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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097699
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240711BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/10 B
H02J7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001352
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】伊津 昇
(72)【発明者】
【氏名】長内 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敦司
(72)【発明者】
【氏名】密岡 重日
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503DA08
5G503EA05
5G503GA01
5G503GA11
5G503GA12
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】放電モードであっても蓄電池の充電を行うことができる蓄電システムの提供。
【解決手段】蓄電システム(1)の制御部(101)は、入出力端子(P1およびP2)に充電器が接続されているときに、開閉部(102ならびにFET1およびFET2)に回路を閉じさせて、充電器から蓄電池(100)に向けて第1充電電流を流させる充電モードと、入出力端子に負荷(20)が接続されているときに、開閉部に回路を閉じさせて、蓄電池から負荷に向けて放電電流(I2)を流させる放電モードと、を有し、放電モードにおいて、蓄電池に向けて第2充電電流(I2)が流れたときに、第1測定部により測定される第2充電電流の電流値が第1閾値に達するまで回路を閉じさせ、第2充電電流の電流値が第1閾値以上となると回路を開けさせ、その後に第2充電電流が第1閾値よりも小さい第2閾値未満となると回路を閉じさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
負荷および充電器を接続可能な入出力端子と、
前記入出力端子と前記蓄電池との間の回路を開閉する開閉部と、
前記回路に流れる電流を測定する第1測定部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記入出力端子に前記充電器が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記充電器から前記蓄電池に向けて第1充電電流を流させる充電モードと、
前記入出力端子に前記負荷が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記蓄電池から前記負荷に向けて放電電流を流させる放電モードと、を有し、
前記放電モードにおいて、前記入出力端子を介して前記蓄電池に向けて第2充電電流が流れたときに、前記第1測定部により測定される前記第2充電電流の電流値が第1閾値に達するまで前記開閉部に前記回路を閉じさせ、前記第2充電電流の電流値が第1閾値以上となると前記開閉部に前記回路を開けさせ、前記回路が開いた後に前記第2充電電流が前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満となると前記開閉部に前記回路を閉じさせる、蓄電システム。
【請求項2】
前記第2充電電流は、前記負荷で電力が生じたときに前記負荷から前記蓄電池に向けて流れる電流である、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記第1閾値は、前記第2充電電流の電流値が前記第1閾値に達するまで前記蓄電池を充電したとしても前記蓄電池が過充電とならない値に設定される、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記入出力端子間の電圧を測定する第2測定部と、
前記蓄電池の出力電圧を測定する第3測定部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2測定部により測定された前記入出力端子間の電圧が、前記第3測定部により測定された前記蓄電池の出力電圧の定数倍より小さいとき、前記回路が開いた後に前記第2充電電流が前記第2閾値未満になったと判定する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記回路が開いた後に、前記第1測定部により測定された前記第2充電電流が前記第1閾値よりも小さいと判定され、かつ、前記第2充電電流が前記第2閾値未満になったと判定されたときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせる、請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充電電流がゼロ以上でない場合に放電モードに移り、組電池から負荷設備に電力を供給し、充電電流がゼロ以上である場合に一定条件下で充電モードに移り、商用電源から組電池に電力が供給される組電池管理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-29009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、組電池等の蓄電池から電力を供給される負荷の中には、回生電力を発生させることができるものや、光電変換素子を有するものなどが存在する。
【0005】
特許文献1に開示された従来技術では、充電モードにおいては所定の電源から供給される電力により蓄電池の充電を行い、放電モードにおいては充電を行うことがない。そのため、負荷側で発生した電力を蓄電池の充電に利用することができなかった。
【0006】
本開示の一態様は、放電モードであっても蓄電池の充電を行うことができる蓄電システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る蓄電システムは、蓄電池と、負荷および充電器を接続可能な入出力端子と、前記入出力端子と前記蓄電池との間の回路を開閉する開閉部と、前記回路に流れる電流を測定する第1測定部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記入出力端子に前記充電器が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記充電器から前記蓄電池に向けて第1充電電流を流させる充電モードと、前記入出力端子に前記負荷が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記蓄電池から前記負荷に向けて放電電流を流させる放電モードと、を有し、前記放電モードにおいて、前記入出力端子を介して前記蓄電池に向けて第2充電電流が流れたときに、前記第1測定部により測定される前記第2充電電流の電流値が第1閾値に達するまで前記開閉部に前記回路を閉じさせ、前記第2充電電流の電流値が第1閾値以上となると前記開閉部に前記回路を開けさせ、前記回路が開いた後に前記第2充電電流が前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満となると前記開閉部に前記回路を閉じさせる。
【0008】
本開示の各態様に係る蓄電システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記蓄電システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記蓄電システムをコンピュータにて実現させる蓄電システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、放電モードであっても蓄電池の充電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る蓄電システムの構成例を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る蓄電システムの構成例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る蓄電システムの制御部が放電モードにあるときの処理に関するタイミングチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る蓄電システムの制御部が放電モードにあるときに実行される、スイッチング素子のスイッチング制御の処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図1および図2は、本開示の一実施形態に係る蓄電システムの構成例を示す図である。
【0012】
(蓄電システムの構成)
図1に示す蓄電システム1は、電池パック10を備えている。電池パック10は、蓄電池100、制御部101、FET制御回路102、電流検出回路103、電流電圧検出回路104、電池監視回路105、入出力端子P1およびP2、スイッチング素子FET1およびFET2、ならびにシャント抵抗R1を備えている。
【0013】
蓄電池100は、充電可能な電池であって、例えば、リチウムイオン二次電池である。図1には蓄電池100が1つ図示されているが、電池パック10に備わる蓄電池100の個数は、1つに限らず2つ以上含まれてもよい。以下では、電池パック10には複数の蓄電池100が含まれるものとする。電池パック10に含まれる個々の蓄電池100の電圧をセル電圧Vと記載し、電池パック10に含まれる複数の蓄電池100による組電池としての電圧を電池電圧Vと記載する。
【0014】
制御部101は、例えば、マイコンである。制御部101は、プログラムを記憶する不図示の記憶部を有し、その記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより蓄電システム1の各部を制御する。
【0015】
FET制御回路102、ならびにスイッチング素子FET1およびFET2は、開閉部の一例である。スイッチング素子FET1およびFET2は、例えばnチャネル型のMOSFETであって、ゲート電極がFET制御回路102に接続されている。スイッチング素子FET1は、ドレイン電極が入出力端子P1に接続され、ソース電極がスイッチング素子FET2のソース電極に接続されている。スイッチング素子FET1の寄生ダイオードD1は、そのカソードが入出力端子P1に接続されている。スイッチング素子FET2は、ドレイン電極がシャント抵抗R1に接続され、ソース電極がスイッチング素子FET1のソース電極に接続されている。スイッチング素子FET2の寄生ダイオードD2は、そのカソードがシャント抵抗R1に接続されている。FET制御回路102は、制御部101から受信したFET制御信号に基づいて、スイッチング素子FET1およびFET2のスイッチング制御を行う。なお、スイッチング素子FET1およびFET2は、pチャネル型のMOSFETで構成してもよい。スイッチング素子FET1およびFET2がpチャネル型の場合は、nチャネル型の場合と比べてソース電極とドレイン電極の接続先を入れ換える。また、開閉部は、所定の制御信号に基づいて開閉する種々のスイッチで構成してもよい。
【0016】
電流検出回路103およびシャント抵抗R1は、第1測定部の一例である。電流検出回路103は、シャント抵抗R1の両端のシャント抵抗間電圧VR1に基づいて、シャント抵抗R1に流れる充放電電流Iの電流値を検出する。
【0017】
電流検出回路103は、制御部101の制御のもと、充放電電流Iの検出レンジが設定される。電流検出回路103は、その検出レンジを用いて検出した充放電電流Iの電流値を制御部101へ出力する。以下では、入出力端子P1から蓄電池100に流れる充放電電流Iのことを充電電流I、蓄電池100から入出力端子P1に流れる充放電電流Iのことを放電電流Iと記載することがある。なお、充放電電流Iの測定方法は、シャント抵抗R1を用いた方法だけに限定されない。例えば、電流検出回路103は、電流クランプ等を用いて充放電電流Iを測定することにしてもよい。
【0018】
電流電圧検出回路104は、第2測定部の一例であり、入出力端子P1およびP2の間の端子間電圧Vを検出する。電流電圧検出回路104は、端子間電圧Vの電圧値を制御部101へ出力する。電流電圧検出回路104のインピーダンスZはシャント抵抗R1および負荷20と比べて高く設定されており、スイッチング素子FET1およびFET2がオンのときに電流電圧検出回路104に流れる電流Iは電流Iと比べて小さい。
【0019】
電池監視回路105は、第3測定部の一例であり、電池パック10に含まれる各蓄電池100のセル電圧Vを測定し、各蓄電池100の電池残量、電池温度等を含む電池状態を制御部101へ出力する。
【0020】
図1に示すように、入出力端子P1およびP2には、蓄電池100から電力供給を受ける負荷20を接続することができる。負荷20は、蓄電池100から供給される電力により所定の作動を行う。
【0021】
負荷20は、回生エネルギを生じさせるモータ、入射光を電気エネルギに光電変換する光電変換部などを有していてもよく、蓄電池100から電力供給を受けていないタイミングに、負荷20から蓄電池100に電力を供給することができる。なお、光電変換部は、負荷20と並列に入出力端子P1およびP2に接続してもよく、負荷20の内部に備わっていることにしてもよい。
【0022】
次に、電池パック10の入出力端子P1およびP2に充電器21が接続された場合について説明する。図2では、電池パック10の入出力端子P1およびP2に、充電器21が接続されている。充電器21は、入出力端子P1およびP2を介して蓄電池100へ電力を供給することができる。また、充電器21は、所定の端子を介して、電池パック10の制御部101との間で通信を行うことができる。
【0023】
蓄電システム1の制御部101は、その実行モードとして、放電モードと充電モードとを有する。蓄電システム1の制御部101は、図2に示すように、入出力端子P1およびP2に充電器21が接続されたとき、充電器21と通信を行い、充電モードの処理を実行する。一方で、蓄電システム1の制御部101は、図1に示すように、入出力端子P1およびP2に充電器21が接続されていないとき、放電モードの処理を実行する。
【0024】
(充電モード)
充電モードでは、制御部101は、FET制御回路102へFET制御信号を出力し、スイッチング素子FET1およびFET2をオンにさせ、入出力端子P1と蓄電池100との間の回路を閉じさせる。また、制御部101は、充電器21から蓄電池100に対して電力を供給させ、蓄電池100に向けて充電電流Iを流させる。このとき蓄電池100に向けて流れる充電電流Iは、第1充電電流の一例である。制御部101は、電流検出回路103から取得した充電電流Iの電流値と、電池監視回路105から取得した電池状態に関する情報とに基づいて、充電器21を制御する。例えば、制御部101は、充電電流Iの電流値が一定となるように充電器21を制御する。
【0025】
(放電モード)
図3を用いて、放電モードにおいて制御部101が行う制御について説明する。図3は、蓄電システム1が放電モードに移行したときの充放電電流Iの電流値の変化例と、その変化に基づいて行われるスイッチング素子FET1およびFET2のスイッチング制御の一例とを示すタイミングチャートである。
【0026】
図3に示すタイミングチャートにおいて、充放電電流Iの電流値は、蓄電池100に向けて充電電流Iが流れる場合に正の値となり、蓄電池100から放電電流Iが流れる場合に負の値となる。このように、放電モード時に蓄電池100に向けて流れる充電電流Iは、第2充電電流の一例である。
【0027】
図3に示す例では、入出力端子P1およびP2には、回生エネルギを供給可能なモータや、光電変換素子等を有する負荷20が接続されているものとする。蓄電システム1が放電モードにある期間、スイッチング素子FET1およびFET2は、原則オンになっており、負荷20から回生エネルギ等が供給されると、充電電流Iが流れる。
【0028】
負荷20が蓄電池100から供給される電力を消費せず、かつ、負荷20から蓄電池100へ電力が供給されていないとき、蓄電システム1の電池パック10は待機状態となる。例えば、負荷20が起動されていない場合には、電池パック10は待機状態となる。
【0029】
電池パック10が待機状態にあるとき、充放電電流Iの電流値は、|I|<Iの範囲の値となる。より詳細には、電池パック10が待機状態にあるとき、蓄電池100から流れる放電電流Iの電流値は、-I<I<0の範囲の値となり、蓄電池100に向けて流れる充電電流Iの電流値は、0<I<+Iの範囲の値となる。Iは、電流電圧検出回路104に流れる電流Iと電池パック10の自己消費電流との和であって、例えば0.1Aである。蓄電システム1は、充電電流Iの電流値が0<I<+Iのときに、蓄電池100のプリチャージを行うことができる。電池パック10が待機状態にある間に、セル電圧Vが所定値以下となった蓄電池100について、蓄電システム1は、負荷20から供給されたエネルギを用いて、当該蓄電池100に充電電流Iを流してプリチャージを行う。
【0030】
図3では、タイミングT0からタイミングT1までの期間、電池パック10が待機状態にあり、タイミングT1に負荷20から蓄電池100への電力供給が開始される。
【0031】
蓄電池100が満充電になると、蓄電池100の電池内部抵抗RCELLが高くなり、充電電流Iが低くなる。しかし、蓄電池100が満充電となった後にも充電電流Iが流れ続けると、蓄電池100は過充電となる。そこで、制御部101は、充電電流Iの電流値が所定の第1閾値IOFF以上になると、FET制御回路102を制御して、スイッチング素子FET1およびFET2をオフにさせる。第1閾値IOFFは、充電電流Iの電流値が第1閾値IOFFに達するまで蓄電池100を充電したとしても、蓄電池100が過充電とならない値である。第1閾値IOFFは、蓄電池100の電池容量が満充電領域に達し、蓄電池100の電池内部抵抗RCELLが上昇を始めるときの充電電流Iの電流値より小さい。第1閾値IOFFは、充電電流Iの最大値IMAXに安全率を乗じた値となる。最大値IMAXは、例えば、端子間電圧Vが電池電圧Vの1.25倍となるときの充電電流Iの電流値である。充電電流Iが最大値IMAXとなるときの端子間電圧Vと電池電圧Vとの比は、蓄電池100の電池特性によって異なり、設計段階に行われた試験等により定められる。安全率は、蓄電池100の電池特性を考慮して、0.8から0.9までの範囲内の値に決定される。図3の例では、タイミングT2に充電電流Iの電流値が第1閾値IOFF以上になっている。充電電流Iの電流値が第1閾値IOFF以上になったときにスイッチング素子FET1およびFET2をオフにし、入出力端子P1と蓄電池100との間の回路を開けさせることにより、蓄電池100が過充電となることを防ぐことができる。
【0032】
スイッチング素子FET1およびFET2がオフになると、充電電流Iの電流値が急峻に低下する。制御部101は、充電電流Iの電流値が所定の第2閾値IONより低くなると、スイッチング素子FET1およびFET2をオンに戻すようFET制御回路102を制御する。図3の例では、タイミングT3に充電電流Iの電流値が第2閾値ION以上になっている。第2閾値IONは、電池パック10の設計段階において、Iの2倍より高く、第1閾値IOFFより低い値に予め定められている。
【0033】
スイッチング素子FET1およびFET2がオフのとき、シャント抵抗R1には電流が流れないため、制御部101は、端子間電圧Vと電池電圧Vとの差に基づく以下の式(1)により、充電電流Iの電流値を算出する。ここで、Rは、シャント抵抗R1の抵抗値RSH、電池パック10の配線の抵抗値R、電池内部抵抗RCELL等の合成インピーダンスである。
=(V-V)/R …(1)
=RSH+R+RCELL
制御部101は、式(1)により充電電流Iの電流値を算出することで、充電電流Iの電流値が第2閾値IONより低いか否かを判定することができる。
【0034】
以降、制御部101は、充電電流Iの電流値が第1閾値IOFF以上になるとスイッチング素子FET1およびFET2がオフになるようにFET制御回路102を制御する(例えば、タイミングT4,T6)。そして、充電電流Iの電流値が第2閾値IONより低くなるとスイッチング素子FET1およびFET2をオンに戻すようFET制御回路102を制御する(例えば、タイミングT5)。負荷20からの電力供給が停止すると、待機状態を経て、蓄電池100から負荷20への放電が始まる(タイミングT7以降)。
【0035】
図4は、蓄電システム1が放電モードにあるときに実行される、スイッチング素子FET1およびFET2のスイッチング制御の処理に関するフローチャートである。制御部101は、図4に示す一連の処理を所定の実行周期で繰り返し実行する。図4に示す一連の処理の開始時、スイッチング素子FET1およびFET2はオンになっており、入出力端子P1と蓄電池100との間の回路は閉じているものとする。
【0036】
S400において、制御部101は、電流検出回路103により検出される充放電電流Iの電流値が第1閾値IOFF以上になったか否かを判定する。制御部101は、充放電電流Iの電流値が第1閾値IOFF以上になったとき(S400:YES)、スイッチング素子FET1およびFET2がオフになるようにFET制御回路102へFET制御信号を出力する(S401)。一方、充放電電流Iの電流値が第1閾値IOFF未満になったとき(S400:NO)、その実行周期における図4の処理を終了する。
【0037】
続くS402において、制御部101は、充放電電流Iの電流値が第2閾値ION未満になったか否かを判定する。制御部101は、式(1)により算出された充放電電流Iの電流値が第2閾値ION未満に低下するまで、スイッチング素子FET1およびFET2をオフのまま維持する(S402:NO)。制御部101は、式(1)により算出された充放電電流Iの電流値が第2閾値ION未満になると(S402:YES)、スイッチング素子FET1およびFET2をオンに戻すようにFET制御回路102へFET制御信号を出力する(S403)。制御部101は、スイッチング素子FET1およびFET2をオンに戻した後、その実行周期における図4の処理を終了する。
【0038】
[付記事項]
また、本開示は下記のように表現する事もできる。
【0039】
本開示の一態様に係る蓄電システムは、蓄電池と、負荷および充電器を接続可能な入出力端子と、前記入出力端子と前記蓄電池との間の回路を開閉する開閉部と、前記回路に流れる電流を測定する第1測定部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記入出力端子に前記充電器が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記充電器から前記蓄電池に向けて第1充電電流を流させる充電モードと、前記入出力端子に前記負荷が接続されているときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせて、前記入出力端子を介して前記蓄電池から前記負荷に向けて放電電流を流させる放電モードと、を有し、前記放電モードにおいて、前記入出力端子を介して前記蓄電池に向けて第2充電電流が流れたときに、前記第1測定部により測定される前記第2充電電流の電流値が第1閾値に達するまで前記開閉部に前記回路を閉じさせ、前記第2充電電流の電流値が第1閾値以上となると前記開閉部に前記回路を開けさせ、前記回路が開いた後に前記第2充電電流が前記第1閾値よりも小さい第2閾値未満となると前記開閉部に前記回路を閉じさせる。
上記構成によれば、制御部が放電モードにある場合であっても、蓄電池の充電を行うことができる。
【0040】
本開示の一態様に係る蓄電システムでは、前記第2充電電流は、前記負荷で電力が生じたときに前記負荷から前記蓄電池に向けて流れる電流である。
充電モードと放電モードとを有する従来の蓄電システムでは、放電モード時に蓄電池に向けて充電電流が流れた場合に、蓄電システムが誤作動したものとして検知される。このようなシステムでは、負荷側で回生エネルギ等が発生したとしても、そのエネルギを有効に利用して蓄電池の充電を行うことができなかった。
上記構成によれば、負荷側で電力が生じた場合であっても、蓄電池の充電を行うことができる。
【0041】
本開示の一態様に係る蓄電システムでは、前記第1閾値は、前記第2充電電流の電流値が前記第1閾値に達するまで前記蓄電池を充電したとしても前記蓄電池が過充電とならない値に設定される。
上記構成によれば、放電モード時に蓄電池を充電する場合に、蓄電池が過充電となることを防ぐことができる。
【0042】
本開示の一態様に係る蓄電システムでは、前記入出力端子間の電圧を測定する第2測定部と、前記蓄電池の出力電圧を測定する第3測定部と、を更に備え、前記制御部は、前記入出力端子間の電圧が前記蓄電池の出力電圧の定数倍より小さいとき、前記回路が開いた後に前記第2充電電流が前記第2閾値未満になったか否か判定する。
上記構成によれば、入出力端子と前記蓄電池との間の回路を開いた後であっても、入力端子間の電圧と、蓄電池の出力電圧とに基づいて、第2充電電流が第2閾値未満になったと判定することができる。
【0043】
本開示の一態様に係る蓄電システムでは、前記制御部は、前記回路が開いた後に、前記第1測定部により測定された前記第2充電電流が前記第1閾値よりも小さいと判定され、かつ、前記第2充電電流が前記第2閾値未満になったと判定されたときに、前記開閉部に前記回路を閉じさせる。
上記構成によれば、入出力端子と前記蓄電池との間の回路が開いているにも関わらず、漏電等により第2充電電流が急峻に低下しない異常が発生している場合には、充放電を停止させることができる。
【0044】
〔ソフトウェアによる実現例〕
蓄電システム1の電池パック10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部101に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0045】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 蓄電システム
20 負荷
21 充電器
101 制御部
102 FET制御回路
103 電流検出回路
104 電流電圧検出回路
105 電池監視回路
I2 充放電電流
FET1、FET2 スイッチング素子
OFF 第1閾値
ON 第2閾値
P1、P2 入出力端子
R1 シャント抵抗
V1 端子間電圧
V2 電池電圧
図1
図2
図3
図4