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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098085
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】トウガラシ含有医薬組成物(ご)
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/81 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K36/81
A61P43/00 121
A61P29/00
A61K31/192
A61K47/10
A61K47/34
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/06
A61K9/70
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082429
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2022176328の分割
【原出願日】2014-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2013215166
(32)【優先日】2013-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013215171
(32)【優先日】2013-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕明
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 透
(72)【発明者】
【氏名】大田 光郎
(57)【要約】
【課題】トウガラシやその抽出物を含有し、優れた保存安定性を有する医薬組成物、並びにトウガラシやその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキ及びトウガラシエキスよりなる群から選ばれる1種以上
(B)ロキソプロフェン又はその塩
(C)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ジプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、マクロゴール及びポリプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有する医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキ及びトウガラシエキスよりなる群から選ばれる1種以上
(B)ロキソプロフェン又はその塩
(C)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ジプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、マクロゴール及びポリプロピレングリコールよりなる群から選ばれる1種以上を含有する医薬組成物。
【請求項2】
成分(C)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
半固形状又は液状の組成物である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
含水組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤又はパップ剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウガラシ又はその抽出物を含有する医薬組成物、並びにトウガラシ又はその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トウガラシ等の生薬やその抽出物は、種々の薬理作用を有することから、医薬品の成分として広く利用されている。しかしながら、生薬やその抽出物を含有する医薬組成物においては、保存安定性が問題となり易く、保存安定性の改善技術の開発が求められている。特に、医薬品は温度管理された状況下(少なくとも30℃以下、いわゆる室温)で保存・貯蔵・運搬等されるべきものであるものの、消費者の手元においては必ずしも十分温度管理されているわけではなく、昨今の気候変動や世情による節電傾向等を考慮すると、しばしば30℃を大きく超えた高温下に置かれることも十分に想定されるため、高温条件下における保存安定性の確保は極めて重要である。
【0003】
生薬やその抽出物を含有する医薬組成物における保存安定性の問題としては例えば、これらに多く含まれる溶解性の低い成分に起因する、液状の医薬組成物における沈殿の生成が挙げられ、斯かる問題に対しては可溶化剤を配合する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、生薬エキスに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物を配合することが記載されている。また、特許文献2には、生薬抽出物及び油成分に加えて、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤とを特定比率で配合した可溶化液体組成物が記載されている。
【0004】
ところで、ロキソプロフェンは、ロキソニン(登録商標)の有効成分としても知られる非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種であり(非特許文献1)、変形性関節症、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛等の疾患及び症状の消炎・鎮痛を効能効果とするゲル剤、パップ剤やテープ剤等の外用剤の有効成分として用いられている(非特許文献2)。
しかしながら、生薬、特にトウガラシやその抽出物を含有する医薬組成物において、その保存安定性に対しロキソプロフェンがどのような影響を及ぼすかについてはこれまでに一切検討すらされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-9408号公報
【特許文献2】特開2002-128703号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第十六改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C-5359~5364頁
【非特許文献2】ロキソニン(登録商標)ゲル1%医薬品インタビューフォーム 第一三共株式会社 2010年10月改訂(第3版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、トウガラシやその抽出物を含有し、優れた保存安定性を有する医薬組成物、並びにトウガラシやその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定化剤及び安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ロキソプロフェン又はその塩がトウガラシやその抽出物を含有する医薬組成物の保存安定性を改善する作用を有すること、ロキソプロフェン又はその塩に加えて更に下記の成分(C-1)及び(C-2)のうちいずれか:
【0009】
(C-1)クロルフェニラミン又はその塩などを包含する、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、Xは単結合又は酸素原子を示し、Yはメチン基又は窒素原子を示し、R1は水素原子、水酸基又はアルキル基を示し、R2は置換基を有してもよい環状アミノ基、又は置換基を有してもよいアミノアルキル基を示し、R3は水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物又はその塩
(C-2)多価アルコール
を組み合わせることにより上記の保存安定性を改善する作用が向上し、トウガラシやその抽出物を含有しながらも高温条件下で長期間保存した場合でも不溶物が生成しにくく保存安定性に優れる医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トウガラシ及びその抽出物から選ばれる1種以上
(B)ロキソプロフェン又はその塩
(C)次の成分(C-1)及び(C-2)からなる群より選ばれる1種以上
(C-1)下記一般式(1)
【0013】
【化2】
【0014】
[式(1)中、Xは単結合又は酸素原子を示し、Yはメチン基又は窒素原子を示し、R1は水素原子、水酸基又はアルキル基を示し、R2は置換基を有してもよい環状アミノ基、又は置換基を有してもよいアミノアルキル基を示し、R3は水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物又はその塩
(C-2)多価アルコール
を含有する医薬組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、トウガラシ及びその抽出物から選ばれる1種以上を含有する医薬組成物の保存安定化剤であって、次の成分(B)及び(C):
(B)ロキソプロフェン又はその塩
(C)上記成分(C-1)及び(C-2)からなる群より選ばれる1種以上
を含有する保存安定化剤を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、トウガラシ及びその抽出物から選ばれる1種以上を含有する医薬組成物の安定化方法であって、前記医薬組成物に、次の成分(B)及び(C):
(B)ロキソプロフェン又はその塩
(C)上記成分(C-1)及び(C-2)からなる群より選ばれる1種以上
を含有せしめる安定化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トウガラシやその抽出物を含有しつつも、高温条件下で長期間保存した場合でも不溶物が生成しにくい、長期の保存安定性に優れた医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<成分(A)>
「トウガラシ」(蕃椒)とは、第十六改正日本薬局方に記載のとおり、トウガラシ(Capsicum annuum Linne(Solanaceae))の果実を意味する。トウガラシは必要に応じてその形態を調節することができ、小片、小塊に切断若しくは破砕、又は粉末に粉砕することができ、例えば、トウガラシを粉末とした「トウガラシ末」も本発明に用いることができる。また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トウガラシの抽出物」と称する。)を用いてもよい。
なお、上記「トウガラシの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される。具体的には、トウガラシを必要に応じて適当な大きさとした後に、適当な浸出液(抽出溶媒)を加えて浸出した液や、当該浸出液を濃縮した液(軟エキス、チンキ等)、さらにこれらを乾燥させたもの(乾燥エキス等)なども本発明の「トウガラシの抽出物」に包含される。
また、上記トウガラシの抽出物として、トウガラシの主成分である公知のカプサイシノイドを用いてもよい。当該カプサイシノイドとしては、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドが好ましい。
【0019】
上記のような成分(A)の中でも、トウガラシ軟エキス、カプサイシン、ノナン酸バニリルアミドや第十六改正日本薬局方に記載のトウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキが好ましく、トウガラシ軟エキス、ノナン酸バニリルアミドが特に好ましい。
【0020】
また、上記トウガラシやその抽出物として、トウガラシエキスB、(局)トウガラシ末(以上、日本粉末薬品株式会社製)、ノニル酸ワニリルアミド(長岡実業株式会社)等の市販品を用いることもでき、トウガラシの抽出物を公知の方法に従い製造してもよい。
上記トウガラシの抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば第十六改正日本薬局方 製剤総則の「エキス剤」、「浸剤・煎剤」、「チンキ剤」、「流エキス剤」の項の記載など、公知の植物抽出物の製造方法を参考にして製造できる。具体的には例えば、トウガラシを必要に応じて切断、加熱、乾燥、粉砕等したうえ、適当な抽出溶媒を加え抽出を行うことで、製造することができる。得られた抽出物は、必要に応じさらに濃縮、乾燥等させてもよい。
【0021】
上記抽出溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の低級多価アルコール;ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のアルカン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲノアルカン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;水(熱水を含む)等が挙げられる。これらは各々単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、水、エタノール、又は水/エタノール混液が好ましい。
抽出操作は特に限定されず、植物からの抽出操作に利用される公知の方法を採用することができ、具体的には例えば、抽出溶媒への浸漬(冷浸、温浸、パーコレーション等)、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出などが挙げられる。なお、抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。
抽出温度は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。
抽出時間は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、1時間~14日程度とするのが好ましい。
【0022】
成分(A)の含有量は特に限定されないが、原生薬換算量で、医薬組成物全質量に対して0.001~15質量%が好ましく、0.005~10質量%がより好ましく、0.01~8質量%が更に好ましい。また、成分(A)としてノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合、カプサイシノイドの含有量は、医薬組成物全質量に対して、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.005~0.75質量%であり、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0023】
<成分(B)>
本発明において、「ロキソプロフェン又はその塩」には、ロキソプロフェンそのもののほか、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらにはロキソプロフェンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名: Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
【0024】
成分(B)の含有量は特に限定されないが、保存安定性改善作用の観点から、医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、0.01~30質量%が好ましく、0.1~25質量%がより好ましく、0.5~20質量%が更に好ましく、0.5~10質量%が更に好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~3質量%が特に好ましい。
【0025】
本発明の医薬組成物に含まれる成分(A)と成分(B)との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、成分(B)をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、成分(A)を原生薬換算量で0.01~15質量部であるのが好ましく、0.05~10質量部であるのがより好ましく、0.1~8質量部であるのが特に好ましい。成分(A)としてノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合は、保存安定性の観点から、成分(B)をロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、カプサイシノイドを0.001~1質量部であるのが好ましく、0.005~0.75質量部であるのがより好ましく、0.01~0.5質量部であるのが特に好ましい。
【0026】
<成分(C)>
(成分(C-1))
本発明において、一般式(1)
【0027】
【化3】
【0028】
[式(1)中、Xは単結合又は酸素原子を示し、Yはメチン基又は窒素原子を示し、R1は水素原子、水酸基又はアルキル基を示し、R2は置換基を有してもよい環状アミノ基、又は置換基を有してもよいアミノアルキル基を示し、R3は水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物又はその塩には、上記一般式(1)で表される化合物そのもののほか、一般式(1)で表される化合物の薬学上許容される塩も含まれる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物又はその塩の具体例としては例えば、一般式(1)で表される化合物、一般式(1)で表される化合物の無機酸塩や有機酸塩(例えば、塩酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、テオクル酸塩、サリチル酸塩、タンニン酸塩、ベシル酸塩、リン酸塩など)等が挙げられる。また、一般式(1)で表される化合物の化学構造中に不斉炭素が存する場合は、種々の光学異性体を有するが、本発明においては、いずれの光学異性体をも含み、単一の光学異性体でもよく、各種光学異性体の混合物でもよい。さらに、一般式(1)で表される化合物又はその塩は溶媒和物の状態にあってもよく、一般式(1)で表される化合物又はその塩と水やアルコール等との溶媒和物も「一般式(1)で表される化合物又はその塩」に含まれる。
【0030】
上記R1において、アルキル基としては、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~3のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
また、上記R1としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0031】
上記R2において、置換基を有してもよい環状アミノ基における「環状アミノ基」とは、環構成原子として窒素原子を少なくとも1個、好適には1又は2個有する5~7員の脂環式基を意味する。
このような環状アミノ基としては、具体的には例えば、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ホモピペリジニル基、ホモピペラジニル基等が挙げられる。中でも、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基が好ましく、ピペリジニル基、ピペラジニル基がより好ましい。
【0032】
また、置換基を有してもよい環状アミノ基における「置換基」としては、例えば、アルキルベンゾイル基、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン-1-イル基、カルボキシアルコキシ基、カルボキシル基、カルボキシアルキルフェニル基及び水酸基から選ばれる1種以上の基が置換していてもよいアルキル基等が挙げられる。中でも、アルキル基、カルボキシアルコキシアルキル基、カルボキシアルキルフェニル(ヒドロキシ)アルキル基が好ましい。
上記「置換基」の具体例としては、例えば、メチル基、3-(4-tert-ブチルベンゾイル)プロピル基、3-(1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン-1-イル)プロピル基、2-(カルボキシメトキシ)エチル基、4-[4-(2-カルボキシプロパン-2-イル)フェニル]-4-ヒドロキシブチル基、3-カルボキシプロピル基等が挙げられる。
【0033】
上記R2において、「置換基を有してもよい環状アミノ基」としては、1-メチルピペリジン-4-イル基、4-メチルホモピペラジン-1-イル基、1-[3-(4-tert-ブチルベンゾイル)プロピル]ピペリジン-4-イル基、4-[3-(1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン-1-イル)プロピル]ピペラジン-1-イル基、4-[2-(カルボキシメトキシ)エチル]ピペラジン-1-イル基、1-{4-[4-(2-カルボキシプロパン-2-イル)フェニル]-4-ヒドロキシブチル}ピペリジン-4-イル基、1-(3-カルボキシプロピル)ピペリジン-4-イル基が好ましい。
【0034】
上記R2において、置換基を有してもよいアミノアルキル基における「アミノアルキル基」は、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又は環状アミノ基(当該「環状アミノ基」は、上記した「置換基を有してもよい環状アミノ基」における「環状アミノ基」と同義である。)が置換したアルキル基を意味する。中でも、ジアルキルアミノ基又は環状アミノ基が置換したアルキル基が好ましい。なお、当該環状アミノ基としては、ピロリジニル基が好ましい。
このようなアミノアルキル基としては、具体的には例えば、2-(ジメチルアミノ)エチル基、2-(ピロリジン-2-イル)エチル基、2-[(イソプロピル)(メチル)アミノ]エチル基等が挙げられる。また、置換基を有してもよいアミノアルキル基における「置換基」としては、例えば、水酸基、フェニル基、アルキル基等が挙げられる。
【0035】
上記R2において、「置換基を有してもよいアミノアルキル基」としては、2-(ジメチルアミノ)エチル基、2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル基、2-[(メチル)(1-フェニル-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ]エチル基が好ましい。
【0036】
なお、上記R2において、「アルキル基」、「アルキルベンゾイル基」、「カルボキシアルキルフェニル基」、「アミノアルキル基」、「モノアルキルアミノ基」、「ジアルキルアミノ基」におけるアルキル基部分としては、炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
また、上記R2において、「カルボキシアルコキシ基」におけるアルコキシ基部分としては、炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基が好ましく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
上記R3において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、本発明においては、塩素原子が好ましい。また、一般式(1)においてR3のフェニル基上の置換位置は特に限定されないが、4位に置換するのが好ましい。
【0038】
本発明において、一般式(1)で表される化合物又はその塩としては、具体的には例えば、エバスチン又はその塩;オキサトミド又はその塩;カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩等のカルビノキサミン又はその塩;クレマスチンフマル酸塩等のクレマスチン又はその塩;クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩等のクロルフェニラミン又はその塩;ジフェテロール塩酸塩、ジフェテロールリン酸塩等のジフェテロール又はその塩;ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩等のジフェニルピラリン又はその塩;ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩等のジフェンヒドラミン又はその塩;セチリジン塩酸塩等のセチリジン又はその塩;フェキソフェナジン又はその塩;ベポタスチンベシル酸塩等のベポタスチン又はその塩;ホモクロルシクリジン塩酸塩等のホモクロルシクリジン又はその塩等が挙げられ、これら化合物は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることもできる。
これらの中でも、長期の保存安定性改善作用の観点から、クロルフェニラミン又はその塩、ジフェンヒドラミン又はその塩が好ましく、クロルフェニラミン又はその塩が特に好ましい。
【0039】
また、上記クロルフェニラミン又はその塩の好適な具体例としては、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩が挙げられ、特に好ましくはd-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。
また、上記ジフェンヒドラミン又はその塩の好適な具体例としては、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩が挙げられ、特に好ましくはジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩である。
【0040】
なお、クロルフェニラミンは、下記式
【0041】
【化4】
【0042】
で表される化合物であり、ジフェンヒドラミンは、下記式
【0043】
【化5】
【0044】
で表される化合物である。
【0045】
成分(C-1)の含有量は特に限定されないが、長期の保存安定性改善作用の観点から、医薬組成物全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0046】
本発明の医薬組成物に含まれる成分(A)と成分(C-1)との含有比は特に限定されないが、長期の保存安定性の観点から、成分(C-1)1質量部に対し、成分(A)を原生薬換算量で0.1~100質量部が好ましく、0.5~50質量部がより好ましく、1~20質量部が特に好ましい。また、成分(A)としてノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合は、長期の保存安定性の観点から、成分(C-1)1質量部に対し、カプサイシノイドを0.01~10質量部であるのが好ましく、0.05~5質量部であるのがより好ましく、0.1~1質量部であるのが特に好ましい。
【0047】
(成分(C-2))
本発明において、「多価アルコール」とは、同一分子内に水酸基を2個以上有するアルコールを意味し、具体的には例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ジプロピレングリコール等の低級多価アルコール;ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、マクロゴール、ポリプロピレングリコール等の高級多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、保存安定性改善作用の観点から、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ジプロピレングリコール及びポリビニルアルコールから選ばれる多価アルコールが好ましい。なお、これらは公知の方法により製造することができ、また、市販のものを使用することもできる。
【0048】
また、成分(C-2)の含有量は特に限定されないが、長期の保存安定性改善作用の観点から、医薬組成物全質量に対して0.001~80質量%が好ましく、0.005~50質量%がより好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。
【0049】
本発明の医薬組成物に含まれる成分(A)と成分(C-2)との含有比は特に限定されないが、保存安定性の観点から、成分(C-2)1質量部に対し、成分(A)を原生薬換算量で0.01~1000質量部が好ましく、0.05~100質量部がより好ましく、0.1~15質量部が特に好ましい。また、成分(A)としてノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合は、長期の保存安定性の観点から、成分(C-2)1質量部に対し、カプサイシノイドを0.0001~1000質量部であるのが好ましく、0.0005~100質量部であるのがより好ましく、0.001~10質量部であるのが特に好ましい。
【0050】
本発明において、多価アルコールとしては、ポリビニルアルコールが特に好ましい。「ポリビニルアルコール」は、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られる重合物であり、公知の方法で製造することができ、また、市販品を用いることもできる。ポリビニルアルコールの原料となる酢酸ビニルの重合度は適宜調整することができ、また、けん化度も適宜調整することができる。
【0051】
酢酸ビニルの重合度とけん化度は、特に限定されるものではなく、適宜検討して決定すればよい。重合度としては、200~3500程度が好ましく、300~2200程度が特に好ましい。また、けん化度としては、65mol%以上が好ましく、78mol%以上がより好ましい。中でも、けん化度が78~96mol%のもの(ポリビニルアルコール(部分けん化物)と称される。)及び97mol%以上のもの(ポリビニルアルコール(完全けん化物)と称される。)が更に好ましく、78~96mol%のものが特に好ましい。
【0052】
また、成分(C-2)としてポリビニルアルコールを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、長期の保存安定性改善作用の観点から、医薬組成物全質量に対して、0.05~10質量%が好ましく、0.1~7質量%がより好ましく、0.2~5質量%が特に好ましい。
また、本発明の医薬組成物に含まれる成分(A)とポリビニルアルコールとの含有比は特に限定されないが、長期の保存安定性の観点から、ポリビニルアルコール1質量部に対し、成分(A)を原生薬換算量で0.005~200質量部が好ましく、0.01~100質量部がより好ましく、0.02~5質量部が特に好ましい。成分(A)としてノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドを用いる場合は、長期の保存安定性の観点から、ポリビニルアルコール1質量部に対し、カプサイシノイドを0.001~20質量部であるのが好ましく、0.002~10質量部であるのがより好ましく、0.005~5質量部であるのが特に好ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により製造することができる。
また、剤形は、特に限定されるものではなく、固形状、半固形状、液状のいずれの形状であってもよく、その利用目的等に応じて医薬品において通常利用される形状とすることができる。例えば、経口投与する製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等)、膣に適用する製剤(膣錠、膣用坐剤等)、皮膚等に適用する製剤(外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)などの、第十六改正日本薬局方 製剤総則に記載の剤形とすることができる。これらの中でも、半固形状又は液状の製剤であるのが好ましく、特に、経口液剤、シロップ剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及び貼付剤から選ばれる剤形であるのが好ましく、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、テープ剤及びパップ剤から選ばれる剤形であるのがより好ましく、リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤及びパップ剤から選ばれる剤形であるのが特に好ましい。
【0054】
また、本発明の医薬組成物は、上記のように半固形状又は液状の組成物であるのが好ましく、含水組成物(本発明において、「含水組成物」とは、水を含有する半固形状又は液状の組成物を意味し、より詳細には、組成物中に水を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは15~80質量%含有する組成物を意味する。)であるのがより好ましい。当該半固形状又は液状の組成物は、上記半固形状又は液状の製剤として製剤化できる。後記実施例に具体的に開示のとおり、成分(B)と成分(C)との組み合わせが、成分(A)に起因する溶液中での不溶物生成を抑制することが確認され、これを可溶化することが推察される。
【0055】
本発明の医薬組成物の服用経路としては、経口及び経皮、経膣等の非経口が挙げられ、本発明においては、非経口が好ましく、経皮投与が特に好ましい。
【0056】
本発明の医薬組成物には、医薬成分として、上記成分以外の薬物、例えば、鎮痛成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分、殺菌成分、収れん・保護成分、血行促進成分、局所麻酔成分、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、制酸剤、抗コリン剤、生薬類、漢方処方等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0057】
鎮痛成分としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、サリチル酸、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸グリコール、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、チアラミド塩酸塩、ラクチルフェネチジン等が挙げられる。
抗炎症成分としては、例えば、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0058】
抗ヒスタミン成分としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、イプロヘプチン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩等が挙げられる。
【0059】
殺菌成分としては、例えば、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。収れん・保護成分としては、例えば、酸化亜鉛等が挙げられる。血行促進成分としては、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ヘパリン類似物質、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。局所麻酔成分としては、例えば、リドカイン、チョウジ油、ベラドンナエキス等が挙げられる。
【0060】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、エプラジノン塩酸塩、カルベタペンタンクエン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩等が挙げられる。
【0061】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
気管支拡張剤としては、例えば、トリメトキノール塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩等が挙げられる。
【0062】
去痰剤としては、例えば、アンモニア・ウイキョウ精、塩化アンモニウム、l-メントール等が挙げられる。
【0063】
催眠鎮静剤としては、アリルイソプロピルアセチル尿素やブロムワレリル尿素等が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等(例えば、チアミン、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジセチアミン塩酸塩、セトチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酪酸エステル、リン酸リボフラビンナトリウム、パンテノール、パンテチン、パントテン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル、シアノコバラミン、メコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ヘスペリジン等)が挙げられる。
【0064】
抗炎症剤としては、セアプローゼ、セミアルカリプロティナーゼ、セラペプターゼ、プロクターゼ、プロナーゼ、ブロメライン等が挙げられる。
【0065】
胃粘膜保護剤としては、ゲファルナート、セトラキサート塩酸塩、ソファルコン、テプレノン、メチルメチオニンスルホニウムクロリド等が挙げられる。
制酸剤としては、アミノ酢酸、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、烏賊骨、石決明、ボレイ等が挙げられる。
【0066】
抗コリン薬としては、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、ジサイクロミン塩酸塩、メチキセン塩酸塩、チペピジウム臭化物、メチルベナクチジウム臭化物、ピレンゼピン塩酸塩、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン等が挙げられる。
【0067】
生薬類としては、アカメガシワ(赤芽柏)、アセンヤク(阿仙薬)、アルニカ、インヨウカク(淫羊霍)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、エンゴサク(延胡索)、オウゴン(黄岑)、オウセイ(黄精)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ(我朮)、カノコソウ(鹿子草)、カミツレ、カロニン(か楼仁)、キキョウ(桔梗)、キョウニン(杏仁)、クコシ(枸杞子)、クコヨウ(枸杞葉)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ケツメイシ(決明子)、ゲンチアナ、ゲンノショウコ(現証拠)、コウカ(紅花)、コウブシ(香附子)、ゴオウ(牛黄)、ゴミシ(五味子)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、シオン(紫苑)、ジコッピ(地骨皮)、シコン(紫根)、シャクヤク(芍薬)、ジャコウ(麝香)、シャジン(沙参)、シャゼンシ(車前子)、シャゼンソウ(車前草)、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、セキサン(石蒜)、セネガ、センキュウ(川きゅう)、ゼンコ(前胡)、センブリ(千振)、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、タイサン(大蒜)、チクセツニンジン(竹節人参)、チンピ(陳皮)、トウキ(当帰)、トコン(吐根)、ナンテンジツ(南天実)、ニンジン(人参)、バイモ(貝母)、バクモンドウ(麦門冬)、ハンゲ(半夏)、バンコウカ(番紅花)、ハンピ(反鼻)、ビャクシ(白し)、ビャクジュツ(白朮)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、ヨウバイヒ(楊梅皮)、ロクジョウ(鹿茸)等の生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)等が挙げられる。
【0068】
漢方処方としては、ケイシトウ(桂枝湯)、コウソサン(香蘇散)、サイコケイシトウ(柴胡桂枝湯)、ショウサイコトウ(小柴胡湯)、バクモンドウトウ(麦門冬湯)、ハンゲコウボクトウ(半夏厚朴湯)等が挙げられる。
【0069】
本発明の医薬組成物は、各種成分の有する公知の薬効に応じて対応する疾患・症状の治療・緩和等に適宜利用し得る。中でも、本発明の医薬組成物はNSAIDの一種であるロキソプロフェン又はその塩を含有することから、医療用医薬品やOTC医薬品として用いることができ、具体的には例えば、変形性関節症、筋肉痛及び外傷後の腫脹・疼痛から選ばれる疾患並びに症状の消炎・鎮痛等の効能又は効果を有し、鎮痛・抗炎症剤等として有用である。
【実施例0070】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0071】
[参考例1]ロキソプロフェン又はその塩の保存安定性改善作用の検討
以下のサンプル1-A及び1-Bを調製し、保存開始直前及び80℃で1日保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表1に示す。
【0072】
<サンプル1-A>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)を精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル1-Aを得た。
<サンプル1-B>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)20gを精製水に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル1-Bを得た。
【0073】
【表1】
【0074】
表1記載の試験結果から明らかなとおり、トウガラシエキスのみを単独で含有するサンプル溶液(サンプル1-A)においては、保存開始直前から少量の不溶物の生成が見られ、80℃1日保存後において不溶物量の増加が見られたが、トウガラシエキスに加えてロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル1-B)においては、80℃1日保存後も沈殿の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩が、トウガラシ又はその抽出物を含有する含水組成物の沈殿生成を抑制し保存安定性を改善する作用を有することが明らかとなった。これは、ロキソプロフェン又はその塩が、含水組成物においてトウガラシ又はその抽出物を可溶化するためと推察される。
【0075】
[試験例1]ロキソプロフェン又はその塩と上記一般式(1)で表される化合物との組み合わせの保存安定性改善作用の検討
以下のサンプル2-A及び2-Bを調製し、80℃で1週間保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表2に示す。
【0076】
<サンプル2-A>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)及びロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.1gを溶媒(ブリトン-ロビンソン広域緩衝液(pH8.0)と無水エタノールを等量混合して得た混液)に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル2-Aを得た。
<サンプル2-B>
トウガラシエキス(日本粉末薬品株式会社製:商品名 トウガラシエキスB)0.5g(原生薬換算量 6.25g)、ロキソプロフェンナトリウム水和物(大和薬品工業株式会社製:商品名 日本薬局方 ロキソプロフェンナトリウム水和物)1.1g及びクロルフェニラミンマレイン酸塩(金剛化学製:商品名 D-マレイン酸クロルフェニラミン)0.5gをサンプル2-Aと同様の溶媒に溶解・懸濁し、全量100gのサンプル2-Bを得た。
【0077】
【表2】
【0078】
表2記載の試験結果から明らかなとおり、トウガラシエキスとロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル2-A)においては、80℃1週間保存後において不溶物の生成が見られたが、トウガラシエキス及びロキソプロフェンナトリウム水和物に加えてクロルフェニラミンマレイン酸塩を更に含有するサンプル溶液(サンプル2-B)においては、80℃1週間保存後も不溶物の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩にクロルフェニラミン又はその塩を含む上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を組み合わせれば、参考例1で確認された保存安定性改善作用が更に向上することが明らかとなった。
【0079】
[試験例2]ロキソプロフェン又はその塩と上記一般式(1)で表される化合物との組み合わせの保存安定性改善作用の検討 その2
以下のサンプル2-Cを調製し、80℃で1週間保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表3に示す。
【0080】
<サンプル2-C>
トウガラシエキスをノナン酸バニリルアミド(長岡実業株式会社:商品名 ノニル酸ワニリルアミド)0.5gに置き換えた他はサンプル2-Bと同様の方法により、全量100gのサンプル2-Cを得た。
【0081】
【表3】
【0082】
表3記載の試験結果から明らかなとおり、ノナン酸バニリルアミドを用いた場合においてもトウガラシエキスを用いた場合と同様、ロキソプロフェンナトリウム水和物とクロルフェニラミンマレイン酸塩を組み合わせることによって保存安定性が良好となることが明らかとなった。
【0083】
[試験例3]ロキソプロフェン又はその塩と多価アルコールとの組み合わせの保存安定性改善作用の検討
以下のサンプル3-A及び3-Bを調製し、80℃で1週間保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表4に示す。
【0084】
<サンプル3-A>
サンプル2-Aと同様の方法により、サンプル3-Aを得た。
<サンプル3-B>
クロルフェニラミンマレイン酸塩をポリビニルアルコール(部分けん化物)(日本合成化学工業株式会社製:商品名 ゴーセノールEG-05)に置き換えたほかはサンプル2-Bと同様の方法により、サンプル3-Bを得た。
【0085】
【表4】
【0086】
表4記載の試験結果から明らかなとおり、トウガラシエキスとロキソプロフェンナトリウム水和物を含有するサンプル溶液(サンプル3-A)においては、80℃1週間保存後において不溶物の生成が見られたが、トウガラシエキス及びロキソプロフェンナトリウム水和物に加えてポリビニルアルコールを更に含有するサンプル溶液(サンプル3-B)においては、80℃1週間保存後も不溶物の生成が見られなかった。
斯かる試験結果から、ロキソプロフェン又はその塩にポリビニルアルコール等の多価アルコールを組み合わせれば、参考例1で確認された保存安定性改善作用が更に向上することが明らかとなった。
【0087】
[試験例4]ロキソプロフェン又はその塩と多価アルコールとの組み合わせの保存安定性改善作用の検討 その2
以下のサンプル3-Cを調製し、80℃で1週間保存した後の外観(不溶物の生成の有無)を目視により評価した。
結果を表5に示す。
【0088】
<サンプル3-C>
トウガラシエキスをノナン酸バニリルアミド(長岡実業株式会社:商品名 ノニル酸ワニリルアミド)0.5gに置き換えた他はサンプル3-Bと同様の方法により、全量100gのサンプル3-Cを得た。
【0089】
【表5】
【0090】
表5記載の試験結果から明らかなとおり、ノナン酸バニリルアミドを用いた場合においてもトウガラシエキスを用いた場合と同様、ロキソプロフェンナトリウム水和物とポリビニルアルコールを組み合わせることによって保存安定性が良好となることが明らかとなった。
【0091】
製造例1(ゲル剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するゲル剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.2g
ノナン酸バニリルアミド 0.025g
l-メントール 3g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.1g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1g
カルボキシビニルポリマー 1.2g
1,3-ブチレングリコール 5g
トリエタノールアミン 1.5g
エタノール 20g
精製水 全量100g
【0092】
製造例2(ゲル剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するゲル剤(ゲルクリーム剤)を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
トウガラシエキス 0.4g(原生薬換算量:4g)
l-メントール 2g
ポリビニルアルコール 0.2g
サリチル酸グリコールエステル 2g
カルボキシビニルポリマー 1g
グリセリン 10g
オクチルドデカノール 10g
モノステアリン酸グリセリン 0.5g
ステアリン酸ポリオキシル 0.5g
ミリスチン酸イソプロピル 5g
ラウロマクロゴール 1.5g
トリエタノールアミン 1g
精製水 全量100g
【0093】
製造例3(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
ノナン酸バニリルアミド 0.025g
サンショウ 1g
セイヨウトチノキ種子 3g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 0.8g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
カルメロースナトリウム 5g
N-メチル-2-ピロリドン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
【0094】
製造例4(ローション剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するローション剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
グリチルレチン酸 0.1g
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
ハッカ油 6g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.5g
アジピン酸ジイソプロピル 5g
イソプロパノール 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1g
ポリエチレングリコール 1g
亜硫酸水素ナトリウム 0.2g
精製水 全量100g
【0095】
製造例5(クリーム剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するクリーム剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
セイヨウトチノキ種子エキス 0.3g(原生薬換算量:3g)
ノナン酸バニリルアミド 0.12g
dl-カンフル 4g
ポリビニルアルコール 0.2g
カルボキシビニルポリマー 0.8g
エデト酸ナトリウム水和物 1g
亜硫酸水素ナトリウム 0.1g
ミリスチン酸オクチルドデシル 10g
アジピン酸ジイソプロピル 5g
モノステアリン酸グリセリン 2g
モノステアリン酸ソルビタン 0.5g
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1g
パラベン 0.2g
水酸化ナトリウム 0.1g
精製水 全量100g
【0096】
製造例6(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
セイヨウトチノキ種子エキス 0.3g(原生薬換算量:3g)
ノナン酸バニリルアミド 0.1g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 1g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルへキシル共重合樹脂エマルジョン
5g
カルメロースナトリウム 5g
クロタミトン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
【0097】
製造例7(パップ剤)
常法により、100g中に以下の成分を含有するパップ剤を製造した。
ロキソプロフェンナトリウム水和物 1.13g
ノナン酸バニリルアミド 0.025g
l-メントール 3g
ポリビニルアルコール 0.8g
ポリアクリル酸部分中和物 7g
カルメロースナトリウム 5g
N-メチル-2-ピロリドン 2g
濃グリセリン 25g
ポリソルベート80 0.3g
水酸化アルミニウムゲル 0.05g
酸化チタン 1g
タルク 2g
酒石酸 0.6g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
カオリン 2.5g
亜硫酸水素ナトリウム 0.3g
精製水 全量100g
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、生薬等を含有し、かつ、保存安定性(特に、高温条件下における保存安定性)が優れた医薬組成物を提供でき、医薬品産業等において利用できる。