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特開2024-97764内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097764
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223066
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】63/478,812
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 直輝
(72)【発明者】
【氏名】樋高 裕也
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK06
4C160KK13
4C160KK57
4C160MM43
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN11
(57)【要約】
【課題】可撓性を低下させず、処置具の先端構造を切り替えて、局注処置や切開・剥離処置や止血処置などの複数の処置を実施できる内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法を提供する。
【解決手段】内視鏡用処置具は、長手方向に延びる樹脂製のシースと、前記シースに対して進退可能に挿入され、管路を有する金属製のロッドと、前記ロッドを挿通可能な挿通孔と、前記挿通孔に配置されて前記ロッドの先端を係止可能な第一保持部と、を有する絶縁部材と、前記絶縁部材を前記シースの先端に係止可能な第二保持部と、を備え、前記第一保持部が前記ロッドの前記先端を係止する第一保持力は、前記第二保持部が前記絶縁部材を係止する第二保持力よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる樹脂製のシースと、
前記シースに対して進退可能に挿入され、管路を有する金属製のロッドと、
前記ロッドを挿通可能な挿通孔と、前記挿通孔に配置されて前記ロッドの先端を係止可能な第一保持部と、を有する絶縁部材と、
前記絶縁部材を前記シースの先端に係止可能な第二保持部と、
を備え、
前記第一保持部が前記ロッドの前記先端を係止する第一保持力は、前記第二保持部が前記絶縁部材を係止する第二保持力よりも大きい、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記挿通孔は、前記第一保持部が配置された保持領域と、それ以外の残領域とを有し、
前記ロッドの前記先端が前記保持領域に位置するとき、前記絶縁部材は前記ロッドに接続され、
前記ロッドの前記先端が前記残領域に位置するとき、前記絶縁部材は前記ロッドに対して解放され、前記ロッドは前記絶縁部材に対して進退可能である、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記残領域は、前記保持領域である第二領域よりも先端側の第一領域を有し、
前記第一領域に位置する前記ロッドの前記先端は、前記絶縁部材よりも前記先端側に突没可能である、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記残領域は、前記第二領域よりも基端側の第三領域をさらに有し、
前記第二領域に位置する前記ロッドの前記先端は、前記ロッドの前記先端に対して前記基端側へ加わる力が前記第一保持力よりも大きいとき、前記第二領域から前記第三領域へ移動可能である、
請求項3に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記絶縁部材は、前記挿通孔を囲う内周面を有する略円筒状であり、
前記第一保持部は、前記ロッドの前記先端を前記長手方向において挟み込んで前記ロッドを係止する、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記第一保持部は、前記ロッドを挿通可能な略円筒状の弾性部材で形成されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記第二保持部は、前記シースの先端側の開口から前記シースの中心軸側へ延びる爪であり、
前記絶縁部材の外周面には、前記爪と係合する溝形状を有する、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記絶縁部材と前記シースとを接続する接続部材をさらに備える、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記ロッドは、
前記長手方向に延びる略円筒状のロッド本体と、
前記ロッドの前記先端に設けられ、直径が前記ロッド本体の直径より大きい略円筒状のフランジと、
を有し、
前記フランジの先端側および基端側の全周は、面取りされている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の内視鏡用処置具と、
前記ロッドに高周波電流を供給する高周波電源と、
前記内視鏡用処置具と、前記高周波電源とを接続して前記高周波電流を通電可能なケーブルと、
を備える、
内視鏡用処置具システム。
【請求項11】
シースと、前記シースに対して進退可能に挿入されたロッドと、前記ロッドの先端を係止可能な第一保持部を有する絶縁部材と、を備える内視鏡用処置具の操作方法であって、
前記第一保持部より先端側の第一領域から前記第一保持部が配置された第二領域へ前記ロッドの前記先端を移動させ、前記ロッドと前記絶縁部材とを接続するステップと、
前記第二領域に位置する前記ロッドの前記先端を前記先端側へ移動させ、前記シースと前記絶縁部材との接続を解除するステップと、
前記第二領域から前記第一保持部よりも基端側の第三領域へ前記ロッドの前記先端を移動させ、前記ロッドと前記絶縁部材との接続を解除するステップと、
を備える、
内視鏡用処置具の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法に関する。
本願は、2023年1月6日に米国に出願された米国仮特許出願第63/478,812号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具や局注用の内視鏡用処置具や止血用の内視鏡用処置具等が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる内視鏡用高周波処置具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-240380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高周波ナイフでは、先端から基端にかけて外部シースの内部に別のシース(第1の電極用駆動シース)が挿通されているため、可撓性が低下してしまう可能性があった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、可撓性を低下させず、処置具の先端構造を切り替えて、局注処置や切開・剥離処置や止血処置などの複数の処置を実施できる内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る内視鏡用処置具は、長手方向に延びる樹脂製のシースと、前記シースに対して進退可能に挿入され、管路を有する金属製のロッドと、前記ロッドを挿通可能な挿通孔と、前記挿通孔に配置されて前記ロッドの先端を係止可能な第一保持部と、を有する絶縁部材と、前記絶縁部材を前記シースの先端に係止可能な第二保持部と、を備え、前記第一保持部が前記ロッドの前記先端を係止する第一保持力は、前記第二保持部が前記絶縁部材を係止する第二保持力よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
可撓性を低下させず、処置具の先端構造を切り替えて、局注処置や切開・剥離処置や止血処置などの複数の処置を実施できる内視鏡用処置具、内視鏡用処置具システムおよび内視鏡用処置具の操作方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
図3】同処置具の先端部の斜視図である。
図4】同処置具の先端部の側面図である。
図5】同処置具の先端部の断面図である。
図6】同処置具の先端部の斜視図である。
図7】同処置具の先端部の側面図である。
図8】同処置具の先端部の断面図である。
図9】同処置具の操作部の断面図である。
図10】同処置具の先端部の断面図である。
図11】同処置具の先端部の断面図である。
図12】同処置具の先端部の断面図である。
図13】同処置具の先端部の断面図である。
図14】同処置具のフランジの変形例を示す図である。
図15】同処置具のロッドの変形例を示す図である。
図16】第二実施形態に係る処置具を示す全体図である。
図17】同処置具の先端部の斜視図である。
図18】同処置具の先端部の斜視図である。
図19】同処置具の先端部の断面図である。
図20】同処置具の操作部の断面図である。
図21図20に示すX-X線に沿う同操作部の断面図である。
図22】同処置具の部分シースの変形例を示す図である。
図23】同処置具の部分シースの変形例を示す図である。
図24】同処置具の部分シースの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、図1から図15を参照して説明する。図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0011】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備えている。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた内視鏡操作部207と、を備える。
【0013】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配置されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0014】
撮像部203は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100のロッド2を撮像することができる。
【0015】
湾曲部204は、操作者による内視鏡操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0016】
内視鏡操作部207は、軟性部205に接続されている。内視鏡操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0017】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具(内視鏡用処置具)100は、シース1と、ロッド2と、絶縁部材3と、操作ワイヤ4(図5参照)と、操作部5と、を備える。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側A1」、操作部5側を「基端側A2」という。
【0018】
シース1は、可撓性および絶縁性を有し、先端1aから基端1bまで延びる長尺な樹脂製の部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。
【0019】
図3は、処置具100の先端部の斜視図である。
シース1の先端1aには、絶縁部材3が係止(保持)されている。絶縁部材3は、長手方向Aに貫通する挿通孔31aを有する絶縁チップ31と、挿通孔31aに設けられた第一保持部32とを有する。挿通孔31aには、ロッド2が挿入されている。
【0020】
図4は、処置具100の先端部の側面図である。
ロッド2は、シース1に対して進退可能に挿入された金属製の丸棒状の部材であり、絶縁部材3の挿通孔31aから先端側A1に突没可能に設けられている。なお、丸棒状とは、厳密に丸棒である必要は無い。ロッド2は、例えば、ステンレスなどの素材により形成されている。ロッド2は、導電性を有し、高周波電流が通電される。ロッド2は、ロッド本体20と、フランジ21と、を有する。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と一致している。なお、中心軸O1と中心軸O2とは、厳密に一致していなくてもよい。
【0021】
図5は、処置具100の先端部の断面図である。
ロッド本体20は、長手方向Aに延びる金属製の円筒状の部材である。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。ロッド本体20の基端には操作ワイヤ4が取り付けられている。ロッド本体20は、操作部5と接続された操作ワイヤ4から供給される高周波電流をフランジ21に供給する。操作ワイヤ4からロッド2に高周波電流が供給されると、ロッド本体20およびフランジ21は、高周波電流を生体組織へ出力するモノポーラ電極として機能する。
【0022】
フランジ21は、ロッド本体20の先端に設けられた円筒状の導電部材である。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。長手方向Aに沿った方向から見た正面視において、フランジ21の外周は、ロッド本体20の外周と同心円状に形成されている。図4に示すように、フランジ21の直径(径方向Rにおける長さ)L1は、ロッド本体20の直径(径方向Rにおける長さ)L2よりも大きい。
【0023】
ロッド本体20およびフランジ21は、長手方向Aに沿って延びる管路である第一送水管路22を有する。第一送水管路22は、フランジ21に形成された先端開口22aに連通している。先端開口22aは先端側A1に開口している。
【0024】
絶縁部材3は、セラミック等の絶縁性を有する材質で形成された円筒状の絶縁チップ31と、絶縁チップ31の内周面に囲われた挿通孔31aに設けられた第一保持部32とを有する。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。絶縁部材3は、第二保持部1cによってシース1の先端部に係止(保持)されている。
挿通孔31aには、第一保持部32が配置された領域である保持領域(第二領域R2)と、それ以外の領域である残領域とが形成されている。また、残領域は、第二領域R2よりも先端側A1の第一領域R1と、第二領域R2よりも基端側A2の第三領域R3と、を有する。
【0025】
絶縁チップ31は、基端側A2の外周面が径方向Rに凹んだ溝形状である溝部31bが形成されている。また、シース1の先端1aには、シース1の開口からシース1の中心軸O1側へ延びる爪形状である第二保持部1cが形成されている。絶縁部材3は、絶縁チップ31の溝部31bと、シース1の第二保持部1cとが係合してシース1の先端に保持されている。
【0026】
溝部31bおよび第二保持部1cは、絶縁部材3をシース1に着脱可能に取り付けできる形状をしていればよく、溝部31bは、絶縁チップ31の外周における周方向Cの全周に形成されていてもよいし、一部のみに形成されてもよい。また、第二保持部1cは、シース1の開口の周方向Cにおける全周に形成されてもよいし、一部のみに形成されてもよい。溝部31bおよび第二保持部1cにおいて、形成される範囲や形状等を調整することで、シース1が絶縁部材3を保持する力を調整できる。
【0027】
また、シース1の先端1aにおいて、絶縁部材3より基端側A2にはストッパー33が設けられている。ストッパー33は、絶縁部材3に対して基端側A2に力が加わったとき、絶縁部材3における基端側A2への移動を制限し、絶縁部材3が基端側A2へ移動するのを抑制する部材である。ストッパー33には、樹脂や金属等を用いることができるが、ストッパー33は、絶縁性を有する材質で形成されるのが望ましい。
【0028】
ストッパー33は、シース1の中心軸O1と中心軸が一致する円筒状の部材である。なお、中心軸O1と、ストッパー33の中心軸とは、厳密に一致していなくてもよい。また、ストッパー33の内周面に囲われた開孔には、ロッド本体20が挿入されている。
【0029】
第一保持部32は、ロッド2の先端に設けられたフランジ21を係止(保持)可能な部材である。第一保持部32は、挿通孔31aの第二領域R2に配置されている。第一保持部32がロッド2の先端を係止(保持)する保持力(第一保持力)は、第二保持部1cが絶縁部材3を保持する保持力(第二保持力)よりも大きい。
【0030】
図6は、第一保持部32がフランジ21を保持した状態の処置具100の先端部の斜視図である。また、図7は、図6の状態の処置具100の先端部の側面図である。図6および図7において、絶縁部材3は、シース1との接続が解除され、ロッド2の先端に接続されている。
【0031】
図8は、図6の状態の処置具100の先端部の断面図である。絶縁部材3は、第一保持部32がフランジ21を係止(保持)することでロッド2の先端に取り付けられている。また、第一保持部32がフランジ21を保持しているとき、絶縁部材3の先端は、ロッド2の先端よりも先端側A1に位置している。
【0032】
第一保持部32は、絶縁チップ31の挿通孔31aに設けられ、樹脂材等の弾性部材で形成された円筒状の部材である。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。第一保持部32は、フランジ21を長手方向Aにおいて挟み込んで、ロッド2の先端を保持している。
【0033】
第一保持部32は、例えば、絶縁チップ31の中心軸側に延びる凸形状を先端側A1および基端側A2に有する。第一保持部32は、長手方向Aにおいて、この凸形状でフランジ21を挟み込むことで、ロッド2の先端を保持する。第一保持部32が配置された保持領域にロッド2の先端が位置するとき、第一保持部32がロッド2の先端を保持し、絶縁部材3は、ロッド2に接続されている。第一保持部32が配置されていない残領域にロッド2の先端が位置するとき、ロッド2の先端は第一保持部32に保持されていないため、絶縁部材3はロッド2に対して解放され、ロッド2は絶縁部材3に対して進退可能である。
【0034】
ロッド2の先端が第一領域R1に位置するとき、ロッド2の先端は、第一保持部32に保持されていないため、絶縁部材3よりも先端側A1に突没可能である。また、ロッド2の先端が第二領域R2に位置するとき、ロッド2の先端に対して基端側A2へ加わる力が、第一保持部32がロッド2の先端を保持する保持力(第一保持力)よりも大きいとき、ロッド2の先端は、第二領域R2から第三領域R3へ移動可能である。
【0035】
第一保持部32は、ロッド2の先端を保持できる形状を有していればよく、例えば、弾性を利用したスナップフィット構造等を採用できる。第一保持部32は、摩擦力を利用してロッド2の先端を保持する構造でもよい。第一保持部32とフランジ21とは、ロッド2を長手方向Aに進退させることで接続又は解放できる。ロッド2の長手方向Aにおける進退については後述する。
【0036】
操作ワイヤ4は、シース1の内部空間1sを挿通するシャフトであり、コイルシャフト40と、チューブ41と、を有する。操作ワイヤ4の先端はロッド2に接続され、操作ワイヤ4の基端は操作部5に接続されている。なお、操作ワイヤ4は、中空のシャフトであれば他の態様であってもよい。
【0037】
コイルシャフト40は、金属製のコイルワイヤである。コイルシャフト40は、例えばステンレスなどの素材により形成されている。コイルシャフト40の内部には、第二送水管路42が形成されている。第二送水管路42は、第一送水管路22の基端に連結されている。
【0038】
チューブ41は、コイルシャフト40の外周部分に設けられたチューブであり、例えば熱収縮チューブである。コイルシャフト40の外周部分にチューブ41を被せることにより、第二送水管路42から液体が漏れない。
【0039】
ここで、本明細書において、図8に示すようにロッド2の先端に絶縁部材3が接続された状態の処置具100を、「ITナイフ」と称する。ITナイフ状態の処置具100において、ロッド2の先端は絶縁性を有する絶縁部材3で覆われているため、高周波電流が供給された場合、ロッド本体20がモノポーラ電極として機能する。
【0040】
また、図5に示すようにロッド2の先端が絶縁部材3で覆われていない状態の処置具100を、「針状ナイフ」と称する。針状ナイフ状態の処置具100において、高周波電流が供給された場合、ロッド本体20およびフランジ21がモノポーラ電極として機能する。
【0041】
操作部5は、図1および図2に示すように、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、液体供給口54と、を有する。
【0042】
図9は、操作部5の断面図である。
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間を有している。操作ワイヤ4は、シース1の内部空間1sおよび操作部本体51の内部空間5sを通過してスライダ52まで延びている。
【0043】
スライダ52は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52は、操作部本体51と連結されたシース1に第一Оリング52aを介して取り付けられている。スライダ52には、操作ワイヤ4の基端4bが取り付けられている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、操作ワイヤ4およびロッド2が進退する。
【0044】
給電コネクタ53は、スライダ52に固定されている。給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、導電ワイヤ53wを経由して操作ワイヤ4の基端部と接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、操作ワイヤ4を経由してロッド2に供給可能である。高周波電源装置と給電コネクタ53は、例えば、高周波電流を通電可能なケーブルで接続され、このケーブルを介して、高周波電源装置から給電コネクタ53へ高周波電源が給電される。
【0045】
液体供給口54は、スライダ52に設けられている。液体供給口54は、スライダ52に形成された第三送水管路56を経由して第二送水管路42の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、第三送水管路56、第二送水管路42および第一送水管路22を通過して先端開口22aから放出される。
【0046】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の局注処置、切開・剥離処置および止血処置について説明する。
【0047】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定する。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)内に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。
【0048】
<挿入ステップ>
術者は処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。図10は、挿入ステップにおける処置具100の先端部の断面図である。挿入ステップにおいて、絶縁部材3は、シース1に保持されている。また、ロッド2の先端は第一領域R1に位置し、第一保持部32は、ロッド2の先端を保持していないため、ロッド2の先端は、絶縁部材3よりも先端側A1に突没可能である。
【0049】
<局注ステップ>
次に、術者は、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ロッド2を突出させて図5に示す状態(針状ナイフ)にする。このとき、第一保持部32はフランジ21を保持しておらず、かつ、絶縁部材3はシース1に保持されているため、ロッド2は、シース1および絶縁部材3に対して前進する。術者は、高周波電流を通電させた状態のフランジ21を移動させて、病変部において局注用の液体(局注液)を注入する箇所を切開して貫通させ、粘膜下層の中にロッド2の先端の先端開口22aを入れた状態で送水する(局注ステップ)。
【0050】
<切開・剥離ステップ>
次に、術者は、切開・剥離処置を行う。術者は、スライダ52を操作部本体51に対して相対的に後退させ、第一保持部32にロッド2の先端を保持させる。このとき、ロッド2が基端側A2へ引かれる力が、ロッド2の先端が第一保持部32から先端側A1へ受ける力よりも大きいとき、ロッド2の先端は、第一領域R1から第二領域R2へ移動する。第一保持部32は弾性部材で形成されているため、フランジ21は、絶縁チップ31の中心軸側に延びる第一保持部32の凸形状において、先端側A1の凸形状を弾性変形させながら後退し、長手方向Aにおいて第一保持部32に挟み込まれて保持される。
【0051】
術者は、第一保持部32がフランジ21を保持した図11の状態から、スライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させる。このとき、絶縁部材3の第一保持部32がロッド2の先端を保持する第一保持力は、シース1の第二保持部1cが絶縁部材3を保持する第二保持力よりも大きい。そのため、先端側A1へ押されたロッド2の先端と第一保持部32との接続が解除されるよりも先に、絶縁部材3とシース1との接続が解除される。その結果、スライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させてロッド2が前進するとき、ロッド2の先端は第二領域R2から第一領域R1へ移動せずに第二領域R2に留まり、ロッド2の先端と絶縁部材3とが接続されたままシース1と絶縁部材3との接続が解除され、絶縁部材3がロッド2とともに前進して、処置具100の先端は図8の状態(ITナイフ)になる。
【0052】
術者は、高周波電流を通電させた状態で絶縁部材3およびロッド2を移動させて、ロッド本体20を用いて病変部の粘膜を切開する。このとき、ロッド2の先端には絶縁部材3が接続されているため、術者は、絶縁部材3を粘膜に押し当てて、弛んだ粘膜を引っ張った状態でロッド本体20によって切開できる。また、絶縁部材3は絶縁性を有するため、切開する部位の周辺の生体組織を傷つけるのを抑制できる。
【0053】
また、術者は、絶縁部材3およびロッド2を移動させて、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0054】
<止血ステップ>
切開・剥離処置において出血した場合、術者は止血処置を行う。術者は、スライダ52を操作部本体51に対して相対的に後退させる。絶縁部材3およびロッド2が後退して、絶縁部材3の基端側A2が、ストッパー33の先端側A1と接触する。このとき、第二領域R2に位置するロッド2の先端が基端側A2へ引かれる力が、第一保持部32がロッド2の先端を保持する第一保持力よりも大きいとき、ロッド2の先端は、第二領域R2から第三領域R3へ移動可能である。
【0055】
絶縁部材3がストッパー33と接触した状態で、ロッド2に対して基端側A2へ第一保持力よりも大きい力を加えてロッド2をさらに後退させると、ロッド2は、ストッパー33によって基端側A2への移動を制限された絶縁部材3に対して相対的に後退し、第一保持部32の基端側A2の凸形状を弾性変形させながら後退する。その結果、第一保持部32とフランジ21との接続が解除され、図12に示す状態になる。このとき、絶縁チップ31の溝部31bとシース1の第二保持部1cとは、再び嵌合されてもよいが、嵌合されなくてもよい。
【0056】
溝部31bと第二保持部1cとが再び嵌合されない場合、絶縁部材3とロッド2との接続が解除されると、絶縁部材3がシース1の先端1aから脱落し、図13に示す状態になる。このとき、絶縁部材3が消化管内に取り残されないようにするため、シース1と絶縁部材3とは、紐部材等の接続部材(不図示)によって接続されているのが望ましい。
【0057】
また、図12に示す状態において、溝部31bと第二保持部1cとが再嵌合されている場合、ロッド2を前進させてフランジ21によって第一保持部32を押出すことで、絶縁部材3をシース1の先端1aから脱落させてもよい。例えば、ロッド2の先端を前進させて第三領域R3から第二領域R2へ移動させようとするとき、第一保持部32がロッド2の先端から先端側A1へ受ける力は、第二保持部1cが絶縁部材3を保持する第二保持力よりも大きい。その結果、ロッド2の先端は第三領域R3から第二領域R2へ移動せず、シース1と絶縁部材3との接続が解除され、絶縁部材3はシース1の先端1aから脱落する。
【0058】
ロッド2の先端から絶縁部材3を取り外すことで、処置具100の先端は、フランジ21が露出した針状ナイフになる。術者は、図13の状態の処置具100において、スライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させて、ロッド2を前進させ、ロッド本体20およびフランジ21を押し当てながら高周波電流による通電で出血点を焼灼して止血する(止血ステップ)。
【0059】
術者は、止血処置の前又は後に、絶縁部材3が脱落して針状ナイフとなった処置具100を用いて、再び局注処置や切開・剥離処置を行ってもよい。また、再びITナイフで処置を行う場合、術者は、内視鏡200の挿入部202を消化管から抜去する。このとき、ロッド2から取り外された絶縁部材3はシース1と接続部材で接続されているため、絶縁部材3は、消化管内に取り残されずに挿入部202とともに消化管から取り出される。術者は、絶縁部材3をシース1の第二保持部1c又はロッド2の先端に取り付けて、処置具100の先端を図10又は図11の状態にして再び消化管に挿入し、フランジ21が絶縁部材3で覆われたITナイフを使用して切開・剥離を行うことができる。また、絶縁部材3に血液や粘液が固着している場合、術者は、処置具100の先端に取り付ける絶縁部材3を新しいものへと交換することができる。
【0060】
術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0061】
本実施形態に係る処置具100によれば、処置具100の先端構造を容易に切り替えて、局注処置や切開・剥離処置や止血処置などの複数の処置を実施できる。また、本実施形態に係る処置具100によれば、シース1における可撓性の低下を抑制できる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0063】
(変形例1-1)
上記実施形態において、フランジ21の形状は円筒形状である。しかしながら、フランジ21の態様はこれに限定されない。フランジ21は、先端側A1および基端側A2の全周が面取りされた円筒状でもよい。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。第一領域R1、第二領域R2、第三領域R3を移動するフランジ21において、外周を面取りした形状にすることで、フランジ21と第一保持部32との引っ掛かりが少なくなり、より小さい力でロッド2を前進又は後退させることができる。
【0064】
(変形例1-2)
上記実施形態において、ロッド2の先端には円筒状のフランジ21が設けられている。しかしながら、ロッド2の態様はこれに限定されない。図14は、フランジ21の変形例であるフランジ21Aを示す図である。フランジ21Aは、先端側A1から見た正面視において三角形状に形成されている。第一保持部32は、ロッド2の先端を保持できる形状を有していればよく、例えば、三角形状のフランジ21Aにおける三辺を長手方向Aにおいて挟み込む形状を有することで、フランジ21Aを保持できる。
【0065】
(変形例1-3)
上記実施形態において、ロッド2の先端にはフランジ21が設けられている。しかしながら、ロッド2の態様はこれに限定されない。図15は、ロッド2の変形例であるロッド2Aを示す図である。ロッド2Aの先端部24は、フック形状に形成されている。先端部24には、先端側A1に開口する先端開口22aが形成されている。第一保持部32は、ロッド2Aの先端を保持できる形状を有していればよく、例えば、ロッド2Aの先端部24における屈曲した先端を長手方向Aにおいて挟み込む形状を有することで、ロッド2Aを保持できる。
【0066】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Bについて、図16から図24を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0067】
[処置具100B]
図16は、処置具100Bを示す全体図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Bは、第一実施形態の処置具100と同様、内視鏡200とともに内視鏡処置システムを構成する。処置具100Bは、シース1と、ロッド2Bと、絶縁部材3Bと、操作ワイヤ4と、操作部5Bと、を備える。
【0068】
図17は、処置具100Bの先端部の斜視図である。
シース1の先端1aには、絶縁部材3Bが進退可能に挿入されている。絶縁部材3Bは、長手方向Aに貫通する挿通孔31Baを有する絶縁チップ31Bと、絶縁チップ31Bの基端側A2に接続された円筒状の部分シース34Bとを有する。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。挿通孔31Baと部分シース34Bの中空部分には、ロッド2Bが挿入されている。
【0069】
ロッド2Bは、シース1および絶縁部材3Bに対して進退可能な金属製の丸棒状の部材であり、絶縁部材3Bの挿通孔31Baから先端側A1に突没可能に設けられている。なお、丸棒状とは、厳密に丸棒である必要は無い。ロッド2Bは、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ロッド2Bは、導電性を有し、高周波電流が通電される。ロッド2Bは、ロッド本体20Bと、フランジ21と、を有する。ロッド2Bの長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と一致している。なお、中心軸O1と中心軸O2とは、厳密に一致していなくてもよい。また、ロッド本体20Bおよびフランジ21は、第一送水管路22を有する。
【0070】
ロッド本体20Bは、長手方向Aに延びる金属製の円筒状の部材である。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。ロッド本体20Bの基端には操作ワイヤ4が取り付けられている。ロッド本体20Bは、操作部5Bと接続された操作ワイヤ4から供給される高周波電流をフランジ21に供給する。操作ワイヤ4からロッド2Bに高周波電流が供給されると、ロッド本体20Bおよびフランジ21は、高周波電流を生体組織へ出力するモノポーラ電極として機能する。
【0071】
ロッド本体20Bは、突起部20Baを有する。
突起部20Baは、ロッド本体20Bの外周面に設けられ、径方向Rへ突き出した突起形状である。突起部20Baは、1つの面がロッド本体20Bの外周面に接続された直方体状である。なお、直方体状とは、厳密に直方体である必要は無い。
【0072】
絶縁チップ31Bは、セラミック等の絶縁性を有する材質で形成された円筒状の部材である。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。
部分シース34Bは、金属等の導電性を有する材質で形成されている。また、部分シース34Bは、長手方向Aに延びる切れ込みであるスリット34Baと、スリット34Baと連続して設けられた切り欠きである段差部34Bbと、を有する。スリット34Baは、部分シース34Bを径方向Rに貫通した貫通孔であってもよい。
【0073】
ロッド2Bは、部分シース34Bに対して周方向Cに回転可能である。図17は、ロッド2Bが部分シース34Bに対して第一角度P1に位置するときの斜視図である。ロッド2Bが第一角度P1のとき、突起部20Baは、スリット34Baの範囲に配置されている。そのため、長手方向Aにおいて、突起部20Baと部分シース34Bとは接触せず、ロッド2Bは、部分シース34Bに対して長手方向Aに進退可能である。
【0074】
図18は、ロッド2Bが部分シース34Bに対して第二角度P2に位置するときの処置具100Bの先端部の斜視図である。ロッド2Bは、部分シース34Bに対して、少なくとも第一角度P1から第二角度P2までの範囲を周方向Cに回転可能である。ここで、第一角度P1および第二角度P2は、部分シース34Bに対するロッド2Bの角度(位置)である。
【0075】
図19は、図18の状態の処置具100Bの先端部の断面図である。
突起部20Baは、ロッド2Bが第二角度P2のとき、部分シース34Bの基端側A2が切り欠かれた段差部34Bbに位置する。このとき、図19に示すように、ロッド2Bの先端よりも絶縁チップ31Bの先端が先端側A1に位置している。また、突起部20Baは、径方向Rにおいて、部分シース34Bと接触可能な高さを有する。そのため、第二角度P2に位置する突起部20Baの先端側A1は、部分シース34Bの段差部34Bbと接触する。
【0076】
絶縁部材3Bは、図19に示すように、フランジ21の基端側A2の面と長手方向Aにおいて対向して接触可能な第一当接部35Bを有する。第一当接部35Bは、絶縁チップ31Bの基端側A2において、外周から絶縁チップ31Bの中心軸側へ延びる部位である。
【0077】
ロッド2Bが第一角度P1のとき、突起部20Baは、スリット34Baの範囲に配置されているため、ロッド2Bは、シース1および絶縁部材3Bに対して長手方向Aに進退可能である。そのため、ロッド本体20Bおよびフランジ21を絶縁部材3Bよりも先端側A1に突没可能であり、ロッド本体20Bおよびフランジ21がモノポーラ電極として機能する針状ナイフとして用いることができる。
【0078】
また、部分シース34Bの外周には、第二Oリング36Bが設けられている。第二Oリング36Bは、シース1の内周面および部分シース34Bの外周面と接触している。第二Oリング36Bは、ゴム材等の材質で形成され、シース1に対して部分シース34Bを摩擦力によって保持している。本実施形態において、処置具100Bは2つの第二Oリング36Bを有するが、第二Oリング36Bの数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0079】
第一角度P1に位置して長手方向Aに進退するロッド2Bや、周方向Cに回転するロッド2Bにおいて、ロッド本体20Bの外周面と部分シース34Bの内周面との間に発生する摩擦力等によって部分シース34Bがロッド2Bから力を受ける場合、第二Oリング36Bがシース1に対して部分シース34Bを保持する保持力が、部分シース34Bがロッド2Bから受ける力よりも大きいため、部分シース34Bにおけるシース1に対する移動は抑制される。
【0080】
ロッド2Bが第二角度P2のとき、突起部20Baは、段差部34Bbに配置されている。段差部34Bbは、スリット34Baと周方向Cに連続した開口である。そのため、ロッド2Bを周方向Cに回転させることで、突起部20Baが、スリット34Baから段差部34Bbへ移動する。このとき、ロッド2Bは、第一角度P1から第二角度P2へ回転する。
【0081】
部分シース34Bは、第二Oリング36Bによってシース1の内周面に保持されている。第二角度P2におけるロッド2Bが先端側A1へ前進するとき、突起部20Baの先端側A1の面は、段差部34Bbの基端側A2の面に押し当たる。このとき、突起部20Baが段差部34Bbを先端側A1へ押す力が、絶縁部材3Bが第二Oリング36Bによってシース1に保持される力よりも大きいため、絶縁部材3Bは、突起部20Baに押されて、ロッド2Bとともに先端側A1へ前進する。
【0082】
このとき、絶縁チップ31Bの先端がロッド2Bの先端よりも先端側A1に位置し、フランジ21の外周は絶縁チップ31Bに囲われている。また、部分シース34Bは導電性を有するため、ロッド2Bに供給された高周波電流は、部分シース34Bと突起部20Baとの接触箇所を介して部分シース34Bへ供給される。そのため、部分シース34Bがモノポーラ電極として機能するITナイフとして用いることができる。
【0083】
部分シース34Bの長手方向Aにおける長さは30mm以下が望ましい。部分シース34Bが挿入された範囲のシース1は可撓性が低下するため、部分シース34Bの長さを30mm以下とすることで、シース1における可撓性の低下を抑制できる。
【0084】
第二角度P2に位置するロッド2Bを基端側A2へ移動させると、フランジ21の基端側A2の面と、第一当接部35Bの先端側A1の面とが接触し、絶縁部材3Bは、フランジ21によって基端側A2へ押されて後退する。このとき、ロッド2Bが絶縁部材3Bを基端側A2に押す力は、シース1が第二Oリング36Bによって絶縁部材3Bを保持する保持力よりも大きい。
【0085】
また、絶縁チップ31Bの外周の直径はシース1の外周の直径よりも大きいため、基端側A2へ押された絶縁チップ31Bは、絶縁チップ31Bの基端側A2の面とシース1とが接触して、シース1の先端側A1で静止する。この状態から、ロッド2Bを第一角度P1へ回転させることで、再び図17に示す針状ナイフの状態にすることができる。ITナイフへ切り替える際は、ロッド2Bを第一角度P1から第二角度P2へ回転させて、ロッド2Bによって絶縁部材3Bを先端側A1に押し出す動作を再び行う。
【0086】
図20は、操作部5Bの断面図である。
操作部本体51Bの先端部は、長手方向Aに延びる円筒状の連結部55Bと接続されている。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。操作部本体51Bは、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間を有している。操作ワイヤ4は、シース1の内部空間1sおよび操作部本体51Bの内部空間5sを通過してスライダ52まで延びている。
【0087】
操作部本体51Bは、先端部に連結フランジ51Baを有する。連結フランジ51Baは、操作部本体51Bにおける円筒状の先端部において、径方向Rにおける外側へ延びるフランジ形状であり、周方向Cにおける全周に設けられている。なお、円筒状とは、厳密に円筒である必要は無い。また、スライダ52は、操作部本体51Bに対して周方向Cに回転しない。
【0088】
連結部55Bは、基端部に連結溝55Baを有する。連結溝55Baは、連結部55Bの基端部の内周面に設けられた溝形状であり、連結フランジ51Baと周方向Cに回転可能に嵌合している。連結部55Bの先端部は、シース1と連結されている。また、連結部55Bは、シース1に第二Оリング52Baを介して取り付けられている。
【0089】
連結部55Bに対して操作部本体51Bおよびスライダ52が周方向Cに回転するとき、シース1は、連結部55Bに接続されているため回転しない。操作ワイヤ4は、スライダ52に接続されているため、操作部本体51Bおよびスライダ52とともに周方向Cに回転する。このとき、操作ワイヤ4の先端に連結されたロッド2Bも同様に周方向Cに回転する。その結果、操作部本体51Bおよびスライダ52を連結部55Bに対して周方向Cに回転させたとき、ロッド2Bは、シース1に対して周方向Cに回転する。
【0090】
操作部本体51Bおよびスライダ52を連結部55Bに対して周方向Cに回転させることで、ロッド2Bを第一角度P1と第二角度P2とに回転することができる。操作部本体51Bおよびスライダ52を回転操作することで、ロッド2Bをシース1に対して第一角度P1と第二角度P2とに回転させ、容易に針状ナイフとITナイフとを切り替えできる。なお、操作部本体51Bおよびスライダ52と、ロッド2Bとの回転数は一致しなくてもよい。操作部5Bは、ロッド2Bへ回転動作を伝達させて、第一角度P1と第二角度P2とを切り替えできる構造を有していればよい。
【0091】
図21は、図20に示すX-X線に沿う操作部5Bの断面図である。
操作部本体51Bにおける連結フランジ51Baの外周面には、径方向Rにおける外側に突き出た突起形状である位置決め部51Bbが設けられている。また、連結部55Bにおける連結溝55Baの内周面には、径方向Rにおける内側に突き出た突起形状である固定部55Bbおよび仮固定部55Bcが設けられている。位置決め部51Bbと、固定部55Bbおよび仮固定部55Bcとは、周方向Cに互いに接触可能な形状を有する。
【0092】
連結部55Bに対して周方向Cに回転する操作部本体51Bにおいて、位置決め部51Bbと、固定部55Bbおよび仮固定部55Bcとは、連結部55Bに対する操作部本体51Bの角度を、ロッド2Bにおける第一角度P1又は第二角度P2に対応した角度に固定する機能を有する。内視鏡200が湾曲した状態でチャンネル206に処置具100Bを挿入した時に、ロッド2Bに対する操作部5Bの回転伝達性を考慮して、位置決め部51Bbと、固定部55Bbおよび仮固定部55Bcとの位置を設定してもよい。
【0093】
例えば、基端側A2から見た正面視において、操作部本体51Bが連結部55Bに対して周方向Cにおける反時計回りに回転するとき、位置決め部51Bbは、まず、連結部55Bの仮固定部55Bcと回転方向(周方向C)で接触する。操作部本体51Bをさらに反時計回りに回転させ、操作部本体51Bが回転する力が、位置決め部51Bbが仮固定部55Bcから受ける力よりも大きいとき、位置決め部51Bbは、仮固定部55Bcを通過する。ここで、位置決め部51Bbが仮固定部55Bcを通過するとき、ある程度の力を加えて操作部本体51Bを回転させる必要があるが、位置決め部51Bbおよび仮固定部55Bcの互いに接触する面が丸みを帯びた形状又は傾斜のある形状とすることで、位置決め部51Bbに仮固定部55Bcを通過させるために必要な力を調整できる。
【0094】
仮固定部55Bcを通過した位置決め部51Bbは、次に、固定部55Bbと回転方向で接触する。ここで、操作部本体51Bをさらに反時計回りに回転させても位置決め部51Bbは、固定部55Bbを通過しない。また、操作部本体51Bを時計回りに回転させると、位置決め部51Bbは再び仮固定部55Bcと接触するため、ある程度の力を加えて操作部本体51Bを回転させないと操作部本体51Bは時計回りに回転しない。
【0095】
そのため、位置決め部51Bbが仮固定部55Bcと固定部55Bbとの間に留まり、連結部55Bに対する操作部本体51Bの角度が固定される。ロッド2Bが第一角度P1又は第二角度P2で固定されるように位置決め部51Bb、固定部55Bbおよび仮固定部55Bcを配置することで、ロッド2Bを第一角度P1又は第二角度P2に容易に固定でき、針状ナイフとITナイフとを容易に切り替えできる。また、術者が意図せずにロッド2Bの角度を切り替えるのを抑制し、針状ナイフとITナイフとが誤って切り替えられるのを防ぐことができる。なお、連結部55Bに対する操作部本体51Bの角度の固定方法および、ロッド2Bを第一角度P1又は第二角度P2に固定する方法はこれに限定されない。例えば、連結部55Bに固定され、連結部55B対して操作部本体51Bまたはスライダ52の位置を仮固定するクリップ(不図示)などでもよい。
【0096】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、処置具100Bの先端構造を容易に切り替え、第一実施形態の処置具100と同様の使用方法により、局注処置や切開・剥離処置や止血処置などの複数の処置を実施できる。また、本実施形態に係る処置具100Bによれば、シース1における可撓性の低下を抑制できる。
【0097】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0098】
(変形例2-1)
上記実施形態において、絶縁部材3Bには、第一当接部35Bが設けられている。しかしながら、絶縁部材3Bの態様はこれに限定されない。図22は、絶縁部材3Bの変形例である絶縁部材3Cを示す図である。絶縁部材3Cは、スリット34Ba又は段差部34Bbの基端側A2に第二当接部34Bcを有する。突起部20Baの基端側A2と接触するように第二当接部34Bcを配置することで、絶縁部材3Cが第一当接部35Bを有さなくても、ロッド2Bを基端側A2に移動したとき、突起部20Baと第二当接部34Bcとが接触して、絶縁部材3Cは、ロッド2Bとともに基端側A2へ移動できる。
【0099】
(変形例2-2)
上記実施形態において、絶縁部材3Bには、スリット34Baと連続して設けられた切り欠きである段差部34Bbが設けられている。しかしながら、絶縁部材3Bの態様はこれに限定されない。図23は、絶縁部材3Bの変形例である絶縁部材3Dを示す図である。絶縁部材3Dの段差部34Bbにおける先端側A1の面の一部は、先端側A1に傾斜した斜面である傾斜部34Btを有し、段差部34Bbとスリット34Baとはなだらかに接続されている。傾斜部34Btを設けることで、ロッド2Bを第一角度P1から第二角度P2へ回転させる際、突起部20Baと段差部34Bbとの長手方向Aにおける位置がずれている場合でも、ロッド2Bを周方向Cに回転させて突起部20Baを段差部34Bbと接触させることができる。
【0100】
(変形例2-3)
上記実施形態において、絶縁部材3Bには、スリット34Baの周方向Cにおける片側に1つの段差部34Bbが設けられている。しかしながら、段差部34Bbの態様はこれに限定されない。図24は、絶縁部材3Bの変形例である絶縁部材3Eを示す図である。絶縁部材3Eは、周方向Cにおけるスリット34Baの両側に配置された2つの段差部34Bbを有する。なお、段差部34Bbは、3つ以上であってもよいし、絶縁部材3Eの先端部および基端部に複数あってもよい。また、このとき、位置決め部51Bb、固定部55Bbおよび仮固定部55Bcの形状および配置は、絶縁部材3Eの態様に合わせて適宜変更できる。
【0101】
例えば、図24に示す絶縁部材3Eの場合、操作部本体51Bおよび連結部55Bにおいて、スリット34Baの両側に配置された2つの段差部34Bbに対応する位置に固定部55Bbおよび仮固定部55Bcが配置される。また、ロッド2Bは、第一角度P1から時計回りおよび反時計回りに回転可能なため、連結部55Bにおいて、ロッド2Bが第一角度P1のときの位置決め部51Bbは、周方向Cにおいて2つの仮固定部55Bcで挟まれる。そうすることで、操作部本体51Bは、ロッド2Bが第一角度P1に位置する角度で固定され、かつ、ある程度の力が加わることで第一角度P1から時計回りおよび反時計回りに回転できる。
【符号の説明】
【0102】
100、100B 内視鏡用処置具
1 シース
1a シースの先端
1c 第二保持部
2、2A、2B ロッド
20、20B ロッド本体
20Ba 突起部
22 第一送水管路
21、21A フランジ
3、3B、3C、3D、3E 絶縁部材
31、31B 絶縁チップ
31a、31Ba 挿通孔
31b 溝部
32 第一保持部
33 ストッパー
34B 部分シース
34Ba スリット
34Bb 段差部
34Bc 第二当接部
34Bt 傾斜部
35B 第一当接部
4 操作ワイヤ(シャフト)
5、5B 操作部
52 スライダ
A 長手方向
A1 先端側
A2 基端側
C 周方向
R 径方向
L1 フランジの直径
L2 ロッド本体の直径
R1 第一領域
R2 第二領域
R3 第三領域
P1 第一角度
P2 第二角度
図1
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