(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097642
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】増粘剤組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/38 20060101AFI20240711BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20240711BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C04B24/38 B
C04B24/22 A
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001235
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB25
4G112PB39
(57)【要約】
【課題】増粘性に優れる増粘剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)ヒドロキシプロピルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、を含む、増粘剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシプロピルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、を含む、増粘剤組成物。
【請求項2】
(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)が、0.02以上2.5以下である、請求項1に記載の増粘剤組成物。
【請求項3】
20℃における(A)成分の2質量%水溶液の粘度が、10mPa・s以上10,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の増粘剤組成物。
【請求項4】
(B)成分の重量平均分子量が、1,000以上200,000以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項5】
更に(C)水を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項6】
無機粉体の水分散体用である、請求項1~5の何れか1項に記載の増粘剤組成物。
【請求項7】
前記無機粉体は、水硬性粉体である、請求項6に記載の増粘剤組成物。
【請求項8】
(A)ヒドロキシプロピルセルロースを含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩を含む、増粘剤組成物用添加剤。
【請求項9】
水硬性粉体と、(A)ヒドロキシプロピルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、を含む、粉末混合物。
【請求項10】
水硬性粉体と、水と、(A)ヒドロキシプロピルセルロースと、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩と、を含む、水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
増粘剤は、食品、化粧品、その他の工業製品に広く用いられ、溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束することにより系の粘度を高め(増粘)、各々の用途に求められる適切なテクスチャの実現や、系の安定性の向上に貢献している。
【0003】
溶媒、分散媒や分散質を保持、拘束する増粘剤の思想から、その分子設計は、溶媒、分散媒や分散質に対して相互作用力を示す構成単位を有することが考慮される。代表的な増粘剤としては、セルロースエーテル系増粘剤、アクリル系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤、ポリオキシエチレン系増粘剤、粘土系増粘剤等が挙げられる。
【0004】
特に、土木・建築分野に代表される産業製品用途では、その増粘性はさることながら、安全性等の観点から、パルプや綿花といった天然原料から得られるセルロースのエーテル変性物である、セルロースエーテル系増粘剤の利用が主であり、代表的なセルロースエーテル系増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0005】
また、斯様な増粘剤は、溶媒、分散媒に分散、溶解して増粘性を発現するため、その多くが、ハンドリングや輸送の観点から、溶媒、分散媒を極力取り除いた、粉末状の製品として流通することが多い。
【0006】
一方、界面活性剤は、同一分子内中に水と親和性が高い親水基と油と親和性が高い疎水基を有する両親媒性分子であり、乳化・分散・起泡・ぬれ等を制御する、産業製品には不可欠な薬剤であり、上記セルロースエーテル系増粘剤と併用されることも少なくない。
【0007】
特許文献1には、農薬活性成分、イオン性界面活性剤、IOB値が3.5以下の水溶性高分子及び水を含有する農薬組成物が開示されている。
【0008】
特許文献2には、シールド推進工法において、シールド機の先頭部で掘削した土砂を取り出すために、スクリューコンベヤーを用いて掘削土砂を搬送する際に、該土砂が軟弱で流動しやすい場合に、スクリューコンベヤー内に、水溶性の多糖類又は変性多糖類を主成分としてなる改良剤を添加して、スクリューコンベヤー内で土砂と改良剤の混合を行い、軟弱流動性を改良する軟弱性土砂の改良工法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、スルホン化ナフタレン、スルホン化メラミン、改質リグノスルフェート、これらの誘導体、及びこれらの混合物などの超可塑剤中にウェランゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉等からなるヒドロコロイドが均一に分散している安定なヒドロコロイド組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-197209号公報
【特許文献2】特開平1-207384号公報
【特許文献3】特表2001-517251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、セルロースエーテル系増粘剤の一種であるヒドロキシプロピルセルロースには、継粉を形成しにくく水への均質分散性に優れるものの、ヒドロキシプロピルセルロースの水分散液又は水溶液の粘度が、他のセルロースエーテル系増粘剤、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに比べ低いという課題があった。
本発明は、増粘性に優れる増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(A)ヒドロキシプロピルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、を含む、増粘剤組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(A)成分を含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)成分を含む、増粘剤組成物用添加剤に関する。
【0014】
また、本発明は、水硬性粉体と、(A)成分と、(B)成分と、を含む、粉末混合物に関する。
【0015】
また、本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、を含む、水硬性組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、増粘性に優れる増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
近年、持続的な社会実現のためにSDGsが提唱されている。本発明は、ヒドロキシプロピルセルロースの増粘性向上により、系を増粘させるためのヒドロキシプロピルセルロースの必要量を削減し、例えば、SDGsのNo.9、11、12、13、15などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【0018】
本発明者らは、(A)成分と(B)成分を含む本発明の増粘剤組成物の水分散液又は水溶液を調製した際に、その分散液又は水溶液の粘度が著しく上昇することを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
セルロースエーテル系増粘剤はセルロースをアルキル又はアルコキシ化することによってセルロースの疎水的な結晶構造を解きほぐし親水化するとともに、一部を疎水化して、水溶液中における疎水部を起点としたセルロースエーテル高分子鎖同士のネットワーク構造形成により増粘性を発現すると考えられる。ヒドロキシプロピルセルロースはヒドロキシプロピル化により親水化され水分散性に優れるものの、疎水的構造による絡み合い密度が低いために、アルキル化により疎水変性されたヒドロキシプロピルメチルセルロースと比較して増粘性の観点で劣ると推察される。一方、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物は界面活性剤であることから親水部と疎水部を有し、ヒドロキシプロピルセルロースと非共有結合的に相互作用することで、ヒドロキシプロピルセルロース高分子鎖を橋かけしたネットワーク構造を形成し絡み合い密度を増加させ、顕著な増粘性を示すと考察される。
なお、本発明の増粘剤組成物、増粘剤組成物用添加剤、粉末混合物、及び水硬性組成物は、上記の作用機構に限定されるものではない。
【0019】
<増粘剤組成物>
本発明の増粘剤組成物は、(A)ヒドロキシプロピルセルロース〔以下、(A)成分という〕と、(B)ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔以下、(B)成分という〕と、を含む。
【0020】
<(A)成分>
(A)成分は、ヒドロキシプロピルセルロースである。(A)成分は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、B型粘度計によって測定される(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度が、好ましくは10mPa・s以上10,000mPa・s以下である。
(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは25mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上、より更に好ましくは75mPa・s以上、より更に好ましくは100mPa・s以上、そして、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下、より更に好ましくは1,000mPa・s以下である。
【0021】
<粘度の測定方法>
(A)成分の2質量%水溶液の20℃における粘度は、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpm、10秒後の条件で測定する。ただし、この条件におけるNo.2ローターでの測定(以下、No.2での測定という)で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpm、10秒後の条件で測定し、No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpm、10秒後の条件で測定し、No.4ローターでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpm、10秒後の条件で測定する。
【0022】
(A)成分のヒドロキシプロピルセルロースは、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、ヒドロキシプロポキシ基置換モル数が、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.6以下である。
ここで、「ヒドロキシプロポキシ基置換モル数」とは、セルロースのグルコース単位(3つの水酸基を持つ)1モル当りに導入されたヒドロキシプロポキシ基の平均モル数である。
【0023】
(A)成分の重量平均分子量は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上、より更に好ましくは200,000以上、そして、水分散性又は水溶性の観点から、好ましくは2,500,000以下、より好ましくは2,000,000以下、更に好ましくは1,500,000以下、より更に好ましくは1,000,000以下である。
(A)成分の重量平均分子量は、以下の測定条件に基づいたゲル浸透クロマトグラフィーによって、分子量が既知であるポリエチレングリコールを標準試料として測定された値である。
<(A)成分の重量平均分子量の測定方法>
カラム:α-M+α-M(カチオン)
溶出液:50mmоl/L LiCl、エタノール/水=3:7質量%混合液
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0024】
なお、ヒドロキシプロピルセルロースは、例えば特開平9-202801号公報等に記載の公知の方法により製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。市販品としては、例えば、日本曹達株式会社製のHPCシリーズや、三晶株式会社製のクルーセル(KLUCEL)シリーズなどがある。また、これら市販品の中で、2質量%粘度が10mPa・s以上10,000mPa・s以下であるものとして、日本曹達株式会社製 NISSO HPC L(6.0-10.0)、NISSO HPC M(150-400)、NISSO HPC H(1,000-4,000)、NISSO HPC VH(4,001-6,000)、Hercules Incorporated(現Ashland Inc.)製 KLUCELTM G(300)、KLUCELTM M(5,000)、KLUCELTM H(30,000)などが挙げられる。なお、前記市販品の括弧内は2質量%粘度(mPa・s)を表す。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩である。(B)成分は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであってよい。(B)成分は、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩であり、(B)成分の芳香族スルホン酸としては、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、等の単環芳香族スルホン酸;α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、α-ナフトールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸及びブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、α-ナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸が好ましい。
【0026】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩としては、例えば、α-又はβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(以下、α-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、又はβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を総称して単に「ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物」ともいう)又はその塩が挙げられる。(B)成分は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩が好ましい。
(B)成分のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸等の共重合可能な化合物由来の構成単位が挙げられる。
【0027】
(B)成分の塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩及びアンモニウム塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
(B)成分の重量平均分子量は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上、そして、水分散性又は水溶性の観点から、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下である。
【0029】
<(B)成分の重量平均分子量の測定方法>
(B)成分の重量平均分子量は、下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定する。
[GPC条件]
装置:東ソー株式会社 HLC-8320GPC
カラム:東ソー株式会社 G4000SWXL+G2000SWXL
溶離液:30mMCH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7mL/min
検出器:UV 280nm
サンプルサイズ:3.33mg/mL
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算 SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS,INC.製 SODIUMPOLYSTYRENE SULFONATE-narrow distribution-:MW=1,690、7,540、16,000、68,300、126,700、587,600
【0030】
芳香族スルホン酸ホルムアルデヒド(ホルマリン)縮合物の製造方法は、例えば、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得て、塩基性物質により中和する方法が挙げられる。なお、中和後に系中に存在する水不溶解物を除去してもよい。
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の塩の市販品としては、花王株式会社製「マイテイ」シリーズの150、HS、150R、150RX、150V、150HB-2、100、「デモール」シリーズのAS、MS、N、NL、RN、RN-L、SC-30、SC-B、SN-B、SS-L、T、T-45等が挙げられる。
【0031】
<増粘剤組成物の組成及びその他成分>
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、(A)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、水分散液又は水溶液のハンドリング性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0032】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、(A)成分の配合量が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましく0.1質量部以上、そして、好ましくは8質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下となるように用いられる。
【0033】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、(B)成分を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
【0034】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、(B)成分の配合量が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.04質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下となるように用いられる。
【0035】
本発明の増粘剤組成物における、(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0036】
<(C)成分>
本発明の増粘剤組成物は、(C)水〔以下、(C)成分という〕を含むことができる。水は、水道水、精製水、地下水、工業用水であってよい。(C)成分は、(A)成分、(B)成分及び下記任意成分を除く残部として用いられる。
本発明の増粘剤組成物は、増粘剤組成物のハンドリング性の観点から、(C)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0037】
本発明の増粘剤組成物は、任意に、防腐剤、消泡剤、安定剤を含有することができる。
【0038】
また、本発明の増粘剤組成物は、無機粉体を含むことができる。無機粉体は、水硬性粉体の水分散体(スラリー)用、例えば、セメント、石膏などの水硬性粉体、高炉スラグ、アッシュ、非晶質シリカ、カオリンなどのポゾラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体、石粉(炭酸カルシウム粉末)などが挙げられる。水硬性粉体の好ましい態様については、本発明の水硬性組成物において詳述する。
また、無機粉体としては、セラミック製造用の無機粉体、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、ハイドロキシアパタイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、蛍石、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアタイト、酸化亜鉛などが挙げられる。
また、無機粉体としては、色材(顔料)である無機粉体、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、セリサイトなど、猫砂等の造粒物用の無機粉体、例えば、ベントナイト、ゼオライトなど、導電性材料である無機粉体、例えば、銀及びその合金、銅及びその合金、金及びその合金、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、タングステンその合金、モリブデン及びその合金、亜鉛及びその合金、ニッケル及びその合金、鉄及びその合金、白金及びその合金、スズ及びその合金、鋼及びその合金、鉛及びその合金、水銀及びその合金が挙げられる。
【0039】
また、本発明の増粘剤組成物は、単量体を含有することができる。単量体は、ビニル基やアリール基を有する共重合性のモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、エチレン及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、プロピレン及びその誘導体、アルキレングリコール及びその誘導体、ジカルボン酸及びその誘導体、ベンゼン及びその誘導体、ナフタレン及びその誘導体が挙げられる。
また、本発明の増粘剤組成物は、猫砂等の造粒物用の粉体として、パルプ、パルプスラッジ、おがくず、茶殻など、導電性粉体として、炭素及びその合金などを含むことができる。
【0040】
本発明の増粘剤組成物は、水硬性粉体の水分散体(スラリー)用、セラミック製造用の無機粉体の分散体用、モノマー等の乳化分散体用、色材等の分散体用、猫砂等の造粒物用、及び導電性材料等の分散体用から選ばれる1種以上の増粘剤組成物であってよく、水硬性粉体の水分散体用の増粘剤組成物として好適である。
本発明の増粘剤組成物を含有する水硬性粉体の水分散体として、例えば、下記の本発明の水硬性組成物が挙げられる。
【0041】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、無機粉体を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0042】
本発明の増粘剤組成物は、水分散液又は水溶液の粘度の観点から、使用時において、本発明の増粘剤組成物を含有する水分散液又は水溶液に配合される水100質量部に対して、無機粉体の配合量が、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、そして、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下となるように用いられる。
【0043】
<水硬性組成物>
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、を含む、水硬性組成物を提供する。
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物、水、及び本発明の増粘剤組成物を含有する、水硬性組成物であってよい。
本発明の水硬性組成物において、(A)成分及び(B)成分及び任意成分の好ましい態様は、本発明の増粘剤組成物で述べた好ましい態様と同じである。
また、本発明の水硬性組成物において、水は、水道水、湖沼水、河川水、地下水などである。
【0044】
水硬性粉体は、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、調達性及びハンドリング性の観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0045】
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
【0046】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することができる。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。
細骨材は、JIS A0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。
また、粗骨材は、JIS A0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0047】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(W/C)が、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは300質量%以下、より好ましくは150質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
なお、この水/水硬性粉体比(W/C)は、本発明の水硬性組成物中の水硬性粉体に対する水の割合を質量百分率(質量%)で表したものであり、(水/水硬性粉体)×100で算出される。
また、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
【0048】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは8質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下含有する。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該水硬性組成物に含まれる水100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下含有する。
【0050】
本発明の水硬性組成物における、(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)は、水硬性組成物スラリー粘度の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.32以上、そして、水硬性組成物スラリー粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0051】
<粉末混合物>
本発明の増粘剤組成物は、予め水硬性粉体と混合された粉末混合物(ドライミックス)であってよい。
すなわち、本発明は、前記水硬性粉体と、(A)成分と、(B)成分と、を含む、粉末混合物を提供する。
本発明の粉末混合物における、(A)成分、(B)成分及び任意成分の好ましい態様は、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。
また、本発明の粉末混合物における、水硬性粉体及び骨材等の好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で記載した態様と同じである。そして、本発明の粉末混合物において、該粉末混合物に含まれる水硬性粉体に対する(A)成分、(B)成分及び(C)成分の好ましい含有量、並びにその含有量の質量比(B)/(A)、(C)/(B)は、本発明の水硬性組成物で記載した好ましい態様と同じである。
【0052】
本発明の粉末混合物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該粉末混合物に含まれる水硬性粉体に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、水硬性組成物の均質性の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0053】
本発明の粉末混合物は、水硬性組成物スラリーの粘度発現性の観点から、該粉末混合物に含まれる水硬性粉体に対して、(B)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0054】
<増粘剤組成物用添加剤>
本発明は、(A)ヒドロキシプロピルセルロース〔(A)成分である〕を含有する増粘剤組成物に用いられる増粘剤組成物用添加剤であって、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔(B)成分である〕を含む、増粘剤組成物用添加剤を提供する。
本発明の増粘剤組成物用添加剤における、(A)成分、(B)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。また、本発明の増粘剤組成物用添加剤において、増粘剤組成物における(A)成分の好ましい含有量は、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。
【0055】
本発明の増粘剤組成物用添加剤は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、(B)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、例えば、100質量%以下、更には75質量%以下、更には50質量%以下含有する。本発明の増粘剤組成物用添加剤は、(B)成分の含有量が100質量%であってよい。
【0056】
本発明の増粘剤組成物用添加剤は、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、増粘剤組成物に含まれる(B)成分の含有量と(A)成分の含有量の質量比(B)/(A)が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、水分散液、水溶液又は水硬性組成物スラリーの粘度の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下となるように用いられる。
すなわち、本発明の増粘剤組成物用添加剤は、(A)成分に対して(B)成分を、前記質量比(B)/(A)で用いられる、増粘剤組成物用添加剤であってよい。
【0057】
<増粘剤組成物製造用のキット>
本発明は、下記(A)成分及び(B)成分から選ばれる成分を含む複数の剤から構成される増粘剤組成物製造用のキットであって、(A)成分と、(B)成分が別の剤に含まれている、キットを提供する。
(A)成分:ヒドロキシプロピルセルロース
(B)成分:芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩
【0058】
本発明のキットの例としては、(A)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分を含み(A)成分を含まない剤とから構成されるキットが挙げられる。
【0059】
本発明のキットにおける、(A)成分、(B)成分及び任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。本発明の増粘剤組成物で述べた事項は、本発明のキットに適用することができる。
【0060】
本発明のキットを構成する各剤において、(A)成分及び(B)成分の含有量は、例えば、前記範囲の含有量や質量比でこれらの成分を含有する本発明の増粘剤組成物が製造できるような量であってよい。
【0061】
(A)成分及び(B)成分から選ばれる成分を含む複数の剤は、混合され、更には水で希釈されて、所定の増粘剤組成物が調製される。
本発明の増粘剤組成物製造用のキットは、本発明の増粘剤組成物の調製に好適に用いられる。
【0062】
(A)成分を含む剤は、(A)成分を、1質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(B)成分を含む剤は、(B)成分を、1質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
(A)成分を含む剤及び/又は(B)成分を含む剤は、本発明の増粘剤組成物で挙げられた(C)成分等の任意成分を含有することができる。
【0063】
<増粘剤組成物の製造方法>
本発明は、(B)芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物又はその塩〔(B)成分である〕と(C)水〔(C)成分である〕とを混合した水溶液に、(A)ヒドロキシプロピルセルロース〔(A)成分である〕を混合する、増粘剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の増粘剤組成物の製造方法における、(A)成分、(B)成分及び(C)成分等の任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の増粘剤組成物で記載した態様と同じである。また、本発明の増粘剤組成物における(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の好ましい含有量及び質量比は、本発明の増粘剤組成物の製造方法における、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分の好ましい混合量及び混合割合と読み替えて適用できる。
【実施例0064】
<実施例1及び比較例1>
(A)成分を含む剤と、(B)成分を含む剤とを用いて、表1、2に記載の増粘剤組成物の水分散液を調製して、下記評価を行った。増粘剤組成物の水分散液は、増粘剤組成物の有効成分として、該水分散液に配合される水100質量部に対して、(A)成分及び(B)成分を表1、2に記載の質量部含有する増粘剤組成物の水分散液である。
【0065】
<増粘剤組成物の水分散液の配合成分>
実施例1及び比較例2で用いた配合成分を以下に示す。ここでは、後に詳細に説明する実施例2及び比較例2で用いた配合成分も示す。
<(A)成分>
※各成分中の( )内に20℃における各成分の2質量%水溶液粘度(カタログ値)を示す。
・A-1:ヒドロキシプロピルセルロース(1,000-4,000mPa・s)、東京化成工業株式会社製
・A-2:ヒドロキシプロピルセルロース(150-400mPa・s)、東京化成工業株式会社製
<(A’)成分>
・A’-1:メチルセルロース(3,500-5,600mPa・s)、東京化成工業株式会社製
・A’-2:ヒドロキシエチルセルロース(4,500-6,500mPa・s)、東京化成工業株式会社製
・A’-3:カルボキシメチルセルロースナトリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製
・A’-4:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100,000mPa・s)、メトローズ 90SH-100000、信越化学工業株式会社製
・A’-5:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(4,000mPa・s)、メトローズ 60SH-4000、信越化学工業株式会社製
<(B)成分>
(B)成分:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(重量平均分子量:13,000)、花王株式会社製
<(C)成分>
・水:上水道水(和歌山市上水、比重1.00)
<水硬性粉体>
・石膏:桜印A級焼石膏、吉野石膏株式会社製
【0066】
(1)増粘剤組成物の水分散液の調製
100mLディスポーザブルカップに、水と、(B)成分と、を投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて10秒間撹拌して(B)成分を含む水溶液を調製した。水は、ディスポーザブルカップに投入した水、及び(B)成分を溶解させた水の合計質量が100gとなるように投入した。また、(B)成分は、水100gに対する固形分質量(g)が表1、2に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。
次いで、この水溶液に、水100gに対する固形分質量(g)が表1又は2に記載の質量部の(A)成分又は(A’)成分を添加し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて2分間撹拌して増粘剤組成物の水分散液を調製した。
【0067】
(2)増粘剤組成物の水分散液の継粉の分散度合いの評価
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液を目視観察し、下記指標に基づいて増粘剤組成物の水分散液中の継粉の分散度合いを評価した。結果を表1、2に示す。
[継粉の分散度合いの指標]
〇…継粉が確認されない、又は直径2mm未満の継粉が確認された。
×…直径2mm以上の継粉が確認された。
【0068】
(3)増粘剤組成物の水分散液の粘度の測定
(1)記載の方法で調製した増粘剤組成物の水分散液の粘度を、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。この条件におけるNo.2ローターでの測定(以下、No.2での測定という)で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.4ローターでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。結果を表1、2に示す。
【0069】
(4)(B)成分によるセルロースエーテル系増粘剤水分散液改質効果の評価
(3)記載の方法で測定・記録した増粘剤組成物の水分散液の粘度〔以後、粘度Aという〕と、当該増粘性組成物と同じ(A)成分又は(A’)成分を含み、(B)成分を含まない比較例の増粘剤組成物の水分散液の粘度〔以後、粘度Bという〕と、に基づいて、下記式(1)に基づいて増粘性向上度(倍)を算出した。結果を表1、2に示す。なお、表1では、粘度Bとして、比較例1-1又は比較例1-2の増粘剤組成物の分散液の粘度を用い、表2では、粘度Bとして、比較例1-8等の増粘剤組成物の分散液の粘度を用いた。
増粘性向上度(倍)=(粘度A)/(粘度B) (1)
【0070】
【0071】
【0072】
※1:表1、2中、(A)成分又は(B)成分の質量部は、水100質量部に対する(A)成分又は(B)成分の質量部である。
※2:表2中、(A)成分の欄には、説明の便宜上(A)成分の比較成分である(A’)成分も示されている。
【0073】
表1中、実施例1-1~1-6は比較例1-1~1-4と比較して、実施例1-7、1-8は比較例1-7~1-9と比較して、優れた増粘性を示した。これは、A-1成分及びA-2成分に代表されるヒドロキシプロピルセルロースが、効率的に分散しながら、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の介添えによってネットワーク構造の形成・増粘が促進されたためであると考察される。
【0074】
<実施例2及び比較例2>
(1)石膏ペーストの調製
100mLディスポーザブルカップに、水と、(B)成分と、を投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて10秒間撹拌して水溶液を調製した。水は、ディスポーザブルカップに投入した水、及び(B)成分を溶解させた水の合計質量が50gとなるように投入した。また、(B)成分は、ディスポーザブルカップに投入された水の合計質量100gに対する固形分質量(g)が表3に記載の質量部となるようにディスポーザブルカップに投入した。
次いで、石膏50gと、表3に記載の質量部の半分の質量の(A)成分と、をポリエチレン製の袋中で10秒間転倒混合した後、この混合粉末を、水及び(B)成分の入った100mLディスポーザブルカップに投入し、撹拌機(ペンシルミキサー DX、アズワン株式会社製、撹拌棒3型、回転数7,000rpm)にて2分間撹拌して石膏ペーストを調製した。
【0075】
(2)石膏ペーストの粘度の測定
(1)記載の方法で調整した石膏ペーストの粘度を、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用い、20℃、No.2ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。この条件におけるNo.2ローターでの測定(以下、No.2での測定という)で500mPa・sを超える場合は、20℃、No.2ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.2ローターでの測定で5,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、60rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。No.4ローターでの測定で10,000mPa・sを超える場合は、20℃、No.4ローター、6rpmで測定し、測定開始から10秒後の粘度を記録した。結果を表3に示す。
【0076】
【0077】
表3中、実施例2-1は比較例2-1と比較して、石膏ペースト混練初期の優れた粘度発現性を示した。これは、A-1成分及びA-2成分に代表されるヒドロキシプロピルセルロースが、石膏ペースト中においても効率的に分散しながら、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の介添えによってネットワーク構造の形成・増粘が促進されたためであると考察される。