(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097686
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】金属ロール端面揃え装置
(51)【国際特許分類】
B21C 47/02 20060101AFI20240711BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240711BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B21C47/02 E
B21C51/00 F
B21B38/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001327
(22)【出願日】2023-01-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】594001041
【氏名又は名称】株式会社片木アルミニューム製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】新見 浩司
(72)【発明者】
【氏名】和田 健二
(72)【発明者】
【氏名】片木 威
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】竹森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永原 巧也
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026BA16
4E026EA15
4E026GA03
4E026GA07
(57)【要約】
【課題】端面の揃った金属ロールを形成可能な装置を提供すること。
【解決手段】 連続的に供給される一定幅の金属薄板Aの帯を巻きつけ金属ロールを形成する軸棒11と、帯の左右にそれぞれ配したローラであって、独立して、帯の左側または右側を押し下げて厚み方向に圧力をかけるローラ31と、軸棒11より上流にて、送られてくる帯の縁の位置を検知する下流センサ21と、さらに上流の上流センサ22と、それぞれ検知された位置に基づき、巻き取られた金属ロールの帯巾方向の位置ずれであって、金属ロールの端面揃えの基準位置であるとする基準端面位置P0からのずれ量を算出し、はみ出している側のローラ31を帯に押し当て、P0からのずれ量をなくす制御部40と、を具備したことを特徴とする揃え装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される一定幅の金属薄板の帯を巻きつけ金属ロールを形成する軸棒と、
軸棒を回転させ金属薄板の帯を巻き取る回転手段と、
帯の左右にそれぞれ配したローラであって、独立して、帯の左側または右側を押し下げて厚み方向に圧力をかけるローラと、
軸棒に巻き付くより上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置を検知する第一検知手段と、
第一検知手段より上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置ずれの量を検知する第二検知手段と、
第一および第二検知手段によりそれぞれ検知された位置に基づき、巻き取られた金属ロールの帯巾方向の位置ずれであって、金属ロールの端面揃えの基準位置であるとする基準端面位置からのずれ量を算出するずれ量算出手段と、
ずれ量算出手段により算出されたずれ量に基づき、はみ出している側のローラを帯に押し当て、ローラを押し当てる圧力またはローラを押し当てる時間を制御して基準端面位置からのずれ量をなくすローラ制御手段と、
を具備したことを特徴とする金属ロール端面揃え装置。
【請求項2】
第一検知手段は、所定の基準点である第一基準点からの帯巾方向の帯の縁の位置を検知し、
第二検知手段は、所定の基準点である第二基準点からの帯巾方向の帯の縁の位置を検知することを特徴とする請求項1に記載の金属ロール端面揃え装置。
【請求項3】
金属薄板がアルミ薄板であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ロール端面揃え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の金属薄板を巻き取り、その端面をきれいに揃える金属ロール端面揃え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスは一般的に、絶縁シートと導電シートとが交互に巻かれた構成を有する。発電所や変電所には大型のトランスが備わるが、これも原理は同じであり、導電シートには、たとえば、厚みが1mm~2mm程度、幅が500mm~800mm、長さは500m~1500mの帯状の金属薄板が用いられる。
【0003】
トランスを製造する際には、金属薄板と絶縁シートとを揃えて捲回していくが、このとき、金属薄板の送り出し側に精度が求められ、端面の揃った金属薄板のロールが必要とされる。
【0004】
従来では、本出願人により、端面位置を検知し、はみ出した側にローラを押し当ててずれをなくす技術が簡便且つ高性能であるとして知られていた。
【0005】
しかしながら、近年、要求性能が高まりつつある。
まず、生産性の観点から巻取速度は、800mm/sec以上を要求され、500mm以上もある巾を1mm以内のずれで常時収める必要があり、ローラの押し込み自体がずれの原因となってしまう場合があるという問題点があった。また、金属薄板の帯がロール端面に対してわずかに傾いたとしても制御上問題が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、端面の揃った金属ロールを形成可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の金属ロール端面揃え装置は、連続的に供給される一定幅の金属薄板の帯を巻きつけ金属ロールを形成する軸棒と、軸棒を回転させ金属薄板の帯を巻き取る回転手段と、帯の左右にそれぞれ配したローラであって、独立して、帯の左側または右側を押し下げて厚み方向に圧力をかけるローラと、軸棒に巻き付くより上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置を検知する第一検知手段と、第一検知手段より上流の位置にて、送られてくる帯の縁の位置ずれの量を検知する第二検知手段と、第一および第二検知手段によりそれぞれ検知された位置に基づき、巻き取られた金属ロールの帯巾方向の位置ずれであって、金属ロールの端面揃えの基準位置であるとする基準端面位置からのずれ量を算出するずれ量算出手段と、ずれ量算出手段により算出されたずれ量に基づき、はみ出している側のローラを帯に押し当て、ローラを押し当てる圧力またはローラを押し当てる時間を制御して基準端面位置からのずれ量をなくすローラ制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1にかかる発明は、二箇所の位置検出をおこなうことにより、帯巾方向の全体的なシフト量といえるずれ(並進ずれ)と、軸棒に対して傾いて巻き取られて生じるずれ(角度ずれ)とを把握し、より正確なずれ補正が可能となり、より整った金属ロールの端面揃えを実現する。
【0010】
なお、軸棒は、金属薄板の湾曲癖が強くでない方が良いので、大径、たとえば、直径300mm程度とするのが好ましい。
二つの検知手段と押し当てローラとの位置関係は、基準端面位置におけるずれ補正が叶うのであれば特に限定されないが、ローラを二つの検知手段より上流に配置する例を挙げることができる。
ローラは、車輪様でも円筒様でも球様でもよく、押圧ないし押し込み(押し下げ)できるものであれば特に限定されない。
帯の左右とは、帯の片側ともう一方の側を意味する。
【0011】
請求項2に記載の金属ロール端面揃え装置は、請求項1に記載の金属ロール端面揃え装置において、第一検知手段は、所定の基準点である第一基準点からの帯巾方向の帯の縁の位置を検知し、第二検知手段は、所定の基準点である第二基準点からの帯巾方向の帯の縁の位置を検知することを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項2に係る発明は、簡便な計算に基づくローラ制御を実現する。
基準端面位置と第一基準点と第二基準点とが同一直線状であってその方向が軸方向と垂直であるのが好ましい。
所定の基準点である第一基準点(第二基準点)からの帯巾方向の帯の縁の位置を検知する、とは広義であって、3次元の位置情報でなく、平面視における投影面にて把握される縁であれば足りるものとする。
【0013】
請求項3に記載の金属ロール端面揃え装置は、請求項1または2に記載の金属ロール端面揃え装置において、金属薄板がアルミ薄板であることを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3に係る発明は、延性の高いアルミ薄板について、端面の揃ったロールを作出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端面の揃った金属ロールを形成可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】ロールによる押し当ての様子を示した説明図である。
【
図3】第一基準点P1、第二基準点P2、基準端面位置P0、基準面PRの関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、上流から送られてくる、切れ目のない巾500mm、厚み1.0mmのアルミ薄板Aの帯を、端面を揃えてロール状に巻き取る例について説明する。なお、以降では、本発明の金属ロール端面揃え装置を、単に揃え装置と称することとする。
図1は、揃え装置の外観構成図である。
図2は、ロールによる押し当ての様子を示した説明図である。なお、説明の便宜上、各構成部は必ずしも縮尺を同じとせず描画している。
【0018】
揃え装置1は、軸駆動部10と、センサ部20と、押圧部30と、制御部40と、を有する。
【0019】
軸駆動部10は、軸棒11と、駆動部12と、軸受13と、により構成される。
軸棒11は、直径300mmの円柱であり、ここに薄板Aを巻き付ける。なお、ロール状に巻き付けると薄板Aには癖がつきやすくなるが、曲率が小さいほど(直径が大きいほど)癖が残りにくいので、軸棒11は大径としている。
駆動部12は、軸棒11を一方向に回転し軸棒11による薄板Aの巻き取りをおこなう。最終的に外径約700mmのロールを形成していくが(内径は300mm)、薄板Aが軸棒11に巻き付くにしたがってロールが太くなるため、アルミ薄板Aの移送速度(巻き取り速度)が800mm/secとなるように駆動部12はその回転速度を調整するようにしている。なお、駆動に際しては、モータを介したギヤドライブ方式を採用している。
軸受13は、大重量となるロールを、軸棒11による片支えとならないように、軸棒11の他端を受けて、安定的な回転を実現する。
【0020】
センサ部20は、下流センサ21と、上流センサ22と、により構成される。これらのセンサはアルミ薄板Aに対して同じ側に設置する。位置関係としては、下流センサ21は、軸棒11の軸中心から400mmの位置に設け、上流センサ22は、下流センサ21より上流で、軸棒11の軸中心から700mmの位置(下流センサ21より300mm上流の位置)に設ける。
また、センサは、アルミ薄板Aの端面へ向けてレーザ光を照射し、透過したか否かで境界(縁)を検出し、平面視において、基準位置からどれだけの距離、帯巾方向にずれているか(はみ出しているか、引っ込んでいるか)を検知する透過型レーザセンサを採用している。サンプリングは0.01秒ごととしている。
なお、下流センサ21のセンシングにおける基準位置を第一基準点P1、上流センサ22のセンシングにおける基準位置を第二基準点P2とする。また、形成されるロールの端面の、目標とする揃え位置を基準端面位置P0とし、これを平面視において軸棒11の軸中心上にとる。三点の位置関係次のとおりとする。まず、三点は、所定高さの水平面上にあるものとする(当該水平面は図示せず)。そして、理想のロールの端面がのる平面を基準面PRとする。上記の水平面と、基準面PRとは直交するが、この交線上にP0、P1、P2があるものとする。
図3に、各点と基準面との、平面視における位置関係を示した説明図を示す。なお、基準面PRは、図面に対して垂直の位置関係にあるので、図では線として表れている。
【0021】
押圧部30は、ローラ31と、昇降部32と、により構成され、上流センサ22の300mm程度上流の薄板Aの左右に配されている(以降では、軸棒11を背にして右側をローラ31R、左側をローラ31Lと称することとする)。
ローラ31は、直径40mm長さ90mmの円筒ローラであって、軸ホルダ33により自由に回転する。
昇降部32は、この軸ホルダ33を昇降させローラ31の薄板Aへの押し当てまたは引き戻しをおこなう。駆動には、ここではACサーボシリンダを用いている。
図2に、非作動時の状態(a)と、作動時(降下時)の状態(b)を示した。ローラ31が押しあたると、移送されてくる薄板Aは他方のローラ31側へ少しずつ移動していく。すなわち、薄板Aは、ローラ31Rが下がるとローラ31L側寄りとなり、ローラ31Lが下がるとローラ31R側寄りとなる。なお、移動量はローラ31が押しあたる強さまたは時間に依存する。
【0022】
制御部40は、センサ部20からずれ量を入力し、基準端面位置P0から帯巾方向へのずれ量Yを算出し、ずれ量Yが0.5mmプラス、または0.5mmマイナスを超えた場合、はみ出している側のローラ31を降下させるべく昇降部32に降下信号を送出する。
【0023】
ずれ量Yの算出について説明する。
図4は、ずれ量Yの算出を説明する説明図である(
図3のずれとは異なる)。下流センサ21の縁の検出位置をS1、上流センサ22の縁の検出位置をS2、P0-P1間の距離をL、P1-P2間の距離をl、とすると、ずれ量Yは下式(1)により算出される。
Y=(S1-P1)+(L/l)・((S1-P1)-(S2-P2))・・・(1)
右辺第一項は、並進ずれ(帯巾方向の全体的なシフト量)であり、第二項は、角度ずれ(軸棒に対して傾いて巻き取られることにより生じるずれ)である。
【0024】
なお、制御部40は、設定値以内に収まったら上昇信号を送信する。なお、それまでのはみ出し量の推移から、はみ出し速度やはみ出し加速度を算出し、それに基づいて押し当て時間や押し当て強さ(降下深さ)を調整するようにしても良い。
また、アルミ薄板Aは薄手であって、そもそもアルミは延性があるので、制御部40に基づく押圧部30のローラ31の押し込みは、トルク制御すなわち、押圧力が所定値以下になるようにするのが好ましい。
【0025】
揃え装置1の構成は、以上であるので、並進ずれと角度ずれとを把握してより正確な補正を実現し、端面の揃った金属ロールを形成することができる。軸棒11はただ回転するだけであり、軸棒11自体の移動が不要であり、装置構成を大がかりとすることなく、効率的かつ経済的な端面揃えが可能となる。
基準端面位置P0が平面視において軸棒11の中心軸上にあり、P1,P2,S1,S2が平面視において位置が把握(縁が検出)されるので、ロールが実太りしていっても、ずれ量Yの算出が適正におこなわれ、正確な端面揃えが実現される。
【0026】
なお、揃え装置は上記の態様に限定されない。
たとえば、上流から供給される幅広のアルミ薄板Aを中途で分割し、それぞれに対して、センサと押圧部と制御部とを有し、軸棒一つで複数の金属ロールを形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上の説明ではアルミ薄板を対象としたが、これに限らず、他の金属薄板でもよく、更には、ローラの当接によりヨレが生じない、ある程度の厚みがある、または、ある程度の剛性があるシート状素材であれば、同様に端面の揃ったロールを形成することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 揃え装置
10 軸駆動部
11 軸棒
12 駆動部
13 軸受
20 センサ部
21 下流センサ
22 上流センサ
30 押圧部
31 ローラ
32 昇降部
33 軸ホルダ
40 制御部
A アルミ薄板
P0 基準端面位置
P1 一基準点
P2 二基準点
PR 基準面
S1 下流センサによるアルミ薄板の縁の検出位置
S1 上流センサによるアルミ薄板の縁の検出位置
Y 基準端面位置からのずれ量