IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キッツの特許一覧

<>
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図1
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図2
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図3
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図4
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図5
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図6
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図7
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図8
  • 特開-偏心型バタフライ弁 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098078
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】偏心型バタフライ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/226 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
F16K1/226 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082057
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2019206717の分割
【原出願日】2019-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】宮下 幸博
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和久
(72)【発明者】
【氏名】小林 由里
(57)【要約】
【課題】高圧流体の圧力が正流又は逆流の何れの方向でも弁閉時の高シール性を維持し、特に逆流で高い圧力が加わる場合にもシール性能を維持し、シートリングとジスクとのシール面圧を確保して漏れを防止できる操作性に優れた偏心型バタフライ弁を提供する。
【解決手段】ボデー21内にステム22で軸支したジスク23をシートリング24に密封シール可能に設けた。シートリングの内径側に可撓部41が形成され、可撓部とシートリテーナ25との間に板バネ26が装着される。板バネの荷重特性が変化するポイントを変曲点とし、弁閉時には変曲点でバルブに流体圧が加わらない無負荷状態としつつ可撓部にバネ荷重が加わり、正圧時には荷重特性が変曲点の位置から切り換わり正圧が大きくなるとバネ荷重がより小さくなり、逆圧時に荷重特性が変曲点の位置から切り換わるときに逆圧が大きくなるとバネ荷重がより大きくなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、前記ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、前記シートリングの内径側に前記ジスクの変位に応じて傾倒する可撓部が形成され、この可撓部と前記シートリテーナとの間にこれらを相互に弾発する環状の板バネが装着されてこの板バネの上流側に前記シートリテーナ、下流側に前記シートリングがそれぞれ設けられ、前記板バネは、前記シートリテーナへの対向側では外径側が当接され、前記シートリングへの対向側では前記シートリテーナ側への当接位置よりも内径側が前記可撓部に当接されて内径側が弾性変形可能であり、バルブに正圧又は逆圧が加わるときに前記板バネの荷重特性が変化するポイントを変曲点とし、前記板バネは、弁閉時において、前記変曲点でバルブに流体圧が加わらない無負荷状態にしつつ前記可撓部にバネ荷重を加えた状態とし、バルブに正圧が加わって荷重特性が前記変曲点の位置から切り換わる場合には、この正圧が大きくなるにつれて前記可撓部が前記ジスクへの密接状態を維持しつつ当該板バネの内径側が下流側に傾倒することでバネ荷重がより小さくなり、バルブに逆圧が加わって荷重特性が前記変曲点の位置から切り換わる場合には、この逆圧が大きくなるにつれて当該板バネの内径側が前記シートリテーナへの接触を回避しつつ上流側に傾倒することでバネ荷重がより大きくなる状態で装着されていることを特徴とする偏心型バタフライ弁。
【請求項2】
前記可撓部の外径側に、前記ボデーと前記シートリテーナとの間に固定される固定部が一体に形成され、この固定部の外周面側の環状周囲に薄肉部を介して一体に連結されたガスケット部が前記ボデーと前記シートリテーナとの間に挟着された請求項1に記載の偏心型バタフライ弁。
【請求項3】
前記シートリングと前記ジスクとの密封シール状態で、前記シートリングが前記ボデーと前記シートリテーナとの間に締付け用のリテーナボルトで締付け固定された請求項1又は2に記載の偏心型バタフライ弁。
【請求項4】
筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、前記ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、前記シートリングの内径側に前記ジスクの変位に応じて傾倒する可撓部が形成され、この可撓部と前記シートリテーナとの間にこれらを相互に弾発する板バネが装着され、この板バネは、前記ジスクが流路方向において前記シートリテーナ側に変位し、このジスクの変位による前記可撓部の傾倒の大きさに応じて弾発方向の荷重が増加するバネであり、前記可撓部の弾性変形時には、この可撓部で押圧される前記板バネが前記シートリテーナへの接触が回避された状態で弾性変形すると共に、前記可撓部には、前記板バネとの対向側にこの板バネと当接する環状当接面が形成され、この環状当接面は、鉛直方向から外径方向に向けて所定の傾斜角度で緩やかに傾斜するテーパ面により設けられることを特徴とする偏心型バタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体に適した偏心型バタフライ弁に関し、特に、正流と逆流との双方向の流れに対応した偏心型バタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧流体に適したバルブとして偏心型バタフライ弁が一般に知られている。このうち、例えば、二重偏心型バタフライ弁では、弁体に対して弁軸が流路側に偏心し、弁体の回転中心がバルブ口径の中心から偏心していることで、中心形バタフライ弁に比較して弁閉時の封止性が高められている。この種のバルブにおいても、正流方向の圧力である正圧に加えて、逆流方向の圧力である逆圧に対しても封止性を高めたバルブが要求されることがある。このようないわゆる両流れと呼ばれる双方向の圧力に対応するためには、特に逆圧方向の弁座封止耐久性も高める必要がある。
【0003】
両流れ方向に対応した偏心型バタフライ弁として、例えば、本出願人は、特許文献1の偏心型バタフライ弁を出願している。この偏心型バタフライ弁1では、図8の一部拡大模式図に示すように、弁箱2とシートリテーナ部材3との間に環状の一体型シートリング部材4が介在され、このシートリング部材4は、正流又は逆流の流れ方向に可撓する可撓部位5をその内径側に備えている。
このバタフライ弁1の弁閉状態において、正流が生じたときには、その流体圧(正圧)により弁箱2内の弁体6がシートリング部材4から離れる方向(二次側:図における右方向)に移動しようとするものの、流体圧によるセルフシール機能により可撓部位5が弁体6方向(右方向)に傾きつつ弁体6を押圧することで、これらの間のシール面圧が維持されて弁座封止性が保たれる。
一方、逆流が生じたときには、その流体圧(逆圧)により弁体6がシートリング部材4の方向(一次側:図における左方向)に移動してこのシートリング部材4を押圧し、シートリング部材4の可撓部位5がシートリテーナ部材3の対向面に押し付けられて圧縮されることにより、逆圧時の弁座封止性が発揮されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2の二重偏心形バタフライ弁では、シートリング部材が、樹脂製シートリングとメタルシートリングとの組合わせにより設けられ、このシートリング部材の先端側(流路側)が、正流又は逆流の流れ方向に応じて可撓するようになっている。シートリング部材は、シートリテーナ部材を介して弁箱に装着され、これらシートリング部とシートリテーナ部材との間には、メタル製皿バネが装着されている。
このバルブの弁閉状態において、正流が生じたときには、その正圧により弁体がシートリング部材から離れる方向に移動しつつ、メタルシートリングと弁体との隙間から流体が入り込んでシートリング部材を押圧する。これにより、樹脂製シートリングの先端側が弁体の移動に追随するように変形して弁体を押圧し、これらの間の接触面圧を保持して弁座封止性を保とうとしている。
一方、逆流の発生時には、その逆圧によって弁体がシートリテーナ部材の方向に移動して樹脂製シートリングを圧縮する方向の力が加わり、樹脂製シートリングが、この方向に移動しようとする。この場合、メタルシートリングの背面に配置された皿バネの反発弾性力でメタルシートリング及び樹脂製シートリングを押し戻し、流体閉止に必要な樹脂製シートリングと弁体との接触面圧を保持しようとすることで、逆圧時の漏れを防ごうとしている。
【0005】
ところで、このような両流れ対応の偏心型バタフライ弁は、例えば、高層ビルなどの建造物に敷設される集中空調(セントラル空調)設備の管路の一部としての使用が考えられる。
図9(a)は、一般的な集中空調設備10の概略模式図を示しており、この集中空調設備10は、チラー(熱源機)11やクーリングタワー(冷却塔)12などが地下や屋上に配置され、これらが循環型の配管13に接続される。配管13における縦配管14には図示しない分岐流路が設けられ、この分岐流路に各フロアの空調システム(空気調和器)が接続される。集中空調設備10の作動時には、熱源機11により冷却又は加温された空調用冷温水が配管13内を循環し、分岐管路を通して各フロアの空調システムに送られることで建物全体の冷房や暖房などの空調がおこなわれる。
【0006】
この集中空調設備10には、前述した両流れに対応した偏心型バタフライ弁1が用いられることがあり、この場合、バタフライ弁1は、配管13の上流・下流側の縦配管14、14の下部側(低層側)にそれぞれ配置される。各バタフライ弁1は、その一、二次側の両端に接続用フランジ15が図示しない配管ボルトによって取付けられ、この接続用フランジ15を介して縦配管14の間に介在される。各バタフライ弁1には、自動或は手動の開閉操作部16が設けられ、この開閉操作部16により開閉操作可能に設けられる。
【0007】
図9(a)の集中空調設備の作動時には、熱源機11から冷却又は加熱した冷温水がポンプ17により送られると、この冷温水は、図中左側の縦配管14を上昇し、図中右側の縦配管14を下降するように配管13内を循環し、縦配管14から横配管を通して各フロアに供給される。
【0008】
一方、図9(b)において、集中空調設備10のメンテナンス等を実施する場合には、この集中空調設備10を停止した状態で、上流・下流側の各バタフライ弁1を開閉操作部16によって弁閉状態に操作し、これらバタフライ弁1よりも下部側(低層側)の接続用フランジ15及び配管13の一部を取外すことで、バタフライ弁1の端部側をいわゆるデッドエンド(行き止まり)の状態とする。これにより、バタフライ弁1の下部側で流路を分断し、バタフライ弁1よりも上部側(高層側)、或は下部側の各配管内の清掃等が実施可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6144847号公報
【特許文献2】特開2007-78001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前者の特許文献1のようなシール構造の偏心型バタフライ弁の場合、図8において逆圧が加わったときには、その圧力の大きさに応じて弁体6がシートリング部材4の方向に移動し、これによってシートリング部材4の可撓部位5に加わる力も大きくなる。このとき、逆圧が高くなると、可撓部位5がシートリテーナ部材3の装着面で押し潰され、可撓部位5がシートリング部材4の許容応力を超えて塑性変形したり、弁体6の作動によるシートリング部材4の摩耗が増加し、シール面圧が大幅に減少して弁座封止機能を発揮できなくなるおそれがある。
【0011】
一方、後者の特許文献2では、逆圧発生時には、皿バネでシートリング部材を二次側に押し戻そうとしているが、この押し戻し力が略一定に働く構成であるため、高圧力の逆圧が発生した場合、その圧力に耐えきれずに皿バネが大きく変形し、シートリング部材を押し戻すことができなくなることがある。この場合、シートリング部材の可撓部位に過大な押圧力が加わり続け、その先端側が塑性変形して弁座漏れが発生することがある。
【0012】
これに加えて、二重偏心型バタフライ弁では、ステム軸の左右の弁体の受圧面積が異なるため、上記の各バタフライ弁では流体圧の大きさに比例してステムに回転力が発生し、逆圧時にはステムの弁閉方向の回転力が生じる。弁体の移動によるシール面圧の増加と、前記の流体圧によりステムに回転力がかかるアンバランストルクも大となり、操作の負荷トルクが大きくなる。これにより、特に自動操作時において、全閉状態から開き始めるときに急激作動(ジャンピング)が生じ、この急速な作動によりシートリングの摩耗が激しくなって耐久性の低下につながることもある。
【0013】
さらに、前記の偏心型バタフライ弁を高層ビル等の建造物の集中空調設備の配管に設けた場合、図9(b)において、メンテナンスの実施時などにデッドエンドの状態としたときには、配管13内の水に重力が生じてその水圧が両側のバタフライ弁1の弁体に加わることになる。この場合、上流側(図において左側)のバタフライ弁1には矢印方向の逆圧が加わることとなり、建造物の高層化に伴って縦配管が延長すると、逆圧の流体圧が増加する。
これに対して、バタフライ弁1の下部側の接続用フランジ15が取り外されているために、それまでシートリテーナ部材を押圧していた配管ボルトによる締付力が完全に失われ、シートリング部材を弁箱とシートリテーナ部材との間に押圧保持する力が、シートリテーナ部材締付け用のリテーナボルトによる締付力のみとなる。
【0014】
この状態において、高圧力の逆圧がバタフライ弁1に加わると、弁体の移動量も大幅に増え、図8において逆圧により弁体6が左方向に移動してシートリング部材4がシートリテーナ部材3方向に強く押されてその塑性変形が一層激しくなる。シートリング部材4がシートリテーナ部材3側に押し出されることで、弁箱2からシートリング部材4が離れ、シートリング部材4の基端部分裏面のシール面圧も低下する。この基端部分のシール面圧が低下すると、この部分から流体漏れが生じる、いわゆる裏漏れが発生することにもつながる。
これに加えて、初期にシートリング部材4をリテーナボルトで締付けする際、締付け力が不足した状態で接続用フランジ15を一旦締付けた後、デッドエンドの状態に下部側の接続用フランジ15を外すと、リテーナボルトが緩んでシール面圧が低下する。これにより、シートリング基端部のシール面圧が低下して裏漏れが一層生じやすくなる。
【0015】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、高圧流体の圧力が正流又は逆流の何れの方向に加わる場合にも弁閉時の高シール性を維持し、特に、逆流によって高い圧力が加わった場合にもシートリングのシール性能を維持し、シートリングとジスクとのシール面圧を確保して漏れを防止できる操作性に優れた偏心型バタフライ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、シートリングの内径側にジスクの変位に応じて傾倒する可撓部が形成され、この可撓部とシートリテーナとの間にこれらを相互に弾発する環状の板バネが装着されてこの板バネの上流側にシートリテーナ、下流側にシートリングがそれぞれ設けられ、板バネは、シートリテーナへの対向側では外径側が当接され、シートリングへの対向側ではシートリテーナ側への当接位置よりも内径側が可撓部に当接されて内径側が弾性変形可能であり、バルブに正圧又は逆圧が加わるときに板バネの荷重特性が変化するポイントを変曲点とし、板バネは、弁閉時において、変曲点でバルブに流体圧が加わらない無負荷状態にしつつ可撓部にバネ荷重を加えた状態とし、バルブに正圧が加わって荷重特性が変曲点の位置から切り換わる場合には、この正圧が大きくなるにつれて可撓部がジスクへの密接状態を維持しつつ板バネの内径側が下流側に傾倒することでバネ荷重がより小さくなり、バルブに逆圧が加わって荷重特性が変曲点の位置から切り換わる場合には、この逆圧が大きくなるにつれて板バネの内径側がシートリテーナへの接触を回避しつつ上流側に傾倒することでバネ荷重がより大きくなる状態で装着されている偏心型バタフライ弁である。
【0017】
請求項2に係る発明は、可撓部の外径側に、ボデーとシートリテーナとの間に固定される固定部が一体に形成され、この固定部の外周面側の環状周囲に薄肉部を介して一体に連結されたガスケット部がボデーとシートリテーナとの間に挟着された偏心型バタフライ弁である。
【0018】
請求項3に係る発明は、シートリングとジスクとの密封シール状態で、シートリングがボデーとシートリテーナとの間に締付け用のリテーナボルトで締付け固定された偏心型バタフライ弁である。
【0019】
請求項4に係る発明は、筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、シートリングの内径側にジスクの変位に応じて傾倒する可撓部が形成され、この可撓部とシートリテーナとの間にこれらを相互に弾発する板バネが装着され、この板バネは、ジスクが流路方向においてシートリテーナ側に変位し、このジスクの変位による可撓部の傾倒の大きさに応じて弾発方向の荷重が増加するバネであり、可撓部の弾性変形時には、この可撓部で押圧される板バネがシートリテーナへの接触が回避された状態で弾性変形すると共に、可撓部には、板バネとの対向側にこの板バネと当接する環状当接面が形成され、この環状当接面は、鉛直方向から外径方向に向けて所定の傾斜角度で緩やかに傾斜するテーパ面により設けられる偏心型バタフライ弁である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、偏心型のバルブ構造とし、シートリングの内径側にジスクの変位に応じて傾倒する可撓部を設けていることで、高圧流体の圧力が正流又は逆流の何れの方向に加わる場合にも弁閉時において高シール性を発揮する。この場合、可撓部とシートリテーナとの間に板バネを装着し、この板バネが可撓部の傾倒の大きさに応じて弾発方向の荷重が増加することから、特に、逆流によって高い圧力が加わった場合にも、その圧力の大きさに応じてシートリングとジスクとのシール面圧を向上させて確実に漏れを防止できる。可撓部の弾性変形時には、板バネがシートリテーナへの接触が回避された状態で変形するため、高圧の逆圧によって可撓部が過大に変形したとしても、板バネの可撓部側のシートリテーナへの接触を防いで急激なシール面圧増加を抑制し、可撓部の変形を許容しつつ、シール面圧を向上させて漏れを防止し、シートリングの摩耗や破断、塑性変形などによる破損を防止してその弾性特性を維持し、弁閉時における逆圧及び正圧が加わるときの弁座封止性を保持する。しかも、逆圧時に流体圧による負荷トルクを板バネの反発力で低減できる。そのため、自動操作時などの操作時におけるジスクの急激作動(ジャンピング)を防いで操作性が高まり、これによるシートリングの摩耗を防ぐことで耐久性も向上する。
この場合、バルブに正圧又は逆圧が加わるときに板バネの荷重特性が変化するポイントを変曲点とし、板バネは、弁閉時において、変曲点でバルブに流体圧が加わらない無負荷状態にしつつ可撓部にバネ荷重を加えた状態とし、バルブに正圧が加わって荷重特性が変曲点の位置から切り換わる場合には、この正圧が大きくなるにつれて可撓部がジスクへの密接状態を維持しつつ板バネの内径側が下流側に傾倒することでバネ荷重がより小さくなり、一方、バルブに逆圧が加わって荷重特性が変曲点の位置から切り換わる場合には、この逆圧が大きくなるにつれて板バネの内径側がシートリテーナへの接触を回避しつつ上流側に傾倒することでバネ荷重がより大きくなる状態で装着される構成としているので、変曲点を任意に設定することができる。この変曲点の設定により、変曲点の手前を低荷重特性にして正圧側領域で使用し、変曲点後を高荷重特性にして逆圧側領域で使用することで所望特性のバルブが得られ、変曲点を任意の位置に設定することで、小口径から大口径までの口径の違いに応じて適切なシール性を発揮できるバルブを提供することが可能になる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、固定部の外周側に薄肉部を介してガスケット部を可撓部や固定部とは独立させて形成し、このガスケット部をボデーとシートリテーナとの間に挟着させることで、ボデーとシートリテーナとの間からの裏漏れを防ぐことができる。この場合、仮に流体が高温の場合にガスケット部に熱膨張が生じたとしても、常温に復帰したときにボデーとシートリテーナとの間のシール性を維持する。薄肉部を設けていることで、ガスケット部の熱膨張による変形が固定部や可撓部側に悪影響を及ぼすことがなく、高温流体の場合にも安定した可撓部の変形による弁座シール性を維持できる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、締付け用リテーナボルトの締付け固定による締付け力のみにより、弁閉時におけるシートリングとジスクとの密閉シール状態を確保でき、フランジ管などの別部材を接続してシートリテーナをボデー側に押さえつける必要がない。このように、シートリテーナの取付側を流路の行き止まりとしたデッドエンドの状態であっても、高い逆圧が発生したときに優れた封止性を発揮して漏れを防止できる。このため、高層建造物の配管の一部に用いられ、過剰な逆圧方向の水頭圧が加わる場合にも、ジスクの変位に対応して板バネの弾性でつり合いを取りながら、シートリテーナ押圧力を低く抑えた状態で、シートリングがシートリテーナ側に押し出されることを防止してシール漏れを防止でき、かつシートリングの基端部分のシール面圧の低下を防いで裏漏れを確実に阻止することが可能になる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、偏心型のバルブ構造とし、シートリングの内径側にジスクの変位に応じて傾倒する可撓部を設けていることで、高圧流体の圧力が正流又は逆流の何れの方向に加わる場合にも弁閉時において高シール性を発揮する。この場合、可撓部とシートリテーナとの間に板バネを装着し、この板バネが可撓部の傾倒の大きさに応じて弾発方向の荷重が増加することから、特に、逆流によって高い圧力が加わった場合にも、その圧力の大きさに応じてシートリングとジスクとのシール面圧を向上させて確実に漏れを防止できる。可撓部の弾性変形時には、板バネがシートリテーナへの接触が回避された状態で変形するため、高圧の逆圧によって可撓部が過大に変形したとしても、板バネの可撓部側のシートリテーナへの接触を防いで急激なシール面圧増加を抑制し、可撓部の変形を許容しつつ、シール面圧を向上させて漏れを防止し、シートリングの摩耗や破断、塑性変形などによる破損を防止してその弾性特性を維持し、弁閉時における逆圧及び正圧が加わるときの弁座封止性を保持する。しかも、逆圧時に流体圧による負荷トルクを板バネの反発力で低減できる。そのため、自動操作時などの操作時におけるジスクの急激作動(ジャンピング)を防いで操作性が高まり、これによるシートリングの摩耗を防ぐことで耐久性も向上する。
さらに、可撓部には、板バネとの対向側にこの板バネと当接する環状当接面を形成し、この環状当接面は、鉛直方向から外径方向に向けて所定の傾斜角度で緩やかに傾斜するテーパ面により設けているので、この傾斜角度の大きさを変えることで、同じサイズのバルブにおいて、流体の流れ方向に対する板バネの荷重特性を切り換えるタイミングの変更が可能になる。この場合、環状当接面の傾斜角度を大きく設定すれば、ジスクの移動量の小さい小口径のバルブに適しており、一方、傾斜角度を小さく設定すれば、可撓部に大きい逆圧が加わったときに板バネの反発力を働かせることができることで、ジスクの移動量の大きい大口径のバルブに適している。このように、環状当接面の傾斜角度の大きさを設定することにより、小口径から大口径までの口径の違いに応じて適切なシール性を発揮できるバルブを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の偏心型バタフライ弁の一実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大模式図である。
図3】可撓部付近を示す要部拡大模式図である。
図4図3に正圧が加わった状態を示す要部拡大模式図である。
図5図3に逆圧が加わった状態を示す要部拡大模式図である。
図6】板バネの変形量とバネ荷重との関係を表すグラフである。
図7図1の偏心型バタフライ弁に逆圧が加わった状態を示す要部拡大模式図である。
図8】従来の二重偏心型バタフライ弁のシートリング装着部付近を示す一部拡大模式図である。
図9】集中空調設備の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における偏心型バタフライ弁の実施形態を図面に基づいて説明する。図1においては、本発明の偏心型バタフライ弁の一実施形態を示し、図2においては、図1のシートリング装着部付近の要部拡大模式図を示している。本発明における偏心型バタフライ弁(以下、バルブ本体20という)は、正圧、逆圧の使用圧力が約5MPaを想定して設けられる。
【0026】
図1において、バルブ本体20は、例えば口径300Aのサイズによって設けられ、筒形のボデー21、ステム22、ジスク23、シートリング24、シートリテーナ25、バネ部材26を有し、このうち、ボデー21、ジスク23、シートリテーナ25は、ステンレスや鋳鋼等の金属材料により成形される。図において、バルブ本体20の左側が上流側、右側が下流側を示し、流体が上流側から下流側に流れるとき(正流)に生じる流体圧(正圧)、又は、流体が下流側から上流側に流れるとき(逆流)に生じる流体圧(逆圧)に対応してシートリング24が右方向又は左方向に可撓し、弁閉時の流体漏れをそれぞれ防ぐようになっている。図2図3は、バルブ本体20におけるジスク23の上部付近を示しており、下方側がバルブ本体20の内径側、上方側が外径側を示す。
【0027】
図1に示すように、ボデー21は、その上下部にステム22装着用の軸装部30が設けられ、これら軸装部30に装着されたステム22を介してボデー21内の偏心位置にジスク23が軸支される。ジスク23は、弁閉時において、ボデー21内にシートリテーナ25で固定されたシートリング24に対して密封シール可能に設けられる。
【0028】
ジスク23は、略円板形状に形成され、その外周側には、シートリング24に当接シール可能な弁体シール面31が設けられる。ジスク23の一面側の上下部にはボス部32が突設形成され、このボス部32にステム22取付用の穴部33がシール位置から偏心するように形成されている。ジスク23は、穴部33にステム22が装入された状態で、ボデー21内の偏心位置にテーパピン34でステム22に一体に固定されて回動自在に軸支される。このように、本例のバルブ本体20は、ジスク23に対してステム22が偏心し、かつジスク23の回転中心がバルブ口径の中心から偏心した二重偏心型のバルブよりなる。
【0029】
図2図3において、シートリング24は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料により環状に成形され、本実施形態では充填材入りPTFEが用いられる。シートリング24は、リング状の基体部40、可撓部41、固定部42、ガスケット部43を有している。なお、図2は、組み立て後のバルブ本体20の状態を示しており、流体圧は加わっていない。
【0030】
基体部40は、断面略矩形状に設けられ、シートリング24の基部の機能を発揮する。基体部40における一側面において、その内径側に可撓部41、外径側に固定部42がそれぞれ一体に形成される。基体部40の内周面には、可撓部41の後述するシール接触部45から続けて緩やかな傾斜面が形成される。傾斜面は、直線状や曲線状であったり、或は凹みが設けられていてもよく、適宜の形状に設けられてジスク23が可撓部41に当接するときに可撓性を発揮するように設けられる。
【0031】
可撓部41は、基体部40の内径側に所定の肉厚により形成され、ジスク23との当接側にはシール接触部45が設けられる。シール接触部45は、固定部42と可撓部41との間に設けられる空間部46の流路方向の底部よりもシートリテーナ25側に位置した状態で、断面C面形状或は断面R面形状により所定のシール幅で環状に設けられ、このシール幅によりジスク23と面接触によりシール可能になっている。
【0032】
可撓部41におけるバネ部材26との対向側には、このバネ部材26と当接する環状当接面50が形成される。環状当接面50は、鉛直方向から外径方向に向けて所定の傾斜角度θで緩やかに傾斜するテーパ面により設けられる。傾斜角度θの大きさは任意に設定可能である。傾斜角度θが小さい場合には、可撓部41が少しの傾倒で板バネ26の弾発力の特性を変化させることができ、大きい場合には、可撓部41を大きく傾倒させないと、弾発力の特性を変化させることができない。
【0033】
環状当接面50には、径方向の貫通スリット50aが複数設けられる。このスリット50aを設けることにより、環状当接面50は、板バネ26と接触しつつも、正圧の流体を空間部46に導き、シートリング24とジスク23とを密着させて弁座シールをおこなうようにしている。本実施形態では、スリット50aを環状当接面50に対して180°の間隔で2箇所に設けているが、このスリット50aは、バルブ本体20の口径の大きさの違いなどにより、必要に応じて任意の数を設けることができる。
【0034】
可撓部41よりも外径側には凹溝状の前記空間部46が設けられ、正圧又は逆圧によりジスク23が流路方向に対して水平方向や傾き方向に移動したり或は撓むことにより、流路方向に変位したときには、この変位の大きさに応じて可撓部41が空間部46を通して可撓して流路方向に傾倒し、これによってシール接触部45が弁体シール面31と当接シールするようになっている。
【0035】
可撓部41の外径側には、空間部46を挟んで固定部42が形成され、この固定部42がボデー21とシートリテーナ25との間に固定されることで、シートリング24がバルブ本体20に抜け止め状態で装着される。固定部42は、可撓部41の左右方向(流路方向)への可撓を妨げないものであればその形状にこだわることはなく、本例では断面矩形状に設けられている。
【0036】
固定部42の外周面側の環状周囲には薄肉部51が形成され、この薄肉部51に続いて鉤状のガスケット部43が固定部42に一体に形成される。ガスケット部43は、シートリテーナ25に形成された装着凹溝52に密着状態で装着され、この状態でこのシートリテーナ25とボデー21との間に挟着されることで、これらの間からの流体の裏漏れを防止可能となる。薄肉部51は、例えば、1~1.5mm程度の厚さに設けられ、これによって熱膨張が発生したときにも、この熱膨張による余剰部位の流出を抑制可能になっている。
【0037】
バネ部材26は、環状で扁平状の板バネからなり、シートリング24とシートリテーナ25との間に装着可能な外径に形成され、これらを相互に弾発した状態で装着可能に設けられる。板バネ26は、シートリテーナ25の対向側ではその外径側が当接され、シートリング24への対向側ではシートリテーナ25側の当接位置よりも内径側が可撓部41に当接された状態で配置される。可撓部41が撓んで傾倒しようとするときには、環状当接面50が板バネ26に当接することで、板バネ26は内径側から弾性変形しようとし、可撓部41の傾倒量の増加に伴ってシートリング24との当接位置が内径側から外径側に漸次推移するようになっている。
なお、板バネ26の材質はステンレスであり、薄肉部51の厚さは、呼び径B呼称2 1/2~4の場合は、1.35mm、呼び径B呼称5~8の場合は、1.45mm、呼び径B呼称10~12の場合は、1.7mmである。
【0038】
板バネ26を設けていることで、ジスク23が流体圧力(逆圧)によりシートリテーナ25側に変位し、その変位により可撓部41が傾倒するときには、この傾倒の大きさに略比例するように板バネ26の弾発方向のバネ荷重が増加する。この場合、板バネ26は、可撓部41が傾倒するにしたがってその内径側がより大きく傾くように変形する。
【0039】
シートリテーナ25は、略環状に形成され、その外径側付近には前述した板バネ26が配置され、この板バネ26を挟むようにシートリング24が仮着状態に装着可能に設けられる。これにより、これらシートリテーナ25、板バネ26、シートリング24は、一体化された状態でボデー21に装着可能になっている。シートリテーナ25において、バネ部材26、シートリング24の取付け面側には、その内径側から順に、環状の空隙部53、環状突出部54、環状当接部55、環状凸部56、環状凹状溝57、環状突起部58、装着凹溝52がそれぞれ設けられ、これらにより凹凸状に形成されている。
【0040】
環状突出部54は、板バネ26の装着位置に、この板バネ26と当接可能な断面台形状に形成される。環状突出部54よりも外径位置には環状当接部55が設けられ、この環状当接部55に線接触状態で板バネ26が当接可能になっている。これにより、板バネ26は、環状当接部55との当接部位を支点として、その内径側が流路方向に傾くように弾性変形する。
【0041】
空隙部53は、環状当接部55よりも内径側に形成され、弾性変形した可撓部41の押圧により変形した板バネ26の内径側の傾倒部分をこの空隙部53内に収容可能になっている。空隙部53の大きさは、前記環状突出部54の高さや幅を調節することで任意に設定可能であり、変形した板バネ26の内径側部分を収容するときに、その内径先端側がシートリテーナ25に接触することのない広さの空間になっている。
【0042】
ここで、図6に示したグラフにおいて、破線は、変曲点を原点Oとするバルブ本体20において、板バネ26がシートリテーナ25に接触した場合の仮想線を示しており、このときには、板ばねの変形量に対するバネ荷重の増加の割合が急激に上昇することで、シートリテーナ25に過大な力が加わってシートリング24が塑性変形する可能性がある。従って、空隙部53を設けることにより、板バネ26の傾倒部分のシートリテーナ25への接触を回避し、可撓部41がジスク23とシートリテーナ25との間に挟着されることがないため、可撓部41の塑性変形を防ぐことが可能となる。
【0043】
図3において、前述した板バネ26と環状当接部55との当接状態で板バネ26に可撓部41から力が加わるときには、板バネ26に対して環状当接部55を支点に力が加わることになる。この場合、環状当接面50の外径側端部(点P2の位置)は、環状当接部55と板バネ26との当接位置における板バネ26に対する法線Hよりも内径側に配置されている。
【0044】
図2において、環状凸部56は、環状突出部54よりも外径側のシートリング24の空間部46に対向する位置に形成され、この空間部46の深さよりも短い長さ、かつ、空間部46の幅よりも環状凹状溝57寄りに細い厚さに設けられる。環状凹状溝57は、シートリング24の固定部42の対向位置であって、環状凸部56の外径側で固定部42を装入して固定可能な深さ及び幅により形成される。環状突起部58は、薄肉部51の対向位置であって、固定部42とガスケット部43との間に設けられている環状の装入空間59に装入可能な長さ及び厚さにより形成される。装着凹溝52は、ガスケット部43の対向位置であって、このガスケット部43を装入して密接シール可能な深さ及び幅に形成される。
【0045】
シートリング24は、板バネ26を挟んだ状態でシートリテーナ25に装着され、このとき、シートリテーナ25の環状凸部56、環状凹状溝57、環状突起部58、装着凹溝52が、それぞれシートリング24の空間部46、固定部42、薄肉部51、ガスケット部43と対向した状態で、これらがそれぞれ組み込まれた状態となる。シートリング24とシートリテーナ25との組み込み後には、固定部42が環状凹状溝57に嵌合状態で固定され、これによって固定部42が位置決めされた状態となる。そのため、可撓部41が径方向の所定位置に配置される。
【0046】
シートリング24は、上記のようにボデー21とシートリテーナ25との間に配置された状態で、締付け用のリテーナボルト60によってこれらが締付けられて一体に固定される。この場合、ボデー21とシートリテーナ25とは、これらの当接面側がいわゆるメタルタッチによる面接触の状態で固定される。リテーナボルト60は、所定の大きさの締付け力を有し、その締付け後には、バルブ本体20が弁閉時において外部の締付け力を必要とすることなく、シートリング24とジスク23との密封シール状態が維持される。
【0047】
このリテーナボルト60の締付け力により、弁閉時においてシール接触部45がジスク23を押圧し、可撓部41がシートリテーナ25側にやや傾倒し、板バネ26の内径側もシートリテーナ25側にやや押し出された状態となる。この状態では、可撓部41の傾倒により発生した板バネ26の反力と、シートリング24自体の反りによる2つの力が生じ、これらの力によりジスク23とシートリング24とのシール面圧が発生する。
【0048】
なお、シートリング24の基体部40、可撓部41、固定部42は、その形状や機能により厳密に限定されるものではない。すなわち、可撓部41が撓んで傾倒する場合には、この可撓部41だけでなく基体部40の一部も可撓し、熱変化により可撓部41に挙動が発生したときには、その挙動が固定部42により緩和される。このように、例えば、固定部42は、シートリング24を固定するための機能以外の機能も有している。また、例えば、ガスケット部43についても、裏漏れ防止機能に限らず、シートリング24を固定するための機能も有している。
【0049】
固定部42やガスケット部43の各部には、必要に応じて所定の体積の潰し代が設けられているとよい。この場合、潰し代が押圧されて面圧力が向上することで、シートリテーナ25との間のシール性を向上して漏れ防止機能が向上する。
【0050】
次いで、本発明の偏心型バタフライ弁の上記実施形態における動作並びに作用を、図6のグラフを用いてシートリング24に圧力が加わるときのメカニズムと共に説明する。図6においては、板バネ26に圧力が加わるときの変形量とこの変形量に応じて生じるバネ荷重との関係を示している。
【0051】
グラフにおいて、バルブに正圧又は逆圧が加わるときに板バネ26の荷重特性が変化する原点Oを変曲点と定義する。原点Oではバルブに流体圧が加わっていない無負荷状態となり、このときの板バネ26のバネ荷重は、荷重Fの大きさで表される。原点Oを境界として、正圧状態と逆圧状態とでは、シートリング24に加わる板バネ26の反力による荷重特性が異なり、原点Oの位置を基準として、この原点Oよりも左側を正圧が加わったときの状態、右側を逆圧が加わったときの状態とする。
【0052】
バルブ本体20の弁開状態(図示せず)では、シートリング24の傾倒がほとんどなく、板バネ26によりシートリング24が押圧される力は極めて小さい。この状態からバルブ本体20が閉じ始めたときに、ジスク23がシートリング24を押圧して板バネ26を傾倒させることで、この板バネ26の反力がシートリング24側に働くようになっている。
【0053】
バネ部材26は、図2の組立状態において、可撓部41にやや弱い弾発力を付与するように配置している。この場合の弾発力Fは、図6のバネ荷重Fに示すように、バネ部材26の最大弾発力の20~30%程度に設定している。
【0054】
バルブ本体20に正圧が加わった状態で全開状態とした場合にも、可撓部41にはバネ部材26の弾発力が付与されている。しかし、この場合の弾発力は、バネ部材26が可撓部41に接している程度であり、図6のB点におけるバネ荷重Fに示すように、バネ部材26の最大弾発力の5~10%に設定している。
【0055】
このように、本発明において、バネ部材26は、可撓部41に常に接している。これにより、可撓部41の傾倒に応じて、正圧又は逆圧の何れの場合においてもバネ部材26が可撓部41の動きに直ちに追随するので応答性がよい。
【0056】
図1図3においては、バルブ本体20の弁閉状態を示し、バルブ本体20に流体圧力が加わらない無負荷状態、すなわち、原点Oのときのバルブ本体20への流体圧力が0MPaの状態を示している。この場合、ジスク23の弁体シール面31が可撓部41のシール接触部45を左方向に押圧し、シートリング24は、その固定部42がボデー21とシートリテーナ25との間に固定保持された状態で、可撓部41がやや左側に傾倒するように変形する。このとき、可撓部41からその弾性による力が板バネ26に加わり、この板バネ26が変形したときのバネ荷重が可撓部41に加わっている。
【0057】
このように、原点Oの状態では、可撓部41にはそれ自体が有する可撓性と板バネ26の弾性によってジスク23方向の力が働くことで、シール接触部45が弁体シール面31に所定のシール面圧で密接して封止性が発揮される。
【0058】
可撓部41の板バネ26との対向側には、外径方向に所定の傾斜角度θで傾斜する略円錐状の環状当接面50を設けているため、可撓部41の内径側が板バネ26により近い状態にあり、本実施形態における無負荷状態では、図3に示すように、板バネ26に対して可撓部41の内径側の点P1から外径側の点P2の範囲において当接する。このように、組立状態、すなわち流体が加わっていない無負荷状態では、可撓部41の環状当接面50は板バネ26に対して点P1から点P2の範囲で面接触する。
【0059】
この状態からバルブ本体20に正圧や逆圧が加わる場合、バネ荷重は、(1)板バネ26に対して正圧・逆圧が加わる場合、(2)板バネ26に対して環状当接面50の傾斜角度θが異なる場合に応じて、それぞれ変化することになる。そのため、これら(1)、(2)について、それぞれ検討することにする。
【0060】
(1)板バネ26に正圧・逆圧が加わる場合について、バルブ本体20に正圧・逆圧が加わるときには、流体圧でシートリング24が倒れ、このシートリング24の倒れの度合いに対して板バネ26との接触位置が移り変わる。これにより、シートリング24に加わる板バネ26の反力の荷重特性が、図6の実線に示すように変化し、1種類の板バネ26で2種類のバネ定数の荷重特性が発生することになる。
【0061】
正圧状態ではシートリング24の倒れが小さくなり、この場合には、図4に示すように環状当接面50の点P1で板バネ26の接触面26aと接触することになり、板バネ26からシートリング24に加わる荷重は比較的小さくなる。
正圧状態ではシートリング24の倒れが小さくなり、可撓部41の環状当接面50は、板バネ26に対して内周側の点P1で略線状に接触することとなる。この状態は、図6におけるα付近の状態であり、板バネ26からシートリング24に加わるバネ荷重は、原点Oにおけるバネ荷重Fよりも小さいものとなる。
【0062】
一方、逆圧状態では、図5に示すように、シートリング24の倒れが大きくなり、この場合には、環状当接面50の点P2で板バネ26と接触することになり、板バネ26からシートリング24に加わる荷重が大きくなる。
逆圧状態ではシートリング24の倒れが大きくなり、可撓部41の環状当接面50は、板バネ26に対して外周側の点P2で略線状に接触することとなる。この状態は、図6におけるβ付近の状態であり、板バネ26からシートリング24に加わるバネ荷重は、原点Oにおけるバネ荷重Fよりも大きいものとなる。
これらのように、特定の板バネ26に対して圧力が加わる場合、正圧の領域ではバネ荷重は緩やかに変化し、逆圧の領域では正圧に比べて急激に変化する特性を有している。
【0063】
バルブ本体20に正圧や逆圧が加わる場合を詳述すると、逆圧が加わる場合には、図5に示すように、ジスク23が変位することで可撓部41がより傾倒し、可撓部41と板バネ26との当接位置が外径の点P2側に漸次推移し、さらに逆圧がかかると、点P2で線接触により当接しながら板バネ26の荷重が増加する。このように、シートリング24に流体圧が加わるときには、シートリング24が徐々に傾倒し、その傾倒の大きさに応じて板バネ26との当接位置が移り変わるようになっている。
【0064】
点P2で線接触を行なうことにより、環状当接部55と点P2との距離W(本実施形態においては、径方向の距離を示す)が一定となるので、距離Wと板バネ26のバネ荷重Fとの積で表すモーメントを安定的に得ることができ、可撓部41のシール接触部45におけるジスク23とのシール性を確実に確保することができる。
【0065】
このとき、シートリテーナ25への対向側では板バネ26の外径側、シートリング24への対向側ではシートリテーナ25側よりも内径側でそれぞれ当接しているため、板バネ26は、シートリテーナ25の環状当接部55を支点として内径側が弾性変形している。
【0066】
一方、弁閉状態でバルブ本体20に矢印方向の正圧が加わる場合には、図4に示すように、組立て時にシートリング24、板バネ26の反りにより発生したシール面圧により、低圧時の弁座封止が可能となる。
【0067】
この場合、流体圧力によりジスク23が下流側(右側)に移動しようとし、これに伴って可撓部41がジスク23への密接状態を維持しつつ下流側に傾倒しようとする。このようにしてシール接触部45と弁体シール面31との封止性が維持される。これらの下流側への移動により、板バネ26によるバネ荷重Fの大きさも小さくなる。そして、図6の正圧側において、正圧が大きくなるにつれて板バネ26の弾性変形量が小さくなることでバネ荷重もより小さくなり、最大流体圧付近では、板バネ26の荷重は極めて小さいものとなる。
【0068】
このように、可撓部41の傾倒が少ないときには、環状当接面50の内径側である点P1に板バネ26が接触した状態になり、この板バネ26から可撓部41に加わる荷重は少ない。
流体圧の増加に伴ってジスク23のたわみやステム22の反りが増すと、ジスク23が二次側のステム22側に移動してシール面圧が低下し、さらに組立て時にやや傾倒状態にあった板バネ26の反りがジスク23の移動により減少することで、この板バネ26から可撓部41にかかっていたバネ荷重も減少する。しかし、流体圧を受けた可撓部41がジスク23側に倒れ、シール接触部45がジスク23に押し当たってシートリング24単体でセルフシール機能が働くことにより弁座封止性が維持される。
【0069】
環状当接面50の傾斜角度θを設定する場合には、上記の逆圧・正圧時のシートリング24の動作を考慮しつつ、小口径のバルブ(例えば、呼び径65A~80A)では傾斜角度θを12°に設定し、一方、大口径のバルブ(例えば、呼び径200A~300A)では傾斜角度θを4°に設定している。これは、小口径のバルブのほうがジスク23の移動量が小さく、可撓部41の移動(回転運動)を大きく確保する必要があるためであり、これにより傾斜角度θを大口径のバルブに比較して大きく設定している。
【0070】
ここで、前記逆圧時には、ジスク23、シートリング24、板バネ26は、図7において二点鎖線に示した状態に変形しようとする。このとき、図3に示すように、可撓部41は、矢印方向に傾倒する。
【0071】
流体圧力によりジスク23やステム22に反りが生じ、ジスク23が上流側であるシートリング24方向(左側)に移動すると、この移動によりシートリング24がシートリテーナ25側に押し出され、板バネ26の内径側も傾倒しようとする。流体圧が高圧に上昇するにつれてジスク23の移動量も増加し、シートリング24の可撓部41や板バネ26の傾倒も大幅に増える。可撓部41の傾倒はシートリング24にかかる逆圧にも影響を受け、これに対して、板バネ26を傾倒させていることで、この板バネ26から倒れた可撓部41を元の状態に戻そうとする方向に弾発力が加わり、封止性を確保するようになっている。
【0072】
具体的には、図3において、可撓部41が矢印方向に傾斜するときには、その環状当接面50が点P1から点P2の範囲で板バネ26と当接し、このとき、正圧ではほとんど点P1での接触となり、可撓部41に加わる力が低荷重特性となるが、逆圧では点P1から点P2までの接触となり、高荷重特性の荷重が発生する。可撓部41は、逆圧/正圧のジスク位置に応じて点P1から点P2までの間で板バネ26と当接した状態で傾倒し、可撓部41にはその傾倒量に応じたバネ荷重が加わる。
【0073】
特に、逆圧が加わった場合には、点P2の位置で板バネ26が接触し、この板バネ26からのバネ荷重が大きくなるが、適正なシール面圧でつり合った状態でシートリング24が保持されるため、可撓部41の過大な変形が防止される。これにより、逆圧が大きい場合にもシートリング24の塑性変形や消耗、破損を防いでシール性能を維持し、シートリング24とジスク23とのシール面圧を確保してシール漏れを確実に防止可能となる。
【0074】
図中、可撓部41の最小変形時における板バネ26との接触点である点P1から環状当接部55までを距離L1、可撓部41の最大変形時における板バネ26との接触点である点P2から環状当接部55までを距離L2とすると、距離L1>距離L2の関係となっていることで、ジスク23への流体圧の変化により可撓部41の傾倒量が大きくなるにつれて、環状当接部55から力が加わる位置までの距離が短くなる。このことから、図6に示すように、逆圧で可撓部41が大きく傾倒するに伴って板バネ26の荷重も略比例するように大きくなり、ジスク23に過大な逆圧がかかったときにも可撓部41の傾倒を抑えながらジスク23とのシール面圧を向上できる。
【0075】
次に、(2)板バネ26に対して環状当接面50の傾斜角度θが異なる場合を説明する。
傾斜角度θの大きさを変えることで、同じサイズのバルブ本体20で、流体の流れ方向に対する板バネ26の荷重特性を切り換えるタイミング(変曲点の位置)の変更が可能になっている。
例えば、変曲点を原点O1の位置に設定するようにすれば、図6の一点鎖線で示すように、正圧側から早めに高荷重特性を発揮して流体圧に対応することができる。
【0076】
これらのことから、バネ部材26の傾斜角度θを形成するときの変曲点を任意に設定し、変曲点の手前を低荷重特性にして正圧側領域で使用し、変曲点後を高荷重特性にして逆圧側領域で使用することで所望特性のバルブが得られる。環状当接面50の傾斜角度θを大きく設定すれば、ジスク23の移動量の小さい小口径のバルブに適している。一方、傾斜角度θを小さく設定すれば、可撓部41に大きい逆圧が加わったときに板バネ26の反発力を働かせることができ、ジスク23の移動量の大きい大口径のバルブに適している。
このように、環状当接面50の傾斜角度θの大きさにより図6におけるグラフ上の変曲点(原点O)を任意の位置に設定し、小口径から大口径までの口径の違いに応じて適切なシール性を発揮できるバルブを提供することが可能になる。
【0077】
上述したように、本発明のバルブ本体20は、シートリング24の内径側に可撓部41を形成し、この可撓部41とシートリテーナ25との間に板バネ26を装着し、この板バネ26において、ジスク23の変位による可撓部41の傾倒の大きさに応じてバネ荷重が変化することから、例えば、正圧5MPa~逆圧5MPa程度の高圧流体がジスク23に加わったときにも、弁閉時の封止性を高く維持した状態で正圧時及び逆圧時のシール性を両立して漏れを確実に防止できる。このとき、流体圧の大きさに応じてバネ荷重も増減することで、逆圧の高圧でのバルブの過大なシール面圧を抑制することもでき、これにより操作性が向上する。
【0078】
環状当接部55の内径側に空隙部53を設けていることにより、逆圧による可撓部41の傾倒により板バネ26の内径側に過大な力が加わった場合にも、図3の二点鎖線に示すように、その傾倒部分が空隙部53に逃げるように変形することで、シートリテーナ25への板バネ26内径側の接触を回避できる。これにより、変形した可撓部41がシートリテーナ25、板バネ26とジスク23との間に挟着されるおそれがなく、図6における逆圧時の板バネ26の変形量の変化が略比例するように維持されることで、急激にシール面圧が上昇することなく可撓部41の塑性変形を防止可能となる。
【0079】
図3に示すように、法線Hよりも環状当接面50の外径側端部(点P2の位置)を内径側に配置していることで、点P1から点P2までの間の何れの箇所でも可撓部41と板バネ26との接触点が法線Hよりも内径側に位置している。これにより、可撓部41にジスク23から力が加わるときに、常時、環状当接部55を中心に可撓部41と板バネ26との接触点に時計回り方向の力が働くことになる。この力の方向は、板バネ26の内径側が変形する方向に合致するため、可撓部41からの力を効率的に板バネ26に伝達してバネ荷重を発揮させることが可能となる。
【0080】
これに対して、仮に、法線Hよりも環状当接面50の外径側端部を外径側に配置した場合には、可撓部41にジスク23から力が加わったときには、環状当接部55を中心に可撓部41と板バネ26との接触点に反時計回り方向の力が働くことになる。この力は、板バネ26内径側の変形方向とは逆方向であるため板バネ26の動きが止まり、さらに板バネ26を押圧する力が可撓部41に働くことになり、可撓部41が塑性変形する可能性があるため、前述のとおり、法線Hよりも環状当接面50の外径側端部(点P2の位置)を内径側に配置することが好ましい。
【0081】
なお、板バネ26は、そのバネ荷重が正圧領域では低く、逆圧領域では高くなるように変曲点で切り替わるようにバネ特性(バネ定数)を設定するとなおよい。
その理由として、正圧領域では、前述したように流体圧を利用したセルフシール機能を発揮できるため、仮にシートリング24自体にへたりなどが生じ、シートリング自体に復元性の低下が発生した場合でも、正圧の低圧領域で最低限のシール面圧を得られるバネ荷重を有していれば、シールすることが可能であるからである。さらに、中高圧領域においても、セルフシール機能が増加することで、バネ荷重をほぼ必要とすることなくシール性を発揮する。これらにより、正圧時における板バネ26のバネ荷重は、低圧・無負荷状態でやや発生する程度であればよい。
【0082】
一方、逆圧領域では、ジスク23の移動により傾倒する可撓部41を支えたり、流体圧により傾倒するシートリング24を支える必要があるため、板バネ26の荷重によりこれらに働く力を釣り合った状態に維持するようにする。そのため、流体圧が上昇するにつれて、バネ荷重が高くなるように設定する。
【0083】
本実施形態では、上記した正圧領域と逆圧領域とにおける条件を満たすように、シートリング24の可撓部41の傾倒量に応じて、この可撓部41と板バネ26との接触点が推移するような変曲点(原点O)としている。この変曲点を境界として、板バネ26の正圧領域側では、バネ定数の増加割合が低い低荷重特性とし、逆圧領域側(変曲点以降)ではバネ定数の増加割合が高い高荷重特性となるように、一枚の板バネ26により対応可能となる。
【0084】
可撓部41よりも外径側に固定部42を一体形成し、この固定部42の外周面側に薄肉部51を介して鉤状のガスケット部43を一体に形成しているので、このガスケット部43は、ボデー21とシートリテーナ25との間の固定部42や可撓部41とは独立させた、はめ殺しの状態で固定される。そのため、ガスケット部43は、熱サイクルの高温時における熱膨張の余剰分の流出が抑えられ、常温に戻った場合にもその容積を維持して裏漏れを阻止することができる。
【0085】
バルブ本体20の組立て時には、シートリング24とジスク23とを密封シール状態とし、ボデー21とシートリテーナ25とをメタルタッチの状態でリテーナボルト60により強固に締付け固定している。固定後にさらにシートリング24を締め上げることがないので、配管ボルトを外した際に発生するシートリング24の応力緩和がなく、リテーナボルト60も緩むことがないため、締付け状態が維持される。このとき、ガスケット部43の装着凹溝52への圧縮率、充填率を必要最小限に設定することで、メタルタッチによる締結力を一層向上させることもできる。
【0086】
これに加えて、ボデー21のリテーナボルト60用のタップ付近及びシートリテーナ25の各表面全体を面接触させることで、リテーナボルト60の締付け力を維持することが可能となる。
【0087】
リテーナボルト60により締付け固定していることで、流体圧で傾倒するシートリング24を支える機能、ジスク23により傾倒するシートリング24と板バネ26とを支える機能、ガスケット部43の面圧を維持してシール性を維持する機能を発揮する。
【0088】
前記のように、リテーナボルト60の締付け力のみにより弁閉時の逆圧に対するシートリング24の封止性を維持できることから、バルブ本体20の上流側の接続用フランジを外してデッドエンドの状態とした場合にも、シート漏れや裏漏れを防ぐことが可能になる。
【0089】
このことから、例えば、図9に示した集中空調設備10の縦配管14に本発明のバルブ本体20を用いることもできる。この場合、クーリングタワー12が上部側(高層側)に配置され、配管13の上流・下流側の縦配管14の下部側(低層側)にバルブ本体20を配設し、バルブ本体20を開状態にして図9(a)の集中空調設備10の作動状態とするか、又はバルブ本体20を閉状態にして図9(b)における集中空調設備10の停止状態とし、この場合にメンテナンス等を実施可能になる。
【0090】
図9(b)の状態において、メンテナンス時にはバルブ本体20の下部側の接続用フランジ15及び配管13の一部を取外し、バルブ本体20の下部側をデッドエンドの状態とすることで、このバルブ本体20よりも上部側或は下部側の各配管13内のメンテナンスや清掃が可能になる。
【0091】
このデッドエンドの状態において、配管13内の水圧が重力によりバルブ本体20に加わる場合、特に、図の左側のバルブ本体20(シートリテーナ25が下部に位置する状態で配置されたバルブ)には、建造物の高層化に伴って縦配管14が長くなる程に水頭圧によって逆圧が過大となる。このような過大な逆圧に対しても、リテーナボルトの締付け力のみにより板バネの反力によりシートリングとジスクとのシール面圧を維持して漏れを防止し、ガスケット部側からの裏漏れも阻止できる。これにより、シートリングの塑性変形や消耗を防ぐことで弁座封止性を長期に渡って維持できる。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0093】
20 バルブ本体
21 ボデー
22 ステム
23 ジスク
24 シートリング
25 シートリテーナ
26 板バネ(バネ部材)
41 可撓部
42 固定部
43 ガスケット部
50 環状当接面
51 薄肉部
53 空隙部
54 環状突出部
55 環状当接部
60 リテーナボルト
P1 点
P2 点(環状当接面の外径側端部)
H 法線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9