(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097694
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】オンライン試験の不正行為検知方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20240711BHJP
【FI】
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001345
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】391022382
【氏名又は名称】日本通信紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 弘
(72)【発明者】
【氏名】鴨打 孝之
(72)【発明者】
【氏名】國井 朋弘
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】オンライン試験において信ぴょう性を高めた不正行為の検知方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】コンピュータCを用いた試験において、不正が疑われる受験者Pに警告Wを発するとともに、警告解除を促す警告工程S40と、受験者Pが警告解除をするまでの解除時間を計測する警告解除時間計測工程S50と、警告解除時間計測工程S50で計測した時間が許容範囲内でない場合に、不正行為があると判定する不正行為判定工程S60とを備え、各工程を所定時間間隔で繰り返す、オンライン試験の不正行為検知方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンライン試験において、不正が疑われる受験者に警告を発するとともに、警告解除を促す警告工程と;
前記受験者が警告解除をするまでの解除時間を計測する警告解除時間計測工程と;
前記警告解除時間計測工程で計測した時間が許容範囲内でない場合に、不正行為があると判定する不正行為判定工程とを備え;
前記各工程を所定時間間隔で繰り返す;
オンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項2】
受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手する検知工程と;
前記検知工程で入手した情報が許容範囲内であるかを判定する検知情報判定工程とを更に備え;
前記警告工程では、前記検知情報判定工程で許容範囲内ではないとされた場合に、前記受験者の不正を疑われう;
請求項1に記載のオンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項3】
前記検知情報判定工程において、前記情報毎に許容範囲が設定されている;
請求項2に記載のオンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項4】
前記検知情報判定工程において、複数の前記情報が許容範囲内にないときに不正行為があると判定する工程をさらに備える;
請求項2に記載のオンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項5】
前記検知情報判定工程において、特定の前記情報が許容範囲内にないときの回数が所定の回数以上であると不正行為があると判定する工程をさらに備える;
請求項2に記載のオンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項6】
受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手可能な監督官が前記受験者に不正の疑いありとの入力をしたときに、前記警告工程では、前記受験者の不正を疑う;
請求項1に記載のオンライン試験の不正行為検知方法。
【請求項7】
受験者のコンピュータに警告と警告解除を促すメッセージを送信する警告送信部と;
前記警告と警告解除を促すメッセージを送信してからの時間を計測する警告時間計測部と;
前記受験者からの警告解除メッセージを受信する警告解除メッセージ受信部と;
前記警告と警告解除を促すメッセージを送信してから前記警告解除メッセージを受信するまでの時間が許容範囲内であるかにより不正の有無を判定する不正行為判定部と;
前記不正行為判定部で不正があるとされると、不正メッセージを送信する不正メッセージ送信部とを備える;
オンライン試験の不正行為検知システム。
【請求項8】
前記受験者の画像情報を入手する画像情報受信部と;
前記画像情報受信部で入手した画像情報から、受験者の顔、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を分析する情報分析部と;
前記受験者のコンピュータの入力操作状況および入力要求後の入力までの時間を計測する操作状況分析部とを更に備え;
前記警告送信部では更に、前記複数の情報、または、前記受験者のコンピュータへの入力操作若しくは前記入力要求後の入力までの時間を許容範囲と比較し、許容範囲外であると不正があると判定する;
請求項7に記載のオンライン試験の不正行為検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンライン試験における不正行為の検知方法およびシステムに関する。特に、信頼性高く不正行為を検知するための不正行為の検知方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種試験や検定等(以降、「試験」で代表する)で、従来の紙による試験に代わり、コンピュータを用いたオンライン試験が増えてきている。オンライン試験には大別して、指定会場に用意された専用のパソコンで受験するCBT(Computer Based Testing)という方式と、インターネットを利用してどこからでも受験できるIBT(Internet Based Testing)という方式との2方式が用いられている。
【0003】
CBTだと紙を用いて採点する代わりにコンピュータで直接的に採点でき、また、好きな時間に受験できるという利便性があるが、指定会場まで足を運ぶ必要がある。これに対して、会場に出向くことなく、受験者が持つパソコンやスマートフォンなどから受験できるIBTが増えてきている。従来のように受験者を会場に集めて実施する試験と比べ、会場の手配や問題・答案用紙の印刷にかかる手間やコストを削減できるなど、さまざまな利便性がある。
【0004】
しかし、IBTでは、試験官のいない自由な場所で試験を受けられるため、不正行為が行われても分からないという危惧が生ずる。また、CBTであっても、試験官の負担を軽減することに対する要求はある。そこで、試験に用いるコンピュータを利用して不正行為を検知するための考案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、CBTにおいて、受験者の視線方向を検知し、視線方向の変動量を計測し、受験者の離席を検知し、離席から作業位置に復帰するまでの離席時間を計測し、視線方向の変動量及び離席時間に基づき受験者の行動の不適切度を判定する受験者の監視方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された受験者の監視方法では、たとえば頭を抱えて正答を考えるなどの行為は視線の変動量が大きいとして不正行為と判断される場合があり、不正行為を行っていなくても不正行為と判断される可能性があり、信ぴょう性において不十分なところがある。
【0008】
そこで、本発明は、オンライン試験において信ぴょう性を高めた不正行為の検知方法およびシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、例えば
図1および
図2に示すように、コンピュータCを用いた試験において、不正が疑われる受験者Pに警告Wを発するとともに、警告解除を促す警告工程S40と、受験者Pが警告解除をするまでの解除時間を計測する警告解除時間計測工程S50と、警告解除時間計測工程S50で計測した時間が許容範囲内でない場合に、不正行為があると判定する不正行為判定工程S60とを備え、各工程を所定時間間隔で繰り返す。
【0010】
このように構成すると、不正が疑われる段階で受験者に警告を発すると共に警告解除を促し、警告を解除されないまま所定時間が経過したときに、不正行為があると判定するので、受験者が不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができ、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる不正行為検知方法となる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、例えば
図2に示すように、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手する検知工程S10、S12と、検知工程S10、S12で入手した情報が許容範囲内であるかを判定する検知情報判定工程S20、S22とを更に備え、警告工程S40では、検知情報判定工程S20、S22で許容範囲内ではないとされた場合に、受験者Pの不正を疑うものとする。このように構成すると、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報に基づき、不正があるかを判定するので、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【0012】
さらに、本発明の第3の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、検知情報判定工程S20、S22において、情報毎に許容範囲が設定されている。このように構成すると、検知工程で入手した複数の情報につき、各情報毎の許容範囲に基づき許容範囲内であるかを判定するので、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【0013】
さらに、本発明の第4の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、複数の情報が許容範囲内にないときに不正行為があると判定する工程をさらに備える。このように構成すると、複数の情報が許容範囲内にないときに不正行為があると判定するので、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【0014】
さらに、本発明の第5の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、特定の情報が許容範囲内にないときの回数が所定の回数以上であると不正行為があると判定する工程をさらに備える。このように構成すると、特定の情報が許容範囲内にないときの回数が所定の回数以上であるときに不正行為があると判定するので、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第6の態様に係るオンライン試験の不正行為検知方法は、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手可能な監督官が受験者に不正の疑いありとの入力をしたときに、警告工程S40では、受験者Pの不正を疑うものとする。このように構成すると、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手可能な監督官が受験者に不正の疑いありとの入力をしたときに不正があると判定するので、簡単な構成で、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第7の態様に係るオンライン試験の不正行為検知システム1は、例えば
図4に示すように、受験者のコンピュータに警告と警告解除を促すメッセージを送信する警告送信部50と、警告と警告解除を促すメッセージを送信してからの時間を計測する警告時間計測部60と、受験者からの警告解除メッセージを受信する警告解除メッセージ受信部70と、警告と警告解除を促すメッセージを送信してから警告解除メッセージを受信するまでの時間が許容範囲内であるかにより不正の有無を判定する不正行為判定部80と、不正行為判定部で不正があるとされると、不正メッセージを送信する不正メッセージ送信部90とを備える。
【0017】
このように構成すると、受験者に警告を発すると共に警告解除を促し、警告を解除されないまま所定時間が経過したときに、不正行為があると判定して、不正メッセージを送信するので、受験者が不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができ、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる不正行為検知システムとなる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第8の態様に係るオンライン試験の不正行為検知システムは、例えば
図4に示すように、受験者の画像情報を入手する画像情報受信部10と、画像情報受信部10で入手した画像情報から、受験者の顔、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を分析する情報分析部30と、受験者のコンピュータCの入力操作状況および入力要求後の入力までの時間を計測する操作状況分析部40とを更に備え、警告送信部50では更に、複数の情報、または、受験者のコンピュータCへの入力操作若しくは入力要求後の入力までの時間を許容範囲と比較し、許容範囲外であると不正があると判定する。このように構成すると、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報に基づき、不正があるかを判定するので、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のオンライン試験の不正行為検知方法によれば、不正が疑われる段階で受験者に警告を発すると共に警告解除を促し、警告を解除されないまま所定時間が経過したときに、不正行為があると判定するので、受験者が不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができ、信ぴょう性を高めたオンライン試験の不正行為の検知方法を提供することができる。
【0020】
また本発明のオンライン試験の不正行為検知システムによれば、受験者に警告を発すると共に警告解除を促し、警告を解除されないまま所定時間が経過したときに、不正行為があると判定して不正メッセージを送信するので、受験者が不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができ、オンライン試験において不正行為検知の信ぴょう性を高めることができる不正行為検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るオンライン試験の不正行為検知システムの使用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明に係るオンライン試験の不正行為検知方法の概略の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2とは別の、本発明に係るオンライン試験の不正行為検知方法の概略の手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明に係るオンライン試験の不正行為検知システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず
図1を参照して、オンライン試験の不正行為検知の概要について説明する。
図1では、受験者Pが各自の家または部屋で自分のパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」)Cを用いて受験するものとして示し、「(1)」、「(2)」はそれぞれ別の受験者であることを示す。試験会場に用意されたパソコンCを用いて試験を行ってもよく、パソコンCに問題が表示され、パソコンCを用いて回答する形態であればよい。なお、ここでいうパソコンCは例示であって、スマートフォンその他の表示機能と入力機能を有する通信機器に置き換えてもよい。
【0023】
パソコンCは、センターのコンピュータHと繋がる。その繋がり方は、ワイヤを介しても無線であっても、また、間に公衆回線等を挟んでも、任意である。試験問題は、コンピュータHからパソコンCへ送られ、受験者Pはパソコン上で問題へ回答し、その回答はコンピュータHに送られ、採点される。コンピュータHは、汎用コンピュータであっても、専用コンピュータであっても、大型コンピュータであっても、パーソナルコンピュータであっても、他のコンピュータであってもよい。
【0024】
コンピュータHは、パソコンCに、警告等のメッセージを送信してパソコンCの画面上に表示させ、また、受験者PのパソコンCの操作を監視し、さらに、受験者Pの画像や音声を受信可能である。受験者Pの画像や音声は、パソコンCのカメラやマイクを通じて入手しても、パソコンCとは別のカメラやマイクを通じて入手してもよい。
【0025】
図2のフローチャート100に概略を示すように、コンピュータHでは、入手した受験者Pの画像、音声および受験者PのパソコンCの操作に基づき、不正の有無を判定し、管理者へ通知する。先ず、第1の検知ステップ(あるいは工程)S10および第2の検知ステップS12で、受験者の顔、入力操作状況、入力要求後の入力までの時間、受験者の位置、受験者の顔方向および視線方向、受験者の姿勢や動作、持ち込み禁止品の映り込みの有無、のうち複数の情報を入手する。なお、
図2では、第1の検知ステップS10および第2の検知ステップS12の2つの検知ステップとそれぞれに続く検知情報判定ステップS20、S22を示すが、さらに、第3の検知ステップ、第4の検知ステップ等と、それぞれに続く検知情報判定ステップを更に備えていてもよいし、1つだけの検知ステップと検知情報判定ステップを備えていてもよい。
【0026】
コンピュータHでは、検知情報判定ステップS20、S22で、入手した情報が許容値内であるか否かを判定する。判定では、各情報毎に許容範囲が設定されている。例えば、受験者Pの画像では、願書等により予め入手した受験者の顔写真と比較し、同一人物であれば許容値内、同一人物とは認められなければ許容値外とする。同一人物であるかは、顔認証ソフトあるいはAIを用いて、同一人物である蓋然性を数値で表し、例えば90%同一の人物を許容値としてもよい。何%を同一人物とするかは、適宜設計し得る。また、受験者Pの画像に受験者Pが含まれないときは離席していることが考えられる。離席時間、あるいは、各フローを所定時間間隔で繰り返すと画像に受験者Pが含まれない連続回数が、許容回数以上となった場合は、不正が疑われる。あるいは、受験者Pの画像に複数の顔が認定されたときにも不正が疑われる。また、受験者Pの画像から受験者の位置、すなわちパソコンCの前に着席しているかを認識し、上記のように、離席している場合には不正が疑われる。受験者Pの位置は、カメラと受験者Pとの位置関係に基づくのが一般的であるが、画像に映り込む他の固定物との位置関係に基づいて求められてもよい。
【0027】
受験者Pの画像から、受験者Pの顔方向および視線方向を認定し、不正の疑いを判定してもよい。例えば、顔が後ろを向いている、視線が不自然にパソコンCの画面以外の方向に向いている場合などである。特に、受験者が試験会場に集まって受験するCBTにおいては、他の受験者の解答を盗み見る場合に顔や視線が不自然な方向を向くことが考えられる。同様に、受験者Pの姿勢や動作を認定し、不正の疑いを判定してもよい。例えば、他の受験者の解答を盗み見る場合に姿勢が不自然になったり、カンニングペーパーを見ようとすると動作が不自然になったりすることが考えられる。
【0028】
受験者Pの画像から、持ち込み禁止品の映り込みの有無を判定してもよい。例えば、通信機器や辞書などの持ち込み禁止品が映り込む場合には、基本的に不正行為と判断されるが、誤ってバッグの中へしまい忘れている場合などもあり得るので、不正の疑いがあるとされてもよい。
【0029】
音声は、独り言程度であれば許容範囲内とし、複数の人間の音声であったり、解答を伝えるような音声がある場合を許容範囲外とする。画像と同様にAI等を用いて蓋然性を数値化してもよい。
【0030】
また例えば、入力操作状況では、異常に長時間に亘る操作がない場合、あるいは、ある設問への解答後の異常に速い次設問への解答も不正が疑われ得る。受験者Pに対する入力要求がパソコンCに行われた場合に、受験者Pの入力までに長時間が掛かった場合にも、受験者PがパソコンCの画面を見ていない状態、すなわち適切に受験していない状態が続いていたとして、不正が疑われ得る。
【0031】
警告判定ステップS30では、検知情報判定ステップS20、S22の判定結果に基づき、パソコンCに受験者Pへの警告及び警告解除を促すメッセージを送信するかを判定する。例えば、2つの検知情報判定ステップS20、S22で情報が許容値外であるときに警告及び警告解除を促すメッセージを送信する。より多くの情報に基づき検知情報判定ステップを実行したときには、3つ以上の情報が許容値外であるときに警告及び警告解除を促すメッセージを送信してもよいし、1つの情報が許容値外であるときに警告及び警告解除を促すメッセージを送信してもよい。特に検知情報の判定の信頼性が高い場合には、1つの情報が許容値外であるときに警告及び警告解除を促すメッセージを送信してもよい。
【0032】
また、特定の情報の組合せにより、情報が許容値外であるとして警告及び警告解除を促すメッセージを送信してもよい。例えば、受験者Pの顔方向および視線方向から受験者Pの視線方向が手元を向き、受験者Pの姿勢や動作から受験者Pが手を動かしていることが認定されるが、入力操作状況からは操作されていないと認定されたときには、パソコンCを操作せずに、視線が手元にあり、手を動かしている状態である。単独で、受験者Pの視線方向が手元を向いているだけであれば単に考えているだけである可能性があり、単に手元を動かしているだけであれば単に回答しているだけの可能性があり、単に入力操作状況で操作されていないだけであれば単に考えているだけの可能性がある。しかし、同時に発生している場合には、回答用のパソコンC以外を操作している等、不自然であり、不正行為の疑いが高いものと考えられる。
【0033】
警告表示ステップ(あるいは警告工程)S40では、警告判定ステップS30の判定結果に基づき、パソコンCに受験者Pへの警告及び警告解除を促すメッセージを送信する。パソコンCでは、画面に警告及び警告解除を促すメッセージを表示する。ここでいう警告とは、受験者Pが不正を疑われていることと共に、不正を疑われる理由を示す。例えば、席に座っていない、顔や視線が不自然な方向を向いているなどである。警告解除を促すメッセージとは、警告の通りに不正が疑われているが、そうでない場合には警告が誤っていることを送信するように促すメッセージである。受験者Pに、何が不正と疑われているのかを通知して、その疑いに誤りがあることを受験者Pが返答する機会を与えることで、受験者Pが不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができる。なお、警告解除時の証跡を残すために、警告解除を行った受験者Pの識別番号や受験番号、画像、または顔写真などを保存してもよい。
【0034】
コンピュータHでは、警告解除時間計測ステップS50にて、警告及び警告解除を促すメッセージを表示してから、受験者Pが返答するまでの時間を計測する。警告及び警告解除を促すメッセージが表示されてから、受験者Pが返答するまでの時間が長すぎる場合には、不正行為のなされていた疑いが高まるためである。
【0035】
コンピュータHでは、不正行為判定ステップS60にて、受験者Pに不正行為があると判定された場合に、その旨を管理者へ通知する(ステップS70)。不正行為判定ステップS60では、例えば、警告及び警告解除を促すメッセージが表示されてから、受験者Pが返答するまでの時間が許容範囲を超えている場合に不正行為があると判定する。あるいは、検知情報判定ステップS20、S22で、重要な不正の情報が許容値を大きく外れていた場合については、不正行為があると判定されてもよい。例えば、持ち込み禁止品が複数回写り込むような場合である。なお、受験者Pに不正行為があると判定された場合に、不正行為の証跡を残すために、その判定の元になった不正の疑いがあるとされた検知情報判定ステップS20、S22の情報を保存するのがよい。
【0036】
管理者への通知は、いかなる方法で通知してもよい。通知を受けた管理者が、不正行為に対して適正な処置をする。このような手順で受験者の不正行為の有無を判定することにより、受験者が不正ではない行為により不正とされてしまう事態を防ぐことができ、高い信ぴょう性で不正行為を検知でき、適切なオンライン試験を実行できる。
【0037】
図3に、
図2に示したのとは別のフローチャート200を示す。コンピュータHで、入手した受験者Pの画像、音声および受験者PのパソコンCの操作に基づき、不正の有無を判定し、管理者へ通知するのは同じであるが、フローチャート200では、第1検知ステップS110、検知情報判定ステップS120、警告表示ステップS140、警告解除時間計測ステップS150、不正行為判定ステップS160の組合せ、および、第2検知ステップS112、検知情報判定ステップS122、警告表示ステップS142、警告解除時間計測ステップS152、不正行為判定ステップS162の組合せ、および、第3検知ステップS114、検知情報判定ステップS124、警告表示ステップS144、警告解除時間計測ステップS154、不正行為判定ステップS164の組合せがそれぞれ直列的に行われる。なお、さらに、第4、第5検知ステップ等が行われてもよい。
【0038】
そして、検知情報判定ステップS120、S122、S124で許容範囲外となるとそれぞれ警告表示ステップS140、S142、S144、警告解除時間計測ステップS150、S152、S154、および不正行為判定ステップ160、S162、S164に進む。いずれかの不正行為判定ステップ160、S162、S164で不正行為があると判定されると、ステップS170で管理者へ通知される。
【0039】
フローチャート200のように、いずれかの不正行為判定ステップS160、S162、S164で不正行為があると判定されると管理者へ通知するようにする場合には、フローチャート100で実行する警告判定ステップS30は不要となる。警告判定ステップS30で並列的に処理をする場合にはシステム負荷が大きくなるので、直列的に処理をするのも一方法である。なお、警告判定ステップS30で、複数の判定結果に基づき警告を行うかを判定した方が、より信ぴょう性が高くなるのが一般的である。
【0040】
これまで説明したオンライン試験の不正検知の各ステップは、試験の間、所定の時間間隔ごとに繰り返され、試験中に不正行為が行われたかを検知する。所定の時間間隔は、一定の時間間隔であっても、ランダムな時間間隔であってもよい。
【0041】
続いて、
図4を参照して、オンライン試験の不正行為検知システム1の一例について説明する。不正行為検知システム1は、これまで説明したオンライン試験の不正行為検知方法を実行するためのシステムであって、
図1に示すコンピュータH内に構築されてもよいし、いくつかのコンピュータに分散されていてもよく、物理的な場所は特に限定されない。
【0042】
不正行為検知システム1は、受験者Pの画像情報を受信する画像情報受信部10を備える。なお、受験者Pの画像を入手し画像情報受信部10に送信するのは、受験者PのパソコンCとパソコン内蔵または接続されたカメラであっても、試験会場に設置された専用カメラであってもよく、通信手段は、有線・無線等、特に限定はされない。画像情報受信部10で受信された画像情報は情報分析部30にて、受験者Pの存否、顔認証、受験者P以外の人物の存否、受験者Pの顔や視線の向き、姿勢および動作を認定する。情報分析部30では、さらに、持ち込み禁止品の映り込みの有無を判定してもよい。情報分析部30ではAIを用いてもよく、分析の際には、不正行為検知システム1以外のシステムを利用して分析してもよい。
【0043】
不正行為検知システム1は、受験者Pの音声情報を受信する音声情報受信部20を備える。なお、受験者Pの音声を入手し音声情報受信部20に送信するのは、受験者PのパソコンCとパソコン内蔵または接続されたマイクであっても、試験会場に設置された専用マイクであってもよく、通信手段は、有線・無線等、特に限定はされない。音声情報受信部20で受信された音声情報は情報分析部30にて、受験者Pの音声の大小、受験者P以外の声の存否等を認定する。
【0044】
不正行為検知システム1は、受験者PのパソコンCの操作状況を分析する操作状況分析部40を備える。受験者Pにより、異常に長時間に亘るパソコンCの操作がない場合、あるいは、ある設問への解答後の異常に速い次設問への解答も不正が疑われ得るので、操作状況分析部40では、どのようなタイミングでパソコン操作が行われているかを分析する。
【0045】
不正行為検知システム1は、情報分析部30や操作状況分析部40での分析により、受験者Pに不正が疑われる場合に、受験者Pに警告を発するべきかを判定し、警告及び警告解除を促すメッセージを表示させるようにする警告送信部50を備えてもよい。警告送信部50では、例えば、情報分析部30および操作状況分析部40から複数の不正の疑いが通知されたときに、受験者PのパソコンCに警告及び警告解除を促すメッセージを表示させるように信号を送信してもよいし、何れか1つでも不正の疑いが通知されたときに、あるいは特定の情報の組合せに基づき、受験者PのパソコンCに警告及び警告解除を促すメッセージを表示させるように信号を送信してもよい。
【0046】
不正行為検知システム1は、警告送信部50からの指示により受験者PのパソコンCに警告及び警告解除を促すメッセージを表示してから、受験者Pにより警告解除メッセージが送信なされるまでの時間を計測する警告時間計測部60を備える。警告解除メッセージ
は、警告解除メッセージ受信部70で受信する。なお、警告解除時の証跡を残すために、警告解除を行った受験者Pの識別番号や受験番号、画像、または顔写真などを保存してもよい。
【0047】
不正行為検知システム1は、情報分析部30や操作状況分析部40での分析、または、警告時間計測部60での計測時間に基づき、受験者Pに不正行為があるかを判定する不正行為判定部80を備えてもよい。警告送信部50から受験者PのパソコンCに警告及び警告解除がなされるまでの時間が長すぎて許容範囲内にないとき、あるいは、警告及び警告解除を促すメッセージの頻度を調べて、頻繁であって許容範囲内にないときに、不正行為があるものと判定してもよい。
【0048】
不正行為検知システム1は、不正行為判定部80で不正行為があるものと判定された場合に、管理者に不正メッセージを送信する、すなわち不正行為を通知する不正メッセージ送信部90を備える。管理者のパソコンに通知しても、管理者がコンピュータHを用いて全体の受験者を管理・監督している場合には、表示装置に表示し、あるいは、音声で通知してもよく、通知の手段は限定されない。なお、受験者Pに不正行為があると判定された場合に、不正行為の証跡を残すために、その判定の元になった不正の疑いがあるとされた検知情報を保存するのがよい。
【0049】
これまで説明した画像情報受信部10、音声情報受信部20、情報分析部30、操作状況分析部40、警告送信部50、警告時間計測部60、不正行為判定部80、不正メッセージ送信部90は、独立した部分ではなく、すなわち物理的に別体ではなく、例えばコンピュータのCPU、メモリ等が、不正行為検知システム1として、それぞれの作業をすることでもよく、かつ、場合によっては、一部の作業を外部システムと通信して実行することでも、全体としてオンライン試験の不正行為検知を実行できればよい。
【0050】
これまでの説明では、不正行為検知システム1で受験者Pの画像、音声、パソコンCの操作の状況等の情報を分析して、不正行為の疑いを判定して、警告および警告解除を促すメッセージをパソコンCに送信するものとして説明したが、これらの情報を入手可能な監督官が、不正行為の疑いを判断して、警告および警告解除を促すメッセージをパソコンCに送信させるようにしてもよい。この場合には、フローチャート100の検知ステップS10、S12、検知情報判定ステップS20、S22、警告判定ステップS30は実行されず、また、フローチャート200の検知ステップS110、S112、S114、検知情報判定ステップS120、S122、S124等は実行されなくてもよい。また、不正行為検知システム1は、画像情報受信部10、音声情報受信部20、情報分析部30、操作状況分析部40を備えていなくてもよい。このような構成であっても、警告および警告解除を促すメッセージを送信し、受験者に解除する機会を与え、その上で不正を判定するので、不正行為検知の信ぴょう性が高められた不正行為検知システムおよび不正行為検知方法となる。
【符号の説明】
【0051】
1 不正行為検知システム
10 画像情報受信部
20 音声情報受信部
30 情報分析部
40 操作状況分析部
50 警告送信部
60 警告時間計測部
70 警告解除メッセージ受信部
80 不正行為判定部
90 不正メッセージ送信部