(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097772
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】医薬製品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20240711BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240711BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K9/08
A61P27/02
A61P27/06
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000845
(22)【出願日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2023001288
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】根本 夫規子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD49R
4C076EE60
4C076FF12
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF65
4C076GG43
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC52
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
【課題】低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む医薬を製剤化するにあたり、有効成分の含量低下を招かない滅菌手法の提供を目的とする。
【解決手段】電子線(EB)滅菌を行った透明性容器に、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を収容したところ、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性が高まることを見出し、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品。
【請求項2】
前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、約0.001w/v%~約0.025w/v%である、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項3】
前記水性液剤が、さらにベンザルコニウム塩化物を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項4】
前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、約0.0005w/v%~約0.1w/v%である、請求項3に記載の医薬製品。
【請求項5】
前記電子線滅菌の照射線量が、約10kGy~約60kGyである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項6】
前記透明性容器の本体の材質が、ポリオレフィン又はポリエステルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項7】
前記透明性容器の本体の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項8】
前記水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン及びその塩は、α-2アドレナリン受容体アゴニストとして知られている。ヒトの眼は、多くのα-2アドレナリン受容体(以下、α-2受容体と略す場合がある)を有しており、α-2受容体のアゴニストは、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用を有する。この作用に基づき、α-2受容体アゴニストは、従来、緑内障や高眼圧症の治療に使用されている。また、α-2受容体のアゴニストは、α-2受容体集中細動脈、特に終末細動脈の内腔サイズの低減を引き起こす作用を有する。この作用により、血管収縮が生じ、目の赤みを低減し、そして白みを増加させ、眼の審美的外観を改善することができる(特許文献1:特許第5671459号公報;特許文献2:特許第5738890号公報)。
【0003】
医薬製品は、貯蔵中の細菌汚染を防止する観点で、滅菌が行われた容器に収容されて提供される。容器の滅菌手法は様々な手法が公知である。滅菌手法としては、放射線滅菌(電子線滅菌、ガンマ線滅菌)、高圧蒸気滅菌、乾熱滅菌、火炎滅菌、流通蒸気滅菌、ガス滅菌、紫外線滅菌などが挙げられる。容器の種類に応じて、適切な滅菌手法が選択される。酸化しやすい医薬系組成物の安定性を改善する方法として、空のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレンテレフタラート(PET)容器を、エチレンオキサイドガス(EOG)に、室温で、滅菌するのに十分な濃度および時間曝す手法が知られている(特許文献3:特許第4125957号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5671459号公報
【特許文献2】特許第5738890号公報
【特許文献3】特許第4125957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有効成分の含量低下を招かないか、又は含量低下を抑制可能な医薬容器の滅菌手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、滅菌手法について鋭意研究を行ったところ、電子線(EB)滅菌を行った透明性容器に、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を収容したところ、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性が高まることを見出し、本発明に至った。
【0007】
加えて、本発明者らは、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に、ベンザルコニウム塩化物を加えることで、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性が高まることを見出した。
【0008】
そこで本発明の一実施形態として、下記を提供する。
【0009】
[医薬製品]
[1]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品。
[2] 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、約0.001w/v%~約0.025w/v%である、項目1に記載の医薬製品。
[3] 前記水性液剤が、さらにベンザルコニウム塩化物を含む、項目1又は2のいずれか一項に記載の医薬製品。
[4] 前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、約0.0005w/v%~約0.1w/v%である、項目3に記載の医薬製品。
[5]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品。
[6]前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度と、ベンザルコニウム塩化物の濃度との、比が、1:約0.05~約5である、項目3~5のいずれか一項に記載の医薬製品。
[7]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[8]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[9]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である比較用水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[10]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である比較用水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[11] 前記電子線滅菌の照射線量が、約10kGy~約60kGyである、項目1~10のいずれか一項に記載の医薬製品。
[12] 前記透明性容器の本体の材質が、ポリオレフィン又はポリエステルである、項目1~11のいずれか一項に記載の医薬製品。
[13] 前記透明性容器の本体の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、項目1~12のいずれか一項に記載の医薬製品。
[14] 前記透明性容器が、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤を含まない、項目1~13のいずれか一項に記載の医薬製品。
[15]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、医薬製品。
[16]総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約94%以上である、項目1~15のいずれか一項に記載の医薬製品。
[17]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約20W・h/m2である、項目1~16のいずれか一項に記載の医薬製品。
[18]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約50W・h/m2である、項目1~16のいずれか一項に記載の医薬製品。
[19]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[20]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である比較用水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[21]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:該水性液剤を、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[22]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、医薬製品であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用医薬製品と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、医薬製品。
比較用医薬品:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である比較用水性液剤を、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用医薬製品
[23]前記水性液剤のpHが、約6.0~約7.0である、項目1~22のいずれか一項に記載の医薬製品。
[24]前記水性液剤が、さらに等張化剤、緩衝剤、粘稠剤、安定剤、保存剤、清涼化剤、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目1~23のいずれか一項に記載の医薬製品。
[25]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目1~24のいずれか一項に記載の医薬製品。
[26]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、およびクエン酸ナトリウムを含む、項目1~25のいずれか一項に記載の医薬製品。
[27]前記水性液剤が、さらに追加の有効成分を含む、項目1~26のいずれか一項に記載の医薬製品。
[28]前記追加の有効成分が、充血除去剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、非ステロイド性抗炎症剤、及び抗アレルギー剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目1~27のいずれか一項に記載の医薬製品。
【0010】
[製造方法]
[29] 医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程と
を含む、該製造方法。
[30] 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、約0.001w/v%~約0.025w/v%である、項目29に記載の製造方法。
[31] 前記水性液剤が、さらにベンザルコニウム塩化物を含む、項目29又は30のいずれか一項に記載の製造方法。
[32] 前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、約0.0005w/v%~約0.1w/v%である、項目31に記載の製造方法。
[33] 医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含む、
該製造方法。
[34]前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度と、ベンザルコニウム塩化物の濃度との、比が、1:約0.05~約5である、項目31~33のいずれか一項に記載の製造方法。
[35]医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[36]医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[37]医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程とを含み、
該水性液剤を、透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である、比較用水性液剤
[38]医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[39]前記電子線滅菌の照射線量が、約10kGy~約60kGyである、項目29~38のいずれか一項に記載の製造方法。
[40] 前記透明性容器の本体の材質が、ポリオレフィン又はポリエステルである、項目29~39のいずれか一項に記載の製造方法。
[41] 前記透明性容器の本体の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、項目29~40のいずれか一項に記載の製造方法。
[42] 前記透明性容器が、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤を含まない、項目29~41のいずれか一項に記載の製造方法。
[43] 医薬製品の製造方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に充てんする工程とを含む、
該製造方法。
[44]前記水性液剤に、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約94%以上である、項目29~43のいずれか一項に記載の製造方法。
[45]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約20W・h/m2である、項目29~44のいずれか一項に記載の製造方法。
[46]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約50W・h/m2である、項目29~44のいずれか一項に記載の製造方法。
[47]医薬製品の製造方法であって、
約0.01%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[48]医薬製品の製造方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌された透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[49]医薬製品の製造方法であって、
約0.01%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[50]医薬製品の製造方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該製造方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[51]前記水性液剤のpHが、約6.0~約7.0である、項目29~50のいずれか一項に記載の製造方法。
[52]前記水性液剤が、さらに等張化剤、緩衝剤、粘稠剤、安定剤、保存剤、清涼化剤、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目29~51のいずれか一項に記載の製造方法。
[53]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目29~52のいずれか一項に記載の製造方法。
[54]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、およびクエン酸ナトリウムを含む、項目29~53のいずれか一項に記載の製造方法。
[55]前記水性液剤が、さらに追加の有効成分を含む、項目29~54のいずれか一項に記載の製造方法。
[56]前記追加の有効成分が、充血除去剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、非ステロイド性抗炎症剤、及び抗アレルギー剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目29~55のいずれか一項に記載の製造方法。
【0011】
[光安定化方法]
[57]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含む、
該方法。
[58] 前記水性液剤が、さらにベンザルコニウム塩化物を含む、項目57に記載の方法。
[59]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を調製する工程とを含む、
該方法。
[60] 前記水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程を含む、項目59に記載の方法。
[61] 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、約0.001w/v%~約0.025w/v%である、項目57~60のいずれか一項に記載の方法。
[62] 前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、約0.001w/v%~約0.1w/v%である、項目57~61のいずれか一項に記載の方法。
[63]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含む、
該方法。
[64]前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度と、ベンザルコニウム塩化物の濃度との、比が、1:約0.05~約5である、項目58~63のいずれか一項に記載の方法。
[65]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[66]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である、比較用水性液剤
[67]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[68]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[69]前記電子線滅菌の照射線量が、約10kGy~約60kGyである、項目57~68のいずれか一項に記載の方法。
[70] 前記透明容器の本体の材質が、ポリオレフィン又はポリエステルである、項目57~69のいずれか一項に記載の方法。
[71] 前記透明容器の本体の材質が、ポリプロピレン、はポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、項目57~70のいずれか一項に記載の方法。
[72] 前記透明性容器が、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤を含まない、項目57~71のいずれか一項に記載の方法。
[73]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン性透明性容器に充てんする工程とを含む、
該方法。
[74]前記光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約94%以上である、項目57~73のいずれか一項に記載の方法。
[75]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約20W・h/m2である、項目57~74のいずれか一項に記載の製造方法。
[76]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約50W・h/m2である、項目57~74のいずれか一項に記載の方法。
[77]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[78]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[79]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:該水性液剤を、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[80]ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法であって、
約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に充てんする工程とを含み、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、
該方法。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されて含む、比較用水性液剤
[81]前記水性液剤のpHが、約6.0~約7.0である、項目57~80のいずれか一項に記載の方法。
[82]前記水性液剤が、さらに等張化剤、緩衝剤、粘稠剤、安定剤、保存剤、清涼化剤、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目57~81のいずれか一項に記載の方法。
[83]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目57~82のいずれか一項に記載の方法。
[84]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、およびクエン酸ナトリウムを含む、項目57~83のいずれか一項に記載の方法。
[85]前記水性液剤が、さらに追加の有効成分を含む、項目57~84のいずれか一項に記載の方法。
[86]前記追加の有効成分が、充血除去剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、非ステロイド性抗炎症剤、及び抗アレルギー剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目57~85のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
[水性液剤]
[87] 約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤。
[88] 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、約0.001w/v%~約0.025w/v%である、項目87に記載の水性液剤。
[89] 前記水性液剤が、さらにベンザルコニウム塩化物を含む、項目87又は88のいずれか一項に記載の水性液剤。
[90] 前記ベンザルコニウム塩化物の濃度が、約0.0005w/v%~約0.1/v%である、項目89に記載の水性液剤。
[91] 約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤。
[92]前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度と、ベンザルコニウム塩化物の濃度との、比が、1:約0.05~約5である、項目89~91のいずれか一項に記載の水性液剤。
[93]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:該水性液剤が、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[94]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成である、比較用水性液剤
[95]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:該水性液剤が、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[96]約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[97] 前記電子線滅菌の照射線量が、約10kGy~約60kGyである、項目87~96のいずれか一項に記載の水性液剤。
[98] 前記透明容器の本体の材質が、ポリオレフィン又はポリエステルである、項目87~97のいずれか一項に記載の水性液剤。
[99] 前記透明容器の本体の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエチレンテレフタラートである、項目87~98のいずれか一項に記載の水性液剤。
[100] 前記透明性容器が、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤を含まない、項目87~99のいずれか一項に記載の水性液剤。
[101] 約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されている、水性液剤。
[102]総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が94%以上である、項目87~101のいずれか一項に記載の水性液剤。
[103]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約20W・h/m2である、項目87~102のいずれか一項に記載の水性液剤。
[104]前記総近紫外放射エネルギーの光の強度が、約50W・h/m2である、項目87~102のいずれか一項に記載の水性液剤。
[105]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:該水性液剤が、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[106]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていない透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[107]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:該水性液剤が、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[108]約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含み、電子線滅菌されたポリプロピレン製透明性容器に収容されている、水性液剤であって、
該水性液剤が、光安定性が向上した水性液剤であり、
該光安定性の向上が、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したときに、
比較用水性液剤と比較し、
ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が約0.5%以上向上している、水性液剤。
比較用水性液剤:ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は該水性液剤と同じ組成であり、電子線滅菌されていないポリプロピレン製透明性容器に収容されている、比較用水性液剤
[109]前記水性液剤のpHが、約6.0~約7.0である、項目87~108のいずれか一項に記載の水性液剤。
[110]前記水性液剤が、さらに等張化剤、緩衝剤、粘稠剤、安定剤、保存剤、清涼化剤、及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目87~109のいずれか一項に記載の水性液剤。
[111]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目87~110のいずれか一項に記載の水性液剤。
[112]前記水性液剤が、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ砂、およびクエン酸ナトリウムを含む、項目87~111のいずれか一項に記載の水性液剤。
[113]前記水性液剤が、さらに追加の有効成分を含む、項目87~112のいずれか一項に記載の水性液剤。
[114]前記追加の有効成分が、充血除去剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、非ステロイド性抗炎症剤、及び抗アレルギー剤からなる群から選ばれる少なくとも1の成分を含む、項目87~113のいずれか一項に記載の水性液剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明性容器に充てんされた低濃度のブリモニジン又はその塩の光分解を抑制することができ、ブリモニジン又はその塩の光安定性が改善された医薬製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解される。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で特定される数値範囲は、その下限値及び上限値を含むものとする。
【0015】
(定義)
本明細書において、「約」とは、特に断らない限り、後に続く数値の±10%を意味する。
【0016】
本明細書において、「ブリモニジン」は、IUPAC名:5-ブロモ-N-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)キノキサリン-6‐アミン(5-Bromo-N-(4,5-dihydro-1H-imidazol-2-yl)quinoxalin-6-amine)の化合物を指す。
【0017】
本明細書において、「低濃度のブリモニジン」とは、約0.05w/v%以下の濃度のブリモニジンを指す。また、本明細書において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度は、特に明記しない限り、ブリモニジン酒石酸塩に換算された濃度である。
【0018】
本明細書において、「水性液剤」とは、少なくとも一部に水を含み、眼科用製剤又は点眼に用いられる製剤を指す。本開示の水性液剤では、低濃度のブリモニジンを含み、0.05w/v%を超えるブリモニジンを含まない。
【0019】
本明細書において、「医薬製品」とは、水性液剤が充てんされた容器を含む製品を指す。本発明における医薬製品は、一の態様では、眼科用医薬製品又は点眼用医薬製品を指す。
【0020】
本明細書において、「電子線滅菌された容器」とは、電子線が照射された後の容器をいう。電子線が照射された容器は、医薬製品の製造に用いるまで滅菌状態で保存される。
【0021】
本明細書において、「透明性容器」とは、不溶性異物検査法の試験に支障をきたさず内部が視認できる程度の透明性を有する容器であり、容器自体、或いは全体又は一部の部材が透明性の部材を含む容器を指す。
【0022】
本明細書において、「容器の本体の材質」とは、収容した水性液剤と接触する内壁の50%以上が所定の材質で構成されていることを指す。例えば、ポリプロピレン製とは、収容した水性液剤と接触する内壁の50%以上がポリプロピレンで形成されていることを限度として、その他の部材がポリプロピレン以外の素材で形成されていることを意味する。なお、容器の本体は、ボトルを意味する。
【0023】
本明細書において、「総近紫外放射エネルギー」とは、320~400nmにスペクトル分布をもち、350~370nmに放射エネルギーの極大を示す近紫外蛍光ランプ等から照射される光のエネルギーを指す。光の強度は、水性液剤や医薬製品、または組成物に照射された光の総量を意味してもよいし、光を照射する際に使用する装置に設定する総近紫外放射エネルギーやディスプレイに表示される総近紫外放射エネルギーであってもよい。
【0024】
本明細書において、「ブリモニジン及び/又はその塩の残存率」は、以下の算出式に従って、算出する。
【数1】
ブリモニジン酒石酸塩濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により、以下の条件で測定する。
カラム:内径6mm×長さ15cm オクタデシルシリル化シリカゲル(「AA12S05-1506WT」ワイエムシィ社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:264nm)
カラム温度:40℃
移動相:リン酸二水素アンモニウム5.175gを900mLの水に溶かし、液体クロマトグラフィー用アセトニトリル100mLを加える。
流速:ブリモニジンの保持時間が約5分になるように設定
【0025】
本明細書において、「ブリモニジン及び/又はその塩の残存率の向上」等の表記は、一定量の総近紫外放射エネルギーの光を照射したときに、任意の処方と比較し、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が高くなっていることを指す。また、「光安定性の向上」とは、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率が向上したことを指す。
【0026】
(好ましい実施形態の説明)
以下に各態様の実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、以下の実施形態は単独でも使用され、或いはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0027】
本発明の一実施形態において、医薬製品は、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤が、電子線滅菌された透明性容器に収容されている。医薬製品製造の際に、電子線が照射された容器に有効成分を含む水性液剤を充てんすることで、医薬製品を製造する。
【0028】
ブリモニジンの塩としては、医薬として許容される塩であれば任意の塩が挙げられる。ブリモニジンの医薬として許容される塩として、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩および当業者に周知の他の無機カルボン酸塩が挙げられ、好ましくは酒石酸塩である。
【0029】
本発明において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度としては、通常約0.0005w/v%~約0.05w/v%、好ましくは約0.001w/v%~約0.025w/v%、より好ましくは約0.005w/v%~約0.025w/v%、特に好ましくは約0.01w/v%~約0.025w/v%、最も好ましくは約0.01w/v%である。一例として、ブリモニジンの濃度の上限は、副作用を予防する観点から約0.04w/v%、又は約0.03w/v%であってもよい。ブリモニジンの濃度の下限としては、約0.0001w/v%が用いられてもよく、一例として本剤の効果を鑑み、約0.0005w/v%、約0.001w/v%、又は約0.005w/v%が用いられてもよい。
【0030】
低濃度のブリモニジン及び/又はその塩は目の充血を緩和するかまたは抑制する薬効を有する。目の充血を緩和するかまたは抑制するとは、白目部分の白みを増加させることを言い、目のホワイトニングともいうことができる。
【0031】
白目の表面は、強膜上を覆う結膜から構成されており、結膜はさらに瞼の内側を覆っている。結膜表面は、結膜上皮細胞から主に構成される。結膜の上皮層には血管、繊維組織、リンパ管が含まれる。結膜は白目と黒目の境界で角膜と接しており、角膜と結膜は外界にさらされる目の最外層を構成する。結膜は外界にさらされていることから、細菌やウイルスなどに侵されやすく、炎症が生じやすい。また炎症が起こっていない場合であっても、寝不足や目の酷使により、目に酸素や栄養を供給するために血流量が増えて充血する。本発明においてブリモニジン及び/又はその塩は、結膜内の毛細血管に到達し、毛細血管の血流量を低減することで、充血緩和、目の赤みの低減又は白化という作用を発揮する。
【0032】
本発明の医薬製品に用いられる容器は透明性容器である。透明性容器とは、容器の少なくとも一部の部材が透明性の部材を含む容器をいう。透明性容器としては、一例として、本体、ノズル部、及び蓋部を備えた点眼容器が使用される。点眼容器のうち、特に本体が、透明性の部材で構成されていることが好ましい。透明性容器を用いることで、医薬製品に含まれる内容物の確認が可能である。透明性容器は、沈殿やにごりなど、製剤の品質に変化が生じた場合の確認が容易である点で好ましいが、通常、光不安定化が問題となる。本発明の医薬製品では、電子線滅菌を行った透明性容器を使用することで、ブリモニジン又はその塩の光安定性が向上する。本発明で用いる透明性容器は、内容物を確認できる限りで任意の透明度を有していてもよい。透明性容器は、無色透明であってもよいし、着色されていてもよい。透明性の部材の材質としては、通常、ポリオレフィン又はポリエステルが使用される。ポリオレフィンとしては、一例としてポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートが挙げられる。本体、ノズル部、及び蓋部は、異なる材質で形成後組み立てられてもよいし、同じ材質で一体又は別々に形成されてもよい。一例として、透明性容器は、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤を含まない。紫外線吸収剤としては、通常、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。紫外線散乱剤としては、二酸化チタンなどが挙げられる。
【0033】
本発明の透明性容器は、電子線により滅菌が行われる。電子線は、電子加速器によって作られる粒子線である。照射された物質に対し強い電離作用を引き起こし、それにより滅菌や物性の変化を誘導する。電子線による滅菌処理は、滅菌が達成される範囲で行うことができ、一例として照射線量が約10kGy~約60kGyとなるように、電子線が照射される。照射線量としては、滅菌を達成させる観点から、約15kGy以上が好ましく、約20kGy以上がさらに好ましい。容器の変性を抑制する観点から、約50kGy以下が好ましく、約40kGy以下がさらに好ましい。より具体的には、照射線量を約20kGy、約30kGy、約40kGy又は約50kGyに設定して、電子線を照射することで滅菌処理を行う。電子線の強度は、必要とされる滅菌状態と、照射時間に応じて適宜選択することができるが、一例として約100keV~約5MeVの範囲で選択することができる。照射時間は、選択した電子線の強度に応じて適宜選択される。電子線により透明性容器に対し滅菌処理を行い、滅菌された透明性容器に低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を充てんすることにより、充てんされたブリモニジン及び/又はその塩の光安定性が向上する。
【0034】
本発明の医薬製品の低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤には、ベンザルコニウム塩化物がさらに配合されてもよい。ベンザルコニウム塩化物は、陽イオン界面活性剤であり、殺菌作用を有する。一方で、ベンザルコニウム塩化物を配合することにより、低濃度ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性がさらに向上する。したがって、ベンザルコニウム塩化物は、水性液剤に防腐剤として、及び/又は、光安定性向上剤として配合されうる。ベンザルコニウム塩化物の濃度は、水性液剤に許容される範囲であれば特に限定されないが、一例として約0.0005w/v%~約0.1w/v%の濃度で配合され、好ましくは約0.001w/v%~約0.05w/v%、より好ましくは約0.001w/v%~約0.02w/v%、さらに好ましくは約0.001w/v%~約0.01w/v%である。ベンザルコニウム塩化物の作用を発揮する観点から、ベンザルコニウム塩化物の濃度は約0.0005w/v%以上が好ましく、約0.001w/v%以上がより好ましく、約0.005w/v%以上がさらに好ましい。不所望な作用の発揮を抑制する観点から、ベンザルコニウム塩化物の濃度は、約0.05w/v%以下が好ましく、約0.02w/v%以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明に係る医薬製品の水性液剤に、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物とが配合される場合、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩の濃度と、ベンザルコニウム塩化物の濃度との配合比は、通常1:約0.05~約5、好ましくは1:約0.1~約5、より好ましくは1:約0.3~約3である。
【0036】
本発明に係る医薬製品の水性液剤は、水を溶剤とする水性液体製剤であるが、点眼薬に使用しうる任意の溶剤をさらに含んでいてもよい。本発明の医薬製品の水性液剤は、点眼薬として許容されるpH、浸透圧を有するように調製される。本発明の医薬製品の水性液剤のpHは、pH調整剤を使用して約4.0~約9.0に調整され、一例として約5.0~約8.0、さらに別の例として約6.0~約7.0に調整されうる。本発明の医薬製品の水性液剤の浸透圧は、等張化剤を使用して約200mOsm~約450mOsmに調整される。
【0037】
本発明に係る医薬製品又は水性液剤の光安定性は、容器外部から所定の強度の光を照射し、照射後のブリモニジン及び/又はその塩の残存率により評価することができる。より具体的には、容器外部から所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射し、照射後のブリモニジン及び/又はその塩の残存率により評価することができる。総近紫外放射エネルギーの強度は、約10~約100W・h/m2の間で設定できる。より具体的には、総近紫外放射エネルギーを約10W・h/m2、約20W・h/m2、約30W・h/m2、約40W・h/m2又は約50W・h/m2に設定することができる。
【0038】
本発明の一局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したときのブリモニジン及び/又はその塩の残存率で評価できる。容器としては、透明性容器を用いることができ、特にポリプロピレン製透明容器を用いることができる。一例として、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌された容器に収容された医薬製品に、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は約94%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は約94%以上である。
【0039】
また、本発明の他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、対象と同じ組成の水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、好ましくは約0.5%以上、より好ましくは約1%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、対象と同じ組成の水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、通常約0.5%以上、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.7%以上、特に好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは0.9%以上、最も好ましくは約1%以上である。
【0040】
さらに、本発明のさらに他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、対象と同じ組成の水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、好ましくは約0.5%以上、より好ましくは約1%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、対象と同じ組成の水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、通常約0.5%以上、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.7%以上、特に好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは0.9%以上、最も好ましくは約1%以上である。
【0041】
また、本発明の他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に、ベンザルコニウム塩化物を添加した医薬製品の光安定性の向上は、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したときのブリモニジン及び/又はその塩の残存率で評価できる。容器としては、透明性容器を用いることができ、特にポリプロピレン製透明容器を用いることができる。一例として、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含む医薬製品又は水性液剤に、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は約94%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に、ベンザルコニウム塩化物を添加した医薬製品又は水性液剤に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は約94%以上である。
【0042】
また、本発明の他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に、ベンザルコニウム塩化物を添加した水性液剤の光安定性の向上は、所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は対象の水性液剤と同じ組成である比較用水性液剤に、所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、好ましくは約0.5%以上、より好ましくは約1%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に、ベンザルコニウム塩化物を添加した水性液剤の光安定性の向上は、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は対象の水性液剤と同じ組成である比較用医薬製品又は水性液剤に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、通常約0.5%以上、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.7%以上、特に好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは0.9%以上、最も好ましくは約1%以上である。なお、水性液剤又は比較用水性液剤を収容する容器は、電子滅菌されたものを使用してもよい。
【0043】
また、本発明の他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したときのブリモニジン及び/又はその塩の残存率で評価できる。容器としては、透明性容器を用いることができ、特にポリプロピレン製透明容器を用いることができる。一例として、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含み、電子線滅菌された容器に収容された医薬製品に、所定の強度の総近紫外放射エネルギーの光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は、好ましくは約94%以上、より好ましくは約95%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含み、電子線滅菌された容器に収容された医薬製品に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射したとき、ブリモニジン及び/又はその塩の残存率は、好ましくは約94%以上、より好ましくは約95%以上である。
【0044】
また、本発明の他の局面において、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は対象の水性液剤と同じ組成である水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に所定の総近紫外放射エネルギーの光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、好ましくは約0.5%以上、より好ましくは約1%以上、さらに好ましくは約1.5%以上である。より具体的には、約0.01w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、ベンザルコニウム塩化物を含む水性液剤を電子線滅菌された容器に収容された医薬製品の光安定性の向上は、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率を、ベンザルコニウム塩化物を含まないこと以外は対象の水性液剤と同じ組成である水性液剤を、電子線滅菌されていない容器に収容されて含む比較用の医薬製品に、総近紫外放射エネルギーの光の強度が約50W・h/m2になるように光を照射した場合のブリモニジン及び/又はその塩の残存率と比較することで決定することができる。向上することができる残存率としては、好ましくは約0.5%以上、より好ましくは約1%以上、さらに好ましくは約1.5%以上である。
【0045】
本発明の医薬製品には、点眼薬に使用しうる任意の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。本発明の医薬製品に含まれるブリモニジン及び/又はその塩とは別に、追加の有効成分及び添加物などの任意的成分を含んでもよい。このような任意的な添加物としては、等張化剤、緩衝剤、粘稠剤、安定剤、保存剤、清涼化剤、pH調整剤などが挙げられるが、これらに限定されることを意図するものではない。ブリモニジン及び/又はその塩とは別の追加の有効成分としては、充血除去剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、アミノ酸類、ビタミン類、消炎剤、非ステロイド性抗炎症剤、及び抗アレルギー剤などが挙げられるが、これらに限定されることを意図するものではない。これらの追加の有効成分及び添加物は、それぞれ各カテゴリーの中から1種類のみを用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて使用することができる。以下に、医薬製品に添加されうる任意的成分を説明するが、列挙された作用以外の作用を目的として使用されてもよい。
【0046】
等張化剤としては、例えば糖類や塩類が挙げられる。塩類としては、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素カリウムなどが用いられうる。糖類としては、任意の単糖類又は多糖類を使用することができ、一例としてシクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等を使用することができる。他にも、グリセロール(グリセリン)、プロピレングリコ―ルが挙げられる。
【0047】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤などの緩衝剤が用いられる。一例として、クエン酸緩衝剤としては、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが用いられうる。
【0048】
粘稠剤としては、例えば、セルロース高分子、合成高分子、多糖類が挙げられ、さらにそれらの水和物又は溶媒和物であってもよい。セルロース高分子としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリカルボフィル、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。多糖類としては、例えば、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キサンタンガム又はこれらの塩等が挙げられる。
【0049】
安定剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、トコフェロール等が使用されうる。
【0050】
保存剤としては、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ポリヘキサニド(ポリヘキサエチレンビグアニド)、クロルヘキシジングルコン酸塩、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、亜塩素酸ナトリウム、ベンゾドデシニウム臭化物、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸塩、ベンジルアルコール、ホウ酸、ホウ砂などが使用されうる。
【0051】
清涼化剤としては、例えばメントール、エタノール、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、リュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等が使用されうる。
【0052】
pH調整剤としては、例えば、塩酸、酢酸、ホウ酸、炭酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸などの酸や、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどの塩基が使用されうる。緩衝剤とpH調整剤とを適宜利用することで、水性液剤のpHを所定のpHに調整することができる。
【0053】
充血除去剤としては、例えば、エピネフリン、エフェドリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、メチルエフェドリン、又はそれらの塩が使用されうる。
【0054】
コリンエステラーゼ阻害剤としては、例えばジスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アンベノニウム、エドロホニウム、又はそれらの塩が使用されうる。コリンエステラーゼ阻害剤は、眼の調節機能改善や、緑内障における眼圧を改善する目的で配合されうる。
【0055】
抗ヒスタミン剤としては、例えばジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、エピナスチン、オロパタジン又はそれらの塩が使用されうる。抗ヒスタミン剤は目のかゆみや炎症を抑制する目的で配合されうる。
【0056】
アミノ酸類とは、アミノ酸以外に、アミノ酸のカルボキシル基の代わりに硫酸基を有する物質、例えばタウリンにも関する。アミノ酸としては、一例として、アスパラギン酸、コンドロイチン硫酸エステル、グリシン、アラニン、メチオニン、バリン、トレオニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、システイン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、プロリン、チロシン、セリンが挙げられ、それらの塩であってもよい。アミノ酸としては、好ましくはアスパラギン酸、タウリン、コンドロイチン硫酸エステルが挙げられる。グリシンを除くアミノ酸は、L体のアミノ酸であってもよいし、D体のアミノ酸であってもよいし、DL体のアミノ酸であってもよい。
【0057】
ビタミン類とは、生物の生存又は生育に微量に必要な栄養素のうち、その生物の体内で十分な量を合成できない炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物の総称である。ビタミン類としては、水溶性ビタミン類と、脂溶性ビタミン類に大別される。水溶性ビタミン類としては、ビタミンB類及びビタミンC(アスコルビン酸)が挙げられる。脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類が挙げられる。一般用医薬品製造(輸入)承認基準では、点眼薬に配合されるビタミン類が規定されており、この観点から、特にビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンE類が好ましい。
【0058】
ビタミンA類としては、レチノール、及びその関連物質が使用されうる。レチノール関連物質として、レチナール、レチノイン酸、やその他のレチノイド、例えばイソトレチノイン、アリトレチノイン、アシトレチン、エトレチナート、アダパレン、タザロテン、ベキサロテン等も挙げられる。点眼薬として配合する観点からレチノール酢酸エステルが好ましい。ビタミンA類は上皮細胞に作用し増殖を誘導することから、角膜や結膜保護等を目的として点眼薬に配合されうる。夜盲症、結膜乾燥症、角膜乾燥症、角膜軟化症等の眼科系疾患の治療のためにも点眼薬に配合されうる。
【0059】
ビタミンB類としては、ビタミンB1(チアミン等)、ビタミンB2、ビタミンB3(ナイアシン等)、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7(ビオチン等)、ビタミンB9(葉酸等)、ビタミンB12が使用されうる。ビタミン類には、誘導体であるプロビタミンや医薬として許容される塩を包含する。ビタミンB類の中でも、特に点眼薬に配合される観点から、ビタミンB2、B5、B6、B12が好ましい。
【0060】
ビタミンB2としてはリボフラビン、リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、酢酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、フラビンモノヌクレオチド、又は薬学的に許容されるそれらの塩等が使用されうる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。点眼薬として配合される観点からフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムが好ましい。ビタミンB2は、酸化還元に直接関与し、点眼薬として使用されると角膜・結膜細胞の酵素呼吸代謝を促進し、角膜・結膜の保護作用を有する。またビタミンB2は、ビタミンB2欠乏または代謝障害が関与すると推定される角膜炎に対して治療のために点眼薬に配合されうる。
【0061】
ビタミンB5としてはパンテノール、パントテン酸又はそれらの誘導体又はそれらの塩が使用されうる。一例として、パンテノール、パントテン酸の他に、誘導体又はそれらの塩として、パンテチン、パンテテイン、パントテニールアルコール、パントテニールエチルエーテル、パンテテインパントテニールアルコール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等が挙げられる。点眼薬として使用される観点から、ビタミンB5としてはパンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムが好ましい。
【0062】
ビタミンB6としては、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン又はそれらの医薬として許容される塩が使用されうる。ビタミンB6は、生体内でアミノ酸脱炭酸酵素及びアミノ基転移酵素の補酵素として、タンパク質の代謝に関わっており、眼精疲労の抑制のために点眼薬に配合されうる。
【0063】
ビタミンB12はコリン環にコバルトが配位した構造を有する化合物であり、具体的には、シアノコバラミン、メコバラミン(メチルコバラミン)、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン等が挙げられる。ビタミンB12は疲れ目や眼精疲労の改善等の薬理作用のために点眼薬に配合されうる。
【0064】
ビタミンE類としては、トコフェロール、トコトリエノール、トコフェルソラン、又はそれらの誘導体が使用されうる。トコフェロール、トコトリエノールは、α-、β-、γ-、δ-のいずれであってもよく、また、d体、dl体のいずれであってもよい。点眼薬として使用される観点から、一例として酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロールが挙げられる。
【0065】
ビタミンCとしては、アスコルビン酸又はその塩が挙げられる。ビタミンD類としては、ビタミンD2(エルゴステロール、エルゴカルシフェロール)、D3(7-デヒドロコレステロール)、プレビタミンD3(コレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)、カルシトロン酸)、ビタミンD4(ジヒドロエルゴカルシフェロール)、ビタミンD5(ジヒドロタキステロール・カルシポトリオール・タカルシトール・パリカルシトール)等が挙げられる。ビタミンK類としては、フィロキノン(K1)、メナキノン(K2)、メナジオン(K3)が挙げられる。
【0066】
消炎剤としては、例えば、ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、アラントイン、ベルベリン、アズレンスルホン酸、リゾチーム又はそれらの塩、或いは乳酸亜鉛が使用されうる。
【0067】
非ステロイド性抗炎症剤としては、例えば、ジクロフェナク、ネパフェナク、プラノプロフェン、ブロムフェナク、又はそれらの塩が使用されうる。
【0068】
抗アレルギー剤としては、例えば、エピナスチン、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、オロパタジン、クロモグリク酸、ケトチフェン、シクロスポリン、トラニラスト、又はそれらの塩が使用されうる。
【0069】
別の態様では、本発明は、低濃度のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を含む医薬製品を製造する方法に関する。より具体的に、本発明の医薬製品を製造する方法は、下記の工程:
0.0005w/v%~0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程
とを含む。かかる医薬製品の製造方法により、製造された医薬製品では、光安定性が改善する。かかる医薬製品の方法には、さらに電子線を照射することにより透明性容器を滅菌する工程、及び調製された水性液剤を滅菌する工程が含まれてもよい。水性液剤の滅菌は、任意の手法で行われうるが、一例として、フィルター滅菌が行われうる。滅菌された水性液剤は、無菌条件下で電子線滅菌された透明性容器に充てんされる。透明容器への充てんは、水性液剤を本体に注入後に、本体にノズル及び蓋を無菌条件下で取り付けることで行われうる。
【0070】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上する方法に関する。より具体的に、本発明の医薬製品を製造する方法は、下記の工程:
約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤を調製する工程と、
該水性液剤を、電子線滅菌された透明性容器に充てんする工程
とを含む。かかる方法により、医薬製品中のブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を向上することができる。ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性をさらに向上させることを目的として、水性液剤にベンザルコニウム塩化物をさらに配合してもよい。水性液剤を調製する工程において、約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤が調製される。
【0071】
本発明のさらに別の態様では、本発明は約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩を含み、電子線滅菌された透明性容器に収容されている、水性液剤に関していてもよい。水性液剤には、更なる有効成分が含まれてもよい。一例としてベンザルコニウム塩化物を含む場合、水性液剤を調製する工程において、約0.0005w/v%~約0.05w/v%のブリモニジン及び/又はその塩と、約0.0005w/v%~約0.1w/v%のベンザルコニウム塩化物とを含む水性液剤が調製される。ベンザルコニウム塩化物を配合することにより、低濃度ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性がさらに向上する。
【0072】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0073】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0074】
[試験例1]光安定性の測定
(処方)精製水にブリモニジン酒石酸塩(HANGZHOU DELI CHEMICAL CO.,LTD)、濃ベンザルコニウム塩化物50(日油株式会社、50%)を添加し、pH調整剤(NaOH及び/又はHCl)によりpHを6.5に調整し、表1に示す点眼液検体を得た。なお、表中の数値はw/v%である。
【表1】
【0075】
(容器の処理)
ポリプロピレン(PP)製の容器(ボトル)、ポリエチレン(PE)製の容器(ボトル)、ポリエチレンテレフタラート(PET)製の容器(ボトル)について、目標線量を40kGyとして電子線を照射することにより滅菌処理されたものを使用した。PP製の容器(容量:5mL)はアジマイシン点眼液1%に、PE製の容器(容量:5mL)はヒアルロン酸Na点眼液0.1%「センジュ」(旧ティアバランス点眼液0.1%)に、PET製の容器(容量:15mL)はNewマイティアCLクール-s等に使用されている容器である。
【0076】
(試験操作)
電子線滅菌処理されていない容器(PP製、及びPE製)と、電子線滅菌処理された容器(PP製、及びPE製)とに、処方例1及び処方例2の点眼液検体5mLを充てんし、ノズル及び蓋を取り付けた。また、電子線滅菌処理されていない容器(PET製)に処方例1の点眼液検体15mLを、電子線滅菌処理された容器(PET製)に処方例2の点眼液検体15mLを充てんし、ノズル及び蓋を取り付けた。それぞれの容器に封入された検体を、光安定性試験装置(LT-120A-WCD、ナガノサイエンス株式会社製)に配置し、総近紫外放射エネルギーを50W・h/m
2に設定し、光照射を行った。光照射後の検体中のそれぞれのブリモニジン酒石酸塩濃度を、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフシステム(HPLC、島津製作所社製)によって測定した。以下に示す算出式に従ってブリモニジン酒石酸塩の残存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【数2】
【0077】
(ブリモニジン酒石酸塩濃度の測定)
各検体について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により、ブリモニジン酒石酸塩濃度を測定した。
カラム:内径6mm×長さ15cm オクタデシルシリル化シリカゲル(「AA12S05-1506WT」ワイエムシィ社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:264nm)
カラム温度:40℃
移動相:リン酸二水素アンモニウム5.175gを900mLの水に溶かし、液体クロマトグラフィー用アセトニトリル100mLを加える。
流速:ブリモニジンの保持時間が約5分になるように設定
【0078】
(結果)
【表2】
PP製容器、PE製容器、PET製容器のいずれにおいても、電子線滅菌がされた透明性容器に水性液剤(点眼液検体)を収容することで、水性液剤中のブリモニジン酒石酸塩の光安定性が向上した。さらに、ベンザルコニウム塩化物を配合することで、水性液剤中のブリモニジン酒石酸塩の光安定性が向上した。
【0079】
[試験例2]光安定性の測定
(処方)精製水にブリモニジン酒石酸塩(HANGZHOU DELI CHEMICAL CO.,LTD)、ベンザルコニウム塩化物を添加し、pH調整剤(NaOH及び/又はHCl)によりpHを6.5に調整し、表3に示す点眼液検体を得た。なお、表中の数値はw/v%である。
【表3】
【0080】
試験例1の容器の処理の欄の処理を行い、電子線滅菌処理されていない容器(PP製)に、処方例3の点眼液検体5mLを注入し、電子線滅菌処理された容器(PP製)に処方例4の点眼液検体5mLを注入し、ノズル及び蓋を取り付けた。それぞれの検体を光安定性試験装置(LT-120A-WCD、ナガノサイエンス株式会社製)に配置し、総近紫外放射エネルギーを20W・h/m2に設定し、光照射を行った。光照射後の検体中のそれぞれのブリモニジン酒石酸塩含量を、試験例1のブリモニジン酒石酸塩含量の測定の欄において示す条件で高速液体クロマトグラフシステム(HPLC、島津製作所社製)によって測定した。試験例1のブリモニジン酒石酸塩の残存率の欄に示す算出式に従ってブリモニジン酒石酸塩の残存率(%)を算出した。結果を表4に示す。
【0081】
(結果)
【表4】
ブリモニジン酒石酸塩を0.001%と低い濃度で含む水性液剤についても、ベンザルコニウム塩化物を配合し、電子線滅菌がされた透明性容器に収容することで、水性液剤中のブリモニジン酒石酸塩の光安定性が向上した。
【0082】
[試験例3]光安定性の測定
(処方)精製水にブリモニジン酒石酸塩(HANGZHOU DELI CHEMICAL CO.,LTD)、ホウ酸(富士フイルム和光純薬株式会社)、ベンザルコニウム塩化物、並びに表5に記載の添加物を添加濃度となるように添加して溶かしたのち、pH調整剤(NaOH及び/又はHCl)によりpHを6.5に調整し、点眼液検体を得た。なお、表中の数値はw/v%である。
【表5】
【0083】
試験例1の容器の処理の欄の処理を行い、電子線滅菌処理されていない容器(PP製)と、電子線滅菌処理された容器(PP製)とに、処方例1及び処方例5の点眼液検体5mLをそれぞれ注入し、ノズル及び蓋を取り付けた。それぞれの検体を光安定性試験装置(LT-120A-WCD、ナガノサイエンス株式会社製)に配置し、総近紫外放射エネルギーを50W・h/m2に設定し、光照射を行った。光照射後の検体中のそれぞれのブリモニジン酒石酸塩含量を、試験例1のブリモニジン酒石酸塩含量の測定の欄において示す条件で高速液体クロマトグラフシステム(HPLC、島津製作所社製)によって測定した。試験例1のブリモニジン酒石酸塩の残存率の欄に示す算出式に従ってブリモニジン酒石酸塩の残存率(%)を算出した。結果を表6に示す。
【0084】
(結果)
【表6】
水性液剤に追加の添加物が含まれる場合も、電子線滅菌された透明性容器に収容することで、水性液剤中のブリモニジン酒石酸塩の光安定性が向上した。
【0085】
製造例
表7~10に示す組成の水性液剤を調製し、同表に示す容器に収容し、点眼剤を製造することができる。各容器の仕様、ボトル形状、ボトル材質、ボトルの滅菌方法、及び50Lスケールでの製造方法については、後述の通りである。なお、表中の数値はw/v%である。
【0086】
【表7】
【表8】
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
【0087】
<各容器の仕様>
各容器は、ボトル(無色ポリエチレンテレフタレート(PET)、無色ポリエチレン(PE)、無色ポリプロピレン(PP)、褐色PET、又は、環状オレフィンコポリマー(COP))、ノズル(ポリエチレン)、及びキャップ(ポリプロピレン)で構成されている。また、各容器は製品ラベルとしてシュリンク包装、又はシールされている。例えば、シールとは、ラベルがボトルの表面に糊付けされていることを意味する。
【0088】
<ボトル形状>
ボトルの寸法は、約23mm×約17mm×約50mmであり、樹脂重量は約3gである。その形状は、アイベータ(登録商標)配合点眼液(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトルと同様である。PETボトルの寸法は、約30mm×約16.7mm×約67.6mmであり、樹脂重量は約5.2gであり、その形状は、マイティア(登録商標)CL(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトルと同様である。
【0089】
<ボトル材質>
PETは、マイティア(登録商標)CL(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトル材質と同様である。ポリエチレンは、低密度PEであり、アイベータ(登録商標)配合点眼液(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトル材質と同様である。PPは、プロピレン成分/エチレン成分がモル比又は重量比で50/50~99.9/0.1として構成されているプロピレン-エチレン共重合体であり、ソフティア点眼液0.02%(製造販売元:千寿製薬株式会社)のボトル材質と同様である。COPは、ロートひとやすめ(製造販売元:ロート製薬株式会社)のボトル材質と同様である。
【0090】
<ボトルの滅菌方法>
EB(電子線照射)滅菌:点眼ボトルは電子線を10~60kGy照射により滅菌処理される。
EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌:点眼ボトルはエチレンオキサイド濃度400~700mg/L、温度40~50℃、相対湿度45~85%、処理時間3時間以上の条件で滅菌処理される。
VHP(過酸化水素ガス:Vaporous Hydrogen Peroxide)滅菌:点眼ボトルは、3%VHP噴霧、温度20~50℃、相対湿度30~90%、処理時間約1時間の条件で滅菌処理される。
γ線(γ線滅菌):ボトルはγ線を20~60kGy照射により滅菌処理される。
【0091】
<点眼剤(処方例5)の50Lスケールでの製造方法>
50Lステンレス容器に精製水と所定量のホウ酸、ホウ砂、クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、濃グリセリン及びブリモニジン酒石酸塩、ベンザルコニウム塩化物を投入して撹拌する。すべての成分が溶解したことを確認し、精製水(洗い込みを含む)で重量メスアップを行い、点眼液を調製する。その後、点眼液を孔径0.22μmのフィルターにてろ過を行い、ボトルに充填し、その後、ボトルにノズルとキャップを装着する。