(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097761
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】米飯炒め冷凍食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20240711BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240711BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240711BHJP
A23L 27/12 20160101ALI20240711BHJP
A23L 27/29 20160101ALI20240711BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L35/00
A23L27/00 D
A23L27/12
A23L27/29
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221925
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023001365
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】萩原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 真基
【テーマコード(参考)】
4B023
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LE22
4B023LK05
4B023LK07
4B023LK10
4B023LK12
4B023LK13
4B023LK15
4B023LK20
4B023LL01
4B023LP15
4B023LT03
4B023LT60
4B036LC01
4B036LF15
4B036LH10
4B036LH13
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4B036LH26
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4B036LK01
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4B036LT01
4B047LB09
4B047LE01
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4B047LG22
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4B047LG40
4B047LG63
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP06
(57)【要約】
【課題】果実感のある香りと果実感のある甘味を両立させた米飯炒め冷凍食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めてなる、米飯炒め冷凍食品。リンゴ果汁及びナシ果汁を米飯と炒めてなることが好ましい。ショ糖と果糖との質量比が100:28以上であることも好ましい。果糖の含有量が0.25~1.0質量%であることも好ましい。ショ糖の含有量が0.5~2.5質量%であることも好ましい。ブドウ糖の含有量が0.3~1質量%であることも好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めてなる、米飯炒め冷凍食品。
【請求項2】
リンゴ果汁及びナシ果汁を米飯と炒めてなる、請求項1に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項3】
ショ糖と果糖とを含み、ショ糖と果糖との質量比が100:28以上である、請求項1又は2に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項4】
果糖の含有量が0.25~1.0質量%である、請求項1又は2に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項5】
ショ糖の含有量が0.5~2.5質量%である、請求項1又は2に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項6】
ブドウ糖の含有量が0.3~1質量%である、請求項1又は2に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項7】
粒状大豆蛋白質を含有する、請求項1又は2に記載の米飯炒め冷凍食品。
【請求項8】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めた後、冷凍する、米飯炒め冷凍食品の製造方法。
【請求項9】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含有する調味料と肉及び/又は野菜を混合及び加熱した後に液切りして具材を得る第1工程と、当該具材を米飯と100℃~350℃の温度で炒める第2工程とを有し、炒め後に冷凍する、請求項8に記載の米飯炒め冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯炒め冷凍食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍炒飯等の米飯炒め冷凍食品はそのパラパラした食感などが好まれ、広く親しまれている(例えば特許文献1)。
一方、健康意識の高まりによる果物への注目や、嗜好の多様化により、果汁を用いた従来にない美味しさを有する料理への期待が高まっており、果汁を用いた調味料の提案が存在する(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-244926号公報
【特許文献2】特開2017-212915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、果汁を用い、新規な風味の米飯炒め冷凍食品を提供することを課題とする。
特に本発明では果実感のある香りと果実感のある甘味を両立させた米飯炒め冷凍食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はリンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めてなる、米飯炒め冷凍食品を提供する。
【0006】
また本発明はリンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めた後、冷凍する、米飯炒め冷凍食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、果汁を用い、新規な風味の米飯炒め冷凍食品を提供することができる。特に、果実感のある香りと果実感のある甘味を両立させた米飯炒め冷凍食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明は、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めてなる、米飯炒め冷凍食品に係るものである。
【0009】
本発明において、米飯炒め冷凍食品とは、米を含む穀類を炊飯した後、炒め調理した冷凍食品を指す。
米を含む穀類としては、米のみからなるもののほかに、米に加えて麦や雑穀を用いるものが挙げられる。米を含む穀類における米の割合は好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。炒め調理とは、鍋等の調理器具に油を引くか又は引かずに食材を入れてかき混ぜながら加熱し、調味する料理を指す。
【0010】
本発明の米飯炒め冷凍食品は従来ない新規な風味を有する。更に、本発明者は以下の点も検討した。
本発明者は、単に果汁を米飯と炒めた米飯炒め冷凍食品では、果実感のある甘味が感じられない場合があることや、果実感のある香りが低下する場合があることを知見した。この理由としては以下が考えられる。まず、米飯炒め冷凍食品では、100℃以上、特に好適には200℃以上もの炒め工程を経るために、熱による香気成分の揮発があり、これに起因して果汁による甘みが感じにくい場合がある。また果糖は温度が高くなると甘みを発揮しにくくなるところ、炒め食品は比較的高温で喫食するので、果糖の味を感じにくいという理由がある。また、冷凍及び解凍を経て、果実感のある香りが感じにくくなる場合もある。
これらの点を鋭意検討した結果、発明者は果実感のある甘味及び果実感のある香りを向上させる構成を見出した。
【0011】
本発明は、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めた米飯炒め冷凍食品であり、これにより、果実感のある甘味と果実感のある香りとが両立した米飯炒め冷凍食品が得やすくなる。特に、リンゴ果汁及びナシ果汁を米飯と炒めた米飯炒め冷凍食品であることが好ましい。
【0012】
リンゴ果汁及びナシ果汁としてはリンゴ及びナシをそれぞれ搾汁した果汁のほか、市販の濃縮果汁やそれを還元した100%果汁を用いることができる。好ましくは、濃縮果汁を用いることが、果実感のある甘味及び果実感のある香りと、パラパラした食感とを両立して得やすい点で好ましい。この観点から、リンゴ果汁としては、2~6倍濃縮果汁が好適に挙げられ、5~6倍濃縮果汁がより好ましい。ナシ果汁としては、2~5倍濃縮果汁が好適に挙げられ、4~5倍濃縮果汁がより好ましい。
なお、本発明では、ナシ果汁として和ナシ果汁を用いることが、果実感のある甘味及び果実感のある香りの点から好ましい。
【0013】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を用いる場合、パラパラ感のある食感と、果実感のある甘味及び果実感のある香りとの両立の点から、その使用量は、米飯炒め冷凍食品の全原料中、0.10~0.90質量%が好ましく、0.30~0.90質量%であることがより好ましく、0.45~0.90質量%であることが特に好ましい。リンゴ果汁及びナシ果汁を併用する場合の両者の好ましい量比については、後述する好ましい製造方法に記載の量比と同様である。
【0014】
米飯炒め冷凍食品では、ショ糖と果糖を含有し、ショ糖と果糖との質量比が前者:後者で100:28以上であることが、果実感のある甘み及び果実感のある香りを効果的に得やすい点、及び、果汁の風味と炒めの風味の両方を感じやすい点で好ましく、100:30以上であることが特に好ましく、100:35以上であることが最も好ましい。前記の炒めの風味とは、香ばしさ等の炒め感のある風味を指す。一方、米飯炒め冷凍食品においてショ糖に対して果糖が多すぎると、米飯炒め冷凍食品の全体としてのまとまりある風味に欠ける恐れがあったり、電子レンジ等で加熱した直後の温かい状態での喫食時に狙い通りの甘味が発現できなくなる問題がある。この点を鑑みて、ショ糖と果糖との質量比が100:80以下であることが好ましく、100:63以下であることがより好ましく、100:56以下であることが更に一層好ましい。
果糖とショ糖の含有量比を上記範囲とするためには、後述する好適な製造方法を採用すればよい。
【0015】
米飯炒め冷凍食品における果糖の含有量は、0.25質量%以上であることが、果実感のある甘み及び果実感のある香りを得やすい点で好ましく、0.35質量%以上であることがより好ましく、0.40質量%以上であることが更に一層好ましい。また米飯炒め冷凍食品における果糖の含有量は、1.0質量%以下であることが、米飯炒め冷凍食品の全体としてのまとまりある風味を得る点等で好ましく、0.85質量%以下であることがより好ましく、0.70質量%以下であることが更に一層好ましい。
果糖の含有量を上記範囲とするためには、後述する好適な製造方法において、リンゴ果汁及びナシ果汁の量を調整すればよい。
【0016】
米飯炒め冷凍食品におけるショ糖の含有量は多すぎると果実感のある風味を低減してしまうことから、2.5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.8質量%以下であることが更に一層好ましい。また米飯炒め冷凍食品におけるショ糖の含有量は、0.5質量%以上であることが、冷凍及び解凍を経た後の瞬発力、力強いボディ感のある甘味の実現の点で好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.2質量%以上であることが更に一層好ましい。
ショ糖の含有量を上記範囲とするためには、後述する好適な製造方法を採用すればよい。
【0017】
米飯炒め冷凍食品では、ブドウ糖と果糖との質量比が100:70以上であることが、果実感のある甘み及び果実感のある香りを得やすい点で好ましく、100:75以上であることがより好ましく、100:80以上であることが特に好ましい。米飯炒め冷凍食品においてブドウ糖に対して果糖が多すぎると、炒飯等の米飯炒め食品らしいまとまりのある風味が失われたり、好ましい果実感がある風味が得難い場合がある。この点を鑑みて、ブドウ糖と果糖との質量比が100:200以下であることが好ましく、100:180以下であることがより好ましく、100:150以下であることが更に一層好ましい。
ブドウ糖及び果糖の含有量比を上記範囲とするためには、後述する好適な製造方法を採用すればよい。
【0018】
米飯炒め冷凍食品におけるブドウ糖の量は、0.3質量%以上であることが、果実感のある甘み及び果実感のある香りを得やすい点で好ましく、0.4質量%以上であることが更に一層好ましい。また米飯炒め冷凍食品におけるブドウ糖の量は、1質量%以下であることが、米飯炒め食品らしい風味を得る点から好ましく、0.7質量%以下であることが更に一層好ましい。
ブドウ糖の量を上記範囲とするためには、後述する好適な製造方法を採用すればよい。
【0019】
上記の、果糖、ブドウ糖、ショ糖の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定することができる。
具体的には、前処理として米飯炒め冷凍食品を解凍し、水を加えて均一化し、試料とする。
均一化した試料7.5gに50%エタノールを加えて、30分間超音波抽出した後に、50mLに定容し、ろ紙で濾過して、濾液を濃縮及び乾固する。得られた固形物に10倍の水を加えて希釈し、メンブランフィルターにて再度濾過する。得られた濾液をHPLCでの測定に供する。
このサンプルについて、以下の条件にて測定を行う。
装置:Chromaster(株式会社日立ハイテクサイエンス)
検出器:蛍光検出器5440(株式会社日立ハイテクサイエンス)
分離カラム:昭和電工株式会社ShodexAsahipakNH2P-504E,内径4.6mm×250mm
移動相:A液:アセトニトリル
B液:水
C液:10%リン酸
グラジエントは下記表1の通りとする。
【0020】
【0021】
カラム温度:40℃
流量:1mL/min
注入量:10μL
蛍光励起波長:330nm
蛍光測定波長:470nm
ポストカラム:反応液;りん酸、酢酸及びフェニルヒドラジンの混液(220:180:6)
反応液流量:0.4mL/min
反応温度:150℃
【0022】
本発明の米飯炒め冷凍食品は、通常、食塩を含有する。米飯炒め冷凍食品の風味の観点から、食塩と果糖との質量比が、食塩100質量部に対し、果糖の含有量が10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることが更に一層好ましい。米飯炒め冷凍食品における食塩の量は、原子吸光光度法から求められるナトリウム量を換算することにより測定することができる。
【0023】
米飯炒め冷凍食品は植物蛋白質を含有することが、果実感のある甘みと香りと、パラパラした食感との両立の点で好ましい。植物蛋白質としては、大豆蛋白質、小麦蛋白質等が挙げられる。大豆蛋白質としては、分離大豆蛋白質や濃縮大豆蛋白質、粒状大豆蛋白質が挙げられる。小麦蛋白質としてはグルテンが挙げられる。植物蛋白質としては、大豆由来蛋白質が好ましく、粒状大豆蛋白質が特に好ましい。粒状大豆蛋白質とは、典型的には「植物性たん白の日本農林規格」(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に規定される粒状植物性たん白のうち、植物性たん白の主原料が、大豆又は脱脂大豆であるものをいう。例としては、原料として脱脂大豆、大豆粉、豆乳粉末、脱脂豆乳粉末、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質などから選択される一種以上を用い、これを二軸エクストルーダー等によって組織化し、成形したものを挙げることができる。形状としては、粒状又はフレーク状に成形したものであり、かつ肉様の組織を有するものをいう。
【0024】
本発明で用いる粒状大豆蛋白質は、乾燥品、あるいは、冷凍品のいずれを用いてもよいが、乾燥品を用いることが好ましい。また、前記粒状大豆蛋白質の大きさとしては、良好に調味液を含ませる点から、10粒の平均長さ0.5~10mmであることが好ましく、1~5mmであることがさらに好ましい。ここでいう長さとは任意の方向からみた形状(輪郭形状)を横断する最大線分の長さを言う。具体的な市販品としては、日清オイリオグループ株式会社製の「ニューソイミー」、「ニューコミテックス」や、不二製油株式会社製の「ニューフジニック」「フジニックエース」などを挙げることができる。粒状大豆蛋白質における蛋白質含量は30質量%以上が好適に挙げられ、30~85質量%であってもよく、35~75質量%であってもよい。
後述する通り、本発明の米飯炒め冷凍食品は、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む植物蛋白質と米飯とを炒めてなることが果実感のある香り及び果実感のある甘味と、パラパラした食感を両立しやすい点で好ましい。リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む植物蛋白質を得るためには、後述する通り、米飯を炒める前に、予めリンゴ果汁及び/又はナシ果汁と植物蛋白質とを混合すればよい。
【0025】
米飯炒め冷凍食品が植物蛋白質を含有する場合、その使用量としては、米飯炒め冷凍食品の全原料中、0.2~1質量%が好ましく、0.3~0.7質量%がより好ましく、0.5~0.6質量%が最も好ましい。
【0026】
以下では、本発明の米飯炒め冷凍食品の好適な製造方法を説明する。下記の製造方法の説明は、上記の米飯炒め冷凍食品の説明として適宜採用することができる。
【0027】
本製造方法は、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を米飯と炒めた後、冷凍する。本製法では、好ましくは、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と肉及び/又は野菜とを混合及び加熱した後に液切りして具材を得る第1工程と、当該具材を米飯と100~350℃の温度で炒める第2工程とを有し、炒め後に冷凍する工程とを有する。
【0028】
第1工程で用いる肉及び/又は野菜における肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉などの畜肉や魚肉等の食肉が挙げられる。
第1工程で用いる肉及び/又は野菜における野菜としては、特に限定されず、ニンジン、ピーマン、タマネギ、パプリカ、キャベツ、レタス、白菜、パセリ、ミツバ、クレソン、トレビス、ホウレン草、ミズナ、小松菜、春菊、シソ、長ねぎ、九条ねぎ、セロリ、アサツキ、もやし、カイワレダイコン、アスパラガス、フキ、ピーマン、トマト、オクラ、アボカド、パパイヤ、大根、ゴボウ、カブ、サツマイモ、じゃがいも、ナス、ナガイモ、ミョウガ、エシャロット、里芋、ブロッコリー、カリフラワー、キノコ類、ニンニク、ショウガ、青梗菜、グリンピース、パクチー、空心菜、クワイ等が挙げられる。
リンゴ果汁、ナシ果汁としては、上記で挙げたものを用いることができる。
【0029】
第1工程において、肉及び/又は野菜の合計量100質量部に対して、リンゴ果汁及びナシ果汁を合計で1質量部以上用いることが、冷凍及び解凍を経ても果実感のある甘み及び香りが容易に得られる点で好ましく、3質量部以上用いることがより好ましく、8質量部以上であることが更に好ましい。また肉及び/又は野菜の合計量100質量部に対して、リンゴ果汁及びナシ果汁の合計量が16質量部以下であることが、米飯炒め食品らしい風味が得られる点で好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
第1工程において、肉と野菜を両方用いる場合、それらの質量比としては、肉100質量部に対して野菜が50~300質量部であることが、バランスの良い香味の実現、具材の均一分散性確保の点で好ましく、100~210質量部であることがより好ましい。
【0031】
第1工程において、リンゴ果汁及びナシ果汁を併用する場合には、両者の質量比は冷凍及び解凍を経ても果実感のある甘み及び香りが容易に得られ、且つ、米飯炒め食品らしい風味を得る点から、リンゴ果汁:ナシ果汁が質量比で前者:後者が100:30~300であることが好ましく、100:50~180であることがより好ましく、100:80~120であることが更に好ましい。
【0032】
第1工程において、リンゴ果汁及びナシ果汁を含む調味料には、リンゴ果汁及びナシ果汁に加えて、果汁以外のショ糖源となる材料を含有させることが冷凍及び解凍を経た後の瞬発力、力強いボディ感のある甘味の実現の点で好ましい。また、果汁以外のブドウ糖源となる材料を含有させることが、冷凍及び解凍を経た後の余韻と複雑さのある甘味とヒキの実現の点から好ましい。ショ糖源となる材料としては砂糖、グラニュー糖が挙げられる。ブドウ糖源となる材料としてはみりん、酒みりんが挙げられる。
【0033】
リンゴ果汁及びナシ果汁を含む調味料は、通常、液体である。リンゴ果汁及びナシ果汁を含む調味料の量は、風味、食感の点で、通常、肉及び/又は野菜100質量部に対し、10~50質量部が好ましく、17~42質量部が更に一層好ましい。
【0034】
前記ショ糖源となる材料の量は、果実感のある甘み及び香味を得る点からリンゴ果汁及び/又はナシ果汁の合計100質量部に対し、400質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。また前記ショ糖源となる材料の量は、冷凍及び解凍を経た後の瞬発力、力強いボディ感のある甘味の実現の点から、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁の合計100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましい。
【0035】
前記ブドウ糖源となる材料の量は、果実感のある甘み及び香味を得る点からリンゴ果汁及び/又はナシ果汁の合計100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。また前記ブドウ糖源となる材料の量は、冷凍及び解凍を経た後の余韻と複雑さのある甘味とヒキの実現の点から、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁の合計100質量部に対し、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。
【0036】
上述した通り、米飯炒め冷凍食品は植物蛋白質を含有することが好ましいところ、上述した通り、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁が含浸された植物蛋白質と米飯とを炒めてなるものであることが、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味液のドリップを適量保持でき、適度に液切りしつつ適度な量の果汁を後の炒め工程に供することができるため、得られる米飯炒め冷凍食品においてパラパラした食感と、果実感のある甘味及び香りを両立できる点で好ましい。特に第1工程において、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と、肉及び/又は野菜と、植物蛋白質とを、混合及び加熱することが、後の液切り工程において調味液のドリップを適量保持でき、前記の効果が得やすいため好ましい。植物蛋白質の使用量は、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁の合計量100質量部に対し、20~320質量部が好適であり、25~140質量部がより好適であり、30~100質量部が更に好適であり、30~70質量部が更に一層好適であり、50~70質量部が特に好適である。混合及び加熱する工程とは、混合後に加熱しても、混合と加熱を同時に行ってもよいが、混合と加熱を同時に行うことが、具材の食感、色調、歩留まり等の点で好ましい。混合と加熱を同時に行う場合、加熱中に継続的に混合してもよく、加熱中に断続的に混合してもよい。特に好ましくは加熱しながら原料を投入し、混合する方法である。
【0037】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と、肉及び/又は野菜とを混合及び加熱するにあたっては、肉及び/又は野菜を事前に炒めるなどした後に、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と混合及び加熱してもよい。好ましくは、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁と、肉及び/又は野菜とを調理具に投入した後、100℃まで達温する前に加熱工程を終了することが、果実感のある風味が得やすい点で好ましく、77~85℃に達温した時点で加熱工程を終了することが好ましい。また、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と肉及び/又は野菜との混合開始から加熱工程終了(後述の液切り)までの時間は30分以上120分以下であることが、果実感のある甘味と香りを十分にする点、及び製造効率の点で好ましく、40分以上70分以下であることがより好ましい。また植物蛋白質を用いる場合、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料及び肉及び/又は野菜と、植物蛋白質との混合開始から加熱工程終了(後述の液切り)までの時間は30分以上120分以下であることが、果実感のある甘味と香りとパラパラ感が一層優れる点で好ましく、40分以上70分以下であることがより好ましい。特にリンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料と肉及び/又は野菜との混合後、得られた混合物に植物蛋白質を混合することが好ましい。
【0038】
リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料で肉及び/又は野菜を加熱調理した後、得られた被加熱物をざる等にあけて液切りし、具材を得る。ここでいう具材とは、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁、及び好ましくは植物蛋白質、を含有する肉及び/又は野菜を指す。液切りは、リンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料が肉及び/又は野菜中に残存するように行うことが好ましく、例えば、使用したリンゴ果汁及び/又はナシ果汁を含む調味料100質量部中、50~80質量部が残存するように行うことがパラパラした食感と、果実感のある甘味と果実感のある香りの両立の点でより好適である。
【0039】
次いで、第2工程では、炒め工程にて、第1工程で得られた具材を米飯と炒める。本工程は100℃以上で行われ、最高到達温度で200~350℃で行うことがパラパラした食感を得る点、及び果実感のある甘味と果実感のある香りを得やすい点で好ましく、250~330℃で行うことがより好ましい。また炒め工程では、予め液卵又はその希釈物を炒め、液卵とともに具材と米飯とを炒めることが、具材や米を液卵でコーティングし適度なパラパラ感と卵風味を付与するとともに、米飯炒め冷凍食品全体の香味に纏まりをもたせる点で好ましい。
炒め時間は、通常、30秒~8分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
【0040】
また、第2工程において、具材を2回以上に分けて添加することで、果実感のある甘味と果実感のある香りを得やすい点で好ましく、その場合、1回目の具材の添加量100質量部に対し、2回目以降の添加量が20~30質量部であることが、好適である。
【0041】
米飯100質量部に対し、具材は12~30質量部用いることがパラパラした食感と、果実感のある甘味と果実感のある香りの両立の点で好適であり、17~25質量部用いることがより好適である。ここでの量は2回以上に分けて具材を添加する場合はその合計量である。
【0042】
更に、本発明は、本明細書で記載の方法で製造した米飯炒め冷凍食品を提供するものである。本発明者は、本明細書の記載によれば、果実感のある甘味及び香りに優れる米飯炒め冷凍食品が得られること、特に、パラパラした食感と、果実感のある甘味及び香りを両立できることを見出した。しかしながら、風味や食感にかかる物性の規定には、新たな分析手法を確立する必要があり、その解析には膨大な時間が必要となる。このように本願において、米飯炒め冷凍食品を本明細書の記載を超えて物の構成として規定することには、不可能又は非実際的な事情が存在した。
【0043】
以上、本発明をその好ましい態様に基づき適宜説明したが、本発明は上記記載に限定されない。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0045】
(実施例1)
(第1工程)
混合及び加熱のための装置として、撹拌槽の内部に加熱蒸気を注入して加熱可能な蒸気ニーダーを用いた。当該ニーダーにて、油3部、ガーリックペースト及び生姜ペーストの合計11部を加熱し、豚バラ肉100部を投入し、肉が加熱により変色するまで加熱した。玉ねぎ及び人参の合計130部、調味液96部、植物蛋白質(粒状大豆蛋白質不二製油株式会社製の「フジニックエース500」、10粒の平均長さ3~4mm)16部の順に投入し、加熱しながら攪拌した。内容物の温度が70℃に達温した時点で、パプリカ60部、いりごま6部を投入して混合した。内容物の温度が80℃となるまで加熱し、ニーダーの蒸気を止めてニーダーのジャケットに冷水を入れて粗熱をとり、内容物をざるで軽く液切りしてバットにとり、加熱済み具材とした。調味液96部のうち60~70部程度が具材に残存していた。調味液96部中には、酒みりん4部、砂糖20部、ナシ果汁(和ナシ4倍濃縮混合果汁、青葉化成)12部、リンゴ果汁(リンゴ5倍透明濃縮果汁、ゴールドパック)12部が含まれていた。調味液と肉の混合から、液切りまでの時間は凡そ60分であった。また、植物蛋白質投入から、液切りまでの時間は凡そ40~60分であった。
【0046】
(第2工程)
炒め装置にて、炒め油6部を投入し、希釈液卵23部を炒め、更に、味付け済み炊飯米150部、上記加熱済み具材25部、香味油及び調味液の合計9部を投入して最高到達温度250~330℃で凡そ5分間炒めた。次いで青ネギ4部、上記加熱済み具材7部を投入して混合した後、冷却後、急速冷凍した。その後、袋詰めして更に冷凍し、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.53g/100g、ブドウ糖の含有量が0.58g/100g、ショ糖の含有量は1.26g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:42であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0047】
(実施例2)
実施例1の第1工程で用いた調味液96部のうち、リンゴ果汁12部を5部に、ナシ果汁を12部から5部に、それぞれ変更し、調味液を82部とした。それ以外は実施例1と同様にして、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.42g/100g、ブドウ糖の量が0.52g/100g、ショ糖の含有量は1.33g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:32であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0048】
(実施例3)
実施例1の第1工程で用いた調味液96部のうち、リンゴ果汁を用いず、ナシ果汁12部から5部に変更し、調味液を77部とした。それ以外は実施例1と同様にして、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.39g/100g、ブドウ糖の含有量が0.53g/100g、ショ糖の含有量は1.40g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:28であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0049】
(実施例4)
実施例1の第1工程で用いた調味液96部のうち、リンゴ果汁を用いず、ナシ果汁12部に変更し、調味液を84部とした。それ以外は実施例1と同様にして、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.43g/100g、ブドウ糖の含有量が0.55g/100g、ショ糖の含有量は1.44g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:30であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0050】
(実施例5)
実施例1の第1工程で用いた調味液96部のうち、ナシ果汁を用いず、リンゴ果汁12部に変更し、調味液を84部とした。それ以外は実施例1と同様にして、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.49g/100g、ブドウ糖の含有量が0.57g/100g、ショ糖の含有量は1.38g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:36であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0051】
(比較例1)
実施例1の第1工程で用いた調味液96部のうち、ナシ果汁とリンゴ果汁を用いず、砂糖44質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、冷凍炒飯を得た。得られた冷凍炒飯の果糖の含有量は0.33g/100g、ブドウ糖の含有量が0.45g/100g、ショ糖の含有量は1.63g/100gであり、ショ糖と果糖との比率は100:20であった。食塩の量は1.5質量%であった。
【0052】
上記の各米飯炒め冷凍食品100gを電子レンジで500Wで4分間加熱した。
パネラー3名で喫食し、以下の評価項目を以下の評価基準で評価させた。3名の平均点を表2に示す。
【0053】
(果実感のある甘味)
5 果物由来の甘味と濃厚さに加え、コクも感じられる。
4 果物由来の甘味に加え、コクも少し感じられる。
3 果物由来の甘味は感じられる。
2 果物由来の甘味をあまり感じられない。
1 果物由来の甘味を感じない。
【0054】
(果実感のある香り)
5 果汁由来の香りを非常に強く感じられる。
4 果汁由来の香りを強く感じられる。
3 果汁由来の香りが感じられる。
2 果汁由来の香りが弱く感じられる。
1 果汁由来の香りを感じない。
【0055】
(風味の総合評価)
5 果汁の風味と炒飯の炒めの風味の双方の風味が強く感じられる。
4 果汁の風味と炒飯の炒めの風味の双方の風味が感じられる。
3 果汁以上に炒飯の炒めの風味が感じられる。
2 果汁の風味があまり感じられず、炒飯の炒めの風味もあまり感じられない。
1 果汁の風味も炒飯の風味も感じない。
【0056】
(パラパラした食感)
5 米粒同士が離れパラパラしている食感。
4 米粒からなる小さな塊はあるもののパラパラしている食感。
3 米粒からなる大きな塊も存在する食感。
2 炊飯米ほどではないが水分が多くパラパラしていない食感。
1 炊飯した米以上に水分を有する食感。
【0057】
【0058】
上記の通り、本発明の米飯炒め冷凍食品は、果実感のある甘味と果実感のある香りが良好であった。