鎖アルキル基が好ましく、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、分岐鎖デシル基がより好ましい。分岐鎖オクチル基は、2-エチルヘキシル基などが挙げられる。分岐鎖デシル基は、2-プロピルヘプチル基、KHネオケム株式会社製デシルアルコール由来の基などが挙げられ、2-プロピルヘプチル基が好ましい。分岐鎖ドデシル基は、2-ブチルオクチル基などが挙げられる。
【0043】
一般式(C1)中、Rの分岐鎖アルキル基とRの分岐鎖アルキル基は、同一でも異なっていてもよい。Rの分岐鎖アルキル基とRの分岐鎖アルキル基が同一であると、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点で好ましい。
【0044】
一般式(C1)中、AO、AOは、それぞれ、炭素数2以上4以下、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、好ましくは炭素数2又は3のアルキレンオキシ基である。一般式(C1)中、x1、x2は、AO、AOの平均付加モル数を表し、それぞれ、0以上10以下、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下の数であり、0がより更に好ましい。
【0045】
一般式(C1)中、Mは陽イオンである。Mは水素イオン以外の陽イオンが好ましい。Mとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、モノメチルアンモニウムイオンなどの有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。
Mは、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、アルカリ金属イオン、アルカノールアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。
【0046】
<増粘剤組成物の組成及びその他成分>
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、(A)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、水分散液又は水溶液のハンドリング性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0047】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、(A)成分の配合量が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましく0.1質量部以上、そして、好ましくは8質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下となるように用いられる。
【0048】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、(B)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0049】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、(B)成分の配合量が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.04質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下となるように用いられる。
【0050】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、(C)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは97質量%以下、より更に好ましくは95質量%以下含有する。
【0051】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、(C)成分の配合量が、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.02質量部以上、より更に好ましくは0.04質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下となるように用いられる。
【0052】
本発明の増粘剤組成物における、(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.32以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0053】
本発明の増粘剤組成物における、(C)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(C)/(B)は、水分散液又は水溶液の粘度発現性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.12以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは70以下、より好ましく60以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下である。
【0054】
本発明の増粘剤組成物は、(D)水〔以下、(D)成分という〕を含むことができる。水は、水道水、精製水、地下水、工業用水であってよい。(D)成分は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び下記任意成分を除く残部として用いられる。
本発明の増粘剤組成物が(D)成分を含む場合、本発明の増粘剤組成物は、増粘剤組成物のハンドリング性の観点から、(D)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0055】
本発明の増粘剤組成物は、任意に、防腐剤、消泡剤、安定剤を含有することができる。
【0056】
また、本発明の増粘剤組成物は、無機粉体を含むことができる。無機粉体は、水硬性粉体の水分散体(スラリー)用、例えば、セメント、石膏などの水硬性粉体、高炉スラグ、アッシュ、非晶質シリカ、カオリンなどのポゾラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体、石粉(炭酸カルシウム粉末)などが挙げられる。水硬性粉体の好ましい態様については、本発明の水硬性組成物において詳述する。
また、無機粉体としては、セラミック製造用の無機粉体、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、ハイドロキシアパタイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、蛍石、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアタイト、酸化亜鉛などが挙げられる。
また、無機粉体としては、色材(顔料)である無機粉体、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、セリサイトなど、猫砂等の造粒物用の無機粉体、例えば、ベントナイト、ゼオライトなど、導電性材料である無機粉体、例えば、銀及びその合金、銅及びその合金、金及びその合金、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、タングステン及びその合金、モリブデン及びその合金、亜鉛及びその合金、ニッケル及びその合金、鉄及びその合金、白金及びその合金、スズ及びその合金、鋼及びその合金、鉛及びその合金、水銀及びその合金が挙げられる。
【0057】
また、本発明の増粘剤組成物は、単量体を含有することができる。単量体は、ビニル基やアリール基を有する共重合性のモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、エチレン及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、プロピレン及びその誘導体、アルキレングリコール及びその誘導体、ジカルボン酸及びその誘導体、ベンゼン及びその誘導体、ナフタレン及びその誘導体が挙げられる。
また、本発明の増粘剤組成物は、猫砂等の造粒物用の粉体として、パルプ、パルプスラッジ、おがくず、茶殻など、導電性粉体として、炭素及びその合金などを含むことができる。
【0058】
本発明の増粘剤組成物は、水硬性粉体の水分散体用、セラミック製造用の無機粉体の分散体用、モノマー等の乳化分散体用、色材等の分散体用、猫砂等の造粒物用、及び導電性材料等の分散体用から選ばれる1種以上の増粘剤組成物であってよく、水硬性粉体の水分散体用の増粘剤組成物として好適である。
本発明の増粘剤組成物を含有する水硬性粉体の水分散体として、例えば、下記の本発明の水硬性組成物が挙げられる。
【0059】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、無機粉体を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0060】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、無機粉体の配合量が、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、そして、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下となるように用いられる。
【0061】
<水硬性組成物>
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、を含む、水硬性組成物を提供する。
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物と、水と、本発明の増粘剤組成物を含有する、水硬性組成物であってよい。
本発明の水硬性組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の好ましい態様は、本発明の増粘剤組成物で述べた好ましい態様と同じである。
また、本発明の水硬性組成物において、水は、例えば、水道水、湖沼水、河川水、地下水などである。
【0062】
水硬性粉体は、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、調達性及びハンドリング性の観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0063】
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
【0064】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することができる。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。
細骨材は、JIS A0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。
また、粗骨材は、JIS A0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0065】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(W/C)が、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは300質量%以下、より好ましくは150質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
なお、この水/水硬性粉体比(W/C)は、本発明の水硬性組成物中の水硬性粉体に対する水の割合を質量百分率(質量%)で表したものであり、(水/水硬性粉体)×100で算出される。
また、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
【0066】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは8質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0067】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下含有する。
【0068】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下含有する。
【0069】
本発明の水硬性組成物における、(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)は、水硬性組成物スラリー粘度の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.32以上、そして、水硬性組成物スラリー粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0070】
本発明の水硬性組成物における、(C)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(C)/(B)は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.12以上、そして、水硬性組成物スラリー粘度の観点から、好ましくは70以下、より好ましく60以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下である。
【0071】
<粉末混合物>
本発明の増粘剤組成物は、予め水硬性粉体と混合された粉末混合物(ドライミックス)であってよい。
すなわち、本発明は、前記水硬性粉体と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、を含む、粉末混合物を提供する。
本発明の粉末混合物における、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。
また、本発明の粉末混合物における、水硬性粉体等の好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で記載した態様と同じである。そして、本発明の粉末混合物における、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の好ましい含有量、並びにその含有量の質量比(B)/(A)、(C)/(B)は、本発明の水硬性組成物で記載した好ましい態様と同じである。
【0072】
本発明の粉末混合物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該粉末混合物に含まれる水硬性粉体に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0073】
本発明の粉末混合物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該粉末混合物に含まれる水硬性粉体に対して、(B)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0074】
本発明の粉末混合物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水硬性粉体に対して、(C)成分を、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下含有する。
【0075】
<増粘剤組成物用添加剤>
本発明は、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース〔(A)成分である〕を含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔(B)成分である〕と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩〔(C)成分である〕と、を含む、増粘剤組成物用添加剤を提供する。
本発明の増粘剤組成物用添加剤における、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。また、本発明の増粘剤組成物用添加剤において、増粘剤組成物における(A)成分の好ましい含有量は、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。
【0076】
本発明の増粘剤組成物用添加剤は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、(B)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、例えば、80質量%以下、更には70質量%以下、更には60質量%以下、更には50質量%以下含有する。
【0077】
本発明の増粘剤組成物用添加剤は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、(C)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、増粘剤組成物用添加剤の保存安定性の観点から、例えば、99質量%以下、更には70質量%以下、更には40質量%以下、更には10質量%以下含有する。
【0078】
本発明の増粘剤組成物用添加剤における、(C)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(C)/(B)は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.12以上、そして、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、好ましくは70以下、より好ましく60以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下である。
【0079】
本発明の増粘剤組成物用添加剤は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリー粘度の観点から、増粘剤組成物に含まれる(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.32以上、そして、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下となるように用いられる。
すなわち、本発明の増粘剤組成物用添加剤は、(A)成分に対して(B)成分を、前記質量比(B)/(A)で用いられる、増粘剤組成物用添加剤であってよい。
【0080】
<増粘剤組成物製造用のキット>
本発明は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される増粘剤組成物製造用のキットであって、(A)成分と、(B)成分が別の剤に含まれている、キットを提供する。
(A)成分:ヒドロキシアルキルアルキルセルロース
(B)成分:芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩
(C)成分:ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩
【0081】
本発明のキットにおける、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。本発明の増粘剤組成物で述べた事項は、本発明のキットに適宜適用することができる。
【0082】
本発明のキットの例としては、
(1)(A)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分及び(C)成分を含み(A)成分を含まない剤とから構成されるキット
(2)(A)成分及び(C)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分を含み(A)成分を含まない剤とから構成されるキット
(3)(A)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分を含み(A)成分を含まない剤と、(C)成分を含む剤(この剤は任意に(A)成分又は(B)成分を含んでよい)とから構成されるキット
が挙げられる。
【0083】
本発明のキットでは、ハンドリング性の観点から(A)成分と、(B)成分は分離して保存、供給することが好ましく、保存安定性の観点から、(A)成分を含む剤と、(B)成分及び(C)成分を含む剤とのキットとして供給することが好ましい。キットとしては、剤の安定性、作業性の観点から、(A)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分及び(C)成分を含み(A)成分を含まない剤とから構成されるキットがより好ましい。
【0084】
本発明のキットを構成する各剤において、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量は、例えば、前記範囲の含有量や質量比でこれらの成分を含有する本発明の増粘剤組成物が製造できるような量であってよい。
【0085】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選ばれる成分を含む複数の剤は、混合され、更には水で希釈されて、所定の増粘剤組成物が調製される。
本発明の増粘剤組成物製造用のキットは、本発明の増粘剤組成物の調製に好適に用いられる。
【0086】
(A)成分を含む剤は、(A)成分を、1質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(B)成分を含む剤は、(B)成分を、1質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(C)成分を含む剤は、(C)成分を、1質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
(A)成分を含む剤、(B)成分を含む剤及び(C)成分を含む剤は、本発明の増粘剤組成物で挙げられた(D)成分等の任意成分を含有することができる。
【0087】
<増粘剤組成物の製造方法>
本発明は、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔(B)成分である〕と、(C)ジ分岐アルキルスルホコハク酸又はその塩〔(C)成分である〕と、(D)水〔(D)成分である〕とを混合した水溶液に、(A)ヒドロキシアルキルアルキルセルロース〔(A)成分である〕を混合する、増粘剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の増粘剤組成物の製造方法における、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。また、本発明の増粘剤組成物における(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の好ましい含有量及び含有量の質量比は、本発明の増粘剤組成物の製造方法における、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の好ましい混合量及び混合割合である。
【実施例0088】
(A)成分を含む剤と、(B)成分を含む剤と、(C)成分を含む剤と、用いて、表1~6に記載の増粘剤組成物の水分散液及び表7に記載のセメントペーストを調製して、下記評価を行った。増粘剤組成物の水分散液又はセメントペーストは、増粘剤組成物の有効成分として、該水分散液又はセメントペーストに含まれる水100質量部に対して、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を表に記載の質量部で含有する増粘剤組成物の水分散液又はセメントペーストである。
【0089】
<増粘剤組成物の水分散液又はセメントペーストの配合成分>
<(A)成分>
※各成分中の( )内に20℃における各成分の2質量%水溶液の粘度(カタログ値)及びメトキシ基置換度を示す。
・A-1:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100,000mPa・s、1.4)、メトローズ 90SH-100000、信越化学工業株式会社製
・A-2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(4,000mPa・s、1.4)、メトローズ 90SH-4000、信越化学工業株式会社製
・A-3:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(15,000mPa・s、1.8)、メトローズ 65SH-15000、信越化学工業株式会社製
・A-4:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(4,000mPa・s、1.9)、メトローズ 60SH-4000、信越化学工業株式会社製
<(A’)成分>
・A’-1:メチルセルロース(3,500-5,600mPa・s)、東京化成工業株式会社製
・A’-2:ヒドロキシエチルセルロース(4,500-6,500mPa・s)、東京化成工業株式会社製
・A’-3:カルボキシメチルセルロースナトリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製
<(B)成分>
(B)成分:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(重量平均分子量:13,000)、花王株式会社製
【0090】
<(C)成分>
・C-1:ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、花王株式会社製
・C-2:ジ-2-プロピルヘプチルスルホコハク酸ナトリウム塩、花王株式会社製
<(C’)成分>
・C’-1:スルホコハク酸牛脂アミド二ナトリウム塩、花王株式会社製
・C’-2:ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、花王株式会社製
・C’-3:ラウリルベンゼンスルホネートナトリウム塩、花王株式会社製
・C’-4:オレイン酸カリウム、花王株式会社製
・C’-5:二カリウム=2-(アルケニル(C=16~18))スクシナート、花王株式会社製
・C’-6:ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、花王株式会社製
・C’-7:ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル、花王株式会社製
・C’-8:ポリオキシエチレン(5)sec-アルキル(C=11~15)エーテル、花王株式会社製
・C’-9:ソルビタンモノラウレート、花王株式会社製
・C’-10:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、花王株式会社製
・C’-11:ポリオキシエチレン(20)ステアリルアミン、花王株式会社製
・C’-12:パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、花王株式会社製
・C’-13:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、花王株式会社製
・C’-14:ドデシルジメチルアンモニオアセタート、花王株式会社製
・C’-15:2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、花王株式会社製
・C’-16:ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテルカルボキシレートナトリウム塩、花王株式会社製
・C’-17:ココヤシ油アルキルジメチルアミン、花王株式会社製
・C’-18:アルキル(C=9~11)オリゴグルコピラノシド、花王株式会社製
・C’-19:N-(2-アミノエチル)-N-(2-ヒドロキシエチル)グリシンN-(ココ-アシル)誘導体-ナトリウム塩、花王株式会社製
・C’-20:ラウリルジメチルアミンオキシド、花王株式会社製
【0091】
<(D)成分>
・水:上水道水(和歌山市上水、比重1.00)
<水硬性粉体>
・普通ポルトランドセメント:ビーライト含有率18重量%、比重3.16、太平洋セメント株式会社製
【0092】
<実施例1及び比較例1>
(1)増粘剤組成物の水分散液の調製
100mLディスポーザブルカップに、水と、(B)成分と、(C)成分又は(C’)成分とを投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて10秒間撹拌して水溶液を調製した。水は、ディスポーザブルカップに投入した水、(B)成分を溶解させた水、及び(C)成分又は(C’)成分を溶解させた水の合計質量が100gとなるように投入した。また、(B)成分は、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表1、2に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。また、水溶性に乏しい(C)成分又は(C’)成分は、事前に(C)成分又は(C’)成分の希薄水溶液を調製し、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表1、2に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。
次いで、この水溶液に(A)成分又は(A’)成分を添加し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて2分間撹拌して増粘剤組成物の水分散液を調製した。(A)成分又は(A’)成分は、(A)成分又は(A’)成分を添加する前の水溶液に含まれる水100gに対する固形分質量(g)が表1、2に記載の質量部となるように添加した。
【0093】
(2)増粘剤組成物の水分散液の継粉の分散度合いの評価
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液を目視観察し、下記指標に基づいて増粘剤組成物の水分散液中の継粉の分散度合いを評価した。結果を表1、2に示す。
[分散度合いの指標]
〇…継粉が確認されない、又は直径2mm未満の継粉が確認される。
×…直径2mm以上の継粉が確認される。
【0094】
(3)増粘剤組成物の水分散液の粘度の測定
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液の粘度を、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。この条件におけるNo.2ローターでの測定(以下、No.2ローターでの測定という)で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。20℃、No.4ローター、60rpmでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。結果を表1、2に示す。
【0095】
(4)増粘性向上度の算出
(3)の測定で算出された、増粘剤組成物の水分散液の粘度〔以後、粘度Aという〕と、当該増粘剤組成物の水分散液と同じ量の(A)成分と(B)成分を含み、(C)成分を含まない比較例の増粘剤組成物の水分散液の粘度〔以後、粘度Bという〕と、に基づいて、下記(1)式に基づいて、増粘性向上度を算出した。結果を表1、2に示す。なお、表1では、粘度Bとして、比較例1-1又は比較例1-2の増粘剤組成物の分散液の粘度を用い、表2では、粘度Bとして、比較例1-7等の増粘剤組成物の分散液の粘度を用いた。
増粘性向上度(倍)=(粘度A)/(粘度B) (1)
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
表1、2中、実施例1-1~1-4は比較例1-1と比較して、実施例1-5、1-6は比較例1-2~1-5と比較して、実施例1-7、1-8は比較例1-6~1-31と比較して、優れた継粉の分散度合いと混練初期の粘度発現性を示した。これは、C-1成分やC-2成分に代表されるジ分岐アルキルスルホコハク酸及びその塩が、効果的に水の表面張力を低下させながら、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物とヒドロキシプロピルメチルセルロースのネットワーク構造の形成・増粘を妨げないことにより、特に混練初期の粘度発現性を向上させたためであると考察される。
【0099】
<実施例2及び比較例2>
(1)増粘剤組成物の水分散液の調製
100mLディスポーザブルカップに、水と、(B)成分と、(C)成分と、を投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて10秒間撹拌して水溶液を調製した。水は、ディスポーザブルカップに投入した水、(B)成分を溶解させた水、及び(C)成分又は(C’)成分を溶解させた水の合計質量が100gとなるように投入した。また、(B)成分は、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表3~6に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。また、(C)成分又は(C’)成分は、事前に(C)成分又は(C’)成分の希薄水溶液を調製し、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表3~6に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。
次いで、この水溶液に(A)成分を添加し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて1~3分間撹拌して増粘剤組成物の水分散液を調製した。(A)成分は、(A)成分を添加する前の水溶液に含まれる水100gに対する固形分質量(g)が表3~6に記載の質量部となるように添加した。
【0100】
(2)増粘剤組成物の水分散液中の継粉の分散度合いの評価
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液を、撹拌開始から1分後、2分後、3分後の時点で目視観察し、下記指標に基づいて増粘剤組成物の水分散液中の継粉の分散度合いを評価した。結果を3~6に示す。
[継粉の分散度合いの指標]
〇…継粉が確認されない、又は直径2mm未満の継粉が確認される。
×…直径2mm以上の継粉が確認される。
【0101】
(3)増粘剤組成物の水分散液の粘度の測定
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液の粘度を、撹拌開始後1分後、2分後、3分後の粘度を測定した。実際には、撹拌時間ごとに測定から再撹拌までに20秒を要するので、(A)成分を加えた後の撹拌開始(A)成分を加えた後の撹拌開始から1分後、2分20秒後、3分40秒後の時点で、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。このNo.2ローターでの測定で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。20℃、No.4ローター、60rpmでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。結果を表3~6に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
表3~6中、実施例2-1、2-2は比較例2-1~2-2と比較して、実施例2-3は比較例2-3と比較して、実施例2-4は比較例2-4と比較して、実施例2-5は比較例2-5と比較して、優れた継粉の分散度合いと混練初期の粘度発現性を示した。これは、C-1成分やC-2成分に代表されるジ分岐アルキルスルホコハク酸及びその塩が、効果的に水の表面張力を低下させながら、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物とヒドロキシプロピルメチルセルロースのネットワーク構造の形成・増粘を妨げないことにより、特に混練初期の粘度発現性を向上させたためであると考察される。
【0107】
<実施例3及び比較例3>
(1)セメントペーストの調製
100mLディスポーザブルカップに、水、(B)成分及び(C)成分と、を投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて10秒間撹拌して水溶液を調製した。水は、ディスポーザブルカップに投入した水、(B)成分を溶解させた水、及び(C)成分又は(C’)成分を溶解させた水の合計質量が50gとなるように投入した。また、(B)成分は、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表7に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。また、(C)成分又は(C’)成分は、事前に(C)成分又は(C’)成分の希薄水溶液を調製し、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表7に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。
次いで、普通ポルトランドセメント50gと、表7に記載の質量部の半分の質量の(A)成分と、をポリエチレン製の袋中で10秒間転倒混合した後、上記、水、(B)成分及び(C)成分の入った100mLディスポーザブルカップに投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて撹拌してセメントペーストを調製した。
【0108】
(2)セメントペースト粘度の測定
セメントペースト粘度の測定は、実施例2の(3)の粘度測定方法と同様の方法で行った。具体的には、(1)記載の方法で調整したセメントペースト粘度を、撹拌開始から1分後、2分20秒後、3分40秒後の時点で、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。20℃、No.4ローター、60rpmでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。結果を表7に示す。
【0109】
【表7】
【0110】
表7中、実施例3-1、3-2は比較例3-1と比較して、セメントペースト混練初期の優れた粘度発現性を示した。これは、C-1成分やC-2成分に代表されるジ分岐アルキルスルホコハク酸及びその塩が、セメントペースト中においても効果的に水の表面張力を低下させながら、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物とヒドロキシプロピルメチルセルロースのネットワーク構造の形成・増粘を妨げないことにより、特に混練初期の粘度発現性を向上させたためであると考察される。