IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千寿製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-眼科用医薬製品 図1
  • 特開-眼科用医薬製品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098100
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】眼科用医薬製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/10 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K31/498
A61P27/06
A61K31/542
A61K9/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083625
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2023064795の分割
【原出願日】2016-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2015241390
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岩塚 欣也
(72)【発明者】
【氏名】安枝 真一
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液においてブリモニジン及び/又はその塩が光安定性を備えつつ、当該点眼液が内容を視認できる収容体に収容された眼科用医薬製品を提供することである。
【解決手段】波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を収容することによって内部視認性を確保しつつ、ブリモニジン及び/又はその塩の光暴露による分解を抑制でき、製剤安定性が確保できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液が、
波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容されている、
ことを特徴とする、眼科用医薬製品。
【請求項2】
前記透明収容体が点眼容器である、請求項1に記載の眼科用医薬製品。
【請求項3】
前記点眼液が、マンニトールを含まない、請求項1又は2に記載の眼科用医薬製品。
【請求項4】
ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液におけるブリモニジン及び/又はその塩の光安定化方法であって、
前記点眼液を波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容することを特徴とする、安定化方法。
【請求項5】
前記点眼液が、マンニトールを含まない、請求項4に記載の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液が、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を備えつつ、内容を視認できる収容体に収容されている眼科用医薬製品に関する。更に、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液におけるブリモニジン及び/又はその塩の光安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジン及びその塩は、アドレナリンα2受容体作動薬として知られており、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用があり、従来、緑内障や高眼圧症の治療に使用されている。
【0003】
また、ブリンゾラミド及び/又はその塩についても、炭酸脱水酵素阻害薬として知られており、眼房水の産生を抑制することによって、眼圧を低下させる作用があり、緑内障の治療に使用されている。
【0004】
近年、緑内障や高眼圧症の治療効果を高めるために、ブリモニジン及び/又はその塩と、ブリンゾラミド及び/又はその塩を併用した製剤が提案されている。例えば、特許文献1には、ブリモニジン及びブリンゾラミドを同時又は別々に投与することによって、緑内障等の眼疾患を効果的に治療できることが報告されている。また、特許文献2には、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む複数用量眼用組成物が開示されている。
【0005】
一方、点眼液を実用化するためには、優れた製剤安定性を備え、有効成分を安定に維持できることが必要とされる。しかしながら、特許文献1及び2では、製剤安定性については一切検討がなされていない。そこで、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を実用化する上で、各有効成分の安定性を検討し、製剤安定性を検証することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6316441号
【特許文献2】国際公開第2010/148190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を実用化すべく、その製剤安定性について検討を行ったところ、当該点眼液中で、ブリモニジン及び/又はその塩は光暴露によって分解され易いという新たな課題に直面した。
【0008】
一般に、光に不安定な成分を含む製剤の安定性を確保するために、金属製容器や不透明容器等の光をほぼ遮断できる遮光性容器等の収容体に収容する手法がとられている。しかしながら、日本においては、点眼液の収容には、点眼液の不溶性異物検査法の試験に支障をきたさない透明性のある気密容器を使用する必要がある(第十六改正日本薬局方解説書 A-108参照 東京廣川書店)。このため、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を収容する容器として、不溶性異物検査に影響を及ぼすような遮光性容器を使用することには制限がある。更に、マルチドーズタイプの点眼液では、使用者が残存する液量を視認できるように、内部を視認可能な程度に透明性を備える透明容器を使用することが望ましいとされているが、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を透明容器に収容すると、光暴露によるブリモニジン及び/又はその塩の分解が懸念される。
【0009】
そこで、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液においてブリモニジン及び/又はその塩が光安定性を備えつつ、当該点眼液が内容を視認できる収容体に収容された眼科用医薬製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、従来知られていない前記課題に直面し、更に当該課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液を収容することによって、不溶性異物試験や残存液量の視認を可能にしつつ、ブリモニジン及び/又はその塩の光暴露による分解を抑制でき、製剤安定性が確保できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液が、
波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容されている、
ことを特徴とする、眼科用医薬製品。
項2. 前記透明収容体が点眼容器である、項1に記載の眼科用医薬製品。
項3. 前記点眼液が、マンニトールを含まない、項1又は2に記載の眼科用医薬製品。項4. ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液におけるブリモニジン及び/又はその塩の光安定化方法であって、
前記点眼液を波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容することを特徴とする、安定化方法。
項5. 前記点眼液が、マンニトールを含まない、項4に記載の安定化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液において、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定化が図られており、優れた製剤安定性を備えさせることができる。更に、本発明によれば、当該点眼液を内部が視認可能な透明包装体に収容しているので、不溶性異物試験を簡易に行うことができ品質管理が容易化されると共に、点眼液の残存量を収容体外部から視認できるので、使用者の利便性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試験例1において、収容体の構成部材として使用した各被覆体及びポリエチレンテレフタレート製の容器の各波長における光の透過率を測定した結果を示す図である。
図2】試験例2において、収容体の構成部材として使用した各セロファンの各波長における光の透過率を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「眼科用医薬品」とは、点眼液が透明収容体に収容されている状態にある製品を指す。また、「透明収容体」とは、少なくとも一部には不溶性異物試験を実施するため等に必要な内部を視認するための透明な領域が確保されており、点眼液を収容するものを指す。更に、「ブリモニジン及び/又はその塩の光安定化」とは、光暴露によってブリモニジン及び/又はその塩が分解されるのを抑制することを指す。
【0015】
1.眼科用医薬製品
本発明の眼科用医薬製品は、ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液が、波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容されていることを特徴とする。以下、本発明の眼科用医薬製品について詳述する。
【0016】
点眼液
(ブリモニジン及び/又はその塩)
本発明で使用される点眼液には、ブリモニジン及び/又はその塩が含まれる。ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液において、ブリモニジン及び/又はその塩は、光暴露によって分解され易いが、本発明によれば、後述する特定の収容体に収容することによって、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定化を図ることができる。
【0017】
ブリモニジンは、アドレナリンα2受容体作動薬として公知の化合物である。ブリモミジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、酒石酸塩、塩酸塩、酢酸塩が挙げられる。
【0018】
本発明において、ブリモニジン又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。ブリモニジン及びその塩の中でも、好ましくはブリモニジン酒石酸塩が挙げられる。
【0019】
本発明で使用される点眼液において、ブリモニジン及び/又はその塩の含有量については、特に制限されず、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~1w/v%、好ましくは0.05~0.3w/v%、更に好ましくは0.1~0.2w/v%が挙げられる。
【0020】
(ブリンゾラミド)
本発明で使用される点眼液には、ブリンゾラミド及び/又はその塩が含まれる。ブリンゾラミドは、炭酸脱水酵素阻害薬として公知の化合物である。ブリンゾラミドの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、酢酸塩が挙げられる。
【0021】
本発明で使用される点眼液において、ブリンゾラミド及び/又はその塩の含有量については、特に制限されず、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~3w/v%、好ましくは0.5~2w/v%、更に好ましくは1w/v%が挙げられる。
【0022】
(その他の成分)
本発明で使用される点眼液には、前述する成分に加えて、浸透圧の調節、成分の溶解補助等のために、2価又は3価のアルコールが含まれていてもよい。
【0023】
2価又は3価のアルコールとしては、点眼液への配合が許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの2価又は3価のアルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの2価又は3価のアルコールの中でも、好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0024】
本発明で使用される点眼液に2価又は3価のアルコールを配合する場合、その含有量については、所望の浸透圧となるように適宜設定すればよいが、例えば0.1~5w/v%、好ましくは0.5~3w/v%、更に好ましくは1~2w/v%が挙げられる。
【0025】
また、本発明で使用される点眼液には、ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩等の溶解性を高めるために、必要に応じて界面活性剤が含まれていてもよい。
【0026】
界面活性剤としては、点眼液への配合が許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクトキシノール等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤、更に好ましくはチロキサポールが挙げられる。
【0027】
本発明で使用される点眼液に界面活性剤を配合する場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば0.005~0.1w/v%、好ましくは0.01~0.05w/v%、更に好ましくは0.02~0.03w/v%が挙げられる。
【0028】
また、本発明で使用される点眼液には、所望の粘性を備えさえるために、必要に応じて粘稠剤が含まれていてもよい。
【0029】
粘稠剤としては、点眼液への配合が許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの粘稠剤の中でも、好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0030】
本発明で使用される点眼液に粘稠剤を配合する場合、その含有量については、付与すべき粘性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~1w/v%、好ましくは0.1~0.5w/v%、更に好ましくは0.3~0.5w/v%が挙げられる。
【0031】
また、本発明で使用される点眼液には、浸透圧の調節等のために、必要に応じて、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物が含まれていてもよい。これらのアルカリ金属の塩化物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアルカリ金属の塩化物の中でも、好ましくは塩化ナトリウムが挙げられる。
【0032】
本発明で使用される点眼液にアルカリ金属の塩化物を配合する場合、その含有量については、他の成分の含有量を勘案した上で、付与すべき浸透圧等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~1w/v%、好ましくは0.05~0.5w/v%、更に好ましくは0.1~0.3w/v%が挙げられる。
【0033】
更に、本発明で使用される点眼液には、緩衝作用の付与、浸透圧の調節等のために、必要に応じて、緩衝剤が含まれていてもよい。
【0034】
緩衝剤としては、点眼液への配合が許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、Tris緩衝剤、アミノ酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの緩衝剤の中でも、好ましくはホウ酸緩衝剤が挙げられる。
【0035】
本発明で使用される点眼液に緩衝剤を配合する場合、その含有量については、使用する緩衝剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ホウ酸を使用する場合であれば、ホウ酸の含有量として、例えば0.01~5w/v%、好ましくは0.05~1w/v%、更に好ましくは0.1~0.5w/v%が挙げられる。
【0036】
また、本発明で使用される点眼液には、前記成分の他に、必要に応じて、キレート剤、清涼化剤、防腐剤等の添加剤を含有してもよい。
【0037】
キレート剤としては、例えば、エデト酸塩、クエン酸又はその塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
清涼化剤としては、例えば、l-メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油等が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、ホウ酸又はその塩、デヒドロ酢酸又はその塩、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの防腐剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
安定化剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、亜硫酸塩、モノエタノールアミン、グリセリン、プロピレングリコール、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、エデト酸塩、タウリン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
また、従来技術では、光暴露によって分解され易い成分を含む製剤にラジカル消去剤であるマンニトールを配合することにより、当該成分に光安定性を付与できることが知られている(International Journal of Pharmaceutics (1994), 107(3), 199-203: Effect of sweetening agents on the light stability of aqueous solutions of L-ascorbic acid;大柳善彦「SODと活性酸素種調節剤-その薬理的作用と臨床応用」、第225~229頁、日本医学館)。一方、本発明では、マンニトールを配合しなくても、後述する特定の収容体を使用することによって、ブリモニジン及び/又はその塩の光安定性を付与することができる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明で使用される点眼液の好適な一態様として、マンニトールを含まないものが挙げられる。
【0042】
更に、本発明で使用される点眼液には、ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、緑内障や高眼圧症に対して治療効果を示す薬理成分が含まれていてもよい。
【0043】
このような薬理成分としては、例えば、タフルプロスト、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類;ピロカルピン塩酸塩等の副交感神経刺激薬;ジスチグミン臭化物等の抗コリンエステラーゼ薬;ジピベフリン塩酸塩等の交感神経刺激薬;チモロールマレイン酸塩等のβ遮断剤;ベタキソロール塩酸塩等のβ1遮断薬;ニプラジロール、レボブノロール塩酸塩等のα1・β遮断薬;ブナゾシン塩酸塩等のα1遮断薬等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
(pH)
本発明で使用される点眼液のpHについては、眼粘膜に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、4~8、好ましくは5~8、更に好ましくは、6~7が挙げられる。
【0045】
(用途)
本発明で使用される点眼液は、ブリモニジン及び/又はその塩とブリンゾラミド及び/又はその塩の作用によって、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用があり、緑内障や高眼圧症の治療用途に好適に使用される。
【0046】
収容体
本発明の眼科用医薬製品では、前記点眼液が、波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容されて提供される。
【0047】
本発明で使用される透明収容体は、前記点眼液を収容するための点眼容器を有していればよい。本発明で使用される透明収容体は、点眼容器自体で構成されていてもよく、また点眼容器の一部又は全部が被覆部材で被覆されている状態のものであってもよい。
【0048】
点眼容器の構造については、特に制限されず、従来の点眼容器と同様の構造であればよいが、具体的には、点眼液を収容する本体部と、当該点眼液を注出する注出口を有する注出部と、当該注出口を着脱可能にふさぐ蓋部とを有していればよい。また、点眼容器の一部又は全部を被覆部材で被覆する場合、シュリンクラベル、タックラベル等の被覆部材を使用して、点眼容器の全体又は一部(側面、又は側面と底面)に当該被覆部材を密着させたり、ピロー包装フィルム、チャック袋等の被覆部材を使用して点眼容器を包装又は収容したりすればよい。
【0049】
本発明で使用される透明収容体は、波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である。波長360~460nm及び波長600~680nmの光が、前記点眼液中のブリモニジン及び/又はその塩の分解の要因になっており、当該波長の光の透過率を低減させた透明収容体を使用することにより、前記点眼液中のブリモニジン及び/又はその塩に光安定性を備えさせることが可能になる。なお、透明収容体が全体又は一部に被覆部材が密着されている点眼容器の場合であれば、前記光の最大透過率は、当該被覆部材が密着している点眼容器の状態のまま測定される値である。
【0050】
前記点眼液中のブリモニジン及び/又はその塩の光安定性をより一層向上させるという観点から、前記透明収容体として、好ましくは波長360~460nmの光の最大透過率が63%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が74%以下であるもの;より好ましくは波長360~460nmの光の最大透過率が30%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が48%以下であるもの;更に好ましくは波長360~460nmの光の最大透過率が26%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が44%以下であるもの;より一層好ましくは波長360~460nmの光の最大透過率が5%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が12%以下であるもの;特に好ましくは波長360~460nmの光の最大透過率が1%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が8%以下であるものが挙げられる。
【0051】
本発明において、波長360~460nmの光の最大透過率は、波長360nmから波長460nmまで、波長幅5nmの間隔で光の透過率を紫外可視分光光度計にて測定し、測定された各透過率の値の内、最大値を求めることにより得られる値である。また、波長600~680nmの光の最大透過率についても、同様である。
【0052】
また、本発明で使用される透明収容体は、その一部に、商品名、成分名、使用期限、注意書き等の表示等の目的として不透明な領域が備えられていてもよいが、少なくとも一部には、不溶性異物試験を実施するため等に必要な内部を視認するための透明な領域が確保されていることを要する。本発明で使用される透明収容体は、前記点眼液中のブリモニジン及び/又はその塩に光安定性を備えさせるために、その全面において、波長360~460nm及び600~680nmの光の最大透過率が前記範囲内であることが必要であり、前記透明な領域においても、波長360~460nm及び600~680nmの光の最大透過率が前記範囲内であることを要する。
【0053】
例えば、透明収容体が点眼容器自体、或は全体又は一部に被覆部材が密着されている点眼容器の場合であれば、不溶性異物試験や残存液量の確認を容易にするという観点から、透明な領域は、点眼容器の側面(蓋により覆われる領域を除く本体部外周面)の5%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上の領域を占めていることが望ましい。
【0054】
透明収容体における透明な領域は、内部を視認可能な程度の透明性を有していればよく、波長360~460nm及び600~680nm以外の波長範囲の可視光の透過率が、内部を視認可能な程度に高い値であればよい。不溶性異物試験や残存液量の確認を容易にするという観点から、本発明で使用される透明収容体における透明な領域が、波長480~580nmの領域と波長700~780nmの領域における光の平均透過率が、例えば10%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは30~80%が挙げられる。ここで、波長480~580nmの領域と波長700~780nmの領域における光の平均透過率とは、波長480nmから波長580nmまでの範囲と波長700nmから780nmまでの範囲について、波長幅5nmの間隔で光の透過率を紫外可視分光光度計にて測定し、測定された各透過率の平均値を算出することによって求められる値である。
【0055】
透明収容体の構成素材については、前述する特性を備え得ることを限度として、特に制限されず、透明収容体の形態等に応じて適宜設定すればよく、プラスチック製、ガラス製、パルプ性等のいずれであってもよい。点眼容器の場合であれば、その構成素材として、スクイズ性や耐久性等の観点から、好ましくはプラスチック製が挙げられる。
【0056】
透明収容体がプラスチック製である場合、その樹脂成分の種類については、特に制限されないが、好ましくは熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレンは、前述する光透過性に関する特性を備えさせ易く、本発明で使用される透明収容体の構成素材として好適に使用できる。
【0057】
本発明で使用される透明収容体の製造方法については、前述する特性を備えることを限度として特に制限されず、透明収容体の形成に使用する構成素材の特性や透明収容体の厚み等を勘案して、従来公知の光透過性を制御する手法を用いればよい。具体的には、前記特性を備える透明収容体を製造する方法として、波長360~460nmの光を吸収できる物質及び波長600~680nmの光を吸収できる物質を練り込んだ構成素材を用いて、点眼容器を形成する方法;波長360~460nmの光を吸収できる物質及び波長600~680nmの光を吸収できる物質を含む塗工液を、点眼容器の外周面に塗布する方法;波長360~460nmの光を吸収できる物質及び波長600~680nmの光を吸収できる物質を練り込んだフィルム(熱収縮性フィルム等)で点眼容器の外周面を被覆する方法;波長360~460nmの光を吸収できる物質及び波長600~680nmの光を吸収できる物質を練り込んだフィルムで点眼容器をピロー包装する方法;波長360~460nmの光を吸収できる物質及び波長600~680nmの光を吸収できる物質を練り込んだチャック袋に点眼容器を収容する方法等が挙げられる。波長360~460nmの光を吸収できる物質、及び波長600~680nmの光を吸収できる物質については、顔料、光吸収剤等の中から、適宜選択すればよい。
【0058】
2.ブリモニジン及び/又はその塩の光安定化方法
本発明の光安定化方法は、ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液におけるブリモニジン及び/又はその塩の光安定化方法であって、当該点眼液を波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である透明収容体に収容することを特徴とする。
【0059】
本発明の光安定化方法で使用される点眼液の組成、透明収容体の種類や特性等については、前記「1.眼科用医薬製品」の欄に記載の通りである。
【実施例0060】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0061】
試験例1
1.眼科用医薬製品の製造
1-1.点眼液の調製
表1に示す処方1の点眼液(水性懸濁剤)を以下の手順で調製した。先ず、カーボポールを精製水に溶解し、0.8w/v%カーボポール溶液を調製した。次いで、表1に示す組成に従って、精製水にブリモニジン酒石酸塩、チロキサポール、ホウ酸、塩化ナトリウム、プロピレングリコール、ベンザルコニウム塩化物、及び前記0.8w/v%カーボポール溶液を加えて溶かし,水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整した後に、ブリンゾラミドを加えて混合し、点眼液(水性懸濁剤)を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
1-2.収容体への収容
前記で得られた処方1の点眼液5mlを表2に示す態様の収容体に収容し、各種検体(眼科用医薬製品)を製造した。具体的には、実施例1~3及び比較例1~4では、点眼液を充填したガラス製容器(容器本体)(株式会社マルエム製)を、各種ポリエチレン製のチャック袋(株式会社生産日本社製、ユニパックカラー半透明C-4 青、赤、黄、無色、緑)に収容し、検体とした。なお、実施例2及び3では、表2に示す種類と所定枚数のチャック袋を重層させた状態にして、点眼液を充填したガラス製容器(容器本体)を収容した。また、比較例5のPET製容器本体(NewマイティアCL(登録商標)(千寿製薬株式会社)で使用されている容器本体)には容器の被覆体を使用しなかった。また、比較例6では、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートが積層されているフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアAX)を用いて、点眼液を充填したガラス製容器(容器本体)を覆うことにより、検体とした。
【0064】
また、試験に使用した収容体の光透過性を確認するために、使用した各被覆体又はポリエチレンテレフタレート製の容器を1.0cm×3.0cmに切り取り、紫外可視分光光度計(「UV-2450型」,島津製作所製)を用いて、各波長の光の透過率(%)を測定した。各被覆体及びポリエチレンテレフタレート製の容器の各波長における光の透過率を図1に示し、波長360~460nmにおける光の最大透過率、600~680nmにおける光の最大透過率、波長480~580nmと波長700~780nmの領域における光の平均透過率を表2に示す。波長480~580nmと波長700~780nmの領域における光の平均透過率は、波長480~580nmの領域と波長700~780nmの領域において、5nm間隔で光の透過率を測定し、平均値を算出することによって求めた。なお、波長360~460nmと波長600~680nmの領域において、ガラス製容器を各被覆体で被覆した状態の光の透過率は、被覆体単独の透過率よりも、最大で4%低い値を示していた。
【0065】
2.ブリモニジン酒石酸塩の光安定性の評価
前記で得られた各検体に対して、光安定性試験装置(「LT-120A-WCD型」、ナガノサイエンス株式会社製)を用いて、25℃の温度条件下で、白色蛍光灯で0.7万lxの光を28.6時間照射した後、ケミカルランプで5W・h/m2の光を8時間連続照射し、検体に20万lx・h及び40W・h/m2の光を暴露した。
【0066】
光暴露前後の各検体の点眼液に含まれるブリモニジン酒石酸塩濃度を超高速液体クロマトグラフシステム(UPLC,Waters社製)によって測定し、下記算出式に従って、ブリモニジン酒石酸塩の分解率(%)を算出した。
【0067】
【数1】
【0068】
3.透明性の評価
前記で得られた各検体を目視にて観察し、以下の判定基準に従って透明性について評価した。
(判定基準)
○:容器が、不溶性異物試験を行える程度の透明性を有している。
×:容器が不透明であり、不溶性異物検査を行うことができない。
【0069】
4.評価結果
得られた結果を表2に示す。表2から明らかなように、波長360~460nmにおける光の最大透過率が67%超であり、且つ波長600~680nmにおける光の最大透過率が78%超である収容体を使用した場合には、ブリモニジン酒石酸塩の分解率が1%を超えており、ブリモニジン酒石酸塩を安定に保持できていなかった(比較例1、2、4~7)。また、波長360~460nmにおける光の最大透過率が67%以下を満たしていても、波長600~680nmにおける光の最大透過率が78%超である収容体では、ブリモニジン酒石酸塩を安定に保持できていなかった(比較例3)。これに対して、波長360~460nmにおける光の最大透過率が67%以下且つ波長600~680nmにおける光の最大透過率が78%以下を満たす収容体を使用した場合に、ブリモニジン酒石酸塩の分解率が低く、ブリモニジン酒石酸塩に光安定性を備えさせることができていた(実施例1~3)。とりわけ、波長360~460nmにおける光の最大透過率が27%以下且つ波長600~680nmにおける光の最大透過率が44%以下を満たす収容体の場合には、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性が格段に向上していた(実施例2及び3)。
【0070】
以上の結果から、波長360~460nm及び波長600~680nmにおける光の透過率を低減できる収容体を使用することによって、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性を備えさせ得ることが明らかとなった。
【0071】
【表2】
【0072】
試験例2
前記試験例1において、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性を備えさせるには、波長360~460nm及び波長600~680nmにおける光の透過率を低減すればよいことが確認されたが、本試験例2では、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性に影響を及ぼす波長範囲をより詳細に検証するために、以下の試験を行った。
【0073】
1.収容体入り点眼液の製造
前記試験例1と同様の方法で、表1に示す処方1の点眼液(水性懸濁剤)を調製した。この点眼液を表3に示す態様の収容体(容器及び被覆体)に収容し、各種検体(眼科用医薬製品)である実施例4~7及び比較例8を製造した。具体的には、点眼液5mlを充填したガラス製容器を、各種セロファン(オキナ株式会社製、品番CCM5(無色透明)、CCM1(赤)、CCM2(緑)、CCM4(黄)、CCM3(青))を用いて覆うことにより、検体とした。
【0074】
また、試験に使用した収容体の光透過性を確認するために、使用した各セロファンの各波長での光の透過率(%)を前記試験例1と同様の方法で測定した。各セロファンの各波長における光の透過率を図2に示し、波長360~460nmにおける光の最大透過率、600~680nmにおける光の最大透過率、光の透過率が10%以下になる波長範囲、波長480~580nmと波長700~780nmの領域における光の平均透過率を表3に示す。
【0075】
2.ブリモニジン酒石酸塩の光安定性の評価
前記で得られた各検体に対して、光安定性試験装置(「LT-120A-WCD型」、ナガノサイエンス株式会社製)を用いて、25℃の温度条件下で、白色蛍光灯で0.7万lxの光を28.6時間照射した後、ケミカルランプで20W・h/m2の光を20時間連続照射し、検体に20万lx・h及び400W・h/m2の光を暴露した。なお、本試験例2では、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性に影響を及ぼす波長範囲をより詳細に検証するために、試験例1に比べて、過酷な光暴露条件に設定した。
【0076】
光暴露前後の各検体の点眼液に含まれるブリモニジン酒石酸塩濃度を超高速液体クロマトグラフシステム(UPLC,Waters社製)によって測定し、前記試験例1と同様の方法で、ブリモニジン酒石酸塩の分解率(%)を算出した。
【0077】
3.透明性の評価
前記試験例1と同様の方法で、前記で得られた各検体の透明性について評価した。
【0078】
4.評価結果
得られた結果を表3に示す。表3から明らかなように、波長360~460nmにおける光の最大透過率と波長600~680nmにおける光の最大透過率が低い程、ブリモニジン酒石酸塩の分解率が低くなる傾向が認められた。特に、ブリモニジン酒石酸塩の分解率が最も低かった実施例5で使用した収容体では、波長360~460nmと600~680nmの光の透過率は低いが、波長480~580nmと700~780nmの可視光領域における光の透過率は高い値を示していた。即ち、実施例5の結果から、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性には、波長480~580nmと700~780nmの可視光領域は悪影響を与えておらず、波長360~460nmと600~680nmの可視光が悪影響を及ぼしており、内部視認性を確保しつつブリモニジン酒石酸塩の光安定性を確保するには、波長360~460nmと600~680nmの双方の領域における光の透過率を低くすることが有効であることが明らかとなった。
【0079】
【表3】
【0080】
試験例3
前記試験例1及び2では点眼液におけるブリモニジン酒石酸塩の含有量が0.1w/v%の場合について評価を行ったので、本試験例3ではブリモニジン酒石酸塩の含有量を0.2w/v%に代えてブリモニジン酒石酸塩の光安定性の評価を行った。
【0081】
1.収容体入り点眼液の製造
前記試験例1と同様の方法で、表4に示す処方2の点眼液(水性懸濁剤)を調製した。この点眼液を表5に示す態様の収容体(容器及び被覆体)に収容し、各種検体(眼科用医薬製品)である実施例8及び比較例9を製造した。なお、実施例8及び比較例9で使用した収容体(容器及び被覆体)は、それぞれ、前記試験例2にける実施例5及び比較例8で使用したものと同じである。
【0082】
【表4】
【0083】
2.ブリモニジン酒石酸塩の光安定性、及び透明性の評価
前記で得られた各検体に対して、前記試験例2と同様の方法で、前記で得られた各検体におけるブリモニジン酒石酸塩の光安定性の評価を行った。また、前記試験例1と同様の方法で、前記で得られた各検体の透明性について評価した。
【0084】
3.評価結果
得られた結果を表5に示す。本結果から、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の含有量が0.2gw/v%であっても、波長360~460nmと600~680nmの双方の領域における光の透過率を低くすることによって、内部視認性を確保しつつブリモニジン酒石酸塩の光安定性を確保できることが確認された。
【0085】
【表5】
【0086】
参考例
本参考例では、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性に影響を及ぼす波長と、ブリモニジン酒石酸塩の吸収波長との関係を検証した。
【0087】
先ず、ブリモニジン酒石酸塩のUVスペクトルを(紫外可視分光光度計(「UV-2450型」,島津製作所製))を用いて測定した。その結果、370nm以下の領域でブリモニジン酒石酸塩の吸収波長が認められ、ブリモニジン酒石酸塩の極大吸収波長は、246nm及び319nmであった。一方、前記試験例1において使用した包装体(実施例1~3と比較例6及び7)について、波長246nm及び319nmの光の透過率、並びに波長370nm以下の領域における光の平均透過率を算出すると、表6に示す通りであった。即ち、ブリモニジン酒石酸塩及びブリンゾラミドを含む点眼剤において、ブリモニジン酒石酸塩の光安定性に影響を及ぼす波長(即ち、360~460nmと600~680nm)は、ブリモニジン酒石酸塩の吸収波長とは関連性が無いことが確認された。
【0088】
【表6】
【0089】
製造例
実施例9
PET製容器(NewマイティアCL(登録商標)(千寿製薬株式会社)に使用されている容器)の外周面にポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートフィルムを3重に被覆し、透明収容体を製造する。この透明収容体(波長360~460nmの光の最大光透過率:30%、600~680nmの光の最大光透過率:40%)に表7の処方3の点眼液を充填し、本発明の眼科用医薬製品を得る。
【0090】
実施例10
PET製容器(NewマイティアCL(登録商標)(千寿製薬株式会社)に使用されている容器)に表7の処方4の点眼液を充填する。充填された容器にポリエチレン製の緑色チャック袋で2重包装し(波長360~460nmの光の最大光透過率:26%、600~680nmの光の最大光透過率:45%)、本発明の眼科用医薬製品を得る。
【0091】

【表7】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩、並びにブリンゾラミド及び/又はその塩を含む点眼液が、
波長480~580nmの領域と波長700~780nmの領域における光の平均透過率が47%以上である透明収容体に収容され、光暴露によるブリモニジン及び/又はその塩の分解が抑制されている、眼科用医薬製品。
【請求項2】
白色蛍光灯で0.7万lxの光を28.6時間照射した後、ケミカルランプで5W・h/m 2 の光を8時間連続照射した際のブリモニジン及び/又はその塩の分解率が0.7%以下である、請求項1に記載の眼科用医薬製品。
【請求項3】
前記透明収容体が、下記処方1に示す組成の点眼液を収容した状態で白色蛍光灯で0.7万lxの光を28.6時間照射した後、ケミカルランプで5W・h/m 2 の光を8時間連続照射した際にブリモニジン及び/又はその塩の分解率が0.7%以下になる透明収容体である、請求項1に記載の眼科用医薬製品
【表1】
【請求項4】
前記透明収容体が、波長360~460nmの光の最大透過率が67%以下であり、且つ波長600~680nmの光の最大透過率が78%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の眼科用医薬製品
【請求項5】
前記点眼液が、マンニトールを含まない、請求項4に記載の眼科用医薬製品。