IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特開2024-97769フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097769
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/332 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C08G65/332
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000629
(22)【出願日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2023001197
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】川上 由夏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕介
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
(72)【発明者】
【氏名】安原 尚史
(72)【発明者】
【氏名】百田 博史
(72)【発明者】
【氏名】勝川 健一
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA00
4J005AA09
4J005AB00
4J005BA00
4J005BD00
(57)【要約】
【課題】後処理が容易なフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからの、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法の提供。
【解決手段】フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから、プロピオン酸を用いて、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから、プロピオン酸を用いて、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を製造する方法。
【請求項2】
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、下記式(1)又は(2):
Rf-R-X-CO-O-R (1)
-O-CO-X-Rf-R-X-CO-O-R (2)
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Xは、単結合又は2価の有機基であり、
は、C1-6アルキル基である。]
で表される化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
は、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
Faは、フッ素原子である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化1】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
は、メチル基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
Xは、単結合基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.8当量以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
は、メチル基であり、
Xは、単結合であり、
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0又は1であり;
e及びfは、それぞれ独立して、10~30の整数であり;
c、d、e及びfの和は、20~50の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項12】
さらに、水を用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、3.0当量以下である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、0.5~3.0当量である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上であり、前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸を混合し、100℃以上に加熱することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸、及び水を混合し、100℃以上に加熱することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから製造できることが知られている。例えば、特許文献1には、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルを、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液の存在下で加水分解することによりフルオロポリエーテル基含有カルボン酸を得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/163712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を得た後、クエンチ、分液、脱水、濃縮といった工程が必要となり、後処理が煩雑となる。
【0005】
本開示は、後処理が容易なフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからの、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから、プロピオン酸を用いて、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を製造する方法。
[2] フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、下記式(1)又は(2):
Rf-R-X-CO-O-R (1)
-O-CO-X-Rf-R-X-CO-O-R (2)
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Xは、単結合又は2価の有機基であり、
は、C1-6アルキル基である。]
で表される化合物である、上記[1]に記載の製造方法。
[3] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[2]に記載の製造方法。
[4] RFaは、フッ素原子である、上記[3]に記載の製造方法。
[5] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化1】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[2]~[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、上記[2]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7] Rは、メチル基である、上記[2]~[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8] Xは、単結合基である、上記[2]~[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.8当量以上である、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の製造方法。
[11] Rは、メチル基であり、
Xは、単結合であり、
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、0または1であり;
c、d、e及びfの和は、20~50の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、上記[2]~[9]のいずれか1項に記載の製造方法。
[12] さらに、水を用いる、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
[13] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、上記[12]に記載の製造方法。
[14] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、3.0当量以下である、上記[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、0.5~3.0当量である、上記[12]~[14]のいずれか1項に記載の製造方法。
[16] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上であり、前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、上記[12]~[15]のいずれか1項に記載の製造方法。
[17] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸を混合し、100℃以上に加熱することを含む、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載の製造方法。
[18] 前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸、及び水を混合し、100℃以上に加熱することを含む、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、後処理が容易なフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからの、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから、プロピオン酸を用いて、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を製造する方法を提供する。
【0009】
(フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステル)
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルとは、フルオロポリエーテル基と、カルボン酸エステル基を有する化合物を意味する。
【0010】
好ましい態様において、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、下記式(1)又は(2):
Rf-R-X-CO-O-R (1)
-O-CO-X-Rf-R-X-CO-O-R (2)
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Xは、単結合又は2価の有機基であり、
は、C1-6アルキル基である。]
で表される化合物である。
【0011】
式(1)及び(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから得られるフルオロポリエーテル基含有カルボン酸は、それぞれ、下記式(3)及び(4)で表される。
Rf-R-X-COOH (3)
HOCO-X-Rf-R-X-COOH (4)
【0012】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、式(1)で表される化合物である。
【0013】
別の態様において、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、式(2)で表される化合物である。
【0014】
別の態様において、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の両方を含む。
【0015】
上記式において、Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0016】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0017】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0018】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0019】
上記式において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0020】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0021】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0022】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF-、-CFCF-、又は-CFCFCF-である。
【0023】
上記式において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0024】
は、好ましくは、下記:
-(OCh1Fa 2h1h3-(OCh2Fa 2h2-2h4
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
h1は、1~6の整数であり、
h2は、4~8の整数であり、
h3は、0以上の整数であり、
h4は、0以上の整数であり、
だたし、h3とh4の合計は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上であり、h3及びh4を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基を含み得る。
【0025】
一の態様において、Rは、直鎖状、又は分枝鎖状であり得る。Rは、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0026】
Faは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0027】
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは0~100、より好ましくは0~60の整数、例えば、1~100、5~100、10~100、20~100、25~100、1~60、5~60、10~60、20~60、25~60、1~50、5~50、10~50、20~50、25~50、1~40、5~40、10~40、20~40、または25~40であってもよい。
【0028】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、例えば、15~100、20~100、15~60、20~60、15~50、又は20~50であってもよい。
【0029】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0030】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。
【0031】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。
【0032】
一の態様において、Rは、環構造を含み得る。
【0033】
上記環構造は、下記の三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【化2】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0034】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0035】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化3】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0036】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化4】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0037】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。一の態様において、eは、1である。別の態様において、eは0である。上記式(f1)において-(OC-は、好ましくは、-(OCFCFCF-又は-(OCF(CF)CF-で表される基であり、より好ましくは、-(OCFCFCF-で表される基である。
【0038】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200、さらに好ましくは10~100の整数、例えば10~50、10~30、又は20~30の整数である。c及びdは、それぞれ独立して、好ましくは0又は1である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。例えば、c、d、e及びfの和は、15以上100以下、15以上60以下、15以上50以下、20以上60以下、又は20以上50以下であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0039】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC及びOCから選択される基である。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-又は-(OC-OC-である。
【0040】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【化5】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0041】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0042】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0043】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0044】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0045】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0046】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0047】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0048】
一の態様において、上記Rは、上記式(f6)で表される基である。
【0049】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。
【0050】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物において、R部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1及びRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0051】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0052】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0053】
上記式において、Xは、単結合又は2価の有機基である。
【0054】
一の態様において、Xは単結合である。
【0055】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0056】
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。2価の有機基としては、特に限定されないが、2価の炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。
【0057】
本明細書において用いられる場合、「2価の炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から2個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、2価のC1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。上記「2価の炭化水素基」は、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、
【0058】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0059】
上記2価の有機基は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0060】
上記式において、Rは、C1-6アルキル基である。
【0061】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、C1-6アルキル基は、直鎖である。別の態様において、C1-6アルキル基は、分枝鎖である。上記C1-6アルキル基は、好ましくはC1-4アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらにより好ましくはメチル基である。
【0062】
(フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の生成)
本開示の方法においては、プロピオン酸を用いることにより、他の酸、例えばギ酸等を用いた場合と比較して、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルを、短時間かつ高転化率で、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸に変換することができる。また、プロピオン酸を用いることにより、塩酸のような無機酸を用いる場合と比較して、装置に与える影響を小さくすることができ、例えば反応釜の腐食を防止することができる。
【0063】
本開示の製造方法においては、理論に拘束されないが、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、加水分解される。
【0064】
(実施形態1)
実施形態1において、本開示の製造方法は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステル及びプロピオン酸を用いて、下記のように行われる。
【0065】
所定量のフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステル、及びフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルに対して所定当量のプロピオン酸を、反応容器に加え、混合する。混合物を、高温で撹拌する。所定時間経過後、減圧下で揮発成分を留去することにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸が得られる。
【0066】
本実施形態においては、プロピオン酸は、1回で添加される。1回で添加することにより操作が容易になる。
【0067】
本開示の製造方法において、プロピオン酸の使用量は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対して、好ましくは2.0当量以上、より好ましくは2.8当量以上、例えば5.0当量以上、又は5.2当量以上であり得る。また、プロピオン酸の使用量は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対して、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下、例えば6.0当量以下であり得る。プロピオン酸の使用量を上記の範囲とすることにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからフルオロポリエーテル基含有カルボン酸への反応速度が速くなる。
【0068】
ここに、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基の数は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルの重量、及び、19F-NMRの測定結果から算出することができる。
【0069】
上記反応の反応温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり得る。反応温度の上限は、化合物が分解しない温度であれば特に限定されないが、例えば180℃以下、好ましくは150℃以下であり得る。
【0070】
上記反応の反応時間は、好ましくは20時間以上、より好ましくは30時間以上、例えば40時間以上であり得る。反応時間の上限は、特に限定されないが、例えば100時間以下であり得る。
【0071】
(実施形態2)
実施形態2において、本開示の製造方法は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸及び水を用いて、下記のように行われる。
【0072】
所定量のフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステル、ならびにフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルに対して所定当量のプロピオン酸及び水を、反応容器に加え、混合する。混合物を、高温で撹拌する。所定時間経過後、減圧下で揮発成分を留去することにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸が得られる。
【0073】
実施形態2においては、実施形態1に加え、さらに水を用いる。水を用いることにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからフルオロポリエーテル基含有カルボン酸への反応速度が速くなる。本実施形態において、プロピオン酸及び水は、1回で添加される。1回で添加することにより操作が容易になる。
【0074】
本実施形態において、水の使用量は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対して、好ましくは10当量以下、より好ましくは3当量以下であり得る。水の使用量は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対して、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.5当量以上、例えば1.0当量以上、又は2.0当量以上であり得る。水の使用量を上記の範囲とすることにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからフルオロポリエーテル基含有カルボン酸への反応速度が速くなる。
【0075】
本実施形態において、プロピオン酸の使用量、反応温度、及び反応時間は、実施形態1と同様であり得る。
【0076】
(実施形態3)
実施形態3において、本開示の製造方法は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸及び水を用いて、下記のように行われる。
【0077】
所定量のフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステル、ならびにフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルに対して所定当量のプロピオン酸及び水を、反応容器に加え、混合する。混合物を、高温で撹拌する。所定時間経過後、好ましくは反応が平衡に近づいた時点で、未反応エステル基の量に対して所定当量のプロピオン酸及び水を加え、高温で撹拌する。減圧下で揮発成分を留去することにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸が得られる。
【0078】
実施形態2においては、実施形態1に加え、さらに水を用いる。水を用いることにより、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルからフルオロポリエーテル基含有カルボン酸への反応速度が速くなる。本実施形態において、プロピオン酸及び水は、1回で添加される。1回で添加することにより操作が容易になる。
【0079】
プロピオン酸及び水を、2回に分けて添加することにより、より短時間で高い転化率を達成することができる。なお、本実施形態においては、2回に分けて添加しているが、複数回に分けて添加してもよい。添加回数は、特に限定されないが、例えば2~5回、好ましくは2又は3回であり得る。また、水を用いない場合も、プロピオン酸を複数回に分けて添加してもよい。
【0080】
プロピオン酸及び水を複数回に分けて添加する場合、その添加量は、添加時におけるフルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルの未反応エステル基に対して、1回目と同じ当量であることが好ましい。例えば、最初にプロピオン酸及び水を、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対して、それぞれ、5.0当量及び2.5当量用いた場合には、2回目以降の添加においてもそれぞれ、5.0当量及び2.5当量用いることが好ましい。
【0081】
本実施形態において、プロピオン酸及び水の使用量、反応温度、及び反応時間は、実施形態1及び2と同様であり得る。なお、使用量は、すべての添加における合計を意味する。
【実施例0082】
以下、本開示の物品について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、フルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位の存在順序は任意であり、以下に示される化学式は平均組成を示す。
【0083】
実施例1
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(51.6g)を仕込み、水(1.2g,化合物(1)のエステル基に対し2.6当量)、及びプロピオン酸(9.3g,化合物(1)のエステル基に対し5.3当量)を二回に分けて添加し、二回目の試薬添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、110℃~130℃で32時間攪拌した。19F-NMRで転化率が99%以上であることを確認した後に、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(2)を51.1g得た。なお、得られた生成物は、微量の水及びプロピオン酸を含有していた。

HOOCCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOH (2)
【0084】
実施例2
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(50.3g)を仕込み、水(1.4g,化合物(1)のエステル基に対し2.8当量)、及びプロピオン酸(5.0g,化合物(1)のエステル基に対し2.8当量)を四回に分けて添加し、二回目の試薬添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、120℃で40時間攪拌した。19F-NMRで転化率が99%以上であることを確認した後に、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(2)を49.5g得た。なお、得られた生成物は、微量の水及びプロピオン酸を含有していた。
【0085】
実施例3
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(50.2g)を仕込み、プロピオン酸(9.1g,化合物(1)のエステル基に対し5.2当量)を四回に分けて添加し、120℃で88時間攪拌した。19F-NMRで転化率が99%以上であることを確認した後に、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(2)を49.4g得た。なお、得られた生成物は、微量の水及びプロピオン酸を含有していた。
【0086】
実施例4
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(51.0g)を仕込み、水(4.0g,化合物(1)のエステル基に対し9.5当量)を四回に分けて添加し、プロピオン酸(8.9g,化合物(1)のエステル基に対し5.2当量)を六回に分けて添加し、五回目のプロピオン酸添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、100℃~120℃で82時間攪拌した。19F-NMRで転化率が99%以上であることを確認した後に、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(2)を50.2g得た。なお、得られた生成物は、微量の水及びプロピオン酸を含有していた。
【0087】
比較例1
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(51.6g)を仕込み、水(1.2g,化合物(1)のエステル基に対し2.6当量)を二回に分けて添加し、二回目の添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、110℃~130℃で280時間攪拌した。19F-NMRで転化率が99%以上であることを確認した後に、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(2)を51.0g得た。なお、得られた生成物は、微量の水及びプロピオン酸を含有していた。
【0088】
比較例2
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(51.6g)を仕込み、水(1.2g,化合物(1)のエステル基に対し2.6当量)、及びギ酸(5.8g,化合物(1)のエステル基に対し5.3当量)を二回に分けて添加し、二回目の試薬添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、110℃~130℃で100時間攪拌した。19F-NMRで転化率を確認したところ、80%であった。
【0089】
比較例3
還流冷却器、温度計及び撹拌機を取り付けた100mLの4つ口フラスコに、平均組成CHOCOCFO(CFCFO)23(CFO)22CFCOOCH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)及び/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル体(1)(50.3g)を仕込み、水(1.4g,化合物(1)のエステル基に対し2.8当量)、及びギ酸(3.1g,化合物(1)のエステル基に対し2.8当量)を四回に分けて添加し、二回目の試薬添加時に、還流冷却器の冷却水を止め、120℃で100時間攪拌した。19F-NMRで転化率を確認したところ、71%であった。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の製造方法は、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸の製造に好適に利用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルから、プロピオン酸を用いて、フルオロポリエーテル基含有カルボン酸を製造する方法であって、
フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルは、下記式(1)又は(2):
Rf -R -X-CO-O-R (1)
-O-CO-X-Rf -R -X-CO-O-R (2)
[式中:
Rf は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC 1-16 アルキル基であり;
Rf は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC 1-6 アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC 12 -(OC 10 -(OC -(OC Fa -(OC -(OCF
で表される基であり;
Fa は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり;
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのR Fa が水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上であり;
Xは、単結合、C 1-6 アルキレン基、-(CH z1 -O-(CH z2 -(式中、z1は、0~6の整数であり、z2は、0~6の整数である)又は-(CH z3 -フェニレン-(CH z4 -(式中、z3は、0~6の整数であり、z4は、0~6の整数である)であり;
は、C 1-6 アルキル基である。]
で表される基である、製造方法
【請求項2】
Faは、フッ素原子である、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化1】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
は、メチル基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
Xは、単結合基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.8当量以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
は、メチル基であり、
Xは、単結合であり、
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f2):
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0又は1であり;
e及びfは、それぞれ独立して、10~30の整数であり;
c、d、e及びfの和は、20~50の整数であり;
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、水を用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、3.0当量以下である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、0.5~3.0当量である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対するプロピオン酸の当量数は、2.0当量以上であり、前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルのエステル基に対する水の当量数は、10当量以下である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸を混合し、100℃以上に加熱することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項16】
前記フルオロポリエーテル基含有カルボン酸エステルと、プロピオン酸、及び水を混合し、100℃以上に加熱することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。