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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097675
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/891
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001306
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 蓉子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC712
4C083AD092
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】肌への適用後すぐに透明感を付与することができ、べたつき感が少なく、保湿感を感じることのできる水中油型乳化粧料を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)~(C)を含有する水中油型乳化化粧料。
(A)スクレロチウムガム
(B)ホスホリルコリン基含有両性ポリマー
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(A)スクレロチウムガム
(B)ホスホリルコリン基含有両性ポリマー
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油
【請求項2】
(B)が、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61のいずれか、または両方である請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料として、肌に透明感を与えるものが求められている。
透明感を付与する化粧料として、光輝性粉体を配合したものが知られている。例えば、特許文献1には、(A)ガラスフレークに1種又は2種以上の着色剤が層状に被覆され、平均粒径が1~100μmである着色光輝性真珠光沢ガラスフレーク、(B)ポリオキシエチレンメチルグルコシドを含有する乳化化粧料が提案されている。
特許文献1に記載の化粧料は、透明感があり、瑞々しい仕上がりが得られるが、(A)成分のガラスフレークが薄いため、尖った部分が皮膚刺激になるなどの問題があった。
特許文献2には、(A)フィラグリン産生促進剤、(B)タンニン含有植物抽出物を含有する化粧料が提案されている。
特許文献2に記載の化粧料は、(A)、(B)を有効成分とし、これらが肌に作用することで肌の透明感が向上するものである。そのため、透明感の向上効果を感じるまでに時間を要するという問題がある。
【0003】
また、高屈折率の油剤を配合することで、透明感を付与する化粧料が知られている。例えば、特許文献3には、12-ヒドロキシステアリン酸と油分からなる屈折率1.45~1.54の透明性基剤を用いた固形化粧料が提案されている。特許文献4には、(a)デキストリン脂肪酸エステル1~20質量%と、(b)常圧における沸点が250℃以下の揮発性油分10~40質量%と、(c)屈折率が1.4~1.6の油分10~40質量%と、(d)屈折率が1.3~1.6であり平均粒径3~30μmの球状粉末15~60質量%とを含有する透明固形組成物が提案されている。特許文献5には、(A)セルロース誘導体、(B)フェニル基を有する屈折率1.45以上のシリコーン油剤、(C)25℃で液状のエステル油を含有する油性化粧料が提案されている。
これらの化粧料は、高屈折率の油剤により反射率の高い膜を形成し、透明感を付与するものである。しかし、これらの化粧料は、いずれも油性の化粧料であり、塗布時の伸びが重い、べたつき感、ぬるつき感がある等の問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-162939号公報
【特許文献2】特開2017-14202号公報
【特許文献3】特開平1-163111号公報
【特許文献4】特開2005-213145号公報
【特許文献5】特開2011-79746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肌への適用後すぐに透明感を付与することができ、べたつき感が少なく、保湿感を感じることのできる水中油型乳化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.下記成分(A)~(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(A)スクレロチウムガム
(B)ホスホリルコリン基含有両性ポリマー
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油
2.(B)が、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61のいずれか、または両方である1.に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化化粧料は、肌に適用してすぐに透明感を付与することができる。本発明の水中油型乳化化粧料は、べたつき感が少なく、保湿感を感じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記(A)~(C)を含む水中油型乳化化粧料(以下、化粧料ともいう)に関する。
(A)スクレロチウムガム
(B)ホスホリルコリン基含有両性ポリマー
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油
【0009】
(A)スクロレチウムガム
(A)スクレロチウムガムは、グルコースを含む培地をスクレロチウム属菌(Sclerotium rolfsii)を用いて発酵させて得られた多糖類である。スクレロチウムガムは、重合グルコースであり、三次元架橋三重らせん構造をとる。スクレロチウムガムは、例えば、Alban Muller International(仏)から商標名Amigelで市販されている。
【0010】
本発明の化粧料において、(A)成分の含有量は、化粧料全体に対して、0.001~1.0質量%であることが好ましい。(A)の含有量は、化粧料全体に対し0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.015質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.02質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.05質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0011】
(B)ホスホリルコリン基含有両性ポリマー
(B)成分は、ホスホリルコリン基を有する。ホスホリルコリン基を下記式(1)に示す。ホスホリルコリン基は、細胞膜を構成するリン脂質の極性基部分であり、両性の極性基である。
【化1】

ホスホリルコリン基含有両性ポリマーとしては、例えば、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65等が挙げられ、ポリクオタニウム-51またはポリクオタニウム-61が好ましい。これらは、いずれも、日油株式会社より市販されている。
【0012】
本発明の化粧料において、(B)成分の含有量は、化粧料全体に対して、0.0001~0.5質量%であることが好ましい。(B)の含有量は、化粧料全体に対し0.0005質量%以上であることがより好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましく、0.0015質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.002質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0013】
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油
(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油は、特に制限されないが、フェニル変性シリコーン油、カプリリルメチコン等が挙げられる。フェニル変性シリコーン油としては、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルフェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等が挙げられる。これらは、信越化学工業株式会社、ダウ・東レ株式会社等から市販されている。
(C)成分であるシリコーン油の屈折率は透明感の点から、1.42以上が好ましく、1.45以上がより好ましく、1.47以上がさらに好ましい。
【0014】
本発明の化粧料において、(C)成分の含有量は、化粧料全体に対して、0.01~5質量%であることが好ましい。(C)の含有量は、化粧料全体に対し0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0015】
本発明の化粧料において、(A)成分と(B)成分の合計に対する(C)成分の割合(C/(A+B))は、1以上100以下であることが透明感の点から好ましい。この割合は、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、50以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
【0016】
本発明の化粧料は、(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、水中油型乳化化粧料に常用される各種原料、例えば、屈折率1.41未満の直鎖状または環状シリコーン油、エステル油等の油剤、乳化剤、エタノール、保湿成分、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、中和剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン)、美容成分(例えばローズマリーエキス)、ビタミン類等の機能成分を含有することができる。これらの中で、屈折率1.41未満の直鎖状または環状シリコーン油を1.0~5.0質量%含むことが、べたつき感の抑制の点から好ましい。
本発明の化粧料は、(A)~(C)成分を含有することにより、非常に高い透明感を付与することができるため、光輝性粉体を含むことは好ましくなく、化粧料に対する光輝性粉体の配合量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がよりさらに好ましく、0質量%以下(含まない)が最も好ましい。
【実施例0017】
<C・c成分>
実施例・比較例で用いている(C)成分及び(c)成分としてシリコーン油以外の屈折率が1.41以上の油剤、または屈折率が1.41未満のシリコーン油の屈折率を以下に示す。
C:ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(n:1.498)
C:ジフェニルジメチコン(n:1.503)
C:トリメチルフェニルトリメチコン(n:1.580)
c:ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)(n:1.491)
c:リンゴ酸ジイソステアリル(n:1.460)
c:ジメチコン(n:1.399)
【0018】
<調製方法>
表1、2に示す組成で、水相(A、a、B含む)と、活性剤を含んだ油相(C、c含む)をそれぞれ85℃に加温し、ホモミクサーで攪拌しながら水相中に油相をゆっくりと添加しながら攪拌した。そして、35℃まで冷却後、水酸化カリウムで中和することにより、各水中油型乳化化粧料を調製した。
【0019】
<試験方法>
上記の方法で得た各水中油型乳化化粧料について、各水中油型乳化化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後の感覚について、専門パネラー5名が官能評価を実施し、合議により以下のような評点を付けた。
・透明感
透明感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を目視した際に感じるキメが整い、肌全体が瑞々しく透き通るような自然な明るさであるという感覚のことである。
◎:透明感を非常に感じる
○:透明感を感じる
△:透明感をやや感じる
×:透明感を感じない
・べたつき感のなさ
べたつき感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を手で触った際に感じる粘性もしくは粘着性を伴う残液感のことである。
◎:べたつき感を感じない
○:べたつき感をほとんど感じない
△:べたつき感をわずかに感じる
×:べたつき感を感じる
【0020】
・保湿感
保湿感とは、化粧料を肌に塗布した後、肌を手で触った際に感じるしっとりとした感覚のことである。
◎:保湿感を感じる
〇:保湿感をやや感じる
△:保湿感をわずかに感じる
×:保湿感を感じない
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
「結果」
実施例1~7で得られた(A)~(C)成分を含む本発明の水中油型乳化化粧料は、高い透明感を付与することができるとともに、べたつき感が少なく、保湿感を感じることができた。
実施例と比較例1~3の結果より、(A)~(C)成分が揃わないと、透明感が付与されないことが確かめられた。
実施例と比較例4~7の結果より、(C)屈折率が1.41以上のシリコーン油に代えて屈折率が1.41以上の他の油剤を配合すると、透明感が得られないとともに、べたつき感が強くなることが確かめられた。
実施例と比較例8~11の結果より、(A)スクレロチウムガムに代えて他の多糖類を配合すると、透明感の付与ととべたつき感の抑制とを達成できないことが確かめられた。
【0024】
以下に処方例を示す。なお、数値は質量%を表す。
処方例1:美容液
水 残余
スクレロチウムガム 0.035
キサンタンガム 0.2
アルカリゲネス産生多糖体 0.004
ポリクオタニウム-51 0.015
ベタイン 1
トレハロース 1
ラフィノース 1
グリセリン 8
カルボマー 0.15
BG 6.5
ペンチレングリコール 1.5
フェノキシエタノール 0.3
エチルヘキシルグリセリン 0.1
メチルグルセス-10 2
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.25
アスコルビルグルコシド 2
水酸化カリウム 0.465
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
エタノール 3
エチルヘキサン酸セチル 1
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 2.8
イソノナン酸イソトリデシル 2.5
ベヘニルアルコール 1.5
ステアリン酸 0.2
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.125
ジメチコン 0.375
ステアリン酸ソルビタン 0.25
ポリソルベート60 2.25
【0025】
処方例2:クリーム
水 残余
スクレロチウムガム 0.05
グリセリン 2
BG 6
グリセレス-26 2
ペンチレングリコール 1.5
フェノキシエタノール 0.2
キサンタンガム 0.1
ポリクオタニウム-51 0.015
カルボマー 0.1
SIMULGEL EG(SEPPIC社製) 0.02
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.375
ジメチコン 1.125
トリエチルヘキサノイン 6
トコフェロール 0.03
テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル

ステアリン酸 1
ベヘニルアルコール 2
ステアリン酸グリセリル(SE) 2.5
ポリソルベート60 1.8
【0026】
処方例3:乳液
水 残余
スクレロチウムガム 0.04
ポリクオタニウム-51 0.015
BG 7
グリセリン 10.3
ペンチレングリコール 0.9
フェノキシエタノール 0.3
カルボマー 0.05
水酸化カリウム 0.01
マカデミアナッツ油 3.8
ホホバ油 5.3
水添レシチン 0.4
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)
3.5
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 0.8
パルミチン酸セチル 0.8
ポリソルベート60 0.3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.5
SIMULGEL EG(SEPPIC社製) 0.7