(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097668
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】光学素子、導光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/04 20060101AFI20240711BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20240711BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240711BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20240711BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G02B5/04 A
G02B3/08
G02B5/02 B
G09F19/12 Z
G02B6/00 326
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001287
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 正
(72)【発明者】
【氏名】大川 晃次郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 俊
【テーマコード(参考)】
2H038
2H042
【Fターム(参考)】
2H038AA41
2H038BA06
2H042BA02
2H042BA16
2H042CA12
2H042CA13
2H042CA15
2H042CA17
(57)【要約】
【課題】光学素子によって表示される三次元状の表示物の意匠性を高める
【解決手段】光学素子20は、三次元状の表示物の表示に用いられる。光学素子20は、プリズム30を備える。プリズム30は、底面31と、底面31に対して傾斜した複数のレンズ面32と、を含む。レンズ面32には、凹凸形状35が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記レンズ面には、凹凸形状が設けられている、光学素子。
【請求項2】
前記凹凸形状は、複数の前記レンズ面の間で非一様である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記プリズムは、散乱物を含む、光学素子。
【請求項4】
前記散乱物は、非一様に分布している、請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムと、
前記プリズムに重ねられた散乱層と、を備える、光学素子。
【請求項6】
前記散乱層の光散乱性は、非一様である、請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記プリズムは、複数の多角形区域を含み、
ある前記多角形区域において、前記レンズ面は、第1方向に直線状に延び、且つ前記第1方向に非平行な第2方向に配列されている、光学素子。
【請求項8】
隣接する前記多角形区域において、前記レンズ面は、接続している、請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記レンズ面の法線方向が隣接するいずれかの前記多角形区域の前記レンズ面の法線方向と3.7°以上の角度をなす前記多角形区域における前記レンズ面の面積の総和は、前記プリズム全体の前記レンズ面の面積の総和の10%以上である、請求項8に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光学素子は、色または透過率が非一様である光変調層をさらに備える、請求項1,3,5または7に記載の光学素子。
【請求項11】
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムと、
前記プリズムに重ねられた光変調層と、を備え、
前記光変調層は、色または透過率が非一様である、光学素子。
【請求項12】
前記レンズ面を覆うように設けられた反射層または部分反射層をさらに備える、請求項1,5,7または11に記載の光学素子。
【請求項13】
前記レンズ面は、ある閉曲線に沿って配列されている、請求項1,3,5,7または11に記載の光学素子。
【請求項14】
請求項1,3,5,7または11に記載の光学素子を含む、導光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子、および光学素子を有する導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような、三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子が知られている。特許文献1に記載された光学素子は、複数のレンズ面を含んでいる。光源からの光がレンズ面で反射することで、三次元状の表示物を観察できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、三次元状の表示物を単に表示するのみであり、表示物の意匠性を高める工夫については開示されていない。本開示は、光学素子によって表示される三次元状の表示物の意匠性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[13]に関する。
[1]
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記レンズ面には、凹凸形状が設けられている、光学素子。
[2]
前記凹凸形状は、複数の前記レンズ面の間で非一様である、[1]に記載の光学素子。
[3]
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記プリズムは、散乱物を含む、光学素子。
[4]
前記散乱物は、非一様に分布している、[3]に記載の光学素子。
[5]
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムと、
前記プリズムに重ねられた散乱層と、を備える、光学素子。
[6]
前記散乱層の光散乱性は、非一様である、[5]に記載の光学素子。
[7]
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムを備え、
前記プリズムは、複数の多角形区域を含み、
ある前記多角形区域において、前記レンズ面は、第1方向に直線状に延び、且つ前記第1方向に非平行な第2方向に配列されている、光学素子。
[8]
隣接する前記多角形区域において、前記レンズ面は、接続している、[7]に記載の光学素子。
[9]
前記レンズ面の法線方向が隣接するいずれかの前記多角形区域の前記レンズ面と3.7°以上の角度をなす前記多角形区域における前記レンズ面の面積の総和は、前記プリズム全体の前記レンズ面の面積の総和の10%以上である、[8]に記載の光学素子。
[10]
前記光学素子は、色または透過率が非一様である光変調層をさらに備える、[1]乃至[9]のいずれかに記載の光学素子。
[11]
三次元状の表示物の表示に用いられる光学素子であって、
底面と、前記底面に対して傾斜した複数のレンズ面と、を含むプリズムと、
前記プリズムに重ねられた光変調層と、を備え、
前記光変調層は、色または透過率が非一様である、光学素子。
[12]
前記レンズ面を覆うように設けられた反射層または部分反射層をさらに備える、[1]乃至[11]のいずれかに記載の光学素子。
[13]
前記レンズ面は、ある閉曲線に沿って配列されている、[1]乃至[12]のいずれかに記載の光学素子。
[14]
[1]乃至[13]のいずれかに記載の光学素子を含む、導光板。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、光学素子によって表示される三次元状の表示物の意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の光学素子の第1の例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、光学素子におけるプリズムを拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の光学素子の第2の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の光学素子の第3の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の光学素子の第4の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の光学素子の第5の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の光学素子の第6の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、光学素子の上面視の一例を拡大して示す図である。
【
図9】
図9は、表示物を観察する位置を変化させたときの表示物の見え方の違いを説明するための図である。
【
図10】
図10は、光学素子を含む導光板の第1の例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、光学素子を含む導光板の第2の例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、光学素子を含む導光板の第3の例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、光学素子を用いて表示される表示物のデータの例である。
【
図14】
図14は、光学素子を用いて表示されると想定される表示物の例である。
【
図15】
図15は、光学素子を用いて表示されると想定される表示物の例である。
【
図16】
図16は、光学素子を用いて表示された表示物の例である。
【
図17】
図17は、光学素子の上面視の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付された図面における縮尺及び縦横の寸法比等は、図示と理解のしやすさのため、実物のそれらから変更され誇張されている。
【0009】
本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、フィルム或いはシートと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0010】
本明細書において用いられる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語ならびに長さや角度の値等は、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0011】
図1乃至
図16は、本開示の一実施の形態を説明するための図である。
図1、
図3乃至
図7はそれぞれ、本開示の光学素子20の異なる例を示している。光学素子20は、三次元状の表示物の表示に用いられる。光学素子20は、入射した光に光学的な作用を及ぼす。光学的な作用とは、例えば反射や屈折である。光学素子20に入射した光により、光学素子20から離れた位置に、三次元状の表示物が表示される。表示物は、光学素子20から例えば1mm以上10mm以下離れて表示される。表示物は、観察する角度を変化させても、立体的に観察される。光学素子20に入射させる光を発する光源の位置を変化させることで、表示物の明るく観察される部分が変化し得る。表示物がより立体的に観察され得る。表示物の最大の寸法は、例えば1cm以上10cm以下である。
【0012】
以下、
図1、
図3乃至
図7に示された光学素子20の各例について説明する。各例で対応する部分に対しては同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
【0013】
<光学素子の第1の例>
図1に示されている光学素子20の第1の例について説明する。第1の例において、光学素子20は、基材21と、プリズム30と、反射層23と、散乱層25と、をこの順で有している。光学素子20は、反射層23で光を反射させることで、プリズム30の形状による三次元状の表示物を表示できる。散乱層25は、反射層23から離れていてもよいし、反射層23に接していてもよい。
【0014】
第1の例において、光学素子20は、基材21に対するプリズム30の近くから入射した光によって、基材21に対するプリズム30の近くに、三次元状の表示物を表示する。
【0015】
基材21は、プリズム30及び反射層23を支持する。基材21は、透明でもよいし、不透明でもよい。基材21の厚みは、例えば10μm以上10mm以下である。基材21は、例えばインサート成形、インモールド成形等の射出成形により成形されることで作製されてもよい。基材21の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)である。
【0016】
「透明」とは、可視光透過率が、40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600i Plus」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。可視光透過率の測定時における入射角は、特に透過方向が定められていない場合、0°とする。入射角は、入射面への法線方向に対して入射光の進行方向がなす角度であり、90°未満の値となる。
【0017】
図示されている例に限らず、基材21は、省略されていてもよい。例えば、基材21は転写箔の基材として形成されており、光学素子20を作成した後、基材21とプリズム30との間に設けられた図示しない剥離層によって、基材21が剥離されてもよい。
【0018】
プリズム30は、光学的な作用を及ぼす形状を形成する。プリズム30は、透明でもよいし、不透明でもよい。プリズム30は、底面31と、複数のレンズ面32と、複数のライズ面33と、を含んでいる。レンズ面32は、プリズム30を構成する一部の面であり、プリズム30において適切な光学的作用を達成するよう形成されている。図示されている例では、底面31は、基材21に接しており、プリズム30の全体で同一の平面となっている。第1の例において、レンズ面32は、曲面によって構成されている。各レンズ面32は、表示する表示物の表面形状に対応した形状となっている。プリズム30のレンズ面32の全体が、表示する表示物の表面形状の全体に対応した形状となっている。レンズ面32は、底面31に対して傾斜している。ライズ面33は、隣り合うレンズ面32の間または底面31とレンズ面32との間を接続している。ライズ面33は、底面31に対して垂直に延びている。
【0019】
プリズム30の高さ、言い換えるとライズ面33が底面31から延びる長さは、例えば2μm以上5μm以下である。平面視における各レンズ面32の長さ、言い換えると底面31に沿った各レンズ面32の長さは、例えば、3μm以上200μm以下である。プリズム30の高さが十分に大きいので、レンズ面32の間で回折した光は観察されにくい。表示物を明瞭に表示できる。
【0020】
図1に示されている例では、レンズ面32は、曲面によって構成されている。これにより、レンズ面32の形状にしたがった光学的な作用を受けた光によって表示される表示物を、実際の物に近い、丸みを帯びた形状で表示できる。
【0021】
プリズム30の材料は、例えばアクリル、アクリロニトリル、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂である。
【0022】
反射層23は、レンズ面32に向かう光を反射する。反射層23は、プリズム30のレンズ面32を覆うように設けられている。反射層23は、プリズム30の底面31も覆うように設けられていてもよいし、ライズ面33も覆うように設けられていてもよい。反射層23は、レンズ面32を覆う部分において、レンズ面32と同様の表面形状を有している。反射層23は、表示する表示物の表面形状に対応した形状となっている。反射層23の厚みは、例えば0.01μm以上20μm以下である。反射層23は、例えば金属膜による反射層、もしくはプリズム30との屈折率差による反射層である。反射層23の材料は、例えばアルミ等の金属、もしくはZnS等の誘電体である。反射層23は、プリズム30のレンズ面32に金属や誘電体を蒸着させることで形成できる。
【0023】
散乱層25は、透過する光を拡散する。
図1に示されている例では、散乱層25は、レンズ面32が反射層23に覆われたプリズム30を覆うように設けられている。散乱層25は、例えば、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散した光拡散粒子と、を含んでいる。バインダー樹脂は、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂である。光拡散粒子は、例えば、酸化チタン等の白色顔料や、バインダー樹脂とは屈折率の異なる透明樹脂である。あるいは、散乱層25は、表面に凹凸形状が形成された透明樹脂等からなる層であってもよい。
【0024】
散乱層25の光散乱性は、非一様である。言い換えると、散乱層25の少なくとも2箇所において、光散乱性が互いに異なっている。さらに言い換えると、散乱層25の散乱性に分布がある。例えば、光学素子20が表示する表示物に対応して、散乱層25の光散乱性が変化している。具体的な一例として、表示物のうち観察者に対して手前に浮き出て観察される部分に対応する位置では散乱層25の光散乱性を弱くし、観察者に対して奥まって観察される部分に対応する位置では散乱層25の光散乱性を強くする。表示物が三次元状に観察されやすくなる。
【0025】
散乱層25は、省略されていてもよい。散乱層25に変えて、または散乱層25に合わせて、
図2に示すように、レンズ面32には、凹凸形状35が設けられていてもよい。凹凸形状35の高さは、例えば0.1μm以上2μm以下である。レンズ面32に凹凸形状35が設けられていることにより、反射層23にも凹凸形状が設けられる。反射層23に設けられた凹凸形状により、反射層23は、光を散乱させながら反射する。レンズ面32に設けられた凹凸形状35は、複数のレンズ面32の間で非一様であってもよい。言い換えると、少なくとも2つのレンズ面32において、設けられた凹凸形状35の形状が互いに異なっていてもよい。さらに言い換えると、凹凸形状35による散乱性に分布がある。これにより、反射層23に設けられた凹凸形状は、非一様になり、反射層23で反射された光の光散乱性も非一様になる。
【0026】
<光学素子の第2の例>
図3に示されている光学素子20の第2の例について説明する。第2の例において、光学素子20は、第1の例と同様に、基材21と、プリズム30と、反射層23と、散乱層25と、をこの順で有している。
【0027】
第2の例において、プリズム30のレンズ面32の形状が、第1の例におけるものとは異なっている。第2の例において、プリズム30のレンズ面32は、単一の平面または平面の組み合わせによって構成されている。レンズ面32を覆うように設けられた反射層23も、単一の平面または平面の組み合わせによって構成されている。これにより、レンズ面32の形状にしたがった光学的な作用を受けた光によって表示される表示物を、平面を貼り合わせたような、いわゆるポリゴン調の形状で表示しやすくなる。
【0028】
<光学素子の第3の例>
図4に示されている光学素子20の第3の例について説明する。第3の例において、光学素子20は、散乱層25と、基材21と、プリズム30と、をこの順で有している。光学素子20は、プリズム30で光を屈折させることで、プリズム30の形状による三次元状の表示物を表示する。散乱層25は、基材21から離れていてもよいし、基材21に接していてもよい。基材21及びプリズム30は、透明である。
【0029】
第3の例において、光学素子20は、プリズム30より基材21の近くから入射した光によって、基材21よりプリズム30の近くに、三次元状の表示物を表示する。
【0030】
第1の例と同様に、散乱層25は、省略されていてもよい。第3の例において、散乱層25に変えて、または散乱層25と合わせて、あるいはレンズ面32に凹凸形状が設けられることに合わせて、基材21またはプリズム30が散乱物を含んでいてもよい。散乱物は、例えば、基材21またはプリズム30に含有された粒子や繊維、基材21またはプリズム30における結晶構造や屈折率の変調構造でもよい。例えば、粒子の場合、具体的には、シリカや酸化チタンなどの誘電体や銀粒子などの金属でもよい。散乱物により、基材21またはプリズム30を透過する光が拡散する。基材21またはプリズム30において、散乱物は、非一様に分布している。散乱物が非一様に分布することで、散乱物を含む基材21またはプリズム30の光散乱性が非一様になる。
【0031】
<光学素子の第4の例>
図5に示されている光学素子20の第4の例について説明する。第4の例において、光学素子20は、基材21と、プリズム30と、反射層23と、光変調層27と、をこの順で有している。光学素子20は、反射層23で反射した光を光変調層27に透過させることで、色や透明性が位置によって異なり得る三次元状の表示物を表示できる。光変調層27は、反射層23から離れていてもよいし、反射層23に接していてもよい。
【0032】
光変調層27は、透過する光を変調させる。例えば、光変調層27を透過する光は、色や透過率が変化する。光変調層27は、可視光域の波長ごとに、あるいは可視光域の全体の、光の一部を吸収する。これにより、光変調層27は、透過する光の色または透過率を変化させることができる。光変調層27は、色または透過率が非一様であってもよい。言い換えると、光変調層27の少なくとも2箇所において、色または透過率が互いに異なっていてもよい。例えば、光学素子20が表示する表示物の各部分を着色してもよいし、半透明にしてもよい。図示されている例では、光変調層27の第1位置27Aと第2位置27Bとの間で色が異なっている。
【0033】
光変調層27において、色が非一様であるとは、色の明度、彩度、色相の少なくともいずれかが非一様であることを意味する。
【0034】
光変調層27は、薄膜状の部材である。光変調層27は、例えば紙にインクを印刷することで設けられる。印刷されるインクが各位置で異なる色となっていることで、光変調層27は透過する光を変調させることができる。光変調層27の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0035】
<光学素子の第5の例>
図6に示されている光学素子20の第5の例について説明する。第5の例において、光学素子20は、基材21と、光変調層27と、プリズム30と、をこの順で有している。光学素子20は、基材21及び光変調層27を透過した光をプリズム30で屈折させることで、色や透明性が位置によって異なり得る三次元状の表示物を表示できる。基材21及びプリズム30は、透明である。
【0036】
<光学素子の第6の例>
図7に示されている光学素子20の第6の例について説明する。第6の例において、光学素子20は、光変調層27と、基材21と、プリズム30と、をこの順で有している。光学素子20は、光変調層27及び基材21を透過した光をプリズム30で屈折させることで、色や透明性が位置によって異なり得る三次元状の表示物を表示できる。基材21及びプリズム30は、透明である。
【0037】
第1から第6の例の光学素子20について説明したが、各例の構成を適宜に組み合わせることも可能である。例えば、光学素子20は、基材21と、プリズム30と、反射層23と、散乱層25と、光変調層27と、を有していてもよい。
【0038】
図8は、光学素子20の上面視の一例を拡大して示している。
図8に示された光学素子20は、第1から第6の例の光学素子20のいずれでもあり得る。
図8には、光学素子20におけるプリズム30が示されている。プリズム30に含まれる複数のレンズ面32が、底面31からの高さに応じて濃淡で示されている。
図8では、レンズ面32の紙面に対して手前に存在している部分を淡色で、紙面に対して奥に存在している部分を濃色で示している。最も濃色の部分と最も淡色の部分との境界には、紙面の方向に延びるライズ面33が存在する。
【0039】
図8に示されているように、プリズム30は、複数の多角形区域37を含んでいる。多角形区域37は、レンズ面32を部分的に含んでいる。ある多角形区域37において、レンズ面32は、第1方向d1に直線状に延び、且つ第2方向d2に配列されている。第2方向d2は、第1方向d1とは非平行であり、第1方向d1に直交していてもよい。レンズ面32は、第2方向d2に等間隔に配列していてもよい。ある多角形区域37と隣接する別の多角形区域37において、レンズ面32は、第3方向d3に直線状に延び、且つ第4方向d4に配列されている。第3方向d3は、第1方向d1とは異なる方向である。第4方向d4は、第3方向d3とは非平行であり、第3方向d3に直交していてもよい。別の見方をすると、レンズ面32が延びる方向によって、多角形区域37が決定される。同一の方向に延びるように配列されたレンズ面32の集まりが、1つの多角形区域37を画定する。隣接する多角形区域37において、レンズ面32が延びる方向が異なっている。隣接する多角形区域37において、レンズ面32は、接続している。言い換えると、複数の多角形区域37に亘って、レンズ面32は、折れ曲がりながら連続して延びている。レンズ面32の折れ曲がった部分によって、多角形区域37の境界が定められる。
【0040】
各多角形区域37の形状は、三角形、四角形、五角形等、任意である。特に三角形は複数個の間を矛盾なく接続できること、およびCADのデータとして広く用いられていることから望ましい。各多角形区域37の形状は、互いに異なっていてもよい。1つの多角形区域37の面積は、例えば10μm2以上25000000μm2以下である。1つの多角形区域37に含まれるレンズ面32の数は、例えば3個以上100個以下である。
【0041】
各多角形区域37において、複数のレンズ面32は、同一の方向に延びる。レンズ面32に沿って光が光学的な作用を受けることで、表示物が表示される。各多角形区域37に対応して、表示物の表面が多角形形状に表示される。各多角形区域37が、表示される三次元の表示物のポリゴンをなす。
【0042】
表示物を観察する位置を変化させたときに見え方の変化が明確に視認されると、表示物がより立体的に観察され得る。
図9は、表示物を観察する位置を変化させたときの表示物の見え方の違いを説明するための図である。
図9に示されているように、表示物は、光学素子20から明視距離L[mm]程度離れた位置から観察されることが想定されている。表示物を観察する位置を変化させる場合、観察する位置を瞳孔間距離D[mm]程度変化させることが想定されている。観察する位置を変化させたときに強く光を発するように観察されるポリゴンが変化すると、見え方の変化が明確に視認される。以上のことから、明視距離L[mm]程度離れた位置からの観察において、瞳孔間距離D[mm]程度観察する位置を変化させると、強く光を発するように観察されるポリゴンが変化する場合、見え方の変化が明確に視認される。第1位置PAにおいて強く光を発するように観察されるポリゴンをなす第1多角形区域37Aのレンズ面32の法線方向ndAと、第2位置PBにおいて強く光を発するように観察されるポリゴンをなす第2多角形区域37Bのレンズ面32の法線方向ndBと、がなす角度をθ[rad]とする。この場合、上述した条件は、以下の関係(i)のように定式化される。
2×θ×L≧D/2 ・・・(i)
【0043】
一般に、明視距離Lは、250mmであり、瞳孔間距離Dは、65mmである。関係(i)から、θの範囲は以下の関係(ii)のようになる。
θ≧0.065rad≒3.7° ・・・(ii)
【0044】
関係(ii)を満たす多角形区域37の割合が多いほど、表示物を観察する位置を変化させたときに見え方の変化が大きくなり、表示物がより立体的に観察される。具体的には、関係(ii)を満たす多角形区域37におけるレンズ面32の面積の総和が、プリズム30全体の面積、言い換えるとレンズ面32の面積の総和の10%以上、好ましくは20%以上であると、表示物がより立体的に観察される。
【0045】
図8に示されている例に限らず、プリズム30は、多角形区域37を含まなくてもよい。レンズ面32は、上面視において曲線状に延びていてもよい。
【0046】
上述した光学素子20は、導光板10に含まれていてもよい。
図10乃至
図12には、光学素子20を含む導光板10の例が示されている。導光板10は、全体的に、一対の主面を有する相対的に厚み方向の辺が他の辺よりも小さい直方体状の部材として構成されており、一対の主面間に画成される側面は四つの面を含んでいる。導光板10の厚さ、言い換えると導光板10の一対の主面間の長さは、例えば100μm以上5cm以下である。
【0047】
導光板10は、一方の主面によって構成された上述した出光面11と、出光面11に対向するもう一方の主面からなる裏面12と、出光面11および裏面12の間を延びる側面と、を有している。一方の側面が入光面13をなしている。入光面13に対面して光源5が設けられている。入光面13から導光板10内に入射した光は、入光面13に対向する反対面14に向けて、導光板10内を進む。
【0048】
<導光板の第1の例>
図10に示された導光板10の第1の例では、光学素子20は、導光板10の内部に配置されている。第1の例において、光源5からの光は、導光板10の出光面11及び裏面12で反射されながら、導光板10の内部を進む。光は、光学素子20のプリズム30に入射すると、プリズム30のレンズ面32の形状に沿って光学的な作用を受ける。これにより、光は、出光面11に全反射臨界角度未満で入射して、出光面11から出射する。出射した光は、レンズ面32の形状により、三次元状の表示物を表示する。
【0049】
<導光板の第2の例>
図11に示された導光板10の第2の例では、光学素子20のプリズム30は、導光板10と一体化している。光学素子20において、基材21は省略されている。プリズム30のレンズ面32は、導光板10の裏面12と一体化している。図示された例に限らず、レンズ面32は、導光板10の出光面11と一体化していてもよい。第2の例において、光源5からの光は、導光板10の出光面11及び裏面12で反射されながら、導光板10の内部を進む。光は、導光板10の表面のレンズ面32に入射すると、プリズム30のレンズ面32の形状に沿って光学的な作用を受ける。これにより、光は、出光面11に全反射臨界角度未満で入射して、出光面11から出射する。出射した光は、レンズ面32の形状により、三次元状の表示物を表示する。
【0050】
<導光板の第3の例>
図12に示された導光板10の第3の例では、光学素子20のプリズム30は、導光板10と一体化している。
図12には、第1導光板10A、第2導光板10B及び第3導光板10Cの3つの導光板10が示されている。第1導光板10Aの入光面に対面して、第1光源5Aが配置されている。第2導光板10Bの入光面に対面して、第2光源5Bが配置されている。第3導光板10Cの入光面に対面して、第3光源5Cが配置されている。第1光源5A、第2光源5B及び第3光源5Cが発する光は、それぞれ異なる色であってもよい。例えば、第1光源5Aは赤色の光を発し、第2光源5Bは緑色の光を発し、第3光源5Cは青色の光を発する。各導光板は、第2の例の導光板と同様の構成を有している。第2の例と同様に、第1光源5Aからの光は、第1導光板10Aの出光面及び裏面で反射されながら第1導光板10Aの内部を進み、第1プリズム30Aの第1レンズ面32Aの形状に沿って光学的な作用を受ける。第2光源5Bからの光は、第2導光板10Bの出光面及び裏面で反射されながら第2導光板10Bの内部を進み、第2プリズム30Bの第2レンズ面32Bの形状に沿って光学的な作用を受ける。第3光源5Cからの光は、第3導光板10Cの出光面及び裏面で反射されながら第3導光板10Cの内部を進み、第3プリズム30Cの第3レンズ面32Cの形状に沿って光学的な作用を受ける。プリズムのレンズ面の形状に沿って光学的な作用を受けた光は、出光面に全反射臨界角度未満で入射して、出光面から出射する。出射した光は、レンズ面の形状により、三次元状の表示物を表示する。第1導光板10A、第2導光板10B及び第3導光板10Cの平面視において、レンズ面が設けられた位置は互いに重なっておらず、ずれている。各導光板10からの光は他の導光板によって光学的な作用を受けにくい。これにより、複数の色の光によって三次元状の表示物を表示できる。あるいは、第1導光板10A、第2導光板10B及び第3導光板10Cの平面視において、レンズ面が設けられた位置の一部は、互いに重なっていてもよい。これにより、複数の色が混色した光によって三次元状の表示物を表示できる。例えば、フルカラーの三次元状の表示物を表示できる。
【0051】
光学素子20の製造方法の一例について説明する。
【0052】
光学素子20を用いて表示される表示物のデータを用意する。
図13には、表示物のデータの例として、ポットの形状のデータが示されている。表示物のデータは、立体的である。言い換えると、表示物のデータは、平面的な情報だけでなく、高さの情報も含んでいる。表示物のデータは、CAD(Computer Aided Design)によって作成される。
【0053】
表示物のデータから、作成するレンズ面の形状のデータを作成する。レンズ面に急斜面が形成されることを抑制するため、表示物のデータの高さの情報を圧縮する。これにより、レンズ面を容易に形成できる。表示物のデータの高さ情報は、例えば1/3になる。表示物のデータを一定の高さごとに区切って、帯状データを形成する。帯状データの高さ情報は、例えば2μm以上5μm以下である。表示物が三次元状に表示される部分、言い換えると帯状データの高さの情報を含んでいる部分において、帯状データの高さの情報に凹凸形状の情報が加算される。凹凸形状の情報は、例えば高さが0.1μm以上2μm以下である。凹凸形状の情報が加算された帯状データの情報を、階調化する。具体的には、凹凸形状の情報が加算された帯状データの情報のうち、高さの情報が最も低いものを0とし、高さの情報が最も高いものを255とする。高さの情報が最も低いものと最も高いものとの間を255分割し、高さの情報が最も低いものと最も高いものとの間の数値を決定する。これらの数値により、帯状データが階調化される。
【0054】
階調化された帯状データに基づいて、ガラス基板上にプリズムの原版を作製する。ガラス基板上に、レジストを塗布する。レジストにレーザーを照射して露光する。照射するレーザーの強度は、階調化された帯状データに基づいて変化させる。例えば、階調化された帯状データの数値が高いものほど、露光する強度を強くする。これにより、階調化された帯状データに基づいた形状のプリズムの第一原版が作製される。プリズムの第一原版の形状は、表示物のデータに基づいている。プリズムの第一原版に、例えばニッケルのメッキを施した後に剥離することにより第二原版を作製する。
【0055】
基材上に設けられた紫外線硬化樹脂に、プリズムの第二原版の形状を複製する。例えば、基材上に設けられた硬化前の紫外線硬化樹脂に、プリズムの第二原版を押し当てる。紫外線硬化樹脂が、プリズムの第二原版の形状を反映した形状となる。紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化させる。硬化した紫外線硬化樹脂が、プリズムとなる。プリズムの原版の形状によって、レンズ面とライズ面とが形成される。基材上にプリズムが作製される。
【0056】
レンズ面を覆うように、金属を蒸着させる。蒸着させる金属は、例えばアルミである。蒸着させる金属の厚みは、例えば0.01μm以上20μm以下である。蒸着させた金属により、反射層が形成される。
【0057】
以上の工程で、光学素子20の第1の例を製造できる。
【0058】
基材上にプリズムを作製した後、表示物のデータに基づいて紙にインクを印刷することで作製された光変調層を、レンズ面に合わせて配置してもよい。これにより、光学素子20の第4の例乃至第6の例を製造できる。
【0059】
図14は、従来の光学素子を用いて表示されると想定される表示物の例のシミュレーションである。
図14に示されている表示物を表示する光学素子において、基材及びプリズムは散乱物を含んでおらず、レンズ面に凹凸形状は設けられておらず、当該光学素子は散乱層を有していない。光学素子の正面方向に対して15°をなす方向から光を照射している。
【0060】
光学素子に照射された光がレンズ面で光学的な作用を受けることで、三次元状の表示物を表示することはできる。表示物は、正面方向、言い換えると光学素子の法線方向から観察される。
図14に示されている例の表示物を表示する光学素子では、光学素子に照射された光は、十分には散乱しない。表示物の意匠性が低くなっている。
【0061】
図15は、本実施の形態の光学素子20を用いて表示されると想定される表示物の例のシミュレーションである。
図15に示されている表示物を表示する本実施の形態の光学素子20において、基材21及びプリズム30は散乱物を含んでいる、及び/又は、レンズ面32には凹凸形状が設けられている、及び/又は、当該光学素子20は散乱層25を有している。
図14に示した例と同様に、正面方向に対して15°をなす方向から光を照射している。
【0062】
光学素子20に照射された光がレンズ面32で光学的な作用を受けることで、三次元状の表示物が表示される。表示物は、正面方向、言い換えると光学素子20の法線方向から観察される。光学素子20が散乱する要素を含んでいることで、光学素子20に照射された光は、十分に散乱する。
図14と
図15との比較から理解されるように、光学素子20で光を散乱させることで、光学素子20を用いて表示される三次元状の表示物の意匠性を高めることができる。光が十分に散乱していることで、異なる角度からでも表示物が観察されやすくなる。
【0063】
図16は、本実施の形態の光学素子20を用いて実際に観察された三次元状の表示物の一例である。
図16に示された表示物は、光学素子20に対して、特定方向の光源でなく、室内照明による光を照射することで表示されている。
図16に示されているように、本実施の形態の光学素子20を用いることで、意匠性の高い三次元状の表示物を表示できる。
【0064】
レンズ面32に凹凸形状35が設けられている場合、凹凸形状35は、複数のレンズ面32の間で非一様である。光学素子20を用いて表示される表示物に合わせて、凹凸形状35による光散乱性を変化させることができる。これにより、表示物の意匠性をより高めることができる。
【0065】
基材21またはプリズム30が散乱物を含む場合、散乱物は、基材21またはプリズム30において、非一様に分布している。光学素子20を用いて表示される表示物に合わせて、散乱物による光散乱性を変化させることができる。これにより、表示物の意匠性をより高めることができる。
【0066】
光学素子20が散乱層25を有する場合、散乱層25の散乱性は、非一様である。光学素子20を用いて表示される表示物に合わせて、散乱層25による光散乱性を変化させることができる。これにより、表示物の意匠性をより高めることができる。
【0067】
プリズム30は、多角形区域37を含んでいる。多角形区域37に対応して、表示物の表面が多角形形状に表示される。表示物がポリゴン状に表示される。これにより、表示物の意匠性をより高めることができる。かつ、単純な算法でプリズム30のレンズ面32の形状を計算できるので、レンズ面32の形状のデータを作成する工程が容易になる。光学素子20の製造コストを低減できる。
【0068】
隣接する多角形区域37において、レンズ面32は、接続している。隣接する多角形区域37のレンズ面32の間に段差がないので不要な回折が発生せず、表示物を明瞭に観察できる。表示物の意匠性の低下を抑制できる。
【0069】
レンズ面32の法線方向が隣接するいずれかの多角形区域37のレンズ面32の法線方向と3.7°以上の角度をなす多角形区域37におけるレンズ面32の面積の総和は、プリズム30全体のレンズ面32の面積の総和の10%以上である。法線方向が隣接するいずれかの多角形区域37の法線方向と3.7°以上の角度をなす多角形区域37は、観察する位置を変化させたときに見え方の変化が明確になる表示物の部分に対応する。そのような多角形区域37が十分に多いことで、表示物を観察する位置を変化させたときに見え方の変化が明確になり、表示物をより立体的に観察させることができる。表示物の意匠性をより高めることができる。
【0070】
光学素子20は、色または透過率が非一様である光変調層27を有する。光学素子20を用いて表示される表示物に合わせて、光変調層27による色や透過率を変化させることができる。これにより、表示物の意匠性をより高めることができる。
【0071】
光学素子20は、レンズ面32を覆うように設けられた反射層23を有する。反射層23で光を反射させることで、光学素子20に光が入射する方向と同じ方向に表示物を表示できる。
【0072】
本実施の形態の光学素子20は、三次元状の表示物の表示に用いられる。光学素子20は、底面31と、底面31に対して傾斜した複数のレンズ面32と、を含むプリズム30を備える。レンズ面32には、凹凸形状35が設けられている。あるいは、プリズム30は、散乱物を含む。あるいは、プリズム30に重ねられた散乱層25をさらに備える。あるいは、色または透過率が非一様である光変調層27をさらに備える。本実施の形態の光学素子20によれば、光を散乱させること、または色や透過率を位置によって調整することで、表示される表示物の意匠性を高めることができる。
【0073】
上述した実施の形態に対して、様々な変更を加えることが可能である。
【0074】
例えば、上述した実施の形態において、反射層23を部分反射層に変更してもよい。部分反射層は、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過する。部分反射層の反射率は、例えば10%以上90%以下であり、好ましくは30%以上70%以下であり、部分反射層の透過率は、例えば10%以上90%以下であり、好ましくは30%以上70%以下である。部分反射層は、例えば、レンズ面32に蒸着させる金属の膜厚を薄くすることで作製できる。部分反射層により、表示物を表示しながら、表示物に光を透過させることができる。表示物が例えばガラスのような透明な材料からなるように観察される。表示される表示物の意匠性を高めることができる。
【0075】
上述した実施の形態において、プリズム30のレンズ面32は、上面視からの観察において、
図17に示したように、ある閉曲線に沿って配列されていてもよい。このようなレンズ面32を有する光学素子20によれば、上り又は下りがループする、いわゆる無限階段のような表示物を表示できる。光学素子20により、意匠性の高い表示物を表示できる。
【符号の説明】
【0076】
5 光源
10 導光板
20 光学素子
21 基材
23 反射層
25 散乱層
27 光変調層
30 プリズム
31 底面
32 レンズ面
33 ライズ面
35 凹凸形状
37 多角形区域