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特開2024-97746金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法
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  • 特開-金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法 図1
  • 特開-金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097746
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/02 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B21C47/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172441
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2023001026
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広志
(72)【発明者】
【氏名】麦田 康敬
(72)【発明者】
【氏名】橋向 智弘
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026AA02
4E026BA04
4E026BA10
4E026BB01
4E026DA19
(57)【要約】
【課題】金属帯の巻き取りの際に、セグメントとスリーブとの間のスリップの発生を抑制し、金属帯の巻き取り不良、巻き直し作業、製品歩留の低下の抑制が可能な金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】
金属帯の巻き取りの際に回転するマンドレルシャフトの周囲に設けられ、前記金属帯に接触するスリーブが外側に装着される金属帯巻き取り用セグメントであって、前記スリーブとの接触面の算術平均粗さRaが3.2μm以上12.5μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の巻き取りの際に回転するマンドレルシャフトの周囲に設けられ、前記金属帯に接触するスリーブが外側に装着される金属帯巻き取り用セグメントであって、
前記スリーブとの接触面の算術平均粗さRaが3.2μm以上12.5μm以下である、金属帯巻き取り用セグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の金属帯巻き取り用セグメントと、前記マンドレルシャフトとを有する、マンドレル。
【請求項3】
請求項2に記載のマンドレルを有する、巻き取り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の巻き取り装置を有する、プロセスライン。
【請求項5】
請求項3に記載の巻き取り装置を用いて前記金属帯の巻き取りを行う、金属帯の巻き取り方法。
【請求項6】
請求項5に記載の金属帯の巻き取り方法により高張力鋼板の巻き取りを行うことで高張力鋼板の製造を行う、高張力鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高張力鋼板等の金属帯をコイル状に巻き取る金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体軽量化及び衝突安全性向上の観点から、高張力鋼板は、自動車骨格としての需要が高まっている。高張力鋼板等の金属帯の製造は、製品の機械的特性を得るため、連続焼鈍設備における熱処理が行われる。そして、熱処理後の金属帯は、巻き取り装置におけるリールにて巻き取られてコイル状とされる。
【0003】
巻き取り装置は、巻き取りのために回転するマンドレルシャフト、マンドレルシャフトの周囲に設けられる鋼製のセグメント、セグメントの外側に装着されるスリーブを有する。
【0004】
引張強さ1180MPa以上の高張力鋼板は、熱処理後の巻き取り時の張力が不足している場合、コイル状とされた後で内径潰れが発生しやすい。そして、内径潰れを抑制する方法として、巻き取り時の金属帯の張力を増加する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-267746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法(巻き取り時の金属帯の張力を増加する)では、時折、セグメントとスリーブとの間でスリップが発生し、巻き取り不良が発生する。そして、巻き取り不良の発生により、巻き直し作業や製品歩留の低下等の問題が発生する。
【0007】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、金属帯の巻き取りの際に、セグメントとスリーブとの間のスリップの発生を抑制し、金属帯の巻き取り不良、巻き直し作業、製品歩留の低下の抑制が可能な金属帯巻き取り用セグメント、マンドレル、巻き取り装置、プロセスライン、金属帯の巻き取り方法及び高張力鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]金属帯の巻き取りの際に回転するマンドレルシャフトの周囲に設けられ、前記金属帯に接触するスリーブが外側に装着される金属帯巻き取り用セグメントであって、前記スリーブとの接触面の算術平均粗さRaが3.2μm以上12.5μm以下である、金属帯巻き取り用セグメント。
[2][1]に記載の金属帯巻き取り用セグメントと、前記マンドレルシャフトとを有する、マンドレル。
[3][2]に記載のマンドレルを有する、巻き取り装置。
[4][3]に記載の巻き取り装置を有する、プロセスライン。
[5][3]に記載の巻き取り装置を用いて前記金属帯の巻き取りを行う、金属帯の巻き取り方法。
[6][5]に記載の金属帯の巻き取り方法により高張力鋼板の巻き取りを行うことで高張力鋼板の製造を行う、高張力鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属帯の巻き取りの際にセグメントとスリーブと間のスリップの発生が抑制され、金属帯の巻き取り不良、巻き直し作業、製品歩留の低下の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】巻き取り装置の一例を示す斜視模式図である。
図2】マンドレル及びスリーブの一例を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、図1を参照して、本発明の一実施形態である巻き取り装置10の構成について説明する。図1は、巻き取り装置10の斜視模式図を示す。
【0012】
図1に示す通り、巻き取り装置10は、連続焼鈍設備における熱処理のためのプロセスラインに設けられる。巻き取り装置10は、マンドレル3と、ピンチロール4と、張力調整装置7とを有する。金属帯Sは、マンドレル3の回転に伴い、通板方向(図中矢印A)に沿って搬送される。金属帯Sは、マンドレル3の周囲に巻回されて、コイル状になる。金属帯Sは、通板方向Aに沿った搬送の際、途中に設けられたピンチロール4を介して、巻回されるマンドレル3に向けて搬送される方向を変更する。
【0013】
金属帯Sの搬送中においては、マンドレル3(マンドレルシャフト1)の回転速度を増減させることで、金属板Sの張力(t)が増減する。つまり、マンドレル3(マンドレルシャフト1)の回転速度を増加させることで、金属帯Sの張力を増加させることができる。このため、張力調整装置7は、回転速度を制御するための制御信号をマンドレル3(マンドレルシャフト1)に送信し、巻き取りの際の金属帯Sの張力を調整する。
【0014】
次に、図2を用いて、マンドレル3の構成を説明する。図2に示す通り、マンドレル3は、マンドレルシャフト1と、セグメント2とを有する。セグメント2は、マンドレルシャフト1の周囲に設けられている。マンドレルシャフト1は、モーター等の回転駆動源(図示省略)からの回転駆動力を受けて回転する。セグメント2は、複数に分割された構造となっており、拡大や縮小が可能である。セグメント2は、金属帯Sの巻き取り時には、拡大することによりスリーブ5を相対的に固定し、金属帯Sの巻き取り後のスリーブ5の引き抜きの際には、縮小することが可能である。セグメント2は、本発明における金属帯巻き取り用セグメントに相当する。
【0015】
スリーブ5は、セグメント2の外側に装着される。スリーブ5は、ゴム等の弾性部材で構成される。スリーブ5は、厚さの異なる複数の種類を有する。このため、スリーブ5を取り換えることで、巻き取り後の金属帯Sのコイルの内径を変更できる。
【0016】
金属帯Sの巻き取りの際には、マンドレルシャフト1の回転に伴い、セグメント2及びスリーブ5も同時に回転し、金属帯Sをスリーブ5の外側に巻回してコイル状にまとめる。セグメント2は、スリーブ5と接触する接触面に、ショットブラスト加工(ショットピーニング加工)や放電加工によって算術平均粗さRaが3.2μm以上となる加工が施されている。このため、セグメント2とスリーブ5との間の摩擦力を高め、セグメント2とスリーブ5との間でスリップの発生を抑制できる。算術平均粗さRaは4.0μm以上であればより好ましい。算術平均粗さRaは、値が大きいほどスリップの発生を抑制できるが、金属帯Sの巻き取り後に、セグメント2からスリーブ5を引き出す際にて支障を生じない程度の大きさが好ましい。例えば、算術平均粗さRaを12.5μm以下とすることで、円滑にセグメント2からスリーブ5を引き出すことができる。算術平均粗さRaは10.0μm以下であればより好ましい。
【0017】
以上の構成により、巻き取り装置10を用いて、金属帯Sの巻き取りを行う金属帯Sの巻き取り方法を行ってよい。また、巻き取り装置10を用いた金属帯Sの巻き取り方法の実施において、金属帯Sとして高張力鋼板を適用してもよい。そして、金属帯Sの巻き取り方法により、高張力鋼板の巻き取りを行うことで高張力鋼板の製造を行う高張力鋼板の製造方法を行ってもよい。
【実施例0018】
次に、図1に示す巻き取り装置10を用い、引張り強さTSが1180MPa以上である板厚1.8~2.3mmの金属帯Sを巻き取り処理した結果を、表1に示す。表1において、本発明例1~6は、セグメント2の算術平均粗さRaを3.2μm以上12.5μm以下として実施した結果を示し、比較例1~6は、セグメント2の算術平均粗さRaを0.8μm、2.0μm、13.0μmとして実施した結果を示す。金属帯Sの巻き取り時において、張力(t)は、マンドレルシャフト1を回転させているモーターのトルクとコイルの外径とに基づき算出した。張力(t)の調整(制御)は、金属板Sの搬送速度(ライン速度)やコイル径に対応させるように、マンドレルシャフト1を回転させているモーターの磁束を制御して行った。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示す通り、比較例1~4において、巻き取り張力を4.3~6.0tにすると共にセグメント2の算術平均粗さRaを0.8μm、2.0μmとした場合には、スリップが発生した。また、比較例5~6において、巻き取り張力を4.3~6.0tにすると共にセグメント2の算術平均粗さRaを13.0μmとした場合には、スリップの発生は回避できたものの、セグメント2からのスリーブ5の引き出しの際に不具合が発生した。
【0021】
一方、本発明例1~6の結果から把握される通り、巻き取り張力を4.3~6.0tにすると共にセグメント2の算術平均粗さRaを3.2μm、5.0μm、12.5μmとした場合には、スリップの発生を回避すると共に、セグメント2からスリーブ5を引き出す際における不具合も回避できた。つまり、金属帯Sの巻き取りの際に、金属帯Sの張力については4.0(t)を超える値とし、かつ、セグメント2の算術平均粗さRaについては3.2μm以上12.5μm以下とすることで、スリップの発生が抑制されたことが確認できた。
【符号の説明】
【0022】
1 マンドレルシャフト
2 セグメント
3 マンドレル
4 ピンチロール
5 スリーブ
7 張力調整装置
10 巻き取り装置
A 通板方向
図1
図2