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  • 特開-育苗用保護カバー及びその製造方法 図1
  • 特開-育苗用保護カバー及びその製造方法 図2
  • 特開-育苗用保護カバー及びその製造方法 図3
  • 特開-育苗用保護カバー及びその製造方法 図4
  • 特開-育苗用保護カバー及びその製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097672
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】育苗用保護カバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/08 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A01G9/08 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001298
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】305055954
【氏名又は名称】窪田 健哉
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】窪田 健哉
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC08
2B327NC37
2B327NC39
2B327NC51
2B327ND03
2B327QC38
2B327VA20
(57)【要約】
【課題】 複数のキャビティが連結されて成る樹脂製のキャビティコンテナを使用して効率的に育苗することができると共に、苗や根を傷めることなく容易に生育途中の苗の入れ替え作業や運搬作業ができる育苗用保護カバー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 キャビティコンテナ10のキャビティ11内に配設される育苗用保護カバー1は、略扇形状をなすシート状部材2と、シート状部材2の下端縁6から下方に延設された帯状部材7を含んで構成され、シート状部材2を筒状にして両側縁部4、4を接合して側壁部8を形成するとともに、帯状部材7の下端部7aを、帯状部材7の延設部7bと相対する位置の側壁部8に接合して底壁部9を形成した。また、育苗用保護カバー1の製造方法では、ポリ乳酸を原材料とする育苗用保護カバー用材を準備し、ハンマーによる打撃によって側壁部8及び底壁部9を形成している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティコンテナのキャビティ内に配設される育苗用保護カバーであって、
略扇形状をなすシート状部材と、
前記シート状部材の下端縁から下方に延設された帯状部材と、
を含んで構成され、
前記シート状部材を筒状にして両側縁部を接合して側壁部を形成するとともに、前記帯状部材の下端部を、前記帯状部材の延設部と相対する位置の前記側壁部に接合して底壁部を形成したことを特徴とする育苗用保護カバー。
【請求項2】
前記シート状部材及び前記帯状部材の原材料がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の育苗用保護カバー。
【請求項3】
キャビティコンテナのキャビティ内に配設される育苗用保護カバーの製造方法であって、
ポリ乳酸を原材料とし、略扇形状をなすシート状部材と、該シート状部材の下端縁から下方に延設された帯状部材とを含んで構成される育苗用保護カバー用材を準備する工程と、
前記シート状部材を筒状にし、両側縁部を重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して側壁部を形成する側壁部形成工程と、
前記帯状部材の下端部を、前記帯状部材の延設部と相対する位置の前記側壁部に重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して底壁部を形成する底壁部形成工程と、
を含んで成ることを特徴とする育苗用保護カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は育苗用の保護カバーに関し、特にキャビティコンテナによって樹木の苗木を育苗するのに好適な育苗用保護カバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杉や桧、松、とど松、唐松、山紅葉等の樹木の苗木作りは露地栽培が一般的であるため、植え付け作業は春または秋という季節に限定されていたが、最近では複数のキャビティが連結されて成る樹脂製の育苗用容器、いわゆるキャビティコンテナを使用することにより、育苗作業の効率化が図られると共に、年間を通して植え付け作業が可能となっている。
【0003】
また、従来の樹脂製の育苗用容器に代わる種々の育苗用容器も開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。特許文献1に開示された育苗用容器は、縫い糸で縫製されたポリ乳酸布帛を用いた育苗用容器であって、縫い糸で縫製した縫製部分が任意に解舒可能であることを特徴とする。当該構成を備える特許文献1に係る育苗用容器によると、任意に育苗用容器が解舒可能であり、植物の根詰まりが少なく、成長を妨げない育苗用容器を得ることができる旨、記載されている。
【0004】
また、特許文献2に開示された植物栽培用袋は、透液性を有すると共に、栽培植物の根の貫通を阻止し得る程度の微細な孔隙を有するシート状素材から袋状に形成されてなることを特徴とする。このようにして形成された特許文献2に係る植物栽培用袋内に土を充填して、植物を植え込み、且つこの植物栽培用袋を地面に埋設する。移植の際には、植物栽培用袋を取り出すのみでよく、根回し作業が不要となる旨、記載されている。
【0005】
更に、本願発明者は、特許文献3において、育苗用容器のポット内に配設される育苗用保護カバーであって、略扇形状をなすシート状部材で構成され、前記シート状部材を筒状にして前記ポットに内設されることを特徴とする育苗用保護カバーを開示している。この特許文献3に開示した育苗用保護カバーによると、複数のポットが連結されて成る樹脂製の育苗用容器を使用して効率的に育苗することができると共に、苗や根を傷めることなく容易に生育途中の苗の入れ替え作業ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-139122号公報
【特許文献2】実開平05-29357号公報
【特許文献3】特開2019-47735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の複数のキャビティが連結されて成る樹脂製の育苗用容器(キャビティコンテナ)を使用して育苗を行った場合、各キャビティ内で育苗された苗は不揃いに生長するため、育苗途中でキャビティから抜き取り、生長具合が揃った苗同士の入れ替え作業が必要となる。
【0008】
しかし、キャビティ内で苗が生長して根が張ると、苗をキャビティから抜き取ることが非常に困難となる。また、抜き取りが困難となった苗を無理に抜き取ると、苗や根を傷めたり、根鉢が崩れたりするおそれがある。
【0009】
そこで、例えば特許文献1に係る育苗用容器によると、任意に育苗用容器を解舒することができるため、植物の根詰まりは少なくなるものと思料する。
【0010】
また、特許文献2に係る植物栽培用袋も、移植の際には植物を地面から植物栽培用袋ごと取り出すため、従来の樹脂製の育苗用容器を使用する場合と違って、移植の際に植物や根を傷めるおそれがない。
【0011】
しかし、特許文献1に係る育苗用容器や特許文献2に係る植物栽培用袋は、これら育苗用容器内、植物栽培用袋内に培土を充填して播種、或いは小苗を移植した後、地面に埋設される。従って、樹木の苗木栽培においては、従来の露地栽培と代わるところがなく、植え付け作業の時期が限られる。
【0012】
また、特許文献1に係る育苗用容器及び特許文献2に係る植物栽培用袋は何れも地面に埋設して使用するものであるため、移植する場合にはそれぞれの容器(袋)の周囲の土を丁寧に掘る必要があり、非常に手間が掛かる。
【0013】
更に、地面に埋設して育苗するため、生長具合を揃えるための苗の植え替え作業を行うことも略不可能である。
【0014】
その点、特許文献3で開示した育苗用保護カバーは、樹脂製の育苗用容器を使用して効率的に育苗することができると共に、苗や根を傷めることなく容易に生育途中の苗の入れ替え作業ができる。
【0015】
しかしながら、苗の入れ替え作業時や植樹する際に根鉢の底部分が崩れる場合があり、根鉢の崩壊を防止する手段が求められていた。特に、近年ではドローンによる苗木の運搬が行われており、搬送中における根鉢の崩壊防止手段が強く求められている。
【0016】
更には、従来の樹脂製の育苗用ポットを使用したポット苗では、鉢底の隅で根巻きや根の変形が激しく、そのまま植樹すると成長不良や根腐れ、枯死にまで至る危険があるため、キャビティコンテナを使用したコンテナ苗が好ましい。しかし、コンテナ苗の根鉢は崩れやすいため、苗の入れ替え作業時や搬送時、植樹時における根鉢の成型性を確保することが重要となる。そのため、コンテナ苗に好適であって、根鉢の成型性をしっかりと確保できる手段が求められている。
【0017】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、複数のキャビティが連結されて成る樹脂製の育苗用容器、いわゆるキャビティコンテナを使用して効率的に育苗することができると共に、苗や根を傷めることなく容易に生育途中の苗の入れ替え作業や運搬作業ができる育苗用保護カバー及びその製造方法を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明は、キャビティコンテナのキャビティ内に配設される育苗用保護カバーであって、略扇形状をなすシート状部材と、前記シート状部材の下端縁から下方に延設された帯状部材と、を含んで構成され、前記シート状部材を筒状にして両側縁部を接合して側壁部を形成するとともに、前記帯状部材の下端部を、前記帯状部材の延設部と相対する位置の前記側壁部に接合して底壁部を形成したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の育苗用保護カバーにおいて、前記シート状部材及び前記帯状部材の原材料がポリ乳酸であることを特徴とする。
【0020】
更に、本発明は、キャビティコンテナのキャビティ内に配設される育苗用保護カバーの製造方法であって、ポリ乳酸を原材料とし、略扇形状をなすシート状部材と、該シート状部材の下端縁から下方に延設された帯状部材とを含んで構成される育苗用保護カバー用材を準備する工程と、前記シート状部材を筒状にし、両側縁部を重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して側壁部を形成する側壁部形成工程と、前記帯状部材の下端部を、前記帯状部材の延設部と相対する位置の前記側壁部に重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して底壁部を形成する底壁部形成工程と、を含んで成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の育苗用保護カバーによると、複数のキャビティが連結されて成る樹脂製の育苗用容器、いわゆるキャビティコンテナを使用して効率的に育苗することができる。
【0022】
特に、各キャビティ内で生長した苗を移植する際、キャビティと培土との間に本発明の育苗用保護カバーが介在しているため、キャビティから容易に苗を抜き取ることができる。従って、育苗途中で生長具合が不揃いとなった際、苗や根を傷めることなく、苗の入れ替え作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、キャビティから苗を抜き取る際に、本発明の育苗用保護カバーによって根鉢が保護されるとともに、底壁部によって根鉢の底部を支持することができるため、根鉢が崩れたり、根を傷めたりするおそれもない。
【0024】
更に、通常の樹脂製のキャビティコンテナは黒いため、夏場はキャビティ内が高温となるが、本発明の育苗用保護カバーが保水した状態で根鉢を保護しているため、キャビティの冷却効果及び断熱効果が得られる。一方、冬場は本発明の育苗用保護カバーによる保温効果が得られる。
【0025】
また、キャビティから抜き取った苗の根鉢が本発明の育苗用保護カバーによって保護されているため、出荷用に複数の苗を一纏めにする際も容易に荷造りが行えると共に、出荷後における根鉢の保護及び根鉢の乾燥を抑制することもできる。特に、ドローンによる植樹場所への搬送時においても、底壁部を備える本発明の育苗用保護カバーによって、根鉢の成型性が十分に確保されることとなる。
【0026】
また、本発明の育苗用保護カバーにおいて、シート状部材及び帯状部材の原材料がポリ乳酸であることによって、キャビティコンテナが備える各キャビティで生長した苗の根に育苗用保護カバーを巻いたままの状態で地面に植樹することができ、植樹時における根の損傷や根鉢の崩れを防止することができると共に、植樹作業の効率化を図ることができる。
【0027】
更に、本発明の育苗用保護カバーの製造方法によると、ポリ乳酸を原材料とする育苗用保護カバー用材を使用するとともに、シート状部材を筒状にして、その両側縁部を重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して側壁部を形成し、帯状部材の下端部を、帯状部材の延設部と相対する位置の側壁部に重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して底壁部を形成することができる。つまり、非常に簡単な方法で育苗用保護カバーを製造することができ、特殊な製造装置等を必要とせず、樹脂製の育苗用ポットに比べて低コストで本発明の育苗用保護カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る育苗用保護カバーを示す平面図である。
図2】(a)は図1に示した育苗用保護カバーを筒状にした状態を示す斜視図、(b)は平面図である。
図3】(a)は図1に示した育苗用保護カバーをキャビティコンテナに係るキャビティに内設した状態を示す斜視図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
図4図1に示した育苗用保護カバーを使用した育苗方法を示す説明図である。
図5図4に示した苗をキャビティから抜き取った状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の育苗用保護カバーの実施形態について、図面に基づいて詳述する。図1は、本発明の一実施形態に係る育苗用保護カバー1を示す平面図、図2(a)は育苗用保護カバー1を筒状にした状態を示す斜視図、同図(b)は平面図である。まず図1に示すように、本実施形態に係る育苗用保護カバー1は、キャビティコンテナ10のキャビティ11内(図3参照。)に配設される育苗用保護カバーであって、略扇形状をなすシート状部材2と、シート状部材2の下端縁6から下方に延設された帯状部材7とを含んで構成されている。
【0030】
本実施形態に係る育苗用保護カバー1は、図2(a)に示すように、シート状部材2を筒状にして両側縁部4、4を重ね合わせて接合し、育苗用保護カバー1に係る側壁部8を形成する。シート状部材2を筒状にして両側縁部4、4を接合することによって、シート状部材2に係る上端縁5で上部開口5aが形成され、下端縁6で底部開口6aが形成されることとなる。なお、両側縁部4、4は、使用するキャビティコンテナ10に係るキャビティ11のサイズに合わせて接合しているが、両側縁部4、4の接合方法については後述する。
【0031】
また、本実施形態に係る育苗用保護カバー1では、帯状部材7の下端部7aを、帯状部材7の延設部7bと相対する位置の側壁部8に接合することによって、育苗用保護カバー1に係る底壁部9を形成したことを特徴とする。図2(b)に示すように、帯状部材7によって底壁部9を形成することによって、シート状部材2に係る下端縁6で形成された底部開口6aの一部が塞がれるため、育苗用保護カバー1内で成型された根鉢の成型性の大幅な向上が図られる。
【0032】
本実施形態に係る育苗用保護カバー1は、図3に示すように、複数のキャビティ11が連結されて成る樹脂製のキャビティコンテナ10(育苗用容器)に係る各キャビティ11内に配設される。各キャビティ11内に育苗用保護カバー1を配設し、上端縁5で形成された上部開口5aから培土を充填した後、播種或いは小苗が移植される。
【0033】
各キャビティ11内で育苗された苗は、最終的に地面に定植されることとなるが、各キャビティ11の内周面と培土との間には、本実施形態の育苗用保護カバー1が介在されており、各キャビティ11内で育苗された苗の根は、本実施形態に係る育苗用保護カバー1によって根巻きされたような状態となっている。
【0034】
ここで、複数のキャビティ11を備えるキャビティコンテナ10(育苗用容器)を使用して複数の苗を一度に育苗する際、苗の生長にバラツキが生じる場合がある。例えば、キャビティコンテナ10におけるキャビティ11の位置によって苗の生長にバラツキが生じる場合、具体的には図4(a)に示すように、複数のキャビティコンテナ10において生長のよい苗20と、生長が後れている苗21が混在している場合、キャビティコンテナ10に係るキャビティ11の内周面と培土との間に育苗用保護カバー1が介在されているため、図5に示すように、苗20、21を容易に抜き取ることができ、苗20と苗21を入れ替えて生長具合を揃えることが可能となる。従って、例えば図4(b)に示すように、成長のよい苗20と生長が後れている苗21とに分けてそれぞれ纏めることができるため、生長が後れている苗21の生長を待つことなく、早期に出荷することも可能となる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る苗用保護カバー1によると、複数のキャビティ11が連結されて成る樹脂製のキャビティコンテナ10を使用して効率的に育苗することができる。特に、各キャビティ11内で生長した苗を移植する際、キャビティ11の内周面と培土との間に本実施形態に係る育苗用保護カバー1が介在しており、且つ底壁部9によって根鉢の底部が支持されるため、図5に示すように、キャビティ11から容易に苗20、21を抜き取ることができる。従って、育苗途中で生長具合が不揃いとなった場合も、苗や根を傷めることなく苗の入れ替え作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、キャビティ11から苗20、21を抜き取る際に、本実施形態の育苗用保護カバー1によって根鉢が保護されているため、根鉢が崩れたり、根を傷めたりするおそれもない。特に、本実施形態の育苗用保護カバー1には帯状部材7によって底壁部9が形成されているため、根鉢の底部を底壁部9によって支持することができ、根鉢の崩れや根の損傷をより一層、防止することができる。
【0037】
更に、抜き取った苗20、21の根鉢が本実施形態の育苗用保護カバー1によって保護されているため、出荷用に複数の苗を一纏めにする際も容易に荷造りが行えると共に、出荷後も根鉢の保護及び乾燥の抑制を図ることもできる。特に、ドローンによる植樹場所への搬送時においても、底壁部9を備える本実施形態の育苗用保護カバー1によって、根鉢の成型性が十分に確保されることとなる。
【0038】
また更に、本実施形態の育苗用保護カバー1は根を保護すると共に培土を包んだ状態となっているため、キャビティ11内において育苗用保護カバー1が断熱材の役割を果たす。従って、通常の樹脂製のキャビティコンテナ(育苗用容器)は黒いため、夏場はキャビティ11内が高温となるが、本実施形態の育苗用保護カバー1が保水した状態で根鉢を保護しているため、キャビティ11の冷却効果及び断熱効果が得られる。また、冬場には保温効果が得られ、これら時期に応じた冷却・断熱・保温効果が得られることによって、苗の生長を促進する効果が得られる。
【0039】
また、本実施形態の育苗用保護カバー1をキャビティコンテナ10に係るキャビティ11内に配設することによって、培土の水分調整が容易となる。育苗用保護カバー1によって培土の保水性が良好となるため、必要以上の潅水が防止できると共に、肥料の流出も防止できる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態に係る育苗用保護カバー1について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば、本発明の育苗用保護カバーにおいて、育苗用保護カバーを構成するシート状部材及び帯状部材の原材料は特に限定されないが、シート状部材及び帯状部材の原材料はポリ乳酸であることがより好ましい。ポリ乳酸は、植物由来の生分解性プラスチックであって、本発明の育苗用保護カバーに係るシート状部材及び帯状部材の原材料をポリ乳酸とすることによって、例えば図5に示したように、キャビティコンテナ10が備える各キャビティ11で生長した苗20の根に育苗用保護カバー1を巻いたままの状態で地面に移植することができ、移植時における根の損傷や根鉢の崩れを防止することができると共に、移植作業の効率化を図ることができる。
【0041】
また、本発明の育苗用保護カバーにおいて、シート状部材に係る側縁部の長さ、帯状部材の長さや幅、シート状部材に係る上端縁及び下端縁の曲率や弧長についても、使用するキャビティコンテナが備えるキャビティのサイズに応じて適宜、設定されるものであって、特に限定されるものではない。
【0042】
次に、本発明の育苗用保護カバーの製造方法の実施形態について詳述する。図2に示した本実施形態の育苗用保護カバー1を製造するにあたっては、まず略扇形状をなすシート状部材2と、シート状部材2の下端縁6から下方に延設された帯状部材7とを含んで構成される育苗用保護カバー用材を準備する。このシート状部材2と帯状部材7とを含んで構成される育苗用保護カバー用材はポリ乳酸を原材料としており、育苗用保護カバー用材の準備工程では、ポリ乳酸シートから図1に示したシート状部材2と帯状部材7とを含んで構成される育苗用保護カバー用材の形状に型抜きすることによって育苗用保護カバー用材を準備する。
【0043】
続く側壁部形成工程では、育苗用保護カバー用材に係るシート状部材2を筒状にし、両側縁部4、4を重ね合わせてハンマーによる打撃によって接合して側壁部8を形成する。本実施形態では、育苗用保護カバー用材(シート状部材2+帯状部材7)の原材料をポリ乳酸とすることによって、ハンマーによる打撃のみで容易に両側縁部4、4の重なり部分を接合することができる。例えば、図2(a)に示すように、シート状部材2に係る両側縁部4、4の重なり部分において、ハンマーによる打撃によって複数箇所の接合部12、12を設ける。
【0044】
なお、接合部12の形成数は特に限定されず、側縁部4の長さ(=キャビティ11の深さ)に応じて適宜、設定することができるが、3~5カ所ほど設ければ十分であるものと思料する。また、接合部12における接合強度は溶着等に比べて弱く、接合部12は手で簡単に剥がすこともできるが、育苗用保護カバー1の形状保持性としては十分であり、キャビティコンテナ10に係るキャビティ11に配設するにあたって何ら問題はない。
【0045】
そして、最後の底壁部形成工程において、帯状部材7の下端部7aを、帯状部材7の延設部7bと相対する位置の側壁部8に重ね合わせて、ハンマーによる打撃によって接合して底壁部9が形成され、本実施形態の育苗用保護カバー1が得られる。ここでも、帯状部材7の原材料がポリ乳酸であるため、側壁部8を形成する場合と同様に、ハンマーによる打撃のみによって、帯状部材7の下端部7aを側壁部8に接合することができる。
【0046】
なお、本実施形態の育苗用保護カバー1の製造方法では、側壁部形成工程において、両側縁部4、4を接合部12で接合して側壁部8を形成し、続く底壁部形成工程において、帯状部材7の下端部7aと側壁部8を接合部12で接合して底壁部9を形成している。しかし、例えば両側縁部4、4の重なり部分の最下部においては、両側縁部4、4を重ねるとともに、帯状部材7の下端部7aを重ね合わせ、これらを纏めてハンマーで打撃することによって、両側縁部4、4及び帯状部材7の下端部7aを一体化した接合部12を形成することができる。ただし、当該態様を実施するためには、図1に示したように、帯状部材7をシート状部材2の下端縁6における中央部分に形成しておく必要がある。
【0047】
以上、本発明の育苗用保護カバー及び育苗用保護カバーの製造方法の実施形態について詳述したが、上記の実施形態は本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0048】
1:育苗用保護カバー
2:シート状部材
4:側縁部
5:上端縁
6:下端縁
7:帯状部材
7a:下端部
7b:延設部
8:側壁部
9:底壁部
10:キャビティコンテナ
11:キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5