(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098096
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】床衝撃音低減床、床衝撃音低減シート、および床衝撃音低減マット
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20240711BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E04F15/18 601
E04F15/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083265
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2020072995の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2019084343
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000181815
【氏名又は名称】社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】増田 潔
(72)【発明者】
【氏名】西村 顕
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健一
(57)【要約】
【課題】重量床衝撃音を低減できる床衝撃音低減床、床衝撃音低減シート、床衝撃音低減マットを提供する。
【解決手段】クッションと、シートと、前記クッションと前記シートとを接着する接着材層とを有し、
前記クッションが、発泡体シートの積層体であり、
前記クッションの厚さが、40mm以上80mm以下であることを特徴とする床衝撃音低減シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションと、シートと、前記クッションと前記シートとを接着する接着材層とを有し、
前記クッションが、発泡体シートの積層体であり、
前記クッションの厚さが、40mm以上80mm以下であることを特徴とする床衝撃音低減シート。
【請求項2】
2枚以上の請求項1に記載の床衝撃音低減シートと、前記床衝撃音低減シートを内包するカバーシートを有し、
前記カバーシートが、前記床衝撃音低減シートを一枚ずつ内包できる2個以上の袋状部と、前記袋状部を連結する連結部を備え、
前記連結部を軸として、折り畳むことができることを特徴とする床衝撃音低減マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床衝撃音、特に、重量床衝撃音を低減できる床衝撃音低減床、床衝撃音低減シート、および床衝撃音低減マットに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅では、上階の床から階下へ伝達される床衝撃音の抑制が求められる。床衝撃音には、軽量床衝撃音と重量床衝撃音とがあり、軽量床衝撃音は、床にカーペットなど表面にクッション性を有する仕上げ材を敷くことで低減できる。一方、重量床衝撃音は、床に仕上げ材を敷いても低減することは困難である。これは、重量床衝撃音は、主にコンクリート床の厚さによって定まるためである。そのため、重量床衝撃音を抑制するには、建物設計時にコンクリート床を厚く計画することが重要である。既に建設された集合住宅では、コンクリート床を変更することは不可能であるため、コンクリート床の建設後に、重量床衝撃音の改善が必要な場合、コンクリート床の上に防振浮き床を施工する方法があるが、防振浮き床は非常に高価であり、また、質量が大きいため、補強工事が必要となる場合もある。さらに、既に住民が生活を行っている住宅環境において床仕上げ材を変更する工事を行うことも困難である。
【0003】
居住を始めてからも行うことができる簡便な床衝撃音対策として、市販の子供用プレイマットを仕上げ床の上に敷く方法がある(特許文献1参照)。しかし、市販のプレイマットの多くは軽量床衝撃音には効果があるものの、重量床衝撃音を低減することができない。重量床衝撃音の低減効果を有するフォーム材を用いたマットも市販されているが、このようなフォーム材を用いたマットは、表面が柔らかいため、人間の飛び跳ねなどによる大きな衝撃荷重を受けると、へたりを生じてしまい、重量床衝撃音の低減性能が低下してしまう問題がある。
【0004】
ところで、知的障害や発達障害のある子供には、日常的に飛び跳ね行為を行う子供がいるが、成長とともに衝撃時の加振力も大きくなる。このような子供のいる家庭の場合、部屋一面にフォーム材を用いたマットを敷いて対応する場合が多く、また、へたってその性能が低下すると買い換える必要があるため、経済的な負担が大きい。さらに、このようなフォーム材の多くは、その表面が赤色、青色、黄色、水色、桃色等であり、フローリング材等の仕上げ床と比べて意匠性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、重量床衝撃音を低減できる床衝撃音低減床、床衝撃音低減シート、床衝撃音低減マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.既設床上に敷設された複数枚のクッション材からなるクッション層と、長尺シートからなる1層以上のシート層と、前記クッション層と前記シート層とを接着する接着層とを有することを特徴とする床衝撃音低減床。
2.前記クッション層が、発泡体シートの積層体であることを特徴とする1.に記載の床衝撃音低減床。
3.前記シート層が、JIS K6251に規定されるダンベル状2号形試験片を用いて引張強度を測定したときの破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値が2mm以上であり、かつ、伸びが小さい方の破断または降伏の際の引張強度が80N以上であることを特徴とする1.または2.に記載の床衝撃音低減床。
4.クッションと、シートと、前記クッションと前記シートとを接着する接着材層とを有することを特徴とする床衝撃音低減シート。
5.2枚以上の4.に記載の床衝撃音低減シートと、前記床衝撃音低減シートを内包するカバーシートを有し、
前記カバーシートが、前記床衝撃音低減シートを一枚ずつ内包できる2個以上の袋状部と、前記袋状部を連結する連結部を備え、
前記連結部を軸として、折り畳むことができることを特徴とする床衝撃音低減マット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床衝撃音低減床、床衝撃音低減シート、床衝撃音低減マット(以下、それぞれ単に低減床、低減シート、低減マットともいう)は、重量床衝撃音を低減することができる。
本発明の低減床は、既設建築物に簡便に設置することができる。本発明の低減床は、短時間で設置することができるため、設置の際に居住者の負担が少ない。
クッション層が発泡体シートの積層体である本発明の低減床は、重量床衝撃音をより低減することができる。本発明の低減床は、へたりにくいため、交換の頻度を抑えることができる。JIS K6251に規定されるダンベル状2号形試験片を用いて引張強度を測定したときの破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値が2mm以上であり、かつ、伸びが小さい方の破断または降伏の際の引張強度が80N以上であるシート層を用いた本発明の低減床は、シート層が変形しにくく、また、変形後の修復性に優れているため、非常にへたりにくい。シート層が印刷層を備える本発明の低減床は、意匠性に優れている。
本発明の低減シート、および低減マットは、設置、収容が容易であるため、必要なときに必要な場所にだけ設置し、来客時等は収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施態様である床衝撃音低減床の部分断面斜視図。
【
図2】本発明の第二実施態様である床衝撃音低減床の部分断面斜視図。
【
図3】本発明の床衝撃音低減マットに用いる一実施態様であるカバーシートの概略図。
【
図4】実験2における引張力と変位量の関係を示す図。
【
図5】実験3における繰り返し載荷回数と高さ低下率の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「床衝撃音低減床」
本発明の床衝撃音低減床を、実施態様に沿って説明する。
本発明の第一実施態様である床衝撃音低減床の部分断面斜視図を
図1に示す。
第一実施態様である床衝撃音低減床1は、既設床上に敷設された9枚のクッション材21からなるクッション層2と、2枚の長尺シート31からなる1層のシート層3と、クッション層2とシート層3とを接着する接着材層(図示せず)とを有する。
【0011】
・クッション層
本発明の低減床において、クッション層は、複数枚のクッション材が既設床上に敷設されたものである。敷設したクッション材は、隣接するクッション材同士を粘着テープ、接着剤等で固定することもできる。第一実施態様である床衝撃音低減床1において、クッション材21は発泡体シートの積層体からなる。
本発明で使用するクッション材の材質は、衝撃を吸収し、床衝撃音を和らげるものであれば特に制限されないが、例えば、発泡体が好ましい。発泡体は、衝撃音低減性能と、変形に対する修復性に優れている。発泡体としては、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等を使用することができ、これらの中で、衝撃音低減性能と強度のバランスに優れ、かつ、低価格であるため、ポリエチレンフォームが好ましい。
【0012】
本発明の床衝撃音低減床において、クッション材は、単層、または積層体とすることができるが、クッション材は積層体であることが好ましい。積層体からなるクッション材は、総厚さと素材が同一である単層のクッション材と比較して、床衝撃音の低減性能に優れている。さらに、積層体からなるクッション材は、各層の弾性、厚さ等を調整することにより、衝撃音を低減する周波数帯域と低減性能とを調節することができる。
【0013】
クッション材は、厚いほど、重量床衝撃音(63Hz)の低減効果に優れるが、厚くなると、重量が重くなる、へたりやすくなる、低減床を敷設しない部分との段差が大きくなり生活しにくくなる等の問題が大きくなるため、20mm以上100mm以下であることが好ましく、40mm以上80mm以下であることがより好ましい。クッション材が積層体からなる場合は、1層の厚さは、5mm以上10mm以下であることが好ましく、各層の厚さは同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
・シート層
本発明の低減床において、1層以上のシート層は、長尺シートからなり、最下層のシート層は、クッション材の複数枚に貼り合わせられる。長尺シートが、複数枚のクッション材に貼り合わされることにより、クッション材のズレを防止することができる。第一実施態様である低減床1において、長尺シート31は1層であり、幅がクッション材21の1.5倍、長さがクッション材21の3倍であり、クッション材21の4.5枚分の面積を有し、6枚のクッション材21に貼り合わされている。
シート層は、床の表面材に使用されている材料を特に制限することなく使用することができ、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレン-ポリビニルアルコール共重合体等を使用することができる。また、これらのシートは、ガラス繊維、高分子ファイバー等の繊維材料を含むことができる。なお、床の表面材としては、塩化ビニルが最も一般的に使用されている。また、シート層が最上面となる場合、シート層は木目調等の印刷が施されていることが好ましい。
【0015】
シート層は、クッション層よりも変形しにくいため、クッション層の表面にシート層を接着することにより、クッション層の変形量を小さくすることができる。また、変形したシート層は元の形状に戻る自己修復性を有するが、シート層の形状修復に伴い、シート層に接着されたクッション層も元の形状に戻ることができるため、本発明の低減床はへたりにくい。
【0016】
ここで、建築用途に用いられる長尺シートは、幅1.8m程度のものが一般的である。長尺シートは、部屋の寸法と比較すると狭幅であるため、本発明の低減床を広面積に設置するには、
図1に示すように、接着剤、溶接等により長尺シートの幅方向端部を継ぐ必要がある。長尺シート間の継ぎ目は、継ぎ目のない部分と比較して強度に劣るため、継ぎ目上で子供が飛び跳ねたりして大きな力が加わると、継ぎ目が剥がれたり、切れてしまう場合がある。
【0017】
本発明の第二実施態様である床衝撃音低減床の部分断面斜視図を
図2に示す。
第二実施態様である床衝撃音低減床10は、シート層3の上に、シート層3-2を有し、シート層3-2を構成する長尺シート31-2が、長尺シート31と長手方向が直交するように積層されている以外は、第一実施態様である低減床1と同様の構成を有する。
【0018】
第二実施態様に示すように、2層以上のシート層を、各シート層を構成する長尺シートの長手方向が異なる向きとなるように積層することにより、継ぎ目の破壊を防止することができる。または、長手方向が同一であっても継ぎ目が重ならないように積層することにより、継ぎ目の破壊を防止することができる。長手方向を同一として継ぎ目が重ならないように積層する場合、上下のシート層の継ぎ目は、水平方向に5cm以上離れていることが好ましく、10cm以上離れていることがより好ましい。2層以上のシート層を積層する場合、下方のシート層を構成する長尺シートの少なくとも1枚として、繊維材料を含むシートを用いることが、最表面のシート層の継ぎ目の破断防止の点から好ましい。
本発明の低減床において、シート層は1層以上であればよいが、複数層のシート層を設ける場合は、施工性の点から2層であることが好ましい。なお、本発明の低減床を廊下や部屋の一部等に設置するように長尺シートの幅が足りる場合は、シート層は1層で十分である。
【0019】
本発明の低減床は、シート層の少なくとも1層が、JIS K6251に規定されるダンベル状2号形試験片を用いて引張強度を測定したときの破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値が2mm以上であり、かつ、伸びが小さい方の破断または降伏の際の引張強度が80N以上であることが好ましい。この破断伸度または降伏伸度の小さい方の値が2mm未満であると、変形時にシート層が破れたり、伸びたまま戻らず皺になりやすい。また、この2mm伸長時の引張応力が80N未満であると、修復力が不足して、クッション層がへたりやすくなる。破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値は、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。また、この2mm伸長時の引張応力の値は100N以上であることがより好ましく、120N以上であることがさらに好ましい。
【0020】
・接着層
接着層は、クッション層とシート層とを接着するものである。また、2層以上のシート層を有する場合は、各シート層間も接着する。接着層としては、クッション層とシート層とを強固に接着できるものを特に制限することなく使用することができ、感圧型接着剤、感熱型接着剤、粘着剤、両面接着テープ等を使用することができる。この際、シート層の接着面が、エンボス等の細かな凹凸を有することが、接着力が大きくなるため好ましい。また、接着層は、クッション層とシート層とを均一に接着できるものであればよく、全面に設けるだけでなく、点や線を組み合わせたパターン状に設けることもできる。パターン状に設ける場合、接着面積は面全体の50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0021】
本発明の床衝撃音低減床は、クッション材、シート層ともに軽量であるため、敷設するにあたり、躯体構造の強化は不要である。本発明の床衝撃音低減床は、既設床上に複数枚のクッション材を敷き詰めてクッション層とし、このクッション層に長尺シートを貼り合わせてシート層とするだけで敷設することができる。敷設に特別な装置等は不要であり、少人数で短時間で敷設することができる。本発明の床衝撃音低減床を居住後の住居に敷設する場合、居住者は短期間の引越し等が不要である。クッション材と長尺シートは、ともに人力での搬入が可能である。クッション材、長尺シートは軟らかい材質からなり、搬入時に壁や家具等にぶつかっても傷が付きにくい。
【0022】
「床衝撃音低減シート」
本発明の床衝撃音低減シートは、クッションと、シートと、クッションとシートとを接着する接着材層とを有する。
本発明の床衝撃音低減シートは、上記した本発明の床衝撃音低減床のクッション材一枚分の大きさに相当し、クッション、シート、接着材層として、床衝撃音低減床の各材料と同等のものを使用することができる。
【0023】
「床衝撃音低減マット」
上記した床衝撃音低減シートの2枚以上を、床衝撃音低減シートを一枚ずつ内包できる袋状部と、この袋状部を連結する連結部を備えカバーシートに内包することにより、床衝撃音低減マットとすることができる。
図3に、一実施態様であるカバーシートの概略図を示す。
図2に示すカバーシート4は、3個の袋状部41と、袋状部41を連結する2個の連結部42を備え、連結部42を軸として折り畳むことができる。
図2に示すカバーシート4は、連結部42が、上下交互となるように設けられているため、屏風のように折り畳むことができる。本発明において、カバーシートの袋状部の数は特に制限されないが、2個以上4個以下であることが、取り扱い性の点から好ましい。
【実施例0024】
実験1:重量床衝撃音低減実験
「実施例1」
厚さ5mmのポリエチレンフォームの積層体からなる積層ポリエチレンマット(厚さ40mm)に、市販のシート1(塩化ビニル製:厚さ2mm)を、アクリル系粘着剤で接着し、試験体を得た。
「実施例2」
積層ポリエチレンマットの厚さを50mmとした以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
「実施例3」
積層ポリエチレンマットの厚さを80mmとした以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0025】
「比較例1」
実施例1の積層ポリエチレンマットのみを試験体とした。
「比較例2」
積層されていない厚さ40mmの単一のポリエチレンマットのみを試験体とした。
【0026】
「比較例3」
シート1を、市販のシート2(塩化ビニル製:厚さ0.8mm)とした以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
「比較例4」
シート1を、市販のシート3(塩化ビニル製:厚さ2.3mm)とした以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0027】
コンクリート床の上に各試験体を敷いた条件と敷かない条件の重量床衝撃音のレベルをそれぞれJIS A1418-2:2000によって衝撃力特性(1)をもつ衝撃源(タイヤ)を使用して測定し、それらの差から重量床衝撃音の低減量を求めた。また、試験前後での試験体の形状変化を目視で確認した。1/3オクターブバンドごとの結果のうち重量床衝撃音で重要となる50Hzから80Hzの結果を表1に示す。
【表1】
【0028】
・結果
実施例1~3より、クッション層を厚くすると、重量床衝撃音の低減性能が向上することが確かめられた。また、実施例1~3は、試験の前後で、試験体の形状に変化は見られなかった。
比較例1、2より、クッション層が、積層体であるほうが重量床衝撃音の低減性能に優れることが確かめられた。比較例1、2は、試験後の試験体(クッション層のみ)に凹みが生じていた。
実施例1と比較例3とは、ほぼ同等の重量床衝撃音低減性能を有していた。しかし、比較例3の試験体は、試験後にシート層に変形が見られた。
比較例4の試験体は、衝撃源で一度叩いただけで、シート層が破れてしまい、重量床衝撃音の測定ができなかった。
【0029】
実験2:引張試験
実験1で使用したシート1~3と、別の市販のシート4(塩化ビニル製:厚さ2mm)とについて、引張強度を測定した。測定は、JIS K6251に規定されるダンベル状2号形に切り抜いたシートを、卓上型精密万能試験機(株式会社島津製作所製、装置名オートグラフAGS-X 5kN)を用いて、引張速度100mm/minで引張り、伸びに対する引張強さを測定した。測定結果を表2、
図4に示す。
【表2】
【0030】
・結果
シート2は、引張力に対する変位が大きい。このため実験1で変形が生じたと考えられる。
シート3は、降伏伸びが1.2mm、降伏時の引張強度が68.1Nであった。シート3は、降伏伸びが小さいため、実験1で破れてしまったと考えられる。
シート4は、シート1よりも強く、シート1と同等の変形しにくさが期待できる。
【0031】
実験3:へたり試験
「比較例5」
実施例2の積層ポリエチレンマットのみを試験体とした。
「比較例6」
積層ポリエチレンマットとシート1を接着しない以外は、実施例2と同様にして試験体を得た。
【0032】
JIS K6400-4に準拠し、繰り返し圧縮残留ひずみを求めた。具体的には、平面寸法500mm×500mmの試験体に、直径100mmの加圧子によって500Nの力を1分間に60回繰り返し加え、載荷された点における高さ(厚さ)が載荷前に対してどの程度低下するかを測定した。また、実施例2、比較例3で得た試験体についても、同様に測定を行った。結果を
図5に示す。
【0033】
・結果
本発明である実施例2は、比較例3、5、6と比べて、繰り返し荷重を加えても高さが低下しにくく、へたりにくいことが確かめられた。特に、実施例2と比較例6より、シート層とクッション層とを接着することにより、高さが低下しにくい、すなわち、へたりにくくなることが確かめられた。