(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097870
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】塗工体の製造方法および塗工体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240711BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240711BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240711BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240711BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20240711BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20240711BHJP
B05B 5/025 20060101ALI20240711BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240711BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240711BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240711BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240711BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20240711BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D7/24 303G
B05D7/24 303B
B05D1/02 Z
B05C11/10
B05C9/14
B05C1/08
B05B5/025 A
H01M50/403 D
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/429
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075076
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2021012812の分割
【原出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(57)【要約】
【課題】特性の良好な塗工体を製造する。
【解決手段】(a)搬出部から取り出された基材1の第1面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層3aを形成する工程と、(b)前記(a)工程の後、前記第1塗工液層上に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層4aを形成する工程と、(c)前記(b)工程の後、前記第1塗工液層および第2塗工液層を乾燥することにより塗工膜3bおよび塗工膜4bを形成する工程と、(d)前記塗工膜3bおよび前記塗工膜4bが形成された前記基材を搬入部において取り込む工程と、から塗工体5を製造する。そして、(a)工程は、前記第1塗工液を前記基材の第1面に塗布し、(b)工程は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)搬出部から取り出された基材の第1面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層を形成する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記第1塗工液層上に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層を形成する工程と、
(c)前記(b)工程の後、前記第1塗工液層および第2塗工液層を乾燥することにより第1塗工層および第2塗工層を形成する工程と、
(d)前記第1塗工層および前記第2塗工層が形成された前記基材を搬入部において取り込む工程と、
を有し、
前記(a)工程は、前記第1塗工液を前記基材の第一面に塗布し、
前記(b)工程は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、
前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、
前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、
前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料である、塗工体の製造方法。
【請求項2】
(a)搬出部から取り出された基材の第1面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層を形成する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記第1塗工液層上に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層を形成する工程と、
(c)前記(b)工程の後、前記第1塗工液層および第2塗工液層を乾燥することにより第1塗工層および第2塗工層を形成する工程と、
(d)前記第1塗工層および前記第2塗工層が形成された前記基材を搬入部において取り込む工程と、
を有し、
前記(a)工程は、前記第1塗工液を前記基材の第一面に塗布し、
前記(b)工程は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、
前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、
前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、
前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料であり、
前記第2塗工液は、アルカリ珪酸塩を有する、塗工体の製造方法。
【請求項3】
基材を取り出す搬出部と、
前記基材の第1面に第1塗工液を塗布する第1塗工部と、
前記基材の第1面に第2塗工液を塗布する第2塗工部と、
前記基材上の第1塗工液および第2塗工液を乾燥することにより、前記基材の第1面に塗工体を形成する乾燥部と、
前記塗工体が形成された前記基材を取り込む搬入部と、
を有し、
前記第1塗工部は、前記第1塗工液を前記基材の第1面に塗布し、
前記第2塗工部は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、
前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、
前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、
前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料である、塗工体の製造装置。
【請求項4】
基材を取り出す搬出部と、
前記基材の第1面に第1塗工液を塗布する第1塗工部と、
前記基材の第1面に第2塗工液を塗布する第2塗工部と、
前記基材上の第1塗工液および第2塗工液を乾燥することにより、前記基材の第1面に塗工体を形成する乾燥部と、
前記塗工体が形成された前記基材を取り込む搬入部と、
を有し、
前記第1塗工部は、前記第1塗工液を前記基材の第1面に塗布し、
前記第2塗工部は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、
前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、
前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、
前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料であり、
前記第2塗工液は、アルカリ珪酸塩を有する、塗工体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工体の製造方法および塗工体の製造装置に関し、特に、電池のセパレータなどに用いられる塗工体の製造方法や製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用やインフラ用としてリチウムイオン電池などの電池の利用が盛んである。リチウムイオン電池などの電池は、正極材と負極材との間がセパレータと呼ばれる多孔質フィルムで分離されている。セパレータは、例えば、リチウムイオンが通る程度の微細孔を複数有し、この孔を通ってリチウムイオンが正極材と負極材の間を移動することで、充電と放電を繰り返すことができる。このように、セパレータは、正極材と負極材を分離させて、短絡を防ぐ役割を有する。
【0003】
また、電池の内部が何らかの原因で高温となった場合には、セパレータの微細孔が閉じることで、リチウムイオンの移動を停止し、電池機能を停止させる(シャットダウン機能)。
【0004】
このようにセパレータは、電池の安全装置の役割を担っており、セパレータの機械的強度や耐熱性を向上させることが重要となる。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2016-183209号公報)には、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、無機粒子及びバインダ樹脂組成物を含む被覆層を形成する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2019-72666号公報)には、複数の塗工液が混ざり合うことを抑制するための塗工装置であって、第1の吐出口から第1の塗工液を吐出してバックアップロールに接した状態のシートに第1の塗工液を塗布し、第1層を形成する第1のダイと、第2の吐出口から第2の塗工液を吐出してバックアップロールに接した状態のシート上の第1層上に第2の塗工液を塗布し、第2層を形成する第2のダイと、を備える塗工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-183209号公報
【特許文献2】特開2019-72666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、電池のセパレータのような塗工体の特性向上を図るべく、基材の表面に塗工層を形成する塗工技術についての研究開発を行っている。
【0009】
その研究開発過程において、塗工層を多層とした場合には、塗工液の混合の問題があり、この解消について鋭意検討したところ、良好な塗工技術を見出すに至った。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される塗工体の製造方法は、(a)搬出部から取り出された基材の第1面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層を形成する工程と、(b)前記(a)工程の後、前記第1塗工液層上に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層を形成する工程と、(c)前記(b)工程の後、前記第1塗工液層および第2塗工液層を乾燥することにより第1塗工層および第2塗工層を形成する工程と、(d)前記第1塗工層および前記第2塗工層が形成された前記基材を搬入部において取り込む工程と、を有する。前記(a)工程は、前記第1塗工液を前記基材の第一面に塗布し、前記(b)工程は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料である。
【0012】
本願において開示される塗工体の製造方法は、(a)搬出部から取り出された基材の第1面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層を形成する工程と、(b)前記(a)工程の後、前記第1塗工液層上に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層を形成する工程と、(c)前記(b)工程の後、前記第1塗工液層および第2塗工液層を乾燥することにより第1塗工層および第2塗工層を形成する工程と、(d)前記第1塗工層および前記第2塗工層が形成された前記基材を搬入部において取り込む工程と、を有する。前記(a)工程は、前記第1塗工液を前記基材の第一面に塗布し、前記(b)工程は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料であり、前記第2塗工液は、アルカリ珪酸塩を有する。
【0013】
本願において開示される塗工体の製造装置は、基材を取り出す搬出部と、前記基材の第1面に第1塗工液を塗布する第1塗工部と、前記基材の第1面に第2塗工液を塗布する第2塗工部と、前記基材上の第1塗工液および第2塗工液を乾燥することにより、前記基材の第1面に塗工体を形成する乾燥部と、前記塗工体が形成された前記基材を取り込む搬入部と、を有しする。前記第1塗工部は、前記第1塗工液を前記基材の第1面に塗布し、前記第2塗工部は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料である。
【0014】
本願において開示される塗工体の製造装置は、基材を取り出す搬出部と、前記基材の第1面に第1塗工液を塗布する第1塗工部と、前記基材の第1面に第2塗工液を塗布する第2塗工部と、前記基材上の第1塗工液および第2塗工液を乾燥することにより、前記基材の第1面に塗工体を形成する乾燥部と、前記塗工体が形成された前記基材を取り込む搬入部と、を有する。前記第1塗工部は、前記第1塗工液を前記基材の第1面に塗布し、前記第2塗工部は、前記第2塗工液を前記基材の第1面に噴霧し、前記第1塗工液は、第1フィラーと第2フィラーとを有し、前記第1フィラーは、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトから選択される材料であり、前記第2フィラーは、セルロース、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、セルロースナノファイバー、グラフェン、フラーレンから選択される材料であり、前記第2塗工液は、アルカリ珪酸塩を有する。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される塗工体の製造方法によれば、特性の良好な塗工体を製造することができる。
【0016】
本願において開示される塗工体の製造装置によれば、特性の良好な塗工体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1の塗工体の製造工程を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1の塗工体の製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】比較例の塗工体の製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】比較例の塗工体の製造装置の構成を示す図である。
【
図8】応用例1のスプレー塗工装置を示す断面図である。
【
図9】応用例1のスプレー塗工装置を示す断面図である。
【
図10】応用例1のスプレー塗工装置を示す断面図である。
【
図11】リチウムイオン(Li
+)の移動と充放電との関係を示す図である。
【
図12】リチウムイオン電池の構成を示す断面斜視図である。
【
図13】多孔質フィルムの製造装置(システム)の構成を示す模式図である。
【
図14】実施の形態4のセルロース(セオラス)の沈殿状態を示す図である。
【
図15】実施の形態5のセルロースの沈殿状態を示す図である。
【
図16】実施の形態5のセルロースの沈殿状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の塗工体の製造工程を示す断面図である。また、
図2は、本実施の形態の塗工体の製造装置の構成を模式的に示す図である。
【0020】
まず、
図1を参照しながら、塗工体の形成工程について説明する。
【0021】
図1(A)に示すように、多孔質フィルムよりなる基材1を準備する。基材1である多孔質フィルムは、例えば、ポリオレフィン系の樹脂よりなる。基材1の厚さは、例えば、5μm~50μm程度、幅は、例えば、100mm~3000mm程度である。微細孔の細孔径分布は、例えば、10nm~10μm程度であり、平均細孔径は、例えば、10nm~900nm程度である。また、基材1のガーレ値は、例えば100~300sec/100cc程度である。
【0022】
次いで、
図1(B)に示すように、基材1の表面に第1塗工液を塗布し、第1塗工液層3aを形成する。第1塗工液は、フィラーと分散媒とを有する。フィラーとしては、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトなどの無機物やセルロース(セルロースナノファイバー含む)、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、フラーレン、アラミド繊維などを用いることができる。セルロースとして、セルロースの親水基が、疎水基に置換されたものを用いてもよい。分散媒としては、水系の溶媒や有機系の溶媒を用いることができる。また、バインダを添加してもよい。バインダとしては、側鎖状または環状ポリマー樹脂やアクリル系樹脂や熱可塑性フッ素重合体、などを用いることができる。塗布装置としては、例えば、グラビア塗工装置を用いることができる。さらに、フィラーとバインダに加えて、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)やイオン電導性の高いポリマーを添加した状態で用いてもよい。
【0023】
次いで、
図1(C)に示すように、基材1の表面に第2塗工液を塗布し、第2塗工液層4aを形成する。第2塗工液は、水ガラスと溶媒とを有する。水ガラスとは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の珪酸塩水溶液である。例えば、ナトリウム珪酸塩(珪酸ナトリウム、Na
2O・nSiO
2(n=2~4))の他、Naに変えて、Li、K、Rb、Ba、Ca、Mg、Srなどを含む珪酸塩(アルカリ珪酸塩)などを用いることができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。溶媒としては、水系の溶媒や有機系の溶媒を用いることができる。また、バインダを添加してもよい。バインダとしては、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)などの樹脂(フッ素系樹脂)などを用いることができる。
【0024】
次いで、
図1(D)に示すように、基材1上の第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aをヒーター10などにより乾燥することにより、塗工膜3bおよび塗工膜4bの積層膜を形成する。以上の工程により、基材(多孔質フィルム)1と塗工膜3bと塗工膜4bよりなる塗工体(セパレータ)5を形成することができる。塗工膜3bおよび塗工膜4bは、通気性を有し、塗工体5のガーレ値(透気度、[sec/100cc])は、10以上、3000以下であり、通気性は確保されている。
【0025】
上記塗工層の成膜を、
図2に示す装置(システム)を用いて行う場合について、以下に説明する。
【0026】
図2に示すように、塗工体の製造装置は、基材1を巻き出す巻出し部(搬出部)UWと、基材1を巻き取る巻取り部WDとを有する。基材1は、巻出し部UWから巻取り部WDまで連続して配置されており、巻出し部UWと、巻取り部WDとの間において、基材1の表面(第1面)に塗工膜3bおよび塗工膜4bが形成され、塗工体5が完成する。この塗工体の製造装置によれば、巻物状(巻かれた帯状)の基材1を連続的に処理でき、効率的に塗工体を形成することができる。なお、本明細書において、巻出し部UW側を上流、巻取り部(搬入部)WDを下流と言う場合がある。
【0027】
具体的に、巻出し部UWと巻取り部WDとの間には、第1塗工処理部(20)、第2塗工処理部(30)、乾燥処理部(40)が配置されている。基材1は、複数のロール(ガイドロール)Rによってガイドされつつ、各処理部において、処理され、その表面に塗工膜3bおよび塗工膜4bが形成される。以下に詳細に説明する。
【0028】
巻出し部UWから巻き出された基材1は、ロールRによってガイドされ、第1塗工処理部(20)まで搬送される。第1塗工処理部(20)においては、グラビア塗工装置が配置されており、基材1の第1面に第1塗工液が塗布(塗工)され、第1塗工液層3aが形成される。
【0029】
第1塗工液層3aが形成された基材1は、ロールRによってガイドされ、第2塗工処理部(30)まで搬送される。第2塗工処理部(30)においては、スプレー塗工装置が配置されており、基材1の第1面の第1塗工液層3a上に、第2塗工液が塗布(塗工)され、第2塗工液層4aが形成される。
【0030】
第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aが形成された基材1は、乾燥処理部(40)まで搬送される。乾燥処理部(40)においては、乾燥炉(コンベア式乾燥炉)40が配置されており、ロールRにより搬送された基材1の第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aの液体成分を気化させ、塗工膜3bおよび塗工膜4bとする。例えば、乾燥炉は、乾燥室(カバー)を有し、乾燥室では、図示しないノズルから加熱空気が導入されている。加熱空気の温度は、図示しない加熱部(ヒータなど)により温度制御されている。
【0031】
このように、帯状の基材1が、複数のロール(ガイドロール)Rによってガイドされつつ、各処理部において、処理され、塗工体5が形成される。
【0032】
ここで、本実施の形態においては、第1塗工処理部(20)において、接触塗工処理を行うためのグラビア塗工装置が用いられ、第2塗工処理部(30)において、非接触塗工処理を行うためのスプレー塗工装置が用いられており、第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを精度良く形成することができる。
【0033】
図3は、グラビア塗工装置を示す断面図である。
図3に示すグラビア塗工装置は、縦型の塗工装置であり、チャンバー(槽)20bが垂直方向(重力方向に対し平行な方向)に配置されている。この装置は、塗工液20aを貯留するためのチャンバー(槽)20bと、チャンバー(槽)20bにその一部が浸かる塗工用のロール(グラビアロール)CRと、塗工液20aの飛び散り防止とロール表面の液量を調整するための第1のブレード20c、チャンバー(槽)20b内の塗工液と塗工用ロール(グラビアロール)の隙間からの塗工液の漏洩を防止するための第2のブレード20cとを有する。第1のブレード20cは、塗工用のロールCRの回転方向側に、塗工用のロールCRの表面に付着した塗工液20aの液量を調整するように、第1のブレード20cの角度や押付圧を調整できるように配置されている。そして、塗工用のロールCRの表面に付着した塗工液20aが基材1の表面に転写されることにより第1塗工液層3aが形成される。なお、
図3に示すグラビア塗工装置は、縦型であっても、横型であっても良く、横型の場合は、塗工液の漏洩を防止するための第2のブレードは不要となり、塗工液20aの飛び散り防止とロール表面の液量を調整するための第1のブレード20cのみを有する構成となる。
【0034】
図4および
図5は、スプレー塗工装置を示す断面図である。
図4および
図5に示すスプレー塗工装置は、エレクトロスプレー現象を利用した溶液の塗布装置である。
【0035】
図4に示すように、スプレー塗工装置は、液供給装置LSから供給された第2塗工液を、ノズルNから基材(第1塗工液層3a)1上に気体とともに噴霧する。ノズルNは、例えば、紙面奥行き方向に延在しており、ノズル孔は紙面奥行き方向に長辺を有する矩形状である。気体としては、不活性ガス、酸素および空気から選択される1種類以上の気体を用いることができる。この気体の水分含有量(湿度)は、0~90%とすることが好ましい。
【0036】
ここで、
図5に示すように、ノズルNと基材1との間には、高電圧HVが印加されている。なお、基材1に変えて、基材1が接触するローラRや基材1とローラRとの間に配置される搬送ベルト(図示せず)とノズルNとの間に高電圧HVを印加してもよい。このように、高電圧HV(1kV以上)を印加すると、ノズル先端において強力な電界が発生し、ノズル先端の溶液表面が帯電する。これにより、溶液表面の帯電と電界との相互作用によりテイラーコーン(Taylor-cone)と呼ばれる円錐状のメニスカスが形成される。そして、電界をさらに強くすると、液体表面での静電反発力が表面張力を上回り、テイラーコーンの先端から微細な液滴が噴出する。このような微細な液滴においては、短時間で溶媒が蒸発し、液滴の電荷密度が増す。これにより、液滴が静電分裂し、液滴の微細化がさらに進みつつ、対向する基材1(電極)に付着することにより、第2塗工液層4aが形成される。例えば、塗布面における液滴の直径は、0.01~60μmである。
【0037】
このように、エレクトロスプレー現象を利用したスプレー塗工装置を用いることで、均一に、制御性よく、第2塗工液層4aを形成することができる。
【0038】
図6は、比較例の塗工体の製造装置の構成を模式的に示す図である。
図6に示すように、2つのグラビア塗工部(20A、20B)を有する塗工装置を用いて、第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを形成することも可能であるが、グラビア塗工は接触塗工処理であるため、第2塗工液を塗工する際、ロールCRが第1塗工液層3aと接触し、第1塗工液層3aを乱し、また、不所望な塗工液の混合層が生じ得る。
【0039】
図7は、比較例の塗工体の製造装置の構成を模式的に示す図である。非接触塗工処理が可能な塗工装置として、
図7に示すような回転盤(回転子)90を用いた塗工装置を用いることが可能である。しかしながら、この場合、複数の回転盤の制御や液滴の微細化の制御が困難であり、制御性よく塗工液層を形成することが困難である。
【0040】
これに対し、本実施の形態においては、後段の塗工装置として、エレクトロスプレー現象を利用したスプレー塗工装置を用いることで、均一に、制御性よく、第2塗工液層4aを形成することができる。例えば、薄い(0.01~10μm程度の膜厚の層)第2塗工液層4aを形成することも可能である。
【0041】
さらに、
図4に示す本実施の形態のスプレー塗工装置においては、超微細な液滴(ミスト)が噴霧される噴霧エリアASと、この噴霧エリアASの上流に位置するエアカーテンエリアA1と、噴霧エリアASの下流に位置するエアカーテンエリアA1と、を有する。エアカーテンエリアA1においては、噴霧エリアAS(ノズルN)の方向aにエアーが吹き付けられる。別の言い方をすれば、噴霧エリアAS(ノズルN)の方向に傾斜したエアーノズルが配置され、このエアーノズルを通じて噴霧エリアAS方向にエアーが吹き付けられる。基材1の垂線方向と方向aの角度(θ)、別の言い方をすれば、基材1の垂線方向とノズルの角度(θ)は、0.1°以上90°以下である。さらに、別の言い方をすれば、ノズルNの配置方向(垂直方向)とエアーノズルの傾斜方向との角度(θ)は、0.1°以上90°以下である。基板1の搬送速度の変化に伴い、噴霧エリアASの上流に位置するエアカーテンエリアA1に流入する随伴流、噴霧エリアASに流入する随伴流、および噴霧エリアASの下流に位置するエアカーテンエリアA1に流入する随伴流の量が変化することから、エアーノズルの先端位置やノズルの角度(θ)を任意に変更できることが望ましい。
【0042】
このように、エアカーテンエリアA1を設けることで、噴霧エリアASの上流側や下流側へのミストの漏洩を抑制することができる。特に、基材1は、各エリア(各室A1、AS、A1)を仕切る壁の下方に設けられた開口部(窓、隙間、基材入口、基材出口)を通じて搬送される。この搬送に伴い、基材1の搬送方向(走行方向)に流れる風である随伴流が生じる。この随伴流に乗ってミストが漏洩するため、特に、噴霧エリアASの下流側にエアカーテンエリアA1を設けることが好ましい。
【0043】
なお、前述したように、
図4に示す装置においては、噴霧エリアASの上流側および下流側にエアカーテンエリアA1を設けたが、下流側にのみ設けてもよい。また、
図5に示す装置においては、エアーの吹き付け方向を斜めとしたが、基板1に対して垂直(θ=90°)としてもよい。
【0044】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1の塗工体の製造装置の応用例について説明する。
【0045】
(応用例1)
図8~
図10は、本応用例のスプレー塗工装置を示す断面図である。Zは、随伴流を示し、
図9は上流側、
図10は下流側を示す。実施の形態1(
図4)においては、噴霧エリアASの上流側および下流側のエアカーテンエリアA1のエアーの吹き付け方向を対称とした(角度θを同じとした)が、
図8~
図10に示すように、下流側のエアーの吹き付け角度θbを上流側のエアーの吹き付け角度θaより大きくしてもよい(θb>θa)。
【0046】
このように、下流側のエアーの吹き付け角度θbを大きくすることで、随伴流Zによりミストが漏洩しやすい下流側の漏洩防止効果を向上させることができる。
【0047】
また、上流側、下流側において、上記のとおりエアーの吹き付け角度(θa、θb)を調整する場合には、基材1の搬送方向のエアカーテンエリアA1の長さ(A、B)において、下流側のエアカーテンエリアA1の長さBを上流側のエアカーテンエリアA1の長さAより大きく(B>A)することで、エアーノズルを傾斜させやすくなる。
【0048】
(応用例2)
随伴流の影響を受けやすい下流側のエアカーテンエリアA1においてエアーノズルの風量を多くしてもよい。風量は、送風機などを使用した場合の単位時間あたりに移動させる空気量(m3/min)として定義される。例えば、下流側のエアカーテンエリアA1のエアーノズルの風量を、上流側のエアカーテンエリアA1のエアーノズルの風量より多くしてもよい。
【0049】
(応用例3)
随伴流の影響を受けやすい下流側のエアカーテンエリアA1においてエアーノズルの本数を多くしてもよい。例えば、下流側のエアカーテンエリアA1において、
図4の紙面奥行き方向にエアーノズルを複数配置してもよく、その本数は、上流側のエアカーテンエリアA1のエアーノズルの本数より多くしてもよい。この場合、エアーノズル1本あたりの風量が同じであれば、下流側のエアカーテンエリアA1のエアーノズルの風量を、上流側のエアカーテンエリアA1のエアーノズルの風量より多くすることとなる。
【0050】
なお、複数のエアーノズルをエアーノズル群と呼ぶ。エアーノズル群の複数のエアーノズルは、例えば、搬送方向に対し垂直な方向に並べられる。また、エアーノズル群に使用する送風機は、複数のノズルに対して1台の送風機(全ノズル風量が一定)を用いてもよい。また、1本のノズルに対して1台の送風機を接続する方式を用いてもよい。この場合、1本ごとに風量を変化させることができ、随伴流の流出をさらに抑制することができる。
【0051】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1で説明した塗工体の適用例について説明する。実施の形態1で説明した塗工体の製造装置を用いて形成した塗工体は、セパレータとして、例えば、リチウムイオン電池に適用することができる。
【0052】
図11は、リチウムイオン(Li
+)の移動と充放電との関係を示す図である。
図12は、リチウムイオン電池の構成を示す断面斜視図である。
図12に示すリチウムイオン電池は、円筒形の缶106を有しており、この缶106には、帯状の正極材101および負極材103が塗工体(セパレータ)5を介して捲回された電極群が収容されている。電極群の上端面の正極集電タブは、正極キャップに接合されている。電極群の下端面の負極集電タブは、缶106の底部に接合されている。なお、缶106の外周面には、絶縁被覆(図示せず)が設けられている。また、缶106内には、電解液(図示せず)が注液されている。なお、ここでは、円筒形の電池を例に説明したが、電池の構成に制限はなく、例えば、角型や、ラミネート型の電池とすることができる。
【0053】
このように、リチウムイオン電池は、正極材101、負極材103、塗工体(セパレータ)5および電解液を有しており、正極材101と負極材103との間に塗工体(セパレータ)5が配置されている。塗工体(セパレータ)5は、微細孔を多数有する。例えば、充電時、即ち、正極(正極キャップ)と負極(缶106の底部)との間に充電器を接続すると、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液中に放出される。電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、セパレータの微細孔を通過して、負極に到達する。この負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。
【0054】
このように、塗工体(セパレータ)5に設けられた微細孔(図示せず)を介してリチウムイオンが正極材と負極材の間(電極E1、E2間)を行き来することで、充電と放電を繰り返すことができる(
図11も参照)。特に、
図11に示す塗工体(セパレータ)5の膜厚が大きい場合にはリチウムイオンの膜通過時の抵抗が増加し、電池出力特性が低下する。また、リチウムイオンの移動量が少なくなるため、電子の移動量も少なくなり、電池容量が低下する。これに対し、実施の形態1等で説明した後段の塗工装置として、エレクトロスプレー現象を利用したスプレー塗工装置を用いることで、非常に薄い膜(例えば0.01~10μm程度の膜厚の膜)でも、均一に、制御性よく、形成することができ、電池特性(出力特性、容量など)を向上させることができる。
【0055】
次いで、塗工液が塗布される基材(多孔質フィルム)の製造方法について説明する。基材(多孔質フィルム)は、例えば、以下の工程により製造することができる。
【0056】
図13は、多孔質フィルムの製造装置(システム)の構成を示す模式図である。例えば、
図13の二軸混練押出機(S1)の原料供給部に可塑剤(流動パラフィン)とポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)を投入し、混練部において上記可塑剤とポリオレフィンとを混練する。混練条件は、例えば、180℃、12分間であり、軸の回転数は100rpmである。
【0057】
混練物(溶融樹脂)を、吐出部からTダイS2へ搬送し、溶融樹脂をTダイS2のスリットから押し出しつつ、原反冷却装置S3において冷却することで、薄膜状の樹脂成型体を形成する。
【0058】
次いで、上記薄膜状の樹脂成型体を第1延伸装置S4により縦方向に引き延ばし、さらに、第2延伸装置S5により横方向に引き延ばす。
【0059】
次いで、引き延ばされた薄膜を抽出槽S6において有機溶剤(例えば、塩化メチレン)に浸漬する。引き延ばされた薄膜においては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)と可塑剤(パラフィン)が相分離した状態となる。具体的には、可塑剤(パラフィン)がナノサイズの島状となる。このナノサイズの可塑剤(パラフィン)を抽出槽S6の有機溶剤(例えば、塩化メチレン)により除去する(脱脂する)。これにより、多孔質フィルムを形成することができる。
【0060】
この後、さらに、第3延伸装置S7で、横方向に引き延ばしつつ、薄膜を乾燥させ、熱固定を行い、延伸時の内部応力を緩和する。次いで、巻取装置S8により、第3延伸装置S7から搬送された多孔質フィルムを巻き取る。
【0061】
このようにして、多孔質フィルム(実施の形態1の基材)を製造することができる。
【0062】
例えば、巻取装置S8により巻き取られた巻物状の多孔質フィルムを実施の形態1(
図2)の巻出し部UWにセットし、その表面に第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを順次形成することができる。
【0063】
また、例えば、第3延伸装置S7および巻取装置S8の間に、実施の形態1(
図2)の装置を組み込んでもよい。即ち、第3延伸装置S7から搬送された多孔質フィルムの表面に第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを順次形成してもよい。この場合、巻取装置S8は、
図2の巻取り部WDと対応する。
【0064】
このように、多孔質フィルムの形成から塗工層の形成まで、連続した装置(システム)により塗工体を形成してもよい。
【0065】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4のセルロース(セオラス)の沈殿状態を示す図である。セルロース単体(未処理セルロース)およびセルロース表面の疎水基を化学変性(半エステル(SA)化)したものを、それぞれ水中に同量添加し、24時間経過させた(
図14)。添加量は10gである。SA化とは、セルロースを添加剤(無水コハク酸)によりエステル化した後、未反応の添加剤を除去することを意味する。
【0066】
図14に示すように、24時間経過後のSA化セルロースは、未処理セルロースと比較して、沈降の程度が少ない。これは、セルロース分子表面に修飾した疎水基による静電反発の効果によるものと考えられる。したがって、このような半エステル化したセルロースを噴霧エリアASで噴霧する液中に添加することにより、液体表面での静電反発力がさらに高まり、テイラーコーンの先端からより微細な液滴を噴出させることができる。
【0067】
このように、セルロースのようなフィラーの表面に化学変性処理を施すことで、フィラーの静電反発作用を高めることができ、より微細な液滴を塗布することができる。
【0068】
(実施の形態5)
図15および
図16は、実施の形態5のセルロースの沈殿状態を示す図である。セルロース表面に疎水基を化学変性(半エステル(SA)化)したもの、またはSA化セルロースの疎水基に酸化プロピレンで二次的に化学変性(SAPO化)したものを、それぞれ水中に同量添加した。添加直後の様子を
図15に示す。また、24時間経過後の様子を
図16に示す。
図16に示すように、SA化またはSAPO化セルロースを添加してから24時間経過した際の沈降状態を比較すると、SAPO化した方が、SA化より沈降が抑制されていることが確認された。これは、セルロース分子表面に修飾した疎水基が増加したことで、SA化よりもさらに静電反発作用が高まったためと考えられる。したがって、実施の形態4で説明したSA化のみならず、SAPO化したセルロースを噴霧エリアASで噴霧する液中に添加することにより、液体表面での静電反発作用が非常に高まるため、テイラーコーンの先端から微細な液滴を噴出することができる。
【0069】
このように、セルロースのようなフィラーの表面に化学変性処理を施すことで、フィラーの静電反発作用を高めることができ、より微細な液滴を塗布することができる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
例えば、実施の形態1においては、多孔質フィルムよりなる基材上に塗工層(塗工膜3bおよび塗工膜4b)を有するセパレータを例に説明したが、例えば、基材である金属箔上に塗工層を有する電極に実施の形態1等で説明した塗工技術を適用してもよい。
【0072】
例えば、第1塗工液には、有機溶剤、水に分散させた疎水化したセルロースナノファイバー(CeNF)を混合した混合液1に対して、負極活物質として、黒鉛およびナノSiを添加し、さらに導電材として、例えばCNT(カーボンナノチューブ)やアセチレンブラックを添加した混合液2を使用してもよい。負極活物質としては、ナノSiの他にグラファイト(黒鉛)、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等の広く普及されているものを使用してもよい。さらに、CNT、アセチレンブラック以外の他の導電材として、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバーなどを用いてもよい。第2塗工液としては、上記塗工液を用い、金属箔上に第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを上記のとおり形成し、ヒーター10などにより乾燥することにより、塗工膜3bおよび塗工膜4bの積層膜(負極)を形成してもよい。
【0073】
また、第1塗工液には、有機溶剤、水に分散させた疎水化したセルロースナノファイバー(CeNF)を混合した混合液3に対して、NCM、NCA、LiNiO2、Li2MnO3-LiMO2、Li2MSiO4などの正極活物質と、導電材およびPVDF等の結着剤を懸濁させ、得られた合材スラリーを使用してもよい。第2塗工液としては、上記塗工液を用い、金属箔上に第1塗工液層3aおよび第2塗工液層4aを上記のとおり形成し、ヒーター10などにより乾燥することにより、塗工膜3bおよび塗工膜4bの積層膜(正極)を形成してもよい。
【0074】
このように、金属箔上に電極活物質を含む第1塗工液および上記第2塗工液を上記実施の形態で説明したように順次塗工してもよい。
【0075】
また、基材上の塗工層は、2層以上としてもよい。即ち、下層の塗工層が基材上に既に形成された状態で上層の塗工層を形成する場合において、実施の形態1等で説明した非接触塗工処理であるスプレー塗工を行うことで、実施の形態1等で説明した効果を奏することができる。例えば、塗工膜3bおよび塗工膜4b上に、さらに、非接触塗工処理であるスプレー塗工により塗工膜を設けてもよい。
【0076】
また、下層の塗工層(例えば、塗工膜3b)の形成方法としては、接触塗工処理であるグラビア塗工の他、バーコーターを用いた塗工を用いてもよい。また、ダイコータ方式の塗工を用いてもよい。このように、下層の塗工層(例えば、塗工膜3b)の形成方法は、接触塗工でも、非接触塗工でもよい。例えば、接触塗工→非接触塗工→非接触塗工で3層の塗工膜を形成してもよい。また、非接触塗工→非接触塗工→非接触塗工で3層の塗工膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 基材
3a 第1塗工液層
3b 塗工膜
4a 第2塗工液層
4b 塗工膜
5 塗工体
10 ヒーター
20 第1塗工処理部
20a 塗工液
20A グラビア塗工部
20b チャンバー(槽)
20B グラビア塗工部
20c ブレード
30 第2塗工処理部
40 乾燥処理部
90 回転盤
101 正極材
103 負極材
106 缶