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特開2024-97781包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム
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  • 特開-包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム 図1
  • 特開-包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097781
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240711BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240711BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240711BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240711BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240711BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B32B7/02
C08J5/18 CES
B29C48/21
B29C48/305
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063442
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2020028597の分割
【原出願日】2020-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 咲衣
(57)【要約】
【課題】包装に用いられるフィルムであって、優れた透明性や透視感、光沢感及び溶断シール強度を備える包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。さらには、環境への負荷の低減を図る。
【解決手段】包装に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、外表面層及び内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、エチレン系重合体は、密度を0.904~0.945g/cmとし、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minとし、狭角拡散透過率(LSI)が50%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、
前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、
前記エチレン系重合体は、
(e1)密度を0.904~0.945g/cmとし、
(e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minとし、
狭角拡散透過率(LSI)が50%以下である
ことを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記エチレン系重合体(E)が直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記エチレン系重合体(E)がチーグラー・ナッタ触媒から製造されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヘーズ値が6%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢度が100%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
前記エチレン系重合体(E)がバイオマス由来エチレン系重合体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムよりなる包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、透明性、光沢性に優れていることから、包装用材として様々な形態に加工され広く用いられている。その中でも、袋状に成形されて使用されることが多く、袋状に成形される際には溶断シールにより、加工されることがある。
【0003】
溶断シールされて袋状に成形されるポリプロピレンフィルムとして、MD(流れ)方向に低倍率で延伸されるフィルムが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。しかしながら、低倍率の延伸であるため、延伸ムラが生ずるおそれがある。また、高温下における延伸のため、シートのロールへの付着による製膜性や外観性の低下が懸念される。
【0004】
他にも、表層にオレフィン系共重合体やポリエチレン系樹脂等の低融点の樹脂を積層することによってシール性を向上させたフィルムが提案されている(例えば、特許文献2~4等参照。)。しかしながら、内表面に低融点の樹脂を使用することによりフィルムにべたつきが生じやすく、滑り性や耐ブロッキング性の低下の懸念がある。また、滑り性や耐ブロッキング性の低下により加工適性や開封性の悪化のおそれが生ずる。
【0005】
ところで、近年では、再生可能資源の利用度を高めて環境負荷を軽減した循環型社会への取り組みが積極的に求められている。再生可能資源は、主に植物や植物由来の原料を加工した資源であり、バイオマス資源とも称される。バイオマス資源の場合、植物体の生育に伴い大気中の二酸化炭素は吸収される。そして、バイオマス資源として燃料等に利用されると再び水と二酸化炭素に分解される。従って、二酸化炭素の量は増えない。つまり、バイオマス資源はカーボンニュートラルの点から今後大きく取り入れる必要のある資源である。
【0006】
プラスチックの分野においては、バイオマス由来のプラスチックとしてポリ乳酸や生分解性ポリマー等のバイオマス由来プラスチックが製造されているものの、生産量が限られており、広く普及しているということはできない。一方、汎用プラスチックのうち、最も多く使用される材料であるポリエチレンに関して、植物由来の糖分からエタノールを経てポリエチレンを得る手法が商業化され、普及している。
【0007】
バイオマス由来のポリエチレンを使用した樹脂フィルムとして、エチレン系樹脂のみを使用したフィルムが提案されている(例えば、特許文献5参照。)しかしながら、このフィルムにおいては、エチレン系樹脂のみで構成されているため、耐熱性に劣る。また、ポリプロピレン系樹脂にバイオマス由来のポリエチレンが添加されたフィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、これらフィルムは、透明性や透視感に劣るきらいがある。
【0008】
そこで、発明者らは鋭意検討を重ね、包装分野において多用され、特に溶断シールにより袋状に成形される二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、優れた透明性や光沢感及び溶断シール強度を備える二軸延伸ポリプロピレンフィルムを開発するに至り、さらには、バイオマス資源に由来する樹脂を多く含有することで環境負荷の低減を図ることも可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-169050号公報
【特許文献2】特開2004-90543号公報
【特許文献3】特開2007-253349号公報
【特許文献4】特開2013-27977号公報
【特許文献5】特許第5862055号公報
【特許文献6】特開2018-65267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、優れた透明性や透視感、光沢感及び溶断シール強度を備える包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。さらには、環境への負荷の低減をも図ることが可能な包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、第1の発明は、包装に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、前記エチレン系重合体は、(e1)密度を0.904~0.945g/cmとし、(e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minとし、狭角拡散透過率(LSI)が50%以下であることを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記エチレン系重合体(E)が直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記エチレン系重合体(E)がチーグラー・ナッタ触媒から製造されたことを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0014】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヘーズ値が6%以下であることを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0015】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかにおいて、JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢度が100%以上であることを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0016】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記エチレン系重合体(E)がバイオマス由来エチレン系重合体であることを特徴とする包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに係る。
【0017】
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかの包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムよりなる包装用袋に係る。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、包装に用いられ、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記外表面層及び前記内表面層はそれぞれ同一ないし異なるプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物からなり、前記中間層は、プロピレン系重合体を85~98重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とする組成であり、前記エチレン系重合体は、(e1)密度を0.904~0.945g/cmとし、(e2)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)を1.0~8.0g/10minとし、狭角拡散透過率(LSI)が50%以下であるため、優れた透明性や透視感、光沢感及び溶断シール強度を備える。
【0019】
第2の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1の発明において、前記エチレン系重合体(E)が直鎖状低密度ポリエチレンであるため、より優れた透明性や光沢感を備える。
【0020】
第3の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1又は第2の発明において、前記エチレン系重合体(E)がチーグラー・ナッタ触媒から製造されるため、より優れた溶断シール性を備える。
【0021】
第4の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヘーズ値が6%以下であるため、優れた透明性、透視感を備える。
【0022】
第5の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1ないし第4の発明のいずれかにおいて、JIS Z 8741(1997)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢度が100%以上であるため、優れた光沢性を備え、高級感のある外観を有する。
【0023】
第6の発明の包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムによると、第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記エチレン系重合体(E)がバイオマス由来エチレン系重合体であるため、環境負荷の低減を図ることができる。
【0024】
第7の発明に係る包装用袋によると、第1ないし第6の発明のいずれかの包装用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムよりなるため、優れた透明性や透視感、光沢感及び溶断シール強度を有するフィルムより構成され、高級感があり丈夫で破れ等が生じにくい包装用袋とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係る三層構造の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの概略断面図である。
図2】本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを袋状物とし、溶断シール強度測定に用いる該袋状物の試験片の切り出し位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のフィルムは、溶断シールによる製袋に用いられる。半折されたフィルムに対し、加熱された棒状のヒーター(溶断刃)が、底部となる折部の直交方向に押し当てられて該フィルムが断ち切られることによって、熱でフィルムが接着されてシールされ、袋状に成形される。溶断シールによる製袋は公知の方法のうちから適宜選択される。
【0027】
図1は、本発明の一実施例に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルム10の概略断面図である。フィルム10は、少なくとも外表面層11、中間層12、内表面層13の3層以上の複数層から構成される積層フィルム20である。このフィルム10は、各層の原料樹脂が溶融されてTダイ等から所定の厚さとなるよう吐出され共押出しされたシートを公知の延伸方法により二軸延伸して製造される。なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルム10は取り扱い容易や強度の観点からフィルム厚は1~100μmの範囲とすることが好ましい。
【0028】
フィルム10の外表面層11及び内表面層13はプロピレン系重合体を主体とする樹脂組成物より構成され、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)やプロピレン-エチレンランダム共重合体等適宜の樹脂が選択される。ポリプロピレン系重合体は、耐熱性や耐薬品性、強度に優れる。外表面層11と内表面層13は同一の樹脂でもいいし異なる樹脂を使用してもよく、フィルムの用途に応じて適宜選択可能である。なお、外表面層11及び内表面層13には、必要に応じてアンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、着色剤等の添加剤が添加される。
【0029】
外表面層11及び内表面層13は、後述の実施例に記載されるように、該表面層の厚みは0.8μmよりも厚く構成される。該表面層の厚みが0.8μm以下では、透明性や光沢性が損なわれるためである。
【0030】
そして、中間層はプロピレン系重合体とエチレン系重合体(E)とからなり、その組成は、プロピレン系重合体が85~98重量%、エチレン系重合体が2~15重量%である。好ましくは、プロピレン系重合体が92~98重量%、エチレン系重合体が2~8重量%である。エチレン系重合体の添加量が2重量%よりも少ない場合、フィルムの溶断シール強度が低下し、所望する強度が得られないおそれがある。また、エチレン系重合体の添加量が15重量%よりも多い場合、フィルムの透明性や光沢性が損なわれるおそれがある。
【0031】
中間層に用いられるプロピレン系重合体は、外表面層や内表面層に使用されるプロピレン系重合体と同一でもいいし異なってもよい。プロピレン系重合体は、所望するフィルム性能により適宜選択されることができる。
【0032】
中間層に用いられるエチレン系重合体(E)は、密度が0.904~0.945g/cm(e1)であり、好ましくは、0.916~0.938g/cmである。そして、メルトフローレート(MFR)(190℃、2.16kg荷重)が1.0~8.0g/10min(e2)であり、好ましくは1.0~5.0g/10minである。密度が0.904g/cmよりも小さい場合、フィルムの透明性、光沢性が損なわれる可能性がある。密度が0.945g/cmよりも大きい場合についても、同様にフィルムの透明性、光沢性が損なわれる可能性がある。メルトフローレートについても、上記範囲を下回るか上回った場合には、フィルムの透明性や光沢性が損なわれる可能性があり、溶断シール強度も低下するおそれがある。
【0033】
また、エチレン系重合体(E)は、直鎖状低密度ポリエチレンとするのがよい。フィルムとしたときに、透明性や光沢性に優れる。そして、エチレン系重合体(E)は、チーグラー・ナッタ触媒を使用した重合法により製造されるのがよい。メタロセン触媒を用いた重合法により製造されたエチレン系重合体よりも、フィルムとしたときの溶断シール強度が上昇する傾向があるためである。
【0034】
エチレン系重合体(E)は、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂とするのがよい。バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂である。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成し、エチレン化したのち公知の樹脂化の工程でポリエチレンを製造する。このバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、最終製品の環境負荷の低減に寄与する。
【0035】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヘーズは6%以下とするのがよい。ヘーズが6%を下回るフィルムは透明性に優れる。ヘーズは、下記の実施例で述べる通り、JIS K 7136(2000)に準拠して測定される。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの狭角拡散透過率(LSI)は50%以下である。狭角拡散透過率(LSI)が50%を超えると、透視感に劣るおそれがあり、包装用フィルムの用途として適格性が劣る場合がある。
【0036】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢度は100%以上とするのがよい。表面光沢度が100%を上回るとフィルムの外観に高級感がでる。表面光沢度は、下記の実施例で述べる通り、JIS Z 8741(1997)に準拠して測定される。
【実施例0037】
[フィルムの成形]
試作例1~16及び比較例1,2のフィルムについて、以下のように成形した。後述の各材料を混練、溶融し、内表面層、中間層、外表面層の順に積層されるように設定し、240度に設定した三層共押出Tダイフィルム成型機から共押出し、50度の冷却ロールで冷却、固化して原反となるシート状物を得た。次に、該シート状物を設定温度100~115℃で予熱し、縦(MD方向)4.8倍に延伸した後、設定温度135℃でアニールした。テンターにて設定温度180℃で予熱し、設定温度155℃で横(TD方向)8.0倍に延伸した後、設定温度160℃でアニールした。テンターを出たのちにコロナ処理放電を施し、巻取機で巻き取って二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは厚みが30μmになるよう製膜した。なお、メルトフローレート(MFR)はJIS K 7210(2014)に準拠し、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定されたメルトフローレートである。
【0038】
[各層におけるプロピレン系重合体としての使用材料]
外表面層、内表面層の樹脂組成物及び中間層を組成するポリプロピレン系樹脂として下記の樹脂PP1、PP2を使用した。外表面層及び内表面層には、アンチブロッキング剤として粉末合成シリカ(富士シリシア株式会社製、商品名「サイリシア730」)を適宜添加した。
・樹脂PP1:ホモポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名「FL203D」、密度0.90g/cm、MFR:3.0g/10min)
・樹脂PP2:ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名「FX4G」、密度0.90g/cm、MFR:5.0g/10min)
【0039】
[中間層のエチレン系重合体としての使用材料]
中間層では、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE1~PE3、バイオマス由来ではないポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE4~PE10をそれぞれ使用した。
・樹脂PE1:チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SLH118」、密度:0.916g/cm、MFR:1.0g/10min)
・樹脂PE2:チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SLH218」、密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min)
・樹脂PE3:チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたバイオマス由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SGF4960」、密度:0.961g/cm、MFR:0.34g/10min)
・樹脂PE4:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名「4040FC」、密度:0.938g/cm、MFR:3.5g/10min)
・樹脂PE5:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名「4540F」、密度:0.944g/cm、MFR:4.0g/10min)
・樹脂PE6:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名「2040FC」、密度:0.919g/cm、MFR:5.0g/10min)
・樹脂PE7:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名「022GS」、密度:0.904g/cm、MFR:8.0g/10min)
・樹脂PE8:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「SP2020」、密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min)
・樹脂PE9:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「SP3010」、密度:0.926g/cm、MFR:0.8g/10min)
・樹脂PE10:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、商品名「015AN」、密度:0.911g/cm、MFR:14.0g/10min)
【0040】
[試作例1]
試作例1は、内表面層に樹脂PP1を使用して層厚1.0μmとし、中間層の組成を樹脂PP1が98重量%、樹脂PE1が2重量%とし、外表面層に樹脂PP2を使用して層厚1.2μmとなるよう製膜されたフィルムである。なお、コロナ処理は外表面層側表面に施した。
【0041】
[試作例2]
試作例2は、中間層の組成を樹脂PP1が96重量%、樹脂PE1が4重量%とした以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。
【0042】
[試作例3]
試作例3は、中間層の組成を樹脂PP1が92重量%、樹脂PE1が8重量%とした以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。
【0043】
[試作例4]
試作例4は、中間層の組成を樹脂PP1が85重量%、樹脂PE1が15重量%とした以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。
【0044】
[試作例5]
試作例5は、内表面層の層厚を0.8μm、外表面層の層厚を0.8μmとした以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0045】
[試作例6]
試作例6は、中間層の組成を樹脂PP1が75重量%、樹脂PE1が25重量%とした以外は試作例5と同様に成形されたフィルムである。
【0046】
[試作例7]
試作例7は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE2に変更した以外は試作例5と同様に成形されたフィルムである。
【0047】
[試作例8]
試作例8は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE4に変更した以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0048】
[試作例9]
試作例9は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE5とした以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0049】
[試作例10]
試作例10は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE6に変更した以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0050】
[試作例11]
試作例11は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE7に変更した以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0051】
[試作例12]
試作例12は、内表面層に樹脂PP2を使用し、中間層の組成を樹脂PP1が85重量%、樹脂PE2が15重量%とし、外表面層に樹脂PP1を使用した以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。なお、コロナ処理は内表面層側表面に施した。
【0052】
[試作例13]
試作例13は、中間層の樹脂PE2を樹脂PE8とした以外は試作例12と同様に成形されたフィルムである。
【0053】
[試作例14]
試作例14は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE9に変更した以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0054】
[試作例15]
試作例15は、中間層の樹脂PE1を樹脂PE10に変更した以外は試作例4と同様に成形されたフィルムである。
【0055】
[試作例16]
試作例16は、中間層の組成を樹脂PP1が95.2重量%、樹脂PE3が4.8重量%とした以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。
【0056】
[比較例1]
比較例1は、中間層の組成を樹脂PP1が100重量%とした以外は試作例1と同様に成形されたフィルムである。
【0057】
[比較例2]
比較例2は、内表面層と外表面層の樹脂を入れ替えて作成した以外は比較例1と同様に成形されたフィルムである。なお、コロナ処理は内表面層側表面に施した。
【0058】
試作例1~16及び比較例1,2のフィルムに関し、各層の樹脂組成とコロナ処理を施した層及び内表面層と外表面層の厚みについて表1~4に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
[フィルムの性能の評価]
試作例1~16及び比較例1,2のフィルムに関し、ヘーズ、狭角拡散透過率、表面光沢度(内表面層、外表面層)及び溶断シール強度の各項目についてそれぞれ測定した。
【0064】
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)の測定は、透明性の指標であって、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH-5000)を使用して測定を行った。試作例1~16及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が4.0%以下を優良品として「◎」、4.1~6.0%を良品として「〇」、6.1%以上のものを「×」とした。
【0065】
[狭角拡散透過率の測定]
狭角拡散透過率(LSI)(%)は、透視感の指標であって、LSIは全光線透過光量に対する散乱角0.4°以上1.2°以下の散乱光量の比率を示すものである。LSIは、肉眼の透視感の目安であり、数値が低いほど透視感に優れる。LSIは、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して測定を行った。試作例1~16及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が35.0%以下を優良品として「◎」、35.1~50.0%を良品として「〇」、50.1%以上のものを「×」とした。
【0066】
[表面光沢度の測定]
表面光沢度(%)の測定は、フィルム表面の光沢感を示す指標であって、JIS Z 8741(1997)に準拠し、デジタル光沢計(日本電飾工業株式会社製、VG-7000)を使用して測定した。試作例1~16及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が121%以上を優良品として「◎」、100~120%を良品として「〇」、99%以下のものを「×」とした。
【0067】
[溶断シール強度の測定]
試作例1~16及び比較例1,2のフィルムを使用して溶断シールにより、内表面層が袋の内側となるように製袋を行った。MD方向に流れるフィルムを半折し、溶断シール機(トタニ技研工業株式会社製、「HK-40V」)を用い、流れ方向に対して直角に配設された溶断刃を押し当てて溶断シールを行って袋状物を成形した。図2の概略図に示されるように、底辺31が折返部41であり両側辺部32,33が溶断シール部42,43である袋状物30とした。溶断シール条件は以下のとおりである。図中の符号34は開口部である。
・シール温度:300℃、350℃、400℃
・熱刃先端角度:120度
・溶断間隔:200mm
・ショット数:72枚/分
【0068】
各シール温度で得られた袋状物の中から20枚ずつ抽出して、下記の測定を行った。1の袋状物において、図2に示されるように、両側辺の溶断シール部42,43それぞれから溶断シール部が中央に配置されるように幅15mm、長さ100mmの試験片50を切り出した。図中の一点鎖線は切り取り線51である。該試験片を引張試験機(株式会社島津製作所製、「AUTO GRAPH AGS-X 50N」)のチャックで固定し、試験片のチャック距離が50mmとなるように調整した。200mm/minで引張し、溶断シール部が破断する強度を測定した。それぞれのシール温度(300℃、350℃及び400℃)によって製袋された溶断シール部におけるすべての測定結果を平均した値を溶断シール強度(N/15mm)とした。
【0069】
[総合評価]
総合評価では、後述の各項目における評価のすべてで「◎」の結果が得られた場合に「A」、いずれかで1項目でも「〇」が含まれるものを「B」、いずれか1項目でも「×」が含まれるものを「C」とした。その結果を後述の表5~表8に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
[結果と考察]
表5~表8に示すように、総合評価が「C」となったのは試作例5~7,14~16及び比較例1,2であった。試作例5及び7は、それぞれ試作例4及び12の外表面層及び内表面層の層厚を薄くした試作例である。外表面層及び内表面層の層厚がそれぞれ0.8μmよりも薄くなると、透明性が低下し、光沢感も減少してしまうため、所望する機能を有するフィルムが得られないことがわかった。また、試作例6は、試作例5の中間層の組成のうちエチレン系重合体の比率を高めたものであって、試作例5と比べてさらに透明性や光沢感に劣るため、中間層のエチレン系重合体の比率の上限が15重量%であることが理解できた。
【0075】
試作例14は、試作例4の中間層のうち、エチレン系重合体のMFR値が小さい樹脂に組成を変更した試作例である。試作例15は、試作例4の中間層のうち、エチレン系重合体のMFR値が大きい樹脂に組成を変更した試作例である。どちらも試作例4と比較して透視感に劣ることがわかったため、中間層に用いられる樹脂のMFRの値が所定範囲内であることが必要であることがわかった。また、試作例16をみてみると、中間層を組成するエチレン系重合体の密度が一定以上となると透視感や光沢感に劣ることも理解できた。
【0076】
一般に、コロナ処理を行った面は、熱融着しにくい傾向があるものの、中間層の組成に規定のエチレン系重合体を規定量含有することによれば、溶断シール強度を向上させることができることが示された。特に、比較例1及び2をみると他の試作例に比して溶断シール強度が良好でない傾向がある。
【0077】
これに対し、規定のエチレン系重合体を規定量中間層に含む試作例については、全ての評価が優良ないし良であって、所望の機能を有するフィルムとすることができ、溶断シールにより製袋されたときに十分な強度を持ちつつ、透明性や透視感、光沢感に優れた機能性並びに高級感を有する袋状物を得ることが可能なフィルムが提供できることがわかった。
【0078】
さらには、バイオマス由来のエチレン系重合体を用いた試作例1~4及び試作例12についても評価の良い優れたフィルムとすることができたため、環境負荷の低減を図りつつ、優れた透明性や透視感、光沢感を備えつつ、溶断シール強度にも優れたフィルムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の包装用の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、優れた透明性や透視感、光沢感を備え、さらには溶断シール強度に優れることから、食品や雑貨の包装用袋としての用途は多様である。さらには、バイオマス資源に由来する樹脂を多く含有することにより、環境負荷の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 二軸延伸ポリプロピレンフィルム
11 外表面層
12 中間層
13 内表面層
20 積層フィルム
30 袋状物
31 底部
32,33 側辺部
34 開口部
41 折返部
42,43 溶断シール部
図1
図2