(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098113
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】床版架け替え方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20240711BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240711BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
E01D21/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084544
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2023088815の分割
【原出願日】2017-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 好謙
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 健三
(57)【要約】
【課題】効率的な床版の架け替えを行うことができる、床版架け替え方法を提供する。
【解決手段】床版架け替え方法は、既設床版撤去工程、新設床版配置準備工程、及び新設床版配置工程を有する。既設床版撤去工程は、既設床版の床版片を撤去することを含む。新設床版配置準備工程は、床版片が撤去された橋桁上に新設床版を配置するための準備作業をすることを含む。新設床版配置工程は、前記準備作業がなされた橋桁上に新設床版を配置することを含む。床版架け替え施工進行方向において前側から後側に向かって順に、既設床版撤去工程を実施する第1施工領域と、新設床版配置準備工程を実施する第2施工領域と、新設床版配置工程を実施する第3施工領域とが並ぶ。橋桁上の既設の床版上には、既設床版撤去工程で用いられる第1クレーン装置が位置する。橋桁上に新設された床版上には、新設床版配置工程で用いられる第2クレーン装置が位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁を有する構造物において、前記橋桁上に配設される床版を既設床版から新設床版に架け替える方法であって、
既設床版撤去工程、新設床版配置準備工程、及び新設床版配置工程を有し、
前記既設床版撤去工程は、既設床版の床版片を撤去することを含み、
前記新設床版配置準備工程は、前記床版片が撤去された前記橋桁上に新設床版を配置するための準備作業をすることを含み、
前記新設床版配置工程は、前記準備作業がなされた前記橋桁上に新設床版を配置することを含み、
前記構造物の軸方向に複数の施工領域を設定し、
前記軸方向に沿う床版架け替え施工進行方向において、前記進行方向前側から後側に向かって順に、前記既設床版撤去工程を実施する第1施工領域と、前記新設床版配置準備工程を実施する第2施工領域と、前記新設床版配置工程を実施する第3施工領域と、が並び、
前記橋桁上の既設の床版上には、前記既設床版撤去工程で用いられるクレーン装置が位置する、床版架け替え方法。
【請求項2】
橋桁を有する構造物において、前記橋桁上に配設される床版を既設床版から新設床版に架け替える方法であって、
既設床版撤去工程、新設床版配置準備工程、及び新設床版配置工程を有し、
前記既設床版撤去工程は、既設床版の床版片を撤去することを含み、
前記新設床版配置準備工程は、前記床版片が撤去された前記橋桁上に新設床版を配置するための準備作業をすることを含み、
前記新設床版配置工程は、前記準備作業がなされた前記橋桁上に新設床版を配置することを含み、
前記構造物の軸方向に複数の施工領域を設定し、
前記軸方向に沿う床版架け替え施工進行方向において、前記進行方向前側から後側に向かって順に、前記既設床版撤去工程を実施する第1施工領域と、前記新設床版配置準備工程を実施する第2施工領域と、前記新設床版配置工程を実施する第3施工領域と、が並び、
前記橋桁上に新設された床版上には、前記新設床版配置工程で用いられるクレーン装置が位置する、床版架け替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などの構造物を構成する床版の架け替え(既設床版の撤去とこれに替わる新設床版の設置)を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、例えば、複数の橋脚と、各々が複数の橋脚の上に跨がって橋軸方向に延びる複数の橋桁(H形鋼)と、複数の橋桁の上に跨がって配設される床版と、を含んで構成される。床版は、例えば鉄筋コンクリート製である。かかる床版については、長年の使用によるコンクリートの劣化や内部の鉄筋の腐食などの理由で、架け替え(既設床版の撤去と新設床版の設置)が求められる場合がある。
【0003】
床版の架け替えに用いられる装置としては、例えば特許文献1に記載の床版架設機が知られている。これは、橋軸方向前後の門型フレームを連結してなる無軌条・自走式の門型構造体と、門型構造体の天井部の下面側に前後方向及び横方向に移動可能に設けられる吊上装置(例えばチェーンブロック)と、を備えている。ここにおいて、新設床版はプレキャストコンクリート製である。
【0004】
このような架設機を用いた新設床版の架設作業は、
(1)架設機の後部での新設床版の取込み、すなわち、架設機の後部に位置させた吊上装置による、新設床版の長辺を橋軸方向に向けた状態での、新設床版の吊上げ
(2)吊上装置の前側への移動による、新設床版の架設位置までの移送
(3)新設床版の長辺を橋軸直角方向に向けるように、新設床版の向きの変更(90°回転)
(4)そして、所定位置への設置
という工程で行われる。
また、既設の床版の撤去作業は、入れ替わりで、ほぼ逆の工程で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の架設機を用いる床版架け替え方法では、ある施工場所で既設床版の撤去から新設床版の設置までを行った後に前述の架設機が橋軸方向に移動して、次の施工場所で既設床版の撤去から新設床版の設置までを行う。ゆえに、ある施工場所での床版の架け替え作業が完了するまでは次の施工場所で床版の架け替え作業を開始することができず、その結果、橋梁の全長にわたって床版の架け替えを行うのに時間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、橋梁などの構造物において、効率的な床版の架け替えを行うことができる、床版架け替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明に係る床版架け替え方法は、橋桁を有する構造物において、橋桁上に配設される床版を既設床版から新設床版に架け替える方法である。本発明に係る床版架け替え方法は、既設床版撤去工程、新設床版配置準備工程、及び新設床版配置工程を有し、既設床版撤去工程は、既設床版の床版片を撤去することを含み、新設床版配置準備工程は、床版片が撤去された橋桁上に新設床版を配置するための準備作業をすることを含み、新設床版配置工程は、前記準備作業がなされた橋桁上に新設床版を配置することを含む。本発明に係る床版架け替え方法では、構造物の軸方向に複数の施工領域を設定する。本発明に係る床版架け替え方法では、軸方向に沿う床版架け替え施工進行方向において、前記進行方向前側から後側に向かって順に、既設床版撤去工程を実施する第1施工領域と、新設床版配置準備工程を実施する第2施工領域と、新設床版配置工程を実施する第3施工領域と、が並ぶ。本発明に係る床版架け替え方法の第1態様では、橋桁上の既設の床版上には、既設床版撤去工程で用いられるクレーン装置が位置する。本発明に係る床版架け替え方法の第2態様では、橋桁上に新設された床版上には、新設床版配置工程で用いられるクレーン装置が位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床版架け替え施工の進捗状況が異なる複数の施工領域にて、並行して(すなわち同時に)施工を進めることができるので、床版の架け替えを効率良く(換言すれば短期間で)行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の第1実施形態における床版架け替え方法の施工状態を示す側面図
【
図3】前記第1実施形態における床版架け替え方法のメインルーチンを示すフローチャート
【
図4】前記第1実施形態における床版架け替え方法のサブルーチンを示すフローチャート
【
図5】前記第1実施形態における既設床版の撤去方法を示すフローチャート
【
図6】前記第1実施形態における新設床版の配置準備方法を示すフローチャート
【
図7】前記第1実施形態における新設床版の配置方法を示すフローチャート
【
図8A】前記第1実施形態における既設床版の切断方法を示す図
【
図8B】前記第1実施形態における既設床版の切断方法を示す図
【
図9A】前記第1実施形態における既設床版の縁切り方法を示す図
【
図9B】前記第1実施形態における既設床版の縁切り方法を示す図
【
図10A】前記第1実施形態における新設床版の配置準備方法を示す図
【
図10B】前記第1実施形態における新設床版の配置準備方法を示す図
【
図10C】前記第1実施形態における新設床版の配置準備方法を示す図
【
図11A】前記第1実施形態における新設床版の配置方法を示す図
【
図11B】前記第1実施形態における新設床版の配置方法を示す図
【
図12】前記第1実施形態におけるスタッドジベルの設置方法を示す図
【
図13】前記第1実施形態における時刻と各施工領域の作業工程との関係を示す図
【
図14】前記第1実施形態における時刻と各施工領域の作業工程との関係を示す図
【
図15】従来の床版架け替え方法の一例における時刻と各施工領域の作業工程との関係を示す図
【
図16A】本発明の第2実施形態における時刻と各施工領域の作業工程との関係を示す図
【
図16B】前記第2実施形態における時刻と各施工領域の作業工程との関係を示す図
【
図17】本発明の第3実施形態における新設床版の配置方法を示すフローチャート
【
図18】本発明の第4実施形態における新設床版の配置準備方法を示すフローチャート
【
図19】本発明の第5実施形態における新設床版の配置方法を示すフローチャート
【
図20】本発明の第6実施形態における新設床版の配置準備方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0012】
図1は、本発明に係る床版架け替え方法が適用され得る既設の橋梁の一例の側面図である。
図2は、本発明の第1実施形態における床版架け替え方法の施工状態を示す側面図である。尚、本実施形態では、橋梁における床版架け替え施工の進行方向を前進方向として
図1及び
図2に示すように前後を規定して、以下説明する。ここで、床版架け替え施工進行方向は、橋梁の橋軸方向に沿う。また、本実施形態では、橋梁の橋軸直角方向を左右方向(横方向)として、以下説明する(
図10A~
図12参照)。
【0013】
尚、本実施形態では、本発明の「構造物」(土木構造物)の一例として橋梁を挙げて説明するが、本発明の「構造物」は橋梁に限らない。また、前述の橋軸方向が、本発明の「構造物の軸方向」及び「橋梁の軸方向」に対応し得る。
【0014】
本発明の「構造物」の一例である橋梁1は、前後一対の橋台2a,2bと、橋台2a,2b間に間隔を空けて配設された複数の橋脚3と、各々が橋台2a,2b及び複数の橋脚3の上に跨がって橋軸方向に延びる複数の橋桁(H形鋼)4と、複数の橋桁4の上に跨がって配設されたコンクリート製の既設床版5と、を含んで構成される。尚、橋台2a,2b及び複数の橋脚3と複数の橋桁4との間には、図示しない支承が介装されている。ここで、本実施形態では、既設床版5が鉄筋コンクリート製である(RC床版である)として以下説明するが、この他、既設床版5は、プレストレストコンクリート製であってもよい(PC床版であってもよい)。また、橋桁4は、後述する
図10A~
図10Cに示すように、ウェブ4wと、上フランジ4fと、下フランジ(図示せず)とを有している。
【0015】
本実施形態では、橋梁1の全長(橋長)Ltが300mであるとして以下説明するが、橋梁1の全長Ltは300mに限らない。また、本実施形態では、橋梁1の橋軸直角方向において既設床版5を分割しない、いわゆる全断面床版架け替え施工であるとして以下説明するが、施工形態はこれに限らず、例えば、橋梁1の橋軸直角方向において既設床版5を2つに分割する、いわゆる半断面床版架け替え施工であってもよい。
【0016】
図1及び
図2に加えて、
図3及び
図4を用いて、本実施形態における床版架け替え方法を説明する。
図3は、本実施形態における床版架け替え方法のメインルーチンを示すフローチャートである。
図4は、本実施形態における床版架け替え方法のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0017】
橋梁1の床版架け替え施工(既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の設置)は、全体的には、
図3に示すメインルーチンに従う。
【0018】
まず、ステップS101では、橋梁1を橋軸方向に複数(本実施形態ではn個)の施工領域A1~Anに区分けすることにより、複数の施工領域A1~Anを設定する。尚、本実施形態では、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さが、それぞれ6mであるとして以下説明するが、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さは6mに限らない。例えば、橋梁1の全長Ltが300mであり、かつ、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さが、それぞれ6mである場合には、n=300/6=50となる。
【0019】
次に、ステップS102では、施工領域A
1~A
nの各々にて、既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の配置とを行う。本実施形態では、例えば
図2に示すように、複数の施工領域A
k~A
k-6にて床版架け替え作業が並行して実施可能である。尚、本実施形態では、床版架け替え施工進行方向において、前側の施工領域(例えば施工領域A
k-4)と、この施工領域より後方の施工領域(例えば施工領域A
k-6)とにて、互いに異なる作業工程を並行して実施し得る。
【0020】
施工領域A1~Anの全てで既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の配置とが行われると(すなわち、橋梁1の全長Ltにわたって新設床版7の配置が完了すると)、ステップS103に進み、新設床版7と橋桁4とを固定して一体化すると共に、橋軸方向で隣り合う新設床版7同士を固定して一体化する。
このようにして、橋梁1の床版架け替え施工が行われる。
【0021】
前述のステップS102に関して、施工領域A
1~A
nの各々は、既設床版5の撤去から新設床版7の配置に至る複数段の作業工程を有する。この複数段の作業工程が
図4に示されている。
図4に示すように、まず、ステップS1にて、前段(第1段)として、既設床版5の撤去作業を実施する。ここで、ステップS1が、本発明の「第1作業工程」に対応する。
【0022】
次に、ステップS2にて、中段(第2段)として、既設床版5が撤去された施工領域に新設床版7を配置するための準備作業(新設床版7の配置準備作業)を実施する。ここで、ステップS2が、本発明の「第2作業工程」に対応する。
【0023】
次に、ステップS3にて、後段(第3段)として、新設床版7の配置準備作業が実施された施工領域に新設床版7を配置する。ここで、ステップS3が、本発明の「第3作業工程」に対応する。
【0024】
ここで、ステップS1にて実施される既設床版5の撤去作業について、前述の
図1~
図4に加えて、
図5及び
図8A~
図9Bを用いて説明する。
図5は、本実施形態における既設床版5の撤去方法を示すフローチャートである。
図8A及び
図8Bは、本実施形態における既設床版5の切断方法を示す図である。
図9A及び
図9Bは、本実施形態における既設床版5の縁切り方法を示す図である。
【0025】
図5に示すように、まず、ステップS11では、既設床版5の切断作業を実施する。このステップS11では、
図8A及び
図8Bに示すように、既設床版5の後端から所定長さLa分前方の箇所に切断線5bを設定し、この切断線5bに沿って、コンクリートカッターやワイヤーソーなどのコンクリート切断装置を用いて既設床版5を切断して、床版片5aを形成する。本実施形態では、前述の所定長さLaが2mであるとしているが、前述の所定長さLaは2mに限らない。
【0026】
次に、ステップS12にて、既設床版5の床版片5aの縁切り作業を実施する。このステップS12では、まず、
図9Aに示すように、床版片5aの前方と後方とに、それぞれ、短縮状態の複数のジャッキ50a,50bを設置する。ここで、ジャッキ50a,50bは上下方向に伸縮自在であり、例えば油圧ジャッキである。
【0027】
前側のジャッキ50aは、その下端部が既設床版5の上面に当接する。後側のジャッキ50bは、その下端部が橋桁4の上面4a(詳しくは、
図10A~
図10Cに示す橋桁4の上フランジ4fの上面4a)に当接する。
【0028】
また、
図9Aに示すように、ジャッキ50a,50bの上に跨がるように、梁部材51が配置されている。梁部材51は、ジャッキ50a,50bの上端部に固定されている。梁部材51は、図示しないブラケットを有し、このブラケットと、床版片5aとを貫通するように、上下方向に延びるPC鋼棒52が配置されている。PC鋼棒52については、橋桁4をかわすように配置されている。PC鋼棒52の上端部及び下端部には、それぞれ、梁部材51(前述のブラケット)及び床版片5aとPC鋼棒52とを固定するための固定部材53a,53bが取り付けられている。
【0029】
次に、
図9Bに示すように、ジャッキ50a,50bを伸長作動させることにより、梁部材51(前述のブラケット)及びPC鋼棒52を介して、床版片5aが引っ張り上げられる。このようにして、床版片5aが橋桁4から分離(縁切り)されると、ジャッキ50a,50bを短縮し、PC鋼棒52、梁部材51、及びジャッキ50a,50bを撤去する。
【0030】
次に、
図5のステップS13にて、橋桁4から縁切りされた床版片5aを、
図2に示すクレーン装置20にて吊り上げ、床版片5aの長辺を橋軸方向に向けるように床版片5aの向きを変更して(すなわち90°回転させて)、この床版片5aを、クレーン装置20により、図示しない運搬車両の荷台に載せる。この運搬車両は、床版片5aを、施工領域A
1~A
nから床版架け替え施工進行方向前方に搬出し得る。尚、この運搬車両は、既設床版5上を走行可能である。
【0031】
クレーン装置20は、前後方向に延びる左右一対の下部フレーム21と、左右一対の下部フレーム21に下端が連結された門型フレーム22と、門型フレーム22の上部に設けられた上部フレーム23と、上部フレーム23に対して前後左右に移動可能な吊上装置24と、を含んで構成されている。左右一対の下部フレーム21には、既設床版5上を転動可能な車輪が設けられている。門型フレーム22内、及び、左右一対の下部フレーム21間には、前述の運搬車両の荷台が配置され得る。
【0032】
本実施形態では、1つの施工領域ごとに(すなわち施工領域A
1~A
nの各々で)、前述のステップS11~S13を3回実施することで、1つの施工領域の橋軸方向の長さ分である6m分の既設床版5の撤去作業を行う。
以上のようにして、
図4のステップS1にて、既設床版5の撤去作業が実施される。
【0033】
【0034】
図6に示すように、まず、ステップS21では、既設床版5(床版片5a)が撤去されて外部に露出している橋桁4の上面4a(詳しくは、
図10Aに示す橋桁4の上フランジ4fの上面4a)のケレン作業を実施する。ここで、ケレン作業は、橋桁4の上面4aに残留しているコンクリート片などを除去することを含み得る。
【0035】
次に、ステップS22では、ケレン作業が実施された橋桁4の上フランジ4fの左右両側部に、例えばゴム製のフランジシール60を設置する(
図10B参照)。フランジシール60は、橋軸方向に延びる板状である。このフランジシール60は、前述のステップS103にて新設床版7と橋桁4とを固定して一体化する際に新設床版7と橋桁4との間の空間9(
図11B参照)内に打設されるモルタルが空間9外に漏れ出ることを防ぐためのものである。
【0036】
次に、ステップS23では、新設床版7の配置高さを調整するための複数の高さ調整材70を、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに設置する(
図10C参照)。高さ調整材70は、上下方向に伸縮自在であることが好ましい。高さ調整材70は、例えば、上下方向に伸縮自在な手動式のジャッキであり得る。又は、高さ調整材70は、それ自体の高さが決定された後に変形不可能な剛性を有する部材(スペーサー)により構成されてもよい。複数の高さ調整材70は、橋軸方向に互いに間隔を空けて、橋軸方向に並んでいる。
【0037】
尚、高さ調整材70については、前述のステップS3及び後述のステップS31にて新設床版7が橋桁4上に配置されたときに、計画された新設床版7の配置高さとなるように、新設床版7の橋桁4上への配置に先立って、高さ調整材70自体の高さ調整が行われ得る。高さ調整材70自体の高さ調整は、ステップS23にて橋桁4の上フランジ4fの上面4aに設置する前に行ってもよく、また、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに設置した後に行ってもよい。
【0038】
本実施形態では、フランジシール60の設置後に高さ調整材70の設置を行っているが、この他、フランジシール60の設置に先立って高さ調整材70の設置を行ってもよい。すなわち、ステップS22とステップS23とを入れ替えてもよい。
以上のようにして、
図4のステップS2にて、新設床版7の配置準備作業が実施される。
【0039】
次に、
図4のステップS3にて実施される新設床版7の配置作業について、前述の
図1~
図4に加えて、
図7、
図11A、
図11B及び
図12を用いて説明する。
図7は、本実施形態における新設床版7の配置方法を示すフローチャートである。
図11A及び
図11Bは、本実施形態における新設床版7の配置方法を示す図である。ここで、
図11Bは、
図11AのI-I断面に対応している。
図12は、スタッドジベル80の設置方法を示す図である。
【0040】
図7に示すように、まず、ステップS31では、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに設置された複数の高さ調整材70に、新設床版7を載置する(
図11A及び
図11B参照)。これにより、橋桁4の上フランジ4fの上面4aと、新設床版7の下面7bと、フランジシール60とによって囲まれた空間9が形成される。
【0041】
新設床版7は、プレキャストコンクリート製である(すなわち、PCa床版である)。新設床版7は、橋軸方向を短辺とし、橋軸直角方向を長辺とする、略矩形状である。本実施形態では、新設床版7の橋軸方向の長さが2mであるが、新設床版7の橋軸方向の長さは2mに限らない。
新設床版7には、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに相対するように、複数の貫通孔7aが形成されている。
【0042】
ステップS31における新設床版7の配置作業(載置作業)には、
図2に示すクレーン装置30が用いられる。クレーン装置30は、前後方向に延びる左右一対の下部フレーム31と、左右一対の下部フレーム31に下端が連結された門型フレーム32と、門型フレーム32の上部に設けられた上部フレーム33と、上部フレーム33に対して前後左右に移動可能な吊上装置34と、を含んで構成されている。左右一対の下部フレーム31には、橋桁4上に載置された新設床版7上を転動可能な車輪が設けられている。門型フレーム32内、及び、左右一対の下部フレーム31間を、搬送台車40が走行可能である。
【0043】
クレーン装置30によって吊り上げられる予定の新設床版7は、搬送台車40によって、橋台2b(
図1参照)に隣接する地面上からクレーン装置30まで搬送される。尚、橋桁4上に載置されて隣り合う新設床版7同士の間の隙間を上から覆うように鉄板などの板状部材を敷くことで、搬送台車40の走行安定性を向上させてもよい。搬送台車40は、自走式であってもよい。搬送台車40は、ゴム製のタイヤが使用された車輪を含んで構成されることが好ましい。
【0044】
橋台2bに隣接する地面上では、クレーン装置30まで搬送台車40によって搬送される予定の新設床版7が、図示しない運搬車両から、この運搬車両より重量が軽い搬送台車40に荷卸しされる。この荷卸し作業には、前述のクレーン装置20,30と同様の構成のクレーン装置を用いてもよい。
従って、本実施形態では、新設床版7を、床版架け替え施工進行方向後方から施工領域A1~Anに搬入する。
【0045】
尚、本実施形態では、搬送台車40上からクレーン装置30によって新設床版7を吊り上げた後に、クレーン装置30によって新設床版7の長辺を橋軸直角方向に向けるように新設床版7の向きを変更する(すなわち90°回転させる)。
【0046】
本実施形態では、1つの施工領域ごとに(すなわち施工領域A1~Anの各々で)、前述のステップS31を3回実施することで、1つの施工領域の橋軸方向の長さ分である6m分(つまり3枚)の新設床版7の配置作業を行う。
【0047】
次に、
図7のステップS32では、
図12に示すように、複数のスタッドジベル80を、新設床版7の貫通孔7a内に位置するように、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに溶接固定する。尚、ステップS32のスタッドジベル80の設置作業の途中で搬送台車40が通過する場合には、搬送台車40の通過時にスタッドジベル80の設置作業を中断する。
以上のようにして、
図4のステップS3にて、新設床版7の配置作業が実施される。
【0048】
図2に示す、ある時刻での施工状態では、施工領域A
k+1にクレーン装置20が位置する。施工領域A
k+1の後方に位置する施工領域A
kでは、前述のステップS1(ステップS11~S13)に示した作業が実施されている。施工領域A
kの後方に位置する施工領域A
k-1では、前述のステップS21に示した作業が実施されている。施工領域A
k-1の後方に位置する施工領域A
k-2では、前述のステップS22に示した作業が実施されている。施工領域A
k-2の後方に位置する施工領域A
k-3では、前述のステップS23に示した作業が実施されている。施工領域A
k-3の後方に位置する施工領域A
k-4では、前述のステップS31に示した作業が実施されている。施工領域A
k-4の後方に位置する施工領域A
k-5にはクレーン装置30が位置する。施工領域A
k-5の後方に位置する施工領域A
k-6では、前述のステップS32に示した作業が実施されている。尚、
図2に示す符号「α」は、前述のステップS1~S3(ステップS11~S32)の途中で作業を休止していることを示す。
【0049】
本実施形態では、ステップS1の作業が行われている施工領域(例えば、
図2に示す施工領域A
k)からステップS32の作業が行われている施工領域(例えば、
図2に示す施工領域A
k-6)までを覆うように、仮設テント10が設けられている。それゆえ、ステップS21でのケレン作業や、ステップS32での溶接作業が、仮設テント10内で実施される。尚、仮設テント10によって覆われる施工領域は、
図2に示したものに限らない。
【0050】
このようにして、本実施形態では、床版架け替え施工進行方向において、前側の施工領域と、この施工領域より後方の施工領域とにて、互いに異なる作業工程を並行して(すなわち同時に)実施可能である。
また、本実施形態では、床版架け替え施工進行方向において、前側の施工領域から後側の施工領域に向かうほど(例えば、
図2に示す施工領域A
kから施工領域A
k-6に向かうほど)、後段の作業工程となるように(すなわちステップS32に近づくように)、複数段の作業工程(ステップS1~S32)を並行して(すなわち同時に)実施可能である。
【0051】
本実施形態では、
図2に示すように、床版架け替え施工進行方向において、クレーン装置30の前方にクレーン装置20が位置している。
【0052】
本実施形態では、床版架け替え施工が進むのに追従して、仮設テント10及びクレーン装置20,30が前進する。ゆえに、複数段の作業工程(ステップS1~S32)を並行して(すなわち同時に)実施可能な床版架け替えシステムも前進する。ここで、この床版架け替えシステムは仮設テント10及びクレーン装置20,30を含む。
【0053】
図13は、本実施形態における時刻t=t1~t10と施工領域A
1~A
9の各々の作業工程との関係を示す図である。
図14は、本実施形態における時刻t=t1~t15と施工領域A
1~A
8の各々の作業工程との関係を示す図である。
【0054】
尚、
図13及び
図14に示す符号「α」は、前述の
図2と同様に、前述のステップS1~S3(ステップS11~S32)の途中で作業を休止していることを示す。
【0055】
また、前述の時刻t1~t2間の時間,時刻t2~t3間の時間,・・・,時刻t13~t14間の時間,時刻t14~t15間の時間は、それぞれ、同じ時間(本実施形態では1.2時間とするが、これに限らない)である。また、1つの施工領域(すなわち施工領域A1~Anの各々)について、ステップS1,S21,S22,S23,S31,S32の作業工程時間が同じである。この作業工程時間の設定に際して、ステップS1,S21,S22,S23,S31,S32のうち、どの作業工程がクリティカルパスになっているかが考慮され得る。
【0056】
図13及び
図14に示すように、本実施形態では、時刻t1~t13の間で、施工領域A
1~A
6での床版架け替え(既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の配置)が完了する。
【0057】
この点、
図15は、従来の床版架け替え方法の一例における時刻t1~t13と施工領域A
1,A
2の各々の作業工程との関係を示している。
図15は、施工領域A
1で既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の配置を行った後に、施工領域A
2で既設床版5の撤去と、これに替わる新設床版7の配置を行うと、時刻t1~t13の作業時間がかかることを示している。
【0058】
従って、
図13~
図15の図示から明らかなように、本実施形態の床版架け替え方法を用いると、従来の床版架け替え方法に比べてはるかに迅速に床版架け替え施工を進めることができる。
【0059】
前述の
図3のステップS103では、橋桁4上に配置された新設床版7の貫通孔7aから空間9内(
図11B参照)にモルタルを注入・打設することで、このモルタルとスタッドジベル80(
図12参照)とにより、新設床版7と橋桁4とが固定されて一体化される。また、前述の
図3のステップS103では、橋軸方向で隣り合う新設床版7同士の間の間詰部(図示せず)にて鉄筋コンクリート工が実施されることで、これら新設床版7同士が固定されて一体化される。
【0060】
本実施形態によれば、床版架け替え方法は、構造物(橋梁1)を構造物(橋梁1)の軸方向に複数の施工領域A
1~A
nに区分けすることにより、複数の施工領域A
1~A
nを設定することを含む。施工領域A
1~A
nは、各々が、既設床版5の撤去から新設床版7の配置に至る複数段の作業工程(ステップS1~S3(S11~S32))を有する。構造物(橋梁1)の軸方向(橋軸方向)に沿う床版架け替え施工進行方向において、床版架け替え施工進行方向前側の施工領域と、この施工領域より床版架け替え施工進行方向後方の施工領域とにて、互いに異なる作業工程を並行して実施する(
図2、
図13及び
図14参照)。これにより、床版架け替え施工の進捗状況が異なる複数の施工領域にて、並行して(すなわち同時に)施工を進めることができるので、既設床版5から新設床版7への架け替えを効率良く(換言すれば短期間で)行うことができる(
図13~
図15参照)。
【0061】
また本実施形態によれば、床版架け替え施工進行方向前側の施工領域から床版架け替え施工進行方向後側の施工領域に向かうほど後段の作業工程となるように(例えば、
図2に示すように、施工領域A
kから施工領域A
k-6に向かうほど、ステップS32に近づくように)、複数段の作業工程を並行して実施する(
図2、
図13及び
図14参照)。これにより、床版架け替え施工進行方向に沿って、各作業工程を継続しつつ前進させることができるので、各作業工程の休止時間(作業待ち時間)の発生を抑制でき、ひいては、床版架け替え施工を効率良く行うことができる。
【0062】
また本実施形態によれば、撤去された既設床版5(床版片5a)を施工領域A1~Anから床版架け替え施工進行方向前方に搬出し、新設床版7を施工領域A1~Anに床版架け替え施工進行方向後方から搬入する。これにより、既設床版5(床版片5a)の搬出作業と新設床版7の搬入作業とが錯綜することを抑制することができる。
【0063】
また本実施形態によれば、各施工領域A1~Anがそれぞれ有する複数段の作業工程は、施工領域の既設床版5の撤去作業を実施する第1作業工程(ステップS1)と、既設床版5が撤去された施工領域に新設床版7を配置するための準備作業を実施する第2作業工程(ステップS2)と、この準備作業が実施された施工領域に新設床版7を配置する第3作業工程(ステップS3)と、を含む。ゆえに、新設床版7の配置に先立って新設床版7の配置のための様々な準備を行うことで、新設床版7の配置を円滑に行うことができる。
【0064】
また本実施形態によれば、第2作業工程(ステップS2)は、第3作業工程(ステップS3)にて施工領域に配置される新設床版7の配置高さを調整するための高さ調整材70を橋梁1の橋桁4の上面4aに設けること(ステップS23)を含む。これにより、ステップS31(ステップS3)にて、新設床版7を、計画の配置高さで容易に施工領域に配置することができる。
【0065】
また本実施形態によれば、第2作業工程(ステップS2)は、橋梁1の橋桁4の上面4aに対してケレン作業を実施すること(ステップS21)を含む。このケレン作業は、仮設テント10内で実施される。それゆえ、仮設テント10が雨除けとして機能し得るので、雨天でもケレン作業を実施することができる。また、ケレン作業で発生する粉じんが仮設テント10内に留まり得るので、当該粉じんの外部への飛散を抑制することができる。
【0066】
また本実施形態によれば、施工領域A1~Anの各々が有する複数段の作業工程のうち、溶接作業を含む作業工程(例えばステップS32)では、仮設テント10内で溶接作業が実施される。それゆえ、仮設テント10が雨除けとして機能し得るので、雨天でも溶接作業を実施することができる。
【0067】
また本実施形態によれば、新設床版7がプレキャストコンクリート製である。ゆえに、床版架け替えの施工現場での新設床版7の設置作業を簡素化することができる。
【0068】
また本実施形態によれば、橋梁1の全長にわたって新設床版7の配置が完了した後に、新設床版7と橋梁1の橋桁4とを固定して一体化すると共に、橋梁1の軸方向(橋軸方向)で隣り合う新設床版7同士を固定して一体化する(ステップS103)。これにより、新設床版7と橋桁4との一体化と、隣り合う新設床版7同士の一体化とを、橋梁1の全長にわたってまとめて行うことができるので、これらの一体化作業を短期間で効率良く行うことができる。
【0069】
尚、本実施形態では、橋梁1の全長にわたって新設床版7の配置が完了した後に、新設床版7と橋桁4とを固定して一体化すると共に、橋軸方向で隣り合う新設床版7同士を固定して一体化するが、この他、橋梁1の全長よりも短く、かつ、複数の施工領域を含む所定区間にわたって新設床版7の配置が完了した後に、この所定区間にてまとめて、新設床版7と橋桁4とを固定して一体化すると共に、橋軸方向で隣り合う新設床版7同士を固定して一体化してもよい。
【0070】
図16A及び
図16Bは、本発明の第2実施形態における時刻t1~t19と施工領域A
1~A
20の各々の作業工程との関係を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0071】
本実施形態では、前述の第1実施形態に比べて、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さを短縮している。本実施形態では、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さを、それぞれ2mとしているが、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さは2mに限らない。例えば、橋梁1の全長Ltが300mであり、かつ、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さが、それぞれ2mである場合には、n=300/2=150となる。
【0072】
また、本実施形態では、前述の時刻t1~t2間の時間,時刻t2~t3間の時間,・・・,時刻t17~t18間の時間,時刻t18~t19間の時間は、それぞれ、同じ時間(本実施形態では0.4時間とするが、これに限らない)である。
【0073】
本実施形態では、1つの施工領域(すなわち施工領域A1~Anの各々)について、ステップS1の作業工程時間が0.4時間であり、ステップS21の作業工程時間が0.8時間(0.4時間×2)であり、ステップS22,S23の作業工程時間が、それぞれ、1.2時間(0.4時間×3)であり、ステップS31の作業工程時間が0.4時間であり、ステップS32の作業工程時間が0.4時間である。
【0074】
本実施形態では、
図16A及び
図16Bに示すように、各作業工程の特性に応じて、各作業工程の時間配分の最適化と、各作業工程の作業範囲の最適化とを実現することができる。例えば、
図16Aの時刻t6~t7,t9~t10、及び、
図16Bの時刻t12~t13,t15~t16,t18~t19において、ステップS21のケレン作業を休止することにより、仮設テント10内で粉じんが慢性的に発生することを抑制することができる。
【0075】
図17は、本発明の第3実施形態における新設床版7の配置方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0076】
本実施形態では、ステップS103の替わりとして、ステップS32の後に、ステップS33が追加されている。すなわち、本実施形態では、1つの施工領域ごとに(すなわち施工領域A1~Anの各々で)、ステップS32のスタッドジベル80の設置作業を行い、これに続けて、ステップS33にて、新設床版7と橋桁4とを固定して一体化すると共に、橋軸方向で隣り合う新設床版7同士を固定して一体化する。これら一体化作業については、前述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
尚、前述の第2実施形態において、本実施形態と同様に、ステップS103の替わりとして、ステップS32の後に、ステップS33を追加してもよいことは言うまでもない。
【0078】
図18は、本発明の第4実施形態における新設床版7の配置準備方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
本実施形態では、前述のステップS21にて橋桁4の上フランジ4fの上面4aのケレン作業を実施した後に、ステップS24に進み、橋桁4の上フランジ4fの上面4aの形状の測量を実施する。この測量が完了した後に、ステップS22に進み、橋桁4の上フランジ4fの左右両側部に、フランジシール60を設置する。すなわち、本実施形態では、ステップS21とステップS22との間にステップS24が追加されている。
【0080】
尚、前述の第2及び第3実施形態において、本実施形態と同様に、ステップS21とステップS22との間にステップS24を追加してもよいことは言うまでもない。
【0081】
図19は、本発明の第5実施形態における新設床版7の配置方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0082】
本実施形態では、前述のステップS31にて、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに設置された複数の高さ調整材70に、新設床版7を載置した後に、ステップS34に進み、新設床版7の高さ調整を実施する。この高さ調整が完了した後に、ステップS32に進み、複数のスタッドジベル80を、新設床版7の貫通孔7a内に位置するように、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに溶接固定する。すなわち、本実施形態では、ステップS31とステップS32との間にステップS34が追加されている。
【0083】
尚、前述の第2~第4実施形態において、本実施形態と同様に、ステップS31とステップS32との間にステップS34を追加してもよいことは言うまでもない。
【0084】
図20は、本発明の第6実施形態における新設床版7の配置準備方法を示すフローチャートである。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0085】
本実施形態では、新設床版7に複数のインサートが埋め込まれている。各インサートは、新設床版7を上下に貫通する雌ねじ部を有する。この雌ねじ部には、上側に頭部を有するボルトの雄ねじ部が螺合している。このボルトの雄ねじ部の下端部は、新設床版7の下面7bから下方に突出しており、橋桁4の上フランジ4fの上面4aに当接可能である。このボルトの雄ねじ部の、雌ねじ部に対するねじ込み度合いを変化させることで、ボルトの雄ねじ部の下端部が新設床版7の下面7bから下方に突出する突出量が変化し得る。ゆえに、これらインサート及びボルト(以下、「インサート・ボルト」と称する)が、新設床版7の配置高さを調整するための高さ調整材として機能し得る。
【0086】
本実施形態では、新設床版7の配置高さを調整するための高さ調整材(例えば、前述のインサート・ボルト)が、前述のステップS31に先立って、新設床版7に複数設けられている。ゆえに、前述の高さ調整材70が不要となるので、本実施形態では、
図20に示すように、前述のステップS23が省略され得る。
【0087】
尚、前述の第2~第5実施形態において、本実施形態と同様に、新設床版7の配置高さを調整するための高さ調整材(例えば、前述のインサート・ボルト)を、前述のステップS31に先立って新設床版7に複数設ければ、前述の高さ調整材70が不要となるので、ステップS23を省略することができることは言うまでもない。特に、前述の第5実施形態において、本実施形態と同様に、新設床版7の配置高さを調整するための高さ調整材(例えば、前述のインサート・ボルト)を、前述のステップS31に先立って新設床版7に複数設けて、ステップS23を省略した場合には、ステップS34における新設床版7の高さ調整において、これら高さ調整材(例えば、前述のインサート・ボルト)が用いられ得る。
【0088】
前述の第1実施形態では、複数の作業工程(ステップS1,S21~S23,S31,S32)の各々に対応するように、作業員及び装置を含む作業チームを個別に編成し(すなわち分業化し)、これら作業チームが作業工程の順序(ステップS1,S21~S23,S31,S32)に従って橋軸方向に1列に並んでいる(つまり、これら作業チームからなる、床版架け替えのための生産ラインのようなものが形成されている)。そして、これら作業チームが並行して、各々の作業の実施と前方への移動とを繰り返すことで、床版架け替え施工が進む。ゆえに、これら作業チームによる、前方への移動を伴う流れ作業によって、床版架け替え施工が進む。この点は、第1実施形態のみならず、第2~第6実施形態においても同様である。ここにおいて、各作業チームによる作業、及び、作業チーム同士の連携などに関して、AI(人工知能)技術などを含むICT(情報通信技術)などを活用することにより、床版架け替え施工の一部又は全部のオートメーション化を実現することができ、ひいては、大幅な生産性向上を図ることができる。従って、本発明に係る床版架け替え方法は、ICTなどの活用によるi-Construction(登録商標)化の推進をもって、インフラ維持管理更新における生産性向上を図ると共に、魅力ある職場環境の創生により若年層の建設業への入職者の増加に貢献するための基盤技術の1つとなり得るものであり、産業上の利用可能性は大である。
【0089】
前述の第1~第6実施形態において、例えば、施工領域A1~Anのいずれかにおいて作業が遅れ気味である場合には、作業が遅れ気味である施工領域の作業員の人員を増やすなど、施工の進捗状況に応じて、前述の作業チームの編成(構成)を変化できるようにしてもよい(すなわち、作業チームの編成(構成)に柔軟性を持たせてもよい)。
【0090】
前述の第1~第6実施形態では、既設床版5の撤去作業(前述のステップS1)が実施される施工領域の橋軸方向の長さが一定(第1及び第3~第6実施形態では6m、第2実施形態では2m)のまま、床版架け替え施工が進行する例を示したが、この他、既設床版5の撤去作業(前述のステップS1)が実施される施工領域の橋軸方向の長さが、時刻に応じて変化してもよい。すなわち、既設床版5の撤去作業(前述のステップS1)が実施される施工領域の橋軸方向の長さに柔軟性を持たせてもよい。既設床版5の撤去作業(前述のステップS1)が実施される施工領域の橋軸方向の長さが時刻に応じて変化する場合には、それに追従するように、後続の作業が適宜調整され得る。
【0091】
前述の第1~第6実施形態では、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さが一定(第1及び第3~第6実施形態では6m、第2実施形態では2m)であるが、この他、施工領域A1~Anの各々の橋軸方向の長さが相互に異なっていてもよい。
【0092】
前述の第1実施形態では、施工領域A
1~A
nの各々において、前述のステップS31とステップS32との間に作業休止期間(
図2に符号「α」に対応する期間)を設けているが、この作業休止期間は、前述のステップS31とステップS32との間に限らない。これに加えて、又は、これに替えて、前述のステップS1とステップS21との間、ステップS21とステップS22との間、ステップS22とステップS23との間、及び、ステップS23とステップS31との間、のうちの少なくとも1つに、任意に、作業休止期間を設けてもよい。この点は、第1実施形態に限らず、第2~第6実施形態においても同様である。ここにおいて、作業休止期間は、各作業の作業時間の調整代として機能し得る。
【0093】
前述の第1~第6実施形態では、施工領域A1~Anの各々の作業工程の順序が同じであるが、この他、施工領域A1~Anのうちの一部の作業工程の順序が、前述の第1~第6実施形態にて説明した作業工程の順序と異なっていてもよい。
【0094】
前述の第1~第6実施形態において、既設床版5は、プレキャストコンクリート製であってもよい(PCa床版であってもよい)。既設床版5は、場所打ちコンクリート製であってもよい。既設床版5は、鋼床版や合成床版などであってもよい。
【0095】
前述の第1~第6実施形態において、新設床版7は、ハーフプレキャストコンクリート製などの、床版の一部にプレキャストコンクリートが使用される床版であってもよい。新設床版7は、プレストレストコンクリート製であってもよい(PC床版であってもよい)。新設床版7は、鋼床版や合成床版などであってもよい。
【0096】
前述の第1~第6実施形態では、本発明の「構造物」の一例として橋梁を挙げて説明したが、本発明の「構造物」は橋梁に限らない。例えば、本発明の「構造物」が、床版を有するトンネルであってもよい。
【0097】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、特願2017-202222号の出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
構造物における床版の架け替え方法であって、
前記構造物を前記構造物の軸方向に複数の施工領域に区分けすることにより、複数の施工領域を設定することを含み、
各施工領域は、それぞれ、既設床版の撤去から新設床版の配置に至る複数段の作業工程を有し、
前記構造物の軸方向に沿う床版架け替え施工進行方向において、前記進行方向前側の施工領域と、この施工領域より前記進行方向後方の施工領域とにて、互いに異なる作業工程を並行して実施する、床版架け替え方法。
[請求項2]
前記進行方向前側の施工領域から前記進行方向後側の施工領域に向かうほど後段の作業工程となるように、複数段の作業工程を並行して実施する、請求項1に記載の床版架け替え方法。
[請求項3]
撤去された既設床版を前記施工領域から前記進行方向前方に搬出し、
新設床版を前記施工領域に前記進行方向後方から搬入する、請求項1又は請求項2に記載の床版架け替え方法。
[請求項4]
各施工領域がそれぞれ有する複数段の作業工程は、
当該施工領域の既設床版の撤去作業を実施する第1作業工程と、
既設床版が撤去された当該施工領域に新設床版を配置するための準備作業を実施する第2作業工程と、
前記準備作業が実施された当該施工領域に新設床版を配置する第3作業工程と、
を含む、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の床版架け替え方法。
[請求項5]
前記構造物は橋梁であり、
前記第2作業工程は、前記第3作業工程にて当該施工領域に配置される新設床版の配置高さを調整するための高さ調整材を前記橋梁の橋桁の上面に設けることを含む、請求項4に記載の床版架け替え方法。
[請求項6]
前記構造物は橋梁であり、
前記第2作業工程は、前記橋梁の橋桁の上面に対してケレン作業を実施することを含む、請求項4又は請求項5に記載の床版架け替え方法。
[請求項7]
仮設テント内で前記ケレン作業が実施される、請求項6に記載の床版架け替え方法。
[請求項8]
各施工領域がそれぞれ有する複数段の作業工程のうち、溶接作業を含む作業工程では、仮設テント内で前記溶接作業が実施される、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の床版架け替え方法。
[請求項9]
前記構造物は橋梁であり、
前記橋梁の全長にわたって新設床版の配置が完了した後に、新設床版と前記橋梁の橋桁とを固定して一体化すると共に、前記橋梁の軸方向で隣り合う新設床版同士を固定して一体化する、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の床版架け替え方法。
[請求項10]
前記新設床版がプレキャストコンクリート製である、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の床版架け替え方法。
【符号の説明】
【0098】
1 橋梁
2a,2b 橋台
3 橋脚
4 橋桁
4a 上面
4f 上フランジ
4w ウェブ
5 既設床版
5a 床版片
5b 切断線
7 新設床版
7a 貫通孔
7b 下面
9 空間
10 仮設テント
20,30 クレーン装置
21,31 下部フレーム
22,32 門型フレーム
23,33 上部フレーム
24,34 吊上装置
40 搬送台車
50a,50b ジャッキ
51 梁部材
52 PC鋼棒
53a,53b 固定部材
60 フランジシール
70 高さ調整材
80 スタッドジベル
A1~Ak~An 施工領域