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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098020
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電気刺激フィットネスウェア
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20240711BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A41D13/00 115
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079860
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2021537333の分割
【原出願日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2019144585
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019205746
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
(57)【要約】
【課題】美観や機能性を保ったフィットネスウェアを提供する。
【解決手段】電気刺激フィットネスウェアにおいて、複数の電極部30は、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置にて衣服部に設けられ、導電性高分子生地31で表面が形成される。複数の電気ケーブル36は、複数の電極部30のそれぞれと制御ユニットの接続部とを電気的に接続する。複数の電極部30は、第1の電気ケーブル36が接続された第1の電極部30と、第2の電気ケーブル36が接続された第2の電極部30と、を含み、第1の電極部30および第2の電極部30は、これらの電極間で所定の身体部位に通電し得るように分離した位置に設けられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に着用可能であって表裏を有する装身部と、
複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために前記複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう前記複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置にて前記装身部の裏面に設けられ、導電性高分子生地で表面が形成された複数の電極部と、
前記複数の電極部の電圧を制御する制御部と、
前記制御部と電気的に接続される接続部と、
を備え、
前記複数の電極部は、第1の電極部と、第2の電極部と、を含み、前記第1の電極部および前記第2の電極部は、これらの電極間で所定の身体部位に通電し得るように分離した位置に設けられ、
前記装身部は、上半身用の装身部と下半身用の装身部とを含むとともに、前記上半身用の装身部と前記下半身用の装身部のそれぞれに前記複数の電極部が設けられ、
前記装身部には、前記制御部として第1の制御部と第2の制御部が取り付けられ、
前記第1の制御部は、前記上半身用の装身部の前面に取り付けられ、
前記第2の制御部は、前記下半身用の装身部の前面、かつ、前記第1の制御部の鉛直線上以外の位置に取り付けられることを特徴とする電気刺激フィットネスウェア。
【請求項2】
前記第1の制御部は、前記上半身用の装身部の前面において人体の正中線を境とする左右のうち第1の側に取り付けられ、
前記第2の制御部は、前記下半身用の装身部の前面において人体の正中線を境とする左右のうち前記第1の側と異なる第2の側に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項3】
前記装身部は、身体に着用可能な伸縮性を有する衣服部であり、
前記複数の電極部のそれぞれと前記接続部とを電気的に接続する伸縮自在な複数の電線をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項4】
前記衣服部の少なくとも一部は、複数の生地が重なった複層構造を有するとともに、その複数の生地の間には周囲の少なくとも一部が縫製されて形成された閉塞空間を有し、
前記電線は、前記衣服部の伸縮に追随して伸縮し得る伸縮性を有することを特徴とする請求項3に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項5】
前記電極部は、前記装身部の裏面に着用者の肌に対向する位置に設けられたパッド部材と、そのパッド部材を覆う導電性高分子生地と、を含み、
前記電線は、前記装身部の生地を貫通して表裏を電気的に接続する接続具を介して前記導電性高分子生地に接続されることを特徴とする請求項4に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項6】
前記装身部において、前記上半身用の装身部と下半身用の装身部とを接続する接続具が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項7】
前記装身部の裏面に滑り止め部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【請求項8】
前記装身部の裏面側に前記複数の電線を保持する保持部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電気刺激フィットネスウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動用の衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の身体的運動に用いる運動器具として、例えば筋電気刺激装置がある。筋電気刺激装置は、筋肉に微弱な電流を流して筋肉を緊張および弛緩させることで、筋肉を運動させて筋力強化を図ることが期待される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-6644号公報
【特許文献2】スペイン国特許出願公開第1129005U号明細書
【特許文献3】特開2018-7699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の筋電気刺激装置を利用して全身の筋肉を同時に鍛えるために、各装置を身体に固定するためのフィットネス用衣類が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、従来のフィットネス用衣類の場合、筋電気刺激装置や多数の電気ケーブルが衣類から露出して美観を損ねていただけでなく、剥き出しの電気ケーブルの存在がユーザーの動きを制限してしまう場合があった。一方、導電性布部を生体用電極とする着用具も知られるが(例えば、特許文献3参照)、導電性布部の肌への接触面内を通電させるものである分、十分な通電量を確保するには導電性布部の面積を大きくとる必要があり、フィットネスウェアとして実現するにはウェアの形や動きが制約されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、美観や機能性を保ったフィットネスウェアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電気刺激フィットネスウェアは、身体に着用可能な衣服部と、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置にて衣服部に設けられ、導電性高分子生地で表面が形成された複数の電極部と、複数の電極部の電圧を制御する制御部と、制御部と電気的に接続される接続部と、複数の電極部のそれぞれと接続部とを電気的に接続する複数の電線と、を備える。衣服部の全部または一部は、複数の生地が重なった複層構造を有するとともに、その複数の生地の間には周囲の全部または一部が縫製されて形成された閉塞空間を有する。複数の電線は、第1の電線と第2の電線とを含むとともに、閉塞空間に配置され、複数の電極部は、第1の電線が接続された第1の電極部と、第2の電線が接続された第2の電極部と、を含み、第1の電極部および第2の電極部は、これらの電極間で所定の身体部位に通電し得るように分離した位置に設けられる。
【0007】
本発明の別の態様もまた、電気刺激フィットネスウェアである。この電気刺激フィットネスウェアは、身体に着用可能な伸縮性を有する衣服部と、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置に設けられた複数の電極部と、複数の電極部の電圧を制御する制御部と電気的に接続される接続部と、複数の電極部のそれぞれと接続部とを電気的に接続する伸縮自在な複数の電線と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、美観や機能性を保ったフィットネスウェアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運動制御システムの外観を示す図である。
図2】第1の運動プログラムと第2の運動プログラムにおける運動制御システムの構成を模式的に示す図である。
図3】第3の運動プログラムと第4の運動プログラムにおける運動制御システムの構成を模式的に示す図である。
図4】フィットネスウェアの外観を模式的に示す図である。
図5】フィットネスウェアのうち上半身用衣服部における電極の配置および配線を模式的に示す図である。
図6】フィットネスウェアのうち下半身用衣服部における電極の配置および配線を模式的に示す図である。
図7】衣服部、電極、電気ケーブルの配置および構造を示す部分拡大図である。
図8】衣服部、電極、電気ケーブル、制御ユニット、制御ユニット接続部の配置および構造を示す部分拡大断面図である。
図9】電気ケーブルの外観図である。
図10】電気ケーブルの裏地への接続部分および縫い付け部分を例示する部分拡大図である。
図11】電気ケーブルの構成を模式的に示す説明断面図である。
図12】樹脂モールドの内部構造を模式的に示す説明断面図である。
図13】制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。
図14】運動制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図15】上半身用衣服部の別の例を例示する図である。
図16】第2の実施の形態における衣服部、電極、電気ケーブル、制御ユニット、制御ユニット接続部の配置および構造を示す部分拡大断面図である。
図17】第2の実施の形態における制御ユニットと制御ユニット接続部の取付構造を示す図である。
図18】第2の実施の形態における取り違え防止構造を示す図である。
図19】第2の実施の形態における取り付け間違いの防止構造を示す図である。
図20】第1例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す図である。
図21】第1例の上半身用衣服部における電極の配置を模式的に示す図である。
図22】第1例の制御ユニットおよび電極における構成例を模式的に示す図である。
図23】第2例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す図である。
図24】第2例の制御ユニットおよび電極における構成例を模式的に示す図である。
図25】第3例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す図である。
図26】第4例の上半身用衣服部における電極のサイズと配置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
筋電気刺激装置のユーザーの中には、より本格的に、あるいはより効率的に、筋電気刺激装置を利用して全身の筋肉を同時に鍛えたいと考えるユーザーが少なからずいる。また、そのような全身の筋肉を同時に鍛えるための複数の筋電気刺激装置を利用した運動プログラムをフィットネスジムのような場所で複数人のユーザーに同時に提供することも考えられる。複数の身体的部位を対象に複数の装置を同時利用する場合、より簡単な手順で実行できるのが好ましい。また、運動に対するユーザーの動機や意欲を高めるためにも、運動プログラムの提供場所や用いる器具、フィットネスウェアの一つ一つに美観が求められる。しかしながら、従来のフィットネス用衣類の場合、筋電気刺激装置や多数の電気ケーブルが衣類から露出して美観を損ねていただけでなく、剥き出しの電気ケーブルの存在がユーザーの動きを制限してしまう場合があった。電気ケーブルがいくつも剥き出しとなる場合、一部に接触不良や断線が生じやすい問題もあった。また、筋電気刺激装置の配線が露出していると、複数ユーザーの同時使用時に配線をひっかけるおそれもある。そうした電気的部品の取り付けが必要となる上に衣類の着脱自体も第三者の手助けが必要な場合が多く、取り扱いに難があった。さらに、フィットネスジムのように多数のユーザーに運動プログラムを提供する環境ではウェアを繰り返し洗濯する必要があるが、従来のフィットネス用衣類ではそのまま洗濯することはできず、電気的部品を毎回着脱する必要があり煩雑であった。
【0011】
そこで、本実施の形態においては、美観や機能性を保ったフィットネスウェアを実現する。
【0012】
ある態様の電気刺激フィットネスウェアは、身体に着用可能な衣服部と、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置にて衣服部に設けられ、導電性高分子生地で表面が形成された複数の電極部と、複数の電極部の電圧を制御する制御部と、制御部と電気的に接続される接続部と、複数の電極部のそれぞれと接続部とを電気的に接続する複数の電線と、を備える。衣服部の全部または一部は、複数の生地が重なった複層構造を有するとともに、その複数の生地の間には周囲の全部または一部が縫製されて形成された閉塞空間を有する。複数の電線は、第1の電線と第2の電線とを含むとともに、閉塞空間に配置され、複数の電極部は、第1の電線が接続された第1の電極部と、第2の電線が接続された第2の電極部と、を含み、第1の電極部および第2の電極部は、これらの電極間で所定の身体部位に通電し得るように分離した位置に設けられる。
【0013】
ここでいう「制御部」は、取り外し可能な独立した制御ユニットであってよいし、固定的に「接続部」に取り付けられる制御装置であってもよい。「電線」は、被覆導線等で構成される電気ケーブルであってよいし、耐水性を有してもよい。電極部は、導電性高分子生地で表面が形成されることにより、衣服部から取り外すことなくそのまま衣服部の一部として洗濯が可能である。特に、銀等の金属を含有させた導電性繊維を用いる場合と比べて、酸化、腐食による導電性低下や金属アレルギー等の心配がない。第1の電極部と第2の電極部は、一方が陽極であり、他方が陰極であり、同じ対象身体部位に対向するように一定の距離を保って設けられて、これら電極部間に通電することで対象身体部位に電気刺激を与えることができる。特に電気刺激を与える身体部位の面積が比較的広い場合に、陰陽一対の電極が物理的に分離して別々の電線に接続されていることにより、ユーザーの体型や動きによって衣服部の生地が伸長するときもその伸長に追随して電極位置も離れたり移動したりすることができるため、電極そのものに伸縮性を持たせなくとも衣服部の伸縮に支障が出ることを防止できる。また、電線を衣服部から取り外すことなくそのまま衣服部の一部として洗濯が可能であり、閉塞空間に配置することで電線や電極を外部から見えなくしてフィットネスウェアの美観を保つことができる。さらに、電線に異物が接触したり伸縮が阻害されたりすることを抑制できる。
【0014】
別の態様の電気刺激フィットネスウェアは、身体に着用可能な伸縮性を有する衣服部と、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置に設けられた複数の電極部と、複数の電極部の電圧を制御する制御部と電気的に接続される接続部と、複数の電極部のそれぞれと接続部とを電気的に接続する伸縮自在な複数の電線と、を備える。
【0015】
ここでいう「電線」は、伸縮自在の弾性芯材の周囲に、芯線を樹脂で被覆して形成される1本または複数本の被覆導線が少なくとも螺旋状に巻き付けられて構成される伸縮自在の電気ケーブルであってよい。弾性芯材と螺旋状に巻かれた被覆導線が弾性芯材の長手方向に伸縮自在であり、その全長が例えば約1.4倍まで伸びることができる。このような電線は、耐水性と伸縮性を両立し得ることから、電線を衣服部から取り外すことなくそのまま衣服部の一部として洗濯が可能であるだけでなく、ユーザーの体型や動きによって衣服部の生地が伸長するときもその伸長に追随して電線も伸長することができ、衣服部の伸縮に支障が出ることを防止できる。また、衣服部の伸長率に合わせた長い電線を用いる必要がない分、衣服部の収縮時に余分の電線がユーザーの身体に当たることによる異物感を抑制できる。
【0016】
衣服部の少なくとも一部は、複数の生地が重なった複層構造を有するとともに、その複数の生地の間には周囲の少なくとも一部が縫製されて形成された閉塞空間を有してもよい。電線は、衣服部の伸縮に追随して伸縮し得る伸縮性を有するとともに、その一部が複数の生地の少なくともいずれかの所定の固定部に固定されてもよい。これにより、ユーザーの体型や動きによって衣服部の生地が伸長するときもその伸長に追随して電線も伸長することができるだけでなく、固定部により電線の一部が固定されるため、衣服部の生地の伸長によって電線が引っ張られても電極などから外れることを防止できる。また、これらの構造によって電線のメンテナンスの必要性を低減させることで、閉塞空間に配置しても問題がなく、電線や電極を外部から見えなくしてフィットネスウェアの美観を保つことができる。
【0017】
電極部は、衣服部における着用者の肌に対向する側に設けられたパッド部材と、そのパッド部材を覆う導電性高分子生地と、を含んでもよい。電線は、衣服部の生地を貫通して表裏を電気的に接続する接続具を介して導電性高分子生地に接続されてもよい。「接続具」は、スナップボタン等の金属製留め具であってよく、衣服部の生地と導電性高分子生地を挟み込む形で生地の表裏を電気的に接続してもよい。これにより、例えば複数の生地を重ねた複層構造で衣服部を構成する場合でも、複層構造の内部に電線を配線し、複層構造の外側、すなわち着用者の肌に対向する側に電極を設けても、これらを容易に電気的に接続できる。また、パッド部材を導電性高分子生地で覆って電極を構成することで、肌に接触する感触を良好に保ちながら、パッド部材により肌側に突出することで電極が肌から離れることを防止して接触状態を維持することができる。さらに、衣服部の生地が複層構造を有するため、衣服部をユーザーの身体にフィットさせたときに凸状の電極を介する分だけ裏地は変形し得るが、表地は変形が抑制され、フィットネスウェアの美観を保つことができる。
【0018】
衣服部は、上半身用の衣服と下半身用の衣服とを含むとともに、上半身用の衣服と下半身用の衣服のそれぞれに複数の電極部および複数の電線が設けられ、衣服部には、制御部として第1の制御部と第2の制御部が取り付けられ、第1の制御部は、上半身用の衣服前面において正中線を境とする左右のうち第1の側に取り付けられ、第2の制御部は、下半身用の衣服前面において正中線を境とする左右のうち第1の側と異なる第2の側に取り付けられてもよい。第1の制御部と第2の制御部は、上半身と下半身で分かれて設置されるとともに、正中線を挟んで左右に分かれた位置に設置されることから、身体を前屈したり大腿部ないし膝を上に持ち上げたりした場合でも、第1の制御部と第2の制御部が衝突して互いに干渉することを防止できる。また、制御部が第1の制御部と第2の制御部に分かれて独立させたことで、上半身への電気刺激の強度と下半身への電気刺激の強度を別々に設定することができる。
【0019】
本実施の形態においては、ユーザーが着用する電気刺激フィットネスウェアから電気刺激を与えられながら、電気刺激のパターンに合わせた指示の通りに自ら身体を動かすことで、筋電気刺激による不随意運動と、意識的に身体を動かす随意運動を組み合わせたハイブリッドトレーニングを実現する。ハイブリッドトレーニングでは、筋肉に電気刺激を与える間、その逆方向に意識的に筋肉を動かすことで、運動効果を高めることができる。例えば、電気刺激により肘を曲げる動き(不随意運動)をさせながら、意識的に腕を伸ばす力を加える(随意運動)運動を行う。これにより、通常の運動よりも短時間で効率的に筋力負荷を増大させることができる。
【0020】
ハイブリッドトレーニングによる運動プログラムとして、主に4つのパターンを説明する。第1の運動プログラムは、フィットネスジムなどの店舗において一人のユーザーが個別のディスプレイの映像またはインストラクターの指示にしたがって行う運動プログラムである。第2の運動プログラムは、家庭などの個人的な場所において一人のユーザーがディスプレイの映像による指示にしたがって行う運動プログラムである。第3の運動プログラムは、フィットネスジムなどの店舗において複数人のユーザーがグループトレーニングとして同時に同じ映像またはインストラクターの指示にしたがって行う運動プログラムである。第4の運動プログラムは、家庭などの個人的な場所にいる一人のユーザーが他の場所にいるユーザーとともにネットワーク経由で提供される同じ映像による指示にしたがって同期して行う運動プログラムである。特に第2および第4の運動プログラムにより、フィットネスジムのような特定の場所へ行かなくともフィットネスジムと同等の運動プログラムを実施することができ、時間や環境に縛られないトレーニングを実現できる。
【0021】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0022】
図1は、運動制御システムの外観を示す。本図では、主に第1の運動プログラムと第2の運動プログラムにおける運動制御システムを示す。運動制御システムは、一つまたは複数の運動制御装置12と一つまたは複数の表示装置とを備える。第1の運動プログラムにおける運動制御装置12は、フィットネスジム80に設置され、フィットネスジム80でトレーニングをするユーザー82に運動プログラムを提供する。図1ではフィットネスジム80において運動制御装置12aがユーザー82aに運動プログラムを提供し、運動制御装置12bがユーザー82bに運動プログラムを提供する例を示す。すなわち、運動制御装置12とユーザーが1対1の関係にある。運動制御装置12a,12bは、それぞれユーザーが着用するフィットネスウェア102a,102bに取り付けられた筋電気刺激装置と無線通信を介して接続し、筋電気刺激装置を制御する。また運動制御装置12a,12bは、それぞれミラーディスプレイ105a,105bに接続され、ミラーディスプレイ105a,105bの表示内容を制御し、お手本となる動きを示す映像を表示する。運動制御装置12a,12bは、インストラクター83a,83bによって操作される。インストラクター83a,83bは、運動制御装置12a,12bの近傍にてユーザー82a,82bへ指示や助言を口頭で伝えながら、手本となる動きを見せる。運動制御装置12a,12bは、ミラーディスプレイ105a,105bに表示するお手本となる動きの映像と、フィットネスウェア102a,102bの筋電気刺激装置への電圧印加を連動させることで、ハイブリッドトレーニングにおける随意運動と不随意運動の同期を実現する。
【0023】
運動制御装置12a,bは、それぞれスタンドアロンでもよいし、ネットワークを介して互いに連動してもよいし、インターネットなどのネットワークを介して運動制御管理サーバーに接続され、運動制御管理サーバーから受け取る指示に基づいて各ユーザーに運動プログラムを提供してもよい。運動制御装置12a,bは、複数人に対して個別に運動プログラムを提供するために各ミラーディスプレイ105に個別のタイミングで個別の内容を表示させる。
【0024】
一方、家庭などの個人スペースで実施する第2の運動プログラムにおける運動制御システムの場合、運動制御装置12cは、個人スペース81でトレーニングをするユーザー82に運動プログラムを提供する。図1は個人スペース81にいるユーザー82cにも運動プログラムを提供する例をさらに示す。個人スペース81で使用される運動制御装置12cは、フィットネスウェア102cに取り付けられた筋電気刺激装置と無線通信を介して接続し、筋電気刺激装置を制御する。運動制御装置12cは、ディスプレイを兼ねたタブレット端末等の電子機器である。
【0025】
なお、運動制御装置12a~cは、インターネットなどのネットワークを介して運動制御管理サーバーに接続され、運動制御管理サーバーから受け取る指示に基づいて各ユーザー82に運動プログラムを提供してもよい。運動制御装置12a~cは、複数人に対して個別に運動プログラムを提供するために各ミラーディスプレイ105や運動制御装置12cに個別のタイミングで個別の内容を表示させる。運動制御装置12a~cは、運動制御装置12と無線通信で接続しなくとも、例えば筋電気刺激装置が備えるボタンやリモートコントローラーの操作によって筋電気刺激装置の運動プログラムを開始ないし終了させることができてもよく、運動制御装置12からの指示なしに単独で運動プログラムを実施することもできる。
【0026】
なお、第3の運動プログラムにおいては、1台の運動制御装置12と1台の表示装置106によって複数人のユーザーが一斉に同じ運動プログラムの提供を受ける形となる。第4の運動プログラムにおける運動制御システムでは、さらにネットワーク経由で接続された運動制御装置12cが運動制御装置12に接続されて、同期しながら同じ運動プログラムの提供を受ける。
【0027】
図2は、第1の運動プログラムと第2の運動プログラムにおける運動制御システムの構成を模式的に示す。運動制御システム100は、複数のフィットネスウェア102と、複数の運動制御装置12と、複数のミラーディスプレイ105と、運動制御管理サーバー16と、を備える。フィットネスウェア102には、筋電気刺激装置としての複数の電極が内蔵され、制御ユニットが取り付けられる。図において、フィットネスウェア102a,102b、運動制御装置12a,12b、ミラーディスプレイ105a,105b、運動制御管理サーバー16は、フィットネスジム80において設置ないし使用されるものであり、そのうちフィットネスウェア102a,102bがユーザーに貸与される。これに対し、フィットネスウェア102c、運動制御装置12c(ディスプレイを兼ねる端末)は、個人スペース81において使用されるものであって、ユーザー自身が所有および使用する点で、フィットネスジム80で使用されるフィットネスウェア102a,102b、運動制御装置12a,12b、ミラーディスプレイ105a,105bとは相違する。
【0028】
フィットネスジム80において、フィットネスウェア102aと運動制御装置12a、フィットネスウェア102bと運動制御装置12bは、それぞれBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信17で接続される。運動制御装置12a,12bは、それぞれミラーディスプレイ105a,105bと有線ケーブルで接続される。例えばミラーディスプレイ105がモニターとパーソナルコンピューターを内蔵して構成される場合は、運動制御装置12a,12bはそのパーソナルコンピューターとLANケーブルやUSBケーブルなどの有線ケーブルで接続される。ミラーディスプレイ105がパーソナルコンピューターを内蔵せず実質的にモニターのみで構成される場合は、運動制御装置12a,12bはそのモニターとモニターケーブルなどの有線ケーブルで接続される。運動制御装置12a,12bは、運動制御管理サーバー16と有線通信または無線通信で接続される。なお、変形例として、各運動制御装置12はスタンドアロンで動作してもよいし、それぞれ運動制御管理サーバー16には接続するが連動はせずに個別に動作してもよい。本図の例では、フィットネスジム80に設置された1台の運動制御管理サーバー16がそのフィットネスジム80におけるすべての運動制御装置12を統括する。また、運動制御管理サーバー16がすべての運動制御装置12および筋電気刺激装置の動作を制御してもよい。また、運動制御管理サーバー16はフィットネスジム80の外、例えばインターネット上に設けられてもよい。
【0029】
個人スペース81において、フィットネスウェア102cと運動制御装置12cは、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信17で接続される。運動制御装置12cは、ディスプレイを兼ねるタブレット端末を例示するが、携帯電話などの情報端末であってもよいし、モニターに接続されたパーソナルコンピューターであってもよい。運動制御装置12cの変形例として、運動制御装置12a,12bと同等の機能を持つ専用の小型端末であってもよい。運動制御装置12cは、無線通信または有線通信によってネットワーク15に接続され、ネットワーク15を介して運動制御管理サーバー16に接続される。これにより、フィットネスジム80において実施される運動プログラムを個人スペース81においても実施できる。
【0030】
運動制御装置12とミラーディスプレイ105をセットとして、1セットまたは複数セットの装置がフィットネスジム80に設置される。これら1セットの装置を1人のユーザーが使用し、そのユーザーのために上下1セットのフィットネスウェア102が用意される。フィットネスウェア102は上半身用衣服部と下半身用衣服部を備える。フィットネスウェア102は、例えばユーザーの腹筋、脇腹、腕、脚、臀部などの各身体部位を対象として電気刺激を与えられるように各箇所の裏側(すなわち、ユーザーの肌に接触し得る側)に筋電気刺激装置の電極が設けられている。フィットネスウェア102の上半身用衣服部と下半身用衣服部のそれぞれに筋電気刺激装置の制御ユニットが取り付けられ、ユーザーの筋肉に電気刺激を与える。筋電気刺激装置は、複数の電極およびケーブルと制御ユニットを備え、制御ユニットはBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信により運動制御装置12と通信して情報を送受信する。制御ユニットは、上半身用衣服部と下半身用衣服部のそれぞれに取り付けられるが、変形例として上下合わせたフィットネスウェア102の全体に1つの制御ユニットが上半身用衣服部または下半身用衣服部に取り付けられて全身の電極への電気刺激付与を制御する仕様としてもよい。運動制御装置12との通信で実行開始が指示される運動制御プログラムが、筋電気刺激装置において電圧設定および動作を制御する。表示制御装置104は、運動制御装置12で実行される運動制御プログラムの指示にしたがい、表示装置106に運動の映像を表示する。
【0031】
運動制御装置12a,12bは、フィットネスジム80のインストラクターまたはユーザーにより操作される情報端末である。運動制御装置12a,12bは、フィットネスウェア102a,102bに設けられた筋電気刺激装置による電気刺激の強度設定や操作をフィットネスウェアごとの制御ユニットを介して制御する。運動制御装置12cは、個人スペース81においてユーザーにより操作される情報端末であり、フィットネスウェア102cに設けられた筋電気刺激装置による電気刺激の強度設定や操作を制御ユニットを介して制御する。
【0032】
ミラーディスプレイ105は、表示制御装置104、表示装置106、姿勢センサ107を含む。運動制御装置12a,12bは、運動プログラムの解説や動きの手本となる映像を表示制御装置104a,104bによる制御を介して表示装置106a,106bに表示させる。ただし、筋電気刺激装置との無線通信の遅延等も考慮し、筋電気刺激装置の制御パルスと完全に同期するタイミングで動きの映像を表示するのではなく、所定周期分を遅らせたタイミングで映像を表示させてもよい。姿勢センサ107a,107bは、ユーザーの動きを撮影できるカメラを含み、運動プログラムに合わせて運動を実行中のユーザーの映像を撮影する。その映像もしくはユーザーの動きの分析に基づく骨格の動きを再現した映像が表示制御装置104a,104bによって表示装置106a,106bに表示される。
【0033】
図3は、第3の運動プログラムと第4の運動プログラムにおける運動制御システムの構成を模式的に示す。上述の通り、第3の運動プログラムでは、フィットネスジム80において複数人のユーザーに対して同時に同じ運動プログラムを提供し、第4の運動プログラムではさらに個人スペース81におけるユーザーにもネットワーク経由で同期して同じ運動プログラムを提供する。第3の運動プログラムにおける運動制御システム100は、フィットネスジム80において複数人のユーザーに着用させる複数のフィットネスウェア102a,102bと、これら複数のフィットネスウェア102に通信で接続する1台の運動制御装置12、表示装置106、表示制御装置104、運動制御管理サーバー16、を備える。第4の運動プログラムにおける運動制御システム100は、さらに個人スペース81で使用されるフィットネスウェア102cおよび運動制御装置12cを備える。
【0034】
フィットネスジム80における運動制御装置12は、複数ユーザー分の複数の筋電気刺激装置のハブとして機能するため、インストラクターまたはユーザーは複数の筋電気刺激装置を個々に設定して操作するよりも運動制御装置12を操作して複数の筋電気刺激装置を一括制御する方が効率的である。また、複数ユーザー分の動作を同期させて一斉に同じプログラムで制御することができる。運動制御装置12は、運動プログラムの解説や動きの手本となる映像を複数の筋電気刺激装置の制御と同期させる形で、表示制御装置104を介して表示装置106に表示させる。あるいは、同時並行的に運動プログラムを提供するために同期を取りながら複数の表示装置106に同じ内容を表示させてもよい。また、運動制御装置12cは、無線通信または有線通信によってネットワーク15に接続され、ネットワーク15を介して運動制御管理サーバー16に接続される。運動制御装置12cは、フィットネスジム80における運動制御装置12と同時並行的に運動プログラムを提供するために同期を取りながら運動制御装置12cに同じ内容を表示させてもよい。これにより、フィットネスジム80において実施される複数のユーザーに対して提供される運動プログラムを、ほぼ同時に個人スペース81においても実施できる。ただし、個人スペース81にいるユーザー82cへの運動プログラムの提供はあくまでオプションであってよく、フィットネスジム80にいるユーザー82a,82bへの提供だけでも運動プログラムの実行は成立する。
【0035】
複数台の運動制御管理サーバー16が設置されて、それぞれが統括する複数の運動制御装置12および複数の筋電気刺激装置の動作が連動するように、複数の運動制御管理サーバー16が互いに有線通信または無線通信で接続されてもよい。複数台の運動制御管理サーバー16は、他のフィットネスジム80に設置された運動制御管理サーバーとネットワーク15を経由して接続されて連動してもよいし、または、これら複数の運動制御管理サーバーを統括するネットワーク15上の所定の管理サーバーと接続されてもよい。
【0036】
図4は、フィットネスウェアの外観を模式的に示す。フィットネスウェア102は、ユーザーが上半身に着用可能な上半身用衣服部120とユーザーが下半身に着用可能な下半身用衣服部122の組合せで構成される。上半身用衣服部120は、前開きの半袖上着であり、正中線に沿う位置に設けられる正面ファスナー130によって正面が開け閉めされる。上半身用衣服部120と下半身用衣服部122は、身体に着用可能な形状の生地であって電気的絶縁体の生地である化学繊維生地で形成された衣服であり、着用者の体型を問わず身体にフィットさせるのに必要な高い伸縮性を有する。上半身用衣服部120と下半身用衣服部122は、インナーウェアを特に着ることなしに地肌に直接着用する。上半身用衣服部120と下半身用衣服部122の裏面には複数の電極が設けられる。各電極の配置については後述する。右袖の外側には袖口から肩先にかけて右腕ファスナー131が設けられ、左袖の外側にも袖口から肩先にかけて左腕ファスナー132が設けられる。右腕ファスナー131および左腕ファスナー132を閉めることによって袖周りをより緊密に腕にフィットさせることができる。左右袖口の裏側には、袖口内周に沿って滑り止めのゴム材が取り付けられ、運動時における袖口の捲れや捲り上がりを抑制できる。右脇には裾から脇の下にかけて右脇ファスナー133が設けられ、左脇にも裾から脇の下にかけて左脇ファスナー134が設けられる。右脇ファスナー133および左脇ファスナー134を閉めることによって裾周りをより緊密に胴回りへフィットさせることができる。裾周りの裏側にも、裾周り内周に沿って滑り止めのゴム材が取り付けられ、運動時における裾の捲れや捲り上がりを抑制できる。右脚の外側には裾口から右腰に向かって右脚ファスナー135が設けられ、左脚の外側にも裾口から左腰に向かって左脚ファスナー136が設けられる。右脚ファスナー135および左脚ファスナー136を閉めることによって裾周りをより緊密に脚にフィットさせることができる。左右裾口の裏側にも、裾口内周に沿って滑り止めのゴム材が取り付けられ、運動時における裾口の捲れや捲り上がりを抑制できる。このように、上半身用衣服部120および下半身用衣服部122の各所にファスナーを設けることにより、ファスナーの締め付けと生地の伸縮性によって、衣服全体を万遍なく身体にフィットさせることができ、電極の肌への接触状態を良好に維持できる。また、各ファスナーの閉め度合い(開け度合い)を調整することにより、ユーザーの好みや体型に合わせて身体へのフィットの度合いを加減できる。
【0037】
上半身用衣服部120の右脇より前面側の位置に、上半身用制御ユニット124が取り付けられる。同様に、下半身用衣服部122の左脚の前面側の位置に、下半身用制御ユニット126が取り付けられる。上半身用制御ユニット124および下半身用制御ユニット126は、各電極へ印加する電圧を制御する。上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126は、上半身と下半身に分かれた独立のユニットとして外部に露出する形で取り付けられる。上半身と下半身で制御ユニットを分けることにより、上半身と下半身を別々の運動強度(設定電圧値)でトレーニングすることができ、またユーザーによっては上半身用の筋電気刺激装置と下半身用の筋電気刺激装置の一方のみを選択的に購入または使用することもできる。あるいは、上半身用制御ユニット124および下半身用制御ユニット126の起動時に近距離無線通信によってペアリングすることで連動させることもできる。その場合、上半身用制御ユニット124および下半身用制御ユニット126の一方を操作すれば他方も連動し、上半身用と下半身用の筋電気刺激装置を一括制御できる。上半身用制御ユニット124および下半身用制御ユニット126は、起動時に近距離無線通信によって運動制御装置12としての情報端末(携帯電話やタブレット端末等)とペアリングすることで、情報端末にインストールされた制御アプリケーションによる制御を受けることもできる。その場合、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126を別々に操作でき、または一括して操作することもできる。また、上半身用制御ユニット124および下半身用制御ユニット126は、正中線を挟んで左右に分かれた位置に取り付けられることから、身体前面において対角線上に位置する。したがって、身体を前屈したり大腿部ないし膝を上に持ち上げたりした場合でも、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126が衝突して互いに干渉することを防止できる。
【0038】
図5は、フィットネスウェアのうち上半身用衣服部における電極の配置および配線を模式的に示す。図5(a)は上半身用衣服部120の前面側を示し、図5(b)は上半身用衣服部120の背面側を示す。上半身用衣服部120は、生地の裏面に各電極が配置されるとともに、生地の少なくとも一部が表地と裏地が重ねられた複層構造を有し、表地と裏地の間に電気ケーブルが配線される。電気ケーブルは、耐水性と伸縮性を有する。電極と電気ケーブル等の配置および配線は、実際には外観には現れないため、破線で描いて説明する。
【0039】
上半身用衣服部120の裏面における電極の部位は、電気刺激を与えるべき対象身体部位に対応する複数箇所であり、例えばユーザーの腹筋、脇腹、腕などの各身体部位に対応する箇所である。各電極は、これらの電極間で所定の身体部位に通電し得るように分離した位置に設けられる。複数の電極は、それぞれ個別の電気ケーブル36によって第1制御ユニット接続部20aに電気的に接続される。第1制御ユニット接続部20aは、図4の上半身用制御ユニット124に対応する位置に設けられ、その第1制御ユニット接続部20aに上半身用制御ユニット124を取り付けたときに、第1制御ユニット接続部20aと上半身用制御ユニット124が電気的に接続される。各電極に接続された複数の電気ケーブル36は、伸縮性を有するとともに、各電極の手前で上半身用衣服部120に縫い付けられたケーブル留めテープ49に絡ませて位置固定することにより、上半身用衣服部120の伸縮に追随して電気ケーブル36が引っ張られた場合でも各電極から電気ケーブル36が外れるのを防止する。
【0040】
腹筋に対応する箇所には、腹直筋を左右に跨ぐ陰陽一対の電極として右に第1電極部30a、左に第2電極部30bが設けられ、それぞれ第1電気ケーブル36a、第2電気ケーブル36bを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加することで腹直筋に電気刺激を与える。第1電極部30aの手前には第1ケーブル留めテープ49aが縫い付けられ、第1電極部30aと第1制御ユニット接続部20aを接続する第1電気ケーブル36aを第1ケーブル留めテープ49aに絡ませて位置固定する。第2電極部30bの手前には第2ケーブル留めテープ49bが縫い付けられ、左の腹筋の第2電極部30bから左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第2電気ケーブル36bを第2ケーブル留めテープ49bに絡ませて位置固定する。
【0041】
右脇腹に対応する箇所には、右腹斜筋を前後に跨ぐ陰陽一対の電極として前面側に第3電極部30c、背面側に第4電極部30dが設けられ、それぞれ第3電気ケーブル36c、第4電気ケーブル36dを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加することで右の腹斜筋に電気刺激を与える。第3電極部30cの手前には第3ケーブル留めテープ49cが縫い付けられ、第3電極部30cと第1制御ユニット接続部20aを接続する第3電気ケーブル36cを第3ケーブル留めテープ49cに絡ませて位置固定する。第4電極部30dの手前には第4ケーブル留めテープ49dが縫い付けられ、背面側の第4電極部30dから右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第4電気ケーブル36dを第4ケーブル留めテープ49dに絡ませて位置固定する。
【0042】
左脇腹に対応する箇所には、左腹斜筋を前後に跨ぐ陰陽一対の電極として前面側に第5電極部30e、背面側には第6電極部30fが設けられ、それぞれ第5電気ケーブル36e、第6電気ケーブル36fを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加することで左の腹斜筋に電気刺激を与える。第5電気ケーブル36eは、前面側の左脇腹の第5電極部30eから背中を通って第4電極部30dに接続されることにより、その第4電極部30dを介して第1制御ユニット接続部20aに電気的に接続される。第5電極部30eの手前には第5ケーブル留めテープ49eが縫い付けられ、第5電気ケーブル36eを第5ケーブル留めテープ49eに絡ませて位置固定する。また、第5電気ケーブル36eは、第4電極部30dの手前に縫い付けられた第4ケーブル留めテープ49dにも絡ませて位置固定する。第6電極部30fの手前には第6ケーブル留めテープ49fが縫い付けられ、背面側の左脇腹の第6電極部30fから背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第6電気ケーブル36fを第6ケーブル留めテープ49fに絡ませて位置固定する。
【0043】
右腕に対応する箇所には、右の上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下から挟む陰陽一対の電極として上側(前面側)に第7電極部30g、下側(背面側)に第8電極部30hが設けられ、それぞれ第7電気ケーブル36g、第8電気ケーブル36hを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加することで右の上腕二頭筋および上腕三頭筋に電気刺激を与える。なお、第7電極部30gおよび第8電極部30hは、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下から挟む一方、電極サイズを必要以上に大きくはせず、第7電極部30gは上腕二頭筋の最も隆起した部分より前方向(肘方向)にずらした位置に配置し、第8電極部30hは上腕三頭筋の最も隆起した部分より後方向(肩方向)にずらした位置に配置している。これにより、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下からだけではなく前後からも挟むことができて配置の安定度を増すことができ、電気刺激の振動で両電極が筋肉の隆起部から同時に肩方向へずれてしまうのを防止できる。また、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下と前後の斜め対角線上に電気刺激を与えるため、各筋肉を比較的小さな面積の電極と小さな電力で効率よく筋肉に負荷を与えることができる。さらに、少ない数の電極と配線で上腕二頭筋および上腕三頭筋に電気刺激を与えることができ、腕の動作の妨げになることを抑制できる。第7電極部30gの手前には第7ケーブル留めテープ49gが縫い付けられ、第7電極部30gから前面側の右脇下を通って第1制御ユニット接続部20aへ配線される第7電気ケーブル36gを第7ケーブル留めテープ49gに絡ませて位置固定する。第8電極部30hの手前には第8ケーブル留めテープ49hが縫い付けられ、第8電極部30hから背面側の右脇下を通って第1制御ユニット接続部20aへ配線される第8電気ケーブル36hを第8ケーブル留めテープ49hに絡ませて位置固定する。
【0044】
左腕に対応する箇所には、左の上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下から挟む陰陽一対の電極として上側(前面側)に第9電極部30i、下側(背面側)に第10電極部30jが設けられ、それぞれ第9電気ケーブル36i、第10電気ケーブル36jを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加することで左の上腕二頭筋および上腕三頭筋に電気刺激を与える。なお、第9電極部30iおよび第10電極部30jは、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下から挟む一方、電極サイズを必要以上に大きくはせず、第9電極部30iは上腕二頭筋の最も隆起した部分より前方向(肘方向)にずらした位置に配置され、第10電極部30jは上腕三頭筋の最も隆起した部分より後方向(肩方向)にずらした位置に配置されている。これにより、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下からだけではなく前後からも挟むことができて配置の安定度を増すことができ、電気刺激の振動で両電極が筋肉の隆起部から同時に肩方向へずれてしまうのを防止できる。また、上腕二頭筋および上腕三頭筋を上下と前後の斜め対角線上に電気刺激を与えるため、各筋肉を比較的小さな面積の電極と小さな電力で効率よく筋肉に負荷を与えることができる。さらに、少ない数の電極と配線で上腕二頭筋および上腕三頭筋に電気刺激を与えることができ、腕の動作の妨げになることを抑制できる。第9電極部30iの手前には第9ケーブル留めテープ49iが縫い付けられ、第9電極部30iから前面側の左脇下を通って左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aに配線される第9電気ケーブル36iを第9ケーブル留めテープ49iに絡ませて位置固定する。第10電極部30jの手前には第10ケーブル留めテープ49jが縫い付けられ、第10電極部30jから背面側の左脇下を通って左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aに配線される第10電気ケーブル36jを第10ケーブル留めテープ49jに絡ませて位置固定する。
【0045】
第10電極部30jと第1制御ユニット接続部20aを接続する第10電気ケーブル36j、第9電極部30iと第1制御ユニット接続部20aを接続する第9電気ケーブル36i、第2電極部30bと第1制御ユニット接続部20aを接続する第2電気ケーブル36b、第5電極部30eと第4電極部30dを接続する第4電気ケーブル36d、第6電極部30fと第1制御ユニット接続部20aを接続する第6電気ケーブル36fの5本の電気ケーブル36は、背中の中央付近と右脇腹を通って背面側から前面側へ配線される。背中の中央付近においては、これら5本の電気ケーブル36を束ねるためのケーブル留めテープ59aが配置され、そのケーブル留めテープ59aによって5本の電気ケーブル36が背中の中央付近で束ねられる。ケーブル留めテープ59aは、上半身用衣服部120の背中中央付近に縫い付けられて固定されてもよい。
【0046】
以上のような配置および配線により、電気ケーブルを外部に露出することなく配線できる。また、上半身用制御ユニット124以外の構成は耐水性を有することから、上半身用制御ユニット124を外すだけで、電極部30や電気ケーブル36を外すことなくそのままフィットネスウェア102を洗濯することができる。なお、図においては上半身用衣服部120は主に男性用に電極が配置された例を示すが、女性用には電極の配置や大きさ等が異なってもよい。
【0047】
図6は、フィットネスウェアのうち下半身用衣服部における電極の配置および配線を模式的に示す。図6(a)は下半身用衣服部122の前面側を示し、図6(b)は下半身用衣服部122の背面側を示す。下半身用衣服部122は、生地の裏面に各電極が配置されるとともに、生地の少なくとも一部が表地と裏地が重ねられた複層構造を有し、表地と裏地の間に電気ケーブルが配線される。電気ケーブルは、耐水性と伸縮性を有する。電極と電気ケーブル等の配置および配線は、実際には外観には現れないため、破線で描いて説明する。
【0048】
下半身用衣服部122の裏面における電極の部位は、電気刺激を与えるべき対象身体部位に対応する複数箇所であり、例えばユーザーの脚や臀部などの各身体部位に対応する箇所である。複数の電極は、それぞれ個別の電気ケーブル36によって第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第2制御ユニット接続部20bは、図4の下半身用制御ユニット126に対応する位置に設けられ、その第2制御ユニット接続部20bに下半身用制御ユニット126を取り付けたときに、第2制御ユニット接続部20bと下半身用制御ユニット126が電気的に接続される。各電極に接続された複数の電気ケーブル36は、伸縮性を有するとともに、各電極の手前で下半身用衣服部122に縫い付けられたケーブル留めテープ49に絡ませて位置固定することにより、下半身用衣服部122の伸縮に追随して電気ケーブル36が引っ張られた場合でも各電極から電気ケーブル36が外れるのを防止する。
【0049】
右の前腿に対応する箇所には、右大腿四頭筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第11電極部30k、下部に第12電極部30lが設けられ、それぞれ第11電気ケーブル36k、第12電気ケーブル36lを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで右大腿四頭筋に電気刺激を与える。第11電気ケーブル36kは、右前腿の第11電極部30kから股を通って左前腿の第13電極部30mに接続されることにより、その第13電極部30mを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第11電極部30kの手前には第11ケーブル留めテープ49kが縫い付けられ、第11電気ケーブル36kを第11ケーブル留めテープ49kに絡ませて位置固定する。第12電気ケーブル36lは、右前腿の第12電極部30lから股を通って左前腿の第14電極部30nに接続されることにより、その第14電極部30nを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第12電極部30lの手前には第12ケーブル留めテープ49lが縫い付けられ、第12電気ケーブル36lを第12ケーブル留めテープ49lに絡ませて位置固定する。
【0050】
左の前腿に対応する箇所には、左大腿四頭筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第13電極部30m、下部に第14電極部30nが設けられ、それぞれ第13電気ケーブル36m、第14電気ケーブル36nを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで左大腿四頭筋に電気刺激を与える。第13電極部30mの手前には第13ケーブル留めテープ49mが縫い付けられ、第13電極部30mと第2制御ユニット接続部20bを接続する第13電気ケーブル36mと第11電気ケーブル36kを第13ケーブル留めテープ49mに絡ませて位置固定する。第14電極部30nの手前には第14ケーブル留めテープ49nが縫い付けられ、第14電極部30nと第2制御ユニット接続部20bを接続する第14電気ケーブル36nと第12電気ケーブル36lを第14ケーブル留めテープ49nに絡ませて位置固定する。
【0051】
右の腿裏に対応する箇所には、右の大腿二頭筋等のハムストリングスを上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第15電極部30o、下部に第16電極部30pが設けられ、それぞれ第15電気ケーブル36o、第16電気ケーブル36pを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで右の大腿二頭筋等のハムストリングスに電気刺激を与える。第15電気ケーブル36oは、右腿裏の第15電極部30oから股を通って左腿裏の第17電極部30qに接続されることにより、その第17電極部30qを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第15電極部30oの手前には第15ケーブル留めテープ49oが縫い付けられ、第15電気ケーブル36oを第15ケーブル留めテープ49oに絡ませて位置固定する。第16電気ケーブル36pは、右腿裏の第16電極部30pから股を通って左腿裏の第18電極部30rに接続されることにより、その第18電極部30rを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第16電極部30pの手前には第16ケーブル留めテープ49pが縫い付けられ、第16電気ケーブル36pを第16ケーブル留めテープ49rに絡ませて位置固定する。
【0052】
左の腿裏に対応する箇所には、左の大腿二頭筋等のハムストリングスを上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第17電極部30q、下部に第18電極部30rが設けられ、それぞれ第17電気ケーブル36q、第18電気ケーブル36rを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで左の大腿二頭筋等のハムストリングスに電気刺激を与える。第17電極部30qの手前には第17ケーブル留めテープ49qが縫い付けられ、左腿裏の第17電極部30qから左前腿の第2制御ユニット接続部20bを接続する第17電気ケーブル36qと第15電気ケーブル36oを第17ケーブル留めテープ49qに絡ませて位置固定する。第18電極部30rの手前には第18ケーブル留めテープ49rが縫い付けられ、左腿裏の第18電極部30rと左前腿の第2制御ユニット接続部20bを接続する第18電気ケーブル36rと第16電気ケーブル36pを第18ケーブル留めテープ49rに絡ませて位置固定する。
【0053】
右の臀部に対応する箇所には、右の大臀筋、中臀筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部外側の中臀筋付近に第19電極部30s、下部内側の大臀筋付近に第20電極部30tが設けられ、それぞれ第19電気ケーブル36s、第20電気ケーブル36tを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで右の大臀筋、中臀筋に電気刺激を与える。第19電気ケーブル36sは、右臀部の第19電極部30sから上臀部中央を通って左臀部の第21電極部30uに接続されることにより、その第21電極部30uを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第19電極部30sの手前には第19ケーブル留めテープ49sが縫い付けられ、第19電気ケーブル36sを第19ケーブル留めテープ49sに絡ませて位置固定する。第20電気ケーブル36tは、右臀部の第20電極部30tから上臀部中央を通って左臀部の第22電極部30vに接続されることにより、その第22電極部30vを介して第2制御ユニット接続部20bに電気的に接続される。第20電極部30tの手前には第20ケーブル留めテープ49tが縫い付けられ、第20電気ケーブル36tを第20ケーブル留めテープ49tに絡ませて位置固定する。
【0054】
左の臀部に対応する箇所には、左の大臀筋、中臀筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部外側の中臀筋付近に第21電極部30u、下部内側の大臀筋付近に第22電極部30vが設けられ、それぞれ第21電気ケーブル36u、第22電気ケーブル36vを介してこれらの電極間に下半身用制御ユニット126から電圧を印加することで左の大臀筋、中臀筋に電気刺激を与える。第21電極部30uの手前には第21ケーブル留めテープ49uが縫い付けられ、左中臀筋の第21電極部30uから左前腿の第2制御ユニット接続部20bを接続する第21電気ケーブル36uと第19電気ケーブル36sを第21ケーブル留めテープ49uに絡ませて位置固定する。第22電極部30vの手前には第22ケーブル留めテープ49vが縫い付けられ、左大臀筋の第22電極部30vから左前腿の第2制御ユニット接続部20bを接続する第22電気ケーブル36vと第20電気ケーブル36tを第22ケーブル留めテープ49vに絡ませて位置固定する。
【0055】
第11電極部30kと第13電極部30mを接続する第11電気ケーブル36kと、第12電極部30lと第14電極部30nを接続する第12電気ケーブル36lと、第15電極部30oと第17電極部30qを接続する第15電気ケーブル36oと、第16電極部30pと第18電極部30rを接続する第16電気ケーブル36pとを固定するためのケーブル留めテープ59bが下半身用衣服部122の股付近の生地に縫い付けられ、そのケーブル留めテープ59bによって4本の電気ケーブル36が束ねられて股付近に固定される。第19電極部30sと第21電極部30uを接続する第19電気ケーブル36sと、第20電極部30tと第22電極部30vを接続する第20電気ケーブル36tとを固定するためのケーブル留めテープ59cが下半身用衣服部122の上臀部中央付近の生地に縫い付けられ、そのケーブル留めテープ59cによって2本の電気ケーブル36が束ねられて上臀部中央付近に固定される。
【0056】
以上のような配置および配線により、電気ケーブルを外部に露出することなく配線できる。また、下半身用制御ユニット126以外の構成は耐水性を有することから、下半身用制御ユニット126を外すだけで、電極部30や電気ケーブル36を外すことなくそのままフィットネスウェア102を洗濯することができる。なお、図において下半身用衣服部122もまた主に男性用に電極が配置された例を示すが、女性用には電極の配置や大きさ等が異なってもよい。
【0057】
図7は、衣服部、電極、電気ケーブルの配置および構造を示す部分拡大図である。上半身用衣服部120および下半身用衣服部122は、それぞれの少なくとも一部が、表地34と裏地35が重ねられた複層構造を有する。裏地35の所定部位に、導電性高分子生地31で少なくとも外表面が形成された電極部30が設けられる。複数の電極部30は、複数の対象身体部位に電気刺激を与えるために複数の対象身体部位のそれぞれに近接し得るよう複数の対象身体部位のそれぞれに対向する位置に設けられる。電極部30は、上半身用衣服部120および下半身用衣服部122の裏地35における着用者の肌に対向する側に設けられたパッド部材32と、そのパッド部材32を覆う導電性高分子生地31とを含んで構成される。パッド部材32は、例えば直方体の発泡ゴムで形成され、このパッド部材32によって電極部30の全体形状である凸形状を形作る。導電性高分子生地31は、例えば絹等の繊維またはナイロン等の合成繊維にPEDOT-pTS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-p-トルエンスルホン酸)やPEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸)等の導電性高分子を付着および含浸させて形成される導電性繊維で編んだ生地である。導電性高分子生地31は、素材に金属を用いない分、洗濯耐久性も高い。特に、銀等の金属を付着または含有させた導電性繊維を用いる場合、酸化、腐食による導電性の低下やユーザーの体質によっては金属アレルギーを招くおそれがあるが、導電性高分子生地31にはそれらの心配がない。また、金属を付着させた導電性繊維を用いる場合、摩擦による剥離で導電性が低下するおそれがあるが、導電性高分子生地31にはその心配がない。パッド部材32を覆う導電性高分子生地31は、その周縁部が解れ防止のためのメローロック等の端部縫製処理が施された上で、図に示す電極縫製部40において裏地35に縫い付けられる。導電性高分子生地31で電極を構成することにより、従来の筋電気刺激装置の電極のようにジェルパッドを貼付することなく電極間に通電することができる。また、スプレー等で電極を濡らして軽く保水させれば、まだ汗をかいていない運動開始時であっても、さらに電極間の通電状態を安定させることができる。なお、導電性高分子生地31の繊維を起毛させることにより、導電性をさらに安定させてもよい。
【0058】
複数の電極部30には、電気ケーブル36が電極接続部33を介して接続される。例えば、陽極同士または陰極同士である複数の電極部30が電気ケーブル36で接続されるとともに、電極部30と制御ユニット接続部20が電気ケーブル36で接続される。電気ケーブル36は、裏地35を貫通して表裏を電気的に接続する電極接続部33を介して導電性高分子生地31に接続される。電極接続部33は、例えば凸形状の電極接続部33aを凹形状の電極接続部33bに嵌め込むことで電気的に接続できるスナップボタン等の金属製留め具である。凸形状の電極接続部33aは、電気ケーブル36の端部に形成される圧着端子38を挟む形で取り付けられる。凹形状の電極接続部33bは、電極部30の内部でパッド部材32に接触する位置にて導電性高分子生地31と裏地35を挟みながら裏地35を貫通することで、裏地35の表裏を電気的に接続するように取り付けられる。その凹形状の電極接続部33bに凸形状の電極接続部33aが嵌め込まれることで、電気ケーブル36が導電性高分子生地31に電気的に接続される。電気ケーブル36は、例えばケーブル留め位置41に設けられたケーブル留めテープ49に絡ませて位置固定する。
【0059】
電気ケーブル36の少なくとも一部と、電気ケーブル36と電極接続部33の接続部分は、それらの周囲の少なくとも一部における表地34と裏地35が縫い付けられて形成された閉塞空間に収められる。例えば、図7に示す生地間縫製部37の位置で表地34と裏地35が縫製されることで閉塞空間39が形成される。なお、本図においては構造を説明する都合上、表地34と裏地35を大きく離して描くが、実際には表地34と裏地35がより密着した状態で、生地間縫製部37の位置で表地34と裏地35が縫製されて閉塞空間39が形成される。また、「閉塞空間」の「閉塞」は必ずしも完全に密閉されている趣旨ではなく、少なくとも電気ケーブル36と電極接続部33の接続部分や電気ケーブル36が簡単に外部へ露出しない程度に周囲が縫製されて適度に閉じられた空間であれば足りる。また、「閉塞空間」の周囲には、電気ケーブル36を出し入れ可能なメンテナンス用の孔が設けられてもよい。以上のような構造により、第1電極部30aから第22電極部30vまでの各電極がフィットネスウェア102の各部位に設けられる。
【0060】
図8は、衣服部、電極、電気ケーブル、制御ユニット、制御ユニット接続部の配置および構造を示す部分拡大断面図である。電極部30の構造は図7と同様であるが、本図ではさらに制御ユニット128および制御ユニット接続部20の接続と、制御ユニット接続部20と電極部30の接続について説明する。制御ユニット128は、上半身用制御ユニット124または下半身用制御ユニット126であり、制御ユニット接続部20に取り付けられる。制御ユニット接続部20は、樹脂で形成された基板の端部にスナップフィット等の凸状留め具46が形成され、その凸状留め具46が制御ユニット128の端部に形成された凹部に嵌め込まれて制御ユニット128の一端側が制御ユニット接続部20に固定される。また、制御ユニット128の他端側はマグネットボタン45等の留め具により制御ユニット接続部20に固着される。制御ユニット接続部20の両端部は、平板縫製部79の位置で表地34に縫い付けられる。
【0061】
パッドコネクター44は、金属製の平板状の頭部とその頭部から突出した脚部を有し、その脚部が制御ユニット接続部20、電気ケーブル36の圧着端子38、ワッシャー42のそれぞれに設けられた各孔部を貫通し、これらを挟んだ状態で制御ユニット接続部20に固定される。これにより、制御ユニット接続部20の表裏を電気的に接続する。制御ユニット128の底面には、電極接続部33に対応する部位に金属製の弾性コンタクトである複数のスプリングコネクター43が複数箇所に設けられ、そのスプリングコネクター43がパッドコネクター44の平板状の頭部に押圧接触した状態で制御ユニット128が制御ユニット接続部20に取り付けられ、固定される。これにより、制御ユニット128が有する電源からスプリングコネクター43およびパッドコネクター44を介して電気ケーブル36に通電し、電気ケーブル36から電極接続部33を介して複数の電極部30へ電圧が印加される。電気ケーブル36は、例えば電極部30付近のケーブル留め位置41に設けられたケーブル留めテープ49に絡ませて位置固定する。
【0062】
図9は、電気ケーブルの外観図である。電気ケーブル36は、伸縮自在の電線であり、伸縮ケーブル部48と、両端に設けられた樹脂モールド47および圧着端子38で構成される。圧着端子38は、輪状平面型の金属端子であり、中央の穴に電極接続部33aやパッドコネクター44の脚部が通されてそれらと電気的に接続される。伸縮ケーブル部48は、樹脂で形成された伸縮自在の弾性芯材の周囲に、芯線を樹脂で被覆して形成される複数の被覆導線および複数の樹脂線材が交互に螺旋状に巻き付けられて構成されるとともに、被覆導線の両端が圧着端子38に接続され、その接続部が樹脂モールド47で覆われる。弾性芯材は、曲げても元に戻る弾性力を有する。図9(a)は電気ケーブル36が収縮した状態を模式的に示し、図9(b)は電気ケーブル36が伸長した状態を模式的に示す。電気ケーブル36が伸長した状態では、螺旋状の被覆導線間に隙間が広がり、その隙間から弾性芯材が部分的に外部へ露出し得る。電気ケーブル36は、弾性芯材と螺旋状に巻かれた被覆導線および樹脂線材が弾性芯材の長手方向に伸縮自在であり、その全長が例えば約1.4倍まで伸びることができる。したがって、比較的伸縮性の高いフィットネスウェア102の生地よりも伸長率が高く、ユーザーの体型や動きによってフィットネスウェア102が伸長しても、その伸長に追随して電気ケーブル36が引っ張られても、電気ケーブル36の伸長によってその引っ張りを十分に吸収でき、電気ケーブル36の破損や電極部30等から外れることを防止できる。樹脂モールド47の内部では、接着剤により圧着端子38および伸縮ケーブル部48の抜けが防止されるとともに、伸縮ケーブル部48の内部への浸水を防止する防水処理となる。伸縮ケーブル部48の被覆導線内にある芯線は圧着端子38に半田付けされる。電気ケーブル36は、その耐水性により、フィットネスウェア102から取り外さないままで洗濯可能である。そのため、表地34と裏地35の間に形成される閉塞空間39に配置でき、基本的に外部には露出せず、フィットネスウェア102の美観を損なわない。
【0063】
図10は、電気ケーブル36の裏地35への接続部分および縫い付け部分を例示する部分拡大図である。電気ケーブル36は、端部の圧着端子38が電極接続部33により挟まれることで、裏地35における電極部30の裏側に取り付けられる。電極接続部33の近傍に非伸縮性のテープ状合成繊維であるケーブル留めテープ49を配置し、その両端を裏地35に縫い付ける。電極接続部33からケーブル留めテープ49までの最短距離よりも迂回してケーブル長に余裕を持たせた状態(遊ばせた状態)で電気ケーブル36をケーブル留めテープ49に通して絡ませる。複数の電気ケーブル36は、電極部30と制御ユニット接続部20の間、または、電極部30と電極部30の間では、遊びが少ないようおおむね直線的に配線する一方、電極部30の周辺、すなわち電極接続部33からケーブル留めテープ49までの間は余裕を持たせて遊びを設けた配線とする。ユーザーが身体を動かしたときのフィットネスウェア102の伸長に電気ケーブル36が追随して引っ張られた場合でも、電気ケーブル36の伸縮性によってその吸収しつつ、その引っ張りをケーブル留めテープ49の部分で制止する。また、ケーブル留めテープ49自体が多少引っ張られても、電気ケーブル36の余裕部分(遊び部分)によってその引っ張りを吸収できるため、圧着端子38および電極接続部33へ必要以上の負荷がかからず、電気ケーブル36が接続部分から外れるのを防止できる。
【0064】
図11は、電気ケーブル36の構成を模式的に示す説明断面図である。本図は電気ケーブル36の各構成を概念的に説明するために描いた図にすぎないため、実際の断面形状とは異なり便宜的な形状で描いている。図11(a)は本実施形態における電気ケーブル36であり、主に1本の第1被覆導線93と1本の第2被覆導線94を含んで構成される電気ケーブル36を例示する。第1被覆導線93および第2被覆導線94は、導線85と、その導線85を樹脂で被覆した絶縁被覆86と、で構成される。弾性芯材95は、複数のゴム糸を撚って形成した伸縮自在の撚糸である。固定糸89は、第1被覆導線93および第2被覆導線94より細い糸であり、例えばナイロンなどの合成繊維の複数本の糸を撚って形成した撚糸である。弾性芯材95の周りに、第1被覆導線93と第2被覆導線94とが交互に並ぶように同じ巻き方向にて螺旋状に巻回する。また、第1被覆導線93と第2被覆導線94とが互いに接触することで、伸縮時に損傷するのを避けるために、間に固定糸89を介在させながら第1被覆導線93と第2被覆導線94を巻回する。さらに、第1被覆導線93と第2被覆導線94の巻回状態を維持しやすくするために、固定糸89を第1被覆導線93と第2被覆導線94の巻き方向と交差する方向に編み込みながら巻回する。これにより、電気ケーブル36が形成される。
【0065】
図11(b)は変形例における電気ケーブル36であり、主に2本の第1被覆導線93と2本の第2被覆導線94を含んで構成される電気ケーブル36を例示する。弾性芯材95の周りに、2本の第1被覆導線93と2本の第2被覆導線94を交互に、4本の固定糸89を介在させて編み込みながら螺旋状に巻回させて電気ケーブル36が形成される。
【0066】
図12は、樹脂モールド47の内部構造を模式的に示す説明断面図である。図12(a)は上方から見た断面図で、図12(b)は側方から見た断面図である。本図は外観に現れない内部構造も含めて概念的に説明するために描いた図にすぎないため、外観に現れない部分も便宜上、実線で描いている。圧着端子38は、丸形裸圧着端子であり、一端が略輪状に形成されたラケット型の平板部90と、その平板部90の他端に設けられた円筒状の電線固定部91で構成される。電線固定部91を通された電気ケーブル36の第1被覆導線93および第2被覆導線94は、その芯線が平板部90に半田付けされ(半田接合部98)、その半田接合部98の上から接着剤によって固着する(固着部99)。樹脂モールド47は、固着部99と第1被覆導線93および第2被覆導線94の端部と電線固定部91とを封止するように樹脂成形された封止成形部96と、電気ケーブル36の端部のうち封止成形部96によって封止されていない部分を包む円筒状の中空成形部97と、により構成され、全体としてペンキャップ状に形成される。
【0067】
ここで、電気ケーブル36に含まれる構成のうち、第1被覆導線93および第2被覆導線94を弾性芯材95とともに電線固定部91に通して固着および封止するのではなく、第1被覆導線93および第2被覆導線94だけを電線固定部91に通して固着および封止する。すなわち、弾性芯材95は封止成形部96ないし電線固定部91に届く手前の位置でカットされ、そのカット部分の付近で弾性芯材95と第1被覆導線93および第2被覆導線94の相対位置が芯材固定部92によって固定される。芯材固定部92は、弾性芯材95と第1被覆導線93および第2被覆導線94がズレるのを防止するための金具である。芯材固定部92は、樹脂モールド47には固定されず、中空成形部97の内部で遊動し得る。芯材固定部92は、あくまで弾性芯材95を第1被覆導線93および第2被覆導線94に固定するためのものであり、芯材固定部92から封止成形部96までの間にある第1被覆導線93および第2被覆導線94の伸縮に伴って、芯材固定部92以降の電気ケーブル36とともに中空成形部97の内部で遊動し得るにすぎない。芯材固定部92から封止成形部96までの間には弾性芯材95が届いていないものの、その間にある第1被覆導線93および第2被覆導線94を中空成形部97で囲んで保護することにより、その部分に外部から屈曲応力がかかって損傷することを防止することができる。電気ケーブル36は、図10で示したように電極部30の近くでケーブル留めテープ49に絡ませることで引っ張り応力を留めているため、芯材固定部92から封止成形部96までの間において第1被覆導線93および第2被覆導線94が過剰な引っ張り応力によって損傷することを防止することができる。
【0068】
図13は、制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。制御ユニット128は、電源部22、制御部28、無線通信部58を備える。電源部22、制御部28、無線通信部58は、制御ユニット接続部20に取り付け可能な形状の筐体に収められる。制御部28は、電源制御部50、通電検知部52、電気刺激制御部54、設定部56を含む。制御ユニット128としては、上半身用衣服部120に取り付けられる上半身用制御ユニット124と、下半身用衣服部122に取り付けられる下半身用制御ユニット126があり、それぞれ同じ構成を有する。ただし、変形例として、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126とで構成ないし形状に違いがあってもよい。
【0069】
制御部28の各ブロックは、ハードウェア的には、集積回路をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。図14の各ブロックについても同様である。
【0070】
電源部22は、リチウムイオン電池等の二次電池であるが、交換可能な一次電池であってもよい。電源部22は、無線通信部58としての無線通信モジュールと、制御部28としての制御回路に電気的に接続され、それぞれに電力を供給する。なお、制御ユニット128に電源ボタンが設けられてもよく、その電源ボタンの操作に応じて電源部22をオン/オフしてもよい。
【0071】
電源制御部50は、電源部22の充電を制御するとともに、充電状態を示す情報を無線通信部58を介して運動制御装置12へ送信する。通電検知部52は、電極間で通電可能であるかを検知するために、陽極と陰極の電極間で抵抗値を検出する。例えば上半身用制御ユニット124の通電検知部52は、腹筋に対応する第1電極部30aと第2電極部30bの間、右脇腹に対応する第3電極部30cと第4電極部30dの間、左脇腹に対応する第5電極部30eと第6電極部30fの間、右腕に対応する第7電極部30gと第8電極部30hの間、左腕に対応する第9電極部30iと第10電極部30jの間の抵抗値を検出する。下半身用制御ユニット126の通電検知部52は、右前腿に対応する第11電極部30kと第12電極部30lの間、左前腿に対応する第13電極部30mと第14電極部30nの間、右腿裏に対応する第15電極部30oと第16電極部30pの間、左腿裏に対応する第17電極部30qと第18電極部30rの間、右臀部に対応する第19電極部30sと第20電極部30tの間、左臀部に対応する第21電極部30uと第22電極部30vの間の抵抗値を検出する。通電検知部52は、検出した抵抗値が閾値未満の場合は通電可能として検知し、検出した抵抗値が閾値以上の場合は通電不可として検知する。
【0072】
電気刺激制御部54は、通電検知部52によって通電可能として検知されると、所定の動作時間(例えば10分)、所定の周期(例えば、周波数が20Hzとなる周期)で、陽極と陰極の電極間に設定電圧を印加する。すなわち、各電極が配置された箇所、例えばユーザーの腹筋、脇腹、腕部、脚部、臀部等に電気刺激を与える。設定部56は、所定の運動制御プログラムに沿って電気刺激制御部54により制御される電圧値およびその増減を設定する。設定電圧値は、例えば100段階の強度としていずれかの値が設定できる。運動制御プログラムは2種類のモードがあり、筋肥大を目的とする第1のモードでは主に20Hzの周波数で電気刺激を加え、有酸素運動を目的とする第2のモードでは主に20Hzより低い周波数(例えば4~10Hz)で電気刺激を加える。第1のモードは、例えば20Hzの周波数を基本とし、フィットネスウェア102からの電気刺激による不随意運動を中心に、筋肥大を目的としてゆっくりとした動作の随意運動のみを加えるレジスタンストレーニングに用いられる。第2のモードは、例えば4Hzの周波数を基本とし、フィットネスウェア102からの電気刺激による不随意運動にバイクトレーニングなどの随意運動を加えたハイブリッドトレーニングとして、カーディオトレーニングに用いられる。カーディオトレーニングは、スピード動作による無酸素運動やカロリー消費による脂肪燃焼を狙った有酸素運動である。設定部56には、無線通信部58から受け取る指示に基づいて動作する運動制御プログラムの他、単独で実行する運動制御プログラムも内蔵されており、無線通信を介して接続されたリモート制御ユニット(例えば、携帯電話などの情報端末と、その端末にインストールされた制御アプリケーション)を操作することで、その運動制御プログラムの実行を開始することもできる。
【0073】
無線通信部58は、近距離無線通信を介して運動制御装置12から設定電圧等の情報を受信して設定部56に送る。設定部56は、無線通信部58が運動制御装置12から設定電圧値の情報、あるいは、設定電圧値の増加や減少を指示する情報を受信した場合は、受信した情報に基づいて印加する設定電圧値を増減させる。例えば運動開始前の電圧値設定作業においては、設定電圧値の増減がなされるたびに、電気刺激制御部54は新たな設定電圧値にて電極間に電圧を印加することで、新たな設定電圧値、すなわち運動強度をユーザーに体感させ、確認させる。無線通信部58は、運動中、すなわち電圧印加中も運動強度の増減指示を運動制御装置12から受信した場合は増減された設定電圧の情報を設定部56に送り、設定部56は設定電圧値を増減する。ただし、接続中の運動制御装置12以外から運動強度の増減指示を受信しても無視し、他の装置からの運動強度の増減指示にはしたがわない。ユーザー以外の他者によって勝手に電圧値を増減されてしまうことを防止するためである。無線通信部58は、電気刺激制御部54による電圧印加状態、すなわち運動実行状態を示す情報を運動制御装置12へ送信してもよい。なお、制御ユニット128にはペアリングボタンを設けてもよく、そのペアリングボタンがオンされたときに無線通信部58が無線通信の接続を確立してもよい。変形例として、無線通信部58は、他の制御ユニットに含まれる無線通信部58と近距離無線通信を介してペアリングによる接続をしてもよい。すなわち、上半身用制御ユニット124の無線通信部58と下半身用制御ユニット126の無線通信部58とが無線接続し、一方が他方に設定電圧値等の情報を転送することで連動してもよい。この場合、例えば上半身用制御ユニット124の設定部56に電圧値が設定されれば、上半身用制御ユニット124の無線通信部58から下半身用制御ユニット126の無線通信部58に設定電圧値が転送される。
【0074】
図14は、運動制御装置12の機能構成を示すブロック図である。運動制御装置12は、制御部70、無線通信部71、有線通信部72、表示部74を含む。制御部70は、表示制御部61、設定処理部63、情報管理部65を含む。第1、2の運動プログラムは、制御ユニット128によって電圧を制御するとともに、その電圧制御に連動した映像表示を制御する運動制御プログラムによって実現される。第3、4の運動プログラムは、運動制御装置12によって複数ユーザーの複数の制御ユニット128に対して開始信号などの制御信号を一斉送信することで同期しながら電圧を制御するとともに、その電圧制御に連動した映像表示を制御する運動制御プログラムによって実現される。また、各ユーザーが表示装置106に表示された映像を手本として自らの身体を動かすことで運動プログラムが実施される。
【0075】
無線通信部71は、制御ユニット128との間で近距離無線通信により情報を送受信する。無線通信部71は、同時に複数のユーザーに対応する場合は、少なくとも人数分の制御ユニット128と一斉に通信する必要があるため、主に一方向のブロードキャスト通信を用いることとし、必要に応じてペアリングによる双方向通信を用いる。双方向通信の場合、制御ユニット128から受け取る情報には、ユーザー登録や個体管理に用いられる個体識別情報や一意のネットワークアドレス(MACアドレス)が含まれていてもよい。また、制御ユニット128から情報を受け取ることで、複数ユーザーの複数のフィットネスウェア102がそれぞれ電源オンとなっていることを把握する。表示部74は、液晶パネルや有機ELパネルなどのタッチパネル式表示装置であり、情報を画面に表示するとともに、ユーザーまたはインストラクターの操作入力を受け付ける。
【0076】
設定処理部63は、ユーザーまたはインストラクターによる表示部74への操作入力に基づいて制御ユニット128による制御内容を設定する。設定処理部63は、同時に複数のユーザーに対応する場合は、ユーザーごとに複数の制御ユニット128の制御内容を設定する。設定処理部63は、複数の身体部位に対してそれぞれ別個の制御内容を設定できてもよい。設定処理部63は、制御内容として筋電気刺激装置10による電気刺激の強度、すなわち100段階のうちいずれかのレベルの電圧値を設定する。設定処理部63は、無線通信部71を介して制御内容を示す情報をすべての制御ユニット128にブロードキャスト通信で送信することによりその制御ユニット128による運動を制御する。例えば、設定処理部63は運動開始信号、一時停止信号、終了信号、電圧値信号等を制御ユニット128へ送信することで制御ユニット128を制御する。一方、制御ユニット128における通信によるバッテリー消費を抑えるため、通信は最小限に留めるのが設計上好ましい。例えば、制御ユニット128に設定した電圧値や運動制御プログラムのデータは情報管理部65に記憶させることとし、制御ユニット128から電圧値の情報は取得しない。また、運動の終了信号の送受信はせずに、所定時間経過後に運動プログラムが終了したものとして判断する仕様でもよい。
【0077】
表示制御部61は、運動プログラムの実行状況、筋電気刺激装置10の設定状況および動作状況等に関する内容を表示部74に一覧表示する。この一覧表示には、通信経由で接続される個人スペース81におけるユーザーも含まれてよい。表示制御部61は、運動プログラムに基づいて表示装置106へ手本の映像等を表示させるために表示制御装置104へ運動プログラムの実行状況に関するデータを有線通信部72を介して送信する。表示制御部61は、人体モデルの画像を表示するとともに、筋電気刺激装置10の制御状態に合わせて電圧パルスのリズムや運動中の筋肉の動きを動的に示す映像を表示制御装置104を介して表示装置106に表示させる。
【0078】
図15は、上半身用衣服部の別の例を例示する。本図の上半身用衣服部220は、図5における上半身用衣服部120との間で、一部の電極の構成および配置が異なり、これに伴う電気ケーブル36、ケーブル留めテープ49の配置も異なる。まず、腹直筋に対応する電極としては、図5の上半身用衣服部120において左右の腹直筋に配置して水平方向に電気刺激を加える第1電極部30aと第2電極部30bに代えて、図15の上半身用衣服部220では左右の腹直筋のそれぞれに垂直方向に2個の電極を配置して垂直方向に電気刺激を加える。具体的には、右の腹直筋に対応する箇所には、右の腹直筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第1電極部230a、下部に第2電極部230bが設けられ、それぞれ第1電気ケーブル236a、第2電気ケーブル236bを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加する。第1電極部230aの手前には第1ケーブル留めテープ249aが縫い付けられ、第1電極部230aと第1制御ユニット接続部20aを接続する第1電気ケーブル236aを第1ケーブル留めテープ249aに絡ませて位置固定する。第2電極部230bの手前には第2ケーブル留めテープ249bが縫い付けられ、第2電極部230bと第1制御ユニット接続部20aを接続する第2電気ケーブル236bを第2ケーブル留めテープ249bに絡ませて位置固定する。左の腹直筋に対応する箇所には、左の腹直筋を上下に跨ぐ陰陽一対の電極として上部に第3電極部230c、下部に第4電極部230dが設けられ、それぞれ第3電気ケーブル236c、第4電気ケーブル236dを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加する。第3電極部230cの手前には第3ケーブル留めテープ249cが縫い付けられ、左の腹筋の第3電極部230cから左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第3電気ケーブル236cを第3ケーブル留めテープ249cに絡ませて位置固定する。第4電極部230dの手前には第4ケーブル留めテープ249dが縫い付けられ、左の腹筋の第4電極部230dから左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第4電気ケーブル236dを第4ケーブル留めテープ249dに絡ませて位置固定する。
【0079】
図15の上半身用衣服部220では、さらに左右の大胸筋のそれぞれにも、水平方向に2個の電極を配置して水平方向に電気刺激を加える。具体的には、右の大胸筋に対応する箇所には、右の大胸筋を左右に跨ぐ陰陽一対の電極として右に第5電極部230e、左に第6電極部230fが設けられ、それぞれ第5電気ケーブル236e、第6電気ケーブル236fを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加する。第5電極部230eの手前には第5ケーブル留めテープ249eが縫い付けられ、第5電極部230eと第1制御ユニット接続部20aを接続する第5電気ケーブル236eを第5ケーブル留めテープ249eに絡ませて位置固定する。第6電極部230fの手前には第6ケーブル留めテープ249fが縫い付けられ、第6電極部230fと第1制御ユニット接続部20aを接続する第6電気ケーブル236fを第6ケーブル留めテープ249fに絡ませて位置固定する。左の大胸筋に対応する箇所には、左の大胸筋を左右に跨ぐ陰陽一対の電極として右に第7電極部230g、左に第8電極部230hが設けられ、それぞれ第7電気ケーブル236g、第8電気ケーブル236hを介してこれらの電極間に上半身用制御ユニット124から電圧を印加する。第7電極部230gの手前には第7ケーブル留めテープ249gが縫い付けられ、左の大胸筋の第7電極部230gから左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第7電気ケーブル236gを第7ケーブル留めテープ249gに絡ませて位置固定する。第8電極部230hの手前には第8ケーブル留めテープ249hが縫い付けられ、左の大胸筋の第8電極部230hから左脇腹、背中、右脇腹を通って前面側の第1制御ユニット接続部20aへ配線される第8電気ケーブル236hを第8ケーブル留めテープ249hに絡ませて位置固定する。
【0080】
以上のようなフィットネスウェア102は、筋電気刺激装置10による不随意運動と、フィットネスバイクやスピンバイク等を使ったバイクトレーニングとして意識的に身体を動かす随意運動を組み合わせたハイブリッドトレーニングにおいても利用できる。第1および第2の運動プログラムとして、1台の運動制御装置12が1台のバイクと連携してユーザーごとにバイクトレーニングを実施してもよい。あるいは、第3および第4の運動プログラムとして、1台の運動制御装置12が複数のバイクと連携するグループトレーニングとして複数のユーザーが同じ映像を見ながら同じプログラムに沿ってバイクトレーニングを実施してもよい。バイクトレーニングと組み合わせたハイブリッドトレーニングにおける運動プログラムは、例えば4Hzの周波数によって筋肉に単収縮を生じさせながらバイクを漕ぐプログラムであり、プログラムの時間は例えば10分~30分である。
【0081】
バイクトレーニングでは、ペダリングにおいて膝や大腿部を高く上げることになるが、第1の制御部(上半身用制御ユニット124)と第2の制御部(下半身用制御ユニット126)が正中線を挟んで左右に分かれて設置されるため、第1の制御部と第2の制御部が衝突して互いに干渉することを防止できる。なお、下半身用衣服部122の臀部にある電極は、バイクのサドルに当たらない位置に設けることが好ましい。
【0082】
バイクと運動制御装置12を連携させるか、バイクに運動制御装置12を内蔵させることで、バイクトレーニングと筋電気刺激装置10による運動を連動させる。運動制御装置12の表示部74にはバイクによる運動強度と筋電気刺激装置10の強度を表示するようにしてもよく、これらの強度を複数のユーザー間でランキング形式で表示してもよい。ランキングとしては、総合順位の他、バイクの運動強度と筋電気刺激装置10の強度とを分けて別々に順位を表示してもよい。表示部74には、運動強度の他、カロリーや心拍数をさらに表示してもよい。これにより、ユーザー間の競争を促すことができるだけでなく、表示される客観的な情報によりインストラクターによる指導を容易にすることもできる。
【0083】
バイクの負荷調整機構を利用した負荷の制御と筋電気刺激装置10の強度の制御を連動させてもよい。あるいは、バイクの負荷制御はせずに、筋電気刺激装置10の電圧値だけで運動強度を調整するようにしてもよい。例えば、バイクの回転数が一定時間に所定回転数未満であれば筋電気刺激装置10の電圧値を強め、バイクの回転数が一定時間に所定回転数以上であれば筋電気刺激装置10の電圧値を弱める、といった調整をしてもよい。あるいは、ユーザーの心拍数が最大心拍数に対して所定割合未満であれば筋電気刺激装置10の電圧値を強め、心拍数が所定割合以上であれば筋電気刺激装置10の電圧値を弱める、といった調整をしてもよい。
【0084】
バイクのペダルに足裏用の電極部を設けて電圧を印加することで、足裏やふくらはぎへの電気刺激とバイクトレーニングを組み合わせたハイブリッドトレーニングを実現してもよい。
【0085】
サドルに座らずにペダルの上に立ったままペダルを漕ぐ、いわゆる「立ち漕ぎ」を検出した場合に、上半身(特に腕)への電気刺激の強度を落として安全性を高めてもよい。「立ち漕ぎ」の検出方法としては、例えば立ち漕ぎ時に握る専用グリップの接触センサ、ペダルの荷重変化を読み取るセンサ、サドルの着座センサ、等を設けてもよい。
【0086】
ペダリングの位置に応じて電圧印加する電極を切り替える制御により、ペダリングにより負荷がかかる筋肉にさらに負荷をかけることができる。この場合、ペダリングの位置検出としてペダルの荷重変化を読み取るセンサを用いてもよい。
【0087】
バイクに緊急停止ボタンが設けられている場合、その緊急停止ボタンが押されたときはバイクの負荷調整機構を一気に高負荷にしてブレーキをかけると同時に運動制御装置12が筋電気刺激装置10の電圧印加を停止させる制御をしてもよい。あるいは、運動制御装置12に筋電気刺激装置10による電圧印加を停止させる緊急停止ボタンを設け、その緊急停止ボタンが押されたときは電圧印加を停止させると同時に、連動するバイクの負荷調整機構を一気に高負荷にする制御をしてもよい。あるいは、ユーザーの心拍数に異常が検知された場合に、運動制御装置12が筋電気刺激装置10による電圧印加を停止させると同時に、連動するバイクの負荷調整機構を一気に高負荷にする制御をしてもよい。
【0088】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。そうした変形例を以下挙げる。
【0089】
変形例においては、複数の電極部30のそれぞれに個別に接続されて各電極部30に水分を送る複数の液送チューブを上半身用衣服部120と下半身用衣服部122の適所に設けてもよい。複数の液送チューブは、樹脂等で形成された細径の可撓性チューブ部材であり、一端が電極部30の導電性高分子生地31に接続され、他端が所定の液送ポンプおよび水タンクに接続される。複数の液送チューブは、電気ケーブル36と同様に各所に配置される。これにより、スプレー等を用いることなく電極部30の保水性を容易に維持することができる。
【0090】
変形例においては、第3の運動プログラムとしてのグループトレーニングを実施するフィットネスジム80の床に、例えば銀微粒子などの導電ペーストを用いた電極を印刷し、その電極に電圧を印加することで筋電気刺激装置を実現してもよい。この場合、運動プログラムにおいてユーザーがとる所定の姿勢時に身体の一部が接触し得る床の所定位置に電極を印刷する。例えば、アキレス腱を伸ばす運動や脚を前後に開いた状態で体を捻る運動をしながら足裏に電気刺激を受けてもよい。この電極に足が接触して通電したときに、電極周囲のLEDが点灯する仕様としてもよい。
【0091】
変形例においては、トレッドミルや踏み台昇降運動器具によって意識的に身体を動かす随意運動と筋電気刺激装置10による不随意運動を組み合わせたハイブリッドトレーニングにおいてフィットネスウェア102を利用してもよい。
【0092】
変形例においては、フィットネスウェア102に芳香剤等を格納する手段を設けてもよい。この場合、トレーニングの結果として発する汗等の匂いを緩和できる。フィットネスウェア102の素材として、通気性の低い素材(例えば、クロロプレンゴムやポリウレタン)を採用してもよい。この場合、発汗による運動効果の向上、通電性の安定化が図れる。逆に、フィットネスウェア102の素材として、通気性の高い素材を採用してもよい。この場合、洗濯や乾燥がしやすくなる。
【0093】
フィットネスウェア102の上半身用衣服部120と下半身用衣服部122とを接続する部品を設けてもよい。この場合、トレーニング時の衣服のずれが抑えられる。接続する位置としては、背骨を外した両背面でもよい。人体は前屈の可動範囲の方が広いため後方で接続する方が好ましい。ベルトや面ファスナー部位に目盛を設けてもよい。調整する際の目安になり、装着者以外が締め付けを行う場合にも操作しやすい。
【0094】
フィットネスウェア102における首元や肩などの首回りの部位、すなわちユーザーの耳ないし頭に近い部位に小型のスピーカーを装着または固定できるように、スピーカーの収納部や取付部を設けてもよい。スピーカーをフィットネスウェア102の首回りに取り外し可能に固定する手段として、例えばスナップ留め具、フック、面ファスナーなどを用いてもよく、これによりスピーカーの位置ズレや落下を防止できる。スピーカーを音声聴取容易な場所に設置することにより、フィットネスジムのような複数ユーザーが同時に運動をする環境においても、各ユーザーは隣接するユーザーからの音に邪魔されずに自身のトレーニングにおける音を聞きやすくなる。すなわち、各ユーザーが自身のトレーニングの内容や動作リズム、動作正否を他のユーザーの動作と勘違いせずに把握可能となる。
【0095】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態においては、主に、制御ユニット128を制御ユニット接続部20に固定するための構造が第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、共通点の説明を適宜省略する。
【0096】
制御ユニット128は、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126を含み、上半身用制御ユニット124を第1制御ユニット接続部20aに、下半身用制御ユニット126を第2制御ユニット接続部20bにそれぞれに取り付ける。ここで、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126は、それぞれ電気刺激を加える部位や制御が異なる。したがって、ユーザが誤って上半身用制御ユニット124を第2制御ユニット接続部20bに、下半身用制御ユニット126を第1制御ユニット接続部20aに取り付けてしまうことを防止する必要がある。そこで、上半身用制御ユニット124、下半身用制御ユニット126、第1制御ユニット接続部20a、第2制御ユニット接続部20bには、その取付構造において取り違えを防止する構造が設けられている。
【0097】
図16は、第2の実施の形態における衣服部、電極、電気ケーブル、制御ユニット、制御ユニット接続部の配置および構造を示す部分拡大断面図である。制御ユニット接続部20には、樹脂で形成された平板状の制御ユニット接続部20の端部に横長スリット状の凹部141を形成するための凹状留め具140が、表地34を挟む形でリベット143で取り付けられる。制御ユニット128は、その端部に、樹脂で形成された凸状留め具142が形成され、その凸状留め具142が凹状留め具140の凹部141に嵌め込まれて制御ユニット128の一端側が制御ユニット接続部20に固定される。また、制御ユニット128の他端側はマグネットボタン45等の留め具により制御ユニット接続部20に固着される。
【0098】
なお、制御ユニット128と制御ユニット接続部20は、電気的にはスプリングコネクター43がパッドコネクター44に接触することで接続されている。ここで、パッドコネクター44やマグネットボタン45、凹状留め具140等は表地34を挟む形で制御ユニット接続部20に固定されているため、フィットネスウェア102を着用したユーザーの動きによって表地34が引っ張られることでパッドコネクター44に位置ズレが生じるおそれがある。また、制御ユニット接続部20に撓みや歪みなどの変形圧力が加わるおそれもある。この点、スプリングコネクター43とパッドコネクター44は、嵌合接続ではなく接点接続であるため、パッドコネクター44の位置ズレや制御ユニット接続部20の変形といった動きを逃がすことができ、接続構造の破壊を予防することができる。また、スプリングコネクター43とパッドコネクター44の接続に弾力性を持たせていることから、制御ユニット128に外部から押圧力が加わってもその圧力を吸収できる。さらに、ユーザーの動きで制御ユニット128が制御ユニット接続部20から離れる慣性や遠心力が働いた場合でも、スプリングコネクター43の伸長力によりスプリングコネクター43とパッドコネクター44の電気的接続を維持することができる。
【0099】
図17は、第2の実施の形態における制御ユニット128と制御ユニット接続部20の取付構造を示す。制御ユニット接続部20の端部には、図示しない表地34を上から挟む形で凹状留め具140が2個のリベット143で取り付けられることにより、凹状留め具140が制御ユニット接続部20に取り付けられ、制御ユニット接続部20と凹状留め具140の間に凹部141が形成される。制御ユニット128の凸状留め具142が凹部141に嵌め込まれることにより、制御ユニット128が制御ユニット接続部20に固定される。
【0100】
図18は、第2の実施の形態における取り違え防止構造を示す。図18(a)は上半身用制御ユニット124の正面図であり、図18(b)は下半身用制御ユニット126の正面図であり、図18(c)は第1制御ユニット接続部20aの正面図であり、図18(d)は第2制御ユニット接続部20bの正面図である。図示する3本の1点鎖線のうち、中央鎖線150が上半身用制御ユニット124、下半身用制御ユニット126、第1制御ユニット接続部20a、第2制御ユニット接続部20bの中心を示す線である。
【0101】
ここで、図18(a)に示す上半身用制御ユニット124の凸状留め具142は、中央鎖線150から右寄りの位置に設けられており、その右端が右鎖線151に接し、左端は左鎖線152に接していない。上半身用制御ユニット124の取付先である、図18(c)に示す第1制御ユニット接続部20aの凹部141もまた、中央鎖線150から右寄りの位置に設けられており、その右端が右鎖線151に接し、左端は左鎖線152に接していない。
【0102】
図18(b)に示す下半身用制御ユニット126の凸状留め具142は、中央鎖線150から左寄りの位置に設けられており、その左端が左鎖線152に接し、右端は右鎖線151に接していない。下半身用制御ユニット126の取付先である、図18(d)に示す第2制御ユニット接続部20bの凹部141もまた、中央鎖線150から左寄りの位置に設けられており、その左端が左鎖線152に接し、右端は右鎖線151に接していない。
【0103】
このように、上半身用の制御ユニット128およびその制御ユニット接続部20のセットと、下半身用の制御ユニット128およびその制御ユニット接続部20のセットとで、凸部と凹部の設置位置を左右のどちらに寄せるかの違いを設けている。これにより、上半身用制御ユニット124を第2制御ユニット接続部20bに取り付けようとしても嵌め込むことができず、下半身用制御ユニット126を第1制御ユニット接続部20aに取り付けようとしても嵌め込むことができないため、取り違えを構造によって防止することができる。なお、上半身のセットである上半身用制御ユニット124と第1制御ユニット接続部20aに同じ色を施し、下半身のセットである下半身用制御ユニット126と第2制御ユニット接続部20bに同じ色、かつ、上半身のセットとは異なる色を施している。例えば、上半身用のセットを黒で彩色し、下半身用のセットをグレーで彩色する。このように、色彩によっても上半身と下半身で違いを出し、またセット同士には同じ色を施すことによっても取り違えを防止している。
【0104】
図19は、第2の実施の形態における取り付け間違いの防止構造を示す。図は上半身用制御ユニット124および第1制御ユニット接続部20aと下半身用制御ユニット126および第2制御ユニット接続部20bを上から見た平面図である。図示する通り、上半身用制御ユニット124、第1制御ユニット接続部20a、下半身用制御ユニット126、第2制御ユニット接続部20bは、それぞれの平面視の外形が真四角ではなく、台形に近い形状となっている。いずれも上辺と下辺が平行ではなく、向かって左の辺が右の辺より短い左右非対称の形状である。これにより、上半身用、下半身用ともに、ユーザーは左右の辺の長さの違い(取付時においてはユーザーから見て右の辺が左の辺より短いという違い)がある形状を記憶しておけば、誤って上下逆さまに制御ユニット接続部20へ取り付けようとすることを防止できる。また、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126とで形状を左右反転させるのではなく、左右同形状で統一したことにより、上半身用、下半身用ともに短い辺の側が同じとなり、混同して上下逆さまに制御ユニット接続部20へ取り付けようとすることを防止できる。なお、変形例における制御ユニット128および制御ユニット接続部20としては、台形以外の形状、例えば半円などの別の左右非対称の形状であってもよい。また、上下逆さまを防止するには、上半身用と下半身用とでおおむね対称的な同形状で統一されていればよく、その上でさらに上半身用と下半身用とで取り違えも防止するためには、例えば上半身用と下半身用の外形の一部分だけが異なるよう突起部または切欠部を設けることで上半身用と下半身用とを区別できるようにしてもよい。この場合、上半身用と下半身用の一方のみに突起部または切欠部を設けてもよいし、上半身用と下半身用の一方に突起部を設けて他方に切欠部を設けるようにしてもよい。あるいは、上半身用と下半身用とで、突起部または切欠部を設ける位置を変えることで両者を区別できるようにしてもよい。
【0105】
基本的な外形を上半身用と下半身用とで共通化したことにより、上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126は、凸状留め具142を有する台座部分を除いた本体部分を共通パーツとすることができる。同様に、第1制御ユニット接続部20aと第2制御ユニット接続部20bも凹状留め具140を除いた部分を共通パーツとすることができる。このように部品の共通化によって、コストの増大を抑制することができる。
【0106】
なお、図では上半身用制御ユニット124と第1制御ユニット接続部20aの全体を黒で彩色し、下半身用制御ユニット126と第2制御ユニット接続部20bの全体をグレーで彩色した例を説明した。変形例においては、例えば上半身用制御ユニット124と下半身用制御ユニット126は台座部分のみをそれぞれ黒またはグレーで彩色してもよい。また例えば、第1制御ユニット接続部20aと第2制御ユニット接続部20bは、凹状留め具140の部分のみを黒またはグレーで彩色してもよい。
【0107】
(電極および制御ユニットの構成例とその配置)
上記の第1の実施の形態において説明した電極および制御ユニットの構成例とその配置について、以下説明する。図5に示す上半身用衣服部120においては、陰陽一対の電極が5組配置される。これら電極対の間で通電することを想定し、電極対ごとに印加する電圧値を設定することにより、個別の電気刺激の強度を設定する。ここで、複数の電極対がすべて共通のグラウンドに接続される設計がなされた場合、電圧印加を意図する電極間以外の電極間にも人体を介して閉回路が形成され得るため、一つの電極対と他の電極対の間に大きな電位差が生じれば意図しない体内の経路で漏れ電流が流れるおそれがある。そこで、対として想定する電極間以外の電極間、特に漏れ電流の発生を防止すべき電極間に閉回路が形成されないようにグラウンドを分けた構成とする。そのために、電極構成とその配置に関する以下の4つのユニット構成例からいずれかを採用する。前提として、胴周りの電極群(第1電極部30a、第2電極部30b、第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30f)を「第1電極群」と呼び、腕周りの電極群(第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30j)を「第2電極群」と呼んで、これらを区別する。その上で、第1電極群と第2電極群の間に漏れ電流が生じることを回避するように構成する。なお、制御ユニットの構造としては、第1の実施の形態における図8のような構造を採用してもよいし、第2の実施の形態における図16~19のような構造を採用してもよい。
【0108】
(1)第1例
図20は、第1例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す。第1例では、第1電極群と第2電極群を同じ上半身用制御ユニット(第1上半身用制御ユニット124a)により制御するが、それぞれの基準電圧として別個のグラウンドを同じ第1上半身用制御ユニット124a内に設けて相互に内部で絶縁する。ただし、1つの第1上半身用制御ユニット124a内に別々のグラウンドを設けて相互に絶縁する一体型の制御ユニットを構成する場合、その第1上半身用制御ユニット124aのサイズは、図4に示す上半身用制御ユニット124や後述する他の構成例における制御ユニットのサイズの約2倍となり得る。
【0109】
図21は、第1例の上半身用衣服部における電極の配置を模式的に示す。図において実線で示す電極は上半身用衣服部120の前面側の裏地に配置された電極であり、破線で示す電極は上半身用衣服部120の背面側の裏地に配置された電極である。胴周りにおいて前面側に配置される第1電極部30a、第2電極部30b、第3電極部30c、および第5電極部30eと、背面側に配置される第4電極部30dおよび第6電極部30fとが第1電極群330を構成する。腕周りにおいて前面側に配置される第7電極部30gおよび第9電極部30iと、背面側に配置される第8電極部30hおよび第10電極部30jとが第2電極群332を構成する。
【0110】
ここで、胴周りにおいて腹直筋と腹斜筋は特に近接する部位であるため、対として意図しない隣接電極間で通電経路が形成されることを防止するために、対として意図しない隣接電極同士が同じ極性となるような配置とする。まず、腹直筋に配置する第1電極部30aと第2電極部30bは、一方が陽極で他方が陰極となる。例えば、第1電極部30aが陰極で、第2電極部30bが陽極である。陰極である第1電極部30aに隣接する第3電極部30cは第1電極部30aと同じ陰極の電極とし、第3電極部30cと対である第6電極部30fを陽極とする。また、陽極である第2電極部30bに隣接する第5電極部30eは第2電極部30bと同じ陽極の電極とし、第5電極部30eと対である第4電極部30dを陰極とする。
【0111】
各電極のサイズとしては、腹直筋用である第1電極部30aと第2電極部30bの縦幅および横幅を他の電極より大きくしてもよい。また、第1電極部30aと第2電極部30bを、男性用が女性用より大きなサイズとなるよう、男性用と女性用とで異なるサイズで構成してもよい。また、一般的に腹斜筋より腹直筋の方が隆起の度合いが大きく、腹斜筋用の電極は腹直筋用の電極より筋肉への当たり具合が小さくなることが考えられる。そこで、腹斜筋用である第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fのパッド部材の厚みを、腹直筋用である第1電極部30aおよび第2電極部30bのパッド部材の厚みより厚くする。例えば、腹斜筋用の電極におけるパッド部材の厚みは、腹直筋用の電極におけるパッド部材の厚みの約2倍であってもよく、腹直筋用の電極におけるパッド部材を2つ重ねた厚みであってもよい。同様に、両腕用である第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jのパッド部材の厚みを、腹直筋用である第1電極部30aおよび第2電極部30bのパッド部材の厚みより厚くする。例えば、両腕用の電極におけるパッド部材の厚みは、腹直筋用の電極におけるパッド部材の厚みの約2倍であってもよく、腹直筋用の電極におけるパッド部材を2つ重ねた厚みであってもよい。なお、図6に示される臀部用の電極である第19電極部30s、第20電極部30t、第21電極部30u、第22電極部30vのパッド部材の厚みは、他の電極、例えば第11電極部30k、第12電極部30l、第13電極部30m、第14電極部30n、第15電極部30o、第16電極部30p、第17電極部30q、第18電極部30rのパッド部材の厚みの約2倍、またはこれらのパッド部材を2つ重ねた厚みであってもよい。
【0112】
図22は、第1例の制御ユニットおよび電極における構成例を模式的に示す。第1上半身用制御ユニット124aは、腹直筋に配置される第1電極部30aおよび第2電極部30bへの印加電圧を制御する第1制御回路340と、腹斜筋に配置される第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fへの印加電圧を制御する第2制御回路342と、両腕に配置される第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jへの印加電圧を制御する第3制御回路344と、第1グラウンド350および第2グラウンド352と、を含んで一体的に構成される。腹直筋に配置される第1電極部30aおよび第2電極部30bと、腹斜筋に配置される第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fは、第1電極群330に含まれる。両腕に配置される第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jは、第2電極群332に含まれる。第1電極群330に含まれる各電極への印加電圧を制御する第1制御回路340および第2制御回路342は、第1グラウンド350に接続される。第2電極群332に含まれる各電極への印加電圧を制御する第3制御回路344は、第2グラウンド352に接続される。第1制御回路340、第2制御回路342、および第1グラウンド350の系統と、第3制御回路344および第2グラウンド352の系統とが、一つの第1上半身用制御ユニット124aの筐体内で分離して配置され、互いに電気的に絶縁される。このように、第1電極群330と第2電極群332とを共通のグラウンドに接続するのではなく、分離した別個のグラウンドにそれぞれを接続することにより、意図しない電極間、すなわち第1電極群330に含まれるいずれかの電極と第2電極群332に含まれるいずれかの電極との間に閉回路が形成されることによる漏れ電流の発生を防止することができる。
【0113】
(2)第2例
図23は、第2例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す。第2例では、第1電極群と第2電極群で制御ユニットを分け、それぞれの制御ユニット内に基準電圧としてのグラウンドを設置する。具体的には、各電極への印加電圧を制御する制御ユニットを、第1電極群を制御するための第2上半身用制御ユニット124bと第2電極群を制御するための第3上半身用制御ユニット124cとに分離する。第2上半身用制御ユニット124bは、図4の上半身用制御ユニット124や図20の第1上半身用制御ユニット124aと同様に右脇腹に設置され、第3上半身用制御ユニット124cは右腕前面側に設置される。第3上半身用制御ユニット124cは、腕周りに装着したときに邪魔にならない形状および大きさとすることが好ましく、例えば第2上半身用制御ユニット124bよりも小さいサイズにて構成される。第2上半身用制御ユニット124bは、図4に示す上半身用制御ユニット124と同じサイズの制御ユニットである。なお、電極の構成および配置は、第1例の図21に示される電極の構成および配置と同様である。
【0114】
図24は、第2例の制御ユニットおよび電極における構成例を模式的に示す。第2上半身用制御ユニット124bは、腹直筋に配置される第1電極部30aおよび第2電極部30bへの印加電圧を制御する第1制御回路340と、腹斜筋に配置される第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fへの印加電圧を制御する第2制御回路342と、第1グラウンド350と、を含む。第3上半身用制御ユニット124cは、両腕に配置される第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jへの印加電圧を制御する第3制御回路344と、第2グラウンド352と、を含む。腹直筋に配置される第1電極部30aおよび第2電極部30bと、腹斜筋に配置される第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fは、第1電極群330に含まれる。両腕に配置される第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jは、第2電極群332に含まれる。第1電極群330に含まれる各電極への印加電圧を制御する第1制御回路340および第2制御回路342は、第1グラウンド350に接続される。第2電極群332に含まれる各電極への印加電圧を制御する第3制御回路344は、第2グラウンド352に接続される。第1制御回路340、第2制御回路342、および第1グラウンド350の系統と、第3制御回路344および第2グラウンド352の系統とが、分離した別の制御ユニット内にそれぞれ配置され、互いに電気的に絶縁される。このように、第1電極群330と第2電極群332とを共通のグラウンドに接続するのではなく、分離した別個のグラウンドにそれぞれを接続することにより、意図しない電極間、すなわち第1電極群330に含まれるいずれかの電極と第2電極群332に含まれるいずれかの電極との間に閉回路が形成されることによる漏れ電流の発生を防止することができる。
【0115】
(3)第3例
図25は、第3例における上半身用衣服部および上半身用制御ユニットの外観を模式的に示す。第3例でもまた、第2例と同様に、第1電極群と第2電極群で制御ユニットを分け、それぞれの制御ユニット内に基準電圧としてのグラウンドを設置する。具体的には、各電極への印加電圧を制御する制御ユニットを、第1電極群を制御するための第4上半身用制御ユニット124dと第2電極群を制御するための第5上半身用制御ユニット124eとに分離する。第4上半身用制御ユニット124dは、図23の第2上半身用制御ユニット124bと同様に右脇腹に設置され、第5上半身用制御ユニット124eは、図23の第3上半身用制御ユニット124cと同様に右腕前面側に設置される。ただし、第4上半身用制御ユニット124dと第5上半身用制御ユニット124eとして、部品を共通化したユニットをそれぞれに用いることとし、製造コストの低減を図る。なお、第3例における電極の構成および配置は、第1例の図21に示される電極の構成および配置と同様である。
【0116】
第3例における制御ユニットおよび電極の構成例は、第2例の図24に示される制御ユニットおよび電極の構成例と同様である。すなわち、第4上半身用制御ユニット124dは、腹直筋に配置される第1電極部30aおよび第2電極部30bへの印加電圧を制御する第1制御回路340と、腹斜筋に配置される第3電極部30c、第4電極部30d、第5電極部30e、第6電極部30fへの印加電圧を制御する第2制御回路342と、第1グラウンド350と、を含む。第5上半身用制御ユニット124eは、両腕に配置される第7電極部30g、第8電極部30h、第9電極部30i、第10電極部30jへの印加電圧を制御する第3制御回路344と、第2グラウンド352と、を含む。第1制御回路340、第2制御回路342、および第1グラウンド350の系統と、第3制御回路344および第2グラウンド352の系統とが、分離した別の制御ユニット内にそれぞれ配置され、互いに電気的に絶縁される。このように、第3例においても、第1電極群330と第2電極群332とを共通のグラウンドに接続するのではなく、分離した別個のグラウンドにそれぞれを接続することにより、意図しない電極間、すなわち第1電極群330に含まれるいずれかの電極と第2電極群332に含まれるいずれかの電極との間に閉回路が形成されることによる漏れ電流の発生を防止することができる。
【0117】
(4)第4例
図26は、第4例の上半身用衣服部における電極のサイズと配置を模式的に示す。電極対ごとの電気刺激の強度としてユーザーが任意の強度を設定できる機能を省略した上で、意図しない電極間に漏れ電流が生じるような電位差が生じないような限定的な範囲で電圧を制御する。ここで、電極間に印加する電圧および流す電流が一定の場合、所定の臨界値に達するまでは、対となる電極同士の距離を大きくするほど電気刺激の体感強度は大きくなり、また、対となる電極の大きさを大きくするほど電気刺激の体感強度は大きくなる。その特性を利用し、第4例では少なくとも一部の電極間に印加する電圧値を他の構成例の場合より小さくする代わりに、体感強度が他の構成例の場合より大きくなるような電極の距離とサイズに調整することで、印加電圧を低減させながら体感強度を保つことができる。図26の各電極は、第1例の図21に示される各電極とほぼ同様の位置に配置されるが、それぞれ図21の各電極より幅が細く、面積が小さい分、体感強度が相対的に小さくなる方向に調整される一方、対となる電極間の距離が図21における対となる電極間の距離より広い分、体感強度が相対的に大きくなる方向に調整される。また、印加電圧の最大値が、第1例における最大値より小さい値に限定される。また、図26では、対となる電極間の距離とサイズをすべて調整した例を示したが、変形例として一部の対の電極は図21において対応する電極と同様の距離やサイズとなるように構成してもよい。なお、第4例では、制御ユニットを第1電極群用と第2電極群用とで分離せず、図4と同様に一体の制御ユニットで構成するとともに、グラウンドも分けず、単一のグラウンドに各電極が接続される。ただし、変形例においては、第1例と同様に制御ユニット内でグラウンドを分けて接続する構成としてもよいし、第2,3例と同様に制御ユニットを分けて構成してもよい。
【0118】
このように各電極間の電圧範囲を限定しながら電極間距離やサイズの調整によって体感強度が低下しないようにバランスをとる。これにより、意図しない電極間に漏れ電流が生じるような電位差が生じないような構成とする。なお、各電極間の印加電圧範囲、電極間距離、および電極サイズの組合せとしては、各要素を入れ替えた様々な組合せによる実験によって最適な組合せが求められる。
【0119】
なお、第1~4例においては、第1電極群330へ通電するタイミングと、第2電極群332へ通電するタイミングを別々のタイミングに分けることで相互に排他的に動作させ、通電タイミングが重複しないようにしてもよい。これにより、意図しない電極間に漏れ電流の経路が形成されるような大きな電位差が生じるのを防止してもよい。
【0120】
変形例として、図15に示されるような電極構成および配置にて実現してもよい。すなわち、左右の腹直筋のそれぞれに垂直方向に2個の電極を配置して垂直方向に電気刺激を加える形で電極およびその配置を構成してもよい。この場合の腹直筋の電極は、第1~4例と同様に第1電極群330に含まれる。一方、さらに左右の大胸筋のそれぞれにも、水平方向に2個の電極を配置して水平方向に電気刺激を加える形で電極およびその配置を構成してもよい。この場合の大胸筋の電極は、第1~4例と同様に第2電極群332に含まれるように構成してもよい。あるいは、第1電極群330および第2電極群332とは別の電極群に含まれるように構成し、第1電極群330および第2電極群332とは別のグラウンドに接続されるようにしてもよい。この場合もまた、第1電極群330や第2電極群332との間に漏れ電流が生じることを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、運動用の衣類に関する。
【符号の説明】
【0122】
10 筋電気刺激装置、 28 制御部、 30 電極部、 31 導電性高分子生地、 32 パッド部材、 36 電気ケーブル、 39 閉塞空間、 70 制御部、 102 フィットネスウェア。
図1
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