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特開2024-97718ガラス積層体の製造方法、ガラス積層体および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097718
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ガラス積層体の製造方法、ガラス積層体および表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240711BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20240711BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20240711BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240711BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B37/02
C03C17/34 A
G09F9/00 313
G09F9/30 308Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001392
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 淳司
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AG00C
4F100AH03B
4F100AH03D
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AK49A
4F100AK49E
4F100AK50A
4F100AK50E
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA06
4F100CB03B
4F100CB03D
4F100EJ30
4F100EJ42
4F100EJ98
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JA05D
4F100JB16B
4F100JB16D
4F100JL12B
4F100JL12D
4F100JN01A
4F100JN01E
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC08
4G059AC16
4G059AC30
4G059FA07
4G059FA12
4G059FA13
4G059FA15
4G059FA17
4G059FA18
4G059FA19
4G059FA21
4G059FA22
4G059FB08
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA06
4G059GA07
4G059GA11
5C094AA47
5C094BA23
5C094BA27
5C094BA43
5C094DA06
5G435AA07
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE49
5G435GG43
5G435KK07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実使用環境下における耐屈曲性が良好であり、かつ、優れたガラス質感を有するガラス積層体を製造することが可能なガラス積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1樹脂基材および第1感熱接着層を有する第1積層フィルムの準備工程と、第2樹脂基材および第感熱接着層を有する第2積層フィルムの準備工程と、第1と第2の主面を有する化学強化ガラス基材準備工程と、第1積層フィルムの温度を、第1感熱接着層のガラス転移温度Tgの+5℃以上+60℃以下の温度として、第1感熱接着層側の面を、ガラス基材の第1主面に貼合する工程と、第2積層フィルムの温度を第2感熱接着層のガラス転移温度の+5℃以上+60℃以下の温度として、第2感熱接着層側の面を、ガラス基材の第2主面に貼合する工程と、貼合体に前記それぞれのTgの+5℃以上+60℃以下の温度範囲で、10時間以上エージング処理を行う工程を有する、ガラス積層体の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、
第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、
前記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第1の積層フィルムの前記第1の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第1主面に貼合する第1貼合工程と、
前記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第2の積層フィルムの前記第2の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第2主面に貼合する第2貼合工程と、
前記第1の積層フィルム、前記ガラス基材および前記第2の積層フィルムをこの順に有する貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行うエージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1貼合工程および前記第2貼合工程を、いずれか一方を先に行い、他方を後に行う、請求項1に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1貼合工程および前記第2貼合工程を、同時に行う、請求項1に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項4】
前記エージング工程の前に、前記貼合体に対してエア抜き処理を行う、エア抜き工程を有する、請求項1に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項5】
前記エージング工程後に、前記第1の積層フィルムの周縁部および前記第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有する、請求項1に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項6】
第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、
第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、
前記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第1の積層フィルムの前記第1の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第1主面に貼合する第1貼合工程と、
前記第1貼合工程で得られる第1貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第1エージング工程と、
前記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第2の積層フィルムの前記第2の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第2主面に貼合する第2貼合工程と、
前記第2貼合工程で得られる第2貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第2エージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1貼合工程後、前記第1エージング工程前に、前記第1貼合体に対してエア抜き処理を行う、第1エア抜き工程を有する、請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第2貼合工程後、前記第2エージング工程前に、前記第2貼合体に対してエア抜き処理を行う、第2エア抜き工程を有する、請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第1エージング工程後かつ前記第2エージング工程後に、前記第1の積層フィルムの周縁部および前記第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有する、請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第1貼合工程直後における、前記ガラス基材と前記第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、前記第2貼合工程直後における、前記ガラス基材と前記第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、それぞれ、0.05N/20mm以上、2.0N/20mm以下である、請求項1または請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項11】
前記第1の積層フィルム準備工程において準備する前記第1の積層フィルムは、前記第1の樹脂基材の前記第1の感熱接着層とは反対の面側にハードコート層を有する、請求項1または請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の積層フィルム準備工程において準備する前記第1の積層フィルムは、前記ハードコート層の前記第1の樹脂基材とは反対の面側に第1の保護フィルムを有する、請求項11に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項13】
前記第2の積層フィルム準備工程において準備する前記第2の積層フィルムは、前記第2の樹脂基材の前記第2の感熱接着層とは反対の面側に第2の保護フィルムを有する、請求項1または請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項14】
前記ガラス基材準備工程後に、前記ガラス基材の第1主面および第2主面のいずれか一方に、第3の保護フィルムを形成する、請求項1または請求項6に記載のガラス積層体の製造方法。
【請求項15】
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材と、
前記ガラス基材の前記第1主面側に配置された第1の積層フィルムと、
前記ガラス基材の前記第2主面側に配置された第2の積層フィルムと、を有し、
前記第1の積層フィルムは、前記ガラス基材側から、第1の感熱接着層および第1の樹脂基材を有し、
前記第2の積層フィルムは、前記ガラス基材側から、第2の感熱接着層および第2の樹脂基材を有する、ガラス積層体。
【請求項16】
表示パネルと、
前記表示パネルの観察者側に配置された、請求項15に記載のガラス積層体と、
を備え、前記ガラス積層体は、前記第2の積層フィルム側の面が前記表示パネルに隣接するように配置されている、表示装置。
【請求項17】
フォルダブルディスプレイである、請求項16に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス積層体の製造方法、ガラス積層体および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置には、表示装置を保護する目的で、ガラス製や樹脂製のカバー部材が用いられている。このカバー部材は、表示装置を衝撃や傷から保護するものであり、強度、耐衝撃性、耐傷性等が求められる。ガラス製のカバー部材は、表面硬度が高く傷が付きにくい、透明度が高い等の特徴があり、樹脂製のカバー部材は、軽量、割れにくいといった特徴がある。また、一般にカバー部材の厚さが厚いほど表示装置を衝撃から保護する機能が高く、重量やコスト、表示装置のサイズ等から、カバー部材の材質や厚さが適宜選択されて用いられている。
【0003】
近年、フォルダブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ等のフレキシブルディスプレイの開発が盛んに行われており、中でも、フォルダブルディスプレイ、すなわち折り曲げられる表示装置の開発が進められている。
【0004】
折り曲げられる表示装置においては、カバー部材も表示装置の動きに追随して曲がる必要があることから、折り曲げることができるカバー部材が適用されている。樹脂製のカバー部材の場合、化学構造の工夫により無色透明化したポリイミドやポリアミドイミドのフィルムが開発されている。また、ガラス製のカバー部材の場合、超薄板ガラス(Ultra-Thin Glass、以下、UTGとする場合がある。)等のようにガラスを薄くすることで折り曲げることができるようにしたカバー部材の検討が進められている。ガラスの中でも、特に、耐屈曲性が高いのは、化学強化ガラスといわれるもので、ガラス表面に膨張する応力を内在させることにより、ガラス表面に生じた微小な傷が屈曲時に大きくならないようにすることで、ガラスを割れにくくしている。
【0005】
耐衝撃性の向上の観点から、化学強化ガラスに、接合層および樹脂基材を有する積層フィルムを、接合層を介して貼り合わせ、ガラス積層体を製造する場合がある。例えば、特許文献1には、支持フィルムと、前記支持フィルムに粘着層を介して積層されたガラスフィルムと、を備えるガラスフィルム積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-224063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐衝撃性の向上の観点から、化学強化ガラスに、接合層および樹脂基材を有する積層フィルムを、接合層を介して貼り合わせ、ガラス積層体を製造する場合がある。しかしながら、この場合、鮮明度等のガラス特有の視覚的質感(ガラス質感)が悪化し、見た目に影響を及ぼす場合がある。また、常温で使用した場合には問題が生じなくても、高温高湿環境下で繰り返し屈曲して使用した場合に、接合層と化学強化ガラスとの間で剥離が生じ、耐屈曲性に劣る場合がある。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、実使用環境下における耐屈曲性が良好であり、かつ、優れたガラス質感を有するガラス積層体を製造することが可能なガラス積層体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、第1主面と、上記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、上記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、上記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、上記第1の積層フィルムの上記第1の感熱接着層側の面を、上記ガラス基材の上記第1主面に貼合する第1貼合工程と、上記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、上記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、上記第2の積層フィルムの上記第2の感熱接着層側の面を、上記ガラス基材の上記第2主面に貼合する第2貼合工程と、上記第1の積層フィルム、上記ガラス基材および上記第2の積層フィルムをこの順に有する貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行うエージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法を提供する。
【0010】
本開示の一実施形態は、第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、第1主面と、上記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、上記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、上記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、上記第1の積層フィルムの上記第1の感熱接着層側の面を、上記ガラス基材の上記第1主面に貼合する第1貼合工程と、上記第1貼合工程で得られる第1貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第1エージング工程と、上記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、上記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、上記第2の積層フィルムの上記第2の感熱接着層側の面を、上記ガラス基材の上記第2主面に貼合する第2貼合工程と、上記第2貼合工程で得られる第2貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第2エージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法を提供する。
【0011】
本開示の一実施形態は、第1主面と、上記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材と、上記ガラス基材の上記第1主面側に配置された第1の積層フィルムと、上記ガラス基材の上記第2主面側に配置された第2の積層フィルムと、を有し、上記第1の積層フィルムは、上記ガラス基材側から、第1の感熱接着層および第1の樹脂基材を有し、上記第2の積層フィルムは、上記ガラス基材側から、第2の感熱接着層および第2の樹脂基材を有する、ガラス積層体を提供する。
【0012】
本開示の一実施形態は、表示パネルと、上記表示パネルの観察者側に配置された、上述のガラス積層体と、を備え、上記ガラス積層体は、上記第2の積層フィルム側の面が上記表示パネルに隣接するように配置されている、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示においては、実使用環境下における耐屈曲性が良好であり、かつ、優れたガラス質感を有するガラス積層体を製造することが可能なガラス積層体の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態におけるガラス積層体の製造方法の工程フロー図である。
図2】本開示の第1実施形態におけるガラス積層体の製造方法の工程フロー図である。
図3】本開示の第1実施形態におけるガラス積層体の製造方法の工程フロー図である。
図4】本開示の第1実施形態における第1積層フィルムおよび第2積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
図5】本開示の第1実施形態における第1積層フィルムの準備工程の一例を示す概略断面図である。
図6】本開示の第1実施形態における真空貼合装置を用いた貼合工程を説明する概略図である。
図7】本開示の第1実施形態におけるロールラミネート装置を用いた貼合工程を説明する概略図である。
図8】本開示の第1実施形態におけるエージング工程を説明する概略図である。
図9】本開示の第2実施形態におけるガラス積層体の製造方法の工程フロー図である。
図10】本開示におけるガラス積層体の一例を示す概略断面図である。
図11】本開示におけるガラス積層体の一例を示す概略断面図である。
図12】U字屈曲試験を説明するための模式図である。
図13】剥離試験を説明するための模式図である。
図14】本開示において使用する像鮮明度測定装置の概略図および照明部を構成するマスクを例示する概略平面図である。
図15】被測定面での反射光の光強度分布を例示するグラフである。
図16】本開示における表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0017】
以下、第1実施形態および第2実施形態に分けて、本開示におけるガラス積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
A.ガラス積層体の製造方法(第1実施形態)
図1および図2は、本実施形態におけるガラス積層体の製造方法の一例を示す工程フロー図である。図1に示すように、本開示におけるガラス積層体の製造方法は、第1の樹脂基材1Aおよび第1の感熱接着層2Aを有する第1の積層フィルム10Aを準備する第1の積層フィルム準備工程(図1(a))と、第2の樹脂基材1Bおよび第2の感熱接着層2Bを有する第2の積層フィルム10Bを準備する第2の積層フィルム準備工程(図1(b))と、第1主面S1と、第1主面S1に対向する第2主面S2と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材21を準備するガラス基材準備工程(図1(c))と、を有する。
【0019】
さらに、本実施形態におけるガラス積層体の製造方法は、第1の感熱接着層2Aのガラス転移温度をTgとした場合に、第1の積層フィルム10Aの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第1の積層フィルム10Aの第1の感熱接着層2A側の面を、ガラス基材21の第1主面S1に貼合する第1貼合工程(図2(a))と、第2の感熱接着層2Bのガラス転移温度をTgとした場合に、第2の積層フィルム10Bの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第2の積層フィルム10Bの第2の感熱接着層2B側の面を、ガラス基材21の第2主面S2に貼合する第2貼合工程(図2(b))と、第1の積層フィルム10A、ガラス基材21および第2の積層フィルム10Bをこの順に有する貼合体50に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行うエージング工程(図2(c))と、を有する。これにより、ガラス積層体100が製造される(図2(d))。
【0020】
図2においては、第1貼合工程(図2(a))、第2貼合工程(図2(b))の順で順番に行っているが、第2貼合工程、第1貼合工程の順で順番に行ってもよい。また、第1貼合工程および第2貼合工程は、同時に行ってもよい。第1貼合工程および第2貼合工程を同時に行う場合について、図3を用いて説明する。
【0021】
図3に示すように、第1の感熱接着層2Aのガラス転移温度をTgとした場合に、第1の積層フィルム10Aの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第1の積層フィルム10Aの第1の感熱接着層2A側の面を、ガラス基材21の第1主面S1に貼合しつつ、第2の感熱接着層2Bのガラス転移温度をTgとした場合に、第2の積層フィルム10Bの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第2の積層フィルム10Bの第2の感熱接着層2B側の面を、ガラス基材21の第2主面S2に貼合する(図3(a))。次に、第1の積層フィルム10A、ガラス基材21および第2の積層フィルム10Bをこの順に有する貼合体50に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行うエージング工程を行う(図3(b))。これにより、ガラス積層体100が製造される(図3(c))。
【0022】
本実施形態においては、ガラス基材が、化学強化ガラスであり、好ましくは超薄板ガラス(Ultra-Thin Glass)である。また、第1貼合工程において、第1の積層フィルムの温度を所定の範囲として、第1の積層フィルムの第1の感熱接着層側の面をガラス基材の第1主面に貼合し、第2貼合工程において、第2の積層フィルムの温度を所定の範囲として、第2の積層フィルムの第2の感熱接着層側の面をガラス基材の第2面に貼合することを特徴とする。さらに、第1の積層フィルム、ガラス基材および第2の積層フィルムをこの順に有する貼合体に、所定の温度範囲の環境下で、所定の時間、エージング処理を行うことを特徴とする。
【0023】
上記第1貼合工程において、第1の積層フィルムの温度を上記温度以上としてガラス基材に貼合することによって、第1貼合工程直後における第1積層フィルムとガラス基材との間の剥がれを抑制することができる。第1の積層フィルムの温度を上記温度以下としてガラス基材に貼合することによって、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。なお、本実施形態において、「第1貼合工程直後」とは、本実施形態のガラス積層体の製造方法が、後述するエア抜き工程を有する場合には、第1貼合工程後、エア抜き工程前を意味する。一方、エア抜き工程を有さない場合には、第1貼合工程後、エージング工程前を意味する。
【0024】
同様に、上記第2貼合工程において、第2の積層フィルムの温度を上記温度以上としてガラス基材に貼合することによって、第2貼合工程直後における第2積層フィルムとガラス基材との間の剥がれを抑制することができる。第2の積層フィルムの温度を上記温度以下としてガラス基材に貼合することによって、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。本開示のガラス積層体の製造方法が、後述するエア抜き工程を有する場合には、第2貼合工程後、エア抜き工程前を意味する。一方、エア抜き工程を有さない場合には、第2貼合工程後、エージング工程前を意味する。
【0025】
上記エージング工程において、貼合体を所定の温度範囲内とし、所定時間以上エージングを行うことによって、第1の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度、および第2の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が向上し、耐屈曲性が向上する。
【0026】
したがって、本実施形態においては、耐屈曲性が良好で、かつ、良好なガラス質感を有するガラス積層体を製造することが可能である。
【0027】
また、本実施形態において製造されるガラス積層体は、両面が第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムの両方によって保護されているため、外部衝撃が加わった場合にガラス基材が割れにくい。また、ガラス基材の側面の耐衝撃性を向上させることができる。
また、両面を第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムにより保護することにより、屈曲時におけるガラス基材のクラックの成長を抑制することができるため、片側を積層フィルムにより保護される場合よりも耐屈曲性が向上する。
【0028】
よって、本実施形態により製造されたガラス積層体は、折り曲げることが可能であり、多種多様な表示装置に用いることができ、例えばフォルダブルディスプレイ用部材として使用することができる。
【0029】
また、貼合工程においては、ガラス基材と積層フィルムとの間に、異物または気泡が入ったり、積層フィルムに皺が生じたりする等の不具合が発生する場合がある。ここで、UTGは通常のガラスと比較して薄く、加工が難しいことから、一般的に高価であり、歩留まり改善が望まれている。そのため、上記のような貼合工程における不具合が生じた場合には、ガラス基材から積層フィルムを容易に剥離可能であることが求められる。また、積層フィルムを剥離した後のガラス基材に対しては、再度積層フィルムを貼合可能であることが求められる。本開示においては、エージング工程前においては、第1の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が比較的低いため、第1積層フィルムをガラス基材から容易に剥離できる。また、第2の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が比較的低いため、第2積層フィルムをガラス基材から容易に剥離できる。また、積層フィルムの剥離後には、ガラス基材に接着層残りが生じにくい。そのため、ガラス基材に積層フィルムを再度貼合することができ、リワーク性が向上する。
以下、本実施形態のガラス積層体の製造方法について、各工程ごとに詳細に説明する。
【0030】
1.第1の積層フィルム準備工程
本工程は、第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する工程である。本実施形態におけるガラス積層体が表示装置に用いられる場合、第1の積層フィルムは、観察者側に配置される。図1(a)に示すように、第1の積層フィルム10Aは、第1の樹脂基材1Aおよび第1の感熱接着層2Aを有する。また、図4(a)に示すように、第1の積層フィルム10Aは、例えば、第1の樹脂基材1Aの第1の感熱接着層2Aとは反対の面側に、機能層Xを有していてもよい。本実施形態における第1の積層フィルム10Aは、機能層Xとして、例えばハードコート層3を有していてもよい。図4(a)に示すように、第1の積層フィルム10Aは、第1の樹脂基材の第1の感熱接着層とは反対の面側に第1の保護フィルム4Aを有することが好ましい。また、第1の保護フィルム4Aは、ハードコート層3の第1の樹脂基材とは反対の面側に配置されていることが好ましい。
【0031】
図5は、本実施形態における第1の積層フィルム準備工程の一例を説明するための概略断面図である。図5(a)に示すように、第1の樹脂基材1Aが巻かれた巻回体から、第1の樹脂基材1Aを繰り出す。次に、図5(b)に示すように、第1の樹脂基材1Aの一方の面に、ハードコート層3および保護層4Aをこの順に積層する。次に、図5(c)に示すように、樹脂基材1の他方の面に、第1の感熱接着層2Aおよび第1の剥離フィルム5Aをこの順に積層する。次に、必要に応じて、図5(d)に示すように適当なサイズにカットする。これにより、第1の積層フィルム10Aが得られる。また、第1の積層フィルム10Aは、巻回体の状態で準備してもよい。
【0032】
(1)第1の樹脂基材
(a)第1の樹脂基材の材料
第1の樹脂基材を構成する樹脂は、透明性を有することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンナフタラート系樹脂等が挙げられる。ポリイミド系樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル等が挙げられる。なお、樹脂基材は、単層であってもよく、共押出フィルム等の多層であってもよい。中でも、耐屈曲性を有し、優れた硬度および透明性を有することから、ポリイミド系樹脂が好ましい。
【0033】
ポリイミド系樹脂としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記の中でも、ポリイミド、ポリアミドイミドが好ましく用いられる。以下、ポリイミドおよびポリアミドイミドを例に挙げて説明する。
【0034】
(i)ポリイミド
ポリイミド系樹脂としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記の中でも、ポリイミド、ポリアミドイミドが好ましく用いられる。
【0035】
(i)ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。ポリイミドとしては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、優れた透明性および優れた剛性を有する点から、下記一般式(1)および下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
【0036】
【化1】
【0037】
上記一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans-シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。
【0038】
【化2】
【0039】
上記一般式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。
【0040】
【化3】
【0041】
上記一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸残基、および4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、R10は、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。
【0042】
なお、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、「ジアミン残基」とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
【0043】
上記一般式(1)における、Rはテトラカルボン酸残基であり、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、例えば国際公開第2018/070523号に記載のものを挙げることができる。上記一般式(1)におけるRとしては、中でも、透明性が向上し、かつ剛性が向上する点から、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、ピロメリット酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、さらに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、4,4’-オキシジフタル酸残基、および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、さらに70モル%以上含むことが好ましく、よりさらに90モル%以上含むことが好ましい。
【0045】
また、Rとして、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、およびピロメリット酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。
【0046】
この場合、上記の剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、さらに0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、よりさらに0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)におけるRとしては、中でも、透明性が向上し、かつ剛性が向上する点から、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましく、さらに、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、ならびに、RおよびRがパーフルオロアルキル基である上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(3)におけるRとしては、中でも、透明性が向上し、かつ剛性が向上する点から、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、およびオキシジフタル酸残基を含むことが好ましい。
【0049】
において、これらの好適な残基を、50モル%以上含むことが好ましく、さらに70モル%以上含むことが好ましく、よりさらに90モル%以上含むことが好ましい。
【0050】
上記一般式(3)におけるR10はジアミン残基であり、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。ジアミンとしては、例えば国際公開第2018/070523号に記載のものを挙げることができる。上記一般式(3)におけるR10としては、中でも、透明性が向上し、かつ剛性が向上する点から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、および9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましく、さらに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましい。
【0051】
10において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、さらに70モル%以上含むことが好ましく、よりさらに90モル%以上含むことが好ましい。
【0052】
また、R10として、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、パラフェニレンジアミン残基、メタフェニレンジアミン残基、および4,4’-ジアミノジフェニルメタン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、および9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)とを混合して用いることも好ましい。
【0053】
この場合、上記の剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)との含有比率は、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)1モルに対して、剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、さらに0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上4モル以下であることがより好ましい。
【0054】
上記一般式(1)および上記一般式(3)で表される構造において、nおよびn’はそれぞれ独立に、繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。平均繰り返し単位数は、例えば10以上2000以下とすることができ、15以上1000以下であることが好ましい。
【0055】
また、ポリイミドは、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
【0056】
透明性を向上させ、且つ、表面硬度を向上させる点から、RおよびRのテトラカルボン酸残基である4価の基、及び、RおよびR10のジアミン残基である2価の基の少なくとも1つは、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていてもよいアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。ポリイミドが、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基から選ばれる少なくとも一種を含むことにより、分子骨格が剛直となり配向性が高まり、表面硬度が向上するが、剛直な芳香族環骨格は吸収波長が長波長に伸びる傾向があり、可視光領域の透過率が低下する傾向がある。一方で、ポリイミドが(i)フッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から透明性が向上する。また、ポリイミドが(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から透明性が向上する。また、ポリイミドが(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていてもよいアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から透明性が向上する。
【0057】
中でも、透明性を向上させ、且つ、表面硬度を向上させる点から、RおよびRのテトラカルボン酸残基である4価の基、及び、RおよびR10のジアミン残基である2価の基の少なくとも1つは、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、RおよびR10のジアミン残基である2価の基が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
【0058】
このようなポリイミドの具体例としては、国際公開第2018/070523号に記載の特定の構造を有するものが挙げられる。
【0059】
ポリイミドは、公知の方法により合成することができる。また、ポリイミドは、市販のものを用いても良い。ポリイミドの市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム(登録商標)等が挙げられる。
【0060】
ポリイミドの重量平均分子量は、例えば、3000以上50万以下であることが好ましく、5000以上30万以下であることがより好ましく、1万以上20万以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、充分な強度が得られない場合があり、重量平均分子量が大きすぎると、粘度が上昇し、溶解性が低下するため、表面が平滑で厚み均一な樹脂基材が得られない場合がある。
【0061】
なお、ポリイミドの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミドを0.1質量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
【0062】
(ii)ポリアミドイミド
ポリアミドイミドとしては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジアンヒドリド由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位を含む第1ブロックと、芳香族ジカルボニル化合物由来の構成単位および芳香族ジアミン由来の構成単位を含む第2ブロックと、を有するものを挙げることができる。上記ポリアミドイミドにおいて、上記ジアンヒドリドは、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)を含むことができる。また、上記ジアミンは、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)を含むことができる。すなわち、上記ポリアミドイミドは、ジアンヒドリドおよびジアミンを含む単量体が共重合された第1ブロックと、芳香族ジカルボニル化合物および芳香族ジアミンを含む単量体が共重合された第2ブロックとを有するポリアミドイミド前駆体をイミド化させた構造を有するものである。上記ポリアミドイミドは、イミド結合を含む第1ブロックとアミド結合を含む第2ブロックとを有することにより、光学特性だけでなく、熱的、機械的特性に優れたものとなる。特に、第1ブロックを形成するジアミンとして、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)を使用することにより、熱安定性および光学特性を向上させることができる。また、第1ブロックを形成するジアンヒドリドとして、2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用することにより、複屈折の向上および耐熱性の確保を図ることができる。
【0063】
第1ブロックを形成するジアンヒドリドは、2種類のジアンヒドリド、すなわち、6FDAおよびBPDAを含む。第1ブロックには、TFDBおよび6FDAが結合された重合体とTFDBおよびBPDAが結合された重合体とが、別途の繰り返し単位を基準にそれぞれ区分されて含まれていてもよく、同じ繰り返し単位内に規則的に配列されていてもよく、あるいは完全にランダムに配列されて含まれていてもよい。
【0064】
第1ブロックを形成する単量体のうち、ジアンヒドリドとして、BPDAおよび6FDAが1:3~3:1のモル比で含まれることが好ましい。光学的特性の確保だけでなく、機械的特性及び耐熱性の低下を抑制することができ、優れた複屈折を有することができるからである。
【0065】
第1ブロックおよび第2ブロックのモル比は、5:1~1:1であることが好ましい。第2ブロックの含有量が著しく低い場合、第2ブロックによる熱的安定性及び機械的特性の向上の効果が十分に得られない場合がある。また、第2ブロックの含有量が第1ブロックの含有量よりもさらに高い場合、熱的安定性及び機械的特性は向上できるものの、黄色度や透過度等が低下する等、光学特性が悪くなり、複屈折特性も高まる場合がある。なお、第1ブロックおよび第2ブロックは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。ブロックの繰り返し単位は特に限定されない。
【0066】
第2ブロックを形成する芳香族ジカルボニル化合物としては、例えば、テレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)、テレフタル酸(Terephthalic acid)、イソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)及び4,4’-ベンゾイルジクロリド(4,4’-benzoyl chloride)からなる群から選択される1種以上を挙げることができる。好ましくは、テレフタロイルクロリド(p-Terephthaloyl chloride、TPC)及びイソフタロイルジクロリド(Iso-phthaloyl dichloride)の中から選択される1種以上とすることができる。
【0067】
第2ブロックを形成するジアミンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPSM)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3DDS)、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニルプロパン(BAPP)、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン(6HDA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル(6FAPBP)、3,3-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン(DABS)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシロキシフェニル)プロパン(BAP)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、4,4’-オキシジアニリン(4-ODA)及び3,3’-オキシジアニリン(3-ODA)からなる群から選択される1種以上の柔軟基を有するジアミンを挙げることができる。
【0068】
芳香族ジカルボニル化合物を使用する場合、高い熱安定性及び機械的物性を実現するには容易であるが、分子構造内のベンゼン環によって高い複屈折を示すことがある。そのため、第2ブロックによる複屈折の低下を抑制するために、ジアミンは、分子構造に柔軟基が導入されたものを使用することが好ましい。具体的には、ジアミンは、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPSM)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4DDS)及び2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)の中から選択される1種以上のジアミンであることがより好ましい。特に、BAPSMのように柔軟基の長さが長く、置換基の位置がメタ位にあるジアミンであるほど、優れた複屈折率を示すことができる。
【0069】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)を含むジアンヒドリドと、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)を含むジアミンとが共重合された第1ブロック、ならびに、芳香族ジカルボニル化合物と芳香族ジアミンとが共重合された第2ブロックを分子構造内に含むポリアミドイミド前駆体は、GPCによって測定した重量平均分子量が例えば200,000以上215,000以下であることが好ましく、粘度が例えば2400poise以上2600poise以下であることが好ましい。
【0070】
ポリアミドイミドは、ポリアミドイミド前駆体をイミド化することにより得ることができる。また、ポリアミドイミドを用いてポリアミドイミドフィルムを得ることができる。ポリアミドイミド前駆体をイミド化する方法およびポリアミドイミドフィルムの製造方法については、例えば、特表2018-506611号公報を参照することができる。
【0071】
(b)第1の樹脂基材の厚さ
第1の樹脂基材の厚さは、耐屈曲性および耐衝撃性を満たすことができるように適宜選択れる。
【0072】
ここで、各層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される積層フィルムの厚さ方向の断面から測定して得られた任意の10箇所の厚さの算術平均値とすることができる。具体的な断面写真の撮影方法を以下に示す。まず、積層フィルムを2cm×2cmの大きさに切り出し、積層フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、研磨機を用いて断面を作製する。研磨機としては、Struers社製のTegraPol-35を用いることができる。その後、走査型電子顕微鏡を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影する。走査型電子顕微鏡としては、日立ハイテクノロジーズ社製のS-4800を用いることができる。走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製のS-4800)を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「Lower」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」に設定して断面観察を行う。倍率については、フォーカスを調節し、コントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら、100倍以上10万倍以下の範囲内、好ましくは1000倍以上5万倍以下の範囲内、さらに好ましくは5000倍以上1万倍以下の範囲内で、適宜調節する。なお、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製のS-4800)を用いて断面写真を撮影する際には、さらに、ビームモニタ絞りを「1」に設定し、対物レンズ絞りを「3」に設定し、またW.D.を「8mm」に設定してもよい。また、界面のコントラストは、高倍率であると分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2000倍と1万倍や、5000倍と2万倍など、高低の2つの倍率で観察する。そして、両倍率の断面写真において、上記算術平均値を求め、さらにその平均値を各層の厚さとする。なお、特に断りの無い限りは、本開示における他の層の厚さの測定方法についても同様とすることができる。
【0073】
(c)第1の樹脂基材の特性
本実施形態において、第1の樹脂基材の複合弾性率は、例えば、4GPa以上であることが好ましく、5GPa以上であることがより好ましく、6GPa以上であることがさらに好ましい。第1の樹脂基材の複合弾性率が上記範囲であることにより、ガラス積層体の積層フィルム側の面の表面硬度を高めることができ、耐傷性を向上させることができる。
【0074】
また、第1の樹脂基材の複合弾性率は、例えば、40GPa以下であることが好ましく、30GPa以下であることがより好ましく、20GPa以下であることがさらに好ましい。第1の樹脂基材の複合弾性率は、例えば、4GPa以上40GPa以下であることが好ましく、5GPa以上30GPa以下であることがより好ましく、6GPa以上20GPa以下であることがさらに好ましい。
【0075】
第1の樹脂基材の複合弾性率の測定方法は、後述の感熱接着層の複合弾性率の測定方法と同様とすることができる。
【0076】
第1の樹脂基材の複合弾性率は、例えば、第1の樹脂基材に含まれる材料の種類や組成等によって調整することができる。
【0077】
本実施形態におけるガラス積層体を例えば表示装置に用いる場合、第1の樹脂基材は、透明性を有することが好ましい。具体的には、第1の樹脂基材の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、88%以上であることがさらに好ましい。
【0078】
ここで、第1の樹脂基材の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定され、村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定される。
【0079】
また、第1の樹脂基材のヘイズは、例えば2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0080】
ここで、第1の樹脂基材のヘイズは、JIS K-7136に準拠して測定され、村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定される。
【0081】
(2)第1の感熱接着層
本実施形態における第1の感熱接着層は、第1の樹脂基材の一方の面側に配置され、ガラス基材と第1の樹脂基材とを接合するための層である。
【0082】
(a)第1の感熱接着層の材料
本実施形態における第1の感熱接着層は、ヒートシール剤等の感熱接着剤を含む。本実施形態においては、第1の積層フィルムとガラス基材との貼合に、第1の積層フィルムの第1の感熱接着層を使用することで、所定の温度範囲内での貼合工程および所定の温度範囲内および所定の時間でのエージング工程を行うことにより、高温高湿環境下においてもガラス基材と積層フィルムとの間の密着性が良好なガラス積層体を製造することができる。ガラス積層体において、第1の感熱接着層は、第1の樹脂基材とガラス基材とを接合する層である。
【0083】
一方、ガラス基材と樹脂基材とを接合するための接合層の材料としては、例えば、光学透明粘着剤(OCA;Optical Clear Adhesive)等の感圧接着剤が知られている。このような感圧接着剤を用いてガラス積層体を製造した場合、常温での密着性は良好であるものの、高温高湿環境下における密着性に劣る。また、OCAフィルムが用いられるが、OCAフィルムには表面に凹凸を有するものがあり、そのようなOCAフィルムを用いた場合には、凹凸によって画面の揺らぎが起こり、ガラス基材によるガラスの質感や触感が損なわれる可能性がある。さらに、感圧接着剤を用いた場合には、貼合工程直後においてガラス基材との密着性が高くなるため、ガラス基材から容易に剥離することが困難となる。また、ガラス基材から剥離しても、ガラス基材に感圧接着剤が残存してしまう。その結果、ガラス基材を再度使用することが困難となる。
【0084】
なお、光学透明粘着剤(OCA)等の感圧接着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール系粘着剤等が挙げられる。
【0085】
第1の感熱接着層に含まれる樹脂としては、例えば、熱溶着可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0086】
また、感熱接着剤組成物は、硬化剤をさらに含有することができる。これにより、耐熱性や接着性を向上させることができる。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせてもよい。感熱接着剤組成物が硬化剤を含有する場合、感熱接着層は、感熱接着剤組成物の硬化物を含有することになる。
【0087】
また、感熱接着剤組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、カップリング剤、消泡剤、充填剤、屈折率を調整するための無機または有機粒子、帯電防止剤、青色色素や紫色色素等の着色剤、レベリング剤、界面活性剤、易滑剤、各種増感剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、表面改質剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用のものから適宜選択して用いることができる。添加剤の含有量は、適宜設定することができる。中でも、感熱接着剤組成物は、ガラス基材との密着性を高めるために、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0088】
(b)第1の感熱接着層のガラス転移温度
本実施形態においては、後述する第1貼合工程およびエージング工程において、第1の感熱接着層のガラス転移温度Tgを基準とし、貼合温度およびエージング温度を所定の範囲内に設定する。この基準となる第1の感熱接着層のガラス転移温度は、貼合工程前における第1の感熱接着層のガラス転移温度である。
【0089】
第1の感熱接着層のガラス転移温度Tgは、例えば、0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましく、15℃以上であることがさらに好ましい。第1の感熱接着層のガラス転移温度Tgが低すぎると、ガラス積層体の第1の積層フィルム側の面の表面硬度が低下し、耐衝撃性が低下するおそれがある。また、エージング工程前にガラス基材から第1の積層フィルムを剥がすことが困難となる。また、第1の積層フィルムを剥離した後に、ガラス基材に接着層が残り、リワーク性が悪化する。一方、第1の感熱接着層のガラス転移温度は、例えば、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。第1の感熱接着層のガラス転移温度が高すぎると、ガラス積層体の耐屈曲性が低下し、ハンドリング性が低下する。第1の感熱接着層のガラス転移温度は、例えば、0℃以上100℃以下であることが好ましく、5℃以上80℃以下であることがより好ましく、10℃以上70℃以下であることがさらに好ましく、15℃以上60℃以下であることが特に好ましい。
【0090】
ここで、第1の感熱接着層および後述する第2の感熱接着層のガラス転移温度Tgは、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定された値を意味する。動的粘弾性測定装置(DMA)によって、感熱接着層の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”および損失正接tanδを測定する際には、まず、感熱接着層を15mm×200mmに打ち抜く。この際、感熱接着層の材料を溶解する、または感熱接着層の材料を溶融することによって溶液を調製し、基板上に溶液を塗布し、乾燥させた後、基板から膜を剥離することで、感熱接着層の試験片を得ることもできる。溶剤は、感熱接着層の材料に応じて適宜選択され、例えば、酢酸エチル等が挙げられる。また、上記溶液を調製する際には、感熱接着層の材料を適宜加熱溶解させてもよい。基板は、例えば、ニチアス社製のナフロン(登録商標)シート(300mm×300mm×1mm厚)を用いることができる。そして、感熱接着層を、φ5mm×高さ5mm程度の円柱状になるようにサンプリングする。この際、感熱接着層を巻くことによって円柱状にすることができる。動的粘弾性測定装置の圧縮冶具(パラレルプレートφ8mm)の間に、上記の円柱状の測定サンプルを取り付ける。その後、圧縮荷重をかけ、周波数1Hzの縦振動を与えて、-50℃以上200℃以下の範囲での動的粘弾性測定を行い、それぞれの温度での感熱接着層の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”および損失正接tanδを測定する。感熱接着層のガラス転移温度は、-50℃以上200℃以下の範囲での損失正接tanδがピークとなる温度とする。動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメンツ社製のRSAIIIを用いることができる。なお、上記方法における具体的な測定条件を下記に示す。
【0091】
(ガラス転移温度の測定条件)
・測定サンプル:φ5mm×高さ5mmの円柱状
・測定治具:圧縮(パラレルプレート)
・測定モード:温度依存性(温度範囲:-50℃~200℃、昇温速度:5℃/min)
・周波数:1Hz
【0092】
(c)第1の感熱接着層の厚さ
第1の感熱接着層の厚さは、例えば、30μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。第1の感熱接着層の厚さが上記範囲であることにより、ガラス積層体の第1の積層フィルム側の面の表面硬度を高くし、耐傷性を向上させることができる。また、第1の感熱接着層の厚さが上記範囲のように比較的薄いことにより、ガラス基材によるガラスの質感や触感を維持することができる。一方、第1の感熱接着層の厚さは、例えば、1.0μm以上であり、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは2.5μm以上、特に好ましくは3.0μm以上である。第1の感熱接着層の厚さが薄すぎると、接着性が弱くなり耐屈曲性、特に動的屈曲性が低下するおそれや、耐衝撃性が低下するおそれがある。第1の感熱接着層の厚さは、例えば、1.0μm以上30μm以下であり、好ましくは1.5μm以上20μm以下、より好ましくは2.0μm以上15μm以下、さらに好ましくは2.5μm以上10μm以下、特に好ましくは3.0μm以上10μm以下である。
【0093】
(d)第1の感熱接着層の複合弾性率
第1の積層フィルムにおける第1の感熱接着層は、ガラス積層体とした際の複合弾性率が、例えば、1MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましい。第1の感熱接着層の上記複合弾性率が上記範囲であり、ある程度の硬さを有することにより、ガラス積層体の第1の積層フィルム側の面の表面硬度を高め、耐傷性を向上させることができるとともに、耐衝撃性を向上させることができる。上記複合弾性率が低すぎると、エージング工程前にガラス基材から第1の積層フィルムを剥がすことが困難となる。また、第1の積層フィルムを剥離した後に、ガラス基材に接着層が残り、リワーク性が悪化する。一方、第1の感熱接着層の上記複合弾性率は、例えば、6000MPa以下であることが好ましく、5500MPa以下であることがより好ましく、4500MPa以下であることがさらに好ましい。第1の感熱接着層の上記複合弾性率が大きすぎると、接着性が弱くなり、または硬さが高くなりすぎて屈曲しにくくなり、耐屈曲性、特に動的屈曲性が低下するおそれがある。第1の感熱接着層の上記複合弾性率は、例えば、1MPa以上6000MPa以下であることが好ましく、10MPa以上5500MPa以下であることがより好ましく、20MPa以上4500MPa以下であることがさらに好ましく、25MPa以上4000MPa以下であることが特に好ましい。
【0094】
ここで、第1の感熱接着層および後述の第2の感熱接着層の上記複合弾性率は、感熱接着層のインデンテーション硬さ(HIT)を測定する際に求められる接触投影面積Apを用いて算出するものとする。「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法による硬度測定によって得られる圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。感熱接着層の上記複合弾性率は、感熱接着層の弾性変形および圧子の弾性変形が含まれた弾性率である。
【0095】
インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、測定サンプルについてBRUKER社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、1mm×10mmに切り出したガラス積層体を包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ50nm以上100nm以下の切片を切り出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ社製)等を用いることができる。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとする。次いで、このような測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面において、以下の測定条件で、上記圧子としてバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐、BRUKER社製のTI-0039)を感熱接着層の断面中央に10秒かけて最大押し込み荷重25μNまで垂直に押し込む。ここで、バーコビッチ圧子は、ガラス基材および樹脂基材等の他の層の影響を避けるためおよび感熱接着層の側縁の影響を避けるために、ガラス基材と感熱接着層との界面から接合層の中央側に500nm離れ、樹脂基材と感熱接着層との界面から感熱接着層の中央側に500nm離れ、感熱接着層の両側端からそれぞれ感熱接着層の中央側に500nm離れた感熱接着層の部分内に押し込むものとする。その後、一定保持して残留応力の緩和を行った後、10秒かけて除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該最大荷重Pmax(μN)と接触投影面積Ap(nm)とを用い、Pmax/Apにより、インデンテーション硬さ(HIT)を算出する。上記接触投影面積は、標準試料の溶融石英(BRUKER社製の5-0098)を用いてOliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。インデンテーション硬さ(HIT)は、10箇所測定して得られた値の算術平均値とする。なお、測定値の中に算術平均値から±20%以上外れるものが含まれている場合は、その測定値を除外し再測定を行うものとする。測定値の中に算術平均値から±20%以上外れているものが存在するか否かは、測定値をAとし、算術平均値をBとしたとき、(A-B)/B×100によって求められる値(%)が±20%以上であるかによって判断するものとする。
【0096】
(測定条件1)
・荷重速度:2.5μN/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:2.5μN/秒
・測定温度:25℃
【0097】
なお、上記測定条件1でインデンテーション硬さの測定を行った場合に、最大荷重での押し込み深さが500nm以上となる場合には、以下の測定条件2に変更して測定を行うのとする。上述したように、インデンテーション硬さの測定においては、感熱接着層に10秒かけて押し込みを行うため、測定条件1では最大荷重が25μN、測定条件2では最大荷重が5μNとなる。
【0098】
(測定条件2)
・荷重速度:0.5μN/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:0.5μN/秒
・測定温度:25℃
【0099】
感熱接着層の複合弾性率Erは、下記数式(1)によって、インデンテーション硬さの測定の際に求められた接触投影面積Apを用いて求める。複合弾性率は、インデンテーション硬さを10箇所測定し、その都度複合弾性率を求め、得られた10箇所の複合弾性率の算術平均値とする。
【0100】
【数1】

(上記数式(1)中、Aは接触投影面積であり、Eは感熱接着層の複合弾性率であり、Sは接触剛性である。)
【0101】
感熱接着層の複合弾性率は、例えば、感熱接着層に含まれる材料の種類や組成等によって調整することができる。
【0102】
(3)第1の積層フィルムの他の層
(a)機能層
本工程において準備する第1の積層フィルムは、第1の樹脂基材の第1の感熱接着層とは反対の面側に、機能層を有していてもよい。
【0103】
機能層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、保護層等が挙げられる。また、機能層は、単層であってもよく、複数の層を有していてもよい。また、機能層は、単一の機能を有する層であってもよく、互いに異なる機能を有する複数の層を有していてもよい。例えば、図4(a)に示すように、本実施形態における第1の積層フィルム10Aは、機能層Xとして、ハードコート層3を有していてもよい。また、本実施形態においては、第1の積層フィルム10Aは、第1の樹脂基材の第1の感熱接着層側とは反対側に第1の保護フィルム4Aを有することが好ましい。第1の保護フィルムにより、ガラス積層体を保護するとともに、耐衝撃性を高めることができる。
【0104】
ハードコート層は、表面硬度を高めるための部材である。ハードコート層が配置されていることにより、耐傷性を向上させることができる。ここで、「ハードコート層」とは、表面硬度を高めるための部材であり、具体的には、本実施形態におけるガラス積層体がハードコート層を有する構成において、JIS K 5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験を行った場合に、「H」以上の硬度を示すものをいう。
【0105】
ハードコート層の材料としては、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料等を用いることができる。中でも、ハードコート層の材料は有機材料であることが好ましい。具体的には、ハードコート層は、重合性化合物を含む樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。重合性化合物を含む樹脂組成物の硬化物は、重合性化合物を、必要に応じて重合開始剤を用い、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
【0106】
本実施形態における第1の積層フィルムは、機能層として、第1の樹脂基材の第1の感熱接着層とは反対の面側に反射防止層を有していてもよい。反射防止層は、単層で構成されていてもよく、多層で構成されていてもよい。
【0107】
反射防止層としては、一般的な反射防止層を適用することができ、例えば、ハードコート層よりも屈折率が低い材料を含有する単層膜や、樹脂基材側から高屈折率層と低屈折率層とを有する多層膜、樹脂基材側から高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されている多層膜、樹脂基材側から順に中屈折率層と高屈折率層と低屈折率層とを有する多層膜等が挙げられる。
【0108】
本実施形態における第1の積層フィルムは、第1の樹脂基材の第1の感熱接着層とは反対の面側に第1の保護フィルムを有していてもよい。本開示における第1の積層フィルムは、ハードコート層の第1の樹脂基材とは反対の面側に第1の保護フィルムを有していてもよい。すなわち、ハードコート層は、第1の樹脂基材と第1の保護フィルムとの間に配置されていることが好ましい。同様に、本開示における積層フィルムが反射防止層を有する場合、反射防止層は、第1の樹脂基材と第1の保護フィルムとの間に配置されていることが好ましい。
【0109】
第1の保護フィルムは、最終製品(例えば、表示装置)となる前に剥離されるため、剥離可能なものであれば特に限定されない。また、第1の保護フィルムは、透明性を有することが好ましい。第1の保護フィルムを含むガラス積層体の状態で検査することができるためである。具体的には、第1の保護フィルムの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。第1の保護フィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0110】
第1の保護フィルムは、例えば樹脂を含むことができる。第1の保護フィルムに用いられる樹脂としては、透明性を有する樹脂であることが好ましい。
【0111】
樹脂基材上に第1の保護フィルムを配置する方法としては、例えば、樹脂基材上に接着層を介して第1の保護フィルムを貼り合わせる方法が挙げられる。
【0112】
(b)剥離フィルム
また、本工程で準備する第1の積層フィルムは、図4(a)に示すように、第1の感熱接着層2Aの第1の樹脂基材1A側とは反対側に第1の剥離フィルム5Aを有することが好ましい。なお、第1の剥離フィルム5Aは、貼合工程前に剥離される。第1の剥離フィルムとしては、一般的な剥離フィルムを適用することができる。
【0113】
本開示における第1の積層フィルムが、第1の保護フィルム4Aおよび第1の剥離フィルム5Aの両方を含む場合、第1の保護フィルムの剥離力P4と第1の剥離フィルムの剥離力P5との差P4-P5(mN/20mm)は、-100mN/20mm以上が好ましく、-50mN/20mm以上がより好ましく、-25mN/20mm以上が更に好ましく、0mN/20mm以上が特に好ましい。P5がP4に対して大きすぎると、第1の剥離フィルム5Aを剥離する際に、第1の保護フィルム4Aに浮きが生じる場合がある。第1の保護フィルムの剥離力P4および第1の剥離フィルムの剥離力P5は、後述する180°ピール試験において、第1の保護フィルムまたは第1の剥離フィルムを引き剥がすことによって測定することができる。
【0114】
2.第2の積層フィルム準備工程
本工程は、第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する工程である。本実施形態におけるガラス積層体が表示装置に用いられる場合、第2の積層フィルムは、表示パネル側に配置される。図1(b)に示すように、第2の積層フィルム10Bは、第2の樹脂基材1Bおよび第2の感熱接着層2Bを有する。また、図4(b)に示すように、第2の積層フィルム10Bは、例えば、第2の樹脂基材1Bの第2の感熱接着層2Bとは反対の面側に、第2の保護フィルム4Bを有していてもよい。また、第2の感熱接着層2Bの第2の樹脂基材1Bとは反対の面側に、第2の剥離フィルム5Bを有していてもよい。なお、第2の剥離フィルム5Bは、貼合工程前に剥離される。
【0115】
(1)第2の樹脂基材
第2の樹脂基材の材料、厚さ、および特性は、上述した第1の樹脂基材と同様である。第2の樹脂基材の材料と第1の樹脂基材の材料とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0116】
(2)第2の感熱接着層
第2の感熱接着層の材料、ガラス転移温度、厚さ、および複合弾性率は、上述した第1の感熱接着層と同様である。第2の感熱接着層の材料と第1の感熱接着層の材料とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましい。また、第2の感熱接着層の材料と第1の感熱接着層の材料が異なる種類である場合には、第1の感熱接着層のガラス転移温度Tgと、第2の感熱接着層のガラス転移温度Tgとの差(絶対値)は、55℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、第1エージング処理および第2エージング処理を同時に行うことができ、工程短縮が可能となる。
【0117】
(3)第2の積層フィルムの他の構成
本工程において準備する第2の積層フィルムは、第2の樹脂基材の第2の感熱接着層とは反対の面側に、機能層を有していてもよい。機能層としては、例えば、ハードコート層、加飾層、衝撃吸収層、接着層、UV吸収層、調色層等が挙げられる。また、機能層は、単層であってもよく、複数の層を有していてもよい。また、機能層は、単一の機能を有する層であってもよく、互いに異なる機能を有する複数の層を有していてもよい。
【0118】
第2の積層フィルムは、第2の樹脂基材の第2の感熱接着層とは反対の面側に第2の保護フィルムを有していてもよい。第2の積層フィルムが機能層を有する場合、機能層の第2の樹脂基材とは反対の面側に第2の保護フィルムが配置されていることが好ましい。第2の保護フィルムとしては、第1の保護フィルムと同様のものが挙げられる。第2の積層フィルムは、第2の感熱接着層2Bの第2の樹脂基材1Bとは反対の面側に、第2の剥離フィルム5Bを有していてもよい。第2の剥離フィルムとしては、一般的な剥離フィルムを適用することができる。
【0119】
本開示における第2の積層フィルムが、第2の保護フィルム4Bおよび第2の剥離フィルム5Bの両方を含む場合、第2の保護フィルムの剥離力P4と第2の剥離フィルムの剥離力P5との差P4-P5(mN/20mm)は、-100mN/20mm以上が好ましく、-50mN/20mm以上がより好ましく、-25mN/20mm以上が更に好ましく、0mN/20mm以上が特に好ましい。P5がP4に対して大きすぎると、第2の剥離フィルム5Bを剥離する際に、第2の保護フィルム4Bに浮きが生じる場合がある。第2の保護フィルムの剥離力P4および第2の剥離フィルムの剥離力P5は、後述する180°ピール試験において、第2の保護フィルムまたは第2の剥離フィルムを引き剥がすことによって測定することができる。
【0120】
3.ガラス基材準備工程
本工程は、ガラス基材を準備する工程である。本実施形態においては、ガラス基材は、第1主面S1と、前記第1主面S1に対向する第2主面S2と、を有する化学強化ガラスである。上述したように、化学強化ガラスは、非強化ガラスと比較して、耐屈曲性および耐衝撃性が良好である。また、化学強化ガラスは機械的強度に優れており、その分薄くできるという効果を有する。
【0121】
化学強化ガラスは、ガラスの表面近傍において、例えばナトリウムイオンをカリウムイオンに一部交換することで、化学的な方法によって機械的物性を強化したガラスであり、第1面の表面および第2面の表面に圧縮応力層を有する。すなわち、化学強化ガラスは、表面にカリウムが多く存在しており、表面に圧縮応力がかかっているガラスである。
【0122】
ガラス基材の形状は、通常、直方体状であり、六面体である。ガラス基材は、2つの面(第1主面および第2主面)と、4つの側面とを有する。ガラス基材は、通常、全ての面に化学強化処理が施された6面強化ガラスである。6面強化ガラスは、例えば、ガラス基材に化学強化処理を施すことによって得ることができる。また、ガラス基材は、6面強化ガラスを所望のサイズに切断することにより得られる2面強化ガラスであってもよい。
【0123】
化学強化ガラス基材を構成するガラスとしては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0124】
化学強化ガラスは、ガラス板に化学強化処理を施した後、洗浄および乾燥することにより、製造できる。通常、化学強化処理においては、大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、Kイオン)を含む金属塩(例えば、硝酸カリウム)の融液に、浸漬などによってガラス板を接触させる。これにより、ガラス板中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、Naイオン)が大きなイオン半径の金属イオン(典型的には、Kイオン)と置換される。
【0125】
化学強化ガラスは、表層のカリウムイオン濃度が、中心近傍におけるカリウムイオン濃度よりも多い。そのため、以下の方法により、ガラス基材が化学強化ガラスであることを特定できる。
【0126】
例えば、ガラス基材を厚さ方向に10分割し、それぞれの領域におけるカリウムイオン濃度を、最表面側からd1、d2、d3…d10とした場合に、カリウムイオン濃度がd1>d5およびd10>d5の両方を満たす場合に、化学強化ガラスであることを特定することができる。厚さ方向のカリウムの濃度分布は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX)により測定することができる。具体的には、ガラス基材の側面に対して、オックスフォード・インストゥルメンツ社製 X-MaxNを用いて、加速電圧10kVでガラス基材の側面の厚さ方向に対してEDXマッピングを行い、カリウム濃度の定量化を行うことができる。
【0127】
化学強化ガラスの厚さは、耐屈曲性および耐衝撃性を満たすことができるように、適宜選択される。本実施形態においては、超薄板ガラス(Ultra-Thin Glass)を用いることが好ましい。
【0128】
また、本工程後に、ガラス基材の一方の主面に第3の保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程を有することが好ましい。例えば、第1貼合工程を第2貼合工程よりも前に行う場合、ガラス基材の貼合面となる第1主面とは反対側の第2主面に第3の保護フィルムを貼合してもよい。
【0129】
本実施形態において、上記第1の積層フィルム準備工程、上記第2の積層フィルム準備工程および上記ガラス基材準備工程は、順番に行ってもよいし、並行して行ってもよい。順番に行う場合においては、順序は特に限定されない。
【0130】
4.第1貼合工程
本工程は、第1の感熱接着層2Aのガラス転移温度をTgとした場合に、第1の積層フィルム10Aの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第1の積層フィルム10Aの第1の感熱接着層2A側の面を、ガラス基材21の第1主面S1に貼合する工程である。
【0131】
本工程における上記積層フィルムの温度は、貼合直後に測定される積層フィルムの樹脂基材表面の温度である。具体的には、例えば、熱源が面状である装置(例えば、後述する真空貼合装置)を用いた場合には、機械動作完了後30秒以内に測定される樹脂基材表面の温度である。また、熱源が線状である装置(例えば、後述するロールラミネート装置)を用いた場合には、ヒートロールを通過してから30秒以内に測定される樹脂基材表面の温度である。
【0132】
貼合工程において、第1の積層フィルムの温度は、Tg+5℃以上とし、Tg+10℃以上とすることが好ましく、Tg+20℃以上とすることがより好ましい。第1の積層フィルムの温度が低すぎる場合、貼合工程直後の剥離強度が低く、剥がれが生じる。
【0133】
一方、本工程において、第1の積層フィルムの温度は、Tg+60℃以下とし、Tg+50℃以下とすることが好ましく、Tg+40℃以下とすることがより好ましい。第1の積層フィルムの温度が高すぎる場合、第1の感熱接着層の樹脂が流動し、ガラス質感が低下する。
【0134】
本工程において、第1の積層フィルムの温度は、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下とし、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下とすることが好ましく、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下とすることがより好ましい。
【0135】
第1の積層フィルムの第1の感熱接着層側の面をガラス基材の第1主面に貼合する方法については、後述する。
【0136】
5.第2貼合工程
本工程は、第2の感熱接着層2Bのガラス転移温度をTgとした場合に、第2の積層フィルム10Bの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第2の積層フィルム10Bの第2の感熱接着層2B側の面を、ガラス基材21の第2主面S2に貼合する工程である。
【0137】
第2貼合工程において、第2の積層フィルムの温度は、Tg+5℃以上とし、Tg+10℃以上とすることが好ましく、Tg+20℃以上とすることがより好ましい。第2の積層フィルムの温度が低すぎる場合、貼合工程直後の剥離強度が低く、剥がれが生じる。
【0138】
一方、本工程において、第2の積層フィルムの温度は、Tg+60℃以下とし、Tg+50℃以下とすることが好ましく、Tg+40℃以下とすることがより好ましい。第2の積層フィルムの温度が高すぎる場合、第2の感熱接着層の樹脂が流動し、ガラス質感が低下する。
【0139】
本工程において、第2の積層フィルムの温度は、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下とし、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下とすることが好ましく、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下とすることがより好ましい。
【0140】
第1貼合工程および第2貼合工程は、順番に行ってもよい。すなわち、いずれか一方の工程を先に行い、他方の工程を後に行ってもよい。例えば、第1貼合工程後に、第2貼合工程を行ってもよいし、第2貼合工程後に、第1貼合工程を行ってもよい。
【0141】
この場合、真空貼合装置を用いて行うことができる。図6は、真空貼合装置を用いた貼合方法を説明する概略図である。図6に示すように、真空貼合装置40は、温度設定可能な上テーブル41および温度設定可能な下テーブル42を有する。このような真空貼合装置としては、真空貼合機(タカトリ社製TPL-0514MWH)が挙げられる。
【0142】
まず、図6(a)に示すように、下テーブル42上に、A4サイズに切り取った、厚さ5mmのフッ素ゴム発泡体43(三福工業社製MF-20S)をセットする。その後、フッ素ゴム発泡体43上に、A4サイズのPETフィルム(東洋紡社製「A4360」、厚さ100μm)3枚からなる緩衝材44を配置する。その後、緩衝材44上に、A4サイズのノンシリコーン系離型PET45(藤森工業社製「38E-0010-NSD」、厚さ38μm)を離型層側を上にして1枚配置する。離型PET45上に、ガラス基材21をセットする。緩衝材44は、PETフィルムに限定されず、フッ素ゴム発泡体43の面質の影響を緩和する、または、無くすためのクッションとしての機能を有し、表面が平滑な(光学用)フィルムで、貼合温度に耐え得るフィルムであれば、特に限定されない。
【0143】
次に、上テーブル41側に、第1の積層フィルム10Aを、第1の感熱接着層2Aの中央部分がガラス基材21の第1主面S1と接するように、上テーブル41にカプトンテープ46で固定した後、上テーブルを閉じて、下記条件にて真空貼合を行う。
【0144】
(真空貼合条件)
・上テーブル温度:上記温度範囲内(Tg+5℃以上、Tg+60℃以下)
・下テーブル温度:ヒーターOFF
・ワークサイズ:A4サイズ(X=297mm、Y=210mm)
・貼合圧:0.2MPa
・圧着時間:100秒
・真空度:50Pa
【0145】
次に、図6(b)に示すように、離型PET45上に、第1の積層フィルム10Aが貼合されたガラス基材21を、第2主面S2が上側となるように配置する。上テーブル41側に、第2の積層フィルム10Bを、感熱接着層2Aの中央部分が化学強化ガラス21の第1主面S1と接するように、上テーブル41にカプトンテープ46で固定した後、上テーブルを閉じて、上テーブル温度をTg+5℃以上、Tg+60℃以下として、上記条件にて真空貼合を行う。
【0146】
第1貼合工程および第2貼合工程を順番に行う場合、上記真空貼合装置に限定されず、少なくとも1つヒートロールを有する片面貼合可能なロールラミネート装置を用いることもできる。
【0147】
また、第1貼合工程および第2貼合工程は、同時に行ってもよい。この場合、図7に示す、加熱、加圧ができるヒートロールR1およびR2(ラミネーターロールとも言う)を用いた、両面貼合可能なロールラミネート装置70を用いることができる。ヒートロールR1およびR2は、それぞれに内部に遠赤外線ヒータ管が組み込まれており、温度制御が可能である。この方法は連続して、第1の積層フィルム10Aおよび第2の積層フィルム10Bを、ガラス基材21の表裏(第1主面S1および第2主面S2)へ同時にラミネートすることができる。第1の積層フィルム10AのロールR3からは、剥離フィルムを付けていない状態の第1の積層フィルム10Aが矢印の方向に引出され、ガラス基材21の第1主面S1にラミネートされる。これと同時に、第2の積層フィルム10BのロールR4からも、剥離フィルムを付けていない状態の第2の積層フィルム10Bが矢印の方向に引出され、ガラス基材21の第2主面S2にラミネートされる。尚、図7における巻取りロールR5、R6は、それぞれ、ロールR7、R8を介して、剥離フィルムのみを巻き取るものである。得られた貼合体は、適宜所定の大きさに切断される。このようなロールラミネート装置としては、FPC-DFW-250-L型(株式会社エム・シー・ケー)を用いることができる。
【0148】
ラミネート速度は、例えば、0.3m/分以上であり、0.5m/分以上であってもよい。一方、例えば、3m/分以下であり、1.5m/分以下であってもよい。ラミネート圧力は、例えば、0.1Mpa以上であり、0.3Mpa以上であってもよい。一方、例えば、1.0Mpa以下であり、0.6Mpa以下であってもよい。
【0149】
本実施形態においては、第1貼合工程直後かつ第2貼合工程直後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、それぞれ、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましく、0.15N/20mm以上であることが更に好ましく、0.2N/20mm以上であることが特に好ましい。貼合工程直後の剥離強度が、上記値以上であれば貼合工程直後の剥がれを抑制でき、ハンドリング性が向上する。一方、2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.0N/20mm以下であることがより好ましく、0.7N/20mm以下であることが更に好ましく、0.5N/20mm以下であることが特に好ましい。貼合工程においては、ガラス基材と積層フィルムとの間に、異物または気泡が入ったり、積層フィルムに皺が生じたりする等の不具合が発生する場合がある。貼合工程直後の剥離強度が上記範囲であれば、上記のような不具合が生じた場合であっても、積層フィルムをガラス基材から容易に剥離することができ、また、ガラス基材に感熱接着層を残さずに剥離することができる。第1貼合工程直後かつ第2貼合工程直後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、それぞれ、0.05N/20mm以上2.0N/20mm以下が好ましく、0.1N/20mm以上1.0N/20mm以下がより好ましく、0.15N/20mm以上0.7N/20mm以下が更に好ましく、0.2N/20mm以上0.5N/20mm以下が特に好ましい。貼合工程直後におけるガラス基材と積層フィルムとの間の剥離強度は、後述のガラス積層体の剥離強度の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0150】
6.エージング工程
本工程は、第1の積層フィルム、ガラス基材および第2の積層フィルムをこの順に有する貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う工程である。
【0151】
エージング処理における温度は、Tg+5℃以上およびTg+5℃以上のうち高い温度以上であり、Tg+10℃以上およびTg+10℃以上のうち高い温度以上であることが好ましく、Tg+20℃以上およびTg+20℃以上のうち高い温度以上であることがより好ましい。上記温度範囲の環境下で行うことにより、第1の感熱接着層および第2の感熱接着層に含まれる樹脂が軟化し、ガラス基材との接着面積が向上する。そのため、ガラス基材との密着性が向上する。さらに、第1の感熱接着層および第2の感熱接着層に含まれる樹脂の動きが活発になり、これに伴い、硬化剤やシランカップリング剤が感熱接着層の表面近傍に移動しやすくなる。そのため、これらの添加剤によるガラス基材との密着性向上の効果も期待できる。一方、上記温度範囲よりも低い温度の環境下で行う場合、剥離強度が低くなり、高温高湿環境下で使用した場合に耐屈曲性が低下する。
【0152】
エージング処理における温度は、Tg+60℃以下およびTg+60℃以下のうち低い温度以下であり、Tg+50℃以下およびTg+50℃以下のうち低い温度以下であることが好ましく、Tg+40℃以下およびTg+40℃以下のうち低い温度以下であることがより好ましい。エージング処理を、上記温度範囲よりも高い温度の環境下で行う場合、感熱接着層の樹脂が流動し、ガラス質感が低下する。
【0153】
エージング工程における温度範囲は、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲であり、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下の温度範囲、かつ、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下の温度範囲であることが好ましく、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下の温度範囲、かつ、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下の温度範囲であることがより好ましい。
【0154】
エージング時間は、10時間以上であり、30時間以上が好ましく、50時間以上がより好ましい。エージング時間が上記範囲であることにより、密着性が向上し、高温高湿環境下等の実使用環境下において高い耐屈曲性が得られる。一方、エージング時間は、例えば、100時間以下であり、80時間以下であってもよい。エージング時間が上記範囲であることにより、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。
【0155】
本実施形態におけるエージング工程は、例えば、上記温度範囲内に設定されたオーブンの中で行うことができる。図8は、本実施形態におけるエージング工程を説明する概略図である。図8に示すように、例えば、金属ラック51を準備し、第1の積層フィルム10A、ガラス基材21および第2の積層フィルム10Bをこの順に有する貼合体50を金属ラック51上に載置し、上記温度範囲内に設定されたオーブンにて、上記時間、エージングを行うことができる。上記オーブンとしては、特に限定されないが、例えば、恒温器(型式:HT220(ETAC製))を使用することができる。
【0156】
本実施形態においては、エージング工程後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度およびガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、それぞれ、10N/20mm以上であることが好ましく、15N/20mm以上であることがより好ましく、20N/20mm以上であることがより好ましい。エージング工程後の剥離強度が上記値以上であれば、高温高湿環境下における耐屈曲性に優れる。一方、例えば、70N/20mm以下であり、60N/20mm以下であってもよく、50N/20mm以下であってもよい。剥離強度が高すぎると、剥離試験時にフィルム強度が足りない場合、フィルムが破断する場合がある。
エージング工程後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度およびガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、それぞれ、10N/20mm以上70N/20mm以下が好ましく、15N/20mm以上60N/20mm以下がより好ましく、20N/20mm以上50N/20mm以下が特に好ましい。
【0157】
7.エア抜き工程
本実施形態のガラス積層体の製造方法は、エージング工程の前に、上述の貼合体に対してエア抜き処理を行う、エア抜き工程を有することが好ましい。エア抜き工程を行うことによって、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間、およびガラス基材と第2の積層フィルムとの間に介在する気泡を除去することができ、ガラス積層体の外観が向上する。
【0158】
エア抜き工程は、オートクレーブを使用して行うことができる。例えば、オートクレーブ内に貼合体を配置して、所定の温度、所定の圧力の環境下において、ガラス基材と積層フィルムとを所定時間密着させる。上記温度としては特に限定されないが、例えば、30℃以上であり、50℃以上であってもよい。一方、100℃以下であり、70℃以下であってもよい。上記圧力としては特に限定されないが、例えば、0.1MPa以上であり、0.5MPa以上であってもよい。一方、例えば、1.2MPa以下であり、1.0MPa以下であってもよい。上記時間としては、例えば0時間以上であり、30分以上であってもよい。一方、例えば2時間以内であり、1時間以内であってもよい。
【0159】
本実施形態においては、エア抜き工程後、エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、それぞれ、2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.5N/20mm以下であることがより好ましく、1.0N/20mm以下であることが特に好ましい。エア抜き工程後、エージング工程前における剥離強度が上記範囲であれば、エア抜き工程後においても、第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムをガラス基材から容易に剥離することができ、また、ガラス基材に感熱接着層を残さずに剥離することができる。一方、エア抜き工程後、エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、それぞれ、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましく、0.2N/20mm以上であることがより好ましい。上記範囲であれば、ガラス基材からの第1の積層フィルムの剥がれ、および第2の積層フィルムの剥がれを抑制でき、ハンドリング性が向上する。
【0160】
エア抜き工程後、エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、それぞれ、0.05N/20mm以上2.0N/20mm以下が好ましく、0.1N/20mm以上1.5N/20mm以下がより好ましく、0.2N/20mm以上1.0N/20mm以下が特に好ましい。
【0161】
8.トリミング工程
上記エージング工程後において、通常、上記第1の積層フィルムおよび上記第2の積層フィルの平面視における大きさは、上記ガラス基材の平面視における大きさよりも大きい。本実施形態におけるガラス積層体の製造方法は、エージング工程後に、第1の積層フィルムの周縁部および第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有することが好ましい。すなわち、トリミング工程は、第1の積層フィルムの第1の樹脂基材および第1の感熱接着層の周縁部と、第2の積層フィルムの第2の樹脂基材および第2の感熱接着層の周縁部を切断する工程である。この際、ガラス基材の平面視における外周よりも、第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムの平面視における外周が外側となるように、周縁部を切断することが好ましい。このようにトリミングすることにより、断面視において、第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムが、ガラス基材からはみ出す構造となり、ガラス基材の側面の耐衝撃性が向上する。積層フィルムの樹脂基材および接合層の周縁部を切断する方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工、打ち抜き加工が挙げられる。レーザー加工は、打ち抜き加工に比べて、ガラス基材が割れにくい。中でも、COレーザーによるレーザー加工が好ましい。また、ガラス自体の寸法公差があるため、ガラス側面を画像認識して、COレーザーで切断することが好ましい。精度良く、ガラス基材の端部から樹脂基材の端部までの距離、および、ガラス基材の端部から感熱接着層の端部までの距離(はみ出し量)が、所定の範囲であるガラス積層体を製造することができるためである。
【0162】
B.ガラス積層体の製造方法(第2実施形態)
図1および図9は、それぞれ、本実施形態におけるガラス積層体の製造方法の一例を示す工程フロー図である。図1に示すように、本実施形態におけるガラス積層体の製造方法は、第1の樹脂基材1Aおよび第1の感熱接着層2Aを有する第1の積層フィルム10Aを準備する第1の積層フィルム準備工程(図1(a))と、第2の樹脂基材1Bおよび第2の感熱接着層2Bを有する第2の積層フィルム10Bを準備する第2の積層フィルム準備工程(図1(b))と、第1主面S1と、前記第1主面S1に対向する第2主面S2と、を有する化学強化ガラスであるガラス基材21を準備するガラス基材準備工程(図1(c))と、を有する。
【0163】
さらに、本実施形態におけるガラス積層体の製造方法は、第1の感熱接着層2Aのガラス転移温度をTgとした場合に、第1の積層フィルム10Aの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第1の積層フィルム10Aの第1の感熱接着層2A側の面を、ガラス基材21の第1主面S1に貼合する第1貼合工程(図9(a))と、第1貼合工程で得られる第1貼合体51に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第1エージング工程(図9(b))と、第2の感熱接着層2Bのガラス転移温度をTgとした場合に、第2の積層フィルム10Bの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第2の積層フィルム10Bの第2の感熱接着層2B側の面を、ガラス基材21の第2主面S2に貼合する第2貼合工程(図9(c))と、第2貼合工程で得られる第2貼合体52に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第2エージング工程(図9(d))を有する。これにより、ガラス積層体100が得られる(図9(e))。
【0164】
また、上記図9においては、第1貼合工程、第1エージング工程、第2貼合工程および第2エージング工程の順で順番に行っているが、第2貼合工程、第2エージング工程、第1貼合工程および第1エージング工程の順で行ってもよい。
【0165】
本実施形態においては、ガラス基材は、化学強化ガラスであり、好ましくは超薄板ガラス(Ultra-Thin Glass)である。また、第1貼合工程において、第1の積層フィルムの温度を所定の範囲として、第1の積層フィルムの第1の感熱接着層側の面をガラス基材の第1主面に貼合し、さらに、得られた第1貼合体に、所定の温度範囲の環境下で、所定の時間、エージング処理を行うことを特徴とする。また、第2貼合工程において、第2の積層フィルムの温度を所定の範囲として、第2の積層フィルムの第2の感熱接着層側の面をガラス基材の第2主面に貼合し、さらに、得られた第2貼合体に、所定の温度範囲の環境下で、所定の時間、エージング処理を行うことを特徴とする。
【0166】
上記第1貼合工程において、第1の積層フィルムの温度を上記温度以上としてガラス基材に貼合することによって、第1貼合工程直後における第1積層フィルムとガラス基材との間の剥がれを抑制することができる。第1の積層フィルムの温度を上記温度以下としてガラス基材に貼合することによって、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。なお、本実施形態において、「第1貼合工程直後」とは、本実施形態のガラス積層体の製造方法が、後述する第1エア抜き工程を有する場合には、第1貼合工程後、第1エア抜き工程前を意味する。一方、第1エア抜き工程を有さない場合には、第1貼合工程後、第1エージング工程前を意味する。
【0167】
更に上記第1エージング工程において、第1貼合体を所定の温度範囲内とし、所定時間以上エージングを行うことによって、第1の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が向上し、耐屈曲性が向上する。
【0168】
同様に、上記第2貼合工程において、第2の積層フィルムの温度を上記温度以上としてガラス基材に貼合することによって、第2貼合工程直後における第2積層フィルムとガラス基材との間の剥がれを抑制することができる。第2の積層フィルムの温度を上記温度以下としてガラス基材に貼合することによって、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。本開示のガラス積層体の製造方法が、後述する第2エア抜き工程を有する場合には、第2貼合工程後、第2エア抜き工程前を意味する。一方、第2エア抜き工程を有さない場合には、第2貼合工程後、第2エージング工程前を意味する。
【0169】
上記第2エージング工程において、第2貼合体を所定の温度範囲内とし、所定時間以上エージングを行うことによって、第2の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が向上し、耐屈曲性が向上する。
【0170】
したがって、本実施形態においては、耐屈曲性が良好で、かつ、良好なガラス質感を有するガラス積層体を製造することが可能である。
【0171】
また、本実施形態において製造されるガラス積層体は、両面が積層フィルムによって保護されているため、外部衝撃が加わった場合にガラス基材が割れにくい。また、ガラス基材の側面の耐衝撃性を向上させることができる。
【0172】
よって、本実施形態により製造されたガラス積層体は、折り曲げることが可能であり、多種多様な表示装置に用いることができ、例えばフォルダブルディスプレイ用部材として使用することができる。
【0173】
また、本実施形態においては、エージング工程前においては、第1の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が比較的低いため、第1積層フィルムをガラス基材から容易に剥離できる。また、第2の積層フィルムとガラス基材との間の剥離強度が比較的低いため、第2積層フィルムをガラス基材から容易に剥離できる。また、積層フィルムの剥離後には、ガラス基材に接着層残りが生じにくい。そのため、ガラス基材に積層フィルムを再度貼合することができ、リワーク性が向上する。
【0174】
1.第1の積層フィルム準備工程
本工程で準備する第1の積層フィルムとしては、上述した「A.第1実施形態」で説明した第1の積層フィルムと同様である。
【0175】
2.第2の積層フィルム準備工程
本工程で準備する第2の積層フィルムとしては、上述した「A.第1実施形態」で説明した第2の積層フィルムと同様である。
【0176】
3.ガラス基材準備工程
本工程で準備するガラス基材としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したガラス基材と同様である。
【0177】
4.第1貼合工程
本工程は、第1の感熱接着層2Aのガラス転移温度をTgとした場合に、第1の積層フィルム10Aの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第1の積層フィルム10Aの第1の感熱接着層2A側の面を、ガラス基材21の第1主面S1に貼合する工程である。
【0178】
本工程における第1の積層フィルムの温度としては、上述した「A.第1実施形態」で説明した内容と同様である。
第1の積層フィルムの第1の感熱接着層側の面をガラス基材の第1主面に貼合する方法については、真空貼合装置及び片面貼合可能なロールラミネート装置を用いた方法が挙げられる。
【0179】
本実施形態においては、第1貼合工程直後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度が、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましく、0.15N/20mm以上であることが更に好ましく、0.2N/20mm以上であることが特に好ましい。貼合工程直後の剥離強度が、上記値以上であれば貼合工程直後の剥がれを抑制でき、ハンドリング性が向上する。一方、2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.0N/20mm以下であることがより好ましく、0.7N/20mm以下であることが更に好ましく、0.5N/20mm以下であることが特に好ましい。貼合工程においては、ガラス基材と積層フィルムとの間に、異物または気泡が入ったり、積層フィルムに皺が生じたりする等の不具合が発生する場合がある。貼合工程直後の剥離強度が上記範囲であれば、上記のような不具合が生じた場合であっても、積層フィルムをガラス基材から容易に剥離することができ、また、ガラス基材に感熱接着層を残さずに剥離することができる。第1貼合工程直後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度は、0.05N/20mm以上2.0N/20mm以下が好ましく、0.1N/20mm以上1.0N/20mm以下がより好ましく、0.15N/20mm以上0.7N/20mm以下が更に好ましく、0.2N/20mm以上0.5N/20mm以下が特に好ましい。貼合工程直後におけるガラス基材と積層フィルムとの間の剥離強度は、後述のガラス積層体の剥離強度の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0180】
5.第1エージング工程
本工程は、第1貼合工程で得られる第1貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う工程である。
【0181】
第1貼合体は、少なくとも、ガラス基材と第1の積層フィルムとを有する。第1貼合工程を第2貼合工程後に行う場合には、第1貼合体は、ガラス基材と、第1の積層フィルムと、第2の積層フィルムと、を有する。
【0182】
第1エージング処理における温度は、Tg+5℃以上であり、Tg+10℃以上であることが好ましく、Tg+20℃以上であることがより好ましい。上記温度範囲の環境下で行うことにより、第1の感熱接着層に含まれる樹脂が軟化し、ガラス基材との接着面積が向上する。そのため、ガラス基材との密着性が向上する。さらに、第1の感熱接着層に含まれる樹脂の動きが活発になり、これに伴い、硬化剤やシランカップリング剤が感熱接着層の表面近傍に移動しやすくなる。そのため、これらの添加剤によるガラス基材との密着性向上の効果も期待できる。一方、上記温度範囲よりも低い温度の環境下で行う場合、剥離強度が低くなり、高温高湿環境下で使用した場合に耐屈曲性が低下する。
【0183】
第1エージング処理における温度は、Tg+60℃以下であり、Tg+50℃以下であることが好ましく、Tg+40℃以下であることがより好ましい。エージング処理を、上記温度範囲よりも高い温度の環境下で行う場合、感熱接着層の樹脂が流動し、ガラス質感が低下する。
【0184】
第1エージング工程における温度範囲は、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲であり、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下の温度範囲であることが好ましく、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下の温度範囲であることがより好ましい。
【0185】
第1エージング時間は、10時間以上であり、30時間以上が好ましく、50時間以上がより好ましい。第1エージング時間が上記範囲であることにより、密着性が向上し、湿熱環境下等の実使用環境下において高い耐屈曲性が得られる。一方、第1エージング時間は、例えば、100時間以下であり、80時間以下であってもよい。第1エージング時間が上記範囲であることにより、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。
第1エージング時間は、10時間以上であれば、感熱接着層の材料および性能によって適宜調整することが好ましい。
【0186】
第1エージング処理の具体的方法としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したエージング処理と同様である。
【0187】
本実施形態においては、第1エージング工程後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度が10N/20mm以上であることが好ましく、15N/20mm以上であることがより好ましく、20N/20mm以上であることがより好ましい。第1エージング工程後の剥離強度が上記値以上であれば、高温高湿環境下における耐屈曲性に優れる。一方、例えば、70N/20mm以下であり、60N/20mm以下であってもよく、50N/20mm以下であってもよい。剥離強度が高すぎると、剥離試験時にフィルム強度が足りない場合、フィルムが破断する場合がある。第1エージング工程後における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度は、10N/20mm以上70N/20mm以下が好ましく、15N/20mm以上60N/20mm以下がより好ましく、20N/20mm以上50N/20mm以下が特に好ましい。
【0188】
6.第2貼合工程
本工程は、第2の感熱接着層2Bのガラス転移温度をTgとした場合に、第2の積層フィルム10Bの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、第2の積層フィルム10Bの第2の感熱接着層2B側の面を、ガラス基材21の第2主面S2に貼合する工程である。
【0189】
本工程における第2の積層フィルムの温度としては、上述した「A.第1実施形態」で説明した内容と同様である。
第2の積層フィルムの第2の感熱接着層側の面をガラス基材の第2主面に貼合する方法については、真空貼合装置及び片面貼合可能なロールラミネート装置を用いた方法が挙げられる。
【0190】
本実施形態においては、第2貼合工程直後における、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましく、0.15N/20mm以上であることが更に好ましく、0.2N/20mm以上であることが特に好ましい。貼合工程直後の剥離強度が、上記値以上であれば貼合工程直後の剥がれを抑制でき、ハンドリング性が向上する。一方、2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.0N/20mm以下であることがより好ましく、0.7N/20mm以下であることが更に好ましく、0.5N/20mm以下であることが特に好ましい。貼合工程直後の剥離強度が上記範囲であれば、上記のような不具合が生じた場合であっても、積層フィルムをガラス基材から容易に剥離することができ、また、ガラス基材に感熱接着層を残さずに剥離することができる。第2貼合工程直後における、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、0.05N/20mm以上2.0N/20mm以下が好ましく、0.1N/20mm以上1.0N/20mm以下がより好ましく、0.15N/20mm以上0.7N/20mm以下が更に好ましく、0.2N/20mm以上0.5N/20mm以下が特に好ましい。貼合工程直後におけるガラス基材と積層フィルムとの間の剥離強度は、後述のガラス積層体の剥離強度の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0191】
7.第2エージング工程
本工程は、第2貼合工程で得られる第2貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う工程である。
【0192】
第2貼合体は、少なくとも、ガラス基材と第2の積層フィルムとを有する。第2貼合工程を第1貼合工程後に行う場合には、第2貼合体は、ガラス基材と、第1の積層フィルムと、第2の積層フィルムと、を有する。
【0193】
第2エージング処理における温度は、Tg+5℃以上であり、Tg+10℃以上であることが好ましく、Tg+20℃以上であることがより好ましい。上記温度範囲の環境下で行うことにより、第2の感熱接着層に含まれる樹脂が軟化し、ガラス基材との接着面積が向上する。そのため、ガラス基材との密着性が向上する。さらに、第2の感熱接着層に含まれる樹脂の動きが活発になり、これに伴い、硬化剤やシランカップリング剤が感熱接着層の表面近傍に移動しやすくなる。そのため、これらの添加剤によるガラス基材との密着性向上の効果も期待できる。一方、上記温度範囲よりも低い温度の環境下で行う場合、剥離強度が低くなり、高温高湿環境下で使用した場合に耐屈曲性が低下する。
【0194】
第2エージング処理における温度は、Tg+60℃以下であり、Tg+50℃以下であることが好ましく、Tg+40℃以下であることがより好ましい。エージング処理を、上記温度範囲よりも高い温度の環境下で行う場合、感熱接着層の樹脂が流動し、ガラス質感が低下する。
【0195】
第2エージング工程における温度範囲は、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲であり、Tg+10℃以上、Tg+50℃以下の温度範囲であることが好ましく、Tg+20℃以上、Tg+40℃以下の温度範囲であることがより好ましい。
【0196】
第2エージング時間は、10時間以上であり、30時間以上が好ましく、50時間以上がより好ましい。第2エージング時間が上記範囲であることにより、密着性が向上し、高温高湿環境等の実使用環境下において高い耐屈曲性が得られる。一方、第2エージング時間は、例えば、100時間以下であり、80時間以下であってもよい。第2エージング時間が上記範囲であることにより、優れたガラス質感を有するガラス積層体が得られる。
【0197】
第2エージング処理の具体的方法としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したエージング処理と同様である。
【0198】
本実施形態においては、第2エージング工程後における、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度が10N/20mm以上であることが好ましく、15N/20mm以上であることがより好ましく、20N/20mm以上であることがより好ましい。第2エージング工程後の剥離強度が上記値以上であれば、高温高湿環境下における耐屈曲性に優れる。一方、例えば、70N/20mm以下であり、60N/20mm以下であってもよく、50N/20mm以下であってもよい。剥離強度が高すぎると、剥離試験時にフィルム強度が足りない場合、フィルムが破断する場合がある。第2エージング工程後における、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、10N/20mm以上70N/20mm以下が好ましく、15N/20mm以上60N/20mm以下がより好ましく、20N/20mm以上50N/20mm以下が特に好ましい。
【0199】
8.エア抜き工程
本実施形態においては、第1貼合工程後、第1エージング工程の前に、上述の第1貼合体に対してエア抜き処理を行う、第1エア抜き工程を有することが好ましい。エア抜き工程を行うことによって、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間に介在する気泡を除去することができ、ガラス積層体の外観が向上する。
同様に、第2貼合工程後、第2エージング工程の前に、第2貼合体に対してエア抜き処理を行う、第2エア抜き工程を有することが好ましい。
【0200】
第1エア抜き工程および第2エア抜き工程の方法や条件としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したエア抜き工程と同様である。
【0201】
本実施形態においては、第1エア抜き工程後、第1エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度は、2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.5N/20mm以下であることがより好ましく、1.0N/20mm以下であることが特に好ましい。第1エア抜き工程後、第1エージング工程前における剥離強度が上記範囲であれば、第1エア抜き工程後においても、第1の積層フィルムをガラス基材から容易に剥離することができ、また、ガラス基材に感熱接着層を残さずに剥離することができる。一方、第1エア抜き工程後、第1エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度は、0.05N/20mm以上であることが好ましく、0.1N/20mm以上であることがより好ましく、0.2N/20mm以上であることがより好ましい。上記範囲であれば、ガラス基材からの第1の積層フィルムの剥がれを抑制でき、ハンドリング性が向上する。
【0202】
第1エア抜き工程後、第1エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度は、それぞれ、0.05N/20mm以上2.0N/20mm以下が好ましく、0.1N/20mm以上1.5N/20mm以下がより好ましく、0.2N/20mm以上1.0N/20mm以下が特に好ましい。
【0203】
第2エア抜き工程後、第2エージング工程前における、ガラス基材と第2の積層フィルムとの間の剥離強度は、第1エア抜き工程後、第1エージング工程前における、ガラス基材と第1の積層フィルムとの間の剥離強度と同様である。
【0204】
9.トリミング工程
上記第1エージング工程後かつ第2エージング工程後において、通常、上記第1の積層フィルムおよび上記第2の積層フィルの平面視における大きさは、上記ガラス基材の平面視における大きさよりも大きい。本実施形態におけるガラス積層体の製造方法は、エージング工程後に、第1の積層フィルムの周縁部および第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有することが好ましい。トリミング工程の具体的方法としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したトリミング工程と同様である。
【0205】
C.ガラス積層体
図10および図11は、本開示におけるガラス積層体の概略断面図である。本開示におけるガラス積層体100は、第1主面S1と、第1主面S1に対向する第2主面S2と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材21と、ガラス基材21の第1主面S1側に配置された第1の積層フィルム10Aと、ガラス基材21の第2主面S2側に配置された第2の積層フィルム10Bと、を有する。第1の積層フィルム10Aは、ガラス基材21側から、第1の感熱接着層2Aおよび第1の樹脂基材1Aを有し、第2の積層フィルム10Bは、ガラス基材21側から、第2の感熱接着層2Bおよび第2の樹脂基材1Bを有する。
【0206】
本開示におけるガラス積層体100は、図11に示すように、第1の樹脂基材1Aの第1の感熱接着層2Aとは反対の面側に、ハードコート層3および第1の保護フィルム4Aを有していてもよい。また、第2の樹脂基材1Bの第2の感熱接着層2Bとは反対の面側に、第2の保護フィルム4Bを有していてもよい。
【0207】
1.ガラス積層体の構成
(1)第1の積層フィルム
第1の積層フィルムとしては、上述した「A.第1実施形態」で説明した第1の積層フィルムと同様である。
【0208】
(2)第2の積層フィルム
第2の積層フィルムとしては、上述した「A.第1実施形態」で説明した第2の積層フィルムと同様である。
【0209】
(3)ガラス基材
ガラス基材としては、上述した「A.第1実施形態」で説明したガラス基材と同様である。
【0210】
2.ガラス積層体の特性
(1)耐屈曲性
本開示におけるガラス積層体は、耐屈曲性を有することが好ましい。具体的には、本開示におけるガラス積層体においては、ガラス積層体に対して下記に説明する動的屈曲試験を行った場合に、ガラス積層体に割れ、破断、または剥がれが生じないことが好ましい。
【0211】
動的屈曲試験では、第1積層フィルム側が外側となるように積層体を折りたたんでもよく、あるいは、第1積層フィルム側が内側となるように積層体を折りたたんでもよいが、いずれの場合であっても、ガラス積層体に割れ、破断、または剥がれが生じないことが好ましい。
【0212】
動的屈曲試験は、以下のようにして行われる。図12(a)に示すように動的屈曲試験においては、まず、100mm×100mmの大きさのガラス積層体100の短辺部100Cと、短辺部100Cと対向する短辺部100Dとを、平行に配置された固定部71でそれぞれ固定する。また、図12(a)に示すように、固定部71は水平方向にスライド移動可能になっている。次に、図12(b)に示すように、固定部71を互いに近接するように移動させることで、ガラス積層体100の折りたたむように変形させ、更に、図12(c)に示すように、ガラス積層体100の固定部71で固定された対向する2つの短辺部100C、100Dの間隔dが所定の値となる位置まで固定部71を移動させた後、固定部71を逆方向に移動させてガラス積層体100の変形を解消させる。図12(a)~(c)に示すように固定部71を移動させることで、ガラス積層体100を180°折りたたむことができる。また、ガラス積層体100の屈曲部100Eが固定部71の下端からはみ出さないように動的屈曲試験を行い、かつ固定部71が最接近したときの間隔dを制御することで、ガラス積層体100の対向する2つの短辺部100C、100Dの間隔dを所定の値にできる。例えば、対向する2つの短辺部100C、100Dの間隔dが5mmである場合には、屈曲部1Eの外径を5mmとみなす。
【0213】
ここで、動的屈曲試験において、「割れ」とは、ガラス積層体にクラックが生じる現象をいう。また、「破断」とは、ガラス積層体が完全に2つに割れる現象をいう。また、「剥がれ」とは、ガラス積層体を構成するいずれかの層が剥がれるまたは浮く現象をいう。
【0214】
(2)剥離強度
本開示におけるガラス積層体は、ガラス基材と第1の感熱接着層との間の剥離強度、およびガラス基材と第2の感熱接着層との間の剥離強度が高いことが好ましい。具体的には、本開示におけるガラス基材と第1の感熱接着層との間の剥離強度、およびガラス基材と第2の感熱接着層との間の剥離強度は、それぞれ、10N/20mm以上であることが好ましく、15N/20mm以上であることがより好ましく、20N/20mm以上であることがより好ましい。ガラス積層体におけるガラス基材と感熱接着層との間の剥離強度は、上記エージング工程後の剥離強度に相当する。
【0215】
ガラス基材と感熱接着層との間の剥離強度は、以下の測定方法により測定できる。図13は、ガラス基材と第1の感熱接着層との間の剥離強度を測定する場合の、サンプルの作製方法および剥離試験方法を説明する概略図である。
【0216】
まず、図13(a)および図13(b)に示すように、100mm×20mmのサイズのガラス基材21(化学強化ガラス)および第1の積層フィルム10Aの貼合体の、第1の積層フィルム10Aのはみ出し量がガラス基材21の短辺側で1mm、長辺側10cmとなるように、積層フィルム10の長辺側2辺及び短辺側1辺を、定規とカッターを用いてカットし、短冊状のサンプルSを作製する。その後、図13(c)~図13(e)に示すように、測定用サンプルSと黒色板81(クラレ社製、商品名:コモグラス K(カラー1)502K(黒)、10cm角、厚み2mm)とを、光学粘着層82(パナック社製、商品名「パナクリーンPD-S1」、厚み25μm)を介して積層して固定する。その後、はみ出した積層フィルム10Aの端部を持ち、2cm剥がす。島津製作所社製精密万能試験機オートグラフ(AG-X、10N-10kN)のチャック部83aで剥がした積層フィルム10A部分を掴み、チャック部83bでむき出しになったガラス基材21部分を掴み、積層フィルム10Aを引きはがす180°ピール試験を下記条件にて行う。
【0217】
なお、図13では、ガラス基材と第1の感熱接着層との間の剥離強度を測定する際、第2の積層フィルムは剥離されているか、第2の積層フィルムは剥離されていなくてもよい。同様に、ガラス基材と第2の感熱接着層との間の剥離強度を測定する際、第1の積層フィルムは剥離されていてもよいし、剥離されていなくてもよい。他方の積層フィルムが剥離されていても、剥離されていなくても、剥離強度はほぼ同等となるためである。
【0218】
(測定条件)
試験環境:25±2℃ 50±10%RH
ロードセル荷重:1kN
チャック間距離:10cm
剥離速度:300mm/min
【0219】
(3)ガラス質感
本開示におけるガラス積層体は優れたガラス質感を有するものである。像鮮明度は、被測定面の反射像が、どの程度鮮明に歪みなく見えるかの度合いを示し、この値が高いほど、ガラス質感に優れるものとなる。像鮮明度は、75%以上100%以下であり、好ましくは80%以上100%以下である。
【0220】
[像鮮明度測定方法]
本開示のガラス積層体の像鮮明度を測定する方法は、以下の通りである。
(1)光源を用い、上記ガラス積層体の上記第1積層フィルム側の表面である被測定面に、4つの線状の明領域および暗領域を有する照明光を照射する。
(2)撮像装置を用いて、上記被測定面を介して、上記光源に焦点を合わせて、上記被測定面で反射し、上記照明光の上記明領域および上記暗領域に対応する4つの線状の明領域および暗領域を有する反射光を受光し、上記被測定面における上記反射光の光強度分布を検出する。
(3)上記被測定面における反射光の光強度分布を、照明光の明領域の長手方向に対応する方向に1100個の分割領域に分割し、分割領域毎の反射光の光強度分布を抽出し、各分割領域の反射光の光強度分布における、明領域の光強度の最大値および暗領域の光強度の最小値を求め、下記(式1)により各分割領域の像鮮明度を算出し、算術平均値をとる。
DOI=(M-m)/(M+m)×100 (式1)
(上記式において、DOIは像鮮明度、Mは、1つの分割領域の反射光の光強度分布における、明領域の光強度の最大値、mは暗領域の光強度の最小値を示す。)
【0221】
具体的には、図14(A)に示す表面性状測定装置90を用いる。表面性状測定装置90は、光源93を有し、被測定面91に、4つの線状の明領域および暗領域を有する照明光を照射する照射部92と、被測定面91を介して光源93に焦点を合わせて、被測定面91で反射し、照明光の明領域および暗領域に対応する4つの線状の明領域および暗領域を有する反射光を受光し、被測定面における反射光の光強度分布を検出する撮像装置95と、被測定面における反射光の光強度分布において、明領域の光強度の最大値および暗領域の光強度の最小値を求め、上記(式1)により像鮮明度を算出する処理部96を有する。
【0222】
照射部92は、図14(B)に示す、金属板62と、金属板62を貫通する長方形状の開口部61および十字状の開口部63とを有するマスク94を、下記OLED光源93に直貼りしたものである。マスクは、図14(B)に示す、4つの長方形状の開口部61からなる透過領域と、3つの十字状の開口部63からなる透過領域とを有する。長方形状の透過領域は、長さ70mm、線幅0.5mm、ピッチ1.0mmである。光源93とガラス積層体の被測定面91との距離は33cm、照明部から照射される照明光の入射角度は60°とする。また、撮像装置95と被測定面91との距離は33cm、撮像装置95の反射光の受光角度は60°とする。LED光源からの光がマスク94を通過することで、被測定面21に線状の明領域および暗領域を有する照明光L1が照射される。
【0223】
LED光源としては、エコリカ社製のEELM-SKY-300-Wを用い、撮像装置としてニコン社製のデジタル一眼レフカメラD5600を用いる。レンズは、ニコン社製のAF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VRを用いる。カメラの設定は、絞り値f/22、露出時間1/8秒、ISO-100、焦点距離55mmとする。
【0224】
被測定面の反射像の十字部分に、カメラでオートフォーカスにより焦点を合わせることで、光源に焦点を合わせる。被測定面に、光源からマスクを介して光を照射し、カメラで被測定面での反射光の画像を撮影する。
【0225】
カメラで撮影した画像について、縦横50ピクセルで移動平均を取り、最大値/1.3を閾値として2値化し、ノイズを除去する。各行の左端のセルに対して、最小二乗法で直線近似し、近似直線の傾きが0になるように画像を回転し、これより、画像の角度を調整する。
【0226】
また、カメラで撮影した画像の中心から、線状明領域の長手方向に1100ピクセル、線状明領域の短手方向に500ピクセルを切り取る。照明光の明領域の長手方向に対応する方向に1100個の分割領域に分割し、分割領域毎の反射光の光強度分布を抽出し、各分割領域の反射光の光強度分布における、明領域の光強度の最大値および暗領域の光強度の最小値を求め(図15)、上記(式1)により各分割領域の像鮮明度を算出し、算術平均値をとる。
【0227】
(4)全光線透過率
本開示におけるガラス積層体は、表示装置に用いる場合には、透明性を有することが好ましい。具体的には、本開示におけるガラス積層体の全光線透過率は、例えば、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、88%以上であることがさらに好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、透明性が良好なガラス積層体とすることができる。
【0228】
ここで、ガラス積層体の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定され、村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定される。
【0229】
3.ガラス積層体の用途
本開示におけるガラス積層体の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、表示装置において、表示パネルの観察者側に配置される部材として用いることができる。本開示における積層体は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等の表示装置に用いることができる。
【0230】
本開示におけるガラス積層体は、耐屈曲性および耐衝撃性が良好であることから、中でも、曲面に対応できる部材として好適に用いることができる。本開示におけるガラス積層体は、例えば、フォルダブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ、ベンダブルディスプレイ、スライダブルディスプレイ等のフレキシブルディスプレイに好ましく用いることができ、フォルダブルディスプレイにより好ましく用いることができる。
【0231】
本開示におけるガラス積層体は、表示装置等の表面に配置する場合、第2積層フィルム側の面が内側、第1積層フィルム側の面が外側になるように配置される。
【0232】
本開示におけるガラス積層体を表示装置等の表面に配置する方法としては、特に限定されず、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。接着層としては、積層体の接着に使用される公知の接着層を用いることができる。
【0233】
D.表示装置
図16は、本開示における表示装置の一例を示す概略断面図である。図16に示すように、表示装置200は、表示パネル150と、表示パネル150の観察者側に配置されたガラス積層体100と、を備える。ガラス積層体100は、第1の積層フィルム10Aが観察者側に配置され、第2の積層フィルム10B側の面が表示パネル150に隣接するように配置されている。表示装置200において、ガラス積層体100は表示装置200の表面に配置される部材として用いられており、ガラス積層体100と表示パネル150との間には接着層160が配置されている。
【0234】
本開示におけるガラス積層体については、上述のガラス積層体と同様とすることができる。
【0235】
本開示における表示パネルとしては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、LED表示装置等の表示装置に用いられる表示パネルを挙げることができる。
【0236】
本開示における表示装置は、表示パネルとガラス積層体との間にタッチパネル部材を有することができる。
【0237】
本開示における表示装置は、フレキシブルディスプレイであることが好ましい。中でも、本開示における表示装置は、折りたたみ可能であることが好ましい。すなわち、本開示における表示装置は、フォルダブルディスプレイであることがより好ましい。本開示における表示装置は、上述の積層体を有することから、耐衝撃性および耐屈曲性に優れており、フレキシブルディスプレイ、さらにはフォルダブルディスプレイとして好適である。
【0238】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0239】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0240】
(実施例1)
1)第1の積層フィルムの準備工程
第1の樹脂基材として、樹脂基材1(厚さ50μmのポリイミド基材)を下記方法により作製し、準備した。
【0241】
国際公開2014/046180号公報の合成例1を参照して、下記化学式で表される
テトラカルボン酸二無水物を合成した。
【0242】
【化4】
【0243】
500mLのセパラブルフラスコを窒素置換し、脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)を293.29g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を14.3g(44.7mmol)溶解させた溶液が液温30℃となるように制御したところに、上記化学式で表されるテトラカルボン酸二無水物(TMPBPTME)24.8g(40.1mmol)を徐々に投入し、メカニカルスターラーで3時間撹拌した。その後、上記溶液にテレフタル酸ジクロリド(TPC)0.91g(4.5mmol)を添加して更に3時間撹拌することでポリアミド酸溶液を得た。次に、触媒であるピリジン6.66g(84.2mmol)及び無水酢酸8.60g(84.2mmol)を投入して、25℃で30分間攪拌して溶液が均一であることを確認し、70℃に加温して1時間攪拌した。その後、常温まで冷却させた溶液に対して、2-プロピルアルコール(IPA)174.26gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にIPA435.64gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過して5回IPAで洗浄した後、100℃に加熱したオーブンで減圧しながら6時間乾燥させることでポリアミドイミドの粉体(37.1g)を得た。GPCによって測定したポリアミドイミドの重量平均分子量は、62000であった。
【0244】
ポリアミドイミドの固形分濃度が19質量%となるように、ポリアミドイミドにDMAcを添加して、ポリアミドイミドがワニス中に19質量%のポリアミドイミドワニスを作製した。ガラス板上に、ポリアミドイミドワニス(固形分濃度19質量%)を塗布した。次いで、循環オーブンで乾燥後、冷却し、ポリイミド系樹脂塗膜を剥離した。
【0245】
剥離したポリイミド系樹脂塗膜を切り出した。金属枠を2枚使用して、切り出したポリイミド系樹脂塗膜を挟持し、固定治具で金属枠とポリイミド系樹脂塗膜とを固定した。固定したポリイミド系樹脂塗膜を窒素気流下、循環オーブン中で、加熱し、冷却することによって単層のポリイミド系樹脂フィルムを作製した。
【0246】
第1の樹脂基材上に、下記ハードコート層用組成物を、硬化後の膜厚が15μmとなるように塗布し、70℃で1分間乾燥させた後、照射量200mJ/cmで紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。これにより、ハードコートフィルムを得た。次に、上記ハードコートフィルムの第1の樹脂基材側の面に、下記感熱接着層用樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗布し、70℃で1分間乾燥させて、第1の感熱接着層を形成し、感熱接着層付きハードコートフィルム(第1の積層フィルム)を得た。
【0247】
<ハードコート層用組成物>
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部
・ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 25質量部
・異型シリカ微粒子(平均粒径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形換算)
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Omnirad184」、IGM Resins B.V.社製) 4質量部
・フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2質量部(固形換算)
・溶剤(MIBK) 150質量部
【0248】
<感熱接着層用樹脂組成物>
・非晶性ポリエステル系樹脂(バイロンGK-830、東洋紡社製) 100質量部
・イソシアネート(D-160N、三井化学社製) 5質量部
・シランカップリング剤(KBM-403、信越化学工業社製) 5質量部
・フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2質量部(固形換算)
・溶剤(MEK) 310質量部
・溶剤(トルエン) 310質量部
【0249】
2)第2の積層フィルムの準備工程
第2の樹脂基材として、樹脂基材1を準備した。第2の樹脂基材の一方の面に、上記感熱接着層用樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗布し、70℃で1分間乾燥させて、第2の感熱接着層を形成し、感熱接着層付きハードコートフィルム(第2の積層フィルム)を得た。
【0250】
3)ガラス基材準備工程
ガラス基材として、ガラス(Schott社製AS@87 eco.)を化学強化した化学強化ガラス(100mm×100mm)を準備した。
【0251】
4)第1貼合工程および第2貼合工程
上記第1の積層フィルムを、上記第1の感熱接着層を介してガラス基材に貼り付けた。具体的には、図6に示す真空貼合機40(タカトリ社製TPL-0514MWH)の下テーブル42側に、A4サイズに切り取った、厚さ5mmのフッ素ゴム発泡体43(三福工業社製MF-20S)をセットした。その後、フッ素ゴム発泡体43上に、A4サイズ、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製「A4360」)3枚からなる緩衝材44を配置した。次に、緩衝材44上に、A4サイズ、厚さ38μのノンシリコーン系離型PET45(藤森工業社製38E-0010-NSD)を離型層側を上にして1枚配置した。次に、離型PET45上に、準備したガラス基材21をセットした。第1の積層フィルム10Aを第1の感熱接着層2A側の中央部分がガラス基材21の第1主面S1と接するように、上テーブル41にカプトンテープ46で固定した後、上テーブル41を閉じて、表2に示す条件(貼合温度、圧力および時間)にて真空貼合を行った。次に、同じ真空貼合機を使用し、下テーブル42側に、第1の積層フィルム10Aが貼合されたガラス基材21を配置し、第2の積層フィルム10Bを上テーブルに固定し、表2に示す条件(貼合温度、圧力および時間)にて真空貼合を行った。得られた貼合体に対し、表2に示す条件(温度、圧力および時間)にてオートクレーブ内でエア抜き工程を行った。エア抜き工程後、表2に示す条件(温度および時間)にてオーブン内でエージング工程を行い、ガラス積層体を得た。表1に、ガラス基材の化学強化の有無、ガラス基材の厚さ、第1の樹脂基材および第1の感熱接着層の種類、第2の樹脂基材および第2の感熱接着層の種類、第1の感熱接着層および第2の感熱接着層のTgを示す。
【0252】
(実施例2~3)
表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0253】
(実施例4)
第2の樹脂基材として樹脂基材2(PETフィルム:A4360(東洋紡製) 厚さ50μm)を用い、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0254】
(実施例5)
第1の樹脂基材および第2の樹脂基材として、樹脂基材2を用い、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0255】
(実施例6)
エア抜き工程を行わず、表2に記載の貼合条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0256】
(実施例7)
ロールラミネート装置を使用し、表2に記載の貼合条件で片面ずつ貼合し、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0257】
(実施例8)
第1感熱接着層および第2感熱接着層の感熱接着層材料として、感熱接着層のTgが10℃であるポリエステル系樹脂を使用し、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0258】
(実施例9)
第1感熱接着層および第2感熱接着層の感熱接着層材料として、感熱接着層のTgが60℃であるポリエステル系樹脂を使用し、表1に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0259】
(比較例1)
ガラス基材として未強化ガラスを用い、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0260】
(比較例2)
第1の接合層および第2の接合層として、光学透明粘着フィルム(OCA1)(3M社製「8146-2」)を用い、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0261】
(比較例3)
第1の接合層および第2の接合層として、光学透明粘着フィルム(OCA2)(3M社製「8146-1」)を用い、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0262】
(比較例4~7)
表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0263】
(比較例8)
上記ロールラミネート装置を使用し、表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0264】
【表1】
【0265】
【表2】
【0266】
[評価1 外観]
20人で蛍光灯の明室で、ガラス積層体の積層フィルム側から目視観察を行い、ゆがみ、不均一性、およびフィルムの剥がれ(浮き)がないと判定した人数から、下記評価基準により評価した。
18人以上20人以下 A
15人以上17人以下 B
14人以下 C
【0267】
[評価2 ガラス質感]
実施例1~9および比較例1~8のガラス積層体について、第1の積層フィルムのハードコート層表面を被測定面として、上述した方法により、像鮮明度を測定し、下記の評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
A:80%以上
B:70%以上
C:70%未満
【0268】
[評価3 浮き評価試験]
貼合工程(第1貼合工程および第2貼合工程)直後に、ガラス基材からの第1の積層フィルムの剥がれ、または第2の積層フィルムの剥がれの発生の有無を目視にて観察した。
【0269】
[評価4 剥離強度測定]
貼合工程(第1貼合工程および第2貼合工程)後、エア抜き工程後、およびエージング工程後に、第1積層フィルムとガラス基材との間の180°剥離強度、および第2積層フィルムとガラス基材との間の180℃剥離強度を、上述した方法により測定した。
【0270】
[評価5 U字屈曲試験]
実施例1~9、比較例1~3、比較例5~比較例7のガラス積層体に対して、常温下および60℃90%の高温高湿下において、上述の動的屈曲試験を行い、耐屈曲性を評価した。この際、ガラス積層体の対向する2つの短辺部の間隔dは5mmとした。また、ガラス積層体は、第2の積層フィルム側の面が外側、第1の積層フィルム側の面が内側になるように20万回屈曲させた。動的屈曲試験の結果は、下記の基準で評価した。
A:ガラス積層体に浮き、および剥がれがないこと
B:ガラス積層体に浮き、および剥がれのいずれかが発生した
【0271】
[評価6 カール評価]
フィルムのはみ出し量が1~2mmとなるようにフィルムをカットした。カットしたガラス積層体を水平な台の上に、100×100mm角のガラス積層体が凹となるように静置し、ガラス基材の角と台との距離(高さ)を4隅計測し、その平均値をカールの値とした。なお、上記のように、ガラス基材の角とし、ガラス積層体の角としていないのは、積層フィルムがガラス基材から多くはみ出していると、積層フィルムが垂れてしまい、正確に測定できないためである。
【0272】
【表3】
【0273】
表3に示されるように、実施例1~実施例9は、良好なガラス質感を有し、高温高湿下においても耐屈曲性を有することが確認された。未強化ガラスを用いた比較例1は、エージング工程後の剥離試験においてガラス基材が破断した。また、常温および高温高湿下での動的屈曲性が低かった。一方、接合層としてOCAを使用した比較例2および比較例3は、エージング工程後の剥離強度が低く、高温高湿下での動的屈曲性が低かった。さらに、ガラス質感が低かった。また、貼合直後の剥離強度が比較的高く、リワーク性が低かった。貼合工程における温度が低い比較例4および比較例8では、貼合直後に剥がれが生じた。貼合工程における温度が高い比較例5および比較例6では、ガラス質感が低かった。エージング時間が短い比較例7では、エージング工程後の剥離強度が低く、高温高湿下での動的屈曲性が低かった。
【0274】
(実施例10)
1)第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムの準備工程
実施例1と同様の方法で、第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムを作製し、それぞれ、巻回体として準備した。
【0275】
2)ガラス基材準備工程
厚さ50μmのガラス(Schott社製AS@87 eco.)を化学強化した化学強化ガラス(100mm×100mm)を準備した。
【0276】
3)第1貼合工程および第2貼合工程
図7に示す、加熱、加圧ができるヒートロールR1およびR2(ラミネーターロールとも言う)を用いたロールラミネート装置70を用いて、ガラス基材の両面に、第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルムを、同時に貼合した。貼合条件を、表5に示す。得られた貼合体に対し、表5に示す条件(温度、圧力および時間)にてオートクレーブ内でエア抜き工程を行った。エア抜き工程後、表5に示す条件(温度および時間)にてオーブン内でエージング工程を行い、ガラス積層体を得た。
【0277】
(実施例11~12)
表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0278】
(実施例13)
第2の樹脂基材として樹脂基材2を用い、表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0279】
(実施例14)
第1の樹脂基材および第2の樹脂基材として、樹脂基材2を用い、表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0280】
(実施例15)
エア抜き工程を行わず、表5に記載の貼合条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0281】
(実施例16)
第1感熱接着層および第2感熱接着層の感熱接着層材料として、感熱接着層のTgが10℃であるポリエステル系樹脂を使用し、表5に記載の貼合条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0282】
(実施例17)
第1感熱接着層および第2感熱接着層の感熱接着層材料として、感熱接着層のTgが60℃であるポリエステル系樹脂を使用し、表5に記載の貼合条件およびエージング条件とした以外は、実施例10と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0283】
(比較例9)
ガラス基材として未強化ガラスを用い、表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例8と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0284】
(比較例10)
第1の接合層および第2の接合層として、光学透明粘着フィルム(OCA1)(3M社製「8146-2」)を用い、表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例8と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0285】
(比較例11)
第1の接合層および第2の接合層として、光学透明粘着フィルム(OCA2)(3M社製「8146-1」)を用い、表5に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例8と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0286】
(比較例12~15)
表2に記載の貼合条件、エア抜き条件およびエージング条件とした以外は、実施例8と同様の方法で、ガラス積層体を得た。
【0287】
【表4】
【0288】
【表5】
【0289】
上記[評価1 外観]、上記[評価2 ガラス質感]、上記[評価3 浮き評価試験]、上記[評価4 剥離強度測定]および上記[評価5 U字屈曲試験]を行った。結果を表6に示す。
【0290】
【表6】
【0291】
ロールラミネート装置を用いた両面同時貼合により、工程数が少なくなる。また、表6に示されるように、2回貼合の実施例1~実施例9(表3)よりも、カールが小さくなった。表6に示されるように、実施例10~実施例15は、良好なガラス質感を有し、高温高湿下においても耐屈曲性を有することが確認された。一方、接合層としてOCAを使用した比較例10および比較例11は、エージング工程後の剥離強度が低く、高温高湿下での動的屈曲性が低かった。さらに、ガラス質感が低かった。また、貼合直後の剥離強度が高く、リワーク性が低かった。貼合工程における温度が低い比較例12では、貼合直後に剥がれが生じた。貼合工程における温度が高い比較例13および比較例14では、ガラス質感が低かった。エージング時間が短い比較例15では、エージング工程後の剥離強度が低く、高温高湿下での動的屈曲性が低かった。
【0292】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0293】
[1]
第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、
第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、
前記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第1の積層フィルムの前記第1の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第1主面に貼合する第1貼合工程と、
前記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第2の積層フィルムの前記第2の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第2主面に貼合する第2貼合工程と、
前記第1の積層フィルム、前記ガラス基材および前記第2の積層フィルムをこの順に有する貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲、かつ、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行うエージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法。
【0294】
[2]
前記第1貼合工程および前記第2貼合工程を、いずれか一方を先に行い、他方を後に行う、[1]に記載のガラス積層体の製造方法。
【0295】
[3]
前記第1貼合工程および前記第2貼合工程を、同時に行う、[1]に記載のガラス積層体の製造方法。
【0296】
[4]
前記エージング工程の前に、前記貼合体に対してエア抜き処理を行う、エア抜き工程を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0297】
[5]
前記エージング工程後に、前記第1の積層フィルムおよび前記第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有する、[1]から[4]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0298】
[6]
第1の樹脂基材および第1の感熱接着層を有する第1の積層フィルムを準備する第1の積層フィルム準備工程と、
第2の樹脂基材および第2の感熱接着層を有する第2の積層フィルムを準備する第2の積層フィルム準備工程と、
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材を準備するガラス基材準備工程と、
前記第1の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第1の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第1の積層フィルムの前記第1の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第1主面に貼合する第1貼合工程と、
前記第1貼合工程で得られる第1貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第1エージング工程と、
前記第2の感熱接着層のガラス転移温度をTgとした場合に、前記第2の積層フィルムの温度を、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲として、前記第2の積層フィルムの前記第2の感熱接着層側の面を、前記ガラス基材の前記第2主面に貼合する第2貼合工程と、
前記第2貼合工程で得られる第2貼合体に、Tg+5℃以上、Tg+60℃以下の温度範囲の環境下で、10時間以上、エージング処理を行う第2エージング工程と、を有する、ガラス積層体の製造方法。
【0299】
[7]
前記第1貼合工程後、前記第1エージング工程前に、前記第1貼合体に対してエア抜き処理を行う、第1エア抜き工程を有する、[6]に記載のガラス積層体の製造方法。
【0300】
[8]
前記第2貼合工程後、前記第2エージング工程前に、前記第2貼合体に対してエア抜き処理を行う、第2エア抜き工程を有する、[6]または[7]に記載のガラス積層体の製造方法。
【0301】
[9]
前記第1エージング工程後かつ前記第2エージング工程後に、前記第1の積層フィルムの周縁部および前記第2の積層フィルムの周縁部を切断するトリミング工程を有する、[6]から[8]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0302】
[10]
前記第1貼合工程直後における、前記ガラス基材と前記第1の積層フィルムとの間の剥離強度、および、前記第2貼合工程直後における、前記ガラス基材と前記第2の積層フィルムとの間の剥離強度が、それぞれ、0.05N/20mm以上、2.0N/20mm以下である、[1]から[9]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0303】
[11]
前記第1の積層フィルム準備工程において準備する前記第1の積層フィルムは、前記第1の樹脂基材の前記第1の感熱接着層とは反対の面側にハードコート層を有する、[1]から[10]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0304】
[12]
前記第1の積層フィルム準備工程において準備する前記第1の積層フィルムは、前記ハードコート層の前記第1の樹脂基材とは反対の面側に第1の保護フィルムを有する、[11]に記載のガラス積層体の製造方法。
【0305】
[13]
前記第2の積層フィルム準備工程において準備する前記第2の積層フィルムは、前記第2の樹脂基材の前記第2の感熱接着層とは反対の面側に第2の保護フィルムを有する、[1]から[12]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0306】
[14]
前記ガラス基材準備工程後に、前記ガラス基材の第1主面および第2主面のいずれか一方に、第3の保護フィルムを形成する、[1]から[13]までのいずれかに記載のガラス積層体の製造方法。
【0307】
[15]
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、を有し、化学強化ガラスであるガラス基材と、
前記ガラス基材の前記第1主面側に配置された第1の積層フィルムと、
前記ガラス基材の前記第2主面側に配置された第2の積層フィルムと、を有し、
前記第1の積層フィルムは、前記ガラス基材側から、第1の感熱接着層および第1の樹脂基材を有し、
前記第2の積層フィルムは、前記ガラス基材側から、第2の感熱接着層および第2の樹脂基材を有する、ガラス積層体。
【0308】
[16]
表示パネルと、
前記表示パネルの観察者側に配置された、[15]に記載のガラス積層体と、
を備え、前記ガラス積層体は、前記第2の積層フィルム側の面が前記表示パネルに隣接するように配置されている、表示装置。
【0309】
[17]
フォルダブルディスプレイである、[16]に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0310】
1A… 第1の樹脂基材
1B… 第2の樹脂基材
2A… 第1の感熱接着層
2B… 第2の感熱接着層
3 … ハードコート層
4A… 第1の保護フィルム
4B… 第2の保護フィルム
5 … 剥離フィルム
10A… 第1の積層フィルム
10B… 第2の積層フィルム
21… ガラス基材
50… 貼合体
100… ガラス積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16