IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図1
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図2
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図3
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図4
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図5
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図6
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図7
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図8
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図9
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図10
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図11
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図12
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図13
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図14
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図15
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図16
  • 特開-媒体排出装置、画像読取装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098010
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】媒体排出装置、画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/26 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B65H31/26
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079569
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020116473の分割
【原出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】西村 陽一郎
(57)【要約】
【課題】排出される媒体を押さえて整列性を向上させる押さえ部材が着脱可能であると、装置の保管時や輸送の際に押さえ部材の破損を回避できるが、その反面、普段の使用環境においては取り外した押さえ部材の管理が煩雑となる。
【解決手段】媒体搬送装置は、媒体を排出する媒体排出部を備える装置本体と、前記媒体排出部により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、前記装置本体に対して着脱可能な部材であって、前記装置本体に装着された状態で前記媒体排出部により排出される媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体受けトレイに接する第1状態と、前記媒体受けトレイから離間して上方に退避する第2状態と、を切り換え可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を排出する媒体排出部を備える装置本体と、
前記媒体排出部により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、
前記装置本体に対して着脱可能な部材であって、前記装置本体に装着された状態で前記媒体排出部により排出される媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、を備え、
前記押さえ部材は、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体排出部により排出される媒体に接触可能な第1状態と、前記媒体排出部により排出される媒体に接触しない位置まで上方に退避した第2状態と、を切り換え可能であり、
前記押さえ部材は、回転することで前記第1状態と前記第2状態とを切り換える様に設けられ、
前記押さえ部材を前記装置本体に固定するロック部と、
前記ロック部による前記押さえ部材の固定を解除する為の操作部と、を備え、
下方向への回転限度にある前記押さえ部材に対し、前記第2状態に向かう方向とは反対の方向に回転させる外力を付与すると、前記押さえ部材の一部が前記操作部に当接し、前記ロック部による前記押さえ部材の固定が解除される、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項2】
媒体を排出する媒体排出部を備える装置本体と、
前記媒体排出部により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、
前記装置本体に対して着脱可能な部材であって、前記装置本体に装着された状態で前記媒体排出部により排出される媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、を備え、
前記押さえ部材は、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体排出部により排出される媒体に接触可能な第1状態と、前記媒体排出部により排出される媒体に接触しない位置まで上方に退避した第2状態と、を切り換え可能であり、
前記押さえ部材は、媒体と接触する部位が、媒体との間の摩擦係数が第1摩擦係数となる第1部位と、媒体との間の摩擦係数が前記第1摩擦係数より大きい第2摩擦係数となる第2部位とに切り換え可能である、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材の前記第2状態から前記第1状態への切り換わり動作に対し負荷を付与する負荷付与手段を備える、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材は、回転することにより、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える様に設けられ、
下方向への回転限度にある前記押さえ部材の先端部に対し鉛直上方成分を含む外力を付与することにより、前記押さえ部材が前記第2状態に向けて回転する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材の前記下方向への回転限度が、前記押さえ部材に形成された当接部と、前記当接部が当接する規制部との当接により規定され、前記当接部が前記規制部に当接した状態で、前記押さえ部材が斜め下方向に向く傾斜姿勢をとる、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記媒体排出部により排出される媒体が前記第1状態にある前記押さえ部材に接触する接触位置は、前記媒体排出部により排出される媒体が前記媒体受けトレイまたは前記媒体受けトレイに載置された媒体に接する位置より排出方向下流にある、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記第1状態にある前記押さえ部材は、媒体排出方向と交差する方向である幅方向において複数の接触位置で媒体と接する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材は、前記幅方向において二箇所の前記接触位置で媒体と接し、
前記媒体排出部により排出される媒体の前記幅方向の中心位置は、二箇所の前記接触位置の間にある、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材は、媒体の排出方向下流に向かって、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向に拡がるとともに、前記幅方向の中央部が切り欠かれた形状を有する、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材は、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向から視て、前記媒体受けトレイと接する部位が前記媒体受けトレイに対し凸となる形状に形成されている、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材が媒体を押さえる際の押圧荷重を調整可能に構成されている、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記押さえ部材は、媒体の排出方向の長さを調整可能に構成されている、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記装置本体は、各種情報を表示する表示部を備え、
前記表示部の平面視において前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記表示部の一部を覆う位置にあって、前記表示部での表示内容から外れた位置にある、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の媒体排出装置において、前記装置本体は、各種操作設定を受け付ける操作パネルを備え、
前記操作パネルは、押下可能な押下ボタンを少なくとも一つ備え、
前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記押下ボタンの平面視において前記押下ボタンの一部を覆う位置にあって前記押下ボタンの一部を露呈させる位置にある、
ことを特徴とする媒体排出装置。
【請求項15】
搬送される媒体を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取りが行われた媒体を排出する、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の前記媒体排出装置と、
を備えた画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を排出する媒体排出装置、及びこれを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を搬送しながら読み取りを行うドキュメントスキャナーや、用紙に記録を行うプリンター等においては、特許文献1に示される様に排出される媒体を受けるトレイと、トレイに排出される媒体を押さえる押さえ部材とを備えるものがある。この押さえ部材により、排出される媒体が上方から押さえられる為、カール癖の強い媒体であっても、媒体はトレイ上で適切な状態で堆積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-231398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成において、押さえ部材は着脱可能に構成されている。この様に押さえ部材が着脱可能であると、装置の保管時や輸送の際に押さえ部材の破損を回避できるが、その反面、普段の使用環境においては取り外した押さえ部材の管理が煩雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体搬送装置は、媒体を排出する媒体排出部を備える装置本体と、前記媒体排出部により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、前記装置本体に対して着脱可能な部材であって、前記装置本体に装着された状態で前記媒体排出部により排出される媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体排出部により排出される媒体に接触可能な第1状態と、前記媒体排出部により排出される媒体に接触しない位置まで上方に退避した第2状態とを切り換え可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】スキャナーの外観斜視図。
図2】スキャナーにおける原稿搬送経路を示す側断面図。
図3】原稿受けトレイ及び押さえ部材の斜視図。
図4】原稿受けトレイ及び押さえ部材の斜視図。
図5】スキャナーの外観斜視図。
図6】スキャナーの側面図。
図7】操作パネルの平面図。
図8】スキャナーの外観斜視図。
図9】押さえ部材と台座部の斜視図。
図10】台座部の斜視図。
図11】押さえ部材、台座部、及び固定部の断面図。
図12】押さえ部材、台座部、及び固定部の断面図。
図13】押さえ部材の側面図。
図14】第2実施形態に係る押さえ部材の側面図。
図15】第2実施形態に係る押さえ部材の側面図。
図16】第3実施形態に係る押さえ部材の側面図。
図17】第4実施形態に係る押さえ部材の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様は、媒体を排出する媒体排出部を備える装置本体と、前記媒体排出部により排出される媒体を受ける媒体受けトレイと、前記装置本体に対して着脱可能な部材であって、前記装置本体に装着された状態で前記媒体排出部により排出される媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体排出部により排出される媒体に接触可能な第1状態と、前記媒体排出部により排出される媒体に接触しない位置まで上方に退避した第2状態とを切り換え可能であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記押さえ部材は、前記装置本体に対して着脱可能であるとともに、前記装置本体に装着された状態において、前記媒体排出部により排出される媒体に接触可能な第1状態と、前記媒体排出部により排出される媒体に接触しない位置まで上方に退避した第2状態とを切り換え可能であるので、普段の使用環境において前記押さえ部材が不要な場合は、前記押さえ部材を前記装置本体から取り外すことなく前記第2状態にすることでユーザーの要求に沿うことができ、ひいてはユーザーの利便性を向上させることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記押さえ部材の前記第2状態から前記第1状態への切り換わり動作に対し負荷を付与する負荷付与手段を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材の前記第2状態から前記第1状態への切り換わり動作に対し負荷を付与する負荷付与手段を備えるので、ユーザーの意図に反して前記押さえ部材が前記第2状態から前記第1状態に切り換わることを抑制でき、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0010】
第3態様は、第1のまたは第2の態様において、前記押さえ部材は、回転することにより、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える様に設けられ、下方向への回転限度にある前記押さえ部材の先端部に対し鉛直上方成分を含む外力を付与することにより、前記押さえ部材が前記第2状態に向けて回転することを特徴とする。
前記装置本体を持ち上げて移動させる場合、前記装置本体を置く際に、下方向への回転限度にある前記押さえ部材が装置の設置面に衝突し、前記押さえ部材の破損を招く虞がある。しかしながら本態様によれば、下方向への回転限度にある前記押さえ部材の先端部に対し鉛直上方成分を含む外力を付与すると、前記押さえ部材が前記第2状態に向けて回転するので、上述の様な前記押さえ部材の破損を抑制できる。
【0011】
第4の態様は、第3の態様において、前記押さえ部材の前記下方向への回転限度が、前記押さえ部材に形成された当接部と、前記当接部が当接する規制部との当接により規定され、前記当接部が前記規制部に当接した状態で、前記押さえ部材が斜め下方向に向く傾斜姿勢をとることを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材の前記下方向への回転限度が、前記押さえ部材に形成された当接部と、前記当接部が当接する規制部との当接により規定され、前記当接部が前記規制部に当接した状態で、前記押さえ部材が斜め下方向に向く傾斜姿勢をとるので、下方向への回転限度にある前記押さえ部材の下端部に対し鉛直上方成分を含む外力が作用した際、前記押さえ部材が前記第2状態に向けて確実に回転でき、上述の様な前記押さえ部材の破損を確実に抑制できる。
【0012】
第5の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記押さえ部材は、回転することで前記第1状態と前記第2状態とを切り換える様に設けられ、前記押さえ部材を前記装置本体に固定するロック部と、前記ロック部による前記押さえ部材の固定を解除する為の操作部と、を備え、下方向への回転限度にある前記押さえ部材に対し、前記第2状態に向かう方向とは反対の方向に回転させる外力を付与すると、前記押さえ部材の一部が前記操作部に当接し、前記ロック部による前記押さえ部材の固定が解除されることを特徴とする。
【0013】
下方向への回転限度にある前記押さえ部材に対し、前記第2状態に向かう方向とは反対の方向に回転させる外力を付与すると、前記押さえ部材の破損を招く虞がある。しかしながら本態様によれば、下方向への回転限度にある前記押さえ部材に対し、前記第2状態に向かう方向とは反対の方向に回転させる外力を付与すると、前記押さえ部材の一部が前記操作部に当接し、前記ロック部による前記押さえ部材の固定が解除されるので、前記押さえ部材が脱落することができ、その結果前記押さえ部材の破損を抑制することができる。
【0014】
第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、前記媒体排出部により排出される媒体が前記第1状態にある前記押さえ部材に接触する接触位置は、前記媒体排出部により排出される媒体が前記媒体受けトレイまたは前記媒体受けトレイに載置された媒体に接する位置より排出方向下流にあることを特徴とする。
【0015】
前記媒体排出部により排出される媒体が前記媒体受けトレイまたは前記媒体受けトレイに載置された媒体に接するより前に前記押さえ部材に接触すると、媒体が座屈し、ジャムとなる虞がある。しかしながら本態様によれば前記媒体排出部により排出される媒体が前記押さえ部材に接触する接触位置は、前記媒体排出部により排出される媒体が前記媒体受けトレイまたは前記媒体受けトレイに載置された媒体に接する位置より排出方向下流にあるので、上記の様なジャムの発生を抑制することができる。
【0016】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記第1状態にある前記押さえ部材は、媒体排出方向と交差する方向である幅方向において複数の接触位置で媒体と接することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1状態にある前記押さえ部材は、媒体排出方向と交差する方向である幅方向において複数の接触位置で媒体と接するので、排出される媒体の回転つまり斜行を抑制できる。
【0017】
第8の態様は、第7の態様において、前記押さえ部材は、前記幅方向において二箇所の前記接触位置で媒体と接し、前記媒体排出部により排出される媒体の前記幅方向の中心位置は、二箇所の前記接触位置の間にあることを特徴とする。
本態様によれば、媒体は、前記幅方向の中心位置に対し前記幅方向の両側で前記押さえ部材により押さえられるので、排出される媒体の回転つまり斜行をより効果的に抑制できる。
【0018】
第9の態様は、第8の態様において、前記押さえ部材は、媒体の排出方向下流に向かって、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向に拡がるとともに、前記幅方向の中央部が切り欠かれた形状を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材は、媒体の排出方向下流に向かって、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向に拡がるとともに、前記幅方向の中央部が切り欠かれた形状を有するので、前記幅方向における広い領域で媒体を押さえることで排出される媒体の回転つまり斜行を効果的に抑制できる。そして前記押さえ部材は、前記幅方向の中央部が切り欠かれた形状を有しているので、前記押さえ部材を前記第2状態に切り換えた際に、前記押さえ部材が前記装置本体を覆う面積を小さくでき、前記装置本体の操作性の低下を抑制できる。
【0019】
第10の態様は、第1から第9の態様のいずれかにおいて、前記押さえ部材は、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向から視て、前記媒体受けトレイと接する部位が前記媒体受けトレイに対し凸となる形状に形成されていることを特徴とする。
前記媒体受けトレイが伸縮する構成である場合、特に縮む際に前記押さえ部材に対し前記媒体受けトレイが引っ掛かる虞があるが、本態様によれば前記押さえ部材は、媒体の排出方向と交差する方向である幅方向から視て、前記媒体受けトレイと接する部位が前記媒体受けトレイに対し凸となる形状に形成されているので、上記の引っ掛かりを抑制できる。
【0020】
第11の態様は、第1から第10の態様のいずれかにおいて、前記押さえ部材が媒体を押さえる際の押圧荷重を調整可能に構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材が媒体を押さえる際の押圧荷重を調整可能に構成されているので、媒体のサイズや種類等に応じて前記押圧荷重を調整することができ、適切に媒体を押さえることができる。
【0021】
第12の態様は、第1から第11の態様のいずれかにおいて、前記押さえ部材は、媒体の排出方向の長さを調整可能に構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材は、媒体の排出方向の長さを調整可能に構成されているので、媒体のサイズに応じて前記押さえ部材が媒体を押さえる位置を調整することができ、適切に媒体を押さえることができる。
【0022】
第13の態様は、第1から第12の態様のいずれかにおいて、前記押さえ部材は、媒体と接触する部位が、媒体との間の摩擦係数が第1摩擦係数となる第1部位と、媒体との間の摩擦係数が前記第1摩擦係数より大きい第2摩擦係数となる第2部位とに切り換え可能であることを特徴とする。
本態様によれば、前記押さえ部材は、媒体と接触する部位が、媒体との間の摩擦係数が第1摩擦係数となる第1部位と、媒体との間の摩擦係数が前記第1摩擦係数より大きい第2摩擦係数となる第2部位とに切り換え可能であるので、媒体のサイズや種類等に応じて前記摩擦係数を切り換えることができ、適切に媒体を押さえることができる。
【0023】
第14の態様は、第1から第13の態様のいずれかにおいて、前記装置本体は、各種情報を表示する表示部を備え、前記表示部の平面視において前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記表示部の一部を覆う位置にあって、前記表示部での表示内容から外れた位置にあることを特徴とする。
本態様によれば、前記表示部の平面視において前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記表示部の一部を覆う位置にあって、前記表示部での表示内容から外れた位置にあるので、前記第2状態にある前記押さえ部材が、ユーザーによる前記表示部の視認を阻害することを抑制できる。
【0024】
第15の態様は、第1から第14の態様のいずれかにおいて、前記装置本体は、各種操作設定を受け付ける操作パネルを備え、前記操作パネルは、押下可能な押下ボタンを少なくとも一つ備え、前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記押下ボタンの平面視において前記押下ボタンの一部を覆う位置にあって前記押下ボタンの一部を露呈させる位置にあることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2状態にある前記押さえ部材は、前記押下ボタンの平面視において前記押下ボタンの一部を覆う位置にあって前記押下ボタンの一部を露呈させる位置にあるので、前記第2状態にある前記押さえ部材が、ユーザーによる前記押下ボタンの押下を妨げることを回避できる。
【0025】
第16の態様に係る画像読取装置は、搬送される媒体を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段により読み取りが行われた媒体を排出する、第1から第15の態様のいずれかに記載の前記媒体排出装置とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上述した第1から第15の態様のいずれかの作用効果が得られる。
以下、本発明を具体的に説明する。
【0026】
以下では媒体の一例である原稿の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー1を画像読取装置の一例として説明する。ドキュメントスキャナー1は、以下ではスキャナー1と略称する。また以下では、原稿は原稿Pと称する。
【0027】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系はX軸方向が装置幅方向であり原稿の幅方向、Y軸方向が原稿読み取り時の原稿搬送方向及び原稿を排出する際の排出方向である。Z軸方向はY軸方向と交差する方向であって、読み取りが行われる原稿Pの面と直交する方向を示している。以下では原稿Pが送られていく方向(+Y軸方向)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y軸方向)を「上流」という場合がある。
【0028】
図1においてスキャナー1は、装置本体2を備えている。装置本体2は、下部ユニット3と上部ユニット4とを備えて構成されている。上部ユニット4は下部ユニット3に対して原稿搬送方向下流の回動軸(不図示)を回動支点として開閉可能に設けられており、上部ユニット4を装置前面方向に開き、原稿搬送経路を露呈させて原稿Pのジャム処理を行うことができる様に構成されている。
【0029】
装置本体2の背面側には、給送される原稿Pを載置する原稿載置部11が設けられている。原稿載置部11は、装置本体2に対して着脱可能に設けられている。
また、原稿載置部11には、原稿Pの幅方向の側縁をガイドする一対のエッジガイド12A、12Bが設けられている。
原稿載置部11は、ペーパーサポート8を備えている。ペーパーサポート8は、原稿載置部11の内部に収納可能であり、且つ、原稿載置部11から引き出し可能に構成され、原稿載置面の長さを調整することができる。
【0030】
装置本体2は、上部ユニット4の装置前面側に、各種操作設定を行う為の操作パネル7を備えている。操作パネル7には、各種情報を表示する表示部7aのほか、各種操作設定を行う為の複数の操作ボタンが設けられており、符号7bで示す操作ボタンは、そのうちの一つである。
【0031】
装置本体2の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、原稿載置部11に載置される原稿Pは、給送口6から、装置本体2内部に設けられる読取部20(図2参照)に向けて送られる。
【0032】
次に、主として図2を参照して、スキャナー1における原稿搬送経路について説明する。
図2において符号Tで示す二点鎖線は、原稿搬送経路を示している。原稿搬送経路Tは、下部ユニット3と上部ユニット4とによって挟まれた領域によって形成される。
【0033】
原稿搬送経路Tの最も上流には原稿載置部11が設けられており、原稿載置部11の下流には、原稿載置部11に載置された原稿Pを読取部20に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿Pをニップして分離する分離ローラー15とが設けられている。
不図示のモーターにより駆動される給送ローラー14は、原稿載置部11に載置された原稿Pのうち、最下位のものと接する。従って、スキャナー1において複数枚の原稿Pを原稿載置部11にセットした場合には、最も下の原稿Pから順に下流に向けて給送される。分離ローラー15には、不図示のモーターから、不図示のトルクリミッタを介して原稿Pを上流に戻す方向の回転トルクが伝達される。
【0034】
給送ローラー14の下流には、搬送ローラー対16と、原稿Pを読み取る読取部20と、媒体排出部の一例である排出ローラー対17とが設けられている。搬送ローラー対16は、不図示のモーターにより回転駆動される搬送駆動ローラー16aと、従動回転する搬送従動ローラー16bとを備えて成る。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流に給送された原稿Pは搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流に位置する読取部20に搬送される。
【0035】
読取部20は、上部ユニット4に設けられた上部読取センサー20Aと、下部ユニット3に設けられた下部読取センサー20Bと、を備えて構成される。本実施形態において、上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bは密着型イメージセンサーモジュール(CISM)を備えている。
下部読取センサー20Bにより、原稿Pの下面が読み取られ、上部読取センサー20Aにより、原稿Pの上面が読み取られる。
【0036】
原稿Pは、上面及び下面の少なくとも一方の面を読取部20により読み取られた後、読取部20の下流に位置する排出ローラー対17にニップされて、装置前面に設けられた排出口18から媒体受けトレイの一例である原稿受けトレイ40に向けて排出される。
排出ローラー対17は、不図示のモーターにより回転駆動される排出駆動ローラー17aと、従動回転する排出従動ローラー17bとを備えて成る。
排出ローラー対17を備える装置本体2、原稿受けトレイ40、及び後述する押さえ部材30は、媒体排出装置の一例である原稿排出装置10を構成する。尚、媒体の一例である原稿Pを排出する観点において、スキャナー1の全体が媒体排出装置の一例と捉えることもできる。
【0037】
原稿受けトレイ40は、図3に示す様にベーストレイ41と、第1展開トレイ42と、第2展開トレイ43と、第3展開トレイ44とを備えて成る。
第1展開トレイ42は、ベーストレイ41に保持され、図1に示す様にベーストレイ41に収容された状態と、図3に示す様にベーストレイ41から引き出された状態とを取り得る。
第2展開トレイ43は、第1展開トレイ42に保持され、図1に示す様に第1展開トレイ42に収容された状態と、図3に示す様に第1展開トレイ42から引き出された状態とを取り得る。
第3展開トレイ44は、第2展開トレイ43の下流に位置する不図示の回転軸を介して第2展開トレイ43に対し回転可能に設けられ、図3に示す様に倒れた状態と、不図示の起き上がった状態とを取り得る。即ち第3展開トレイ44は、起き上がった状態で排出される原稿Pの飛び出しを抑制するストッパーとして機能する。
【0038】
続いて排出ローラー対17により排出される原稿Pを原稿受けトレイ40に向けて押さえる押さえ部材30について説明する。
装置本体2を構成する上部ユニット4には、押さえ部材30が、上部ユニット4に対して着脱可能に設けられている。図1図8のうち、図1図7は押さえ部材30が上部ユニット4に取り付けられた状態を示し、図8は押さえ部材30が上部ユニット4から取り外された状態を示している。
【0039】
押さえ部材30は、図9に示す様に台座部31に対し、回転軸30d(図11図12参照)を介して回転可能に設けられている。この回転軸30dは、押さえ部材30が装置本体2に取り付けられた際、軸線がX軸方向に平行となり、これにより押さえ部材30は装置本体2に装着された状態でY-Z平面において回転可能となる。
また台座部31は、凹部31aとロック部31bとを有している。押さえ部材30は、台座部31を介して装置本体2に着脱可能となる。台座部31は、例えばある程度の弾性を有する様に樹脂材料で形成することが好適である。押さえ部材30は、樹脂材料や金属材料で形成することができる。
【0040】
上部ユニット4の上面を構成する筐体19において、排出口18の上方には図11に示す様に固定部32が設けられている。上述した台座部31は、固定部32に対して取り付けられる。台座部31が固定部32に取り付けられる際、筐体19において排出口18の上縁を構成する縁部19aが台座部31の凹部31aに入り込み、また台座部31を構成する鉤状のロック部31bが固定部32の上縁に引っ掛かり、これにより台座部31が固定部32に固定される。
【0041】
台座部31の下側には図10に示す様に操作部31cが設けられている。そして図11の右図において矢印Faで示す様に操作部31cを下側から押し上げると、台座部31は縁部19aと凹部31aとの接触部位を支点にして、図11において時計回り方向、即ちロック部31bが固定部32の上縁から外れる方向に回転する。これにより、図11の左図から右図への変化で示す様にロック部31bが固定部32の上縁から外れ、台座部31の固定状態が解消される。この様にして台座部31つまり押さえ部材30を装置本体2から取り外すことができる。
【0042】
次に、押さえ部材30は回転することにより排出される原稿Pと接触可能な第1状態と、排出される原稿Pに接触しない位置まで上方に退避した第2状態とを切り換えることができる。図1図7のうち、図1図4は押さえ部材30の第1状態の一例を示し、図5図7は押さえ部材30の第2状態を示している。
【0043】
ここで、台座部31には図12に示す様に負荷付与手段としての負荷付与部31dが形成されている。押さえ部材30において回転軸30dの周囲には凸部30hが形成されており、この凸部30hが負荷付与部31dと係合可能となっている。この様な構成により押さえ部材30が第2状態をとる際、図12の最も左の図で示す様に押さえ部材30が第2状態に保持される。そして押さえ部材30を第2状態から第1状態に切り換える際、押さえ部材30の凸部30hが負荷付与部31dを押し退ける。これにより押さえ部材30が、図12の最も左の図から中央の図で示す様に第1状態に切り換わることができる。以上の様にして負荷付与部31dは、押さえ部材30の第2状態から第1状態への切り換わり動作に対して負荷を付与する。
【0044】
次に、押さえ部材30は図3図9に示す様に原稿Pの排出方向下流に向かってX軸方向つまり幅方向に拡がるとともに、幅方向の中央部30cが切り欠かれた形状を有している。これにより、中央部30cに対して-X方向に第1アーム部30aが形成され、また中央部30cに対して+X方向に第2アーム部30bが形成された状態となっている。
この様な構成により、押さえ部材30は幅方向において複数の接触位置で原稿Pと接触し、より具体的には本実施形態では二箇所の接触位置で原稿Pと接触する。
また、排出される原稿Pの幅方向の中心位置は、図3において一点鎖線Cで示されるが、この中心位置Cは、上記二箇所の接触位置つまり第1アーム部30aと第2アーム部30bとの間にあり、より具体的には上記二箇所の接触位置の中心に位置する。
【0045】
次に、押さえ部材30の回転動作について説明する。原稿受けトレイ40上に原稿Pがない場合、第1状態にある押さえ部材30は自重によって原稿受けトレイ40の上面に接している。この状態から原稿Pが原稿受けトレイ40に排出されると、押さえ部材30は原稿Pによって上方に押し上げられる。そして原稿Pが原稿受けトレイ40に完全に落下すると、それに伴って押さえ部材30は下方に下がり、原稿Pの上面に接した状態で回転が停止する。以降、原稿Pが排出される毎に押さえ部材30は上方への回転と下方への回転とを繰り返す。そしてまた原稿受けトレイ40上の原稿Pの堆積量が増えるに従って、押さえ部材30の回転停止位置は上方に移動する。以上の押さえ部材30の回転動作は、押さえ部材30の第1状態において行われる。
【0046】
以上の様に原稿排出装置10は、装置本体2に対して着脱可能であり、装置本体2に装着された状態で排出ローラー対17により排出される原稿Pを原稿受けトレイ40に向けて押さえる押さえ部材30を備える。押さえ部材30がない場合、排出ローラー対17により排出される原稿Pは、排出された後、排出される勢いにより回転つまり斜行を起こし易い。しかしながら上述の様に押さえ部材30を備える場合、押さえ部材30が排出される原稿Pを原稿受けトレイ40に向けて押さえることで、原稿Pの斜行を抑制でき、原稿受けトレイ40での原稿Pの整列性を向上させることができる。尚、原稿Pの回転つまり斜行は排出される原稿Pのサイドエッジを規制するサイドフェンスを設けることでも抑制できるが、例えばサイズが異なる原稿Pが混在している場合には小サイズ原稿をサイドフェンスによりガイドできない為、有効となる。
【0047】
そしてこの押さえ部材30は装置本体2から取り外しが可能である為、装置の保管時や輸送の際に押さえ部材30を取り外すことで、押さえ部材30の破損を回避できる。
そしてまたこの押さえ部材30は、装置本体2に装着された状態において、排出ローラー対17により排出される原稿Pに接触可能な第1状態と、排出ローラー対17により排出される原稿Pに接触しない位置まで上方に退避した第2状態とを切り換え可能である。従って普段の使用環境において押さえ部材30が不要な場合は、押さえ部材30を装置本体2から取り外すことなく第2状態にすることでユーザーの要求に沿うことができ、ひいてはユーザーの利便性を向上させることができる。例えば、ジャム処理を行う際に押さえ部材30を第2状態に切り換えることで、押さえ部材30が邪魔にならない状態とすることができる。
尚、本実施形態では原稿受けトレイ40に原稿Pが存在しない場合、押さえ部材30は原稿受けトレイ40の上面に接するが、原稿受けトレイ40に原稿Pが存在しない場合に、押さえ部材30が原稿受けトレイ40からある程度離間している様に構成しても良い。
【0048】
また原稿排出装置10は、図11を参照して説明した様に押さえ部材30の第2状態から第1状態への切り換わり動作に対し負荷を付与する負荷付与部31dを備える。これにより、ユーザーの意図に反して押さえ部材30が第2状態から第1状態に切り換わることを抑制でき、ユーザーの利便性がより一層向上する。
【0049】
また第1状態にある押さえ部材30は、原稿Pの排出方向と交差する方向である幅方向において複数の接触位置で原稿Pと接する。これにより、排出される原稿PのX-Y平面での回転つまり斜行を抑制できる。
【0050】
また押さえ部材30は、幅方向において二箇所の接触位置、具体的には第1アーム部30aと第2アーム部30bとにおいて原稿Pと接し、排出ローラー対17により排出される原稿Pの幅方向の中心位置Cは、二箇所の接触位置、つまり第1アーム部30aと第2アーム部30bとの間にある。この様な構成により、排出される原稿Pの回転つまり斜行をより効果的に抑制できる。
【0051】
以下、更に本実施形態の特徴について説明する。
押さえ部材30は、原稿Pの排出方向下流に向かって幅方向に拡がるとともに、幅方向の中央部30cが切り欠かれた形状を有する。この様な形状により、幅方向における広い領域で原稿Pを押さえることで排出される原稿Pの回転つまり斜行を効果的に抑制できる。そして押さえ部材30は、幅方向の中央部30cが切り欠かれた形状を有しているので、押さえ部材30の重量増加を抑制できるので、剛性の低い原稿Pを排出する際の座屈を抑制できる。
加えて押さえ部材30を第2状態に切り換えた際に、押さえ部材30が装置本体2を覆う面積を小さくでき、装置本体2の操作性の低下を抑制できる。以下、これについて更に説明する。
【0052】
図5図6図7に示す様に第2状態にある押さえ部材30の上端部は、高さ方向において操作パネル7の一部と重なる高さにある。そして図7に示す様に表示部7aの平面視では、押さえ部材30が操作パネル7の一部を覆い、特に表示部7aの下側の両角部と、操作ボタン7bの一部を覆っている。操作ボタン7bは、本実施形態では操作設定の状態を一つ前に戻す「戻る」ボタンである。
この様に押さえ部材30が第2状態をとると、押さえ部材30が操作パネル7の一部を覆うが、押さえ部材30は幅方向の中央部30cが切り欠かれた形状を有しているので、表示部7aを広い領域で覆うことがなく、操作性の低下を抑制できる。
【0053】
そして本実施形態において第2状態にある押さえ部材30は、表示部7aの平面視において表示部7aの一部を覆う位置にあって、表示部7aでの表示内容から外れた位置にある。ここでの表示内容とは、表示部7aに表示される、ユーザーに提供される文字や図形等の情報である。第2状態にある押さえ部材30は、表示部7aに表示される文字や図形等の情報から外れた位置にあるので、ユーザーによる表示部7aの視認を阻害することを抑制できる。
【0054】
また押さえ部材30は操作ボタン7bの一部を覆っているが、操作ボタン7bの一部を露呈させる位置にあり、操作ボタン7bを押下できる広さは確保されていて、操作ボタン7bは押下することができる状態である。これにより押さえ部材30が、ユーザーによる操作ボタン7bの押下を妨げることを回避できる。
また特に本実施形態では、押さえ部材30は操作設定の状態を一つ前に戻す「戻る」ボタンである操作ボタン7bの一部を覆うので、仮に押さえ部材30が操作ボタン7bの全部を覆い、操作ボタン7bの押下ができない状態でも、原稿Pの基本的な読み取り動作を行うことができる。押さえ部材30に覆われない様にする操作ボタンとしては、電源ボタン、スキャン実行ボタンなどが好適となる。
【0055】
また、表示部7aが所謂タッチパネルであり、各種設定操作を行う為のユーザーインターフェースが表示部7aに実現される場合にも同様に、原稿Pの基本的な読み取り動作を行う為のタッチ領域を押さえ部材30で覆わないか、或いは覆っても一部のみが覆われて、タッチ操作は可能である様に構成されることが好ましい。また逆に、押さえ部材30で覆われる領域を除く領域に、各種設定操作を行う為のユーザーインターフェースを実現することも好適である。
【0056】
尚、第2状態にある押さえ部材30の上端部が、高さ方向において操作パネル7の一部と重ならない高さとすれば、押さえ部材30が表示部7aの視認や複数の操作ボタンの操作を阻害することがない為、好適である。
また、第2状態にある押さえ部材30の上端部が、高さ方向において操作パネル7の一部と重なる位置にあっても、例えば押さえ部材30を透明な材料で形成することで、ユーザーの視認性を確保することができる。
【0057】
次に、図13において直線L1は、排出駆動ローラー17aと排出従動ローラー17bとの共通接線であり、即ち排出ローラー対17による原稿排出方向を示している。また符号30-1は原稿受けトレイ40上に原稿Pが無く、原稿受けトレイ40に接している押さえ部材30を示している。また符号30-2は原稿受けトレイ40上に最大積載高さの原稿Pが積載されている状態で、最上位の原稿Ptに接している押さえ部材30を示している。また、位置T1は排出ローラー対17により排出される原稿Pが原稿受けトレイ40に接する位置であり、位置T2は排出ローラー対17により排出される原稿Pが最上位の原稿Ptに接する位置である。尚、位置T2は、原稿積載量に従って共通接線L1上で変化する。
【0058】
図13に示す様に、共通接線L1は原稿Pの積載量に拘わらず押さえ部材30と交差しない。つまり原稿Pの積載量に拘わらず、排出ローラー対17により排出される原稿Pが押さえ部材30に接触する接触位置は、排出ローラー対17により排出される原稿Pが原稿受けトレイ40に接する位置T1または原稿受けトレイ40に積載された原稿Pのうち最上位の原稿Ptに接する位置T2より排出方向下流にある。
【0059】
これにより以下の作用効果が得られる。即ち排出ローラー対17により排出される原稿Pが、原稿受けトレイ40或いは原稿受けトレイ40に積載された原稿Pのうち最上位の原稿Ptに接するより前に押さえ部材30に接触すると、原稿Pが座屈し、ジャムとなる虞がある。しかしながら本態様によれば排出ローラー対17により排出される原稿Pが押さえ部材30に接触する接触位置は、排出ローラー対17により排出される原稿Pが原稿受けトレイ40に接する位置T1または原稿受けトレイ40に積載された原稿Pのうち最上位の原稿Ptに接する位置T2より排出方向下流にあるので、上記の様なジャムの発生を抑制することができる。
【0060】
次に、図13に示す様に押さえ部材30は、原稿Pの排出方向と交差する方向である幅方向から視て、原稿受けトレイ40と接する部位30fが原稿受けトレイ40に対し凸となる形状に形成されている。以下、押さえ部材30が原稿受けトレイ40と接する部位30fを、「トレイ接触部位30f」と称する。
トレイ接触部位30fは、本実施形態ではV字状に折り曲げられた形状を成しており、原稿受けトレイ40に対し凸となっている。これにより、以下の作用効果が得られる。即ち図3及び図4に示す様な原稿受けトレイ40の展開状態から、原稿受けトレイ40を縮小状態にする際、第2展開トレイ43や第3展開トレイ44が押さえ部材30に引っ掛かる虞がある。しかしながら押さえ部材30は、トレイ接触部位30fが原稿受けトレイ40に対し凸となる形状に形成されているので、上記の引っ掛かりを抑制できる。
尚、本実施形態においてトレイ接触部位30fはV字状に折り曲げられた形状を成しているが、これに限られずその他の形状、例えばU字状に折り曲げられた形状を有していても良い。
【0061】
次に、図12の最も右の図は、押さえ部材30が下方向の回転限度にある状態を示している。押さえ部材30の下方向への回転限度は、押さえ部材30に形成された当接部30gが、台座部31に形成された規制部としての操作部31cに当接することで規定される。この状態は、一例として装置本体2を持ち上げて移動させる場合に生じる。この場合、装置本体2を設置面に置く際に、押さえ部材30が装置の設置面に衝突し、上方向の外力Fcを受け、破損を招く虞がある。しかしながら下方向への回転限度にある押さえ部材30の下端部に対し鉛直上方成分を含む外力Fcを付与すると、図12から明らかな様に押さえ部材30が第2状態に向けて回転することとなる。これにより、上述の様な押さえ部材30の破損を抑制できる。
【0062】
また、押さえ部材30の下方向への回転限度が、当接部30gと、当接部30gが当接する規制部としての操作部31cとの当接により規定され、当接部30gが操作部31cに当接した状態で、図12の最も右の図で示す様に押さえ部材30が斜め下方向に向く傾斜姿勢をとる。これにより、下方向への回転限度にある押さえ部材30の下端部に鉛直上方成分を含む外力Fcが作用した際、押さえ部材30が第2状態に向けて確実に回転でき、上述の様な押さえ部材30の破損を確実に抑制できる。
【0063】
また下方向への回転限度にある押さえ部材30に対し、第2状態に向かう方向とは反対の方向に回転させる外力Fdを付与した場合にも、押さえ部材30の破損を招く虞がある。しかしながらそのような外力Fdを付与すると、押さえ部材30の一部である当接部30gが操作部31cに当接し、操作部31cに対し矢印Fbで示す様な外力を付与する。するとこれにより、図11を参照して説明した様にロック部31bによる押さえ部材30の固定が解除されるので、押さえ部材30が脱落することができ、その結果押さえ部材30の破損を抑制することができる。
【0064】
続いて押さえ部材の他の実施形態について説明する。図14及び図15は第2実施形態に係る押さえ部材50を示している。尚、以降の実施形態においては既に説明した構成と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
押さえ部材50は、第1アーム51と、第2アーム52とを備えて構成されている。第1アーム51は回転軸30dを中心に回転可能であり、第2アーム52は、幅方向に平行な軸線を有する回転軸53を介して第1アーム51に対し回転可能に連結されている。また、回転軸53には不図示の摩擦部材が設けられており、第1アーム51に対する第2アーム52の回転に対し摩擦力が生じる様に構成されている。従って第2アーム52は、ユーザーから外力が付与された際に回転する他は、前記摩擦力によって回転が規制された状態となっている。
【0065】
第1アーム51には、原稿受けトレイ40に対して凸となるトレイ接触部位51aが形成されており、第2アーム52にも同様に、原稿受けトレイ40に対して凸となるトレイ接触部位51aが形成されている。図14に示す様に第1アーム51と第2アーム52とが直線状になると、押さえ部材50は全体として原稿排出方向に最も長い状態となる。この状態では、第2アーム52のトレイ接触部位52aが原稿受けトレイ40に接し、或いは、排出される原稿Pに接する。
【0066】
また図14に示す状態から第2アーム52を図14の時計回り方向に回転させ、図15に示す状態とすると、押さえ部材50は全体として原稿排出方向に最も短い状態となる。この状態では、第1アーム51のトレイ接触部位51aが原稿受けトレイ40に接し、或いは、排出される原稿Pに接する。
【0067】
この様に押さえ部材50は、原稿Pの排出方向の長さを調整可能に構成されているので、原稿Pのサイズに応じて押さえ部材50が原稿Pを押さえる位置を調整することができ、適切に原稿Pを押さえることができる。
尚、本実施形態では、第1アーム51と第2アーム52の二つの部材で原稿Pの排出方向長さを調整する様に構成したが、三つ以上の部材で構成し、更に多段階に排出方向長さを調整する様に構成しても良い。
また或いは、例えば第2アーム52を第1アーム51に対し排出方向にスライド可能に設け、無段階で排出方向長さを調整可能に構成しても良い。
【0068】
次に、図16は第3実施形態に係る押さえ部材60を示している。押さえ部材60は、原稿Pと接触する接触部位61が、原稿Pとの間の摩擦係数が第1摩擦係数となる第1部位61aと、原稿Pとの間の摩擦係数が第1部位61aの第1摩擦係数より大きい第2摩擦係数となる第2部位61bとを備えている。接触部位61は、回転軸62を介して押さえ部材60に対して回転可能であり、回転することで、原稿Pと接触する部位と第1部位61aと第2部位61bとに切り換えることができる。尚、接触部位61と回転軸62との間には不図示の摩擦部材が設けられており、接触部位61は、ユーザーから外力が付与された際に回転する他は、前記摩擦部材の摩擦力によって回転が規制された状態となっている。
【0069】
この様に接触部位61は、原稿Pとの間の摩擦係数が第1摩擦係数となる第1部位61aと、第1摩擦係数より大きい第2摩擦係数となる第2部位61bとに切り換え可能であるので、原稿Pのサイズや種類等に応じて前記摩擦係数を切り換えることができ、適切に原稿Pを押さえることができる。
例えば、剛性が低く座屈し易い原稿Pの場合には、第1部位61aによって原稿Pを押さえ、ある程度の剛性があり座屈し難い原稿Pの場合には、第2部位61bによって原稿Pを押さえることが好適となる。
【0070】
次に、図17は第4実施形態に係る押さえ部材70を示している。押さえ部材70の上面には、錘71が、矢印a方向に変位可能に設けられている。錘71は、不図示の摩擦部材により押さえ部材70との間で摩擦力が生じる様に設けられており、ユーザーから外力が付与された際に変位する他は、前記摩擦部材の摩擦力によって変位が規制された状態となっている。錘71を変位させることで、押さえ部材70が原稿Pを押さえる際の押圧荷重を調整することができる。この様な構成により、原稿Pのサイズや種類等に応じて前記押圧荷重を調整することができ、適切に原稿Pを押さえることができる。
例えば、剛性が低く座屈し易い原稿Pの場合には、押圧荷重を小さくし、ある程度の剛性があり座屈し難い原稿Pの場合には、前記剛性が低く座屈し易い原稿Pを押さえる場合よりも相対的に押圧荷重を大きくすることが好適となる。
【0071】
本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、押さえ部材30の第1状態と第2状態とを検出する検出手段を設け、押さえ部材30が第1状態にある場合、第2状態にある場合よりも相対的に原稿排出速度を低速にすることも好適である。
また例えば本実施形態では、媒体排出装置をスキャナー1における原稿排出装置10として構成したが、これに限らず、媒体に記録を行う記録装置、例えばプリンターに適用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1…ドキュメントスキャナー、2…装置本体、3…下部ユニット、4…上部ユニット、6…給送口、7…操作パネル、7a…表示部、7b…操作ボタン、8…ペーパーサポート、10…原稿排出装置、11…原稿載置部、12A、12B…エッジガイド、14…給送ローラー、15…分離ローラー、16…搬送ローラー対、16a…搬送駆動ローラー、16b…搬送従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出駆動ローラー、17b…排出従動ローラー、18…排出口、19…筐体、19a…縁部、20…読取部、20A…上部読取センサー、20B…下部読取センサー、30…押さえ部材、30a…第1アーム部、30b…第2アーム部、30c…中央部、30d…回転軸、30e…当接部、30f…トレイ接触部位、30g…当接部、30h…凸部、31…台座部、31a…凹部、31b…ロック部、31c…操作部、31d…負荷付与部、32…固定部、40…原稿受けトレイ、41…ベーストレイ、42…第1展開トレイ、43…第2展開トレイ、44…第3展開トレイ、50…押さえ部材、51…第1アーム、52…第2アーム、53…回転軸、
60…押さえ部材、61…接触部位、61a…第1部位、61b…第2部位、62…回転軸、70…押さえ部材、71…錘、P、Pt…原稿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ユニットと、前記下部ユニットに対して回転する上部ユニットとを含む装置本体と、
前記上部ユニットと前記下部ユニットとの間に形成され、媒体を搬送するための斜め下向きに傾斜した媒体搬送経路と、
搬送される媒体を読み取る読取部と、
前記読取部によって読み取られた媒体を排出する媒体排出部
前記媒体排出部によって排出された媒体を受ける媒体受けトレイと、
前記媒体排出部によって排出された媒体を前記媒体受けトレイに向けて押さえる押さえ部材と、
を備え、
前記押さえ部材は、回転することにより、
前記媒体排出部から排出された媒体に接触可能な第1状態と、
前記媒体排出部から排出された媒体に接触しない位置まで上方に退避する第2状態と、
を切り換え可能である、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記押さえ部材は、前記装置本体が設置面に載置されたときに、前記設置面に接触する長さを有し、
前記押さえ部材の先端部が下回転限界に位置する状態で鉛直上方向の成分を含む外力が加えられたときに、前記押さえ部材が前記第2状態に向かって回転する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像読取装置において、
前記押さえ部材の回転を規制する規制部を備え、
前記押さえ部材は、前記装置本体に取り付けられ、前記規制部を含む台座部に取り付けられ、
前記押さえ部材は、前記台座部に対して回転するように構成され、前記規制部に当接する当接部を含み、前記当接部が前記規制部に当接すると、前記押さえ部材は、回転下限において斜め下方に傾斜するように規制される、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記媒体排出部により排出された媒体が前記押さえ部材に接触する接触位置は、前記媒体排出部により排出された媒体が前記媒体受けトレイに接触する位置よりも排出方向下流にある、
ことを特徴とする画像読取装置
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記押さえ部材は、媒体排出方向と交差する方向である幅方向において媒体と接触する2つの接触部を有し、前記媒体排出部により排出される媒体の幅方向の中心位置は、前記2つの接触部の間にある
ことを特徴とする画像読取装置
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記押さえ部材は、媒体排出方向と交差する方向である幅方向から視て、前記媒体受けトレイと接する部位が前記媒体受けトレイに対し凸となる形状に形成されている、
ことを特徴とする画像読取装置