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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009805
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】初代細胞の遺伝子編集
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240116BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
A61K35/17
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150855
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2020524267の分割
【原出願日】2018-10-30
(31)【優先権主張番号】62/579,114
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/579,113
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520032608
【氏名又は名称】パクト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PACT PHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カイル マーティン ジャコビー
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス フランズソフ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー マンデル-キャッシュマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウイルスを介して送達することを使用せずに、ヌクレアーゼを介して初代細胞の遺伝子編集を行うための方法及び組成物を提供する。また、編集された初代細胞を用いた治療の方法を提供する。
【解決手段】以下を含む改変した細胞を提供する:外因性のヌクレオチド配列を含む環状ポリヌクレオチドであって、外因性のヌクレオチド配列は以下を含む:a)遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b)内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc)内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている、並びに、ここで、改変した細胞は実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変した細胞、前記改変した細胞は以下を含む:
外因性のヌクレオチド配列を含む環状ポリヌクレオチドであって、前記外因性のヌク
レオチド配列は以下を含む:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
;及び
c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド
配列、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレ
オチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するよ
うに配向されている、並びに、
ここで、前記改変した細胞は実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない。
【請求項2】
T細胞を含む改変した細胞、前記T細胞は以下を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記
TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及
び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、内因性のTCR-
アルファの遺伝子座位の中に組み込まれている、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベー
タのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及び前記第2
リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、各々のポリペプチド配列
をシングル・ポリペプチド(single polypeptide)として発現することができるように配向
されている、ここで、前記第2リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリ
ペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペプチド配列との間に位置する、
前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドは、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列がそれぞれ別個のポリペプチドを形成
するように、前記T細胞中で切断され得る切断可能なリンカーのポリペプチドである、こ
こで、前記別個のポリペプチドは一緒に会合して機能的なTCRを形成することができる、
ここで、前記改変した細胞は、実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない
、並びに、
ここで、内因性のTCR-ベータ遺伝子座位は破壊されている。
【請求項3】
請求項1に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は組み込まれたヌクレオチ
ド配列を更に含む、ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含む、前記組み込まれたヌクレオチ
ド配列は前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれている、並びに前記組
み込まれたヌクレオチド配列は、前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるよ
うに配向されている。
【請求項4】
請求項1~3に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、前記内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位内の規定したヌクレオチド配列を切断することができるヌクレ
アーゼ組成物を更に含む。
【請求項5】
T細胞を含む改変した細胞、前記T細胞は以下を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記
TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及
び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、内因性のTCRの
遺伝子座位の中に組み込まれている、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベー
タのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及び前記第2
リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、各々のポリペプチド配列
をシングル・ポリペプチド(single polypeptide)として発現することができるように配向
されている、ここで、前記第2リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリ
ペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペプチド配列との間に位置する、並びに
前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドは、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列がそれぞれ別個のポリペプチドを形成
するように、前記T細胞中で切断され得る切断可能なリンカーのポリペプチドである、こ
こで、前記別個のポリペプチドは一緒に会合して機能的なTCRを形成することができる。
【請求項6】
請求項5に記載の改変した細胞、ここで前記改変した細胞は、外因性のヌクレオチド配
列を含む環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチド配列は、以下を含
む:
a) 前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-
ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、並びに前記第1リンカー及び
前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、をコードするヌク
レオチド配列;
b) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及び
c) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに
前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前
記内因性のTCR遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、実質的にウイル
スを介した送達の構成成分を含まない。
【請求項8】
請求項5~7の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、前記
内因性のTCR遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断することができるヌクレ
アーゼ組成物を更に含む。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、第2
の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を更に含
む。
【請求項10】
請求項9に記載の改変した細胞、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、
以下からなる群より選択される前記遺伝子のコーディング領域における変異を含む:翻訳
されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から終止コ
ドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ酸から
別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation)。
【請求項11】
請求項9に記載の改変した細胞、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、
以下からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域における変異を含む
:前記遺伝子がコードするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmR
NA産物の安定性を変える変異。
【請求項12】
請求項9~11の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、前
記改変した細胞内の前記第2の規定したヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌク
レアーゼ組成物を更に含む。
【請求項13】
請求項4又は請求項8~12の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記ヌクレ
アーゼ組成物は、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドロー
ム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)フ
ァミリーのヌクレアーゼ又はその誘導体、転写活性化因子様エフェクター・ヌクレアーゼ
(Transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)又はその誘導体、ジンクフ
ィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)又はその誘導体、及びホーミング
・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)又はその誘導体からなる群より選択さ
れるヌクレアーゼを含む。
【請求項14】
請求項13に記載の改変した細胞、ここで、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、
Cas9ヌクレアーゼである。
【請求項15】
請求項4又は請求項8~14の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記ヌクレ
アーゼ組成物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。
【請求項16】
請求項4又は請求項8~14の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記ヌクレ
アーゼ組成物は、前記改変した細胞内で前記ヌクレアーゼを発現させることができるヌク
レオチド・ベクターを含む。
【請求項17】
請求項4又は請求項8~16の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記ヌクレ
アーゼ組成物は、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。
【請求項18】
請求項17に記載の改変した細胞、ここで、前記crRNAはガイドRNA(gRNA)を含む、ここ
で、前記gRNAは前記規定されたヌクレオチド配列に対して相補的である。
【請求項19】
請求項18に記載の改変した細胞、ここで、前記crRNA及び前記tracrRNAは、シングル
・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上にある。
【請求項20】
請求項18に記載の改変した細胞、ここで、前記crRNA及び前記tracrRNAは、別個のポ
リヌクレオチド上にある。
【請求項21】
請求項1~20の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列又はそのコードされたポリぺプチド配列の発現は、、前記
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は内因性のTCR遺伝子座位内の内因性プロモー
ターによって指示される。
【請求項22】
請求項1~20の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列又はそのコードされたポリぺプチド配列の発現は、、外因
性プロモーターによって指示される。
【請求項23】
請求項22に記載の改変した細胞、ここで、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロ
モーター、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウ
イルスに由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプ
ロモーターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモ
ーター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、U
bc、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモ
ーター、低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモー
ター・システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフ
ェン・コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【請求項24】
請求項1~23の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記遺伝子の少なくとも
一部をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列、又は前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配
列は、長さが100塩基以上である。
【請求項25】
請求項1~23の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記遺伝子の少なくとも
一部をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列、又は前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配
列は、長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上
、長さが1500塩基以上、長さが2000塩基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【請求項26】
請求項1~25の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、
長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項27】
請求項1~26の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列
は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、
長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項28】
請求項1~25の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
、及び前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位の第2
領域と同一のヌクレオチド配列は、それぞれ長さが600塩基以上である。
【請求項29】
請求項4又は請求項8~28の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記規定さ
れたヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列の組み込み後に破壊される。
【請求項30】
請求項1~29の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位と動作可能的に関連している内因性
の遺伝子の発現は、破壊される。
【請求項31】
相同組換え率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項1~30の何れ
か一項に記載の改変した細胞。
【請求項32】
請求項31に記載の改変した細胞、ここで、前記相同組換え率を増加させることができ
る追加の試薬は、相同組換え修復経路の活性化因子、非-相同末端結合(non-homologous e
nd joining)(NHEJ)修復経路の阻害因子、又はそれらの組み合わせを含む。
【請求項33】
改変した細胞の生存率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項1~3
2の何れか一項に記載の改変した細胞。
【請求項34】
請求項33に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞の生存率を増加させるこ
とができる追加の試薬が、核酸感知(nucleic acid sensing)経路の阻害因子を含む。
【請求項35】
請求項34に記載の改変した細胞、ここで、前記核酸感知(nucleic acid sensing)経路
は、以下から選択される群を含む:TLR9核酸感知(nucleic acid sensing)経路、AIM2核酸
感知(nucleic acid sensing)経路、IFI16核酸感知(nucleic acid sensing)経路、cGAS核
酸感知(nucleic acid sensing)経路、及び細胞質ゾル核酸感知(nucleic acid sensing)経
路。
【請求項36】
請求項34に記載の改変した細胞、ここで、前記核酸感知(nucleic acid sensing)経路
の阻害因子は、オリゴヌクレオチド・アンタゴニストを含む。
【請求項37】
請求項36に記載の改変した細胞、ここで、前記オリゴヌクレオチド・アンタゴニスト
は、配列TTAGGG又はそのタンデム・リピートを含む。
【請求項38】
請求項1~4の何れか一項又は請求項6~33の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記環状ポリヌクレオチドは、プラスミド又はナノプラスミドを含む。
【請求項39】
請求項38に記載の改変した細胞、ここで、前記プラスミドは、500塩基未満のベクタ
ー骨格を有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列ではない、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列ではない、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチ
ド配列ではない、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌク
レオチド配列ではない、第1の内因性のターゲット・ゲノム座位又は内因性のTCR遺伝子座
位と同一のヌクレオチド配列ではない、及び第2の内因性のターゲット・ゲノム座位又は
内因性のTCR遺伝子座位と同一のヌクレオチド配列ではない、ヌクレオチド配列である。
【請求項40】
請求項1~4の何れか一項又は請求項6~39の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記環状ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌク
レオチドではない。
【請求項41】
請求項1~40の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、コーディング領域(coding regio
n)を含む。
【請求項42】
請求項1~40の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、イントロンを含む。
【請求項43】
請求項1~42の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、前記T細胞レセプター(TCR)-アル
ファ遺伝子座位を含む。
【請求項44】
請求項43に記載の改変した細胞、ここで、前記第2の規定されたヌクレオチド配列が
コードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-ベータ遺伝子である。
【請求項45】
請求項1~42の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、前記TCR-ベータ遺伝子座位を含
む。
【請求項46】
請求項45に記載の改変した細胞、ここで、前記第2の規定されたヌクレオチド配列が
コードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-アルファ遺伝子である。
【請求項47】
請求項1~4の何れか一項又は請求項9~42の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記内因性のゲノム・ターゲットは、免疫チェックポイント遺伝子座位を含む。
【請求項48】
請求項47に記載の改変した細胞、ここで、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、
PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【請求項49】
請求項1~4の何れか一項又は請求項9~48の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む。
【請求項50】
請求項49に記載の改変した細胞、ここで、前記リンカー配列は、切断可能なリンカー
のポリペプチド配列をコードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリ
ペプチドは切断されて、前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプ
チドが産生される。
【請求項51】
請求項50に記載の改変した細胞、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチドの
何れか1つは、フリン切断部位を含む。
【請求項52】
請求項5~51の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記リンカー配列の何れ
か1つは、以下からなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribo
some skipping element)を含む:T2A、E2A、P2A、及びF2A。
【請求項53】
請求項5~52の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記切断可能なリンカー
のポリペプチドの何れか1つは、Gly-Ser-Glyリンカーを含む、任意選択的に、ここで、前
記Gly-Ser-Glyリンカーは、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skippin
g element)のN末端にある、及び任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、N
末端からC末端の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリンカー:2Aリボソーム・スキッ
ピング・エレメント(ribosome skipping element)、の並びの中にある。
【請求項54】
請求項49に記載の改変した細胞、ここで、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポ
リペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配
列をコードするヌクレオチド配列は、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome ent
ry site)(IRES)を含む。
【請求項55】
請求項49に記載の改変した細胞、ここで、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポ
リペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配
列をコードするヌクレオチド配列は、外因性のプロモーターを含む。
【請求項56】
請求項5~55の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記リンカー配列、前記
第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーの
ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、スプライス・アクセプター配列を含
む。
【請求項57】
請求項5~56の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記遺伝子の少なくとも
一部、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列は、シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド
配列を含む、ここで、前記シグナル・ペプチドは、遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-ア
ルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の
少なくとも一部がコードするポリペプチド、に動作可能的に連結している。
【請求項58】
請求項57に記載の改変した細胞、ここで、前記シグナル・ペプチドは外因性のシグナ
ル・ペプチドである、任意選択的に、ここで、前記外因性のシグナル・ペプチドはヒト成
長ホルモンのシグナル・ペプチドである。
【請求項59】
請求項5~58の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記第1リンカーのポリ
ペプチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチド配列は、同じリンカーのポリペプチド
配列を含む。
【請求項60】
請求項59に記載の改変した細胞、ここで、同じリンカーのポリペプチド配列をコード
する、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リ
ンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(codon div
erged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記第1リンカーのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌクレオ
チド配列は、互いに対してコドンが異なる(codon diverged)。
【請求項61】
請求項1~4の何れか一項又は請求項9~56の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding region)をコードする
【請求項62】
請求項61に記載の改変した細胞、ここで、前記コーディング領域(coding region)は
、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能
を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免疫
チェックポイント阻害因子。
【請求項63】
請求項1~4の何れか一項又は請求項9~56の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、ノン-コーディング領域(non-coding region)をコ
ードする。
【請求項64】
請求項63に記載の改変した細胞、ここで、前記ノン-コーディング領域(non-coding r
egion)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を調節する因
子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、及びT-
細胞の機能を促進する因子。
【請求項65】
請求項1~4の何れか一項又は請求項9~56の何れか一項に記載の改変した細胞、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部はTCR遺伝子の少なくとも一部を含む。
【請求項66】
請求項65に記載の改変した細胞、ここで、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下
を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及び
c) 第2リンカー配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項67】
請求項5~66の何れか一項に記載の改変細胞、ここで、前記TCR-アルファのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードす
るヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列は、以下からなる群より選択される:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップを
したTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステイン
を有するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)
、配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability
element)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセ
プター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部。
【請求項68】
請求項5~67の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記TCR-アルファのポリ
ペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一
部がコードするポリペプチドは、操作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較し
て第2の外因性のTCRポリペプチド配列と、より強く相互作用する、任意選択的に、ここで
、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、操作
した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較して互いにより強く相互作用する。
【請求項69】
請求項5~68の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記コードされたポリぺ
プチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-
ベータ、の並びの中にある。
【請求項70】
請求項5~68の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記コードされたポリぺ
プチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-ア
ルファ、の並びの中にある。
【請求項71】
請求項1~70の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記遺伝子の少なくとも
一部、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド
配列を含む、並びにここで、前記コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列は、
内因性のヌクレオチド配列に対してコドンが異なる(codon diverged)。
【請求項72】
請求項1~71の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は免疫
細胞を含む。
【請求項73】
請求項72に記載の改変した細胞、ここで、前記免疫細胞はT細胞を含む。
【請求項74】
請求項73に記載の改変した細胞、ここで前記T細胞は、以下からなる群より選択され
る:細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、初代T細胞、腫瘍浸潤T細胞、
操作したT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、ア
ルファ-ベータT細胞、及びガンマ-デルタT細胞。
【請求項75】
請求項72に記載の改変した細胞、ここで、前記免疫細胞は、ナチュラル・キラー細胞
を含む。
【請求項76】
請求項72に記載の改変した細胞、ここで、前記免疫細胞は、以下からなる群より選択
される:B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及びナチュラル・キラーT細胞。
【請求項77】
請求項1~71の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は幹細
胞を含む。
【請求項78】
請求項78に記載の改変した細胞、ここで、前記幹細胞は造血幹細胞を含む。
【請求項79】
請求項78に記載の改変した細胞、ここで、前記幹細胞は胚性幹細胞を含む。
【請求項80】
請求項1~79の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は初代
細胞である。
【請求項81】
請求項1~81の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は単離
した細胞である、ここで、前記単離した細胞は対象から単離する。
【請求項82】
請求項81の改変した細胞、ここで、前記対象はがんを有していることが判明している
、又は、そのような疑いがある。
【請求項83】
請求項1~82の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞はヒト
細胞又はヒト由来細胞を含む。
【請求項84】
請求項1~83の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、ex
vivoで培養した細胞である。
【請求項85】
請求項84に記載の改変した細胞、ここで、前記ex vivoで培養した細胞は、刺激され
た細胞を含む。
【請求項86】
請求項85に記載の改変した細胞、ここで、前記刺激された細胞はサイトカインで刺激
されたT細胞を含み、任意選択的に、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞はCD3
で刺激されたT細胞、CD28で刺激されたT細胞、又はCD3及びCD28で刺激されたT細胞、を含
む。
【請求項87】
請求項86に記載の改変した細胞、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、I
L7、IL15、又はそれらの組合せの存在下で培養する。
【請求項88】
請求項86又は87に記載の改変した細胞、ここで、前記サイトカインで刺激されたT
細胞を、IL2の存在下で培養する。
【請求項89】
請求項86又は87に記載の改変した細胞、ここで、前記サイトカインで刺激されたT
細胞を、IL2を実質的に含まない培地中で培養する。
【請求項90】
請求項1~89の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は組み
込まれたウイルスを含まない、ここで、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介し
た送達の構成成分と動作可能的に関連している。
【請求項91】
請求項1~89の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞の表面
上のMHCクラスIは、ウイルスを介した送達の構成成分又は組み込まれたウイルスに由来す
るペプチドを含まない、ここで、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達
の構成成分と動作可能的に関連している。
【請求項92】
請求項1~89の何れか一項に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は、第
2の外因性ヌクレオチド組成物を含む第2の環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記第2の
外因性ヌクレオチド組成物は、以下を含む:
a) 第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配
列;及び
c) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチ
ド配列、並びに、
前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領域と
同一のヌクレオチド配列は、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同
組換えを促進するように配向されている。
【請求項93】
請求項92に記載の改変した細胞、ここで、前記改変した細胞は第2の組み込まれたヌ
クレオチド配列を更に含む、ここで、前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2
の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含み、前記第2
の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に
組み込まれている、及び前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の遺伝子の少
なくとも一部を発現することができるように配向されている。
【請求項94】
請求項3~93の改変した細胞の何れか一種を含む細胞の集団、ここで前記集団の10%
超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、又は70%超は組み込まれたヌクレオチド配列を
含む。
【請求項95】
請求項94に記載の細胞の集団、ここで、前記改変した細胞は、前記組み込まれたヌク
レオチド配列の組み込み後に、選別、選択、又は単離されていない。
【請求項96】
以下を含む細胞の集団:
組み込まれたヌクレオチド配列、
ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配列は遺伝子の少なくとも一部を含み、前記組
み込まれたヌクレオチド配列は内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で組み込まれてい
る、及び前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部を発現するこ
とができるように配向されている、
ここで、前記細胞の集団はウイルスを介した送達の構成成分を実質的に含まない、並び

ここで、前記集団中のT細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、又は70%超
は前記組み込まれたヌクレオチド配列を含む。
【請求項97】
請求項96に記載の細胞の集団、ここで、前記T細胞は、前記組み込まれたヌクレオチ
ド配列の組み込み後に、選別、選択、又は単離されていない。
【請求項98】
請求項96又は97に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、前記内因性のTC
R遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断することができるヌクレアーゼ組成
物を更に含む。
【請求項99】
請求項96~98の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、外因
性のヌクレオチド配列を含む環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチ
ド配列は以下を含む:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 前記内因性の遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列、及び
c) 前記内因性の遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに
前記内因性の遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領域と同一のヌクレオチド配列は
、前記内因性の遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている。
【請求項100】
請求項96~99の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、少な
くとも1×106 個のT細胞、少なくとも2×106 個のT細胞、少なくとも5×106 個のT細胞、
少なくとも1×107 個のT細胞、又は少なくとも5×107 個のT細胞である。
【請求項101】
請求項96~100の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、第
2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を更に含
む。
【請求項102】
請求項101に記載の細胞の集団、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は
、以下からなる群より選択される前記遺伝子のコーディング領域(coding region)におけ
る変異を含む:翻訳されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、
アミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及
びあるアミノ酸から別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation
)。
【請求項103】
請求項101に記載の細胞の集団、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は
、以下からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域(non-coding regio
n)における変異を含む:前記遺伝子がコードするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記
遺伝子がコードするmRNA産物の安定性を変える変異。
【請求項104】
請求項101~103の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、
前記細胞の集団内の前記第2の規定されたヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌ
クレアーゼ組成物を更に含む。
【請求項105】
請求項98~104の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記ヌクレアーゼ組成
物は、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し
(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーの
ヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator
-like effector nuclease)(TALEN)若しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアー
ゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)若しくはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレア
ーゼ(homing endonuclease)(HE)若しくはその誘導体、からなる群より選択されるヌクレ
アーゼを含む。
【請求項106】
請求項105に記載の細胞の集団、ここで、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、
Cas9ヌクレアーゼである。
【請求項107】
請求項98~106の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記ヌクレアーゼ組成
物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。
【請求項108】
請求項98~106の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記ヌクレアーゼ組成
物は、前記細胞の集団内で前記ヌクレアーゼを発現させることができるヌクレオチド・ベ
クターを含む。
【請求項109】
請求項98~108の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記ヌクレアーゼ組成
物は、規定されたヌクレオチド配列でヌクレアーゼを介した切断を指示するガイドRNAを
含む。
【請求項110】
請求項109に記載の細胞の集団、ここで、前記ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)及び
トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。
【請求項111】
請求項110に記載の細胞の集団、ここで、前記crRNA及び前記tracrRNAは、シングル
・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上にある。
【請求項112】
請求項110に記載の細胞の集団、ここで、前記crRNA及び前記tracrRNAは、別個のポ
リヌクレオチド上にある。
【請求項113】
請求項96~112の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記コードされたポリ
ぺプチド配列の発現は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモー
ターによって指示される。
【請求項114】
請求項96~112の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記コードされたポリ
ぺプチド配列の発現は、外因性のプロモーターによって指示される。
【請求項115】
請求項114に記載の細胞の集団、ここで、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロ
モーター、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウ
イルスに由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプ
ロモーターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモ
ーター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、U
bc、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモ
ーター、低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモー
ター・システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフ
ェン・コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【請求項116】
請求項96~115の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以上である。
【請求項117】
請求項96~115の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さ
が600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが2000塩基以上、又は長
さが4000塩基以上である。
【請求項118】
請求項99~117の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さ
が100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが10
00塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項119】
請求項99~118の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さ
が100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが10
00塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項120】
請求項99~119の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列及び前記内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列は、それぞれ長さが600塩基以上
である。
【請求項121】
請求項98~120の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記規定されたヌクレ
オチド配列は、前記ヌクレオチド配列の組み込み後に破壊される。
【請求項122】
請求項96~121の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位と動作可能的に関連している内因
性の遺伝子の発現は、破壊される。
【請求項123】
相同組換え率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項96~122の
何れか一項に記載の細胞の集団。
【請求項124】
前記細胞の集団の生存率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項96
~123の何れか一項に記載の細胞の集団。
【請求項125】
請求項99~124の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記環状ポリヌクレオ
チドは、プラスミド又はナノプラスミドを含む。
【請求項126】
請求項125に記載の細胞の集団、ここで、前記プラスミドは、500塩基未満のベクタ
ー骨格を有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列ではない、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列ではない、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチ
ド配列ではない、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌク
レオチド配列ではない、前記第1の内因性のターゲット・ゲノム座位又は内因性のTCR遺伝
子座位と同一のヌクレオチド配列ではない、及び前記第2の内因性のターゲット・ゲノム
座位又は内因性のTCR遺伝子座位と同一のヌクレオチド配列ではない、ヌクレオチド配列
である。
【請求項127】
請求項99~126の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記環状ポリヌクレオ
チドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌクレオチドではない。
【請求項128】
請求項96~127の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位は、コーディング領域(coding region)を含む。
【請求項129】
請求項96~127の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【請求項130】
請求項96~129の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位は、前記T細胞レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位を含む。
【請求項131】
請求項130に記載の細胞の集団、ここで、前記第2の規定されたヌクレオチド配列が
コードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-ベータ遺伝子である。
【請求項132】
請求項96~129の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位は、前記TCR-ベータ遺伝子座位を含む。
【請求項133】
請求項132に記載の細胞の集団、ここで、前記第2の規定されたヌクレオチド配列が
コードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-アルファ遺伝子である。
【請求項134】
請求項96~129の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記内因性のゲノム・
ターゲットが免疫チェックポイント遺伝子座位を含む。
【請求項135】
請求項134に記載の細胞の集団、ここで、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、
PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【請求項136】
請求項96~135の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部は、リンカー配列を含む。
【請求項137】
請求項136に記載の細胞の集団、ここで、前記リンカー配列は、切断可能なリンカー
のポリペプチド配列をコードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリ
ペプチドは切断されて、前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプ
チドが産生される。
【請求項138】
請求項137に記載の細胞の集団、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチドは
、以下からなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome sk
ipping element)を含む:T2A、E2A、P2A、及びF2A。
【請求項139】
請求項137~138の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記切断可能なリン
カーのポリペプチドは、フリン切断部位を含む。
【請求項140】
請求項137~139の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記切断可能なリンカ
ーのポリペプチドは、Gly-Ser-Glyリンカーを含む、任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser
-Glyリンカーは、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element
)のN末端にある、及び任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、N末端からC
末端の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリンカー:2Aリボソーム・スキッピング・
エレメント(ribosome skipping element)、の並びの中にある。
【請求項141】
請求項136に記載の細胞の集団、ここで、前記リンカー配列は、配列内リボソーム進
入部位(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。
【請求項142】
請求項136に記載の細胞の集団、ここで、前記リンカー配列は、外因性のプロモータ
ー配列を含む。
【請求項143】
請求項136~142の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記リンカー配列は
、スプライス・アクセプター配列を含む。
【請求項144】
請求項96~135の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部は、第1リンカーのポリペプチド配列及び第2リンカーのポリペプチド配列を含む。
【請求項145】
請求項144に記載の細胞の集団、ここで、前記第1リンカーのポリペプチド配列及び
前記第2リンカーのポリペプチド配列は、同じリンカーのポリペプチド配列を含む。
【請求項146】
請求項145に記載の細胞の集団、ここで、同じリンカーのポリペプチド配列をコード
する、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リ
ンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(codon div
erged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記第1リンカーのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌクレオ
チド配列は、互いに対してコドンが異なる(codon diverged)。
【請求項147】
請求項96~146の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部は、コーディング領域(coding region)をコードする。
【請求項148】
請求項147に記載の細胞の集団、ここで、前記コーディング領域(coding region)は
、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能
を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免疫
チェックポイント阻害因子。
【請求項149】
請求項96~146の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記遺伝子の少なくと
も一部はノン-コーディング領域(non-coding region)をコードする。
【請求項150】
請求項149に記載の細胞の集団、ここで、前記ノン-コーディング領域(non-coding r
egion)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を調節する因
子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、及びT-
細胞の機能を促進する因子。
【請求項151】
請求項96~146の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで前記遺伝子の少なくとも
一部は、TCR遺伝子の少なくとも一部を含む。
【請求項152】
請求項151に記載の細胞の集団、ここで、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下
を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及び
c) 第2リンカー配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項153】
請求項151又は152に記載の細胞の集団、ここで、前記TCR-アルファのポリペプチ
ド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列
は、以下からなる群より選択される:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをし
たTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを
有するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)、
配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability e
lement)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプ
ター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部。
【請求項154】
請求項151~153の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記TCR-アルファの
ポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくと
も一部がコードするポリペプチドは、操作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比
較して第2の外因性のTCRポリペプチド配列と、より強く相互作用する、任意選択的に、こ
こで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、
操作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較して互いにより強く相互作用する。
【請求項155】
請求項152~154の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記コードされたポ
リぺプチド配列は、リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中に
ある。
【請求項156】
請求項152~154の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記コードされたポ
リぺプチド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中に
ある。
【請求項157】
請求項151~156の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記TCR-アルファの
ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレ
オチド配列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで
、前記コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列は、内因性のヌクレオチド配列
に対してコドンが異なる(codon diverged)。
【請求項158】
請求項96~157の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、ヒ
ト細胞又はヒト由来細胞を含む。
【請求項159】
請求項96~158の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、免
疫細胞の集団を含む。
【請求項160】
請求項159に記載の細胞の集団、ここで、前記免疫細胞の集団は、T細胞の集団を含
む。
【請求項161】
請求項160に記載の集団、ここで、前記T細胞の集団は、以下からなる群より選択さ
れる:細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、初代T細胞、腫瘍浸潤T細胞
、操作したT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、
アルファ-ベータT細胞、及びガンマ-デルタT細胞。
【請求項162】
請求項159に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、以下からなる群より選
択される集団を含む:B細胞, 単球、マクロファージ、樹状細胞、及びナチュラル・キラ
ーT細胞。
【請求項163】
請求項96~158の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、幹
細胞の集団を含む。
【請求項164】
請求項163に記載の細胞の集団、ここで、前記幹細胞の集団は、造血幹細胞の集団を
含む。
【請求項165】
請求項163に記載の細胞の集団、ここで、前記幹細胞の集団は、胚性幹細胞の集団を
含む。
【請求項166】
請求項96~165の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、初
代細胞である。
【請求項167】
請求項96~166の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は単離
した細胞の集団である、ここで、前記単離した細胞の集団は対象から単離する。
【請求項168】
請求項167に記載の細胞の集団、前記対象はがんを有していることが判明している、
又は、そのような疑いがある。
【請求項169】
請求項96~168の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、ex
vivoで培養した細胞を含む。
【請求項170】
請求項169に記載の細胞の集団、ここで、前記ex vivoで培養した細胞は、刺激され
た細胞を含む。
【請求項171】
請求項170に記載の細胞の集団、ここで、前記刺激された細胞はサイトカインで刺激
されたT細胞を含み、任意選択的に、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞はCD3
で刺激されたT細胞、CD28で刺激されたT細胞、又はCD3及びCD28で刺激されたT細胞、を含
む。
【請求項172】
請求項171に記載の細胞の集団、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、I
L7、IL15、又はそれらの組合せの存在下で培養する。
【請求項173】
請求項171又は172に記載の細胞の集団、ここで、前記サイトカインで刺激された
T細胞を、IL2の存在下で培養する。
【請求項174】
請求項171又は172に記載の細胞の集団、ここで、前記サイトカインで刺激された
T細胞を、IL2を実質的に含まない培地中で培養する。
【請求項175】
請求項96~174の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は第2
の組み込まれたヌクレオチド配列を更に含む、ここで、前記第2の組み込まれたヌクレオ
チド配列は前記第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配
列を含み、前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位に組み込まれている、及び前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前
記第2の遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように配向されている。
【請求項176】
請求項175に記載の細胞の集団、ここで、前記細胞の集団は、第2の外因性ヌクレオ
チド組成物を含む第2の環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記第2の外因性ヌクレオチド
組成物は、以下を含む:
a) 前記第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチ
ド配列;及び
c) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチ
ド配列、
ここで、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の前記第1領域及び前記第
2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で
の相同組換えを促進するように配向されている。
【請求項177】
治療を必要とする対象のためのその治療方法、ここで、前記治療は、治療有効量の請求
項1~176の何れか一項に記載の改変した細胞又は細胞の集団を投与することを含む。
【請求項178】
請求項177に記載の治療方法、ここで、前記改変した細胞又は細胞の集団は、前記対
象に由来する。
【請求項179】
請求項177に記載の治療方法、ここで、前記改変した細胞又は細胞の集団は、前記対
象に関して同種異系である。
【請求項180】
細胞を遺伝子改変するための方法、前記方法は以下の工程を含む:
1) シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)を含むヌクレオチド組成
物を提供すること、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は以下を
含む:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
;及び
c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド
配列、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレ
オチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するよ
うに配向されている、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前
記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列は配向されている;並びに
2) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を
切断することができるヌクレアーゼ組成物を提供すること;
3) 前記細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させるこ
と、
4) 前記細胞をウイルスで感染させること以外の手段によって、前記ヌクレオチド組
成物及び前記ヌクレアーゼ組成物を前記細胞中に送達すること。
【請求項181】
前記細胞内の第2の規定されたヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌクレアー
ゼ組成物を提供することを更に含む、ここで、前記第2ヌクレアーゼ組成物を、前記接触
させる工程において前記細胞と接触させる、及び前記送達する工程において前記細胞中に
送達する、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
請求項181に記載の方法、ここで、前記切断により、前記第2の規定されたヌクレオ
チド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異が起きる。
【請求項183】
請求項182に記載の方法、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、翻訳
されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から終止コ
ドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ酸から
別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation)、からなる群より
選択される前記遺伝子のコーディング領域(coding region)における変異を含む。
【請求項184】
請求項182に記載の方法、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、前記
遺伝子がコードするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物
の安定性を変える変異、からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域(
non-coding region)における変異を含む。
【請求項185】
更に以下を含む、請求項181に記載の方法:
第2ヌクレオチド組成物を提供すること、その第2組成物は以下を含む:
a) 第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配
列;及び
c) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチ
ド配列、
ここで、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynu
cleotide)上にある、
前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌ
クレオチド配列は、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを
促進するように配向されている、
前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に
、前記第2の遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少な
くとも一部をコードするヌクレオチド配列は配向されている、並びに、
前記第2ヌクレオチド組成物を、前記接触させる工程において前記細胞と接触させる
、及び前記送達する工程において前記細胞中に送達する。
【請求項186】
請求項180~185の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clu
stered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌク
レアーゼ、転写活性化因子様エフェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-lik
e effector nuclease)(TALEN)若しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zi
nc-finger nuclease)(ZFN)若しくはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(h
oming endonuclease)(HE)若しくはその誘導体、からなる群より選択されるヌクレアーゼ
を含む。
【請求項187】
請求項186に記載の方法、ここで、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌ
クレアーゼである。
【請求項188】
請求項180~187の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、予め形成されたタンパク質複合体を含む。
【請求項189】
請求項180~187の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、前記細胞内で前記ヌクレアーゼを発現させることができるヌクレオチド・ベクターを含
む。
【請求項190】
請求項180~189の何れか一項に記載の方法、ここで、前記接触させる工程は、前
記細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させる工程と前記送
達する工程との間が、60分未満、45分未満、30分未満、20分未満、15分未満、10分未満、
5分未満、又は1分未満である。
【請求項191】
請求項180~190の何れか一項に記載の方法、ここで、前記送達する工程は、エレ
クトロポレーション、トランスフェクション、物理的な方法による細胞膜の変形、脂質ナ
ノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VLP)、及び超音波処理、からなる群より選択される。
【請求項192】
請求項180~190の何れか一項に記載の方法、ここで、前記送達する工程は、エレ
クトロポレーションを含む。
【請求項193】
請求項180~192の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリペプ
チド配列の発現は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモーター
によって指示される。
【請求項194】
請求項180~192の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列の発現は、外因性のプロモーターによって指示される。
【請求項195】
請求項194に記載の方法、ここで、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモータ
ー、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイルス
に由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロモー
ターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモーター
、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc、ベ
ータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター
, 低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモーター・
システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェン・
コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【請求項196】
請求項180~195の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、長さが100塩基以上である。
【請求項197】
請求項180~195の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上
、長さが1500塩基以上、長さが2000塩基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【請求項198】
請求項180~197の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位の第1領域又は第2領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基、長
さが100塩基、長さが200塩基、長さが400塩基、長さが600塩基、長さが800塩基、長さが1
500塩基、長さが2000塩基、又は長さが4000塩基である。
【請求項199】
請求項180~198の何れか一項に記載の方法、ここで、前記規定されたヌクレオチ
ド配列は、組み込み後に破壊される。
【請求項200】
請求項180~199の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位に動作可能的に関連している内因性の遺伝子の発現は、破壊される。
【請求項201】
相同組換え率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項180~200
の何れか一項に記載の方法。
【請求項202】
請求項180~201の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、環状プラスミド、線状DNAフラグメント、ミニサーク
ル、及びssDNAからなる群より選択される。
【請求項203】
請求項202に記載の方法、ここで、前記環状プラスミドは、500塩基未満のベクター
骨格を有する、ここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコードする
ヌクレオチド配列、前記第1の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位と同一のヌクレオ
チド配列、又は前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位と同一のヌクレオチド
配列のどれでもない、ヌクレオチド配列を含む。
【請求項204】
請求項180~203の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌクレ
オチドではない。
【請求項205】
請求項180~204の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、混入物質を実質的に含まない。
【請求項206】
請求項180~205の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、細胞生存率を低下させる構成成分を実質的に含まな
い。
【請求項207】
請求項180~206の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、コーディング領域(coding region)を含む。
【請求項208】
請求項180~206の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【請求項209】
請求項180~208の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、前記細胞レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位である。
【請求項210】
請求項180~208の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、TCR-ベータ遺伝子座位である。
【請求項211】
請求項180~208の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、免疫チェックポイント遺伝子座位である。
【請求項212】
請求項211に記載の方法、ここで、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、PD-1、
CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【請求項213】
請求項180~212の何れか一項に記載の方法。ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、リンカー配列を含む、
【請求項214】
請求項213に記載の方法、ここで、前記リンカー配列は、切断可能なリンカーのポリ
ペプチド配列をコードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリペプチ
ドは切断されて、前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプチドが
産生される。
【請求項215】
請求項214に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、
T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメ
ント(ribosome skipping element)を含む。
【請求項216】
請求項214又は215に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチ
ド配列は、フリン切断部位配列を含む。
【請求項217】
請求項213に記載の方法、ここで、前記リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位
(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。
【請求項218】
請求項213に記載の方法、ここで、前記リンカー配列は、外因性のプロモーターを含
む。
【請求項219】
請求項213~218の何れか一項に記載の方法、ここで、前記リンカー配列は、スプ
ライス・アクセプター配列を更に含む。
【請求項220】
請求項180~219の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、コーディング領域(coding region)をコードする。
【請求項221】
請求項220に記載の方法、ここで、前記コーディング領域(coding region)は、以下
からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節
する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免疫チェッ
クポイント阻害因子。
【請求項222】
請求項180~219の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、ノン-コーディング領域(non-coding region)をコードする。
【請求項223】
請求項222に記載の方法、ここで、前記ノン-コーディング領域(non-coding region)
は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を調節する因子、サ
イトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、及びT-細胞の
機能を促進する因子。
【請求項224】
請求項180~219の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、TCR遺伝子の少なくとも一部を含む。
【請求項225】
請求項224に記載の方法、ここで、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、マウス化TCR
、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を
形成できるように操作したシステインを有するように操作したTCR、コドンを最適化したT
CR(ヒトで発現するのに最適化した)、配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA
不安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最適化した)、TCR遺伝
子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部、か
らなる群より選択される。
【請求項226】
請求項224に記載の方法、ここで、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下を含む

a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及び
c) 第2リンカー配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項227】
請求項226に記載の方法、ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列は、マウス
化TCR-アルファ、ヒト化TCR-アルファ、ドメイン・スワップをしたTCR-アルファ、点変異
を入れたTCR-アルファ、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有す
るように操作したTCR-アルファ、コドンを最適化したTCR-アルファ(ヒトで発現するのに
最適化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化したTCR-アルファ(コド
ンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最
適化した)、からなる群より選択される。
【請求項228】
請求項226又は227に記載の方法、ここで、前記TCR-ベータのポリペプチド配列は
、マウス化TCR-ベータ、ヒト化TCR-ベータ、ドメイン・スワップをしたTCR-ベータ、点変
異を入れたTCR-ベータ、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有す
るように操作したTCR-ベータ、コドンを最適化したTCR-ベータ(ヒトで発現するのに最適
化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化したTCR-ベータ(コドンの使
用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最適化し
た)、からなる群より選択される。
【請求項229】
請求項226~228の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列は、リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。
【請求項230】
請求項226~228の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にある。
【請求項231】
請求項226~230の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は、
切断可能なリンカーのポリペプチド配列を含む。
【請求項232】
請求項231に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、
T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメ
ント(ribosome skipping element)を含む。
【請求項233】
請求項231又は232に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチ
ド配列は、フリン切断部位配列を含む。
【請求項234】
請求項226~230の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は、
配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。
【請求項235】
請求項226~230の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は、
外因性のプロモーターを含む。
【請求項236】
請求項185~235の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節
する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免疫チェッ
クポイント阻害因子、からなる群より選択される。
【請求項237】
請求項185~235の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2の遺伝子の少なく
とも一部は、TCR遺伝子の少なくとも一部を含む。
【請求項238】
請求項180~237の何れか一項に記載の方法によって産生される改変した細胞、こ
こで、前記細胞は組み込まれたヌクレオチド配列を含む、ここで、前記組み込まれたヌク
レオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列
を含み、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座
位に組み込まれ、及び前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部
を発現することができるように配向される。
【請求項239】
請求項180~237の何れか一項に記載の方法によって産生される細胞の集団、ここ
で、前記集団中の細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、又は70%超は前記
組み込まれたヌクレオチド配列を含む、ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前
記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含み、前記組み
込まれたヌクレオチド配列は内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれ、及び
前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができ
るように配向される。
【請求項240】
請求項238又は239に記載の改変した細胞又は細胞の集団、ここで、前記細胞は、
前記組み込まれたヌクレオチド配列の組み込み後に、選別、選択、又は単離されていない
【請求項241】
請求項238~240の何れか一項に記載の細胞の集団、ここで、送達する工程後の細
胞の集団の生存率は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、
又は少なくとも80%である。
【請求項242】
請求項241に記載の細胞の集団、ここで、前記生存率を、前記送達する工程の4日後
に評価する。
【請求項243】
治療を必要とする対象のためのその治療方法、ここで、前記治療は、治療有効量の請求
項238~240の何れか一項に記載の細胞又は細胞の集団を投与することを含む。
【請求項244】
請求項243に記載の治療方法、ここで、前記細胞又は細胞の集団は、前記対象に由来
する。
【請求項245】
請求項243に記載の治療方法、ここで、前記細胞又は細胞の集団は、前記対象に関し
て同種異系である。
【請求項246】
細胞を遺伝子改変するための方法、前記方法は以下の工程を含む:
1) 以下を含むヌクレオチド組成物を提供すること:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
;及び、
c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド
配列、
ここで、前記遺伝子の少なくとも一部は、長さが100塩基である、
前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynucleoti
de)上にある、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と第2領域と同一のヌクレオ
チド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するよう
に配向されている、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前
記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列は配向されている;並びに、
2) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を
切断することができるCRISPR/Cas9ヌクレアーゼ組成物を提供すること;
3) 前記細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ組成物と
接触させること、並びに
4) エレクトロポレーションによって、前記ヌクレオチド組成物及び前記CRISPR/Cas
9ヌクレアーゼ組成物を前記細胞中に送達すること。
【請求項247】
規定されたT細胞レセプターを有する改変したT細胞を生成する方法、前記方法は以下の
工程を含む:
1) 以下を含むヌクレオチド組成物を提供すること:
a) TCR-アルファのポリぺプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド
配列;
b) TCR-ベータのポリぺプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列;
c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
e) 内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及び、
f) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、
ここで、前記ヌクレオチド配列はシングル・ポリヌクレオチド(single polynucleo
tide)上にある、
前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、
前記内因性のTCR遺伝子座位における相同組換えを促進するように配向されている、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド
配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列、並びに第1リンカー及び第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配
列は、前記内因性のTCR遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記ポリペプチド
配列のそれぞれがシングル・ポリペプチド(single polypeptide)として発現することがで
きるように配向されている、
前記第1リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の
少なくとも一部、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部、及び第2リンカ
ーのポリペプチド配列の前に位置する、
前記第2リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列と
前記TCR-ベータのポリペプチド配列との間に位置する、並びに、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、
それぞれ別個のポリペプチドを形成する、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒に相互
作用して機能的なTCRを形成することができる;
2) 前記内因性のTCR遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断することが
できるヌクレアーゼ組成物を提供すること;
3) 前記T細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させる
こと、並びに
4) 前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物を前記T細胞中に送達する
こと。
【請求項248】
前記T細胞内の第2の規定されたヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌクレア
ーゼ組成物を提供することを更に含む、請求項247に記載の方法、ここで、前記第2ヌ
クレアーゼ組成物を、前記接触させる工程において前記T細胞と接触させる、及び前記送
達する工程において前記T細胞中に送達する。
【請求項249】
請求項248に記載の方法、ここで、前記切断により、前記第2の規定されたヌクレオ
チド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異が生じる。
【請求項250】
請求項249に記載の方法、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、翻訳
されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から終止コ
ドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ酸から
別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation)、からなる群より
選択される前記遺伝子のコーディング領域(coding region)における変異を含む。
【請求項251】
請求項249に記載の方法、ここで、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、前記
遺伝子がコードするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物
の安定性を変える変異、からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域(
non-coding region)における変異を含む。
【請求項252】
更に以下を含む、請求項249に記載の方法:
第2ヌクレオチド組成物を提供すること、その第2組成物は以下を含む:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;
及び、
c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配
列、
ここで、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynu
cleotide)上にある、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と第2領域と同一のヌクレオチ
ド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように
配向されている、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記
遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部を
コードするヌクレオチド配列は配向されている;並びに、
前記第2ヌクレオチド組成物を、前記接触させる工程において前記T細胞と接触させる
、及び前記送達する工程において前記T細胞中に送達する。
【請求項253】
請求項247~252の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、クラスター化された規則的に間隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clu
stered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌク
レアーゼ、転写活性化因子様エフェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-lik
e effector nuclease)(TALEN)若しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zi
nc-finger nuclease)(ZFN)若しくはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(h
oming endonuclease)(HE)若しくはその誘導体からなる群より選択されるヌクレアーゼを
含む。
【請求項254】
請求項253に記載の方法、ここで、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌ
クレアーゼである。
【請求項255】
請求項247~254の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、予め形成されたタンパク質複合体を含む。
【請求項256】
請求項247~254の何れか一項に記載の方法、ここで、前記ヌクレアーゼ組成物は
、前記T細胞内で前記ヌクレアーゼを発現させることができるヌクレオチド・ベクターを
含む。
【請求項257】
請求項247~256の何れか一項に記載の方法、ここで、前記接触させる工程は、前
記T細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させる工程と前記
送達する工程との間が、60分未満、45分未満、30分未満、20分未満、15分未満、10分未満
、又は5分未満である。
【請求項258】
請求項247~257の何れか一項に記載の方法、ここで、前記送達する工程は、エレ
クトロポレーション、トランスフェクション、物理的な方法による細胞膜の変形、脂質ナ
ノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VLP)、及び超音波処理、からなる群より選択される。
【請求項259】
請求項247~257の何れか一項に記載の方法、ここで、前記送達する工程は、エレ
クトロポレーションを含む。
【請求項260】
請求項247~259の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列の発現は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモーター
によって指示される。
【請求項261】
請求項247~260の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列の発現は、外因性のプロモーターによって指示される。
【請求項262】
請求項261に記載の方法、ここで、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモータ
ー、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイルス
に由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロモー
ターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモーター
、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc、ベ
ータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター
, 低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモーター・
システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェン・
コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【請求項263】
請求項247~262の何れか一項に記載の方法、ここで、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列又は前記TCR-ベータのポリペ
プチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以上であ
る。
【請求項264】
請求項247~262の何れか一項に記載の方法、ここで、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列又は前記TCR-ベータのポリペ
プチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが200塩基以上、長
さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上、長さ
が2000塩基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【請求項265】
請求項247~264の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位の第1領域又は第2領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基、長さが100塩基、
長さが200塩基、長さが400塩基、長さが600塩基、長さが800塩基、長さが1500塩基、長さ
が2000塩基、又は長さが4000塩基である。
【請求項266】
請求項247~265の何れか一項に記載の方法、ここで、前記規定されたヌクレオチ
ド配列は、組み込み後に破壊される。
【請求項267】
請求項247~266の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位と機能的に関連している内因性の遺伝子の発現は、破壊される。
【請求項268】
相同組換え率を増加させることができる追加の試薬を更に含む、請求項247~267
の何れか一項に記載の方法。
【請求項269】
請求項247~268の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、環状プラスミド、線状DNAフラグメント、ミニサーク
ル、及びssDNAからなる群より選択される。
【請求項270】
請求項269に記載の方法、ここで、前記環状プラスミドは、500塩基未満のベクター
骨格を有する、ここで、前記ベクター骨格は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少
なくとも一部をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少な
くとも一部をコードするヌクレオチド配列、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリ
ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列のどれでもない、ヌクレオチド配列である。
【請求項271】
請求項247~270の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌクレ
オチドではない。
【請求項272】
請求項247~271の何れか一項に記載の方法、ここで、前記シングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)は、d混入物質を含まない。
【請求項273】
請求項247~272の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位は、コーディング領域(coding region)を含む。
【請求項274】
請求項247~272の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位は、イントロンを含む。
【請求項275】
請求項247~274の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位は、前記TCR-アルファ遺伝子座位を含む。
【請求項276】
請求項247~274の何れか一項に記載の方法、ここで、前記内因性のTCR遺伝子座
位は、前記TCR-ベータ遺伝子座位を含む。
【請求項277】
請求項247~276の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第1リンカー配列は切
断可能なリンカーのポリペプチド配列を含む、ここで、発現した後に、前記切断可能なリ
ンカーのポリペプチドは切断されて、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも
一部、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部、及び前記第2リンカーのポ
リペプチド配列、をコードすることによってのみコードされるポリペプチド、が産生され
る。
【請求項278】
請求項277に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、
T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメ
ント(ribosome skipping element)を含む。
【請求項279】
請求項278又は279に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチ
ド配列は、フリン切断部位配列を含む。
【請求項280】
請求項247~276の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第1リンカーのポリペ
プチド配列は、IRESを含む。
【請求項281】
請求項247~280の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第1リンカー配列は、
スプライス・アクセプター配列を含む。
【請求項282】
請求項247~281の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は切
断可能なリンカーのポリペプチド配列を含む、ここで、発現した後に、前記切断可能なリ
ンカーのポリペプチドは切断されて、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-
ベータのポリペプチド配列は、それぞれ別個のポリペプチドを形成する、ここで、前記別
個のポリペプチドは一緒に相互作用して機能的なTCRを形成することができる。
【請求項283】
請求項277に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、
T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメ
ント(ribosome skipping element)を含む。
【請求項284】
請求項282又は283に記載の方法、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペプチ
ド配列は、フリン切断部位配列を含む。
【請求項285】
請求項247~281の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は、
配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。
【請求項286】
請求項247~281の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2リンカー配列は、
外因性のプロモーターを含む。
【請求項287】
請求項247~286の何れか一項に記載の方法、ここで、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列は、マウス化TCR-アルファ、ヒト化TCR-アルファ、ドメイン・スワップをした
TCR-アルファ、点変異を入れたTCR-アルファ、ジスルフィド結合を形成できるように操作
したシステインを有するように操作したTCR-アルファ、コドンを最適化したTCR-アルファ
(ヒトで発現するのに最適化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化し
たTCR-アルファ(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability elemen
t)を除去することに最適化した)、からなる群より選択される。
【請求項288】
請求項247~287の何れか一項に記載の方法、ここで、前記TCR-ベータのポリペプ
チド配列は、マウス化TCR-ベータ、ヒト化TCR-ベータ、ドメイン・スワップをしたTCR-ベ
ータ、点変異を入れたTCR-ベータ、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステ
インを有するように操作したTCR-ベータ、コドンを最適化したTCR-ベータ(ヒトで発現す
るのに最適化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化したTCR-ベータ(
コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element)を除去すること
に最適化した)、からなる群より選択される。
【請求項289】
請求項247~288の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列は、第1リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある
【請求項290】
請求項247~288の何れか一項に記載の方法、ここで、前記コードされたポリぺプ
チド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にある。
【請求項291】
請求項248~290の何れか一項に記載の方法、ここで、前記規定されたヌクレオチ
ド配列が内因性TCR-アルファ遺伝子座位内にある場合、前記第2の規定されたヌクレオチ
ド配列は内因性TCR-ベータ遺伝子座位内にある。
【請求項292】
請求項248~290の何れか一項に記載の方法、ここで、前記規定されたヌクレオチ
ド配列が内因性TCR-ベータ遺伝子座位内にある場合、前記第2の規定されたヌクレオチド
配列は内因性TCR-アルファ遺伝子座位内にある。
【請求項293】
請求項248~290の何れか一項に記載の方法、ここで、前記第2の規定されたヌク
レオチド配列は、免疫チェックポイント遺伝子座位内にある。
【請求項294】
請求項252~293の何れか一項に記載の方法、ここで、前記遺伝子の少なくとも一
部は、shRNA、siRNA、miRNA、サイトカイン、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機
能を促進する因子、及び免疫チェックポイント阻害因子、からなる群より選択される。
【請求項295】
以下を含む環状ポリヌクレオチドを含む、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での
相同組換えを指示する際に使用するためのヌクレオチド組成物:
a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;
b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;
及び、
c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配
列、
ここで、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynu
cleotide)上にある、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と第2領域と同一のヌクレオチ
ド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように
配向されている、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記
遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部を
コードするヌクレオチド配列は配向されている。
【請求項296】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以
上である。
【請求項297】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが200塩基以
上、長さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上
、長さが2000塩基以上、長さが4000塩基以上である。
【請求項298】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、
長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項299】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列
は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、
長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【請求項300】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列
及び前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列は
、それぞれ、長さが600塩基以上である。
【請求項301】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記環状ポリヌクレオチドは、プラスミド又はナノプラスミドを含む。
【請求項302】
請求項301に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記プラスミドは、500塩基未満
のベクター骨格を有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも
一部をコードするヌクレオチド配列ではない、及び前記第1の内因性の遺伝子座位と同一
のヌクレオチド配列ではない。
【請求項303】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記環状ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌク
レオチドではない。
【請求項304】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、コーディング領域(coding region
)を含む。
【請求項305】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【請求項306】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、
前記T細胞レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位を含む。
【請求項307】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、
前記T細胞レセプター(TCR)-ベータ遺伝子座位を含む。
【請求項308】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記内因性のゲノム・ターゲットは、免疫チェックポイント遺伝子座位を含む。
【請求項309】
請求項308に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記免疫チェックポイント遺伝子
座位は、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【請求項310】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む。
【請求項311】
請求項310に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記リンカー配列は切断可能なリ
ンカーのポリペプチド配列をコードする、ここで、発現した後に、前記切断可能なリンカ
ーのポリペプチドは切断されて、前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされる
ポリペプチドが産生される。
【請求項312】
請求項311に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記切断可能なリンカーのポリペ
プチドの何れか1つは、フリン切断部位を含む。
【請求項313】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記リンカー配列の何れか1つが、以下からなる群より選択される2Aリボソーム・
スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)を含む:T2A、E2A、P2A、及びF2
A。
【請求項314】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記切断可能なリンカーのポリペプチドの何れか1つが、Gly-Ser-Glyリンカーを含
む、任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、2Aリボソーム・スキッピング
・エレメント(ribosome skipping element)のN末端にある、及び任意選択的に、ここで、
前記Gly-Ser-Glyリンカーは、N末端からC末端の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリ
ンカー:2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)、の並
びの中にある。
【請求項315】
請求項310に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記リンカー配列、前記第1リン
カーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペ
プチド配列をコードするヌクレオチド配列は、配列内リボソーム進入部位(internal ribo
some entry site)(IRES)を含む。
【請求項316】
請求項310に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記リンカー配列、前記第1リン
カーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペ
プチド配列をコードするヌクレオチド配列は、外因性のプロモーターを含む。
【請求項317】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチ
ド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、ス
プライス・アクセプター配列を含む。
【請求項318】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部はシグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列
を含む、ここで、前記シグナル・ペプチドは、前記遺伝子の少なくとも一部がコードする
ポリペプチド、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配
列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペプチドに動作可能的に連結
している。
【請求項319】
請求項318に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記シグナル・ペプチドは外因性
のシグナル・ペプチドであり、任意選択的に、ここで、前記外因性のシグナル・ペプチド
はヒト成長ホルモンのシグナル・ペプチドである。
【請求項320】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記第1リンカーのポリペプチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチド配列は、
同じリンカーのポリペプチド配列を含む。
【請求項321】
請求項320に記載のヌクレオチド組成物、ここで、同じリンカーのポリペプチド配列
をコードする、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び
前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(
codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記第1リンカーのポリペプチ
ド配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードする
ヌクレオチド配列は、互いに対してコドンが異なる(codon diverged)。
【請求項322】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding region)をコードする
【請求項323】
請求項322に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記コーディング領域(coding re
gion)は、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞
の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及
び免疫チェックポイント阻害因子。
【請求項324】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、ノン-コーディング領域(non-coding region)をコ
ードする。
【請求項325】
請求項324に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記ノン-コーディング領域(non-
coding region)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を調
節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子
、及びT-細胞の機能を促進する因子。
【請求項326】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部は、TCR遺伝子の少なくとも一部を含む。
【請求項327】
請求項326に記載のヌクレオチド組成物、ここで、前記TCR遺伝子の少なくとも一部
は、以下を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;
b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及び
c) 第2リンカー配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項328】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくと
も一部は、以下からなる群より選択される:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワッ
プをしたTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステ
インを有するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化し
た)、配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instabi
lity element)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原
レセプター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部。
【請求項329】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列、又は
前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペプチドは、内因性のTCRポリペプチド
配列と比較して第2の外因性のTCRポリペプチド配列と、より強く相互作用するように操作
されている、任意選択的に、ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-
ベータのポリペプチド配列は、内因性のTCRポリペプチド配列と比較して、互いにより強
く相互作用するように操作されている。
【請求項330】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-
アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。
【請求項331】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-
ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にある。
【請求項332】
上記ヌクレオチド組成物に関する請求項の何れか一項に記載のヌクレオチド組成物、こ
こで、前記遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、
又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(
codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記コドンが異なる(codon di
verged)ヌクレオチド配列は、内因性のヌクレオチド配列に対してコドンが異なる(codon
diverged)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2017年10月30日に出願された米国仮出願第62/579,113号、及び2017年10月30日
に出願された米国仮出願第62/579,114号の利益を主張し、これらの各々は全ての目的のた
めに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願にはEFS-Web経由で提出された配列表が含まれており、その全体が参照により本
明細書に組み込まれる。20XX年、XX月、に作成されたASCIIコピーの名前はXXXXXUS_seque
ncelisting.txtで、サイズはX, XXX,XXXバイトである。
【背景技術】
【0003】
遺伝子ターゲティングとは、ゲノムを直接的に編集することができる方法であり、細胞
産物を操作したり、遺伝病を引き起こす変異を修復したり、変異を作り出して遺伝子を研
究したりするための道筋を提供する。遺伝子ターゲティングは、目的の遺伝子座位をター
ゲティングする部位特異的ヌクレアーゼとともに、所望の改変配列を有する相同組換え修
復テンプレートDNA(homology repair template DNA)を送達した後に、相同組換えを起こ
すことに依るものである。
【0004】
遺伝子ターゲティングを、初代ヒトT細胞において使用して、新規な特異性を有するT細
胞が作製されてきた。これらの例において、AAVを使用して、相同組換え修復テンプレー
トDNAが送達されてきた。前記DNAには、新しいエピトープに特異的なキメラ抗原レセプタ
ー(chimeric antigen receptor)(CAR)又はT-細胞レセプター(TCR)のコーディング配列が
含まれる。これらの配列をTCRアルファ(一般的に)又はTCRβ遺伝子座位にターゲティング
すると、研究者は内因性TCRのノックアウト(及び対応する特異性を無くすこ)、及び新し
いタンパク質(及び対応する特異性)のノックインを同時に行うことができる。この方法は
、治療的使用を目的とするCAR T細胞及びTCR T細胞を製造するスケールで使用される。し
かしながら、AAVを製造するには、多大な時間がかかり、費用がかかり、困難であり、厳
しく規制されており、その用途が制限されている。
【0005】
裸のプラスミドDNAを使った遺伝子編集はこれまでに報告されているが、不死化細胞株
との関連においてのみであって、初代細胞においては毒性の問題が言及されている。これ
らの問題は、mRNAを使用して、ヌクレアーゼ(これは、いくらかの毒性を示す)を、細胞
の生存性を更に低下させるDNAとともに、送達することに由来している可能性がある。こ
れらの問題はまた、DNAの送達効率がDNAの大きさに依存し、ベクターが適切に最適化され
ていないことに起因している可能性もある。更に、多くの研究所が使用するキットによっ
て調製したプラスミドに共通して存在するDNA不純物は、細胞毒性に寄与することが知ら
れており、このことによって、相同組換え修復テンプレートとしてプラスミドDNAを使用
することが妨げられてきた可能性がある。ごく最近になって、DNA精製及び送達の技術が
改良されてきている(例えば、プラスミド・ワクチンの登場、並びに最適化されたエレク
トロポレーション・プロトコル及び装置(例えば、ヌクレオフェクション(Nucleofection)
))。
【0006】
トランスポゾンは、ヒトの初代T細胞にDNAを挿入するのにも使われているが、非特異的
な方法である(レトロウイルスによる送達に似ている)。この場合、ゲノムにランダムに挿
入される裸のDNAは、裸のプラスミドDNAとして送達される。しかしながら、高い毒性及び
低い効率が、この方法の限界となっている。相同組換えを介した、初代ヒトT細胞におけ
る遺伝子編集も、これまでに報告されているが(例えば、Schumann et al. Proc Natl Aca
d Sci U S A. 2015 Aug 18;112(33):10437-42)、非常に小さな編集又は修復(例えば、20
ヌクレオチド以下)の場合に限られる。リボ核タンパク質(RNP)複合体をエレクトロポレー
ションして、相同組換えを介した、遺伝子編集も、これまでに報告されている(例えば、
Kimら(Genome Res.2014 Jun;24(6):1012-9)及び国際公開WO2016/123578)。しかしながら
、12ヌクレオチドの比較的小さい挿入(又はゲノム配列の置換)を、それぞれ線状テンプレ
ートを使用して、実証した場合に限られている。より大きな編集をするための組成物及び
方法は、T細胞以外の初代細胞(例えば、造血幹細胞及びナチュラル・キラー(NK)細胞)に
ついて、十分に報告されていない。この分野に欠けているのは、初代細胞において大きな
編集を行う効率的な方法である(それによって、遺伝子編集の治療的応用が潜在的に制限
されている)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ヒト初代細胞及びヒト初代T細胞などの細胞における遺伝子編集を行うための
改良した組成物及び方法が、この分野で大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[概要]
本出願は、以下を含む改変した細胞を提供する: 外因性のヌクレオチド配列を含む環
状ポリヌクレオチドであって、前記外因性のヌクレオチド配列は以下を含む:a) 遺伝子
の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝
子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記内因性のゲノムのターゲット
遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝
子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている、並びに、ここで、前記
改変した細胞は実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない。ある実施形態では
、前記改変した細胞は組み込まれたヌクレオチド配列を更に含む、ここで、前記組み込ま
れたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同
一の配列を含む、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記内因性のゲノムのターゲット
遺伝子座位に組み込まれている、並びに前記組み込まれたヌクレオチド配列は、前記遺伝
子の少なくとも一部を発現することができるように配向されている。ある実施形態では、
前記改変した細胞は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の規定したヌクレオ
チド配列を切断することができるヌクレアーゼ組成物を更に含む。
【0009】
又、本出願は、T細胞を含む改変した細胞を提供し、前記T細胞は以下を含む:a) TCR-
アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b) TCR-ベータのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列;c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコード
するヌクレオチド配列;d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド
配列;ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前
記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー
及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、内因性のTCR
-アルファの遺伝子座位の中に組み込まれている、前記TCR-アルファのポリペプチド配列
をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレ
オチド配列、及び前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列は、各々のポリペプチド配列をシングル・ポリペプチド(single polype
ptide)として発現することができるように配向されている、ここで、第2リンカーのポリ
ペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペプチド
配列との間に位置する、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドは、前記TC
R-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列がそれぞれ別個の
ポリペプチドを形成するように、前記T細胞中で切断され得る切断可能なリンカーのポリ
ペプチドである、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒に会合して機能的なTCRを形成
することができる、ここで、前記改変した細胞は、実質的にウイルスを介した送達の構成
成分を含まない、並びに、ここで、内因性のTCR-ベータ遺伝子座位は破壊されている。
【0010】
又、本出願は、T細胞を含む改変した細胞を提供し、前記T細胞は以下を含む:a) TCR-
アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b) TCR-ベータのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列;c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコード
するヌクレオチド配列;d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド
配列;ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前
記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー
及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、内因性のTCR
の遺伝子座位の中に組み込まれている、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードす
るヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列
、及び前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチ
ド配列は、各々のポリペプチド配列をシングル・ポリペプチド(single polypeptide)とし
て発現することができるように配向されている、ここで、前記第2リンカーのポリペプチ
ド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペプチド配列と
の間に位置する、並びに前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドは、前記TC
R-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列がそれぞれ別個の
ポリペプチドを形成するように、前記T細胞中で切断され得る切断可能なリンカーのポリ
ペプチドである、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒に会合して機能的なTCRを形成
することができる。ある実施形態では、前記改変した細胞は、外因性のヌクレオチド配列
を含む環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチド配列は、以下を含む
:a) 前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、並びに前記第1リンカー及び前
記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、をコードするヌクレ
オチド配列;b) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及び
c) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに前記内因性
のTCR遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のTCR遺
伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている。ある実施形態では、前記改変
した細胞は、実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない。ある実施形態では、
前記改変した細胞は、前記内因性のTCR遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切
断することができるヌクレアーゼ組成物を更に含む。
【0011】
ある実施形態では、前記改変した細胞は、第2の規定されたヌクレオチド配列がコード
する非-機能的な遺伝子を生成する変異を更に含む。ある実施形態では、前記非-機能的な
遺伝子を生成する変異は、以下からなる群より選択される前記遺伝子のコーディング領域
における変異を含む:翻訳されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト
変異、アミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation
)、及びあるアミノ酸から別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mut
ation)。ある実施形態では、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、以下からなる群
より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域における変異を含む:前記遺伝子が
コードするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物の安定性
を変える変異。ある実施形態では、前記改変した細胞は、前記改変した細胞内の第2の規
定したヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌクレアーゼ組成物を更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、クラスター化された規則的に間
隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced S
hort Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌクレアーゼ又はその誘導体、転写活
性化因子様エフェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nucle
ase)(TALEN)又はその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(
ZFN)又はその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)
又はその誘導体からなる群より選択されるヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では
、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形
態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。いくつか
の実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、前記改変した細胞内で前記ヌクレアーゼを
発現させることができるヌクレオチド・ベクターを含む。いくつかの実施形態では、前記
ヌクレアーゼ組成物は、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を
含む。いくつかの実施形態では、前記crRNAはガイドRNA(gRNA)を含む、ここで、前記gRNA
は前記規定されたヌクレオチド配列に対して相補的である。いくつかの実施形態では、前
記crRNA及び前記tracrRNAは、シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上に
ある。いくつかの実施形態では、前記crRNA及び前記tracrRNAは、別個のポリヌクレオチ
ド上にある。
【0013】
いくつかの実施形態では、遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列又は
そのコードされたポリぺプチド配列の発現は、、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子
座位又は内因性のTCR遺伝子座位内の内因性プロモーターによって指示される。いくつか
の実施形態では、遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列又はそのコード
されたポリぺプチド配列の発現は、、外因性プロモーターによって指示される。いくつか
の実施形態では、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモーター、ヒト・プロモータ
ー、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイルスに由来する長い末端リ
ピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロモーターが融合したもの、
プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモーター、HIV LTRプロモーター
、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc、ベータ-アクチン、CAG、
低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター、低分子コンディショ
ナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモーター・システム、Flp-FRTコ
ンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェン・コンディショナル・プ
ロモーター・システム、からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列
、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以上である。
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記TCR-ベー
タのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、長さが200塩基以上、長さが400
塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが2000塩
基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100
塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩
基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100
塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩
基以上、又は長さが2000塩基以上である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列、及び前記内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列は、
それぞれ長さが600塩基以上である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列
の組み込み後に破壊される。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位と動作可能的に関連している内因性の遺伝子の発現は、破壊される。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、相同組換え率を増加させることができ
る追加の試薬を更に含む。いくつかの実施形態では、前記相同組換え率を増加させること
ができる追加の試薬は、相同組換え修復経路の活性化因子、非-相同末端結合(non-homolo
gous end joining)(NHEJ)修復経路の阻害因子、又はそれらの組み合わせを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、前記改変した細胞の生存率を増加させ
ることができる追加の試薬を更に含む。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞の生
存率を増加させることができる追加の試薬が、核酸感知(nucleic acid sensing)経路の阻
害因子を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸感知(nucleic acid sensing)経路は、
以下から選択される群を含む:TLR9核酸感知(nucleic acid sensing)経路、AIM2核酸感知
(nucleic acid sensing)経路、IFI16核酸感知(nucleic acid sensing)経路、cGAS核酸感
知(nucleic acid sensing)経路、及び細胞質ゾル核酸感知(nucleic acid sensing)経路。
いくつかの実施形態では、前記核酸感知(nucleic acid sensing)経路の阻害因子は、オリ
ゴヌクレオチド・アンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、前記オリゴヌクレオ
チド・アンタゴニストは、配列TTAGGG又はそのタンデム・リピートを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、プラスミド又はナノプラスミ
ドを含む。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは、500塩基未満のベクター骨格を
有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコードする
ヌクレオチド配列ではない、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列ではない、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列で
はない、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌクレオチド
配列ではない、第1の内因性のターゲット・ゲノム座位又は内因性のTCR遺伝子座位と同一
のヌクレオチド配列ではない、及び第2の内因性のターゲット・ゲノム座位又は内因性のT
CR遺伝子座位と同一のヌクレオチド配列ではない、ヌクレオチド配列である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
で増幅させたポリヌクレオチドではない。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位は、コーディング領域(coding region)を含む。いくつかの実施形態では
、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子座位は、イン
トロンを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位は、前記T細胞レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位を含む。いくつかの
実施形態では、前記第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子は
、破壊されたTCR-ベータ遺伝子である。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位は、前記TCR-ベータ遺伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記
第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-ア
ルファ遺伝子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノム・ターゲットは、免疫チェックポイント
遺伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、
PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む。いく
つかの実施形態では、前記リンカー配列は、切断可能なリンカーのポリペプチド配列をコ
ードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断されて、
前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプチドが産生される。いく
つかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチドの何れか1つは、フリン切
断部位を含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列の何れか1つは、以下からな
る群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping eleme
nt)を含む:T2A、E2A、P2A、及びF2A。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカ
ーのポリペプチドの何れか1つは、Gly-Ser-Glyリンカーを含む、任意選択的に、ここで、
前記Gly-Ser-Glyリンカーは、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipp
ing element)のN末端にある、及び任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、
N末端からC末端の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリンカー:2Aリボソーム・スキ
ッピング・エレメント(ribosome skipping element)、の並びの中にある。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列は、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(IRES)を
含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列は、外因性のプロモーターを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列は、スプライス・アクセプター配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-アルファのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードす
るヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列は、シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、ここで、前記シグナル
・ペプチドは、遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TC
R-ベータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペ
プチド、に動作可能的に連結している。いくつかの実施形態では、前記シグナル・ペプチ
ドは外因性のシグナル・ペプチドである、任意選択的に、ここで、前記外因性のシグナル
・ペプチドはヒト成長ホルモンのシグナル・ペプチドである。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記第1リンカーのポリペプチド配列及び前記第2リンカーの
ポリペプチド配列は、同じリンカーのポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では
、同じリンカーのポリペプチド配列をコードする、前記第1リンカーのポリペプチド配列
をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにこ
こで、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リ
ンカーのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、互いに対してコドンが異なる(c
odon diverged)。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding
region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記コーディング領域(coding region)
は、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機
能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免
疫チェックポイント阻害因子。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、ノン-コーディング領域(no
n-coding region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記ノン-コーディング領域(
non-coding region)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系
を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する
因子、及びT-細胞の機能を促進する因子。いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なく
とも一部はTCR遺伝子の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、前記TCR遺伝子
の少なくとも一部は、以下を含む:a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列;b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及
びc) 第2リンカー配列をコードするヌクレオチド配列。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記
TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、以下からなる群より選択
される:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR、点変異を入れたTCR、
ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有するように操作したTCR、
コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)、配列を最適化したTCR(コド
ンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最
適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び単鎖TCR、
の少なくとも一部。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポ
リペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペプチドは、操
作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較して第2の外因性のTCRポリペプチド配
列と、より強く相互作用する、任意選択的に、ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド
配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、操作した結果、内因性のTCRポリペプチ
ド配列と比較して互いにより強く相互作用する。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方
向で、リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。いくつ
かの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リ
ンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にある。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-アルファのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードす
るヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記コ
ドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列は、内因性のヌクレオチド配列に対して
コドンが異なる(codon diverged)。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は免疫細胞を含む。いくつかの実施形態で
は、前記免疫細胞はT細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記T細胞は、以下からなる
群より選択される:細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、初代T細胞、
腫瘍浸潤T細胞、操作したT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、Th1細胞、Th2細胞
、Th17細胞、アルファ-ベータT細胞、及びガンマ-デルタT細胞。いくつかの実施形態では
、前記免疫細胞は、ナチュラル・キラー細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記免疫
細胞は、以下からなる群より選択される:B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及
びナチュラル・キラーT細胞。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は幹細胞を含む。いくつかの実施形態では
、前記幹細胞は造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は胚性幹細胞を
含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は初代細胞である。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は単離した細胞である、ここで、前記単離
した細胞は対象から単離する。いくつかの実施形態では、前記対象はがんを有しているこ
とが判明している、又は、そのような疑いがある。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞はヒト細胞又はヒト由来細胞を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、ex vivoで培養した細胞である。いく
つかの実施形態では、前記ex vivoで培養した細胞は、刺激された細胞を含む。いくつか
の実施形態では、前記刺激された細胞はサイトカインで刺激されたT細胞を含み、任意選
択的に、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞はCD3で刺激されたT細胞、CD28で
刺激されたT細胞、又はCD3及びCD28で刺激されたT細胞、を含む。いくつかの実施形態で
は、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL7、IL15、又はそれらの組合せの存在下で
培養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2の存在
下で培養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2を
実質的に含まない培地中で培養する。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は組み込まれたウイルスを含まない、ここ
で、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達の構成成分と動作可能的に関
連している。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞の表面上のMHCクラスIは、ウイ
ルスを介した送達の構成成分又は組み込まれたウイルスに由来するペプチドを含まない、
ここで、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達の構成成分と動作可能的
に関連している。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、第2の外因性ヌクレオチド組成物を含
む第2の環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記第2の外因性ヌクレオチド組成物は、以下
を含む: a) 第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 第2の
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc)
前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、
並びに、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領
域と同一のヌクレオチド配列は、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での
相同組換えを促進するように配向されている。いくつかの実施形態では、前記改変した細
胞は第2の組み込まれたヌクレオチド配列を更に含む、ここで、前記第2の組み込まれたヌ
クレオチド配列は前記第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同
一の配列を含み、前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の内因性のゲノムの
ターゲット遺伝子座位に組み込まれている、及び前記第2の組み込まれたヌクレオチド配
列は前記第2の遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように配向されている。
【0048】
又、本出願は、本明細書に記載の改変した細胞の何れか一種を含む細胞の集団を提供し
、ここで前記集団の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、又は70%超は組み込ま
れたヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、前記組み
込まれたヌクレオチド配列の組み込み後に、選別、選択、又は単離されていない。
【0049】
又、本出願は、以下を含む細胞の集団を提供する:組み込まれたヌクレオチド配列、こ
こで、組み込まれたヌクレオチド配列は遺伝子の少なくとも一部を含み、前記組み込まれ
たヌクレオチド配列は内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で組み込まれている、及び
前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができ
るように配向されている、ここで、前記細胞の集団はウイルスを介した送達の構成成分を
実質的に含まない、並びにここで、前記集団中のT細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、5
0%超、60%超、又は70%超は組み込まれたヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態で
は、前記T細胞は、前記組み込まれたヌクレオチド配列の組み込み後に、選別、選択、又
は単離されていない。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、前記内因性のTCR遺伝子座位内の規定さ
れたヌクレオチド配列を切断することができるヌクレアーゼ組成物を更に含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、外因性のヌクレオチド配列を含む環状ポ
リヌクレオチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチド配列は以下を含む: a) 遺伝子
の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 前記内因性の遺伝子座位の第1領
域と同一のヌクレオチド配列、及びc) 前記内因性の遺伝子座位の第2領域と同一のヌク
レオチド配列、並びに前記内因性の遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領域と同一のヌ
クレオチド配列は、前記内因性の遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されて
いる。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、少なくとも1×106個のT細胞、少なくと
も2×106 個のT細胞、少なくとも5×106 個のT細胞、少なくとも1×107個のT細胞、又は
少なくとも5×107 個のT細胞である。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、第2の規定されたヌクレオチド配列がコ
ードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を更に含む。いくつかの実施形態では、前記
非-機能的な遺伝子を生成する変異は、以下からなる群より選択される前記遺伝子のコー
ディング領域(coding region)における変異を含む:翻訳されるタンパク質のフレームに
変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすナン
センス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ酸から別のアミノ酸への置換をもたら
すミスセンス変異(missense mutation)。いくつかの実施形態では、前記非-機能的な遺伝
子を生成する変異は、以下からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領
域(non-coding region)における変異を含む:前記遺伝子がコードするmRNA産物の発現を
変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物の安定性を変える変異。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、クラスター化された規則的に間
隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced S
hort Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフ
ェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)若
しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)若し
くはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)若し
くはその誘導体、からなる群より選択されるヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態で
は、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施
形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。
いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、前記細胞の集団内で前記ヌクレア
ーゼを発現させることができるヌクレオチド・ベクターを含む。いくつかの実施形態では
、前記ヌクレアーゼ組成物は、規定されたヌクレオチド配列でヌクレアーゼを介した切断
を指示するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、前記ガイドRNAは、CRISPR RNA(c
rRNA)及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。いくつかの実施形態では、前記c
rRNA及び前記tracrRNAは、シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上にあ
る。いくつかの実施形態では、前記crRNA及び前記tracrRNAは、別個のポリヌクレオチド
上にある。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、前記細胞の集団内の前記第2の規定され
たヌクレオチド配列を切断することができる第2ヌクレアーゼ組成物を更に含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列の発現は、前記内因性の
ゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモーターによって指示される。いくつかの
実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列の発現は、外因性のプロモーターによ
って指示される。いくつかの実施形態では、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモ
ーター、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイ
ルスに由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロ
モーターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモー
ター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc
、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモー
ター、低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモータ
ー・システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェ
ン・コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列
は、長さが100塩基以上である。いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列は、長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが600
塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが2000塩基以上、又は長さが4
000塩基以上である。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同
一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、
長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上
である。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同
一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、
長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上
である。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同
一のヌクレオチド配列及び前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一
のヌクレオチド配列は、それぞれ長さが600塩基以上である。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の組
み込み後に破壊される。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位と動作可能的に関連している内因性の遺伝子の発現は、破壊される。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、相同組換え率を増加させることができる
追加の試薬を更に含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、前記細胞の集団の生存率を増加させるこ
とができる追加の試薬を更に含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、プラスミド又はナノプラスミ
ドを含む。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは、500塩基未満のベクター骨格を
有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコードする
ヌクレオチド配列ではない、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列ではない、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列で
はない、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌクレオチド
配列ではない、前記第1の内因性のターゲット・ゲノム座位又は内因性のTCR遺伝子座位と
同一のヌクレオチド配列ではない、及び前記第2の内因性のターゲット・ゲノム座位又は
内因性のTCR遺伝子座位と同一のヌクレオチド配列ではない、ヌクレオチド配列である。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
で増幅させたポリヌクレオチドではない。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、コーディン
グ領域(coding region)を含む。いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、前記T細胞
レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記第2の規定
されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-ベータ遺伝
子である。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、前記TCR-ベ
ータ遺伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記第2の規定されたヌクレオチド配
列がコードする非-機能的な遺伝子は、破壊されたTCR-アルファ遺伝子である。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノム・ターゲットが免疫チェックポイント遺
伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、PD
-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む。いく
つかの実施形態では、前記リンカー配列は、切断可能なリンカーのポリペプチド配列をコ
ードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断されて、
前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプチドが産生される。いく
つかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチドは、以下からなる群より選
択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)を含む
:T2A、E2A、P2A、及びF2A。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペ
プチドは、フリン切断部位を含む。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーの
ポリペプチドは、Gly-Ser-Glyリンカーを含む、任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Gly
リンカーは、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)のN
末端にある、及び任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、N末端からC末端
の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリンカー:2Aリボソーム・スキッピング・エレ
メント(ribosome skipping element)、の並びの中にある。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位(internal
ribosome entry site)(IRES)を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、外因性のプロモーター配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、スプライス・アクセプター配列を含む
【0075】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、第1リンカーのポリペプチ
ド配列及び第2リンカーのポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記第1リ
ンカーのポリペプチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチド配列は、同じリンカーの
ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、同じリンカーのポリペプチド配列を
コードする、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び前
記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、コドンが異なる(co
don diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記第1リンカーのポリペプチド
配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチドをコードするヌ
クレオチド配列は、互いに対してコドンが異なる(codon diverged)。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding
region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記コーディング領域(coding region)
は、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機
能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免
疫チェックポイント阻害因子。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部はノン-コーディング領域(non-
coding region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記ノン-コーディング領域(no
n-coding region)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系を
調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因
子、及びT-細胞の機能を促進する因子。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、TCR遺伝子の少なくとも一
部を含む。いくつかの実施形態では、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下を含む:
a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b) TCR-ベータの
ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及びc) 第2リンカー配列をコードす
るヌクレオチド配列。いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、以下
からなる群より選択される:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR、
点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有する
ように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)、配列を
最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element
)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプター(C
AR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部。いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポ
リペプチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも
一部がコードするポリペプチドは、操作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較
して第2の外因性のTCRポリペプチド配列と、より強く相互作用する、任意選択的に、ここ
で、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、操
作した結果、内因性のTCRポリペプチド配列と比較して互いにより強く相互作用する。い
くつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、リンカー:TCR-アルファ
:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。いくつかの実施形態では、ここで、前
記コードされたポリぺプチド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルフ
ァ、の並びの中にある。いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列
をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレ
オチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、コ
ドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記コドンが異
なる(codon diverged)ヌクレオチド配列は、内因性のヌクレオチド配列に対してコドンが
異なる(codon diverged)。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、ヒト細胞又はヒト由来細胞を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、免疫細胞の集団を含む。いくつかの実施
形態では、前記免疫細胞の集団は、T細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、前記T
細胞の集団は、以下からなる群より選択される:細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞
、CD4+ T細胞、初代T細胞、腫瘍浸潤T細胞、操作したT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパ
ーT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、アルファ-ベータT細胞、及びガンマ-デルタT細
胞。いくつかの実施形態では、前記免疫細胞の集団はナチュラル・キラー細胞の集団を含
む。いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、以下からなる群より選択される集団を
含む:B細胞, 単球、マクロファージ、樹状細胞、及びナチュラル・キラーT細胞。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、幹細胞の集団を含む。いくつかの実施形
態では、前記幹細胞の集団は、造血幹細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、前記
幹細胞の集団は、胚性幹細胞の集団を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、初代細胞である。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は単離した細胞の集団である、ここで、前記
単離した細胞の集団は対象から単離する。いくつかの実施形態では、前記対象はがんを有
していることが判明している、又は、そのような疑いがある。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、ex vivoで培養した細胞を含む。いくつ
かの実施形態では、前記ex vivoで培養した細胞は、刺激された細胞を含む。いくつかの
実施形態では、前記刺激された細胞はサイトカインで刺激されたT細胞を含み、任意選択
的に、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞はCD3で刺激されたT細胞、CD28で刺
激されたT細胞、又はCD3及びCD28で刺激されたT細胞、を含む。いくつかの実施形態では
、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL7、IL15、又はそれらの組合せの存在下で培
養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2の存在下
で培養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2を実
質的に含まない培地中で培養する。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は第2の組み込まれたヌクレオチド配列を更
に含む、ここで、前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の遺伝子の少なくと
も一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含み、前記第2の組み込まれたヌク
レオチド配列は前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれている、
及び前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は前記第2の遺伝子の少なくとも一部を発現
することができるように配向されている。いくつかの実施形態では、前記細胞の集団は、
第2の外因性ヌクレオチド組成物を含む第2の環状ポリヌクレオチドを更に含み、前記第2
の外因性ヌクレオチド組成物は、以下を含む:a) 前記第2の遺伝子の少なくとも一部を
コードするヌクレオチド配列;b) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の
第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝
子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、ここで、前記第2の内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記第2の
内因性のゲノムのターゲット遺子座位での相同組換えを促進するように配向されている。
【0086】
また、本願は、治療を必要とする対象のためのその治療方法、が提供され、ここで、前
記治療は、本明細書に記載の治療有効量の何れかの改変した細胞又は細胞の集団を投与す
ることを含む。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞又は細胞の集団は、前記対象
に由来する。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞又は細胞の集団は、前記対象に
関して同種異系である。
【0087】
また、本願は、細胞を遺伝子改変するための方法、が提供され、前記方法は以下の工程
を含む:1) シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)を含むヌクレオチド
組成物を提供すること、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は以
下を含む:a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 内因性のゲ
ノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記内因性
のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、前記内因性のゲ
ノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内
因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記遺伝
子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部をコー
ドするヌクレオチド配列は配向されている;並びに2) 前記内因性のゲノムのターゲット
遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断することができるヌクレアーゼ組成物
を提供すること;3) 前記細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と
接触させること、4) 前記細胞をウイルスで感染させること以外の手段によって、前記ヌ
クレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物を前記細胞中に送達すること。いくつかの
実施形態では、前記方法は、前記細胞内の第2の規定されたヌクレオチド配列を切断する
ことができる第2ヌクレアーゼ組成物を提供することを更に含む、ここで、前記第2ヌクレ
アーゼ組成物を、前記接触させる工程において前記細胞と接触させる、及び前記送達する
工程において前記細胞中に送達する。いくつかの実施形態では、前記切断により、前記第
2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異が起きる
。いくつかの実施形態では、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、翻訳されるタン
パク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から終止コドンへの置
換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ酸から別のアミノ
酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation)、からなる群より選択される
前記遺伝子のコーディング領域(coding region)における変異を含む。いくつかの実施形
態では、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、前記遺伝子がコードするmRNA産物の
発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物の安定性を変える変異、からな
る群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域(non-coding region)における変
異を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は更に以下を含む:第2ヌクレオチド組成
物を提供すること、その第2組成物は以下を含む:a) 第2の遺伝子の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列;b) 第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域
と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位
の第2領域と同一のヌクレオチド配列、ここで、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル
・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上にある、前記第2の内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記第2の内因性
のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている、前記
第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記第2
の遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列は配向されている、並びに、前記第2ヌクレオチド組成物
を、前記接触させる工程において前記細胞と接触させる、及び前記送達する工程において
前記細胞中に送達する。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、クラスター化された規則的に間
隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced S
hort Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフ
ェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)若
しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)若し
くはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)若し
くはその誘導体からなる群より選択されるヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では
、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形
態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。いくつか
の実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、前記細胞内で前記ヌクレアーゼを発現させ
ることができるヌクレオチド・ベクターを含む。いくつかの実施形態では、前記接触させ
る工程は、前記細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させる
工程と前記送達する工程との間が、60分未満、45分未満、30分未満、20分未満、15分未満
、10分未満、5分未満、又は1分未満である。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記送達する工程は、エレクトロポレーション、トランスフ
ェクション、物理的な方法による細胞膜の変形、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VL
P)、及び超音波処理、からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記送達す
る工程は、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、前記コードされた
ポリペプチド配列の発現は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロ
モーターによって指示される。いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド
配列の発現は、外因性のプロモーターによって指示される。いくつかの実施形態では、前
記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモーター、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロ
モーター、レトロウイルス又はレンチウイルスに由来する長い末端リピート(long-termin
al repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロモーターが融合したもの、プロモーターの2つ
の部分が融合したもの、MMLV LTRプロモーター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモ
ーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロ
モーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター, 低分子コンディショナル・プロモータ
ー、Cre-LoxPコンディショナル・プロモーター・システム、Flp-FRTコンディショナル・
プロモーター・システム、及びタモキシフェン・コンディショナル・プロモーター・シス
テム、からなる群より選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、長さが100塩基以上である
。いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、長さが200塩基以上、長さ
が400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが2
000塩基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域又は
第2領域と同一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基、長さが100塩基、長さが200塩基、
長さが400塩基、長さが600塩基、長さが800塩基、長さが1500塩基、長さが2000塩基、又
は長さが4000塩基である。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列は、組み込み後に破壊され
る。
【0093】
いくつかの実施形態では、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に動作可能的に関連
している前記内因性の遺伝子の発現は、破壊される。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記方法は、相同組換え率又は生存率を増加させることがで
きる追加の試薬を更に含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)
は、環状プラスミド、線状DNAフラグメント、ミニサークル、及びssDNAからなる群より選
択される。いくつかの実施形態では、前記環状プラスミドは、500塩基未満のベクター骨
格を有する、ここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌ
クレオチド配列、前記第1の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位と同一のヌクレオチ
ド配列、又は前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位と同一のヌクレオチド配
列のどれでもない、ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記シングル・
ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させた
ポリヌクレオチドではない。いくつかの実施形態では、前記シングル・ポリヌクレオチド
(single polynucleotide)は、混入物質を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、
前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は、細胞生存率を低下させる
構成成分を実質的に含まない。
【0096】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、コーディン
グ領域(coding region)を含む。いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、前記細胞レ
セプター(TCR)-アルファ遺伝子座位である。いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位は、TCR-ベータ遺伝子座位である。いくつかの実施形態では、
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、免疫チェックポイント遺伝子座位である
。いくつかの実施形態では、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、PD-1、CTLA-4、BT
LA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む、いく
つかの実施形態では、前記リンカー配列は、切断可能なリンカーのポリペプチド配列をコ
ードする、ここで、発現した後に前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断されて、
前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプチドが産生される。いく
つかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、T2A、E2A、P2A、
及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome s
kipping element)を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、フリン切断
部位配列を含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列は、配列内リボソーム進入
部位(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。いくつかの実施形態では、前記リン
カー配列は、外因性のプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列
は、スプライス・アクセプター配列を更に含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding
region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記コーディング領域(coding region)
は、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機
能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免
疫チェックポイント阻害因子。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、ノン-コーディング領域(no
n-coding region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記ノン-コーディング領域(
non-coding region)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系
を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する
因子、及びT-細胞の機能を促進する因子。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、TCR遺伝子の少なくとも一
部を含む。いくつかの実施形態では、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、マウス化TCR、
ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形
成できるように操作したシステインを有するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR
(ヒトで発現するのに最適化した)、配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不
安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子
の可変領域の配列、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部、から
なる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、
以下を含む:a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b)
TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及びc) 第2リンカー配
列をコードするヌクレオチド配列。いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列は、マウス化TCR-アルファ、ヒト化TCR-アルファ、ドメイン・スワップをした
TCR-アルファ、点変異を入れたTCR-アルファ、ジスルフィド結合を形成できるように操作
したシステインを有するように操作したTCR-アルファ、コドンを最適化したTCR-アルファ
(ヒトで発現するのに最適化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化し
たTCR-アルファ(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability elemen
t)を除去することに最適化した)、からなる群より選択される。いくつかの実施形態では
、前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、マウス化TCR-ベータ、ヒト化TCR-ベータ、ドメ
イン・スワップをしたTCR-ベータ、点変異を入れたTCR-ベータ、ジスルフィド結合を形成
できるように操作したシステインを有するように操作したTCR-ベータ、コドンを最適化し
たTCR-ベータ(ヒトで発現するのに最適化した)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配
列を最適化したTCR-ベータ(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instabil
ity element)を除去することに最適化した)、からなる群より選択される。いくつかの実
施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、リンカー:TCR-アルファ:第2リン
カー:TCR-ベータ、の並びの中にある。いくつかの実施形態では、前記コードされたポリ
ぺプチド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にあ
る。いくつかの実施形態では、前記第2リンカー配列は、切断可能なリンカーのポリペプ
チド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列
は、T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エ
レメント(ribosome skipping element)を含む。いくつかの実施形態では、前記切断可能
なリンカーのポリペプチド配列は、フリン切断部位配列を含む。いくつかの実施形態では
、前記第2リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(
IRES)を含む。いくつかの実施形態では、前記第2リンカー配列は、外因性のプロモーター
を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、shRNA、siRNA、miRNA、免
疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進
する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免疫チェックポイント阻害因子、からなる
群より選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、前記第2の遺伝子の少なくとも一部は、TCR遺伝子の少なくと
も一部を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は免疫細胞を含む。いくつかの実施形態で
は、前記免疫細胞はT細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記T細胞は、以下からなる
群より選択される:細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、初代T細胞、
腫瘍浸潤T細胞、操作したT細胞、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、Th1細胞、Th2細胞
、Th17細胞、アルファ-ベータT細胞、及びガンマ-デルタT細胞。いくつかの実施形態では
、前記免疫細胞は、ナチュラル・キラー細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記免疫
細胞は、以下からなる群より選択される:B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及
びナチュラル・キラーT細胞。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は幹細胞を含む。いくつかの実施形態では
、前記幹細胞は造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記幹細胞は胚性幹細胞を
含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は初代細胞である。
【0108】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は単離した細胞である、ここで、前記単離
した細胞は対象から単離する。いくつかの実施形態では、前記対象はがんを有しているこ
とが判明している、又は、そのような疑いがある。
【0109】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞はヒト細胞又はヒト由来細胞を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は、ex vivoで培養した細胞である。いく
つかの実施形態では、前記ex vivoで培養した細胞は、刺激された細胞を含む。いくつか
の実施形態では、前記刺激された細胞はサイトカインで刺激されたT細胞を含み、任意選
択的に、ここで、前記サイトカインで刺激されたT細胞はCD3で刺激されたT細胞、CD28で
刺激されたT細胞、又はCD3及びCD28で刺激されたT細胞、を含む。いくつかの実施形態で
は、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL7、IL15、又はそれらの組合せの存在下で
培養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2の存在
下で培養する。いくつかの実施形態では、前記サイトカインで刺激されたT細胞を、IL2を
実質的に含まない培地中で培養する。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記改変した細胞は組み込まれたウイルスを含まない、ここ
で、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達の構成成分と動作可能的に関
連している。いくつかの実施形態では、前記改変した細胞の表面上のMHCクラスIは、ウイ
ルスを介した送達の構成成分又は組み込まれたウイルスに由来するペプチドを含まない、
ここで、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達の構成成分と動作可能的
に関連している。
【0112】
又、本願は、本明細書に記載される何れかの方法によって産生される改変した細胞、を
提供し、ここで、前記細胞は組み込まれたヌクレオチド配列を含む、ここで、前記組み込
まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と
同一の配列を含み、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記内因性のゲノムのターゲッ
ト遺伝子座位に組み込まれ、及び前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少な
くとも一部を発現することができるように配向される。
【0113】
本明細書に記載される何れかの方法によって産生される細胞の集団、ここで、前記集団
中の細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、又は70%超は前記組み込まれた
ヌクレオチド配列を含む、ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少
なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含み、前記組み込まれたヌク
レオチド配列は内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれ、及び前記組み込ま
れたヌクレオチド配列は前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように配向
される。
【0114】
いくつかの実施形態では、前記細胞は、前記組み込まれたヌクレオチド配列の組み込み
後に、選別、選択、又は単離されていない。いくつかの実施形態では、送達する工程後の
細胞の集団の生存率は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%
、又は少なくとも80%である。いくつかの実施形態では、前記生存率を、前記送達する工
程の4日後に評価する。いくつかの実施形態では、前記生存率を、AOPI染色によって評価
する。
【0115】
又、本願は、治療を必要とする対象のためのその治療方法、を提供し、ここで、前記治
療は、本明細書に記載の何れかの方法によって産生された、治療有効量の何れかの細胞又
は細胞の集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記細胞又は細胞の集団
は、前記対象に由来する。何れかの実施形態では、前記細胞又は細胞の集団は、前記対象
に関して同種異系である。
【0116】
又、本願は、細胞を遺伝子改変するための方法、を提供し、前記方法は、以下の工程を
含む:1) 以下を含むヌクレオチド組成物を提供すること:a) 遺伝子の少なくとも一部
をコードするヌクレオチド配列;b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域
と同一のヌクレオチド配列;及び、c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第
2領域と同一のヌクレオチド配列、ここで、前記遺伝子の少なくとも一部は、長さが100塩
基である、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynucl
eotide)上にある、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と第2領域と同
一のヌクレオチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを
促進するように配向されている、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成
物が組み込まれた後に、前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前
記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は配向されている;並びに、2)
前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断す
ることができるCRISPR/Cas9ヌクレアーゼ組成物を提供すること;3) 前記細胞を前記ヌ
クレオチド組成物及び前記CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ組成物と接触させること、並びに4)
エレクトロポレーションによって、前記ヌクレオチド組成物及び前記CRISPR/Cas9ヌク
レアーゼ組成物を前記細胞中に送達すること。
【0117】
又、本願は、規定されたT細胞レセプターを有する改変したT細胞を生成する方法、を提
供し、前記方法は、以下の工程を含む:1) 以下を含むヌクレオチド組成物を提供するこ
と:a) TCR-アルファのポリぺプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列;b) TCR-ベータのポリぺプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列
;c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;d) 第2リンカー
のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;e) 内因性のTCR遺伝子座位の第1領
域と同一のヌクレオチド配列;及び、f) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一の
ヌクレオチド配列、ここで、前記ヌクレオチド配列はシングル・ポリヌクレオチド(singl
e polynucleotide)上にある、前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一の
ヌクレオチド配列は、前記内因性のTCR遺伝子座位における相同組換えを促進するように
配向されている、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌ
クレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌク
レオチド配列、並びに第1リンカー及び第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌク
レオチド配列は、前記内因性のTCR遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記ポ
リペプチド配列のそれぞれがシングル・ポリペプチド(single polypeptide)として発現す
ることができるように配向されている、前記第1リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR
-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の
少なくとも一部、及び第2リンカーのポリペプチド配列の前に位置する、前記第2リンカー
のポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペ
プチド配列との間に位置する、並びに、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TC
R-ベータのポリペプチド配列は、それぞれ別個のポリペプチドを形成する、ここで、前記
別個のポリペプチドは一緒に相互作用して機能的なTCRを形成することができる;2) 前
記内因性のTCR遺伝子座位内の規定されたヌクレオチド配列を切断することができるヌク
レアーゼ組成物を提供すること;3) 前記T細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌク
レアーゼ組成物と接触させること、並びに4) 前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレア
ーゼ組成物を前記T細胞中に送達すること。
【0118】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記T細胞内の第2の規定されたヌクレオチド配
列を切断することができる第2ヌクレアーゼ組成物を提供することを更に含む、ここで、
前記第2ヌクレアーゼ組成物を、前記接触させる工程において前記T細胞と接触させる、及
び前記送達する工程において前記T細胞中に送達する。いくつかの実施形態では、前記切
断により、前記第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成
する変異が生じる。いくつかの実施形態では、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は
、翻訳されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレームシフト変異、アミノ酸から
終止コドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsense mutation)、及びあるアミノ
酸から別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス変異(missense mutation)、からなる
群より選択される前記遺伝子のコーディング領域(coding region)における変異を含む。
いくつかの実施形態では、前記非-機能的な遺伝子を生成する変異は、前記遺伝子がコー
ドするmRNA産物の発現を変える変異、及び前記遺伝子がコードするmRNA産物の安定性を変
える変異、からなる群より選択される前記遺伝子のノン-コーディング領域(non-coding r
egion)における変異を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記方法は、更に以下を含む:第2ヌクレオチド組成物を提
供すること、その第2組成物は以下を含む:a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌ
クレオチド配列;b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレ
オチド配列;及び、c) 前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一の
ヌクレオチド配列、ここで、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド
(single polynucleotide)上にある、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領
域と第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位
での相同組換えを促進するように配向されている、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝
子座位に前記組成物が組み込まれた後に、前記遺伝子の少なくとも一部を発現することが
できるように、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は配向されて
いる;並びに、前記第2ヌクレオチド組成物を、前記接触させる工程において前記T細胞と
接触させる、及び前記送達する工程において前記T細胞中に送達する。
【0120】
いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、クラスター化された規則的に間
隔を置いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced S
hort Palindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフ
ェクター・ヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)若
しくはその誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)若し
くはその誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)若し
くはその誘導体からなる群より選択されるヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では
、前記CRISPRファミリーのヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形
態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、予め形成されたタンパク質複合体を含む。いくつか
の実施形態では、前記ヌクレアーゼ組成物は、前記T細胞内で前記ヌクレアーゼを発現さ
せることができるヌクレオチド・ベクターを含む。いくつかの実施形態では、前記接触さ
せる工程は、前記T細胞を前記ヌクレオチド組成物及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触さ
せる工程と前記送達する工程との間が、60分未満、45分未満、30分未満、20分未満、15分
未満、10分未満、又は5分未満である。
【0121】
いくつかの実施形態では、前記送達する工程は、エレクトロポレーション、トランスフ
ェクション、物理的な方法による細胞膜の変形、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VL
P)、及び超音波処理、からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記送達す
る工程は、エレクトロポレーションを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列の発現は、前記内因性の
ゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモーターによって指示される。いくつかの
実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列の発現は、外因性のプロモーターによ
って指示される。いくつかの実施形態では、前記外因性プロモーターは、哺乳動物プロモ
ーター、ヒト・プロモーター、ウイルス・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイ
ルスに由来する長い末端リピート(long-terminal repeat)(LTR)プロモーター、2つのプロ
モーターが融合したもの、プロモーターの2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモー
ター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTRプロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc
、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモー
ター, 低分子コンディショナル・プロモーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモータ
ー・システム、Flp-FRTコンディショナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェ
ン・コンディショナル・プロモーター・システム、からなる群より選択される。
【0123】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列又は前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以上である。いくつかの実施形態では、前
記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列又は
前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、
長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さ
が1500塩基以上、長さが2000塩基以上、又は長さが4000塩基以上である。
【0124】
いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域又は第2領域と同一の
ヌクレオチド配列は、長さが50塩基、長さが100塩基、長さが200塩基、長さが400塩基、
長さが600塩基、長さが800塩基、長さが1500塩基、長さが2000塩基、又は長さが4000塩基
である。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列は、組み込み後に破壊され
る。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位と機能的に関連している内因性
の遺伝子の発現は、破壊される。
【0127】
いくつかの実施形態では、前記方法は、相同組換え率又は生存率を増加させることがで
きる追加の試薬を更に含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)
は、環状プラスミド、線状DNAフラグメント、ミニサークル、及びssDNAからなる群より選
択される。いくつかの実施形態では、前記環状プラスミドは、500塩基未満のベクター骨
格を有する、ここで、前記ベクター骨格は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少な
くとも一部をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列の少なく
とも一部をコードするヌクレオチド配列、前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペ
プチド配列をコードするヌクレオチド配列のどれでもない、ヌクレオチド配列である。い
くつかの実施形態では、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させたポリヌクレオチドではない。いくつかの実施形
態では、前記シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)は、実質的に混入物
質を含まない。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位は、コーディング領域(coding r
egion)を含む。いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位は、イントロンを
含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位は、前記TCR-アルファ遺伝子座
位を含む。いくつかの実施形態では、前記内因性のTCR遺伝子座位は、前記TCR-ベータ遺
伝子座位を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、前記第1リンカー配列は切断可能なリンカーのポリペプチド
配列を含む、ここで、発現した後に、前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断され
て、前記TCR-アルファのポリペプチド配列の少なくとも一部、前記TCR-ベータのポリペプ
チド配列の少なくとも一部、及び前記第2リンカーのポリペプチド配列、をコードするこ
とによってのみコードされるポリペプチド、が産生される。いくつかの実施形態では、前
記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選
択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)を含む
。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、フリン切断
部位配列を含む。いくつかの実施形態では、前記第1リンカーのポリペプチド配列は、IRE
Sを含む。いくつかの実施形態では、前記第1リンカー配列は、スプライス・アクセプター
配列を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、前記第2リンカー配列は切断可能なリンカーのポリペプチド
配列を含む、ここで、発現した後に、前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断され
て、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、そ
れぞれ別個のポリペプチドを形成する、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒に相互作
用して機能的なTCRを形成することができる。いくつかの実施形態では、前記切断可能な
リンカーのポリペプチド配列は、T2A、E2A、P2A、及びF2Aからなる群より選択される2Aリ
ボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping element)を含む。
いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチド配列は、フリン切断部
位配列を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記第2リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位(intern
al ribosome entry site)(IRES)を含む。いくつかの実施形態では、前記第2リンカー配列
は、外因性のプロモーターを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列は、マウス化TCR-アル
ファ、ヒト化TCR-アルファ、ドメイン・スワップをしたTCR-アルファ、点変異を入れたTC
R-アルファ、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有するように操
作したTCR-アルファ、コドンを最適化したTCR-アルファ(ヒトで発現するのに最適化した
)、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び配列を最適化したTCR-アルファ(コドンの使用頻
度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability element)を除去することに最適化した)
、からなる群より選択される。
【0135】
いくつかの実施形態では、前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、マウス化TCR-ベータ
、ヒト化TCR-ベータ、ドメイン・スワップをしたTCR-ベータ、点変異を入れたTCR-ベータ
、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有するように操作したTCR-
ベータ、コドンを最適化したTCR-ベータ(ヒトで発現するのに最適化した)、キメラ抗原
レセプター(CAR)、及び配列を最適化したTCR-ベータ(コドンの使用頻度及びRNA不安定性
エレメント(RNA instability element)を除去することに最適化した)、からなる群より
選択される。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、第1リンカー:TCR-
アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。いくつかの実施形態では、前
記コードされたポリぺプチド配列は、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルフ
ァ、の並びの中にある。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列が内因性TCR-アルファ遺伝
子座位内にある場合、前記第2の規定されたヌクレオチド配列は内因性TCR-ベータ遺伝子
座位内にある。
【0138】
いくつかの実施形態では、前記規定されたヌクレオチド配列が内因性TCR-ベータ遺伝子
座位内にある場合、前記第2の規定されたヌクレオチド配列は内因性TCR-アルファ遺伝子
座位内にある。いくつかの実施形態では、前記第2の規定されたヌクレオチド配列は、免
疫チェックポイント遺伝子座位内にある。いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なく
とも一部は、shRNA、siRNA、miRNA、サイトカイン、T-細胞の生存を促進する因子、T-細
胞の機能を促進する因子、及び免疫チェックポイント阻害因子、からなる群より選択され
る。
【0139】
又、本願は、以下を含む環状ポリヌクレオチドを含む、内因性のゲノムのターゲット遺
伝子座位での相同組換えを指示する際に使用するためのヌクレオチド組成物、を提供する
:a) 遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 内因性のゲノムのタ
ーゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及び、c) 前記内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、ここで、前記ヌクレオ
チド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)上にある、前記
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と第2領域と同一のヌクレオチド配列は
、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向され
ている、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成物が組み込まれた後に、
前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前記遺伝子の少なくとも一
部をコードするヌクレオチド配列は配向されている。いくつかの実施形態では、前記遺伝
子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長さが100塩基以上である。いく
つかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、長
さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが600塩基以上、長さが800塩基以上、長さが
1500塩基以上、長さが2000塩基以上、長さが4000塩基以上である。
【0140】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同
一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、
長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上
である。
【0141】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同
一のヌクレオチド配列は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩基以上、
長さが300塩基以上、長さが600塩基以上、長さが1000塩基以上、又は長さが2000塩基以上
である。
【0142】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同
一のヌクレオチド配列及び前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一
のヌクレオチド配列は、それぞれ、長さが600塩基以上である。
【0143】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、プラスミド又はナノプラスミ
ドを含む。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは、500塩基未満のベクター骨格を
有する、並びにここで、前記ベクター骨格は、前記遺伝子の少なくとも一部をコードする
ヌクレオチド配列ではない、及び前記第1の内因性の遺伝子座位と同一のヌクレオチド配
列ではない。
【0144】
いくつかの実施形態では、前記環状ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
で増幅させたポリヌクレオチドではない。
【0145】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、コーディン
グ領域(coding region)を含む。いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲ
ット遺伝子座位は、イントロンを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性
のTCR遺伝子座位は、前記T細胞レセプター(TCR)-アルファ遺伝子座位を含む。いくつかの
実施形態では、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位又は前記内因性のTCR遺伝子
座位は、前記T細胞レセプター(TCR)-ベータ遺伝子座位を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、前記内因性のゲノム・ターゲットは、免疫チェックポイント
遺伝子座位を含む。いくつかの実施形態では、前記免疫チェックポイント遺伝子座位は、
PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVISTAからなる群より選択される。
【0148】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、リンカー配列を含む。いく
つかの実施形態では、前記リンカー配列は切断可能なリンカーのポリペプチド配列をコー
ドする、ここで、発現した後に、前記切断可能なリンカーのポリペプチドは切断されて、
前記遺伝子の少なくとも一部によってのみコードされるポリペプチドが産生される。いく
つかの実施形態では、前記切断可能なリンカーのポリペプチドの何れか1つは、フリン切
断部位を含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー配列の何れか1つが、以下からな
る群より選択される2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipping eleme
nt)を含む:T2A、E2A、P2A、及びF2A。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカ
ーのポリペプチドの何れか1つが、Gly-Ser-Glyリンカーを含む、任意選択的に、ここで、
前記Gly-Ser-Glyリンカーは、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome skipp
ing element)のN末端にある、及び任意選択的に、ここで、前記Gly-Ser-Glyリンカーは、
N末端からC末端の方向で、フリン切断部位:Gly-Ser-Glyリンカー:2Aリボソーム・スキ
ッピング・エレメント(ribosome skipping element)、の並びの中にある。いくつかの実
施形態では、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌク
レオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列
は、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(IRES)を含む。いくつか
の実施形態では、前記リンカー配列、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードする
ヌクレオチド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド
配列は、外因性のプロモーターを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列、又は前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、
スプライス・アクセプター配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部はシグナル・ペプチドをコード
するヌクレオチド配列を含む、ここで、前記シグナル・ペプチドは、前記遺伝子の少なく
とも一部がコードするポリペプチド、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベ
ータのポリペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペプチ
ドに動作可能的に連結している。いくつかの実施形態では、前記シグナル・ペプチドは外
因性のシグナル・ペプチドであり、任意選択的に、ここで、前記外因性のシグナル・ペプ
チドはヒト成長ホルモンのシグナル・ペプチドである。
【0151】
いくつかの実施形態では、前記第1リンカーのポリペプチド配列及び前記第2リンカーの
ポリペプチド配列は、同じリンカーのポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では
、同じリンカーのポリペプチド配列をコードする、前記第1リンカーのポリペプチド配列
をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌ
クレオチド配列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにこ
こで、前記第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列及び前記第2リ
ンカーのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、互いに対してコドンが異なる(c
odon diverged)。
【0152】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、コーディング領域(coding
region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記コーディング領域(coding region)
は、以下からなる群より選択される:免疫系を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機
能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-細胞の機能を促進する因子、及び免
疫チェックポイント阻害因子。
【0153】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、ノン-コーディング領域(no
n-coding region)をコードする。いくつかの実施形態では、前記ノン-コーディング領域(
non-coding region)は、以下からなる群より選択される:shRNA、siRNA、miRNA、免疫系
を調節する因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する
因子、及びT-細胞の機能を促進する因子。
【0154】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部は、TCR遺伝子の少なくとも一
部を含む。いくつかの実施形態では、前記TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下を含む:a
) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b) TCR-ベータの
ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;及びc) 第2リンカー配列をコードす
るヌクレオチド配列。
【0155】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、又は前記
TCR遺伝子の少なくとも一部は、以下からなる群より選択される:マウス化TCR、ヒト化TC
R、ドメイン・スワップをしたTCR、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できる
ように操作したシステインを有するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで
発現するのに最適化した)、配列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エ
レメント(RNA instability element)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領
域の配列、キメラ抗原レセプター(CAR)、及び単鎖TCR、の少なくとも一部。
【0156】
いくつかの実施形態では、前記TCR-アルファのポリペプチド配列、前記TCR-ベータのポ
リペプチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部がコードするポリペプチドは、内
因性のTCRポリペプチド配列と比較して第2の外因性のTCRポリペプチド配列と、より強く
相互作用するように操作されている、任意選択的に、ここで、前記TCR-アルファのポリペ
プチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列は、内因性のTCRポリペプチド配列と
比較して、互いにより強く相互作用するように操作されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方
向で、リンカー:TCR-アルファ:第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。いくつ
かの実施形態では、前記コードされたポリぺプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リ
ンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-アルファ、の並びの中にある。
【0158】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の少なくとも一部、前記TCR-アルファのポリペプ
チド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードす
るヌクレオチド配列、又は前記TCR遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列は、コドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列を含む、並びにここで、前記コ
ドンが異なる(codon diverged)ヌクレオチド配列は、内因性のヌクレオチド配列に対して
コドンが異なる(codon diverged)。
【図面の簡単な説明】
【0159】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の図面を参照す
ることでより良く理解されるのであろう:
【0160】
図1図1は、TRAC遺伝子座位にZsGreenレポーターを組み込ませるのに使用する、一般的な編集戦略を表す概略図を提示する。TCRα遺伝子座位への一般的なターゲティング戦略では、1 kbの左側と右側のホモロジー・アーム(homology arm「HRアーム」)に挟まれ、及びP2A配列によって隔てられた、プロモーターのないZsGreen及び一部を欠いたLNGRFコーディング配列、並びにそのZsGreen及びLNGRFのカセットをTCRα遺伝子座位配列からを隔てる5'P2A配列、を含む相同組換え修復テンプレート、を、環状ナノプラスミドの中にコードして、使用する。
図2図2は、ZsGreenを組み込ませるための、一般的な編集タイムラインを示す。
図3図3は、T細胞の編集効率を、TRAC遺伝子座位に組み込ませたZsGreenレポーターを用いて示す。
図4図4は、ネオ抗原-特異的なTCR構築物(neoTCR)をTCRα遺伝子座位に組み込ませるために使用する、一般的なターゲティング戦略を表す概略図を提示する。
図5図5は、ネオ抗原-特異的なTCR構築物(neoTCR)をTCRα遺伝子座位に組み込ませるために使用する、ネオ抗原-特異的なTCR構築物の設計を示す。図5Aは、ターゲットのTCRα遺伝子座位(内因性TRAC、上パネル)及びそのCRISPR Cas9ターゲット部位(横縞、切断部位は矢印で示す)、並びに組み込まれる前の、左側及び右側のホモロジー・アーム(それぞれ、「LHA」及び「RHA」)の間に、neoTCRをコードするポリヌクレオチドが位置するようにした、環状プラスミドHRテンプレート(下パネル)を示す。図5Bは、TCRα遺伝子座位に組み込まれたneoTCR(上パネル)、転写され且つスプライシングを受けたneoTCR mRNA(中央パネル)、並びに翻訳及びその発現したneoTCRのプロセシング(下パネル)、を示している。
図6図6は、neoTCRコンストラクトを挿入して、T細胞を編集するための一般的な編集タイムラインを示す。
図7図7は、TCRα遺伝子座位の中に、neoTCR構築物が正確にゲノム組み込みが行われたことを確認するために使用した、イン‐アウトPCR技術(一般的な戦略、上パネル)及びアガロース・ゲルにて可視化したPCR増幅産物(下パネル)を示す。
図8図8は、MART-1 neoTCRの発現を、フロー・サイトメトリーにより示す。図8Aは、MART-1 neoTCRの発現を、MART-1特異的なデキストラマー染色を用いて示す。図8Bは、10日目における、MART-1特異的なデキストラマー染色を用いた、MART-1 neoTCRの編集の結果をまとめたものを示す。
図9図9は、IFNγ(左側パネル)及びIL-2(右側パネル)に関して、抗原-特異的なサイトカイン産生アッセイによる、操作したT細胞の評価を示す。
図10図10は、抗原特異的な増殖アッセイ(図10A)及び抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイ(図10B)による、操作したT細胞の評価を示す。
図11図11は、レンチウィルスによる形質導入方法を使用して作成した、MART-1又はNY-ESO neoTCRのどちらかを発現する、操作したT細胞(図11、上パネル)、又は小さい又は大きいフォーマットを用いたエレクトロポレーションを介したHR編集を使用して作成した、MART-1 neoTCRを発現する操作したT細胞(図11、下パネル)、を示す。
図12図12は、抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイによる、操作したT細胞の評価を示す。各群の上の棒から下の棒に向かって:コグネイト・ペプチド(cognate peptide)でパルスしていない非コグネイトMHC HLA-A01;10μM MART1でパルスした非コグネイトMHC HLA-A01;コグネイト・ペプチドでパルスしていない、コグネイトMHC HLA-A02;10μM MART1でパルスしたコグネイトMHC HLA-A01;MART-1コグネイト抗原ペプチドを構成的に発現するHLA-A02ターゲット細胞。
図13図13は、HRテンプレートとして、精製した環状プラスミドDNA及びPCRによって生成した線状dsDNAを使用した場合の、HRを介した編集の相対的な効率を示す。図13Aは、標準的なPCR産物(上)及びセミ-プロテクトPCR産物(semi-protect PCR product)(下)を示す。図13Bは、HRテンプレートとして、環状プラスミド、標準的なPCR産物、及びセミ-プロテクトPCR産物を用いた場合の編集効率を示す。
図14図14は、細胞数(左側)又はAOPI染色(右側)によって評価した、購入した(「pUC57」)又はイン-ハウス(in-house)で精製した(「イン-ハウス(in-house)pUC57」)を用いた場合のT細胞の生存率を示す。
図15図15は、Neo12に特異的なデキストラマー染色によって検出した場合のNeo12 neoTCRの発現を示す。
図16図16は、Neo12に特異的なデキストラマー染色によって検出した場合のNeo12 neoTCRの発現を示す。
図17図17は、特異的なデキストラマー染色によって検出した場合のneoTCRs MART-1、Neo12、及びNY-ESOの発現を示す。
図18図18は、ドナー由来のT細胞へのneoTCRの組み込みを示す。図18Aは、健常者ドナー由来又は患者由来のT細胞における、特異的なデキストラマー染色によって検出した場合のneoTCRs MART-1、Neo12、及びNY-ESOの編集効率(CD8+の%として)を示す。図18Bは、健常者ドナー由来のT細胞における、neoTCR neo12の編集効率(CD8+の%として)を示す。
図19図19は、pan-TCR抗体が結合しないCD3複合体を検出することによって評価した場合の、CD4+細胞及びCD8+細胞の編集効率を示す。
図20図20は、組み込まれたneoTCR及び内因性TCRの表面発現レベルを示す。図20Aは、同じ抗体(CD3)を用いて染色した、内因性TCR(左側ヒストグラム)及びNeo12 neoTCR TCR(右側ヒストグラム)のMFIのヒストグラムを示す。図20Bは、内因生TCRと比較した、neoTCR MART-1、Neo12、NY-ESOの表面発現レベルを解析したものを示している。*1細胞あたりのTCR発現レベルは文献に基づいている。
図21図21は、新たに単離したPBMCに由来し、及びプロディジー・プラットホーム(Prodigy platform)を用いて単離したT細胞を、大きいフォーマットで編集し、Neo12特異的なデキストラマー染色によって評価した場合の、Neo12 neoTCRの発現を示す。
図22図22は、ペプチドでパルスしたターゲット細胞(HLA-A02発現K562細胞)を使用して、編集したT細胞を評価するための、一般的な戦略を示す。
図23図23は、HLA複合体(pHLA)として予め形成されたペプチドを発現するように操作したターゲット細胞(HLA-A02発現K562細胞)を用いて、編集したT細胞を評価するための、一般的な戦略を示す。
図24図24は、抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイによる、操作したT細胞の評価を示す。*パルスしたペプチドは、ターゲット・ネオ抗原を発現するin vivo の腫瘍とは対照的に、in vitro のターゲット細胞上に、極短い時間だけ提示される。
図25図25は、抗原特異的増殖のアッセイにおける操作したT細胞の評価を示す。図25Aは、図25Bで計算された分裂細胞%で増殖していることを示す、典型的なヒストグラム・プロットを表す。
図26図26は、サイトカインIFNγ(図26A)、IL-2(図26B)、TNFα(図26C)、及びIL-6(図26D)に関する、抗原特異的なサイトカイン産生のアッセイによる、操作したT細胞の評価を示す。
図27図27は、ドナー由来T細胞を用いた場合の、編集したT細胞の評価を示す。図27Aは、健常者ドナー由来及び患者ドナー由来のT細胞の編集効率を示す。図27Bは、健常者ドナー及び患者ドナー由来のT細胞に対する、抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイを示す。図27Cは、健常者ドナー由来及び患者ドナー由来のT細胞についての抗原特異的な増殖のアッセイを示す。図27Dは、健常者ドナー由来及び患者ドナー由来のT細胞に関する抗原特異的なサイトカイン産生アッセイを示す。
図28図28は、ドナー由来T細胞を用いた場合の、編集したT細胞の評価を示す。図28Aは、Neo12 neoTCR又はMART-1 neoTCRの何れかを発現するドナーT細胞の編集効率を示す。図28Bは、Neo12 neoTCR又はMART-1 neoTCRの何れかを発現するドナーT細胞に関する、抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイを示す。図28Cは、Neo12 neoTCR又はMART-1 neoTCRの何れかを発現するドナーT細胞に関する、抗原特異的な増殖のアッセイを示す。
図29図29は、同等の効率で作成して14日後(左側パネル)及び2ヶ月後(右側パネル)での、Neo12 neoTCR又はMART-1 neoTCRの何れかを発現するドナーT細胞についての抗原特異的なT細胞を介した傷害のアッセイを示す。
図30図30は、Neo12 neoTCR(図30A)又はMART-1 neoTCR(図30B)の何れかを発現する編集したT細胞に関するアイソプレキシ解析(Isoplexis analysis)を示す。図30Cは、サイトカイン応答性に対する操作したT細胞の寄与(左側パネル)及びそれぞれのサイトカインを産生するT細胞の割合(右側パネル)を示す。
図31図31は、HSCを編集するために使用した一般的なワークフローを示す。
図32図32は、イン-アウトPCR技術によるPCR増幅産物をアガロース・ゲル上で可視化することを利用して、HSCのTCRα遺伝子座位に、neo12 neoTCR構築物が正確にゲノム組み込みが行われたことを確認したことを、示す。
図33図33は、NK細胞のTCRα遺伝子座位に組み込まれたZsGreenレポーターから、11日目にZsGreenが発現していることを実際に示す、典型的なプロットを示す。
図34図34は、イン-アウトPCR技術によるPCR増幅産物をアガロース・ゲル上で可視化することを利用して、NK細胞のTCRα遺伝子座位に、ZsGreenレポーターが正確にゲノム組み込みが行われたことを確認したことを、示す。
【発明を実施するための形態】
【0161】
発明の詳細な説明
[定義]
本明細書中で使用する場合、「抗原」には、患者特異的ネオ抗原を含む任意の抗原が含
まれる。抗原には、免疫反応を誘導することができる任意の物質が含まれる。
【0162】
本明細書中で使用する場合、「抗原特異的なT細胞」は、細胞のT細胞レセプター(TCR)
によって互いに区別される細胞をいい、T細胞レセプター(TCR)は細胞にそれらの抗原特異
性を付与する。
【0163】
本明細書中で使用する場合、「抗原複合体」、「抗原-MHC」、「抗原-MHC複合体」、「
組換え抗原-MHC複合体」、「ペプチドMHC」、「p/MHC」、及び「pHLA」は、抗原結合溝の
中のペプチドと複合体を形成した組換え主要組織適合性遺伝子複合体を指すために互換的
に使用される。本明細書中で使用する場合、用語MHCには、限定されるものではないが、
ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれるヒトMHCが含まれる。
【0164】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、疾患の症状を改善するのに有効な量、例えば、
腫瘍の成長を阻害するのに有効な量を指す。
【0165】
用語「改善する」は、疾患状態(例えばがん性疾患の状態)の治療における、任意の治
療上の有益な結果を指し、予防、重症度又は進行度の軽減、寛解、又は治癒を含む。
【0166】
用語「in situ」は、生きている生物体から分離して成長する(例えば、組織培養中で
成長する)生きている細胞で起こるプロセスをいう。
【0167】
「in vivo」という用語は、生物体内で起こるプロセスを指す。
【0168】
本明細書で使用される用語「哺乳動物」は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、限定される
ものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマ、及びブタが含
まれる。
【0169】
用語パーセント「同一性」は、2つ以上の核酸又はポリペプチドの配列において、以下
に記載する配列比較のアルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、又は当業者に利用可能
な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用して測定した場合に、又は目視検査によって測定
した場合に、最も良く一致するように比較及びアライメントしたときの、2つ以上の配列
又は部分配列に関する、同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定のパーセンテー
ジ、を指す。その使い方によっては、「同一性」パーセントは、比較対象の配列の領域に
わたって(例えば、機能的ドメインにわたって)存在することがある、又は代わりに、比
較対象の2つの配列の全長にわたって存在することがある。
【0170】
配列を比較するためには、典型的には、1つの配列が、試験配列と比較する参照配列と
しての役割をする。配列比較のアルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコ
ンピュータに入力し、必要に応じて、部分配列の位置を指定し、及び配列アルゴリズム・
プログラム・パラメータを指定する。次いで、配列比較のアルゴリズムによって、指定し
たプログラム・パラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセン
トが計算される。
【0171】
比較する配列を最適にアラインメントすることを、Smith & Waterman, Adv. Appl. Mat
h. 2:482 (1981)の局所ホモロジーのアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mo
l. Biol. 48:443 (1970)のホモロジー・アライメントのアルゴリズムによって、Pearson
& Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性を検索する方法によっ
て、これらのアルゴリズムをコンピューターで実行することによって(Wisconsin Genetic
s Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.中のG
AP, BESTFIT, FASTA,及びTFASTA)、又は目視検査によって(一般的に、Ausubelらを参照の
こと)、行うことがある。
【0172】
配列の同一性パーセント及び配列の類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズ
ムのある例はBLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:
403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、米国国
立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(<www.ncbi.
nlm.nih.gov />)を通して公開入手可能である。
【0173】
「保存的置換」又は「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸を化学的又は機能的に類似し
たアミノ酸で置換することを指す。類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技
術分野で周知である。例えば、表1~3に提供されるアミノ酸の群は、いくつかの実施形
態では、互いに保存的置換であると考えられる。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】
更なる保存的置換は、例えば、Creighton, Proteins: Structures and Molecular Prop
erties 2nd ed. (1993) W. H. Freeman & Co., New York, NYに記載されている。親タン
パク質中のアミノ酸残基の1つ以上を保存的置換することによって生成されたタンパク質
を、「保存的に改変した改変体」と呼ぶ。
【0178】
用語「アミノ酸」は、20種類の一般的な天然に存在するアミノ酸をいう。天然に存在す
るアミノ酸には、アラニン(Ala; A)、アルギニン(Arg; R)、アスパラギン(Asn; N)、アス
パラギン酸(Asp; D)、システイン(Cys; C);グルタミン酸(Glu; E)、グルタミン(Gln; Q)
、グリシン(Gly; G);ヒスチジン(His; H)、イソロイシン(Ile; I)、ロイシン(Leu; L)、
リジン(Lys; K)、メチオニン(Met; M)、フェニルアラニン(Phe; F)、プロリン(Pro; P)、
セリン(Ser; S)、スレオニン(Thr; T)、トリプトファン (Trp; W)、チロシン (Tyr; Y)、
及びバリン(Val; V)が含まれる。
【0179】
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する用語「約」
は、当該技術分野における通常の許容範囲内(例えば、平均値の2標準偏差内)と理解さ
れる。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0
.05%、又は0.01%以内と理解されることがある。
【0180】
用語「実質的に含まない(substantially free of)」は、関連する全組成物中に、構成
成分(例えば、混入物質又はウイルス構成成分)が統計的に有意な量未満存在する、ことを
意味すると理解され、関連する全組成物中に、構成成分が検出できないレベルである(即
ち、無い(free of))こと等が含まれる。統計的に有意な量未満とは、関連する組成物中
に構成成分が存在することを、統計的信頼性をもって評価することができない検出レベル
にあることを指す(例えば、p値が、0.1, 0.05 又は 0.01等である)。組成物が、10%、9
%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0001%又は0.0001%未
満の質量/体積パーセンテージ濃度で構成成分を含有する場合、前記組成物は実質的に前
記構成成分を含まないことがある。
【0181】
明細書及び添付した特許請求の範囲で使用しているように、単数形の「a」、「an」及
び「the」は、文脈が明瞭に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含んでいるこ
とに留意されたい。
【0182】
改変した細胞
本出願は、改変した細胞(例えば、ウイルス送達システムを使用せずに遺伝子の要素を
付加及び/又は除去されているように改変した初代ヒト細胞等が含まれる)を提供する。
【0183】
ある態様では、前記改変した細胞は以下を含む:外因性のヌクレオチド配列を含む環状
ポリヌクレオチドであって、前記外因性のヌクレオチド配列は以下を含む:a) 遺伝子の
少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 内因性のゲノムのターゲット遺伝子
座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記内因性のゲノムのターゲット遺
伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子
座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲッ
ト遺伝子座位での相同組換えを促進するように配向されている、並びに、ここで、前記改
変した細胞は実質的にウイルスを介した送達の構成成分を含まない。前記改変した細胞は
組み込まれたヌクレオチド配列を更に含む、ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配列
は前記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列と同一の配列を含む、前記
組み込まれたヌクレオチド配列は前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込ま
れている、並びに前記組み込まれたヌクレオチド配列は、前記遺伝子の少なくとも一部を
発現することができるように配向されている。
【0184】
別の態様では、改変した細胞を提供し、前記改変した細胞は以下を含む:T細胞、前記T
細胞は以下を含む:a) TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列
;b) TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;c) 第1リンカー
のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;d) 第2リンカーのポリペプチド配
列をコードするヌクレオチド配列;ここで、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコー
ドするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド
配列、及び前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレ
オチド配列は、内因性のTCR-アルファの遺伝子座位の中に組み込まれている、前記TCR-ア
ルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリペプチ
ド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリ
ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、各々のポリペプチド配列をシングル・ポ
リペプチド(single polypeptide)として発現することができるように配向されている、こ
こで、前記第2リンカーのポリペプチド配列は、前記TCR-アルファのポリペプチド配列と
前記TCR-ベータのポリペプチド配列との間に位置する、前記第1リンカー及び前記第2リン
カーのポリペプチドは、前記TCR-アルファのポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリ
ペプチド配列がそれぞれ別個のポリペプチドを形成するように、前記T細胞中で切断され
得る切断可能なリンカーのポリペプチドである、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒
に会合して機能的なTCRを形成することができる、ここで、前記改変した細胞は、実質的
にウイルスを介した送達の構成成分を含まない、並びに、ここで、内因性のTCR-ベータ遺
伝子座位は破壊されている。前記改変したT細胞は、外因性のヌクレオチド配列を含む環
状ポリヌクレオチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチド配列は、以下を含む:a) 前
記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポ
リペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、並びに前記第1リンカー及び前記第2リン
カーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、をコードするヌクレオチド配列
;b) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記内
因性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに前記内因性のTCR遺伝
子座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のTCR遺伝子座位
での相同組換えを促進するように配向されている。
【0185】
別の態様では、改変したT細胞を提供し、前記T細胞は以下を含む:a) TCR-アルファの
ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;b) TCR-ベータのポリペプチド配列を
コードするヌクレオチド配列;c) 第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレ
オチド配列;d) 第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;ここ
で、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベー
タのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記第1リンカー及び前記第2
リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、内因性のTCRの遺伝子座
位の中に組み込まれている、前記TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオ
チド配列、前記TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、及び前記
第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列は、
各々のポリペプチド配列をシングル・ポリペプチド(single polypeptide)として発現する
ことができるように配向されている、ここで、前記第2リンカーのポリペプチド配列は、
前記TCR-アルファのポリペプチド配列と前記TCR-ベータのポリペプチド配列との間に位置
する、並びに前記第1リンカー及び前記第2リンカーのポリペプチドは、前記TCR-アルファ
のポリペプチド配列及び前記TCR-ベータのポリペプチド配列がそれぞれ別個のポリペプチ
ドを形成するように、前記改変したT細胞中で切断され得る切断可能なリンカーのポリペ
プチドである、ここで、前記別個のポリペプチドは一緒に会合して機能的なTCRを形成す
ることができる。前記改変した細胞は、外因性のヌクレオチド配列を含む環状ポリヌクレ
オチドを更に含み、前記外因性のヌクレオチド配列は、以下を含むことがある:a) 前記
TCR-アルファのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、前記TCR-ベータのポリ
ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、並びに前記第1リンカー及び前記第2リンカ
ーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、をコードするヌクレオチド配列;
b) 前記内因性のTCR遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記内因
性のTCR遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに前記内因性のTCR遺伝子
座位の第1領域及び第2領域と同一のヌクレオチド配列は、前記内因性のTCR遺伝子座位で
の相同組換えを促進するように配向されている。前記改変したT細胞は、実質的にウイル
スを介した送達の構成成分を含まないことがある。
【0186】
細胞改変及びゲノム編集
一般的に、改変した細胞は、それらがゲノム編集されているか、又はゲノム編集され得
るように改変されている。例えば、ヌクレアーゼを介した遺伝子編集システムを用いて、
改変した細胞をゲノム編集して外因性の遺伝子を発現させることができる。そのようなも
のとして、前記改変した細胞は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位(内因性のTCR
遺伝子座位等を含む)内の、規定されたヌクレオチド配列を切断するヌクレアーゼ組成物
を含むことがある。外因性のポリヌクレオチド(例えば、外因性の遺伝子又はその一部)が
、本改変した細胞のゲノムに組み込まれている場合、細胞は改変されていると考えること
ができる。細胞は、ヌクレアーゼを介した遺伝子編集において一般的に使用される構成成
分、即ちゲノム編集を促進することができる構成成分(例えば、ヌクレアーゼ、相同組換
え修復テンプレート、CRISPRシステム・ヌクレオチド等)、を1種以上を含む場合、改変さ
れているとみなすことができる。細胞は、内因性のターゲット遺伝子座位を破壊する1種
以上のテンプレートに依らない変異等の、1種以上のテンプレートに依らない変異(例え
ば、組み込まれた外因性のポリヌクレオチドとは別個の変異)を含む場合、改変されてい
る、とみなすことができる。様々な改変は相互に排他的ではない、即ち、改変した細胞は
、組み込まれた外因性のポリヌクレオチド(例えば、外因性の遺伝子又はその一部)、及び
ヌクレアーゼを介した遺伝子編集において一般的に使用される1種類以上の構成成分(例
えば、外因性のポリヌクレオチドの組み込みを促進する構成成分)、両方を有することが
ある。
【0187】
ある例示的な実施例では、改変したT細胞は、外因性のTCR配列、内因性のTCR遺伝子座
位をターゲットとするCRISPR/Cas9 RNP、及び外因性のTCR配列をコードする相同組換え修
復テンプレート(HRT)をコードするポリヌクレオチドが組み込まれている。別の例示的な
実施例では、改変した細胞は、内因性のTCR遺伝子座位をターゲットとするCRISPR/Cas9 R
NP及び外因性のTCR配列をコードする相同組換え修復テンプレート(HRT)を有することがあ
る。
【0188】
別の例示的な実施例では、改変した細胞は、外因性の配列(例えば、遺伝子の少なくと
も一部)、内因性の遺伝子座位をターゲットとするCRISPR/Cas9 RNP、及び外因性の配列
をコードする相同組換え修復テンプレート(HRT)をコードするポリヌクレオチドが組み込
まれている。別の例示的な実施例では、改変した細胞は、内因性の遺伝子座位をターゲッ
トとするCRISPR/Cas9 RNP及び外因性の配列をコードする相同組換え修復テンプレート(HR
T)を有することがある。
【0189】
別の例示的な実施例では、改変した造血幹細胞(HSC)は、外因性の配列(例えば、遺伝
子の少なくとも一部)、内因性の遺伝子座位をターゲットとするCRISPR/Cas9 RNP、及び
外因性の配列をコードする相同組換え修復テンプレート(HRT)をコードするポリヌクレオ
チドが組み込まれている。別の例示的な実施例では、改変したHSCは、内因性の遺伝子座
位をターゲットとするCRISPR/Cas9 RNP及び外因性の配列をコードする相同組換え修復テ
ンプレート(HRT)を有することがある。
【0190】
別の例示的な実施例では、改変したナチュラル・キラー(NK)細胞は、外因性の配列(例
えば、遺伝子の少なくとも一部)、内因性の遺伝子座位をターゲットとするCRISPR/Cas9
RNP、及び外因性の配列をコードする相同組換え修復テンプレート(HRT)をコードするポリ
ヌクレオチドが組み込まれている。別の例示的な実施例では、改変したNK細胞は、内因性
の遺伝子座位をターゲットとするCRISPR/Cas9 RNP及び外因性の配列をコードする相同組
換え修復テンプレート(HRT)を有することがある。
【0191】
内因性の遺伝子の破壊
改変した細胞は、非-機能的な遺伝子を産生するか、又は産生し得るように改変してい
ることがある。
【0192】
ヌクレアーゼ組成物によって産生される非-機能的な遺伝子をもたらす変異は、テンプ
レートに依るゲノム編集(例えば、相同組換えDNA修復機構)の結果であることがある。
ゲノムのターゲット遺伝子座位において外因性のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)を発
現するようにゲノム編集された改変した細胞は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位
に動作可能的に関連している内因性の遺伝子の発現を破壊することもできる。例えば、ゲ
ノムのターゲット遺伝子座位がコードする内因性の遺伝子は、機能的に欠失を受けること
があり (例えば、外因性の遺伝子が組み込まれることによって、内因性の遺伝子又はその
一部が除去される/置換される)、又は機能的に破壊を受けることがある(例えば、内因性
の遺伝子の転写及び/又は翻訳が破壊を受けるように、内因性の遺伝子又はその一部内に
、外因性の遺伝子が組み込まれる)。ある例示的な実施例では、TCRをコードする外因性の
遺伝子を、内因性のTCR遺伝子の発現が破壊されるように、TCRアルファ定常領域をコード
するエクソンのような内因性のTCR遺伝子座位に組み込むことができる。発現が破壊され
るとは、改変していない細胞と比較して、内因性の遺伝子をコードするmRNAの発現が減少
していることがある、又は、改変していない細胞と比較して、内因性の遺伝子の翻訳が減
少していることがある。発現が破壊されるとは、改変していない細胞と比較して、内因性
の遺伝子をコードするmRNAの発現が検出できないほどになることがある、又は、改変して
いない細胞と比較して、内因性の遺伝子の翻訳が検出できないほどになることがある。
【0193】
改変した細胞は、規定されたヌクレオチド配列(即ち、ゲノムのターゲット遺伝子座位)
がコードする非-機能的な遺伝子を産生する、テンプレートに依らない変異(例えば、組み
込まれた外因性のポリヌクレオチドとは別の変異)を含む改変を有することがある。ヌク
レアーゼ組成物によって生じる、非-機能的な遺伝子をもたらす変異は、テンプレートに
依らないゲノムの削除(例えば、ヌクレアーゼによる切断によって誘導される、非-相同
末端結合(non-homologous end joining)(NHEJ)DNA修復機構によってもたらされる、ゲノ
ムの挿入又は削除(インデル(indel)とも呼ばれる))によってもたらされることがある。
非-機能的な遺伝子を生じることがある変異には、前記遺伝子のコーディング領域(coding
region)における変異(例えば、翻訳されるタンパク質のフレームに変化をもたらすフレ
ームシフト変異、アミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすナンセンス変異(nonsens
e mutation)、若しくは、あるアミノ酸から別のアミノ酸への置換をもたらすミスセンス
変異(missense mutation))、又はノン-コーディング領域(non-coding region)における変
異(例えば、その遺伝子がコードするmRNA産物の発現を変化させる変異、又はその遺伝子
がコードするmRNA産物の安定性を変化させる変異)が含まれる。改変には、改変した細胞
で、テンプレートに依らない変異を生成することができるヌクレアーゼ組成物(例えば、
規定されたヌクレオチド配列を切断することができるヌクレアーゼ組成物)を含むことが
ある。
【0194】
複数の改変
改変した細胞は、2つ以上の改変(例えば、改変した細胞中で、2つ以上のゲノム遺伝子
座位での改変)を有することがある。例えば、改変した細胞は、2つ以上のゲノム遺伝子
座位で、2つ以上の外因性のポリヌクレオチドが組み込まれていることがあり、例えば、
前記改変した細胞は、第2の組み込まれたヌクレオチド配列を更に含む、ここで、前記第2
の組み込まれたヌクレオチド配列は第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオ
チド配列と同一の配列を含み、前記第2の組み込まれたヌクレオチド配列は第2の内因性の
ゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれている、及び前記第2の組み込まれたヌクレ
オチド配列は前記第2の遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように配向され
ている。前記改変した細胞は、第2の外因性のポリヌクレオチド(例えば、第2の外因性ヌ
クレオチド組成物を含む第2の環状ポリヌクレオチド等)が組み込まれることを促進する
構成成分を有することがあり、前記第2の外因性ヌクレオチド組成物は、以下を含む: a)
第2の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列;b) 第2の内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列;及びc) 前記第2の内因
性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、並びに、前記
第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の前記第1領域及び前記第2領域と同一のヌ
クレオチド配列は、前記第2の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを
促進するように配向されている、並びに/又は、前記細胞内の第2の規定されたヌクレオ
チド配列を切断することができる第2ヌクレアーゼ組成物を有することがある。一般的に
、改変した細胞は、1つだけ又は2つだけの組み込まれたヌクレオチド配列に限定されず、
任意の数の組み込まれたヌクレオチド配列(例えば、1~10、1~2、1~3、2~3、3、4、5
、6、7、8、9、10又はそれ以上の組み込まれたヌクレオチド配列)を含むことがある。
【0195】
同様に、改変した細胞は、1~10、1~2、1~3、2~3、3、4、5、6、7、8、9、10又はそ
れ以上の組み込まれたヌクレオチド配列を生じ得る構成成分(例えば、相同組換え修復テ
ンプレート、ヌクレアーゼなど)を有することがある。ある例示的な実施例では、「多重
化した(multiplexed)」CRISPRを介する遺伝子編集アプローチを使用して、複数のゲノム
位置を切断することを指示する複数のCRISPR RNP複合体と同時に複数の相同組換え修復テ
ンプレートを導入することによって、複数の遺伝子又はその部分を組み込ませることがで
きる。複数の配列をまた、順番に組み込ませることもある。
【0196】
改変した細胞は、規定したヌクレオチド配列(即ち、ゲノムのターゲット遺伝子座位)が
コードする非-機能的な遺伝子を産生する複数のテンプレートに依らない変異などの、複
数のテンプレートに依らない変異(例えば、組み込まれた外因性のポリヌクレオチドとは
別個の変異)を含む改変を受けていることがある。改変は、改変した細胞で複数のテンプ
レートに依らない変異を産生することができるヌクレアーゼ組成物を含むことがある。例
えば、改変した細胞は、それぞれ2つ又は3つの非-機能的な遺伝子を生じる、2つ又は3つ
の別個のテンプレートに依らない変異を有することがある。一般的に、改変した細胞は、
任意の数のテンプレートに依らない変異(例えば、それぞれ、4、5、6、7、8、9、10又は
それ以上の別個のテンプレートに依らない変異)を有することがある。例示的な実施例で
は、「多重化した(multiplexed)」CRISPRを介する遺伝子編集アプローチを使用して、複
数のゲノム位置を切断することを指示する複数のCRISPR RNP複合体を同時に導入すること
によって複数の遺伝子を破壊し、複数のテンプレートに依らない変異をもたらすことがあ
る。
【0197】
改変した細胞は、複数の非-機能的な遺伝子をもたらす複数の変異を有することがある
。例えば、改変した細胞は、それぞれ2つ又は3つの非-機能的な遺伝子をもたらす2つ又は
3つの別個の変異を有することがある。一般的に、改変した細胞は任意の数の非-機能的な
遺伝子をもたらす任意の数の変異(例えば、それぞれ、4、5、6、7、8、9、10以上の非-
機能的な遺伝子をもたらす4、5、6、7、8、9、10以上の別個の変異)を有することがある
。ある例示的な実施例では、「多重化した(multiplexed)」CRISPRを介する遺伝子編集ア
プローチを使用して、複数のゲノム位置を切断することを指示する複数のCRISPR RNP複合
体を同時に導入することによって複数の遺伝子を破壊し、複数の変異をもたらすことがあ
る。複数の遺伝子を、順番に破壊することもある。ヌクレアーゼ組成物によって生成され
る非-機能的な遺伝子をもたらす変異は、テンプレートに依るゲノム編集(例えば、相同
組換えDNA修復機構)の結果であることがある。ヌクレアーゼ組成物によって生成される
非-機能的な遺伝子をもたらす変異は、テンプレートに依らないゲノムの削除(例えば、
ヌクレアーゼによる切断によって誘導される、非-相同末端結合(non-homologous end joi
ning)(NHEJ)DNA修復機構によってもたらされる、ゲノムの挿入又は削除(インデル(indel)
とも呼ばれる))によってもたらされることがある。
【0198】
複数の改変は、1つ以上のテンプレートに依らない変異と組み合わせた1つ以上の組み込
まれたヌクレオチド配列のような、記載された改変の何れかの組み合わせを含むことがあ
る。ある例示的な実施例では、「多重化した(multiplexed)」CRISPRを介する遺伝子編集
アプローチを使用して、相同性による修復(homology directed repair)を通して1つ以上
の遺伝子又はその部分を組み込み(即ち、複数のゲノム位置を切断することを指示する複
数のCRISPR RNP複合体と同時に複数の相同組換え修復テンプレートを導入する)、同時に
複数の遺伝子を破壊する(即ち、複数のゲノム位置を切断することを指示する複数のCRISP
R RNP複合体を同時に導入して、複数のテンプレートに依らない変異(例えば、複数のイ
ンデル)をもたらす)ことの両方を行うことがある。組み込むこと及び破壊することを、
順番に行うことがある。
【0199】
複数の改変を有する改変した細胞の例示的な実施例として、TCRα遺伝子座位に組み込
まれたTCR発現カセットを有する、及びTCRβ遺伝子座位が非-機能的な遺伝子であるよう
に破壊されたTCRβ遺伝子座位を有する改変したT細胞。別の例示的な実施例(複数の改変
を有する改変した細胞の例示的な実施例)として、TCRβ遺伝子座位に組み込まれたTCR発
現カセットを有する、及びTCRα遺伝子座位が非-機能的な遺伝子であるような破壊された
TCRα遺伝子座位を有する改変したT細胞。
【0200】
ターゲット遺伝子座位
前記改変した細胞は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位において(即ち、目的の
特定の遺伝子又は目的の特定のヌクレオチド配列等の、改変した細胞内の特定のゲノム位
置において)、ゲノム編集されている、又はゲノム編集されうる。内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位は、遺伝子のコーディング領域(coding region)であることがある。内
因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、イントロンのような遺伝子のノン-コーディン
グ領域(non-coding region)であることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位
は、典型的な遺伝子に典型的に関連するゲノム領域以外のノン-コーディング・ゲノム領
域(例えば、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、ノン-コーディング機能性RNA、
反復DNA要素、レトロウイルス要素、偽遺伝子などをコードする複数の領域など)である
ことがある。
【0201】
細胞の集団
ある特定の態様では、細胞の集団(例えば、T細胞の集団)が提供される。前記細胞の集
団は、本明細書に記載の改変した細胞の何れかを含むことがある。前記改変した細胞は、
細胞のヘテロな集団及び/又は種々の細胞型のヘテロな集団の中にあることがある。前記
細胞の集団は、ゲノム編集された細胞の割合に関して、ヘテロであることがある。細胞の
集団では、前記集団の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、又は
90%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。特定の態様において、細胞の
集団は組み込まれたヌクレオチド配列を含む、ここで、前記組み込まれたヌクレオチド配
列は遺伝子の少なくとも一部を含む、前記組み込まれたヌクレオチド配列は内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位で組み込まれている、及び前記組み込まれたヌクレオチド配列
は前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように配向されている、ここで、
前記細胞の集団はウイルスを介した送達の構成成分を実質的に含まない、並びに、ここで
、前記集団中の細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、又は
90%超は組み込まれたヌクレオチド配列を含む。
【0202】
細胞の集団では、前記集団の91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、若しくは97
%超、98%超、99%超、99.5%超、又は99.9%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。細胞の集団では、前記集団の20%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。細胞の集団では、前記集団の30%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。細胞の集団では、前記集団の60%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。細胞の集団では、前記集団の70%超が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。
【0203】
細胞の集団では、前記集団の10%~70%、20%~70%、30%~70%、40%~70%、50%~70%、60
%~70%、10%~80%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~80%、30
%~80%、40%~80%、50%~80%、60%~80%、70%~80% が組み込まれたヌクレオチド配列を
含むことがある。細胞の集団では、前記集団の10%~100%、20%~100%、30%~100%、40%~
100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、90%~100%、95%~100%、96%~100
%、97%~100%、98%~100%、99%~100%、99.5%~100%が組み込まれたヌクレオチド配列を
含むことがある。細胞の集団では、10%~70%が組み込まれたヌクレオチド配列を含むこと
がある。細胞の集団では、20%~70%が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。
細胞の集団では、30%~70%が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。細胞の集
団では、10%~80%が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。細胞の集団では、
20%~80%が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。細胞の集団では、30%~80%
が組み込まれたヌクレオチド配列を含むことがある。
【0204】
細胞の集団では、単一の改変(例えば、組み込まれたヌクレオチド配列)を有する細胞
のパーセンテージに関して、ヘテロであることがある。第1の改変、第2の改変、又は第1
の改変及び第2の改変の両方、の何れかを有する細胞のパーセンテージに関して、ヘテロ
であることがある(例えば、例示的な実施例として、組み込まれたヌクレオチド配列、第
2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異、又は組
み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能
的な遺伝子を生成する変異の両方、の何れかを有する細胞のパーセンテージに関して、ヘ
テロであることがある。
【0205】
細胞の集団では、前記集団の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%
超、又は90%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチド配列
がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団では、前
記集団の91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、若しくは97%超、98%超、99%超、9
9.5%超、又は99.9%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチ
ド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団で
は、前記集団の20%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチ
ド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団で
は、前記集団の30%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチ
ド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団で
は、前記集団の60%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチ
ド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団で
は、前記集団の70%超が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定されたヌクレオチ
ド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団で
は、前記集団の10%~70%、20%~70%、30%~70%、40%~70%、50%~70%、60%~70%、10%~8
0%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~80%、30%~80%、40%~8
0%、50%~80%、60%~80%、70%~80% が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
。細胞の集団では、前記集団の10%~100%、20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100
%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、90%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、
98%~100%、99%~100%、99.5%~100% が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の規定
されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがあ
る。細胞の集団では、前記集団の10%~70%が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第2の
規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むこと
がある。細胞の集団では、前記集団の20%~70%が、組み込まれたヌクレオチド配列及び第
2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むこ
とがある。細胞の集団では、前記集団の30%~70%が、組み込まれたヌクレオチド配列及び
第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含む
ことがある。細胞の集団では、前記集団の10%~80%が、組み込まれたヌクレオチド配列及
び第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含
むことがある。細胞の集団では、前記集団の20%~80%が、組み込まれたヌクレオチド配列
及び第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を
含むことがある。細胞の集団では、前記集団の30%~80%が、組み込まれたヌクレオチド配
列及び第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異
を含むことがある。
【0206】
細胞の集団では、前記集団の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%
超、又は90%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定されたヌクレオチド配列
がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞の集団では、前
記集団の10%~70%、20%~70%、30%~70%、40%~70%、50%~70%、60%~70%、10%~80%、10
%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50
%~80%、60%~80%、70%~80% が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定されたヌ
クレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある。細胞
の集団では、前記集団の91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、若しくは97%超、9
8%超、99%超、99.5%超、又は99.9%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
。細胞の集団では、前記集団の20%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
。細胞の集団では、前記集団の30%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
。細胞の集団では、前記集団の60%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
。細胞の集団では、前記集団の70%超が、組み込まれたヌクレオチド配列又は第2の規定さ
れたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むことがある
【0207】
細胞の集団では、組み込まれたヌクレオチド配列を含む改変した細胞の10%超、20%超、
30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、又は99%超が、第2
の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むこ
ともある。細胞の集団では、組み込まれたヌクレオチド配列を含む改変した細胞の10%~7
0%、20%~70%、30%~70%、40%~70%、50%~70%、60%~70%、10%~80%、10%~60%、10%~5
0%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、60%~8
0%、70%~80%, 10%~90%、20%~90%、30%~90%、40%~90%、50%~90%、60%~90%、70%~9
0%、80%~90%、10%~95%、20%~95%、30%~95%、40%~95%、50%~95%、60%~95%、70%~9
5%、80%~95%、10%~98%、20%~98%、30%~98%、40%~98%、50%~98%、60%~98%、70%~9
8%、80%~98%、10%~99%、20%~99%、30%~99%、40%~99%、50%~99%、60%~99%、70%~9
9%、80%~99%、90%~99%、95%~99%、90%~95%、及び95%~98%が、第2の規定されたヌク
レオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を生成する変異を含むこともある。
【0208】
細胞の集団では、第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な遺伝子を
生成する変異を含む改変した細胞の10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超
、80%超、90%超、95%超、98%超、又は99%超が、組み込まれたヌクレオチド配列を含むこ
ともある。細胞の集団では、第2の規定されたヌクレオチド配列がコードする非-機能的な
遺伝子を生成する変異を含む改変した細胞の10%~70%、20%~70%、30%~70%、40%~70%、
50%~70%、60%~70%、10%~80%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、
20%~80%、30%~80%、40%~80%、50%~80%、60%~80%、70%~80%, 10%~90%、20%~90%、
30%~90%、40%~90%、50%~90%、60%~90%、70%~90%、80%~90%、10%~95%、20%~95%、
30%~95%、40%~95%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、10%~98%、20%~98%、
30%~98%、40%~98%、50%~98%、60%~98%、70%~98%、80%~98%、10%~99%、20%~99%、
30%~99%、40%~99%、50%~99%、60%~99%、70%~99%、80%~99%、90%~99%、95%~99%、
90%~95%、及び95%~98% が、組み込まれたヌクレオチド配列を含むこともある。
【0209】
改変した細胞を、改変の後(例えば、ゲノム編集の後)の細胞の集団の中で富化させて
、特定の改変(例えば、外因性の遺伝子の組み込み)を富化させることがある。前記集団
を、限定されるものではないが、蛍光活性化細胞選別(FACS)(例えば、外因性の遺伝子か
ら蛍光マーカが発現若しくは共-発現する、又は前記集団を、外因性の遺伝子の発現若し
くは内因性の遺伝子の喪失を見るために、抗体を使用して染色する)、薬剤選択(例えば、
外因性の遺伝子から薬剤選択遺伝子が発現又は共-発現する)、又はアフィニティ精製(例
えば、外因性の遺伝子からアフィニティ・タグが発現又は共-発現する)等を含む方法を使
用して、富化することがある。
【0210】
特定の態様において、本明細書中に記載されるホモな集団を、改変した細胞を富化する
こと無く(例えば、細胞を改変した後(例えば、ヌクレアーゼを介した(例えば、CRISPR
を介した)ゲノム編集の後)、富化する工程を行うことなく)、得ることがある。
【0211】
細胞の集団(特に、前記集団を富化していない、改変直後の細胞の集団)は、少なくと
も10個の細胞、少なくとも100個の細胞、少なくとも1000個の細胞、少なくとも10000個の
細胞、1x106個の細胞、少なくとも2x106個の細胞、少なくとも5x106個の細胞、少なくと
も1x107個の細胞、少なくとも5x107個の細胞、少なくとも1x108個の細胞、少なくとも5x1
08個の細胞、少なくとも1x109個の細胞、又は少なくとも5x109個の細胞、であることがあ
る。前記細胞の集団(特に、前記集団を富化していない、改変直後の細胞の集団)は、少
なくとも1×107個の細胞、であることがある。前記細胞の集団(特に、前記集団を富化し
ていない、改変直後の細胞の集団)は、少なくとも5×107個の細胞、であることがある。
【0212】
遺伝子編集システム
上記のように、一般的に、改変した細胞は、ヌクレアーゼを介した編集を使用して、ゲ
ノム編集されている、又はゲノム編集されうるように、改変している。
【0213】
一般的に、ヌクレアーゼは、まず特異的な核酸配列(即ち、ヌクレアーゼが切断する「
規定されたヌクレオチド配列」)(例えば、ゲノム配列)を切断することを指示すること
によって編集を促進し、その後の編集は、テンプレートに依らないことをベースとしたDN
A修復(例えば、ヌクレアーゼによる切断によって誘導される、非-相同末端結合(non-hom
ologous end joining)(NHEJ)DNA修復機構)から生じる、又はテンプレートをベースとし
た修復(例えば、相同組換えDNA修復機構)から生じる。
【0214】
配列特異的な切断を促進するように操作することがある種々のヌクレアーゼは、当業者
に公知であり、及び、限定されるものではないが、クラスター化された規則的に間隔を置
いて配置された短いパリンドローム繰り返し(Clustered Regularly Interspaced Short P
alindromic Repeats)(CRISPR)ファミリーのヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクタ
ー・ヌクレアーゼ(Transcription activator-like effector nuclease)(TALEN)若しくは
その誘導体、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)(ZFN)若しくはそ
の誘導体、及びホーミング・エンドヌクレアーゼ(homing endonuclease)(HE)若しくはそ
の誘導体、が含まれる。特に、CRISPR/Cas9編集システム等のCRISPRを介した遺伝子編集
システムを使用することがある。ヌクレアーゼを介した編集(特に、CRISPRを介した編集
)は、Adli M (The CRISPR tool kit for genome editing and beyond. Nat Commun. 201
8 May 15;9(1):1911)においてより詳細に議論されており、それが教示する全てについて
は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0215】
CRISPRを介した遺伝子編集
一般的に、CRISPRを介した遺伝子編集システムは、CRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ及び
特定のターゲット配列への切断を指示するRNAを含む。例示的なCRISPRを介した遺伝子編
集システムは、Cas9ヌクレアーゼ並びにCRISPR RNA(crRNA)ドメイン及びトランス活性化C
RISPR(tracrRNA)ドメインを有するRNAからなるCRISPR/Cas9システムである。前記crRNAは
、典型的には、2つのRNAドメインを有する:例えばゲノム配列のようなターゲット配列(
「規定されたヌクレオチド配列」)への塩基対ハイブリダイゼーションによって、特異性
を指示するガイドRNA配列(gRNA);及びtracrRNAにハイブリダイズするRNAドメイン。trac
rRNAは、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)と相互作用し、それによってゲノムの遺伝子座位に
、ヌクレアーゼを動員することを促進することがある。前記crRNA及びtracrRNAポリヌク
レオチドは、別個のポリヌクレオチドであることがある。前記crRNA及びtracrRNAポリヌ
クレオチドは、シングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide)であることがあり
、シングル・ガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる。ここでは、Cas9システムを示すが、Cpf1シ
ステムのような他のCRISPRシステムを使用することもある。ヌクレアーゼはその誘導体、
例えば、Cas9の機能的な変異体、例えば、Cas9酵素が典型的には二本鎖を完全に切断する
こととは対極的に、規定されたヌクレオチド配列の一本鎖のみを切断することに一般的に
介在するCas9「ニッカーゼ(nickase)」変異体、を含むことがある。
【0216】
一般的に、CRISPRシステムの構成成分は、互いに相互作用して、リボ核タンパク質(RNP
)複合体を形成し、配列特異的な切断に介在する。いくつかのCRISPRシステムでは、各構
成成分を別々に生成し、及び使用し、その結果、RNP複合体を形成させることがある。い
くつかのCRISPRシステムでは、各構成成分をin vitroで別々に生成することがあり、そし
て互いにin vitroで接触させ(即ち、「複合体化」)、RNP複合体を形成させることがある
。そして、in vitroで生成したRNPを、細胞の細胞質及び/又は核(例えば、T細胞の細胞
質及び/又は核)の中に導入することがある(即ち、「送達することがある」)。前記in vi
troで生成したRNP複合体を、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、脂質
媒介トランスフェクション, 物理的な手段によって細胞膜を変形させること、脂質ナノ粒
子(LNP)、ウイルス様粒子(VLP)、及び超音波処理等を含む種々の方法によって、細胞中に
送達することがある。特定の実施例では、in vitroで生成したRNP複合体を、ヌクレオフ
ァクター/ヌクレオフェクション(登録商標) (Nucleofactor/Nucleofection(登録商標))
エレクトロポレーションをベースにした送達システム(Lonza(登録商標))を使用して、細
胞中に送達することがある。他のエレクトロポレーション・システムとしては、限定され
るものではないが、MaxCyteエレクトロポレーション・システム、Miltenyi CliniMACSエ
レクトロポレーション・システム、Neonエレクトロポレーション・システム、及びBTXエ
レクトロポレーション・システムが含まれる。CRISPRヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を、当
業者に公知の種々のタンパク質生成技術を使用して、in vitroで生成することがある(即
ち、合成及び精製することがある)。CRISPRシステムのRNA(例えば、sgRNA)を、in vitro
転写又は化学合成のような、当業者に公知の種々のRNA生成技術を使用して、in vitroで
生成することがある(即ち、合成及び精製することがある)。
【0217】
in vitroで生成したRNP複合体は、種々の比のヌクレアーゼ対gRNAで複合体化している
ことがある。例えば、in vitroで生成したRNP複合体は、1:1~1:9の間のCas9:sgRNAモル
比(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、又は1:9のCas9:sgRNAモル比)でC
as9タンパク質と複合体化しているsgRNAによって、形成され得る。in vitroで生成したRN
P複合体は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、又は約1:9のCa
s9:sgRNAモル比でCas9タンパク質と複合体化しているsgRNAによって、形成され得る。
【0218】
in vitroで生成したRNP複合体をまた、CRISPRを介した編集システムにおいて、種々の
量で使用することもある。例えば、編集したい細胞の数に応じて、添加する合計RNP量を
調整することがある(例えば、1回の反応で、多数(例えば、5×107個)の細胞を編集する
際に添加するRNP複合体の量を減らす等)。
【0219】
いくつかのCRISPRシステムでは、各構成成分(例えば、Cas9及びsgRNA)はポリヌクレオ
チドによって別々にコードされることがあり、そして各ポリヌクレオチドを同じ細胞に導
入することがある。いくつかのCRISPRシステムでは、各構成成分はシングル・ポリヌクレ
オチド(single polynucleotide)によってコードされることがあり(即ち、複数のプロモ
ーター又はマルチシストロニックな(multicistronic)ベクター、以下の例示的なマルチ
シストロニックな(multicistronic)システムの説明を参照のこと)、そして細胞に導入
することがある。それぞれのポリヌクレオチドがコードするCRISPR構成成分が細胞内で発
現すると(例えば、ヌクレアーゼの翻訳及びCRISPR RNAの転写)、RNP複合体が細胞内で形
成され、次いで部位特異的な切断が指示されることがある。
【0220】
いくつかのRNPを操作し、核の中にRNPを送達することを促進する部分を有するようにす
ることがある。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、核局在シグナル(NLS)ドメインを有するこ
とがあり、その結果、Cas9 RNP複合体が細胞の細胞質ゾルに送達されると、又はCas9が翻
訳され及びその後にRNPが形成された後に、前記NLSによって、核の中へのCas9 RNPの輸送
が更に促進されることがある。
【0221】
本明細書中に記載される改変した細胞は、非ウイルス的な方法を使用して改変している
ことがある(例えば、本明細書中に記載されるヌクレアーゼ及びCRISPRを介した遺伝子編
集システムを、非ウイルス的な方法を使用して細胞に送達することがある)。ウイルスを
介した送達(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、及びレンチウイルスをベースと
した送達方法)は、ヌクレアーゼ及びCRISPRを介した遺伝子編集システムを送達するため
に使用されてきているが、ウイルスを介したシステムには、そのウイルスのシステムが免
疫原性をもたらす構成成分も導入してしまうという問題がある。例えば、ウイルスを介し
た送達の構成成分は、ゲノムの中に組み込まれ得るウイルス又はウイルス由来のヌクレオ
チド配列を含むことがある。従って、本明細書に記載の改変した細胞は、ウイルスを介し
た送達の構成成分を実質的に含まないことがある。「ウイルスを介した送達の構成成分を
実質的に含まない」という用語は、関連する全組成物(例えば、細胞又は細胞の集団)中に
存在する1種以上のウイルスを介した送達の構成成分が、統計的に有意な量未満であるこ
とを意味すると理解され、関連する全組成物中で、ウイルスを介した送達の構成成分が検
出不可能なレベルにあること等を含む(即ち、「本明細書に記載される改変した細胞は、
ウイルスを介した送達の構成成分を含まないことがある」)。統計的に有意な量未満とは
、0.1、0.05、又は0.01を超えるp値など、ウイルスを介した送達の構成成分が関連する組
成物中に存在するということに対して、統計的信頼性が有ると見なさない検出レベルを指
すことがある。ウイルスを介した送達の構成成分には、ウイルス構造タンパク質(例えば
、キャプシド、エンベロープ、及び/又は膜融合タンパク質)等のウイルス・タンパク質
が含まれることがある。一般的に、組み込まれたウイルス配列又は導入されたウイルス・
タンパク質に由来する全てのペプチドは、細胞表層のMHC分子、特にMHCクラスI対立遺伝
子によって提示され、その後、免疫原性を引き起こすことがある。養子細胞療法等の治療
的状況においては、免疫原性は、治療有効性に悪影響を及ぼすことがある。従って、非-
ウイルス的な送達方法は、養子T細胞療法等の養子細胞療法で使用する細胞を改変及び編
集する際に有益であることがある。従って、特定の態様において、改変した細胞の表面上
のMHCクラスIには、ウイルスを介した送達の構成成分又は組み込まれたウイルス(ここで
、前記組み込まれたウイルスは前記ウイルスを介した送達の構成成分と動作可能的に関連
している)に由来するペプチドが無いことがある。
【0222】
いくつかのCRISPRシステムにおいて、2つ以上のCRISPR組成物が提供され、各々が、別
々に、同じ遺伝子又は一般的なゲノムの遺伝子座位を、2つ以上の規定されたヌクレオチ
ド配列で、ターゲットとすることがある。例えば、2つの別個のCRISPR組成物が与えられ
、互いにある一定の距離内(例えば、互いに、10塩基対以下、20塩基対以下、30塩基対以
下、40塩基対以下、50塩基対以下、100塩基対以下、200塩基対以下、300塩基対以下、400
塩基対以下、500塩基対以下、1,000塩基対以下、2,000塩基対以下、5,000塩基対以下、又
は10,000塩基対以下)にある2つの異なる規定されたヌクレオチド配列を切断するよう指
示することがある。いくつかのCRISPRシステムにおいて、2つ以上のCRISPR組成物が提供
され、各々が、別々に、同じ遺伝子又は一般的なゲノム遺伝子座位の反対鎖をターゲット
とすることがある。例えば、2つの別個のCRISPR「ニッカーゼ(nickase)」組成物が提供さ
れ、同じ遺伝子又は一般的なゲノム遺伝子座位の反対鎖を切断することを指示することが
ある。
【0223】
遺伝子編集における相同性による修復(homology directed repair (HDR))
理論に拘束されることは望まないが、一般的に、外因性の遺伝子を導入するために使用
するヌクレアーゼを介した遺伝子編集システムは、細胞の天然のDNA修復機構、特に相同
組換え(HR)修復経路、を利用する。簡単に述べると、ゲノムDNAに対して傷害(典型的には
二本鎖切断)があった後、細胞は、前記傷害を修復するためにDNAを合成する過程で、その
5'末端及び3'末端の両方が同一又は実質的に同一の配列である別のDNA源を、テンプレー
トとして使用することによって、前記傷害を解消することがある。自然の状況では、HDR
は、同じ細胞の中に存在する他の染色体をテンプレートとして使用することがある。遺伝
子編集システムにおいては、外因性のポリヌクレオチドを前記細胞の中に導入して、相同
組換えテンプレート(HRT又はHRテンプレート)として使用する。一般的に、前記HRT内に、
5'及び3'相補性末端の間に傷害がある染色体には元々見られない、如何なる外因性の配列
が付加されていたとしても(例えば、遺伝子又は遺伝子の一部)、その配列は、テンプレー
トに依るHDRの過程で、所与のゲノムの遺伝子座位の中に取り込まれる(即ち、組み込ま
れる)ことがある。従って、所与のゲノムの遺伝子座位に対する典型的なHRテンプレート
は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌクレオチド配列、内因
性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌクレオチド配列、及び遺伝子の
少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列(例えば、目的の外因性の遺伝子)を有する
【0224】
いくつかの実施例では、HRテンプレートは線状であることがある。線状HRテンプレート
の実施例としては、限定されるものではないが、線状プラスミド・ベクター、ssDNA、合
成DNA、及びPCRで増幅したDNAが挙げられる。
【0225】
特定の実施例において、HRテンプレートは、プラスミド又はナノプラスミドのような環
状であることがある。理論に束縛されることは望まないが、環状HRテンプレートは、安定
性の増加、(例えば、PCR増幅の過程での)合成エラーの減少、及び製造の容易さのような
、類似の線状テンプレートを超える特定の利点を有することがある。本明細書で実証する
ように、環状HRテンプレートは、類似の線状テンプレート(例えば、類似のサイズの線状
テンプレート)と比較して、編集効率を改善することがある。環状テンプレートには、ス
ーパーコイルになったテンプレートが含まれることがある。
【0226】
理論に束縛されることは望まないが、一般的に、使用するHRテンプレートが大きければ
大きいほど、典型的には、相同組換え(HR)修復経路は全体として効率がより低くなる。従
って、HRテンプレートから(特に、環状テンプレートから)外来ヌクレオチド配列を除去
することなどによって、HRテンプレートのサイズを制限することは有利であることがある
。例えば、ベクター骨格(即ち、遺伝子又はその部分以外の全てのヌクレオチド配列)とし
て、長さが500塩基未満であるベクター骨格(例えば、抗生物質耐性マーカー及び複製起
点以外の全ての外来配列を除去したベクター)を使用することがある。
【0227】
環状HRテンプレートに関する例示的な実施例では、ナノプラスミド(商標)(Nanoplasmid
TM)(Nature Technology)を使用する。ナノプラスミド(商標)は、Nature Technology社の
商標である。抗生物質のいらないRNA-OUT選択ベクター及び細胞株は、それぞれ、国際特
許出願WO2008153733、並びに相当する米国特許、欧州特許及びオーストラリア特許:US 2
010/0303859;EP2333091;及びAU 2008262478に、より詳細に記載されており、それらは
、それらが教示する全てについて、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。ナノ
プラスミド(商標)ベクター及び細胞株は更に、特許協力条約に基づく以下の国際特許に、
より詳細に記載されている:PCT/US 13/000259;PCT/US 13/00067;及びPCT/US 13/00068
(これらが教示する全てについて、その全体が参照により本明細書に取り込まれる)。
【0228】
理論に束縛されることは望まないが、一般的に、前記HRテンプレート中の不純物は、改
変した細胞の編集効率及び/又は改変した細胞の生存率の低下をもたらすことがある。従
って、使用するHRテンプレートは、検出限界に基づいて、不純物(例えば、HRテンプレー
トのDNA以外の任意の構成成分)を実質的に含まないか、又は混入物質を含まないようにす
ることがある。不純物としては、限定されるものではないが、精製プロセスに関連した不
純物(例えば、バッファー由来の塩又は溶媒等)、前記HRテンプレート以外のDNA及び他の
核酸、並びにHRテンプレートを生成するために使用した宿主細胞(例えば、大腸菌等のバ
クテリア細胞)の残留に由来する残留混入物質(例えば、エンドトキシン、残留宿主細胞
のタンパク質、残留宿主細胞のRNA、残留宿主細胞のgDNA、及び残留宿主細胞の脂質又は
炭水化物等)を挙げることができる。
【0229】
HRテンプレートの均一性(例えば、HRテンプレート以外のDNA及び他の核酸を含まない、
そのHRテンプレートの純度)を、アガロース・ゲル電気泳動によって評価することができ
、典型的には、純度が、アガロース・ゲル電気泳動によって評価した場合に、少なくとも
75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも98%、少なくとも95%、
少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の純度である場合、
前記HRテンプレート以外のDNA及び他の核酸を実質的に含まないとみなすことがある。HR
テンプレートは、アガロース・ゲル電気泳動によって評価した場合に、少なくとも99.5%
、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の純度で
ある場合、前記HRテンプレート以外のDNA及び他の核酸を実質的に含まないとみなすこと
がある。
【0230】
HRテンプレートにエンドトキシンがコンタミネーションしていることはリムルス変形細
胞溶解物(Limulous amoebocyte lysate(LAL))アッセイによって評価することができ、100
0 EU/mg未満、900 EU/mg未満、800 EU/mg未満、700 EU/mg未満、又は600 EU/mg未満が検
出される場合、典型的には、エンドトキシンを実質的に含まないと考えることができる。
HRテンプレートは、450 EU/mg未満、400 EU/mg未満、350 EU/mg未満、300 EU/mg未満、25
0 EU/mg未満、200 EU/mg未満、150 EU/mg未満、100 EU/mg未満、又は50 EU/mg未満が検出
される場合、エンドトキシンを実質的に含まないと考えられる。HRテンプレートは、500
EU/mg未満が検出される場合、エンドトキシンを実質的に含まないと考えられる。
【0231】
残留宿主細胞のタンパク質は、マイクロBCAによって評価することができる。HRテンプ
レートは、前記組成物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、又は0.1%
未満で残留宿主細胞のタンパク質が含まれる場合、残留宿主細胞のタンパク質を実質的に
含まないと考えられる。HRテンプレートは、前記組成物の2%未満で残留宿主細胞のタンパ
ク質が含まれる場合、残留宿主細胞のタンパク質を実質的に含まないと考えられる。
【0232】
残留宿主細胞のRNAは、アガロース・ゲル電気泳動及びSYBRゴールドを使った染色によ
って評価することができる。HRテンプレートは、前記組成物の10%未満、7.5%未満、5%未
満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、又は0.1%未満で残留宿主細胞のRNAが含まれる場合、
残留宿主細胞のRNAを実質的に含まないと考えられる。HRテンプレートは、前記組成物の5
%未満で残留宿主細胞のRNAが含まれる場合、残留宿主細胞のRNAを実質的に含まないと考
えられる。
【0233】
残留宿主細胞のゲノムDNAは、qPCRで評価できる。HRテンプレートは、前記組成物の10%
未満、7.5%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、又は0.1%未満で残留宿主細胞の
ゲノムDNAが含まれる場合、残留宿主細胞のゲノムDNAを実質的に含まないと考えられる。
HRテンプレートは、前記組成物の5%未満で残留宿主細胞のゲノムDNAが含まれる場合、残
留宿主細胞のゲノムDNAを実質的に含まないと考えられる。
【0234】
プロセスに関連した不純物(例えば、バッファー由来の塩又は溶媒など)を、当該技術分
野における公知の方法によって評価することができる。
【0235】
残留宿主細胞の脂質又は炭水化物は、当該技術分野における公知の方法によって評価す
ることができる。
【0236】
HRテンプレートは、分光測定によって評価することができる。HRテンプレートは、分光
測定によって、A260/A280比が1.8、1.8+/-.001、1.8+/-.01、又は1.8+/-.1と評価された
場合、混入物質を実質的に含まないと考えられる。
【0237】
当該技術分野における公知の他のアッセイを使用して、HRテンプレートの純度を評価す
ることができる。HRテンプレートは、当該技術分野における公知のアッセイによって評価
した場合に、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少な
くとも99%の純度であることがある。HRテンプレートは、当該技術分野における公知のア
ッセイによって評価した場合に、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%
、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の純度であることがある。HRテンプレートは、
当該技術分野における公知のアッセイによって評価した場合に、95%~100%、96%~100%、
97%~100%、98%~100%、99%~100%、99.5%~100%、又は99.9%~100%の純度であることが
ある。
【0238】
HRテンプレートは、限定されるものではないが、シリカ・カラムをベースにした精製、
フェノール・クロロホルム抽出、クロマトグラフィー精製(例えば、HPLC)、ポリアクリル
アミド・ゲル電気泳動(PAGE)精製、及びそれらの組み合わせ等を含む、当業者に公知の方
法によって精製することができる。
【0239】
HDRの後に、ターゲット配列(「規定されたヌクレオチド配列」)を除去して、内因性の
ゲノムのターゲット遺伝子座位がもはや切断され得ないようにすることがある。例えば、
HRテンプレート上にコードされる外因性のヌクレオチド配列は、所与のヌクレアーゼが切
断するターゲット配列を欠失していることがある。
【0240】
HRアーム
導入する外因性の配列に関して、前記HRテンプレートの5'及び3'末端に見出される同一
又は実質的に同一の配列(即ち、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第
2領域と同一のヌクレオチド配列)は、一般にアーム(HRアーム)と呼ばれる。HRアームは、
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領域と同一(即ち、100%同一)であることがある
。いくつかの実施例におけるHRアームは、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領域
と実質的に同一であることがある(例えば、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領
域と、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%
、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なく
とも99.9%同一)。実質的に同一なHRアームを使用することができるが、100%未満の同一性
を有するHRアームによって、前記HDR経路の効率が影響を受ける可能性があるので、HRア
ームが同一であることは、有利であることがある。
【0241】
HRアームは、一般的に、任意の長さとすることができるが、実務的な考慮事項(例えば
、HRアームの長さ及び全体のテンプレート・サイズが全体的な編集効率に及ぼす影響等)
も計算に入れることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一又
は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、5' HRアーム)は、長さが50塩基以上、長さが1
00塩基以上、長さが200塩基以上、長さが300塩基以上、長さが400塩基以上、長さが500塩
基以上、長さが600塩基以上、長さが700塩基以上、長さが800塩基以上、長さが900塩基以
上、長さが1000塩基以上、長さが1100塩基以上、長さが1200塩基以上、長さが1300塩基以
上、長さが1400塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが1600塩基以上、長さが1700塩基以
上、長さが1800塩基以上、長さが1900塩基以上、長さが2000塩基以上、であることがある
。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一又は実質的に同一のヌクレオ
チド配列(即ち、5' HRアーム)は、長さが300塩基以上、であることがある。内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、
5' HRアーム)は、長さが600塩基以上、であることがある。内因性のゲノムのターゲット
遺伝子座位の第1領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、5' HRアーム)は
、長さが1000塩基以上、であることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第
1領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、5' HRアーム)は、長さが2000塩
基以上、であることがある。
【0242】
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一又は実質的に同一のヌクレオ
チド配列(即ち、3’ HRアーム)は、長さが50塩基以上、長さが100塩基以上、長さが200塩
基以上、長さが300塩基以上、長さが400塩基以上、長さが500塩基以上、長さが600塩基以
上、長さが700塩基以上、長さが800塩基以上、長さが900塩基以上、長さが1000塩基以上
、長さが1100塩基以上、長さが1200塩基以上、長さが1300塩基以上、長さが1400塩基以上
、長さが1500塩基以上、長さが1600塩基以上、長さが1700塩基以上、長さが1800塩基以上
、長さが1900塩基以上、長さが2000塩基以上、であることがある。内因性のゲノムのター
ゲット遺伝子座位の第2領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、3’ HRア
ーム)は、長さが300塩基以上、であることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座
位の第2領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、3’ HRアーム)は、長さ
が600塩基以上、であることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と
同一又は実質的に同一のヌクレオチド配列(即ち、3’ HRアーム)は、長さが1000塩基以上
、であることがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一又は実質
的に同一のヌクレオチド配列(即ち、3’ HRアーム)は、長さが2000塩基以上、であること
がある。
【0243】
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一又は実質的に同一
のヌクレオチド配列の各々は、同じ大きさ又は異なった大きさであることがある。例えば
、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一又は実質的に同一のヌクレオ
チド配列、及び内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一又は実質的に同
一のヌクレオチド配列は、それぞれ、長さが600塩基以上、であることがある。
【0244】
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域又は第2領域と同一又は実質的に同一
のヌクレオチド配列は、切断部位(即ち、規定されたヌクレオチド配列)にすぐに隣接する
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領域と同一又は実質的に同一であることがある
。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一又は実質的に同一
のヌクレオチド配列は、それぞれ、切断部位(即ち、規定されたヌクレオチド配列)にすぐ
に隣接する内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領域と同一又は実質的に同一である
ことがある。内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域又は第2領域と同一又は実
質的に同一のヌクレオチド配列は、切断部位(即ち、定義されたヌクレオチド配列)から特
定の間隔(例えば、それぞれから、1塩基対、2塩基対以下、3塩基対以下、4塩基対以下、
5塩基対以下、6塩基対以下、7塩基対以下、8塩基対以下、9塩基対以下、10塩基対以下、1
5塩基対以下、20塩基対以下、50塩基対以下、又は100塩基対以下等)内の内因性のゲノム
のターゲット遺伝子座位の領域と同一又は実質的に同一であることがある。内因性のゲノ
ムのターゲット遺伝子座位の第1領域又は第2領域と同一又は実質的に同一のヌクレオチド
配列は、切断部位から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19、又は20塩基対内の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の領域と同一又は実質
的に同一であることがある。
【0245】
外因性の配列
遺伝子(例えば、目的の外因性の遺伝子)の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配
列は、一般的に、目的の任意の外因性のヌクレオチド配列であることがある。例えば、目
的の外因性のヌクレオチド配列は、短い配列(例えば、長さが3~100ヌクレオチド)である
ことがある。目的の外因性のヌクレオチド配列は、一塩基であることがある。更に、目的
の外因性のヌクレオチド配列は、長い配列(例えば、長さが500~3000ヌクレオチド)であ
ることがある。目的の外因性のヌクレオチド配列は、ポリぺプチド配列をコードする又は
ノン-コードであることがある。更に、目的の外因性のヌクレオチド配列は、それが挿入
されるとキメラ遺伝子を形成するように、細胞に挿入されることがある。例えば、外因性
のレセプター部分は、編集後に、内因性の細胞内部分と動作可能的に連結した(例えば、
シグナル伝達のために)外因性のレセプター部分を含むキメラ・レセプター・コーディン
グ配列を生成するように、内因性レセプターのコーディング配列中にフレームが合うよう
に挿入されることがある。
【0246】
いくつかの実施例において、遺伝子又はその一部は、タンパク質コーディング・ヌクレ
オチド配列(即ち、ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列)であることがある。
一般的に、任意のタンパク質コーディング・ヌクレオチドを使用することができる。いく
つかの実施例では、タンパク質コーディング・ヌクレオチド配列は、自己細胞治療(例え
ば、自己T細胞治療)に有用なタンパク質をコードする。いくつかの実施例において、タン
パク質コーディング・ヌクレオチド配列は、限定されるものではないが、免疫系を調節す
る因子、サイトカイン、T細胞の機能を調節する因子、T-細胞の生存を促進する因子、T-
細胞の機能を促進する因子、又は免疫チェックポイント阻害因子を含むことがある。タン
パク質コーディング・ヌクレオチド配列、特に分泌タンパク質又は膜結合タンパク質は、
シグナル・ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことがある。前記シグナル・ペ
プチドは、タンパク質コーディング・ヌクレオチド配列がコードするタンパク質に対して
内因性であることがある。前記シグナル・ペプチドは、ヒト成長ホルモンシグナル・ペプ
チドのような、タンパク質コーディング・ヌクレオチド配列がコードするタンパク質に対
して外因性であることがある。
【0247】
いくつかの実施例において、遺伝子又はその一部は、非-タンパク質コーディング・ヌ
クレオチド配列であることがある。一般的に、任意の非-タンパク質コーディング・ヌク
レオチドを使用することができる。ある場合には、非-タンパク質コーディング・ヌクレ
オチド配列は、自己細胞治療(例えば、自己T細胞治療)に有用なヌクレオチド配列である
ことがある。ある場合には、非-タンパク質コーディング・ヌクレオチド配列は、限定さ
れるものではないが、shRNA、siRNA、miRNA、及びlncRNA、を含むことがある。
【0248】
遺伝子の少なくとも一部(例えば、目的の外因性の遺伝子)をコードするヌクレオチド配
列は、一般的に、任意のサイズであって良いが、実務的な考慮事項(全体的なテンプレー
トサイズ及び遺伝子サイズがその後の全体的な編集効率に及ぼす影響等)を計算に入れる
ことがある。従って、ある特定の態様において、本願は、長さが100塩基以上の外因性の
遺伝子を発現するように、特に非ウイルス的な送達方法を使用する場合、既に報告されて
いるHR効率比よりも高いHR効率比(例えば、より高いパーセンテージの集団がポリヌクレ
オチド配列を組み込んでいる)で、ゲノム編集されている、又はゲノム編集されうる改変
した細胞を提供する。改善されたHR効率比は、長さが100塩基以上の遺伝子に同様に当て
はまる(例えば、長さが200塩基以上、長さが400塩基以上、長さが500塩基以上、長さが6
00塩基以上、長さが750塩基以上、長さが1000塩基以上、長さが1500塩基以上、長さが200
0塩基以上、長さが3000塩基以上、又は長さが4000塩基以上の外因性の配列を導入する等
)。遺伝子の少なくとも一部は、長さが1600塩基以上、であることがある。
【0249】
外因性の配列は、長さが100~200塩基、長さが100~300塩基、長さが100~400塩基、長
さが100~500塩基、長さが100~600塩基、長さが100~700塩基、長さが100~800塩基、長
さが100~900塩基、又は長さが100~1000塩基であることがある。外因性の配列は、長さ
が100~2000塩基、長さが100~3000塩基、長さが100~4000塩基、長さが100~5000塩基、
長さが100~6000塩基、長さが100~7000塩基、長さが100~8000塩基、長さが100~9000塩
基、又は長さが100~10,000塩基であることがある。外因性の配列は、長さが1000~2000
塩基、長さが1000~3000塩基、長さが1000~4000塩基、長さが1000~5000塩基、長さが10
00~6000塩基、長さが1000~7000塩基、長さが1000~8000塩基、長さが1000~9000塩基、
又は長さが1000~10,000塩基であることがある。
【0250】
外因性の配列は、長さが10塩基以上、長さが20塩基以上、長さが30塩基以上、長さが40
塩基以上、長さが50塩基以上、長さが60塩基以上、長さが70塩基以上、長さが80塩基以上
、長さが90塩基以上、又は長さが95塩基以上であることがある。外因性の配列は、長さが
1~100塩基、長さが1~90塩基、長さが1~80塩基、長さが1~70塩基、長さが1~60塩基、
長さが1~50塩基、長さが1~40塩基、又は長さが1~30塩基であることがある。外因性の
配列は、長さが1~20塩基、長さが2~20塩基、長さが3~20塩基、長さが5~20塩基、長さ
が10~20塩基、又は長さが15~20塩基であることがある。外因性の配列は、長さが1~10
塩基、長さが2~10塩基、長さが3~10塩基、長さが5~10塩基、長さが1~5塩基、又は長
さが1~15塩基であることがある。外因性の配列は、長さが15、16、17、18、19、20、21
、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41
、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61
、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81
、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、1
10、115、120、125、150、175、200、225、又は250塩基、であることがある。外因性の配
列は、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14塩基であることがあ
る。
【0251】
複数の外因性の配列を導入する実施例では、前記複数の外因性の配列は異なるサイズで
あってもよく、例えば、第1の外因性の配列は100塩基以上であってもよく、及び第2の外
因性の配列は100塩基以上であってもよく、又は第1の外因性の配列は100塩基以上であっ
てもよく、及び第2の外因性の配列は100塩基未満(例えば、長さが1~100塩基の間)であっ
てもよい。
【0252】
遺伝子の少なくとも一部は、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれた後
に発現することがある。
【0253】
いくつかの実施例では、前記HRテンプレートは、プロモーター配列をコードしない。
内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位内の内因性プロモーターが、遺伝子の少なくとも
一部をコードするヌクレオチド配列の発現を指示することがある、即ち、遺伝子の少なく
とも一部は、内因性プロモーターが前記遺伝子の少なくとも一部に動作可能的に連結する
ように、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組み込まれる。例示的な実施例では、
TCRをコードする外因性の配列は、内因性のTCRアルファのプロモーターがTCRに動作可能
的に連結するように、TCRのゲノムの遺伝子座位(例えば、エクソンをコードするTCRアル
ファ定常領域)に、組み込まれていることがある。
【0254】
いくつかの実施例では、前記HRテンプレートは、遺伝子の少なくとも一部に動作可能的
に連結した外因性プロモーター配列をコードする。外因性のプロモーターの実施例として
は、限定されるものではないが、哺乳動物プロモーター、ヒト・プロモーター、ウイルス
・プロモーター、レトロウイルス又はレンチウイルス由来の長い末端リピート(long-term
inal repeat)(LTR)由来プロモーター、2つのプロモーターが融合したもの、プロモーター
の2つの部分が融合したもの、MMLV LTRプロモーター、HIV LTRプロモーター、MCMV LTR
プロモーター、EF1a、MND、CMV、SV40、PGK1、Ubc、ベータ-アクチン、CAG、低分子誘導
性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーター, 低分子コンディショナル・プロ
モーター、Cre-LoxPコンディショナル・プロモーター・システム、Flp-FRTコンディショ
ナル・プロモーター・システム、及びタモキシフェン・コンディショナル・プロモーター
・システムが挙げられる。外因性のプロモーターは構成的であることがある。外因性のプ
ロモーターは、低分子(例えば、テトラサイクリン及び誘導体)によって、誘導可能であ
ることがある。外因性のプロモーターは、ゲノム再構成(例えば、Cre-LoxP及びFLP-Frtシ
ステム)後に活性化するプロモーター等、コンディショナルであることがある。外因性の
プロモーターは、細胞型依存的であることがある(即ち、特定の細胞の集団において、発
現を指示すること、のみ)。外因性のプロモーターは、ヒト等を含む哺乳動物であること
がある。外因性のプロモーターはウイルス性であることがある。
【0255】
外因性の配列は、リンカー配列を有することがある。例えば、外因性の配列は、内因性
のゲノムのターゲット遺伝子座位の中に組み込まれた後に、遺伝子の少なくとも一部を内
因性の配列に連結するリンカー配列を有することがある。リンカーは、切断可能なリンカ
ーのポリペプチド配列をコードすることがあり、ここで、発現した後、前記切断可能なリ
ンカーのポリペプチドは、前記遺伝子の少なくとも一部のみがコードするポリペプチドが
別個のポリペプチドとして産生されるように、切断される。切断可能なペプチドの例とし
ては、フリン切断部位及びTEV切断部位、が挙げられる。いくつかの実施例において、切
断可能なリンカーには、切断を更に促進するポリペプチド配列(例えば、フレキシブルな
リンカー(例えば、Gly-Ser-Gly配列))が含まれる。別の実施例において、リンカーは、前
記遺伝子の少なくとも一部だけがコードするポリペプチドが、翻訳の中で、別個のポリペ
プチドとして生成されるように、2Aリボソーム・スキッピング・エレメント(ribosome sk
ipping element)(例えば、T2A、E2A、P2A、及びF2A)をコードすることがある。別の実施
例において、リンカーは、前記遺伝子の少なくとも一部だけがコードするポリペプチドが
、翻訳の中で、別個のポリペプチドとして生成されるように、配列内リボソーム進入部位
(Internal Ribosome Entry Site)(IRES)をコードすることがある。リンカーは、スプライ
ス・アクセプター(例えば、ウィルスのスプライス・アクセプター等)をコードすること
がある。
【0256】
前記HRテンプレートは、内因性のヌクレオチド配列とは異なるコドンである外因性のポ
リヌクレオチドをコードすることがある。例えば、コドンが異なる(codon diverged)配列
は、コードされたタンパク質の発現が増加することを促進するために最適化されたコドン
であることがある。コドンが異なる(codon diverged)配列は、組換えを促進する配列要素
(例えば、組換えシグナル配列)のようなゲノム不安定性につながる可能性のある配列要素
を除去するために、異なるものとしたコドンであることがある。
【0257】
複数シストロン性及び複数プロモーター・システム
外因性の配列は、複数シストロン性であることがある、即ち、2つ以上の別個のポリペ
プチドが、単一のmRNA転写物から産生されることがある。外因性の配列は、種々のリンカ
ーを使用することを通して、複数シストロン性であることがあり、例えば、第1の遺伝子
の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は、第2の遺伝子の少なくとも一部をコ
ードするヌクレオチド配列に連結していることがある(例えば、5'から3'の方位で、第1の
遺伝子:リンカー:第2の遺伝子)。例えば、リンカーは、切断可能なリンカーのポリペプチ
ド配列をコードすることがある、ここで、発現した後、前記切断可能なリンカーのポリペ
プチドは、第1の遺伝子及び第2の遺伝子がコードするポリペプチドが別々に生成されるよ
うに、切断される。切断可能なペプチドの例としては、フリン切断部位及びTEV切断部位
が挙げられる。いくつかの実施例において、切断可能なリンカーには、切断を更に促進す
るポリペプチド配列(例えば、フレキシブルなリンカー(例えば、Gly-Ser-Gly配列))が含
まれる。別の実施例では、リンカーは、第1の遺伝子及び第2の遺伝子がコードするポリペ
プチドが、翻訳の中で、別々に生成されるように、2Aリボソーム・スキッピング・エレメ
ント(ribosome skipping element)(例えば、T2A、E2A、P2A、及びF2A)をコードすること
がある。別の実施例では、リンカーは、第1の遺伝子及び第2の遺伝子がコードするポリペ
プチドが、翻訳の中で、別々に生成されるように、配列内リボソーム進入部位(Internal
Ribosome Entry Site)(IRES)をコードすることがある。リンカーは、スプライス・アクセ
プター(例えば、ウィルスのスプライス・アクセプター等)をコードすることがある。一
般的に、複数シストロン性システムは、任意の数又は組合せのリンカー(例えば、上記の
もの)を使用し、任意の数の遺伝子又はその部分を発現することがある(例えば、外因性の
配列は、第1、第2、及び第3の遺伝子をコードすることがあり、各々は、第1、第2、及び
第3の遺伝子がコードするポリペプチドを別々に生成するように、リンカーによって分け
られている)。同じリンカーを複数を使用する複数シストロン性システムでは、前記リン
カーは、同じポリペプチド配列をコードすることがあるが、コドンが異なる(codon diver
ged)ヌクレオチド配列であることがある。
【0258】
外因性の配列は、複数のオープン・リーディング・フレーム(ORF)を有することがある
、即ち、外因性の配列から複数の別個のmRNA転写産物が生成することがある。外因性の配
列は、複数のプロモーターを使用することによって、複数のORFを有することがある、例
えば、第1のプロモーターが第1の遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列
に動作可能的に連結することがある、及び第2のプロモーターが第2の遺伝子の少なくとも
一部をコードするヌクレオチド配列に動作可能的に連結することがある。本明細書中で使
用する場合、「リンカー」は、上記の複数シストロン性のリンカー、のどれかを指し、上
記の追加のORFに動作可能的に連結している追加のプロモーター、又は第1のポリペプチド
配列及び第2のポリペプチド配列を連結するポリペプチド、の何れかをいうことがある。
【0259】
第2の遺伝子は、本明細書中に記載される外因性の配列のどれであっても良い(外因性の
配列のセクションを参照のこと)。
【0260】
追加試薬
いくつかの実施例において、改変した細胞(又は改変されるべき細胞)を、HDR修復を促
進する(即ち、相同性組換えの割合及び/又は効率を増大させる)(例えば、NHEJのような
他のDNA修復経路と比較してHDR修復を促進すること等が含まれる)試薬と接触させること
がある(例えば、培養することがある)。HDR修復を促進する試薬としては、限定されるも
のではないが、相同組換え修復経路の活性化因子、非-相同末端結合(non-homologous end
joining)(NHEJ)修復経路の阻害因子、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0261】
一般的に、本明細書に記載される細胞の改変及び編集の技術は、前記改変した細胞に対
して、毒性があることがある(即ち、その生存率を低下させる)。従って、ある場合では、
改変した細胞の生存率を増大させることができる試薬を提供することは、全体的な編集効
率、特にHR編集効率にとって、有利であることがある。生存率を増加させることができる
試薬には、TLR9核酸感知(nucleic acid sensing)経路、AIM2核酸感知(nucleic acid sens
ing)経路、IFI16核酸感知(nucleic acid sensing)経路、cGAS核酸感知(nucleic acid sen
sing)経路、及び細胞質核酸感知(nucleic acid sensing)経路の阻害剤などの核酸感知(nu
cleic acid sensing)経路等の阻害剤が含まれることがある。理論に束縛されることを望
むものではないが、核酸感知(nucleic acid sensing)経路のこれらの阻害因子によって、
種々の導入された(即ち、送達された)核酸(例えば、HRテンプレート及びsgRNA)に応答す
る細胞応答(例えば、自然免疫シグナル伝達経路)が減少することがあり、前記細胞応答が
減少することによって、生存率が改善することがある。例示的な実施例において、生存率
を増加させることができる試薬は、タンデム・リピートTTAGGGを有するアンタゴニストA1
51などのオリゴヌクレオチド・アンタゴニストであることがある。生存率を増加させるこ
とができる試薬には、生存因子(例えば、細胞の生存を促進する因子)を発現するようにT
細胞を改変する等、細胞培養に提供されるもの以外の因子、例えば、Porttら(Biochim Bi
ophys Acta.2011 Jan; 1813(1): 238-59)により詳細に記載されているものが含まれるこ
とがあり、それが教示する全てについて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0262】
改変したT細胞
特定の態様では、改変した細胞は改変したT細胞である。一般的に、前記改変したT細胞
は、それらがゲノム編集されているか、又はゲノム編集されうることがあるように、任意
の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で改変されていることがある。前記内因性のゲ
ノムのターゲット遺伝子座位は、内因性のTCR遺伝子座位であることがある。内因性のTCR
遺伝子座位は、TCR-アルファ遺伝子座位又はTCR-ベータ遺伝子座位であることがある。前
記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位は、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIM3、LAG3、及びVI
STA遺伝子座位などの免疫チェックポイント遺伝子座位であることがある。
【0263】
一般的に、前記改変したT細胞を、それらがゲノム編集されているか、又はゲノム編集
されうることがあるように改変して、目的の任意の外因性の遺伝子を発現することがある
。例えば、目的の外因性の遺伝子(「遺伝子の少なくとも一部」)は、TCR遺伝子の少なく
とも一部(例えば、TCR-アルファ若しくはTCR-ベータ遺伝子、又はその一部)を含むことが
ある。TCR遺伝子は、TCR-アルファ遺伝子及びTCR-ベータ遺伝子の両方を含むことがある
。TCR-アルファ遺伝子及びTCR-ベータ遺伝子を、リンカーによって連結することがある(
複数シストロン性システムの上記に記載したリンカーを参照のこと)。TCR遺伝子は、TCR-
ガンマ若しくはTCR-デルタ遺伝子、又はその一部を含むことがある。TCR遺伝子は、TCR-
ガンマ及びTCR-デルタ遺伝子の両方を含むことがある。TCR遺伝子には、限定されるもの
ではないが、マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR(domain swapped T
CR)、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有
するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)、配
列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability ele
ment)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプタ
ー(CAR)、又は単鎖TCR、を含むことがある。TCR遺伝子は、以下の少なくとも一部を含む
ことがある:マウス化TCR、ヒト化TCR、ドメイン・スワップをしたTCR(domain swapped T
CR)、点変異を入れたTCR、ジスルフィド結合を形成できるように操作したシステインを有
するように操作したTCR、コドンを最適化したTCR(ヒトで発現するのに最適化した)、配
列を最適化したTCR(コドンの使用頻度及びRNA不安定性エレメント(RNA instability ele
ment)を除去することに最適化した)、TCR遺伝子の可変領域の配列、キメラ抗原レセプタ
ー(CAR)、又は単鎖TCR。TCR遺伝子は、内因性TCRポリペプチド配列と比較して、互いによ
り強く相互作用するように操作したTCR-アルファのポリペプチド配列及びTCR-ベータのポ
リペプチド配列のような、内因性TCRポリペプチド配列と比較して第2の外因性のTCRポリ
ペプチド配列と、より強く相互作用するように操作したTCR遺伝子、を含むことがある。
【0264】
特定の態様では、改変したT細胞は、以下を有する:a)TCR-アルファのポリペプチド配
列をコードするヌクレオチド配列;b)TCR-ベータのポリペプチド配列をコードするヌクレ
オチド配列;c)第1リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列; d)第2
リンカーのポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列。ある実施例では、前記コー
ドされているポリペプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-アルファ:
第2リンカー:TCR-ベータ、の並びの中にある。ある実施例では、前記コードされたポリ
ペプチド配列は、N末端からC末端の方向で、リンカー:TCR-ベータ:第2リンカー:TCR-
アルファ、の並びの中にある。
【0265】
TCR遺伝子は、MHC上に提示される疾患特異的なエピトープを認識するTCR(例えば、連結
したTCR-アルファ及びTCR-ベータの構築物)であることがある。TCR遺伝子は、MHC対立遺
伝子上に提示されるがん特異的なネオエピトープ(ネオ抗原)を認識するTCRのような、MHC
対立遺伝子上に提示されるがん特異的なエピトープを認識するTCR(例えば、TCR-アルファ
及びTCR-ベータ鎖の両方)であることがある。TCRによる認識とは、一般的に、TCRによる
結合、又は複数のTCRによる結合の組み合わさり(即ち、TCRのクラスター化)によって免疫
反応が導かれ得るように、十分な親和性をもって抗原-MHC複合体にTCRが結合することを
指す。ネオエピトープ(特に患者特異的なネオエピトープ)を認識するTCRを同定するた
めの方法及び組成物は、WO2018165475の中で詳細に記載されており、その全体が参照によ
り本明細書に取り込まれる。更に、ネオ抗原特異的なT細胞が患者サンプル中に存在する
かどうかを同定するために有用な方法は、例えば、米国公開第2017/0003288号及びPCT/US
17/59598号(それらの全体が参照により本明細書に取り込まれる)に記載されるような、本
明細書中に記載される方法と組合せて使用することがある。
【0266】
一般的に、改変したT細胞は、任意のT細胞であって良い。改変したT細胞は、ヒトT細胞
であることがある。改変したT細胞は、不死化T細胞又はex vivoで発生を進めたT細胞(例
えば、胸腺の臓器培養物(organ culture)で発生を進めた細胞)のようなヒト由来のT細胞
であることがある。改変したT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+ T細胞、CD4+ T
細胞、初代T細胞、腫瘍浸潤T細胞、又は操作したT細胞、であることがある。改変したT細
胞は、調節性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞(例えば、Th1細胞、Th2細胞、又はTh17細胞)、
アルファ-ベータT細胞、又はガンマ-デルタT細胞、であることがある。改変したT細胞は
、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞(stem cell memory T cell)、セントラル・メモ
リーT細胞(central memory T cell)、トランジショナル・メモリーT細胞(transitional m
emory T cell)、エフェクタ・メモリーT細胞(effector memory T cell)、又はエフェクタ
ーT細胞、であることがある。改変したT細胞は、初代T細胞であることがある。
【0267】
初代T細胞などの改変したT細胞は、がんを有していることが判明している、又は、その
ような疑いがある対象などの対象から単離することがある。T細胞を単離する方法は、当
業者に公知であり、限定されるものではないが、細胞表面マーカの発現に基づく選別技術
(例えば、FACS選別)、ポジティブ単離技術(例えば、CD4及び/又はCD8 MACS(登録商標))
、及びネガティブ単離(例えば、CD3 MACS(登録商標))、磁気単離、並びにこれらの組み合
わせ、が含まれる。T細胞を単離するために使用する供給源としては、限定されるもので
はないが、血液、PBMC、アフェレーシスによって回収した血液(例えば、ロイコパック)、
及び腫瘍組織が挙げられる。
【0268】
改変したT細胞は、ex vivoで培養したT細胞などの培養T細胞であっても良い。改変した
T細胞は、対象から単離した初代T細胞などのex vivoで培養した初代T細胞であることがあ
る。培養T細胞を、1種以上のサイトカインとともに培養することがある。培養T細胞を、I
L2、IL7、IL15、又はそれらの組み合わせと共に培養することがある。例えば、培養T細胞
をIL2と共に培養することがある。別の実施例では、培養T細胞をIL7及びIL15と共に培養
することがある。別の実施形態では、培養T細胞をIL2、IL7、及びIL15と共に培養するこ
とがある。別の実施例では、培養T細胞を、IL2の非存在下(実質的にIL2を含まない)で、I
L7及びIL15と共に培養することがある。別の実施例では、培養T細胞をIL21だけを、IL2、
IL7、及び/又はIL15と組み合わせて(例えば、IL2と組み合わせて、IL7と組み合わせて、
IL15と組み合わせて、又はIL7及びIL15と組み合わせて)培養することがある。培養T細胞
を刺激することがあり、例えば、1種以上の刺激分子(例えば、レセプター・アゴニスト)
で培養することがある。刺激分子としては。限定されるものではないが、CD3及びCD28が
挙げられる。例えば、培養T細胞をCD3で刺激することがある(CD3刺激T細胞)。別の実施例
では、培養T細胞をCD28で刺激することがある(CD28刺激T細胞)。別の実施例では、培養T
細胞をCD3及びCD28の両方で刺激することがある(CD3及びCD28刺激T細胞)。刺激分子を、
プレートの表面(プレート結合)又はビーズの表面(ビーズ結合)などの表面に固定化するこ
とがある。
【0269】
例示的な実施例では、改変したT細胞は、腫瘍抗原、ネオ抗原、腫瘍ネオ抗原、ウイル
ス抗原、ホスホ-抗原(phospho-antigen)、バクテリア抗原、微生物抗原、又はそれらの組
み合わせなどの特異的なエピトープ(即ち、抗原)を認識するTCRを発現するように、ゲノ
ム編集した初代T細胞であることがある。
【0270】
例示的な実施例では、改変したT細胞は、MHC対立遺伝子上に提示されるがん特異的なネ
オエピトープ(ネオ抗原)を認識するTCRのような、がん特異的なエピトープを認識するTCR
を発現するように、ゲノム編集した初代T細胞であることがある。本明細書中で使用する
場合、「ネオ抗原」という用語は、例えば、腫瘍細胞における変異又は腫瘍細胞に特異的
な翻訳後修飾を介して、対応する野生型の親抗原とは区別される、少なくとも1つの変化
を有する抗原である。ネオ抗原は、ポリペプチド配列又はヌクレオチド配列を含むことが
ある。変異には、フレームシフト又は非フレームシフトのインデル、ミスセンス若しくは
ナンセンス置換、スプライス部位の変化、ゲノム再構成若しくは遺伝子融合、又はneoORF
を生じる任意のゲノム又は発現の変化が含まれることがある。変異にはまた、スプライス
変異体が含まれることもある。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾には、異常なリン酸化が含
まれることがある。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾にはまた、プロテアソームでスプライ
スされた抗原(proteasome-generated spliced antigen)が含まれることもある(Liepe et
al., A large fraction of HLA class I ligands are proteasome-generated spliced pe
ptides: Science. 2016 Oct 21 ;354(6310):354-358.を参照のこと)。ネオ抗原を、対象
に由来する腫瘍、ウイルス、又はバクテリアの配列データを解析することによって、選択
し、1つ以上の体細胞変異を同定することがある(例えば、in silico 予測アルゴリズムを
使用して配列データを解析すること)。予測アルゴリズムは、対象のネオ抗原とMHC対立遺
伝子との間の結合を予測するためのMHC結合アルゴリズムであることがある。
【0271】
別の例示的な実施例では、改変したT細胞は、対象から単離し、及びゲノム編集して、
対象のMHC対立遺伝子上に提示されたがん特異的なネオエピトープ(ネオ抗原)を認識するT
CRのようながん特異的なエピトープを認識するTCRを発現する、初代T細胞であることがあ
る。
【0272】
別の例示的な実施例では、改変したT細胞は、対象から単離し、及びゲノム編集をして
、対象のMHC対立遺伝子上に提示されると予測されるがん特異的なネオエピトープ(ネオ抗
原)を認識するTCRのような、がん特異的なエピトープを認識するTCRを発現する、初代T細
胞であることがある。MHCによる提示を予測する方法は、当業者に公知であり、及び、限
定されるものではないが、配列データを質量分析及びMHCによる提示の予測と組み合わせ
ること(例えば、米国公開第2017/0199961号、これが教示することの全てが、参照により
本明細書に取り込まれる)によって、及び配列データをMHCによる結合親和性の予測と組み
合わせること(例えば、米国特許第9,115,402号、これが教示することの全てが、参照によ
り本明細書に取り込まれる)によって、ネオ抗原を同定すること、が含まれる。
【0273】
別の例示的な実施例では、改変したT細胞は、対象に対して同種異系であり、及びゲノ
ム編集をして、対象のMHC対立遺伝子上に提示されたがん特異的なネオエピトープ(ネオ抗
原)を認識するTCRのような、がん特異的なエピトープを認識するTCRを発現する、初代T細
胞であることがある。同種異系のT細胞は、改変したT細胞を投与した結果としての免疫原
性が低下していることが所望される実施例におけるように、HLA型が決定され、対象に適
合している(HLA適合)ことがある。ヒト白血球抗原(HLA)の型決定(typing)は、前記患者の
腫瘍又は血中サンプルから決定することがある。ヒト集団において一般に見出されるHLA
はまた、ネオ抗原の予測アルゴリズムに含まれていることもあり、例えば、コーカシアン
におけるHLA-A*02、24、01;HLA-B*35、44、51; DRB1*11、13、07;アフロ-ブラジリア
ン(afro-brazialians)におけるHLA-A*02、03、30;HLA-B*35、15、44; DRB1*13、11、03
;及びアジア人におけるHLA-A*24、02、26;HLA-B*40、51、52;DRB1*04、15、09、であ
る。HLA遺伝子座位に関する特定の対合であることもある。ヒト集団に見出される一般的
な対立遺伝子は、Bardiらが更に報告しており(Rev Bras Hematol Hemoter.2012; 34(1):
25-30)、これは、それが教示することの全てが、参照により本明細書に取り込まれる。HL
Aの情報を、Fritsch et al、2014、Cancer Immunol Res、2:522-529の中で、より詳細に
報告されているように(その全内容は参照により本明細書に取り込まれる)、MHC結合の
予測アルゴリズムにおいて同定した推定されるネオ抗原ペプチド配列と一緒に利用するこ
とがある。
【0274】
改変した初代細胞
特定の態様では、改変した細胞は、改変した初代細胞である。一般的に、前記改変した
初代細胞は、任意の内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で、初代細胞がゲノム編集さ
れているか、又はゲノム編集され得るように改変されている。一般的に、前記改変した初
代細胞は、目的の任意の外因性の遺伝子を発現するように、初代細胞がゲノム編集されて
いるか、又はゲノム編集され得るように改変されている。
【0275】
一般的に、改変した初代細胞は、任意の初代細胞であって良い。例示的な初代細胞とし
ては、幹細胞、ヒト幹細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞(例えば、造血細胞)が挙げられる
。免疫細胞の例としては、限定されるものではないが、B細胞、T細胞, 単球、マクロファ
ージ、樹状細胞、及びナチュラル・キラー(NK)細胞が挙げられる。免疫細胞は、NK細胞で
あることがある。免疫細胞は、NK-T細胞であることがある。免疫細胞には、適応免疫系の
及び/又は自然免疫系の細胞が含まれることがある。ヒト幹細胞等を含む幹細胞は、造血
幹細胞であることがある。
【0276】
改変した初代細胞は、ヒト初代細胞であることがある。改変した初代細胞は、腫瘍浸潤
初代細胞又は操作した初代細胞であることがある。改変した初代細胞は、初代T細胞であ
ることがある。改変した初代細胞は、造血幹細胞(hematopoietic stem cell (HSC))であ
ることがある。改変した初代細胞は、ナチュラル・キラー細胞であることがある。改変し
た初代細胞は、任意の体細胞であっても良い。
【0277】
改変した初代細胞は、例えば、がんを有していることが判明している、又は、そのよう
な疑いがある対象などの対象から単離することがある。初代細胞を単離する方法は、当業
者に公知であり、限定されるものではないが、細胞表面マーカの発現に基づく選別技術(
例えば、FACS選別)、ポジティブ単離技術、及びネガティブ単離、磁気単離、並びにこれ
らの組み合わせ、が含まれる。
【0278】
改変した初代細胞は、ex vivoで培養した初代細胞などの培養初代細胞であることがあ
る。改変した初代細胞は、対象から単離した初代細胞等の、ex vivoで培養した初代細胞
であることがある。培養した初代細胞を、1種以上のサイトカインと共に培養することが
ある。
【0279】
相同組換え修復による細胞編集方法(Homology Repair Directed Cell Editing Methods
)
ある態様において、細胞を遺伝的に改変するための方法が提供される。
【0280】
細胞を遺伝的に改変するための方法には、本明細書中に記載される任意のHRテンプレー
トを提供すること、本明細書中に記載される任意のヌクレアーゼ組成物を提供すること、
本明細書中に記載される任意の細胞(例えば、T細胞、初代細胞、HSC、又はNK細胞)を前記
HRテンプレート及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させること、並びに前記HRテンプレー
ト及び前記ヌクレアーゼ組成物を細胞中に(特にウイルスを介した送達以外の送達方法に
よって)送達すること、が含まれることがある。前記接触させる工程は、前記細胞を前記
HRテンプレート及び前記ヌクレアーゼ組成物と接触させる工程と前記送達する工程との間
が、60分未満、45分未満、30分未満、20分未満、15分未満、10分未満、若しくは5分未満
、又は1分未満であることがある。送達方法には、本明細書に記載されるCRISPRを介した
システムを送達することについて記載される方法の何れか(例えば、本明細書に記載され
るRNP複合体を送達するための方法等)が、含まれることがある。上記のように、例えば
、複数のHRテンプレート及び/又はヌクレアーゼ組成物を細胞に同時に送達するなど、複
数のHRテンプレート及び/又はヌクレアーゼ組成物を、細胞中に送達することがある。
【0281】
理論に束縛されることを望むものではないが、一般的に(及びHRテンプレートの純度に
関してのときに議論したように)、編集プロセスの過程で導入される不純物及び混入物質
によって、改変した細胞の編集効率及び/又は改変した細胞の生存率が低下することがあ
る。例えば、培養細胞に由来する残留培地によって、編集プロセスにおける不純物及び混
入物質が導入されることがある。従って、細胞を遺伝的に改変する方法は、残留培地を最
小限にするか又は排除するためにとる工程を含むことがある。
【0282】
例示的な実施例では、ヒト初代T細胞(例えば、ヒト対象から単離したT細胞)を遺伝的に
改変するための方法には、完全なTCR(TCR-アルファ及びTCR-ベータの両方) をコードする
HRテンプレート、TCR遺伝子座位(例えば、TCR-アルファの定常遺伝子座位)にターゲティ
ングすることができるCRISPR RNP複合体、を提供すること、及びエレクトロポレーション
を使用して、前記HRテンプレート及びRNP複合体を、T細胞中に送達すること、が含まれる
ことがある。
【0283】
本明細書中に記載される改変した細胞の集団の何れかのような、改変した細胞の集団を
生成し得る方法もまた、提供される。
【0284】
治療方法
ある態様では、治療するための方法も提供される。例えば、がん患者の治療方法が提供
される。別の実施例では、非-機能的な遺伝子を機能的な遺伝子で置換するなど(例えば、
ヘマグロビン症のためのHSC)、遺伝子を校正することがある(例えば、置換する、遺伝子
治療又は遺伝子置換療法としても知られている)。前記発明にかかる前記方法には、治療
有効量の改変した細胞(例えば、ゲノム編集した細胞(例えば、ゲノム編集したT細胞))
を投与することが含まれる。前記改変した細胞を、医薬組成物として製剤化することがあ
る。これらの組成物には、1種以上の改変した細胞に加えて、薬学的に許容される賦形剤
、担体、バッファー、安定化剤、又は当業者に周知の他の物質が含まれることがある。こ
のような物質は非-毒性であるべきであり、活性構成成分の有効性を妨げてはならない。
前記担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路(例えば、静脈内)に依存することがある
【0285】
前記改変した細胞は、治療を施す対象に由来(例えば、単離)することがある(自己)
【0286】
前記改変した細胞は、前記治療を施す対象に対して同種異系であることがある。同種異
系の改変した細胞は、上記のように、前記治療を施す対象に対してHLA適合であることが
ある。
【0287】
改変した細胞を、単独で、又は他の治療と併用して、治療する症状に応じて、同時に又
は連続しての何れかで投与することがある。
【0288】
ヌクレオチド組成物
本発明に有用な遺伝子(例えば、遺伝子、ベクター、外因性の配列、発現構築物、HRテ
ンプレート)のポリペプチド及びヌクレオチド配列、を本明細書に記載する。本発明に有
用なポリペプチド及びヌクレオチド配列は、本明細書中に記載される配列、又はデータベ
ースへのアクセション番号によって本明細書中で参照する配列と、少なくとも95%、少な
くとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%同一
である。本発明に有用なポリペプチド及びヌクレオチド配列は、本明細書中に記載される
配列、又はデータベースへのアクセション番号によって本明細書中で参照する配列と100%
同一であることがある。
【0289】
「同一性パーセント」という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチドの配列において
、以下に記載する配列比較のアルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、又は当業者に利
用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用して測定した場合に、又は目視検査によっ
て測定した場合に、最も良く一致するように比較及びアライメントしたときの、2つ以上
の配列又は部分配列に関する、同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定のパーセ
ンテージ、を指す。その使い方によっては、「同一性」パーセントは、比較対象の配列の
領域にわたって(例えば、機能的ドメインにわたって)存在することがある、又は代わり
に、比較対象の2つの配列の全長にわたって存在することがある。配列を比較するために
は、典型的には、1つの配列が、試験配列と比較する参照配列としての役割をする。配列
比較のアルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必
要に応じて、部分配列の位置を指定し、及び配列アルゴリズム・プログラム・パラメータ
を指定する。次いで、配列比較のアルゴリズムによって、指定したプログラム・パラメー
タに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントが計算される。比較す
る配列を最適にアラインメントすることを、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482
(1981)の局所ホモロジーのアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol.
48:443 (1970)のホモロジー・アライメントのアルゴリズムによって、Pearson & Lipman
, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性を検索する方法によって、これ
らのアルゴリズムをコンピューターで実行することによって(Wisconsin Genetics Softwa
re Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.中のGAP, BEST
FIT, FASTA,及びTFASTA)、又は目視検査によって(一般的に、Ausubelらを参照のこと)、
行うことがある。配列の同一性パーセント及び配列の類似性パーセントを決定するのに適
したアルゴリズムのある例はBLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul et al., J. M
ol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウ
ェアは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Informati
on)(<www.ncbi.nlm.nih.gov />)を通して公開入手可能である。
【0290】
ある態様において、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で相同組換えを指示する際
に使用するヌクレオチド組成物(例えば、本明細書中に記載される任意のHRテンプレート)
が提供される。
【0291】
一例では、内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位で相同組換えを指示する際に使用す
るヌクレオチド組成物(即ち、HRテンプレート)は、a)遺伝子の少なくとも一部をコードす
るヌクレオチド配列;b)内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域と同一のヌク
レオチド配列;及びc)前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第2領域と同一のヌ
クレオチド配列、を含む、ここで、前記遺伝子の少なくとも一部は、長さが100塩基であ
る、前記ヌクレオチド配列の全てはシングル・ポリヌクレオチド(single polynucleotide
)上にある、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位の第1領域及び第2領域と同一の
ヌクレオチド配列は、前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位での相同組換えを促進
するように配向されている、及び前記内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に前記組成
物が組み込まれた後に、前記遺伝子の少なくとも一部を発現することができるように、前
記遺伝子の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列は配向されている。前記ヌクレ
オチド組成物は環状であることがある。
【実施例0292】
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態に関する実施例である。実施例は説明
のためにのみ提供されるのであって、決して本発明の範囲を限定するためのものではない
。使用する数及び順序(例えば、量、温度など)に関して、正確さを保証する努力をしてき
ているが、もちろん、いくらかの実験誤差及び偏差は許容されるべきである。
【0293】
特に明記しない限り、本発明を実施するには、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技
術及び薬理学に関する従来の方法を、当該技術分野の範囲内で、使用する。このような技
術は文献中に詳しく説明されている。例えば、以下を参照のこと、T.E. Creighton, Prot
eins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L.
Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, e
t al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In E
nzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Ph
armaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Compa
ny, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press)
Vols A 及び B(1992)。
【0294】
実施例1:CRISPRを使用したT細胞編集の方法と材料
目的の遺伝子(即ち、「遺伝子の一部」)を内因性のゲノムのターゲット遺伝子座位に組
み込み、そしてそれを分析するために使用する方法及び材料を、以下に記載する。
【0295】
T細胞
PBMCを、標準的なフィコール単離方法に従って、血液から単離した(例えば、アフェレ
ーシスによって回収したロイコパック)。単離したPBMCを、標準的なプロトコールに従っ
て、アリコートにして凍結した。前記標準的なプロトコルの一部として、凍結したヒト末
梢血の単核球細胞(PBMC)を解凍し、標準的な遺伝子編集のプロトコルの一部として培地(T
exMACS、3%ヒトAB血清、サイトカインあり)で培養した。前記プロトコルを改変したもの
では、凍結したPBMCを購入した(AllCells)。翌日、CD8及びCD4がポジティブなT細胞を、
標準的な遺伝子編集のプロトコルの一部として製造業者のプロトコルに従い、磁気ビーズ
(Miltenyi)を用いたポジティブ選択により富化した。前記プロトコルを改変したものでは
、以下に示すように、CD3のネガティブ選択又はCD62Lのポジティブ選択を使用して、細胞
を富化した。富化した細胞を、エレクトロポレーション手順(以下を参照のこと)の前に、
48~72時間、1:17.5の比率で、製造業者の推奨に基づいて、TransAct(CD3/CD28試薬、Mil
tenyi)を使用して刺激し、並びに培地(TexMACS、それぞれ12.5ng/mLのIL-7及びIL-15を含
む3%ヒト血清)を用いて、並びに標準的な遺伝子編集のプロトコルの一部として培養した
【0296】
患者/ドナーのPBMCを単離することを示す。患者アフェレーシスにより、ロイコパック
の細胞を回収した。標準的な遺伝子編集のプロトコルの一部としては、次いで、前記ロイ
コパックを凍結し、その後、必要に応じて解凍した、又は改変したプロトコルでは、示し
たように2~8℃に維持した(新鮮非凍結である)。翌日、CD8及びCD4がポジティブなT細胞
を、プロディジー・プラットホーム(ミルテニー)を用いたポジティブ選択により富化した
。富化した細胞を上記のように培養した。
【0297】
相同組換え(HR)テンプレート
ナノプラスミド(商標)(Nature Technology)を、記載のように使用した(「NTC」として
記されるHRテンプレート)。ナノプラスミド(商標)は、Nature Technology社の商標である
。抗生物質のいらないRNA-OUT選択ベクター及び細胞株は、それぞれ、国際特許出願WO200
8153733、並びに相当する米国特許、欧州特許及びオーストラリア特許:US 2010/0303859
;EP2333091;及びAU 2008262478に包含され、それらが教示する全てについて、参照によ
りその全体が本明細書に取り込まれる。ナノプラスミド(商標)ベクター及び細胞株は、更
に、特許協力条約に基づく以下の国際特許:PCT/US 13/000259;PCT/US 13/00067;及びP
CT/US 13/00068(それらが教示する全てについて、参照によりその全体が本明細書に取り
込まれる)、によって包含される。
【0298】
pUC57ベクターに由来するPBR322複製起点及びカナマイシン(Kan)抗生物質耐性マーカー
を含有する標準的なプラスミドもまた、記載するように使用した(「pUCu」として示され
るHRテンプレート)。前記抗生物質耐性マーカー及び前記複製起点以外、余分な配列を除
去した。
【0299】
ここでは、精製したHRテンプレートは、購入するか(Nature Technology)、又は製造業
者のプロトコル(Maxiキット、Macherey Nagel)に従い、標準的なDNA精製技術を用いて「
イン-ハウス(in-house)」で精製した。
【0300】
使用したHRテンプレートを表4に記載する。特に断りのない限り、提供する配列には、
相同性アーム、遺伝子カセット、及びプラスミド骨格を有する、完全なHRテンプレートが
含まれる。
【0301】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【表4-11】
【表4-12】
【表4-13】
【表4-14】
【表4-15】
【表4-16】
【0302】
リボ核タンパク質(RNP)複合体
ヌクレアーゼとしてCRISPR spCas9(Aldevron、sNLS-SpCas9-sNLSヌクレアーゼ)を用い
て、RNP複合体を生成した。sgRNAを化学的に合成し(Synthego)、エレクトロポレーション
・バッファー中で600 μMのストック濃度から120 μMの作業濃度に希釈した。sgRNAをCas
9タンパク質と1:6のCas9:sgRNAモル比で複合体化し、室温で少なくとも10分間インキュベ
ートし、次いで使用するまで冷たく保った(4℃又は氷上)。
【0303】
目的のターゲット部位(即ち、内因性のゲノム・ターゲット内の規定したヌクレオチド
配列)に対して向けられたgRNA配列を、同じヌクレオチド上にcrRNA及びtracrRNA配列の両
方を含むsgRNAヌクレオチド骨格に組み込ませることにより、前記sgRNAを、設計した。本
明細書で使用するsgRNAを、ホスホロチオエート結合を示す「(ps)」及び2'O-メチル塩基
を示す「m」を使って、以下に提示する。
TRAC-1 sgRNA (配列番号(SEQ ID NO): 19):
[mG](ps)[mA](ps)[mG](ps)AAUCAAAAUCGGUGAAUGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGU
CCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC[mU](ps)[mU](ps)[mU](ps)U
TRBC-2 sgRNA (配列番号(SEQ ID NO): 20):
[mG](ps)[mG](ps)[mC](ps)UCUCGGAGAAUGACGAGGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGU
CCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC[mU](ps)[mU](ps)[mU](ps)U
【0304】
エレクトロポレーション/ヌクレオフェクション
T細胞の遺伝子編集に使用したエレクトロポレーション条件を記載する一般的なプロト
コールを以下にまとめる:

注:20 μLのキュベットの代わりに100 μLのヌクレオフェクション・キュベット(カタロ
グ番号V4XP-3012又はV4XP-3024)を使用してもよく、その場合、細胞の数、トランスフェ
クトした試薬の量、及び播種する体積の全てをスケールアップしなければならない。代替
のエレクトロポレーション装置を使用することもある(それに応じて、バッファー及び体
積を置き換える)。
手順
1. 1 mLのT細胞培養培地(TexMACS、12.5ng/mLのIL-7及びIL-15をそれぞれ含む3%ヒト血
清)を、48ウェルプレートの各ウェル(各サンプル及びコントロール[例えば、モック及びG
FP]に十分なウェル、培地のみをプラス1、約10%エキストラをプラス)に添加することによ
って、サンプル・プレートを調製する。注:プロトコルを改変したものとして、以下に示
すように、IL-7及びIL-15の代わりにIL-2を含む培地で細胞を培養した。
2. 完全に混合したら、1 mLの培地をウェルに分注する。そのプレートを37℃のインキ
ュベーターに入れる。
3. ヌクレオフェクター・サプリメントをヌクレオフェクター液に加える(4.5:1)。
4. 記載するように、200 μLのストリップ・チューブ中でRNP複合体を組み立てる。モ
ック(ヌクレオフェクション・バッファーのみ)及びヌクレオフェクション・コントロール
(例えば、0.5 μgのGFPプラスミド)を入れる。
5. 適量のHR DNAを各チューブに添加する(典型的には0.2~0.4 μg/μL)。
6. 数を数えるために、少量の細胞(例えば、セロメーター(cellometer)については20
μL)を取り、残りを適当なコニカル・バイアルに移し、細胞をスピン・ダウンする。
7. 室温で10分間、90×gで、細胞をペレットにする。
8. 細胞の数を数える。
9. ペレット化した細胞から上清を除去する。
10. 20 μLのヌクレオキュベットに、それぞれ50~100万個の細胞が含まれるように、
細胞ペレットの体積(1000万個の細胞について約15 μL)を考慮に入れながら、細胞を十分
なヌクレオフェクター・バッファー中で再懸濁する。
11. 前記細胞を、サンプルを含む200 μLのストリップ・チューブに分配する。細胞を0
~45分、典型的には10分未満インキュベートする。
12. そのヌクレオフェクションの反応物をヌクレオキュベットに移す。
13. カバーを、カチッと嵌める。
14. 予め温めた培地を含むプレートを、インキュベーターから取り出す。
15. EO-115 プログラムを使用するように4Dユニットをプログラムし、その容器を適切
な向き(A1上部がより大きな切り欠きになるように)で4D-Xに配置して、スタートボタンを
押す。
16. 約100 μLの温めた細胞の培地を、前記プレートのそれぞれのウェルから前記ヌク
レオキュベットのウェルにゆっくりと移す(100 μLキュベットについては500)。
17. 各ヌクレオキュベットから~120 μL全てを、前記プレートのそれぞれのウェルに
移す。
18. 前記細胞を、5~11日間インキュベートし(即ち、7~14日目に採取)、その後、解析
をする(例えば、導入遺伝子の発現、ゲノムターゲティング、又は機能アッセイ(例えば、
T細胞傷害又はサイトカイン産生))。(注: 24時間未満で、典型的に見られるノックアウ
トのフェノタイプ、24~48時間で、典型的に見られるノックアウトのフェノタイプ、72時
間後に安定化するフェノタイプ)
【0305】
フロー・サイトメトリー解析
フロー・サイトメトリーにより、目的の遺伝子の発現について、細胞を評価した。ZsGr
een構築物については、前記ZsGreen構築物(GFP)の蛍光を評価した。TCRの発現については
、細胞をTCRに特異的な抗体(抗ヒトTCRα/β抗体のクローンIP26ブリリアント・バイオレ
ット510、Biolegend)を用いて染色した。CD3の発現については、細胞をCD3に特異的な抗
体(クローンSK7、Biolegend)を用いて染色した。NK細胞の研究については、CD5(クローン
UCHT2、Biolegend)及びCD56(クローン5.1H11、Biolegend)を使用した。
【0306】
特に断らない限り、T細胞を、FSC/SSC、一重項、生細胞(近赤外線染色)によってゲーテ
ィングを行い、次いで特異的なゲーティング(例えば、CD8、デキストラマーなど)によっ
てゲーティングをした。示すところでは、蛍光色素分子-MHCトリマー・デキストラン複合
体(「デキストラマー」とも呼ばれる)を用いて、抗原特異的なTCRによる認識を同定した
。蛍光色素分子-MHCトリマー・デキストラン複合体は、Bethune, et al. (BioTechniques
62:123-130 Mar. 2017) 及び Bethune, et al. (eLife 5: 2016)に、より詳細に記載さ
れている(それらが教示することは全てに関して、参照により本明細書にそれぞれ取り込
まれる)。デキストラマーは、蛍光標識したストレプトアビジン(Life Technologies、Ca
rlsbad、CA)を用いて調製した。抗原特異的なTCRによる認識に使用したペプチドは、以下
の通りである:ELAGIGILTV(Mart-1 F5、配列番号(SEQ ID NO): 5);YLTHRVDVI(Neo12、配
列番号(SEQ ID NO): 6);SLLMWITQV(NY-ESO 1G4、配列番号(SEQ ID NO): 7)。
【0307】
レンチウイルスの産生と形質導入
NY-ESO (1G4)及びMART-1(F5)TCRの構築物を、TCRa-F2A-TCRb-P2A-Myc271のフォーマッ
トで、pCCLc-MNDベースのレンチウイルス・ベクター(Add遺伝子#81071)中にサブクローニ
ングした。Myc271は、細胞外のcMycエピトープ・タグと融合したCD271(LNGFR)の膜貫通ド
メイン及び一部を欠いた細胞外ドメインを含むキメラの形質導入マーカである。NY-ESO(1
G4)及びMART-1をコードするレンチウイルスを、レンチウイルス・ベースのベクター及び
それらのパッケージング・ベクター(pMD2.G)を一過性にトランスフェクションすることに
より、HEK-293T細胞で産生した。トランスフェクションの48時間後、ウイルスを収集し、
0.45μmのシリンジ・フィルターを通して濾過し、感染させる目的に使用した。
【0308】
ヒトCD3+ T細胞を、上記のように、健常者ドナーのPBMCから単離し、サイトカインの存
在下で、24時間刺激し、次いで、増殖させた。48時間後に、細胞を、ポリブレンを添加し
た250 μLの培地に、2x10^6個/ウェルで播種し、これに、500 μLの培地(モック条件)又
は特定のウイルスの上清(pCCLc-MND-F5TCR-Myc271又はpCCLc-MND-1G4TCR-Myc271)を加え
た。CD3+ T細胞を、ウイルスの存在下、800 g、90分、30℃で、ゆっくりと加速し、ブレ
ーキをかけずに、遠心分離をした。遠心分離後、500 μLの培地を除去し、500 μLの新し
い培地又は500 μLのウイルスを添加した。4日後、ヒトT細胞を、TCRの表面での発現に関
して、アッセイした。表面での発現について試験するために、細胞を、すすぎ、FACSバッ
ファー中の蛍光抗体及びpHLA多量体で染色し、フロー・サイトメトリーによって解析した
【0309】
生存率解析
細胞数及び生存率を、Nucleocounter NC-200(ケモメティック(Chemometic))を用いて測
定した。この装置は、サンプル液を吸引するピペットを内蔵するカセット(Via-2)を使
用し、蛍光色素アクリジン・オレンジ(AO)及び4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(D
API)でサンプルを染色する。これらは、流体路を通ってカセットの読み取り窓に移動する
際に、それぞれ、総細胞の集団及び死んだ細胞の集団を染色する。カセットを装置に装填
し、PBMCサンプル用に設計したプロトコルを使用し、細胞数/mL(AO染料を取り込んだ細胞
の数に由来する)の形式で総細胞数を測定し、DAPIマーカがポジティブである集団の分画
から外挿される生存率から生細胞の集団(細胞数/mL)を計算する。
【0310】
この生存率アッセイのプロトコルを改変したものでは、下記のように、生存率を、アク
リジン・オレンジ/ヨウ化プロピジウム(AOPI)及びセロメーター(Cellometer)(Nexcelom)
を用いて評価した。
【0311】
ゲノム・ターゲティングの解析
2-対のプライマー(1対の上流ジャンクション(junction)をターゲティングするプライ
マー、及び1対の下流ジャンクションのプライマー)によるイン-アウト(in-out)PCR技術
を用いて、TCRα遺伝子座位に目的遺伝子が正確にゲノム組み込みが行われていることを
確認した。操作したT細胞について、イン-アウトPCRをした後に、正しい質量の2つの増幅
配列を検出することによって、組み込まれたneoTCR配列カセットがTCRα遺伝子座位に正
しく挿入されていることを確認した。
【0312】
イン-アウトPCR技術に用いたプライマーは、次のようなものであった
上流フォワード: TGCTAATCCTCCGGCAAACC (配列番号(SEQ ID NO): 1)
上流リバース: TTCTTCAACATCGCCAGCCT (配列番号(SEQ ID NO): 2)
下流フォワード: CAGCCATCTGTTGTTTGCCC (配列番号(SEQ ID NO): 3)
下流リバース: AGCTTTCTGGCGTCCTTAGAAT (配列番号(SEQ ID NO): 4)
【0313】
操作したT細胞からゲノムDNAを単離し、標準的なPCR技術を用いて、目的のゲノム領域
を増幅し、PCR産物をゲル電気泳動により解析した。
【0314】
機能解析のためのT細胞/ターゲット細胞共培養
操作したT細胞(100,000個)を、種々の濃度の特定のペプチド(0.01~1000 nMでの10倍連
続希釈)でパルスした、HLA-A2を発現するターゲット細胞(25,000個)と共培養した(エフェ
クター対ターゲットの比4:1)。前記プロトコルを改変して、T細胞(50,000個)を、以下に
示すように、エフェクター対ターゲットの比2:1で、HLA-A2を発現するターゲット細胞(25
,000個)と共培養した。凍結乾燥したペプチド(Bio-Synthesis Inc, GenScript)をDMSO中
で10 mMに再構成し、DMSOで更に希釈して1 mMの作業ストックとした。次に、1 mMの溶液
から始めて、前記ペプチドを10倍連続希釈をし(9 μLのDMSO中に、1 μLの1 mM作業スト
ック)、これを0.01 nMに達するまで、行った。ターゲットのA2-K562細胞(1M個の総細胞/
ペプチド濃度、1×106細胞/mL)を、15 mLのコニカル・チューブ中で、1μLのペプチド連
続希釈物でパルスし、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、9mLの培
地を各チューブに添加し、次いで1000 rpmで5分間遠心分離した。細胞ペレットを10 mLの
培地で1回洗浄し、次いで共インキュベーション実験として、4 mLの培地に再懸濁した。
「ペプチドなし」又は「0ペプチド」の条件に対しては、ペプチドを使用しなかった。
【0315】
示すように、マッチしたペプチド-HLA(pHLA)及びミスマッチのペプチド-HLA(pHLA)を構
成的に発現するターゲット細胞もコントロールとして用い、特異性を評価した。K562細胞
への形質導入のマーカーとしてZsGreenを有するNeo12、MART1、又はNYESO1ペプチドを含
むHLAペプチド分子をコードするレンチウイルス・ベクターを用いて、K562ターゲット細
胞に形質導入した。発現したHLA(MHC)ペプチド分子は、Bethuneら(eLife 5: 2016)がより
詳細に記載しているように(これが教示することは全て、本明細書に参照により取込まれ
る)、フレキシブルなGSリンカー及びジスルフィド・トラップ修飾を介して、抗原性ペプ
チド、β2-ミクログロブリン、及びHLA-A2ドメインが線状に構成するシングル・ポリペプ
チド(single polypeptide)鎖から構成されている。
【0316】
T細胞による細胞傷害の解析
T細胞及びターゲット細胞を、48時間、共培養した後、細胞を、Live/Dead細胞染色キッ
ト(Live/Dead Near IR viability stain for flow、cat# NC0584313、ThermoFisher)を用
いて、暗所で4℃で20分間染色した。膜が損なわれた細胞では、前記色素は細胞内部及び
細胞表面の両方において遊離アミンと反応し、強い蛍光染色が生じる。生存細胞では、前
記色素の反応性が細胞表面のアミンに限定され、その結果、生じる蛍光はより弱くなる。
強度の差異は、典型的には、生きている細胞と死んでいる細胞との間で50倍より大きく、
容易に識別することができる。インキュベーションした細胞を洗浄後、eBioscience IC F
ixationバッファー(ThermoFisher、cat# 00-8222-49)で固定し、フロー・サイトメトリー
により解析した。
【0317】
増殖解析
共培養する前に、操作したT細胞を、細胞増殖色素e450(ThermoFisher、cat# 65-0842-9
0)で予めラベルした。この蛍光色素は、第一級アミンを含む任意の細胞タンパク質に結合
し、及び細胞が分裂するときに、前記色素は娘細胞間に等しく分配され、前記色素の蛍光
強度は連続的に半減していくことが測定されることがある。共培養アッセイを、T細胞に
よる細胞傷害のアッセイについて記載したように行った。T細胞及びターゲット細胞を、7
2時間、共培養した後、細胞をeBioscience IC Fixationバッファー(ThermoFisher、cat#
00-8222-49)で固定し、フロー・サイトメトリーにより解析した。
【0318】
サイトカイン産生解析
共培養の上清において、サイトカインの産生を、サイトカイン・ビーズ・アッセイ(CBA
、 BD BioSciencesのBEAD-BASED IMMUNOASSAY)を使用して、評価した。CBAは、抗体被覆
ビーズを使用して解析対象物を効率的に捕捉し、これによって、複数のタンパク質を同時
に定量することを可能にした、フロー・サイトメトリー多重化ビーズ-ベースのイムノア
ッセイ・アプリケーションである。T細胞及びターゲット細胞を、24時間、共培養した後
、上清を回収し、IFNγ、IL-2及びTNFαの分泌について解析した。
【0319】
実施例2:TCRα遺伝子座位へのレポーター遺伝子の組み込み
ZsGreenレポーターの構築物をTCRα遺伝子座位に組み込んだ。図1は、使用した一般的
な編集の戦略を表す模式図である。簡単に述べると、一般的なTCRα遺伝子座へのターゲ
ティング戦略は、1 kbの左側及び右側相同アーム(「HR arms」)に挟まれ、及びP2A配列に
よって隔てられた、プロモーターのないZsGreen及び一部を欠いたLNGRFコーディング配列
、並びにZsGreen及びLNGRFのカセットをTCRα遺伝子座位の配列から隔てる5' P2A配列、
を含む相同組換え修復テンプレートを、環状ナノプラスミド中にコードして用いた(配列
番号(SEQ ID NO): 8参照)。図2は、ZsGreenを組み込ませるための、一般的な編集の時系
列を示している。簡単に述べると、上記のように、PBMCを解凍し、初代ヒトT細胞をCD3ネ
ガティブ選択を用いて単離し、抗-CD3/抗-CD28で刺激した。上記のように、内因性のTCR
α遺伝子座位(TRAC遺伝子座位とも呼ぶ)をターゲティングするsgRNAを用いたリボ核タン
パク質(RNP)複合体を、形成させた。ここで、前記sgRNAには、TRAC gRNAターゲティング
配列GAGAATCAAAATCGGTGAAT (配列番号(SEQ ID NO): 21)が組み込まれている。上記のよう
に、前記HRテンプレート、RNP複合体、及びT細胞を混合し、エレクトロポレーションした
。エレクトロポレーション後、細胞をIL-2(20ng/mL)を含む培地で培養した。
【0320】
前記ZsGreenレポーターはプロモーターを有さないので、正確なインフレームで融合し
た場合にのみ、シグナルを検出することが可能なはずである。加えて、前記TCRα遺伝子
座位を適切にターゲティングすると、TCRαのノックアウト及びTCR複合体が表面で発現し
なくなることが同時にもたらされる。実際に、図3で示すように、HRテンプレートとRNP
の両方を含めた場合、ZsGreen-ポジティブ/TCR-ネガティブである細胞が、高い割合(22%
以上)で検出された(図3右のパネル「KO-KI」)。注目すべきことに、全てのZsGreen-ポジ
ティブはTCR-ネガティブでもあり、前記ZsGreenレポーターがTCRα遺伝子座位に適切に組
み込まれていることが示唆された。コントロールとして、RNPが存在しない場合、バック
グラウンドと見なされるレベルを上回る、ZsGreen-ポジティブ細胞又はTCR-ネガティブ細
胞がもたらされることはなかった(図3左図)。試験した様々な条件下での編集効率を表5
に数値で表す。
【0321】
【表5】
【0322】
実施例3:TCRα遺伝子座位の戦略におけるネオ抗原特異的なTCRの組み込み
ネオ抗原特異的なTCR構築物(neoTCR)をTCRα遺伝子座位に組み込んだ。図4は、使用し
た一般的なターゲティング戦略を表す概略図を示す。簡単に述べると、一般的なTCRα遺
伝子座位へのターゲティング戦略は、1kbの左側及び右側のHRアームに挟まれたneoTCRコ
ーディング配列を含む相同組換え修復テンプレートを用いた。更に、内因性のTCRβ遺伝
子座位が破壊されるので、neoTCR構築物がコードするTCR配列のみが発現することになる
。前記一般的な戦略には、ナノプラスミド又はpUCuプラスミドである環状のHRテンプレー
トを用いることを適用した。
【0323】
前記ネオ抗原特異的なTCR構築物の設計を図5に概略する。前記ターゲティングTCRα遺
伝子座位(「TRAC(Cα)」)をプラスミドHRテンプレートとともに示し、得られる編集配列
と下流のmRNA/タンパク質産物を示す。前記ターゲティングTCRα遺伝子座位(内因性TRAC)
及びそのCRISPR Cas9ターゲット部位(横縞、矢印で示す切断部位)を示す(図5A、上パネ
ル)。左側及び右側の相同アーム(それぞれ「LHA」と「RHA」)の間に位置する、neoTCRを
コードするポリヌクレオチドを有する環状プラスミドHRテンプレートを示す(図5A、下
パネル)。コドンを最適化した、HRテンプレートによって導入されるTRACの領域を示す(縦
縞)。TCRβ定常ドメインはTRBC2に由来し、TRBC1と機能的に同等であることが示されてい
る。ネオTCRカセット中の他の要素には、2A = P2Aリボソーム・スキッピング・エレメン
ト(ribosome skipping element);F=上流のTCRβタンパク質から、2Aタグを除去する、2A
の上流のフリン切断部位;HGH =ヒト成長ホルモン・シグナル配列、が含まれる。neoTCR
発現遺伝子カセットのHRテンプレートには、TCRαガイドRNAを有するCRISPR Cas9ヌクレ
アーゼRNPがターゲットとするTCRαゲノム遺伝子座位の中に、挿入することを指示する、
2つのフランキング相同アーム(flanking homology arm)が含まれる。これらの相同アーム
(LHA及びRHA)は、neoTCR発現遺伝子カセットのneoE特異的なTCR配列を挟んでいる。
【0324】
ゲノムに組み込まれると(図5B、上パネル)、前記neoTCR発現遺伝子カセットは、内因
性のTCRαプロモーターからの単一のメッセンジャーRNAとして転写される。これには、そ
の個々のT細胞に由来する内因性のTCRαポリペプチドの一部が依然として含まれる(図5
B、中央パネル)。この単一のneoTCRメッセンジャーRNAをリボソームがポリペプチドに翻
訳する間に、PACT neoTCR配列は、豚のテッショウウイルス-1に由来するP2Aリボソーム・
スキップ配列での自己切断によって、内因性のCRISPR破壊TCRαポリペプチドから切り離
される(図5B、下パネル)。コードされたneoTCRα及びneoTCRβのポリペプチドはまた、
内因性である細胞性のヒト・フリン・プロテアーゼによる切断、及びneoTCR発現遺伝子カ
セット中に含まれる第2の自己切断P2A配列モチーフを介して、互いに切り離される(図5
B、下パネル)。neoTCRα及びneoTCRβのポリペプチドは、シグナル・リーダー配列(ヒト
成長ホルモンに由来する、HGH)によって小胞体へと別々にターゲットされ、多量体に集合
化し、及びそのneoTCRタンパク質複合体がT細胞の表面に輸送される。前記フリン・プロ
テアーゼ切断部位が中にあることによって、上流のTCRβ鎖から2A配列が除去されること
が促進され、TCRβの機能が阻害される可能性が減少する。各々の2Aの前にgly-ser-glyリ
ンカーが中にあることによって(示さず)、3つのポリペプチドが別々になることは更に増
強される。
【0325】
更に、3つの反復タンパク質配列はゲノム安定性を促進するために、HRテンプレート内
で、コドンが異なる(codon diverged)。TCR遺伝子カセット内で、2つのP2Aはお互いに対
してコドンが異なる(codon diverged)、並びに2つのHGHシグナル配列はお互いに対してコ
ドンが異なる(codon diverged)、その結果、ex vivoで操作したT細胞のゲノム内に導入さ
れたneoTCRカセット配列の安定性が促進される。同様に、TRACエクソン1の5'末端(縦縞)
を再導入することにより、2つの直接反復の介在配列が取り除かれ、その結果、カセット
全体が経時的に失われる可能性が減少する。
【0326】
図6は、neoTCR構築物を挿入するT細胞を編集するための、一般的な編集の時系列を示
す。簡単に述べると、初代ヒトT細胞(新鮮非凍結又は凍結の何れか)を、上記のように、
標準的な編集手順に従って培養した。TRAC gRNAターゲティング配列GAGAATCAAAATCGGTGAA
T (配列番号(SEQ ID NO): 21)を有する、内因性のTCRα遺伝子座位(TRAC遺伝子座位とも
呼ぶ)をターゲティングするsgRNAを用いて、リボ核タンパク質(RNP)複合体を、上記のよ
うに、形成させた。更に、TRBC gRNAターゲティング配列GGCTCTCGGAGAATGACGAG (実施配
列番号(SEQ ID NO): 22)を有する、内因性のTCRβ遺伝子座位(TRBC遺伝子座位とも呼ぶ)
をターゲティングするsgRNAを用いて、RNP複合体を、上記のように、形成させた。上記の
ように、前記HRテンプレート、RNP複合体、及びT細胞を混合し、エレクトロポレーション
した。次いで、エレクトロポレーションしたT細胞(即ち、改変した細胞)を、上記のよう
に、サイトカインの存在下で培養した。
【0327】
実施例4:NeoTCRの組み込み(MART-1)
MART-1 neoTCRをTCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介
した編集方法に従ってT細胞を編集し、環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5
.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA(配列番号(SEQ ID NO): 9)がコードするMART-1 neoTCR構築
物を挿入した。
【0328】
2-対のプライマー(1対の上流ジャンクション(junction)をターゲティングするプライ
マー、及び1対の下流ジャンクションのプライマー)によるイン-アウト(in-out)PCR技術
を用いて、TCRα遺伝子座位にneoTCR構築物が正確にゲノム組み込みが行われていること
を確認した。操作したT細胞について、イン-アウトPCRをした後に、正しい質量の2つのPC
R増幅配列を検出することによって、組み込まれたneoTCR配列カセットがTCRα遺伝子座位
に正しく挿入されていることを確認した。図7に示すように、プラスミドDNA HRテンプレ
ート単独及びヌクレアーゼなし(「DNAのみ」)で処理した細胞については、組み込みは観
察されなかった。上流ジャンクション(junction) (図7左側パネル)及び下流ジャンクシ
ョン(junction) (図7右側パネル)の両方についての増幅産物は、TCRαヌクレアーゼ単独
で(「KOKI」)、又はTCRα+TCRβヌクレアーゼを一緒で(「KOKI KO」)操作した細胞につい
て観察された。従って、本結果は、適切な場合に、neoTCR構築物が適切に組み込まれてい
て、内因性のTCRβが破壊されていることを実証する。
【0329】
フロー・サイトメトリーによりMART-1 neoTCRの発現について、操作したT細胞を評価し
た。図8Aに示すように、MART-1 neoTCRの発現は、小さい(20 μL、図8Aの左下のパネ
ル)編集フォーマット及び大きい(100 μL、図8Aの右下のパネル)編集フォーマットの両
方において、MART-1特異的なデキストラマー染色によって検出された。RNPなしのHRテン
プレートのみを使用した場合(図8Aの左上パネル)又はHRテンプレートなしのRNPのみを
使用した場合(図8Aの右上パネル)には、バックグラウンド・レベルのシグナルのみが検
出された。同様の結果が、編集を行った後の様々な時点で見られた。編集を行った後4日
目の遺伝子編集の結果を以下の表6に数値で表す。編集を行った後7日目の遺伝子編集の
結果を以下の表7に数値で表す。編集を行った後10日目の遺伝子編集の結果を図8Bに示
す。図8Bは、HRテンプレート及びRNP複合体の両方が提供された場合に、neoTCR(縞)が
組み込まれていることを示す。このように、本結果は、HRテンプレート及びRNP複合体の
両方が提供された場合に、neoTCR構築物がTCRα遺伝子座位中に組み込まれた後に適切に
発現することを実証する。
【0330】
【表6】
【0331】
【表7】
【0332】
抗原特異的なサイトカイン産生について、操作したT細胞を評価した。図9に示すよう
に、MART-1 neoTCRを発現する操作したT細胞は、MART-1のコグネイト・ペプチドを構成的
に発現する(図9、「K562 HLA-A02/MART1」)、又はMART-1のコグネイト抗原ペプチドでパ
ルスした(図9、「K562 HLA-A02 (10μM MART1)」)HLA-A02ターゲット細胞(K562)と共イ
ンキュベートした場合(E:T比率2:1)、IFNγ及びIL-2の両方を産生した。サイトカイン産
生は、コグネイト・ペプチドでパルスしていないHLA-A02ターゲット細胞と共インキュベ
ートをした場合(図9、「K562 HLA-A02」)、又は非コグネイトMHC HLA-A01を発現するタ
ーゲット細胞と共インキュベートした場合(図9、それぞれ、「K562 HLA-A01(10μM MART
1)」及び「K562 HLA-A01」)、有意なレベルで観察されなかった。このように、MART-1 ne
oTCRを発現する操作したT細胞は、抗原特異的なサイトカイン産生を示した。
【0333】
抗原特異的な増殖及び抗原特異的なT細胞を介した傷害について、操作したT細胞を評価
した。図10Aに示すように、ペプチド特異的なpHLAを発現する形質導入したK562ターゲ
ット細胞は、小さい編集フォーマット(図10A、「MART-1」)又は大きい編集フォーマッ
ト(図10A、「MART-1(大)」)の何れかを用いて操作した、MART-1 neoTCRを発現するT
細胞と共インキュベートした場合(E:T比率2:1)、ほとんど又は全く増殖を示さなかった。
対照的に、ターゲット細胞は、単独でインキュベートした場合(図10A、「ターゲット
細胞単独」)、又はモックの編集手順を行ったが、neoTCRを発現するようには操作しなか
った(即ち、HRテンプレート又はRNP無しでエレクトロポレーションした) T細胞と共イン
キュベートした場合(図10A、「モック」)、増殖した。図10Bに示すように、ターゲ
ット細胞は、小さい編集フォーマット(図10B、「MART-1」)又は大きい編集フォーマッ
ト(図10B、「MART-1(大)」)の何れかを用いて操作したMART-1 neoTCRを発現するT細
胞と共インキュベートした場合(E:T比率2:1)、傷害を受けた。対照的に、ターゲット細胞
の死は、単独でインキュベートした場合(図10B、「ターゲット細胞単独」)、又はモッ
クの編集手順を行ったが、neoTCRを発現するようには操作しなかったT細胞と共インキュ
ベートした場合(図10B、「モック」)、最小であった。このように、MART-1 neoTCRを
発現する操作したT細胞は、抗原特異的なターゲット細胞の傷害を示した。
【0334】
実施例5:エレクトロポレーション及び形質導入による編集効率の比較
標準的なエレクトロポレーションを介したHR編集の手順又はレンチウイルスによる形質
導入の手順の何れかに従い、T細胞を操作して、TCRα遺伝子座位でneoTCRを発現するよう
にした。環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA
(配列番号(SEQ ID NO): 9)がコードするMART-1 neoTCR構築物をエレクトロポレーション
を介した編集に使用した。図11に示すように、MART-1又はNY-ESO neoTCRの何れかを発
現する操作したT細胞を、レンチウイルスによる形質導入の手順を使用して作成し(図11
、上パネル)、及びMART-1 neoTCRを発現する操作したT細胞を、小さい又は大きいフォー
マットを用いたエレクトロポレーションを介したHR編集を用いて作成した(図11、下パ
ネル)。そうしたところ、エレクトロポレーションを介したHR編集により、レンチウイル
スによる形質導入に匹敵するか又はそれより大きいパーセンテージの操作したT細胞が生
成された。
【0335】
抗原特異的なT細胞を介した傷害について、操作したT細胞を評価した。図12に示すよ
うに、コグネイト抗原性MART-1ペプチドであるMART-1 TCR(F5)を構成的に発現する(図1
2、各群の下の棒)、又はパルスした(図12、各群の下から2つ目の棒)HLA-A02ターゲ
ット細胞は、HRを介した編集(図12、「MART1 TCR HR」)又はレンチウイルスによる形質
導入(図12、「MART1 TCR レンチ」)の何れかを用いて操作したMART-1 neoTCR(F5)を発
現するT細胞と共インキュベートした場合(E:T比率2:1)、同等に傷害を受けた。対照的に
、非コグネイトNY-ESO TCRを発現するT細胞と共インキュベートした場合(図12、「NY-E
SO TCR レンチ」)、又はモックの編集手順を行ったが、neoTCRを発現するようには操作し
なかったT細胞と共インキュベートした場合(図12、「モック」)、ターゲット細胞の死
は、最小であった。更に、コグネイト・ペプチドでパルスしていないHLA-A02ターゲット
細胞と共インキュベートした場合(図12、各群の中央の棒)、又は非コグネイトMHC HLA-
A01を発現するターゲット細胞と共インキュベートした場合(図12、各群の上2つの棒、1
0μM MART1でパルスした上から2つ目の棒)、バックグラウンド・レベルを超えた傷害は観
察されなかった。以下の表8に、そのデータを数値で表す。このように、標準的なエレク
トロポレーションを介したHR編集の手順又はレンチウイルスによる形質導入の手順の何れ
かに従い、meoTCRを発現するように操作したT細胞は、同等の傷害を示した。
【0336】
【表8】
【0337】
実施例6:環状又は線状のHRテンプレートを用いた編集効率の比較
HRテンプレートとして、精製した環状プラスミドDNA及びPCRによって生成した線状dsDN
Aを使用することによるHRを介した編集の効率を、比較試験した。標準的なPCR産物(図1
3Aの上部)並びにヌクレアーゼから保護した5'末端(5'末端ホスホロチオエート骨格結合
)を有するプライマーを使用して生成したPCR産物を使用して、標準的な線状dsDNA及び「
セミ-プロテクトされた」線状dsDNAを生成した(図13Aの下部)。Neo12 neoTCRをTCRα
遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、
及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt (配
列番号(SEQ ID NO): 13)又は線状HRテンプレートLinear_TRAC(1k)P2A.neo12.TRBopt.f-P2
A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 12)のどちらかがコードするNeo12 neoTCR構築物を
挿入して、T細胞を編集した。編集効率は、Neo12特異的なデキストラマー染色によって測
定したときの、neoTCR(Neo12)を発現するT細胞の割合によって評価した。プラスミドDNA
を使用することにより、ある範囲の濃度(本明細書に示す等しい質量)にわたって試験した
場合であっても、線状のHRテンプレート(それぞれ、14.3%及び14.4%、図13Bの中央の
棒及び右の棒)と比較して、編集は有意により高いレベルとなった(47.3%、図13Bの左
の棒)。別の試験では、線状の共有結合的に閉じたDNA(dbDNA、Touchlight)を試験したと
ころ、線状の開放末端であるPCR産物と同様のプロファイルを示した(データーは示さず)
。従って、本結果は、線状HRテンプレートと同じHRターゲティング配列を持つ環状プラス
ミドDNA HRテンプレートは、線状のPCRで生成したDNAに比べて約3倍高い編集効率を有す
るという結論を支持する。
【0338】
実施例7:種々の供給源から生成した環状HRテンプレートの比較
種々の供給源から生成した環状HRテンプレートを使用して、標準的なエレクトロポレー
ションを介した編集手順において、生存率を試験した。Neo12 neoTCRをTCRα遺伝子座位
に組み込んだ。精製された形態で購入する(図14「pUC57」、Nature Technology)、又は
DNA精製キットを使ってイン-ハウス(in-house)で精製した(図14「イン-ハウス(in-hous
e)pUC57」、MaxiキットMacherey Nagel)、環状HRテンプレートpUCu-Kan TRAC(1k)_P2A.Ne
o12.TRBC2opt.f-P2A.TRA(Va) (配列番号(SEQ ID NO): 14)がコードするNeo12 neoTCR構築
物を挿入することにより、T細胞を編集した。図14に示されるように、T細胞は、細胞数
で (図14左パネル)、及び生存アッセイによって評価されるように(AOPI、図14右パネ
ル)、生存していて、イン-ハウス(in-house)で精製したHRテンプレートでは60%を超える
生存率、及び購入したHRテンプレートでは80%を超える生存率、であった。
【0339】
注目すべきことに、これらの結果は、線状の産物と比較した場合にT細胞生存率の低下
をもたらすものとして、エレクトロポレーションを介した編集における環状プラスミドHR
テンプレートの使用を記載した、最近公表された報告(Rothら[Nature,2018 Jul;559(7714
):405-409])と一致しない。
【0340】
実施例8:NeoTCRの組み込み(Neo12)
Neo12 neoTCRをTCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介
した編集手順に従って、及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBop
t.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入
して、T細胞を編集した。操作したT細胞を、フロー・サイトメトリーによってNeo12 neoT
CRの発現について評価した。Neo12 neoTCRの発現を、Neo12特異的なデキストラマー染色
によって検出した。なお、使用したNeo12構築物は、それにpan-TCR抗体が結合しないよう
に改変した。図15に示すように、36.5%のT細胞がNeo12 neoTCRを発現し、内因性のTCR
を発現していなかった(図15右パネル)。更に、内因性のTCRの発現は、大多数のT細胞(9
6%)において、破壊されていた。モックの編集手順を行ったT細胞の場合、僅かにバックグ
ラウンド・レベルのneoTCR発現シグナルが検出された(図15左パネル)。
【0341】
環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列
番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、更なる編集の実験も
行った。操作したT細胞を上記のように評価した。図16に示すように、74.5%のT細胞がN
eo12 neoTCRを発現し、内因性のTCRを発現していなかった(図16右パネル)。更に、内因
性のTCRの発現は、大多数のT細胞(98.6%)において、破壊されていた。T細胞をモック処理
した場合、僅かにバックグラウンド・レベルのneoTCR発現シグナルが検出された(図16
左パネル)。
【0342】
実施例9:種々のNeoTCRについてのNeoTCRの組み込み
種々のneoTCRをTCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介
した編集手順に従って、及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f
-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10)がコードするMART-1 neoTCR(F5)構築物、NTC
9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコ
ードするNeo12 neoTCR(Neo12)構築物、又は環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2
A.1G4.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA(配列番号(SEQ ID NO): 11)がコードするNY-ESO neoTC
R(1G4)構築物の何れかを挿入して、T細胞を編集した。操作したT細胞を、neoTCR特異的な
デキストラマー染色によるフロー・サイトメトリーにより、それぞれのneoTCRの発現につ
いて評価した。ここで使用したneoTCR構築物は、それにpan-TCR抗体が結合しないように
改変したものである。図17に示すように、T細胞の39.6%、36.5%、及び28.5%がそれぞれ
neoTCR MART-1(F5)、Neo12、及びNY-ESO(1G4)を発現しており、内因性のTCRを発現してい
なかった(それぞれ図17左、中央、右パネル)。更に、内因性のTCRの発現は、大多数のT細
胞において破壊されていた(それぞれ97.9%、96%、及び86.6%)。従って、種々のneoTCRを
用いたT細胞操作を行うと、一般的に、同様な編集効率となり、編集効率は、本明細書に
記載のT細胞編集方法を使用して、種々のTCR発現構築物にわたって再現可能であるという
結論が支持される。
【0343】
実施例10:患者由来のT細胞におけるneoTCRの組み込み
種々のneoTCRを、健常者又は患者由来の何れかのT細胞(通常、Bio-options及びConvers
ant Bioから入手したメラノーマ、大腸がん、及び肺がん)のTCRα遺伝子座位に組み込ん
だ。標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、及び環状HRテンプレー
トNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10)HR
テンプレートがコードするMART-1 neoTCR構築物、NTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBo
pt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物、又は
環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.1G4.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA(配列番
号(SEQ ID NO): 11)がコードするNY-ESO neoTCR構築物の何れかを挿入して、T細胞を編集
した。操作したT細胞を、neoTCR特異的なデキストラマー染色によるフロー・サイトメト
リーにより、それぞれのneoTCRの発現について評価した。
【0344】
図18Aに示すように、健常者サンプル又は患者サンプルに由来するT細胞は、Neo12及
びMART-1構築物について同様の効率で編集を受けた。更に、編集効率は、試験した種々の
neoTCR構築物にわたって同様であり、及びサンプル間で再現性のある編集効率が実証され
た。図18Bに示すように、健常者サンプルに由来するT細胞は、75%に近い効率でNeo12
neoTCRが挿入され、編集を受けた。
【0345】
前記Neo12 neoTCRを更に試験し、編集効率の結果を表9に示す。特に、同様の編集効率
が患者1由来のT細胞のデュープリケートのサンプルについて観察され(レプリカ#1につい
て36.2%、及びレプリカ#2について36.4%)、更に、本明細書に記載するT細胞の編集方法の
再現性が実証された。従って、本結果は、本明細書に記載するT細胞の編集方法が、種々
の発現構築物に対して広く適用することができること、及び臨床場面で再現可能であるこ
と、の両方を実証する。
【0346】
【表9】
【0347】
実施例11:CD4 T細胞及びCD8 T細胞におけるneoTCRの組み込み
CD4 T細胞及びCD8 T細胞の編集効率を評価した。Neo12 neoTCRをTCRα遺伝子座位に組
み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、及び環状HRテン
プレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID N
O):13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、T細胞を編集した。なお、ここで使
用したNeo12構築物は、それにpan-TCR抗体が結合しないように改変した。CD8 T細胞の編
集を、Neo12 neoTCRの発現により評価した(Neo12特異的なデキストラマー染色)。デキス
トラマー染色は、CD4 T細胞上のneoTCR分子を検出するのに十分な感度は無い。これは、M
HCクラスI分子上に提示されているペプチドによると思われる。そして、CD8が存在しない
のでMHC-I/TCR相互作用が安定化されることはない。従って、CD4 T細胞の編集は、pan-TC
R抗体が結合しないCD3複合体を検出することによって評価した。図19に示すように、CD
8 T細胞及びCD4 T細胞の両方は、同様の効率で編集を受けた。従って、本結果は、本明細
書に記載するT細胞の編集方法が種々のT細胞の集団に広く適用可能であること、を実証す
る。
【0348】
実施例12:neoTCRの発現レベル
種々のneoTCRの表面発現レベルを、TCRα遺伝子座位に組み込んだ後に試験した。標準
的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、環状HRテンプレートNTC9385R-T
RAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt (配列番号(SEQ ID NO): 10)HRテンプレー
トがコードするMART-1 neoTCR構築物、NTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.T
RA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物、又は環状HRテン
プレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.1G4.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA(配列番号(SEQ ID N
O): 11)がコードするNY-ESO neoTCR構築物の何れかを挿入して、T細胞を編集した。種々
のneoTCR及び内因性のTCRの表面発現を、抗-CD3を使った染色によるフロー・サイトメト
リーによって評価した。
【0349】
図20に示すように、組み込まれたneoTCRの表面発現は、内因性のTCRの表面発現レベ
ルに匹敵した。平均蛍光強度(Mean-fluorescent intensity (MFI))フローサイトメトリー
・プロットによれば、同じ抗体(CD3)を用いて染色した内因性のTCR(図20A、左側ヒス
トグラム)及びNeo12 neoTCR TCR(図20A、右側ヒストグラム)は、大きく重さなった。
試験した3つのneoTCR全てについて、計算したMFIを図20Bで定量的に表す。それぞれは
、内因性のTCRレベルに匹敵する表面発現を示す。従って、本結果は、本明細書に記載す
るT細胞の編集方法により、挿入された発現カセットをコードする完全なTCR(即ち、TCRα
及びTCRβの両方)の表面発現が、内因性に匹敵するレベルで、もたらされること、を実証
する。
【0350】
実施例13:大きいフォーマットの非凍結T細胞におけるNeoTCRの組み込み
新たに単離したPBMC(即ち、凍結されていない)を、ロイコパックに回収し、プロディジ
ー・プラットホーム(Prodigy platform)を用いてT細胞を回収した。環状HRテンプレートp
UCu-Kan TRAC(1k)_P2A.Neo12.TRBC2opt.f-P2A.TRA(Va) (配列番号(SEQ ID NO):14)がコー
ドするNeo12 neoTCR構築物を挿入することにより、T細胞を編集した。Neo12 neoTCRの発
現を、Neo12特異的なデキストラマー染色によって検出した。
【0351】
図21に示すように、41.6%のCD8ポジティブなT細胞がNeo12構築物を発現した。従って
、本結果は、本明細書に記載するT細胞の編集方法が臨床場面に適用可能であること、を
実証する。
【0352】
実施例14:編集したT細胞は機能的である
T細胞の機能性について、編集したT細胞を評価した。より具体的には、ペプチドでパル
スした(図22に例示されている)、又はHLA複合体に予め形成されるペプチドを発現する
ように操作した(図23に例示されている)、の何れかのターゲット細胞(HLA-A02を発現す
るK562細胞)を使用して、サイトカインの産生/分泌、T細胞の増殖、及び抗原特異的なタ
ーゲット細胞傷害に関して、T細胞を評価した。
【0353】
標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、及び環状HRテンプレート
NTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10) HR
テンプレートがコードするMART-1 neoTCR構築物、NTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBo
pt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物、又は
環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.1G4.TRBopt.f-P2A.TRAopt.BGHpA(配列番
号(SEQ ID NO): 11)がコードするNY-ESO neoTCR構築物の何れかを挿入して、T細胞を編集
した。
【0354】
記載のように、抗原特異的なT細胞を介した傷害について、操作したT細胞を評価した。
図24に示すように、ターゲット細胞は、T細胞と共インキュベートした場合、ターゲッ
ト細胞を、それらのそれぞれのコグネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的な様式でパル
スした場合(図24、0~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体を発現するように操作した
場合(図24、pHLA)、傷害を受けた(E:T比率4:1)。注目すべきことに、ペプチド/HLA複合
体を発現するように操作したターゲット細胞は、ほとんど完全に傷害をうけた。これは、
ペプチドでパルスした細胞とは対照的である(おそらく、HLAが提示するパルス・ペプチ
ドの一過性の性質に起因する)。これは、より生理学的に関連している状況(例えば、抗
原ペプチドの非一過性の提示)により、高いレベルでの傷害がもたらされ得ることを示唆
している。更に、T細胞の抗原特異的な傷害性はまた、Neo12発現T細胞とペプチド/HLA複
合体を発現する操作したターゲット細胞とを共インキュベートして、アネキシンV細胞死
アッセイを使用して、も実証された(E:T比率4:1、データーは示さず)。従って、操作した
T細胞は、ターゲット細胞を抗原特異的に傷害すること、を示した。
【0355】
操作したT細胞を、記載するように、抗原特異的なT細胞増殖について評価した。図25
に示すように、Neo12発現T細胞は、Neo12コグネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的に
パルスしたターゲット細胞(図25A及び25B、0~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合
体を発現するように操作したターゲット細胞(図25B、pHLA)、と共インキュベートした
場合、増殖した(E:T比率2:1)。図25Aは、図25Bで算出される分裂細胞のパーセンテ
ージで増殖することを示す、代表的なヒストグラム・プロットを示す。従って、操作した
T細胞は、ターゲット細胞が提示するコグネイト・ペプチドと共インキュベートした場合
、抗原特異的な増殖を示した。
【0356】
抗原特異的なサイトカイン産生について、操作したT細胞を評価した。図26に示すよ
うに、Neo12発現T細胞は、Neo12コグネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的にパルスし
たターゲット細胞(図26A~D、0~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体を発現するよ
うに操作したターゲット細胞(図26A~D、pHLA)、と共インキュベートした場合、サイ
トカインを産生した(E:T比率4:1)。注目すべきことに、前記サイトカインのプロファイル
によれば、Th1向炎症性サイトカインIFNγ、IL-2、TNFα、及び少量のIL-6(それぞれ図2
6A-Dに提示した)の産生が見られるが、Th2サイトカインIL-4又はIL-10の産生は見ら
れなかった(データは示していない)。従って、操作したT細胞は、ターゲット細胞と共イ
ンキュベートした場合、抗原特異的な向炎症性のTh1サイトカインのプロファイルを示し
た。
【0357】
実施例15:編集したドナー由来のT細胞は機能的である
ドナー由来のT細胞を、編集後のT細胞の機能性について、評価した。Neo12 neoTCRをTC
Rα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従っ
て、及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt
(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、T細胞を編集し
た。neoTCR特異的なデキストラマー染色によるフロー・サイトメトリーによって、編集効
率について、操作したT細胞を評価した。図27Aに示すように、健常者ドナーと患者ド
ナーに由来するT細胞は、同様の効率で編集を受けた。
【0358】
記載のように、抗原特異的なT細胞を介した傷害について、操作したT細胞を評価した。
図27Bに示されるように、ターゲット細胞は、健常者ドナー及び患者ドナーに由来する
編集したNeo12発現T細胞と共インキュベートしたとき、ターゲット細胞を、それらのそれ
ぞれのコグネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的な様式でパルスした場合(図27B、0
~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体を発現するように操作した場合(図27B、「Neo
12 HLA」)、傷害を受けた(E:T比率4:1)。注目すべきことに、非コグネイト・ペプチド/HL
A複合体を発現するように操作したターゲット細胞は、有意な傷害を示さなかった(図27
B、「MART1 HLA」)。更に、モックの編集手順を行ったT細胞を用いた場合には、傷害は
観察されなかった。従って、操作した健常者ドナー由来及び患者由来のT細胞は、臨床場
面での適用可能性を実証するターゲット細胞の抗原特異的な傷害、を実証した。
【0359】
操作した健常者及び患者ドナー由来のT細胞を、記載されているように、抗原特異的なT
細胞増殖について評価した。図27Cに示すように、Neo12発現ドナーT細胞は、Neo12コ
グネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的にパルスしたターゲット細胞(図27C、0~10
00ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体を発現するように操作したターゲット細胞(図27C
、「Neo12 HLA」)と共インキュベートした場合に、増殖した(E:T比率4:1)。注目すべきこ
とに、非コグネイト・ペプチド/HLA複合体を発現するように操作したターゲット細胞は、
T細胞増殖を示さなかった(図27C、「MART1 HLA」)。更に、T細胞にモックの処理をし
た場合、T細胞増殖は観察されなかった。従って、操作した健常者ドナー及び患者ドナー
由来のT細胞は、コグネイト・ペプチドを提示するターゲット細胞と共インキュベートし
た場合、抗原特異的な増殖を示した。
【0360】
操作した健常者ドナー及び患者ドナー由来T細胞を、抗原特異的なサイトカイン産生に
ついて評価した。図27Dに示すように、Neo12発現T細胞は、100nMのNeo12コグネイト・
ペプチドでパルスしたターゲット細胞と共インキュベートした場合、サイトカインを産生
した(E:T比率4:1)。注目すべきことに、前記サイトカインのプロファイルによれば、Th1
向炎症性サイトカインIFNγ、IL-2、TNFα、及び少量のIL-6の産生が見られた。従って、
操作した健常者ドナー及び患者ドナー由来T細胞は、ターゲット細胞と共インキュベート
した場合、抗原特異的な向炎症性のTh1サイトカインのプロファイルを示した。
【0361】
注目すべきことに、操作したドナー由来のT細胞は、実施したアッセイの前に選別を行
っておらず、これは、操作したドナー由来のT細胞が、更なる富化工程が無くても、機能
的であること、を実証する。
【0362】
実施例16:種々のneoTCRを発現するドナー由来T細胞は機能的である
編集後、T細胞の機能性について、T細胞を評価した。Neo12 neoTCR及びMART-1 neoTCR
の両方を、TCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介した編
集手順に従って、及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.T
RA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10) HRテンプレートがコードするMART-1 neoTCR構築物
、又はNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO)
: 13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、同じドナー由来のT細胞を編集した。
neoTCR特異的なデキストラマー染色によるフロー・サイトメトリーによって、編集効率に
ついて、操作したT細胞を評価した。図28Aに示すように、同じドナーに由来するT細胞
は、Neo12及びMART-1(「F5」)TCR構築物の両方について、同様の効率で編集を受けた。
【0363】
次いで、これらの操作したT細胞を、記載されているように、抗原特異的なT細胞を介し
た傷害について、評価した(4:1 E:T比率)。図28Bに示すように、ターゲット細胞は、
編集したNeo12発現T細胞(白四角)又はMART-1発現T細胞(黒四角)と共インキュベートした
とき、ターゲット細胞を、それらのコグネイト・ペプチドでペプチド濃度依存的にパルス
した(0~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体を発現するように操作した場合(「Neo12 H
LA」及び「MART-1 HLA」)、傷害を受けた(E:T比率4:1)。注目すべきことに、非コグネイ
ト・ペプチド/HLA複合体を発現するように操作したターゲット細胞は、有意に傷害を受け
なかった(即ち、Neo12 T細胞はMART1 HLA発現細胞に傷害を与えない、及びMART-1 T細胞
(「F5」)はNeo12 HLA細胞に傷害を与えない)。操作したドナー由来T細胞を、記載するよ
うに、抗原特異的なT細胞増殖について評価した。図28Cに示すように、Neo12(白四角)
又はMART-1(黒四角)を発現するドナーT細胞は、それぞれのコグネイト・ペプチドでペプ
チド濃度依存的な様式でパルスした(0~1000ng/ml)ターゲット細胞、又はペプチド/HLA複
合体(「Neo12 HLA」及び「MART-1 HLA」)を発現するように操作したターゲット細胞と共
インキュベートした場合に、増殖した(E:T比率4:1)。注目すべきことに、非コグネイト・
ペプチド/HLA複合体を発現するように操作したターゲット細胞は、T細胞増殖を示さなか
った、即ち、Neo12 T細胞はMART1 HLA発現細胞と共インキュベートした場合には増殖しな
かった、及びMART-1 T細胞(「F5」)はNeo12 HLA細胞と共インキュベートした場合には増
殖しなかった。従って、操作したドナー由来T細胞は、コグネイト・ペプチドを提示する
ターゲット細胞と共インキュベートした場合、抗原特異的な増殖を示し、これは、複数の
TCR構築物について、臨床場面で適用可能であることを示している。
【0364】
注目すべきことに、操作したドナー由来のT細胞は、実施したアッセイの前に選別を行
っておらず、これは、操作したドナー由来のT細胞が、更なる富化工程が無くても、機能
的であること、を実証する。
【0365】
実施例17:編集したT細胞は機能的な活性を維持している
操作したT細胞の、培養を延長してもそれらの機能性を維持する性能、を評価した。Neo
12 neoTCR及びMART-1 neoTCRの両方をTCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクト
ロポレーションを介した編集手順に従って、環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P
2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10) HRテンプレートがコードす
るMART-1 neoTCR構築物、又はNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)op
t(配列番号(SEQ ID NO):13)がコードするNeo12 neoTCR構築物の何れかを挿入して、T細胞
を編集した。
【0366】
図29に示すように、Neo12及びMART-1の操作したT細胞は、同等な効率で製造した後14
日目(図29左側パネル)及び2ヶ月目(図29右側パネル)において、抗原特異的な様式で
、ターゲット細胞に傷害を与えることが可能であった。ターゲット細胞は、同じドナー由
来である、Neo12(白丸)又はMART-1(黒丸)の何れかを発現する編集したT細胞と共インキュ
ベートしたとき、ターゲット細胞を、それらのそれぞれコグネイト・ペプチドでペプチド
濃度依存的な様式でパルスした(0~1000ng/ml)、又はペプチド/HLA複合体(「Neo12 HLA」
及び「MART-1 HLA」)を発現するように操作した場合、傷害を受けた(E:T比率4:1)。注目
すべきことに、非コグネイト・ペプチド/HLA複合体を発現するように操作したターゲット
細胞は、有意に傷害を受けなかった(即ち、Neo12 T細胞はMART1 HLA発現細胞に傷害を与
えない、及びMART-1 T細胞(「F5」)はNeo12 HLA細胞に傷害を与えない)。細胞を、IL7及
びIL-15(抗原なし)を含む培地中に維持したところ、培養中において健常であった。従っ
て、編集したT細胞は、延長した期間にわたって、TCRの発現及び抗原特異的な活性を維持
し、臨床場面での適用可能性が示された。
【0367】
注目すべきことに、操作したT細胞は、実施したアッセイの前に選別を行っておらず、
これは、操作したT細胞が、更なる富化工程が無くても、機能的であること、を実証する
【0368】
実施例18:編集したT細胞の特性評価
操作したドナー由来(健常者ドナー)T細胞を、編集後のT細胞の機能性について評価した
。Neo12 neoTCR及びMART-1 neoTCRの両方を、TCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエ
レクトロポレーションを介した編集手順に従って、及び環状HRテンプレートNTC9385R-TRA
C(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 10)HRテンプレートが
コードするMART-1 neoTCR構築物、又はNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.T
RA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO):13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、T細胞
を編集した。
【0369】
neoTCRを発現する操作したT細胞について、細胞毎に、単一細胞セクレトーム解析(sing
le cell secretome analysis)を行った(Isoplexis)。Isoplexisプラットホームは、単一
細胞の32-プレックスのサイトカイン・アッセイ・マイクロデバイス(単一細胞バーコード
・チップ)を利用して、抗原特異的な刺激に対するT細胞の反応性を表す。CD4+ T細胞及び
CD8+T細胞のサブセットを、抗CD4又は抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch
Gladbach、Germany)を用いて分離した。CD4及びCD8細胞を、特定のペプチド/ターゲット
細胞(10又は100nMの特定のペプチドでパルスしたターゲット細胞、又は特定のペプチド/H
LA複合体を発現するように操作したターゲット細胞、との共培養)、又は対照により、37
℃、5% CO2で、1:2の比率で、19~21時間、別々に刺激した。CD4+ T細胞又はCD8+ T細胞
が存在することは、Alexa Fluor 647(Thermo Fisher Cell Therapy Systems、Waltham、M
A)をコンジュゲートさせた、抗CD4抗体又は抗CD8抗体を用いて、室温で10分間染色するこ
とによって確認し、リン酸緩衝生理食塩水で1回リンスし、及び1×106細胞/mLの密度で培
地に再懸濁した。約30μLの細胞懸濁液を、単一細胞セクレトームの評価用の単一細胞バ
ーコード・マイクロチップに装填した。それぞれのサンプルについて、32-プレックスの
アッセイによって、~2000個のT細胞からの分泌タンパク質を測定した。単一細胞バーコ
ード・チップ上に負荷した細胞サンプルに関する顕微鏡の及びマイクロアレイ・スキャン
の、並びにタンパク質分泌の生のデータを、Isoplexisソフトウエアを用いて、解析し、
各々の個々の細胞がどのような組合せのタンパク質を分泌しているかを決定した。
【0370】
図30に示すように、Isoplexis解析は、CD4 T細胞及びCD8 T細胞の両方に対して、多
機能性プロファイルを示した。Neo12 neoTCRを発現する操作したT細胞(図30A)及びMAR
T-1 neoTCR(「F5」)を発現する操作したT細胞(図30B)について、CD4(左パネル)及びCD
8(右パネル)のプロファイルを示す。CD8+T細胞は、Neo12 neoTCRのT細胞(図30A、右パ
ネル)及びMART-1(“F5”)のT細胞(図30B、右パネル)の両方について、約40%ほどの細
胞が2種以上のサイトカインを産生し(この実験で編集されたTCRである細胞の%を表してい
る、従って、編集したT細胞の全てが多機能性である)、用量依存性の多機能プロファイル
(複数のサイトカインの分泌)を、示した。CD4の応答性は、CD8の応答性よりも弱く、こ
れは、おそらくMHC-I/TCR相互作用を安定化するCD8が存在しないことによる。注目すべき
ことに、CD4+ MART-1 neoTCR(「F5」)T細胞は、ペプチドでパルスした(図30B、左パネ
ル「10nM」及び「100nM」)、又はMART-1ペプチド/HLA複合体を発現するように操作した(
図30B、左パネル「MART1 HLA」)、何れかのターゲット細胞を用いて抗原刺激をした後
、多機能性プロファイルを示した。対照的に、CD4+Neo12 T細胞は、Neo12ペプチド/HLA複
合体を発現するように操作したターゲット細胞で刺激した場合、多機能プロファイルを検
出することが可能であったが(図30A、左パネル「Neo12 HLA」)、ペプチドでパルスし
たターゲット細胞(図30A、左パネル「10nM」及び「100nM」)とインキュベートした場
合には、サイトカイン産生を検出することができなかった。これもまた、おそらくMHC-I/
TCR相互作用を安定化するCD8が存在しないためであろう。
【0371】
更に、図30Cに示すように、操作したT細胞は、IFNγの全体的なレベルに対して最も
大きく寄与するが(図30C、左図)、本研究のneo12 neoTCR及びMART-1 neoTCR(F5)遺伝
子の編集効率は約45%であったため(データは示さず)、IFNγを産生するT細胞の割合は編
集を受けた細胞の数よりも少ない(図30C、右パネル)。対照的に、TNFαを産生するT細
胞の割合は、編集効率とより良く相関する、即ち、TNFの量(~45%)は遺伝子編集の量(~4
5%)と相関した。(図30C、右パネル及びデータは示されていない)。このように、Isopl
exisの結果によれば、操作したT細胞によるTNFαの分泌は、IFNγの分泌と比較して、そ
れらのin vitro傷害活性のより良い予測因子である可能性があること、が実証された。
【0372】
このように、Isoplexis解析によれば、neoTCRを発現する操作した細胞の集団は、多機
能性の活性を有することが実証され、重要なことに、抗原刺激が低い場合であっても、多
機能性の活性を有していた(in vivo での有効性に対して重要な考慮事項である)。
【0373】
実施例19:エレクトロポレーション・タイミング効果の効率
エレクトロポレーション前の、細胞とRNP複合体とのインキュベーション工程のタイミ
ングを評価した。活性化したT細胞を採取し、遠心分離し、エレクトロポレーション・バ
ッファー中に再懸濁した後、エレクトロポレーション及びその後の培養の前に、細胞をRN
P複合体と混合し、室温で種々の時間(5、10、15、20、30、45、60分及び1分未満)静置し
た。細胞を、neoE特異的なデキストラマー染色による、編集を受けたT細胞のパーセント
についてのフロー・サイトメトリーによって、及び細胞カウンターを使用する生存率%に
よって、解析した。生存率は、インキュベーション期間が45分以下で約20から約100%の範
囲であったが、60分のインキュベーションでは、ほぼ0%であった(データは示さず)。正し
く編集を受けたT細胞の割合(デトラマー+/内因性のTCR-)は、試験した全ての時間点に関
して、20%を超えていた(データは示さず)。
【0374】
実施例20:HSCの編集
ヒトHSC(HSPCとも呼ばれる)を編集してneoTCRを挿入した。HSCを編集するための一般的
なワークフローを図31に示す。単離したHSC(CD34+細胞)CD34+細胞を、刺激前の培地(pr
e-stim media)中で48時間培養した(X-VIVO +50ng/ml SCF、TPO、FL-3L及び20ng/mlのIL-3
)。ヌクレオフェクションを、以下の表10に記載した条件を用いて実施した。エレクト
ロポレーションした細胞(即ち、改変した初代細胞)を、BBMM培地(IMDM、20% FBS、35% BS
A、IL3 5ng/ml、IL6 10ng/ml、SCF:25ng/ml)中に播種し;培地を定期的に交換し、ヌクレ
オフェクションの16日後に細胞を回収した。標準的なエレクトロポレーションを介した編
集手順に従って、環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TR
A(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO):13)がコードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、T細胞
を編集した。
【0375】
【表10】
【0376】
編集を評価するために、gDNAを抽出し、そしてイン及びアウトPCRを行った。図32
示すように、群5、6、7、及び10は、正確に組み込まれたことを示す、1Kbの増幅PCRバン
ドを示した。このように、HSCは、TCRα遺伝子座位で正確に編集を受けた。
【0377】
HSCにおける編集を更に評価するために、上記にように、1kbの左側及び右側の相同アー
ム(「HRアーム」)に挟まれ、及びP2A配列によって隔てられた、MNDプロモーターによって
駆動するZsGreen遺伝子及び一部を欠いたLNGRFコーディング配列を含み、環状プラスミド
(pUCu-Kan TRAC(1k)_MNDZsGreen.f-P2A.LNGFRt.P2A;配列番号(SEQ ID NO):15)の中に
コードした、HRテンプレートを4μg使用して、編集手順を行った。HSC(0.4×106))を、1.
13pmolのRNP(Cas9/sgRNA)を使用して、20μL中、プログラムEK100を使用してエレクトロ
ポレーションした。明視野顕微鏡及び蛍光顕微鏡によって評価したところ、14日目のメチ
ルセルロース・コロニーはZsGreenを発現していた(データは示さず)。
【0378】
実施例21:HRアーム長編集
MART-1 neoTCRをTCRα遺伝子座位に組み込んだ。標準的なエレクトロポレーションを介
した編集手順に従って、及び300塩基対、600塩基対、1000塩基対(標準)、又は2000塩基対
を含むHRアーム長である環状HRテンプレートNTC9385R-TRAC(1k)DTS_P2A.F5.TRBopt.f-P2A
.TRAopt.BGHpA がコードするMART-1 neoTCR構築物を挿入して、T細胞を編集した。
【0379】
MART-1 neoTCRの発現について(MART-1特異的なデキストラマー染色)、及び内因性のTCR
の発現が無くなることについて、フロー・サイトメトリーにより、操作したT細胞を評価
した。表11にまとめたように、正確に編集を受けたT細胞を生成することについての編
集効率(デキストラマー+/内因性のTCR-)は、試験した全てのアーム長について17.6%以上
であった、及び試験した600塩基対以上の全てのアーム長について20%以上であった。
【0380】
【表11】
【0381】
実施例22:A151阻害因子は生存率を改善する
標準的なエレクトロポレーションを介した編集手順に従って、環状HRテンプレートNTC9
385R-TRAC(1k)DTS_P2A.neo12.TRBopt.f-P2A.TRA(Va)opt(配列番号(SEQ ID NO): 13)がコ
ードするNeo12 neoTCR構築物を挿入して、T細胞を編集した。Neo12 neoTCRの発現につい
て、操作したT細胞を、フロー・サイトメトリーによって評価した。Neo12 neoTCRの発現
を、Neo12特異的なデキストラマー染色によって検出した。なお、ここで使用したNeo12構
築物は、それにpan-TCR抗体が結合しないように改変した。
【0382】
T細胞を、種々の濃度のA151を添加したプレ-インキュベーションをして、編集した。表
12にまとめたように、正しく編集されたT細胞を生成するための編集効率(デキストラマ
ー+/内因性のTCR-)は、A151の場合、有意に変化しなかったが、細胞生存率(細胞の数によ
り評価した)は0.1μM又は10μMのA151の添加で改善した。
【0383】
0.1μM A151を編集工程の種々の段階で添加して、T細胞を編集した。表13にまとめた
ように、正しく編集されたT細胞を生成するための編集効率(デキストラマー+/内因性のTC
R-)は、試験した種々の段階でのA151で、有意に変化しなかったが、編集した細胞の細胞
生存率(編集した細胞の数によって評価した)は、RNP及び細胞をプレ-インキュベーション
している間にA151を添加すること、並びにプレ-インキュベーション及びポスト-エレクト
ロポレーションの間の両方でA151を添加することによって、改善された。
【0384】
【表12】
【0385】
【表13】
【0386】
実施例23:腫瘍モデルにおける操作したT細胞の有効性
特異的なネオ抗原及びHLA分子を発現するヒト腫瘍細胞(例えば、特異的な抗原及びHLA
を構成的に発現するように形質導入したK562、又は特異的なネオ抗原及び適合したHLAを
内因的に発現する初代ヒト腫瘍細胞等)に対して、TCRを操作したヒトT細胞のin vivoで
の有効性を評価した。腫瘍細胞(1×106個又は3×106個)を、8週齢のNSGマウス(Jackson L
aboratory)の側腹の皮下に接種する。腫瘍の増殖を、1週間に2~3回(キャリパーを使用し
て)腫瘍寸法を測定することによってモニターする。(長さ × 幅2)/2 の計算式により、
腫瘍サイズを算出する。腫瘍の大きさが~100mm3に達したら、マウスに、1×106個若しく
は5×106個のTCRを操作したヒトT細胞(処置群)、又はPBS若しくはモックのT細胞(RNP若し
くはHRテンプレート無しでエレクトロポレーションした)コントロール群を投与する。腫
瘍の増殖を経時的にモニターし、腫瘍の大きさが2000 mm3に達したらマウスを安楽死させ
る。初期の時点で(T細胞を投与した4~7日後)、各群のマウスのコホートをサクリファイ
ス(sacrifice)する。血液、脾臓及び腫瘍を採取する。編集したヒトT細胞が血中に存在す
ることを、qPCR及びフロー・サイトメトリーにより評価する。腫瘍中に編集したヒトT細
胞の存在すること/浸潤していることを、qPCR、フロー・サイトメトリー及び免疫組織化
学により評価する。
【0387】
本結果は、ヒト腫瘍細胞に対して、TCRを操作したヒトT細胞のin vivoでの有効性が評
価されること、を実証する。
【0388】
実施例24:NKの編集
ヒト・ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)を、TCRα遺伝子座位にZsGreenレポーター構築
物を組み込んで編集した。NK細胞を、まずCD4/CD8のポジティブ選択による単離(Miltenyi
、CliniMACS)の際、フロー-スルーを回収することにより分離した。単核細胞をフィコー
ルを用いて単離し(標準的な手順)、次いでNK細胞をNK細胞単離キット(Miltenyi)を用いて
特異的に単離した。単離したNK細胞(1×106)を、NK MACS完全培地(Miltenyi)、5% hABS(V
alley Biomedical)、200 ng/mL IL-2(Miltenyi)、12.5 ng/mL IL-15(Miltenyi)、及びMil
tenyi NK活性化ビーズ(製造業者の説明書に従って5 uLビーズ/106個の細胞)を含む培養中
で、活性化した。活性化後3日目に、活性化したNK細胞(3x106)を下表14にあるパラメー
タの概要に従って、100 μLの体積で、エレクトロポレーションした。1kbの左側及び右側
の相同アーム(「HRアーム」)に挟まれ、及びP2A配列によって隔てられた、MNDプロモータ
ーによって駆動するZsGreen遺伝子及び一部を欠いたLNGRFコーディング配列、を含む相同
組換え修復テンプレートを、環状プラスミド(pUCu-Kan TRAC(1k)_MNDZsGreen.f-P2A.LNGF
Rt.P2A;配列番号(SEQ ID NO):15))の中にコードした。
【0389】
群を、4、7及び11日目に、フローサイトメトリーによって、GFP発現について評価した
。表14にまとめるように、ZsGreenの発現は、4日目には見られた(群12及び13)。11日目
までに、20%を超える細胞が、プログラムEN-138及びEK-100(群11、12、14、及び15)を使
用して、ZsGreenを発現していた。11日目(群12)でのZsGreenの発現を示す代表的なプロッ
トを図33に示す。
【0390】
イン-アウトPCR技術を用いて組み込みに対する分子的な解析を行い、TCRα遺伝子座位
に、前記発現構築物が正確にゲノム組み込みが行われていることを確認した。前記PCRは
、先のTCR組み込み解析で使用した上流フォワード・プライマーを使用し(配列番号(SEQ I
D NO): 1)、一方、MND挿入に対する特異的な上流リバース・プライマーは、リバース・プ
ライマー(AGGGTCATTTCAGGTCCTT、配列番号(SEQ ID NO): 23)(編集したT細胞由来のgRNA
を使用したポジティブ・コントロールを除く)及び、そのそれぞれのリーバス・プライマ
ー(配列番号(SEQ ID NO): 2)を使用した。表14にまとめ、図34に示すように、群11~
18では、正確に組み込まれたことを示す1Kbの増幅したPCRバンドが見られた。従って、NK
細胞は、TCRα遺伝子座位で正確に編集されている。注目すべきことに、PCRバンドの強さ
は、ZsGreenを発現する細胞の割合と相関していた(即ち、ZsGreenが最も高いパーセンテ
ージであるサンプルは、最も明るいPCRバンドを生成した)。
【0391】
【表14】
【0392】
実施例25:初代細胞の編集
上記の手順に従って、初代細胞の編集を行う。前記手順(限定されるものではないが、
エレクトロポレーション条件及び試薬の変更を含む)は、特に編集対象の初代細胞に応じ
て調整する。初代細胞には、幹細胞、ヒト幹細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞が含まれる
。免疫細胞の例としては、限定されるものではないが、B細胞、T細胞, 単球、マクロファ
ージ、樹状細胞、及びナチュラル・キラー細胞が挙げられる。
【0393】
追加の実施形態及び参考文献の組み込み
本発明を、好ましい実施形態及び様々な代替的な実施形態を参照しながら、具体的に示
し、説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様
々な変更を行うことができることが、当業者には理解されよう。
【0394】
本明細書の本文内で引用した全ての参考文献、発行済み特許及び特許出願は全ての目的
のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27-1】
図27-2】
図28-1】
図28-2】
図29
図30A
図30B
図30C
図31
図32
図33
図34
【手続補正書】
【提出日】2023-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された一発明。
【外国語明細書】