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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097660
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】被クランプ装置、半導体遮断器
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20240711BHJP
   H01H 33/59 20060101ALI20240711BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240711BHJP
   H03K 17/10 20060101ALI20240711BHJP
   H03K 17/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H03K17/16 M
H01H33/59 H
H03K17/687 A
H03K17/10
H03K17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001274
(22)【出願日】2023-01-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 発行日(公開日) 令和4年3月18日(現地時間/日本時間) 刊行物 2022 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition(APEC)論文集 Institute of Electrical and Electronics Engineers 発行 *参加者専用アドレスより公開(参加者のみ閲覧可) <資 料> (APEC)論文集 掲載研究論文 <資 料> (APEC)論文集 ダウンロードのご案内 (2) 公開日 令和4年3月22日(現地時間)/令和4年3月23日(日本時間) 集会名、開催場所 2022 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition(APEC)(会期:令和4年3月20日~24日:現地時間) Institute of Electrical and Electronics Engineers 主催 George R. Brown Convention Center(1001 Avenida de las Americas Houston, Texas 77010)で開催 <資 料> (APEC)開催概要・プログラム抜粋 (3) 発行日(公開日) 令和4年8月23日 刊行物 2022年電気学会産業応用部門大会 論文集 一般社団法人電気学会 発行 *参加者専用アドレスより公開(参加者のみ閲覧可) <資 料> 2022年電気学会産業応用部門大会 掲載研究論文 (4) 公開日 令和4年9月1日 集会名、開催場所 2022年電気学会産業応用部門大会 上智大学四谷キャンパス(千代田区紀尾井町7-1)で開催。(会期:令和4年8月30日~9月1日) <資 料> 2022年電気学会産業応用部門大会 開催概要 <資 料> 2022年電気学会産業応用部門大会 プログラム
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 太郎
【テーマコード(参考)】
5G028
5J055
【Fターム(参考)】
5G028FB04
5G028FC02
5J055AX34
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055DX72
5J055DX73
5J055DX83
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ17
5J055EZ62
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】パワー半導体で消費される遮断エネルギーをより少なくする。
【解決手段】パワー半導体により構成され、電流を遮断することができる遮断部と並列に接続され、前記遮断部よりもブレークダウン電圧が低く、前記遮断部による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きい耐量を有し、電流が流れ入る側にカソードを配置したダイオードにより構成される、被クランプ装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体により構成され、電流を遮断することができる遮断部と並列に接続され、
前記遮断部よりもブレークダウン電圧が低く、
前記遮断部による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きい耐量を有し、
電流が流れ入る側にカソードを配置したダイオードにより構成される、
被クランプ装置。
【請求項2】
パワー半導体により構成され、電流を遮断することができる遮断部と、
前記遮断部と並列に接続され、前記遮断部よりもブレークダウン電圧が低く、前記遮断部による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きい耐量を有し、電流が流れ入る側にカソードを配置したダイオードにより構成される被クランプ装置と、
を備える半導体遮断器。
【請求項3】
前記遮断部は、直列に接続されたパワー半導体により構成される、
請求項2に記載の半導体遮断器。
【請求項4】
前記遮断部は、並列に接続されたパワー半導体により構成される、
請求項2又は3に記載の半導体遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被クランプ装置、半導体遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電流を遮断する遮断器としては、機械接点を使用する機械式が広く使用されている。しかし、機械接点を使用する遮断器は遮断速度が遅い、繰り返し遮断回数に制約があるといった欠点がある。この欠点を解決するために、パワー半導体を用いる遮断器が研究開発されている。
【0003】
遮断器に使用されるパワー半導体にかかる負担を軽減するために、バリスタを並列に接続し遮断時にバリスタにエネルギーを消費させる方法がある(特許文献1)。バリスタではなく、キャパシタや抵抗などの受動素子を用いる方法もある(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-153976号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Zhao, R. Kheirollahi, Y. Wang, H. Zhang and F. Lu, "A Diode-Free MOV2-RC Snubber for Solid-State Circuit Breaker," 2022 IEEE Transportation Electrification Conference & Expo (ITEC), 2022, pp. 497-502, doi: 10.1109/ITEC53557.2022.9813936.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においてはパワー半導体で消費される遮断エネルギーも少なくない。そのため、パワー半導体への負担が大きい。
本発明の目的は、パワー半導体で消費される遮断エネルギーをより少なくすることができる被クランプ装置、半導体遮断器を提供することにある。これに加え、大電流化と高耐圧化するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、パワー半導体により構成され、電流を遮断することができる遮断部と並列に接続され、前記遮断部よりもブレークダウン電圧が低く、前記遮断部による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きい耐量を有し、電流が流れ入る側にカソードを配置したダイオードにより構成される、被クランプ装置である。
【0008】
本発明の一態様は、パワー半導体により構成され、電流を遮断することができる遮断部と、前記遮断部と並列に接続され、前記遮断部よりもブレークダウン電圧が低く、前記遮断部による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きい耐量を有し、電流が流れ入る側にカソードを配置したダイオードにより構成される被クランプ装置と、を備える半導体遮断器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流遮断時に遮断器で消費される遮断エネルギーを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る半導体遮断器1の構成を示す図である。
図2】半導体遮断器1により電流が遮断されたときの波形を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る半導体遮断器1の構成の一例を示す図である。
図4】第2の実施形態に係る遮断部2の構成の一例を示す図である。
図5】第3の実施形態に係る遮断部2の構成の一例を示す図である。
図6】複数の直列に接続されたダイオード31から構成される被クランプ装置3の一例を示す図である。
図7】並列及び直列に接続するパワー半導体21から構成される遮断部2の一例を示す図である。
図8】被クランプ装置3としてバリスタを使用した場合の遮断部2の特性値を示す図である。
図9】被クランプ装置3としてダイオードを使用した場合の遮断部2の特性値を示す図である。
図10】本実施形態に係る半導体遮断器1とインバータ6を組み込んだパワーモジュール7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体遮断器1の構成を示す図である。半導体遮断器1は、流れる電流を遮断することができる。図1に示す例においては、半導体遮断器1は電源電圧4及びインダクタ5と直列に接続される。半導体遮断器1は、インダクタ5を流れる電流iを遮断することができる。半導体遮断器1は、遮断部2と被クランプ装置3とを備える。遮断部2と被クランプ装置3とは、互いに並列に接続される。
【0012】
遮断部2は、パワー半導体により構成される。パワー半導体は例えばSiC-MOSFETやSiC-JFETである。遮断部2は、例えばパワー半導体のゲートソース間の電圧を制御することで電流を遮断するか否かを切り替える。
【0013】
被クランプ装置3は、ダイオードにより構成される。ダイオードは例えばSiC MPS(Merged PIN Schottky)ダイオードである。被クランプ装置3を構成するダイオードは、カソードを高圧側、アノードを低圧側に設定される。そのため、遮断部2が電流を遮断していない及び電圧が被クランプ装置3のブレークダウン電圧以下であるとき、遮断部2に電流は流れるが、被クランプ装置3に電流は流れない。
【0014】
図2は、半導体遮断器1により電流が遮断されたときの波形を示す図である。
遮断部2を流れる電流をi、被クランプ装置3を流れる電流をiClampとすると、半導体遮断器1に入る電流iは、iとiClampとに分岐する。遮断部2が電流を遮断していないとき、被クランプ装置3に電流は流れないことから、iはiとほとんど等しい。
【0015】
被クランプ装置3のブレークダウン電圧は、遮断部2のブレークダウン電圧よりも小さくなるように設定される。例えば、遮断部2のブレークダウン電圧よりも小さいブレークダウン電圧を有するダイオードが、被クランプ装置3を構成するダイオードとして選択される。そのため、時刻tにおいて遮断部2のゲート電圧がVgから0に切り替えられ、電流が遮断されている。時刻tにおいて電流iの大きさは0になるが、電流iClampの大きさは急峻に上昇し、徐々に小さくなる。つまり、被クランプ装置3に電流が流れ込む。これにより遮断部2に電流が流れるのを防ぐことができる。
【0016】
時刻tにおいて遮断部2及び被クランプ装置にかかる電圧は上昇するが、被クランプ装置3には電流が流れ込むことから、遮断部2にかかる電圧よりも被クランプ装置3にかかる電圧が大きくなる。
【0017】
また、被クランプ装置3の耐量(アバランシェエネルギー)は、遮断部2による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きくなるように設定される。遮断エネルギーEAVは、理論的には式(1)により表される。
【数1】
【0018】
ここで、Lはインダクタ5のインダクタンス、VBDは遮断部2のブレークダウン電圧、VDDは遮断部2に接続される電源電圧である。
【0019】
遮断エネルギーEAVは、実測値としては、式(2)により表される。
【数2】
【0020】
ここで、t及びtは、遮断部2による遮断開始の時刻及び遮断終了の時刻であり、vbreakerは時刻tにおいて遮断部2にかかる電圧であり、iは遮断部2を流れる電流である。
【0021】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る半導体遮断器1の構成の一例を示す図である。第1の実施形態において、遮断部2は1つのパワー半導体21-1により構成され、被クランプ装置3は1つのダイオード31-1により構成される。また、遮断部2は、パワー半導体21-1のゲートソース間の電圧を制御するゲートドライバ22-1を備えていてもよい。このとき、ダイオード31-1のブレークダウン電圧は、パワー半導体21-1のブレークダウン電圧よりも小さくなるようにダイオード31-1及びパワー半導体21-1が選択される。また、ダイオード31-1の耐量は、パワー半導体21-1による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きくなるようにダイオード31-1及びパワー半導体21-1が選択される。
【0022】
遮断部2が開状態であるとき、電源電圧4から流れる電流は、遮断部2を流れる。遮断部2が閉状態に変化すると、遮断部2よりも被クランプ装置3の方がブレークダウン電圧が低いことから、遮断部2を流れていた電流はすべて被クランプ装置3を流れる。また、このとき被クランプ装置3の耐量は、遮断部2による遮断時に生じる遮断エネルギーよりも大きいため、遮断部2による遮断により被クランプ装置3は故障しない。また、ダイオードによる遮断電流のクランプ速度は実験により示すように特許文献1に記載の方法よりも速い。
このように、第1の実施形態によれば、遮断電流のクランプ速度が速いことから、パワー半導体で消費される遮断エネルギーをより少なくすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る遮断部2の構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る遮断部2は、並列に接続される複数のパワー半導体21を備える。図3に示す遮断部2は、並列に接続される3つのパワー半導体21-1、21-2、21-3を備える。このとき、ダイオード31-1のブレークダウン電圧は、いずれのパワー半導体21のブレークダウン電圧よりも小さくなるようにダイオード31-1及び複数のパワー半導体21が選択される。
遮断部2において、並列に接続されているパワー半導体21にアバランシェ降伏が発生している場合、パワー半導体21間の電流バランスは、ブレークダウン電圧特性が近い必要がある。しかしながら、パワー半導体21間の特性のばらつきを小さくすることは難しい。
第2の実施形態においては、遮断部2による遮断時の電流は被クランプ装置3に流れる。そのため、遮断時にパワー半導体21間の電流のアンバランスを考慮する必要がなくなる。
【0024】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る遮断部2の構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係る遮断部2は、直列に接続される複数のパワー半導体21を備える。図4に示す遮断部2は、直列に接続される3つのパワー半導体21-1、21-2、21-3を備える。このとき、ダイオード31-1のブレークダウン電圧は、直列に接続されたパワー半導体21のブレークダウン電圧よりも小さくなるようにダイオード31-1及び複数のパワー半導体21が選択される。このとき、パワー半導体は直列に接続されていることから、第1の実施形態と比較して、1つあたりのパワー半導体にかかる電圧の大きさが小さい。そのため、第3の実施形態においてはブレークダウン電圧が小さいパワー半導体21も遮断部2に使用することができる。
また、第1の実施形態と比較して、1つあたりのパワー半導体にかかる耐量も小さく、耐量の小さいパワー半導体21も遮断部2に使用することができる。
【0025】
第3の実施形態の遮断部2同様、被クランプ装置3が複数の直列に接続されたダイオード31から構成されてもよい。図6は、複数の直列に接続されたダイオード31から構成される被クランプ装置3の一例を示す図である。図6に示す被クランプ装置3において、3つのダイオード31-1、31-2及び31-3が直列接続されている。このとき、1つあたりのダイオードにかかる電圧の大きさを小さく、かかる耐量を小さくできる。そのため、ブレークダウン電圧や耐量の小さいダイオードを使用することができる。
【0026】
また、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせて、遮断部2は、並列及び直列に接続するパワー半導体21から構成されてもよい。図7は、並列及び直列に接続するパワー半導体21から構成される遮断部2の一例を示す図である。図7に示す遮断部2において、パワー半導体21-1-1、21-1-2及び21-1-3が並列接続され、パワー半導体21-2-1、21-2-2及び21-2-3が並列接続され、パワー半導体21-3-1、21-3-2及び21-3-3が並列接続されている。
【0027】
また、図7に示す遮断部2において、パワー半導体21-1-1、21-1-2及び21-1-3は、パワー半導体21-2-1、21-2-2及び21-2-3と直列接続され、パワー半導体21-2-1、21-2-2及び21-2-3は、パワー半導体21-3-1、21-3-2及び21-3-3と直列接続されている。図7に示す遮断部2において、ゲートドライバ22-1は、パワー半導体21-1-1、21-1-2及び21-1-3のゲートソース間の電圧を制御し、ゲートドライバ22-2は、パワー半導体21-2-1、21-2-2及び21-2-3のゲートソース間の電圧を制御し、ゲートドライバ22-3は、パワー半導体21-3-1、21-3-2及び21-3-3のゲートソース間の電圧を制御する。このとき、パワー半導体21の直列接続及び並列接続される数を調整することで、所望の電流電圧特性を有する遮断部2を作成することができる。図7に示す遮断部2において、ゲートドライバ22-1、22-2及び22-3は複数のパワー半導体21のゲートソース間の電圧を制御するがこれに限られない。例えば、遮断部2がパワー半導体21の数と同じ数のゲートドライバ22を備え、ゲートドライバ22は対応する1つのパワー半導体のゲートソース間の電圧を制御してもよい。
【0028】
(実験例)
図1の回路において、VDD=400V、L=300 uHとして、直流電流iLを50A流した状態で実験検証を行った。遮断部2を構成するパワー半導体として1.2 kV耐圧MOSFETを使用し、被クランプ装置3を構成するダイオードとして650 V耐圧SiC MPSダイオードを使用した。被クランプ装置3として、バリスタとダイオードとを使用して遮断部2により消費される遮断エネルギーの比較を行った。バリスタとしてはブレークダウン電圧が910VのMOV(Metal Oxide Varistor)を使用した。また、バリスタとダイオードはそれぞれ1つ使用して被クランプ装置3を作成した。ダイオード及びバリスタのブレークダウン電圧をそれぞれ650V、910Vとしたこの素子選定は、1.2 kV耐圧MOSFETがアバランシェ動作することを避けるための条件を満たしている。
実験には図3に示す遮断部2を使用した。遮断部2は3つのパワー半導体21-1、21-2、21-3が並列に接続されている。遮断部2に入る電流iは、パワー半導体21-1に入る電流idA、パワー半導体21-2に入る電流idB、パワー半導体21-3に入る電流idCに分岐する。パワー半導体21-1、21-2、21-3にはそれぞれゲートドライバ22-1、22-2、22-3が接続されており、各パワー半導体21のゲートソース間電圧vgsA、vgsB、vgsCを制御することで、電流を遮断するか否かを切り替える。遮断部2による電流遮断時には、3つのゲートドライバ22が同時に各パワー半導体21のゲートソース間電圧を制御し、電流を遮断する。
【0029】
図8は、被クランプ装置3としてバリスタを使用した場合の遮断部2の特性値を示す図である。図9は、被クランプ装置3としてダイオードを使用した場合の遮断部2の特性値を示す図である。W、W、W及びWClampは、それぞれパワー半導体21-1、21-2、21-3と被クランプ装置3の消費電力である。
【0030】
被クランプ装置3を流れる電流iClampの時間当たりの電流の増加量は、被クランプ装置3としてバリスタを使用した場合においては0.348A/nsであるのに対し、被クランプ装置3としてダイオードを使用した場合においては0.970A/nsであった。また、各パワー半導体21で消費される遮断エネルギーは、被クランプ装置3としてバリスタを使用した場合においては7.83mJ, 4.96mJ, 6.78mJであるのに対し、被クランプ装置3としてダイオードを使用した場合においては5.03mJ, 3.58mJ, 3.53mJであった。以上より、被クランプ装置3としてダイオードを使用する方が、被クランプ装置3としてバリスタを使用するよりも、遮断電流を速くクランプすることができ、それにより遮断部2で消費される遮断エネルギーを軽減できることが分かる。
【0031】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では半導体遮断器1は、電源電圧4に接続されているが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る半導体遮断器1は、自動車用インバータなどのパワーデバイスを複数備える回路の中に組み込むことで、遮断器とインバータを一体化することができる。図10は、本実施形態に係る半導体遮断器1とインバータ6を組み込んだパワーモジュール7を示す図である。インバータ6は複数の半導体(IGBTなど)を備える。自動車用インバータなどは機械式遮断器とは一体化されていないために大型化する。しかしながら、図10に示す回路は遮断器とインバータをパワー半導体チップを配置したモジュール構造として一体化して構成されることができ、遮断器とインバータを小型化することができる。また、遮断器及びインバータの冷却装置は、パワー半導体チップの裏面に備えられればよいことから、冷却装置も一体化することができる。冷却装置は、遮断器が導通時に発生するMOSFETから発生する導通損失による熱を冷却する。
【符号の説明】
【0032】
1 半導体遮断器、2 遮断部、3 被クランプ装置、4 電源電圧、5 インダクタ、6 インバータ、7 パワーモジュール、21 パワー半導体、22 ゲートドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10