(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097700
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001355
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昂太
(72)【発明者】
【氏名】吉野 太一
(72)【発明者】
【氏名】田村 明彦
(57)【要約】
【課題】点検対象に容易にアクセスできる建設機械の提供。
【解決手段】建設機械である油圧ショベル1は、走行装置を備えた下部走行体2と、下部走行体2の上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に装着される作業装置4と、を備え、上部旋回体3は、上部旋回体3の後部に設けられた外装カバーC1と、上部旋回体3の右部に設けられた外装カバーC2と、上部旋回体3の左前部に設けられた運転室6と、を有する。そして、油圧ショベル1は、上部旋回体3の前後方向に対して、作業装置4と外装カバーC1との間、かつ、上部旋回体3の左右方向に対して、外装カバーC2と運転室6との間に設けられ、踏面に滑り止めを有する足場10、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備えた下部走行体と、
前記下部走行体の上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記上部旋回体の前部に装着される作業装置と、を備え、
前記上部旋回体は、
前記上部旋回体の後部に設けられた第1外装カバーと、
前記上部旋回体の右部に設けられた第2外装カバーと、
前記上部旋回体の左前部に設けられた運転室と、
を有する建設機械において、
前記上部旋回体の前後方向に対して、前記作業装置と前記第1外装カバーとの間、かつ、前記上部旋回体の左右方向に対して、前記第2外装カバーと前記運転室との間に設けられ、踏面に滑り止めを有する足場、を備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記足場の前記踏面には、凸部で構成される第1の曲面と、凹部で構成される第2の曲面とが、前記踏面の長手方向に交互に形成され、
前記第1の曲面は、前記長手方向に関して上方に突出し、湾曲した曲面で構成され、
前記第2の曲面は、前記長手方向と直交する短手方向に関して上方に突出し、湾曲した曲面で構成されることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記運転室の外周面および前記第2外装カバーの外周面の少なくとも一方に、取手を設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
前記取手は、前記運転室の外周面に設けられ、
前記運転室の上面側に配置される第1の把持部と、前記運転室の前面側に配置される第2の把持部とを含むことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記上部旋回体の前後方向に対して、前記作業装置と前記第1外装カバーとの間であり、かつ、車幅方向に対して、前記第2外装カバーと前記運転室との間である位置に設けられる収納ボックスをさらに備え、
前記足場は、前記収納ボックスの天板により形成されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、運転室、エンジンおよび作業装置等を備えた上部旋回体と、走行用の油圧モータを備えて自走可能な下部走行体とで構成される。運転室の上部には、作業状態等を報知する回転灯、車体の周囲を照らす作業灯、そして、カウンターウェイト後方を確認するためのミラーが設置されることがある。また、上部旋回体に設けられているエンジンにはオルタネータが組み付けられており、エンジンやオルタネータ等が格納されるエンジン室を画定する外装カバーにはオルタネータ点検用のカバー開閉部が設けられていることがある。
【0003】
作業員は、運転室に設けられた回転灯、作業灯、ミラーやエンジン室内に設けられたオルタネータ等の状態を定期的に点検することで、それらを正常な状態に維持する。一般的に、油圧ショベルの車体の外からこれらの部位にアクセスし、メンテナンス作業を行うためには、油圧ショベルの車体の外周に作業台や脚立を用いて高所に足場を確保する必要があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている油圧ショベルでは、旋回フレームの外周にステップを有する収納ボックスを備えるようにしている。そして、オペレータが収納ボックスを昇降することにより、キャブ(運転室)の清掃作業や燃料タンクへの給油作業等を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、旋回フレームの外周に設けられたステップを点検作業の足場とする場合、運転室やエンジンの外装カバーまでの距離が遠くなる。そのため、ステップから離れた部位(点検対象)に対してアクセスするのが難しく、作業姿勢が不安定になり易い。
【0007】
本発明の目的は、点検対象に容易にアクセスできる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様による建設機械は、走行装置を備えた下部走行体と、前記下部走行体の上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に装着される作業装置と、を備え、前記上部旋回体は、前記上部旋回体の後部に設けられた第1外装カバーと、前記上部旋回体の右部に設けられた第2外装カバーと、前記上部旋回体の左前部に設けられた運転室と、を有する建設機械において、前記上部旋回体の前後方向に対して、前記作業装置と前記第1外装カバーとの間、かつ、前記上部旋回体の左右方向に対して、前記第2外装カバーと前記運転室との間に設けられ、踏面に滑り止めを有する足場、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点検対象に容易にアクセスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る建設機械である油圧ショベルを車両右側から見た側面図である。
【
図2】
図2は、油圧ショベルを真上から見た平面図である。
【
図3】
図3は、油圧ショベルを前方右斜め上から見た図である。
【
図4】
図4は、外装カバーの内側に設けられた主要機器の配置を示す図である。
【
図5】
図5は、上部旋回体の取手が設けられている部分を車両右側から見た図である。
【
図6】
図6は、上部旋回体を後方右斜め上から見た図である。
【
図7】
図7は、運転室を後方右斜め上から見た図である。
【
図8】
図8は、運転室に設けられる取手の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0012】
図1~3は、本発明に係る建設機械の一例を示す図であり、油圧ショベル1の外観を示す図である。
図1は、油圧ショベル1を車両右側から見た側面図である。
図2は、油圧ショベル1を上方から見た平面図である。
図3は、作業装置4を取り外した状態の油圧ショベル1を、前方右斜め上から見た図である。なお、本明細書においては、油圧ショベル1の上下方向および前後左右方向を
図1,2に示すように定義するものとする。なお、前後左右方向とは、運転室6に設けられた運転席(シート)に着座したオペレータを基準とした前後左右を表す。
【0013】
油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2の上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に装着された作業装置4とを備えている。
【0014】
下部走行体2は、左右の履帯(クローラ)21を備えるクローラ式の走行体である。左右の履帯21は、下部走行体2のトラックフレーム22に設けられた左右の走行駆動装置23により駆動される。左右の履帯21を前転、後転させることで油圧ショベル1を移動させることができる。走行駆動装置23は、走行用油圧モータと減速機とを備えている。トラックフレーム22の前側には、排土装置としてのブレード24が設けられている。なお、本実施の形態では、下部走行体2をクローラ式の走行体としたが、下部走行体2をホイール式の走行体としても良い。
【0015】
上部旋回体3のメインフレーム(旋回フレームとも呼ばれる)31は、旋回輪32を介して下部走行体2の上に設けられている。旋回輪32を不図示の旋回用油圧モータで駆動することにより、上部旋回体3が下部走行体2に対して旋回する。上部旋回体3のメインフレーム31の上には、運転室6、カウンターウェイト7、後述する不図示のエンジン51、油圧ポンプ52、オルタネータ56、作動油タンク57等(後述する
図4参照)が搭載されている。
【0016】
作業装置4は、ブーム41、アーム42およびバケット43と、それらを稼働させるための油圧シリンダとして、ブームシリンダ44、アームシリンダ45およびバケットシリンダ46を備えている。ブーム41の下端は、メインフレーム31の前側に設けられた支持ブラケット(スイングポスト)33に取り付けられる。ブームシリンダ44の伸縮動作により、ブーム41の上げ・下げの動作(起伏動作)を行わせる。アームシリンダ45の伸縮動作により、アーム42のクラウド・ダンプ動作を行わせる。バケットシリンダ46の伸縮動作により、バケット43のクラウド・ダンプ動作を行わせる。なお、ブーム41の上げ動作は
図1に示す状態が限度であって、ブーム41は
図1に示す状態よりも後方には移動しない。
【0017】
図2に示すように、上部旋回体3の前端に作業装置4が設けられ、上部旋回体3の後端にはカウンターウェイト7が設けられている。作業装置4の後方であって、上部旋回体3の左前側には運転室6が設けられている。
【0018】
運転室6および後述するエンジン51、油圧ポンプ52、オルタネータ56、作動油タンク57等の各機器は上部旋回体3のメインフレーム31によって支持されている。メインフレーム31上に設けられたこれらの機器は、外装カバーC1,C2によって保護されている。符号R1を付した領域に設けられている外装カバーC1は、エンジン51およびエンジン51に関係する機器を保護するカバーである。符号R2を付した領域に設けられている外装カバーC2は、作動油タンク57等を保護するカバーである。なお、本実施形態では、領域R1にエンジン51が設けられ領域R2に作動油タンク57が設けられているので、エンジン51および作動油タンク57が外装カバーC1,C2の保護対象であった。しかしながら、外装カバーC1,C2の保護対象はエンジン51や作動油タンク57に限定されるものではない。
【0019】
図4は、外装カバーC1,C2の内側に設けられている主要な機器の配置を、ハッチングを施した矩形で示したものである。外装カバーC1の左右方向のほぼ中央には、原動機であるエンジン51が配置されている。エンジン51の左側には、エンジン51により駆動される油圧ポンプ52が設けられている。エンジン51の右側には冷却ファン53が設けられており、その冷却ファン53の右側にはラジエータ54およびオイルクーラ55が配置されている。エンジン51の前側には、エンジン51に組付けられたオルタネータ56が配置されている。エンジン51によりオルタネータ56を駆動して得られる電力は、作業灯や表示装置等の種々の補機に供給される。外装カバーC1には、オルタネータ56の状態を点検するための点検作業用カバーC11(
図2参照)が設けられている。一方、外装カバーC2の内側には、作動油タンク57および燃料タンク58が設けられている。なお、外装カバーC1で保護する対象はエンジンに限らず、例えば、電動式建設機械(バッテリー駆動式建設機械)の場合には、電動式建設機械の動力源であるバッテリーであっても良い。
【0020】
図2,3に示すように、外装カバーC2は運転室6の右側に配置され、外装カバーC1は運転室6および外装カバーC2の後ろ側に配置されている。本実施の形態の油圧ショベル1においては、運転室6と外装カバーC2との間に形成された隙間領域R3に、点検作業時に利用可能な足場10が設けられている。足場10が設けられている隙間領域R3は、作業装置4(スイングポスト33を含む)、運転室6、外装カバーC1および外装カバーC2よって囲まれたメインフレーム上の領域であって、スイングポスト33の後方に位置する領域である。さらに、隙間領域R3を挟んで配置されている運転室6および外装カバーC2の各外周面には、オペレータが足場10上で点検作業を行う際に掴んで姿勢安定に使用する手摺、すなわち、取手11,12が設けられている。本実施の形態では、足場10を挟んで設けられた運転室6および外装カバーC2の両方に取手を設けたが、少なくとも一方に取手を設ける構成であっても良い。なお、取手11,12は、ハンドレール、ハンドホールド、手摺などとも呼ばれる。
【0021】
なお、
図3に示す例では、隙間領域R3のメインフレーム31上に固定された収納ボックス13の天板を足場10とする構成とした。天板は収納ボックス13の蓋を構成しており、足場10と兼用される天板を上方に開けることで、工具等の物品を収納ボックス13に出し入れする。もちろん、隙間領域R3に収納ボックスを配置せず、独立した足場10をメインフレーム31上に直接設けるような構成としても良い。足場10は、例えば、合成ゴムや合成樹脂等で形成されるが、これらに限定されない。
【0022】
油圧ショベル1においては、定期的に点検すべき箇所が複数ある。
図5~7は、取手11,12および点検対象の詳細を示す図である。
図5は上部旋回体3を車両右側から見た図であって、取手11,12が設けられている部分を拡大表示したものである。
図6は、上部旋回体3を後方右斜め上から見た図である。また、
図7は、運転室6を後方右斜め上から見た図である。取手11は、運転室6の上部外周面(屋根)に設けられた把持部11aと、運転室6の前部外周面に設けられた把持部11bとを有し、把持部11aと把持部11bとは連続して形成されている。一方、外装カバーC2に設けられた取手12は、カバー上面からカバー前面にかけて湾曲するように形成されている。
図6に示すように、取手11は運転室6の足場側に設けられ、取手12は外装カバーC2の足場側に設けられている。
【0023】
なお、
図5等に示す例では、運転室6に設けられる取手11に関して、運転室6の屋根に設けられた把持部11aと、運転室6の前面に設けられた把持部11bとを連続して一体に形成した。しかし、
図8に示すように、取手11の把持部11aと把持部11bとを個別に形成しても良い。足場10の後ろ側領域で作業を行う場合には、後ろ側の把持部11aを利用し、足場10の前側領域で作業を行う場合には前側の把持部11bを利用することができる。また、足場10に乗降する際には、前側の把持部11bを利用することで、乗降がしやすくなる。
【0024】
オペレータは、足場10に乗降する際に取手11,12を掴むことにより、容易に乗降動作を行うことができる。また、足場10上において後述する点検対象を点検する際には、オペレータは不安定な姿勢も要求されるが、取手11,12を掴むことによって、点検姿勢を安定的に維持することができる。
【0025】
点検対象としては、まず、外装カバーC1内に設けられたオルタネータ56(
図4参照)が挙げられる。オルタネータ56は、外装カバーC1に設けられた点検作業用カバーC11の下に配置されている。オペレータは、足場10の後端側へ移動することで、点検作業用カバーC11を開けてオルタネータ56の点検作業を容易に行うことができる。
【0026】
図6に示すように、運転室6の上部右側には、夜間に前方を照らす作業灯61が取り付けられている。さらに、運転室6の後部には、後方を確認する為のミラー62が設けられている。また、
図7に示すように、運転室6の後部に、周囲に警告を発する為の回転灯63を取り付ける場合もある。オペレータは、足場10の後端に移動し、取手11,12を掴むことで、運転室6の後部に設けられたミラー62や回転灯63の点検作業を容易に行うことができる。
【0027】
また、
図2に示すように、ブーム41の左側側面には、夜間にブーム前方を照らすブーム作業灯411が設けられている。足場10上のオペレータは、足場10の前端に移動し、取手11を掴みながら作業装置4の方向に上体を乗り出すことにより、ブーム作業灯411の点検作業を容易に行うことができる。
【0028】
図9は、足場10の一部を詳細に示す図である。足場10は、
図2に示すように上部旋回体3の前後方向、すなわち上部旋回体3が車両前方を向いている場合の車両前後方向に長く延在している。足場10の踏面には、凸部10aと凹部10bとが踏面の長手方向(上部旋回体3の前後方向)に交互に設けられている。凸部10aの頂部の曲面101は、踏面の長手方向(前後方向)に関して上方に突出するように湾曲した、すなわち上に凸に湾曲した面である。凹部10bの底部の曲面102は、長手方向と直交する短手方向(左右方向)に関して上に凸に湾曲し、長手方向(前後方向)に関しては下に凸に湾曲している。なお、
図9では、曲面102の前後方向の湾曲形状を下に凸としているが、上に凸の湾曲形状としても良い。曲面101の左右方向の両端には、上方に突出した壁部103が形成されている。
【0029】
このように、足場10は、滑り止めとして機能する曲面101,102間の段差および壁部103を有している。そのため、作業靴の底が段差の角部や、突出するように立設された壁部103により係止されることで、オペレータは足場10上において点検作業を安定して行うことができる。
【0030】
また、曲面101,102を
図9に示すような形状とすることで、泥等の堆積物が足場10上に溜まってしまうのを抑制することができる。
図9において、曲面101,102上に描かれた矢印は、曲面101,102上における堆積物の流れを示したものである。曲面101は前後方向中央から前後方向両端に向かって下り勾配になっているので、曲面101上の堆積物は前後方向に流れ落ちることになる。すなわち、曲面102の上に流れ落ちる。また、曲面102は左右方向中央から左右方向両端に向かって下り勾配になっているので、曲面102上の堆積物は左右方向に流れ落ちることになる。作業装置4による掘削作業時には、土砂等が足場10の上に落ちる場合がある。しかし、曲面101,102上の堆積物は上述したように流れ落ちる傾向にあるので、足場10上に堆積物が溜まるのを抑制することができ、点検作業への悪影響を低減することができる。
【0031】
図10は足場10の変形例1を示す図であり、
図10の足場10Aでは、曲面101に代えて平面101Aを凸部10aの頂部に形成し、曲面102に代えて平面102Aを凹部10bの底部に形成した。足場10Aを
図9に示す足場10と比較した場合、土砂の堆積抑制効果は劣るが、滑り止めとしての効果は足場10の場合と同様の効果を奏する。滑り止めの他の構成としては、
図11に示す変形例2の足場10Bのように踏面に凸部104を多数形成しても良いし、多数の孔部を形成したパンチングメタル等で構成しても良い。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、作業装置4、運転室6、エンジン51やオルタネータ56等を覆う外装カバーC1および作動油タンク57等を覆う外装カバーC2によって囲まれた隙間領域R3に、オペレータが点検作業を行うことができる足場10を設けた。点検対象としては、運転室6の前部に設けられた作業灯61、運転室6の後部に設けられたミラー62や回転灯63、点検作業用カバーC11の下に設けられたオルタネータ56、ブーム41に設けられたブーム作業灯411等がある。これらの点検対象は、足場10を中心とした周囲の構造体(作業装置4、運転室6、点検作業用カバーC11)に配置されているので、足場10から容易にアクセスすることができる。そのため、点検対象にアクセスするための作業台や脚立等が不要となり、従来のように油圧ショベル1の周囲に作業空間が確保できる作業場所を確保する必要が無くなる。
【0033】
また、足場10の踏面(上面)には滑り止めが施され、さらに、足場10が設けられた隙間領域R3を挟んで配置された運転室6および外装カバーC2の外周面に取手11,12が設けられている。そのため、オペレータは、取手11,12を掴むことで、安定した姿勢を維持しつつ点検作業を行うことができる。特に、
図9に示す足場10においては、足場10の踏面が、上に凸となる湾曲した曲面101,102で構成されているので、曲面101,102上に堆積した泥等の堆積物が曲面101,102から容易に落下する。その結果、足場10上に乗ったオペレータが、堆積物によって足を滑らして転倒したり、足場10から滑落したりするのを防止することができる。
【0034】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0035】
(1)
図1~4等に示すように、建設機械である油圧ショベル1は、走行装置(走行駆動装置23および履帯21)を備えた下部走行体2と、下部走行体2の上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に装着される作業装置4と、を備え、上部旋回体3は、上部旋回体3の後部に設けられた外装カバーC1と、上部旋回体3の右部に設けられた外装カバーC2と、上部旋回体3の左前部に設けられた運転室6と、を有する。そして、油圧ショベル1は、上部旋回体3の前後方向に対して、作業装置4と外装カバーC1との間、かつ、上部旋回体3の左右方向に対して、外装カバーC2と運転室6との間に設けられ、踏面に滑り止めを有する足場10、を備える。
【0036】
足場10は、上部旋回体3の前後方向に対して、作業装置4と外装カバーC1との間、かつ、上部旋回体3の左右方向に対して、外装カバーC2と運転室6との間に設けられている。そのため、足場10の上に乗ることによって、オペレータは足場10の周囲の作業装置4、運転室6および外装カバーC1の内部に設けられた点検対象に、容易にアクセスすることができる。その結果、点検対象にアクセスするための作業台や脚立等が不要となり、油圧ショベル1の周囲に作業空間が確保できる作業場所を確保する必要が無い。また、例えば、従来のように点検作業の足場として旋回フレームの外周にステップを突出して設ける構成の場合には、運転席に着座したオペレータの視界を悪くする可能性がある。しかし、上述した実施形態ではそのようなステップは必要とせず、視界を良好に保つことができる。
【0037】
(2)上記(1)において、
図9等に示すように、足場10の踏面には、凸部10aで構成される第1の曲面101と、凹部10bで構成される第2の曲面102とが、踏面の長手方向(上部旋回体3の前後方向)に交互に形成され、第1の曲面101は、長手方向(上部旋回体3の前後方向)に関して上方に突出し、湾曲した曲面で構成され、第2の曲面102は、長手方向と直交する短手方向(上部旋回体3の左右方向)に関して上方に突出し、湾曲した曲面で構成される。
【0038】
曲面101は前後方向中央から前後方向両端に向かって下り勾配になっているので、曲面101上の堆積物は前後方向に流れ落ちる傾向を有する。また、曲面102は左右方向中央から左右方向両端に向かって下り勾配になっているので、曲面102上の堆積物は左右方向に流れ落ちる傾向を有する。その結果、曲面101,102上に堆積物が溜まるのを抑制することができ、点検作業への悪影響を低減することができる。さらに、
図9に示す例では、曲面102は
図9の前後方向に関して凹形状に湾曲している。そのため、雨水が、曲面102の前後方向中央部分に集まりつつ左右方向に流れ落ちることになり、前後方向に湾曲していない場合に比べて、曲面102に付着した泥などが雨水により流れ落ちやすくなる。
【0039】
(3)上記(1)または(2)において、
図2,5等に示すように、運転室6の外周面および外装カバーC2の外周面の少なくとも一方に、取手11,12を設けたことを特徴とする建設機械。このように足場10が設けられた隙間領域R3を挟んで配置された運転室6および外装カバーC2に取手11,12を設けたので、足場10上のオペレータは、取手11,12を掴むことで安定した姿勢を維持しつつ点検作業を行うことができる。
【0040】
(4)上記(3)において、
図5,8等に示すように、取手11は、運転室6の外周面に設けられ、運転室6の上面側に配置される第1の把持部11aと、運転室6の前面側に配置される第2の把持部11bとを含む。足場10の後ろ側で作業を行う場合には後ろ側の把持部11aを利用し、足場10の前側で作業を行う場合には前側の把持部11bを利用することができる。また、足場10に乗降する際には、前側の把持部11bを利用することで、乗降がしやすくなる。
【0041】
(5)上記(1)において、
図3,4等に示すように、上部旋回体3の前後方向に対して、作業装置4と前記第1外装カバーとの間であり、かつ、車幅方向に対して、外装カバーC2と運転室6との間である位置(隙間領域R3)に設けられる収納ボックス13をさらに備え、足場10は、収納ボックス13の天板により形成されている。足場10が収納ボックス13の天板により形成されているので、部品点数およびコストの低減を図ることができる。
【0042】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…油圧ショベル、2…下部走行体、3…上部旋回体、4…作業装置、6…運転室、10,10A,10B…足場、10a,104…凸部、10b…凹部、11,12…取手、11a,11b…把持部、13…収納ボックス、21…履帯、23…走行駆動装置、32…旋回輪、51…エンジン、56…オルタネータ、57…作動油タンク、61…作業灯、62…ミラー、63…回転灯、101,102…曲面、101A,102A…平面、411…ブーム作業灯、C1,C2…外装カバー、C11…点検作業用カバー、R3…隙間領域