(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097701
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】コーヒードリッパー
(51)【国際特許分類】
A47J 31/02 20060101AFI20240711BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A47J31/02
A47J31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001359
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】593009745
【氏名又は名称】株式会社三洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】100188248
【弁理士】
【氏名又は名称】丹生 哲治
(72)【発明者】
【氏名】中塚 茂次
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA02
4B104BA45
4B104BA77
4B104EA30
(57)【要約】
【課題】菊花紋型のドリッパーの特長を維持したまま、抽出する杯数に拘わりなく、仮に1~2杯の少ないコーヒー抽出時であっても、コーヒー粉層の中心部に湯を注ぐのみで効率的なコーヒーの深層濾過が可能なコーヒードリッパーを提供する。
【解決手段】円錐型ペーパーフィルター11が装着される円錐型のドリッパー本体12の内周面の略全域に、下方へ向って徐々に先細りする断面円弧状の複数の花弁形溝部13と、上下方向へ延びる複数のリブ14とが、菊花紋状に周方向へ交互に配設されたコーヒードリッパー10において、各リブ14の内縁に接する仮想円錐Cの頂角を26°~29°とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐型コーヒーフィルターが装着される円錐型のドリッパー本体の内周面の略全域に、下方へ向って徐々に先細りする断面円弧状の複数の花弁形溝部と、上下方向へ延びる複数のリブとが、菊花紋状に周方向へ交互に配設されたコーヒードリッパーにおいて、
前記ドリッパー本体は、前記各リブの内縁に接する仮想円錐の頂角が26°~29°となるものであることを特徴とするコーヒードリッパー。
【請求項2】
前記円錐型コーヒーフィルターはコーヒー1,2杯用のペーパーフィルターで、
前記リブの本数は10本で、
前記各リブのリブ高さは2mm~3.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のコーヒードリッパー。
【請求項3】
前記仮想円錐の頂角は27°で、
前記各リブは、それぞれ下方へ進むほど前記ドリッパー本体の内周面からのリブ高さが徐々に増大し、
該各リブ高さは、前記各リブの長さ方向の中間部が2mm~2.5mm、該各リブの下端部が3mm~3.5mmで、
前記ドリッパー本体の下端に穿設されたコーヒーの流下穴の高さ位置における、前記仮想円錐の直径が12mm~14mmで、
前記ドリッパー本体の下端部の外周面には、鍔状の受皿板が周設され、
前記ドリッパー本体の流下穴の形成部には、抽出されたコーヒーの垂直な流下を促す流下路部が、前記各花弁形溝部の下端部分と前記各リブの下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で下方へ延設され、
前記受皿板の中央部付近の下面には、前記流下路部の周りに配置され、かつ下端開口が前記流下穴より下方に配された流下路部カバー筒が垂設され、
前記受皿板の外周部の下面には、各下縁の高さ位置が、前記流下路部の下端より下方で、かつ前記流下路部カバー筒の下端開口より上方とした複数の載置フランジを、前記流下穴を中心とした放射状に離間して配設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコーヒードリッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円錐型コーヒーフィルターを用いてコーヒーを抽出する際に使用されるコーヒードリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーの抽出方法には、フレンチプレスのように、コーヒー豆を湯に漬け込む浸漬式と、コーヒードリッパー(以下、ドリッパーという場合がある)を使用して、コーヒー粉に湯をかけてフィルターで濾す透過式とがある。
透過式は、抽出時間や抽出温度を調節することで、浸漬式よりコーヒーの味わいを変化させやすく、上達すれば狙った味わいを出せることから、今日の主流となっている。
【0003】
ところで、コーヒーの味には、主に酸味と、甘味と、苦味・雑味との3つがあると言われている。これらの味の強度(濃さ)のピークは、抽出時間の経過とともに酸味から甘味、そして苦味・雑味へと変化する。
特に、コーヒーの良質な成分である酸味と甘味とは、その多くが抽出の前半に生じるため、より早くコーヒーの抽出が可能なドリッパーがユーザーから要請されている。すなわち、このように抽出速度が早いドリッパーほど、ユーザーが狙ったコーヒーの味わいを引き出し易くなる。
【0004】
これを実現するものとして、例えば、円錐型のドリッパー本体を有するコーヒードリッパー(以下、ドリッパーという場合がある)が普及している。特に、ドリッパー本体の内周面に、周方向へ所定ピッチで軸線方向(上下方向)に延びる複数本のリブが突設されたものがある。
リブ付ドリッパーのコーヒー抽出時には、ドリッパー本体の内側、具体的には各リブの内縁に円錐型コーヒーフィルター(以下、フィルターという場合がある)を装着し、フィルターにコーヒー粉を投入して湯を注ぐ。これにより、コーヒー粉からコーヒーが抽出され、抽出されたコーヒーはフィルターを透過し、リブの内縁とドリッパー本体の内周面との隙間(空気層)を通過して、ドリッパー直下のコーヒーサーバーやコーヒーカップに短時間で流下する。
【0005】
ところで、近年、リブ付ドリッパーの一種として、ドリッパー本体の内周面を菊花紋状に深堀りしたフラワードリッパー(登録商標、菊花紋型のドリッパー)が開発されている(例えば、特許文献1など)。
フラワードリッパーは、このようにドリッパー本体の内周面に複数の花弁形溝部を深堀することで、ドリッパー本体の内周面には、周方向へ所定ピッチで、従来品より高さのある複数のリブ(フラワーリブ)が突設される。
これにより、フィルターとドリッパー本体の内周面との間には、従来品より大きいコーヒーの通り道が現出し、コーヒーの杯数、コーヒー豆の種類・焙煎度、コーヒー粉の粒子等によるコーヒーの味のコントロールが容易となり,抽出毎のバラつきも抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のフラワードリッパーにあっては、ドリッパー本体の内周面を菊花紋状に深堀りしてコーヒーの抽出速度を早めたため、上品で口当たりの軽い調和のとれた旨味は得易いものの、なめらかさ(新鮮さ)や風味とコクのある後味は得にくかった。
【0008】
一方、特許文献1のフラワードリッパーは、円錐型コーヒーフィルターが接するドリッパー本体の各リブの内縁に接した仮想円錐の頂角が、60°と大きかった。
そのため、円錐型コーヒーフィルター内のコーヒー粉層が浅くなり、1~2杯分の少ないコーヒー抽出時に、コーヒー豆の種類及び焙煎、コーヒー粉の粒度、コーヒーの抽出温度等に応じて、この浅く広がったコーヒー粉層に均一かつ広範囲に湯をかける必要があった。
【0009】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、菊花紋型のドリッパーのドリッパー本体の各リブの内縁に接した仮想円錐の頂角を26°~29°とすれば、従来のフラワードリッパーに比べてコーヒー粉層が厚くなることから、仮に1~2杯のコーヒー抽出時であっても、コーヒー豆の種類及び焙煎、コーヒー粉の粒度、コーヒーの抽出温度等に応じてコーヒー粉層に均一かつ広範囲に湯をかけることなく、コーヒー粉層の中心部に湯を注ぐだけで効率的なコーヒーの深層濾過が可能となり、上品で口当たりのよい調和のとれた旨味と、なめらかさに風味とコクのある後味が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、菊花紋型のドリッパーの特長を維持したまま、抽出する杯数に拘わりなく、例えば1~2杯の少ないコーヒー抽出時であっても、コーヒー粉層の中心部に湯を注ぐのみで効率的なコーヒーの深層濾過が可能なコーヒードリッパーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、円錐型コーヒーフィルターが装着される円錐型のドリッパー本体の内周面の略全域に、下方へ向って徐々に先細りする断面円弧状の複数の花弁形溝部と、上下方向へ延びる複数のリブとが、菊花紋状に周方向へ交互に配設されたコーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体は、前記各リブの内縁に接する仮想円錐の頂角が27°~29°となるものであることを特徴とするコーヒードリッパーである。
【0012】
円錐型コーヒーフィルターの素材は任意である。例えば、各種の紙、各種の不織布、各種の織布(フランネル)、各種の金属、各種のセラミックなどを採用することができる。
円錐型コーヒーフィルターの形状は、ドリッパー本体に装着可能であれば任意である。ただし、扇状に折り畳んだ際の頂角が42°前後で、円錐状に広げて使用する際の頂角が27°前後(26°~29°)のものが好ましい。
円錐型コーヒーフィルターのサイズは限定されない。例えば、1杯用でも、2杯用または3杯以上用でもよい。
【0013】
円錐型のドリッパー本体には、すり鉢状の胴部の上端に、円錐型コーヒーフィルターの挿入口となる大径な上端開口が形成される一方、この胴部の下端に、抽出されたコーヒーの排出口となる、上端開口より小径な流下穴が形成されたものである。
ドリッパー本体の素材は任意である。例えば、各種のプラスチック、各種のセラミック、各種の金属などを採用することができる。
この円錐型コーヒーフィルターは、その下向きの頂上部を、ドリッパー本体の流下穴から下方へ突出させた状態でドリッパー本体に装着される。
【0014】
菊花紋とは、キク科キク属のキク(菊)を図案化した菊紋のうち、特に花の部分を中心に図案化した家紋のことである。菊花紋の種類は任意である。
花弁形溝部の数は任意である。例えば、4枚、6枚、8枚、10枚、12枚、または14枚以上などでもよい。また、隣接する花弁形溝部の間に配されるリブの数は、この花弁形溝部の数に応じて適宜変更される。
花弁形溝部の重なりは、一重でも八重でもよい。また、ドリッパー本体の上端開口の形状は、平面視して単なる円形でも、各花弁形溝部の円弧状の上端部が、周方向へ連続した形状でもよい。
花弁形溝部の長さ方向に直交する断面の深さは、任意である。また、花弁形溝部の深さは、この溝の長さ方向の全長にわたって一定でも、異なってもよい。
【0015】
ここでいう「各リブの内縁に接する仮想円錐」とは、ドリッパー本体に装着される円錐型コーヒーフィルターを想定したものである。
仮想円錐の頂角が26°未満では、円錐型コーヒーフィルターが各リブ及びドリッパー本体の内周面との過接着となり、空気の通り道がなくなる“窒息”を招くおそれがある。また、29°を超えれば、各リブとフィルターとの未接着部分が増える。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記円錐型コーヒーフィルターはコーヒー1,2杯用のペーパーフィルターで、前記リブの本数は10本で、前記各リブのリブ高さは2mm~3.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のコーヒードリッパーである。
【0017】
各リブのリブ高さが2mm~3.5mmであれば、1,2杯分のコーヒー抽出時に、円錐型コーヒーフィルターとドリッパー本体の内周面との隙間を確保でき、十分なエアー抜きが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記仮想円錐の頂角は27°で、前記各リブは、それぞれ下方へ進むほど前記ドリッパー本体の内周面からのリブ高さが徐々に増大し、該各リブ高さは、前記各リブの長さ方向の中間部が2mm~2.5mm、該各リブの下端部が3mm~3.5mmで、前記ドリッパー本体の下端に穿設されたコーヒーの流下穴の高さ位置における、前記仮想円錐の直径が12mm~14mmで、前記ドリッパー本体の下端部の外周面には、鍔状の受皿板が周設され、前記ドリッパー本体の流下穴の形成部には、抽出されたコーヒーの垂直な流下を促す流下路部が、前記各花弁形溝部の下端部分と前記各リブの下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で下方へ延設され、前記受皿板の中央部付近の下面には、前記流下路部の周りに配置され、かつ下端開口が前記流下穴より下方に配された流下路部カバー筒が垂設され、前記受皿板の外周部の下面には、各下縁の高さ位置が、前記流下路部の下端より下方で、かつ前記流下路部カバー筒の下端開口より上方とした複数の載置フランジを、前記流下穴を中心とした放射状に離間して配設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコーヒードリッパーである。
【0019】
リブ高さが、リブの長さ方向の中間部で2mm未満では、リブの長さ方向の中間部でフィルターとドリッパー本体の内周面とが過密着となり、コーヒー抽出時にエアー抜きができなくなって、“窒息”を招くおそれがある。また、リブの長さ方向の中間部で2.5mmを超えれば、リブの長さ方向の中間部でリブとフィルターとの未接着部分が増える。
リブ高さが、リブの下端部で3mm未満では、この部分でフィルターの膨張やコーヒー粉の膨らみ等によるフィルターとドリッパー本体の内周面とが過密着となり、コーヒー抽出時にエアー抜きができなくなって、“窒息”を招くおそれがある。また、リブの下端部で3.5mmを超えれば、この部分でのリブとフィルターとの未接着部分が増える。
【0020】
ここでいう「ドリッパー本体の下端に穿設されたコーヒーの流下穴の高さ位置における仮想円錐の直径」とは、仮想円錐を、コーヒーが排出される流下穴の高さで水平に切断したときの直径である。
コーヒーの流下穴の高さ位置における、仮想円錐の直径が12mm未満では、流下穴が小さすぎてコーヒーの流下速度が低下するおそれがある。また、14mmを超えれば、円錐型コーヒーフィルターの先端部がカップ内のコーヒー液に浸かり、コーヒーが過抽出されるおそれがある。
【0021】
受皿板とは、コーヒードリッパーを、例えばコーヒーカップ、コーヒーサーバーなどの開口部に載置するための部材である。
受皿板の形状は任意である。例えば、円形、楕円形、三角形、四角形以上の多角形でもよい。
受皿板は、ドリッパー本体と一体形成しても、別体で形成してもよい。
【0022】
流下路部は、ドリッパー本体の流下穴の形成部と一体形成でも、別体で形成してもよい。
流下路部の形状は任意である。例えば、円筒形でも、多角筒形でもよい。
流下路部カバー筒は、受皿板と一体形成しても、別体で形成してもよい。
流下路部カバー筒の形状は任意である。例えば、円筒状でも、角筒状でもよい。
流下路部カバー筒の受皿板の下面における形成位置は、流下路部の外周であれば任意である。例えば、流下路部と同心円状に配置してもよい。
【0023】
ここでいう載置フランジとは、コーヒードリッパーを、受皿板を介してコーヒーカップ等の容器に載置する際に、容器の開口部に当接する部分である。
各載置フランジを、流下穴を中心とした放射状に離間して配置することで、各種サイズのコーヒードリッパーにコーヒードリッパーを載置できる。
各載置フランジは、受皿板と一体形成しても、別体で形成してもよい。
載置フランジの数は2つ以上であれば任意である。例えば、3つ、4つ以上でもよい。
各載置フランジの高さは、各載置フランジの下縁が、流下路部の下端より下方で、かつ流下路部カバー筒の下端開口より上方に配される高さである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ドリッパー本体の内周面に、複数の花弁形溝部と複数のリブとが菊花紋状に配されたコーヒードリッパーにおいて、円錐型のドリッパー本体の各リブの内縁に接した仮想円錐の頂角を、26°~29°と従来品より小さくした。
これにより、ドリッパー本体に円錐型コーヒーフィルターを装着し、所定量のコーヒー粉を投入したとき、例えば、仮想円錐の頂角が60°の従来のフラワードリッパーの場合に比べて、コーヒー粉の層が厚く(深く)なる。
【0025】
その後、コーヒー粉に湯を注ぐと、コーヒー粉から抽出されたコーヒーは、円錐型コーヒーフィルターを透過し、傾斜が大きい各リブの内縁と各花弁形溝部の形成面(ドリッパー本体の内周面)との隙間をそれぞれ従来品より早い速度で通過し、ドリッパー直下に配されたコーヒーカップ等の容器に短時間で流下する。
【0026】
一方、コーヒーの味に関しては、コーヒーの抽出初期の蒸らし工程で、厚いコーヒー粉層に所定量の湯を注いでコーヒー粉の中のガスが放出されると、従来品の場合より厚く膨らんだコーヒー粉層内では、コーヒー粉間により多くの隙間が発生し、その分だけ湯がコーヒー粉を通過する時間が長くなって、コーヒーの旨味(酸味や甘味)成分が抽出され易くなる。
【0027】
このように、フラワードリッパーにおいて、ドリッパー本体の内周面の各リブの内縁に接した仮想円錐の頂角を26°~29°と狭くすることで、従来のフラワードリッパーに比べてコーヒー粉層が厚くなるため、1~2杯のコーヒー抽出時であっても、コーヒー豆の種類及び焙煎、コーヒー粉の粒度、コーヒーの抽出温度等に応じてコーヒー粉層に均一かつ広範囲に湯をかけることなく、コーヒー粉層の中心部に湯を注ぐのみで効率的なコーヒーの深層濾過が可能となり、上品で口当たりのよい調和のとれた旨味と、なめらかさや風味とコクのある後味が得られる。
【0028】
しかも、このようにドリッパー本体の内周面の各リブの内縁に接した仮想円錐の頂角を26°~29°と狭くすることで、従来のフラワードリッパーよりコーヒーの流下時間が短くなり、理想のコーヒーを飲むため、コーヒーの抽出コントロールを追求するユーザーからの更なるコーヒーの高速抽出の要望にも対応できる。
【0029】
特に、請求項2に記載の発明によれば、円錐型コーヒーフィルターとしてコーヒー1,2杯用のペーパーフィルターを使用し、ドリッパー本体の内周面に配設されるリブの本数を10本とし、各リブのリブ高さを2mm~3.5mmとしたため、コーヒー粉層の中心部のみに湯を注ぐだけで、より効率的な深層濾過が可能となる。
【0030】
また、請求項3に記載の発明によれば、ドリッパー本体の各リブを、それぞれ下方へ進むほどドリッパー本体の内周面からのリブ高さが徐々に増大するようにした。詳しくは、各リブ高さを、リブの長さ方向の中間部で2mm~2.5mm、リブの下端部で3mm~3.5mmとした。
これにより、下方へ向って徐々に先細りする断面円弧状の複数の花弁形溝部を有するフラワードリッパーの課題であった、下方に行くほどコーヒーの通り道となる円錐型コーヒーフィルターとドリッパー本体の内周面との隙間が狭くなって、コーヒーが滞留し易くなる現象を抑制できる。
【0031】
さらには、ドリッパー本体の流下穴の高さ位置における仮想円錐の直径、すなわちこの流下穴において、円錐型コーヒーフィルターの外周面が接する各リブの内縁を結んだ内径を、12mm~14mmとした。
これにより、コーヒーの高い流下速度を維持しながら、ドリッパー本体の流下穴からの円錐型コーヒーフィルターの頂部(下端部)の突出長さを、従来のフラワードリッパーの場合に比べて短くできる。そのため、例えば、コーヒーカップ等の容器にコーヒードリッパーをセットした際に、円錐型コーヒーフィルターの頂部がカップ内のコーヒーに浸漬して、コーヒーが過抽出となる現象を防止できる。
【0032】
また、ドリッパー本体の下端部の外周面に鍔状の受皿板を周設したため、コーヒードリッパーを、コーヒーカップ等の容器の開口部に載置できる。
また、ドリッパー本体の流下穴の形成部に、各花弁形溝部の下端部分と各リブの下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で流下路部を延設したため、抽出されたコーヒーの垂直な流下を促すことができる。すなわち、ドリッパー本体の下部(底部)におけるコーヒーの通り道が確保され、この流下路が負圧化して流下路部がバキュームの役割を果たし、下向きに引っ張る力が作用することでコーヒーはスムーズに流下し、ドリッパー本体の下部でのコーヒーの滞留に因る過抽出を防止できる。
【0033】
さらに、受皿板の中央部付近の下面には、流下路部の周りに、下端開口が流下穴より下方に配される流下路部カバー筒を垂設する一方、受皿板の外周部の下面には、複数の載置フランジを、口径が異なるコーヒーカップ等の容器に対応できるように、流下穴を中心とした放射状に離間して配設した。このとき、各載置フランジの下縁の高さ位置は、流下路部の下端より下方で、かつ流下路部カバー筒の下端開口より上方とした。
これにより、例えば、コーヒーカップ等の容器にコーヒードリッパーをセットした際に、円錐型コーヒーフィルターの頂部がカップ内のコーヒーに浸漬して、コーヒーが過抽出となる現象をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの正面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの背面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの平面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの底面図である。
【
図6】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの右側面図である。
【
図7】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーの左側面図である。
【
図8】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーのA-A断面図である。
【
図9】本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、各10個の花弁形溝部とリブとを有する菊花紋型のコーヒードリッパーを例とする。
【実施例0036】
図1において、10は本発明の実施例1に係るコーヒードリッパーである。このコーヒードリッパー10は、円錐型ペーパーフィルター(円錐型コーヒーフィルター)11が装着される円錐型のドリッパー本体12の内周面の略全域に、下方へ向って徐々に先細りする断面円弧状の10個の花弁形溝部13と、上下方向へ延びる10個のリブ14とが、八重・菊花紋状に周方向へ交互に配設され、ドリッパー本体12の下端部の外周面に受皿板15が設けられ、ドリッパー本体12の上端部の一部と受皿板15の中央部付近の一部とに跨るようにハンドル16が取り付けられた菊花紋型のドリッパー(フラワードリッパー)である。
【0037】
以下、
図1~
図9を参照しながら、これらの構成体を具体的に説明する。
図1に示すように、円錐型ペーパーフィルター11は、扇状に折り畳んだ状態の頂角が42°で、かつ円錐状に広げて使用する際の頂角が27°の細長い濾紙である。この円錐型ペーパーフィルター11は、コーヒー2杯用のサイズのものである。
図1~
図7に示すように、コーヒードリッパー10は、セラミック製のものである。
ドリッパー本体12は、高さが10cm、上端開口の直径が68cm、各リブ14の内縁に接する仮想円錐Cの頂角が27°の細長い円錐台状の筒体である。このドリッパー本体12は、円錐型ペーパーフィルター11に合わせたコーヒー2杯分用のサイズのものである。
【0038】
図1,
図8及び
図9に示すように、ドリッパー本体12の上端には、円錐型ペーパーフィルター11が挿入される上端開口12aが形成され、ドリッパー本体12の下端には、抽出されたコーヒーが流下する円形の流下穴(下端開口)12bが形成されている。
このドリッパー本体12の流下穴12bの高さ位置における、仮想円錐Cの直径(円錐型ペーパーフィルター11の頂部のうち、流下穴12bと対峙する部分の直径)は、12mmである。
【0039】
また、
図5及び
図9に示すように、ドリッパー本体12の流下穴12bの形成部には、抽出されたコーヒーの垂直な流下を促す厚肉で短尺な円筒状の流下路部17が、各花弁形溝部13の下端部分と各リブ14の下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で、ドリッパー本体12と同一素材で一体的に下方へ延設されている。
さらに、受皿板15はドーム型に湾曲した丸鍔状の部材で、ドリッパー本体12の下端部の外周面に、ドリッパー本体12と同一素材で一体的に周設されている。
【0040】
図9に示すように、ドリッパー本体12の各リブ14は、それぞれ下方へ進むほどドリッパー本体12の内周面からのリブ高さが徐々に増大している。具体的な各リブ高さは、各リブ14の長さ方向の中間部14aが2.5mmで、各リブ14の下端部14bが3mmである。
また、
図5及び
図9に示すように、上述したように流下路部17は、各花弁形溝部13の下端部分と各リブ14の下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で延設されたもので、かつドリッパー本体12の流下穴12bの高さ位置における、仮想円錐Cの直径を12mmとしたため、流下穴12b及び流下路部17において、各リブ14の内縁同士を結んだ最小径は12mm、各花弁形溝部13の(円弧状の)底部同士を結んだ最大径は18mmとなる。
【0041】
さらに、
図5及び
図9に示すように、受皿板15の中央部付近の下面には、流下路部17の周りに同心円状に離間して配置された流下路部カバー筒18が、受皿板15と同一素材で一体的に垂設されている。
受皿板15の外周部の下面には、コーヒードリッパー10を図示しないコーヒーカップに載置した際に、カップの口縁と接する5本の細長い載置フランジ19が、流下穴12bを中心とした放射状に72°ピッチで、受皿板15と同一素材で一体的に配設されている。
これらの載置フランジ19は、各下縁の高さ位置が、流下路部17の下端より下方で、かつ流下路部カバー筒18の下端開口より上方となるように設計されている。
ハンドル16は、ドリッパー本体12と受皿板15とに同一素材で一体形成されたもので、正面視して略“7”の字状を有している。
【0042】
次に、
図1~
図9を参照して、本発明の実施例1のコーヒードリッパー10の使用方法の一例を説明する。
図1に示すように、まず受皿板15の各載置フランジ19を、カップの口縁に当接させた状態で、コーヒーカップにコーヒードリッパー10を載置し、円錐型ペーパーフィルター11を、上端開口12aからドリッパー本体12に装着する。
このとき、円錐型ペーパーフィルター11は、その頂部が流下穴12bから下方へ突出し、円錐型ペーパーフィルター11の外周面が、各リブ14の内縁によってそれぞれ支持される。
その結果、円錐型ペーパーフィルター11とドリッパー本体12の内周面(各花弁形溝部13の形成面)との間には、ドリッパー本体12の略全長にわたって大きな隙間が現出される。
【0043】
その後、円錐型ペーパーフィルター11に、例えば2杯分のコーヒー粉fを投入して、その高さを均一にならす。
このとき、円錐型のドリッパー本体12として、各リブ14の内縁に接した仮想円錐Cの頂角が27°のものを採用したため、円錐型ペーパーフィルター11に所定量のコーヒー粉fを投入したとき、従来の頂角が60°の円錐型ペーパーフィルターを使用するコーヒードリッパーの場合に比べて、コーヒー粉fの層が厚く(深く)なる。
【0044】
次いで、コーヒードリッパー10の上から、コーヒー2杯分の蒸らしに必要な湯(例えば60cc)を、ドリップポットからコーヒー粉fの層の中心部に少しずつ注ぎ込み、その後、例えば30秒間ほどこれを蒸らす。
この蒸らし工程では、このように厚い層のコーヒー粉fに所定量の湯を注ぐことによりコーヒー粉fの中のガスが放出される。そのため、従来品の場合よりさらに厚く膨らんだコーヒー粉fの層内では、コーヒー粉f間により多くの隙間が発生し、その分だけ湯がコーヒー粉fを通過する時間が長くなり、コーヒーの旨味(酸味や甘味)成分が抽出され易くなる。
【0045】
その後のコーヒー抽出工程で、円錐型ペーパーフィルター11のコーヒー粉fの層の中心部に湯を注ぐと、コーヒー粉fから抽出されたコーヒーは、円錐型ペーパーフィルター11を透過し、傾斜が大きい各リブ14の内縁と各花弁形溝部13の形成面(ドリッパー本体12の内周面)との隙間をそれぞれ従来品より早い速度で通過し、ドリッパー本体12の下端の流下穴12bから垂直な流下路部17を通ってコーヒーカップの中に短時間で流下する(
図1,
図8及び
図9)。
【0046】
一方、コーヒーの味に関しては、蒸らし時に従来よりさらに厚く膨らんだコーヒー粉fの層の中心部にドリップポットから少量ずつ湯を注ぐことで、発生量の多いコーヒー粉fの隙間を湯が通過する時間(コーヒーの抽出時間)が長くなり、コーヒーの旨味成分が多量に抽出される。
【0047】
このように、菊花紋型のコーヒードリッパー10において、ドリッパー本体12の内周面の各リブ14の内縁に接した仮想円錐Cの頂角を27°と狭くしたことで、フラワードリッパーの特長である抽出速度が早いにも拘わらず、従来はネルドリッパーでしか実現できなかったコーヒー粉fの深層濾過が可能となる。
すなわち、従来のフラワードリッパーに比べてコーヒー粉fの層が厚くなるため、2杯分のコーヒー抽出時であっても、コーヒー豆の種類及び焙煎、コーヒー粉の粒度、コーヒーの抽出温度等に応じてコーヒー粉fの層に均一かつ広範囲に湯をかけることなく、コーヒー粉fの層の中心部に湯を注ぐのみで効率的なコーヒーの深層濾過が可能となり、上品で口当たりの軽い調和のとれた旨味と、なめらかで風味とコクのある後味とを、1杯のコーヒーで味わうことができる。
しかも、このように従来のコーヒードリッパー10に比べて、コーヒーの味のコントロールがし易くなる。
【0048】
さらに、ここではドリッパー本体12の各リブ14を、それぞれ下方へ進むほどドリッパー本体12の内周面からのリブ高さが徐々に増大するように構成している。
これにより、下方へ向って徐々に先細り化した断面円弧状の複数の花弁形溝部13を有するコーヒードリッパー10の課題であった、下方へ行くほどコーヒーの通り道となる円錐型ペーパーフィルター11とドリッパー本体12の内周面(各花弁形溝部13の形成面)との隙間が狭くなってコーヒーが滞留し、コーヒーの過抽出が起きる現象を抑制できる。
【0049】
また、ここでは、ドリッパー本体12の流下穴12bの高さ位置における仮想円錐Cの直径、すなわち円錐型ペーパーフィルター11の外周面が接する各リブ14の内縁間の直径を1.2mmとした。
これにより、コーヒーの高い流下速度を維持しながら、ドリッパー本体12の流下穴12bからの円錐型ペーパーフィルター11の頂部(下端部)の突出長さが従来品のコーヒードリッパー10に比べて短くなる。そのため、例えば、コーヒーカップにコーヒードリッパー10をセットした際に、円錐型ペーパーフィルター11の頂部がカップ内のコーヒーに浸漬してしまい、コーヒーが過抽出となる現象を防止できる。
【0050】
しかも、流下穴12b及び流下路部17の内側には、平面視して歯車状の空間が現出する。この歯車状の空間のサイズは、各リブ14の内縁同士を結んだ最小径(刃底円の直径)が上記12mmで、各花弁形溝部13の底部同士を結んだ最大径(刃先円の直径)が18mmとなる。
【0051】
これにより、コーヒー抽出時に、上述した円錐型ペーパーフィルター11をドリッパー本体12に装着することで、流下穴12b及び流下路部17の内周面には、円錐型ペーパーフィルター11の頂部の外周面と、各花弁形溝部13の形成部の内面との間に、従来のコーヒードリッパー10にはない、幅(溝深さ)が3mmの略U字状をした10個の溝(隙間)が、周方向へ36°ピッチで現出される。
その結果、コーヒー抽出時に、流下穴12b及び流下路部17に、従来品より大きいコーヒーの通り道を確保でき、これによりドリッパー本体12の下端部で、不要な滞留が発生しないスムーズなコーヒーの抽出を実現できる。
【0052】
また、実施例1では、ドリッパー本体12の下端部の外周面に鍔状の受皿板15を周設したため、コーヒードリッパー10を、コーヒーカップの開口部に簡単に載置して使用できる。
さらには、ドリッパー本体12の流下穴12bの形成部に、各花弁形溝部13の下端部分と各リブ14の下端部分とをそれぞれ垂直に延長した状態で流下路部17を延設したため、円錐型ペーパーフィルター11の頂部が、内部に溜まったコーヒー粉や湯の内圧の影響で巾着状態となり、円錐型ペーパーフィルター11とドリッパー本体12の内周面との間のエアー抜きが不十分となるのを防止できて、抽出されたコーヒーの垂直な流下を促すことができる。すなわち、ドリッパー本体12の下部(底部)におけるコーヒーの通り道が確保され、この流下路が負圧化して流下路部17がバキュームの役割を果たし、下向きに引っ張る力が作用することでコーヒーはスムーズに流下し、ドリッパー本体12の下部でのコーヒーの滞留に因る過抽出をさらに防止できる。
【0053】
また、受皿板15の中央部付近の下面には、流下路部17の周りに、下端開口が流下穴12bより下方に配される流下路部カバー筒18を垂設する一方、受皿板15の外周部の下面には、複数の載置フランジ19を、口径が異なるコーヒーカップに対応できるように、流下穴12bを中心とした放射状に離間して配設している。このとき、各載置フランジ19の下縁の高さ位置は、流下路部17の下端より下方で、かつ流下路部カバー筒18の下端開口より上方である。
これにより、例えば、コーヒーカップにコーヒードリッパー10をセットした際に、円錐型ペーパーフィルター11の頂部がカップ内のコーヒーに浸漬して、コーヒーが過抽出となる現象の発生をさらに抑制できる。