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特開2024-97838スタイラス及びセンサコントローラによって実行される方法、及びスタイラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097838
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】スタイラス及びセンサコントローラによって実行される方法、及びスタイラス
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240711BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240711BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20240711BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/03 400A
G06F3/044 B
G06F3/046 A
G06F3/041 500
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073422
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2020117528の分割
【原出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】久野 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(72)【発明者】
【氏名】今田 吉史
(57)【要約】
【課題】送受信スケジュールに基づいて決定される次の受信動作の開始タイミングで次の受信動作を開始した場合に比べ、スタイラスがアップリンク信号の受信に失敗する可能性を減らす。
【解決手段】本発明による方法は、センサコントローラ20とスタイラスSによって実行される方法であり、スタイラスSが、決定済みの送受信スケジュールに基づき、所定時間P1にわたってアップリンク信号USの受信動作を実行する第1のステップと、第1のステップによりアップリンク信号USの受信動作が実行された後、送受信スケジュールに基づき、アップリンク信号の次の受信動作を実行する第2のステップと、を含む。第2のステップは、第1のステップにより実行された受信動作によってアップリンク信号USが受信されずに所定時間P1が経過した場合に、送受信スケジュールに基づいて決定される次の受信動作の開始タイミングよりも前に、次の受信動作を開始する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラと、
前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスとによって実行される方法であって、
前記スタイラスが、
前記送受信スケジュールに基づき、第1の所定時間にわたって前記アップリンク信号の受信動作を実行する第1のステップと、
前記第1のステップにより前記アップリンク信号の受信動作が実行された後、前記送受信スケジュールに基づき、前記アップリンク信号の次の受信動作を実行する第2のステップと、を含み、
前記第2のステップは、前記第1のステップにより実行された受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに前記第1の所定時間が経過した場合に、前記送受信スケジュールに基づいて決定される前記次の受信動作の開始タイミングよりも前に、前記次の受信動作を開始する、
方法。
【請求項2】
前記第1のステップは、実行した前記受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに前記第1の所定時間が経過した場合に、第2の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を継続し、
前記第2のステップは、前記第1のステップによって継続された前記受信動作によっても前記アップリンク信号が受信されずに前記第2の所定時間が経過した場合に、前記送受信スケジュールに基づいて決定される前記次の受信動作の開始タイミングよりも前に、前記次の受信動作を開始する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スタイラスが、前記第1のステップによって継続された前記受信動作によっても前記アップリンク信号が受信されずに前記第2の所定時間が経過した場合に、トーン信号を送信する第3のステップ、
をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スタイラスは、前記第2の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を行った後、第3の所定時間にわたり前記トーン信号を送信し、さらに、第4の所定時間にわたり前記次の受信動作を行う、という動作を繰り返し実行し、
前記第2乃至第4の所定時間の合計は、前記送受信スケジュールにより示される前記アップリンク信号の送信周期に等しい、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スタイラスは、前記第2の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を行った後、第3の所定時間にわたり前記トーン信号を送信し、さらに、第4の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を行う、という動作を繰り返し実行し、
前記第2乃至第4の所定時間の合計は、前記送受信スケジュールにより示される前記アップリンク信号の送信周期と異なる、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記スタイラスは、ペン先に印加される圧力を示す筆圧値を取得する圧力センサを含み、
前記第3のステップは、前記筆圧値により前記ペン先がタッチ面に接触していないことが示される場合に、前記トーン信号の送信動作に代えて前記アップリンク信号の受信動作を行う、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラから前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスであって、
前記送受信スケジュールに基づき、第1の所定時間にわたって前記アップリンク信号の受信動作を実行する第1のステップと、
前記第1のステップにより前記アップリンク信号の受信動作が実行された後、前記送受信スケジュールに基づき、前記アップリンク信号の次の受信動作を実行する第2のステップと、を実行し、
前記第2のステップは、前記第1のステップにより実行された受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに前記第1の所定時間が経過した場合に、前記送受信スケジュールに基づいて決定される前記次の受信動作の開始タイミングよりも前に、前記次の受信動作を開始する、
スタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタイラス及びセンサコントローラによって実行される方法、スタイラス、及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
スタイラスによる手書き入力に対応した電子機器が知られている。この種の電子機器は一般に、タッチ面の内側に配置されたタッチセンサと、タッチセンサに接続されたセンサコントローラとを有して構成される。センサコントローラは、タッチセンサを介してスタイラスと双方向通信を行う機能を有する集積回路であり、タッチセンサを介してアップリンク信号を送信するとともに、このアップリンク信号に応じてスタイラスが送信したダウンリンク信号をタッチセンサを介して受信することにより、タッチ面上におけるスタイラスの位置を検出するよう構成される。アップリンク信号は、スタイラスに対してダウンリンク信号及びアップリンク信号の送受信タイミングを通知するとともに、スタイラスが送信するデータを指示するためのコマンドを伝達する役割を有しており、センサコントローラにより一定の周期で送信される。
【0003】
特許文献1には、アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号を送信するスタイラスの例が開示されている。この例によるスタイラスは、初めに、一定周期でアップリンク信号の受信動作を行うディスカバリ状態で動作する。この受信動作の結果としてアップリンク信号が受信されると、スタイラスは、センサコントローラとの間で双方向に通信を行うオペレーション状態に遷移する。オペレーション状態にあるスタイラスは、アップリンク信号の受信タイミングに基づいて決まる送受信スケジュールに従って、ダウンリンク信号の送信動作及びアップリンク信号の受信動作を行う。送受信スケジュールどおりのタイミングでアップリンク信号が受信されなかった場合、スタイラスは、ディスカバリ状態に戻ってアップリンク信号の受信動作を行う。
【0004】
特許文献1に記載のセンサコントローラは、スタイラスからダウンリンク信号を受信したことに応じてスタイラスとのペアリングを確立する一方、スタイラスからのダウンリンク信号が一定時間以上にわたり受信されなかった場合にスタイラスとのペアリングを解除するよう構成される。したがって、スタイラスがディスカバリ状態に戻ると、しばらく後に、センサコントローラによるペアリングの解除が行われることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/129194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スタイラスは、本来であればアップリンク信号を受信できるタッチ面の近傍にいても、アップリンク信号の受信に失敗する場合がある。そうすると、スタイラスからのダウンリンク信号の送信が停止することから、センサコントローラはスタイラスの位置を検出できなくなり、しばらく後にはペアリングも解除することになる。ユーザから見れば、これは「筆記中に突然書けなくなった」という事象の発生に他ならないので、改善が必要とされている。
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、筆記中に突然書けなくなるという事象の発生を回避できるスタイラス及びセンサコントローラによって実行される方法、スタイラス、及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面による方法は、アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラと、前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスとによって実行される方法であって、前記スタイラスが、前記送受信スケジュールに基づき、第1の所定時間にわたって前記アップリンク信号の受信動作を実行するステップと、前記受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに前記第1の所定時間が経過した場合、前記送受信スケジュールに基づく前記ダウンリンク信号の送信に代え、第2の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を継続するステップと、を含む方法である。
【0009】
本発明の他の一側面による方法は、アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラと、前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスとによって実行される方法であって、前記スタイラスが、前記送受信スケジュールに基づいて前記アップリンク信号の受信動作を開始するステップと、前記受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに第1の所定時間が経過した場合に、受信されなかった前記アップリンク信号の内容によらずトーン信号を送信するステップと、を含む方法である。
【0010】
本発明の一側面によるスタイラスは、アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラから前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスであって、前記送受信スケジュールに基づき、第1の所定時間にわたって前記アップリンク信号の受信動作を実行し、前記受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに前記第1の所定時間が経過した場合、前記送受信スケジュールに基づく前記ダウンリンク信号の送信に代え、第2の所定時間にわたり前記アップリンク信号の受信動作を継続する、スタイラスである。
【0011】
本発明の他の一側面によるスタイラスは、アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラから前記アップリンク信号を受信した場合に、該アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスであって、前記送受信スケジュールに基づいて前記アップリンク信号の受信動作を開始し、前記受信動作によって前記アップリンク信号が受信されずに第1の所定時間が経過した場合に、受信されなかった前記アップリンク信号の内容によらずトーン信号を送信する、スタイラスである。
【0012】
本発明の一側面によるセンサコントローラは、アップリンク信号の受信タイミングに基づいてダウンリンク信号及び前記アップリンク信号の送受信スケジュールを決定するスタイラスに対し、前記アップリンク信号を周期的に送信するセンサコントローラであって、前記ダウンリンク信号を最後に受信してからの経過時間を示すカウンタを有し、該カウンタの値が所定時間を超えた場合に前記スタイラスとのペアリングを解除するよう構成され、前記スタイラスから受信した前記ダウンリンク信号の内容が前記アップリンク信号により要求した内容であるか否かを判定し、前記スタイラスから受信した前記ダウンリンク信号の内容が前記アップリンク信号により要求した内容と異なると判定した場合に、前記カウンタをリセットする、センサコントローラである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、スタイラスがアップリンク信号の受信に失敗する可能性を減らすことができるので、筆記中に突然書けなくなるという事象の発生を回避することが可能になる。
【0014】
本発明の他の一側面によれば、アップリンク信号の受信に失敗してもスタイラスからトーン信号を送信され続けるので、センサコントローラはスタイラスの位置を引き続き検出することができ、また、ペアリングの解除を行わないようにすることができる。したがって、筆記中に突然書けなくなるという事象の発生を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態による電子機器2及びスタイラスSを示す図である。
図2図1に示したセンサコントローラ20及びタッチセンサ21の内部構成を示す図である。
図3】(a)は、スタイラスSの動作モードを示すモード遷移図であり、(b)は、センサコントローラ20の動作モードを示すモード遷移図である。
図4】スタイラスSが新たにタッチ面2aに接近してくる場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。
図5】スタイラスS及びセンサコントローラ20がともにオペレーションモードにある場合において、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗した場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。
図6】スタイラスS及びセンサコントローラ20がともにオペレーションモードにある場合において、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗した場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。
図7】スタイラスSが通信維持モードでの処理を行ったけれども、最終的にアップリンク信号USを受信できなかった場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。
図8】スタイラスSの処理のフローを示す処理フロー図である。
図9】スタイラスSの処理のフローを示す処理フロー図である。
図10】スタイラスSの処理のフローを示す処理フロー図である。
図11】スタイラスSの処理のフローを示す処理フロー図である。
図12】センサコントローラ20の処理のフローを示す処理フロー図である。
図13】センサコントローラ20の処理のフローを示す処理フロー図である。
図14】本実施の形態の変形例によるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態による電子機器2及びスタイラスSを示す図である。電子機器2は、例えばタブレットコンピュータやデジタイザを備えたデバイスであり、図1に示すように、センサコントローラ20、タッチセンサ21、及び、ホストプロセッサ22を有して構成される。電子機器2がタブレットコンピュータである場合、電子機器2は、さらにディスプレイを有して構成される。
【0018】
センサコントローラ20は、タッチセンサ21を介してスタイラスSとの双方向通信を行う集積回路である。詳細については図2を参照して後述するが、センサコントローラ20は、スタイラスSとの双方向通信を通じ、タッチ面2a内におけるスタイラスSの指示位置を取得するとともに、スタイラスSが送信したデータを取得し、これらを逐次ホストプロセッサ22に供給するよう構成される。センサコントローラ20はまた、タッチ面2a内における指の指示位置を取得し、逐次ホストプロセッサ22に供給する処理も行う。
【0019】
スタイラスSとセンサコントローラ20との間の双方向通信の具体的な方式は特に限定されないが、以下ではアクティブ静電方式を使用するものとして説明を続ける。アクティブ静電方式の他には、例えば電磁誘導方式(EMR)を使用することも可能である。また、以下では、センサコントローラ20からスタイラスSに対して送信される信号をアップリンク信号USと称し、スタイラスSからセンサコントローラ20に対して送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。アップリンク信号USには、スタイラスSに対する制御内容を示すコマンドが含まれる。ダウンリンク信号DSには、無変調の搬送波信号であるトーン信号と、所定のデータによって変調された搬送波信号であるデータ信号とが含まれる。
【0020】
タッチセンサ21は、タッチ面2a内に配置された複数のセンサ電極である。タッチセンサ21の詳細についても、図2を参照して後述する。
【0021】
ホストプロセッサ22は電子機器2の中央処理装置であり、内蔵メモリに格納されるプログラムを読み出して実行することにより、電子機器2の各部の制御や各種アプリケーションを実行する役割を果たす。ホストプロセッサ22により実行される各種アプリケーションには、描画アプリケーションが含まれ得る。この描画アプリケーションは、例えば、センサコントローラ20から供給されるデータ(スタイラスS又は指の指示位置、及び、スタイラスSが送信したデータ)に基づいてストロークデータを生成する機能と、生成したストロークデータに基づいてデジタルインクを生成する機能と、生成したデジタルインクをレンダリングしてディスプレイに表示する機能とを有して構成される。
【0022】
スタイラスSは、図1に示すように、処理回路30と、電池31と、芯体32と、ペン電極33と、圧力センサ34とを有して構成される。処理回路30は、内蔵メモリに格納されるプログラムを読み出して実行することにより後述するスタイラスSの各処理を行うプロセッサであり、電池31から供給される電力により動作するよう構成される。芯体32は、スタイラスSのペン先を構成する部材である。ペン電極33は、芯体32の先端近傍に配置される導電体であり、処理回路30と電気的に接続される。圧力センサ34は、スタイラスSのペン先に印加される圧力を示す筆圧値を検出するセンサであり、芯体32の後端に接続される。圧力センサ34により検出された筆圧値は、処理回路30に供給される。
【0023】
処理回路30は、ペン電極33を介してアップリンク信号USを受信し、その受信タイミングと、該アップリンク信号US内の情報とに基づいて、ダウンリンク信号DS及びアップリンク信号USの送受信スケジュールを決定する処理を行う。この決定の詳細については、後述する。処理回路30はまた、アップリンク信号US内のコマンドの制御に応じてダウンリンク信号DSを生成し、ペン電極33を介して送信する処理も行う。こうして生成されるダウンリンク信号DSは、アップリンク信号US内に含まれるコマンドの指示に従い、トーン信号Tのみ、又は、トーン信号T及びデータ信号Dによって構成される。データ信号Dにより送信されるデータには、上述した筆圧値の他、処理回路30の内蔵メモリに予め格納されるペンIDなどが含まれ得る。
【0024】
図2は、センサコントローラ20及びタッチセンサ21の内部構成を示す図である。同図に示すように、タッチセンサ21は各複数のセンサ電極21X,21Yを含んで構成される。タッチ面2aがディスプレイの表示面によって構成される場合、センサ電極21X,21Yの一方は、ディスプレイ内の共通電極としても使用される。このようにセンサ電極21X,21Yの一方をディスプレイ内の共通電極として使用するタイプの電子機器2は、例えば「インセル型」と呼ばれる。一方、センサ電極21X,21Yとディスプレイ内の共通電極とを別々に設けるタイプの電子機器2は、例えば「アウトセル型」又は「オンセル型」と呼ばれる。以下では、電子機器2はインセル型であるとして説明を続けるが、本発明はアウトセル型又はオンセル型の電子機器についても、同様に適用可能である。
【0025】
ディスプレイが画素の駆動処理を実行する際には、共通電極の電位を所定の共通電位Vcomに維持する必要がある。したがって、インセル型の電子機器2においては、ディスプレイが画素の駆動処理を実行している間、センサコントローラ20は、スタイラスSとの通信及び指の検出を行うことができない。そこでセンサコントローラ20は、画素の駆動処理が行われていない水平帰線区間及び垂直帰線区間を利用して、スタイラスSとの通信及び指の検出を実行するよう構成される。具体的には、1画面分の表示期間を1フレームとし、その中に含まれる水平帰線区間及び垂直帰線区間を時間スロットに見立て、個々の時間スロット内でスタイラスSとの通信及び指の検出を実行する。
【0026】
図2に示すように、センサコントローラ20は、MCU50、ロジック部51、送信部52,53、受信部54、選択部55、及びカウンタ58を有して構成される。
【0027】
MCU50及びロジック部51は、送信部52,53、受信部54、及び選択部55を制御することにより、センサコントローラ20の送受信動作を制御する制御部である。具体的に説明すると、MCU50は内部にROM及びRAMを有しており、これらに格納されたプログラムを実行することによって動作するマイクロプロセッサである。MCU50は、共通電位Vcomと、コマンドCOMとを出力する機能も有している。コマンドCOMは、アップリンク信号USに含まれるコマンドに相当する。一方、ロジック部51は、MCU50の制御に基づき、制御信号ctrl_t,ctrl_r,sTR,selX,selYを出力するよう構成される。
【0028】
MCU50が出力するコマンドCOMには、送受信スケジュールの情報セットを特定する情報、スタイラスSに対する時間スロット及び周波数の割り当てを示す情報、スタイラスSがデータ信号Dにより送信すべきデータの内容を示す情報などが含まれ得る。ここで、送受信スケジュールの情報セットを特定する情報は、センサコントローラ20とスタイラスSとの間で予め共有されている送受信スケジュールに関する複数の情報セットの1つである。各情報セットには、例えば、1フレームの時間長(=周期UpIntv)、1フレーム内における各時間スロットの配置などの情報が含まれる。
【0029】
MCU50は、予め電子機器2内のディスプレイに応じた送受信スケジュールの情報セットを記憶しており、その情報セットを特定する情報をコマンドCOM内に配置する。また、MCU50は、ペアリング中のスタイラスSの本数などに基づいて各スタイラスSに割り当てる1以上の時間スロット及び周波数を決定し、コマンドCOM内に配置する。このように、センサコントローラ20は例えば時分割多重又は周波数分割多重により複数のスタイラスSと同時にペアリングすることができるが、以下では、1つのスタイラスSとのみ通信を行うことを前提として説明を続ける。
【0030】
送信部52は、MCU50の制御に従って、指を検出するために使用される指検出用信号FDSを生成する回路である。指検出用信号FDSは、例えば、それぞれK個のパルス(「1」又は「-1」のデータ)を含むK個のパルス列からなる信号である。ただし、Kはセンサ電極21Yの本数である。また、K個のパルス列の内容(すなわち、K個のパルスの組み合わせ)はすべて異なっている。
【0031】
送信部53は、MCU50から供給されるコマンドCOM及びロジック部51からの制御信号ctrl_tに基づいて、アップリンク信号USを生成する回路である。具体的には、MCU50から供給されるコマンドCOMの先頭に所定のプリアンブルを付加し、結果として得られるシンボル列を所定の拡散符号(例えば、自己相関特性を有する11チップ長の拡散符号)により拡散し、さらに例えば巡回シフトによって変調することによってアップリンク信号USを生成する。
【0032】
選択部55は、スイッチ56と、導体選択回路57x,57yとを含んで構成される。
【0033】
スイッチ56は、共通端子と、T1端子、T2端子、D端子、及びR端子のいずれか一方とが接続されるように構成されたスイッチ素子である。このうちT2端子は、実際にはセンサ電極21Yの数分の端子の集合である。スイッチ56の共通端子は導体選択回路57yに接続され、T1端子は送信部53の出力端に接続され、T2端子は送信部52の出力端に接続され、D端子は共通電位Vcomを出力するMCU50の出力端に接続され、R端子は受信部54の入力端に接続される。
【0034】
導体選択回路57xは、複数のセンサ電極21Xを選択的に受信部54の入力端に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路57xは、複数のセンサ電極21Xの一部又は全部を同時に受信部54の入力端に接続することも可能に構成される。
【0035】
導体選択回路57yは、複数のセンサ電極21Yを選択的にスイッチ56の共通端子に接続するためのスイッチ素子である。導体選択回路57yは、複数のセンサ電極21Yの一部又は全部を同時にスイッチ56の共通端子に接続することも可能に構成される。また、スイッチ56内においてT2端子と共通端子とが接続されている場合、導体選択回路57yは、T2端子を構成する複数の端子と複数のセンサ電極21Yとを一対一に接続する。
【0036】
選択部55には、ロジック部51から3つの制御信号sTR,selX,selYが供給される。具体的には、制御信号sTRはスイッチ56に、制御信号selXは導体選択回路57xに、制御信号selYは導体選択回路57yにそれぞれ供給される。ロジック部51は、これら制御信号sTR,selX,selYを用いて選択部55を制御することにより、アップリンク信号US又は指検出用信号FDSの送信並びに共通電位Vcomの印加と、ダウンリンク信号DS又は指検出用信号FDSの受信とを実現する。
【0037】
アップリンク信号USの送信を行う場合、ロジック部51は、すべてのセンサ電極21Yが同時に送信部53の入力端に接続されることとなるよう、選択部55を制御する。これにより、タッチ面2aの全面からアップリンク信号USが送信されることになる。
【0038】
ダウンリンク信号DSの受信に関しては、ロジック部51は、未検出のスタイラスSの検出を行うためにダウンリンク信号DSを受信する場合(グローバルスキャン)と、検出済のスタイラスSからダウンリンク信号DSを受信する場合(ローカルスキャン)とで異なる制御を行う。具体的に説明すると、まず、グローバルスキャンを行う場合のロジック部51は、すべてのセンサ電極21X,21Yが順次受信部54の入力端に接続されることとなるよう、選択部55を制御する。次に、ローカルスキャンを行う場合のロジック部51は、まずトーン信号Tの受信時においては、そのスタイラスSの指示位置の近傍に位置する各数本のセンサ電極21X,21Yが順次受信部54の入力端に接続されることとなるよう、選択部55を制御する。続いてデータ信号Dの受信時においては、そのスタイラスSの指示位置に最も近いセンサ電極21X又はセンサ電極21Yが受信部54の入力端に接続されることとなるよう、選択部55を制御する。
【0039】
指検出用信号FDSの送受信を行う場合のロジック部51は、スイッチ56のT2端子を構成する複数の端子と複数のセンサ電極21Yとが一対一に接続されることとなるよう、選択部55を制御する。そして、その状態を維持しながら、複数のセンサ電極21Xが1本ずつ順に選択され、選択されたセンサ電極21Xが受信部54に接続されるよう、選択部55を制御する。
【0040】
ここまでで説明したロジック部51の制御から理解されるように、スタイラスSとの通信と、指の指示位置の検出とは時分割で行われる。以下では、スタイラスSとの通信のみに着目して説明するが、実際のスタイラスSとの通信は、指の指示位置の検出にかかる動作を挟みながら実行される。
【0041】
共通電位Vcomの印加を行う場合のロジック部51は、すべてのセンサ電極21Yが同時にスイッチ56のD端子に接続されるよう、選択部55を制御する。これにより、各センサ電極21Yの電位が共通電位Vcomに等しくなる。
【0042】
受信部54は、ロジック部51の制御信号ctrl_rに基づいて、送信部52が送信した指検出用信号FDS及びスタイラスSが送信したダウンリンク信号DSを受信する回路である。指検出用信号FDSを受信するタイミングにおいては、受信部54は、センサ電極21XごとにK個の電流値を取得し、上述したK個のパルス列のそれぞれについて、該パルス列を構成するK個のパルスと、取得したK個の電流値との内積を算出することにより、各センサ電極21Xと各センサ電極21Yの交点ごとの検出レベルを算出する。そして、その結果に基づいてタッチ面2a内のタッチされている領域(タッチ領域)を決定し、MCU50経由でホストプロセッサ22に出力する。
【0043】
一方、ダウンリンク信号DSを受信するタイミングにおいては、受信部54は、各センサ電極21X,21Yにおけるトーン信号Tの受信強度に基づいてスタイラスSの指示位置を導出するとともに、検出したデータ信号Dを復調することによってスタイラスSが送信したデータを取得する。そして、導出した指示位置及び取得したデータを、MCU50経由でホストプロセッサ22に出力する。
【0044】
カウンタ58は、リセットされた時点からの経過時間を記録する装置であり、MCU50に接続される。MCU50は、ダウンリンク信号DSを受信した場合に、カウンタ58をリセットするよう構成される。これによりカウンタ58に記録されている経過時間は、MCU50がダウンリンク信号DSを最後に受信してからの経過時間となる。
【0045】
図3(a)は、スタイラスSの動作モードを示すモード遷移図であり、図3(b)は、センサコントローラ20の動作モードを示すモード遷移図である。
【0046】
初めに図3(a)に着目すると、スタイラスSは、ディスカバリモード、オペレーションモード、通信維持モードのいずれかで動作するよう構成される。ディスカバリモードは、アップリンク信号USの受信のみを連続的又は断続的に行う動作モードである。ディスカバリモードにおいてアップリンク信号USを受信したスタイラスSは、オペレーションモードに移行する。
【0047】
オペレーションモードは、それまでに受信したアップリンク信号USに基づいて決定される送受信スケジュールに基づき、ダウンリンク信号DSの送信と、次のアップリンク信号USの受信とを行う動作モードである。オペレーションモードにおいてアップリンク信号USの受信に失敗した場合(すなわち、アップリンク信号USの受信動作を行ったにもかかわらず、アップリンク信号USが受信されなかった場合)、スタイラスSは通信維持モードに移行する。
【0048】
通信維持モードは、アップリンク信号USの受信に失敗した場合にも、しばらくの間、センサコントローラ20との通信を維持するための動作モードである。通信維持モードにおけるスタイラスSの具体的な動作内容については後述するが、通信維持モードにおいてもアップリンク信号USが受信されずタイムアウトした場合、スタイラスSはディスカバリモードに移行する。一方、通信維持モードにおいてアップリンク信号USが受信された場合、スタイラスSはオペレーションモードに戻る。
【0049】
次に図3(b)に着目すると、センサコントローラ20は、ディスカバリモード、ペアリング実行モード、オペレーションモードのいずれかで動作するよう構成される。いずれのモードにおいても、センサコントローラ20は、一定の周期でアップリンク信号USの送信動作を行うとともに、そのインターバルでダウンリンク信号DSの受信動作を行う。アップリンク信号USの送信周期は、例えば上述した1フレームにより構成される。
【0050】
ディスカバリモードはスタイラスSとまだペアリングをしていないときの動作モードであり、センサコントローラ20は、上述したグローバルスキャンを行う。ディスカバリモードで送信されるアップリンク信号USは、送受信スケジュールの情報セットを特定する情報、及び、時間スロット及び周波数の割り当てを含む信号となる。このアップリンク信号USを受けたスタイラスSは、ダウンリンク信号DS及びアップリンク信号USの送受信スケジュールを決定するとともに、割り当てられた各時間スロットのすべてにおいてトーン信号Tの送信を行う。ディスカバリモードにおいてダウンリンク信号DSを受信したセンサコントローラ20は、ペアリング実行モードに移行する。
【0051】
ペアリング実行モードは、ダウンリンク信号DSを送信してきたスタイラスSとの間でペアリングを確立するための動作モードである。ペアリング実行モードにエントリしているセンサコントローラ20は、当初はグローバルスキャンを実施し、一旦スタイラスSの指示位置を検出した後には、ローカルスキャンを実行する。このローカルスキャンにおいてセンサコントローラ20は、ペンIDの送信を指示するコマンドを含むアップリンク信号USを送信する。このアップリンク信号USを受けたスタイラスSは、先のアップリンク信号USにより割り当てられた時間スロット及び周波数を用いて、トーン信号Tと、ペンIDを含むデータ信号Dとを順に送信する。センサコントローラ20は、こうして受信されるデータ信号Dを復調することによってペンIDを取得し、内蔵メモリに記憶することによってスタイラスSとのペアリングを確立し、オペレーションモードに移行する。また、センサコントローラ20は、トーン信号Tの受信結果に基づいてスタイラスSの指示位置を導出し、取得したペンIDとともにホストプロセッサ22に出力する。
【0052】
オペレーションモードは、ローカルスキャンを繰り返し実行する動作モードである。オペレーションモードにエントリしているセンサコントローラ20は、アップリンク信号USを送信した後に受信されるトーン信号Tの受信結果に基づいてスタイラスSの指示位置を導出するとともに、続いて受信されるデータ信号Dを復調することによりスタイラスSが送信したデータを取得し、導出した指示位置及び所得したデータを逐次、ホストプロセッサ22に出力する。また、センサコントローラ20は、カウンタ58に記録されている経過時間が所定時間を超えた場合にスタイラスSとのペアリングを解除し、ディスカバリモードに移行する。
【0053】
次に、本実施の形態によるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作について、図4図7に示したシーケンス図を参照しながら、より詳しく説明する。
【0054】
まず図4は、スタイラスSが新たにタッチ面2aに接近してくる場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。この例では、時刻t1でスタイラスSの電源がオンになり、時刻t2でペンダウン(スタイラスSとセンサコントローラ20とが通信可能になること)が実行され、時刻t3でペンタッチ(スタイラスSのペン先がタッチ面2aに接触すること)が実行される。
【0055】
まずセンサコントローラ20は、所定の周期UpIntvでアップリンク信号USの送信を行い、アップリンク信号USの送信インターバルにダウンリンク信号DSの受信を行うよう構成される。なお、図4において「R」で示した時間長P5の受信期間のそれぞれは、上述した時間スロットに対応している。このときセンサコントローラ20はディスカバリモードにエントリしているので、図4に示す最初のアップリンク信号USは、送受信スケジュールの情報セットを特定する情報、及び、時間スロット及び周波数の割り当てを含む信号である。
【0056】
スタイラスSは、電源がオンになった後、連続的又は断続的にアップリンク信号USの受信動作を実行する。その後、時刻t2でペンダウン状態になると、スタイラスSは、アップリンク信号USを受信できるようになる。図4では、時刻t4において、スタイラスSはアップリンク信号USを受信している。なお、同図及び後掲の各図に示す太線の丸印は、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に成功したことを表している。また、時刻t3でペンタッチ状態になると、圧力センサ34によって検出される筆圧値が0より大きい値となる。
【0057】
時刻t4でアップリンク信号USを受信したスタイラスSは、該アップリンク信号USの受信タイミングと、該アップリンク信号US内の情報とに基づいて、ダウンリンク信号DS及び次のアップリンク信号USの送受信スケジュールを決定する。こうして決定される送受信スケジュールは、図4に示すように、各時間スロットでトーン信号Tを送信するとともに、1周期の最後の所定時間P1を利用して次のアップリンク信号USの受信動作を行う、というものになる。所定時間P1は、所定時間P5と同じでもよいし、図4に示すように所定時間P5より長くてもよい。送受信スケジュールを決定したスタイラスSは、オペレーションモードにエントリする。
【0058】
送受信スケジュールに従ってスタイラスSが送信した最初のトーン信号Tを時刻t5で受信したセンサコントローラ20はペアリング実行モードにエントリし、続いて受信される各トーン信号Tも使用してグローバルスキャンを行う。これによりセンサコントローラ20は、スタイラスSの最初の位置を導出する。その後、センサコントローラ20は、ペンIDの送信を指示するコマンドを含むアップリンク信号USを送信する。
【0059】
このアップリンク信号USを時刻t6で受信したスタイラスSは、該アップリンク信号USの受信タイミングと、該アップリンク信号US内の情報とに基づいて、ダウンリンク信号DS及び次のアップリンク信号USの送受信スケジュールを更新する。更新後の送受信スケジュールは、図4に示すように、最初にトーン信号Tを、次いでデータ信号Dをそれぞれ送信し、1周期の最後の所定時間P1を利用して次のアップリンク信号USの受信動作を行う、というものになる。
【0060】
センサコントローラ20は、スタイラスSが送信したトーン信号Tを用いてローカルスキャンを行うことにより、スタイラスSの位置を導出する。続いてセンサコントローラ20は、スタイラスSが送信したデータ信号Dを復調することによって、スタイラスSが送信したペンIDを取得し、内蔵メモリに記憶する。これによりセンサコントローラ20はペアリングを確立し、オペレーションモードに移行する。
【0061】
図5は、スタイラスS及びセンサコントローラ20がともにオペレーションモードにある場合において、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗した場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。同図及び後掲の各図に示す太線の×印は、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗したことを表している。この例によるスタイラスSは、送受信スケジュールに基づき時刻t10でアップリンク信号USの受信動作を開始するが、所定時間P1が経過する時刻t11となってもアップリンク信号USを受信できていない。
【0062】
この場合、スタイラスSは通信維持モードにエントリし、所定時間P1に連続する所定時間P2にわたり、アップリンク信号USの受信動作を継続する。所定時間P2の時間長は特に限定されないが、例えば周期UpIntvの1/4とすることが好ましい。これにより、何らかの原因でアップリンク信号USの受信動作が前ズレしてしまった場合にもアップリンク信号USを受信することが可能になるので、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗する可能性を減らすことが可能になる。
【0063】
続いてスタイラスSは、受信されなかったアップリンク信号USの内容によらず、送受信スケジュールに基づく次のアップリンク信号USの受信動作の開始タイミング(すなわち、周期UpIntvの終期から所定時間P1前のタイミング)までの間に、所定時間P3にわたるトーン信号Tの連続送信を行う。所定時間P3の時間長も特に限定されないが、例えば周期UpIntvの1/2とすることが好ましい。
【0064】
ここで、センサコントローラ20は、スタイラスSから受信したダウンリンク信号DSの内容がアップリンク信号USにより要求した内容どおりのものであった場合だけでなく、スタイラスSから受信したダウンリンク信号DSの内容がアップリンク信号USにより要求した内容と異なる場合であっても、図2に示したカウンタ58をリセットするように構成される。こうすることで、スタイラスSが通信維持モードにある間にも、スタイラスSからのトーン信号Tがセンサコントローラ20に届いている限り、センサコントローラ20の動作モードはオペレーションモードに維持されることになる。また、センサコントローラ20は、スタイラスSから受信したダウンリンク信号DSの内容がアップリンク信号USにより要求した内容と異なる場合であっても、そのダウンリンク信号DSを用いてスタイラスSの位置を導出するよう構成される。これにより、スタイラスSからのトーン信号Tが届いている限り、センサコントローラ20によるスタイラスSの位置の導出が継続されることになる。
【0065】
トーン信号Tの送信を終えたスタイラスSは、所定時間P4にわたり、アップリンク信号USの受信動作を行う。所定時間P4の時間長は、周期UpIntvから所定時間P2と所定時間P3の合計値を減算した値とすればよい。一例では、上述したように所定時間P2が周期UpIntvの1/4であり、所定時間P3が周期UpIntvの1/2であれば、所定時間P4は周期UpIntvの1/4とすればよい。なお、所定時間P4を所定時間P1よりも長い時間に設定してもよく、その場合のスタイラスSは、送受信スケジュールに基づいて決定されるアップリンク信号USの受信動作の開始タイミングよりも前にアップリンク信号USの受信動作を開始することになる。
【0066】
所定時間P4の受信動作を行ってもアップリンク信号USが受信されない場合、スタイラスSは、所定時間P2にわたるアップリンク信号USの受信動作から上記動作を繰り返す。この場合において、所定時間P2にわたるアップリンク信号USは、直前の所定時間P4にわたるアップリンク信号USに連続して実行される。
【0067】
図5の例では、時刻t12で、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に成功している。これを受けて、スタイラスSは送受信スケジュールを更新し、オペレーションモードに戻る。
【0068】
図6は、図5と同様に、スタイラスS及びセンサコントローラ20がともにオペレーションモードにある場合において、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗した場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。図6の例は、スタイラスSが通信維持モードにエントリしている間の時刻t13においてペンアップが発生している点で、図5の例と相違している。
【0069】
通信維持モードにエントリしているスタイラスSは、圧力センサ34で検出されている筆圧値によりペン先がタッチ面2aに接触していないことが示される場合に、トーン信号Tの送信動作に代えてアップリンク信号USの受信動作を行うよう構成される。その結果として、図6では、時刻t13以降、スタイラスSによるトーン信号Tの送信は行われず、代わりにアップリンク信号USの受信動作が連続的に行われている。このようにすると、センサコントローラ20によるスタイラスSの位置の導出が継続されなくなり、また、センサコントローラ20が早期にディスカバリモードに戻ってしまうことになるが、スタイラスSがペンアップしているということは筆記中ではないということを意味するので、ユーザに不快感を与える可能性は低い。一方、トーン信号Tの送信を行う場合に比べてアップリンク信号USの受信動作を行う期間が長くなるので、アップリンク信号USの受信に成功する可能性を高めることが可能になる。
【0070】
図7は、スタイラスSが通信維持モードでの処理を行ったけれども、最終的にアップリンク信号USを受信できなかった場合におけるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。スタイラスSは、アップリンク信号USを受信できないまま、通信維持モードにおける一連の処理(所定時間P2にわたるアップリンク信号USの受信動作、所定時間P3にわたるトーン信号Tの送信動作、所定時間P4にわたるアップリンク信号USの受信動作)の実行回数が所定回数に達した時刻t21でディスカバリモードに移行し、通信維持モードでの処理を終了する。また、センサコントローラ20は、最後にトーン信号Tを受信した時刻t20において図2に示したカウンタ58をリセットし、その後、カウンタ58に記録されている経過時間が所定時間P6を超えた時刻t22でスタイラスSとのペアリングを解除し、ディスカバリモードに戻る。
【0071】
次に、本実施の形態によるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作について、図8図13に示した処理フロー図を参照しながら、さらに詳しく説明する。
【0072】
図8図11は、スタイラスSの処理のフローを示す処理フロー図である。これらの図には、図1に示した処理回路30によって実行される処理を示している。
【0073】
初めに図8を参照すると、電源がオンになったスタイラスSはディスカバリモードにエントリし(ステップS1)、アップリンク信号USの受信動作を開始する(ステップS2)。そして、この受信動作によってアップリンク信号USを受信したか否かを判定する(ステップS3)。スタイラスSは、アップリンク信号USを受信したと判定するまでステップS3の処理を繰り返し、受信したと判定した場合に、アップリンク信号USの受信動作を停止する(ステップS4)。なお、スタイラスSは、ステップS2で開始するアップリンク信号USの受信動作を連続的に実行することとしてもよいし、断続的に実行することとしてもよい。この場合、受信可能エリアに入った場合に確実にアップリンク信号USを受信できるようにするため、1回の受信動作の継続時間を上述した周期UpIntvよりも長い時間に設定することが好ましい。
【0074】
アップリンク信号USを受信したスタイラスSは、次に、アップリンク信号USの受信タイミングと、該アップリンク信号US内の情報とに基づいて、ダウンリンク信号DS及び次のアップリンク信号USの送受信スケジュールを決定する(ステップS5)。そしてスタイラスSは、オペレーションモードにエントリする(ステップS6)。
【0075】
オペレーションモードにエントリしたスタイラスSは、決定した送受信スケジュールに従い、図9に示すように、ダウンリンク信号DSの送信タイミングが到来したか否か(ステップS10)、及び、アップリンク信号USの受信タイミングが到来したか否か(ステップS11)を継続的に判定する。
【0076】
ステップS10においてダウンリンク信号DSの送信タイミングが到来したと判定したスタイラスSは、アップリンク信号USによって指示された内容のダウンリンク信号DSの送信を開始する(ステップS12)。こうして送信されるダウンリンク信号DSは上述したトーン信号T又はデータ信号Dであり、その時間長は、送受信スケジュールによって示される期間(すなわち、上述した時間スロット)内に送信が完了するよう予め調整される。その後スタイラスSは、ダウンリンク信号DSの送信が完了したか否かを判定し(ステップS13)、完了したと判定した場合に、ステップS10,S11の判定に処理を戻す。
【0077】
一方、ステップS11においてアップリンク信号USの受信タイミングが到来したと判定したスタイラスSは、アップリンク信号USの受信動作を開始する(ステップS14)。そしてスタイラスSは、アップリンク信号USを受信したか否かを判定し(ステップS15)、受信していないと判定した場合には、受信動作を開始してから所定時間P1が経過したか否かをさらに判定する(ステップS16)。その結果、経過していないと判定した場合にはステップS15に戻って判定処理を続ける一方、経過したと判定した場合には、図10のステップS30に処理を移す。
【0078】
ステップS15で受信したと判定したスタイラスSは、アップリンク信号USの受信動作を停止し(ステップS18)、新たに受信したアップリンク信号USの受信タイミングと、該アップリンク信号US内の情報とに基づいて、ダウンリンク信号DS及び次のアップリンク信号USの送受信スケジュールを更新する(ステップS19)。そしてスタイラスSは、アップリンク信号US内に含まれるコマンドに従って送信データを取得し(ステップS20)、ステップS10,S11の判定に処理を戻す。ステップS20で取得したデータは、その後のステップS12で送信されるデータ信号D内に一括で又は分割して配置されることになる。
【0079】
図10のステップS30においてスタイラスSは、通信維持モードにエントリする。そして、ステップS5又はステップS19で決定された最新の送受信スケジュールに基づき、上述した所定時間P2,P3,P4を決定する(ステップS31)。典型的には、送受信スケジュールにより示される周期UpIntvに基づき、P2=UpIntv/4、P3=UpIntv/2、P4=UpIntv/4とすればよい。
【0080】
続いてスタイラスSは、通信維持モードにおける一連の処理(所定時間P2にわたるアップリンク信号USの受信動作、所定時間P3にわたるトーン信号Tの送信動作、所定時間P4にわたるアップリンク信号USの受信動作)の実行回数を示す変数nに1を代入し(ステップS32)、圧力センサ34によって検出されている筆圧値が0であるか否かを判定する(ステップS33)。
【0081】
ステップS33において筆圧値が0であると判定した場合、スタイラスSは、その後所定時間P2+P3+P4が経過するまでの間、アップリンク信号USを受信したか否かの判定を繰り返し行う(ステップS34,S35)。ステップS34でアップリンク信号USを受信したと判定した場合、スタイラスSは、図9のステップS17に処理を移す。図9に示すように、スタイラスSはステップS17でオペレーションモードにエントリし、ステップS18に処理を移す。この後のスタイラスSは、オペレーションモードで動作することになる。一方、ステップS35で所定時間P2+P3+P4が経過したと判定したスタイラスSは、変数nを1インクリメントし(ステップS36)、変数nを所定値Nと比較する(ステップS37)。その結果、n>Nであった場合には図8のステップS1に処理を戻す。これにより、スタイラスSはディスカバリモードに戻ることになる。一方、n>Nでなかった場合のスタイラスSはステップS33に処理を戻し、通信維持モードでの処理を継続する。
【0082】
ステップS33において筆圧値が0でないと判定した場合、スタイラスSは、図11に示すように、その後所定時間P2が経過するまでの間、アップリンク信号USを受信したか否かの判定を繰り返し行う(ステップS40,S41)。ステップS40でアップリンク信号USを受信したと判定した場合、スタイラスSは、図9のステップS17に処理を移す。この後の処理については、上述したとおりである。一方、ステップS41で所定時間P2が経過したと判定したスタイラスSは、アップリンク信号USの受信動作を停止し(ステップS42)、トーン信号Tの送信を開始する(ステップS43)。その後スタイラスSはトーン信号Tの送信を続け、ステップS42におけるアップリンク信号USの停止から所定時間P3が経過した後(ステップS44)、トーン信号Tの送信を停止する(ステップS45)。
【0083】
トーン信号Tの送信を停止したスタイラスSは、再びアップリンク信号USの受信動作を開始し(ステップS46)、その後所定時間P4が経過するまでの間、アップリンク信号USを受信したか否かの判定を繰り返し行う(ステップS47,S48)。ステップS47でアップリンク信号USを受信したと判定した場合、スタイラスSは、図9のステップS17に処理を移す。この後の処理については、上述したとおりである。一方、ステップS48で所定時間P4が経過したと判定したスタイラスSは、変数nを1インクリメントし(ステップS49)、変数nを所定値Nと比較する(ステップS50)。その結果、n>Nであった場合には図8のステップS1に処理を戻す。これにより、スタイラスSはディスカバリモードに戻ることになる。一方、n>Nでなかった場合のスタイラスSは、図10のステップS33に処理を戻し、通信維持モードでの処理を継続する。
【0084】
次に、図12及び図13は、センサコントローラ20の処理のフローを示す処理フロー図である。これらの図には、図2に示したMCU50によって実行される処理を示している。
【0085】
初めに図12を参照すると、電源がオンになったセンサコントローラ20はディスカバリモードにエントリし(ステップS60)、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定する(ステップS61)。この決定は、例えば、1フレーム内の各時間スロットにアップリンク信号USの送信とダウンリンク信号DSの受信とを割り当てることによって行えばよい。
【0086】
次にセンサコントローラ20は、決定した送受信スケジュールに従い、アップリンク信号USの送信タイミングが到来したか否か(ステップS62)、及び、ダウンリンク信号DSの受信タイミングが到来したか否か(ステップS63)を継続的に判定する。
【0087】
ステップS62においてアップリンク信号USの送信タイミングが到来したと判定したセンサコントローラ20は、アップリンク信号USの送信を開始する(ステップS64)。そしてアップリンク信号USの送信が完了したら、ステップS62,S63の判定処理に戻る。
【0088】
ステップS63においてダウンリンク信号DSの受信タイミングが到来したと判定したセンサコントローラ20は、ダウンリンク信号DSの受信動作を開始する(ステップS66)。その後センサコントローラ20は、1時間スロットの時間長である所定時間P5が経過するまでの間、ダウンリンク信号DSを受信したか否かの判定を繰り返し行う(ステップS67,S68)。
【0089】
ステップS67でダウンリンク信号DSを受信したと判定した場合、センサコントローラ20は、図13のステップS80に処理を移す。一方、ステップS68で所定時間P5が経過したと判定したセンサコントローラ20は、図2に示したカウンタ58により示される経過時間が所定時間P6に達したか否かを判定し(ステップS69)、達していなければステップS62,S63の判定処理に戻る一方、達していれば現在の動作モードを判定する(ステップS70)。そして、現在の動作モードがディスカバリモードであればステップS62,S63の判定処理に戻り、現在の動作モードがその他のモードであれば、ペアリング中であればペアリングを解除し、ディスカバリモードにエントリしたうえで(ステップS71)、ステップS62,S63の判定処理に戻る。
【0090】
図13を参照し、ステップS80においてセンサコントローラ20は、受信したダウンリンク信号DSがアップリンク信号USにより要求した内容になっているか否かを判定する(ステップS80)。一例を挙げると、アップリンク信号US内のコマンドにより、最初の2つの時間スロットでトーン信号Tを送信し、その後の時間スロットで筆圧値を含むデータ信号Dを送信することが指示されていた場合に、受信したダウンリンク信号DSがそのとおりの内容になっていればステップS80の判定結果は肯定となり、なっていなければステップS80の判定結果は否定となる。
【0091】
ステップS80で肯定的な結果を得たセンサコントローラ20は、カウンタ58をリセットし(ステップS81)、現在の動作モードを判定する(ステップS82)。その結果、ディスカバリモードにエントリ中であれば、ペアリングモードにエントリしたうえで(ステップS83)、ステップS62,S63の判定処理に戻る。
【0092】
また、ペアリングモードにエントリ中であれば、ペアリング処理を実行する(ステップS84)。このペアリング処理には、次に送信するアップリンク信号US内に配置するコマンドの決定と、このコマンドを受けてスタイラスSが送信したダウンリンク信号DSに基づく各種の処理(グローバルスキャン及びローカルスキャンの結果に基づく位置の導出、及び、導出した位置のホストプロセッサ22への出力、スタイラスSが送信したペンIDの取得など)とが含まれる。続いてセンサコントローラ20は、ペアリング処理の結果としてペアリングが確立したか否かを判定する(ステップS85)。この判定の結果は、ペンIDの受信が完了した場合に肯定となり、ペンIDの受信が完了していない場合に否定となる。
【0093】
ステップS85で肯定的な結果を得たセンサコントローラ20は、オペレーションモードにエントリしたうえで(ステップS86)、ステップS62,S63の判定処理に戻る。一方、ステップS85で否定的な結果を得たセンサコントローラ20は、引き続きペアリングモードにエントリした状態で、ステップS62,S63の判定処理に戻る。
【0094】
ステップS82において現在の動作モードがオペレーションモードであると判定したセンサコントローラ20は、受信したダウンリンク信号DSに基づき、スタイラスSの位置の導出、及び、スタイラスSの送信データの取得を実行する(ステップS87)。なお、スタイラスSの位置を導出するために複数の時間スロットでトーン信号Tを受信する必要がある場合、センサコントローラ20は、各時間スロットで各センサ電極21X,21Yにおけるトーン信号Tの受信強度を記憶し、最後の時間スロットでの受信が終了した後に、記憶しておいた受信強度に基づいて位置を導出すればよい。同様に、スタイラスSの送信データを取得するために複数の時間スロットでデータ信号Dを受信する必要がある場合、センサコントローラ20は、各時間スロットでは送信データの断片を記憶し、最後の時間スロットでの受信が終了した後に、記憶しておいた断片をまとめて1つの送信データとして取得すればよい。センサコントローラ20は、こうして導出した位置、及び、取得した送信データをホストプロセッサ22に出力したうえで(ステップS88)、ステップS62,S63の判定処理に戻る。
【0095】
ステップS80で否定的な結果を得たセンサコントローラ20は、肯定的な結果を得たと同様、カウンタ58をリセットする(ステップS90)。こうすることで、スタイラスSが要求どおりの信号を送信してきていない場合であっても、スタイラスSとのペアリングを継続することが可能になる。なお、図13では、ステップS81,S90のそれぞれによりカウンタ58をリセットすることとしているが、ステップS80の判定の前にカウンタ58をリセットすることとしてもよい。
【0096】
次にセンサコントローラ20は、受信した信号(トーン信号T)に基づいてスタイラスSの位置を導出し(ステップS91)、導出した位置をホストプロセッサ22に出力する(ステップS92)。ステップS91においても、スタイラスSの位置を導出するために複数の時間スロットでトーン信号Tを受信する必要がある場合、センサコントローラ20は、各時間スロットで各センサ電極21X,21Yにおけるトーン信号Tの受信強度を記憶し、最後の時間スロットでの受信が終了した後に、記憶しておいた受信強度に基づいて位置を導出すればよい。また、ステップS92においてセンサコントローラ20は、導出した位置とともに、それまでに得られている筆圧値(スタイラスSがオペレーションモードである間に取得した最新の筆圧値)をホストプロセッサ22に出力することとしてもよい。その後、センサコントローラ20は、処理をステップS62,S63の判定処理に戻す。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態によるスタイラスS及びセンサコントローラ20によれば、スタイラスSがアップリンク信号USの受信に失敗する可能性を減らすことができるので、この点からも、筆記中に突然書けなくなるという事象の発生を回避することが可能になる。
【0098】
また、本実施の形態によるスタイラスS及びセンサコントローラ20によれば、アップリンク信号USの受信に失敗してもスタイラスSからトーン信号Tが送信され続けるので、センサコントローラ20はスタイラスSの位置を引き続き検出することができ、また、ペアリングの解除を行わないようにすることができる。したがって、筆記中に突然書けなくなるという事象の発生を回避することが可能になる。
【0099】
また、本実施の形態によるスタイラスS及びセンサコントローラ20によれば、筆圧値>0の場合に、筆圧値を含むデータ信号Dではなくトーン信号Tが送信されることになるので、筆圧値によりトーン信号が変調されてなる変調波(例えば、OOK、ASK、PSK変調された変調波)に比して、連続した信号となり、又は、周波数が固定されるので、センサコントローラ20での検出可能性を向上させることができる。したがって、アップリンク信号USが検出できないようなノイズの大きい環境においてセンサコントローラ20がスタイラスSを検出できる可能性を向上させることができる。なお、スタイラスSが筆圧値を含むデータ信号Dに代えてトーン信号Tを送信している間、センサコントローラ20は、最後に取得した筆圧値を現在得られている筆圧値として、この期間内に得られた位置とともにホストプロセッサ22に出力することとしてもよい。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0101】
例えば、上記実施の形態では、筆圧値>0の場合に、筆圧値を含むデータ信号Dではなくトーン信号TをスタイラスSから送信することとしたが、筆圧値>0の場合に、筆圧値を含むデータ信号D(筆圧値により変調された信号)を送信することとしてもよい。この場合、トーン信号Tを送信する場合に比べてセンサコントローラ20によるスタイラスSの検出可能性が低下することになるが、正常動作を続けているセンサコントローラ20は高い確率でスタイラスSに対して通常の通信(筆圧値を含むデータ信号Dの送信)を要求しているので、システム全体として動作を続行することが可能になる。
【0102】
通信維持モードでデータ信号D及びトーン信号Tのいずれを送信するにしても、いずれにしても、ホストプロセッサ22側からみると、実際はアップリンク信号USがスタイラスSで検出されていない場合にも、あたかもスタイラスSとセンサコントローラ20とが正常動作をしているかのように見えるので、ロバストなスタイラスSとセンサコントローラ20を含むシステムを提供することが可能となる。したがって、位置は正確であるにもかかわらずアップリンク信号USという元来不必要な通信が検出できないがために、線切れというユーザにとって不快な現象が発生してしまうことを回避できるようになる。
【0103】
また、図14は、本実施の形態の変形例によるスタイラスS及びセンサコントローラ20の動作のシーケンス図である。本変形例によるスタイラスSは、図10のステップS31において、周期UpIntvとは異なる値の周期UpIntv'に基づいて所定時間P2,P3,P4を決定する点で、上記実施の形態によるスタイラスSと相違する。なお、図14には、UpIntv'<UpIntvである場合を示しているが、UpIntv'>UpIntvとしてもよい。また、図14には、P2=UpIntv'/4、P3=UpIntv'/2、P4=UpIntv'/4とする例を示しているが、所定時間P2,P3,P4のうちのいずれか1つ以上のみを上記実施の形態の場合と異なる値にすることとしてもよい。こうすることで、スタイラスSがアップリンク信号USの受信動作を行うタイミングと、センサコントローラ20がアップリンク信号USの送信動作を行うタイミングとがずれてしまったことが原因でスタイラスSがアップリンク信号USを受信できなくなってしまっていた場合に、いずれアップリンク信号USを受信することが可能になる。
【符号の説明】
【0104】
2 電子機器
2a タッチ面
20 センサコントローラ
21 タッチセンサ
21X,21Y センサ電極
22 ホストプロセッサ
30 処理回路
31 電池
32 芯体
33 ペン電極
34 圧力センサ
51 ロジック部
52,53 送信部
54 受信部
55 選択部
56 スイッチ
57x,57y 導体選択回路
58 カウンタ
ctrl_t,ctrl_r,sTR,selX,selY 制御信号
D データ信号
DS ダウンリンク信号
FDS 指検出用信号
P1~P6 第1~第6の所定時間
S スタイラス
T トーン信号
UpIntv アップリンク信号USの送信周期
US アップリンク信号
Vcom 共通電位
図1
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