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  • 特開-複層構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097826
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】複層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240711BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B32B17/10
C03C27/12 N
C03C27/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071283
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2020059417の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
(57)【要約】
【課題】ガラス層を介しての視認性を向上可能な複層構造体を提供する。
【解決手段】本複層構造体は、樹脂層と、前記樹脂層上に接着剤層を介して積層されたガラス層と、を有し、前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、前記樹脂層と前記接着剤層との界面の算術平均うねりWaは10μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層上に接着剤層を介して積層されたガラス層と、を有し、
前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、
前記樹脂層と前記接着剤層との界面の算術平均うねりWaは10μm以下である複層構造体。
【請求項2】
前記樹脂層の厚みは、20μm以上1000μm以下である請求項1に記載の複層構造体。
【請求項3】
前記樹脂層は透明である請求項1又は2に記載の複層構造体。
【請求項4】
前記樹脂層は加飾層である請求項1又は2に記載の複層構造体。
【請求項5】
前記加飾層は黒色である請求項4に記載の複層構造体。
【請求項6】
前記樹脂層の前記ガラス層が積層される側とは反対側に、第2接着剤層を介して金属層が積層された請求項1乃至5の何れか一項に記載の複層構造体。
【請求項7】
前記金属層は強磁性体である請求項6に記載の複層構造体。
【請求項8】
前記樹脂層の前記ガラス層が積層される側とは反対側に、第2接着剤層を介して緩衝層が積層された請求項1乃至7の何れか一項に記載の複層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の層を積層させた複層構造体が知られている。一例として、薄いガラス層(ガラスフィルム)上に銀反射層を積層させた複層構造体が挙げられる。このような複層構造体は、表面硬度、寸法安定性、化学耐性と、軽さ、可撓性とを併せ持つ。そのため、このような複層構造体を活用すれば、従来の板ガラスの課題であった、重量や割れによる危険を解消でき、様々な用途への置き換えの可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-231744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂層上に接着剤層を介して上記のような薄いガラス層を積層した複層構造体も考えられる。このような複層構造体では、ガラス層を介して下層側が視認できるが、下層側の視認性が低下する場合がある。視認性の低下は、例えば、複層構造体を鏡面仕上げに利用する場合や化粧板に利用する場合等の品質低下につながる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ガラス層を介しての視認性を向上可能な複層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本複層構造体は、樹脂層と、前記樹脂層上に接着剤層を介して積層されたガラス層と、を有し、前記ガラス層の厚みは、10μm以上300μm以下であり、前記樹脂層と前記接着剤層との界面の算術平均うねりWaは10μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ガラス層を介しての視認性を向上可能な複層構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る複層構造体を例示する断面図である。
図2】第1実施形態の変形例1に係る複層構造体を例示する断面図である。
図3】第1実施形態の変形例2に係る複層構造体を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[複層構造体]
図1は、第1実施形態に係る複層構造体を例示する断面図である。図1に示すように、複層構造体10は、樹脂層11と、接着剤層12と、ガラス層13と、接着剤層14とを有している。複層構造体10において、ガラス層13は、樹脂層11上に接着剤層12を介して積層されている。又、樹脂層11の接着剤層12が積層されている側とは反対側の面には、接着剤層14が形成されている。
【0011】
但し、接着剤層14は必要に応じて設ければよい。例えば、樹脂層11上に接着剤層12を介して積層されたガラス層13を被着体に貼り付ける直前に、樹脂層11の下面に両面テープ等を貼り付けてもよいし、被着体側に両面テープ等を貼り付けてもよい。
【0012】
なお、複層構造体10の平面形状(ガラス層13の上面の法線方向から視た形状)は、矩形状、円形状、楕円形状、これらの複合、その他、適宜な形状とすることが可能である。複層構造体10は、可撓性を有するため、曲面にも容易に貼り付けることができる。
【0013】
発明者らは鋭意検討を重ね、ガラス層13を介して下層側を視認する場合、下層の平面性が悪いと視認性が低下すること、そして樹脂層11と接着剤層12との界面の平面性が視認性の低下に最も大きく寄与していることを突き止めた。
【0014】
ここで、平面性とは、基準長さにおける平均面からの平均的な高低差(すなわち、うねり)であり、例えば、算術平均うねりWaで表せる。本願において、算術平均うねりWaは、JIS-B-0601(2013)に準拠して、基準長さ10cmで測定される値を意味する。
【0015】
樹脂層11と接着剤層12との界面の算術平均うねりWa、すなわち、樹脂層11の接着剤層12と接する面の算術平均うねりWaは、10μm以下である。樹脂層11と接着剤層12との界面の算術平均うねりWaは、5μm以下であることがより好ましい。樹脂層11と接着剤層12との界面の算術平均うねりWaの下限値は0μmであってもよいが、通常は0μmよりも大きな値(例えば、数μm)となる。
【0016】
その際、ここで言う算術平均うねりWaは欠点などの局所的な盛り上がりは含まない。
【0017】
樹脂層11と接着剤層12との界面の算術平均うねりWaが上記の値の範囲内であれば、樹脂層11の接着剤層12と接する面の平面性が向上するため、ガラス層13を介して下層側を視認する場合の視認性を向上できる。その結果、例えば、複層構造体10を鏡面仕上げに利用する場合や透明な保護フィルムや化粧板等に利用する場合の品質向上(質感の向上)が可能となる。
【0018】
なお、接着剤層12は樹脂層11の形状に追従するため、接着剤層12の樹脂層11と接する面の算術平均うねりWaは、樹脂層11の接着剤層12と接する面の算術平均うねりWaと等しくなる。
【0019】
樹脂層11の成形時の成形条件を調整することや、成形後に樹脂層の表面を研磨すること等により、樹脂層11と接着剤層12との界面の算術平均うねりWaを上記の範囲内にすることができる。或いは、市販の樹脂フィルムを入手して算術平均うねりWaを測定し、算術平均うねりWaが上記の範囲内に入る樹脂フィルムを選定してもよい。
【0020】
ここで、複層構造体10の各部の材料等について説明する。
【0021】
[樹脂層]
樹脂層11は、ガラス層13等を積層する基材となる層であり、可撓性を有する。樹脂層11は、一つ又は複数の層から構成されている。樹脂層11が複数層からなる場合には、接着機能を有する密着層を介在させ積層させることが好ましい。樹脂層11の総厚みは、可撓性の観点から20μm以上1000μm以下であればよく、好ましくは25μm以上500μm以下、より好ましくは25μm以上300μm以下の範囲である。
【0022】
樹脂層11の弾性率は、うねりの観点から、1GPa以上であることが好ましく、10GPa以下であることが好ましい。
【0023】
樹脂層11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンナフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0024】
例えば、樹脂層11に衝撃吸収性を持たせたい場合には、樹脂層11の材料としてウレタン系樹脂を用いることが好ましい。又、樹脂層11に硬さを持たせたい場合には、樹脂層11の材料としてポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
樹脂層11は、透明であってもよい。例えば、樹脂層11及び接着剤層12を可視光に対して透明な材料から形成した場合、複層構造体10を車両の窓ガラスを飛び石等から保護するための保護フィルムとして用いることができる。このような用途として、表面が樹脂である保護フィルムを用いることも考えられるが、表面が樹脂の場合には保護性能が低く、又、排気ガス等の影響で表面の樹脂が変色する場合がある。
【0026】
一方、複層構造体10は、表面がガラス層13であるから、表面が樹脂である保護フィルムに比べて、表面がキズ付き難く、高い保護性能を発揮できる。又、複層構造体10は、表面がガラス層13であるから、耐久性や耐薬品性が高く、下層にある樹脂層11が変色等の劣化するおそれを低減できる。
【0027】
樹脂層11は、意匠性を付与した不透明な加飾層であってもよい。加飾層は、単色の色味を有する層であってもよく、任意の模様や図形や文字等が付与された層であってもよい。
【0028】
例えば、樹脂層11を黒色の加飾層とすることで、複層構造体10によりピアノフィニッシュ(ピアノ塗装、ピアノブラック等と称される場合もある)に相当する鏡面仕上げを実現できる。
【0029】
従来のピアノフィニッシュは、樹脂層等の基材にウレタン系樹脂を複数層積層する手法が採用されており、大変煩雑な工程を経て形成される。又、この手法で得られたピアノフィニッシュは、表面が樹脂であるためキズ付き易く、かつ耐久性や耐薬品性に劣るものであった。
【0030】
一方、樹脂層11を黒色の加飾層とした複層構造体10を用いる場合には、複層構造体10を被着体に貼り付けるだけで、煩雑な工程を経ることなく、容易にピアノフィニッシュに相当する鏡面仕上げを実現できる。又、複層構造体10は、表面がガラス層13であるから、表面が樹脂である従来のピアノフィニッシュに比べて、表面がキズ付き難く、かつ耐久性や耐薬品性が高くなる。
【0031】
黒色の加飾層は、例えば、樹脂に黒系着色剤を含有させることで実現できる。或いは、樹脂に、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、及びイエロー系着色剤、更に必要に応じて黒系着色剤を組み合わせて含有させてもよい。
【0032】
ここで、黒色とは、基本的には、L*a*b*表色系で規定されるL*が、35以下(0~35)[好ましくは30以下(0~30)、更に好ましくは25以下(0~25)]となる黒色系色を意味している。なお、黒色において、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択できる。a*やb*としては、例えば、両方とも、-10~10であることが好ましく、より好ましくは-5~5であり、特に好ましくは-3~3の範囲(中でも0又はほぼ0)である。
【0033】
又、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、例えば、色彩色差計(商品名「CR-200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。又、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JISZ 8729に規定されている。
【0034】
[接着剤層]
接着剤層12としては、任意の適切な接着剤が用いられる。接着剤層12の厚みは、うねりの観点から、0.5μm以上25μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
【0035】
接着剤層12としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、紫外線硬化性アクリル系接着剤、紫外線硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性メラミン系接着剤、熱硬化性フェノール系接着剤、エチレンビニルアセテート(EVA)中間膜、ポリビニルブチラール(PVB)中間膜等が利用できる。
【0036】
接着剤層14を設ける場合は、接着剤層12として例示した任意の粘着剤や接着剤を用いることができる。接着剤層14の厚みは、例えば、接着剤層12と同様とすることができる。
【0037】
なお、本明細書において、粘着剤とは、常温で接着性を有し、軽い圧力で被着体に接着する層をいう。従って、粘着剤に貼着した被着体を剥離した場合にも、粘着剤は実用的な粘着力を保持する。一方、接着剤とは、物質の間に介在することによって物質を結合できる層をいう。従って、接着剤に貼着した被着体を剥離した場合には、接着剤は実用的な接着力を有さない。
【0038】
[ガラス層]
ガラス層13は、特に限定はなく、目的に応じて適切なものを採用できる。ガラス層13は、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。又、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記ガラスのアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以下である。
【0039】
ガラス層13の厚みは、ガラスの持つ表面硬度や気密性や耐腐食性を考慮すると、10μm以上が好ましい。又、ガラス層13はフィルムのような可撓性を有することが望ましいため、ガラス層13の厚みは300μm以下が好ましい。ガラス層13の厚みは、更に好ましくは30μm以上200μm以下、特に好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0040】
ガラス層13の波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。ガラス層13の波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4~1.65である。ガラス層13の密度は、好ましくは2.3g/cm~3.0g/cmであり、更に好ましくは2.3g/cm~2.7g/cmである。
【0041】
ガラス層13の成形方法は、特に限定はなく、目的に応じて適切なものを採用できる。代表的には、ガラス層13は、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃~1600℃程度の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製できる。ガラス層13の成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形されたガラス層は、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学的に研磨されてもよい。
【0042】
なお、ガラス層13の表面に、防汚層、反射防止層、導電層、反射層、加飾層等の機能層を設けてもよい。
【0043】
[製法]
樹脂層11、接着剤層12、ガラス層13の積層部は、例えば、プレス加工等により所定の形状に形成した樹脂層11とガラス層13とを接着剤層12を介して積層させることで得られる。或いは、樹脂層11とガラス層13とを接着剤層12を介してロールトゥロールプロセスを利用して連続的に積層後、プレス加工等により、任意のサイズに個片化してもよい。
【0044】
[用途]
複層構造体10は、例えば、建築物の壁面や家具や家電の表面に光沢を持たせる部材、保護フィルム、化粧板、パーテーション等に用いられる。以降に例示する複層構造体についても同様である。
【0045】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、第1実施形態とは層構造の異なる複層構造体の例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0046】
図2は、第1実施形態の変形例1に係る複層構造体を例示する断面図である。図2に示すように、複層構造体10Aは、樹脂層11の接着剤層12を介してガラス層13が積層される側とは反対側に、接着剤層16を介して金属層15が積層された点が、複層構造体10(図1参照)と相違する。
【0047】
樹脂層11を不透明な層(例えば、第1実施形態で説明した加飾層)とすることで、金属層15及び接着剤層16はガラス層13側からは視認できない。この場合、金属層15及び接着剤層16の表面の平面性は、ガラス層13側からの視認性の良否には寄与しない。
【0048】
金属層15の厚みは、可撓性の維持と強度向上の観点から、10μm以上2000μm以下であることが好ましい。金属層15の材料としては、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パーマロイ等が挙げられる。金属層15として、市販のステンレス箔、銅箔、アルミニウム箔等を用いてもよい。
【0049】
接着剤層16は、接着剤層12として例示した任意の粘着剤や接着剤を用いることができる。接着剤層16の厚みは、例えば、接着剤層12と同様とすることができる。
【0050】
このように、樹脂層11の下層に金属層15を設けることで、複層構造体10Aの可撓性を維持しながら強度を向上できる。
【0051】
又、金属層15の材料として、鉄、ニッケル、パーマロイ等の強磁性体を選択した場合には、複層構造体10Aに磁石を吸着させることができる。例えば、複層構造体10Aを冷蔵庫の表面に貼る化粧板として用いる場合、メモ用のマグネットや、小物を収納できるマグネット付ラック等を複層構造体10Aに吸着させることができる。
【0052】
なお、下層の金属層15への磁石の吸着は、樹脂層11、接着剤層12、及びガラス層13が可撓性を有するほど薄いから得られる効果であり、従来の厚い板ガラスを用いた場合には得られない。
【0053】
図3は、第1実施形態の変形例2に係る複層構造体を例示する断面図である。図3に示すように、複層構造体10Bは、樹脂層11の接着剤層12を介してガラス層13が積層される側とは反対側に、接着剤層16を介して緩衝層17が積層された点が、複層構造体10(図1参照)と相違する。
【0054】
樹脂層11を不透明な層(例えば、第1実施形態で説明した加飾層)とすることで、接着剤層16及び緩衝層17はガラス層13側からは視認できない。この場合、接着剤層16及び緩衝層17の表面の平面性は、ガラス層13側からの視認性の良否には寄与しない。
【0055】
緩衝層17は、クッション性を有する層である。緩衝層17の厚みは、良好なクッション性を発現する観点から、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。緩衝層17の材料としては、例えば、ウレタン系樹脂や各種発泡材料等が挙げられる。各種発泡材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。緩衝層17として、市販の発泡シートを用いてもよい。市販の発泡シートとしては、例えば、日東電工株式会社製のSCF(登録商標)が挙げられる。
【0056】
このように、樹脂層11の下層に緩衝層17を設けることで、複層構造体10Bのクッション性を高め、複層構造体10Bに外部から加わる衝撃を和らげることができる。なお、緩衝層17の代わりに、或いは緩衝層17に加えて、断熱層等の他の機能を有する層を積層してもよい。
【0057】
又、図2に示す複層構造体10Aにおいて、金属層15の下層に図3に示す接着剤層16及び緩衝層17を積層してもよい。
【0058】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10、10A、10B 複層構造体
11 樹脂層
12、14、16 接着剤層
13 ガラス層
15 金属層
17 緩衝層
図1
図2
図3