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特開2024-97872二剤型接着剤、硬化膜及び硬化膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097872
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二剤型接着剤、硬化膜及び硬化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20240711BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240711BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J163/02
C09J11/04
E04G23/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075111
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2020140747の分割
【原出願日】2020-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕章
(57)【要約】
【課題】燃焼ガスの有害性の低い硬化膜を形成可能な、二剤型接着剤を提供すること。
【解決手段】エポキシ化合物を含有する第一剤と、アミン系硬化剤を含有する第二剤と、を含み、前記第一剤及び前記第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、二剤型接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物を含有する第一剤と、アミン系硬化剤を含有する第二剤と、を含み、
前記第一剤及び前記第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、二剤型接着剤。
【請求項2】
前記エポキシ化合物のエポキシ当量が、190超である、請求項1に記載の二剤型接着剤。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が、グリシジル基を有するグリシジル化合物を含み、
前記アミン系硬化剤が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選択される基を有するアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の二剤型接着剤。
【請求項4】
前記グリシジル化合物が、式(2-1)で表される化合物を含む、請求項3に記載の二剤型接着剤。
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記第一剤及び前記第二剤のうち少なくとも一方が、フィラーを更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二剤型接着剤。
【請求項6】
前記フィラーが、比表面積が70g/m以上のフュームドシリカを含む、請求項5に記載の二剤型接着剤。
【請求項7】
前記フィラーのうち、90質量%以上が前記フュームドシリカである、請求項6に記載の二剤型接着剤。
【請求項8】
前記第一剤及び前記第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の前記フィラーの含有量が0.1質量%以上5.5質量%以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の二剤型接着剤。
【請求項9】
前記第一剤及び前記第二剤の混合物が、4000mPa・s以上100000mPa・s以下の粘度、及び、3.0以上のチクソトロピックインデックスを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の二剤型接着剤。
【請求項10】
構造物表面に硬化膜を形成するための接着剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の二剤型接着剤。
【請求項11】
前記構造物表面がコンクリート表面又はモルタル表面である、請求項10に記載の二剤型接着剤。
【請求項12】
前記硬化膜が、前記第一剤及び前記第二剤の混合物の硬化体と繊維材料との複合体から構成される、請求項10又は11に記載の二剤型接着剤。
【請求項13】
前記硬化膜が、前記構造物表面からの構成材料の剥落防止用である、請求項10~12のいずれか一項に記載の二剤型接着剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の二剤型接着剤を用いて形成される硬化膜であって、
前記第一剤及び前記第二剤の混合物の硬化体を含む、硬化膜。
【請求項15】
前記硬化体と繊維材料との複合体を含む、請求項14に記載の硬化膜。
【請求項16】
窒素元素量が39.3g/m未満である、請求項14又は15に記載の硬化膜。
【請求項17】
全光線透過率が70%以上である、請求項14~16いずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の二剤型接着剤を用いて硬化膜を製造する方法であって、
前記第一剤及び前記第二剤の混合物を、構造物表面に配置して塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜を硬化させて、前記混合物の硬化体を含む硬化膜を得る硬化工程と、
を備える、硬化膜の製造方法。
【請求項19】
前記塗布工程が、前記混合物及び繊維材料を前記構造物表面に配置して、前記混合物及び前記繊維材料を含有する塗膜を形成する工程であり、
前記硬化工程が、前記塗膜を硬化させて、前記混合物の硬化体と前記繊維材料との複合体を含有する硬化膜を得る工程である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記構造物表面が、コンクリート表面又はモルタル表面である、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
エポキシ化合物とアミン系硬化剤とを含み、
固形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤型接着剤、硬化膜及び硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トンネル、橋梁等の構造物からの材料の剥落防止のため、様々な対策がおこなわれている。例えば、特許文献1には、コンクリート表面に対して高強度塗膜を形成することを特徴とするコンクリート剥落防止方法が記載されている。また、特許文献3には、ガラス連続繊維シートを含むコーティング層の形成により、コンクリート構造物表面を補強する強化コーティング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-15329号公報
【特許文献2】特開2010-1707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物上に樹脂膜を形成する場合、火災時の安全性の観点から、燃焼ガスの有害性が低いことが望ましい。
【0005】
そこで本発明は、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜を形成可能な、二剤型接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜及び当該硬化膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、エポキシ化合物を含有する第一剤と、アミン系硬化剤を含有する第二剤と、を含み、上記第一剤及び上記第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、上記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、二剤型接着剤に関する。
【0007】
一態様において、上記エポキシ化合物のエポキシ当量は、190超であってよい。
【0008】
一態様において、上記エポキシ化合物は、グリシジル基を有するグリシジル化合物を含んでいてよく、上記アミン系硬化剤は、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選択される基を有するアミン化合物を含んでいてよい。
【0009】
一態様において、上記グリシジル化合物は、式(2-1)で表される化合物を含んでいてよい。
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
一態様において、上記第一剤及び上記第二剤のうち少なくとも一方は、フィラーを更に含有していてよい。
【0011】
一態様において、上記フィラーは、比表面積が70g/m以上のフュームドシリカを含んでいてよい。
【0012】
一態様において、上記フィラーのうち90質量%以上は、上記フュームドシリカであってよい。
【0013】
一態様において、上記第一剤及び上記第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、上記固形分中の上記フィラーの含有量は0.1質量%以上5.5質量%以下であってよい。
【0014】
一態様において、上記第一剤及び上記第二剤の混合物は、4000mPa・s以上100000mPa・s以下の粘度、及び、3.0以上のチクソトロピックインデックスを示してよい。
【0015】
一態様に係る二剤型接着剤は、構造物表面に硬化膜を形成するための接着剤であってよい。
【0016】
一態様において、上記構造物表面はコンクリート表面又はモルタル表面であってよい。
【0017】
一態様において、上記硬化膜は、上記第一剤及び上記第二剤の混合物の硬化体と繊維材料との複合体から構成されていてよい。
【0018】
一態様において、上記硬化膜は、上記構造物表面からの構成材料の剥落防止用であってよい。
【0019】
本発明の他の一側面は、上記二剤型接着剤を用いて形成される硬化膜であって、上記第一剤及び上記第二剤の混合物の硬化体を含む、硬化膜に関する。
【0020】
一態様に係る硬化膜は、上記硬化体と繊維材料との複合体を含むものであってよい。
【0021】
一態様に係る硬化膜は、窒素元素量が39.3g/m未満であってよい。
【0022】
一態様に係る硬化膜は、全光線透過率が70%以上であってよい。
【0023】
本発明の更に他の一側面は、上記二剤型接着剤を用いて硬化膜を製造する方法であって、上記第一剤及び上記第二剤の混合物を、構造物表面に配置して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗膜を硬化させて、上記混合物の硬化体を含む硬化膜を得る硬化工程と、を備える、硬化膜の製造方法に関する。
【0024】
一態様において、上記塗布工程は、上記混合物及び繊維材料を上記構造物表面に配置して、上記混合物及び上記繊維材料を含有する塗膜を形成する工程であってよく、上記硬化工程は、上記塗膜を硬化させて、上記混合物の硬化体と上記繊維材料との複合体を含有する硬化膜を得る工程であってよい。
【0025】
一態様において、上記構造物表面は、コンクリート表面又はモルタル表面であってよい。
【0026】
本発明の更に他の一側面は、エポキシ化合物とアミン系硬化剤とを含み、固形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜を形成可能な、二剤型接着剤が提供される。また、本発明は、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜及び当該硬化膜の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0029】
<二剤型接着剤>
本実施形態の二剤型接着剤は、エポキシ化合物を含有する第一剤と、アミン系硬化剤を含有する第二剤と、を含む。また、本実施形態において、第一剤及び第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は4.9質量%未満である。
【0030】
上記窒素元素量は、燃焼ガスの有害性がより低くなる観点からは、4.7質量%以下が好ましく、4.6質量%以下がより好ましく、4.5質量%以下が更に好ましい。
【0031】
本実施形態の二剤型接着剤は、第一剤及び第二剤がそれぞれエポキシ化合物及びアミン系硬化剤を含有するため、第一剤及び第二剤の混合によりエポキシ化合物及びアミン系硬化剤による強固な硬化膜を形成できる。すなわち、第一剤及び第二剤の混合物である接着剤組成物は、強固な硬化膜を形成できる。また、本実施形態の二剤型接着剤は、固形分中の窒素元素量が少ないため、燃焼時に有害成分が発生し難く、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜を形成できる。
【0032】
本実施形態の二剤型接着剤は、第一剤と第二剤との混合によって硬化膜を形成可能なものである。本実施形態の二剤型接着剤は、例えば、第一剤及び第一剤が収容された第一容器と、第二剤及び第二剤が収容された第二容器と、を備える二剤型接着剤キットとして提供されてよく、第一剤と、第二剤と、第一剤及び第二剤が個別に収容された容器と、を備える二剤型接着剤キットとして提供されてもよい。
【0033】
本実施形態の二剤型接着剤は、常温硬化型であってよい。
【0034】
本実施形態の二剤型接着剤は、エポキシ化合物とアミン系硬化剤とが当量となるように第一剤及び第二剤を含んでいてよく、エポキシ化合物及びアミン系硬化剤のうちいずれか一方が過剰となるように第一剤及び第二剤を含んでいてもよい。
【0035】
本実施形態の二剤型接着剤を使用する際は、エポキシ化合物とアミン系硬化剤とが当量となるように第一剤及び第二剤を混合することが好ましいが、混合比はこれに限定されない。例えば、第一剤及び第二剤は、エポキシ化合物に対するアミン系硬化剤の量が、0.5~1.5当量(好ましくは0.8~1.2当量)となるように混合されてもよい。
【0036】
エポキシ化合物は、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ化合物としては、エポキシ基を1つ有する化合物、エポキシ基を2つ以上有する化合物が挙げられる。エポキシ化合物は、エポキシ基を2つ以上有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0037】
本実施形態では、固形分中の窒素元素量を低減するため、アミン系硬化剤の量が制限される。アミン系硬化剤の量が少ないと、エポキシ化合物中のエポキシ基が未反応で残存しやすく、硬化膜の強度低下、接着剤の反応性の低下といった課題が生じる場合がある。このため、エポキシ化合物のエポキシ当量は、160以上であることが好ましく、180以上であることがより好ましく、190超であることが更に好ましく、195以上であることが一層好ましく、200以上であってもよい。これにより、アミン系硬化剤が少ない場合でも上記課題が生じ難く、低い窒素元素量を容易に実現しやすい。
【0038】
また、エポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば700以下であり、塗膜の耐熱性及び耐久性が一層優れる観点からは、好ましくは510以下、より好ましくは320以下である。
【0039】
なお、エポキシ化合物のエポキシ当量は、エポキシ基1モル当たりのエポキシ化合物の質量(g)を示す。エポキシ化合物として2種以上を併用した場合、エポキシ化合物のエポキシ当量は、エポキシ化合物の合計量とエポキシ基の合計数とから算出される。
【0040】
エポキシ化合物としては、エポキシ基としてグリシジル基を有する化合物が好ましい。すなわち、エポキシ化合物は、グリシジル基を有するグリシジル化合物を含むことが好ましい。
【0041】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAビス(ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0042】
エポキシ化合物は、式(1-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化2】
【0043】
式(1-1)中、pは0以上の整数を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0044】
11及びR12における炭素数1~5のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5のアルコキシ基)等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0045】
11及びR12におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、アルキル基(例えば炭素数1~5のアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1~5のアルコキシ基)等が挙げられる。
【0046】
11は、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基又はトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくはメチル基である。R11が複数存在するとき、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0047】
12は、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基又はトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくはメチル基である。R12が複数存在するとき、複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0048】
11及びR12は互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0049】
pは、好ましくは0~30である。
【0050】
エポキシ化合物中の式(1-1)で表される化合物の割合は、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。また、エポキシ化合物中の式(1-1)で表される化合物の割合は、例えば100質量%以下であってよく、95質量%以下であってもよく、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0051】
エポキシ化合物は、式(2-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化3】
【0052】
式(2-1)中、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0053】
は、好ましくはメチル基である。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0054】
は、好ましくはメチル基である。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0055】
及びRにおける炭素数1~5のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5のアルコキシ基)等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0056】
及びRにおけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、アルキル基(例えば炭素数1~5のアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1~5のアルコキシ基)等が挙げられる。
【0057】
は、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基又はトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0058】
は、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基又はトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくはメチル基である。
【0059】
及びRは互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
【0060】
n及びmは、好ましくはn+mが2~20、より好ましくはn+mが2~11である。
【0061】
エポキシ化合物中の式(2-1)で表される化合物の割合は、例えば5質量%以上であってよく、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。また、エポキシ化合物中の式(2-1)で表される化合物の割合は、例えば50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0062】
アミン系硬化剤は、エポキシ化合物を架橋して、第一剤及び第二剤の混合物を硬化可能な成分であればよい。アミン系硬化剤は、例えば、エポキシ化合物中のエポキシ基と反応可能な反応点を2つ以上有する化合物であってよい。アミン系硬化剤は1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
アミン系硬化剤としては、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選択される基を有するアミン化合物が好ましい。アミン化合物が有する1級アミノ基は、-NHで表される基である。また、アミン化合物が有する2級アミノ基は、-NH-で表される基である。アミン系硬化剤は、例えば、1級アミノ基を1つ以上有する化合物、2級アミノ基を2つ以上有する化合物等であってよい。
【0064】
アミン系硬化剤は、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、変性脂肪族ポリアミン、変性脂環族アミン及びポリアミドアミンからなる群より選択される少なくとも一種であってよく、変性脂肪族ポリアミン、変性脂環族アミン及びポリアミドアミンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0065】
アミン系硬化剤中の窒素元素量は、アミン系硬化剤の全量基準で、例えば60質量%以下であってよく、燃焼ガスの有害性がより低くなる観点からは、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0066】
アミン系硬化剤の活性水素当量は、例えば20以上であってよく、好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。これにより、より緻密な架橋構造が形成され、硬化膜の耐熱性及び耐久性がより向上する傾向がある。また、アミン系硬化剤の活性水素当量は、例えば200以下であってよく、好ましくは120以下、より好ましくは100以下である。これにより、接着剤中の窒素元素量をより低減しやすくなり、上述の効果がより顕著に奏される。
【0067】
なお、アミン系硬化剤の活性水素当量は、活性水素1モル当たりのアミン系硬化剤の質量(g)を示す。アミン系硬化剤として2種以上を併用した場合、アミン系硬化剤のアミン当量は、アミン系硬化剤の合計量と活性水素の合計数とから算出される。
【0068】
本実施形態の二剤型接着剤は、第一剤及び第二剤のうち少なくとも一方がフィラーを含むことが好ましい。フィラーの配合により、第一剤及び第二剤の混合物の粘度が向上し、壁面、天井面等に対する塗膜形成時の液だれを抑制できる。
【0069】
フィラーとしては、二剤型接着剤に配合される公知のフィラーを特に制限なく使用できる。フィラーとしては、例えば、有機フィラー及び無機フィラーが挙げられる。また、フィラーは、これらのフィラーに疎水化処理等の表面処理を施したものであってもよい。
【0070】
フィラーの形状は特に限定されず、例えば、粒状、フレーク状、繊維状、エマルジョン状等であってよい。
【0071】
有機フィラーとしては、例えば、樹脂粒子が挙げられる。樹脂粒子は、中実粒子であってもよく、多孔質粒子であってもよく、中空粒子であってもよい。樹脂粒子としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル系粒子、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリスチレン系粒子等が挙げられる。
【0072】
無機フィラーとしては、例えば、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、金属酸化物、金属水酸化物、シリカ等が挙げられる。無機フィラーは、これらの中空粒子、繊維状粒子、中実粒子又は多孔質粒子等であってよい。
【0073】
フィラーとしては、無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、フュームドシリカが好ましく、比表面積が70g/m以上(好ましくは80~400g/m)のフュームドシリカがより好ましい。なお、当該比表面積は、BET比表面積を意味する。BET比表面積は、無機フィラーの表面に占有面積が既知の気体分子(窒素分子)を吸着させ、この気体分子の吸着量から比表面積を求める気相吸着法によって測定される値を示す。
【0074】
本実施形態では、フィラーに占めるフュームドシリカの割合は、例えば80質量%以上であってよく、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。これにより、液だれを十分に抑制する増粘効果と硬化膜の優れた光透過性との両立を図ることができる。
【0075】
本実施形態の二剤型接着剤中のフィラーの含有量は、第一剤及び第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、例えば0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。これにより、液だれを抑制する増粘効果がより顕著に奏される。また、本実施形態の二剤型接着剤中のフィラーの含有量は、第一剤及び第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、例えば5.5質量%以下であってよく、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。これにより、硬化膜の光透過性がより向上する傾向がある。
【0076】
本実施形態の二剤型接着剤は、第一剤及び第二剤のうち少なくとも一部が硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤の配合により、第一剤及び第二剤の混合物の硬化性がより向上する。
【0077】
硬化促進剤は、エポキシ化合物とアミン系硬化剤との反応を促進し得るものであればよく、公知の硬化促進剤を特に制限なく用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、モノフェノール化合物が好適に用いられる。モノフェノール化合物としては、4-tert-ブチルフェノールが好ましい。
【0078】
本実施形態の二剤型接着剤中の硬化促進剤の含有量は、第一剤及び第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、例えば0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。これにより、第一剤及び第二剤の混合物の硬化性がより向上する傾向がある。また、本実施形態の二剤型接着剤中の硬化促進剤の含有量は、第一剤及び第二剤中の固形分の合計量を100質量%としたとき、例えば5.5質量%以下であってよく、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。これにより、第一剤及び第二剤の混合物の硬化性がより向上する傾向がある。
【0079】
本実施形態の二剤型接着剤は、上記以外の他の成分を更に含んでいてよい。他の成分としては、例えば、硬化遅延材、光安定剤、光吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、顔料、染料、シランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、ワックス、溶剤、水等が挙げられる。
【0080】
第一剤は、エポキシ化合物を含み、必要に応じてフィラーを含んでいてよく、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
【0081】
第一剤中のエポキシ化合物の含有量は、第一剤の固形分の全量基準で、例えば80質量%以上であってよく、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0082】
第二剤は、アミン系硬化剤を含み、必要に応じてフィラーを含んでいてよく、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
【0083】
第二剤中のアミン系硬化剤の含有量は、第二剤の固形分の全量基準で、例えば60質量%以上であってよく、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0084】
本実施形態の二剤型接着剤は、第一剤及び第二剤の混合物が、4000mPa・s以上100000mPa・s以下(より好ましくは8000mPa・s以上25000mPa・s以下)の粘度、及び、3.0以上(より好ましくは4.0~8.0)のチクソトロピックインデックスを示すことが好ましい。なお、第一剤及び第二剤の混合物は、エポキシ化合物とアミン系硬化剤との反応により、経時的に粘度及びチクソトロピックインデックスが変化する。すなわち、上記規定は、第一剤及び第二剤の混合物が、混合後の一定期間、上記粘度及びチクソトロピックインデックスを示すことを意味する。
【0085】
本明細書中、第一剤及び第二剤の混合物の粘度は、コーンプレート型回転式粘度計により測定される23℃、20rpmにおける粘度を示す。また、チクソトロピックインデックスは、コーンプレート型回転式粘度計により測定される、23℃、20rpmにおける粘度Vに対する23℃、2rpmにおける粘度Vの比(V/V)を示す。
【0086】
本実施形態の二剤型接着剤は、上述のとおり、燃焼ガスの有害性の低い硬化膜を形成可能であることから、構造物表面に硬化膜を形成するための接着剤として好適に用いることができる。
【0087】
硬化膜は、構造物表面からの構成材料の剥落防止用であってよい。すなわち、本実施形態の二剤型接着剤は、構造物表面に、構成材料の剥落防止用硬化膜を形成するための接着剤であってよい。
【0088】
構造物表面は特に限定されないが、材料の剥落防止効果が顕著に得られる観点から、コンクリート表面又はモルタル表面が好ましい。すなわち、本実施形態の二剤型接着剤は、コンクリート表面又はモルタル表面に硬化膜を形成するための接着剤であってよい。
【0089】
構造物表面に形成される硬化膜は、第一剤及び第二剤の混合物の硬化体と繊維材料との複合体を含むものであってよい。すなわち、本実施形態の二剤型接着剤は、構造物表面に、第一剤及び第二剤の混合物の硬化体と繊維材料との複合体を含む硬化膜を形成するための接着剤であってよい。
【0090】
繊維材料は特に限定されず、複合体として使用される繊維材料を特に制限なく用いることができる。繊維材料は、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、アラミド繊維等であってよい。この中で燃焼ガスの有害性と硬化後の構造物表面の視認性の観点から、ガラス繊維が特に好ましい。
【0091】
<硬化膜>
本実施形態の硬化膜は、上述の二剤型接着剤を用いて形成された硬化膜であり、第一剤及び第二剤の混合物の硬化体を含む。
【0092】
第一剤及び第二剤の混合物は、第一剤及び第二剤を、エポキシ化合物に対するアミン系硬化剤の量が、0.5~1.5当量(好ましくは0.8~1.2当量)となるように混合したものであってよい。第一剤及び第二剤の混合物は、常温で徐々に硬化し、硬化体を形成する。
【0093】
本実施形態の硬化膜は、第一剤及び第二剤の混合物の硬化体と繊維材料との複合体を含んでいてよい。当該複合体は、例えば、第一剤と第二剤と繊維材料とを混合して形成されたものであってよく、第一剤及び第二剤の混合物を繊維材料に含浸させて形成されたものであってもよい。
【0094】
本実施形態の硬化膜は、例えば、硬化体及び繊維材料を含む複合体層のみから構成されていてもよく、硬化体を含む硬化体層と、硬化体及び繊維基材を含む複合体層と、から構成されていてもよい。
【0095】
硬化膜の厚さは特に限定されないが、例えば0.1mm以上であってよく、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.6mm以上である。また、硬化膜の厚さは、例えば2.0mm以下であってよく、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
【0096】
硬化膜中の硬化体の量は、例えば0.1kg/m以上であってよく、好ましくは0.4kg/m以上、より好ましくは0.6kg/m以上である。また、硬化膜中の硬化体の量は、例えば2.0kg/m以下であってよく、好ましくは1.2kg/m以下、より好ましくは1.0kg/m以下である。
【0097】
本実施形態の硬化膜は、窒素元素量が、例えば50.0g/m以下であってよく、好ましくは45.0g/m以下、より好ましくは40.0g/m以下、更に好ましくは39.3g/m未満、一層好ましくは35.0g/m以下、特に好ましくは33.5g/m以下である。このような硬化膜は、燃焼時の有害ガスの発生がより顕著に抑制される。
【0098】
本実施形態の硬化膜は、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このような硬化膜は、硬化膜を介して構造物表面を視認できるため、構造物表面のひび割れ等の発見が容易である、構造物表面の意匠性を維持しつつ剥落防止を図れることができる、等の効果が得られる。
【0099】
なお、本明細書中、硬化膜の全光線透過率は、島津製作所社製UV-VIS-NIR分光光度計SolidSpec-3700iを用いてJIS K7136:2000(プラスチック:透明材料のヘーズの求め方)に従って測定される。
【0100】
<硬化膜の製造方法>
本実施形態の硬化膜は、例えば、第一剤及び第二剤の混合物を、構造物表面に配置して塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を硬化させて、混合物の硬化体を含む硬化膜を得る硬化工程と、を備える製造方法により製造される。
【0101】
塗布工程では、上記混合物及び繊維材料を構造物表面に配置して、混合物及び繊維材料を含む塗膜を形成してもよい。このような塗膜を形成することで、硬化体と繊維材料との複合体を含む硬化膜が形成される。
【0102】
構造物表面への上記混合物の塗布量は、混合物中の固形分の量として、例えば0.1kg/m以上であってよく、好ましくは0.4kg/m以上、より好ましくは0.6kg/m以上である。また、構造物表面への上記混合物の塗布量は、混合物中の固形分の量として、例えば2.0kg/m以下であってよく、好ましくは1.2kg/m以下、より好ましくは1.0kg/m以下である。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の一側面は、構造物表面からの構成材料の剥落を防止する、剥落防止方法であってよい。また、本発明の他の一側面は、表面の少なくとも一部に剥落防止用硬化膜を備える構造物であってよい。
【実施例0104】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
実施例及び比較例で用いた各成分の略号、並びに、実施例及び比較例で実施した試験法は、以下のとおりである。
【0106】
<エポキシ化合物>
・jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量190、グリシジル基含有エポキシ化合物)
・jER806:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、エポキシ当量165、グリシジル基含有エポキシ化合物)
・アデカレジンEP-4000(表中、「EP-4000」):式(2-2)の構造を有するエポキシ化合物(アデカ社製、エポキシ当量320)
【化4】

[式中、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。]
・アデカグリシロールED-523T(表中、「ED-523T」):ジグリジジルエーテル(アデカ社製、エポキシ当量140)
【0107】
<アミン系硬化剤>
・TEPA:テトラエチレンペンタミン(東京化成工業社製、活性水素当量23、窒素元素量53質量%、1級アミノ基及び2級アミノ基を有するアミン系硬化剤)
・jERキュアST11:変性脂肪族ポリアミン(三菱ケミカル社製、活性水素当量114、窒素元素量9.2質量%)
・トーマイド235-A:ポリアミドアミン(T&K TOKA社製、活性水素当量95、窒素元素量13.1質量%)
【0108】
<フィラー>
・AEROSIL RY200S(表中、「AEROSIL」):疎水性ヒュームドシリカ(BET比表面積80g/m、エボニック社製)
・炭酸カルシウム(日東粉化工業社製)
【0109】
<その他の成分>
・4-tert-ブチルフェノール(富士フィルム和光純薬社製)
【0110】
<繊維シート>
・WL 230 140 BS6:ガラスクロス(日東紡社製)
【0111】
<アミン系硬化剤の全窒素量分析>
住化分析センター社製スミグラフNC-220Fを用いて、アスパラギン酸(窒素量10.52質量%)を標準試料として検量線を作成し、アミン系硬化剤の窒素含有量(質量%)を算出した。
【0112】
<二剤型接着剤の粘度測定>
東機産業製の回転粘度計TVB-25Hを用いた。ローターは5号ローターを使用した。粘度は、第一剤及び第二剤を規定量計量し、混合した後、5分後に測定した。第一剤及び第二剤はエポキシ当量及び活性水素当量から、エポキシ基とアミン由来の活性水素とが当量反応するように配合量を定めた。粘度計のカップ温度を23℃、サンプル量は200cmとし、回転数は20rpm及び2rpmとした。20rpmにおける測定結果を接着剤の粘度とし、20rpmにおける粘度に対する2rpmにおける粘度の比をチクソトロピックインデックスとして、結果を表1に記載した。
【0113】
<硬化膜の全光線透過率(1)>
第一剤及び第二剤を規定量計量し、混合して、接着剤組成物を得た。なお、第一剤及び第二剤の配合量は、エポキシ当量及び活性水素当量から、エポキシ基とアミン由来の活性水素とが当量反応するように定めた。
次に、PETシート上に規定の塗布量(1.0kg/m)で接着剤組成物を塗工し、23℃で7日間の養生後、PETフィルムをはがして硬化膜を得た。得られた硬化膜について、島津製作所社製UV-VIS-NIR分光光度計SolidSpec-3700iを用いてJIS K7136:2000(プラスチック:透明材料のヘーズの求め方)に従い、全光線透過率を測定した。
【0114】
<硬化膜の全光線透過率(2)>
第一剤及び第二剤を規定量計量し、混合して、接着剤組成物を得た。なお、第一剤及び第二剤の配合量は、エポキシ当量及び活性水素当量から、エポキシ基とアミン由来の活性水素とが当量反応するように定めた。
次に、PETシート上に規定の塗布量(1.0kg/m)で接着剤組成物を塗工し、塗工後すぐに繊維シートを重ねて、ローラを用いて接着剤組成物を繊維シートに含浸させた。23℃で7日間の養生後、PETフィルムをはがして、複合体を含む硬化膜を得た。得られた硬化膜について、島津製作所社製UV-VIS-NIR分光光度計SolidSpec-3700iを用いてJIS K7136:2000(プラスチック:透明材料のヘーズの求め方)に従い、全光線透過率を測定した。
【0115】
<燃焼ガスの有害性の評価>
第一剤及び第二剤を規定量計量し、混合して、接着剤組成物を得た。なお、第一剤及び第二剤の配合量は、エポキシ当量及び活性水素当量から、エポキシ基とアミン由来の活性水素とが当量反応するように定めた。
次に、ケイ酸カルシウム板(220mm×220mm×10mm)上に接着剤組成物を1.0kg/m塗工し、塗工後すぐに繊維シートを重ねて、ローラを用いて接着剤組成物を繊維シートに含浸させた。23℃で養生後して、試験片を得た。
得られた試験片について、日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定める、マウスを使用したガス有害性試験を行い、マウスの平均行動停止時間(X)を算出した。なお、上記の防耐火性能試験・評価業務方法書は、例えば、一般財団法人建材試験センターが公開している。なお、Xが大きいほど有害性が低いと言える。Xは、例えば6.8分以上が好ましく、7.0分以上がより好ましい。
【0116】
(実施例1)
70質量部のjER828、30質量部のアデカレジンEP-4000及び3.5質量部のAEROSIL RY200Sを混合して、エポキシ化合物のエポキシ当量が216の第一剤を得た。次に、トーマイド235-Aをそのまま第二剤として準備した。
第一剤100質量部に対して第二剤42質量部となる配合比で第一剤及び第二剤を混合し、接着剤組成物を得た。接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、3.8質量%であった。
得られた接着剤組成物について、上述の方法で、粘度測定、硬化膜の作成、複合体を含む硬化体の作成、全光線透過率の測定、及び、燃焼ガスの有害性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2)
第二剤としてST11を用い、第一剤100質量部に対する第二剤の配合量を51質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、3.0質量%であった。
【0118】
(実施例3)
第二剤としてTEPAを用い、第一剤100質量部に対する第二剤の配合量を10質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.7質量%であった。
【0119】
(実施例4)
100質量部のjER828及び3.5質量部のAEROSIL RY200Sを混合して、エポキシ化合物のエポキシ当量が190の第一剤を得た。次に、トーマイド235-Aをそのまま第二剤として準備した。
第一剤100質量部に対して第二剤48質量部となる配合比で第一剤及び第二剤を混合し、接着剤組成物を得た。接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.2質量%であった。得られた接着剤組成物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0120】
(実施例5)
43.9質量部のトーマイド235-Aと3.0質量部の4-tert-ブチルフェノールとを混合したものを第二剤とし、第一剤100質量部に対する第二剤の配合量を45質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、3.7質量%であった。
【0121】
(実施例6)
70質量部のjER828、30質量部のアデカグリシロールED-523T及び3.5質量部のAEROSIL RY200Sを混合して、エポキシ化合物のエポキシ当量が172の第一剤を得た。次に、トーマイド235-Aをそのまま第二剤として準備した。
第一剤100質量部に対して第二剤53質量部となる配合比で第一剤及び第二剤を混合し、接着剤組成物を得た。接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.4質量%であった。得られた接着剤組成物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0122】
(実施例7)
第一剤にフィラーを配合せず、第一剤100質量部に対する第二剤の配合量を44質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.0質量%であった。
【0123】
(実施例8)
第一剤において、AEROSIL RY200Sに替えて3.5質量部の炭酸カルシウムを配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、3.8質量%であった。
【0124】
(実施例9)
第一剤において、AEROSIL RY200Sの配合量を5.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、3.7質量%であった。
【0125】
(実施例10)
8.8質量部のトーマイド235-Aと8.4質量部のTEPAとを混合したものを第二剤とし、第一剤100質量部に対する第二剤の配合量を17質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。なお、接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.6質量%であった。
【0126】
(比較例1)
100質量部のjER828及び3.5質量部のAEROSIL RY200Sを混合して、エポキシ化合物のエポキシ当量が190の第一剤を得た。次に、TEPAをそのまま第二剤として準備した。
第一剤100質量部に対して第二剤12質量部となる配合比で第一剤及び第二剤を混合し、接着剤組成物を得た。接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、5.5質量%であった。得られた接着剤組成物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0127】
(比較例2)
50質量部のjER806、50質量部のアデカグリシロールED-523T、及び3.5質量部のAEROSIL RY200Sを混合して、エポキシ化合物のエポキシ当量が151の第一剤を得た。次に、トーマイド235-Aをそのまま第二剤として準備した。
第一剤100質量部に対して第二剤61質量部となる配合比で第一剤及び第二剤を混合し、接着剤組成物を得た。接着剤組成物中の固形分の合計量を100質量%としたとき、固形分中の窒素元素量は、4.9質量%であった。得られた接着剤組成物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物とアミン系硬化剤とを含み、
形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の窒素元素量が4.9質量%未満である、接着剤組成物
【請求項2】
前記エポキシ化合物のエポキシ当量が、190超である、請求項1に記載の接着剤組成物
【請求項3】
前記エポキシ化合物が、グリシジル基を有するグリシジル化合物を含み、
前記アミン系硬化剤が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選択される基を有するアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の接着剤組成物
【請求項4】
前記グリシジル化合物が、式(2-1)で表される化合物を含む、請求項3に記載の接着剤組成物
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。Rが複数存在するとき、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
ィラーを更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物
【請求項6】
前記フィラーが、比表面積が70g/m以上のフュームドシリカを含む、請求項5に記載の接着剤組成物
【請求項7】
前記フィラーのうち、90質量%以上が前記フュームドシリカである、請求項6に記載の接着剤組成物
【請求項8】
形分の合計量を100質量%としたとき、前記固形分中の前記フィラーの含有量が0.1質量%以上5.5質量%以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物
【請求項9】
000mPa・s以上100000mPa・s以下の粘度、及び、3.0以上のチクソトロピックインデックスを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物
【請求項10】
構造物表面に硬化膜を形成するための接着剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物
【請求項11】
前記構造物表面がコンクリート表面又はモルタル表面である、請求項10に記載の接着剤組成物
【請求項12】
前記硬化膜が、前記接着剤組成物の混合物の硬化体と繊維材料との複合体から構成される、請求項10又は11に記載の接着剤組成物
【請求項13】
前記硬化膜が、前記構造物表面からの構成材料の剥落防止用である、請求項10~12のいずれか一項に記載の接着剤組成物
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて形成される硬化膜であって、
前記接着剤組成物の混合物の硬化体を含む、硬化膜。
【請求項15】
前記硬化体と繊維材料との複合体を含む、請求項14に記載の硬化膜。
【請求項16】
窒素元素量が39.3g/m未満である、請求項14又は15に記載の硬化膜。
【請求項17】
全光線透過率が70%以上である、請求項14~16いずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて硬化膜を製造する方法であって、
前記接着剤組成物を、構造物表面に配置して塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜を硬化させて、前記混合物の硬化体を含む硬化膜を得る硬化工程と、
を備える、硬化膜の製造方法。
【請求項19】
前記塗布工程が、前記混合物及び繊維材料を前記構造物表面に配置して、前記混合物及び前記繊維材料を含有する塗膜を形成する工程であり、
前記硬化工程が、前記塗膜を硬化させて、前記混合物の硬化体と前記繊維材料との複合体を含有する硬化膜を得る工程である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記構造物表面が、コンクリート表面又はモルタル表面である、請求項18又は19に記載の製造方法。