(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097646
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】連結構造、及び、地下構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E02D29/05 F
E02D29/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001241
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】井上 直史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋介
(72)【発明者】
【氏名】グウェンレ チョンニャン
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB08
2D147AC02
(57)【要約】
【課題】土留め壁の壁面とSC構造のスラブの端部とを互いに好適に連結する。
【解決手段】土留め壁5の内壁面5aとSC構造の頂版4の端部4aとを連結する連結構造50は、土留め壁5の内壁面5aに設けられ、かつ、土留め壁5の内壁面5aから頂版4の端部4aに向かって延びる第1鋼板51a,51bと、頂版4の端部4aに設けられ、かつ、頂版4の端部4aから土留め壁5の内壁面5aに向かって延びる第2鋼板52a,52bと、第1鋼板51a,51b及び第2鋼板52a,52bを巻き込むように打設されたコンクリートとを備える。第1鋼板51a,51bと第2鋼板52a,52bとが互いに隙間を空けて対面し、該隙間にもコンクリートが打設されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留め壁の壁面とSC構造からなるスラブの端部とを連結する構造であって、
前記土留め壁の壁面に設けられ、かつ、前記土留め壁の壁面から前記スラブの端部に向かって延びる第1鋼板と、
前記スラブの端部に設けられ、かつ、前記スラブの端部から前記土留め壁の壁面に向かって延びる第2鋼板と、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板を巻き込むように打設されたコンクリートと、
を備え、
前記第1鋼板と前記第2鋼板とが互いに隙間を空けて対面し、該隙間にも前記コンクリートが打設されている、連結構造。
【請求項2】
前記スラブを構成する鋼製の主桁と前記第2鋼板とが一体であり、
前記主桁と前記第2鋼板とが平面視で一直線上に並んでいる、請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
前記第1鋼板における前記隙間に臨む部分と、前記第2鋼板における前記隙間に臨む部分との少なくとも一方に、前記コンクリートとの付着力を増大するための付着力増大手段が設けられている、請求項1に記載の連結構造。
【請求項4】
前記第1鋼板と前記第2鋼板とは、それぞれ、上下方向に複数段に設けられている、請求項1に記載の連結構造。
【請求項5】
最上段の前記第1鋼板における前記コンクリートとの接触面積が、最下段の前記第1鋼板における前記コンクリートとの接触面積よりも大きい、請求項4に記載の連結構造。
【請求項6】
複数の前記第1鋼板が平面視で櫛状に配置されており、
複数の前記第2鋼板も平面視で櫛状に配置されている、請求項1に記載の連結構造。
【請求項7】
前記スラブはカルバートの頂版であり、
前記カルバートの側壁は前記土留め壁を含む、請求項1に記載の連結構造。
【請求項8】
前記土留め壁は鋼製地中連続壁である、請求項1に記載の連結構造。
【請求項9】
地下構造物の構築方法であって、
地中に導坑を形成すること、
前記導坑から下方に延びるように前記土留め壁を構築し、かつ、前記導坑から側方に延びるようにパイプルーフを構築すること、
前記パイプルーフと前記土留め壁とによって区画された領域内を掘削することにより地下空間を形成すること、及び、
前記地下空間内に前記スラブを構築すること、
を含み、
前記スラブを構築することは、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の連結構造となるように、前記土留め壁の壁面と前記スラブの端部とを連結することを含む、地下構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め壁の壁面とスラブの端部とを互いに連結する構造と、この連結構造を含む地下構造物の構築方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製地中連続壁などの土留め壁と、RC構造(鉄筋コンクリート構造)のスラブとを互いに連結する構造としては、例えば、特許文献1に開示の技術を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば空頭制限下でスラブが構築される状況において、スラブの厚さを薄くすること(すなわち薄肉化)が求められる場合がある。この場合、スラブをRC構造ではなくSC構造(鉄骨コンクリート構造)とすることで当該薄肉化を図ることが考えられる。
【0005】
しかしながら、土留め壁の壁面とSC構造のスラブの端部とを互いに連結するに際しては、特許文献1に開示の技術のような、鉄筋を用いることを前提とした技術をそのまま適用することができないことから、検討の余地があった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、土留め壁の壁面とSC構造のスラブの端部とを互いに好適に連結する手法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明に係る連結構造は、土留め壁の壁面とSC構造からなるスラブの端部とを連結する構造である。この連結構造は、土留め壁の壁面に設けられ、かつ、土留め壁の壁面からスラブの端部に向かって延びる第1鋼板と、スラブの端部に設けられ、かつ、スラブの端部から土留め壁の壁面に向かって延びる第2鋼板と、第1鋼板及び第2鋼板を巻き込むように打設されたコンクリートと、を備える。そして、第1鋼板と第2鋼板とが互いに隙間を空けて対面し、この隙間にも前記コンクリートが打設されている。
【0008】
本発明に係る地下構造物の構築方法は、地中に導坑を形成すること、導坑から下方に延びるように土留め壁を構築し、かつ、導坑から側方に延びるようにパイプルーフを構築すること、パイプルーフと土留め壁とによって区画された領域内を掘削することにより地下空間を形成すること、及び、この地下空間内にスラブを構築すること、を含む。ここで、スラブを構築することは、前述の連結構造となるように、土留め壁の壁面とスラブの端部とを連結することを含む。
【0009】
尚、本発明において、「SC構造」とは「鉄骨コンクリート構造」を意味し、これには、いわゆる「鋼コンクリート合成構造」が含まれ得る。ここにおいて、鉄骨を構成する部材には、例えば鋼板(平鋼を含む)や形鋼材(例えばH形鋼材やI形鋼材)などが含まれ得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、土留め壁の壁面とSC構造のスラブの端部とを互いに好適に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における地下構造物の概略構成を示す横断面図
【
図2】同上実施形態における地下構造物の構築方法を示す図
【
図3】同上実施形態における地下構造物の構築方法を示す図
【
図4】同上実施形態における地下構造物の構築方法を示す図
【
図5】同上実施形態における土留め壁と頂版との連結構造を示す斜視図
【
図6】同上実施形態における土留め壁と頂版との連結構造を示す横断面図
【
図9】同上実施形態における主桁と一体である第2鋼板を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態における地下構造物の概略構成を示す横断面図である。本実施形態では、地下構造物の一例としてカルバート1を挙げて以下説明する。また、以下の説明では、便宜上、カルバート1の延在方向(軸方向)を前後方向として、左右・上下を
図1のように規定している。更に、
図1に示す部分Pが、後述する
図5及び
図6に対応する。
【0014】
カルバート1は、例えば矩形断面を有して地中(地面GLより下方)にて延在している。カルバート1は、底版2と、左右一対の側壁3,3と、頂版4とを備える。本実施形態では、底版2はRC構造(鉄筋コンクリート構造)である。側壁3は、外側部分をなす土留め壁5と、内側部分をなす内壁6と、からなる2層構造である。本実施形態では、土留め壁5は鋼製地中連続壁(鋼製連壁)である。本実施形態では、内壁6はRC構造である。土留め壁5と内壁6とからなる側壁3の構造形式については、いわゆる重ね壁方式、一体壁方式、及び単独壁方式のいずれでもよい。本実施形態では、頂版4はSC構造(鉄骨コンクリート構造(鋼コンクリート合成構造))である。ここで、本実施形態における頂版4が、本発明の「SC構造からなるスラブ」の一例に対応する。
【0015】
本実施形態では、カルバート1を地中に構築するに際して、例えば地面GL上に既設構造物がある等の事情により開削工法が適用できない状況にあるため、
図2~
図4に示す構築方法を採用して、カルバート1を構築する。
【0016】
まず、
図2(ア)に示すように、地中に左右一対の導坑10,10を掘削形成する。尚、
図2(ア)に示す導坑10の断面形状は矩形であるが、この他、円形や楕円形など、任意の形状であってよいことは言うまでもない。
【0017】
次に、
図2(イ)に示すように、各導坑10から下方に延びるように土留め壁5を構築する。また、導坑10,10間に跨るように、仮設屋根としてのパイプルーフ11を構築する。ここにおいて、土留め壁5を構築する時期とパイプルーフ11を構築する時期とについては、同時期としてもよく、又は、互いにずらしてもよい。
【0018】
本実施形態では、土留め壁5は鋼製地中連続壁(鋼製連壁)であり、導坑10から下方に建て込まれた鋼製連壁部材15(後述する
図5及び
図6参照)を含んで構成される。この鋼製連壁部材15は、平行フランジ型の鋼製土留め壁部材であり、内フランジ15a及び外フランジ15bの各々の両端部に嵌合継手が設けられたものである。尚、土留め壁5の構築については、導坑10から下方に安定液掘削工法により地盤を掘削して溝を形成し、この溝内に鋼製連壁部材15を建て込んだ後にコンクリート等を充填するか又は安定液を固化する手法を採用してもよい。又は、導坑10から下方に原位置土撹拌工法により造成されたソイルセメント中に鋼製連壁部材15を建て込む手法を採用してもよい。
【0019】
次に、
図3(ウ)に示すように、左右の土留め壁5,5と、パイプルーフ11とで区画された領域(換言すれば囲まれた領域)内を掘削することにより、地下空間12を形成する。この掘削時には、導坑10のうち地下空間12の形成の邪魔となる部分が撤去され得る。尚、
図3(ウ)には、床付け面13が図示されている。
【0020】
次に、
図3(エ)に示すように、床付け面13上の地下空間12内にて、RC構造の底版2及び内壁6を構築する。尚、
図3(エ)において、図示簡略化のため、後述する鉄筋20(
図5及び
図6参照)の図示を省略している。
【0021】
次に、
図4(オ)に示すように、地下空間12内にて、左右の土留め壁5及び内壁6に跨るように頂版4を構築する(頂版4を架け渡す)。頂版4は、複数の箱状の鉄骨ユニット(鋼ユニット)41~43(
図5及び
図6参照)と、これら鉄骨ユニット41~43内に打設されるコンクリート(図示せず)とによって構成されている。そして、本実施形態では、左右両端部から左右方向中央部に向かって順に、鉄骨ユニット41,42,43を順次組み立てた後、この組み立て体内にコンクリートを打設することにより、頂版4が構築される。この頂版4の構築は、前後方向に順次進められ得る。ここで、鉄骨ユニット41~43の各々は、例えば地上の工場で製造されたものであり、当該工場から、導坑10内を通って、頂版4の構築予定場所まで搬送される。このため、鉄骨ユニット41~43の各々は、導坑10内を通過できる寸法となっている。
【0022】
ここにおいて、頂版4の左右両端部を構成する鉄骨ユニット41は、後述する連結構造50を構成する第2鋼板52(52a,52b)を有する。そして、この頂版4の構築時に連結構造50も構築される(すなわち、土留め壁5と頂版4とが互いに連結される)。
【0023】
次に、
図4(カ)に示すように、地下空間12における頂版4の上面とパイプルーフ11の下面との間の部分12aに対して、流動化処理土などで埋め戻しを行う。また、導坑10内の空間10aに対しても、流動化処理土などで埋め戻しを行う。
このようにして、カルバート1が構築される。
【0024】
次に、土留め壁5と頂版4との連結構造50について、
図5~
図8を用いて説明する。
図5は、土留め壁5と頂版4との連結構造50を示す斜視図である。
図6は、土留め壁5と頂版4との連結構造50を示す横断面図である。
図7は、
図6のA-A断面図である。
図8は、
図6のB-B断面図である。尚、
図7では、図示簡略化のため、後述するスタッド21の図示を省略している。
【0025】
連結構造50は、土留め壁5の内壁面(地下空間12の臨む側の壁面)5aから頂版4に向かって延びる複数の第1鋼板51と、頂版4の端部4a(具体的には、頂版4を構成する鉄骨ユニット41の端部(土留め壁5に臨む側の端部)41a)に設けられてこの端部4aから土留め壁5の内壁面5aに向かって延びる複数の第2鋼板52と、第1鋼板51及び第2鋼板52を巻き込むように打設されたコンクリート(図示せず)とを備える。
【0026】
本実施形態において、第1鋼板51と第2鋼板52とは、それぞれ、上下方向に複数段(本実施形態では2段)に設けられている。ここにおいて、本実施形態では、第1鋼板51のうち、上段のものを第1鋼板51aとし、下段のものを第1鋼板51bとしている。また、これと同様に、第2鋼板52のうち、上段のものを第2鋼板52aとし、下段のものを第2鋼板52bとしている。第1鋼板51と第2鋼板52とについては、上下2段に限らず、上下3段以上であってもよく、又は、上下1段のみであってもよい。
【0027】
本実施形態では、複数の第1鋼板51aが平面視で櫛状に配置されており、また、複数の第1鋼板51bが平面視で櫛状に配置されている(
図7参照)。これと同様に、複数の第2鋼板52aが平面視で櫛状に配置されており、また、複数の第2鋼板52bが平面視で櫛状に配置されている(
図7参照)。そして、平面視で櫛状の複数の第1鋼板51aと櫛状の複数の第2鋼板52aとが互いに隙間を空けて噛み合うように配置されている。これと同様に、平面視で櫛状の複数の第1鋼板51bと櫛状の複数の第2鋼板52bとが互いに隙間を空けて噛み合うように配置されている(
図7参照)。従って、第1鋼板51aと第2鋼板52aとは、互いに隙間を空けて対面し、この隙間にも、前述のコンクリートが打設され得る。これと同様に、第1鋼板51bと第2鋼板52bとは、互いに隙間を空けて対面し、この隙間にも、前述のコンクリートが打設され得る。
【0028】
本実施形態では、土留め壁5の内壁面5aは、鋼製連壁部材15の内フランジ15aの地下空間12に対する露出面である。ゆえに、第1鋼板51aの基端部と、第1鋼板51bの基端部とは、それぞれ、鋼製連壁部材15の内フランジ15aに溶接等で固定されている。第1鋼板51aの先端部と、第1鋼板51bの先端部とには、それぞれ、支圧板51cが取り付けられている。尚、第1鋼板51a,51bについては、各々の先端部が、第2鋼板52a,52bの基端部(及び、鉄骨ユニット41の端部41a)に隣接するように配置されることが好ましい。
【0029】
図5~
図7に示すように、鋼製連壁部材15には、内フランジ15aと外フランジ15bとに跨るように、複数の補強プレート15cが設けられている。補強プレート15cは鋼製であり、その両端が内フランジ15aと外フランジ15bとにそれぞれ溶接等で固定されている。補強プレート15cについては、正面視(
図6参照)及び平面視(
図7参照)で、第1鋼板51a,51bと一直線上に並ぶように配置されることが好ましい。
【0030】
第1鋼板51a,51b(特に、前述の隙間に臨む部分)には、凹凸を設けるために、複数の鉄筋51dが溶接等で固定されている。これら鉄筋51dは、第1鋼板51a,51bのコンクリートとの付着力を増大するための付着力増大手段(凹凸部)としての役割を果たす。尚、第1鋼板51a,51bに複数の貫通孔を形成し、これら貫通孔を、当該付着力増大手段としてもよい。つまり、当該付着力増大手段として、当該貫通孔と、鉄筋51dとの少なくとも一方が採用され得る。
【0031】
図8に示すように、土留め壁5の内壁面5a(鋼製連壁部材15の内フランジ15aの地下空間12に対する露出面)のうち上段の第1鋼板51aの設置箇所と下段の第1鋼板51bの設置箇所との間の領域には、複数のスタッド21が溶接等で固定されている。これらスタッド21は、土留め壁5のコンクリートとの付着力を増大するための付着力増大手段としての役割を果たす。尚、当該領域に孔あき鋼板ジベルを設けて、それを当該付着力増大手段としてもよい。つまり、当該付着力増大手段として、当該孔あき鋼板ジベルと、スタッド21との少なくとも一方が採用され得る。
【0032】
本実施形態では、第2鋼板52a,52bは、鉄骨ユニット41の端部41aから側方に突出している。第2鋼板52a,52bについては、各々の先端部(突出端部)が、第1鋼板51a,51bの基端部(及び、鋼製連壁部材15の内フランジ15a)に隣接するように配置されることが好ましい。ここにおいて、第2鋼板52aの先端部と、第2鋼板52bの先端部とには、それぞれ、前述の支圧板51cと同様の支圧板が取り付けられていてもよい。
【0033】
第2鋼板52a,52b(特に、前述の隙間に臨む部分)には、凹凸を設けるために、複数の鉄筋52dが溶接等で固定されている。これら鉄筋52dは、第2鋼板52a,52bのコンクリートとの付着力を増大するための付着力増大手段(凹凸部)としての役割を果たす。尚、第2鋼板52a,52bに複数の貫通孔を形成し、これら貫通孔を、当該付着力増大手段としてもよい。つまり、当該付着力増大手段として、当該貫通孔と、鉄筋52dとの少なくとも一方が採用され得る。
【0034】
本実施形態では、土留め壁5と頂版4との間に発生する応力が、第1鋼板51a,51bと、第2鋼板52a,52bとの間でコンクリートを介して良好に伝達されるように、第1鋼板51a,51bと第2鋼板52a,52bとが、平面視で互いに所定の隙間を空けて、かつ、正面視で所定の長さ分ラップする(重なる)ように、平行に延在している。ここにおいて、第1鋼板51aと第2鋼板52aとの間ではコンクリートを介して引張力が伝達され得る。また、第1鋼板51bと第2鋼板52bとの間ではコンクリートを介して圧縮力が伝達され得る。
【0035】
本実施形態では、前述の引張力に対処するために、上段の第1鋼板51aにおけるコンクリートとの接触面積が、下段の第1鋼板51bにおけるコンクリートとの接触面積よりも大きくなるように、上段の第1鋼板51aの高さ(上下方向の長さ)を、下段の第1鋼板51bの高さ(上下方向の長さ)よりも大きくしている(
図8参照)。
【0036】
次に、第2鋼板52a,52bの詳細について、
図9を用いて説明する。
図9は、鉄骨ユニット41を構成する主桁41b,41cと一体である第2鋼板52a,52bを示す図である。
【0037】
本実施形態では、連結構造50を構成する第2鋼板52a,52bと、上下方向に延びる一対の側鋼板52e,52fとが、正面視(
図6及び
図9参照)で口の字状に一体化されており、更に、第2鋼板52a,52bが、主桁41b,41cと一体化されている。従って、第2鋼板52a,52bと側鋼板52e,52fと主桁41b,41cとが、一体である鋼板によって構成されている。また、第2鋼板52a,52bと主桁41b,41cとが、平面視で一直線上に並んでいる(
図7参照)。
【0038】
側鋼板52e,52fの少なくとも一方(本実施形態では側鋼板52e)には、凹凸を設けるために、複数の貫通孔52gが形成されており、これら貫通孔52gが、コンクリートとの付着力を増大するための付着力増大手段(凹凸部)としての役割を果たす。尚、側鋼板52e,52fの少なくとも一方に複数の鉄筋を溶接等で固定し、これら鉄筋を、当該付着力増大手段としてもよい。つまり、当該付着力増大手段として、当該鉄筋と、貫通孔52gとの少なくとも一方が採用され得る。
【0039】
側鋼板52e,52fは、内壁6の上端部から上方に突出する鉄筋(内壁6の主鉄筋)20と隙間を空けて対向するように配置され得る。これは、側鋼板52e,52fと鉄筋20との間の、コンクリートを介する応力伝達を良好にする役割を果たし得る。尚、前述の貫通孔52gについても、内壁6の上端部から上方に突出する鉄筋20と隙間を空けて対向するように形成されることが好ましい。
【0040】
連結構造50を構成するコンクリートの打設は、頂版4の構築時のコンクリートの打設と一体的に(すなわち一連の作業として)実施され得る。
【0041】
鉄骨ユニット41の端部41a側にはハンチ部が形成されている。鉄骨ユニット41は、端部41aとは反対の側の端部41dに、鉄骨ユニット42が連結され得る。この連結には添接板等を用いてもよく、又は、溶接等で互いに連結してもよい。
【0042】
図10は、
図6のC-C断面図であり、鉄骨ユニット41の概略構成を示す。
鉄骨ユニット41は、前後方向に間隔を空けて平行に左右方向に延びる複数の上側の主桁41bと、前後方向に間隔を空けて平行に左右方向に延びる複数の下側の主桁41cと、外殻をなす上側のスキンプレート41e及び下側のスキンプレート41fと、左右方向に間隔を空けて平行に前後方向に延びる複数の上側の縦リブ41gと、左右方向に間隔を空けて平行に前後方向に延びる複数の下側の縦リブ41hと、継手板(リング間継手板)41jとによって構成されている。ここにおいて、主桁41b,41cと、スキンプレート41e,41fと、縦リブ41g,41hと、継手板41jとについては、各々が鋼板で形成されており、各々が鉄骨を構成するものである。
【0043】
上側のスキンプレート41eの下面には、複数の上側の主桁41bの上端と、複数の上側の縦リブ41gの上端とが、溶接等で固定されている。下側のスキンプレート41fの上面には、複数の下側の主桁41cの下端と、複数の下側の縦リブ41hの下端とが、溶接等で固定されている。ここで、最も前方に位置する主桁41b,41c同士は、せん断補強用として1枚の鋼板41kで一体的に形成されている。これと同様に、最も後方に位置する主桁41b,41c同士についても、せん断補強用として1枚の鋼板41kで一体的に形成されている。
【0044】
継手板41jは、スキンプレート41e,41fの前端及び後端にそれぞれ設けられている。前後方向で隣り合う鉄骨ユニット41同士は、各々の継手板41j同士を当接させた状態で、適宜の連結手段により互いに連結され得る。
【0045】
本実施形態では、上側のスキンプレート41eは、鉄骨ユニット41の端部41aから土留め壁5の内壁面5aに向かって延びる延長部41etを有している(
図6及び
図8参照)。延長部41etは、連結構造50の外殻(上面)を構成し得る。延長部41etには、連結構造50を構成するコンクリートを注入するための注入孔が貫通形成されていてもよい。また、延長部41etの下面には、複数の第2鋼板52aの上端が溶接等で固定されていてもよい。尚、延長部41etについては省略されてもよい。
【0046】
図11は、
図6のD-D断面図であり、鉄骨ユニット42の概略構成を示す。
鉄骨ユニット42は、外殻をなす上側のスキンプレート42a及び下側のスキンプレート42bと、左右方向に間隔を空けて平行に前後方向に延びる複数の上側の縦リブ42cと、左右方向に間隔を空けて平行に前後方向に延びる複数の下側の縦リブ42dと、前後方向に間隔を空けて平行に左右方向に延びる一対のせん断補強板42eと、継手板(リング間継手板)42fとによって構成されている。ここにおいて、スキンプレート42a,42bと、縦リブ42c,42dと、せん断補強板42eと、継手板42fとについては、各々が鋼板で形成されており、各々が鉄骨を構成するものである。
【0047】
上側のスキンプレート42aの下面には複数の上側の縦リブ42cの上端が溶接等で固定されている。下側のスキンプレート42bの上面には複数の下側の縦リブ42dの下端が溶接等で固定されている。また、スキンプレート42a,42b間に跨るように、せん断補強板42eが設けられている。
【0048】
継手板42fは、スキンプレート42a,42bの前端及び後端にそれぞれ設けられている。前後方向で隣り合う鉄骨ユニット42同士は、各々の継手板42f同士を当接させた状態で、適宜の連結手段により互いに連結され得る。
【0049】
鉄骨ユニット43の構成については鉄骨ユニット42と同様であるので、その説明を省略する。また、鉄骨ユニット42と鉄骨ユニット43との連結の手法は、鉄骨ユニット41と鉄骨ユニット42との連結の手法と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
頂版4が複数の鉄骨ユニット41~43を含んで構成され、鉄骨ユニット41~43の各々は、例えば地上の工場で製造されて、当該工場から、導坑10内を通って、頂版4の構築予定場所まで搬送され得る。これにより、頂版4を構築するための、現場での配筋作業等を大幅に削減することができ、ひいては、施工の効率を大幅に向上させることができる。
【0051】
本実施形態によれば、土留め壁5の内壁面5a(壁面)とSC構造の頂版4(スラブ)の端部4aとを連結する連結構造50は、土留め壁5の内壁面5aに設けられ、かつ、土留め壁5の内壁面5aから頂版4の端部4aに向かって延びる第1鋼板51a,51bと、頂版4の端部4aに設けられ、かつ、頂版4の端部4aから土留め壁5の内壁面5aに向かって延びる第2鋼板52a,52bと、第1鋼板51a,51b及び第2鋼板52a,52bを巻き込むように打設されたコンクリートとを備える。第1鋼板51a,51bと第2鋼板52a,52bとが互いに隙間を空けて対面し、該隙間にもコンクリートが打設されている。この連結構造50により、土留め壁5の内壁面5aとSC構造の頂版4の端部4aとを互いに好適に連結することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、頂版4(スラブ)を構成する鋼製の主桁41b,41cと第2鋼板52a,52bとが一体であり、主桁41b,41cと第2鋼板52a,52bとが平面視で一直線上に並んでいる。これにより、主桁41b,41cと第2鋼板52a,52bとの間の応力伝達をスムーズに行うことができる。
【0053】
また本実施形態によれば、第1鋼板51a,51bにおける前述の隙間に臨む部分と、第2鋼板52a,52bにおける前述の隙間に臨む部分との少なくとも一方に、コンクリートとの付着力を増大するための鉄筋51d,52d(付着力増大手段)が設けられている。これにより、第1鋼板51a,51bと第2鋼板52a,52bとのコンクリートを介する一体化を更に強化することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、第1鋼板51と第2鋼板52とは、それぞれ、上下方向に複数段に設けられている。そして、最上段の第1鋼板51aにおけるコンクリートとの接触面積が、最下段の第1鋼板51bにおけるコンクリートとの接触面積よりも大きい。これにより、連結構造50の上部にて発生する引張力に良好に抵抗することができる。尚、当該引張力に抵抗するために、最上段の第2鋼板52aにおけるコンクリートとの接触面積を、最下段の第2鋼板52bにおけるコンクリートとの接触面積よりも大きくしてもよい。
【0055】
また本実施形態によれば、複数の第1鋼板51aが平面視で櫛状に配置されており、複数の第1鋼板51bが平面視で櫛状に配置されており、複数の第2鋼板52aが平面視で櫛状に配置されており、複数の第2鋼板52bが平面視で櫛状に配置されている。このような櫛状の第1鋼板51aと櫛状の第2鋼板52aとを互いに噛み合わせ、更に櫛状の第1鋼板51bと櫛状の第2鋼板52bとを互いに噛み合わせることで、連結構造50を一層強固なものとすることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、本発明のスラブの一例として、カルバート1の頂版4を挙げており、カルバート1の側壁3は土留め壁5を含み、この土留め壁5は鋼製地中連続壁である。ゆえに、土留め壁5をカルバート1の構成要素として、すなわち、本設の地下構造物の一部として、有効に活用することができる。
【0057】
また本実施形態によれば、カルバート1(地下構造物)の構築方法は、地中に導坑10を形成すること、導坑10から下方に延びるように土留め壁5を構築し、かつ、導坑10から側方に延びるようにパイプルーフ11を構築すること、パイプルーフ11と土留め壁5とによって区画された領域内を掘削することにより地下空間12を形成すること、及び、地下空間12内に頂版4(スラブ)を構築することを含み、頂版4を構築することは、前述の連結構造50となるように、土留め壁5の内壁面5a(壁面)と頂版4の端部4aとを連結することを含む。これにより、例えば地面GL上に既設構造物がある等の事情により開削工法が適用できない状況にあっても、地中にカルバート1を構築することができる。
【0058】
本実施形態では、内壁6がRC構造であるが、この他、内壁6がSC構造であってもよい。また、内壁6を省略して側壁3を土留め壁5のみで構成してもよい。これらの場合においても、前述の土留め壁5と頂版4との連結構造50を用いることができることは言うまでもない。
【0059】
本実施形態では、SC構造からなるスラブの一例として頂版4を挙げて説明したが、当該スラブは頂版4に限らず、例えば、SC構造からなる底版又は床版であってもよい。
【0060】
本実施形態では、地中に形成される導坑10が2つである例を示したが、地中に形成される導坑10の個数は2つに限らない。導坑10が1つのみ形成されるのでもよいし、又は、導坑10が3つ以上形成されてもよい。
【0061】
本実施形態では、土留め壁5が鋼製地中連続壁である例を説明したが、土留め壁5は鋼製地中連続壁に限らない。土留め壁5については、内壁面5aにおける第1鋼板51(51a,51b)の固定箇所が鋼材(例えば鋼板)で構成されていればよい。換言すれば、本実施形態における連結構造50は、前述の鋼製地中連続壁からなる土留め壁5に適用可能であるのみならず、例えばSMW工法やTRD工法などで形成されてH形鋼材などの芯材を備えるソイルセメント連続壁からなる土留め壁5や、鋼矢板からなる土留め壁5などに適用可能である。
【0062】
以上の説明から明らかなように、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1…カルバート、2…底版、3…側壁、4…頂版、4a…端部、5…土留め壁、5a…内壁面、6…内壁、10…導坑、10a…空間、11…パイプルーフ、12…地下空間、12a…部分、13…床付け面、15…鋼製連壁部材、15a…内フランジ、15b…外フランジ、15c…補強プレート、20…鉄筋、21…スタッド、41…鉄骨ユニット、41a…端部、41b,41c…主桁、41d…端部、41e,41f…スキンプレート、41et…延長部、41g,41h…縦リブ、41j…継手板、41k…鋼板、42…鉄骨ユニット、42a,42b…スキンプレート、42c,42d…縦リブ、42e…せん断補強板、42f…継手板、43…鉄骨ユニット、50…連結構造、51,51a,51b…第1鋼板、51c…支圧板、51d…鉄筋、52,52a,52b…第2鋼板、52d…鉄筋、52e,52f…側鋼板、52g…貫通孔、GL…地面