(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097727
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】営農支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240711BHJP
G06Q 10/083 20240101ALI20240711BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001406
(22)【出願日】2023-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】505273578
【氏名又は名称】株式会社セラク
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】持田 宏平
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 英祐
(72)【発明者】
【氏名】井上 幸男
(72)【発明者】
【氏名】立川 純平
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】農産物の集出荷をミスなく、効率よく行うこと。
【解決手段】農作物の収納された荷物を識別する識別コードが表示されたラベルを生成する印刷手段と、前記荷物に収納された農産物に関する情報を入力又は変更する入力手段と、前記ラベルが貼付された荷物の映像を取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された前記映像から前記ラベルに付された前記識別コードを検出すると共に、前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する識別コード読取手段と、前記識別コードが検出された荷物に収納された商品に関する情報を表示する商品情報表示手段と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の収納された荷物を識別する識別コードが表示されたラベルを生成する印刷手段と、
前記荷物に収納された農産物に関する情報を入力又は変更する入力処理手段と、
前記ラベルが貼付された荷物の映像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された前記映像から前記ラベルに付された前記識別コードを検出すると共に、前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する識別コード読取手段と、
前記識別コードが検出された荷物に収納された商品に関する情報を表示する商品情報表示手段と、
を備えたことを特徴とする営農支援システム。
【請求項2】
前記識別コードに付随する特徴点を抽出し、前記特徴点を用いて読み取り済みのラベルを判別可能に識別表示する読取済み表示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の営農支援システム。
【請求項3】
前記商品に関する情報は、少なくとも農産物の種類、等階級、及び出荷先情報の項目を含み、
前記入力手段は、ユーザグループにより前記商品に関する情報を入力又は変更可能な項目が予め設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の営農支援システム。
【請求項4】
農作物の集出荷を支援する営農支援方法であって、
農作物を梱包した荷物に当該荷物の識別コードを付したラベルを貼付する段階と、
撮像手段によって前記荷物の映像を取得する段階と、を含み、
さらに、コンピュータを用いて、
前記撮像手段によって取得された前記映像から前記ラベルに付された前記識別コードを検出する段階と、
前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する段階と、
前記識別コードが検出されたラベルの貼付された荷物に収納された商品に関する情報を、表示部に表示し、又は、入力部から入力する段階と、
を含むことを特徴とする営農支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物などの農産物の販売を支援する営農支援システム及び方法に係り、特に農産物の集出荷をミスなく、効率よく行うことのできる営農支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農産物の集出荷作業では、各生産者は、等級・階級ごとに梱包された荷物の数量を数え、仕向先ごとに販売品出荷伝票を記入して、農業協同組合(以下、「農協」という。)へ運送している。農協の職員は、運び込まれた荷物と販売品出荷伝票に記載された数量が、等級・階級ごとに一致するかを確認した後、各生産者からの農産物の数量を合計して、販売先毎に伝票を作成してFAX等で販売先に送付して、農産物を出荷している。
【0003】
上記の作業は、人間系で行われるため、数量の数え間違えや書き間違えなどのミスが発生し、その確認作業や修正作業が煩雑になるという問題が生じていた。
【0004】
この問題を解決するため、従来から農産物の集出荷作業時のミスやトラブルを減らし、作業の効率化を図るシステムが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、青果物の発注時や状況変化が生じるごとに管理番号を生成し、発注内容に対応する管理番号を結び付けて管理することにより、複数の生産地から調達する必要がある青果物などの商品の発注または入荷の管理を、商品内容の変動に対応して柔軟かつ統一的に行う技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、農産物についての物流センターから複数の生産元への発注処理を特定する主管理番号とその複数の生産元を特定する副管理番号とを用いて、発注処理の発注内容を主管理番号及び副管理番号ごとに特定可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-141226号公報
【特許文献2】特開2003-141225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のシステムは、いずれも商品ごとに管理番号を付与し、端末から管理番号ごとに、商品名、等級、サイズ、発注先、入荷日、入荷元などの情報を入力して、管理サーバでこれらのデータを管理するシステムである。
【0009】
ところで、出荷自体は、例えば段ボール箱に農作物を収納した荷物単位で行われる。このため、上述した特許文献の技術を用いたとしても荷物とデータとの不一致が発生する可能性がある。例えば、情報を入力したものの、間違った荷物が配送されるとか、そもそも荷物が配送されない等の問題が発生するおそれがある。
【0010】
本発明は、上述したかかる事情に鑑みてなされたものであり、農産物の集出荷をミスなく、効率よく行うことのできる営農支援システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の営農支援システムにおいては、
農作物の収納された荷物を識別する識別コードが表示されたラベルを生成する印刷手段と、
前記荷物に収納された農産物に関する情報を入力又は変更する入力手段と、
前記ラベルが貼付された荷物の映像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された前記映像から前記ラベルに付された前記識別コードを検出すると共に、前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する識別コード読取手段と、
前記識別コードが検出された荷物に収納された商品に関する情報を表示する商品情報表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明では、配送単位である荷物ごとにラベルを貼付し、スマートフォン等に搭載されたカメラ(撮像手段)を用いて撮影映像を画面に表示すると共に、そのラベルに表示された識別コードを読み取り、映像中尾そのラベルの近傍に識別枠等の識別情報を表示する。これにより、ユーザは、撮影された映像を通して、複数の荷物のうち、どの荷物の識別コードが読み取られたかを認識することができる。また読み取られた識別コードに係る荷物の商品情報を表示することにより、荷物の配送漏れや誤った荷物の配送等のミスを削減することができる。
【0013】
また、本発明では、前記商品に関する情報は、少なくとも農産物の種類、等階級、及び出荷先情報の項目を含み、前記入力手段は、ユーザグループごとに前記商品に関する情報を入力又は変更可能な項目が予め設定されていることを特徴とする。
【0014】
これにより、例えば、生産者側で商品に関する情報を初期情報として設定しておき、営農支援員などの農協の職員が、検品結果により初期情報を変更したり、出荷先の変更や分荷を効率良く行うことができる。
【0015】
本発明に係る営農支援方法は、農作物の集出荷を支援する営農支援方法であって、
農作物を梱包した荷物に当該荷物の識別コードを付したラベルを貼付する段階と、
撮像手段によって前記荷物の映像を取得する段階と、を含み、
さらに、コンピュータを用いて、
前記撮像手段によって取得された前記映像から前記ラベルに付された前記識別コードを検出する段階と、
前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する段階と、
前記識別コードが検出されたラベルの貼付された荷物に収納された商品に関する情報を、前記表示手段に表示し、又は、入力手段から入力する段階と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、
撮像手段によって取得された映像からラベルに付された識別コードを検出すると共に、前記映像に重ねて、検出された前記識別コード又は当該識別コードが付されたラベルの近傍に識別枠その他の識別情報を表示する識別コード読取手段、
前記識別コードに付随する特徴点を抽出し、前記特徴点を用いて読み取り済みのラベルを判別可能に識別表示する読取済み表示手段、
前記識別コードが検出された荷物に収納された商品に関する情報を表示する商品情報表示手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明においては、農産物の集出荷時のミスを削減し、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態による営農支援システムを利用した生産者の業務フロー図である。
【
図2】本実施の形態による営農支援システムを利用した農協職員又は運送業者の業務フロー図である。
【
図3】本実施の形態における識別コード体系を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態による営農支援システムの機能ブロック図である。
【
図5】
図4の識別コード読取手段の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図4のユーザ端末のメモリに保存されるデータ例を示す図である。
【
図7】出荷管理における手順および画面遷移の説明図(その1)である。
【
図8】出荷管理における手順および画面遷移の説明図(その2)である。
【
図9】出荷管理における問題発生時の処理の説明図である。
【
図10】検品作業におけるラベルスキャン後の一覧表示画面の説明図である。
【
図11】ユーザ端末に表示される検品画面の説明図である。
【
図12】ユーザ端末に表示される分荷設定画面の説明図である。
【
図13】ユーザ端末に表示される分荷設定後の一覧表の画面の説明図である。
【
図14】ユーザ端末に表示される荷物及び作業の管理画面の説明図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態による営農支援システムの機能ブロック図である。
【
図16】
図15の識別コード読取手段の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図15の読取済み表示手段の処理手順を示すフローチャートである。
【
図18】
図15の異常検出手段の処理手順を示すフローチャートである。
【
図19】
図15のユーザ端末のメモリに保存されるデータ例を示す図である。
【
図20】本発明の第2の実施の形態による営農支援システムの動作説明図である。
【
図21】農協を経由した一般的な農産物の販売形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る営農支援システムの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
農協を経由した一般的な農産物の販売形態を
図21に示す。
生産者が圃場で農作物を収穫し、段ボール箱等に梱包して、農協(JA)に運び込む。農協は市場へ配送して需要者へ届ける。本実施の形態による営農支援システムは、主に
図21における生産者と農協(JA)の作業に用いられる。
【0021】
図1は、本システムを利用した生産者の業務フロー図である。
まず、生産者側の出荷準備段階として、段ボール箱等の荷物の梱包単位で、識別番号を発行し、当該識別番号を含むQRコード(登録商標、以下「識別コード」ともいう。)、GS1コード、品目、量目、等階級、販売先などを印字したラベルを発券する。このラベル発券は、ローカルのコンピュータあるいはユーザ端末に繋がるプリンタによって行うことができるが、ユーザ端末から上述した所定の情報を管理サーバへ送り、管理サーバではこの情報を販売品情報として保存するとともに、管理サーバからの指令によってネットワークに繋がるラベルプリンタから出力するようにしてもよい。
【0022】
生産者は、このラベルを段ボール箱に貼り付けて収穫物を梱包する。以下、この段ボール箱を荷物という。
【0023】
この作業の後、生産者は携帯型のユーザ端末によって荷物に貼付されているラベルの識別コードを読み取り、数量を確定する。確定した情報は、生産者出荷情報として管理サーバに保存される。その後、荷物は集出荷場(グリーンセンター)へ運送される。
【0024】
図2は、本システムを利用した農協職員又は運送業者の業務フロー図である。
農協の職員は、集出荷場(グリーンセンター)において、荷物をカウントし、生産者側の登録情報を照合する。荷物の数が一致すればOKボタンを選択する。これにより生産者搬入情報が管理サーバに登録される。
【0025】
農協職員は、ユーザ端末の画面上で仕分け数量を確認して、調整する。調整完了により、必要な保管用伝票がネットワークに繋がるプリンタへ出力されると共に、取引先用伝票があらかじめ登録された取引先のFAX番号へ自動送信される。また、運送業者に対しても、運送に必要な情報が送信される。
【0026】
次に、本発明の第1の実施の形態による営農支援システム1の構成について説明する。
本実施の形態による営農支援システム1は、スマートフォンなどの携帯端末によって実現されるユーザ端末30、荷物に貼付するための識別コード等を印刷したラベルを出力するラベルプリンタ50、および通信ネットワーク2を介して複数のユーザ端末30と接続する管理サーバ10から構成される。
【0027】
管理サーバ10は、通信ネットワーク2と繋がる通信部11、ユーザ端末30との間で通信処理を実行する通信処理手段12、およびユーザ端末30から送られてくる販売品情報21,生産者出荷情報22,生産者搬入情報23,販売先情報24などの各種情報を記憶する記憶部13を備える。
【0028】
ユーザ端末30は、通信ネットワーク2と繋がる通信部31、演算処理を実行する演算部32、タッチパネルなどの入力部33、液晶ディスプレイなどの表示部34、およびカメラ35を備える。これらの要素は一体として構成することができる。
【0029】
また、ユーザ端末30は、管理サーバ10との間で通信処理を実行する通信処理手段40、ラベルプリンタ50にラベルの出力を行う出力処理手段41、入力部33から出荷先や農作物の種類、数量などの情報を入力する入力処理手段42、荷物に貼付されたラベル上の識別コードを読み取る識別コード読取手段43、および識別コードが検出された荷物に収納された商品に関する情報を表示する商品情報表示手段44を備える。各手段40~44はCPUの機能としてプログラムによって実現することができる。
【0030】
ユーザ端末30は、生産者、農協職員や運送業者などのユーザによって使用されるが、後述するようにユーザにより入力されるデータや機能が異なる。例えば、荷物に貼付されるラベルが農協職員によって出力され、各生産者に配布されるという運用をする場合は、農協職員の所持するユーザ端末30のみにラベルプリンタ50を接続可能にすれば足りる。なお、ラベルプリンタ50はユーザ端末30と切り離してオフラインで動作させるようにしても良い。この場合、ラベルプリンタ50側の端末は、上記の出力処理手段41や入力処理手段42を備える。
【0031】
次に、本実施の形態による営農支援システムの主な機能について説明する。
(1)ラベル発行機能(出力処理手段41)
本実施の形態では、農作物を梱包した荷物単位で当該荷物を識別するためのコードを印字したラベルを発行する。このラベルは荷物に貼付される。
図3は、識別コード体系の例である。
【0032】
(2)出荷管理機能(入力処理手段42)
出荷管理に必要な情報は、ユーザ端末30から入力される。入力されたデータは、管理サーバ10に送信され、その記憶部13に保存される。
【0033】
以下、営農支援システムの有する出荷管理機能について説明する。
1)荷物登録機能
図7、
図8を用いて、荷物登録処理について説明する。
ユーザが端末画面の荷物登録ボタンにタッチすると(S11)、荷物登録画面に遷移する(S12)。この荷物登録画面では、出荷日や品目の選択を行うことができる(S13,S14)。また、荷物登録画面で、「カメラ起動」ボタンにタッチすると、カメラによって撮影された映像が端末画面に表示される(S15)。ユーザ(例えば生産者)は、ユーザ端末30の備えるカメラ35を荷物に貼付されたラベルに近付ける。このラベルには、バーコードやQRコード(登録商標)等の識別コードが印字されている。ユーザ端末30の識別コード読取手段43は、映像中の識別コードを順次読み取って、この識別コードと選択された出荷日や品目の情報とを紐づけてユーザ端末30の備えるメモリに保存する。なお検出した識別コードは、ネットワーク2で繋がる管理サーバ10側で保存するようにしてもよい。
【0034】
識別コードはそれぞれユニークな番号が割り当てられており、識別コード読取手段43が認識した際に、このユニークな番号をもとに既に読み込まれた識別コードであるか否かを判定し、すでに読み込んだものであればカウントしないことで二重カウントを排除する。また、識別コード読取手段43は、画面に表示される映像中の識別コードの全てを一度に読み取り、認識した識別コードの所定領域を識別枠で囲んで画面上に表示する。このとき、すでに読み込まれたものと、新たに読み込むものを色分けして表示すると良い。これにより、ユーザは、当該識別コードが読み取り済みであるか否かを認識することができる。またユーザは、読み取り対象の全ての段ボール箱に識別コードが貼られているか、さらには、全ての識別コードが識別コード読取手段43によって読み取り済みを示す表示がされていれば、全ての荷物について読み取ったと判断することができる。
【0035】
同時に多数の識別コードを認識するためには、荷物から2~3m程度離れて撮影することになるが、その場合、識別コード1つ1つは小さく撮影される。識別コード読取手段43は、撮影した画像を例えば数倍程度(例えば5倍)拡大したものを画像解析にかけることで、識別コードが小さくとも認識することができる。
【0036】
以下、識別コード読取手段43の処理手順について
図5を用いて詳述する。
識別コード読取手段43は、カメラ35で取得した映像に識別コードの切り出しシンボル(ファインダパターン)を検出したか否かを判定し(S101)、検出した場合は、識別コードを読み込む(S102)。そして、識別コードの読み取りに成功した場合は(S103で「YES」)、既に読取済みか否かを判定する(S104)。例えば、新たに読み込んだ識別コードのデータがメモリに記憶されている識別コードのデータと一致した場合は、既に読み取り済みであると判定することができる。
【0037】
識別コード読取手段43は、新たに読み取った識別コードと同一のデータがメモリに保存されていない場合は、当該識別コードのデータをユーザ端末30のメモリに保存する(S105)。
図6にユーザ端末30のメモリに保存されるデータ例を示す。
【0038】
次に識別コード読取手段43は、表示部34に表示出力されるカメラ映像に重ねて読取完了のAR(拡張現実)表示を行う(S106)。具体的には、読み取った識別コードの切り出しシンボル位置に基づいて当該位置を含む所定領域を赤枠(識別枠)で囲むなどの識別表示を行う。
【0039】
このように識別枠を映像中に重畳表示することにより、ユーザは複数の荷物のうち、どの荷物のラベルの識別コードが検出済みかを効率的に知ることができる。例えば、読み込みが完了していないラベルについては、映像中のラベル位置に識別枠が重畳表示されないので、ユーザはその荷物のラベルがまだ読み込まれていないことをその場で知ることができる。
【0040】
ユーザはすべてのラベルの読取りが完了したことを確認して、読取り終了ボタンを選択する。このボタン選択を検知して、識別コード読取手段43は処理を終了する(S107)。
【0041】
ラベルの読み取りが終了すると、
図8に示すように、スキャン結果の確認画面が表示部34に表示される。例えばある荷物の量目が登録されていない場合は、その量目の登録を促す画面が表示される(S16)。このとき、識別コードをもとに、登録対象の段ボール箱の画像も表示される。ステップS16の画面において、次へボタンを選択すると、段ボール箱に収納されている農産物の情報が種類ごと、出荷先ごとに表示される(S17)。ユーザはこの時点でもし誤りがあれば、問題の荷物を確認することができる。
【0042】
ユーザは、次の画面で、出荷量を最終確認して「荷物の出荷」ボタンを選択する(S18)。なお、ステップS18に示す画面において全てをチェックすると、入力処理手段42は、自動的に合計欄にチェックを入れる。逆にユーザが合計にチェックを入れると、入力処理手段42は、自動的に個々の出荷先の数量欄にチェックを入れる。すべてのチェックが完了すると、「荷物を出荷」ボタンがアクティブになり、ユーザが選択可能になる。ユーザが「荷物を出荷」ボタンを選択することにより、出荷受付画面が表示される(S19)。そして、商品に関する情報、すなわち、識別コードに紐づけられた生産者、農産物の種類、等階級、出荷先(共販含む。)等の情報が、ユーザ端末30から管理サーバ10へ送られて保存される。
【0043】
本実施の形態による営農支援システムは、識別コードごとに農産物の種類や等級、出荷先等の情報が入力可能になっている。端末の入力処理手段によって、情報の入力処理が行われるが、ユーザグループ(例えば、生産者、農協職員など)ごとに、入力、変更可能な項目が予め定められている。
【0044】
この情報の入力は荷物登録の前にも行うことができるが、荷物登録後に識別コードごとに荷物情報入力画面を表示させて入力させることもできる。このとき、すでに登録済みの情報は画面上に表示され、修正入力できるようにしてもよい。また未登録の欄は、空欄状態で表示し、入力を促すようにしてもよい。
【0045】
2)事前出荷時や追加出荷時の管理機能
図9のステップS19に示す画面において、「荷物登録」ボタンを選択することにより、追加で出荷をすることができる。具体的には、ユーザはこの画面上で「荷物登録」ボタンを選択すると、カメラが起動するので、追加出荷対象の荷物のラベルをスキャンする。すると、追加で読み込んだ部分が表示される(S20に示す画面の点線部)。ユーザはステップS21に示す確認画面を通して追加出荷を行う。
【0046】
(3)検品・分荷機能
次に、農業協同組合での出荷後の検品・分荷段階の処理手順について説明する。
営農指導員などの農業協同組合の職員は、各生産者からの荷物が到着すると、検品作業を行う。ユーザ端末の識別コード読取手段43を起動して、荷物のラベルをスキャンする。
【0047】
すると、ユーザ端末の商品情報表示手段44は、スキャンしたラベルに印字されている識別コードの情報から管理サーバ10に保存されている情報をもとに、生産者別に農産物の種別、等階級、量目、出荷先等の情報を一覧表示する。
図10は、この一覧表示画面の例である。なお、この際にも、各生産者の出荷情報と、集荷した情報に相違があった場合は、修正入力を行うことができる。修正入力した内容は色別表示するのが好ましい。
図11は、検品画面の例である。数量の修正は、画面中央の表において行および列を指定することにより、修正対象の箇所を選択して、右端欄の「数量の修正」画面から行うことができる。
【0048】
次に、分荷設定処理について述べる。
図12に示すユーザ端末30に表示される分荷設定画面には、各種別等階級ごとに入荷数(各生産者の種別等階級毎の共販数の合計)が表示され、ユーザ(主に農協職員)は、この数値を見ながら、それぞれの出荷先ごとに割り当てを行う。このとき直接数量を入力してもよいし、
図12の右欄の画面のように+ボタン、―ボタンを選択することにより、数量が加減されるようにしてもよい。
【0049】
本実施の形態では、あらかじめ設定された共販先の中で分荷するようにしているが、契約販売先に対して分荷数量をさらに割り当てられるようにしてもよい。
分荷設定後の一覧表を
図13に示す。農産物の種別、等階級、量目ごとに、各出荷先への数量が表示されている。
【0050】
(4)販売管理・システム管理機能
本実施の形態による営農支援システムは、配送に係る荷物単位に識別コードが付されるので、この識別コードにより、現在の荷物のステージ(入荷、分荷、出荷等)のトレースが容易になる。
【0051】
また、荷物が現在どのステージにあるかという情報と、当該ステージでの作業の進捗を端末経由で管理サーバへ保存することにより、荷物(農産物)のトレーサビリティと共に、作業履歴を一元的に管理することが可能となる。
【0052】
図14は、ユーザ端末に表示される荷物及び作業の管理画面の例を示す図である。この図において、
図14(a)は、荷物が分荷ステージにあり、伝票印刷が未実施の状態を示す。また、
図14(b)は、伝票印刷作業を終え、荷物が出荷ステージを完了したことを示している。
【0053】
以上、本実施の形態によれば、農産物の梱包(荷物)単位で識別コードを取り、当該識別コードを付したラベルを荷物に貼付し、カメラによって画面に映し出される荷物の映像上に識別コードを検出した荷物を識別する表示を行うので、ユーザは荷物の確認が容易となり、農産物の集出荷時のミスを削減し、作業効率を向上させることができる。また、識別コードをキーにして、商品情報、配送状況、作業状況を入力して管理サーバで一元管理するのでトレーサビリティが向上する。
【0054】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態との主な違いは、本実施の形態では加速度センサやジャイロセンサなどのカメラの動きを検知するモーションセンサを備え、識別コード読取ごとにカメラの動きから各識別コードの位置関係を把握するようにしたことである。
【0055】
以下、第1の実施の形態との相違点に着目して説明する。
図15は本実施の形態による営農支援システム1の機能ブロック図である。
図4との違いは、ユーザ端末30にモーションセンサ36,カメラ映像の荷物群に対して識別コードを読み取った荷物を識別表示する読取済み表示手段45、読み取った識別コードから異常を検出する異常検出手段46、モーションセンサ36のデータをもとにカメラの動きを検出する動き検出手段47を追加したことである。各手段45~47はCPUの機能としてプログラムによって実現することができる。その他は、
図4と同様であるので同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施の形態による識別コード読取手段43の処理は次のように第1の実施の形態と異なっている。以下、
図16を用いて、本実施の形態による識別コード読取手段43の処理手順を説明する。
【0057】
識別コード読取手段43は、カメラ35で取得した映像に識別コードの切り出しシンボル(ファインダパターン)を検出したか否かを判定し(S201)、検出した場合は、識別コードを読み込む(S202)。そして、識別コードの読み取りに成功した場合は(S203で「YES」)、読み取ったデータをメモリに保存して(S204)、カメラ映像上に読取完了を示す表示(識別表示)を行う(S205)。次に最初の検出か否かを判定し(S206)、最初の検出の場合は、動き検出手段47を起動する(S207)。一方、2回目以降の検出の場合は、前回の検出位置からの移動情報を取得して、メモリに保存する(S208)。その後、「読み取り終了」ボタンが押されたか否かを判定し、押されていない場合は、ステップS201の処理に戻り以降の処理を繰り返す(S209)。
【0058】
ここで、動き検出手段47は上記のステップS206で起動されると、モーションセンサ36のデータをもとにカメラの動きを逐次演算する。なお、この動き検出には既知の技術を用いることができる。なお、動き検出は、モーションセンサを用いる代わりに、特徴点の動きを求めるなど画像処理によっても行うことができる。
【0059】
図19は、識別コード読取手段43および後述する異常検出手段46の処理によってメモリに記憶されるデータ例である。識別コードの検出ごとに、読み取った識別コード情報および、動き検出手段47による移動情報(すなわち前回検出位置からの移動量・方向)および、エラーコードが関連付けられて保存される。
【0060】
図20は、移動情報(t□)とユーザ端末画面の映像上に表示した識別枠との関係を示す図である。検出したラベルの位置には四角枠(識別枠)で囲み便宜上符号A□(□:自然数)を付している。これらの符号は
図19の符号に対応している。
【0061】
次に、
図18を用いて異常検出手段の処理手順について説明する。
異常検出手段46は、識別コード読取手段43のステップS203の処理で起動され、同ステップの読取成功か否かの判定に用いられる。
【0062】
異常検出手段46は起動されると、今回読み取ったコードが先に読み取ったコードと同一か否かを判定し(S401)、同一の場合は、移動情報をもとに同じラベル位置か否かを判定する(S402)。この判定は、たとえば、同じコードを有する前回のラベル位置から今回のラベル位置までの移動量(ベクトル値)をメモリに保存されているデータに基づいて順次加算していき、その和が一定値以下(0に近似)になれば、同じラベル位置であると判定することができる。
【0063】
ステップS402の判定の結果、同じラベル位置であれば(S403で「YES」)、同一の荷物のラベルを二度読みしたと判断できるので、そのまま次のステップに移行する。一方、同じラベル位置でない場合は(S403で「NO」)、誤って同じ識別コードを有する複数のラベルが異なる荷物に貼付されたと判断して、該当するエラーコードをセットする(S404)。その後、出荷先や生産者が予め登録されたコードでない場合は、それぞれ該当するエラーコードをメモリの当該検出した識別コードに関連付けて保存する。
【0064】
本実施の形態による異常処理によれば、誤って同じ識別コードを有するラベルを異なる荷物に貼付した場合でも、同じラベルの二度読みと区別できるので、人為的ミスを削減することができる。
【0065】
次に、本実施の形態による読取済み表示手段45の処理手順について
図17を用いて説明する。
読取済み表示手段45は、カメラが起動されている間定期的に起動されるなど、識別コード読取手段43とは独立して動作する。読取済み表示手段45は、起動されると、複数の識別コードの切り出しシンボル(ファインだパターン)を検出したか否かを判定する(S301)。ステップS301でYESの場合は、検出した切り出しシンボルを特徴点として移動情報をもとにパターンマッチングを行う(S302)。その結果、マッチングが成功した場合は(S303)、メモリに保存されている当該移動情報をもとにカメラ映像上に識別枠を表示する。
【0066】
以上の処理により、複数の荷物群を撮影した場合に各荷物の識別コード自体が認識できなくても、一部の切り出しシンボルが検出できれば、既に識別コードを読み取った荷物の全てに識別枠を表示することができる。
【0067】
識別枠を映像中に重畳表示することにより、ユーザは複数の荷物のうち、どの荷物のラベルの識別コードが検出済みかを効率的に知ることができる。例えば、読み込みが完了していないラベルについては、映像中に識別枠が重畳表示されないので、ユーザはその荷物のラベルがまだ読み込まれていないことをその場で知ることができる。また、誤って同じ識別コードのラベルを異なる荷物に貼付したような場合は、保存されている識別コードと当該識別コードの位置情報により検出することが可能となる。例えば、
図19のデータをもとに、識別枠を表示すると、ユーザは、
図20の映像において、A5とA6の間、およびA10とA11の間の段ボール箱には識別枠が表示されていないことを認識できるので、再度の読み込み作業が可能となる。また、A7およびA14において、識別コードが同一のラベルが貼付されている旨の識別表示がなされた場合、ユーザは直ちにこの荷物にアクセスして確認を行うことができる。
【0068】
以上本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、ユーザが誤って同じ識別コードのラベルを異なる荷物に貼付するという作業ミスをしたような場合でも、保存されている識別コードとその位置情報によりこの作業ミスを精度よく検出することが可能となる。また、識別コードの位置関係を保存しておくことにより、例えばカメラを引いて(ズームアウトして)荷物群の全体を撮影する場合、ユーザ端末の識別コード読取手段が個々の荷物に貼付されたラベルの識別コードを検出できない状態となっても、認識済みのラベルの識別枠を商品群の映像に重ねて表示することができる。これにより、ユーザは、一目で認識済みのラベルと未だ認識されていないラベルの荷物を判別することができる。特にカメラで撮影している映像から複数の識別コードを同時に検出し、それを画面上に描画する場合、撮影するカメラの角度や外乱光の影響によって、常時全ての識別コードを検出できるとは限らない。このため、本実施の形態では既に検出した識別コードの位置を一時的に記憶して、その位置に拡張現実(AR)の技術を用いてオブジェクトを配置することで、外乱や物理的な事情によって常時全ての識別コードが検出できない環境下においても、どの識別コードが読み取り済みで、どの識別コードが読み取り済みでないかをユーザに認識させる効果がある。
【0069】
本発明は、上述した各実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実現することができる。
【0070】
たとえば、QRコード(登録商標)に替えて、バーコード単独、あるいはQRコード(登録商標)が有するようなファインダパターンとバーコードとの組み合わせるなど他の識別コードを用いることができることは明らかである。
【0071】
また、管理サーバに保存されているデータをもとに、生産者への支払い金額を決める清算業務に利用することができる。具体的には、清算業務に必要な控除マスタ(例えば等階級や販売先によって販売金額からどのような項目名でいくら控除するのかを定めたもの)を取得し、販売金額から控除を行なった残額を農協から生産者に支払うことにより清算業務の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 営農支援システム
2 通信ネットワーク
10 管理サーバ
11,31 通信部
12,40 通信処理手段
13 記憶部
30 ユーザ端末
32 演算部
33 入力部(入力手段)
34 表示部
35 カメラ(撮像手段)
36 モーションセンサ
41 出力処理手段
42 入力処理手段
43 識別コード読取手段
44 商品情報表示手段
45 読取済み表示手段
46 異常検出手段
47 動き検出手段
50 ラベルプリンタ(印刷手段)