(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009799
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】mPGES-1阻害剤としての化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 235/80 20060101AFI20240116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
C07D 211/58 20060101ALI20240116BHJP
C07D 295/185 20060101ALI20240116BHJP
C07D 211/56 20060101ALI20240116BHJP
C07D 453/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C07C235/80
A61P43/00 111
C07D211/58 CSP
C07D295/185 ZNA
C07D211/56
C07D453/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147032
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2020526121の分割
【原出願日】2018-11-22
(31)【優先権主張番号】17203033.0
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514328436
【氏名又は名称】コンドリオン アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】KHONDRION IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】スメイティンク, ヨハネス アルベルトゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ベイラス, ジュリアン デーヴィッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された安全性、有効性及び/又は(経口)バイオアベイラビリティープロファイルを有するmPGES-1阻害化合物を提供する。
【解決手段】増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介された症状を予防又は抑制するための治療に使用される、2-ヒドロキシ-2-メチル-4-(3,5,6-トリメチル-1,4-ベンゾキノン-2-イル)-ブタン酸のアミド誘導体を提供する。炎症性疾患、侵害受容性疼痛、自己免疫性疾患、呼吸障害、発熱、がん、炎症関連食欲不振、アルツハイマー病及び心血管疾患など、酵素mPGES-1の活性及び/又は発現の阻害が有益である疾患及び状態を治療するための、これらの化合物の使用も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造(I):
【化1】
[式中、
Tは、コアクロマニル又はクロマニルキノンフレームワークを有する及び2位で置換されているカルボン酸部分を有する水溶性ビタミンE誘導体であり、Tは、アミド部分を形成するように、前記カルボン酸部分を介して窒素に接続し、
Lは、炭素、窒素及び酸素から選択される1~10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含む、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にあるリンカーであり、
N
*は、構造(IIa)又は(IIb)で表され、
【化2】
R
1及びR
2は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルからそれぞれ独立して選択され、又はR
1及びR
2は、一緒に結合し、それによって前記アミド窒素原子と前記遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR
1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、及び/若しくはR
2は、環状構造における前記リンカーLの主鎖原子と結合し、
R
3は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルから選択され、前記アルキル若しくはアルケニル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子、ヒドロキシル部分若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、又はR
3は、前記遠位窒素原子がイミン部分の一部であるとき、不在であり、又は任意選択で、R
3は、環状構造における前記リンカーLの主鎖原子と結合し、
R
4は、水素(H)又はC
1~C
6アルキルから選択され、前記アルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、
Xは、アニオン、好ましくは薬学的に許容されるアニオンである]により表される、
増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介された症状を予防又は抑制するための治療に使用される、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、構造(VI):
【化3】
[式中、N
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-であり、T、X、R
3及びR
4は請求項1に定義されたとおりである]により表される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
Tが、構造(IIIa)又は(IIIb):
【化4】
[式中、それぞれのR
7は、個々にC
1~C
6アルキル部分であり、好ましくは、それぞれのR
7はメチルである]により表される、請求項1又は請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物が、構造(VIIb):
【化5】
[式中、
それぞれのR
7は、メチルであり、
N
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-であり、
Xは、請求項1に定義されたとおりであり、好ましくはCl
-であり、
R
3は、請求項1に定義されたとおりであり、好ましくは水素であり、
R
4は、請求項1に定義されたとおりであり、好ましくは水素である]
により表される、請求項3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される前記症状が少なくとも、炎症、疼痛、腫脹、発熱、血管新生及び食欲不振のうちの1つ又は複数を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、
a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、乾癬、バムス、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎、膵炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;
b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛、産痛、持続痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;
c)関節炎、変形性関節症、若年性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症などの自己免疫性疾患;
d)喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス及び肺線維症などの呼吸障害又は肺疾患;
e)脳がん、前立腺がん、腎がん、肝がん、膵がん、胃がん、乳がん、肺がん、頭頸部がん、甲状腺がん、神経膠芽種、黒色腫、リンパ腫、白血病、皮膚T細胞リンパ腫及び皮膚B細胞リンパ腫などのがん;
f)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症;
g)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症などの神経変性傷害、並びに
h)アテローム性動脈硬化症、血栓症、卒中及び冠状動脈性心疾患などの心血管疾患
からなる群から選択される疾患又は状態の治療において、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状の予防又は抑制のために使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
投与される総1日用量が、約5~2000mg、好ましくは約20~800mgの範囲であり、より好ましくは、前記総1日用量が約30~400mgの間の範囲であり、最も好ましくは、前記総1日用量が約150~250mgの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物が経口投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記化合物が固体形態又は液体形態で投与され、好ましくは、前記化合物が投与前に水溶液と混合され、より好ましくは、前記水溶液が等張水溶液であり、さらにより好ましくは、前記等張水溶液が食塩水である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記化合物が少なくとも1日に2回投与され、好ましくは、前記化合物が1日2回投与され、より好ましくは、前記化合物が2つの同様の又は等しい用量で1日2回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
2回の投与の間隔が、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間である、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
治療される対象が霊長類であり、好ましくは、前記対象がヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する疾患又は状態を治療する方法であって、有効量の請求項1~4のいずれか一項に定義された化合物を、前記疾患又は状態を患っている対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項14】
増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する前記疾患又は状態が、好ましくは、a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、バムス、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛、産痛、持続痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;c)強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、並びにd)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及び獣医学及び化粧品の分野に関する。本発明は、特に、炎症性疾患、侵害受容性疼痛、自己免疫性疾患、呼吸障害、発熱、がん、炎症関連食欲不振、アルツハイマー病及び心血管疾患など、酵素mPGES-1の活性及び/又は発現の阻害が有益である状態を治療するための、2-ヒドロキシ-2-メチル-4-(3,5,6-トリメチル-1,4-ベンゾキノン-2-イル)-ブタン酸のアミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジン(PG)は、生理学的機能及び恒常性機能を維持するが、炎症性及び侵害受容性の応答など病理学的応答も誘導する、重要な脂質メディエーターである(Miller,2006)。プロスタグランジンは、ホスホリパーゼA2(PLA
2)の作用によって細胞膜から放出されるアラキドン酸(AA)から合成される。シクロオキシゲナーゼアイソフォーム1及び2(COX-1及びCOX-2)酵素は、二酸素添加(bis-oxygenation)及び過酸化反応により、AAをプロスタグランジンG
2(PGG
2)、続いてプロスタグランジンH
2(PGH
2)にそれぞれ代謝する。PGH
2は、細胞及び組織特異的シンターゼ及びイソメラーゼにより合成される、4つの主要な生体活性プロスタグランジンのPGD
2、PGI
2、PGE
2及びPGF
2α、並びにプロスタノイドのトロンボキサンA
2(TXA
2)に共通の前駆体である(
図1)。プロスタグランジンは、炎症性応答の生成に重要な役割を演じる(Ricciotti and FitzGerald,2011)。プロスタグランジンの生合成は、炎症組織において有意に増加しており、急性炎症の主徴の発生の一因となっている。プロスノイドのうち、PGE
2は炎症性疼痛の徴候の過程に最大の影響を有する(Nakanishi and Rosenberg,2013)。PGE2は、膜酵素(mPGES-1、mPGES-2)又は細胞質型(cPGES)のいずれかである3つの異なるPGE2シンターゼによって合成される(Hara et al.,2010)。3つのPGEシンターゼのうち、cPGES及びmPGES-2は様々な臓器及び組織に構造的に発現し、一方、mPGES-1は、COX-2と同様に、様々な炎症性刺激に応答して上方制御される(Ikeda-Matsuo et al.,2005;Riendeau et al.,2005;Smith et al.,2011)。炎症又は侵害受容トリガーに続いて、mPGES-1及びCOX-2が末梢(PNS)及び中枢神経系(CNS)において誘導され、mPGES-1及びCOX-2が、PGE
2の生成及び慢性疼痛の発生の一因となる(Zeilhofer,2007)。現行の非ステロイド性抗炎薬(NSAID)は、プロスタグランジンの合成における上流COX酵素を標的にする。COX-1/2非選択的阻害剤又はCOX-2選択的阻害剤(コキシブ(Coxib))は、炎症性疼痛適応症に最も一般的に処方される投薬である。両方のクラスのNSAIDは、重篤な心血管及び胃腸管系の有害事象に関連している(Norberg et al.,2013a)。COX-1酵素は、大部分の組織において構造的に発現し、胃保護作用を有し、したがってCOX-1阻害剤は、胃の損傷を誘導しうる。炎症組織に主に発現するにもかかわらず、COX-2選択的阻害剤は、心血管系有害作用及び高血圧に関連している。研究は、心血管系有害作用がCOX-2媒介プロスタサイクリン(PGI
2)合成の抑制に起因したことを示している(Catella-Lawson et al.;Mcadam et al.,1999;Hui et al.,2010)。事実、PGI
2は、血管の拡張、血小板凝集の阻害において重要な役割を果たし、心臓保護的である。mPGES-1は、炎症性刺激により強く上方制御され、炎症促進性、侵害受容促進性及び血管形成促進性のPGE
2の産生の一因となっている。下流酵素のmPGES-1を標的にすることは、現行のクラスのNSAID又はコキシブより安全な代替案として近年出現してきた(Samuelsson et al.,2007;Koeberle and Werz,2009,2015a;Chen et al.,2015)。事実、mPGES-1の上流酵素のCOX-1及びCOX-2とは反対に、mPGES-1の阻害は、他のプロスタグランジンの合成及び機能を低減することなく、炎症誘導性PGE
2を選択的に遮断する。したがって、mPGES-1を標的にすることは、NSAIDによるプロスタグランジン合成の非選択的阻害又はCOX-1自体の阻害に起因する有害作用を低減する(Norberg et al.,2013b;Koeberle and Werz,2015b)。mPGES-1は正常組織において弱く発現し、炎症組織において上方制御され、したがってオンターゲット(on-target)有害作用を起こす傾向が、より少ない。mPGES-1を欠いている改変マウスが実現可能であり、異常な表現型を何も示さない。改変マウスは、腫脹、食欲不振又は発熱など炎症に関連する症状を低減することを示し、疼痛に対して低減された感受性も示した(Kamei et al.,2004;Hara et al.,2010)。これらのデータは、炎症関連疾患の薬物標的としてのmPGES-1の妥当性を裏付けている。加えて、mPGES-1の発現は、これらに限定されないが、関節炎、痛風、腸疾及び歯周炎を患っている患者、並びにアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脳虚血症、癲癇、脳がん及び多発性硬化症など神経炎症を有する患者の炎症組織において過剰発現されることが報告されている(Fahmi,2004;Westman et al.,2004;Kojima et al.,2005;Chaudhry et al.,2008;Miyagishi et al.,2012;Akitake et al.,2013;Kats et al.,2013;Takeuchi et al.,2013;Ikeda-Matsuo,2017)。mPGES-1も多数のがんにおいて過剰発現しており、mPGES-1の阻害は、様々な前臨床モデルにおいて有効な治療であることが報告されている(Larsson et al.;Seo et al.;Yoshimatsu et al.;Hanaka et al.,2009;Beales and Ogunwobi,2010;Nakanishi et al.,2010;Larsson and Jakobsson,2015;Sasaki et al.,2015;Kim et al.,2016;Ramanan and Doble,2017)。全体として、mPGES-1及びmPGES-1誘導PGE2は、炎症性疾患、侵害受容性疼痛、自己免疫性疾患、呼吸障害、発熱、がん、炎症関連食欲不振、アルツハイマー病及び心血管疾患の大集団の疾患及び状態の病理機序に役割があるとされている。したがって、mPGES-1の阻害は、上述された疾患及び状態の全ての治療に有効な選択肢を表す。
【0003】
国際公開第2006/063466号、国際公開第2007/059610号、国際公開第2008/058514号、国際公開第2008/071173号、国際公開第2009/130242号、国際公開第2009/146696号、国際公開第2010/034796号、国際公開第2010/100249号、国際公開第2010/127152号、国際公開第2011/023812号、国際公開第2012/055995号、国際公開第2012/076672号、国際公開第2012/110860号、国際公開第2013/038308号、国際公開第2013/072825号、国際公開第2013/118071号、国際公開第2013/153535号及び国際公開第2015/158204号は、mPGES-1の阻害剤であると記述された多数の化合物を開示している。
【0004】
国際公開第2014/011047号及び国際公開第2017/060432号は、ミトコンドリア障害及び/又はミトコンドリア機能不全に関連する状態を治療又は予防するための2-ヒドロキシ-2-メチル-4-(3,5,6-トリメチル-1,4-ベンゾキノン-2-イル)-ブタン酸のアミド誘導体を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、改善された安全性、有効性及び/又は(経口)バイオアベイラビリティープロファイルを有する更なるmPGES-1阻害化合物の必要性が、当該技術において依然として存在する。本出願は、mPGES-1の阻害剤として作用し、したがって、例えば様々な疾患又は状態における炎症及び疼痛の予防又は抑制が含まれる、酵素mPGES-1活性及び/又は発現の阻害が有益である状態の治療に有用であるような、更なる化合物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、一般構造(I):
【化1】
[式中、
Tは、コアクロマニル又はクロマニルキノンフレームワークを有する及び2位で置換されているカルボン酸部分を有する水溶性ビタミンE誘導体であり、ここでTは、アミド部分を形成するように、カルボン酸部分を介して窒素に接続し、
Lは、炭素、窒素及び酸素から選択される1~10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含む、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にあるリンカーであり、
N
*は、構造(IIa)又は(IIb)で表され、
【化2】
R
1及びR
2は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルからそれぞれ独立して選択され、又はR
1及びR
2は、一緒に結合し、それによってアミド窒素原子と遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR
1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、及び/若しくはR
2は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、
R
3は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルから選択され、ここでアルキル若しくはアルケニル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子、ヒドロキシル部分若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、又はR
3は、遠位窒素原子がイミン部分の一部であるとき、不在であり、
R
4は、水素(H)又はC
1~C
6アルキルから選択され、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、
Xは、アニオン、好ましくは薬学的に許容されるアニオンである]により表される、
増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介された症状を予防又は抑制するための治療に使用される化合物に関する。
【0007】
この態様の特定の実施形態において、本発明は、本発明に従って使用される化合物を提供し、ここで化合物は、構造(VI):
【化3】
[式中、N
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-であり、ここでT、X、R
3及びR
4は上記に定義されたとおりである]により表される。
【0008】
この態様の好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従って使用される化合物を提供し、ここでTは、構造(IIIa)又は(IIIb):
【化4】
[式中、それぞれのR
7は、個々にC
1~C
6アルキル部分であり、好ましくは、それぞれのR
7はメチルである]により表される。
【0009】
この態様の好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従って使用される化合物を提供し、ここで化合物は、構造(VIIb):
【化5】
[式中、
それぞれのR
7は、メチルであり、
N
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-であり、
Xは、上記に定義されたとおりであり、好ましくはCl
-であり、
R
3は、上記に定義されたとおりであり、好ましくは水素であり、
R
4は、上記に定義されたとおりであり、好ましくは水素である]により表される。
【0010】
この態様の好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従って使用される化合物を提供し、ここで増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状には少なくとも、炎症、疼痛、腫脹、発熱、血管新生及び食欲不振のうちの1つ又は複数が含まれる。好ましくは、化合物は、
a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、乾癬、バムス(bums)、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎、膵炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;
b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛(delivery pain)、産痛(childbirth ache)、持続痛、末梢媒介性疼痛(peripheral mediated pain)、中枢媒介性疼痛(central mediated pain)、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;
c)関節炎、変形性関節症、若年性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症などの自己免疫性疾患;
d)喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス及び肺線維症などの呼吸障害又は肺疾患;
e)脳がん、前立腺がん、腎がん、肝がん、膵がん、胃がん、乳がん、肺がん、頭頸部がん、甲状腺がん及、神経膠芽種、黒色腫、リンパ腫、白血病、皮膚T細胞リンパ腫及び皮膚B細胞リンパ腫などのがん;
f)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症;
g)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症などの神経変性傷害、並びに
h)アテローム性動脈硬化症、血栓症、卒中及び冠状動脈性心疾患などの心血管疾患
からなる群から選択される疾患又は状態の治療において、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状の予防又は抑制のために使用される。
【0011】
この態様の好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従って使用される化合物を提供し、ここで投与される総1日用量は、約5~2000mg、好ましくは約20~800mgの範囲であり、より好ましくは、総1日用量は約30~400mgの間の範囲であり、最も好ましくは、総1日用量は約150~250mgの範囲である。好ましくは、化合物は経口投与される。好ましくは、化合物は固体形態又は液体形態で投与され、好ましくは、化合物は投与前に水溶液と混合され、より好ましくは、水溶液は等張水溶液であり、さらにより好ましくは、等張水溶液は食塩水である。好ましくは、化合物は少なくとも1日に2回投与され、化合物は、好ましくは1日2回投与され、より好ましくは、化合物は、2つの同様の又は等しい用量で1日2回投与される。好ましくは、2回の投与の間隔は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間である。好ましくは、治療される対象は霊長類であり、より好ましくは、対象はヒトである。
【0012】
第2の態様において、本発明は、増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する疾患又は状態を治療する方法を提供し、ここで方法は、有効量の上記に定義された化合物を、疾患又は状態を患っている対象に投与するステップを含む。
【0013】
この態様の好ましい実施形態において、本発明は、上記に記載された方法を提供し、ここで、増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する疾患又は状態は、好ましくは、a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、バムス、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛、産痛、持続痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;c)強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、並びにd)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】プロスタグランジンの合成経路及び標的化戦略である。
【
図2A】(
図2A~2C)ビヒクル又はビヒクルに正規化した1μg/mLのリポ多糖(LPS)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、プロスタグランジン(PG)PGE
2(
図2A)、PGD
2(
図2B)及び6-ケトPGF
1a(
図2C)のレベルである。
【
図2B】(
図2A~2C)ビヒクル又はビヒクルに正規化した1μg/mLのリポ多糖(LPS)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、プロスタグランジン(PG)PGE
2(
図2A)、PGD
2(
図2B)及び6-ケトPGF
1a(
図2C)のレベルである。
【
図2C】(
図2A~2C)ビヒクル又はビヒクルに正規化した1μg/mLのリポ多糖(LPS)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、プロスタグランジン(PG)PGE
2(
図2A)、PGD
2(
図2B)及び6-ケトPGF
1a(
図2C)のレベルである。
【
図2D】(
図2D~2F)ビヒクル、又は1μg/mLのLPS単独(100%に設定)若しくは化合物I-IVb-X(一般構造(I)の化合物、式中、Tは、S,R配置の一般構造(IVb)のものであり、化合物Xとしては、以下が適用され:L=L
19;R
1=H;R
2-R
2’=L
3;R
3=H、KHと示される)の増加濃度との組合せ(
図2D)、非選択的COX阻害剤インドメタシン(
図2E)又はCOX-2阻害剤セレコキシブ(
図2F)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、PGE
2、PGD
2及び6-ケトPGF
1aのレベルである。
【
図2E】(
図2D~2F)ビヒクル、又は1μg/mLのLPS単独(100%に設定)若しくは化合物I-IVb-X(一般構造(I)の化合物、式中、Tは、S,R配置の一般構造(IVb)のものであり、化合物Xとしては、以下が適用され:L=L
19;R
1=H;R
2-R
2’=L
3;R
3=H、KHと示される)の増加濃度との組合せ(
図2D)、非選択的COX阻害剤インドメタシン(
図2E)又はCOX-2阻害剤セレコキシブ(
図2F)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、PGE
2、PGD
2及び6-ケトPGF
1aのレベルである。
【
図2F】(
図2D~2F)ビヒクル、又は1μg/mLのLPS単独(100%に設定)若しくは化合物I-IVb-X(一般構造(I)の化合物、式中、Tは、S,R配置の一般構造(IVb)のものであり、化合物Xとしては、以下が適用され:L=L
19;R
1=H;R
2-R
2’=L
3;R
3=H、KHと示される)の増加濃度との組合せ(
図2D)、非選択的COX阻害剤インドメタシン(
図2E)又はCOX-2阻害剤セレコキシブ(
図2F)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞の上澄みにおける、PGE
2、PGD
2及び6-ケトPGF
1aのレベルである。
【
図3A】(
図3A~3B)ビヒクル、ビヒクルに正規化した1μg/mLのLPS又は1μg/mLのインターロイキン-1β(IL-1β)に24時間暴露されたヒト一次皮膚線維芽細胞の上澄みにおける、PGE
2(
図3A)及びPGD
2(
図3B)のレベルである。
【
図3B】(
図3A~3B)ビヒクル、ビヒクルに正規化した1μg/mLのLPS又は1μg/mLのインターロイキン-1β(IL-1β)に24時間暴露されたヒト一次皮膚線維芽細胞の上澄みにおける、PGE
2(
図3A)及びPGD
2(
図3B)のレベルである。
【
図3C】(
図3C~3D)1μg/mLのLPS(
図3C)又は1μg/mLのIL-1β(
図3D)単独(100%と設定)若しくは化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたヒト一次皮膚線維芽細胞腫の上澄みにおける、PGE
2及びPGD
2のレベルである。
【
図3D】((
図3C~3D)1μg/mLのLPS(
図3C)又は1μg/mLのIL-1β(
図3D)単独(100%と設定)若しくは化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたヒト一次皮膚線維芽細胞腫の上澄みにおける、PGE
2及びPGD
2のレベルである。
【
図4A】(
図4A)ビヒクル又は1μg/mLのLPS単独若しくは化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1、COX-2、cPGES、mPGES-2及びCOX-1酵素のウエスタンブロット分析である。
【
図4B】(
図4B~4F)アクチンを添加基準(loading reference)として用い、ビヒクル処理細胞に正規化した(
図4A)と同様のmPGES-1(
図4B)、COX-2(
図4C)、mPGES-2(
図4D)、cPGES(
図4E)及びCOX-1(
図4F)酵素のレベルの定量化である。
【
図4C】(
図4B~4F)アクチンを添加基準(loading reference)として用い、ビヒクル処理細胞に正規化した(
図4A)と同様のmPGES-1(
図4B)、COX-2(
図4C)、mPGES-2(
図4D)、cPGES(
図4E)及びCOX-1(
図4F)酵素のレベルの定量化である。
【
図4D】(
図4B~4F)アクチンを添加基準(loading reference)として用い、ビヒクル処理細胞に正規化した(
図4A)と同様のmPGES-1(
図4B)、COX-2(
図4C)、mPGES-2(
図4D)、cPGES(
図4E)及びCOX-1(
図4F)酵素のレベルの定量化である。
【
図4E】(
図4B~4F)アクチンを添加基準(loading reference)として用い、ビヒクル処理細胞に正規化した(
図4A)と同様のmPGES-1(
図4B)、COX-2(
図4C)、mPGES-2(
図4D)、cPGES(
図4E)及びCOX-1(
図4F)酵素のレベルの定量化である。
【
図4F】(
図4B~4F)アクチンを添加基準(loading reference)として用い、ビヒクル処理細胞に正規化した(
図4A)と同様のmPGES-1(
図4B)、COX-2(
図4C)、mPGES-2(
図4D)、cPGES(
図4E)及びCOX-1(
図4F)酵素のレベルの定量化である。
【
図5A】ビヒクル、1μg/mLのLPS単独又は化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW 264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1(
図5A)、COX-2(
図5B)、cPGES(
図5C)、mPGES-2(
図5D)及びCOX-1(
図5E)酵素のRNAレベルのqPCRによる定量化である。
【
図5B】ビヒクル、1μg/mLのLPS単独又は化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW 264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1(
図5A)、COX-2(
図5B)、cPGES(
図5C)、mPGES-2(
図5D)及びCOX-1(
図5E)酵素のRNAレベルのqPCRによる定量化である。
【
図5C】ビヒクル、1μg/mLのLPS単独又は化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW 264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1(
図5A)、COX-2(
図5B)、cPGES(
図5C)、mPGES-2(
図5D)及びCOX-1(
図5E)酵素のRNAレベルのqPCRによる定量化である。
【
図5D】ビヒクル、1μg/mLのLPS単独又は化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW 264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1(
図5A)、COX-2(
図5B)、cPGES(
図5C)、mPGES-2(
図5D)及びCOX-1(
図5E)酵素のRNAレベルのqPCRによる定量化である。
【
図5E】ビヒクル、1μg/mLのLPS単独又は化合物I-IVb-Xの増加濃度との組合せ(KHと示されている)に24時間暴露されたRAW 264.7ネズミマクロファージ細胞における、mPGES-1(
図5A)、COX-2(
図5B)、cPGES(
図5C)、mPGES-2(
図5D)及びCOX-1(
図5E)酵素のRNAレベルのqPCRによる定量化である。
【
図6A】mPGES-1活性は、mPGES-1発現を増加させるために1μg/mLのLPSで24時間処理したRAW264.7細胞のミクロソーム画分によって、PGH
2からPGE
2への変換としてアッセイした。ミクロソーム画分を、試験される化合物の増加濃度、又は陽性対照として3μMの既知のmPGES-1阻害剤のMK866若しくはPF9184に暴露した。PGE
2レベルをビヒクル処理ミクロソーム試料に正規化(100%)した。(
図6A)化合物I-IVb-X;(
図6B)化合物I-IVb-AE;(
図6C)化合物I-IVb-A-HCl;(
図6D)化合物I-IVb-I。
【
図6B】mPGES-1活性は、mPGES-1発現を増加させるために1μg/mLのLPSで24時間処理したRAW264.7細胞のミクロソーム画分によって、PGH
2からPGE
2への変換としてアッセイした。ミクロソーム画分を、試験される化合物の増加濃度、又は陽性対照として3μMの既知のmPGES-1阻害剤のMK866若しくはPF9184に暴露した。PGE
2レベルをビヒクル処理ミクロソーム試料に正規化(100%)した。(
図6A)化合物I-IVb-X;(
図6B)化合物I-IVb-AE;(
図6C)化合物I-IVb-A-HCl;(
図6D)化合物I-IVb-I。
【
図6C】mPGES-1活性は、mPGES-1発現を増加させるために1μg/mLのLPSで24時間処理したRAW264.7細胞のミクロソーム画分によって、PGH
2からPGE
2への変換としてアッセイした。ミクロソーム画分を、試験される化合物の増加濃度、又は陽性対照として3μMの既知のmPGES-1阻害剤のMK866若しくはPF9184に暴露した。PGE
2レベルをビヒクル処理ミクロソーム試料に正規化(100%)した。(
図6A)化合物I-IVb-X;(
図6B)化合物I-IVb-AE;(
図6C)化合物I-IVb-A-HCl;(
図6D)化合物I-IVb-I。
【
図6D】mPGES-1活性は、mPGES-1発現を増加させるために1μg/mLのLPSで24時間処理したRAW264.7細胞のミクロソーム画分によって、PGH
2からPGE
2への変換としてアッセイした。ミクロソーム画分を、試験される化合物の増加濃度、又は陽性対照として3μMの既知のmPGES-1阻害剤のMK866若しくはPF9184に暴露した。PGE
2レベルをビヒクル処理ミクロソーム試料に正規化(100%)した。(
図6A)化合物I-IVb-X;(
図6B)化合物I-IVb-AE;(
図6C)化合物I-IVb-A-HCl;(
図6D)化合物I-IVb-I。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、2-ヒドロキシ-2-メチル-4-(3,5,6-トリメチル-1,4-ベンゾキノン-2-イル)-ブタン酸のアミド誘導体などの本発明の化合物が、mPGES-1の発現及び酵素活性を遮断することによって、他のプロスタグランジンのレベルに影響を与えることなくmPGES-1誘導PGE2のレベルを有効及び選択的に低減できるという発見に関係する。したがって、本化合物は、増強されたmPGES-1発現若しくは活性により媒介される及び/又は(結果として)増加したレベルのPGE2により媒介される症状を予防又は抑制する治療に有用である。
【0016】
第1の態様において、したがって本発明は、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状を治療、予防又は抑制する方法であって、有効量の1つ又は複数の本明細書下記に定義される本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。有効量は、好ましくは、本明細書下記に定義される量である。
【0017】
或いは、本発明は、好ましくは有効用量の本明細書下記に定義される本発明の化合物を投与することによって、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状を治療、予防又は抑制することに使用される、本明細書下記に定義される本発明の化合物に関係する。
【0018】
本明細書に記載される医学的使用は、記述された状態(複数可)の治療(例えば、有効量の化合物の投与による)のための医薬として使用するための本明細書に定義されている化合物として処方されるが、i)有効量の化合物を対象に投与するステップを含む、本明細書に定義されている化合物を使用して、記述された状態(複数可)を治療する方法、ii)記述された状態(複数可)を治療する医薬の製造に使用するための、本明細書に定義されている化合物(ここで、好ましくは、化合物は有効量で投与される)、及びiii)好ましくは有効量を投与することによる、記述された状態(複数可)を治療するための本明細書に定義されている化合物の使用としても等しく処方されうる。そのような医学的使用は、本発明において全て想定されている。
【0019】
本発明の化合物を一般構造(I)によって特定することができる。
【化6】
ここで、
Tは、コアクロマニル又はクロマニルキノンフレームワークを有する及び2位で置換されているカルボン酸部分を有する水溶性ビタミンE誘導体であり、ここでTは、アミド部分を形成するように、カルボン酸部分を介して窒素に接続し、
Lは、炭素、窒素及び酸素から選択される1~10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含む、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にあるリンカーであり、
N
*は、構造(IIa)又は(IIb)で表され、
【化7】
R
1及びR
2は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルからそれぞれ独立して選択され、又はR
1及びR
2は、一緒に結合し、それによってアミド窒素原子と遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR
1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、及び/若しくはR
2は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、
R
3は、水素(H)、C
1~C
6アルキル若しくはC
1~C
6アルケニルから選択され、ここでアルキル若しくはアルケニル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子、ヒドロキシル部分若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、又はR
3は、遠位窒素原子がイミン部分の一部であるとき、不在であり、又は任意選択で、R
3は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、
R
4は、水素(H)又はC
1~C
6アルキルから選択され、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、
Xは、アニオン、好ましくは薬学的に許容されるアニオンである。
【0020】
構造(I)による化合物は、少なくとも2個の窒素原子を含み、Tが接続している窒素原子は、「アミド窒素原子」とも呼ばれ、N
*部分の窒素原子は、「遠位窒素原子」とも呼ばれる。N
*は、遠位窒素原子と隣接主鎖原子との間の共有結合が単結合である場合、アミノ部分であってもよく、又は遠位窒素原子と隣接主鎖原子との間の共有結合が二重結合である場合、イミン部分の一部であってもよい。遠位窒素原子は、中性又はカチオン性でありうる。N
*が中性である場合、本発明による化合物は、一般構造(Ia)によっても参照されうる。N
*がカチオン性である場合、本発明による化合物は、一般構造(Ib)によっても参照されうる。
【化8】
【0021】
Tは、水溶性ビタミンE誘導体であり、ここでクロマニル又はクロマニルキノンフレームワークは、2位でカルボン酸によって置換されている。ビタミンEの2-カルボキシバリアントは、トロロクス(Trolox)(商標)(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)としても知られている。水溶性ビタミンE誘導体は当該技術において知られており、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラアルキル-2-カルボキシ-クロマニル(一般構造(IIIa)、「閉鎖型」とも呼ばれる)及びその酸化形態2-(3-ヒドロキシ-3-アルキル-4-オキソブチル)-3,5,6-トリアルキルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオン(一般構造(IIIb)、「開放型」とも呼ばれる)が含まれる。本発明者たちは、一般構造(IIIb)による開放型が一般構造(IIIa)による閉鎖型の代謝産物として見出されることを、後者が投与されたときに見出した。化合物I-IVa-X(一般構造(I)の化合物、式中、Tは、S,R配置の一般構造(IVa)のものであり、化合物Xとしては、以下が適用される:L=L19;R1=H;R2-R2’=L3;R3=H)によるP4細胞株の24時間の処理の後に、約48%(±10%)の閉鎖化合物が開放型に変換された。約15%(±3%)が、培地のみにおいて同じ時間にわたってインキュベートした場合に変換された。そのような変換は、Beyrath et al.,DOI:10.1038/s41598-018-24900-3及びKoene et al.,DOI:10.1186/s13023-017-0715-0においても開示されている。好ましいクロマニルフレームワークは、6-ヒドロキシクロマンフレームワークである。好ましいクロマニルキノンフレームワークは、2-(3-ヒドロキシアルキル)-シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオンであり、ここで好ましくは、3-ヒドロキシアルキルは、3-ヒドロキシブチル、より好ましくは、一般構造(IIIb)に含まれる4-オキソ-3-ヒドロキシブチルである。
【0022】
閉鎖型の2位は、カルボン酸を有するオキサン環における位置(又は本発明の分子の場合ではアミド)及びR
7部分であり、IUPAC命名法など当該技術に既知の命名規則による2位である。開放型では、同じ炭素原子が2位に意図されており、それによって、ヒドロキシ部分を有する炭素原子及び下記の一般構造(IIIb)に示されるR7部分が参照される。この位置は、キノンに置換されているアルキル部分の3位として見ることもできる。したがって、Tは水溶性ビタミンE誘導体であり、ここで、クロマニルフレームワークは、2位でカルボン酸により置換されている、又はクロマニルキノンフレームワークは、3ヒドロキシアルキル部分の3位でカルボン酸により置換されており、次に、シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオンの2’位に置換されている。
【化9】
ここで、R
7のそれぞれの出現は、ハロゲン、アルキル、アミノ、ニトロ又は-NHCO-アルキルから個別に選択される。R
7の好ましい選択肢は、ハロゲン及びアルキル、最も好ましくはアルキルである。R
7の文脈において、ハロゲンは、好ましくはフッ素又は塩素、最も好ましくは塩素である。アルキルの文脈において、好ましくはC
1~C
6アルキル部分、好ましくはC
1~C
6アルキル部分、最も好ましくはメチルである。R
7の文脈において、アミノは、好ましくは-NH
2である。R
7の文脈において、-NHCO-アルキルは、好ましくは-NHCOMeである。好ましくは、それぞれのR
7は、同じ置換基である。最も好ましくは、R
7はメチルである。好ましい実施形態において、Tは構造(IVa)又は(IVb)により表される。換言すると、構造(IVa)は、構造(IIIa)の好ましい実施形態であり、構造(IVb)は、構造(IIIb)の好ましい実施形態である。
【化10】
【0023】
好ましい実施形態において、Tは、構造IIIa又はIIIb、好ましくは構造IVa又はIVbにより表される。より好ましい実施形態において、Tは、構造(IIIa)、好ましくは構造(IVa)により表される。更により好ましい実施形態において、Tは、構造(IIIb)、好ましくは構造(IVb)により表される。
【0024】
一般構造(I)により特定されている化合物は、少なくとも1個のキラル炭素原子(立体中心)、すなわち、T(例えば、構造(IIIa)のオキサン環又は構造(IIIa)のブタン酸部分)の2位に原子を含む。2位の炭素原子のS配置を有する化合物及びR配置を有する化合物の両方が本発明に包含され、並びに異なる立体異性体の混合物も包含される。そのような混合物は、一方の配置を鏡像体過剰率で有していてもよく、ラセミ体であってもよい。1つ又は複数の追加の立体中心が本発明の化合物、例えばリンカーLに存在するときは、いつでも、それぞれS配置、R配置又は両方の配置の混合物として個別に存在しうる。そのような混合物は、一方の配置を鏡像体過剰率で有していてもよく、ラセミ体であってもよい。追加の立体中心が存在する場合、一般構造(I)の化合物の全てのジアステレオマーは、それぞれ可能な比によって本発明に包含される。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明の化合物の水における溶解度は、log(Pow)により表され、2.0~5.0、好ましくは2.5~4.5、より好ましくは3.0~4.0である。log(Pow)は、1-オクタノールと水との分配係数の対数であり、水溶性の周知の尺度である。3~4のlog(Pow)値を有する化合物は、水溶液又は水性懸濁液の調製物における十分な水溶性及び細胞膜を横切る化合物の効率的な輸送を確実にする十分な親油性が理想的に平衡している。当業者は、本明細書に定義されているL、R1、R2、R3、R4及びXのどのような組み合わせが3~4のlog(Pow)値を有する化合物をもたらすかを決定する方法を理解している。化合物のlog(Pow)値を確定する適切な検査は、当業者に良く知られており、フラスコ振とう法、ITIES、小滴法又はHPLCの使用が含まれるが、これらに限定されない。化合物のlog(Pow)は、QSPRアルゴリズムを使用して予測することもできる。
【0026】
R1及びR2は、水素(H)、C1~C6アルキル若しくはC1~C6アルケニルからそれぞれ独立して選択され、又はR1及びR2の一方若しくは両方は、本明細書下記に記載されている環状構造に包埋されている。好ましくは、R1は、H若しくはC1~C2アルキルであり、又はR1及びR2は、一緒に結合し、それによってアミド窒素原子と遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、より好ましくは、R1はH又はC1~C2アルキルであり、さらにより好ましくは、R1はH又はメチル(Me)であり、最も好ましくは、R1はHである。好ましくは、R2は、H若しくはC1~C2アルキルであり、又はR1及びR2は、一緒に結合し、それによってアミド窒素原子と遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR2は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、より好ましくは、R2はH、C1~C2アルキルであり、又は環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、さらにより好ましくは、R2はH、メチル(Me)であり、又は環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合している。1つの実施形態において、R2はH、メチル(Me)であり、好ましくは、R2はHである。とりわけ好ましい実施形態において、R2は、下記に更に定義されている環状構造、好ましくは飽和環状構造、最も好ましくはピペリジン環におけるリンカーLの主鎖原子と結合している。
【0027】
1つの実施形態において、アミド窒素原子は、第2のリンカーを介して遠位窒素原子と接続している。この第2のリンカーは、アミド窒素のR1と遠位窒素原子のR2とを一緒に結合することによって画定される。このように、アミド窒素原子、遠位窒素原子、第1のリンカー及び第2のリンカーが一緒になって、環状構造、好ましくは4員~10員環状構造、より好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成する。好ましい実施形態において、第2のリンカーは、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、最も好ましくは-CH2-CH2-架橋であり、2又は3個、好ましくは2個の炭素原子が、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間に存在する。
【0028】
別の実施形態において、アミド窒素原子は、第2のリンカーを介してリンカーの主鎖原子と接続し、それによって環状構造、好ましくは4員~10員環状構造、より好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成する。窒素原子が接続するリンカーの主鎖原子は、この点において、置換基R1’を有し、これはアミド窒素原子においてR1と一緒に結合している。このように、アミド窒素原子、アミド窒素原子とR1’を有する原子との間に配置された第1のリンカーの一部、R1’を有する主鎖原子、及び第2のリンカーは、一緒になって環状構造を形成する。この実施形態において、遠位窒素原子は、この環状構造に含まれていないが、代わりにリンカーの主鎖の一部のみが含まれている。好ましい実施形態において、アミド窒素原子とリンカーの主鎖原子の間にあるこの接続は、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、最も好ましくは-CH2-CH2-架橋であり、2又は3個、好ましくは2個の炭素原子が、アミド窒素原子とリンカーの主鎖原子との間に存在する。最も好ましくは、アミド窒素原子を含有する環状構造は、好ましくは、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環及びアゼパン環、より好ましくは、ピぺラジン環、ピペリジン環又はピロリジン環、最も好ましくはピペリジン環から選択される完全飽和環である。
【0029】
別の実施形態において、遠位窒素原子は、第2のリンカーを介してリンカーの主鎖原子と接続し、それによって環状構造、好ましくは4員~10員環状構造、より好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成する。窒素原子が接続するリンカーの主鎖原子は、この点において、置換基R2’を有し、これは遠位窒素原子においてR2と一緒に結合している。このように、遠位窒素原子、遠位窒素原子とR2’を有する原子との間に配置された第1のリンカーの一部、R2’を有する主鎖原子、及び第2のリンカーは、一緒になって環状構造を形成する。この実施形態において、アミド窒素原子は、この環状構造に含まれていないが、代わりにリンカーの主鎖の一部のみが含まれている。好ましい実施形態において、この遠位窒素原子とリンカーの主鎖原子との接続は、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、最も好ましくは-CH2-CH2-架橋であり、2又は3個、好ましくは2個の炭素原子が、遠位窒素原子とリンカーの主鎖原子との間に存在する。最も好ましくは、遠位窒素原子を含有する環状構造は、好ましくは、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環及びアゼパン環、より好ましくは、ピペリジン環又はピロリジン環、最も好ましくはピペリジン環から選択される完全飽和環である。アミド窒素原子のR1とリンカーのR1’置換基との間、及び遠位窒素原子のR2とリンカーのR2’置換基との間に、接続が存在することも可能である。
【0030】
別の実施形態において、遠位窒素原子は、第2及び第3のリンカーを介してリンカーの主鎖原子と接続し、それによって二環式構造、好ましくは6員~12員環状構造、より好ましくはビシクロオクタン様構造などの6員~9員環状構造、最も好ましくは[2.2.2]ビシクロオクタン様構造を形成する。窒素原子が接続するリンカーの主鎖原子は、この点において、置換基R2’及びR3’を有し、これらは遠位窒素原子においてR2及びR3とそれぞれ一緒に結合している。このように、遠位窒素原子、遠位窒素原子とR2’を有する原子との間に配置された第1のリンカーの一部、R2’を有する主鎖原子及び第2のリンカーが、二環式構造の1つの環を一緒に形成し、遠位窒素原子とR3’を有する原子との間に配置された第1のリンカーの一部及び第3のリンカーが、二環式構造の第2の環を形成する。この実施形態において、アミド窒素原子は、この二環式構造に含まれていないが、代わりにリンカーの主鎖の一部のみが含まれている。好ましい実施形態において、この遠位窒素原子とリンカーの主鎖原子との接続は、-CH2-、-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、最も好ましくは-CH2-CH2-架橋であり、2又は3個、好ましくは2個の炭素原子が、遠位窒素原子とリンカーの主鎖原子との間に存在する。最も好ましくは、遠位窒素原子を含有する環状構造は、完全飽和構造である。
【0031】
R2について上述された可能性のうち、遠位窒素原子が第2のリンカーを介してリンカーの主鎖原子に接続することが最も好ましく、ここでR2は、本明細書上記に更に定義されたR2’と結合している。
【0032】
遠位窒素原子がイミン部分の一部である場合、リンカーLは、遠位窒素原子とリンカーの隣接主鎖原子との間に配置されている少なくとも1つの二重結合を含む、又はR
2は、遠位窒素原子とR
2の隣接原子との間に配置されている少なくとも1つの二重結合を含む(すなわち、R
2=C
1~C
6アルケニルである)。そのような場合において、R
3は不在である。遠位窒素原子がイミン部分の一部であり、二重結合が遠位窒素原子とリンカーの隣接主鎖原子との間に配置されている場合、本発明の化合物は構造(Ic)によって表すことができる。
【化11】
【0033】
遠位窒素原子がイミン部分の一部であり、構造(Ic)にある場合、遠位窒素原子はカチオン性又は中性のいずれかでありうる。R
3が不在である構造(IIa)及び(IIb)により定義されるN
*にも同じ選択肢が当てはまる。遠位窒素原子が、中性及びイミン部分の一部であり、二重結合が遠位窒素原子とリンカーの隣接主鎖原子との間に配置されている場合、本発明による化合物は一般構造(Id)によっても参照されうる。遠位窒素原子が、カチオン性及びイミン部分の一部であり、二重結合が遠位窒素原子とリンカーの隣接主鎖原子との間に配置されている場合、本発明による化合物は一般構造(Ie)によっても参照されうる。
【化12】
【0034】
本発明の文脈において、遠位窒素がイミン部分の一部であることは、遠位窒素原子が複素環式芳香族環、特に、ピロール環、ピリジン環又はイミダゾール環の一部である場合を含み、この場合、二重結合は、リンカー又はR2のいずれかにおいて、遠位窒素原子と隣接炭素原子の間に公式に存在する。イミン部分を含む好ましい部分には、グアニジン、アミジン及びピリジンが含まれる。グアニジン及びアミジンでは、窒素原子のうちの1個が置換され、リンカーLを介してアミド窒素原子と接続を形成する。ピリジンでは、炭素原子のうちの1個が置換されている。遠位窒素原子がアミン部分の一部である場合、遠位窒素原子は2つの単結合を介してリンカーとR2に接続しており、R3が存在する。遠位窒素原子はアミン部分の一部であること、すなわち、R1、R2、R3及び任意選択でR4のそれぞれに3又は4つの単結合を有することが好ましい。
【0035】
R3が存在する場合、R3は、水素(H)、C1~C6アルキル又はC1~C6アルケニルから選択され、ここでアルキル又はアルケニル部分は、1個又は複数のハロゲン原子、ヒドロキシル基又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、好ましくは、R3はH、C1~C6アルキルであり、より好ましくは、R3はH又はC1~C4アルキルであり、更により好ましくは、R3はH又はC1~C2アルキルであり、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子、ヒドロキシル基又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよい。ハロゲン原子には、フッ素(F)、塩素(CL)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びアスタチン(At)が含まれ、好ましくは、ハロゲン原子はフッ素(F)である。好ましいアルコキシ部分には、メトキシ及びエトキシが含まれる。ハロアルコキシ部分において、アルコキシ部分の少なくとも1個の水素原子は、ハロゲン原子、好ましくはFに置き換えられている。アルキル部分の好ましい置換基は、ハロゲン原子及びアルコキシ部分である。R3の適切な部分には、H、メチル(Me)、トリフルオロメチル(-CF3)、エチル(Et)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル(-cPr)、メチレンシクロプロピル(-CH2cPr)、n-プロピル(n-Pr)、2,2,2-トリフルオロエチル(-CH2CF3)、2-ヒドロキシ-エチル(-CH2CH2OH)及びメトキシメチル(-CH2OCH3)が含まれ、好ましくは、これらに限定され、より好ましくは、R3はH又はメチル(Me)であり、最も好ましくは、R3はHである。或いは、R3は、好ましくはC1~C4アルキルであり、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、より好ましくは、R3はC1~C2アルキルであり、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよい。
【0036】
遠位窒素原子がカチオン性形態である場合、遠位窒素原子は、三価窒素原子のプロトン化又はアルキル化、好ましくはプロトン化又はメチル化によって公式に生じる。三価窒素原子は、好ましくは、一級、二級若しくは三級のどちらかのアミン部分又は一級若しくは二級のどちらかのイミン部分である。カチオン性遠位窒素原子の対イオン(X)は、負荷電イオン、好ましくは一価負荷電イオン、より好ましくは、本明細書下記に示されているアニオンである。本発明の化合物の合成は、アミン又はイミン窒素原子のプロトン化又はアルキル化を必ずしも包含する必要はない。カチオン性遠位窒素原子は、異なる経路を介して形成することもできる。このように、カチオン性遠位窒素原子は、アミン又はイミン窒素原子のプロトン化又はアルキル化によって単に「公式に」生じるだけである。
【0037】
R4は、アミン又はイミン部分の公式のプロトン化又はアルキル化によって生じるカチオン性遠位窒素原子における置換基である。したがって、この実施形態の化合物は、カチオン性窒素原子及びXの存在を考慮すると、塩であり、好ましくは薬学的に許容される塩である。薬学的に許容される塩は、薬物又は医薬品としてヒト及び/又は動物に投与することに適している塩である。本発明の化合物のアミン又はイミン部分の薬学的に許容される塩は、当業者知られており、酸(プロトン化剤)又はアルキル化剤による化合物の公式の処理によって生じる。適切な酸には、有機酸又は無機酸が含まれる。無機酸の例には、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、トリフルオロ酢酸(TFAH又はCF3CO2H)及びリン酸(H3PO4)が含まれるが、これらに限定されない。有機酸の例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、スルホン酸及びサリチル酸が含まれるが、これらに限定されない。ここで例示されている酸が塩を公式に調製するために使用されるとき、R4は水素であり、酸の種類が対イオンXを決定する。或いは、塩を、アルキル化剤による公式な処理によって形成することができる。適切なアルキル化剤には、C1~C6ハロゲン化アルキル(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、塩化ブチル、フッ化ブチル、臭化ブチルなど)、硫化ジメチル、炭酸ジメチル、メチルトリフレート、フルオロスルホン酸メチル、クロロ硫酸メチル、メタンスルホン酸メチル及びベンゼンスルホン酸メチルが含まれるが、これらに限定されない。塩は、上記に示された酸若しくはアルキル化剤を用いた、又は当該技術において既知である及び/若しくは下記に更に例示されている他の方法を介した、非塩化合物の実際の処理によって調製されうる。
【0038】
R4は、水素(H)又はC1~C6アルキルから選択され、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、好ましくは、R4はH又はC1~C4アルキルであり、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、より好ましくは、R4はH又はC1~C2アルキルであり、ここでアルキル部分は、1個又は複数のハロゲン原子又は(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよい。ハロゲン原子には、フッ素(F)、塩素(CL)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びアスタチン(At)が含まれ、好ましくは、ハロゲン原子はフッ素(F)である。好ましいアルコキシ部分には、メトキシ及びエトキシが含まれる。ハロアルコキシ部分において、アルコキシ部分の少なくとも1個の水素原子は、ハロゲン原子、好ましくはFに置き換えられている。R4の適切な部分には、H、メチル(Me)、トリフルオロメチル(-CF3)、エチル(Et)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル(-cPr)、メチレンシクロプロピル(-CH2cPr)、n-プロピル(n-Pr)、2,2,2-トリフルオロエチル(-CH2CF3)、メトキシメチル(-CH2OCH3)が含まれ、好ましくは、これらに限定される。更により好ましくは、R4はH又はメチル(Me)であり、最も好ましくは、R4はHである。
【0039】
Xは、任意のアニオン、好ましくは生理学的又は薬学的に許容されるアニオン、より好ましくは一価アニオンでありうる。Xは、好ましくは、F、Cl、Br、I、HSO4、NO3、TFA(CF3CO2)、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、スルホン酸塩及びサリチル酸塩から選択される。Xは、Cl、I、TFA又はギ酸塩であるのが好ましく、より好ましくは、Cl、I、TFA又はギ酸塩であり、更により好ましくは、XはCl又はギ酸塩であり、最も好ましくは、XはClである。カチオン性窒素原子が公式のプロトン化から生じる場合、このプロトン化は、塩化水素(HCl)、トリフルオロ酢酸(TFAH若しくはCF3CO2H)又はギ酸(HCOOH)を用いて、より好ましくはHCl又はギ酸を用いて好ましく達成される。公式のメチル化は、ヨウ化メチル(MeI)を用いて好ましく達成される。したがって、好ましい実施形態において、X=I-の場合は、R4=Meであり、X=Cl-、TFA-又はギ酸塩の場合は、R4=Hである。
【0040】
アミド窒素原子を遠位窒素原子と接続させる適切なリンカーLは、好ましくは1~10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含む、より好ましくは1~8個の任意選択で置換されている主鎖原子を含むリンカーである。このように、Lは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含むことができる。リンカーLは、炭素、窒素及び酸素から選択される1~10個の任意選択で置換されている主鎖原子を含むことが好ましい。ここで、主鎖原子は、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にある最短鎖を構成する原子である。主鎖は、線状構造でありうるが、主鎖(の一部)は、環状構造の一部であってもよい。主鎖が環状構造の一部である場合、主鎖は、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にある最短鎖と定義される。1つの実施形態において、主鎖原子のうちの1個は置換基R5を含み、主鎖原子のうちの1個は置換基R5’を含み、好ましくは、2個の異なる主鎖原子は、置換基R5及びR5’を含み、ここでR5及びR5’は、結合して環状構造、好ましくは4員~10員環状構造、より好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成する。この実施形態において、アミド窒素原子及び遠位窒素原子は、この環状構造に含まれていないが、代わりにリンカーの主鎖の一部のみが含まれている。好ましい実施形態において、R5及びR5’置換基を有するリンカーの主鎖原子(複数可)の間にあるこの接続は、-(CH2)n-架橋であり、ここでn=1~6であり、好ましくは-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋であり、ここで1~6個、好ましくは2又は3個の炭素原子が、リンカーの置換主鎖原子(複数可)の間に存在する。
【0041】
好ましい実施形態において、主鎖原子は、炭素、窒素及び酸素から、好ましくは炭素及び窒素から選択される。この好ましい実施形態による、そのような主鎖は、Cn~mNmと特定されることがあり、ここで、nは主鎖における原子の総数を示し、mは主鎖における窒素原子の数を示す。n及びmは、それぞれ非負整数である。適切なリンカーは、n=1~10及びm=0~4、好ましくはn=2~7及びm=0~3、より好ましくはn=4~7及びm=0~2を有する。とりわけ好ましいリンカーは、Cn~mNmと特定される主鎖を有し、ここで、n=2及びm=0(C2)、n=5及びm=1(C4N)、n=3及びm=0(C3)、n=4及びm=1(C3N)、n=7及びm=2(C5N2)、n=4及びm=0(C4)、n=6及びm=1(C5N)、又はn=5及びm=0(C5)である。最も好ましくは、全ての主鎖原子は炭素原子(m=0)である。
【0042】
これらの原子価要件を満たすため、リンカーの炭素及び窒素主鎖原子は、水素原子を有していてもよく、置換されていてもよく、又は二重若しくは三重結合が隣接主鎖原子の間に存在していてもよく、これらのことは当業者に理解されよう。本発明の文脈において、水素は、置換基とは考慮されていない。酸素原子がリンカーに主鎖原子として存在する場合は、いつでも、当業者は、酸素主鎖原子が水素原子、置換基又は二重若しくは三重結合を有さないことを理解している。三重結合が、主鎖の2個の炭素原子の間に存在することもある。主鎖原子は、水素原子及び/又は置換基と一緒になって、リンカーを構成する。本発明の文脈において、「任意選択で置換されている」は、(主鎖)原子が1つ若しくは複数の置換基を有していてもよいこと又は置換基を有さなくてもよく、この(主鎖)原子の原子価要件を満たすために、十分な水素原子が代わりに存在していてもよいことを示すために、使用される。
【0043】
適切な置換基には、ハロゲン、NH2、NHR6、N(R6)2、NHNH2、N3、NHC(=O)R6、NHC(=O)NHR6、NHC(=O)NH2、NHC(=O)OR6、OH、OR6、OC(=O)R6、R6(例えば、アルキル、シクロアルキル)、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、OC(=O)OR6、OC(=O)NHR6、O(SO2)R6、O(SO2)OH、O(PO2)OH、SH、SR6、C(=O)R6、アルキル-NH2、アルキル-OH、アルキル-SH、C(=O)CF3、C(=O)OR6、C(=O)OH、C(=O)H、C(=O)OR6、C(=O)NH2、C(=O)NMe2、C(=O)N(R6)2、C(=S)NH2 C(=S)SH、CN、NC、CNO、ONC、OCN、SCN、SNC、CNS、S(=O)R6、S(=O)2R6、S(=O)2(OH)、P(=O)(OH)2又はP(=O)(OH)(OR6)が含まれるが、これらに限定されない。炭素主鎖原子などの2又はそれ以上の残りの原子価を有する原子は、オキソ(=O)、イミノ(=NH又は=NR6)、チオキソ(=S)、アルキリデン(=CH2又は=CHR6又は=C(R6)2)などの二重結合置換基を有していてもよい。ここで、それぞれのR6は、独立してアルキル部分、好ましくはC1~C6アルキル部分、より好ましくはC1~C2アルキル部分である。R6の範囲内では、1つ若しくは複数のCH2部分は、O、S若しくはNHのうちの1個により、それぞれ独立して置き換られていてもよく、及び/又は1つ若しくは複数のCH部分は、Nに置き換えられていてもよい。加えて、同じ原子又は異なる原子における2つの置換基が結合して、環状構造を形成してもよい。単一の主鎖原子における2つの置換基が結合して環状構造になる場合、この環状構造は、スピロ接合部を介して主鎖に接続されていると考慮されうる。異なる主鎖原子における2つの置換基が結合して環状構造になる場合、この環状構造の一部は、主鎖(の一部)であり、主鎖は、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にある最短の原子鎖と考慮される。このように形成された環状構造は、全て炭素でありうる、又は0~3個のヘテロ原子(例えば、N、O、S及び/若しくはP)を含んでいてもよく、0~3つの二重結合を含んでいてもよい。これらの環状構造における全ての原子は、任意選択で置換されうる。適切な環状構造の例は、任意選択で置換されているシクロアルキル、任意選択で置換されているシクロヘテロアルキル、任意選択で置換されているアリール又は任意選択で置換されているヘテロアリールである。下記に更に示されているように、環状構造は、主鎖原子の1つの置換基をアミド窒素原子のR1と又は遠位窒素原子のR2と結合させることによっても形成されうる。
【0044】
本発明の文脈において、用語「アルキル」は、飽和脂肪族基を指し、直鎖、分枝鎖、環状基及びこれらの組み合わせを含み、炭素原子の特定数を有し、数が特定されない場合は、好ましくは12個までの炭素原子を有する。「直鎖アルキル」又は「線状アルキル」基は、環状でもなく、分枝されてもいないアルキル基を指し、一般的に「n-アルキル」基と示される。アルキル基の1つのサブセットはC1~C6アルキルであり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び1~6個の炭素原子を含有する他の任意のアルキルなどの基が含まれ、ここでC1~C6アルキル基は、C1~C6アルキル基の任意の原子価によって結合されうる。
【0045】
1つの実施形態において、主鎖原子は、R6、カルボキシ、オキソ及び第一級アミノからなる群から選択される1個若しくは複数の置換基により任意選択で置換され、又は主鎖原子は、R1と結合して4員~10員環状構造を形成してもよく、及び/又は主鎖原子は、R2と結合して4員~10員環状構造を形成してもよく、又は2個の主鎖原子は、結合して環状構造を形成してもよく、ここでR6は、上記に定義されたとおりであり、好ましくは、R6は、C1~C6アルキル、より好ましくはC1~C2アルキルである。主鎖原子の好ましい置換基は、メチル(Me又は-CH3)、カルボキシル(-C(=O)OH)、オキソ(=O)及び一級アミノ(-NH2)などのアルキルである。
【0046】
好ましいリンカーLは、本明細書下記にL
1~L
28として特定されている。L
1~L
26がより好ましい。
【表1】
ここで、L
1~L
28におけるそれぞれの構造の左側にある破線結合は、リンカーとアミド窒素原子との間の結合を示すこと及びL
1~L
28におけるそれぞれの構造の右側にある破線結合は、リンカーと遠位窒素原子との結合を示すことが好ましい。
【0047】
R1’のそれぞれの出現は、リンカーとアミド窒素原子との間にある第2のリンカーによる接続を表し、ここでR1’は、第2のリンカーを介してR1と結合し、これによって4員~10員環状構造、好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成し、これは、アミド窒素原子、リンカーの1~4個の主鎖原子及びR1とR1’が結合した架橋を構成する1~4個の原子から構築されている。同様に、R2’のそれぞれの出現は、リンカーとカチオン性窒素原子との間にある第2のリンカーによる接続を表し、ここでR2’は、第2のリンカーを介してR2と結合し、これによって4員~10員環状構造、好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成し、これは、カチオン性窒素原子、リンカーの1~4個の主鎖原子及びR2とR2’が結合した架橋を構成する1~4個の原子から構築されている。同様に、R5及びR5’のそれぞれの出現は、R5を有するリンカーの1個の主鎖原子とR5’を有するリンカーの別の主鎖原子との間にある第2のリンカーによる接続を表し、ここでR5’は、第2のリンカーを介してR5と結合し、これによって4員~10員環状構造、好ましくは5員~8員環状構造、最も好ましくは6員環状構造を形成し、これは、リンカーの2~5個の主鎖原子及びR5とR5’が結合した架橋を構成する1~5個の原子から構築されている。このように、リンカーL10、L22、L23、L24及びL25において、R1’は、第2のリンカー、好ましくは-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、より好ましくは-CH2-CH2-架橋を介して、R1に結合している。このように、R1’とR1が-CH2-CH2-架橋を介して結合している、リンカーL10を含む化合物において、アミド窒素原子は、6員環状構造に包埋されており、6員環状構造はアミド窒素原子、リンカーの主鎖の2個の炭素原子及び1個の窒素原子、並びに、R1とR1’の架橋を構成する更に2個の炭素原子から構築されている。アミド窒素原子とリンカーL10の主鎖の中央窒素原子との間にある、この-CH2-CH2-架橋を、L1と表すことができる。同様に、リンカーL18、L19及びL21において、R2’は、第2のリンカー、好ましくは-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、より好ましくは-CH2-CH2-CH2-架橋を介して、R2に結合している。同様に、リンカーL20及びL26において、R5’は、第2のリンカー、好ましくは-CH2-CH2-又は-CH2-CH2-CH2-架橋、より好ましくは-CH2-CH2-架橋を介して、R5に結合している。
【0048】
リンカーL26は、二置換シクロアルキル部分、好ましくは二置換シクロヘキシル部分を含み、したがって、シス形態又はトランス形態のどちらか、好ましくはトランス形態で生じうる。
【0049】
リンカーL27は、二環式シクロアルキル部分、好ましくは二環式シクロオクチル部分を含む。L=L27である場合、L、R2及びR3が一緒になって、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を含むことが極めて好ましい。最も好ましくは、L27は、アザビシクロオクタン、例えばアザビシクロ[2.2.2]オクタンに含まれる。
【0050】
リンカーL11、L12、L13、L14、L15、L18(R2-R2’が-CH(O)-ではない限り)、L19(R2-R2’が-CH2-ではない限り)、L20(R5-R5’が-CH2-ではない限り)、L21(R2-R2’が-CH2-CH2-ではない限り)、L22(R1-R1’が-CH2-CH2-ではない限り)、L23(R1-R1’が-CH2-CH2-ではない限り)、L24(R1-R1’が-CH2-ではない限り)及びL25(R1-R1’が-CH2-ではない限り)は、追加の立体中心を含む。上記の立体中心は、これらのリンカーの構造に示されるとき、例示的であることを意味し、制限的であることを意味しない。上記に更に示されたように、本発明の化合物に存在するそれぞれの立体中心は、それぞれS若しくはRの立体異性体形態又は両方の異性体の任意の比の混合物として、独立して存在しうる。Tの2位に既に存在する立体中心の観点から、これらのリンカーを有する化合物は、(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)でありうる。本記載の全体を通して、配置の第1の指示符号(R又はS)は、Tの2位についてのものであり、配置の第2の指示符号は、本発明による化合物に存在しうる追加の立体中心の配置を定義する。L23では、上記表において「Me」と示されるメチル基は、好ましくは(S)である。
【0051】
好ましい実施形態において、リンカーは、とりわけ好ましいリンカーは、L5、L8、L11、L12、L16、L17、L19、L21、L26、L27及びL28である。とりわけ好ましいリンカーは、L5、L8、L11、L12、L16、L17、L19、L21及びL26である。更により好ましいリンカーは、L11、L16、L19及びL26であり、最も好ましいリンカーは、L19である。L19は、R2-R2’=L1又はL3と組み合わされるのが好ましく、最も好ましくは、R2-R2’=L3と組み合わされる。L21は、R2-R2’=L1又はL3と組み合わされるのが好ましく、最も好ましくは、R2-R2’=L1と組み合わされる。L26は、R5-R5’=L1又はL3と組み合わされるのが好ましく、より好ましくは、R5-R5’=L1と組み合わされ、最も好ましくは、シクロヘキシルはトランス-1,4-二置換されている。リンカーL19と、R2-R2’=L3及びR3=H、Me、Et、iPr、CH2OCH3又はCH2CF3との組み合わせ、より好ましくは、R3=Me、Et、iPr又はCH2CF3との組み合わせ、最も好ましくは、R3=Hとの組み合わせが、とりわけ好ましい。
【0052】
N*が構造(IIa)によるものである場合、リンカーLは1~5個の任意選択で置換されている主鎖原子を含有すること、及び/又はリンカーLは炭素以外に少なくとも1個の主鎖原子を含有することが、好ましい。N*が構造(IIa)によるものである場合、遠位窒素原子は第2のリンカーを介してリンカーの主鎖原子に接続していることがとりわけ好ましく、ここでR2はR2’と結合しており、より好ましくは、このようにして形成された環状構造は、ピペリジン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環若しくはアゼパン環、最も好ましくはピペリジン環であり、及び/又は主鎖原子のうちの少なくとも1個は、カルボン酸部分で置換されている。N*が構造(IIa)によるものである場合、Lは、L2、L4~L21、L23、L25、L26、L27及びL28のうちのいずれか1つであることが好ましく、Lは、L2、L4~L21、L23、L25及びL26のうちの1つであることが、とりわけ好ましく、より好ましくは、L5、L8、L11、L12、L16、L17、L19、L21及びL26のうちの1つである。N*が構造(IIb)によるものである場合、R4は、H又はMeであり、より好ましくは、R4はHであり、Xは、Cl、I、TFA又はギ酸であり、更により好ましくは、XはCl又はギ酸であり、最も好ましくは、XはClであることが好ましい。N*が構造(IIb)によるものである場合、リンカーLは、3~10個の主鎖原子又は2個の主鎖原子を含有すること、そのうちの1個は、第2のリンカーを介して遠位窒素原子と接続していることが好ましい。N*が構造(IIb)によるものである場合、Lは、L2~L28のうちのいずれか1つであり、L2~L26のうちのいずれか1つ、より好ましくは、L5、L8、L11、L12、L16、L17、L19、L21及びL26のうちの1つであることが、とりわけ好ましい。
【0053】
1つの実施形態では、リンカーLはL1であり、R1及びR2は、環状構造において第2のリンカーL1を介して一緒に結合し、それによって、2つのリンカー、アミド窒素原子及び遠位窒素原子からの合計4個の炭素原子を含む6員ピペラジン環を形成する。1つの実施形態では、リンカーLはL19であり、R2及びR2’は、環状構造において第2のリンカーL3を介して一緒に結合し、それによって、リンカー及び遠位窒素原子からの合計5個の炭素原子を含む6員ピペリジン環を形成する。
【0054】
好ましい実施形態において、化合物は、一般構造(I)により表され、ここで、
Lは、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にあるリンカーであり、
N*は、構造(IIa)によるものであり、
Tは、構造(IIa)又は(IIb)によるものであり、ここでR7はC1~C6アルキル部分であり、
R1は、水素(H)、C1~C6アルキル若しくはC1~C6アルケニルから選択され、又はR1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、
R2はリンカーLの主鎖原子と結合して、ピペリジン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環又はアゼパン環から選択される環状構造を形成し、
R3は、水素(H)、C1~C6アルキル若しくはC1~C6アルケニルから選択され、ここでアルキル若しくはアルケニル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子、ヒドロキシル部分若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、又はR3は、遠位窒素原子がイミン部分の一部であるとき、不在である。
【0055】
代替的に好ましい実施形態において、本発明の化合物は、一般構造(I)により表され、ここで、
Lは、アミド窒素原子と遠位窒素原子の間にあるリンカーであり、3~10個の主鎖原子又は2個の主鎖原子を含み、そのうちの1個は、第2にリンカーを介して遠位窒素原子と接続しており、
N*は、構造(IIb)によるものであり、
Tは、構造(IIIa)又は(IIIb)によるものでありあり、ここでR7は、C1~C6アルキル部分であり、
R1及びR2は、水素(H)、C1~C6アルキル若しくはC1~C6アルケニルからそれぞれ独立して選択され、又はR1及びR2は、一緒に結合し、それによってアミド窒素原子と遠位窒素原子の間に第2のリンカーを形成し、又はR1は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、及び/若しくはR2は、環状構造におけるリンカーLの主鎖原子と結合し、
R3は、水素(H)、C1~C6アルキル若しくはC1~C6アルケニルから選択され、ここでアルキル若しくはアルケニル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子、ヒドロキシル部分若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、又はR3は、遠位窒素原子がイミン部分の一部であるとき、不在であり、
R4は、水素(H)又はC1~C6アルキルから選択され、ここでアルキル部分は、1個若しくは複数のハロゲン原子若しくは(ハロ)アルコキシ部分で置換されていてもよく、
Xは、アニオン、好ましくは薬学的に許容されるアニオンである。
【0056】
本発明の文脈において特に好ましい化合物は、構造(VI)~(IX)によって本明細書下記に特定されている。したがって、好ましい実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VI)によって表される。
【化13】
ここで、R
2は、第2のリンカーを介して主鎖原子と結合して、環状構造を形成し、したがってN
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-である。ここで、R
3、R
4及びXは上記に定義されたとおりである。好ましくは、Tは、構造(IIIa)又は(IIIb)によるもの、より好ましくは構造(IVa)又は(IVb)によるもの、最も好ましくは構造(IIIb)又は(IVb)によるものである。構造(VI)による化合物において、Tの2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはS配置のものである。同様に、ピペリジン環の2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはR配置のものである。したがって、構造(VI)による化合物の配置は、(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)であってもよく、好ましくは(S,R)である。
【0057】
好ましい実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIa)又は(VIIb)によって表される。
【化14】
ここで、R
2は、第2のリンカーを介して主鎖原子と結合して、環状構造を形成し、したがってN
*は、-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-である。ここで、R
3、R
4、X及びR
7は上記に定義されたとおりである。構造(VIIa)又は(VIIb)による化合物において、R
7は、好ましくはメチルである。構造(VIIa)又は(VIIb)による化合物において、Tの2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはS配置のものである。同様に、ピペリジン環の2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはR配置のものである。したがって、構造(VIIa)又は(VIIb)による化合物の配置は、(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)であってもよく、好ましくは(S,R)である。1つの実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIa)によって表される。代替的な実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIb)によって表される。極めて好ましい実施形態において、本発明は上記に記載された使用のための化合物を提供し、化合物は構造(VIIb)により表され、ここで、それぞれのR
7はメチルであり、N
*は-NR
3又は-N
+R
3R
4X
-であり、Xは上記に定義されたとおりであり、好ましくはCl
-であり、R
3は上記に定義されたとおりであり、好ましくは水素であり、R
4は上記に定義されたとおりであり、好ましくは水素である。この化合物はS,R配置のものであることが、さらにより好ましい。
【0058】
好ましい実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIIa)又は(VIIIb)によって表される。
【化15】
ここで、R
2は、第2のリンカーを介して主鎖原子と結合して、環状構造を形成し、N
*は-N
+R
3R
4X
-である。ここで、R
3、R
4及びXは上記に定義されたとおりである。構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物において、R
3は、好ましくはH又はC
1~C
2アルキルであり、最も好ましくは、R
3はHである。構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物において、R
4は、好ましくはH又はC
1~C
2アルキルであり、最も好ましくは、R
4はHである。構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物において、Xは、好ましくはCl、I、TFA又はギ酸塩であり、最も好ましくは、XはClである。構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物において、Tの2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはS配置のものである。同様に、ピペリジン環の2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはR配置のものである。したがって、構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物の配置は、(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)であってもよく、好ましくは(S,R)である。1つの実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIIa)によって表される。代替的な実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(VIIIb)によって表される。
【0059】
好ましい実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(IXa)又は(IXb)によって表される。
【化16】
ここで、R
2は、第2のリンカーを介して主鎖原子と結合して、環状構造を形成し、N
*は-NR
3である。ここで、R
3は上記に定義されたとおりである。構造(VIIIa)又は(VIIIb)による化合物において、R
3は、好ましくはH又はC
1~C
2アルキルであり、最も好ましくは、R
3はHである。構造(IXa)又は(IXb)による化合物において、Tの2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはS配置のものである。同様に、ピペリジン環の2位にある炭素原子は、R配置のものであっても、S配置のものであってもよく、好ましくはR配置のものである。したがって、構造(IXa)又は(IXb)による化合物の配置は、(R,R)、(S,R)、(R,S)又は(S,S)であってもよく、好ましくは(S,R)である。1つの実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(IXa)によって表される。代替的な実施形態において、一般構造(I)の化合物は構造(IXb)によって表される。
【0060】
好ましい実施形態において、化合物は一般構造(I)によるものであり、ここで、Tは構造(IVa)又は(IVb)により表され、N*は構造(IIa)又は構造(IIb)により表され、R4=Hであり、X=Clであり、
(A)L=L1であり、R1-R2=L1であり、R3=Hである。
(B)L=L1であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(C)L=L2であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(D)L=L3であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(E)L=L4であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(F)L=L5であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(G)L=L6であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(H)L=L3であり、R1=Hであり、R2=Meであり、R3=Meである。
(I)L=L1であり、R1=Hであり、R2=Meであり、R3=Meである。
(J)L=L7であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(K)L=L8であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(L)L=L9であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(M)L=L10であり、R1-R1’=L1であり、R2=Hであり、R3=不在である。
(N)L=L11であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(O)L=L12であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=不在である。
(P)L=L13であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(Q)L=L14であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(R)L=L15であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(S)L=L11であり、R1=Hであり、R2=Meであり、R3=Meである。
(T)L=L16であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(U)L=L17であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hである。
(V)L=L16であり、R1=Hであり、R2=Meであり、R3=Meである。
(W)L=L18であり、R1=Hであり、R2-R2’=L3であり、R3=Hである。
(X)L=L19であり、R1=Hであり、R2-R2’=L3であり、R3=Hである。
(Y)L=L20であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R5-R5’=L3であり、R3=不在である。
(Z)L=L21であり、R1=Hであり、R2-R2’=L1であり、R3=Hである。
(AA)L=L22であり、R1-R1’=L1であり、R2=Hであり、R3=Hである。
(AB)L=L23であり、R1-R1’=L1であり、R2=Hであり、R3=Hである。
(AC)L=L24であり、R1-R1’=L3であり、R2=Hであり、R3=Hである。
(AD)L=L25であり、R1-R1’=L3であり、R2=Hであり、R3=不在である。
(AE)L=L26であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R5-R5’=L1であり、R3=Hである。
(AF)L=L19であり、R1=Hであり、R2-R2’=L3であり、R3=Meである。
(AG)L=L19であり、R1=Hであり、R2-R2’=L1であり、R3=Hである。
(AH)L=L21であり、R1=Hであり、R2-R2’=L1であり、R3=Meである。
(AI)L=L27であり、R1=Hであり、R2-R2’=-CH2-であり、R3-R3’=L1であり、R4=Hであり、X=Clである。
(AJ)L=L28であり、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=Hであり、R4=Hであり、X=Clである。
【0061】
したがって、構造(I)による化合物は、上記に定義された化合物A~AJから、より好ましくは上記に定義された化合物A~AHから、さらにより好ましくは一般構造(IVb)に基づいた化合物A~AJから、最も好ましくは一般構造(IVb)に基づいた化合物A~AHから選択されることが好ましい。とりわけ好ましい化合物は、F、K、N、O、U、V、T、X、Z、AE、AF、AG、AH、AI及びAJから選択され、より好ましい化合物は、F、K、N、O、U、V、T、X、Z、AE、AF、AG及びAHから、さらにより好ましくはN、T、X及びAE、最も好ましくはXから選択される。ここでN*は、好ましくは、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表され、化合物は、好ましくは一般構造(IVb)のものである。
【0062】
化合物Fは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物FはR及びS鏡像異性体の混合物であり、より好ましくはラセミ混合物である。化合物Kは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物KはR及びS鏡像異性体の混合物であり、より好ましくはラセミ混合物である。化合物Nは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物NはR,R配置又はS,R配置を有し、最も好ましくはR,R配置を有する。化合物Oは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物OはR,S及びS,Sジアステレオマーの混合物であり、より好ましくは、約1/1(モル/モル)混合物である。化合物Uは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物UはR配置又はS配置を有する。化合物Vは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物VはR配置を有する。化合物Tは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物TはR配置又はS配置を有し、最も好ましくはR配置を有する。化合物Xは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物XはR,S配置又はS,R配置を有し、最も好ましくはS,R配置を有する。化合物Zは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物ZはR及びS鏡像異性体の混合物であり、より好ましくはラセミ混合物である。化合物AEは、Rトランス配置、Rシス配置、Sトランス配置、Sシス配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物AEはRトランス配置又はSトランス配置を有し、最も好ましくはRトランス配置を有する。化合物AFは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物AFはS,R配置を有する。化合物AGは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの任意の混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物AGはS,S配置又はS,R配置を有する。化合物AHは、R配置、S配置又はこれらの混合物を有してしていてもよく、好ましくは、化合物AHはS配置を有する。ここで、配置の第1の指示符号(R又はS)は、Tの2位についてのものであり、追加の立体中心が本発明の化合物に存在する場合、その第2の指示符号が配置を定義する。化合物AJは、R,R配置、R,S配置、S,R配置、S,S配置又はこれらの混合物を有していてもよく、好ましくは、化合物AJはS,R配置若しくはR,R配置又はこれらの混合物を有し、最も好ましくは、化合物AJはR,R配置を有する。
【0063】
極めて好ましい化合物には、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)、R配置の化合物AJ(R-AJ)及び任意の配置の化合物Xが含まれる。最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物Xを含み、最も好ましくは、本発明の化合物はS,R配置の化合物X(S,R-X)である。1つの実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここでN*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表され、より好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここでN*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表される。1つの実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここでN*は構造(IIa)により表され、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここでN*は構造(IIa)により表される。
【0064】
1つの実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は構造(IIIa)のものであり、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIIa)のものである。
【0065】
1つの実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は構造(IIIa)のものであり、N*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表され、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIIa)のものであり、N*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表される。
【0066】
1つの実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は構造(IIIa)のものであり、N*は構造(IIa)により表され、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIIa)のものであり、N*は構造(IIa)により表される。
【0067】
1つの好ましい実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は構造(IIIb)のものであり、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIIb)のものである。
【0068】
1つ極めて好ましい実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は、構造(IIIb)のものであり、N*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表され、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIb)のものであり、N*は、R4=Hであり、X=Clである構造(IIb)により表される。
【0069】
別の極めて好ましい実施形態において、本発明のこれらの最も好ましい化合物は、R,R配置の化合物N(R,R-N)、R配置の化合物T(R-T)、Rトランス配置の化合物AE(Rトランス-AE)及び任意の配置の化合物X、並びに、好ましくはR,R-AJである任意選択の化合物AJであり、ここで化合物は構造(IIIb)のものであり、N*は構造(IIa)により表され、最も好ましくは、本発明の化合物は、S,R配置の化合物X(S,R-X)であり、ここで化合物は構造(IIIb)のものであり、N*は構造(IIa)により表される。
【0070】
開放配置(クロマニルキノンフレームワークを含む、好ましくは一般構造(IIIb))の化合物は、閉鎖配置(クロマニルフレームワークを含む、好ましくは一般構造(IIIa))の化合物より効力のあるmPGES-1阻害剤であることが見出された。しかし、閉鎖配置の化合物は、開放配置の化合物より高い経口バイオアベイラビリティーを示した。
【0071】
本発明は、ジアステレオマー、鏡像異性体及びシス/トランス(E/Z)異性体が含まれる、化合物の全ての立体異性体及び幾何異性体も含む。本発明は、ラセミ混合物が含まれるが、これに限定されない、立体異性体及び/又は幾何異性体の任意の比による混合物も含む。
【0072】
本発明の化合物は、選択的mPGES-1阻害剤であり、そのまま使用することができる。用語「選択的mPGES-1阻害剤」は、本明細書において使用されるとき、細胞又は対象においてmPGES-1の(増強された)発現及び/又は機能的活性を阻害又は抑制することができるが、シクロオキシゲナーゼ、特にCOX-2の発現に対して任意の又は有意な阻害作用を有さない物質を指す。したがって本発明の化合物は、例えばPGD2、6-ケトPGF1a及びPGI2などの他のプロスタグランジンのレベルに影響を与えることなく、PGE2のレベルを選択的に低減することができる。本発明者たちは、本発明の選択的mPGES-1阻害剤がシクロオキシゲナーゼの発現/活性に対して有意な作用を有さない又は作用を有さないので、細胞又は対象におけるプロスタグランジン恒常性は比較的安定して維持され、それによって、mPGES-1の過剰発現に関連する疾患又は症状を緩和し、同時に、心疾患事象及び胃損傷などCOX-1/2阻害により誘導される有害作用を患う危険性を低減することができると考える。
【0073】
したがって、本発明の化合物は、増強されたmPGES-1発現若しくは活性を治療若しくは予防する、並びに/又は増強されたmPGES-1発現若しくは活性に関連する症状を治療、予防及び/若しくは抑制する方法に使用することができる。mPGES-1のそのような増強又は増加された活性は、通常、mPGES-1酵素の発現によって、すなわちmPGES-1の過剰発現の誘導によってもたらされ、増加したレベルのPGE2を産生する。したがって、増強されたmPGES-1活性、mPGES-1の過剰発現及び増加したレベルのPGE2は、対応する正常な、例えば非炎症性の状態、対象、臓器、組織又は細胞より高いことが本明細書において理解される。
【0074】
本発明の文脈において、酵素の活性は、好ましくは、単位時間あたりの触媒反応の量に関する。本発明の文脈において、好ましくは酵素発現の量は、好ましくは細胞において所定の時点に存在する又は産生される、単位時間あたりの酵素分子に量に関する。
【0075】
したがって、本発明の化合物は、炎症の治療に有用であることが期待される。用語「炎症」は、身体的外傷、感染、本明細書下記に記述されたものなどの慢性疾患、並びに/又は外部刺激に対する化学的及び/若しくは生理学的反応(例えば、アレルギー応答の一部としての)によって誘発されうる局所的又は全身的な保護応答として特徴づけられる任意の状態を含むことが当業者に理解されよう。傷害性作用物質及び傷害組織の両方を破壊、希釈又は隔絶するように機能しうる、このような応答のいずれも、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状、例えば、発熱、腫脹、疼痛、発赤、血管拡張及び/又は血流増加として現れることがある。
【0076】
用語「炎症」は、任意の炎症性疾患、障害若しくは状態それ自体、関連する炎症性成分を有する任意の状態、並びに/又は、とりわけ急性、慢性、潰瘍性、特異的、アレルギー性のものを含む症状としての炎症、病原体感染、過敏症、異物の侵入、身体的傷害が原因の免疫反応、及び壊死性炎症、及び当業者に既知の他の炎症形態と特徴づけられる任意の状態を含むことも理解される。したがって、この用語は、本発明の目的において炎症性疼痛、一般的疼痛及び/又は発熱も含む。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、増強されたmPGES-1発現又は活性に関連する症状を治療、予防又は抑制する方法に使用され、これらの症状には、炎症、疼痛、腫脹、発熱、血管新生及び食欲不振のうちの少なくとも1つ又は複数が含まれる。
【0078】
好ましくは、本発明の化合物は、mPGES-1に関連するPGES-1の(増強された発現及び/又は活性)に関わる疾患又は状態の症状、並びにmPGES-1を阻害する鎮痛性、抗炎症性、抗血管新生性細胞静止性及び/又は解熱性の作用による化合物の有効性が期待される疾患又は状態の症状を、治療、予防又は抑制する方法に使用される。
【0079】
したがって、本発明の化合物は、a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、乾癬、バムス、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎、膵炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;再灌流傷害;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛、産痛、持続痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;c)関節炎、変形性関節症、若年性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症などの自己免疫性疾患;d)喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス及び肺線維症などの呼吸障害又は肺疾患;e)脳がん、前立腺がん、腎がん、肝がん、膵がん、胃がん、乳がん、肺がん、頭頸部がん、甲状腺がん、神経膠芽種、黒色腫、リンパ腫、白血病、皮膚T細胞リンパ腫及び皮膚B細胞リンパ腫などのがん;f)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症;g)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症などの神経変性傷害、並びにh)アテローム性動脈硬化症、血栓症、卒中及び冠状動脈性心疾患などの心血管疾患からなる群から選択される疾患又は状態の治療において、増強されたmPGES-1発現又は活性により媒介される症状の予防又は抑制のために好ましく使用される。
【0080】
別の実施形態において、本発明は、増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する疾患又は状態を治療する方法に関し、ここで方法は、有効量の本発明の化合物を、疾患又は状態を患っている対象に投与するステップを含む。増強されたPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する疾患又は状態は、好ましくは、a)急性及び慢性炎症;皮膚炎、湿疹、バムス、尋常性ざ瘡、化膿性汗腺炎及び組織外傷などの皮膚疾患;潰瘍性大腸炎、憩室炎、過敏性腸疾患(IBS)、消化性潰瘍、膀胱炎、(慢性)前立腺炎又は腎炎などの内臓疾患;インフルエンザ、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、耳炎及びぶどう膜炎などの耳、鼻、口及びのどの疾患;ウイルス及び細菌感染;炎症関連食欲不振;アレルギー;骨盤内炎症性疾患;移植片拒絶;腱炎、血管炎及び静脈炎;b)急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚過敏、中枢性感作に関連する疼痛、アロディニア炎症性疼痛、内臓痛、がん性疼痛、外傷性疼痛、歯又は手術痛、術後痛、分娩陣痛、産痛、持続痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張型頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害化学療法性疼痛及びがん性疼痛;c)強直性脊椎炎、痛風、リウマチ熱、滑液包炎、並びにd)糖尿病性血管傷害、糖尿病性神経障害及び糖尿病性網膜症を含む糖尿病合併症からなる群から選択される。
【0081】
化合物の「有効量」は、対象に投与されたとき、疾患の1つ若しくは複数の症状を低減若しくは排除する、又は疾患の1つ若しくは複数の症状の進行を遅らせる、又は疾患の1つ若しくは複数の症状の重篤度を低減する、又は疾患の出現を抑制する、又は疾患の有害な徴候の出現を抑制するのに十分な化合物の量である。有効量を1回又は複数回の投与で与えることができる。
【0082】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生じることができる「有効量」は、活性成分が投与される宿主及び特定の投与様式に応じて変わる。選択される単位投与量は、化合物の望ましい最終血中濃度を提供するように、通常作られ、投与される。
【0083】
好ましくは成人の有効量(すなわち、有効総1日用量)は、約5~2000mg、又は約10~1000mg、又は約20~800mg、又は約30~800mg、又は約30~700mg、又は約20~700mg、又は約20~600mg、又は約30~600mg、又は約30~500mg、約30~450mg、又は約30~400mg、又は約30~350mg、又は約30~300mg、又は約50~600mg、又は約50~500mg、又は約50~450mg、又は約50~400mg、約50~300mg、又は約50~250mg、又は約100~250mg、又は約150~250mgの総1日用量と本明細書に定義される。最も好ましい実施形態において、有効量は約200mgである。
【0084】
或いは、好ましくは成人のための化合物の有効量は、好ましくは体重(kg)に従って投与される。したがって、好ましくは成人の総1日用量は、約0.05~約40mg/kg、約0.1~約20mg/kg、約0.2mg/kg~約15mg/kg、又は約0.3mg/kg~約15mg/kg、又は約0.4mg/kg~約15mg/kg、又は約0.5mg/kg~約14mg/kg、又は約0.3mg/kg~約14mg/kg、又は約0.3mg/kg~約13mg/kg、又は約0.5mg/kg~約13mg/kg、又は約0.5mg/kg~約11mg/kgである。
【0085】
小児の総1日用量は、好ましくは最大で200mgである。より好ましくは、総1日用量は、約5~200mg、約10~200mg、約20~200mg、約30~200mg、約40~200mg又は約50~200mgである。好ましくは、小児の総1日用量は、約5~150mg、約10~150mg、約20~150mg、約30~150mg、約40~150mg又は約50~150mgである。より好ましくは、総1日用量は、約5~100mg、約10~100mg、約20~100mg、約30~100mg、約40~100mg又は約50~100mgである。さらにより好ましくは、総1日用量は、約5~75mg、約10~75mg、約20~75mg、約30~75mg、約40~75mg又は約50~75mgである。
【0086】
使用することができる投与量の代替例は、約0.1μg/kg~約300mg/kgの投与量範囲内、又は約1.0μg/kg~約40mg/kg体重の範囲内、又は約1.0μg/kg~約20mg/kg体重の範囲内、又は約1.0μg/kg~約10mg/kg体重の範囲内、又は約10.0μg/kg~約10mg/kg体重の範囲内、又は約100μg/kg~約10mg/kg体重の範囲内、又は約1.0mg/kg~約10mg/kg体重の範囲内、又は約10mg/kg~約100mg/kg体重の範囲内、又は約50mg/kg~約150mg/kg体重の範囲内、又は約100mg/kg~約200mg/kg体重の範囲内、又は約150mg/kg~約250mg/kg体重の範囲内、又は約200mg/kg~約300mg/kg体重の範囲内、又は約250mg/kg~約300mg/kg体重の範囲内の本発明の化合物の有効量である。使用することができる他の投与量は、約0.01mg/kg体重、約0.1mg/kg体重、約1mg/kg体重、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約75mg/kg体重、約100mg/kg体重、約125mg/kg体重、約150mg/kg体重、約175mg/kg体重、約200mg/kg体重、約225mg/kg体重、約250mg/kg体重、約275mg/kg体重、又は約300mg/kg体重である。
【0087】
本発明の化合物は、単回1日用量で投与されうる、又は総1日投与量は、1日に2、3又は4回に分けた投与量で投与されうる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、「対象」、「個体」又は「患者」は、個別の生命体、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、更により好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトであることが理解される。
【0089】
本明細書に定義されている用量は、好ましくはヒトへの投与に適したものである。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に定義されている有効量を投与することによって、増強されたmPGES-1発現又は活性に関連する症状の治療、予防又は抑制に使用される、本明細書上記に定義された化合物に関係し、治療される対象は霊長類であり、好ましくは、対象はヒトである。
【0090】
本発明のさらに好ましい実施形態において、ヒトは成人、例えば18歳以上の人間である。加えて、成人の平均体重は62kgであるが、平均体重は国によって変わることが知られている。本発明の別の実施形態において、成人の平均体重は、したがって約50~90kgの間である。本明細書に定義されている有効用量は平均体重を有する対象に限定されないことが、本明細書において理解される。好ましくは、対象は18.0~40.0kg/m2の間のBMI(肥満度指数)、より好ましくは18.0~30.0kg/m2の間のBMIを有する。
【0091】
或いは、治療される対象は、小児、例えば17歳以下の人間である。加えて、治療される対象は、誕生から思春期の間、又は思春期から成人期の間の人間でありうる。思春期は、女性では10~11歳から始まり、男性では11~12歳から始まることが本明細書において理解される。更に、治療される対象は新生児(産後最初の28日間)、乳幼児(0~1歳)、幼児(1~3歳)、未就学児童(3~5歳)、学齢児童(5~12歳)又は青年(13~18歳)でありうる。
【0092】
本明細書に定義されているように使用される(すなわち、有効総1日用量の投与によって、増強されたmPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する症状を治療、予防又は抑制することに使用される)化合物は、組成物として投与されうる。
【0093】
上記に記載された化合物を含む組成物は、医薬若しくは美容調合剤として、又は医療食及び栄養補助食品を含む、ヒト若しくは動物用の食品などの様々な他の媒体に調製されうる。「医療食」は、特有の栄養要件が存在する疾患又は状態のために、特別の食事管理が意図される製品である。例として、医療食には、栄養管を介して供給される(経腸投与と呼ばれる)ビタミン及びミネラル製剤が含まれうるが、これらに限定されない。「栄養補助食品」は、ヒトの食事を補充することが意図され、かつ丸剤、カプセル剤及び錠剤などの製剤で典型的に提供される製品を意味する。例として、「栄養補助食品」には、以下の成分:ビタミン、ミネラル、ハーブ、生薬、アミノ酸、総食事摂取量を増加することにより食事を補充することが意図される食事物質(dietary substance)、濃縮物、代謝産物、構成成分、抽出物又は前記のいずれかの組み合わせのうちの1つ以上が含まれうるが、これらに限定されない。栄養補助食品を、フードバー(food bar)、飲料、粉末、シリアル、調理済食品、食品添加物及びキャンディー、或いは脳の健康を促進するように又は増強されたmPGES-1発現若しくは活性に関連する神経変性疾患の進行を予防する若しくは停止させるように設計された他の機能性食品が含まれるが、これらに限定されない食品に組み込むこともできる。
【0094】
したがって本組成物は、食品が含まれるが、これに限定されない、摂取されうる他の生理学的に許容される材料と混合されうる。追加的又は代替的に、本明細書に記載されているように使用される組成物は、食品の投与と組合せて(別々に)経口投与されうる。
【0095】
組成物を、単独で又は他の医薬品若しくは美容剤と組み合わせて投与することができ、生理学的に許容されるその担体と組み合わせることができる。特に、本明細書に記載されている化合物は、薬学的又は生理学的に許容される賦形剤、担体及びビヒクルなどの添加剤と共に処方することによって、医薬又は美容組成物として処方されうる。適切な薬学的又は生理学的に許容される賦形剤、担体及びビヒクルには、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖、二糖、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル-P-シクロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低融点ロウ、イオン交換樹脂など、またこれらの任意の2又は3つの組み合わせなどの、加工剤、並びに薬物送達調節及び増強剤が含まれる。他の適切な薬学的に許容される賦形剤は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)及び“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,20th edition(2003),21stedition(2005)and22ndedition(2012)に記載されており、参照として本明細書に組み込まれる。
【0096】
本発明に従って使用される化合物を含有する医薬又は美容組成物は、例えば、液剤、懸濁剤又は乳剤を含む、意図される投与方法に適した任意の形態でありうる。好ましい実施形態において、化合物は、固体形態又は液体形態で投与される。
【0097】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が含まれうる。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース又はデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合されうる。そのような剤形は、また、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含んでもよい。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合において、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。加えて錠剤及び丸剤は、腸溶コーティングを用いて調製されうる。
【0098】
経口投与用の液体剤形には、水又は食塩水などの当該技術に慣用的に使用されている不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及エリキシル剤が含まれうる。そのような組成物は、また、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、シクロデキストリン、並びに甘味剤、香味剤及び芳香剤などの補助剤を含んでもよい。
【0099】
液体担体は、液剤、懸濁剤及び乳剤の調製に典型的に使用される。好ましい実施形態において、本発明の実施のために使用されることが考慮される液体担体/液体剤形には、例えば、水、食塩水、薬学的に許容される有機溶媒(複数可)、薬学的に許容される油脂など、またこれらの2つ又は複数の混合物が含まれる。好ましい実施形態において、本明細書に定義されているように使用される化合物は、投与の前に水溶液と混合される。水溶液は、投与に適しているべきであり、そのような水溶液は当該技術において良く知られている。投与のための水溶液の適合性は投与経路に応じたものでありうることが、当該技術において更に知られている。
【0100】
好ましい実施形態において、水溶液は等張水溶液である。等張水溶液は、好ましくは、血漿に対してほとんど(又は完全に)等張性である。さらにより好ましい実施形態において、等張水溶液は食塩水である。
【0101】
液体担体は、可溶化剤、乳化剤、栄養素、緩衝液、防腐剤、懸濁化剤、増粘剤、粘度調節剤、安定剤、香料などの他の適切な薬学的に許容される添加剤を含有することができる。好ましい香料は、単糖及び/又は二糖などの甘味料である。適切な有機溶媒には、例えば、エタノールなどの一価アルコール及びグリコールなどの多価アルコールが含まれる。適切な油には、例えば、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などが含まれる。
【0102】
非経口投与では、担体は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの油状エステルでもありうる。本発明で使用される組成物は、微粒子、マイクロカプセル、リポソームカプセル化物など、またこれらの任意の2つ又はそれ以上の組み合わせの形態でもありうる。
【0103】
例えば、Lee,“Diffusion-Controlled Matrix Systems”,pp.155-198及びRon and Langer,“Erodible Systems”,pp.199-224,in“Treatise on Controlled Drug Delivery”,A.Kydonieus Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York 1992に記載されているように、拡散制御マトリックス系又は浸食系などの徐放、持続放出又は制御放出送達系を使用してもよい。例えばこのマトリックスは、例えば加水分解によって又は例えばプロテアーゼによる酵素切断によって、インサイツ及びインビボにおいて自然に分解されうる生体分解性材料でありうる。送達系は、例えば、ヒドロゲルの形態の、例えば、天然に生じる又は合成のポリマー又はコポリマーでありうる。切断可能な連結を有する例示的なポリマーには、ポリエスエル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、多糖、ポリ(リン酸エステル)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(イミドカーボネート)及びポリ(ホスファゼン)が含まれる。
【0104】
本発明の化合物は、リポソームの形態で投与することもできる。当該技術に知られているように、リポソームは、一般にリン脂質又は他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体に分散された単又は多層水和液晶から形成される。リポソームを形成することができる非毒性の生理学的に許容される代謝可能な任意の脂質を、使用することができる。リポソーム形態の本組成物は、本明細書に定義されている化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤などを含有することができる。好ましい脂質は、天然及び合成の両方のリン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当該技術において知られている。例えば、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.,p.33 et seq(1976)を参照すること。
【0105】
医薬又は美容組成物は、単位用量製剤で構成され得、単位用量は、本明細書に定義されている障害又は状態の治療又は抑制効果を有するのに十分な用量である。単位用量は、本明細書に定義されている障害又は状態の治療又は抑制効果を有する単一用量として十分でありうる。或いは、単位用量は、本明細書に定義されている障害又は状態の治療又は抑制の過程において、周期的に投与される用量でありうる。治療の過程において、本組成物の濃度は、本発明の化合物の望ましいレベルが維持されることを確実にするためモニターされうる。
【0106】
好ましい実施形態において、本発明は、有効総1日用量を投与して、増強されたmPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する症状を治療、予防又は抑制するために使用される、本明細書に定義されている化合物に関係し、好ましくは、化合物は5日以内に血中定常状態のレベルに到達する。より好ましくは、定常状態のレベルは、4日以内、さらにより好ましくは3日以内に到達し、最も好ましくは、定常状態のレベルは、最初の投与後の2日以内に到達する。
【0107】
定常状態とは上記に定義された化合物の総摂取量が排出量と(ほぼ)動的平衡であるということが、本明細書において理解される。定常状態である間、化合物の血漿レベルは、好ましくは有効治療範囲内に維持される。言い換えると、化合物の血中レベルは、最小治療有効濃度と最大治療有効濃度の間に維持される。最小濃度を下回ると、化合物は有効であると考慮される十分な治療効果を有さない。最大濃度を上回ると、副作用が増加して、最終的に毒性をもたらす。
【0108】
治療中に有効治療範囲を維持するため、本明細書に定義されている化合物の平均血漿濃度(Cav)は、約10ng/ml~約20000ng/mlの間、又は約20ng/ml~約10000ng/ml、又は約30ng/ml~約5000ng/ml、又は約30ng/ml~約4000ng/mlの間、又は約30ng/ml~約3000ng/mlの間、又は約30ng/ml~約2000ng/mlの間、又は約30ng/ml~約1000ng/ml、又は約50ng/ml~約5000ng/mlの間、又は約100ng/ml~約5000ng/mlの間、又は約50ng/ml~約4000ng/mlの間、又は約50ng/ml~約3000ng/mlの間、又は約50ng/ml~約2000ng/mlの間、又は約50ng/ml~約1000ng/mlの間に維持される。より好ましい実施形態において、化合物の平均血漿濃度は、約50ng/ml~500ng/ml又は100ng/ml~500ng/mlの間に維持される。
【0109】
平均血漿濃度は、当該技術に既知の任意の従来の方法を使用して決定することができる。しかし、好ましい実施形態において、血漿濃度は、本明細書に定義されている化合物を、タンパク質沈殿、続いて液体クロマトグラフィー-タンデム型質量分析(LC-MS/MS)によって、ヒト血漿から抽出することにより決定される。化合物の濃度は、較正標準を使用して、後で決定してもよい。
【0110】
本明細書に定義されている化合物を代謝させることができ、非代謝化合物の代わりに又は非代謝化合物に加えて、代謝化合物の有効治療範囲を治療中に維持することができる。本発明の好ましい実施形態において、代謝化合物の平均血漿濃度(Cav)は、約5ng/ml~約5000ng/mlの間、又は約10ng/ml~約2000ng/ml、又は約20ng/ml~約1000ng/ml、又は約20ng/ml~約800ng/mlの間、又は約20ng/ml~約600ng/mlの間、又は約20ng/ml~約400ng/mlの間、又は約20ng/ml~約200ng/ml、又は約30ng/ml~約1000ng/mlの間、又は約50ng/ml~約1000ng/mlの間、又は約30ng/ml~約800ng/mlの間、又は約30ng/ml~約600ng/mlの間、又は30ng/ml~約400ng/mlの間、又は約30ng/ml~約200ng/mlの間に維持される。より好ましい実施形態において、化合物の平均血漿濃度は、約40ng/ml~500ng/ml又は50ng/ml~200ng/mlの間に維持される。
【0111】
本明細書に定義されている化合物の投与の最中又は後、最大血漿濃度(Cmax)は、約20000ng/ml未満、又は10000ng/ml未満、又は5000ng/ml未満、又は約4000ng/ml、又は約3000ng/ml未満、又は約2000ng/ml未満、又は約1000ng/ml未満に留まる。最も好ましい実施形態において、最大血漿濃度は、約500ng/ml未満に留まる。
【0112】
同様に、代謝化合物の最大血漿濃度は、約5000ng/ml未満、又は2000ng/ml、又は1000ng/ml、又は約800ng/ml未満、又は約600ng/ml未満、又は約400ng/ml未満に留まる。最も好ましい実施形態において、代謝化合物の血漿濃度は、約250ng/ml未満に留まる。
【0113】
治療中に有効範囲を維持するため、化合物は、1日1回、又は2日、3日、4日若しくは5日毎に1回、投与されうる。しかし好ましくは、化合物は、少なくとも1日1回投与されうる。したがって好ましい実施形態において、本発明は、有効総1日用量を投与して、増強されたmPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する症状を治療、予防又は抑制するために使用される、本明細書上記に定義された化合物に関係し、有効用量は本明細書上記に定義されたとおりである。総1日用量は、単回1日用量で投与されうる。或いは、化合物は少なくとも1日2回投与される。したがって、本明細書に定義されている化合物を、1日に1回、2回、3回、4回又は5回投与することができる。このように、総1日用量をいくつかの用量(単位)に分けることができ、本明細書に定義されている総1日用量の投与をもたらすことができる。好ましい実施形態において、化合物は1日2回投与される。用語「1日2回(twice daily)」、「1日2回(bid)」及び「1日2回(bis in die)」は、本明細書において交換可能に使用されうることが更に理解される。
【0114】
好ましい実施形態において、総1日用量は、1日毎にいくつかの用量に分割される。これらの別々の用量は量が異なっていてもよい。例えば、それぞれの総1日用量では、第1の用量が第2の用量より大きな量の化合物を有していてもよく、その逆も可能である。しかし好ましくは、化合物は、同様の又は等しい用量で投与される。したがって最も好ましい実施形態において、化合物は2つの同様の又は等しい用量で1日2回投与される。
【0115】
本発明の更に好ましい実施形態において、本明細書上記に定義された化合物の総1日用量は、少なくとも2つの別々の用量で投与される。少なくとも2つの別々の用量の投与間隔は、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間であり、好ましくは、少なくとも2つの別々の用量の間隔は、少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間であり、より好ましくは、少なくとも2つの別々の用量の間隔は、少なくとも約8、9、10、11又は12時間である。
【0116】
組成物は、多数の方法のいずれかによって患者に予防又は治療として、本明細書に定義されている有効総1日用量により投与されうる。特に、投与方法は、個別の対象、疾患の状態又は病期、並びに当業者に明白な他の要因に基づいて変わりうる。
【0117】
本明細書に定義されているように使用される化合物は、望ましい場合に従来の非毒性の薬学的又は生理学的に許容される担体、補助剤及びビヒクルを含有する単位投与製剤により、経腸的、経口的、非経口的、舌下的、吸入(霧若しくは噴霧)により、直腸内又は局所的に投与されうる。例えば、適切な投与様式には、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオン導入、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内(例えば、鼻粘膜経由)、硬膜下、直腸内、胃腸内など及び特定の又は影響を受けた臓器又は組織への直接的なものが含まれる。中枢神経系への送達には、脊髄及び硬膜外投与、又は脳室への投与を使用することができる。局所投与は、経皮パッチ剤又はイオン導入装置などの経皮投与の使用を伴うこともある。非経口という用語には、本明細書において使用されるとき、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射又は注入技術が含まれる。
【0118】
化合物は、望ましい投与経路に適した薬学的に許容される担体、補助剤及びビヒクルと混合される。経口投与が好ましい投与経路であり、経口投与に適した製剤が好ましい製剤である。或いは、化合物は、胃管又は経皮管を介した補給によって投与されうる。
【0119】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、有効総1日用量を投与して、増強されたmPGES-1発現又は活性に媒介される又は関連する症状を治療、予防又は抑制するために使用される、本明細書上記に定義された化合物に関係し、化合物は経口投与される。
【0120】
経口経路は投与の好ましい手段であり、(少なくとも成人にとって)使用される剤形は、好ましくは固体経口剤形である。固体経口剤形の部類は、主に錠剤及びカプセル剤から構成されるが、他の形態も当該技術において知られており、等しく適切でありうる。固体経口剤形として使用される場合、本明細書に定義されている化合物は、例えば、即時放出錠剤(若しくは、カプセル剤など)又は持続放出錠剤(若しくは、カプセル剤など)の形態で投与されうる。任意の適切な即時放出又は持続放出固体剤形を本発明の文脈で使用することができ、このことは当業者に明白である。
【0121】
本明細書に記載された使用のために記載されている化合物を固体形態、液体形態、エアロゾル形態、又は錠剤、丸剤、散剤混合物、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、クリーム剤、液剤、坐剤、浣腸剤、結腸洗浄剤、乳剤、分散剤、プレミックス食品の形態、及び他の適切な形態で投与することができる。化合物をリポソーム製剤で投与することもできる。化合物をプロドラッグとして投与することもでき、プロドラッグは、治療を受ける対象において形質転換を受けて、治療的に有効な形態になる。追加の投与方法は、当該技術において知られている。
【0122】
注射用調合剤、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁剤は、適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を使用する既知の技能に従って処方されうる。滅菌注射用調合剤は、また、例えばプロピレングリコール中の液剤のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用液剤又は懸濁液であってもよい。許容されるビヒクル及び溶媒のうちで用いることができるものは、水、リンゲル液及び塩化ナトリウム等張液である。加えて、滅菌の固定油が溶媒又は懸濁媒体として慣用的に用いられる。このために、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸には、注射剤の調製における用途が見出される。
【0123】
薬物の直腸内投与用の坐剤は、薬物を、室温で固体であるが、直腸内の温度で液体となり、その結果直腸で融解して薬物を放出する、ココアバター及びプロピレングリコールなどの適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製されうる。
【0124】
本明細書に記載された使用のための化合物を単一の活性医薬品(又は美容)剤として投与することができるが、これらを、障害の治療又は抑制に使用される1つ又は複数の他の作用物質と組み合わせて使用することもできる。
【0125】
追加の活性剤が本発明の化合物と組み合わせて使用されるとき、追加の活性剤は、参照として本明細書に組み込まれるPhysicians’Desk Reference(PDR)53rd Edition(1999)に指示されているような治療量、又は当業者に既知の治療上有効な量により一般に用いることができる。本発明の化合物及び他の治療活性剤を、推奨される最大臨床投与量又はそれより低い用量で投与することができる。本発明の組成物中の活性化合物の投与量レベルは、投与経路、疾患の重篤度及び患者の応答に応じて望ましい治療応答を得るために変わりうる。他の治療剤と組み合わせて投与されるとき、治療剤を、同時若しくは異なる時点で与えられる別々の組成物として処方することができる、又は治療剤を単一組成物として与えることができる。
【0126】
本文書中及び特許請求の範囲において、動詞「含む」及びその活用型は、この語の後ろに続く項目が含まれることを意味するが、特定的に記述されない項目が除外されないことも意味する、非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素の参照は、文脈から唯一の要素が明白に必要とされることがない限り、1つを超える要素が存在する可能性を除外しない。したがって不定冠詞「a」又は「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0127】
単語「約」又は「およそ」は、数値に関連して使用される場合(例えば、約10)、好ましくは、値が所定の値(10)から0.1%多い又は少ない値でありうることを意味する。
【0128】
本明細書に引用されている全ての特許及び参考文献は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0129】
本発明を以下の実施例により更に記載するが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0130】
実施例1
方法及び材料
化学薬品及び抗体
cPGES、mPGES-1及びmPGES-2に向けられる抗体は、Cayman Chemicalsから購入した。COX-1、COX-2及びアクチンに向けられる抗体は、それぞれR&D Systems、Thermo Fisher Scientific及びSigma-Aldrichから購入した。COX阻害剤のセレコキシブ及びインドメタシン、並びにリポ多糖はSigma-Aldrichから購入した。mPGES-1阻害剤のMK866及びPF9184、並びにPGH2はCayman Chemicalsから購入した。IL-1βは、Cell Signaling Technologiesから購入した。
【0131】
本発明に従って使用される化合物は、国際公開第2014/011047号又は国際公開第2017/060432号に記載されたように調製した。
【0132】
Raw264.7細胞培養
RAW264.7細胞(Sigma-Aldrich,St-Louis)を、10%FBS(Greiner Bio-one)及び抗体(100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン)を含有するDMEM(Thermo Fisher Scientific)に5%CO2の加湿雰囲気下、37℃で維持した。細胞を80%の集密に増殖させ、削り落とし、次いで実験の前に、96ウエルプレート(2×104細胞/ウエル)又は6ウエルプレート(4×105細胞/ウエル)のいずれかで6~24時間培養した。
【0133】
ヒト一次皮膚線維芽細胞の培養
細胞を、10%FBS(#758093、Greiner Bio-one)、100IU/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(#30-002-CI、Corning)を含有するM199,HEPES(Thermo Fischer Scientific)に5%CO2の加湿雰囲気下、37℃で維持した。細胞を、継代数20に達するまで、4~5日毎にトリプシン処理して継代させ、次いで廃棄した。細胞を80%の集密に増殖させ、トリプシン処理し、次いで実験の前に、96ウエルプレート(4×103細胞/ウエル)で24時間培養した。
【0134】
プロスタグランジンの定量化
培養培地中のPGE2、PGD2及び6-ケト-PGF1αの濃度は、PGE2高感度EIAキット(Enzo Life Science)、プロスタグランジンD2-MOX ELISAキット(Cayman Chemicals)及び6-ケトプロスタグランジンF1αELISAキット(Cayman Chemicals)を製造会社の使用説明書に従ってそれぞれ使用して、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定した。各ウエルから培養培地の試料(100μl)を採取し、アッセイ緩衝液で希釈した。それぞれのプロスタノイドの値は、標準曲線を使用して計算し、図の説明に示されているように正規化した。
【0135】
ウエスタンブロット分析
処理した後、細胞を削り落として採取し、放射性免疫沈降検定緩衝液(50mMのトリス(Tris)-HCl、pH8.0、150mMのNaCl、0.2%のトリトン(Triton)、1×プロテアーゼ阻害剤及び0.1mg/mlのDNアーゼ)に溶解した。試料のタンパク質濃度をBradfordアッセイにより決定した。各試料からタンパク質の等量をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、PVDF膜に電子移動させた。膜を、オデッセイ(Odyssey)遮断緩衝液(Li-Cor)により室温で1時間遮断し、次いでTBST中においてmPGES-1(1:200希釈)、mPGES-2(1:200希釈)、cPGES(1:200希釈)、COX-1(1:250希釈)、COX-2(1:500希釈)又はβ-アクチン(1:10000希釈)に対する一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。膜をTBSTで3回洗浄した後、二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体アレクサフルオール(Alexa Fluor)488又はヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体アレクサフルオール647、Thermo Fisher Scientific)を、1:10000の希釈により室温で1時間加えた。ブロットの蛍光走査を、オデッセイ赤外線画像化システム(Odyssey Infrared Imaging System)(Li-Cor)を使用して実施した。
【0136】
ミクロソームPGES活性
PGES活性は、PGH2からPGE2への変換を評価することによって測定した。簡潔には、1μg/mLのLPSと24時間インキュベートした後、細胞を採取し、300μlの1MトリスHCl(pH8.0)中における超音波処理(1分間の間隔を置いて、それぞれ10秒間で3回)によって溶解した。溶解産物を12,000gにより4℃で10分間遠心分離した後、上澄みを回収し、100,000gにより4℃で1時間更に遠心分離した。ペレット(ミクロソーム膜)を100μlの0.1MトリスHCl、pH8.0(プロテアーゼ阻害剤を含有)に再懸濁し、ミクロソームPGES活性の測定に付した。PGES活性の測定では、50μgのタンパク質に同等の各試料のアリコートを、試験化合物の不在下又は存在下で、2mMのグルタチオン(Sigma-Aldrich)及び14μMのインドメタシンを含有する0.1mlの1MトリスHCl中において2μgのPGH2と共に24℃で60秒間インキュベートした。反応を、100mMのFeCl2の添加により停止させ、20~25℃で15分間更にインキュベートした。反応混合物を遠心分離した後、上澄みのPGE2濃度を、PGE2高感度EIAキット(Enzo Life Science)により製造会社の使用説明書に従って測定した。
【0137】
qRT-PCRによるRNA定量化
試験化合物の不在下又は存在下で、1μg/mLのLPSにより6時間処理した後、全RNAをトリゾール(Trizol)試薬(Thermo Fisher Scientific)により細胞から単離した。RNAを、第1鎖cDNA合成キット(Thermo Fisher Scientific)によりcDNAに転写した。cDNAを95℃で10分間変性させた。COX-1、COX-2、mPGES-1、mPGES-2、cPGES及びPPIAの特異的DNAフラグメントを、95℃で15秒間、60℃で60秒間にわたり40サイクルでSYBRグリーン(Green)(Roche Life Science)サイクラー(Cycler)を用いるPCRにより増幅した。COX1に使用したオリゴヌクレオチドプライマーは、5’-GATTGTACTCGCACGGGCTAC-3’(順方向)及び5’-GGATAAGGTTGGACCGCACT-3’(逆方向)であり、COX2には、5’-AGGACTCTGCTCACGAAGGA-3’(順方向)及び5’-TGACATGGATTGGAACAGCA-3’(逆方向)であり、mPGES-1には、5’-AGCACACTGCTGGTCATCAA-3’(順方向)及び5’-CTCCACATCTGGGTCACTCC-3’(逆方向)であり、mPGES-2には、5’-GCTGGGGCTGTACCACAC-3’(順方向)及び5’-GATTCACCTCCACCACCTGA-3’(逆方向)であり、cPGESには、5’-GGTAGAGACCGCCGGAGT-3’(順方向)及び5’-TCGTACCACTTTGCAGAAGCA-3’(逆方向)であり、PPIAには、5’-AGGGTGGTGACTTTACACGC-3’(順方向)及び5’-GATGCCAGGACCTGTATGCT-3’(逆方向)であった。PCR増幅を、陰性対照としてcDNAを有さない試料においても実施した。COX-1、COX-2、mPGES-1、mPGES-2及びcPGESの相対的遺伝子発現は、ビヒクル及び処理群における発現を比較するΔΔ(デルタデルタ)CT方法によって決定した。PPIAを基準遺伝子として使用した。
【0138】
結果
化合物I-IVb-XはPGE
2のレベルを選択的に減少する。
RAW264.7マクロファージ細胞を、炎症性刺激LPS単独若しくは化合物I-IVb-X(一般構造(I)の化合物、式中、Tは、S,R配置の一般構造(IVb)のものであり、化合物Xとしては、以下が適用される:L=L
19;R
1=H;R
2-R
2’=L
3;R
3=H)の増加濃度との組合せ、NSAIDインドメタシン又はコキシブのセレコキシブで処理した。24時間のインキュベーションの後、PGE
2、PGD
2及び6-ケトPGF
1aのレベルを細胞上澄みにおいてELISAにより定量化した。予想したとおり、LPSは、3つのプロスタグランジンの産生を効率的に誘導し(
図2A~2C)(Ikeda-Matsuo et al.,2005)、2つのCOX阻害剤のインドメタシン及びセレコキシブが全て用量依存的に低減することができた(
図2E~2F)。予想外なことに、化合物I-IVb-Xは、PGE
2のレベルを用量依存的に低減することができたが、他の2つのプロスタグランジンPGD
2及び6-ケトPGF
1aに対して効果を有さず、PGI
2の安定した代謝産物を通常PGI
2の代替物として測定した(
図2D)。同様の結果を、ヒト一次皮膚線維芽細胞における化合物I-IVb-Xから得た。線維芽細胞と炎症性刺激LPS又はIL-1βのいずれかとの24時間のインキュベーションの後、上澄みにおけるPGE2及びPGD2レベルは強く増加した(
図3A及び3B)。化合物I-IVb-Xは、LPS(
図3C)又はIL-1β(
図3D)のいずれかで処理された細胞の上澄みにおいてPGE
2のレベルを効率的に低減することができたが、PGD
2ではできなかった。
【0139】
化合物I-IVb-XはmPGES-1酵素の発現を選択的に減少する。
RAW264.7マクロファージ細胞を、炎症性刺激LPS単独により又は化合物I-IVb-Xの増加濃度とのみ合わせにより処理した。24時間のインキュベーションの後、mPGES-1、mPGES-2、cPGES、COX-1及びCOX-2タンパク質のレベル、並びにRNAのレベルを、細胞において、ウエスタンブロット又はqPCRにより、それぞれ定量化した。予想したとおり、LPSは、タンパク質における2つの誘導性酵素mPGES-1及びCOX-2の発現(
図4A~4C)、並びにRNA(
図5A及び5B)のレベルを効率的に誘導したが、タンパク質において構成的に発現した酵素mPGES-2、cPGES及びCOX-1(
図4A、4D~4F)、並びにRNA(
図5C~5E)のレベルに対して効果を有さなかった。化合物I-IVb-XはmPGES-1タンパク質(
図4B)及びRNA(
図5A)のLPS誘導発現を用量依存的に低減することができたが、COX-2発現(
図4C及び5B)に対して効果を有さなかった。化合物I-IVb-Xは、他の3つの構成的酵素mPGES-2、cPGES及びCOX-1(
図4D~4F及び
図5C~5E)に対して効果を有さなかった。これらの結果は、化合物I-IVb-Xが、炎症性刺激LPSにより誘導されたmPGES-1酵素の発現を選択的に阻害できることを示し、PGE
2のみを低減し、他のプロスタグランジンを低減しない選択性を説明している。
【0140】
化合物I-IVb-Xは、mPGES-1酵素活性を阻害する。
RAW264.7マクロファージ細胞を炎症性刺激LPSで処理して、mPGES-1の発現を増加させた。24時間のインキュベーションの後、ミクロソームを単離し、増加濃度の化合物I-IVb-X又は単一濃度の前記のmPGES-1阻害剤MK866及びPF9184に30分間暴露した。次いでmPGES-1の活性を、PGH
2からPGE
2への変換としてミクロソーム画分においてアッセイした。結果は、化合物I-IVb-Xにより又は2つの陽性対照MK866及びPF9184により処理した精製ミクロソームにおいて、mPGES-1活性が減少したことを示す(
図6A)。
【0141】
実施例2-mPGES-1酵素活性の阻害
実施例1に記載された方法を使用して、追加の化合物を試験した。表1は、試験した化合物の概要を、対応するIC
50値と共に提示する。
図6B、6C及び6Dは、I-IVb-AE、I-IVb-A-HCl及びI-IVb-Iそれぞれの対応する阻害曲線を示す。
【表2】
【0142】
参考文献
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