(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097909
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】反射型スクリーン、映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/60 20140101AFI20240711BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240711BHJP
G03B 21/62 20140101ALI20240711BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240711BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G03B21/60
G03B21/14 Z
G03B21/62
G02B5/02 B
H04N5/74 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076382
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2020083571の分割
【原出願日】2020-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】関口 博
(57)【要約】
【課題】透明性が高く、コントラストが高く良好な映像が表示できる反射型スクリーン及び映像表示装置を提供することである。
【解決手段】スクリーン10は、反射型スクリーンであって、スクリーン面に沿って配列された拡散部15と、隣り合う拡散部15の間に設けられた第1光透過部12及び第2光透過部14と、第1光透過部12と第2光透過部14との間に、スクリーン10の厚み方向に対して所定の角度θ2をなすように傾斜して設けられ、第1光透過部12よりも屈折率が低い低屈折率層13と、を備え、拡散部15は、光を拡散する光拡散材152を含有し、背面側の面となる第4の面15dを有し、拡散部15の配列方向及びスクリーン10の厚み方向に平行な断面において、拡散部15の配列方向における第4の面15dの寸法をW2とし、スクリーン10の厚み方向における拡散部15の寸法をh1としたときに、h1>W2である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する反射型スクリーンであって、
入射する光の少なくとも一部を拡散する機能を有し、スクリーン面に沿って配列された拡散部と、
隣り合う前記拡散部の間に設けられた第1光透過部と、
隣り合う前記拡散部の間であって前記第1光透過部よりも背面側に設けられた第2光透過部と、
前記第1光透過部と前記第2光透過部との間に、該反射型スクリーンの厚み方向に対して所定の角度をなすように傾斜して設けられ、前記第1光透過部よりも屈折率が低い低屈折率層と、
を備え、
前記拡散部は、光を拡散する光拡散材を含有し、
前記拡散部は、
背面側の面となる第4の面を有し、
前記拡散部の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記拡散部の配列方向における前記第4の面の寸法をW2とし、該反射型スクリーンの厚み方向における前記拡散部の寸法をh1としたときに、h1>W2であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記低屈折率層が該反射型スクリーンの厚み方向となす角度は、前記第1光透過部に入射した映像光が該反射型スクリーンの厚み方向となす角度よりも大きいこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部は、映像源側の面となる第1の面を有し、
前記拡散部の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における、前記拡散部の断面形状は、台形形状であり、
前記拡散部の配列方向における前記第1の面の寸法は、前記拡散部の配列方向における前記第4の面の寸法よりも小さいこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1又は請求項3に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部は、前記拡散部の配列方向において対向する第2の面及び第3の面を有し、
前記第2の面及び前記第3の面が、該反射型スクリーンの厚み方向となす角度をそれぞれ、角度θ3、角度θ1とするとき、θ3=θ1を満たすこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項5】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部の配列ピッチは、100~1000μmであること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項6】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記光拡散材の平均粒径は、1μm以上であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項7】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部は、映像源側の面となる第1の面を有し、
前記光拡散材の平均粒径は、前記拡散部の配列方向における前記第1の面の寸法以下であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項8】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記映像光は、前記拡散部に入射して拡散され、一部が映像源側へ出射し、一部が背面側へ出射すること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項9】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記第1光透過部と前記第2光透過部とは、屈折率が等しいこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項10】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部は、
該反射型スクリーンのスクリーン面に沿って第1方向に延びるように帯状に形成され、前記第1方向に交差する第2方向に配列されており、
前記第2方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における断面形状が楔形形状であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項11】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部の他に、光を拡散する光拡散材を含有する部分を有していないこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項12】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記低屈折率層が該反射型スクリーンの厚み方向に対してなす角度は、前記低屈折率層の配列方向において、連続的に又は段階的に変化していること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項13】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記拡散部の配列方向において、前記拡散部の配列ピッチは、連続的に又は段階的に変化していること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項14】
請求項1に記載の反射型スクリーンと、
前記反射型スクリーンに映像光を投射する映像源と、
を備える映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像光を反射して表示する反射型スクリーン、映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、映像源から投射された映像光を反射して表示する反射型スクリーンとして、様々なものが開発されている。なかでも、映像光を投射して映像が良好に視認できる反射型スクリーンとして使用でき、かつ、映像光を投射しない不使用時等にはスクリーンの向こう側の景色が透けて見える透明性を有する反射型スクリーン(半透過型の反射型スクリーン)は、意匠性の高さ等から需要が高まっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半透過型の反射型スクリーンでは、映像光の一部が反射型スクリーンを透過する。しかし、その透過する映像光の光量が大きいと、光の利用効率が悪く、映像が暗くなるという問題がある。また、そのような透過した映像光により、天井や背面側に位置する人物や物体に投影像が映り込むという問題がある。
そこで、例えば、特許文献1のようなスクリーンにおいて、透過する映像光の光量を減らすために、光散乱部の配列ピッチを小さくする等の改良が想定される。
しかし、光散乱部の配列ピッチを小さくすると、ヘイズが高くなり、スクリーンに表示される映像のコントラストが低下するという問題が生じる。また、光散乱部の配列ピッチを小さくすると、スクリーンを透過する太陽光等の外光により回折現象が生じて透明性が低下するという問題も生じる。
【0005】
本発明の課題は、透明性が高く、コントラストが高く良好な映像が表示できる反射型スクリーン及び映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
第1の発明は、映像源から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する反射型スクリーンであって、入射する光の少なくとも一部を拡散する機能を有し、スクリーン面に沿って配列された拡散部(15)と、隣り合う前記拡散部の間に設けられた第1光透過部(12)と、隣り合う前記拡散部の間であって前記第1光透過部よりも背面側に設けられた第2光透過部(14)と、前記第1光透過部と前記第2光透過部との間に、該反射型スクリーンの厚み方向に対して所定の角度をなすように傾斜して設けられ、前記第1光透過部よりも屈折率が低い低屈折率層(13)と、を備え、前記拡散部は、光を拡散する光拡散材を含有し、前記拡散部は、背面側の面となる第4の面(15d)を有し、前記拡散部の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記拡散部の配列方向における前記第4の面の寸法をW2とし、前記拡散部の該反射型スクリーンの厚み方向における寸法をh1とするとき、h1>W2であること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第2の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、前記低屈折率層(13)が該反射型スクリーンの厚み方向となす角度は、前記第1光透過部に入射した映像光(Lt)が該反射型スクリーンの厚み方向となす角度よりも大きいこと、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)は、映像源側の面となる第1の面(15a)を有し、前記拡散部の配列方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記拡散部の断面形状は、台形形状であり、前記拡散部の配列方向における前記第1の面の寸法は、前記拡散部の配列方向における前記第4の面(15d)の寸法よりも小さいこと、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)は、前記拡散部の配列方向において対向する第2の面(15b)及び第3の面(15c)を有し、前記第2の面及び前記第3の面が、該反射型スクリーンの厚み方向となす角度をそれぞれ、角度θ3、角度θ1とするとき、θ3=θ1を満たすこと、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)の配列ピッチは、100~1000μmであること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記光拡散材の平均粒径は、1μm以上であること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)は、映像源側の面となる第1の面(15a)を有し、前記光拡散材の平均粒径は、前記拡散部の配列方向における前記第1の面の寸法以下であること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第8の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記映像光は、前記拡散部に入射して拡散され、一部が映像源側へ出射し、一部が背面側へ出射すること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第9の発明は、第1の発明から第8の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記第1光透過部(12)と前記第2光透過部(14)とは、屈折率が等しいこと、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第10の発明は、第1の発明から第9の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)は、該反射型スクリーンのスクリーン面に沿って第1方向に延びるように帯状に形成され、前記第1方向に交差する第2方向に配列されており、前記第2方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面における断面形状が楔形形状であること、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第11の発明は、第1の発明から第10の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)の他に、光を拡散する光拡散材を含有する部分を有していないこと、を特徴とする反射型スクリーン(10)である。
第12の発明は、第1の発明から第11の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記低屈折率層(13)が該反射型スクリーンの厚み方向に対してなす角度は、前記低屈折率層の配列方向において、連続的に又は段階的に変化していること、を特徴とする反射型スクリーンである。
第13の発明は、第1の発明から第12の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記拡散部(15)の配列方向において、前記拡散部の配列ピッチは、連続的に又は段階的に変化していること、を特徴とする反射型スクリーンである。
第14の発明は、第1の発明から第13の発明までのいずれかの反射型スクリーン(10)と、前記反射型スクリーンに映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示装置(1)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明性が高く、コントラストが高く良好な映像が表示できる反射型スクリーン及び映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態のスクリーン10の層構成を示す図である。
【
図3】実施形態の第1光透過部12等を拡大して示す図である。
【
図4】実施形態のスクリーン10に入射する光の進み方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
【0010】
また、本明細書中において、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
また、本明細書中及び特許請求の範囲において、スクリーン面とは、スクリーン全体として見たときにおけるスクリーンの平面方向となる面を示すものであり、スクリーンの画面(表示面)に平行であるとする。
【0011】
(実施形態)
図1は、本実施形態の映像表示装置1を示す図である。
図1(a)では、映像表示装置1の斜視図であり、
図1(b)は、映像表示装置1を側面側(後述する+X側)から見た図である。
映像表示装置1は、スクリーン10、映像源LS等を有している。本実施形態のスクリーン10は、映像源LSから投影された映像光Lを反射して、その画面上に映像を表示する反射型スクリーンである。このスクリーン10の詳細に関しては、後述する。
本実施形態では、一例として、映像表示装置1は、店舗のショーウィンドウに適用されており、スクリーン10が不図示のショーウィンドウのガラスに固定されるものとする。
【0012】
ここで、理解を容易にするために、
図1を含め以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン10の画面の左右方向をX方向、画面の上下方向をY方向とし、スクリーン10の厚み方向をZ方向とする。スクリーン10の画面は、XY面に平行であり、スクリーン10の厚み方向(Z方向)は、スクリーン10の画面に直交する。本実施形態のスクリーン10は、使用状態において、画面が鉛直方向及び水平方向に平行であるように配置されている。
【0013】
また、スクリーン10の正面方向に位置する観察者Oから見て左右方向の右側に向かう方向を+X方向、上下方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において背面側(裏面側)から映像源側(観察者側)に向かう方向を+Z方向とする。
さらに、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
【0014】
映像源LSは、映像光Lをスクリーン10へ投影する映像投射装置であり、例えば、短焦点型のプロジェクタである。
この映像源LSは、映像表示装置1の使用状態において、スクリーン10の画面(表示領域)を正面方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、スクリーン10の画面左右方向の中央であって、スクリーン10の画面よりも鉛直方向下方側に位置している。
映像源LSは、映像表示装置1の奥行き方向(Z方向)において、スクリーン10の表面からの距離が、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から斜めに映像光Lを投影できる。したがって、従来の汎用プロジェクタに比べて、映像源LSは、スクリーン10までの投射距離が短く、投射された映像光Lがスクリーン10に入射する入射角度が大きい。
【0015】
スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示する反射型スクリーンであり、かつ、観察者Oがスクリーン10を通してスクリーン10の向こう側(-Z側)の景色(透過映像)を観察できる透明性を有する半透過型の反射型スクリーンである。
スクリーン10の画面(表示領域)は、使用状態において、観察者O側から見て長辺方向が画面左右方向(X方向)となる矩形形状である。
スクリーン10は、その画面サイズが対角80~100インチ程度の大きな画面を有しており、画面の横縦比が16:9である。なお、これに限らず、例えば、40インチ程度やそれ以下の大きさとしてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、その大きさや形状は適宜選択できるものとする。
【0016】
一般的に、スクリーン10は、樹脂製の薄い層の積層体等であり、それ単独では平面性を維持するだけの十分な剛性を有していない場合が多い。そのため、スクリーン10は、背面側(-Z側)に光透過性を有する不図示の接合層を介して、不図示の支持板に一体に接合(あるいは部分固定)され、画面の平面性を維持する形態となっている。
この不図示の支持板は、光透過性を有し、剛性が高い平板状の部材であり、アクリル樹脂やPC樹脂等の樹脂製、ガラス製等の板状の部材を用いることができる。本実施形態では、映像表示装置1は、店舗等のショーウィンドウに適用されており、支持板は、窓ガラスである。
なお、上記の例に限らず、スクリーン10は、不図示の枠部材等によってその四辺等が支持され、その平面性を維持する形態としてもよい。
【0017】
図2は、本実施形態のスクリーン10の層構成を示す図である。
図2では、スクリーン10の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点A(
図1(a),(b)参照)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面の一部を拡大して示している。
図3は、本実施形態の第1光透過部12等を拡大して示す図である。
図3は、
図2に示すスクリーン10の断面において、理解を容易にするために、第1光透過部12、低屈折率層13、第2光透過部14、拡散部15を拡大して示している。
スクリーン10は、
図2に示すように、その映像源側(+Z側)から順に、第1基材層11、第1光透過部12、低屈折率層13、第2光透過部14、拡散部15、第2基材層16を備えている。
【0018】
本実施形態のスクリーン10は、映像源側(+Z側)の下方(-Y側)に位置する映像源LSから投射された映像光Lを、後述する拡散部15によって、他の方向から入射した光に比べてより多く選択的に拡散し、一部を映像源側へ向けて出射することにより、観察者Oが視認可能な映像を表示している。また、このスクリーン10は、映像光L以外の光の多くを拡散せずに透過しており、スクリーン10を通して向こう側の景色を確認できる透明性を実現している。
【0019】
第1基材層11は、光透過性を有するシート状の部材であり、裏面側(-Z側)の面に、第1光透過部12が一体に形成されている。第1基材層11は、第1光透過部12を形成する基材(ベース)となる層である。
第1基材層11は、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
【0020】
第1光透過部12は、第1基材層11の背面側(-Z側)の面に形成された光透過性を有する部分である。第1光透過部12は、その背面側の面に凸となる形状であり、スクリーン面に沿って配列されている。
本実施形態の第1光透過部12は、
図2に示す断面形状が、背面側(-Z側)に凸となる三角形形状であり、第1光透過部12の配列方向に交差する方向にその断面形状が延在するように帯状に形成されている。本実施形態では、第1光透過部12の延在方向は、画面左右方向(X方向)であり、第1光透過部12の配列方向は、画面上下方向(Y方向)である。
また、本実施形態の第1光透過部12は、その映像源側(+Z側)の端部において、隣り合う第1光透過部12との間に、スクリーン面(XY面)に沿って連続している連続部分を有している。なお、第1光透過部12は、この連続部分を有しない形態としてもよい。
【0021】
第1光透過部12は、
図2に示すスクリーン10の断面において、頂点t1を挟んで上側(+Y側)に位置する第1の面12aと第2の面12bとを有している。
図2に示すスクリーン10の断面において、第1の面12aは、スクリーン10の厚み方向(Z方向)に対して角度θ1[°]をなし、第2の面12bは、スクリーン10の厚み方向(Z方向)に対して角度θ2[°]をなす。
この角度θ2は、角度θ1よりも大きく、θ2>θ1という関係を満たしている。
【0022】
第1光透過部12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、第1光透過部12を構成する樹脂は、上述の紫外線硬化型樹脂に限定されるものでなく、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂や、熱可塑性樹脂でもよい。
また、第1光透過部12は、その屈折率が1.54以上であることが、後述する低屈折率層13との界面で映像光を効率よく全反射させる観点から好ましい。
本実施形態の第1光透過部12は、紫外線硬化型のウレタンアクリレート樹脂(屈折率n1=1.55)により形成されている。
【0023】
低屈折率層13は、スクリーン10の厚み方向(Z方向)において、第1光透過部12と第2光透過部14との間であって、拡散部15の配列方向(Y方向)において、隣り合う拡散部15の間に設けられている。この低屈折率層13は、第1光透過部12及び第2光透過部14よりも屈折率が低く、光透過性を有する層である。低屈折率層13は、第1光透過部12の第2の面12bに接する位置に設けられている。
【0024】
図2に示すように、低屈折率層13は、スクリーン10の厚み方向(Z方向)に対して角度をなすように傾斜して設けられている。本実施形態の低屈折率層13は、その上側(+Y側)の端部が背面側(-Z側)に位置し、下側(-Y側)の端部が映像源側(+Z側)に位置するように傾斜しており、スクリーン10の厚み方向に対して角度θ2[°]をなしている。また、本実施形態の低屈折率層13は、その上側(+Y側)の端部が上側に隣接する拡散部15の背面側(-Z側)の端部に接し、下側(-Y側)の端部が下側に隣接する拡散部15の映像源側(+Z側)の端部に接している。
【0025】
この角度θ2は、映像源側の下方から投射されてスクリーン10に入射し、第1光透過部12を透過した映像光Ltが、第1光透過部12と低屈折率層13との界面(第2の面12b)に臨界角以上の角度で入射して全反射するように設けられている。そのため、角度θ2は、第1光透過部12において映像光(例えば、
図3に示す映像光Lt)がスクリーン10の厚み方向に対してなす角度よりも大きい。
この角度θ2は、30°以上80°以下の範囲とすること、より好ましくは40°以上60°以下の範囲とすることが、映像光を効率よく拡散部15へ入射させる観点から好ましい。
角度θ2がこの範囲よりも大きいと、スクリーン10に入射した映像光が第1光透過部12と低屈折率層13との界面(第2の面12b)で全反射することなくスクリーン10を透過してしまい、表示される映像が暗くなったり、背面側の天井等に届いて投影像の映り込みが生じたりするので好ましくない。
【0026】
角度θ2がこの範囲よりも小さいと、スクリーン10を透過させたい外光等(例えば、後述の
図4に示す外光G1,G2等)が、第1光透過部12と低屈折率層13との界面、低屈折率層13と第2光透過部14との界面で全反射してしまい、スクリーンの透明性が低下する場合がある。
また、角度θ2がこの範囲よりも小さいと、拡散部15の配列ピッチP1が小さくなり、結果として、第2光透過部14の背面側の面(第3の面14c)と拡散部15の背面側の面(第4の面15d)とでなす面において拡散部15が占める面積の比率が大きくなって、スクリーン10の透明性が低下する場合がある。また、角度θ2がこの範囲よりも小さいと、拡散部15の配列ピッチP1が小さくなり、透過光による回折現象が生じやすくなる。
以上のことから、角度θ2は、上記範囲を満たすことが好ましい。
なお、本実施形態及び
図2では、理解を容易にするために、角度θ2は、上記範囲を満たし、かつ、低屈折率層13の配列方向(画面上下方向、Y方向)において一定である例を示している。
【0027】
低屈折率層13は、二酸化ケイ素(SiO2)を蒸着することにより形成される。二酸化ケイ素を用いた場合、低屈折率層13の屈折率は、例えば、1.44以上1.46以下となる。
なお、これに限らず、例えば、光透過性が高く、第1光透過部12及び第2光透過部14よりも屈折率が低いという条件を満たす樹脂や、フッ化マグネシウム等のフッ素化合物等により形成してもよい。また、低屈折率層13の形成方法は、用いる材料に応じて適宜選択してよく、例えば、蒸着法以外に、ディップコート法、スプレー法、CVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)等により形成してもよい。
【0028】
第2光透過部14は、
図2に示すように、低屈折率層13を介して第1光透過部12の第2の面12bに面する位置に設けられ、スクリーン面に沿って配列されている。
図3等に示すように、第2光透過部14と第1光透過部12との間に低屈折率層13が位置している形態となっている。
第2光透過部14は、
図4に示す断面形状が、映像源側(+Z側)に凸となる三角形形状である。本実施形態の第2光透過部14は、その断面形状が画面左右方向(X方向)に延在するように帯状に形成され、その延在方向に交差する画面上下方向(Y方向)に配列されている。
【0029】
第2光透過部14は、頂点t2を挟んで下側(-Y側)に位置する第1の面14aと、上側(+Y側)に位置する第2の面14bと、背面側(-Z側)に位置する第3の面14cとを有している。
第2の面14bは、低屈折率層13を介して第1光透過部12の第2の面12bに面しており、第3の面14cは、スクリーン面に平行である。
なお、第2光透過部14は、隣り合う第2光透過部14の凸形状の間であって背面側端部に、スクリーン面(XY面)に連続した連続部を有する形態としてもよい。
【0030】
第2光透過部14は、前述の第1光透過部12を形成する樹脂と同様の紫外線硬化型樹脂や、電離放射線硬化型樹脂、熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。また、第2光透過部14は、第1光透過部12と屈折率が同じ、もしくは、第1光透過部12との屈折率差が可能な限り小さいことが、スクリーン10を通して観察する映像(透過映像)のずれを抑制する観点から好ましい。したがって、第2光透過部14は、第1光透過部12と同様に、その屈折率が、1.54以上であることが好ましい。
本実施形態の第2光透過部14は、第1光透過部12と同様に、紫外線硬化型のウレタンアクリレート樹脂(屈折率n1=1.55)により形成されている。
【0031】
拡散部15は、入射した光の少なくとも一部を拡散する部分である。
拡散部15は、第1光透過部12と低屈折率層13と第2光透過部14とで形成される背面側に凸となる部位と、画面上下方向(Y方向)に、交互に配列されている。
拡散部15は、
図2に示す断面形状が画面左右方向(X方向)に連続しており、画面左右方向に帯状に延在している。
【0032】
拡散部15は、
図2に示す断面形状が楔形形状である。ここでいう楔形形状とは、一方の端部の幅が広く、他方に向けて次第に幅が狭くなる形状をいい、三角形形状や台形形状等を含む。拡散部15は、
図2に示す断面形状が、映像源側(+Z側)の幅(Y方向の寸法)が背面側(-Z側)の幅(Y方向の寸法)よりも小さい台形形状であるが、これに限らず、映像源側を頂点とする三角形形状としてもよい。
図2において、拡散部15の映像源側の面を第1の面15a、上側の面を第2の面15b、下側の面を第3の面15cとし、背面側の面を第4の面15dとする。
【0033】
本実施形態では、第1の面15a及び第4の面15dは、スクリーン面(XY面)に平行である。また、第2の面15b及び第3の面15cは、スクリーン10の厚み方向(Z方向)に対してそれぞれ角度θ3,θ1をなしている。本実施形態では、角度θ1は、角度θ3と等しく、θ1=θ3を満たしている。したがって、本実施形態の拡散部15は、
図2に示す断面形状が等脚台形形状である。
この角度θ1,θ3は、いずれも、0°以上5°以下であることが、拡散部15を容易かつ精度よく製造する観点から好ましい。角度θ3,θ1は、その値が小さい方が、すなわち、第2の面15b及び第3の面15cがスクリーン10の厚み方向(Z方向)に平行に近い方が、スクリーン10を透過する外光(後述する
図4に示すG1,G2)等の光量が増え、スクリーン10の透明性が向上するので好ましい。
【0034】
拡散部15の配列ピッチ(第1光透過部12及び第2光透過部14の配列ピッチ)は、P1である。また、
図2に示す断面において、画面上下方向(Y方向)における、拡散部15の第1の面15aの寸法がW1であり、第4の面15dの寸法がW2である。また、隣り合う拡散部15の間の寸法(光透過部の寸法)のうち、映像源側(+Z側)の端部の間の寸法をW3、背面側(-Z側)の端部の間の寸法をW4とする。また、拡散部15の高さ(スクリーン10の厚み方向の寸法)をh1とする。本実施形態では、h1>W2となっている。
【0035】
拡散部15の配列ピッチP1は、100~1000μmとすることが好ましく、200~500μmとすることがより好ましい。配列ピッチP1を上記範囲とすることにより、スクリーン10の透過光量を十分に確保しながら、スクリーン10を透過する映像光を低屈折率層13と第1光透過部12との界面で全反射させて拡散部15へ入射させ、効果的に拡散することができる。また、配列ピッチP1を上記範囲とすることにより、拡散部15が配列されたことによる回折現象を抑制し、かつ、拡散部15が観察者Oに視認されにくくすることができる。
【0036】
拡散部15は、バインダー材151と、これに含有される複数の光拡散材152とを有している。
本実施形態のスクリーン10は、拡散部15が光拡散材152を含有しているが、それ以外の部分(例えば、第1基材層11や第2基材層16、第1光透過部12や第2光透過部14等)は、このような光拡散材を含有していない。すなわち、光拡散材を含有しているのは、拡散部15のみである。
【0037】
バインダー材151は、光透過性を有する樹脂材料が好適であり、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート等の紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を用いることができる。
【0038】
光拡散材152は、光を拡散する作用を有するものであり、本実施形態では、例えば、白色顔料を用いている。白色顔料としては、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。白色顔料は、これらの金属酸化物の1つを用いてもよいし、複数の金属酸化物から形成されていてもよい。
【0039】
また、光拡散材152は、上記の例に限らず、以下のようなものを用いてもよい。
例えば、光拡散材152として、銀色顔料を用いてもよい。銀色材料としては、アルミニウム、クロム等の金属材料を用いることができる。
また、例えば、光拡散材152として、上述の白色顔料や銀色顔料を混ぜた硬化性樹脂により形成された粒子状の部材を用いてもよい。このとき、硬化性樹脂は、第1光透過部12や第2光透過部14を形成する材料と同様のものを用いてもよい。また、光拡散材152として、上述の白色顔料や銀色顔料を含有する(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子や、ウレタン架橋粒子等粒子を用いてもよい。
【0040】
光拡散材152として、白色顔料や銀色顔料を含有する硬化性樹脂により形成された粒子を用いる場合、その形状は、球形であることが好ましいが、楕円球形状や多面体形状等、他の形状であってもよい。
このような光拡散材152を用いる場合には、光拡散材152の平均粒径rは、1μm以上であって、拡散部15の映像源側端部となる第1の面15aの幅W1以下であることが、拡散部15に入射した光を好適に拡散し、かつ、拡散部15に十分に充填する観点から好ましい。
【0041】
また、このとき、光拡散材152の平均粒径rと拡散部15の第1の面15aの幅W1との比W1/rは、1以上5以下であることが、拡散部15に十分に光拡散材152を充填する観点から好ましい。
また、このとき、拡散部15の第1の面15aの幅W1は、このような粒子状の光拡散材152の平均粒径rよりも大きく、3μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0042】
第2基材層16は、第2光透過部14及び拡散部15の背面側に位置する層であり、光透過性を有し、拡散部15や第2光透過部14を保護する機能を有する。
第2基材層16は、前述の第1基材層11と同様のシート状の部材等を用いることができる。
【0043】
スクリーン10は、上述のような構成を備えているので、拡散部15で映像を拡散して一部を映像源側(+Z側)へ向けることにより、観察者Oに映像を表示することができる。また、スクリーン10は、低屈折率層13を有していない場合にスクリーン10を透過してしまう映像光も拡散部15へ入射させることができ、映像光の利用効率を高めることができ、明るく、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
また、スクリーン10は、上述のような構成を備えているので、低屈折率層13を有していない場合にスクリーン10を透過してしまう映像光を拡散部15に入射させて拡散して背面側へ出射するので、スクリーン10を透過した映像光による、天井やスクリーン10の背面側に位置する物体等への投影像の映り込みを低減することができる。
【0044】
図4は、本実施形態のスクリーン10に入射する光の進み方を説明する図である。
図4に示すスクリーン10の断面は、前述の
図2に示したスクリーン10の断面と同様である。
スクリーン10の映像源側(+Z側)の下方に位置する映像源LSから投射された映像光L1,L2は、スクリーン10に入射し、第1基材層11及び第1光透過部12を透過に入射する。
映像光L1は、第1光透過部12を透過して第1光透過部12の第2の面12bに入射する。第2の面12bは、第1光透過部12と低屈折率層13との界面であり、映像光L1は、第2の面12bへ臨界角以上の角度で入射して全反射する。そして、映像光L1は、拡散部15へ入射して拡散される。
また、映像光L2は、第1光透過部12を透過して、低屈折率層13との界面で全反射することなく、拡散部15の第3の面15cから直接、拡散部15へ入射して、拡散される。また、図示しないが、拡散部15の第1の面15aから直接、拡散部15へ入射して拡散される映像光もある。
【0045】
これらの映像光L1,L2は、拡散部15の光拡散材152によって無指向に拡散され、一部は背面側(-Z側)へ出射し、一部が映像源側(+Z側)へ出射する。
このように、拡散部15で拡散され、映像源側へ出射した映像光により、映像源側に位置する観察者Oが視認可能な映像がスクリーン10に表示される。
また、一部の映像光(不図示)が背面側へ出射するが、拡散されており、背面側の物体や人物O2、天井への投影像の映り込みが大幅に抑制される。
【0046】
次に、背面側(-Z側)又は映像源側(+Z側)からスクリーン10に入射する映像光以外の太陽光等の外界からの光(以下、外光という)について説明する。
スクリーン10へ映像源側(+Z側)から小さい入射角度で入射する外光G2は、その多くが第1光透過部12と低屈折率層13との界面(第2の面12b)に対して臨界角より小さい角度で入射し、低屈折率層13、第2光透過部14、第2基材層16を透過し、スクリーン10の背面側へ出射する。
【0047】
同様に、スクリーン10へ背面側(-Z側)から小さい入射角度で入射する外光G1は、第2基材層16及び第2光透過部14を透過し、第2光透過部14と低屈折率層13との界面(第2の面14b)に対して臨界角より小さい角度で入射する。そして、外光G2は、その多くが、低屈折率層13を透過し、第1光透過部12、第1基材層11を透過してスクリーン10の映像源側へ出射する。
上述のように、外光G1,G2は、その多くが拡散部15に入射しないので、拡散されることなくスクリーン10を透過する。
また、外光G1,G2のように小さい入射角度でスクリーンに入射する外光の一部(不図示)は、拡散部15に入射して拡散されてスクリーン10を透過したり、背面側や映像源側へ戻ったりするが、その光量は小さい。
【0048】
したがって、本実施形態のスクリーン10は、スクリーン10の映像源側の観察者O及び背面側の観察者O2がスクリーン10を通してその向こう側の景色(透過映像)を良好に視認できる透明性を有している。
また、本実施形態のスクリーン10は、スクリーン10を通して観察される向こう側の景色(透過映像)がぼやけたり、白くにじんだりして見えることを抑制でき、外光等による映像のコントラスト低下も抑制できる。
【0049】
次に、スクリーン10に対して映像源側の上方から入射する外光G3について説明する。
映像源側のスクリーン10の上方から入射する外光のうち、一部の外光G3は、
図4に示すように、第1光透過部12と低屈折率層13との界面に臨界角より小さい角度で入射して、低屈折率層13、第2光透過部14、第2基材層16を透過し、スクリーン10の背面側の下方へ出射する。
【0050】
また、映像源側のスクリーン10の上方から入射する外光のうち、一部の外光(不図示)は、低屈折率層13を透過した後、第2光透過部14の第1の面14a(拡散部15の第2の面15b)に入射し、拡散部15で拡散されるが、多くはスクリーン10の背面側へ出射し、映像源側へ向かう光量は少ない。
したがって、映像源側の上方から入射する外光による映像のコントラスト低下等は、抑制される。
【0051】
なお、背面側の上方から入射する外光に関しては、拡散部15に入射して拡散されると映像のコントラスト低下やスクリーン10の透明度の低下の要因となるので、そのような背面側上方からの外光が入射しないような場所にスクリーン10を配置したり、スクリーン10へ背面側上方から入射する外光を遮光する目的の遮光用のひさし等を設けたりすることが好ましい。
【0052】
上述のように、本実施形態によれば、隣り合う拡散部15の間には、第1光透過部12と第2光透過部14よりも屈折率が低い低屈折率層13が形成され、第1光透過部12と低屈折率層13との界面(第2の面12b)は、スクリーン10の厚み方向に対して角度θ2をなし、映像光が臨界角以上の角度で入射して全反射する全反射面となっている。これにより、仮に低屈折率層13を備えない場合にスクリーン10の背面側へ出射して天井等に投影像の映り込みが生じる原因となる映像光を、より効果的に拡散部15へ入射させて拡散することができ、背面側の天井や背面側に位置する物体や人物等に投影像が映ることを抑制する効果を大幅に高めることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、隣り合う拡散部15の間に低屈折率層13を設けることにより、低屈折率層13を有しない場合に比べて拡散部15の配列ピッチP1を広げることができる。これにより、配列ピッチP1が小さい場合に生じやすい回折現象を抑制し、スクリーン10を通して向こう側を見た場合の透過映像のぼけを抑制できる。また、これにより、スクリーン10の光学性能を維持しながら、その薄型化を図ることができ、透明性も向上できる。
また、本実施形態によれば、スクリーン10への入射角度の小さい外光(
図4に示す外光G1,G2)は、その多くが拡散されることなくスクリーン10を透過するので、スクリーン10の透明性を高く維持することができる。
【0054】
以上述べたように、本実施形態によれば、スクリーン10は、透明性を有し、かつ、明るくコントラストの高い良好な映像を表示できる。また、本実施形態によれば、背面側の天井や背面側に位置する物体や人物等に投影像が映り込むことを大幅に抑制でき、映像表示装置1が配置される空間等の意匠性や快適性を向上できる。
【0055】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)実施形態において、拡散部15は、第1光透過部12の配列方向(Y方向)及びスクリーン10の厚み方向(Z方向)に平行な断面における断面形状が等脚台形形状である例を示したが、これに限らず、配列方向において非対称な台形形状であってもよい。例えば、拡散部15の配列方向(Y方向)において、拡散部15の上側(+Y側)の面又は下側(-Y側)の面の一方が、スクリーン10の厚み方向(Z方向)に平行な台形形状としてもよい。
また、実施形態において、拡散部15は、台形形状以外の多角形形状としてもよく、矩形形状や五角形形状等の多角形形状としてもよい。
また、実施形態において、拡散部15の断面形状は、映像源側となる第1の面15aが配列方向(Y方向)に対して傾斜している形態としてもよい。
また、実施形態において、拡散部15は、一部が曲面により形成されていてもよく、一部が折れ面状となっていてもよい。
また、拡散部15の第2の面15b及び第3の面15cがスクリーン10の厚み方向(Z方向)となす角度θ3,θ1は、拡散部15の配列方向(Y方向)において、少なくとも一方が、連続的に又は段階的に変化してもよい。
【0056】
(2)実施形態において、拡散部15は、
図2に示す断面形状が、映像源側(+Z側)の幅(Y方向の寸法)が背面側(-Z側)の幅(Y方向の寸法)よりも小さい台形形状である例を示したが、これに限らず、例えば、
図2に示す断面形状が、映像源側(+Z側)の幅(Y方向の寸法)が背面側(-Z側)の幅(Y方向の寸法)よりも大きい台形形状としてもよく、背面側を頂点とする三角形形状としてもよい。このような形態としても、実施形態のスクリーン10と同様の効果を奏することができる。
【0057】
(3)実施形態において、拡散部15の配列ピッチP1が一定である例を示したが、これに限らず、例えば、その配列方向(Y方向)において、映像源LSから離れるにつれて、配列ピッチP1が連続的に又は段階的に大きくなる形態としてもよい。このような形態とすることにより、さらに映像光を効率よく拡散部15へ入射させることができる。
【0058】
(4)実施形態において、低屈折率層13は、空気層としてもよい。
【0059】
(5)実施形態において、低屈折率層13がスクリーン10の厚み方向(Z方向)となす角度θ2が、低屈折率層13の配列方向(画面上下方向、Y方向)において、映像源LSから離れるにつれて連続的に又は段階的に大きくなる形態としてもよい。
映像光のスクリーンへの入射角度は、画面上下方向において上側に向かうにつれて大きくなっている。したがって、このような形態とすることにより、スクリーン10へ入射した映像光をより効率よく拡散部15へ入射させることができる。
【0060】
(6)実施形態において、スクリーン10の映像源側(+Z側)の面に、傷つき防止を目的としたハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は、例えば、スクリーン10の映像源側の面(第1基材層11の映像源側の面)に、ハードコート機能を有する紫外線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を塗布して形成する等により、形成される。なお、ハードコート層の形成方法は、これに限定されるものではない。また、第1基材層11が、ハードコート機能を有していてもよい。
また、ハードコート層に限らず、スクリーン10の使用環境や使用目的等に応じて、例えば、反射防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能、帯電防止機能等、適宜必要な機能を有する層を1つ又は複数選択して設けてもよい。さらに、第1基材層11の映像源側(観察者側)にタッチパネル層等を設けてもよい。
なお、上述のような機能を有する層は、スクリーン10の映像源側の面(第1基材層11の映像源側の面)に限らず、背面側の面(第2基材層16の背面側の面)にも積層して設けてよい。
また、スクリーン10内に、所定の透過光量としたり映像のコントラストを向上させるための着色層を設けてもよい。このような着色層は、例えば、黒色等の暗色透明であって、入射する光の一部を透過し、一部を吸収する機能を有する。
【0061】
(7)実施形態において、スクリーン10は、第1基材層11及び第2基材層16の少なくとも一方を備えない形態としてもよい。
また、実施形態において、スクリーン10は、第1基材層11,第2基材層16の少なくとも1つを、アクリル等の樹脂製の板状の部材やガラス板等の光透過性を有する板状の部材としてもよい。このとき、粘着剤層等を介して他の層がガラス板等に接合される形態としてもよい。また、例えば、スクリーン10は、第1基材層11及び第2基材層16に変えて、透明な基板を用い、これらに接合される形態としてもよい。このような透明な基板としては、透明性の高い樹脂製の板状部材やガラス板等が挙げられる。
【0062】
(8)実施形態において、映像表示装置1は、店舗等のショーウィンドウに配置される例を示したが、これに限らず、例えば、室内用のパーテーションや、展示会等における映像表示等にも適用できる。また、映像表示装置1を車両や船舶等の乗り物に適用し、スクリーン10を窓ガラスや内部のパーテーション等に貼り合わせる等して用いてもよい。
【0063】
(9)実施形態において、拡散部15は、光拡散材152に加えて、さらに、黒色や灰色等の暗色の着色材を含有する形態としてもよい。このような形態とすることにより、透過する映像光の一部を吸収してスクリーン10の背面側に位置する人物や物体への投影像の映り込みを低減したり、背面側からの外光を吸収してスクリーン10に表示される映像のコントラストを向上させたりすることができる。
【0064】
(10)実施形態において、拡散部15は、光拡散材152を含有するバインダー材151により形成される例を示したが、これに限らず、光拡散材152のみを充填して形成した拡散部15としてもよい。
【0065】
(11)実施形態において、映像源LSは、鉛直方向(Y方向)において、スクリーン10より下方(-Y側)に配置される例を示したが、これに限らず、例えば、映像源LSが、鉛直方向においてスクリーン10より上方(+Y側)に位置する形態としてもよい。この場合、鉛直方向における映像源LSの位置とフレネルセンターとなる点Cとの位置を対応させ、スクリーン10は、その上下方向を反転させて使用する。
また、映像源LSが、水平方向(X方向)においてスクリーン10の右側又は左側に位置する形態としてもよい。この場合も、水平方向において映像源LSの位置とフレネルセンターとなる点Cとの位置を対応させ、スクリーン10は、その上下方向を90°左側又は右側に回転させて使用する。
【0066】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0067】
1 映像表示装置
10 スクリーン
11 第1基材層
12 第1光透過部
13 低屈折率層
14 第2光透過部
15 拡散部
151 バインダー材
152 光拡散材
LS 映像源