(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097682
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】レッグウェア、編物および重ねパイル編地構造
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20240711BHJP
D04B 1/02 20060101ALI20240711BHJP
D04B 1/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A41B11/00 B
D04B1/02
D04B1/10
A41B11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001319
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】野口 康祐
【テーマコード(参考)】
3B018
4L002
【Fターム(参考)】
3B018AC03
3B018AD01
4L002AA02
4L002AA03
4L002AA05
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB02
4L002AC01
4L002AC06
4L002BA00
4L002BA01
4L002BA04
4L002BA05
4L002BB04
4L002BB05
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な保温性を有するレッグウェアにおいて足裏に蒸れを感じさせにくくする。
【解決手段】本発明に係るレッグウェア100は、足被覆部110を備える。足被覆部は、同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成される。そして、この足被覆部の少なくとも一部には、第1領域Amおよび第2領域Aiが形成されている。ここで、第1領域では、複数本の表糸のうち少なくとも二本の表糸が、表糸シンカーループ部を形成している。表糸シンカーループ部は、少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高い。また、表糸シンカーループ部は、異なる高さを有している。また、第2領域は、複数本の糸が平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編成方法で編成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成される足被覆部を備え、
前記足被覆部の少なくとも一部には、第1領域および第2領域が形成されており、
前記第1領域では、前記複数本の表糸のうち少なくとも二本の表糸が、前記少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高くて異なる高さを有する表糸シンカーループ部を形成しており、
前記第2領域では、前記複数本の糸が平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編成方法で編成されている
レッグウェア。
【請求項2】
前記第1領域と前記第2領域とは、海島パターンを形成しており、
前記第1領域は、島領域であり、
前記第2領域は、海領域である
請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域は、海島パターンを形成しており、
前記第1領域は、海領域であり、
前記第2領域は、島領域である
請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項4】
前記第1領域は、趾付け根対応領域であり、
前記第2領域は、爪先対応領域である
請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項5】
前記表糸シンカーループ部は、外側を向くように形成されている
請求項1から4のいずれか1項に記載のレッグウェア。
【請求項6】
前記表糸シンカーループ部は、内側を向くように形成されている
請求項1から4のいずれか1項に記載のレッグウェア。
【請求項7】
同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成されており、
前記複数の表糸のうち少なくとも二本の表糸は、第1領域において前記少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高くて異なる高さを有する第1表糸シンカーループ部を形成しており、前記第1領域とは異なる領域である第2領域において前記少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高くて実質的に同一の高さを有する第2表糸シンカーループ部を形成している
編物。
【請求項8】
前記第2表糸シンカーループ部は、前記第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部と実質的に同じ高さを有する
請求項7に記載の編物。
【請求項9】
前記第2表糸シンカーループ部は、前記第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部と実質的に同じ高さを有する
請求項7に記載の編物。
【請求項10】
前記第1表糸シンカーループ部および前記第2表糸シンカーループ部は、同一コース上に存在する
請求項7に記載の編物。
【請求項11】
前記第1表糸シンカーループ部および前記第2表糸シンカーループ部は、往復回転編み領域において同一コース上に存在する
請求項10に記載の編物。
【請求項12】
前記第1表糸シンカーループ部および前記第2表糸シンカーループ部は、異なるコース上に存在する
請求項7に記載の編物。
【請求項13】
前記第1表糸シンカーループ部および前記第2表糸シンカーループ部は、往復回転編み領域において異なるコース上に存在する
請求項12に記載の編物。
【請求項14】
前記第1領域では、前記第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部は、前記第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部よりも高い弾性を有すると共に、最上面に露出しており、
前記第2領域では、前記第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部に繋がっている第2シンカーループ部における表糸シンカーループ部が最上面に露出している
請求項7から13のいずれか1項に記載の編物。
【請求項15】
前記複数本の糸は、前記第1領域および前記第2領域とは異なる領域である第3領域において平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編成方法で編成されている
請求項7に記載の編物。
【請求項16】
前記第1表糸シンカーループ部、前記第2表糸シンカーループ部、および、前記第3領域における編成部位は、同一コース上に存在する
請求項15に記載の編物。
【請求項17】
前記第1表糸シンカーループ部、前記第2表糸シンカーループ部、および、前記第3領域における編成部位は、往復回転編み領域において同一コース上に存在する
請求項16に記載の編物。
【請求項18】
前記第1表糸シンカーループ部、前記第2表糸シンカーループ部、および前記第3領域における編成部位は、異なるコース上に存在する
請求項15に記載の編物。
【請求項19】
前記第1表糸シンカーループ部、前記第2表糸シンカーループ部、および、前記第3領域における編成部位は、往復回転編み領域において異なるコース上に存在する
請求項18に記載の編物。
【請求項20】
同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成されており、
前記複数の表糸のうち少なくとも二本の表糸は、前記少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高くて異なる高さを有する表糸シンカーループ部を形成しており、
高い表糸シンカーループ部を形成する表糸は、低い表糸シンカーループを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性と実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有するか、それよりも高い収縮性もしくは低い伸張性を有する
重ねパイル編地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レッグウェアに関する。また、本発明は、編物にも関する。また、本発明は、重ねパイル編地構造にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、「防寒用として十分な保温性を得られる厚みを備えつつ実用的な耐久性をも備え、かつ、柔軟で装用感が良く、美観にも優れた繊維製品を提供すること」を目的として、「少なくとも一部に厚地部を備えており、該厚地部は主糸によって構成された編地層とパイル層から成り、該パイル層は第一のパイル糸によって構成された第一のパイルと、第二のパイル糸によって構成された第二のパイルからなり、該第二のパイルは該第一のパイルの内側に構成されていることを特徴とする繊維製品。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような繊維製品をレッグウェアに適用した場合、その保温性から足が蒸れやすくなり、装着者が不快になってしまうおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、良好な保温性を有するレッグウェアの装着時において足に蒸れを感じさせにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係るレッグウェアは、足被覆部を備える。足被覆部は、同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成される。そして、この足被覆部の少なくとも一部には、第1領域および第2領域が形成されている。ここで、第1領域では、複数本の表糸のうち少なくとも二本の表糸が、少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高くて異なる高さを有する表糸シンカーループ部を形成している。また、第2領域では、複数本の糸が平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編成方法で編成されている。
【0007】
このレッグウェアにおいて、第1領域では、異なる高さを有する表糸シンカーループ部が形成されており、通常のパイル編地よりも表糸の密度が高くなっており、保温性や、耐久性、単位体積当たりの消臭性、クッション性などに優れる。一方、第2領域では、上述の編み構造が形成されることから、足から生じる汗の蒸気を外に向かって通しやすくなる。このため、このレッグウェアは、良好な保温性や、耐久性、単位体積当たりの消臭性、クッション性などを有しつつも、足に蒸れを感じさせにくくすることができる。
【0008】
本発明の第2局面に係るレッグウェアは第1局面に係るレッグウェアであり、第1領域と第2領域とは、海島パターンを形成している。そして、ここで、第1領域は島領域であり、第2領域は海領域である。なお、ここで、海領域は、連続する一つの領域であり、島領域は、海領域によって複数に隔たれた領域である。
【0009】
このレッグウェアでは、保温性等を担保する第1領域の周りが、足汗を外に排出する役目を担う第2領域で囲われている。このため、このレッグウェアでは、足から生じる汗の蒸気をより効率的に排出することができ、延いては足の蒸れを抑制することができる。
【0010】
なお、足被覆部の足裏被覆部に海島パターンが形成されている場合、レッグウェアの装着者が歩行等して第1領域(島領域)が床や靴底等に接触する際、第1領域に体重がかかり、第1領域がつぶれて、第2領域と足裏の間の空間(表糸シンカーループ部が足裏側に存在する場合)、あるいは第2領域と床や靴底等の間の空間(表糸シンカーループ部が外側に存在する場合)の空気が流れる。このため、かかる場合、足裏から生じる汗の蒸気を排出しやすくすることができる。
【0011】
本発明の第3局面に係るレッグウェアは第1局面に係るレッグウェアであり、第1領域と第2領域とは、海島パターンを形成している。そして、ここで、第1領域は海領域であり、第2領域は島領域である。なお、ここで、海領域は、連続する一つの領域であり、島領域は、海領域によって複数に隔たれた領域である。
【0012】
このレッグウェアでは、保温性等を担保する第2領域が、足汗を外に排出する役目を担う第1領域の周りを囲っている。このため、このレッグウェアでは、保温性等を十分に維持しつつ、足から生じる汗の蒸気を徐々に排出することができる。
【0013】
本発明の第4局面に係るレッグウェアは第1局面に係るレッグウェアであり、第1領域は趾付け根対応領域であり、第2領域は爪先対応領域である。
【0014】
このため、このレッグウェアでは、奥まっている趾付け根部に嵩高い第1領域をフィットさせることができる。したがって、第1領域の表糸シンカーループ部により趾付け根部から出る汗を効率的に吸い取ることができ、延いては装着者の快適性を確保することができる。
【0015】
本発明の第5局面に係るレッグウェアは第1局面から第4局面のいずれか一局面に係るレッグウェアであり、表糸シンカーループ部は、外側を向くように形成されている。
【0016】
このため、このレッグウェアは、履物や床等との接触面接を極力狭くするとともに、レッグウェアと履物や床等との間に空気層を設けることができ、延いては足汗を効率的に履物の外に排出させることができる。
【0017】
本発明の第6局面に係るレッグウェアは第1局面から第4局面のいずれか一局面に係るレッグウェアであり、表糸シンカーループ部は、内側を向くように形成されている。
【0018】
このため、このレッグウェアでは、表糸シンカーループ部を装着者の肌に接触させることができ、足汗を効率的に吸収することができる。
【0019】
本発明の第7局面に係る編物は、同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成されている。複数の表糸のうち少なくとも二本の表糸は、第1領域において第1表糸シンカーループ部を形成しており、第2領域において第2表糸シンカーループ部を形成している。ここで、第2領域は、第1領域とは異なる領域である。また、第1表糸シンカーループ部は、少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高い。また、この第1表糸シンカーループ部は、上述の通り、少なくとも二つ存在しており、そのうちの少なくとも1つの第1表糸シンカーループ部は、他の第1表糸シンカーループ部とは異なる高さを有する。また、第2表糸シンカーループ部は、少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高い。また、この第2表糸シンカーループ部は、上述の通り、少なくとも二つ存在しており、それらは実質的に同一の高さを有する。なお、ここで、第1表糸シンカーループ部において、高い表糸シンカーループ部を形成する表糸は、低い表糸シンカーループを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性と実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有するか、それよりも高い収縮性もしくは伸張性を有することが好ましい。
【0020】
上述の構成により、この編物は、第1シンカーループ部が有する機能と、第2シンカーループ部が有する機能とを併せ持つことができる。このため、例えば、クッション性や衝撃吸収性等の性質を部分的に変化させた編物を編成することができる。また、上述の構成により、この編物は、第1シンカーループ部が醸し出す質感と、第2シンカーループ部が醸し出す質感とを併存させることができる。このため、例えば、独創的な柄や模様を有する編物などを編成することができる。また、第1シンカーループ部および第2シンカーループ部が内側を向くように形成されている場合、第1シンカーループ部では高いシンカーループ部を形成している表糸が肌に触れるため肌に対して大きく影響を与えることができる一方、低いシンカーループ部を形成している表糸は肌に触れにくいため肌に対してあまり影響を与えない。一方、第2シンカーループ部では複数の表糸が実質的に同じ高さのためどちらも肌に触れ、複数の表糸が実質的に同じくらい肌に対して影響を与えることができる。このため、第1シンカーループ部を形成する領域と、第2シンカーループ部を形成する領域とを適宜選択することによって、各領域において肌に与える効果を変えることができる。
【0021】
本発明の第8局面に係る編物は第7局面に係る編物であり、第2表糸シンカーループ部は、第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部と実質的に同じ高さを有する。
【0022】
このため、第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部の機能や質感を第2表糸シンカーループ部で増強することができる。
【0023】
本発明の第9局面に係る編物は第7局面に係る編物であり、第2表糸シンカーループ部は、第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部と実質的に同じ高さを有する。
【0024】
このため、第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部の機能や質感を第2表糸シンカーループ部で増強することができる。
【0025】
本発明の第10局面に係る編物は第7局面から第9局面のいずれか一局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部および第2表糸シンカーループ部は、同一コース上に存在する。
【0026】
このため、同一コース方向に異なる機能性部分を形成することができると共に、同一コース方向に異なる質感部分を並べることができる。
【0027】
本発明の第11局面に係る編物は第10局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部および第2表糸シンカーループ部は、往復回転編み領域において同一コース上に存在する。
【0028】
このため、この編物では、往復回転編み領域において第7局面に係る編物の効果を享受することができる。
【0029】
本発明の第12局面に係る編物は第7局面から第10局面のいずれか一局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部および第2表糸シンカーループ部は、異なるコース上に存在する。
【0030】
このため、ウェール方向に異なる機能性部分を形成することができると共に、ウェール方向に異なる質感部分を並べることができる。
【0031】
本発明の第13局面に係る編物は第12局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部および第2表糸シンカーループ部は、往復回転編み領域において異なるコース上に存在する。
【0032】
このため、この編物では、往復回転編み領域において第12局面に係る編物の効果を享受することができる。
【0033】
本発明の第14局面に係る編物は第7局面から第13局面のいずれか一局面に係る編物であり、第1領域では、第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部は、第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部よりも高い弾性を有する。そして、第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部は、最上面に露出している。また、第2領域では、第1表糸シンカーループ部における低い表糸シンカーループ部に繋がっている第2シンカーループ部における表糸シンカーループ部が最上面に露出している。なお、第2領域では、第1表糸シンカーループ部における高い表糸シンカーループ部に繋がっている第2シンカーループ部における表糸シンカーループ部が高収縮である。このため、編成時に引っ張られていた編地が縮んで、その表糸シンカーループ部が下側に隠れることになる(すなわち、この編物の編成時では、上述の表糸シンカーループ部に対応する糸が引っ張られた状態で編成されている。)。
【0034】
このため、この編物では、例えば、少なくとも二本の表糸の色を異ならせることにより、第1領域の色と第2領域の色とを異ならせてデザイン性のある編物を創作したり、第1領域の機能と第2領域の機能とを異ならせて領域によって異なる機能を発揮することができる編物を創作したりすることができる。
【0035】
本発明の第15局面に係る編物は第7局面に係る編物であり、複数本の糸は、第3領域において平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編成方法で編成されている。なお、第3領域は、第1領域および第2領域とは異なる領域である。
【0036】
このため、この編物は、第1シンカーループ部が有する機能と、第2シンカーループ部が有する機能と、平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編地が有する機能とを併せ持つことができる。このため、例えば、クッション性や衝撃吸収性等の性質を部分的にさらに変化させた編物を編成することができる。また、上述の構成により、この編物は、第1シンカーループ部が醸し出す質感と、第2シンカーループ部が醸し出す質感と、平編み、タック編みおよびミス編みより成る群から選択される少なくとも一種の編地が醸し出す質感を併存させることができる。このため、例えば、さらに独創的な柄や模様を有する編物などを編成することができる。
【0037】
本発明の第16局面に係る編物は第15局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部、第2表糸シンカーループ部、および、第3領域における編成部位は、同一コース上に存在する。
【0038】
このため、同一コース方向に異なる機能性部分をさらに形成することができると共に、同一コース方向に異なる質感部分をさらに並べることができる。
【0039】
本発明の第17局面に係る編物は第16局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部、第2表糸シンカーループ部、および、第3領域における編成部位は、往復回転編み領域において同一コース上に存在する。
【0040】
このため、この編物では、往復回転編み領域において第16局面に係る編物の効果を享受することができる。
【0041】
本発明の第18局面に係る編物は第15局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部、第2表糸シンカーループ部、および、第3領域における編成部位は、異なるコース上に存在する。
【0042】
このため、ウェール方向に異なる機能性部分をさらに形成することができると共に、ウェール方向に異なる質感部分をさらに並べることができる。
【0043】
本発明の第19局面に係る編物は第18局面に係る編物であり、第1表糸シンカーループ部、第2表糸シンカーループ部、および、第3領域における編成部位は、往復回転編み領域において異なるコース上に存在する。
【0044】
このため、この編物では、往復回転編み領域において第18局面に係る編物の効果を享受することができる。
【0045】
本発明の第20局面に係る重ねパイル編地構造は、同一の編目を構成する複数本の表糸および少なくとも一本の裏糸を含む複数本の糸から編成されている。なお、ここにいう「重ねパイル」とは、英語でいうDouble pileではなくPile up pileである。複数の表糸のうち少なくとも二本の表糸は、表糸シンカーループ部を形成している。表糸シンカーループ部は、少なくとも一本の裏糸の裏糸シンカーループ部よりも高い。また、表糸シンカーループ部は、異なる高さを有する。そして、高い表糸シンカーループ部を形成する表糸は、低い表糸シンカーループを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性と実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有するか、それよりも高い収縮性もしくは伸張性を有する。なお、ここで、伸張性は、例えば、弾性に起因するものである。収縮性は、例えば、弾性によるものであってもよいし、加熱処理(熱水処理)や液処理(アルカリ処理など)によるものであってもよい。ところで、「高い表糸シンカーループ部を形成する表糸」と「低い表糸シンカーループ部を形成する表糸」は、同一の素材から成る糸であってもよい。また、「高い表糸シンカーループ部を形成する表糸」と「低い表糸シンカーループ部を形成する表糸」は、共に収縮性もしくは伸張性を有さない糸であってもよい。また、「高い表糸シンカーループ部を形成する表糸」と「低い表糸シンカーループ部を形成する表糸」は、その太さが同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、重ねパイル編地構造は、往復回転編み領域内に存在していてもよい。
【0046】
すなわち、この重ねパイル編地構造は、低い表糸シンカーループを形成する表糸として弾性糸や、熱収縮糸、化学処理収縮糸を用いずとも編成され得る。このため、この重ねパイル編地構造は、従前の重ねパイル編地構造よりも多種多様な特性を持ち得る。なお、このような重ねパイル編地構造は、「高い表糸シンカーループ部を形成する表糸」がのるシンカーのパイル爪の高さと、「低い表糸シンカーループ部を形成する表糸」がのるシンカーのパイル爪の高さを変えることによって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るレッグウェアの部分底面像である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るレッグウェアの島領域(重ねパイル編成領域)における編地の簡易編成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るレッグウェアの海領域(平編み領域)における編地の簡易編成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るレッグウェアを編成するシンカーの形状を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るレッグウェアの部分底面図である。なお、図中に示されている線の内側の領域は、重ねパイル編成領域を示している。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るレッグウェアを裏返した際の内側の部分平面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るレッグウェアの側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るレッグウェアの引き揃えパイル編地領域における編地の簡易編成図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るレッグウェアを編成する際におけるシンカー、ニードルおよび糸の関係を示す図である。なお、本図の(a)に示される図には、平編みの際におけるシンカー、ニードルおよび糸の関係が示されており、(b)に示される図には、重ねパイル編成の際におけるシンカー、ニードルおよび糸の関係が示されており、(c)に示される図には、低いシンカーループ部を有する引き揃えパイル編成の際におけるシンカー、ニードルおよび糸の関係が示されており、(d)に示される図には、高いシンカーループ部を有する引き揃えパイル編成の際におけるシンカー、ニードルおよび糸の関係が示されている。
【
図10】
図9の(a)に示される図の糸付近の拡大図である。
【
図11】
図9の(b)に示される図の糸付近の拡大図である。
【
図12】
図9の(c)に示される図の糸付近の拡大図である。
【
図13】
図9の(d)に示される図の糸付近の拡大図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る編物の表側の平面図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る編物の裏側の平面図である。
【
図16】本発明の第4実施形態の変形例(A)に係る編物の平面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態の変形例(A)に係る編物の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施の形態に係るレッグウェアは、ヒトの足に装着された際にそのヒトの足裏の少なくとも一部を覆う装着具であって、例えば、靴下(フットカバー,ソックス,ハイソックス)、ストッキング、タイツ等である。以下、種々の実施形態に係るレッグウェアについて説明する。
【0049】
-第1実施形態-
<本発明の第1実施形態に係るレッグウェアの構成>
本発明の第1実施形態に係るレッグウェアの一例として、
図1に示される靴下100が挙げられる。この靴下100は足裏被覆部110にその特徴があるため、以下、その足裏被覆部110について詳述する。
【0050】
足裏被覆部110は、同一の編目を構成する二本の表糸Tf1,Tf2および一本の裏糸Trから編成されている。そして、
図1に示されるように、足裏被覆部110では、その前半部位111が、海領域Amと島領域Aiとから成る海島パターンPmiを形成するように編成されている。なお、
図1に示される通り、この海島パターンPmiでは、島領域Aiが足長方向および足幅方向に沿って均等に並べられている。ここで、島領域Aiでは、
図2に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが外側すなわち肌側の反対側を向くように形成していると共に(以下、このような編成を重ねパイル編成等と称する場合がある。)、その反対側に同じ高さを有する表糸ニードルループ部Rnを形成している。なお、この表糸シンカーループ部Rh,Rlは、裏糸Trの裏糸シンカーループ部よりも高い。また、海領域Amでは、
図3に示されるように、表糸Tf1,Tf2および裏糸Trが平編みされている。すなわち、この足裏被覆部110では、コース方向において編み方が変更されている。
【0051】
なお、島領域Aiを編成する手法としては、例えば、特開2017-106146号公報、特開2006-193857号公報、特開2002-115155号公報、特開平5-247797号公報等に開示される編成方法等を利用することができる。また、島領域Aiおよび海領域Amを連続的に編成する方法としては、
図4に示されるような高さが異なるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を有する1枚のシンカーSK0において糸Tf1,Tf2,Trを乗せるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を切り替えながら編成する方法が挙げられる。なお、同方法において、平編み時では、全ての糸Tf1,Tf2,TrがシンカーSK0の低段パイル爪Pf0の上に乗っており、重ねパイル編成時では、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1が中段パイル爪Pl0の上にのり、表糸Tf2が高段パイル爪Ph0の上に乗っている。なお、平編みと重ねパイル編成の切替、すなわち、糸Tf1,Tf2,Trに対するパイル爪Pf0,Ph0,Pl0の位置の切替は、図示しないシンカーSK0の前後方向往復動機構によって行われる。また、同方法では、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは、同一の素材から成る糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは共に収縮性もしくは伸張性を有さない糸であってもよいし、共に実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有する糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸は、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性よりも高い収縮性もしくは低い伸張性を有してもよい。
【0052】
なお、靴下100を暖かいものとする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、ウールやレーヨン等の吸湿発熱糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ポリエステル等の疎水性を示す吸水拡散性糸とすることが好ましい。一方、靴下100を蒸れにくいものとする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、ポリエステル等の疎水性を示す吸水拡散性糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ウールやレーヨン等の吸湿発熱糸、もしくは、綿等の吸水性の糸とすることが好ましい。なお、上述の両場合において、表糸シンカーループ部Rh,Rlが内側すなわち肌側を向くようにするとより効果的である(以下の変形例(F)参照)。
【0053】
また、靴下100に消臭効果を持たせると共に靴下100の履き心地をよくする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、シルク等の柔らかく滑らかで肌触りのよい糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ウール等の消臭効果を有する比較的硬い糸とすることが好ましい。かかる場合も、表糸シンカーループ部Rh,Rlが内側すなわち肌側を向くようにするとより効果的である(以下の変形例(F)参照)。
【0054】
<本発明の第1実施形態の一例に係る靴下の特徴>
本実施形態に係る靴下100を装着した者が歩行等して島領域Aiが床や靴底等に接触する際、島領域Aiに体重がかかり、島領域Aiがつぶれて、海領域Amの外側の空間の空気が流れる。このため、この靴下100では、足裏から生じる汗の蒸気を排出しやすくなる。また、上述の通り、この島領域Aiでは、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlが形成されており、通常のパイル編地よりも表糸の密度が高くなっており、保温性や、耐久性、単位体積当たりの消臭性、クッション性などに優れる。このため、この靴下100は、良好な保温性や、耐久性、単位体積当たりの消臭性、クッション性などを有しつつも、足裏に蒸れを感じさせにくくすることができる。
【0055】
<変形例>
(A)
第1実施形態に係る靴下100では島領域Aiが足長方向および足幅方向に沿って均等に並べられていたが、この配置は一例にすぎず、例えば、底面(フット部側の面)視において足長方向および足幅方向に対して45°傾いた方向に沿って島領域Aiが均等に並べられてもよいし、その他のパターンで島領域Aiが並べられてもよいし、底面視においてランダムに島領域Aiが配置されてもよい。
【0056】
(B)
第1実施形態に係る靴下100では島領域Aiにおいて二本の表糸Tf1,Tf2から二重の表糸シンカーループ部Rh,Rlが形成されていたが、三本以上の表糸から多重のシンカーループ部が形成されてもよい。かかる場合、そのうちの二本以上の表糸が同じ高さを有する表糸シンカーループ部を形成してもよいし、三本以上の表糸の高さがすべて異なる表糸シンカーループ部を形成してもよい。
【0057】
(C)
第1実施形態に係る靴下100では足裏被覆部110の前半部位111にのみ海島パターンPmiが形成されたが、足裏被覆部110の全面に亘って海島パターンPmiが形成されてもよい。
【0058】
(D)
第1実施形態に係る靴下100では足裏被覆部110の前半部位111に海島パターンPmiが形成されたが、海島パターンPmiは靴下全体に形成されてもよい。また、海島パターンPmiは、足の甲を被覆する部位(以下「甲被覆部位」という。)や、足の側面を被覆する部位(以下「側面被覆部位」という。)にも形成されてもよいし、甲被覆部位にのみ形成されてもよいし、側面被覆部位にのみ形成されてもよいし、甲被覆部位および側面被覆部位にのみ形成されてもよい。なお、海島パターンPmiが甲被覆部位や側面被覆部位に形成される場合、靴下100を装着して履物を履いた際、靴下100と履物の間の通気性がよくなり、足の甲や側面に蒸れを感じにくくさせることができる。また、甲被覆部位や側面被覆部位に海島パターンPmiが形成される場合、足裏被覆部110の全体が、島領域Aiの編地、すなわち、重ねパイル編地になるように編成されてもよい。
【0059】
(E)
第1実施形態に係る靴下100では島領域Aiが重ねパイル編地とされ、海領域Amが平編みとされたが、島領域Aiを平編みとし、海領域Amを重ねパイル編地としてもよい。かかる場合、蒸れの抑制効果は低くなってしまうが、保温性等を向上させることができる。
【0060】
(F)
第1実施形態に係る靴下100では、島領域Aiにおいて、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが外側すなわち肌側の反対側を向くように形成していたが、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが内側すなわち肌側を向くように形成してもよい。かかる場合、表糸シンカーループ部Rh,Rlを装着者の肌に接触させることができ、足汗を効率的に吸収することができる。また、かかる場合、靴下を装着した者が歩行等して島領域が足裏に接触する際、島領域に体重がかかり、島領域がつぶれて、足裏と海領域の間の空間の空気が流れる。このため、この靴下では、足裏から生じる汗の蒸気を排出しやすくすることができる。
【0061】
(G)
第1実施形態に係る靴下100では海領域Amが平編みで編成されたが、海領域Amがタック編みまたはミス編みで編成されてもよい。
【0062】
(H)
第1実施形態では特に言及されなかったが、例えば、靴下100の爪先被覆部位や踵被覆部位等の往復回転編み領域(目増し領域あるいは目減らし領域、すなわち、全周編み領域よりもウェール数が少ない領域)が、上述の通りに重ねパイル編みされてもよい。
【0063】
(I)
第1実施形態では本願発明が靴下100に適用されたが、本願発明はフットカバーに適用されてもよい。なお、かかる場合、好ましい一例として、踵骨隆骨や母趾中足趾関節、子趾中足趾関節を覆う部位を島領域とし、踵骨隆骨や母趾中足趾関節、子趾中足趾関節などの周囲を覆う部分を海領域とする例が挙げられる。また、別の好ましい一例として、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を高摩擦糸とし、肌に密着させてフットカバーの脱げを防ぐ一方、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を硬い糸とし、表糸シンカーループ部Rh,Rlのへたりを低減すると共にフットカバーの形状を維持し、その結果、足の凹凸にフィットさせることでフットカバーの脱げを防ぐ例が挙げられる。
【0064】
なお、上述の変形例(A)~(I)は本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【0065】
-第2実施形態-
<本発明の第2実施形態に係るレッグウェアの構成>
本発明の第2実施形態に係るレッグウェアの一例として、
図5および
図6に示される靴下200が挙げられる。この靴下200は足裏被覆部210にその特徴があるため、以下、その足裏被覆部210について詳述する。
【0066】
足裏被覆部210は、同一の編目を構成する二本の表糸Tf1,Tf2および一本の裏糸Trから編成されている。そして、
図5および
図6に示されるように、足裏被覆部210では、その足先部位211が、趾対応領域Agおよび趾間領域Abから成るように編成されている。なお、ここで、趾対応領域Agは、靴下200の装着時にその装着者の趾が位置する領域である。一方、趾間領域Abは、靴下200の装着時にその装着者の趾が位置しない領域すなわち趾の間の空間に対応する領域と、足の根元部位に対応する領域と合わせた領域である。ここで、趾間領域Abでは、
図2(図中の符号AiをAbに置き換える)に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが内側すなわち肌に触れる側を向くように形成していると共に(以下、このような編成を重ねパイル編成等と称する場合がある。)、その反対側に同じ高さを有する表糸ニードルループ部Rnを形成している。なお、この表糸シンカーループ部Rh,Rlは、裏糸Trの裏糸シンカーループ部よりも高い。また、趾対応領域Agでは、
図3(図中の符号AiをAgに置き換える)に示されるように、表糸Tf1,Tf2および裏糸Trが平編みされている。すなわち、この足裏被覆部210では、コース方向において編み方が変更されている。
【0067】
なお、靴下200の足先部位211を暖かいものとする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、ウールやレーヨン等の吸湿発熱糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ポリエステル等の疎水性を示す吸水拡散性糸とすることが好ましい。一方、靴下200の足先部位211を蒸れにくいものとする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、ポリエステル等の疎水性を示す吸水拡散性糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ウールやレーヨン等の吸湿発熱糸、もしくは、綿等の吸水性の糸とすることが好ましい。
【0068】
また、靴下200に消臭効果を持たせると共に靴下200の履き心地をよくする場合、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸を、例えば、シルク等の柔らかく滑らかで肌触りのよい糸とすることが好ましく、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸を、例えば、ウール等の消臭効果を有する比較的硬い糸とすることが好ましい。
【0069】
なお、趾間領域Abを編成する手法としては、例えば、特開2017-106146号公報、特開2006-193857号公報、特開2002-115155号公報、特開平5-247797号公報等に開示される編成方法等を利用することができる。また、趾対応領域Agおよび趾間領域Abを連続的に編成する方法としては、
図4に示されるような高さが異なるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を有する1枚のシンカーSK0において糸Tf1,Tf2,Trを乗せるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を切り替えながら編成する方法が挙げられる。なお、同方法において、平編み時では、全ての糸Tf1,Tf2,TrがシンカーSK0の低段パイル爪Pf0の上に乗っており、重ねパイル編成時では、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1が中段パイル爪Pl0の上にのり、表糸Tf2が高段パイル爪Ph0の上に乗っている。なお、平編みと重ねパイル編成の切替、すなわち、糸Tf1,Tf2,Trに対するパイル爪Pf0,Ph0,Pl0の位置の切替は、図示しないシンカーSK0の前後方向往復動機構によって行われる。また、同方法では、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは、同一の素材から成る糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは共に収縮性もしくは伸張性を有さない糸であってもよいし、共に実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有する糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸は、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性よりも高い収縮性もしくは低い伸張性を有してもよい。
【0070】
<本発明の第2実施形態の一例に係る靴下の特徴>
本実施形態に係る靴下200を装着した際、その装着者の趾の間(より正確には、趾の間の高さ方向の一部または全部)に、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlが位置することになる。このため、装着者の趾の側面から生じる汗の一部または全部がその表糸シンカーループ部Rh,Rlに効率的に吸い取られることになり、装着者は足の足先部位211に蒸れを感じにくくなる。
【0071】
<変形例>
(A)
第2実施形態に係る靴下200では趾間領域Abが、靴下200の装着時にその装着者の趾が位置しない領域と、足の根元部位に対応する領域と合わせた領域とされていたが、趾間領域は、装着者の趾が位置しない領域のみとされてもよい。
【0072】
(B)
第2実施形態に係る靴下200では足先部位211が、趾対応領域Agおよび趾間領域Abから成るように編成されていたが、足先部位211が、爪先対応領域および趾付け根対応領域から成るように編成されてもよい。かかる場合、爪先対応領域は、趾対応領域Agの編地、すなわち、平編みになるよう編成され、趾付け根対応領域は、趾間領域Abの編地、すなわち、重ねパイル編地になるように編成される。足先部位211をこのように構成することにより、奥まっている趾付け根部に重ねパイルをフィットさせることができる。したがって、重ねパイルにより趾付け根部から出る汗を効率的に吸い取ることができ、延いては装着者の快適性を確保することができる。
【0073】
(C)
第2実施形態に係る靴下200では趾間領域Abにおいて二本の表糸Tf1,Tf2から二重の表糸シンカーループ部Rh,Rlが形成されていたが、三本以上の表糸から多重のシンカーループ部が形成されてもよい。かかる場合、そのうちの二本以上の表糸が同じ高さを有する表糸シンカーループ部を形成してもよいし、三本以上の表糸の高さがすべて異なる表糸シンカーループ部を形成してもよい。
【0074】
(D)
第2実施形態に係る靴下200では、趾間領域Abにおいて、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが内側すなわち肌側を向くように形成していたが、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが外側すなわち肌側の反対側を向くように形成してもよい。
【0075】
(E)
第2実施形態に係る靴下200では趾対応領域Agが平編みで編成されたが、趾対応領域Agがタック編みまたはミス編みで編成されてもよい。
【0076】
(F)
第2実施形態では特に言及されなかったが、例えば、靴下200の踵被覆部位等の往復回転編み領域(目増し領域あるいは目減らし領域、すなわち、全周編み領域よりもウェール数が少ない領域)が、上述の通りに重ねパイル編みされてもよい。
【0077】
なお、上述の変形例(A)~(F)は本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【0078】
-第3実施形態-
<本発明の第3実施形態に係るレッグウェアの構成>
本発明の第3実施形態に係るレッグウェアの一例として、
図7に示される靴下300が挙げられる。この靴下300は脛被覆部310にその特徴があるため、以下、その脛被覆部310について詳述する。
【0079】
脛被覆部310は、同一の編目を構成する二本の表糸Tf1,Tf2および一本の裏糸Trから編成されている。そして、
図7に示されるように、脛被覆部310には、環状の重ねパイル編地領域Aw、環状の引き揃えパイル編地領域Adおよび環状の平編み領域Apが、上下方向に沿ってその順に繰り返し形成されている。
【0080】
ここで、重ねパイル編地領域Awでは、
図2(図中の符号AiをAwに置き換える)に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを、表糸シンカーループ部Rh,Rlが外側すなわち肌に触れる側の反対側を向くように形成している共に、その反対側に同じ高さを有する表糸ニードルループ部Rnを形成している。引き揃えパイル編地領域Adでは、
図8に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、同一の高さを有する表糸シンカーループ部を、表糸シンカーループ部が外側すなわち肌に触れる側の反対側を向くように形成していると共に(以下、このような編成を重ねパイル編成等と称する場合がある。)、その反対側に同じ高さを有するニードルループ部を形成している。なお、引き揃えパイル編地領域Adにおける表糸シンカーループ部の高さは、重ねパイル編地領域Awにおける低い方の表糸シンカーループ部Rlの高さとされている。また、平編み領域Apでは、
図3(図中の符号AiをApに置き換える)に示されるように、表糸Tf1,Tf2および裏糸Trが平編みされている。すなわち、この脛被覆部310では、コース方向では編み方が変更されておらず、ウェール方向において編み方が変更されている。
【0081】
なお、重ねパイル編地領域Awを編成する手法としては、例えば、特開2017-106146号公報、特開2006-193857号公報、特開2002-115155号公報、特開平5-247797号公報等に開示される編成方法等を利用することができる。また、重ねパイル編地領域Aw、引き揃えパイル編地領域Adおよび平編み領域Apを連続的に編成する方法としては、
図4に示されるような高さが異なるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を有する1枚のシンカーSK0において糸Tf1,Tf2,Trを乗せるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を切り替えながら編成する方法が挙げられる。なお、同方法において、平編み時では、シンカーSK0が後退した状態で、全ての糸Tf1,Tf2,TrがシンカーSK0の低段パイル爪Pf0の上に乗っており(
図9および
図10参照)、重ねパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1が中段パイル爪Pl0の上に乗り、表糸Tf2が高段パイル爪Ph0の上に乗っている(
図9および
図11参照)。低引き揃えパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1および表糸Tf2が共に中段パイル爪Pl0の上に乗っている(
図9および
図12参照)。高引き揃えパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1および表糸Tf2が共に高段パイル爪Ph0の上に乗っている(
図9および
図13参照)。なお、平編み、重ねパイル編成、高引き揃えパイル編成および低引き揃えパイル編成の切替、すなわち、糸Tf1,Tf2,Trに対するパイル爪Pf0,Ph0,Pl0の位置の切替は、図示しないシンカーSK0の前後方向往復動機構によって行われる。また、同方法では、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは、同一の素材から成る糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸と、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸とは共に収縮性もしくは伸張性を有さない糸であってもよいし、共に実質的に同じ収縮性もしくは伸張性を有する糸であってもよい。また、高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸は、低い表糸シンカーループ部Rlを形成する表糸の収縮性もしくは伸張性よりも高い収縮性もしくは低い伸張性を有してもよい。
【0082】
<本発明の第3実施形態の一例に係る靴下の特徴>
本実施形態に係る靴下300には、上下方向に沿って環状の重ねパイル編地領域Aw、環状の引き揃えパイル編地領域Adおよび環状の平編み領域Apがその順に繰り返し形成されている。このため、この靴下300は、同一の複数の糸Tf1,Tf,Trを利用しているにもかかわらずカット末端を生じさせず立体的で斬新な意匠性を有する。
【0083】
<変形例>
(A)
第3実施形態に係る靴下300は同一の複数の糸Tf1,Tf,Trから編成されていたが、常法に従って種々の糸を切り替えることによって立体的でより斬新な意匠性を有する靴下が編成されてもよい。
【0084】
(B)
第3実施形態に係る靴下300ではコース方向では編み方が変更されておらず、ウェール方向において編み方が変更されていたが、コース方向においてのみ編み方が変更されてもよいし、コース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されてもよい。かかる場合、靴下における重ねパイル編地領域Aw、引き揃えパイル編地領域Adおよび平編み領域Apの配置を適宜工夫して立体的で斬新な柄や模様等を形成することができる。
【0085】
(C)
第3実施形態では、本願発明が靴下300に適用されたが、同発明は靴下以外の編物に適用されてもかまわない。
【0086】
(D)
第3実施形態に係る靴下300では重ねパイル編地領域Awにおいて二本の表糸Tf1,Tf2から二重の表糸シンカーループ部Rh,Rlが形成されていたが、重ねパイル編地領域Awを多重の重ねパイル編地領域とし、その多重の重ねパイル編地領域において三本以上の表糸から多重の表糸シンカーループ部が形成されてもよい。かかる場合、そのうちの二本以上の表糸が同じ高さを有する表糸シンカーループ部を形成してもよいし、三本以上の表糸の高さがすべて異なる表糸シンカーループ部を形成してもよい。
【0087】
(E)
第3実施形態に係る靴下300では引き揃えパイル編地領域Adにおける表糸シンカーループ部の高さが、重ねパイル編地領域Awにおける低い方の表糸シンカーループ部Rlの高さとされていたが、同高さは、重ねパイル編地領域Awにおける高い方の表糸シンカーループ部Rhの高さとされてもよい。
【0088】
(F)
第3実施形態では特に言及しなかったが、靴下300に光沢をもたせる目的で、二本の表糸Tf1,Tf2のうち一本をラメ糸にしてもよいし、二本を共にラメ糸にしてもよい。また、二本の表糸Tf1,Tf2の色を異ならせてもよい。かかる場合、重ねパイル編地領域Awと重ねパイル編地領域Awとの色を変化させることができる。
【0089】
(G)
第3実施形態では特に言及しなかったが、二本の表糸Tf1,Tf2は同じ太さであってもよいし、異なる太さであってもよい。
【0090】
(H)
第3実施形態では特に言及しなかったが、編成中において高い表糸シンカーループ部Rhを形成する表糸がコース単位で切り替えられてもよい。
【0091】
(I)
第3実施形態では特に言及しなかったが、重ねパイル編地領域Aw、引き揃えパイル編地領域Adおよび平編み領域Apを利用して所望の箇所の着圧を調整してもよい。
【0092】
(J)
第3実施形態に係る靴下300では脛被覆部310を構成する領域の一つとして平編み領域Apが選択されたが、平編み領域Apに代えて、あるいは、平編み領域Apに加えて、タック編み領域や、ミス編み領域が選択されもよい。なお、タック編み領域では、表糸Tf1,Tf2および裏糸Trがタック編みされる。また、ミス編み領域では、表糸Tf1,Tf2および裏糸Trがミス編みされる。
【0093】
(K)
第3実施形態では特に言及されなかったが、例えば、靴下300の踵被覆部位等の往復回転編み領域(目増し領域あるいは目減らし領域、すなわち、全周編み領域よりもウェール数が少ない領域)が、上述の通りに重ねパイル編み、引き揃えパイル編み、平編みの複数種類の編み方で編成されてもよい。かかる場合、コース方向にのみ編み方が変更されてもよいし、ウェール方向にのみ編み方が変更されてもよいし、コース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されてもよい。かかる場合、靴下300の踵被覆部位等において重ねパイル編地領域Aw、引き揃えパイル編地領域Adおよび平編み領域Apの配置を適宜工夫して立体的で斬新な柄や模様等を形成することができる。
【0094】
なお、上述の変形例(A)~(K)は本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【0095】
-第4実施形態-
<本発明の第4実施形態に係る編物の構成>
本発明の第4実施形態に係る編物の一例として、
図14に示される編物400が挙げられる。以下、その編物400について詳述する。
【0096】
この編物400は、
図14および
図15に示されるように市松模様の編物であって、同一の編目を構成する二本の表糸Tf1,Tf2および一本の裏糸Trから編成されている。なお、ここで、二本の表糸Tf1,Tf2のうちその一本は高弾性糸であり、他の一本は低弾性糸または非弾性糸である。また、二本の表糸Tf1,Tf2の色が異なっている。そして、この編物400では、重ねパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adが形成されている。
【0097】
ここで、重ねパイル編地領域Awでは、
図2(図中の符号AiをAwに置き換える)に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、異なる高さを有する表糸シンカーループ部Rh,Rlを形成していると共に、その反対側に同じ高さを有する表糸ニードルループ部Rnを形成している。なお、ここで、高弾性糸が高い表糸シンカーループ部を有しており、低弾性糸または非弾性糸が低い表糸シンガーループを有している。引き揃えパイル編地領域Adでは、
図8に示されるように、二本の表糸Tf1,Tf2が、同一の高さを有する表糸シンカーループ部を形成していると共に(以下、このような編成を重ねパイル編成等と称する場合がある。)、その反対側に同じ高さを有するニードルループ部を形成している。なお、ここで、高弾性糸はその弾性により僅かに縮んでおり、低弾性糸または非弾性糸の表糸シンカーループよりも僅かに低くなっている。また、引き揃えパイル編地領域Adにおける低弾性糸または非弾性糸の表糸シンカーループ部の高さは、重ねパイル編地領域Awにおける低い方の表糸シンカーループ部Rlの高さとされている。また、
図14および
図15に示されているように、この編物400では、コース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されている。
【0098】
なお、重ねパイル編地領域Awを編成する手法としては、例えば、特開2017-106146号公報、特開2006-193857号公報、特開2002-115155号公報、特開平5-247797号公報等に開示される編成方法等を利用することができる。また、重ねパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adを連続的に編成する方法としては、
図4に示されるような高さが異なるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を有する1枚のシンカーSK0において糸Tf1,Tf2,Trを乗せるパイル爪Pf0,Ph0,Pl0を切り替えながら編成する方法が挙げられる。なお、同方法において、平編み時では、シンカーSK0が後退した状態で、全ての糸Tf1,Tf2,TrがシンカーSK0の低段パイル爪Pf0の上に乗っており(
図9および
図10参照)、重ねパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1が中段パイル爪Pl0の上に乗り、表糸Tf2が高段パイル爪Ph0の上に乗っている(
図9および
図11参照)。低引き揃えパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1および表糸Tf2が共に中段パイル爪Pl0の上に乗っている(
図9および
図12参照)。高引き揃えパイル編成時では、シンカーSK0が前進した状態で、裏糸Trが低段パイル爪Pf0の奥側の窪みに位置すると共に、表糸Tf1および表糸Tf2が共に高段パイル爪Ph0の上に乗っている(
図9および
図13参照)。なお、平編み、重ねパイル編成、高引き揃えパイル編成および低引き揃えパイル編成の切替、すなわち、糸Tf1,Tf2,Trに対するパイル爪Pf0,Ph0,Pl0の位置の切替は、図示しないシンカーSK0の前後方向往復動機構によって行われる。
【0099】
<本発明の第4実施形態の一例に係る編物の特徴>
本実施形態に係る編物400には、重ねパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adによって市松模様が形成されている。このため、この編物400は、カットボスによる模様付の編物とは異なり、ボス糸を必要としない。したがって、この編物400は、カットボスによる模様付の編物よりも伸縮性に優れると共に、ボス糸の糸抜けが生じることがない。また、この編物400には、ボス糸の渡りや、カットした端末の飛び出し等がないため、リバーシブルで利用することができる。
【0100】
<変形例>
(A)
第4実施形態では市松模様の編物400が編成されたが、本実施形態に記載の方法を用いて
図16および
図17に示される模様の編物が編成されてもよい。なお、この編物でも、コース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されることになる。
【0101】
(B)
第4実施形態に係る編物400では重ねパイル編地領域Awにおいて二本の表糸Tf1,Tf2から二重の表糸シンカーループ部Rh,Rlが形成されていたが、重ねパイル編地領域Awを多重の重ねパイル編地領域とし、その多重の重ねパイル編地領域において三本以上の表糸から多重の表糸シンカーループ部が形成されてもよい。かかる場合、そのうちの二本以上の表糸が同じ高さを有する表糸シンカーループ部を形成してもよいし、三本以上の表糸の高さがすべて異なる表糸シンカーループ部を形成してもよい。
【0102】
(C)
第4実施形態に係る編物400では引き揃えパイル編地領域Adにおける表糸シンカーループ部の高さが、重ねパイル編地領域Awにおける低い方の表糸シンカーループ部Rlの高さとされていたが、同高さは、重ねパイル編地領域Awにおける高い方の表糸シンカーループ部Rhの高さとされてもよい。
【0103】
(D)
第4実施形態に係る編物400では二本の表糸Tf1,Tf2の色が異なっていたが、色のみならず、太さや、光沢、質感等が異なっていてもよい。また、二本の表糸Tf1,Tf2の太さや、光沢、質感等が異なっている場合、二本の表糸Tf1,Tf2の色が同一色、同系色とされてもよい。
【0104】
(E)
第4実施形態に係る編物400では、二本の表糸Tf1,Tf2の色を異ならせて重ねパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adを編成するによって模様を形成していたが、二本の表糸Tf1,Tf2の機能性を異ならせて重ねパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adを編成することによって各編地領域Aw,Adの機能を異ならせてもよい。例えば、表糸Tf1として消臭性のある糸を用い、表糸Tf2として吸湿発熱効果のある糸を用いることで、重ねパイル編地領域Awをニオイが感じられにくい領域とし、引き揃えパイル編地領域Adを発熱効果のある領域とすること等が挙げられる。なお、表糸Tf1,Tf2の機能性は目的に応じて適宜選択することができる。
【0105】
(F)
第4実施形態に係る編物400ではコース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されていたが、コース方向においてのみ編み方が変更されてもよいし、ウェール方向においてのみ編み方が変更されてよい。
【0106】
(G)
第4実施形態に係る編物400ではパイル編地領域Awおよび引き揃えパイル編地領域Adを編成するによって模様を形成していたが、さらに平編み領域や、タック編み領域、ミス編み領域を編成して複雑な模様等を形成してもよい。かかる場合、コース方向およびウェール方向の両方向において編み方が変更されてもよいし、コース方向においてのみ編み方が変更されてもよいし、ウェール方向においてのみ編み方が変更されてよい。
【0107】
なお、上述の変形例(A)~(G)は本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0108】
100,200,300 靴下(レッグウェア)
110,210 足裏被覆部(足被覆部)
111 前半部位
211 足先部位
310 脛被覆部
400 編物
Ab 趾間領域
Ad 引き揃えパイル編地領域(第2領域)
Ag 趾対応領域
Ai 島領域
Am 海領域
Ap 平編み領域(第3領域)
Aw 重ねパイル編地領域(第1領域)
Pmi 海島パターン
Rh,Rl 表糸シンカーループ部
Rn 表糸ニードルループ部
Tf1,Tf2 表糸
Tr 裏糸