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特開2024-9766改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009766
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240116BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104513
(22)【出願日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】102022000014566
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジウセッペ サッジーオ
(72)【発明者】
【氏名】カテーノ マルコ カマッレリ
(72)【発明者】
【氏名】アルフィオ ガルネーラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】パワーMOSFET装置(1)は絶縁ゲート構成体(15)を包含しており、それは、活性区域(7)上を延在しており且つ絶縁物質からなり第1主表面(3a)上を延在するゲート酸化物層(12)を包含しており、半導体ボディ(3)から電気的に分離させるべくゲート領域(24)はゲート酸化物層(12)内に埋設されている。ゲート領域(24)は、ポリシリコンのゲート層(14)、及び少なくとも一つの第1シリサイド電気的変調領域(25a)及び第2シリサイド電気的変調領域(25b)を包含しており、それらの領域は、ゲート層(14)の上部表面(14a)に面するように且つ第1面(XY)において互いに離隔され且つ並んで配置されるべくゲート層(14)内を延在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸(Z)に沿って互いに反対側の第1主表面(3a)と第2主表面(3b)とを有しており該第1主表面(3a)に面している活性区域(7)を包含している半導体ボディ(3)を包含しているパワーMOSFET装置(1)において、
該パワーMOSFET装置(1)が、更に、該活性区域(7)上を延在しており且つ絶縁性物質から構成されており且つ該第1主表面(3a)上を延在しているゲート酸化物層(12)と該半導体ボディ(3)から電気的に分離されるべく該ゲート酸化物層(12)内に埋設されているゲート領域(24)とを包含している絶縁ゲート構成体(15)を包含しており、
該ゲート領域(24)は、ポリシリコンのゲート層(14)及び少なくとも1個の第1シリサイド電気的変調領域(25a)と第2シリサイド電気的変調領域(25b)とを包含しており、該ゲート層(14)は該第1軸(Z)に沿って互いに反対側の上部表面(14a)と底部表面(14b)とを具備しており、該ゲート層(14)の該底部表面(14b)は該ゲート酸化物層(12)を介して該半導体ボディ(3)の該主表面(3a)に面しており、該第1電気的変調領域(25a)及び該第2電気的変調領域(25b)は、該第1軸(Z)と直交する第1面(XY)において互いに離隔して並んで配置され且つ該ゲート層(14)の該上部表面(14a)と面するように該ゲート層(14)内を延在している、
パワーMOSFET装置。
【請求項2】
該パワーMOSFET装置(1)の少なくとも1個の第1基本セル(1’)が設けられており、該第1基本セル(1’)は、該活性区域(7)内を延在しており且つ
第1導電型を有するドレイン領域(5)と、
第1導電型を有する第1ソース領域(13a)と、
第1導電型と反対の第2導電型を有する第1ボディ領域(9a)であって、該ドレイン領域(5)及び該第1ソース領域(13a)に隣接しており且つ該第1ソース領域(13a)と該ドレイン領域(5)との間に介在された第1チャンネル領域(17a)を画定する第1ボディ領域(9a)と、
該第1軸(Z)に沿って該ドレイン領域(5)及び該第1チャンネル領域(17a)の上側に存在しており且つ該第1ソース領域(13a)と該ドレイン領域(5)との間の該第1チャンネル領域(17a)を介しての電荷キャリア(18a)の第1流れを制御するために電気的にバイアス可能である該絶縁ゲート構成体(15)と、
を包含しており、該ソース領域(13a)、該ドレイン領域(5)、及び該第1ボディ領域(9a)が該半導体ボディ(3)内に包含されている、
請求項1に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項3】
第1導電型を有する第2ソース領域(13b)と、
第2導電型を有しており該ドレイン領域(5)及び該第2ソース領域(13b)に隣接しており且つ該第2ソース領域(13b)と該ドレイン領域(5)との間に介在される第2チャンネル領域(17b)を画定する第2ボディ領域(9b)と、
が更に設けられており、
該絶縁ゲート構成体(15)が、該第1軸(Z)に沿って、該第2チャンネル領域(17b)の上側に位置しており且つ該第2ソース領域(13b)と該ドレイン領域(5)との間の該第2チャンネル領域(17b)を介しての電荷キャリア(18b)の第2流れを制御するために電気的にバイアス可能であり、
該ドレイン領域(5)は該第2主表面(3b)から開始して該半導体ボディ(3)内を延在しており、
該第1ボディ領域(9a)及び該第2ボディ領域(9b)は、該第2主表面(3b)から開始して該半導体ボディ(3)内を延在しており且つ該ドレイン領域(5)の一部を介して該第1軸(Z)に対して直交して互いに分離しており、
該第1ソース領域(13a)及び該第2ソース領域(13b)は、該第2主表面(3b)から開始して該半導体ボディ(3)内を延在しており、且つ、夫々、該第1ボディ領域(9a)及び該第2ボディ領域(8b)を介して、該第1軸(Z)に直交して、該ドレイン領域(5)から分離されており、
該絶縁ゲート構成体(15)は、該第1ボディ領域(9a)及び該第1ソース領域(13a)に面している第1部分と、該第2ボディ領域(9b)及び該第2ソース領域(13b)に面している第2部分と、を有しており、
該第1ボディ領域(9a)と、該第1ソース領域(13a)と、該ドレイン領域(5)と、該絶縁ゲート構成体(15)の該第1部分と、該第1チャンネル領域(17a)とが該第1基本セル(1’)の第1装置部分(1a)を形成しており、且つ、該第2ボディ領域(9b)と、該第2ソース領域(13b)と、該ドレイン領域(5)と、該絶縁ゲート構成体(15)の該第2部分と、該第2チャンネル領域(17b)とが該第2基本セル(1’)の第2装置部分(1b)を形成している、
請求項2に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項4】
更に、該第1基本セル(1’)へ電気的に接続されて該パワーMOSFET装置(1)の少なくとも一つの第2基本セル(1’)が設けられており、該第2基本セル(1’)は該活性区域(7)内を延在しており且つ
該ドレイン領域(5)と、
第1導電型を有している夫々の第1ソース領域(13a)と、
第2導電型を有している夫々の第1ボディ領域(9a)であって、該第2基本セル(1’)の該第1ボディ領域(9a)は該第2基本セル(1’)の該第1ソース領域(13a)及び該ドレイン領域(5)に隣接しており且つ該第2基本セル(1’)の該第1ソース領域(17a)と該ドレイン領域(5)との間に介在される夫々の第1チャンネル領域(17a)を画定する該第1ボディ領域(9a)と、
該第1軸(Z)に沿って、該第2基本セル(1’)の該第1チャンネル領域(17a)の上側に位置しており且つ該第2基本セル(1’)の該第1ソース領域(13a)と該ドレイン領域(5)との間の該第2基本セル(1’)の該第1チャンネル領域(17a)を介しての電荷キャリア(18a)の夫々の第1流れを制御するために電気的にバイアス可能である該絶縁ゲート構成体(15)と、
を包含しており、
該第2基本セル(1’)の該第1ソース領域(13a)及び該第2基本セル(1’)の該第1ボディ領域(9a)が該半導体ボディ(3)内に包含されている、
請求項2又は請求項2に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項5】
該第1電気的変調領域(25a)と該第2電気的変調領域(25b)と間の各々が夫々の構造パラメータを有しており、該構造パラメータは、
i 該第1面(XY)に平行な面においての該第1電気的変調領域(25a)及び該第2電気的変調領域(25b)の形状、
ii 第1軸(Z)に沿って測定した、該第1電気的変調領域(25a)及び該第2電気的変調領域(25b)の最大厚さ(tsilic、及び
iii 該第1面(XY)と平行な面において測定した、該第1電気的変調領域(25a)及び該第2電気的変調領域(25b)の最大拡張面積(Asilic
を包含しており、該構造パラメータi乃至iiiの内の少なくとも一つが該第1電気的変調領域(25a)と該第2電気的変調領域(25b)との間で異なるものである、
先行する請求項の内のいずれか1項に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項6】
該第1電気的変調領域(25a)が第1最大厚さ(tsilicを有しており、且該第2電気的変調領域(25b)が該第1最大厚さよりも一層大きな第2最大厚さ(tsilicを有している請求項5に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項7】
該ゲート領域(24)が、該ゲート層(14)の該上部表面(14a)に面するように該ゲート層(14)内を延在し且つ該第1面(XY)において該第1電気的変調領域(25a)及び該第2電気的変調領域(25b)から或る距離にある少なくとも一つの第3シリサイド電気的変調領域(25c)を更に包含している先行する請求項の内のいずれか1項に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項8】
該構造パラメータiが、更に、該第1面(XY)に平行な面における第3電気的変調領域(25c)の形状を包含しており、
該構造パラメータiiが、更に、該第1軸(Z)に沿って測定した該第3電気的変調領域(25c)の最大厚さ(tsilicを包含しており、
該構造パラメータiiiが、更に、該第1面(XY)に平行な方向において測定した第3電気的変調領域(25c)の最大拡張面積(Asilicを包含しており、
該構造パラメータが、更に、
iv 互いに隣接している各対の電気的変調領域(25a,25b,25c)の間で、該第1面(XY)に平行に、測定した最小距離(Dsilic
を包含しており、
構造パラメータi乃至ivの内の少なくとも一つが、第1(25a)、第2(25b)、及び第3(25c)電気的変調領域の間で異なるものである、
請求項7及び請求項5又は6の何れかに記載のパワーMOSFET装置。
【請求項9】
第1(25a)、第2(25b)、及び第3(25c)電気的変調領域が該絶縁ゲート構成体(15)の主延長方向(19)において互いに整合されていて電気的変調領域のアレイを形成している請求項7又は8に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項10】
ゲート領域(24)が、第1軸(Z)に対して直交して互いに隣接しているゲート領域(24)の少なくとも一つの第1部分及びゲート領域(24)の少なくとも一つの第2部分を包含しており、ゲート領域(24)の該少なくとも一つの第1部分が第1電気的変調領域(25a)及び第2電気的変調領域(25b)を包含しており且つゲート領域(24)の該少なくとも一つの第2部分よりも一層低い電気抵抗を提供している、先行する請求項の内のいずれか1項に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項11】
半導体ボディ(3)がシリコンカーバイドSiCを包含している先行する請求項の内の何れか1項に記載のパワーMOSFET装置。
【請求項12】
パワーMOSFET装置(1)を製造する方法において、
第1軸(Z)に沿って互いに反対側である第1主表面(3a)及び第2主表面(3b)を有しており、第1主表面(3a)に面する活性区域(7)を包含している半導体ボディ(3)を形成するステップ、
パワーMOSFET装置(1)の絶縁ゲート構成体(15)であって、絶縁物質から構成されており且つ第1主表面(3a)上を延在しているゲート酸化物層(12)及び半導体ボディ(3)から電気的に分離させるべくゲート酸化物層(12)内に埋設されているゲート領域(24)を包含している該絶縁ゲート構成体(15)を活性区域(7)上に形成するステップ、
を包含しており、該絶縁ゲート構成体(15)を形成するステップが、相次いで、
半導体ボディ(3)の第1主表面(3a)上に絶縁性物質の第1酸化物層(50)を形成し、
第1酸化物層(50)上に、ポリシリコンのゲート層(14)であって、第1軸(Z)に沿って互いに反対側の上部表面(14a)と第1酸化物層(50)に面するゲート層(14)の底部表面(14b)とを有する該ゲート層(14)を形成し、
ゲート層(14)内で且つゲート層(14)の上部表面(14a)から開始して、少なくとも一つの第1シリサイド電気的変調領域(25a)及び第2シリサイド電気的変調領域(25b)であって、第1軸(Z)に直交する第1面(XY)において互いに離隔され且つ並んで配置されており、且つ、ゲート層(14)と共に、ゲート領域(24)を形成する該少なくとも一つの第1シリサイド電気的変調領域(25a)及び第2シリサイド電気的的変調領域(25b)を形成し、及び
ゲート層(14)上及び第1電気的変調領域(25a)上及び第2電気的変調領域(25b)上に、絶縁物質の第2酸化物層(50)であって、第1酸化物層(50)と共に、ゲート領域(24)を取り囲むゲート酸化物層(12)を形成する該第2酸化物層(50)を形成する、
ことを包含している方法。
【請求項13】
第1電気的変調領域(25a)及び第2電気的変調領域(25b)を形成する該ステップが、相次いで、
ゲート層(14)の上部表面(14a)上に、ゲート層(14)の上部表面(14a)の第1フェーズ被覆領域(53”)を被覆し且つ第1面(XY)に平行で互いに離隔され並んで配置されていてゲート層(14)の上部表面(14a)の夫々の第1フェーズ露出領域(53’)を露出させる第1の第1フェーズ開口(54)及び第2の第1フェーズ開口(54)を有している第1マスク層(52)を形成し、
第1マスク層(52)上及び第1及び第2の第1フェーズ開口(54)によって露出された第1フェーズ露出領域(54)上に、金属又は半金属の第1金属層(56)を形成し、及び
ゲート層(14)と第1金属層(56)との間の界面に、夫々の第1フェーズ露出領域(53’)において、第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)及び第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)であって、夫々、第1電気的変調領域(25a)及び第2電気的変調領域(58b)内に包含される該第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)及び該第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)を形成するために一つ又はそれ以上の第1熱処理を実施すること、
を包含している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1電気的変調領域(25a)及び第2電気的変調領域(25b)を形成する該ステップが、更に、相次いで、
該一つ又はそれ以上の第1熱処理を実施した後に、第1金属層(56)を除去し且つ第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)及び第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)をゲート層(14)上に残存させ、及び
ゲート層(14)から第1マスク層(52)を除去する、
ことを包含している請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)が第1電気的変調領域(25a)を形成し、
第1電気的変調領域(25a)及び第2電気的変調領域(25b)を形成する該ステップが、更に、相次いで、
ゲート層(14)上に第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)及び第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)を形成した後に、ゲート層(14)の上部表面(14a)上及び第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)上に、第1の第1フェーズシリサイド領域(58a)及びゲート層(14)の上部表面(14a)の第1フェーズ被覆領域(63”)を被覆し且つ第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)を露出させる第1の第2フェーズ開口(64)を有している第2マスク層(62)を形成し、
第2マスク層(62)上及び第1の第2フェーズ開口(64)によって露出されている第2の第1フェーズシリサイド領域(58)上に、金属又は半金属からなる第2金属層(66)を形成し、及び
第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)と第2金属層(66)との間の界面において、第1軸(Z)に沿って、第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)、第2の第1フェーズシリサイド領域(58b)、及び第2電気的変調領域(25b)を形成している第1の第2フェーズシリサイド領域(68)の上側に、第1の第2フェーズシリサイド領域(68)を形成するために一つ又はそれ以上の第2熱処理を実施すること、
を包含している請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
半導体ボディ(3)を形成する該ステップが、活性区域(7)において、パワーMOSFET装置(1’)の少なくとも一つの第1基本セル(1’)を形成することを包含しており、
半導体物質の基板から開始して、第1導電型を有しており且つ第1軸(Z)に沿って互いに反対側の夫々の第1主表面(3a)及び夫々の第2主表面(3b)を有しているドレイン領域を形成するステップ、
ドレイン領域(5)内において且つドレイン領域(5)の第1主表面(3a)から開始して、第1導電型と反対の第2導電型を有している第1ボディ領域(9a)を形成するステップ、及び
第1ボディ領域(9a)において且つドレイン領域(5)の第1主表面(3a)から開始して、第1導電型を有する第1ソース領域(13a)を形成するステップ、
を実施することを包含しており、
第1ボディ領域(9a)はドレイン領域(5)及び第1ソース領域(13a)に隣接しており且つ第1ソース領域(13a)とドレイン領域(5)との間に配置された第1チャンネル領域(13a)を画定し、
絶縁ゲート構成体(15)が、第1軸(Z)に沿って、ドレイン領域(5)及び第1チャンネル領域(17a)の上側に存在しており且つ第1ソース領域(13a)とドレイン領域(5)との間の第1チャンネル領域(17a)を介しての電荷キャリア(18a)の第1流れを制御するために電気的にバイアスさせることが可能であり、及び
第1ソース領域(13a)、ドレイン領域(5)、及び第1ボディ領域(9a)が半導体ボディ(3)内に包含されており、ドレイン領域(5)の第1主表面(3a)が半導体ボディ(3)の第1主表面(3a)を画定しており、且つドレイン領域(5)の第2主表面(3b)が半導体ボディ(3)の第2主表面(3b)を画定している、
請求項12乃至15の内のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置、及びその製造プロセスに関するものである。特に、該絶縁ゲート構造は、ゲート酸化物層内に埋め込まれたゲート領域を有しており、そのゲート領域はポリシリコンのゲート層とゲート領域の電気抵抗の局所的修正を可能とする複数個のシリサイド電気的変調領域とを有している。
【背景技術】
【0002】
知られているように、パワー装置は、例えば禁止状態において1700Vに到達する電圧及び導通状態において高々数十又は数百アンペアの電流での、高い電圧及び電流で動作すべく設計される電子装置である、
特に、半導体装置は、例えば、シリコン、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、砒化ガリウム(GaAs)に基づくものが知られている。例えば、高い熱容量のために、SiCは、約440℃までの温度で動作することが可能であり且つ高いパワー(数百ワット)に耐える能力を有しており且つ高周波数(数百MHz)でも動作することが可能である。
【0003】
パワー装置は、多数の応用分野において使用されている。例えば、スイッチング電源(SMPS)、オーディオアンプ、エンジン制御、エネルギ変換装置、ハイブリッド及び電気乗物用の自動車分野における装置、として一般的に使用されている。
【0004】
例えば、パワー装置は、パワーダイオード、フィンガー電極構造を具備するパワートランジスタ、サイリスタ、MOSFET(金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ)、及びSJ-MOSFET(スーパージャンクションMOSFET)を包含している。
【0005】
しかしながら、パワー装置の電気的制御は、例えばパワー装置の活性区域の広範囲の広がりに起因するか、又は、制御信号(例えば、ソース電圧)の伝播において遅延を発生させてその結果パワー装置の状態のスイッチング(例えば、オン/オフ状態)における遅延を発生させる場合があるパワー装置の特定のレイアウトに起因して、臨界的な側面を提示する場合があることが知られている。
【0006】
特に、パワー装置は、異なる時間において局所的にスイッチ(即ち、パワー装置の幾つかの領域では他の領域より前にオン/オフスイッチする)する場合があり、そのことは電気的性能の劣化及びパワー装置の損傷の危険性に通ずるものであることが知られている。実際に、パワー装置の状態のスイッチングが全部のパワー装置内において一様で且つ同時的な態様でするのではなく異なる時間で発生する場合には、パワー装置の特定の局所化した領域において高い電流密度(一般的に、設計段階において考慮され且つ予定されたものよりも一層高い)が発生する場合があり、そのことはこれらの領域の過剰な加熱を発生させる場合があり、それはジュール効果によってパワー装置に損傷を発生させる場合がある。
【0007】
従って、現在知られているパワー装置は、制御信号の送信において制限を課しており、そのことは信頼性を低下させ且つ動作及び電気的性能を劣化させることとなる。
【0008】
更に、現在、例えば、パワー装置の他の領域に関してシフトされた(例えば、延期させるか又は先取りさせる)スイッチングを可能とさせるため、そうでなければパワー装置全体において同時的且つ均一なスイッチングを可能とさせるために、パワー装置の予め定めた領域において制御信号を故意に遅延又は加速させることによって、パワー装置の設計条件に基づいて制御信号の伝播の局所的制御を可能とさせる簡単で低コストの解決手段は知られていない。その結果、適用例及び使用の所望条件に基づいて、パワー装置が実質的に同時的に(例えば、約50nsより短い時間間隔で)全ての点においてスイッチするような態様で、そうでなければ他の領域の前に幾つかの領域をスイッチさせるような態様で、パワー装置を効果的に制御することは可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的とするところは、従来技術の欠点を解消する、改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義される如く、改良した絶縁ゲート構造を具備するパワーMOSFET装置、及びその製造方法が提供される。
【0011】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的な例としての好適実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】1実施例に基づくパワー装置の図2のI-I断面線に沿って取った断面図。
図2】1実施例に基づく図1のパワー装置の図1の断面線A-Aに沿って取ったものであり部品を除去した状態の平面図。
図3A】夫々の実施例に基づく図1のパワー装置の図1の断面線A-Aに沿って取ったものであり部品を除去した夫々の平面図。
図3B】夫々の実施例に基づく図1のパワー装置の図1の断面線A-Aに沿って取ったものであり部品を除去した夫々の平面図。
図4】1実施例に基づく図1のパワー装置の図1の断面線IV-IVに沿って取ったものであり部品を除去した状態の長手軸断面図。
図5】1実施例に基づく図1のパワー装置のゲート構造の平面図。
図6】更なる1実施例に基づく図1のパワー装置の部品を除去した状態の平面図。
図7A】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7B】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7C】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7D】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7E】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7F】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
図7G】1実施例に基づく図4のパワー装置を製造するための或るステップにおける段階を示している長手断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に、図面中の実例は、互いに直交している軸Xと、軸Yと、軸(第1軸)Zによって画定される3軸カーテシアン系を参照して図示されている。
【0014】
以下の説明において、種々の実施例間において共通の要素には同一の参照番号を付してある。
【0015】
図1は、例として提供され且つ記載される1実施例に基づくパワー装置(詳細には、パワーMOSFET型)1を示している。特に、図1は、例として、パワー装置1の基本セル1’を示しているが、当業者に既知である態様で、パワー装置1は、例えば、並列的に、互いに電気的に接続されている複数個の基本セル1’を包含する場合がある。
【0016】
パワー装置1の基本セル1’は、軸Yと平行な主要な延長方向を有しており、且つ図1は軸X及びZによって定義される面XZにおける、従って前述した主要な延長方向に対して垂直な方向における、基本セル1’の断面図を示している。
【0017】
基本セル1’は、例えばSiC又はシリコン等の半導体物質からなる半導体ボディ3を包含しており、それは前部表面(又は第1主表面)3aと後部表面(又は第2主表面)3bとを有している。半導体ボディ3は、全ての基本セル1’に対して共通であり、且つドレイン領域5を有しており、ドレイン領域5は、第1導電型(例えば、N型)及び第1導電型値を有しており、且つ後部表面3bから開始して前部表面3aへ向かって半導体ボディ3内を延在している。ドレインメタリゼーション6が、ドレイン領域5と直接的に電気的にコンタクトして後部表面3b上を延在しており且つ電気的ドレイン端子を形成している。
【0018】
第1ボディ領域9a及び第2ボディ領域9bが、前部表面3aから開始して後部表面3bへ向かって且つ後部表面3bに到達すること無しに半導体ボディ3内を延在しており、且つドレイン領域5を介して、互いに(軸Xに平行な方向において)及び後部表面3bから(軸Zに平行な方向において)物理的に分離されている。第1ボディ領域9a及び第2ボディ領域9bの両方が第2導電型(ここでは、P型)及び第2導電型値を有している。
【0019】
第1ソース領域13a及び第2ソース領域13bは、第1導電型(ここでは、N型)及び第1導電型値よりも一層高い第3導電型値を有しており、前部表面3aから開始して、夫々、第1ボディ領域9a及び第2ボディ領域9b内に延在している。軸Xに対して平行な方向において、各ソース領域13a、13bは、第1チャンネル領域17a及び第2チャンネル領域17bを夫々形成している(従って、それらは第2導電型値を有している)第1ボディ領域9a及び第2ボディ領域9bの夫々の部分を介して、ドレイン領域5から物理的に離隔されている(即ち、或る距離に配置されている)。
【0020】
純粋に非制限的な例として、基本セル1’は、例えば150nmと1000nmとの間で特に約500nmのボディ領域9a,9bのチャンネル長Lch例えば、軸Xに平行な方向に測定)と、1×1015オン数/cm5×1017オン数/cm間で例えば約2×1016オン数/cmドレイン領域5の第1ドーピング値と、ほぼ1×1013オン数/cm5×1015オン数/cmの間のボディ領域9a,9bの注入用の第2ドーピング値と、1×1015オン数/cm5×1016オン数/cmの間で例えば約1×1016オン数/cmソース領域13a,13bの注入用の第3ドーピング値、とを有することが可能である。
【0021】
パワー装置1は、更に、ゲート構成体(「絶縁ゲート構成体」ともいう)15を包含しており、それは、図1に例示として示されている実施例においては、軸Zに沿って、ボディ領域9a,9bのチャンネル領域17a,17b及びボディ領域9a,9bの間で軸Xに沿って配置されているドレイン領域5の部分の上方に位置している。
【0022】
ゲート構成体15は、前部表面3a上の酸化物層(又はゲート酸化物層)12、及び半導体ボディ3から(特に、半導体ボディ3の前部表面3aから)物理的に且つ電気的に分離されるように酸化物層12内に埋設されているゲート領域24、を包含している。ゲート領域24は、当業者にとってそれ自身既知の態様で、ゲートメタリゼーション(不図示)へ電気的に接続されている。
【0023】
酸化物層12は、例えば二酸化シリコン(SiO等の酸化物のような絶縁物質から構成されている。
【0024】
ゲート領域24は、ポリシリコンのゲート層14を包含しており、それは、図1における例として示した実施例においては、軸Zに沿って、ボディ領域9a,9bのチャンネル領域17a,17b及びボディ領域9a,9bの間に軸Xに沿って配置されているドレイン領域5の部分の上方に位置している。特に、ゲート層14は、ドープしたポリシリコンから構成されており、例えば、第1電気的導電型(ここでは、N型)及び、純粋に例示として、約5×1018オン数/cm約1×1021オン数/cmの間で例えば約5×1019オン数/cmある第4ドーピング値を有している。
【0025】
ゲート領域24は、更に、TiSiCoSiNiSi、WSiのシリサイドからなる複数個の電気的変調領域(又は島状部)25を包含している。以下の説明において例として検討するものは、電気的変調領域25がTiSiらなるものとする場合であるが、その他のシリサイド(即ち、金属又は半金属とシリコンとによって形成される二元化学化合物)も同様に使用することが可能である。電気的変調領域25は、例えば、ゲート層14内に収容されており且つ図4を参照して後に詳述する。
【0026】
ソースメタリゼーション16(金属等の導電性物質の電気的ソース端子を画定している)が酸化物層12上及び酸化物層12によって被覆されていない箇所の前部表面3a上を延在しており、且つソース領域13a,13b及びボディ領域9a,9bと直接電気的にコンタクトしており、従って、それらは互いに電気的に結合されている。
【0027】
オプションとして、且つ更に図示又は説明することの無い態様で、一つ又はそれ以上のパッシベーション層がソースメタリゼーション16上を延在する場合がある。
【0028】
実際には、ドレインメタリゼーション6と、ドレイン領域5と、第1ボディ領域9aと、第1ソース領域13aと、ゲート層14と、酸化物層12と、ソースメタリゼーション16とが第1装置部分1aを形成し、一方、ドレインメタリゼーション6と、ドレイン領域5と、第2ボディ領域9bと、第2ソース領域13bと、ゲート層14と、酸化物層12と、ソースメタリゼーション16とが第2装置部分1bを形成している。
【0029】
図2は、軸X及びYによって定義される面XY(「第1面XY」とも呼称する)に平行な平面図でパワー装置1を示しており、簡単化のために、ゲート構成体15及びソースメタリゼーション16は図示していない。
【0030】
図2から理解されるように、装置部分1a,1bのチャンネル領域17a,17bは、第1軸Yと平行な方向において、例えば、互いに等しく且つ、例えば、約100nmと約1μmとの間のチャンネル延長Wchチャンネル長Wchも呼称される)に等しい幅を有している。
【0031】
更に、図2から理解されるように、基本セル1’はパワー装置1の活性領域7内に延在しており、複数個の基本セル1’の場合には、それらも同様に活性領域7内に延在してゲート構成体15を共用する。特に、半導体ボディ3は、閉じた形状を有しており且つパワー装置1の活性領域7の境界を定めるフィールド分離領域11(SiOの絶縁物資からなる)を包含している。分離領域11は、活性領域7(及びその結果1つ又はそれ以上の基本セル1’)を半導体ボディ3の残部から電気的に分離する機能を有している。従って、活性領域7及びその中に包含される該一つ又はそれ以上の基本セル1’は、半導体ボディ3内に包含されるが活性領域7外部に設けられることのある更なる装置に関してガルバニック絶縁されている。
【0032】
詳細には、多数の基本セル1’の場合には、それらの各々がドレイン領域5、ドレインメタリゼーション6、及びソースメタリゼーション16を共有する。更に、基本セル1’は全ての基本セル1’に対して共通のゲート層14を共有する。
【0033】
例えば、図3Aはパワー装置1の1実施例を平面図で示してあり、そこでは、簡単化のために、ソースメタリゼーション16及びゲート領域24は図示していない。図3Aにおいて、パワー装置1は一体的に電気的に接続された多数の基本セル1’を包含している。
【0034】
図3Aに示されるように、基本セル1’は、軸Yに対して且つ基本セル1’のアレイを形成するように各基本セル1’の主要延長方向に対して平行な整合軸20に沿って互いに整合させることが可能である。即ち、各基本セル1’の第1及び第2ソース領域13a及び13bは、整合軸20に対する直交する方向において互いに整合している。ゲート構成体15は各基本セル1’の上方に位置しており且つ整合軸20に対して平行である夫々の主要延長方向19を有している。例えば、ゲート構成体15は、ここでは、ストリップ形状であり、該主要延長方向における主要延長部を具備している。
【0035】
図3Bは、パワー装置1の異なる実施例を平面図で示しており、簡単化のために、ソースメタリゼーション16及びゲート領域24は図示していない。図3Bにおいて、パワー装置1は、互いに電気的に接続されている多数の基本セル1’を包含している。
【0036】
図3Bに示したように、ゲート構成体15は、例えば軸Xに対して平行である主要延長方向を有する主要部分15’、及び主要部分15’に対して横断する態様で主要部分15’から延在している複数個の二次的部分(即ちゲートフィンガー)15”を有することが可能である。即ち、各二次的部分15”は、主要延長方向19に対して横断方向でありここでは、例えば、軸Yに対して平行である夫々の主要延長部を有している。例えば、主要部分15’は、ここでは、前述した主要延長方向19を有しているストリップ形状であり、一方、二次的部分15”は、軸Yに沿って互いに反対側である主要部分15’の両側に2個ずつ延在することが可能であり、二次的部分15”の各対は同軸上の夫々の二次的部分15”を有する場合がある(即ち、夫々の主要部分は軸Yに対して平行な方向に互いに整合している)。
【0037】
各二次的部分15”は、例えば、軸Zに沿って、基本セル1’の夫々の一つの上側に存在することが可能である。その結果、各基本セル1’は、第1及び第2ソース領域13a及び13bを有しており、それらは、例えば、主要延長方向19に平行な方向に互いに整合されている。
【0038】
図4は、図1に示した断面線IV-IVに沿って取られ且つゲート層14及び電気的変調領域25に対応する区域において取られたパワー装置1の長手断面図を示している。詳細には、この図は、軸Y及びZによって定義される面YZ内のものである。図示を簡単化するために、図4はソースメタリゼーション16及びドレインメタリゼーション6を図示していない。
【0039】
図4は、電気的変調領域25を図示している。純粋に非制限的例として、図4は、第1電気的変調領域25aと、第2電気的変調領域25bと、第3電気的変調領域25cとを示しているが、電気的変調領域の数は可変であり、例えば、2個又は3個を越える数とすることが可能である。
【0040】
詳細には、ゲート層14は、軸Zに沿って互いに反対側にある上部表面14a及び底部表面14bを有している。上部表面14aは、ソース層14とソースメタリゼーション16との間に軸Zに沿って配置されている酸化物層12の上部部分12aに面しており、一方、底部表面14bは、ゲート層14とドレイン領域5との間に軸Zに沿って配置されている酸化物層12の底部部分12bに面している。
【0041】
電気的変調領域25は、上部表面14aに面し且つ面XY内において互いに離隔され且つ並んで配置(即ち、互いに並んで配置)されるようにゲート層14の上部表面14aにおいてゲート層14内を延在している。
【0042】
特に、電気的変調領域25は、面XYに対して平行な方向において互いに或る距離にあり、例えば、それらは、アレイ及び/又はマトリックスパターンを形成するために軸X及び/又は軸Yに沿った互いに整合しており、純粋に例示として、図4は、軸Yに沿って整合されている電気的変調領域25a,25b,25cを図示している。電気的変調領域25は、ゲート層14によって、面XYに対して平行な方向において互いに離隔して配置されている。
【0043】
詳細には、電気的変調領域25は、上部表面14aから底部表面14bへゲート層14内を延在している。電気的変調領域25は、底部表面14bに到達するか、又は底部表面14bから軸Zに沿って或る距離まで延在することが可能である。更に、電気的変調領域25は、ゲート層14の外部へ突出し且つ部分的に酸化物層12の上部部分12a内に延在することが可能である。
【0044】
電気的変調領域25は、面XYに平行な面において、正方形、三角形、矩形、六角形等の閉じた多角形である形状(即ち、断面)を有している。以下の説明においては、例示として、電気的変調領域25は、正方形形状を有するものとして検討するが、その他の形状とすることも可能である。
【0045】
各電気的変調領域25は、軸Zに沿って測定した厚さtsilic例えば、軸Zに沿って互いに反対側の電気的変調領域25の、例えば、上部表面と底部表面との間で測定した最大厚さ)を有しており、且つ面XYに対して平行な面内において測定した拡張面積Asilic例えば、最大拡張面積)を有している。更に、2個を越える電気的変調領域25に対して、面XYに平行な方向において互いに隣接している各対の電気的変調領域25は、最小距離Dsilic有しており、それは、例えば、軸X又は軸Yに沿って測定した電気的変調領域25の間の最小距離である。
【0046】
面XYに平行な面における電気的変調領域25の形状、厚さtsilic拡張面積Asilic及び最小距離Dsilic、以下の説明において、電気的変調領域25の構造パラメータとも呼称される。
【0047】
電気的変調領域25は、互いに異なる場合のある構造パラメータを有している。即ち、電気的変調領域25の内の少なくとも一つは、他の電気的変調領域25のものとは異なる構造パラメータ(形状、厚さtsilic拡張面積Asilicび最小距離Dsilicの内の少なくとも一つを有する場合がある。代替的に、全ての電気的変調領域25が同じ構造パラメータを有する場合がある。
【0048】
図4における例によって検討する実施例において、電気的変調領域25a,25b,25cは同じ形状、拡張面積Asilic及び最小距離Dsilic有しているが、厚さtsilic異なっている。
【0049】
特に、電気的変調領域25の構造パラメータは、パワー装置1が使用される適用例に対する予め定義された特定のターゲットを達成するために、パワー装置1の設計の段階においてヒューリスティック的に選択される。
【0050】
実際に、シリサイドは、ゲート層14のポリシリコンのものよりも通常かなり低い電気的固有抵抗を有しており、例えば、約2桁だけ一層低い。例えば、ポリシリコンの電気的固有抵抗は約1Ω・mと約100Ω・mとの間であり、且つTiSi電気的固有抵抗は約0.01Ω・mと約1Ω・mとの間である。その結果、電気的変調領域25の存在は、電気的変調領域25が存在しない場合と比較して、ゲート領域24の全体的な電気抵抗を減少させ、取り分け、ゲート領域24の電気抵抗の局所的変調を可能とさせ、パワー装置1の電気特性(例えば、パワー装置1の所定の領域においてのオン状態からオフ状態へのスイッチング及びその逆の速度)の局所化され且つ選択的な変化を可能とさせる。
【0051】
特に、幾つかの適用例において、一層低い電気抵抗にあるゲート領域24の一つ又はそれ以上の第1部分と、該ゲート領域24の該一つ又はそれ以上の第1部分に並んで配置された一層高い電気抵抗にあるゲート領域24の一つ又はそれ以上の第2部分と、を有することが有用である場合がある。この場合には、ゲート領域24の該一つ又はそれ以上の第1部分は、電気的変調領域25を包含しており、一方、ゲート領域24の該一つ又はそれ以上の第2部分はそうではない。
【0052】
更に、電気的変調領域25の構造パラメータ及びゲート構成体15における電気的変調領域25の数を変化させることの可能性は、一層高い精度でゲート領域24の電気抵抗の制御を設計段階において可能とさせる。例えば、ゲート領域24の該一つ又はそれ以上の第1部分の一つ又はそれ以上の第1サブ部分が、ゲート領域24の該一つ又はそれ以上の一つ又はそれ以上の第2サブ部分(該一つ又はそれ以上の第1サブ部分と並んで配置されており且つ該一つ又はそれ以上の第1サブ部分よりも一層高い電気抵抗を有している)と相対的に、以下のこと、即ち、一層多数の電気的変調領域25、一層大きな厚さtsilic一層大きな拡張面積Asilic及び一層小さな最小距離Dsilicの内の少なくとも一つを提供することが可能である。
【0053】
純粋に例として、ここで図3Aの実施例について検討すると、ゲート構成体15はストリップ形状をしており且つ主要延長方向19を有している。その結果、ゲート層14も該主要延長方向19にその主要延長部を有しており且つ主要延長方向19において互いに反対側の第1端部14’及び第2端部14”を有している(図4)。例えば、ゲート領域24の電気抵抗が第1端部14’から第2端部14”にかけて増加することが必要とされる。この場合に、第1端部14’から第2端部14”にかけて、ゲート領域24は、以下の基準、即ち、電気的変調領域25の数が減少、厚さtsilic減少、拡張面積Asilic減少、及び最小距離Dsilic増加、の内の少なくとも一つの態様で設計される。例えば、図4は、厚さtsilicが第1端部14’から第2端部14”にかけて減少することを介してゲート領域24の電気抵抗が第1端部14’から第2端部14”にかけて増加している場合を示している。
【0054】
図5は、図4のゲート構成体15の平面図を示している。図5に例示として示した実施例においては、電気的変調領域25は面XYに平行な面内において側部P(例えば、約0.2μmよりも大きく且つ、例えば、約1μmに等しい)を具備する正方形形状を有している。更に、電気的変調領域25は、例えば、主要延長方向19において、等距離だけ互いに離隔されている。
【0055】
図6は、ゲート領域24の更なる例、特に、ゲート層14における電気的変調領域25の配置、の平面図における模式的例示である。
【0056】
特に、図6は、パワー装置1の更なる実施例を平面図で示しており、その場合には、図示を簡略化するために、ソースメタリゼーション16及び酸化物層12は図示していない。図6において、パワー装置1は、例として、電気的に一体的に接続されている多数の基本セル1’を包含している。
【0057】
図6に示されるように、ゲート領域24は、ゲートバスとして動作し且つ、例えば、ゲートメタリゼーションを結合させることが可能なゲートパッド24'''へ結合されている主要部分24’を提供する場合がある。例えば、主要部分24’は、例えば、正方形フレームなどの多角形フレームの形状を有しており、且つ該多角形フレーム内側に延在する(即ち、外部的に区画を定める)内部領域を画定する。この内部領域内にはゲート領域24の二次的部分24”が延在しており、各二次的部分24”は夫々の基本セル1’の一部を形成しており(即ち、図1に示されるように、軸Zに沿って、夫々の第1装置部分1a及び夫々の第2装置部分1bの上側に存在している)且つ夫々のゲートフィンガーを形成している。各二次的部分24”は主要部分24’に結合されている夫々の端部(例えば、軸Yに沿って互いに反対側)を有している。例えば、二次的部分24”は、互いに且つ軸Yに対して平行であるように、軸Yに沿って互いに反対側である正方形フレームの側部間に延在している。
【0058】
電気的変調領域25は、二次的部分24”の幾つかにおいて(オプションとして主要部分24’の一部)及び/又は二次的部分24”の予め定めた区域においてのみ延在する場合がある。
【0059】
例えば、電気的変調領域25は、第1組の二次的部分24”において延在しているが第2組の二次的部分24”においては延在していない場合がある。例として且つ図6に示したように、該第1組は、例えば軸Xに沿って、ゲートパッド24'''に関してゲート領域24の反対側上を延在しており、一方、該第2組は、該ゲートパッド24'''と該第1組との間に延在している。その結果、該第1組の二次的部分24”は一層低い電気抵抗を有するゲート領域24の第1部分を形成し、且つ該第2組の二次的部分24”は一層高い電気抵抗を有するゲート領域24の第2部分を形成している。例えば、約半分の二次的部分24”が該第1組に属しており、且つ約半分の二次的部分24”が該第2組に属している。オプションとして、電気的変調領域25も、例えば、該第1組の二次的部分24”において、主要部分24’内を延在している。
【0060】
更に、電気的変調領域25は、二次的部分24”の端部区域においてではなく二次的部分24”の中央区域内を延在する場合がある。特に、二次的部分24”の中央区域は、軸Yに沿って、中央に配置されており且つ二次的部分24”の端部区域の間に配置されている二次的部分24”の領域(例えば、それらは主要部分24’に結合されている二次的部分24”の端部から等距離であるように配置されている)であって、一方、二次的部分24”の端部区域は、二次的部分24”の該中央区域と並んで配置されており且つ主要部分24’へ結合されている二次的部分24”の前記端部を画定している。従って、電気的変調領域25が設けられている各二次的部分25に対して、二次的部分24”の端部区域は一層高い電気抵抗を有するゲート領域24の第2部分を形成している。
【0061】
既知の態様において、使用期間中に、パワー装置1は、ソースメタリゼーション16へソース電圧V例えば、接地基準電圧GND)を印加することによってバイアスされ、一方、ドレイン電圧V例えば、30V乃至1700V)がドレインメタリゼーション6へ印加される。更に、夫々(図2に示したように)、チャンネル領域17a,17bを介して電荷キャリア(ここでは電子)の夫々の流れを発生させるために、ゲートメタリゼーションを介して、ゲート領域24がゲート電圧Vバイアスされると、パワー装置は導通状態(ON状態)となり、そうでない場合には、パワー装置は禁止状態(OFF状態)にある。従って、使用において、パワー装置1の全体的な導通は、電子18a,18b(各々が夫々の装置部分1a,1bに対応している)の流れの両方の関数である。
【0062】
図7A乃至7Gは、パワー装置1,特に図4の実施例、を製造するプロセスの夫々の段階を示している。図7A乃至7Gの製造プロセスは図4のパワー装置1(例えば、電気的変調領域25が異なる厚さtsilic軸Yに沿って等間隔で離隔されている例)を参照して例示するものであるが、前述したパワー装置1のその他の実施例の製造も同様のものであり且つ以下に説明することから当業者には自明のことである。従って、その更なる説明は割愛する。
【0063】
図7Aを参照すると、最初に、半導体ボディ3がそれ自身既知の態様で形成される。図示を簡単化するために、図7A乃至7Gは、ドレイン領域5,ボディ領域9a,9a又はソース領域13a,13bを図示していない。
【0064】
特に、半導体物質の基板(それは、本説明の文脈においては、例えば、SiCからなり且つN型の第1導電型を有している)が設けられ、その上に複数個のエピタキシャル層(不図示)が形成される。該基板上のエピタキシャル成長の結果、ドレイン領域5が形成される。
【0065】
次いで、それ自身既知の技術によって且つ前部表面3aから開始して、パワー装置1の活性領域7の区画を決定する分離領域11が半導体ボディ3内に形成される。
【0066】
次いで、それ自身既知の態様で且つリソグラフィ技術を介して、ボディ領域9a,9bの形成及びその後のボディ領域9a,9b内のソース領域13a,13bの形成が続く。しかしながら、ボディ領域9a,9bの形成より前又は同時に、それ自身既知の態様で、ソース領域13a,13bの形成を行うことも当業者には自明のことであると思われる。例えば、ボディ領域9a,9bの形成は、第2導電型(ここでは、例えば、ボロン、インジウム、及びアルミニウムのイオンを介してのP型)を有する第1ドーパント及び上述した第2ドーピング値(約1×1012オン数/cm1×1013オン数/cm間)に等しい濃度での第1注入と、それに続く該第1ドーパントの再分布及び活性化を可能とさせる熱アニーリングステップ(例えば、迅速熱アニーリング、RTA、の場合には数十秒の間で且つ炉の場合には数時間の間の時間にわたり900℃と1100℃との間の温度において、例えば、窒素又はアルゴン雰囲気においての保護された環境で行われる)とによって行われる。その代わりに、ボディ領域9a,9b内のソース領域13a,13bの形成は、第1導電型(ここでは、例えば、砒素、燐、又はアンチモニーのイオンを介してのN型)及び上述した第3ドーピング値(約5×1015オン数/cm5×1016オン数/cmの間)に等しい濃度を有する第2ドーパントの第2注入と、それに続く該第2ドーパントの再分布及び活性化を可能とさせる熱アニーリングステップとによって行われる。
【0067】
この様に、半導体ボディ3が図1に示されるように得られる。
【0068】
再度図7Aを参照すると、半導体ボディ3の前部表面3a上に第1酸化物層50を形成する。酸化物(例えば、シリコン酸化物)等の絶縁性物質の第1酸化物層50は、酸化物層12の底部部分12bを形成するためである。例えば、第1酸化物層50は半導体ボディ3の前部表面3aにわたって一様な態様で延在している。特に、第1酸化物層50は、熱酸化、ウエット陽極酸化、化学蒸着(CVD)、及びプラズマ陽極酸化等の技術を介して形成される。例えば、第1酸化物層50は、半導体ボディ3の前部表面3a上にシリコン酸化物を形成させるために半導体ボディ3のシリコンと反応する酸素を得るために酸素雰囲気中において熱プロセスを実施することにより形成される。
【0069】
次いで、第1酸化物層50上にゲート層14が形成される(即ち、半導体ボディ3に面する第1酸化物層50の底部表面と反対側の第1酸化物層50の上部表面上に)。例えば、ゲート層14は、第1酸化物層50上を一様な態様で延在している。特に、ゲート層14は、ポリシリコン(特に、ここではN型で、例えば、約5×1018オン数/cm約1×1021オン数/cmの間の第4ドーピング値を有しているドープしたポリシリコン)からなり、且つドープしたポリシリコンの化学蒸着又はポリシリコンの化学蒸着とそれに続くドーパント種のイオン注入を介しての該ポリシリコンのドーピング等の技術を介して形成される。例えば、ゲート層14は、それ自身既知の態様で、低圧化学蒸着(LPCVD)を介して形成される。
【0070】
図7Bを参照すると、次いで、ゲート層14上、即ちゲート層14の上部表面14a上、に第1マスク層52が形成される。特に、第1マスク層52は、ゲート層14の上部表面14aの第1フェーズ露出領域53’を露出させ、且つゲート層14の上部表面14aの第1フェーズ被覆領域53”を被覆する。詳細には、第1フェーズ露出領域53’は、面XYにおいて、例えば軸Yに沿って、互いに並んで且つ離隔されて配置され(即ち、或る距離で横方向に配置)、即ち、第1フェーズ露出領域53’は、平面図において互いにずらされている(即ち、面XYに平行に)。例として検討する実施例においては、第1フェーズ露出領域53’は、軸Yに沿って等距離離隔されている。より詳細には、第1マスク層52は、複数個の第1フェーズ開口54を有しており、該開口は第1マスク層52を貫通して延在して第1フェース露出領域53’を露出させており、第1フェーズ開口54は面XY内において互いに並んで且つ互いに離隔して、且つ例として、軸Yに沿って等距離離隔して、配置されている。
【0071】
例えば、且つ以下において例として考察すると、第1マスク層52はシリコン酸化物等の酸化物から構成されているが、第1マスク層52を生成するために、窒化物又はフォトレジスト等の、その他の物質を使用することも可能である。特に、第1酸化物マスク層52は、ゲート層14の上部表面14a上で一様に実施される、第1中間酸化物層(不図示であり且つシリコン酸化物等の酸化物からなる)の付着を介して形成される。該第1中間酸化物層の付着は、第1酸化物層50のものと同様に実施されるものであるから、その詳細な説明は割愛する。該第1中間酸化物層の付着に続いて、第1の第1フェーズエッチが行われ、それは該第1中間酸化物層の対応する部分を除去することによって第1フェーズ開口54を形成して第1マスク層52を画定する。例えば、該第1の第1フェーズエッチは、ウエットエッチ(例えば、HFベース)又はプラズマエッチ(例えば、XeFはSFの塩素又はフッ素化合物を介して)であり、且つ該第1中間酸化物層の除去すべき部分(即ち、軸Zに沿って、第1フェーズ露出領域53’の上側にある第1フェーズ開口54を形成する部分)を露出させたまま該第1中間酸化物層を被覆する第1エッチングマスク(不図示)を介して実施される。より詳細には、これは、既知のリソグラフィ技術を介して該第1中間酸化物層上に該第1エッチングマスクを形成し、該第1エッチングマスクを介して該第1の第1フェーズエッチを実施し、次いで該第1エッチングマスクを除去(例えば、適宜の化学溶媒の使用を介して)することによって行われる。
【0072】
図7Cを参照すると、第1金属層56が、第1マスク層52上、及びゲート層14の上部表面14aの第1フェーズ露出領域53’上に形成される。詳細には、第1金属層56は、第1フェーズ露出領域53’を被覆するような態様で第1フェーズ開口54内にも形成される。第1金属層56は、金属又は半金属からなり、それは、シリコンと反応することによって、シリサイドを形成することが可能である。例えば、第1金属層56は、Ti,Co,Ni,Wからなり、以下において非制限的な例によって考察した場合には、第1金属層56はTiからなる。例えば、第1金属層56は、陰極スパッタリング又は電気鍍金等のそれ自身既知の態様で形成される。
【0073】
図7Dを参照すると、第1フェーズシリサイド領域58は、第1フェーズ露出領域53’内に形成される。特に、第1フェーズシリサイド領域58は、夫々の電気的変調領域25内に包含されており且つゲート層14内に存在するシリコン及び第1金属層56内に存在するチタンから開始して発生されたシリサイドから構成されている。例示として考察している実施例においては、第1の第1フェーズシリサイド領域58a、第2の第1フェーズシリサイド領域58b、及び第3の第1フェーズシリサイド領域58cは、夫々の第1フェーズ露出領域53’及び夫々の第1フェーズ開口54に対応する区域内に形成され、例えば、該第1、第2、第3の第1フェーズシリサイド領域58a、58b、58cは軸Yに沿って相次いで配置されており(例えば、図7Dにおいて右から左にかけて)、且つ第1の第1フェーズシリサイド領域58aは第1の電気的変調領域25aを形成している。
【0074】
詳細には、第1フェーズシリサイド領域58の形成は、ゲート層14と第1金属層56との間に発生される界面を介してのシリコンとチタンとの相互拡散を可能とさせる一つ又はそれ以上の第1熱処理を介して実施される。例えば、該一つ又はそれ以上の第1熱処理は、10sと100sとの間の時間期間にわたり300℃と1100℃との間の温度において、保護された環境(例えば、窒素又はアルゴン雰囲気中)において実施される。実際に、該一つ又はそれ以上の第1熱処理は、該チタン内への該シリコンの及び該シリコン内への該チタンの拡散を可能とし、第1フェーズ開口54において互いにコンタクトしているゲート層14の部分及び第1金属層56の部分の段階的な消費を介してシリサイドを形成することとなる。その結果、第1フェーズシリサイド領域58は、部分的にゲート層14内に延在しており(ゲート層14の上部表面14aから底部表面14bへ)且つ部分的に第1金属層56内に延在している(ゲート層14に面している第1金属層56の底部表面から、軸Zに沿って、該底部表面とは反対側の第1金属層56の上部表面へ)。詳細には、該一つ又はそれ以上の第1熱処理が実施される時間期間が増加すると、該界面におけるシリコン及びチタンの拡散が増加し、従って、軸Zに沿って測定される第1フェーズシリサイド領域58の厚さが増加する。例示として考察している実施例においては、該一つ又はそれ以上の第1熱処理の時間期間は、第1フェーズシリサイド領域58の厚さtsilic第1電気的変調領域25aの厚さtsilic等しくなるように決定される。
【0075】
シリコンと金属/半金属との間の界面から開始するシリサイドの形成に関するより一層詳細な事項は、「Tiナイトライド及びTiシリサイド(Ti Nitrides and Ti Silicides)」、Isabelle Jauberteau、https:://encyclopedia.pub/entry/119、及び「スケーリングされたCMOS用のNiSiサリサイド技術(NiSi salicide technology for scaled CMOS)」、Iwaia,etal.、
Microelectronic Engineering 60 (2002) 157-169等の従来技術文献に記載されている。
【0076】
再度図7Dを参照すると、ゲート層14のシリコンと反応しなかったチタンを除去するステップが続いて行われる。即ち、シリサイドを形成するためにゲート層14と反応しなかった第1金属層56の部分は、除去される。この様に、第1金属層56が除去されて、ゲート層14上に第1フェーズシリサイド領域58を残存させる。例えば、第1金属層52の酸化物及び第1フェーズシリサイド領域58のシリサイドを除去すること無しに、第1金属層56の金属/半金属を選択的に除去する第2の第1フェーズエッチを実施することにより行われる。詳細には、該第2の第1フェーズエッチは、過酸化水素の塩基又は金属をエッチングするための溶液でのウエット型のエッチである。
【0077】
再度図7Dを参照すると、図示していない態様で、第1マスク層52を除去するオプションのステップが続いて、ゲート層14の上部表面14aの第1フェーズ被覆領域53”を露出させる。特に、このことは、第1フェーズシリサイド領域58及びゲート層14を除去すること無しに、第1マスク層52を選択的に除去する第3の第1フェーズエッチを実施することによって行われる。例えば、該第3の第1フェーズエッチはウエットエッチ(例えば、HFを基礎としたもの)又はプラズマエッチ(例えば、XeFはSFの塩素又はフッ素の化合物を介して)である。
【0078】
図7B乃至7Dを参照して説明したステップ、即ち処理段階、は第1フェーズシリサイド領域58の形成、及び、特に、第1の電気的変調領域25aの形成、となる。
【0079】
図7B乃至7Dを参照して説明したステップは、互いに異なる厚さtsilic有する電気的変調領域25を形成するために、該第1フェーズシリサイド領域58の一部に重畳する(詳細には、第1の第1フェーズシリサイド領域58aには重畳しない)更なるシリサイド領域を形成するために更に一度又はそれ以上の回数だけ繰り返すことが可能である。特に、このことの1例については、図7E乃至7Gを参照する以下において説明する。
【0080】
図7Eを参照すると、第2マスク層62がゲート層14上、即ちゲート層14の上部表面14a上、に形成される。特に、第2マスク層62は、ゲート層14の上部表面14aの第2フェーズ露出領域63’を露出させ且つゲート層14の上部表面14aの第2フェーズ被覆領域63”を被覆し、特に、第2マスク層62は第1の第1フェーズシリサイド領域58a(即ち、第1の電気的変調領域25a)を被覆する。詳細には、第2フェーズ露出領域63’は、例えば軸Yに沿って、面XY内において互いに並んで且つ或る距離互いに離れて配置されており、且つ、軸Zに沿って、厚さtsilic増加させるべき第1フェーズシリサイド領域58の上側に存在している。例示として考察している実施例においては、第2フェーズ露出領域63’は、夫々、第2の第1フェーズシリサイド領域58b及び第3の第1フェーズシリサイド領域58cの上側に存在しており、一方、第1の第1フェーズシリサイド領域58cは第2マスク層62によって被覆されている。より詳細に説明すると、第2マスク層62は、複数個の第2フェーズ開口64を有しており、それらは第2マスク層62を貫通して延在して第2フェーズ露出領域63’を露出させている(軸Zに沿って、第1フェーズ露出領域53’の一部の上側に存在している)。
【0081】
更に、第2マスク層62は或る物質から構成されており且つ第1マスク層52に関して前述したことと同様の態様で得られたものである。特に、第2マスク層62は、第2中間酸化物層(該第1中間酸化物層と同様)の付着と、それに続く第2フェーズ開口64を形成する第1の第2フェーズエッチ(該第1の第1フェーズエッチと同様)とを介して形成される。
【0082】
図7Fを参照すると、第2金属層66を、第2マスク層62上、及び第2の第1フェーズシリサイド領域58b上、及び第3の第1フェーズシリサイド領域58c上に(従って、第2フェーズ露出領域63’を被覆するような態様で第2フェーズ開口64内に)形成する。第2金属層66は或る物質から構成されており且つ第1金属層56に関して既に説明したことと同様の態様で得られるものであるから、更なる説明は割愛する。
【0083】
図7Gを参照すると、第2フェーズシリサイド領域68が第2フェーズ露出領域63’に対応する区域に形成される。特に、第2フェーズシリサイド領域68自身も夫々の電気的変調領域25内に包含されており且つゲート層14内に存在しているシリコンと第2金属層66内に存在しているチタンとから開始して発生されるシリサイドから構成される。例示して考察している実施例においては、第1の第2フェーズシリサイド領域68bと第2の第2フェーズシリサイド領域68cとが形成され、それらは両方共、軸Zに沿って、第2の第1フェーズシリサイド領域58b及び第3の第1フェーズシリサイド領域58c、夫々の上方及び下方に延在している。第1の第2フェーズシリサイド領域68bは、第2の第1フェーズシリサイド領域58bと共に、第2の電気的変調領域25bを形成している。
【0084】
第2フェーズシリサイド領域68は、或る物質から構成されており、且つ第1フェーズシリサイド領域58について前述したことと同様の態様で得られる(例えば、該一つ又はそれ以上の第1熱処理と同様の一つ又はそれ以上の第2熱処理と、それに続く該第2の第1フェーズエッチと同様の第2の第2フェーズエッチとを行い、且つ第2金属層66の選択的除去を実施することを介して形成される)。特に、該一つ又はそれ以上の第2熱処理の時間期間は、第1フェーズシリサイド領域58の厚さtsilic第2フェーズシリサイド領域68の厚さtsilicの和が第2の電気的変調領域25bの厚さtsilic等しいような態様で画定される。
【0085】
再度図7Dを参照すると、図示されていない態様で、ゲート層14の上部表面14aの第2フェーズ被覆領域63”を露出させるために第2マスク層62を除去するオプションのステップが続く。特に、このことは、該第3の第1フェーズエッチと同様の第3の第2フェーズステップエッチを実施することによって得られる。
【0086】
図7E乃至7Gを参照して説明したステップを介して、第2の電気的変調領域25bを形成するためにシリサイド領域の厚さtsilic増加させることが可能である。
【0087】
オプションとして且つ図示していないか又は再度詳細な説明を割愛する態様で、図7E乃至7Gのステップを第3の電気的変調領域25cを形成するために前述したように繰り返し行うことが可能である(特に、第3マスク層を介して第1及び第2の電気的変調領域25a,25bを被覆し且つ、軸Zに沿って、第2の第2フェーズシリサイド領域68cに重畳して第1の第3フェーズシリサイド領域を形成)。このことは、図4に示したようなゲート領域24を形成することを可能とする。
【0088】
次いで、図示していない態様で、軸Zに沿って、ゲート層14及び電気的変調領域25に重畳して第2酸化物層の形成が続く。該第2酸化物層は、酸化物層12の上部部分12aを形成し、且つ第1酸化物層50と合体するように形成される。即ち、第1酸化物層50及び該第2酸化物層はゲート領域24を取り囲み且つ埋設させて、ゲート領域24を電気的に絶縁させるために酸化物層12を形成する。該第2酸化物層は或る物質から構成され且つ第1酸化物層50について前述したことと同様の態様で得られる。
【0089】
次いで、図1のパワー装置1の形成に至る幾つかのステップで、ソースメタリゼーション16及びドレインメタリゼーション6の形成を含むステップが続いて行われるが、それらのステップは既知であるから更なる説明は割愛する。
【0090】
本開示に基づいて提供されている本発明の特徴を吟味することから、本発明が提供する利点は明らかである、
特に、電気的変調領域25は、ゲート領域24の電気抵抗の局所的且つ選択的変調を可能とさせる。即ち、ゲート領域25の電気抵抗は局所的に変化可能である。このことは、電気的変調シリサイド領域25の存在によって得られるものであって、より詳細には、設計段階において、電気的変調領域25の数及びそれらの各々の構造パラメータ(形状、厚さtsilic拡張面積Asilic及び最小距離Dsilicを制御することによって得られるものである。この様に、全ての基本セル1’を介して同期的及び均一な態様で(面XYに平行な面におけるパワー装置1の拡張範囲に拘わらずに、且つ電気的変調領域25が存在しない場合にパワー装置1の異なる区域を介して存在することのあるゲート電圧V伝播の差異にも拘わらずに)、又は基本セル1’を介して意図的に非同期的且つ不均一な態様で、パワー装置1へゲート電圧V供給することが可能である。このことは、パワー装置1のスイッチング制御を改善し且つ電気的性能を良好なものとし、又パワー装置1の信頼性を向上させることを可能とする(既知の装置と比較して、サーマルブレークダウンに対する堅牢性が一層向上)。更に、それは、パワー装置1の適用例及び対応する設計条件に基づく特定の設計を可能とさせる。
【0091】
更に、図7A乃至7Gを参照して説明した製造プロセスは、パワー装置1の製造を簡単化及び低コスト化させることを可能とし、且つ、特に、パワーMOSFET装置の典型的な製造プロセスと適合性のある技術を介して且つ自己整合的な態様で、異なる厚さtsilic具備する電気的変調領域25を得ることを可能とさせる。
【0092】
最後に、特許請求の範囲に定義されるように、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに、本書に記載し且つ例示した本発明に対して種々の変形及び修正を行うことが可能であることは勿論である。
【0093】
例えば、異なる実施例を互いに結合させて更なる解決手段を提供することが可能である。
【0094】
更に、ゲート構成体15のその他の実施形態が可能である。その1例は図6に示しているが、当業者に自明であるように更なる実施形態とすることも可能である。例えば、図3A及び3Bのゲート構成体15の形状を互いに結合させて、各二次的部分15”に沿って互いに整合された多数の基本セル1’とすることが可能である。又は、二次的部分15”は軸Yに平行な方向において互い違いの配列とさせることが可能であり、又はそれらを全て主要部分15’の一方の同じ側部上とすることも可能である。
【0095】
更に、ゲート構成体15の特定のレイアウト及び特定の適用例によって課される設計条件に従って(例えば、パワー装置1のどの区域が前又は後にスイッチしなければならないか)、ゲート領域24が必要とされる電気的性能を有することを可能とする電気的変調領域25を設計することが可能である。このことは、設計段階において、例え、純粋に例示として前に説明したこととは異なる態様であっても、電気的変調領域25の数及びそれらの各々の構造パラメータ(形状、厚さtsilic拡張面積Asilic及び最小距離Dsilicを制御することによって得られる。例えば、3より大きな数の電気的変調領域25を有することが可能であり、一つで同じ厚さtsilic有する多数の電気的変調領域25を有することが可能であり、異なる最小距離Dsilic具備する電気的変調領域25を有することが可能であり(この場合には、第1フェーズ開口54及び第2フェーズ開口64は軸Yに沿って等距離離隔されるものではない)、前述した正方形形状とは異なる形状で且つ互いに異なる形状を具備する電気的変調領域25を有することが可能である等である。詳細には、互いに異なるM個の厚さtsilic有するN個の数の電気的変調領域25の場合(なお、M≦N及びM≧2)、前述した如く、図7B乃至7Dを参照して説明したステップを同じくM回繰り返し行う。代替的に、一つの同じ厚さtsilic具備する電気的変調領域25の場合には、図7E乃至7Gのステップを実施することの必要性無しに又は同様にそれらを繰り返すこと無しに、図7A乃至7Dを参照して説明したステップ及び図7Gの後に説明した最終ステップを実施する。
【0096】
パワー装置1は、図1を参照して前に説明したものと異なるタイプのものとすることが可能である。例えば、ゲート構成体15は、トレンチゲート型のものとすることが可能であり、その場合には、前部表面3aから開始して半導体ボディ3内に存在する凹所内を延在する。又は、パワー装置1は、DMOS型、LDMOS型、VMOS型等のものとすることが可能である。
【0097】
実際に、その最も一般的な形態において、且つ当業者に明らかに既知であるように、MOSFET型のパワー装置1は、活性区域7内に存在する各基本セル1’に対して、第1導電型を有する第1ソース領域13a;第1導電型を有するドレイン領域5;第1導電型を有する第1ソース領域13a;第2導電型を有する第1ボディ領域9aであって、ドレイン領域5及び第1ソース領域13aに隣接しており且つ第1ソース領域13aとドレイン領域5との間に配置される第1チャンネル領域17aを画定する第1ボディ領域9a;及び軸Zに沿ってドレイン領域5及び第1チャンネル領域17aの上側に存在しており且つ第1ソース領域13aとドレイン領域5との間の第1チャンネル領域17aを介しての電荷キャリア18aの第1流れを制御するために電気的にバイアスさせることが可能なゲート構成体15、を包含しており、第1ソース領域13a、ドレイン領域5,及び第1ボディ領域9aは半導体ボディ3内に包含されている。
【0098】
更に、第1マスク層52がフォトレジストから構成されている場合には、本製造方法は、前述したことと比較して以下のような差異を提供する。第1に、図7Bを参照すると、フォトレジストの第1マスク層52は、それ自身既知のフォトリソグラフィ技術を介して形成される。更に、図7Dを参照すると、該一つ又はそれ以上の第1熱処理は、軸Zに沿って、第1マスク層52の上側にある第1金属層56の一部及びフォトレジストの第1マスク層52をそれ自身既知のリフトオフ技術を介して除去した後に、実施される。これらの差異は図7B乃至7Dのステップに関連してのものであるが、それらは、同様に、これらのステップのその後の繰り返しにも適用される(例えば、図7E乃至7Gのステップ)。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G