(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097760
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】網戸用面ファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 18/00 20060101AFI20240711BHJP
E06B 9/52 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A44B18/00
E06B9/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221696
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023001188
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】船山 将太
(72)【発明者】
【氏名】浮田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小高 真也
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100DA04
3B100DA07
3B100DB05
(57)【要約】
【課題】機能性物体を網戸に対して落下させることなく確実に装着させ、且つ網戸の変形などを起こしにくい、網戸用面ファスナーを提供する。
【解決手段】網戸の網を挟むように係合可能な雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを備えた網戸用面ファスナーであって、雄側面ファスナー(A)は、突起2を有する係合素子1を含み、係合素子1の高さhが1.2mm以上であり、突起2の径dが0.3~1.0mmである、網戸用面ファスナー。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網戸の網を挟むように係合可能な雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを備えた網戸用面ファスナーであって、
前記雄側面ファスナー(A)は、突起を有する係合素子を含み、
前記係合素子の高さが1.2mm以上であり、前記突起の径が0.3~1.0mmである、網戸用面ファスナー。
【請求項2】
網目のサイズが30メッシュである前記網戸の網を挟んで前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態において、前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを引き離す剥離強度は、1~30N/cmである、請求項1に記載の網戸用面ファスナー。
【請求項3】
前記剥離強度(N/cm)と、前記雄側面ファスナー(A)の面積(cm2)との積P(N・cm)が、2≦P≦750を満たす、請求項2に記載の網戸用面ファスナー。
【請求項4】
前記雄側面ファスナー(A)の前記係合素子の密度は、20~1000本/(2.54cm)2である、請求項1~3の何れか一項に記載の網戸用面ファスナー。
【請求項5】
前記網戸の網を挟んで前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態において、前記雄側面ファスナー(A)の前記係合素子の少なくとも前記突起が前記網を突き抜けている、請求項1~3の何れか一項に記載の網戸用面ファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除剤や除菌剤、芳香剤などを含有した機能性物体を網戸に対して、落下することなく確実に且つ、簡便に取り付けるための網戸用面ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、害虫防除剤や除菌剤、芳香剤などを含有した機能性物体を網戸に装着する方法が検討されている。特許文献1においては、フック状の係合素子を用いて、また前記フック状の係合素子の素子密度を12~20個/cm2と、一般的な素子密度より小さくしたことを特徴とする、面ファスナーが記載されている。また、特許文献2においては、雌側部材と雄側部材とを備え、網を挟むようにして網に取り付けられる面ファスナーであって、前記雌側部材に複数のループを備え、前記雄側部材に複数の突起を備え、網に取り付けられたときに、前記雌側部材の複数のループは網を突き抜けており、前記雄側部材の複数の突起は網を突き抜けていないことを特徴とする、面ファスナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-122545号公報
【特許文献2】特開2014-236859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機能性物体が重い場合や網戸の網目が細かい場合に、これらの公知技術でも機能性物体を強固に網戸に装着できない場合があった。
【0005】
本発明は、前記状況に鑑みてなされたものであり、機能性物体を網戸に対して落下させることなく確実に装着させ、且つ網戸の変形などを起こしにくい、網戸用面ファスナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、網戸への固定に用いられる面ファスナーによっては、雄側面ファスナーの複数の係合素子の少なくとも一部が網戸の網を突き抜けることができず、それによって網戸と雄側面ファスナー(A)の基布との間に隙間が生じる現象を確認した。また、係合素子が網戸の網を突き抜けても、雌側面ファスナー(B)と係合しにくいという現象も確認した。
【0007】
本発明者らは、前記の問題について鋭意検討を行った結果、特定の形状条件を備えた係合素子を有する雄側面ファスナーが網戸の網を突き抜けやすく、前記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
要するに、上記課題を解決するための本発明に係る網戸用面ファスナーの特徴構成は、
網戸の網を挟むように係合可能な雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを備えた網戸用面ファスナーであって、
前記雄側面ファスナー(A)は、突起を有する係合素子を含み、
前記係合素子の高さが1.2mm以上であり、前記突起の径が0.3~1.0mmであることにある。
【0009】
本構成の網戸用面ファスナーによれば、雄側面ファスナー(A)の係合素子の高さが1.2mm以上に設定されることにより、網戸の網と雄側面ファスナー(A)の基布との間に隙間が生じても、雄側面ファスナー(A)の係合素子が、網戸の網を突き抜けて、雌側面ファスナー(B)と係合することができる。また、雄側面ファスナー(A)の係合素子における突起の径dが0.3~1.0mmの範囲に設定されることにより、網戸の網を変形させることなく、係合素子が網戸の網を突き抜けて、雌側面ファスナー(B)と係合することができる。従って、機能性物体を網戸に対して落下させることなく確実に装着させ、且つ網戸の変形などを起こしにくい網戸用面ファスナーを得ることができる。
【0010】
本発明に係る網戸用面ファスナーにおいて、
網目のサイズが30メッシュである前記網戸の網を挟んで前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態において、前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを引き離す剥離強度は、1~30N/cmであることが好ましい。
【0011】
本構成の網戸用面ファスナーによれば、網目のサイズが30メッシュである網戸の網に対する剥離強度が1~30N/cmに設定される。これにより、30メッシュの網に対し雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態を確実に保つことができる。30メッシュの網に対して雄側面ファスナー(A)の係合素子が突き抜けて雌側面ファスナー(B)と係合することができれば、より粗い網目の網に対しても雄側面ファスナー(A)の係合素子は当然に突き抜けて雌側面ファスナー(B)と係合することができる。従って、一般住宅で使用される18~30メッシュの網戸の網に対して、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態を確実に保つことができる。
【0012】
本発明に係る網戸用面ファスナーにおいて、
前記剥離強度(N/cm)と、前記雄側面ファスナー(A)の面積(cm2)との積P(N・cm)が、2≦P≦750を満たすことが好ましい。
【0013】
本構成の網戸用面ファスナーによれば、網戸の網に対する網戸用面ファスナーの係合力が適切になり、機能性物体に風などの外的な力がかかった場合でも、網戸の網から機能性物体が外れないようにすることができるとともに、意図して網戸の網から機能性物体を取り外す際には網にダメージを与えることなく容易に取り外すことができる。
【0014】
本発明に係る網戸用面ファスナーにおいて、
前記雄側面ファスナー(A)の前記係合素子の密度は、20~1000本/(2.54cm)2であることが好ましい。
【0015】
本構成の網戸用面ファスナーによれば、雄側面ファスナー(A)の係合素子の密度が適切になり、係合素子の密度が低すぎて網戸の網を突き抜ける係合素子の数が極端に少なくなるのを防ぐことができるとともに、係合素子の密度が高すぎて係合素子が網戸の網を突き抜けにくくなるの防ぐことができる。その結果、雄側面ファスナー(A)において、一定以上の本数の係合素子が網戸の網を突き抜けて、雌側面ファスナー(B)に係合するようにすることができる。
【0016】
本発明に係る網戸用面ファスナーにおいて、
前記網戸の網を挟んで前記雄側面ファスナー(A)と前記雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態において、前記雄側面ファスナー(A)の前記係合素子の少なくとも前記突起が前記網を突き抜けていることが好ましい。
【0017】
本構成の網戸用面ファスナーによれば、網戸の網を挟んで雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態において、雄側面ファスナー(A)の係合素子の少なくとも突起が網を突き抜けているので、網を突き抜けた係合素子の突起と雌側面ファスナー(B)とによって係合状態を確実に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、従来の網戸用面ファスナーにおいて、フック状の係合素子を有する、雄側面ファスナー(A)の一例の断面の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の網戸用面ファスナーにおいて、球形の突起を備える係合素子を有する、雄側面ファスナー(A)の一例の断面の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の網戸用面ファスナーにおいて、半球形の突起を備える係合素子を有する、雄側面ファスナー(A)の一例の断面の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の網戸用面ファスナーにおいて、円錐形の突起を備える係合素子を有する、雄側面ファスナー(A)の一例の断面の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の網戸用面ファスナーにおいて、矢じり形の突起を備える係合素子を有する、雄側面ファスナー(A)の一例の断面の模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の網戸用面ファスナーを用いて網戸に機能性物体を取り付けた状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、図を参照しながら詳しく説明する。
本発明の網戸用面ファスナーは、網戸の網を挟むように係合可能な雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを備えている。雄側面ファスナー(A)は、
図2~
図5に示すように、突起2を有する係合素子1を含む。係合素子1とは、基布4に結合し、概して基布4から垂直方向に延びた糸状のものである。係合素子1は、主に樹脂で形成され、ポリプロピレンやポリエチレン、ナイロンなどの樹脂が好ましいが、材質は必ずしも樹脂である必要は無い。係合素子1は、適度な硬度と柔軟性があり、壊れにくいものが望ましい。硬すぎると網戸の網を変形させやすく、柔らかすぎると網戸の網を突き抜けにくい。同様に、係合素子1の軸3は太すぎると、網戸の網を変形させやすく、細くて柔らかすぎると網戸の網を突き抜けにくいことから、その軸径aは0.05~0.5mmが好ましく、0.1~0.35mmがより好ましく、0.15~0.25mmがさらに好ましい。係合素子1の高さhは、1.2mm以上に設定される。係合素子1の高さhは、1.2mm以上10.0mm以下であることが好ましく、1.7mm以上8.0mm以下であることがより好ましい。ここで、本発明の網戸用面ファスナーの取付対象の網については、特に限定されるものではないが、一般住宅では網目のサイズが18~30メッシュのものが一般的に用いられており、この範囲の網に対し、雄側面ファスナー(A)及び雌側面ファスナー(B)は、当該網を挟んだ状態であっても、優れた係合力を発揮することができる。
【0020】
本構成の網戸用面ファスナーであれば、網戸の網と雄側面ファスナー(A)の基布4との間に隙間が生じても雄側面ファスナー(A)の係合素子1が網戸の網を突き抜けやすく、雌側面ファスナー(B)と十分に係合することができる。係合素子1の高さhが1.2mmより低い場合、雄側面ファスナー(A)の係合素子1が雌側面ファスナー(B)まで到達しにくく、雄側面ファスナー(A)が雌側面ファスナー(B)と十分に係合できない場合がある。また、係合素子1の高さhが高すぎると、係合素子1が変形しやすくなり、網戸の網を突き抜けにくくなる場合がある。
【0021】
本発明の雄側面ファスナー(A)の係合素子1は、例えば、
図2~
図5に示すような突起2を有している。
【0022】
従来、網戸への固定に用いられる雄側面ファスナーとしては、
図1に示すようなフック状係合素子1が形成されたものが使われてきた。これに対し、係合素子1として、突起2(
図2~
図5参照)を備える形状を採用することにより、フック状の係合素子1(
図1参照)と比べて、網戸の網の面に垂直な方向に対して係合素子1が変形しにくく、それによって網戸の網を突き抜けやすくなる。
【0023】
本発明における突起2とは、
図2~
図5に示すように、係合素子1の末端部に形成される、係合素子1の軸3より太くなっている突起部分のことを指す。突起2の形状としては、特に限定されないが、例えば、球形(
図2参照)や半球形(
図3参照)、円錐形(
図4参照)、矢じり形(
図5参照)が好ましく、
図3に示す半球形がより好ましい。また、突起2は網戸の網に対して引っ掛かり部が少ないものが好ましい。過度に網戸の網に引っ掛かりやすい場合、機能性物体の取り外し時に網の変形を起こす原因となる可能性がある。
【0024】
本発明の雄側面ファスナー(A)の突起2の径dは、0.3~1.0mmであることが好ましい。より好ましくは0.4~0.75mmであり、さらに好ましくは0.5~0.6mmである。
【0025】
雄側面ファスナー(A)の突起2の径dを前記範囲に設定することで、網戸の網を変形させることなく、係合素子1が網戸の網を突き抜けることができ、雌側面ファスナー(B)と係合することができる。突起2の径dが小さすぎる場合、網戸の網を突き抜けることはできるが、雌側面ファスナー(B)との係合力が弱くなる虞がある。突起2の径dが大きすぎる場合は、網戸の網を突き抜けにくく、突き抜けたとしても網戸の網に負荷がかかり、網の変形を引き起こす可能性が高まる。
【0026】
本発明の網戸用面ファスナーにおいて、網目のサイズが30メッシュである網戸の網を挟んで雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態で、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを引き離す剥離強度は、1~30N/cmであることが好ましく、1.5~20N/cmであることがより好ましく、2~15N/cmであることがさらに好ましい。
【0027】
剥離強度を上記のように設定することにより、網目のサイズが30メッシュである網戸の網に対して、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態を確実に保つことができる。剥離強度が1N/cmより小さい場合、網戸用面ファスナーの係合力が弱く、外れやすくなる。剥離強度が30N/cmより大きい場合、網戸用面ファスナーを取り外す際に、網戸の網に負荷がかかり、網戸の網が変形する虞がある。ところで、網目のサイズが30メッシュの網に対して雄側面ファスナー(A)の係合素子1が突き抜けて雌側面ファスナー(B)と係合することができれば、より粗い網目の網に対しても雄側面ファスナー(A)の係合素子1は当然に突き抜けて雌側面ファスナー(B)と係合することができる。従って、一般住宅で使用される18~30メッシュの網戸の網に対して、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させた状態を確実に保つことができる。
【0028】
本発明の網戸用面ファスナーにおいては、剥離強度(N/cm)と、雄側面ファスナー(A)の面積(cm2)との積P(N・cm)が、2≦P≦750を満たすことが好ましく、4≦P≦600であることがより好ましく、6≦P≦500であることがさらに好ましい。
【0029】
ここでPは機能性物体の装着安定性を評価する本発明独自のパラメータである(以下、「装着安定性評価値」と称する。)。本発明の網戸用面ファスナーにおいて、機能性物体に風などの外的な力がかかった場合でも、網戸の網から機能性物体が外れないようにし、且つ網が変形するような負荷を網に与えることなく容易に機能性物体を取り外すようにするためには、網を介した雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)との係合力を適切な範囲に設定する必要がある。この係合力は、剥離強度(N/cm)と、雄側面ファスナー(A)の面積(cm2)との積である装着安定性評価値P(N・cm)に相当する。そこで、装着安定性評価値Pを前記数値範囲に設定することにより、機能性物体に風などの外的な力がかかった場合でも、網戸の網から機能性物体が外れないようにすることができるとともに、意図して網から機能性物体を取り外す際には網にダメージを与えることなく容易に取り外すことができる。装着安定性評価値Pが2より小さい場合、風の強い日などに機能性物体が網から落下する虞がある。また、装着安定性評価値Pが750より大きい場合、機能性物体を網から外すのに要する力が大き過ぎて、外しにくいばかりか、網戸の網に負荷がかかり、網戸の網が変形する虞がある。本発明の網戸用面ファスナーを用いて網戸の網に機能性物体を取り付けたときには、後述する剥離強度試験のように雄側面ファスナー(A)及び雌側面ファスナー(B)の係合面に対し引き剥がし力が当該係合面の端からのみかかるのではなく、雄側面ファスナー(A)及び雌側面ファスナー(B)の係合面全体に引き剥がし力がかかるものと考えられる。剥離強度が強くても、係合面の面積が極めて小さければ、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とが剥がれやすく、逆に剥離強度が多少小さくても係合面の面積が比較的大きければ剥がれにくくなる。また、剥離強度が極めて小さくて、係合面の面積が極めて大きい場合は、装着安定性評価値Pはある程度大きな値になるかもしれないが、係合面の端から少しずつ剥がれていく虞がある。従って、剥離強度自体も一定以上必要であり、網戸の網に対して機能性物体の装着状態を長期に亘って安定的に保つ観点から、剥離強度及び装着安定性評価値Pが共に上記数値範囲の条件を満足することが好ましいといえる。
【0030】
本発明の機能性物体の形状は特に問わないが、網戸の網に平行な面の面積SO1(cm2)と垂直な面の面積SO2(cm2)とを比較した場合、SO2<SO1、すなわちSO2が小さいことが好ましい。
【0031】
同じ形状の機能性物体であってもSO1<SO2となるように網戸の網に装着する場合に比べて、SO2<SO1となるように、網戸の網に装着した方が、風などの外的負荷の影響を受けにくくなり、機能性物体が外れにくくなる。
【0032】
雄側面ファスナー(A)の基布4の単位面積あたりの係合素子1の本数である、係合素子密度は、20~1000本/(2.54cm)2であることが好ましく、50~800本/(2.54cm)2であることがより好ましく、100~600本/(2.54cm)2であることがさらに好ましく、200~500本/(2.54cm)2であることが特に好ましい。
【0033】
雄側面ファスナー(A)の係合素子密度を前記数値範囲にすることで、雄側面ファスナー(A)の係合素子1は網戸の網を突き抜けやすくなり、一定以上の本数の係合素子1が網戸の網を突き抜けて雌側面ファスナー(B)と強固に係合する。雄側面ファスナー(A)の係合素子密度が20本/(2.54cm)2より小さい場合、網戸の網を突き抜ける係合素子1の数が極端に少なくなり、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とが強固に係合することができない。雄側面ファスナー(A)の係合素子密度が1000本/(2.54cm)2より大きい場合、雄側面ファスナーの(A)の係合素子1の密度が高すぎて、網戸の網を突き抜けにくくなり、結果として、雌側面ファスナー(B)と強固に係合することができない。
【0034】
本発明の雌側面ファスナー(B)の種類は、雄側面ファスナー(A)と係合できるものであれば特に限定されないが、具体的にはループ型やナッピング型が使用可能である。ループ型は係合素子形成用糸としてループ形状のマルチフィラメントが用いられたものであり、ナッピング型は係合素子形成用糸としてループ形状のマルチフィラメントが用いられたものに、さらにナッピングなどにより各フィラメントのループを分離させるとともにループの方向が多方向に向けられたものである。
【0035】
尚、雄側面ファスナー(A)同士で係合できるものについては、前記雌側面ファスナー(B)の代わりに雄側面ファスナー(A)を用いることもできる。
【0036】
本発明の機能性物体としては、害虫防除剤、芳香剤、抗菌剤などの機能性成分を備えることができ、その形態は問わないが、一例を示すと、前記機能性成分を樹脂に練りこんで成形した樹脂成形体や前記機能性成分を各種担持体に含ませた含浸体をそのまま、あるいは、それらを通気性のある樹脂容器に収容して機能性物体とすることができる。樹脂成形体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン系ジブロックポリマー、スチレン系トリブロックポリマー、熱可塑性プラスチックエラストマー(TPE、TPO)等の樹脂を成形したものが挙げられる。樹脂成形体の形状は、樹脂フィルム、樹脂成形品、シリコーンゴム等への練込み品が挙げられるが、これらに限定されない。担持体としては、例えば、紙、織布、不織布等の基布、球状セルロース粒子等の多孔質有機成形体、セラミックス等の無機担持体があげられ、公知の方法により機能性成分を担持できるが、これらに限定されない。
【0037】
前記機能性物体は、接着剤などを介して面ファスナーと化学的に接着させることができる他、ステープラなどで物理的に接着させても良い。接着の強度は、網戸の網を介した網戸用面ファスナーの係合力よりも大きくすることが好ましい。また、接着剤などを使用する場合は、前記機能性成分を樹脂体に練りこんで成形した樹脂成形体や前記機能性成分を含浸したシートと網戸用面ファスナーとを直接接着しようとする場合、前記機能性成分が接着を阻害する可能性があるため、それらを通気性のある容器に収容し、当該容器と網戸用面ファスナーとを接着させることが好ましい。
【0038】
図6は、本発明の網戸用面ファスナー100を用いて網戸の網(NT)に機能性物体200を取り付けた状態の一例を示す平面図である。
図6(a)は、雌側面ファスナー(B)の係合素子がループ型の場合を示す図である。
図6(b)は、雌側面ファスナー(B)の係合素子がナッピング型の場合を示す図である。
【0039】
図6(a)に示すように、本発明の網戸用面ファスナー100が取り付けられる対象の網戸の網(NT)は、室外(OD)側と室内(ID)側とを仕切るように配されている。網戸用面ファスナー100は、室外(OD)側に配される雄側面ファスナー(A)と、室内(ID)側に配される雌側面ファスナー(B)とを備え、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とが網(NT)を挟むように対向配置されている。
【0040】
雄側面ファスナー(A)は、網(NT)と向かい合せて配される基布4(以下、必要に応じ「雄側基布4」と称する。)を備えている。雄側基布4は、網(NT)の室外(OD)に向けた室外側網面と対向する雄側対向面4aを有するとともに、当該雄側対向面4aの反対側の面である雄側非対向面4bとを有している。雄側対向面4aには、当該雄側対向面4aに対し垂直方向に糸状に延在するように係合素子1(以下、必要に応じ「雄側係合素子1」と称する。)が植設されている。雄側係合素子1は、雄側対向面4aに対し起立状態で結合される軸3と、軸3の室内(ID)へと向かう側の末端部に形成される本例では半球形(
図3参照)の突起2とを有している。雄側非対向面4bには、例えば、接着剤や両面テープ、ステープラ等の固着手段(図示省略)を介して機能性物体200が固着されている。なお、
図6に示すように、機能性物体200が室外(OD)側に取り付けられる場合、取り付けた機能性物体200がガラス戸の開閉の際の妨げとならないように、網(NT)の外側網面からの機能性物体200の突出高さ(突出距離)を、例えば、20mm以下に抑えるように、機能性物体200の厚みを設定することが好ましい。
【0041】
雌側面ファスナー(B)は、網(NT)と向かい合せて配される基布5(以下、必要に応じ「雌側基布5」と称する。)を備えている。雌側基布5は、網(NT)の室内(ID)に向けた室内側網面と対向する雌側対向面5aを有するとともに、当該雌側対向面5aの反対側の面である雌側非対向面5bとを有している。雌側対向面5aには、当該雌側対向面5aに対し垂直方向にループ形状に突出形成された係合素子6(以下、必要に応じ「雌側係合素子6」と称する。)が植設されている。
図6(a)に示す例では、雌側係合素子6として、マルチフィラメント(係合素子形成用糸)をループ形状に形成したループ型のものが用いられている。
【0042】
図6(b)に示す例は、雌側係合素子6として、ループ形状のマルチフィラメントに対しナッピングを施して各フィラメントのループを分離させるとともにループの方向が多方向に向けられるようにしたナッピング型のものが用いられた例であり、それ以外については、
図6(a)と同様であるため、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明は省略する。
【0043】
代表として、
図6(a)に示すように、雄側面ファスナー(A)の雄側係合素子1は、網(NT)を突き抜けて室内(ID)側に突出されている。そして、室内(ID)側に突出された雄側係合素子1に対し、雌側面ファスナー(B)の雌側係合素子6が係合している。こうして、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とが網(NT)を挟んで係合するときに、雄側係合素子1の少なくとも一部(突起2が形成された先端部分)が網(NT)を突き抜けた状態とすることにより、雄側係合素子1に対し雌側係合素子6をより容易且つ確実に係合させることができる。そして、網(NT)を突き抜けた係合素子1の部分と雌側面ファスナー(B)とによって係合状態を確実に保つことができ、網戸用面ファスナー100を網(NT)に強固に取り付けることができる。従って、網戸用面ファスナー100によれば、機能性物体200を網戸の網(NT)に対して落下させることなく、確実に且つ簡便に取り付けることができ、しかも網戸の網(NT)の変形などを起こしにくいようにすることができる。
【実施例0044】
以下、本発明の網戸用面ファスナーの実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
評価試験に用いた雄側面ファスナー(A)は以下の通りである。
【0046】
[雄側面ファスナー(A)]
<雄側面ファスナー(A)-1>
雄側面ファスナー(A)-1としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが1.7mm、軸径aが0.21mm、突起2の径dは0.60mm、係合素子密度が411本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0047】
<雄側面ファスナー(A)-2>
雄側面ファスナー(A)-2としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが4.5mm、軸径aが0.32mm、突起2の径dは0.59mm、係合素子密度が246本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0048】
<雄側面ファスナー(A)-3>
雄側面ファスナー(A)-3としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが1.8mm、軸径aが0.15mm、突起2の径dは0.53mm、係合素子密度が435本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0049】
<雄側面ファスナー(A)-4>
雄側面ファスナー(A)-4としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが1.1mm、軸径aが0.14mm、突起2の径dは0.63mm、係合素子密度が411本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0050】
<雄側面ファスナー(A)-5>
雄側面ファスナー(A)-5としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが3.6mm、軸径aが0.24mm、突起2の径dは1.20mm、係合素子密度が411本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。雄側面ファスナー(A)-5は係合素子1の2本ずつが突起2で合体し一つとなっており、前記一つとなった突起の径dは合体した突起2の最大幅を示す。
【0051】
<雄側面ファスナー(A)-6>
雄側面ファスナー(A)-6としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製で、半球形の突起2を有し、係合素子1の高さhが1.7mm、軸径aが0.44mm、突起2の径dは1.05mm、係合素子密度が280本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0052】
<雄側面ファスナー(A)-7>
雄側面ファスナー(A)-7としては、基布4がナイロン製、係合素子1がポリプロピレン製でフック型であり、係合素子1の高さhが1.5mm、軸径aが0.17mm、フックの最大幅(突起2の径dに相当)が1.36mm、係合素子密度が96本/(2.54cm)2、大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0053】
<雄側面ファスナー(A)-8~(A)-10>
雄側面ファスナー(A)-8~(A)-10は、雄側面ファスナー(A)-2において、係合素子1を間引いたものであり、係合素子密度が123本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-8)、係合素子密度が62本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-9)、係合素子密度が31本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-10)を使用した。
【0054】
<雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13>
雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13は、雄側面ファスナー(A)-3において、係合素子1を間引いたものであり、係合素子密度が218本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-11)、係合素子密度が109本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-12)、係合素子密度が54本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-13)を使用した。
【0055】
<雄側面ファスナー(A)-14~(A)-16>
雄側面ファスナー(A)-14~(A)-16は、雄側面ファスナー(A)-1において、係合素子1を間引いたものであり、係合素子密度が206本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-14)、係合素子密度が103本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-15)、係合素子密度が51本/(2.54cm)2のもの(雄側面ファスナー(A)-16)を使用した。
【0056】
評価試験に用いた雌側面ファスナー(B)は以下の通りである。
【0057】
[雌側面ファスナー(B)]
<雌側面ファスナー(B)-1>
雌側面ファスナー(B)-1としては、係合素子6がループ型(伸和(株)製、品番:2W3LT)で大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0058】
<雌側面ファスナー(B)-2>
雌側面ファスナー(B)-2としては、係合素子6がナッピング型(伸和(株)製、品番:MC11433DN)で大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0059】
<雌側面ファスナー(B)-3>
雌側面ファスナー(B)-3としては、係合素子6がナッピング型(伸和(株)製、品番:BF2)で大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0060】
<雌側面ファスナー(B)-4>
雌側面ファスナー(B)-4としては、係合素子6がナッピング型(伸和(株)製、品番:2A3)で大きさが2×2cm(面積4cm2)のものを使用した。
【0061】
[試験1]
<剥離強度の測定>
雄側面ファスナー(A)を、基布4の側の面を下に、係合素子1が上を向くように実験台に設置し、その上から30メッシュの網戸を置き、さらに端部に安全ピンを取り付けた雌側面ファスナー(B)を係合素子6が下を向くようにして、雄側面ファスナー(A)の真上の位置に置いた。ここで言う端部とは雌側面ファスナー(B)の一辺の中心から、雌側面ファスナー(B)の対角線の中心に向かって、1~2mm進んだ位置を示す。その後、3×3cmの板を取り付けたプッシュプルゲージ(日本電産シンポ(株)製、型式:FGP-10)で雌側面ファスナー(B)を真上から押し、40Nに到達したところで、プッシュプルゲージを雌側面ファスナー(B)から離した。このような、プッシュプルゲージで雌側面ファスナー(B)を押す操作を3回繰り返すことで、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを均等に係合させた。次に、プッシュプルゲージに取り付けたフックを雌側面ファスナー(B)に取り付けた安全ピンに引っ掛け、網戸に対して垂直方向にゆっくりと引っ張り、雌側面ファスナー(B)が雄側面ファスナー(A)から剥離するまでにプッシュプルゲージにかかった最大の力(N)を測定した。剥離する方向に対して垂直な方向で、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とが係合している長さを係合幅(2cm)とし、前記測定した最大の力(N)を当該係合幅で除した値を剥離強度(N/cm)として算出した。また、当該剥離強度D(N/cm)と、雄側面ファスナー(A)の面積SF(cm2)との積である装着安定性評価値P=D×SF(N・cm)を算出した。
【0062】
<耐久力の評価>
機能性物体を想定した、樹脂体(横11.2cm、縦6.3cm、厚み0.4cm、重量6.0g)を樹脂容器(横13.1cm、縦8.3cm、厚み0.7cm、重量6.9g)に収容し、当該樹脂容器の平面(横13.1cm、縦8.3cm)中央に雄側面ファスナー(A)を接着剤で取り付け、雄側面ファスナー(A)の係合素子1が上を向くように前記樹脂容器を実験台に設置した。その上から30メッシュの網戸を置き、さらに雌側面ファスナー(B)を係合素子6が下を向くようにして、雄側面ファスナー(A)の真上の位置に置いた。3×3cmの板を取り付けたプッシュプルゲージで雌側面ファスナー(B)を真上から押し、40Nに到達したところで、プッシュプルゲージを雌側面ファスナー(B)から離した。このような、プッシュプルゲージで雌側面ファスナー(B)を押す操作を3回繰り返すことで、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを均等に係合させた。そして、網戸を持ち上げて10秒間静置し、前記樹脂容器が落下するかどうかを評価し、落下しなかったものを○、落下した、あるいはそもそも樹脂容器が網戸と共に持ち上がらなかったものを×とした。
【0063】
30メッシュの網に対する実施例1~12の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
30メッシュの網に対する実施例13~18の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
30メッシュの網に対する実施例19~24の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表3に示す。
【0068】
【0069】
30メッシュの網に対する比較例1~8の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表4に示す。
【0070】
【0071】
30メッシュの網に対する比較例9~16の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表5に示す。
【0072】
【0073】
20メッシュの網に対する実施例25~36の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表6に示す。
【0074】
【0075】
20メッシュの網に対する実施例37~42の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表7に示す。
【0076】
【0077】
20メッシュの網に対する実施例43~48の剥離強度の測定結果、装着安定性評価値P及び耐久性の評価結果を表8に示す。
【0078】
【0079】
以上の測定結果から、20メッシュ及び30メッシュの何れの網に対しても、雄側面ファスナー(A)の係合素子1の高さhが1.1mmより高く、突起2を有し、突起2の径dが0.3mmから1.00mmであるものは、雌側面ファスナー(B)の型に依らず、高い係合力を示した。
【0080】
表2に示す実施例13~15は、実施例5~8(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-2の係合素子を間引いたものであり、同様に、表2に示す実施例16~18は、実施例9~12(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-3の係合素子を間引いたものである。表2に示すように、係合素子1の数(係合素子密度)が減るほど剥離強度は低下するが、実施例13~15のうち、係合素子密度が最も小さい31本/(2.54cm)2である実施例15の耐久性の評価が「○」であることから、係合素子密度が31本/(2.54cm)2以上であれば、必要な耐久性が確保されると考えられる。
【0081】
表3に示す実施例19~21は、実施例5~8(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-2の面積を小さくしていったものである。すなわち、実施例5~8(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-2の面積が4cm2であるのに対し、表3に示す実施例19~21においては、雄側面ファスナー(A)-2の面積が、2cm2(1×2cmの長方形状:実施例19)から、1cm2(1×1cmの正方形状:実施例20)、0.5cm2(0.5×1cmの長方形状:実施例21)へと順次小さくされている。同様に、表3に示す実施例22~24は、実施例9~12(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-3の面積を小さくしていったものである。すなわち、実施例9~12(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-3の面積が4cm2であるのに対し、表3に示す実施例22~24においては、雄側面ファスナー(A)-3の面積が、2cm2(1×2cmの長方形状:実施例22)から、1cm2(1×1cmの正方形状:実施例23)、0.5cm2(0.5×1cmの長方形状:実施例24)へと順次小さくされている。表3に示すように、面積が小さくなるほど、装着安定性評価値Pは低下するが、実施例19~24のうち、装着安定性評価値Pが最も小さい2.2N・cmである実施例21の耐久性の評価が「○」であることから、装着安定性評価値Pが2.2N・cm以上であれば、必要な耐久性が確保されると考えられる。尚、雄側面ファスナー(A)の面積を小さくしていった場合の剥離強度測定時の引っ張り方向について、雄側面ファスナー(A)の縦方向と横方向との長さが異なる場合、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)との係合幅が長い方での剥離強度の測定値に基づいて、装着安定性評価値Pを算出した。
【0082】
表6に示す実施例25~36は、取付対象の網が30メッシュである実施例1~12(表1参照)に対し、取付対象の網が20メッシュであることが異なるのみで、その他の条件については同じである。網目のサイズが30メッシュよりも20メッシュの方が網目が粗く、雄側面ファスナー(A)の係合素子1が網目を突き抜けやすいことから、全体的に実施例25~36の方が剥離強度が高いという測定結果が得られた。この結果から、30メッシュの網に対して必要な剥離強度が確保されれば、30メッシュより粗い網目の網(例えば、18~24メッシュの網)に対しても十分な剥離強度が確保されると考えられる。
【0083】
表7に示す実施例37~39は、雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13と雌側面ファスナー(B)-3とが係合し、且つ取付対象の網が30メッシュである実施例16~18(表2参照)に対し、雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13の係合対象の雌側面ファスナー(B)の型が異なるとともに、取付対象の網が20メッシュであることが異なり、その他の条件については同じである。表7に示すように、実施例37~39は、実施例16~18と比べて全体的に剥離強度が高いという測定結果が得られた。この測定結果については、30メッシュよりも20メッシュの方が雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13の係合素子1が網目を突き抜けやすいことと、雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13の係合対象の雌側面ファスナー(B)の型が異なることとの両方の影響があると考えられるが、そもそも網を突き抜ける雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13の係合素子1が少なければ、雌側面ファスナー(B)がどのような型であるかに関わらず、係合力が減少し剥離強度が低下することから、雄側面ファスナー(A)-11~(A)-13の係合素子1が網目を突き抜けやすいか否かということの影響の方が大きいと考えられる。従って、雌側面ファスナー(B)の型に関わらず、30メッシュの網に対して必要な剥離強度が確保されれば、30メッシュよりも網目が粗く大きい網に対しても十分な剥離強度が確保されると考えられる。
【0084】
表7に示す実施例40~42は、雄側面ファスナー(A)-1と雌側面ファスナー(B)-4とが係合し、且つ取付対象の網が30メッシュである実施例4(表1参照)に対し、雄側面ファスナー(A)の型、係合素子密度、及び取付対象の網が20メッシュであることが異なり、その他の条件については同じである。表7に示すように、実施例40及び41は、実施例4と比べて、係合素子密度が小さいにもかかわらず、剥離強度が高いという測定結果が得られた。この測定結果は、係合素子密度の大きさの影響と比べて、30メッシュよりも20メッシュの方が雄側面ファスナー(A)-14,(A)-15の係合素子1が網目を突き抜けやすいということの影響の方が大きいということを示すものである。従って、30メッシュの網に対して必要な剥離強度が確保されれば、30メッシュよりも網目が粗く大きい網に対しても十分な剥離強度が確保されると考えられる。なお、実施例40~42のうち、係合素子密度が最も小さい51本/(2.54cm)2であるとともに、剥離強度が最も小さい1.1N/cmである実施例42においても、耐久性の評価が「○」であり、必要な耐久性が確保された。
【0085】
表8に示す実施例43~46は、実施例4(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-1の面積を小さくしていったものである。すなわち、実施例1~4(表1参照)で用いた雄側面ファスナー(A)-1の面積が4cm2であるのに対し、表8に示す実施例43~46においては、雄側面ファスナー(A)-1の面積が、2cm2(1×2cmの長方形状:実施例43)から、1cm2(1×1cmの正方形状:実施例44)、0.5cm2(0.5×1cmの長方形状:実施例45)、0.25cm2(0.5×0.5cmの正方形状:実施例46)へと順次小さくされている。実施例43~46は、上記のように、雄側面ファスナー(A)-1の面積が異なるとともに、取付対象の網が30メッシュである実施例4(表1参照)に対し、取付対象の網が20メッシュであることが異なり、その他の条件については同じである。表8に示すように、実施例43~46のうち、実施例43及び44は、実施例4(表1参照)と比べて、雄側面ファスナー(A)-1の面積が小さいにもかかわらず、装着安定性評価値Pが高いという測定結果が得られた。この測定結果は、面積の大きさの影響と比べて、30メッシュよりも20メッシュの方が雄側面ファスナー(A)-14,(A)-15の係合素子1が網目を突き抜けやすいということの影響の方が大きいということを示すものである。従って、30メッシュの網に対して必要な剥離強度が確保されれば、30メッシュよりも網目が粗く大きい網に対しても十分な剥離強度が確保されると考えられる。なお、実施例45及び46は、実施例43及び44よりもさらに雄側面ファスナー(A)-1の面積が小さいため、実施例4(表1参照)と比べて、装着安定性評価値Pが小さいという測定結果であったが、耐久性の評価が「○」であり、必要な耐久性が確保された。
【0086】
表8に示す実施例47及び48は、雄側面ファスナー(A)-3と雌側面ファスナー(B)-3とが係合し、且つ取付対象の網が30メッシュである実施例22及び23(表3参照)に対し、雄側面ファスナー(A)-3の係合対象の雌側面ファスナー(B)の型が異なるとともに、取付対象の網が20メッシュであることが異なり、その他の条件については同じである。表8に示すように、実施例47及び48は、実施例22及び23と比べて剥離強度が高いという測定結果が得られた。この測定結果についても、係合対象の雌側面ファスナー(B)の型が異なる影響よりも、雄側面ファスナー(A)-3の係合素子1が網目を突き抜けやすいか否かということの影響の方が大きいと考えられる。従って、雌側面ファスナー(B)の型に関わらず、30メッシュの網に対して必要な剥離強度が確保されれば、30メッシュより粗い網目の網に対しても十分な剥離強度が確保されると考えられる。
【0087】
一方、表4に示すように、比較例1~4においては、雄側面ファスナー(A)の係合素子1の高さhが1.2mmより低い1.1mmである。この場合、剥離強度が0.1N/cm未満であり、装着安定性評価値Pが0.4N・cm未満であり、耐久性の評価が「×」であるという結果が得られた。このような比較例1~4の結果は、雄側面ファスナー(A)の係合素子1が雌側面ファスナー(B)まで到達しにくく、雄側面ファスナー(A)が雌側面ファスナー(B)と十分に係合できないためであると考えられる。従って、十分に係合させるためには、雄側面ファスナー(A)の係合素子1の高さhは、1.2mm以上に設定する必要がある。
【0088】
また、表4に示すように、比較例5~8においては、突起2の径が1.0mmより大きい1.20mmである。この場合、剥離強度が0.1N/cm未満であり(比較例5,6及び8)、剥離強度が1N/cmより若干小さい0.9N/cmであり(比較例7)、装着安定性評価値Pが0.4N・cm未満であり(比較例5,6及び8)、装着安定性評価値Pが3.6N・cmであり(比較例7)、耐久性の評価が「×」であるという結果が得られた。さらに、表5に示すように、比較例9~12においては、突起2の径が1.0mmより若干大きい1.05mmである。この場合においても、剥離強度が0.1N/cm未満であり、装着安定性評価値Pが0.4N・cm未満であり、耐久性の評価が「×」であるという結果が得られた。このような比較例5~8及び比較例9~12の結果は、突起2の径dが大きすぎて網戸の網を突き抜けにくく、雄側面ファスナー(A)が雌側面ファスナー(B)と十分に係合できないためであると考えられる。従って、十分に係合させるためには、突起2の径dは、1.0mm以下に設定する必要がある。
【0089】
[試験2]
害虫防除成分であるトランスフルトリン1800mgとフタル酸ジイソプロピル300mgの混合物を、エチレン-ビニルアセテート共重合体と低密度ポリエチレンとを1:2.5(重量比)で混合した混合樹脂に混練し成形して立体メッシュ状の薬剤揮散体(横15cm、縦8cm、厚み1cm、表面積375cm2、重量11g)を得た。前記薬剤揮散体を、大きさが、横16cm、縦9.5cm、厚み1.2cmで、正面と背面にそれぞれ30%の開口部を有する樹脂容器に収容し、前記樹脂容器の平面(横16cm、縦9.5cm)中央に雄側面ファスナー(A)を接着剤で取り付けた。実際の住居の網戸の網(30メッシュ)を介して、雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)とを係合させることで、前記樹脂容器を網戸に装着した。具体的な雄側面ファスナー(A)と雌側面ファスナー(B)との組み合わせは表1の実施例1、2、6、8、10、12の組み合わせとした。
【0090】
試験の結果、網戸に装着した、薬剤揮散体を収容する全ての樹脂容器は1年間に渡り、落下することなく網戸に留まり、害虫に対する忌避効果を示した。また、前記樹脂容器の取り外しを容易に行うことができ、網戸を傷めることもなかった。
本発明の網戸用面ファスナーは、機能性物体を網戸に対して、落下することなく確実に装着することが可能であり、特に、機能性物体を害虫防除剤とすることで、害虫の屋内への侵入を予防することができ、有効である。