(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097720
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20240711BHJP
A41B 11/12 20060101ALI20240711BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A41B11/00 H
A41B11/12 A
A41D19/00 K
A41D19/00 M
A41D19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001394
(22)【出願日】2023-01-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 出願人は、令和4年10月5日に、第27回靴下求評展審査会において、自ら特願2023-001394の発明を含みうる靴下を出品した。 株式会社繊研新聞社が、繊研新聞の令和4年11月11日付第8面において、特願2023-001394の発明を含みうる靴下に関し公開した。 出願人は、令和4年11月14日に、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000031029.htmlにおいて、自ら特願2023-001394の発明を含みうる靴下に関しプレスリリースした。
(71)【出願人】
【識別番号】000003919
【氏名又は名称】株式会社ナイガイ
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】天間 久美子
(72)【発明者】
【氏名】三角 彩
【テーマコード(参考)】
3B018
3B033
【Fターム(参考)】
3B018AA01
3B018AA02
3B018AB02
3B018AD07
3B033AA14
3B033AC04
(57)【要約】
【課題】
本発明は、設定された位置で切断しても編目の伝線が止めることができ、靴下を設定された任意の位置でカットすることができる靴下を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が、予め形成された開口端縁を形成しているコース以外の部分に設けられた靴下、又は足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記脚部の編地上及び/又は前記足部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられた靴下に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が、予め形成された開口端縁を形成しているコース以外の部分に設けられた被服。
【請求項2】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部とを備え、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記脚部の編地上及び/又は前記足部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられた靴下。
【請求項3】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記脚部の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の最終コースの下方に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている記載の靴下。
【請求項4】
前記カット表示部及び前記熱融着糸帯が前記脚部の上下方向に間隔を空けて複数設けられている請求項3に記載の靴下。
【請求項5】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記足部の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも履き口側に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている記載の靴下。
【請求項6】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
前記足部が、足の指の少なくとも一つを個別に覆う指部分を有し、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記指部分の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられた靴下。
【請求項7】
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記指部分の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも指先側に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている請求項6に記載の靴下。
【請求項8】
前記カット表示部が、メッシュ状で,複数のドット孔で、前記熱融着糸条と異なる色を有する糸による編成で,若しくは弾性糸を含む糸のみの編成で,又はこれらの組み合わせで表示されている請求項3から5及び7のいずれか一項に記載の靴下。
【請求項9】
前記熱融着糸帯は、凹凸編みで編成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の靴下。
【請求項10】
前記熱融着糸帯は、凹凸編みで編成され、
前記カット表示部が、メッシュ状で,複数のドット孔で、前記熱融着糸条と異なる色を有する糸による編成で,若しくは弾性糸を含む糸のみの編成で,又はこれらの組み合わせで表示されている請求項3から5及び7のいずれか一項に記載の靴下。
【請求項11】
手首又は手首から腕の付け根までの一部若しくは全部を覆う腕部と、手を覆う本体部とを備え、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記腕部の編地上及び/又は前記本体部のうち指を覆う指部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられた手袋。
【請求項12】
少なくとも腕を覆う環状に編成された筒状部を備え、
予め形成された筒状部の貫通方向両端の開口端縁から離れた前記筒状部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられたアームウォーマー。
【請求項13】
少なくとも首を覆う環状に編成された胴部を備え、
予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた前記胴部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられたネックウォーマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丈又はデザインを設定された任意の位置で調整できる靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
クルー丈や膝下丈を任意に調節できる靴下として、伸縮性編地からなる筒状本体の長さ方向の一端を縫着してつま先部としていると共に、他端開口を履き口とし、ヒール部を形成していない靴下が知られている。このような靴下は、前記筒状本体のつま先側先端部と履き口との間に、緊締力を大とした編地からなるストッパー用バンド部を周方向に連続して備えている。ストッパー用バンド部の位置は、土踏まずに位置させ、着用すると前記履き口はふくらはぎの下端に位置するショートタイプとなり、前記バンド部の位置を、踵をこえて足首位置に位置させると履き口が膝下のロングタイプとなる構成となっている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、メリヤスの靴下類においては、編目の端部がほつれないように、編地の端部の数コースを熱融着(接着)糸条と一緒に編成することが知られている。
例えば、横式メリヤス編機によってメリヤス靴下類を爪先側から編み始め、それを履口部まで連続的に編成し、履口部を編み終える際に、この履口部の最終の数周の周回コースを、少量の熱接着性糸条を混合した編糸によって編成する。その後、熱接着性糸条を混合した履口の口縁部の編地に、所定範囲の熱を加えて編地を収縮させると共に溶融させた熱接着性糸条によって網目を部分的に接着させて、編み終りコースの編目がほつれないようにしたメリヤス靴下が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また、丸編機を用いて筒状編地を編成する際に当該筒状編地に開口部を形成する筒状編地の開口部形成方法であって、前記丸編機のシリンダを往復回転運動させることによって前記開口部のための補強部を編成する補強部編成工程と、前記丸編機のシリンダの回転運動による編成において、前記補強部に対応するコースの一部分を不編成として前記開口部を形成する開口部形成工程とを含む筒状編地の開口部形成方法で、前記補強部編成工程では、熱融着糸を含む編糸を用いて前記補強部を編成し、前記筒状編地の編成完了後に熱セットを行う熱セット工程を更に含む筒状編地の開口部形成方法で形成した開口部と、当該開口部のための補強部とを有する靴下が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-287151号公報
【特許文献2】特開昭59-53701号公報
【特許文献3】特開2011-017097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の靴下は、靴下を固定するストッパー用バンド部の位置を変更して長さ調整をするため、靴下の足首以上の丈は調節できても、バンドの位置によって足首以下で生地が余ったりするという靴下の着用における本質的な問題があった。また、特許文献1の靴下は、履き口はふくらはぎの下端に位置するショートタイプと、履き口が膝下のロングタイプにしか調節ができなかった。
そこで本発明は、靴下を設定された箇所で切断できるようにすることで靴下の丈を簡便に調節でき、又はデザインを変更することができる靴下を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、熱融着糸条を含ませて編成させた熱融着糸帯を予め形成された開口端部以外に形成すれば自由に靴下を切断できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
[1]本発明の被服は、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が、予め形成された開口端縁を形成しているコース以外の部分に設けられている。
この構成によれば、設定された箇所で被服を切断しても切り口において網目のラン乃至伝線(すなわち網目が外れる連鎖)が生じない。
[2]本発明の靴下は、足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記脚部の編地上及び/又は前記足部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられている。
この構成によれば、設定された箇所で被服を切断しても切り口において網目のラン乃至伝線(すなわち網目が外れる連鎖)が生じない。
[3]本発明の靴下は、足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記脚部の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の最終コースの下方に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている。
この構成によれば、網目のラン乃至伝線が生じ難い好ましい箇所で靴下を切断することができる。
[4]本発明の前記靴下の前記カット表示部及び前記熱融着糸帯は、前記脚部の上下方向に間隔を空けて複数設けられていてもよい。
この構成によれば、複数カ所において脚部のカットが可能となる。
[5]本発明の靴下は、足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記足部の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも履き口側に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている。
この構成によれば、網目のラン乃至伝線が生じ難い好ましい箇所を目立たせ過ぎることなく表示することができる。
[6]本発明の靴下は、足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、前記足部が、足の指の少なくとも一つを個別に覆う指部分を有し、予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記指部分の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられている。
この個性によれば、足の指を覆う編地の調整が可能となる。
[7]本発明の靴下のカット可能な箇所を示すカット表示部は、前記指部分の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも指先側に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が環状に設けられていてもよい。
この構成によれば足部の指部分をあらかじめ設定された熱融着糸帯の望ましい箇所で切断しやすくなる。
[8]本発明の靴下の前記カット表示部が、メッシュ状で,複数のドット孔で、前記熱融着糸条と異なる色を有する糸による編成で,若しくは弾性糸を含む糸のみの編成で,又はこれらの組み合わせで表示されていてもよい。
この構成によれば、網目のラン乃至伝線が生じ難い好ましい箇所を目立たせ過ぎることなく表示することができる9
[9]本発明の靴下の前記熱融着糸帯は、凹凸編みで編成されていてもよい。
この構成によれば、適度に融着した熱融着糸帯を形成することができる。
[10]本発明の靴下の前記熱融着糸帯は、凹凸編みで編成され、前記カット表示部が、メッシュ状で,複数のドット孔で、前記熱融着糸条と異なる色を有する糸による編成で,若しくは弾性糸を含む糸のみの編成で,又はこれらの組み合わせで表示されていてもよい。
この構成によれば、網目のラン乃至伝線が生じ難い好ましい箇所を目立たせ過ぎることなく表示することができる。
[11]本発明の手袋は、手首又は手首から腕の付け根までの一部若しくは全部を覆う腕部と、手を覆う本体部とを備え、予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記腕部の編地上及び/又は前記本体部のうち指を覆う指部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられている。
この構成によれば、設定された箇所で手袋の腕部又は本体部を切断しても切り口において編目のラン乃至伝線(すなわち網目が外れる連鎖)が生じにくい。
[12]本発明のアームウォーマーは、少なくとも腕を覆う環状に編成された筒状部を備え、予め形成された筒状部の貫通方向両端の開口端縁から離れた前記筒状部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられている。
この構成によれば、設定された熱融着糸帯の切除側でアームウォーマーの一部を切除しても、編目の電線が生じにくい。
[13]本発明のネックウォーマーは、少なくとも首を覆う環状に編成された胴部を備え、予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた前記胴部の編地上に、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯が設けられている。
この構成によれば、設定された熱融着糸帯の切除側でネックウォーマーの一部を切除しても、網目の電線が生じにくい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の靴下は、設定された位置で切断しても編目の伝線が止まるように構成されているため、靴下を設定された任意の位置でカットすることができる。したがって、本発明の靴下は、1足で様々な使用場面に対応できるように、靴下の丈を設定された任意の位置で自由に調節でき、又はデザインを変更することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る靴下を模式的に示した側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る靴下の展開図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る靴下を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明で用いる図の各部分の寸法は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。また、本明細書において、口編部側又は口編部方向を上側又は上方、爪先側又は爪先方向を前側又は前方、踵側又は踵方向を後側又は後方と称し、足の甲側を上側、足底側を下側と称する。
【0012】
図1に示すように、本発明の靴下1は、足を挿入する口編部2と、口編部2の下端から足首以上を覆う脚部3と、足首以下を覆う足部4とを備えている。足部4は、踵を覆う踵ポケット5と、脚部3及び踵ポケット5と足の爪先との間に編成された中間部6と、足の爪先を収容する爪先ポケット7とを有している。
【0013】
口編部2は、編地の端部を環状に編成し、袋状にしてほつれやまくれ上がりを防止し、足を挿入する開口端縁(即ち履き口)1aを強化する部分である。口編部2の下方には、環状に身編地8が編成されている。身編地8の下方には脚部3が編成されている。
【0014】
脚部3は、身編地8を挟んで口編部2の下方から連続して環状に編成され、足首以上の部分を適宜の長さで被い得るように設けられている。脚部3は、その下端部3bから履き口に向かって0度以上30度以下で拡大している。
脚部3には、熱融着糸条を含んで編成された熱融着糸帯9が、上端側の口編部2(予め形成された開口端縁(すなわち履き口))を形成しているコースから離れた脚部3の下端部3bの方向(すなわち上下方向)に間隔を空けて、複数形成されている。
【0015】
各熱融着糸帯9は、靴下1の全体が例えばプレーティング編である場合、主として表糸(場合によっては裏糸)に熱融着糸条を使用し、裏糸(場合によっては表糸)に弾性糸を芯としてナイロン等の樹脂でカバーリングした糸を使用した構成を採っている。熱融着糸帯9は、靴下1の全体が例えばゾッキ編である場合、地糸(すなわち表糸)に熱融着糸条を加えて引き揃えた構成をとなっている。熱融着糸帯9は、上記構成で編成をした上で、セット加工(すなわち加熱)され、裏糸又は地糸に融着して固化している。
なお、本実施形態では、靴下1は、フィラメント・ツイスティッド・ヤーン(以下「FTY」という)の裏糸を用いてプレーティング編をしている。
【0016】
このような熱融着糸帯9は、予め形成された開口端縁(すなわち履き口)から離れた脚部3の周方向に編成コースに沿って環状に複数編成されている。
熱融着糸帯9はそれぞれ、1コース以上10コース以下で形成されていればよい。
脚部3の伸縮性等を考慮すると、1つの熱融着糸帯9のコース数は、1コース以上5コース以下に設定されているのがよい。また、主として同様の理由から、熱融着糸帯9,9同士の間隔は、10mm以上に設定されているのが好ましい。
【0017】
熱融着糸条は、所定の割合で地糸又は裏糸(場合によっては表糸)に引き揃えられ又は編成に組み込まれている。
熱融着糸帯9を構成する糸の総重量に対する熱融着糸条の重量の割合は、50%以上70%以下であるとよい。
【0018】
例えば、プレーティング編の靴下1に熱融着糸帯9を形成する場合、表糸(又は裏糸)に110Dの熱融着糸条を用い、裏糸(又は表糸)に一例として80D相当の弾性糸を芯とした加工糸を用いた構成とすることができる。又は、ゾッキ編の靴下1に熱融着糸帯9を形成する場合は、地糸(すなわち表糸)180Dに、熱融着糸条200Dを加えて引き揃えて構成することができる。
本実施形態では、表糸に100Dの熱融着糸条を用い、裏糸に80Dのフィラメント・ツイスト・ヤーン(FTY)を使用している。
【0019】
熱融着糸条には、100~130℃程度の温度で融解し、その後固化し、又は熱硬化するように接着性を発揮する繊維からなる糸を好適に用いることができる。
【0020】
熱融着糸条としては、たとえば、ポリウレタン等の弾性糸に前記温度の程度で溶融するナイロン等の樹脂をカバーさせた繊維、ナイロン繊維糸、ポリエチレン繊維糸、塩化ビニル繊維糸などを使用することができる。
熱融着糸条の太さ(デニール)は、100D~200Dの範囲が好ましく、110D~130Dがより好ましい。
【0021】
熱融着糸帯9に隣接する上側(即ち切除側)には、カット表示部10が設けられている。
カット表示部10は、脚部3をカットしてその丈を調整するのに適した箇所を示している。
具体的に、カット表示部10は、脚部3をカットした後に編目に生じるランないし伝線(すなわち編成ほどけの連鎖)を最小限にとどめられるよう、熱融着糸帯9の直近に設けられている。言い換えると、熱融着糸帯9は、(脚部3を履き口側から編成した場合の)カット表示部10の最終コースから連続して、若しくは約5コース以内の位置から環状に編成されている。
【0022】
本実施形態では、カット表示部10は、FTYで裏糸のみで編成され、帯状をなしている。
カット表示部10の幅寸法(上下幅)は、1mm以上(言い換えると1コースから複数コース)であればよく、視認性の観点から好ましくは2mm以上、より好ましくは5mm以上で設けられているのがよい。
【0023】
本実施形態では、切断後にカット表示部10の残り幅を形成できるように、カット表示部10の幅が5mmから10mm程度に設定されている。これにより、カット表示部10の残り幅部分で下方へのカールが発生し、切断後の端縁を隠し易いようになっている。
【0024】
足部4は、脚部3のカット表示部10及び熱融着糸帯9以外の部分と同様にプレーティング編で編成されている。
【0025】
次に靴下1の作製方法について説明する。
靴下1は、例えば、丸編靴下機によって、概略、口編部2,脚部3,踵ポケット5,中間部6,爪先ポケット7の順に編成することができる。具体的には、靴下1は口編部2から編成を開始し、口編部2は、丸編機シリンダに挿入されている全針を用いてシリンダを周回転して編成することができる。
【0026】
口編部2に続いて適宜コース数の身編地8を編成した後、身編地8の最終コースに連続して脚部3を編成する。脚部3はプレーティング編で、筒編を任意コースに段階的に度目調整することによりテーパ形状にする。
【0027】
脚部3において、カット表示部10は、FTYの裏糸のみで1コース以上複数コースに亘って編成する。カット表示部10は、更に糸の色又は編組織を変更して編成してもよい。
カット表示部10の最終コースに続けて、熱融着糸条を引き揃えして表糸とし、裏糸に表糸の熱融着糸条を編成した熱融着糸帯9を形成する。
【0028】
熱融着糸帯9の編成後は、表糸として熱融着糸条以外の綿60番双糸等の一般的に使用される糸を用い、再び脚部3及び足部4を編成している編地に戻して所定コース数編成し、カット表示部10の編成、熱融着糸帯9の編成と繰り返す。
【0029】
脚部3の編成以後のコースは、任意のコース毎に編地両端の編み幅を減じて第1の台形編地11Aを編成し、その後編み幅を増加し第1の台形編地11Aと上辺を同じくする第2の台形編地11Bを第1の台形編地15Aの下辺のコース幅よりも小さくして編成する。
【0030】
そして、第2の台形編地11Bと下辺を同じくして、上辺のコース幅を先に編成した第2の台形編地11Bと同形の第3の台形編地11Cを編成する。その後更に、第3の台形編地11Cと上辺を同じくする第4の台形編地11Dを編成し、下辺が一番初めに編成した第1の台形編地11Aの下辺と同じコース幅になるようにする。
【0031】
第2の台形編地11B、第3の台形編地11C及び第4の台形編地11Dのそれぞれの編成時、各台形編地のトラバース端において、適宜コース端部のループに編み掛けすることで袋状の踵ポケット5を形成する。
【0032】
上記の如くして踵ポケット5が編成されるが、踵ポケット5の編成が終了した後は、全針を用いてシリンダを周回転し、筒編を任意コース構成することにより足の甲側と足底側とを被覆可能な中間部6の編成が行われる。中間部6の編成後に、爪先ポケット7を編成する。爪先ポケット7の開口部はリンキング等適宜の手段により環状編地と縫合されて閉じられて、靴下1が完成する。
【0033】
靴下1の使用において、脚部3の丈を短くしたい場合には、任意のカット表示部10上で脚部3を切断する。
本発明の靴下1は、カット表示部10において脚部3の一部を切り取っても、そのすぐ下方に熱融着糸帯9が形成されているため、熱融着糸帯9よりも下で編地がほどけて伝線が更に発生してしまうということを回避することができる。
【0034】
したがって、靴下1は、熱融着糸帯9が編成された任意の箇所の直近で脚部3の丈を使用者の好みに合わせて調節し、調節後も伝線等を生じさせずに好適に使用することができるという効果を奏する。
【0035】
また、カット表示部10がFTYの裏糸のみで、一定の帯幅を以って形成されているため、カット表示部10の帯幅内で脚部3を切断した後、カット表示部10の残存部分でカールが発生する。これにより、切断後、切断された糸が飛び出た端縁をカールの内側に巻き込んで、隠しやすくすることができ、切断後の開口部を美しく保持することができるという効果を奏する。
【0036】
なお、上記実施形態において、熱融着糸帯9は脚部3に形成したが、熱融着糸帯9は、
図1において仮想線で示すように、爪先部7側の任意の箇所に開口部を形成できるように中間部6の先端側に一又は複数設けられていてもよい。この場合、熱融着糸帯9は、中間部6の先端部分において切断したのちに形成される開口端縁の直近に形成されているとよい。爪先部7の先端が予め開口している場合には、前記開口している先端縁を形成しているコースから離れた(言い換えると間隔を空けた)編地上に熱溶融糸帯9が形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、脚部3においてカット表示部10の最終コースの下方に連続して熱融着糸帯9を編成した例を説明したが、カット10は、熱融着糸帯9上すなわち熱融着糸帯9の帯幅内に形成されていてもよい。
【0038】
また、熱融着糸帯9は、各部の編成コースに沿って形成されるのが好ましいが、必ずしも編成コースに沿って形成されていなくてもよい。例えば、
図3に示すように、靴下1の所望のデザインに変更し得る形状に設けられていてもよい。
また、カット表示部10が設けられていることは好ましいが、必須ではない。
【0039】
また、カット表示部10は、脚部3においてカットをしたい場合に推奨される箇所を示していれば、熱融着糸帯9上又は熱融着糸帯9に沿ってその上側に隣り合った近接部分(すなわち2から10コース以内)にどのような形態で表示されていてもよい。
【0040】
具体的には、カット表示部10は、編成する糸の色彩、編成の態様に基づく模様によって表示することもできる。カット表示部10を編成態様によって表示する場合は、例えば、靴下1のベースとなっている編地と異なる編成を用いることで形成することができる。カット表示部10の編成態様としては、例えばアイレット編み,シンカーメッシュ編み,スパイラルメッシュ編み、タック編み、レース編み,台丸メッシュ編み等が挙げられる。または、カット表示部10は、熱融着糸帯9を境に切除部分側に、熱融着糸帯9に沿って(すなわち編成方向となる周方向に)間欠的に形成された小孔によって表示されていてもよい。
【0041】
上記実施形態では、カット表示部10は、FTYの裏糸のみにより帯状に編成された構成としたが、カット表示部10の帯幅内(例えば中央部分か切除される部分側)に、更に帯の延在方向に従って間欠的に小孔を形成して切りやすい箇所が表示されているとなおよい。
【0042】
なお、本発明は、フートカバー、アンクレット、クールソックス、ソックス、ブーツソックス、スリークォーター、レッグウォーマー、ハイソックス、オーバー・ザ・ニーレングス、ストッキング、スパッツ、トレンカ―、タイツ等、足の少なくとも一部及び/又は脚部を覆う衣類であればどのようなものにも適用することができる。
【0043】
また、本発明の靴下は、横編機や丸編機や縦編機の全て、要するに全ての編機で編成することができる。その組織は、平編・ゴム編・パール編からなる基本組織を始め、タック編・浮き編・レース編・ペレリン編・添え糸編・パイル編・挿入編・インターシャ編等からなる変化組織にすることもできるし、メッシュ柄・ヘーマン柄・亀甲柄・ジャカード柄等からなる柄編組織にすることもでき、またリブ編組織にすることもでき、要するに組織に対する制約は全くない。
【0044】
また、本発明は、指割れ靴下の指部分に熱溶融糸帯9を一以上環状に編成し、各指部分の任意の熱溶融糸帯9の指先側で、熱溶融糸帯9よりも指先側の部分を切除できるようにしてもよい。この場合、指部分に形成された熱溶融糸帯9の指先側(切除側)にカット表示部10が形成されているとよい。なお、指部分は少なくとも1本の指を覆うように設けられたものであっても、4本以下の足指を覆うように設けられたものであってもよい。
【0045】
また、本発明は、手袋、アームウォーマー又はネックウォーマーにも応用することができる。
本発明を手袋に応用する場合には、手を覆う本体部のうち指を覆う指部に熱溶融糸帯9を一以上環状に編成し、各指部の任意の熱溶融糸帯9の指先側で、熱溶融糸帯9よりも指先側の部分を切除できるようにしてもよい。この場合、指部に形成された熱溶融糸帯9の指先側(切除側)にカット表示部10が形成されているとよい。なお、指部は少なくとも1本の指を覆うように設けられたものであっても、4本以下の手の指を覆うように設けられたものであってもよい。
【0046】
あるいは、手袋の手首又は手首を含む腕部分においても、熱溶融糸帯9を一以上環状に編成し、腕部の任意の熱溶融糸帯9の切除側で腕部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、腕部に形成された熱溶融糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。
【0047】
また更には、アームウォーマーにおいて、予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた腕を覆う筒状部に熱溶融糸帯9を一以上環状に編成し、筒状部の任意の熱溶融糸帯9の切除側で筒状部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、筒状部に形成された熱溶融糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。
【0048】
または、ネックウォーマーにおいて、予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた首を覆う胴部に熱溶融糸帯9を一以上環状に編成し、胴部の任意の熱溶融糸帯9の切除側で胴部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、胴部に形成された熱溶融糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。
【符号の説明】
【0049】
1 靴下
2 口編部
3 脚部
4 脚部
5 踵ポケット
6 中間部
7 爪先ポケット
9 熱融着糸帯
10 カット表示部
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が、予め形成された開口端縁を形成しているコース以外の部分に設けられた被服。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部とを備え、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記脚部の編地上及び/又は前記足部の編地上に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が設けられた靴下。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記脚部の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の最終コースの下方に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が環状に設けられている請求項2に記載の靴下。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記足部の一又は連続する複数コース上に、
編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも履き口側に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が環状に設けられている請求項2に記載の靴下。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
足首以上を覆う脚部と、足首以下を覆う足部を備え、
前記足部が、足の指の少なくとも一つを個別に覆う指部分を有し、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記指部分の編地上に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が環状に設けられた靴下。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
カット可能な箇所を示すカット表示部が、前記指部分の一又は連続する複数コース上に、編成方向となる周方向に設けられ、
前記カット表示部を含んで又は前記カット表示部の開始コースよりも指の付け根側に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が環状に設けられている請求項6に記載の靴下。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
手首又は手首から腕の付け根までの一部若しくは全部を覆う腕部と、手を覆う本体部とを備え、
予め形成された開口端縁を形成しているコースから離れた前記腕部の編地上及び/又は前記本体部のうち指を覆う指部の編地上に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が設けられた手袋。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
少なくとも腕を覆う環状に編成された筒状部を備え、
予め形成された筒状部の貫通方向両端の開口端縁から離れた前記筒状部の編地上に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が設けられたアームウォーマー。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
少なくとも首を覆う環状に編成された胴部を備え、
予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた前記胴部の編地上に、熱融着糸条及び弾性糸を含んで編成された上でセット加工され、伸縮性を有した熱融着糸帯が設けられたネックウォーマー。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
また、本発明は、指割れ靴下の指部分に熱融着糸帯9を一以上環状に編成し、各指部分の任意の熱融着糸帯9の指先側で、熱融着糸帯9よりも指先側の部分を切除できるようにしてもよい。この場合、指部分に形成された熱融着糸帯9の指先側(切除側)にカット表示部10が形成されているとよい。なお、指部分は少なくとも1本の指を覆うように設けられたものであっても、4本以下の足指を覆うように設けられたものであってもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
また、本発明は、手袋、アームウォーマー又はネックウォーマーにも応用することができる。
本発明を手袋に応用する場合には、手を覆う本体部のうち指を覆う指部に熱融着糸帯9を一以上環状に編成し、各指部の任意の熱融着糸帯9の指先側で、熱融着糸帯9よりも指先側の部分を切除できるようにしてもよい。この場合、指部に形成された熱融着糸帯9の指先側(切除側)にカット表示部10が形成されているとよい。なお、指部は少なくとも1本の指を覆うように設けられたものであっても、4本以下の手の指を覆うように設けられたものであってもよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
あるいは、手袋の手首又は手首を含む腕部分においても、熱融着糸帯9を一以上環状に編成し、腕部の任意の熱融着糸帯9の切除側で腕部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、腕部に形成された熱融着糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
また更には、アームウォーマーにおいて、予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた腕を覆う筒状部に熱融着糸帯9を一以上環状に編成し、筒状部の任意の熱融着糸帯9の切除側で筒状部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、筒状部に形成された熱融着糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
または、ネックウォーマーにおいて、予め形成された貫通方向両端の開口端縁から離れた首を覆う胴部に熱融着糸帯9を一以上環状に編成し、胴部の任意の熱融着糸帯9の切除側で胴部の一部を切除できるようにしてもよい。この場合、胴部に形成された熱融着糸帯9の切除側にカット表示部10が形成されているとよい。